判例検索β > 平成29年(ネ)第812号
損害賠償請求控訴事件 意匠権 民事訴訟
事件番号平成29(ネ)812
事件名損害賠償請求控訴事件
裁判年月日平成29年9月7日
法廷名大阪高等裁判所
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平成29年9月7日判決言渡同日原本交付裁判所書記官

平成29年(ネ)第812号損害賠償請求控訴事件
(原審大阪地方裁判所平成28年(ワ)第675号)
口頭弁論終結日平成29年6月6日
判決
控訴人(一審原告)

株式会社

同訴訟代理人弁護士

山田
威一郎

同松本響子同柴田和彦
同補佐人弁理士

立花顕治
被控訴人(一審被告)

有限会社プレーン

被控訴人(一審被告)

有限会社シェル

上記2名訴訟代理人弁護士

池下利男
上記2名訴訟代理人弁理士

山本真一主文
1本件控訴をいずれも棄却する
2控訴費用は控訴人の負担とする。
事実及び理由
第1控訴の趣旨
1原判決を取り消す。
ベル
2被控訴人らは,控訴人に対し,連帯して,1000万円及びこれに対する平成27年9月12日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。第2事案の概要
(以下,略称及び略称の意味は,特に断らない限り,原判決に従う。)
1本件は,本件意匠の意匠権者である控訴人が,被控訴人らが共同して製造販売していた原判決別紙物件目録記載1ないし3の靴(以下「被控訴人製品」という。の靴底部分が本件意匠権の意匠に類似することから,

被控訴人らの行為
が本件意匠の利用による意匠権侵害に当たると主張して,被控訴人らに対し,連帯して,本件意匠権侵害の不法行為に基づく損害賠償請求として損害金6022万5000円の内金1000万円及びこれに対する不法行為の日の後の日である平成27年9月12日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めている事案である。
原審は,被告意匠は,本件意匠に類似するものとは認められないとして,控訴人の請求をいずれも棄却した。これを不服とした控訴人が控訴を提起した。2前提事実及び争点は,次のとおり補正し,後記3のとおり,当審における控訴人の主張を付加するほかは,原判決「事実及び理由」中の第2の1及び第2の2(原判決2頁9行目から16頁7行目まで)に記載のとおりであるからこれを引用する。
(1)原判決4頁6行目の
「A層接地点」
の次に(A層のつま先側先端を意味す

る。以下同じ)
」を加える。
(2)原判決5頁12行目冒頭から20行目末尾までを次のとおり改める。「本件意匠の要部は,
①靴底を構成する3層のソールの側面がいずれも膨らむような形状を有しており,
②A層が上部から底部にかけてなだらかな丸みを帯びた面からなるやや末広がりの形状からなるのに対し,B層はA層よりも急な角度で中央が膨出したふくらみを持った形状からなり,
③B層の上に形成されたC層はB層よりも外側に膨出した形状になっている点にある。
(3)原判決5頁22行目冒頭から23行目末尾までを次のとおり改める。「本件意匠と被告意匠は,基本的構成態様の全てにおいて共通し,被告意匠は,前記ウ①ないし③の本件意匠の要部を全て備えている。」
(4)原判決12頁8行目の「イ」を「ウ」に改める。
(5)原判決12頁10行目の
「ウ本件意匠と被告特定意匠との対比」「エ本

件意匠と被告特定意匠(D層を含む)との対比(主位的主張)
」に改める。
(6)原判決13頁7行目の「エ本件意匠と被告意匠との対比」を「オ本件意匠と被告意匠(D層を含まない)との対比(予備的主張)
」に,14頁1行目
の「オ」を「カ」にそれぞれ改める。
(7)原判決14頁7,
8行目の
「意匠登録前」「意匠登録出願前」

に改める。
(8)原判決15頁26行目の「被告が」を「被控訴人らが」に改める。3当審における控訴人の主張
(1)本件意匠の要部について
原判決の認定は,本件意匠の要部を過度に具体化し,細部の形状を要部としてとらえたものであり,妥当でない。
意匠法は,デザイン創作を保護する創作法である以上,意匠の要部を把握するに当たっては,デザイン創作としての本質がどこに存するかとの視点が必要である。本件意匠は,樹脂で成形された靴底であるにもかかわらず,まるで革素材の部材を重ね合わせたかのように見せるとのデザインコンセプトに基づいてデザインされた意匠であり,かかるデザインコンセプトを具現化するために,なだらかに形成されたA層の上部に,中央が膨出したふくらみを持った形状のB層を重ね,さらにその上にB層よりも外側に膨出するC層を重ね合わせた形態が採用されている。
(2)意匠の類否について
本件意匠と被告意匠との差異は,膨出したC層がなだらかな曲面を構成しているか(本件意匠)
,やや尖った略角部を有するか(被告意匠)との点のみ
である。しかし,かかる差異を殊更に強調し,視覚的連続性を欠くなどと評価することは妥当でない。むしろ,被告意匠においても,B層とC層は強い視覚上の一体性を有している。
第3当裁判所の判断
1当裁判所も,原判決と同様,被告意匠は,本件意匠と類似性がなく,控訴人の請求は理由がないと判断する。その理由は,次のとおり付加,訂正するほかは,原判決「事実及び理由」中の第3の1(原判決16頁9行目から23頁21行目まで)に記載のとおりであるから,これを引用する。
(1)

