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要指導医薬品指定差止請求事件
事件番号平成26(行ウ)29
事件名要指導医薬品指定差止請求事件
裁判年月日平成29年7月18日
法廷名東京地方裁判所
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平成29年7月18日判決言渡
平成26年(行ウ)第29号
口頭弁論終結日

同日原本領収

裁判所書記官

要指導医薬品指定差止請求事件

平成29年2月28日
判主1決文
本件訴えのうち,厚生労働大臣が行った別紙2記載の製剤に係る要指導医薬品の指定の取消しを求める部分を却下する。

2
原告のその余の請求を棄却する。

3
訴訟費用は原告の負担とする。

第1
1実及び理由
請求
厚生労働大臣が行った別紙2記載の製剤に係る要指導医薬品の指定処分を取り消す。

2
原告が,別紙2記載の製剤につき,店舗以外の場所にいる者に対する郵便その他の方法によって販売をすることができる権利(地位)を有することを確認する。

第2

事案の概要
本件は,平成25年法律第103号(一部の規定を除き,平成26年6月12
日施行)による改正後の薬事法(この法律の題名は,平成25年法律第84号(平成26年11月25日施行)による改正に伴い「医薬品,医療機器等の品質,有効性及び安全性の確保等に関する法律」と改められた。以下,平成25年法律第103号による改正後の薬事法を,同年法律第84号による改正の前後を通じて「医薬品医療機器等法」という。
)において,店舗販売業者に対し,要指導医
薬品(4条5項4号(平成25年法律第84号による改正後は同項3号))の販
売又は授与を行う場合には薬剤師に対面による情報の提供及び薬学的知見に基づく指導を行わせなければならない(36条の6第1項)ものとし,上記の場合において上記の情報提供又は指導ができないときは要指導医薬品の販売又は授与をしてはならない(同条3項)ものとする各規定(以下「本件各規定」といい,本件各規定による上記の規制を「本件対面販売規制」という。
)が設けられ,平成
26年6月6日厚生労働省告示第255号,平成27年3月13日厚生労働省告示第58号,同年7月27日厚生労働省告示第324号及び平成29年1月13日厚生労働省告示第10号において,別紙2記載の製剤を含む医薬品が要指導医薬品として指定されたこと(以下,別紙2記載の製剤に係る要指導医薬品の指定を「本件各指定」という。なお,これらの告示により要指導医薬品として指定された医薬品のうち,別紙2記載の製剤及び劇薬である製剤以外のものについては,現在までに指定の対象から除かれている。
)について,インターネットを通じて
店舗以外の場所にいる者に対する郵便その他の方法による医薬品の販売(以下「郵便等販売」といい,インターネットを通じた郵便等販売を特に「インターネット販売」という。)を行う事業者である原告が,本件対面販売規制は必要性及び合理性に欠ける規制であって憲法22条1項に違反するなどと主張して,①厚生労働大臣が行った別紙2記載の製剤に係る要指導医薬品の指定(本件各指定)の取消しを求める(上記第1の1。以下「本件取消しの訴え」という。)ととも
に,②要指導医薬品である別紙2記載の製剤につき,本件各規定にかかわらず郵便等販売をすることができる権利ないし地位を有することの確認を求める(上記第1の2。以下「本件確認の訴え」という。
)事案である。
なお,以下,平成18年法律第69号による薬事法の改正を「平成18年改正」
,同改正前の薬事法を「平成18年改正前薬事法」
,同改正後で平成25年
法律第103号による改正前の薬事法を「旧薬事法」といい,医薬品医療機器等法において設けられた要指導医薬品に関する制度全般を「要指導医薬品制度」という。
1
関係法令の定め
医薬品医療機器等法の関係規定は,次のとおりである。
(1)要指導医薬品及び一般用医薬品の意義等

要指導医薬品
要指導医薬品とは,次のaからdまでに掲げる医薬品(専ら動物のために使用されることが目的とされているものを除く。
)のうち,その効
能及び効果において人体に対する作用が著しくないものであって,薬剤師その他の医薬関係者から提供された情報に基づく需要者の選択により使用されることが目的とされているものであり,かつ,その適正な使用のために薬剤師の対面による情報の提供及び薬学的知見に基づく指導が行われることが必要なものとして,厚生労働大臣が薬事・食品衛生審議会の意見を聴いて指定するものをいう(4条5項3号)


その製造販売の承認の申請に際して14条8項に該当するとされた医薬品であって,当該申請に係る承認を受けてから厚生労働省令で定める期間を経過しないもの


その製造販売の承認の申請に際して上記aに掲げる医薬品と有効成分,分量,用法,用量,効能,効果等が同一性を有すると認められた医薬品であって,当該申請に係る承認を受けてから厚生労働省令で定める期間を経過しないもの


44条1項に規定する毒薬(すなわち,毒性が強いものとして厚生労働大臣が薬事・食品衛生審議会の意見を聴いて指定する医薬品)

44条2項に規定する劇薬(すなわち,劇性が強いものとして厚生労働大臣が薬事・食品衛生審議会の意見を聴いて指定する医薬品)上記

aの「厚生労働省令で定める期間」は,①14条の4第1項1
号に規定する新医薬品については,同号に規定する調査期間(同条第2項の規定による延長が行われたときは,その延長後の期間)
,すなわち,
当該新医薬品の再審査のための調査期間(後記2(4)参照)とされ,②79条1項に基づき,製造販売の承認の条件として当該承認を受けた者に対し製造販売後の安全性に関する調査(以下「製造販売後調査」という。
)を実施する義務が課せられている医薬品については,当該承認の条件として付された調査期間(後記2(3)参照)とされている(医薬品,医療機器等の品質,有効性及び安全性の確保等に関する法律施行規則(以下「医薬品医療機器等法施行規則」という。
)7条の2第1項)

上記

bの「厚生労働省令で定める期間」は,上記

bに掲げる医薬

品と有効成分,分量,用法,用量,効能,効果等が同一性を有すると認められた上記

aに掲げる医薬品に係る上記各調査期間の満了日までの

期間とされている(同条2項)


一般用医薬品
一般用医薬品とは,医薬品のうち,その効能及び効果において人体に対する作用が著しくないものであって,薬剤師その他の医薬関係者から提供された情報に基づく需要者の選択により使用されることが目的とされているもの(要指導医薬品を除く。
)をいい(4条5項4号)
,一般用医薬品
は,第一類医薬品(その副作用等により日常生活に支障を来す程度の健康被害が生ずるおそれがある医薬品のうちその使用に関し特に注意が必要なものとして厚生労働大臣が指定するもの及びその製造販売の承認の申請に際して14条8項に該当するとされた医薬品であって当該申請に係る承認を受けてから厚生労働省令で定める期間を経過しないもの。36条の7第1項1号)
,第二類医薬品(その副作用等により日常生活に支障を来す程
度の健康被害が生ずるおそれがある医薬品(第一類医薬品を除く。)であ
って厚生労働大臣が指定するもの。同項2号)及びそれ以外の第三類医薬品(同項3号)に区分される。

(2)医薬品の販売業の許可制
薬局開設者(1条の4に規定する薬局開設者,すなわち,4条1項所定の薬局の開設の許可を受けた者をいう。以下同じ。
)又は医薬品の販売業の許
可を受けた者でなければ,業として,医薬品を販売し,授与し,又は販売若しくは授与の目的で貯蔵し,若しくは陳列(配置することを含む。)しては
ならない(24条1項本文)

医薬品の販売業は,店舗販売業,配置販売業及び卸売販売業に区分されるところ(25条)
,店舗販売業とは,要指導医薬品又は一般用医薬品を,店
舗において販売し,又は授与する業務をいう(同条1号)

なお,以下,薬局開設者と店舗販売業者(26条2項5号に規定する店舗販売業者,すなわち,店舗販売業の許可を受けた者をいう。以下同じ。)を
併せて「薬局開設者等」という。
(3)要指導医薬品の販売に関する規制

店舗販売業者は,厚生労働省令で定めるところにより,要指導医薬品につき,薬剤師に販売させ,又は授与させなければならない(36条の5第1項)

また,店舗販売業者は,要指導医薬品を使用しようとする者以外の者に対して,正当な理由なく,要指導医薬品を販売し,又は授与してはならない。ただし,薬剤師,薬局開設者,医薬品の製造販売業者,製造業者若しくは販売業者,医師,歯科医師若しくは獣医師又は病院,診療所若しくは飼育動物診療施設の開設者(以下「薬剤師等」という。
)に販売し,又は
授与するときは,この限りでない(同条2項)

そして,店舗販売業者は,①要指導医薬品の適正な使用のため,要指導医薬品を販売し,又は授与する場合には,厚生労働省令で定めるところにより,その店舗において医薬品の販売又は授与に従事する薬剤師に,対面により,所定の事項を記載した書面を用いて必要な情報を提供させ,及び必要な薬学的知見に基づく指導を行わせなければならず(36条の6第1項本文)
,②同項の規定による情報の提供及び指導を行わせるに当たっては,当該薬剤師に,あらかじめ,要指導医薬品を使用しようとする者の年齢,他の薬剤又は医薬品の使用の状況その他の厚生労働省令で定める事項を確認させなければならず(同条2項)
,③同条1項本文に規定する場合
において,同項の規定による情報の提供又は指導ができないとき,その他要指導医薬品の適正な使用を確保することができないと認められるときは,要指導医薬品を販売し,又は授与してはならず(同条3項)
,④要指導医
薬品の適正な使用のため,その店舗において要指導医薬品を購入し,若しくは譲り受けようとする者又はその店舗において要指導医薬品を購入し,若しくは譲り受けた者若しくはこれらの者によって購入され,若しくは譲り受けられた要指導医薬品を使用する者から相談があった場合には,厚生労働省令で定めるところにより,その店舗において医薬品の販売又は授与に従事する薬剤師に,必要な情報を提供させ,又は必要な薬学的知見に基づく指導を行わせなければならない(同条4項)
。ただし,要指導医薬品
を薬剤師等に販売し,又は授与するときは,同条1項本文による情報の提供及び指導を行わせることを要しない(同条1項ただし書)

なお,以上の規制は,薬局開設者が要指導医薬品を販売し,又は授与する場合においても同様である。

上記アの規制に対し,店舗販売業者が一般用医薬品を販売し,又は授与する場合には,①第一類医薬品の販売又は授与については,薬剤師に所定の事項を記載した書面を用いて必要な情報を提供させなければならず(36条の10第1項本文)
,同項の規定による情報の提供を行わせるに当た
っては,当該薬剤師に,あらかじめ,第一類医薬品を使用しようとする者の年齢,他の薬剤又は医薬品の使用の状況その他の厚生労働省令で定める事項を確認させなければならないとされ(同条2項)
,②第二類医薬品の
販売又は授与については,薬剤師又は登録販売者に必要な情報を提供させるよう努めなければならないとされている(同条3項本文)ものの,これらの情報の提供を「対面により」行わせるよう義務付ける旨の規定はなく,店舗販売業者が郵便等販売によって一般用医薬品の販売又は授与を行うことは禁止されていない。
また,一般用医薬品の販売又は授与の相手方を限定する旨の規定はなく,店舗販売業者が一般用医薬品を使用しようとする者以外の者に対して一般用医薬品を販売し,又は授与することは禁止されていない。
なお,以上の点は,薬局開設者が一般用医薬品を販売し,又は授与する場合においても同様である。
2
用語の意義
次に掲げる用語は,それぞれ,次に示すとおりの意義で用いるものとする。(1)医療用医薬品
医療用医薬品とは,医師若しくは歯科医師(以下「医師等」という。)に
よって使用され又はこれらの者の処方箋若しくは指示によって使用されることを目的として供給される医薬品をいう(乙16)

なお,医療用医薬品は,処方箋医薬品(医薬品,医療機器等の品質,有効性及び安全性の確保等に関する法律第49条第1項の規定に基づき厚生労働大臣の指定する医薬品(平成17年2月10日厚生労働省告示第24号)に掲げる医薬品をいう。
)を含み,医薬品医療機器等法4条5項2号の薬局医
薬品は,医療用医薬品を含む。
(2)OTC薬
OTC薬とは,医師等の診断によらず,需要者自身の選択によって使用されることを目的として供給される医薬品をいう。本邦において販売されるOTC薬は,一般用医薬品としての製造販売の承認を与えられた医薬品であり,一般用医薬品及び要指導医薬品がこれに当たる。
(なお,
「OTC」
(オーバ
ー・ザ・カウンター)の語は,販売側のみが医薬品を手に取ることができる方法で陳列を行う意味で用いられることがあるが,本判決ではそのような限定はしないで用いるものとする。

(3)スイッチOTC
スイッチOTCとは,一般用医薬品としての製造販売の承認を与えられた医薬品(OTC薬)のうち,その承認の前に医療用医薬品として製造販売されていたものをいう。より具体的には,医薬品医療機器等法14条8項に該当するとされた医薬品のうち,その効能及び効果において人体に対する作用が著しくないものであって,既に医療用医薬品として使用することを前提に製造販売の承認を与えられている医薬品を転用(スイッチ)し,新たに薬剤師その他の医薬関係者から提供された情報に基づく需要者の選択により使用されることが目的とされているものとして製造販売の承認を与えられたものをいう。
なお,スイッチOTCについては,原則として,その一般用医薬品としての製造販売の承認の際,同法79条1項に基づき,承認の条件として製造販売後調査の実施を課す取扱いがされている。その製造販売後調査の期間は,原則として3年間である。
(甲11,乙30の1及び2,31,弁論の全趣
旨)
(4)ダイレクトOTC
ダイレクトOTCとは,一般用医薬品としての製造販売の承認を与えられた医薬品(OTC薬)のうち,その承認の前に医療用医薬品として製造販売されたことがないものをいう。より具体的には,医薬品医療機器等法14条8項に該当するとされた医薬品のうち,その効能及び効果において人体に対する作用が著しくないものであって,これまで医療用医薬品として使用することを前提としても製造販売の承認を与えられていない医薬品について,新たに薬剤師その他の医薬関係者から提供された情報に基づく需要者の選択により使用されることが目的とされているものとして製造販売の承認を与えられたものをいう。
なお,ダイレクトOTCについては,原則として,同法14条の4第1項1号に規定する新医薬品として再審査の対象とする取扱いがされている。その再審査のための調査期間として指定される期間は,①新有効成分医薬品(既に製造販売の承認を与えられている医薬品(以下「既承認医薬品」という。
)と有効成分が異なる医薬品)につき通常8年間,②新投与経路医薬品(既承認医薬品と有効成分は同一であるが,投与経路が異なる医薬品)につき通常6年間,③新効能医薬品(既承認医薬品と有効成分及び投与経路は同一であるが,効能・効果が異なる医薬品)又は新用量医薬品(既承認医薬品と有効成分及び投与経路は同一であるが,用量が異なる医薬品)につき通常4年間である。
(甲11,乙29,31,弁論の全趣旨)
(5)スイッチ直後品目
スイッチ直後品目とは,スイッチOTCのうち,医薬品医療機器等法79条1項に基づき,製造販売の承認の条件として製造販売後調査を実施する義務が課せられている医薬品であって,その調査期間が経過していないものをいう。
(6)ダイレクト直後品目
ダイレクト直後品目とは,ダイレクトOTCのうち,医薬品医療機器等法14条の4第1項1号に規定する新医薬品として再審査の対象とされている医薬品であって,その再審査のための調査期間が経過していないものをいう。なお,以下,スイッチ直後品目とダイレクト直後品目を併せて「スイッチ直後品目等」という。
3
前提事実(争いのない事実又は証拠等により容易に認められる事実)(1)原告
原告は,医薬品を含む各種物品の販売及び輸出入,通信販売業等を目的とする株式会社であり,要指導医薬品又は一般用医薬品を店舗において販売し,又は授与する業務について医薬品医療機器等法26条1項による許可を受けた店舗販売業者であって,平成25年法律第103号が一部の規定を除き施行された平成26年6月12日より前から医薬品のインターネット販売を行っている事業者である。
(争いのない事実,弁論の全趣旨)
(2)旧薬事法下における第一類医薬品及び第二類医薬品に関する規制平成18年改正後の薬事法(旧薬事法)の施行に伴って平成21年厚生労働省令第10号(一部の規定を除き,平成21年6月1日施行)により改正された薬事法施行規則(以下,同改正後で平成26年厚生労働省令第8号(平成26年6月12日施行)による改正前の薬事法施行規則を「平成21年改正後施行規則」という。なお,同施行規則の題名は当時のものであり,その題名は,平成26年厚生労働省令第87号(平成26年11月25日施行)による改正に伴い「医薬品,医療機器等の品質,有効性及び安全性の確保等に関する法律施行規則」と改められた。
)において,店舗販売業者に対
し,一般用医薬品のうち第一類医薬品及び第二類医薬品について,①当該店舗において対面で販売させ又は授与させなければならない(159条の14第1項,2項本文)ものとし,②当該店舗内の情報提供を行う場所において情報の提供を対面により行わせなければならない(159条の15第1項1号,159条の17第1号,2号)ものとし,③郵便等販売をしてはならない(142条,15条の4第1項1号)ものとする各規定が設けられた。(3)最高裁平成25年1月11日判決
最高裁判所は,平成25年1月11日,上記(2)の各規定が,旧薬事法下の一般用医薬品のうち第一類医薬品及び第二類医薬品に係る郵便等販売を一律に禁止することとなる限度において,旧薬事法の委任の範囲を逸脱した違法なものとして無効である旨判示する判決をした(最高裁平成24年(行ヒ)第279号同25年1月11日第二小法廷判決・民集67巻1号1頁(以下「最高裁平成25年1月11日判決」という。)
)。
(4)本件対面販売規制に係る法改正
内閣は,平成25年11月12日,本件各規定の新設を含む医薬品の販売規制の見直し等を内容とする「薬事法及び薬剤師法の一部を改正する法律案」を第185回国会に提出したところ(以下,この法案を「旧薬事法改正法案」という。,同法案は衆参両院で可決されて同年12月5日に成立し,)
同月13日,平成25年法律第103号として公布された。同法律は,一部の規定を除き,平成26年6月12日に施行された。
(乙9,10,12)
(5)本件各指定
厚生労働大臣は,平成26年6月6日厚生労働省告示第255号(甲22)により,医薬品医療機器等法4条5項4号(平成25年法律第84号による改正後は同項3号)の規定に基づき同大臣が定める要指導医薬品は別紙3記載1のとおりである旨を定め,平成27年3月13日厚生労働省告示第58号(乙40)により,同大臣が定める要指導医薬品に別紙3記載2の製剤を加え,同年7月27日厚生労働省告示第324号(乙41)により,同大臣が定める要指導医薬品に別紙3記載3の製剤を加え,平成29年1月13日厚生労働省告示第10号(乙73)により,同大臣が定める要指導医薬品に別紙3記載4の製剤を加えた。
これらの告示により要指導医薬品として指定された医薬品のうち,別紙2記載の製剤及び劇薬である製剤以外のものについては,現在までにその指定の対象から除かれている。
(以上につき,甲22,乙2,15,34,35,
40ないし44,72ないし74)
第3

争点
本件の争点は,次のとおりである。

1
争点1
本件取消しの訴えの適法性。具体的には,本件各指定が抗告訴訟の対象となる行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為(行政事件訴訟法3条2項。以下「行政処分」という。
)に当たるか。
(本案前の争点)

2
争点2
本件対面販売規制の憲法22条1項適合性(本案の争点)
3
争点3
本件各指定が,その指定の要件を欠き違法か。
(本案の争点)

第4
1
争点についての当事者の主張
争点1(本件取消しの訴えの適法性)について
(原告の主張の要旨)
要指導医薬品の指定は,特定の個人に向けられたものではなく,不特定多数の者を対象とする点では一般的な行為であるが,特定個人の権利義務を形成し又はその範囲を具体的に確定する行為である以上は,抗告訴訟の対象となる処分性が認められる。本件では,本件各指定により,原告は従前から一般用医薬品として販売してきた医薬品を販売する権利を直接かつ具体的に制限され,これにやむなく従った場合にはその後に個別の処分が予定されていないことから,本件各指定が抗告訴訟の対象となる行政処分に該当することは明らかである。被告は,要指導医薬品の指定が将来の薬局開設者等を含めた不特定多数の者を対象として一般的に適用されるものであることを行政処分該当性を否定する理由として挙げているが,不特定多数の者を対象として一般的に適用される行為であるというだけでは行政処分該当性を否定されるものではなく,このことは,市道の廃止(福岡高裁那覇支部平成2年5月29日判決)
,二項道路の指
定(最高裁平成14年1月17日第一小法廷判決・民集56巻1号1頁),保
安林の指定解除(最高裁昭和57年9月9日第一小法廷判決・民集36巻9号1679頁)
,医療費値上げの職権告示(東京地裁昭和40年4月22日決
定)及び米穀の政府買入価格の告示(東京高裁昭和50年12月23日判決)についてそれぞれ行政処分該当性が認められていることから明らかである。(被告の主張の要旨)
要指導医薬品の指定は,要指導医薬品を定義する医薬品医療機器等法4条5項3号(平成25年法律第84号による改正前は同項4号。以下同じ。)の規
定自体の内容を補完し,もって要指導医薬品の販売等に対する規制が及ぶこととなる範囲を定めるものといえる。したがって,要指導医薬品の指定は,当該指定時の薬局開設者等のみならず,将来の薬局開設者等を含めた不特定多数の者を対象として一般的に適用されるものであるから,実質的には同法の委任に基づいて行われる法規範の定立行為たる性質を有するものというべきであり,要指導医薬品の指定をもって法令の規定に基づきその執行行為として行われる行政庁の処分と実質的に同視することはできない。要指導医薬品の指定は,抗告訴訟の対象となる行政処分とは性質を異にするというべきである(最高裁平成18年7月14日第二小法廷判決・民集60巻6号2369頁参照)。
また,実効的な権利救済という観点からしても,要指導医薬品の指定が違憲又は違法というのであれば,その指定は当然に無効とされるべきであり,その場合,その無効を前提とした地位確認請求訴訟を提起することによって権利救済が図られ得る。そうすると,あえて指定自体について抗告訴訟を提起して争う手段を認めなければならない理由もない(最高裁平成21年11月26日第一小法廷判決・民集63巻9号2124頁参照)

したがって,本件各指定は,抗告訴訟の対象となる行政処分には当たらない。2
争点2(本件対面販売規制の憲法22条1項適合性)について
(原告の主張の要旨)
(1)本件対面販売規制の憲法適合性に関する判断の在り方