原判決16頁11行目の「甲1,甲2」を「甲1~3」に改める。
(2)

原判決16頁16行目の「AないしC層」を「下からAないしC層」に,
17行目の「B層,C層」を「下からB層,C層」にそれぞれ改める。(3)

原判決17頁7行目の「連続し」の次に「
(重なる層の端部と端部とが接

する。以下同じ。」を加える。

(4)

原判決17頁12行目の「その境目は」を「その境目を」に改める。
(5)

原判決17頁14行目の「直線に近い」を「凹部分が浅く,直線に近い」
に改める。
(6)

原判決18頁26行目の「その境目は」を「その境目を」に改める。
(7)

原判決19頁1,
2行目の
「直線に近い」「凹部分が浅く,

直線に近い」

に改める。
(8)

原判決19頁11行目の「その形状は右側面図から十分は看取し得ず,ま
た」を削り,16行目末尾に改行の上「また,控訴人は,前記②ないし④の要部を分けて論じる必要がないとも主張するが,前記のとおり,本件意匠の要部は,どの側面から見ても,各層の境目が略「く」の字に接合されているところに特徴があるのであり,それらを側面ごとに分けて論じる必要が認められる。控訴人の主張は理由がない。
」を加える。
(9)
(10)

原判決19頁20行目の「被告が特定した」を削る。
原判決23頁10行目の「なお,
」の次に「控訴人は,被告意匠の左側面

図では,C層の膨らみは他の層より大きくなっていると主張するが,控訴人の主張する「C層の膨らみ」とは,当裁判所が認定するC層がB層に対して外側に突出している部分を指すと認められる。しかし,当裁判所が指摘する「膨らみ」とは,丸みを帯びた面からなる「膨らみ」であり,前記イ(ウ)認定のとおり,被告意匠の左側面図において,C層はB層に対して外側に突出しているが,
「膨らみ」
自体はごく僅かであることが認められる。
控訴人の上
記主張は失当である。また,
」を加え,15行目の「また」を削る。
2当審における控訴人の主張について
(1)本件意匠の要部について
控訴人は,本件意匠について,樹脂で成形された靴底であるにもかかわらず,まるで革素材の部材を重ね合わせたかのように見せるとのデザインコンセプトに基づいてデザインされた意匠であり,原判決の認定は,本件意匠の要部を過度に具体化し,細部の形状を要部としてとらえたもので,妥当ではないと主張する。
しかし,
前記1において引用した原判決第3の1(2)のとおり,
同じ素材の
ソールを重ね合わせたかのような形態自体は,公知であり,新規な創作部分とはいえない。むしろ,本件意匠の構成態様によると,A,B,C層の厚さはそれぞれ異なるが,いずれの層も側面が曲面状に膨らんでおり,また,そのため,その接続部の形態は,深さの違いはあるものの,いずれも略「く」の字型をしており,このことから,同じ材質感を有した部材を重ね合わせ,全体としての一体感を保ち,全体に丸みを帯びた柔らかな美感を見る者に与え,需要者の注意を惹くといえる。そして,A,B,C層によって上記の一体感を出すためには,境目と膨出部の形態が上記のとおり統一されていることが必要である。
したがって,本件意匠について,原判決の説示するとおり,正面図,背面図,各側面図において,各層の境目(接合部)の形態が,境目を凹部とした略「く」の字型で,かつ,3層のソールの側面(膨出部)がいずれも膨らむような形状を有することをもって,本件意匠の要部と認定することは相当であり,上記認定をもって,要部を過度に具体化し,細部の形状を要部としてとらえたものであると批判することは相当でない。
(2)意匠の類否について
控訴人は,本件意匠と被告意匠との差異は,膨出したC層がなだらかな曲面を構成しているか
(本件意匠)やや尖った略角部を有するか

(被告意匠)
との点のみであるとした上で,かかる差異を殊更に強調し,視覚的連続性を欠くなどと評価することは妥当でないと主張する。
しかし,
上記(1)のとおり,
本件意匠の要部を考えると,
被告意匠のC層の
膨出部が他の層の膨出部と異なる形態を有するため,異なる存在感を持つことは,本件意匠の要部の重要な特徴点を備えないことになり,被告意匠は本件意匠に類似しないことになる。
そして,被告意匠のC層の膨出部が他の層と異なる存在感を持つことについては,前記1において引用した原判決第3の1(5)に説示したとおりである。
3以上によれば,控訴人の請求をいずれも棄却した原判決は相当であり,本件控訴は理由がないからこれを棄却することとし,主文のとおり判決する。大阪高等裁判所第8民事部

裁判長裁判官

山田陽三
裁判官

髙橋文淸
裁判官

種村好子
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