厳格な合理性の基準を適用すべきこと
最高裁昭和43年(行ツ)第120号同50年4月30日大法廷判決・民集29巻4号572頁(以下「最高裁昭和50年4月30日判決」という。
)等の判例によれば,職業の自由を制約する立法は,①それが職業選択の自由そのものを制約するような「強力な制限」で,かつ,②「消極目的」に出たものであれば,立法府に認められる合理的裁量の範囲は狭くなり,裁判所は当該制約立法を比較的厳格に審査することになる。①上述のような「強力な制限」についてその合憲性を肯定しうるためには,「重要
な公共の利益のために必要かつ合理的な措置であることを要し」
,②また,
それが「消極目的」に出たものであれば,当該規制よりも緩やかな規制によっては規制の目的を十分に達成することができないと認められることを要する(いわゆる厳格な合理性の基準)とするのが,判例の考え方である。そして,上記判決は,上記①の必要性判断に関して,制約立法が「職業の自由に対する大きな制約」になっている場合には,それが憲法上是認されるために,
「単に…国民の保健上の必要性がないとはいえないというだ
けでは足りず,このような制限を施さなければ右措置による職業の自由の制約と均衡を失しない程度において国民の保健に対する危険を生じさせるおそれのあることが,合理的に認められることを必要とする」と述べており,職業の自由に対する制約が大きければ大きいほど,その正当化のために,観念上の想定でなく,実証的な根拠(立法事実)が必要である,ということを示している。
医薬品の販売等に関する規制は消極目的規制であり,
「郵便等販売に対
する新たな規制は,郵便等販売をその事業の柱としてきた者の職業活動の自由を相当程度制約するものである」
(最高裁平成25年1月11日判
決)から,インターネット販売を禁止するという手段で営業の自由を制限するには,単なる観念上の想定では足りず,合理的な根拠を要し,代替的手段でも対応できるかどうかを吟味しなければならない(厳格な合理性の基準)

したがって,本件対面販売規制(要指導医薬品のインターネット販売の禁止)が合憲であるというためには,実証的な調査により,それ固有の副作用が有意的に発生すると予想されることが不可欠であり,また,対面販売でなければその防止ができないという事情が必要である。

権利の制約の程度について
本件対面販売規制によってインターネット販売を行う事業者が受ける権利の制約の程度は,薬局の開設に係る距離制限規制による制約と比較しても,相対的に小さいとはいえない。なぜなら,距離制限規制の場合には,場所を変えれば,同一の職業を選択できるのであり,販売場所という販売の方法・態様の制約といい得る水準の規制であるのに対し,本件対面販売規制は,インターネット販売を行う事業者に「要指導医薬品」の販売の一般的な禁止を課すものであり,その禁止は許可によって解除されることがない上,インターネット販売を行う事業者の基本的なビジネスモデルを禁止するものであって,インターネットという形態による事業が一般化している今日,職業選択の自由を剥奪するに近い規制であり,単なる職業活動の態様の規制に貶められるべきではないからである。
ネット社会の今日,インターネット販売はそれ自体一つの職業であるから,インターネット販売の禁止は開業の自由の制限に等しいといえるところ,被告の主張するように要指導医薬品が品目数や市場規模において小さなものであるとしても,実質的に開業の自由を制限するものであれば,その規制は狭義における職業選択の自由を制限するものというべきである。(2)立法事実(必要性及び合理性)が存しないこと

自己決定権の範囲であること
医薬品の販売に当たって,対面販売であっても現実に丁寧な説明が行われるとは限らず,面前で説明を受ける方が理解できる者もいる一方,わざわざ薬局・店舗に行くのは煩わしく,インターネットでも薬剤師が掲載した丁寧な説明をじっくり読み,気になるなら薬剤師に対して電話やメールで相談をして,対面以上の情報を獲得できる者も少なくない。そうすると,対面販売とインターネット販売における情報提供を比較した場合,前者に有利な有意な差があるかどうかはきわめて疑わしい。また,インターネット販売には,詳細な情報を得られることに加え,種々のサイトを検索して比較し,一旦情報を保存して熟考してから購入できる点において,一たび店舗に出向いた以上,再度出直したり他の店舗を訪問するよりはその場で購入決断をせざるを得なくなるのが一般的な対面販売よりも優れている面がある。そして,心理学者の研究(甲12)でも,対面とインターネットで,情報の伝達に特段の差はないとされている。したがって,対面とインターネットのいずれで購入するかは,購入者の自己決定権による選択に任せ,万一のことがあっても,事後の医療機関による治療に任せるべきものである。
なお,インターネット販売自体を禁止するには,それに値するだけのそれ固有の有害性があることが不可欠であるから,対面販売とインターネット販売のいずれが優れているかという対比論に深入りすることは適切でなく,実際にインターネット販売に起因する副作用が有意にあるのか,実証的に判断すべきである。

インターネット販売の規制を根拠付けるほどのリスクの不存在
スイッチ直後品目等の検討・検証に関する専門家会合(以下「スイッチ直後品目検討会合」という。
)が平成25年10月8日付けで議論を取り
まとめて公表した「スイッチ直後品目等の特性及び販売時の留意点について」と題する報告書(甲10。以下「スイッチ直後品目検討会合報告書」という。
)は,スイッチ直後品目につき,①使用者の変化,適用から外れた状態での使用,②連用や本来受診すべき状態の放置,③多量や頻回の使用,乱用,④服用中の他の医薬品や健康食品等との相互作用及び⑤副作用の兆候の見逃しという原因により,新たな健康被害・有害事象が発現するおそれがあり,また,そのリスクも不明な状況であり,必要なリスク低減方策も採られていないとするが,次のとおり,これらの原因を検証しても対面販売が有利であるとはいえず,インターネット販売に対する規制を根拠付けるほどのリスクが存在しているとはいえない。
すなわち,①のうち「使用者の変化」は,使用者自身も分かることであって,使用者は気が付かず,対面する薬剤師なら気が付く場合はまれであり,そのようなまれな場合を想定して薬局・店舗での購入を強いるのは,無用な負担を購入者に課すものである。①のうち「適用から外れた状態での使用」は,インターネットでも購入者がその医薬品の適用や説明を読めば防げることであるし,薬剤師が購入者に対し,電話やメール等で注意喚起することもできる。②「連用や本来受診すべき状態の放置」は使用者の自己責任であり,薬剤師が使用者に受診すべきと指導する場合があるとしても,それは販売手段にかかわらず薬剤師が行うことができる。③「多量や頻回の使用,乱用」は,自己責任であるし,薬局・店舗で購入しても,複数の薬局・店舗を回れば大量に買えるので,乱用は可能である上,インターネットにおいては,購入歴を記録して大量購入を防止することができる。④「服用中の他の医薬品や健康食品等との相互作用」はインターネットでも確認できる。⑤「副作用の兆候の見逃し」は,購入して服用後に副作用の兆候があるかどうかは服用者以外には分からないものであり,薬局・店舗でも販売段階では分からないので,対面販売が有利とはいえない。ウ
事後検証の可能性ではインターネット販売が格段に勝ること
未だ不明確な副作用に関する注意喚起や事後フォロー,使用者別の副作用発生状況の調査に関しては,誰に販売したかの記録が残り,購入者のメールアドレスや住所等の情報を有するインターネット販売に圧倒的な優位性が認められる。このことは,新たな健康被害・有害事象が発現するおそれがあり,そのリスクも不明な状況であり,必要なリスク低減方策も採られていない,という特質を有するとされる要指導医薬品の販売については,インターネット販売に圧倒的な優位性が認められることを意味する。

副作用情報収集の不備・懈怠
憲法の要請に応えるためには,副作用リスクを実証的に明らかにしなければならない。この点,一般用医薬品のインターネット販売等の新たなルールに関する検討会(以下「新ルール検討会」という。
)が平成25年6
月付けで公表した「これまでの議論の取りまとめ」と題する報告書(甲3。以下「新ルール検討会報告書」という。
)5頁によれば,一般用医薬品に
係る副作用は年間250症例前後あり,死亡症例の報告も,平成19年から平成23年度の5年間で24例があるとされ,この期間内にインターネット販売に起因して副作用が生じた例はないが,それはこの期間中第一類医薬品のインターネット販売が禁止されていたからであるとの意見が紹介されている。しかし,それ以前の時期においては第一類医薬品のネット販売は禁止されていなかったところ,インターネット販売が長らく認められてきた時期においても,一般用医薬品においてインターネット販売に起因した副作用事例は明らかにされていない。また,原告は,最高裁平成25年1月11日判決で勝訴した同日以降,一般用医薬品の販売を再開してきたが,スイッチ直後品目について副作用が有意的に発生したという状況はない(甲13)


薬剤師の「五感」による判断の非実証性
厚生労働省は,スイッチ直後品目のリスクについて実証的な裏付けを示さないまま,スイッチ直後品目検討会合の会合後に座長が出したという「我々としては,スイッチ直後品目と劇薬については,薬剤師と患者さんとが直接顔を合わせて,よく話し合い,薬剤師が患者さんの状態を五感を用いて判断し,販売する必要があると思っている。
」とのメッセージ(以
下「座長メッセージ」という。
)を持ち出し,薬剤師が五感を用いて行う
情報提供等の必要性を,本件対面販売規制の根拠として挙げている。しかし,この座長メッセージは,同省医薬食品局長(以下,単に「医薬食品局長」ともいう。
)が,第2回産業競争力会議医療・介護等分科会(平成2
5年10月29日開催)において突然その存在に言及したものにすぎず,スイッチ直後品目検討会合においては言及のない表現であり,その存在や信用性すら認められないものである(甲14)
。また,
「五感」とは,視
覚(見る)
,聴覚(聞く)
,触覚(触る)
,嗅覚(嗅ぐ)及び味覚(味わ
う)をいうところ,座長メッセージは,科学的検討を踏まえたものではなく,コミュニケーションに関する素人である座長の単なる独断にすぎない。そして,五感を根拠としてインターネット販売を規制するのであれば,その必要性や合理性に関し科学的合理的な根拠が必要であるところ,そもそも,薬剤師という資格は,その資格要件や訓練において五感を用いて他人の病状や心理を読み取る能力を有する者を前提としていないから,薬剤師が行う対面販売の優位性が制度的に一般的に保障されているものでは全くない上,五感による判断は,いわば「診断」行為であり,医師の業務であって,薬剤師の業務ではない。加えて,薬剤師がいかに五感をもって販売しても,未知の副作用の発生を防ぐことはできない。
したがって,薬剤師が五感を用いて販売することは,本件対面販売規制の必要性及び合理性を基礎付けるものではない。
なお,現行の薬剤師国家試験において,患者の症状を視覚,嗅覚,触覚等の五感を用いて判断する能力を問う科目は存在せず,その能力を問う試験は出題されていない上,かかる能力が身に付くまでは薬剤師として医薬品を販売してはいけないという制度設計にもなっていない(甲72)以上,薬剤師の中にたまたまある症状を目視,嗅覚等で判断できる者が存在するからといって,一般的に薬剤師に五感によって病状を判断する能力が備わっているという制度的な担保は何ら存在せず,対面販売では薬剤師が適切な判断ができるという議論はその前提自体が認められない。

政府の述べる規制目的が販売方法を問わず達成できないこと
政府(厚生労働省)は,本件対面販売規制の規制目的につき,
「一般用
医薬品としてのリスクが未だ不明確であるので販売を規制する必要がある」と説明しているところ,このような規制目的を仮に肯定したとしても,それは,対面販売かインターネット販売かという販売方法のいかんを問わず,防ぐことのできる性質のリスクではない。未知の副作用や副作用の低減策が不明な事柄については,薬剤師に知見がない以上,情報提供及び指導のしようがなく,対面であってもインターネットであっても,また,薬剤師がどれだけ情報提供及び指導をしても,
「新たに明らかになる健康被
害・有害事象」を薬剤師が予見することは不可能である。
仮に,従来の他の一般用医薬品とスイッチ直後品目とを区別する実益があるとすれば,それは,購入者に対して,①この医薬品はスイッチ直後品目であり,新たに明らかになる健康被害・有害事象が存在する可能性があることを事前に告知すること,及び②異変が生じた場合は直ちに相談や連絡をするように告知することができるにとどまるというべきである。そして,上記①については,薬剤師が使用者の状態を確認し,その状態に応じて情報提供を行うことは,インターネットでも可能である上,それを踏まえていわば使用者の自己決定権に委ねることを意味し,上記②については,インターネットでも当然ながら告知可能である(この点においては,上記ウのとおり,インターネットの方が明らかに有利である。。

したがって,政府(厚生労働省)の説明する上記規制目的は,販売時の情報提供によって防ぎ得るリスクではなく,事後的なフォローにおいては誰に対して販売したかの記録が残るインターネット販売の方が対面販売に比して優位性が認められるから,本件対面販売規制に何らの合理性も認められないことが明白である。

医薬品医療機器等法36条の5第2項について
医薬品医療機器等法36条の5第2項により,薬局開設者等は,正当な理由がない限り,要指導医薬品を使用しようとする者以外の者に対して要指導医薬品を販売してはならないところ,かかる規定は,それのみでは直ちに違憲であるとはいえない。しかし,これが本件対面販売規制と結び付いたときには,体調の悪い病人本人が薬局等に出向くことを義務付ける制度となるところ,それなら,医療用医薬品として,医師の診察を受けさせ,医師の処方に基づき調剤させる方が適切である。医療用医薬品から転用(スイッチ)しながら,一般用医薬品とは異なる要指導医薬品という範疇を創設して,病人に薬局等に出向かせるという制度は,かえって病状を悪化させるから,医薬品に関する制度としておよそ合理性はなく,この点は,本件対面販売規制が違憲であることの理由を補強するものである。ク
諸外国の例について
主要先進国等の大半でスイッチ直後品目等を含むOTC薬のインターネット販売が認められている。
具体的には,スイッチ直後品目検討会合の第6回検討資料に記載された国としては,イギリス,ドイツ,フランス,アメリカ,イタリア,ポルトガル,オーストラリア及びニュージーランドがあり,他に,上記資料に記載がない国としては,カナダ,スウェーデン,アイスランド,ベルギー,ブルガリア,ハンガリー,エストニア,スペイン,オランダ,ノルウェー及びデンマーク等がある。
このように,スイッチ直後品目等を含むOTC薬のインターネット販売が認められることが,世界の趨勢であることからすれば,本件対面販売規制の立法事実が不存在であることは明らかというべきである。
被告は,医薬品のインターネット販売を禁止している国として,ロシア,韓国,トルコ,タイを挙げるが,先進国等の中では少数派であり,被告の主張を正当化し得る規制例ではない。

(3)より制限的でない規制手段が存在すること
仮に,インターネット販売において購入者が薬剤師による情報提供等を読み飛ばすという懸念があるならば,①回答形式を変える(一問一答方式にする,理解度テストを義務付ける)
,②薬剤師による電話,チャット,テレビ
電話等での確認とその記録を義務付ける,③購入後に複数回にわたり状況をフォローするなどの販売態様の規制を行うこと等により防ぐことが可能であり,通りすがりの者が購入できる対面販売よりもはるかに実効的かつ記憶・記録に残る情報提供等が可能である。また,対面販売では薬剤師の五感等だけに頼るので,かえって情報提供の方法にばらつきが生ずるのに対し,インターネット販売では,各医薬品の特性等に応じて作成された質問事項に対してなされた購入者の回答を踏まえ,薬剤師がチャットを通じてさらにコミュニケーションを取り,その内容を踏まえて販売の是非を判断するので,より高品質の情報提供をすることができる。
このように,より制限的でない代替的規制手段が存することが明らかである。
(4)被告の主張に対する反論

リスクが不明でその低減方法が不明な医薬品は要指導医薬品たり得ないこと
要指導医薬品及び一般用医薬品は,いずれも,
「医薬品のうち,その効
能及び効果において人体に対する作用が著しくないものであって,薬剤師その他の医薬関係者から提供された情報に基づく需要者の選択により使用されることが目的とされているもの」との要件を満たすものであり,この要件は,旧薬事法の下における一般用医薬品の定義と同一であるところ,従来,スイッチOTC及びダイレクトOTCは,上記要件に該当する一般用医薬品として扱われ,特段の問題もなく販売されてきたものであり,これまでは「人体に対する作用が著しくないもの」という程度のリスクしかないとされてきた医薬品群が,リスク不明で必要なリスク低減方策も採られていないものを含んでいるという被告の主張は,法制度上明らかに根拠を欠き,文理を無視するものである。一般用医薬品としてのリスクが不明な状況にあって必要なリスク低減方策も採られていない医薬品なるものは,要指導医薬品の定義に照らし,そもそも要指導医薬品には指定されないはずである。

一般用医薬品の重篤な副作用はインターネット販売を規制する理由とならないこと
一般用医薬品により重大な副作用が発生することは事実であるが,アナフィラキシーショックやスティーブンス・ジョンソン症候群などは,医薬品を供給する以上,必然的に一定割合で発生する事象(ハザード)であって,販売過程の情報提供によって防げるものではない。
被告が提出した「一般用医薬品によるものと疑われる副作用報告件数」と題する書面(乙5)を見ても,対面販売なら防げるが,インターネット販売では防ぎにくいことは何ら説明されておらず,同書面記載の副作用症例自体,平成21年改正後施行規則の下において対面販売によって生じたものが大半である可能性が高いにもかかわらず,副作用症例が存在するから対面販売は許し,インターネット販売は禁止するという論理に全く合理性はない。
「その効能及び効果において人体に対する作用が著しくないもの」であるはずの要指導医薬品について,そのリスクが不明であり,それを対面で販売した場合にはリスクが顕在化しないが,インターネットで販売した場合には不明であったリスクが顕在化するという想定は,単なる観念上の想定にすぎず,本件対面販売規制の必要性及び合理性を基礎付けるものとはいえない。
また,仮に,要指導医薬品のインターネット販売において何らかのリスクが顕在化するおそれがあるとしてみたところで,情報提供方法の監督体制の強化等により十分対処は可能である。


被告の主張する要指導医薬品制度の必要性について
一般用医薬品の不適正使用による副作用例として被告が指摘し,
「情
報提供による副作用の防止等について」と題する書面(乙18)に挙げられていることの多くは,故意の不適正使用であるから,薬局等において対面で販売しても防ぐことが困難であることに変わりはない。これらの副作用例は,販売の際における対面による専門家関与の必要性を根拠付けるものではなく,少なくとも,薬剤師が関与して行うインターネット販売を禁止する理由には全くならないというべきである。
被告は,要指導医薬品につき,医療用医薬品に準じた最大限の情報収集と,その時点で判明している当該医薬品に関する情報を前提とした個々人の状態を踏まえた最適な情報提供を可能とする体制を確保し,丁寧かつ慎重な販売を行うことが必要である旨主張するが,使用者の症状,副作用の兆候などの使用者の状態,服用している医薬品や健康食品などの使用環境の的確な把握,当該医薬品の特性や使用方法,個々の使用者の状態に応じた注意事項の伝達・指導,受診勧奨,他の医薬品への変更勧奨,薬剤師の直接判断,購入者の理解の確認を行うことは,インターネット販売でも対応可能である(甲40,41)

被告の指摘する専門家の調査(乙19)は,薬局で対面販売を行っている薬剤師へのアンケートであるから,当然,自分たちの雇用,収入等の確保の観点からバイアスがかかるもので,信用できない。
インターネット販売では分からず,店頭での対面販売では分かることがまれにあると仮定しても,それだけでインターネット販売を禁止する理由はない。もともと,要指導医薬品は,
「その効能及び効果において
人体に対する作用が著しくないもの」であるから,抽象的,観念的リスクをもってこれを禁止する合理的理由はないというべきである。
日本薬剤師会作成に係る「対面による販売の利点」と題する書面(乙20)は,①患部の状態の確認,②患者のにおいの確認,③患者の動作,挙動の確認及び④医療機関への紹介を対面による販売の利点として挙げている。しかし,①患部の状態の確認は,インターネット販売でも,テレビ電話を通じた患部の映像や,メールに添付された患部の写真によって確認可能である。②患者のにおいの確認は,確かにテレビ電話ではできないが,一般用医薬品を販売するに当たって実際に口臭や患部のにおいを確認することは現実にはほとんどない。③患者の動作や挙動の確認をすることについて,上記書面は,この確認により乱用の有無を判断推察することができるとするが,患者の動作や挙動を確認することと,販売実績が短くリスクが不明の医薬品を販売することがどのように結び付くのかは不明である上,インターネット販売においては,乱用のおそれがある医薬品については,一度に購入できる数を制限することはもちろん,複数回に分けて購入したり一定期間内に頻繁に購入したりするケースであっても,システムで該当の注文を自動抽出することができるため,発送を中止した上で,専門家が購入者に対して異常を確認することができる。④医療機関への紹介は,インターネット販売でも当然可能であり,むしろ,医療機関の具体的情報やリンクをメールで送信するなどして患者に提供できる点で,インターネット販売の方がより便宜である。被告は,対面販売においては,薬剤師が,その使用できる全ての感覚(いわゆる五感)を用いて,使用者の症状の程度や状態を直接確認し,使用者の状態を的確に把握し,薬剤師の情報提供及び指導に対する使用者の理解を確実に確認することができるのに対し,インターネット販売ではこれらを行うことが困難である旨主張するが,この点について,何らの科学的根拠も示されていない。少なくとも,心理学者の研究(甲12)によれば,口頭でのコミュニケーションは記憶に残りにくいという問題が指摘されている。また,被告は,インターネット販売では非常に多くの情報が画面上に一方的に表示されることになる旨主張するが,それは誤った思い込みであり,インターネット販売でも,質問に対して回答をしなければ前に進めない仕組みを作ったうえで,薬剤師とのチャット等による双方向コミュニケーションを義務付けることは可能である。とりわけ,現役世代の多くは,パソコンやスマートフォンによるメール,チャット,スカイプ等によるコミュニケーションに馴染みがあり,むしろ対面でのコミュニケーションを必ずしも得意としない者も相当程度存在する。そして,口頭でのやり取りはすぐ忘れてしまうのが通常である上,口頭に加えて書面で情報を受領しても,それを保管せずに破棄したり,紛失したり,保管場所が分からなくなったりするリスクが高い(相当割合の消費者にかかるリスクが存することは経験則上明らかである。。これに対し,メールやインターネットで取得した情報は,場所)
を取らず,いつでもどこでも何度でもスマートフォン等で参照可能である。被告の主張は薬剤師と話した内容を消費者が記憶し又は随時参照できるという前提に立っているとしか思われないが,それはおよそ実際的でなく,何らの科学的根拠もない思い込みといわざるを得ない。
また,被告は,インターネット販売にはいわゆる読み飛ばしなどのリスクがある旨主張するが,読み飛ばしは,質問等への回答を工夫することや,薬剤師との直接のチャット,メール,電話等を義務付けることで回避可能である。むしろ,コミュニケーション内容を記録として残すことを義務付けることにより,消費者は,対面であるような,その場しのぎのいい加減な受け答えをしづらくなると考えられる。
要指導医薬品の制度は,スイッチ直後品目については3年で一般用医薬品としての販売可否の評価を行い,問題が無いことが確認されれば,一般用医薬品へ移行するというものであるが,3年経過までは対面で防ぐことができてインターネット販売では防げない副作用があるのか不明であり,科学的・実証的根拠に欠ける。
なお,独立行政法人医薬品医療機器総合機構(以下「医薬品医療機器総合機構」という。
)の公表する副作用データをデータの取れる平成2
2年以降において集計したところ(甲57)
,新たに判明して添付文書
が変更された副作用のうち,製造販売後調査の調査期間における副作用は1件のみで,残り25件は全てその調査期間後に判明した副作用であった。このことからすると,上記の調査期間内であるから未知の副作用が存在し,それゆえ使用者に対する情報提供及び指導を対面で行わなければならないという理屈は成り立たない。したがって,これを理由に本件対面販売規制を設けることに合理性はない。

規制対象等について
被告は,要指導医薬品として規制される対象は限定的であり,期間も限定的であると主張するが,たとえ少品目であれ,短期間であれ,根拠のない規制は許されない。報道にあるように,厚生労働省は医師の処方箋が必要な医療用医薬品をドラッグストアなどの店頭で処方箋なしで買える大衆薬に転用しやすくする方向にあるのであり,現時点で規制される対象が限定的であることを理由に規制が許容し得るかのような主張は失当である。
(5)まとめ
以上から,本件対面販売規制は,規制のための立法事実(必要性及び合理性)を欠き,憲法22条1項に反して違憲であり,本件各指定は,違憲の法律に基づくものであって違法である。
なお,原告は,要指導医薬品について薬剤師による販売を義務付けることの合憲性を争うものではない。また,要指導医薬品というカテゴリーの創設そのものを争うつもりはなく,製造販売後調査に資する情報収集を行うことなど,一般用医薬品とは若干異なるルールを定めて一般用医薬品と区別することまで否定するものではない。
(被告の主張の要旨)
(1)本件対面販売規制の憲法適合性に関する判断の在り方

職業の自由に対する規制の合憲性は,規制の目的が公共の福祉に合致するか,規制の内容とその必要性に関する立法府の判断が合理的裁量の範囲内かによって判断すべきである。
医薬品医療機器等法による要指導医薬品に対する規制は,薬剤師による対面での情報提供及び指導を通じて,要指導医薬品の適正な使用を確保し,健康被害等の発生を防止するという目的を達成するためのものであり,その目的は,使用者の健康という重大な利益の保護にある。そして,医薬品には必ずリスクが伴うものであり,一たび健康被害等が発生すれば被害者に償うことのできない重大な損害が発生する危険性が高いことから,未然にこれを防止しなければならないという特質がある。そうすると,医療用医薬品から転用された直後であり,一般用医薬品としてのリスクが不明とされる特定の医薬品について,その特性に応じて,専門家による販売時における情報提供及び指導の在り方をどのように定めるかという規制の具体的内容とその必要性については,その規制目的が公共の福祉に合致するものである以上,立法府の合理的な裁量に委ねられるところである。したがって,医薬品医療機器等法による要指導医薬品に関する規制は,規制目的が公共の福祉に合致することが明らかである以上,その憲法適合性については,規制の内容とその必要性に関する立法府の判断が合理性を欠くことが明らかであるかという観点から判断すべきである。


「よりゆるやかな制限」の存否は問題にならないこと
最高裁昭和50年4月30日判決は,第1に,職業の許可制は「単なる職業活動の内容及び態様に対する規制を超えて,狭義における職業選択の自由そのものに制約を課するもので,職業の自由に対する強力な制限である」ことを理由として,合憲性の審査基準として,より厳格な基準,すなわち,原則として,重要な公共の利益のために必要かつ合理的な措置であることを要するという基準が適用されるとしたものである。第2に,職業の許可制で,かつ,消極目的による規制の場合には,合憲性の審査基準は,上記の「より厳格な基準」に加えて「よりゆるやかな制限」である職業活動の内容及び態様に対する規制によってはその目的を達成することができないことを要するとしたものである。このように,
「よりゆるやかな制
限」によっては目的を達成することができないことという要件は,職業選択の自由そのものに対する制限の場合に問題となるものであり,同要件で検討される「よりゆるやかな制限」とは,職業活動の内容や態様に関する規制を指すのであるから,職業活動の内容や態様に関する制限規定の合憲性が問題となる場合については,
「よりゆるやかな制限」によっては目的
を達成することができないことという要件はそもそも問題とならない。本件対面販売規制は,要指導医薬品について対面による情報提供及び指導を義務付けるというものであり,これにより要指導医薬品のインターネット販売を事実上制約することにはなるものの,販売方法の態様の一部を制約するものにすぎず,狭義における職業選択の自由に対する制約ではなく,これよりも緩やかな制限である。加えて,一般用医薬品及び要指導医薬品全体に占める要指導医薬品の割合はごく僅かであり,一般用医薬品に移行するまでの限られた期間の規制である点においても,その規制内容が職業活動の自由に対する制約として殊更強力なものであるとはいえず,許可制のように狭義における職業選択の自由そのものに対して強い制約を課すものではない。
したがって,本件では,最高裁昭和50年4月30日判決が指摘している,
「許可制に比べて職業の自由に対するよりゆるやかな制限である職業活動の内容及び態様に対する規制」の憲法適合性が争われているのであり,そうである以上,もはや,職業活動の内容及び態様に対する規制よりも更に緩やかな規制によっては目的を達成することができないかどうかを審査する必要はない。
(2)要指導医薬品制度の目的が公共の福祉に合致することが明らかであること本件対面販売規制の目的は,要指導医薬品の適正な使用に資するよう,対面による情報提供及び指導を義務付けることにより,国民の健康被害等の発生の防止を図るというものである。より詳細には,薬剤師が使用者の症状の程度や状態を直接判断するなどして,使用者の状態を的確に把握するとともに,使用者の対応や反応等からその理解を確実に確認しつつ,使用者に対し必要な情報提供及び指導を行うことにより,要指導医薬品の適正な使用を確保し,健康被害等の発生を未然に防止するという目的を有するものである。かかる目的は,国民の生命及び健康に対する危険の防止であり,公共の福祉に合致するものであることが明らかである。
(3)要指導医薬品制度による規制の具体的内容とその必要性に関する立法府の判断が合理性を欠くことが明らかであるとは認められないこと

規制内容についてその必要性が認められること
一般用医薬品及び要指導医薬品の適正使用の必要性
一般用医薬品及び要指導医薬品(以下,併せて「一般用医薬品等」ともいう。
)は,その効能及び効果において人体に対する作用が著しくな
い医薬品であり,一般的にいえば,そのリスクは,医療用医薬品と比較すると基本的に小さいということになる。しかしながら,一般用医薬品等であっても,需要者の選択により使用される環境下において不適正な使用が行われた場合には,副作用等による重篤な健康被害等を発生させることがある。旧薬事法下の一般用医薬品(スイッチ直後品目等を含む。
)によるものと疑われる副作用は毎年250症例前後報告されている(乙5)が,その中には,不適正な使用によって重篤な健康被害が発生していると認められる事例もあり,例えば,①頭痛等を解消するためにかぜ薬を7年間にわたり1日最大で200錠も服用したことにより,肝機能障害を来した事例,②併用が禁止されていたかぜ薬2種類と解熱鎮痛剤1種類を同時に服用したために間質性肺炎を発症した事例,③解熱鎮痛剤によるアレルギー歴があり投与禁忌であった者が再度解熱鎮痛剤を服用したためアナフィラキシーショックを発症した事例,④授乳期の母親がかぜ薬を服用して乳児に授乳したために,当該乳児に発赤(皮膚や粘膜の一部が充血して赤くなること)が生じた事例などがあった(乙18)

そのため,一般用医薬品であっても,その適正な使用を確保するための措置を講じる必要性があり,このことは,要指導医薬品についても同様である。
スイッチ直後品目等の特性及びその適正使用を確保するための対面による情報提供及び指導の必要性
スイッチ直後品目は,医療従事者による厳格な管理から外された直後の医薬品であり,一般用として専門家の関与が大きく減少する一方で,広く様々な状態において使用され得る医薬品であるため,新たな健康被害等が発現するおそれがあり,また,一般用医薬品として販売した場合のリスクが不明な状況にあって,必要なリスク低減方策も採られていない。より具体的にいえば,スイッチ直後品目は,製造販売の承認の条件として付された製造販売後調査の調査期間を経過していないものであり,医療従事者による厳格な管理がされない使用環境下において様々な属性を持つ需要者の選択により広範に使用された場合に生じる健康被害等の内容・程度・頻度やその発生要因等が判明しておらず,これらの健康被害等の発生を低減するために必要な方策(添付文書の改訂による使用上の注意の追加等)も明確になっていない。このような医薬品は,一般用医薬品として販売することの適否について,いわば経過観察の状態にあり,その調査の結果によっては,一般用医薬品として販売することが不適当であると評価される場合もあり得る。そのため,特に製造販売後調査の調査期間中については,その適正使用をできる限り確保することにより,健康被害等の発生を最小限に抑えつつ,当該調査を適切に実施して一般用医薬品としての安全性の評価を確定させる必要があり,当該調査において判明した健康被害等の内容や発生要因等を踏まえ,添付文書の改訂等の必要なリスク低減方策を十分に講じた上で一般用医薬品としての販売を行わせることが,国の責任ある対応として求められているといえる。
このようなスイッチ直後品目の特性に照らすと,その販売等時において,薬剤師が,使用者の状態を的確に把握した上,使用者に対し,当該医薬品の特性や使用方法,個々の使用者の状態に応じた注意事項等を伝達・指導することが必要である。その際,使用者は自らの症状の程度や状態について,そもそも気付いていなかったり,適切に表現できなかったりして,正しく判断・申告することができないおそれがあることから,薬剤師と使用者の双方向での柔軟かつ臨機応変なやり取りを通じて,使用者の状態を慎重に確認するとともに,使用者の反応や対応等により伝達・指導した事項を確実に理解したことを確認することが重要となる(甲10)

次に,ダイレクト直後品目は,医薬品として初めて使用されるものであって,医療用としての使用経験すらないまま,広く様々な状態において使用されることになるものであるため,スイッチ直後品目と同様に,あるいはそれ以上に,その使用により新たな健康被害等が発現するおそれがあり,また,一般用医薬品として販売した場合のリスクが不明な状況にあって,必要なリスク低減方策も採られていない。より具体的にいえば,ダイレクト直後品目は,再審査のための調査期間を経過していないものであり,スイッチ直後品目について述べたところと同様に,医療従事者による厳格な管理がされない使用環境下において様々な属性を持つ需要者の選択により広範に使用された場合に生じる健康被害等の内容・程度・頻度やその発生要因等が判明しておらず,これらの健康被害等の発生を低減するために必要な方策(添付文書の改訂による使用上の注意の追加等)も明確になっていない。そのため,特に再審査のための調査期間中については,その適正使用をできる限り確保することにより,健康被害等の発生を最小限に抑えつつ,当該調査を適切に実施して一般用医薬品としての安全性の評価を確定させる必要があり,当該調査において判明した健康被害等の内容や発生要因等を踏まえ,添付文書の改訂等の必要なリスク低減方策を十分に講じた上で一般用医薬品としての販売を行わせることが,国の責任ある対応として求められているといえる。したがって,ダイレクト直後品目についても,スイッチ直後品目と同様に,その販売等時において,薬剤師が,使用者との双方向での柔軟かつ臨機応変なやり取りを通じて,使用者の状態を的確に把握した上,使用者に対し,当該医薬品の特性や使用方法,個々の使用者の状態に応じた注意事項等を伝達・指導することが必要である。
以上のとおり,スイッチ直後品目等については,適正な使用を確保することが特に重要であり,医療用医薬品に準じた最大限の情報収集と個々人の状態を踏まえた最適な情報提供を可能とする体制を確保した上で,丁寧かつ慎重な販売が求められるのであるから,スイッチ直後品目等のうち,特に,その適正な使用のために薬剤師の対面による情報提供及び薬学的知見に基づく指導が行われることが必要なものと認められるものについて,不適正な使用を防止し,使用者に健康被害等が発生することを防止するとの観点から,対面での情報提供及び指導を義務付ける必要性が認められることは明らかである。

規制内容の合理性が認められること
スイッチ直後品目等について薬剤師が行うべき情報提供及び指導の内容等
製造販売後調査又は再審査のための調査に係る調査期間が経過していないスイッチ直後品目等については,その調査期間中,当該医薬品の適正使用をできる限り確保するため,医療用医薬品に準じた最大限の情報収集と,その時点で判明している当該医薬品に関する情報を前提とした,個々人の状態を踏まえた最適な情報提供を可能とする体制を確保し,丁寧かつ慎重な販売を行うことが必要である。
具体的には,まず,薬学的知見を有する薬剤師が,その販売等の際に,使用者の症状,
(2回目以降の販売時であれば)当該医薬品による副作
用の兆候などの使用者の状態,服用している医薬品や健康食品等の使用環境を的確に把握する必要がある。その上で,薬剤師において,使用者に対し,医療用医薬品としての使用実績や製造販売承認の際の検討によりその時点までに判明している当該医薬品の特性や使用方法,個々の使用者の状態等に応じた注意事項(禁忌事項,飲み合わせ等)等を伝達・指導し,必要に応じて受診勧奨や他の医薬品への変更を促すといった対応をとることが必要となる。その際には,使用者が自らの症状の程度や状態について正しく判断・申告できないおそれがあることも考慮し,薬剤師がその知識・経験を持って直接判断することが必要である。さらに,薬剤師において,購入者がこれらの伝達事項や指導事項を確実に理解したことを確認した上で販売することが必要となる。
そして,薬剤師において,使用者の状態等を的確に把握した上,購入者に対し,適正使用のために必要な事項を確実に伝達・指導し,購入者がこれらの事項を確実に理解したことを確認するためには,薬剤師が購入者との双方向でのやり取りを通じて,購入者の反応等に応じ,柔軟かつ臨機応変に対応することも必要となる。
薬剤師が情報提供及び指導をする上で,インターネット販売よりも対面販売が適していること
対面販売とインターネット販売とでは以下に述べるような違いがあり,その違いを考慮すると,薬剤師が上記

のような態様で必要な情報提供

及び指導をする上では,対面販売が適していることが明らかである。a
使用者の状態及び薬剤師の指導に対する理解等の把握
対面販売においては,薬剤師が,その使用できる全ての感覚(いわゆる五感)を用いて,使用者の症状の程度や状態を直接確認することができる上,使用者の顔色,表情等の外見や態度,仕草等の行動を視認することによって,使用者の状態を的確に把握することができる。また,使用者の対応や反応等から,薬剤師の情報提供及び指導に対する使用者の理解を確実に確認することができる。
これに対し,インターネット販売においては,薬剤師と使用者とのやり取りは,電話,FAX,電子メール,テレビ電話等により行われると考えられるが,電話,FAX及び電子メールを用いる方法については,使用者の症状の状態や程度を直接確認することができず,使用者の外見や行動等から使用者の状態を的確に把握することはできないし,使用者の理解についても,使用者の対応や反応等からこれを確実に確認することはできない。また,テレビ電話を用いる方法についても,薬剤師と使用者との間では,必ずしも常に鮮明であるとはいえないテレビ画面を通してのやり取りになり,使用者の症状の状態や程度を詳細かつ的確に確認することはできないし,使用者の行動についても確認することができず,使用者の外見についても対面ほど鮮明に確認することができない。
このように,インターネット販売では,薬剤師が使用者の症状の程度や状態を直接判断するなどして,使用者の状態を的確に把握し,あるいは,使用者の対応や反応等から薬剤師の情報提供及び指導に対する使用者の理解を確実に確認することは困難である。

意思疎通の柔軟性,双方向性
対面販売は,薬剤師が使用者とその場で直接顔を合わせることで,視覚等の情報を基にして,使用者の状態や理解度に応じた自発的,能動的な質問が繰り返し行われるなど,コミュニケーションの柔軟性と双方向性を有しており,要指導医薬品の適正な使用に資する情報を得て,かつ,発信することに優れている。
これに対し,インターネット販売では,薬剤師と使用者が対面していないことに伴い,使用者の状態や理解度に応じた薬剤師による自発的ないし能動的な質問がされないなど,めり張りのない形式的,定型的,表面的かつ一方的なものとなる。
このように,インターネット販売では,意思疎通の柔軟性や双方向性を確保することは困難である。
専門家に対する調査結果等
上記

の点は,次のとおり,専門家に対する調査の結果からも明らか

である。すなわち,平成24年度の厚生労働科学研究班の調査結果をまとめた「一般用医薬品における専門家の意識と実態に関する調査報告書(抜粋)(乙19)では,患者に対する薬の服用方法の説明がよく」
分かり(①)
,信頼できる(②)と考える薬剤師が,テレビ電話による説明(①4.5%,②3.4%)
,電話による説明(①3.4%,②3.4%)
,インターネット等の記載を患者に読んでもらう方法による説明
方法(①3.4%,②2.3%)よりも,店舗で直接対面して行う説明(①86.4%,②67.0%)の方が非常に多いこと,インターネット販売では購入者の状態がわからないため適切な医薬品を選択する機会が失われ安全性や有効性が確保できない(61.4%)
,医療機関へ
の受診が必要な際も購入者へアドバイスする機会がなくなる(72.7%)と考える薬剤師が大半であり,医薬品のインターネット販売について対面販売と同様に,適切な医薬品の選択や安全性確保ができると考える薬剤師が非常に少ない(5.7%)ことなどが示されている。
このように,実際に情報提供等を行う専門家である薬剤師自身も,対面販売が,それ以外の販売方法と比較して,最も使用者の状態を適切に確認でき,分かりやすく信頼できる説明方法であり,安全性確保を図ることができると認識している。
また,新ルール検討会に日本薬剤師会から提出された資料(乙20)においても,薬剤師が対面で患部の状態を確認することで適切な受診勧奨等を行い,健康被害等の発生を防止することができた多数の事例が挙げられている。
薬剤師による情報提供等の確実な履行を担保する上でも,対面販売とインターネット販売との間に有意な差異があること
対面による販売では,勤務する薬剤師及び登録販売者は,その別と氏名を表示並びに掲示をした薬局又は店舗において,その別と氏名を名札で表示するなどして(医薬品医療機器等法施行規則15条1項,15条の14,別表第一の二,15条の2,147条の2第1項)
,多数の購
入者と対面して多数回にわたり直接のやり取りを行うことを要するものである以上,購入者への応対の相手方が有資格者であって,その有資格者が能動的・双方向的な聴取等を経て情報提供を懈怠なく適切に履行していることについて購入者による確認及び行政上の監督が実効的に担保される仕組みが確保されるものといえる。
他方,インターネット販売では,購入者の申出又は必要に応じて電話,FAX,電子メール,テレビ電話等の手段を通じて購入者と販売者側とのやり取りを行うことがあるとしても,その応対の相手方が真に有資格者であるかどうか及びその有資格者が所要のやり取りを経て情報提供を懈怠なく適切に履行しているかどうかを購入者及び監督行政庁において直接かつ即時に確認することは,インターネット販売の性質上,対面による販売の場合と比較して困難である(乙8,20)

このように,インターネット販売は,有資格者による情報提供並びにその要否・内容及び使用の適否の判断が確実に履行されることを購入者による確認及び行政上の監督によって担保することの実効性の点で,対面による販売に及ばないのであって,両者の間には,その性質上,相当の有意な差異がある。
要指導医薬品として規制される対象及び期間が限定的なものであること
要指導医薬品の品目数は,平成25年法律第103号が施行された平成26年6月12日の時点では20品目であり,その後の増減を経て平成28年2月1日以降は14品目となっているところ,同年5月30日の医薬品情報データベース検索結果によれば,要指導医薬品を含む一般用医薬品等全体の品目数は1万0388品目であり,要指導医薬品の品目数が一般用医薬品等全体に占める割合は僅か0.13%(=14品目÷1万0388品目×100)にすぎない(乙65の1及び2)
。また,
要指導医薬品の市場規模が一般用医薬品等全体に占める割合は,平成26年度は0.57%(=約51億円÷約8944億円×100)
,平成
27年度は0.27%(=約26億円÷約9385億円×100)にすぎない(乙66)
。要指導医薬品制度開始後の要指導医薬品の品目数に
は増減があるものの,要指導医薬品の品目数及び市場規模が一般用医薬品等全体に占める割合は,総じて僅かなものといえる。
そして,要指導医薬品として指定されている期間は,製造販売後調査又は再審査のための調査に係る調査期間が終了するまでの合理的な期間であり,一定のリスク評価の後に,一般用医薬品としてインターネット販売をすることができるようになるものであること,スイッチ直後品目等が直ちに要指導医薬品に指定されるわけではなく,また,今後,要指導医薬品の品目数が規制対象として限定的とはいえない程に増加するとも想定し難いことからすれば,要指導医薬品として規制される対象及び期間が,限定的であることは明らかである。
以上のとおり,本件対面販売規制が店舗販売業者の営業に与える影響は大きいものではないから,本件対面販売規制は,店舗販売業者の営業に対して過度な規制を及ぼすものとはいえず,合理的なものである。小括
以上のとおり,インターネット販売では,薬剤師が使用者の状態を的確に把握し,かつ,薬剤師の情報提供及び指導に対する使用者の理解を確実に確認することは困難であり,これらは正に対面販売によってこそ実現することが可能であるといえ,要指導医薬品について,医療用医薬品に準じた適正使用を確保するためには,薬剤師の対面による情報提供及び指導を義務付けることが合理的である。そして,本件対面販売規制が店舗販売業者の営業に対して過度な規制を及ぼすものともいえないことを考慮すれば,本件対面販売規制について,上記規制目的を達成するための手段として合理性が認められることは明らかである。

まとめ
以上から,医薬品医療機器等法による要指導医薬品に関する規制の具体的内容とその必要性に関する立法府の判断が合理性を欠くことが明らかであるとはいえず,本件対面販売規制は,憲法22条1項に反するものではない。

(4)原告の主張に対する反論

本件対面販売規制は狭義における職業選択の自由を制約するものではなく,これによって店舗販売業の開業が制限されるものではないこと原告は,本件対面販売規制について,最高裁昭和50年4月30日判決における距離制限規制と比較しても職業の自由に対する制約の程度が小さいとはいえない,インターネット販売を行う事業者の基本的なビジネスモデルを禁止するものであり,職業選択の自由を剥奪するに近い規制であるなどと主張する。
しかしながら,医薬品医療機器等法上,インターネット販売は,開設された薬局又は店舗販売業の許可を得た店舗における販売方法の一態様にすぎないものであり(医薬品医療機器等法施行規則1条2項4号参照),店
舗販売業者は,要指導医薬品を店舗において対面で販売しなければならず,インターネット販売の方法により販売できないとしても,店舗においてその店舗にいる者に対してこれを販売することは何ら妨げられていない。これに加えて,上記(3)イ

のとおり,要指導医薬品は,その品目数及び市

場規模において一般用医薬品等全体に占める割合が僅かなものにすぎないこと等からすれば,インターネット販売を行う事業者が,要指導医薬品のインターネット販売ができないことを理由に,医薬品販売事業の開業を断念せざるを得ないような状況にあるとはいえない(現に,現行制度の下でも一般用医薬品のインターネット販売は何ら支障なく行われており,平成27年1月末現在で1641の販売サイトが存在している(乙25))。。
したがって,本件対面販売規制は,店舗販売業者にとって狭義における職業選択の自由に対する制約に当たるとはいえないというべきである。イ
対面販売とインターネット販売とを比較した副作用発生頻度等の実証的データが存在しないとしても,要指導医薬品制度の合理性が認められること
原告は,要指導医薬品のインターネット販売を禁止するには,実証的な調査により,それ固有の副作用が有意的に発生すると予想されることが不可欠であり,実証的なデータなしで規制することは許されない旨主張する。しかしながら,第一類医薬品及び第二類医薬品のインターネット販売が広く行われるようになったのは,平成25年法律第103号が施行されて以降であり,リスクの比較的高い一般用医薬品がインターネット販売された場合の健康被害等の発生状況への影響については,いまだ今後の知見の集積を待たなければならない状況にある。
他方,上記(3)イ

で主張したとおり,インターネット販売では,対面

販売とは異なり,テレビ電話等の現状考え得る情報提供の方法を用いたとしても,薬剤師が使用者の状態を的確に把握し,あるいは薬剤師の情報提供及び指導に対する使用者の理解を確実に確認することは困難であるところ,インターネット販売における情報提供方法の工夫等については,一般用医薬品のインターネット販売が広く認められた現在,正に各事業者において模索している状況にあると考えられ,こうした手法により適切な情報提供が行えるかどうかを評価するには,今後,具体的な事例や知見が集積されることが必要である。
以上のような状況の下では,対面販売とインターネット販売とを比較した副作用発生頻度等の実証的データが存在しないとしても,薬剤師の対面による情報提供及び指導の必要性を否定することはできないというべきである。

インターネット・コミュニケーションに関する心理学者の研究について原告が援用するA氏が実施したインターネット・コミュニケーションに関する実証研究(甲12)は,いずれも特定の大学の学生という,特定の世代で,特定の属性を有する者のみを対象にしたものにすぎず,これをもってあらゆる世代,あらゆる属性を有する者が想定される要指導医薬品の販売方法の適否が論じられるものではない。また,上記実証研究では,要指導医薬品のインターネット販売を想定した場合に生じる,効能・効果,副作用,禁忌事項等といった非常に多くの情報が画面上に一方的に表示される状況において使用者側が必要な情報をきちんと読まずに購入してしまう,いわゆる読み飛ばし等といった,インターネット販売特有のデメリットやその対策などについても何ら検証されていない。さらに,要指導医薬品の販売に当たっては,文字情報としての書面と対面での情報提供を組み合わせることにより,両者の特徴を生かした確実な情報提供を行うことを求めるものであるが,上記実証研究中の対面コミュニケーションにおいては書面が用いられておらず,前提を異にするものである。

インターネット販売の方が有用という主張について
原告は,一般用医薬品による副作用の発生を防止するためには,製造販売承認後の副作用情報を収集することにより,未発見の有害事象に早期に対応することが最も有効であり,追跡可能性のあるインターネット販売の方が対面販売よりも有用である旨主張する。
しかしながら,販売等の際に情報提供及び指導を義務付けたのは,一般用医薬品としての安全性の評価が終了するまでの間,医療用医薬品に準じた最大限の情報収集と個々人の状態を踏まえた最適な情報提供という丁寧かつ慎重な販売を行うことで,適正使用をできる限り確保し,健康被害等の発生をできる限り未然に防止するためである。したがって,副作用が発生した後の追跡可能性の観点から対面販売よりもインターネット販売の方が有用であるとする原告の主張は,失当である。


薬剤師の能力に関する主張について
原告は,薬剤師国家試験の内容等に照らし,一般的に薬剤師に五感によって病状を判断する能力が備わっているという制度的な担保が存在しない旨主張する。
しかしながら,薬剤師は,その教育課程において,薬剤の使用者に対して服薬指導を行うために必要な情報を収集し,情報提供するために必要な薬学的知見を修得しているところ,このような情報には,当該使用者の基本的な身体所見を観察・測定し,評価することも含まれている。例えば,薬学部におけるカリキュラム作成の参考とされる「薬学教育モデル・コアカリキュラム

平成25年度改訂版」
(乙68)においては,
「患者に安

全・最適な薬物療法を提供するため,適切に患者情報を収集した上で,状態を正しく評価し,適切な医薬品情報を基に,個々の患者に適した薬物療法を提案・実施・評価できる能力を修得する」ことが薬剤師として求められる基本的な資質として掲げられており,その一環である「患者情報の把握」の中で,
「基本的な身体所見を観察・測定し,評価できる。
(知識・
技能),
」「患者の身体所見を薬学的管理に活かすことができる。
(技能・
態度)
」といった事項が掲げられている。また,薬剤師国家試験においても,例えば,浮腫の症状を目視するとともに触って確認することに係る出題(乙69)や,皮膚潰瘍の病変部の悪臭を伴っている症例に係る出題がある(乙70)
。したがって,薬剤師国家試験の内容等から,薬剤師にお
いて適切な服薬指導を行うことができないかのように主張する原告の主張は,失当である。

医薬品医療機器等法36条の5第2項に関する主張について
原告は,医薬品医療機器等法36条の5第2項が本件対面販売規制と結び付くことにより体調の悪い病人本人が薬局等に出向くことを義務付ける制度となっており,医薬品に関する制度として合理性がない旨主張する。しかしながら,副作用等による健康被害等を防止するためには,医師が直接診療を行うのと同様に,対面による販売を要するとすることにも必要性及び合理性が認められる以上,要指導医薬品制度は,このような規制目的に照らして過度な規制であるとはいえず,有害無益な制度であるということもできない。また,薬局等に行くことのできない状況にある者については,類似の効能・効果を持つ他の一般用医薬品をインターネットで購入することが可能である。したがって,原告の上記主張は,理由がない。キ
諸外国の例に関する主張について
諸外国と日本とでは,医療保険制度等の背景事情,医薬品の分類の方法,販売の仕組み等が異なり,医薬品の販売制度についても,その国々の安全・安心に対する考え方,医療制度の仕組み,国民の意識等に大きく影響を受ける。これらの点を度外視して,OTC薬のインターネット販売を認める国々が存在するからといって,日本においても一律にこれを認めるべきであるなどとはいえない。
また,OTC薬を含む医薬品のインターネット販売を禁止する国としては,ロシア,韓国,トルコ,タイがあることからすれば,一部品目につきインターネット販売を禁止する我が国の要指導医薬品制度が特別なものであるとはいえず,諸外国の例をもって本件対面販売規制についての立法事実が不存在であるなどとはいえない。


副作用は販売方法とは関係なく生じる旨の主張について
原告は,アナフィラキシーショックやスティーブンス・ジョンソン症候群等の一般用医薬品による副作用は,医薬品を供給する以上,必然的に一定割合で発生する事象(ハザード)であって,販売過程の情報提供によって防げるものではない旨主張する。
しかしながら,薬剤師が,当該医薬品の使用者の状態を適切に確認し,かつ,適切な情報提供を行えば,例えば,アレルギー歴がある投与禁忌の患者に対してアレルギーの原因となる医薬品の販売を行わないなどの措置をとることで,健康被害等の発生を防止することも可能であるから,原告の上記批判は当たらない。


製造販売後調査と副作用の関係に関する主張について
原告は,医薬品医療機器総合機構が公表している医薬品・医療機器等安全性情報に係る平成22年以降の副作用データにおいて,販売後調査期間における副作用に基づいて添付文書の改訂が行われたのは1件のみである旨主張する。
しかしながら,そもそも,副作用等による添付文書の改訂については,①企業(製造販売業者)が医薬品医療機器総合機構に確認の上で自主的に改訂する自主改訂と②同機構による専門委員を交えた検討会等の審議を経て厚生労働省の通知や事務連絡による指示によって行われる改訂があるところ(乙37)
,同機構のホームページの医薬品・医療機器等安全性情報
には,上記①の自主改訂は掲載されておらず,原告の上記主張は,①の自主改訂を捨象して添付文書の改訂と副作用との関係を論じている点で誤っている。また,原告の上記主張は,上記②の改訂のみに基づくものとしても,製造販売後調査の調査期間における副作用は,多くの医薬品で一定程度の症例が報告されているのが実際であり,例えば,調査期間中の副作用に基づき添付文書の改訂があったロキソプロフェンナトリウム水和物については,製造販売後調査の特別調査の調査期間中における副作用が435件報告されており(乙39の1)
,また,調査期間経過後の副作用に基づ
き添付文書の改訂があったケトプロフェンを含有する製剤(販売名・オムニードケトプロフェンパップ及びテイマックスケトプロフェンパップ)については,製造販売後調査の特別調査の調査期間中における副作用が54件報告されている(乙39の2)
。したがって,製造販売後調査の調査期
間に発見された重要性の高い副作用は僅か1件にとどまる旨をいう原告の主張は,失当である。
3
争点3(本件各指定が,その指定の要件を欠き違法か。
)について
(原告の主張の要旨)
(1)医薬品医療機器等法4条5項3号の規定により,要指導医薬品の指定は,「その適正な使用のために薬剤師の対面による情報の提供及び薬学的知見に基づく指導が行われることが必要なもの」という実体法上の要件を満たさない限り,違法となる。そして,厚生労働大臣は,薬事・食品衛生審議会に対し,上記実体法上の要件を満たすか否かについて諮問し,その意見を聴いて要指導医薬品を指定することとされている。
(2)委員の属性からみた不適任さ
薬事・食品衛生審議会では,各医薬品を取り上げ,それについて,それがいかなる理由でインターネット等を通じた情報提供及び指導では足りず,薬剤師による対面での情報提供及び指導が必要なのかについて議論して実証的な根拠を挙げることが必要不可欠であり,同審議会が,この点について議論し意見を述べるためには,コミュニケーションについて相応の学識が必要である。
しかるに,同審議会要指導・一般用医薬品部会の委員らの中に,コミュニケーションの専門家は一切含まれていない。対面による情報提供及び指導であれば防ぐことができ,電話やファクシミリ,メール,チャット等による情報提供及び指導では防ぐことができないリスクが有意的に存在するといった判断は,単に薬学の知識を有する者では行い得るものではないから,判断能力のない委員が同審議会としての答申を提出していることになる。(3)議事録からみた審議の乏しさ
また,議事の内容をみても,薬事・食品衛生審議会要指導・一般用医薬品部会においては,対面による情報提供及び指導が必要かどうかの議論は全くされていない(甲31ないし33)

(4)以上のように,薬事・食品衛生審議会は,判断能力のない委員が,要指導医薬品の指定に係る実体法上の要件の充足について審議することもないまま,指定が相当との答申を提出し,厚生労働大臣はそれを根拠に本件各指定をしたものであるから,本件各指定は,上記実体法上の要件を満たしておらず,違法である。
(被告の主張の要旨)
(1)本件各指定に係る医薬品は,いずれもスイッチ直後品目又はダイレクト直後品目(スイッチ直後品目等)であるところ,スイッチOTCは,医療用として医師の指導の下に処方されて制限的に使用されていた状態から,一般の需要者に広く使用される状態になったものであるため,販売開始後にそのリスク等に関する調査及び評価を行っている期間中は,専門的知識のない一般の需要者が使用する中で,これまで予見されていなかった副作用が発生し得るものである。また,ダイレクトOTCは,医療用としての使用経験を経ずに,一般用医薬品として一般の需要者に広く使用されることとなったものであるため,製造販売開始後にそのリスク等に関する調査及び評価を行っている期間中は,スイッチOTCと同様に,専門的知識のない一般の需要者が使用する中で,これまで予見されていなかった副作用が発生し得るものである。そして,スイッチOTC及びダイレクトOTCのうちスイッチ直後品目等は,薬剤師その他の医薬関係者から提供された情報に基づく需要者の選択により使用されることが目的とされている医薬品である一方で,製造販売承認後の安全性調査の調査期間を経過しておらず,医療従事者による厳格な管理がされない使用環境下において様々な属性を持つ需要者の選択により広範に使用された場合に生じる健康被害等の内容・程度・頻度やその発生要因等が判明していないため,これらの健康被害等の発生を低減するために必要な方策も明確になっていないという特質を有するものである。
そうすると,スイッチOTC及びダイレクトOTCのうちスイッチ直後品目等については,当該医薬品の用法・用量及び使用上の注意等に関する情報の十分な理解を前提として適切に使用させ,もってこれまで予見されていなかった副作用の発生を防止するため,原則として,その特性,用法,用量,使用上の注意,併用を避けるべき医薬品その他の適正な使用のために必要な情報を,購入者・使用者の状況に応じて個別に提供させ,必要な指導を行わせること,当該医薬品の副作用等によるものと疑われる症状が発生した場合の対応について説明させること,情報提供を受けた者がその内容を理解したこと及び質問の有無を確認させること,必要に応じて当該医薬品に代えて他の医薬品の使用を勧めさせること及び受診勧奨を行うことといった,薬剤師による情報提供及び指導を行う必要性が高い性質の医薬品であるといえる。(2)本件各指定に係る医薬品については,薬学的な知見等を有し,医薬品医療機器等法の制度に精通した専門家により構成されている薬事・食品衛生審議会においても,要指導医薬品として指定することに異論がなかったものである。同審議会の各委員は,事前に送付された資料を基に,あらかじめ十分な検討を経た上で審議に臨んでいるから,同審議会の場において議論がなかったことをもって同審議会における審議が不十分であったとする原告の主張は失当である。
(3)したがって,本件各指定に係る医薬品は,同法4条5項3号の実体要件を満たすものというべきであり,本件各指定は,その指定の要件に欠けるところはなく,適法である。
第5
1
当裁判所の判断
認定事実
前提事実に加え,後掲の証拠及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。
(1)平成18年改正に係る法案の成立及び平成21年厚生労働省令第10号の制定・施行に至る経緯等

平成18年改正前薬事法及びその下位法令において,医薬品の郵便等販売を禁止する法的規制はなかったが,厚生省ないし厚生労働省は,医薬品を対面販売するように指導する方針をとっていた。
すなわち,昭和63年3月31日付け薬監発第11号各都道府県衛生主管部(局)長宛て厚生省薬務局監視指導課長通知「医薬品の販売方法について」
(平成7年3月31日薬監発第21号により改正。乙21)は,薬局開設者や一般販売業者がカタログ,ちらし等を配布し,注文書により契約の申込みを受けて医薬品を配送する通信販売(以下「カタログ販売」という。
)につき,医薬品の販売に当たっては,その責任の所在が明確でなければならないこと,消費者に対し医薬品に関する情報が十分に伝達されなければならないこと等が要請されるのであり,これらに鑑み,一般消費者に対し薬剤師等が直接に効能効果,副作用,使用取扱い上の注意事項を告げて販売する医薬品の対面販売を指導してきたところであって,カタログ販売は,このような対面販売の趣旨が確保されないおそれがあり,一般的に好ましくないとした上,具体的なカタログ販売形態の当否については,その形態が多様であるため,個々のケースごとに判断するべきとし,当面カタログ販売に当たって最小限遵守されるべき事項を示し,その内容を周知して監視指導の徹底を図るよう依頼するとしていた。そして,同通知は,カタログ販売の取扱医薬品の範囲を,副作用のおそれが少なく,一般消費者の自主的判断に基づき服用されても安全性からみて比較的問題が少ないなどの特徴を備えたものとする旨を述べ,一定の薬効群を挙げ,当面その薬効群の医薬品に限るなどと通知するものであった。
また,平成16年9月3日付け薬食監発第0903013号各都道府県,各保健所設置市,各特別区衛生主管部(局)長宛て厚生労働省医薬食品局監視指導・麻薬対策課長通知「医薬品のインターネットによる通信販売について」
(乙21)は,インターネットによる通信販売についても上記厚
生省薬務局監視指導課長通知と同様の扱いとしていたところであるとし,関係業者に対し,同通知に基づく取扱いについて改めて周知するとともに,監視指導の徹底を図るよう依頼する旨通知するものであった。
(甲46,
乙21,弁論の全趣旨)

もっとも,上記のとおり平成18年改正前薬事法等に医薬品の郵便等販売を禁止する法的規制がなかったこともあり,平成18年頃までには,多くの事業者が医薬品のインターネット販売を行うようになっており,その対象品目には,旧薬事法の下における第一類医薬品や第二類医薬品に相当するものも含まれていた。
(甲46,弁論の全趣旨)

内閣府設置法37条2項に基づく合議制の機関として内閣府に設置されていた総合規制改革会議は,平成15年12月,コンビニエンスストアで解熱鎮痛剤等が販売可能となれば消費者の利便性は大幅に向上すること,薬局等において対面で服薬指導をしている実態は乏しい上,薬剤師が不在である例も多いにもかかわらず薬剤師が配置されていない事実に直接起因する副作用等による事故は報告されていないことなどからすれば,人体に対する作用が比較的緩やかな医薬品群については一般小売店でも早急に販売できるようにすべきであるなどとする旨の答申をした。
(弁論の全趣
旨)


厚生労働大臣の諮問機関である厚生科学審議会は,厚生労働省において,医薬品のリスク等の程度に応じて,専門家が関与し,適切な情報提供等がされる実効性のある制度を構築するための医薬品販売の在り方全般の見直しを行うとされたことを受け,その調査審議を行うため,平成16年5月,同審議会の下に,医学,薬学,経営学,法律学,消費者保護の分野等関係各界の専門家・有識者等の委員から成る医薬品販売制度改正検討部会(以下「販売制度検討部会」という。
)を設置した。
同部会は,平成17年12月15日付けで,①平成18年改正前薬事法においては,医薬品販売について,薬剤師等の店舗への常時配置により情報提供を行うことを求めているが,現実には薬剤師等が不在であったり,薬剤師等がいても情報提供が必ずしも十分に行われていないなどの実態があるなどとした上,②セルフメディケーション(自分自身の健康に責任を持ち,軽度な身体の不調は自分で手当てをすること)を支援する観点から,安全性の確保を前提とし,利便性にも配慮しつつ,国民による医薬品の適切な選択,適正な使用に資するよう,薬局等において専門家による相談応需及びリスクの程度に応じた情報提供等が行われる体制を整備することを医薬品販売制度の改正の理念として掲げ,③その改正の内容として,医薬品の販売時における適切な情報提供及び購入者の疑問や要望を受けた場合の適切な相談応需が行われるためには,専門家において購入者側の状態を的確に把握できること,及び購入者と専門家の間で円滑な意思疎通が行われることが必要であり,これらの確実な実施を担保するために購入者と専門家がその場で直接やり取りを行い得る対面販売を医薬品販売に当たっての原則とすべきであるとし,他方で,情報通信技術の活用については慎重に検討すべきであるが,第二類医薬品及び第三類医薬品については,深夜早朝に限り,一定の条件の下でテレビ電話を活用しての販売を引き続き認めることも検討する余地があり,第三類医薬品については,一定の要件の下で郵便等販売を認めざるを得ないなどとする報告書(乙17。以下「販売制度検討部会報告書」という。
)を公表した。
なお,郵便等販売を行う事業者やその関係者は販売制度検討部会の委員に加わっておらず,同部会における意見陳述等の機会もなかった。(以上
につき,乙17,弁論の全趣旨)

厚生労働省は,販売制度検討部会報告書の内容等を踏まえて平成18年改正前薬事法を改正する法案(以下「平成18年改正法案」という。)を
作成し,同法案は平成18年3月に内閣から国会に提出された。
同年4月10日の参議院本会議,同月11日の参議院厚生労働委員会及び同年6月2日の衆議院厚生労働委員会においてそれぞれ平成18年改正法案の趣旨説明の聴取が行われ,厚生労働大臣は,同法案の趣旨ないし提案の理由として,国民の健康意識の高まりや医薬分業の進展等の医薬品を取り巻く環境の変化,店舗における薬剤師等の不在など制度と実態の乖離,薬学教育六年制の導入に伴う薬剤師の役割の変化等を踏まえ,医薬品の販売制度を見直すことが求められているとした上で,今回の改正では,医薬品の適切な選択及び適正な使用に資するよう,医薬品をリスクの程度に応じて区分し,その区分ごとに,専門家が関与した販売方法を定める等,医薬品の販売制度全般の見直しを行うこと等により保健衛生上の危害の発生の防止を図ることとしている旨を述べ,同法案の主な内容の一つとして,一般用医薬品を販売する際には,その副作用等により健康被害が生じるリスクの程度に応じて専門家が行う情報提供を重点化するなど,実効性のある仕組みを設けることとしている旨の説明をした。
同法案の審議において,政府参考人である厚生労働省医薬食品局長は,医薬品については対面販売が重要であり,インターネット技術の進歩はめざましいものの,現時点では上記の販売制度検討部会報告書を踏まえて医薬品販売におけるその利用には慎重な対応が必要である旨答弁した。また,参考人として出席した販売制度検討部会の部会長は,同部会の審議の経緯及び報告書の内容を説明した上,上記法案はこれらを十分に踏まえたものであり,医薬品はその本質として副作用等のリスクを併せ持つから,適切な情報提供が伴ってこそ真に安全で有効なものとなるが,これを対面販売で行っていこうというのが今回の議論の出発点であるなどと述べた。こうした審議を経て,平成18年改正法案は,衆参両院で可決され,成立した。
(以上につき,弁論の全趣旨)

厚生労働省は,平成20年2月,旧薬事法に規定された販売の体制や環境の整備を図るために必要な省令等の制定に当たって必要な事項を検討するため,薬学等の学識を有する者,都道府県の関係者及び一般用医薬品に関係する各種団体の代表を委員とする,医薬品の販売等に係る体制及び環境整備に関する検討会(以下「体制及び環境整備検討会」という。)を設
置した。同検討会は,同年7月,一般用医薬品に係る郵便等販売は,購入者の利便性やこれまでの経緯に照らして一定の範囲で認めざるを得ないが,販売時に情報提供を専門家が対面で行うことが困難であるから,販売時の情報提供に関する規定のない第三類医薬品を販売する限度で認めるのが適当であるなどとする趣旨の報告書(乙51の2・参考資料1-2。以下「体制及び環境整備検討会報告書」という。
)を公表した。
(乙51の2,
弁論の全趣旨)

厚生労働省は,体制及び環境整備検討会報告書の内容を踏まえ,薬事法施行規則等の一部を改正する省令案(以下「平成21年改正省令案」という。
)の立案作業を行ったところ,同省令案のうち郵便等販売の規制に係る部分の内容は,前提事実(2)のとおり第一類医薬品及び第二類医薬品について郵便等販売をしてはならないなどとする平成21年改正後施行規則と基本的に同一であった。
他方,総合規制改革会議の後身として内閣府に設置されていた規制改革会議は,平成20年11月,平成21年改正省令案につき,旧薬事法には郵便等販売を禁止する明示的な規定がないこと,消費者の利便性を阻害すること,郵便等販売が店頭での販売に比して安全性に劣ることも実証されていないことなどの理由から,郵便等販売の規制に係る部分を全て撤回すべきである旨の見解を示した。
また,厚生労働省が平成21年改正省令案につき意見公募手続を実施したところ,郵便等販売に関する意見2353件のうち2303件は,郵便等販売を第三類医薬品以外の医薬品についても認めるべきであるという趣旨のものであった。
(以上につき,甲19,46,乙51の2・資料2,
弁論の全趣旨)


平成21年改正省令案に基づき,薬事法施行規則等の一部を改正する省令(平成21年厚生労働省令第10号)が平成21年2月6日に制定・公布され,一部の規定を除き同年6月1日から施行するとされた。
他方,厚生労働大臣の指示により,同年2月13日,新制度の下で国民が医薬品を適切に選択し,かつ,適正に使用することができる環境作りのために国民的議論を行うことを目的として,日本オンラインドラッグ協会の代表(当時の原告の代表取締役)を含む関係各界の専門家・有識者等を構成員とする,医薬品新販売制度の円滑施行に関する検討会の設置が決定された。同検討会における検討は同年5月まで続けられたが,上記省令の維持を主張する趣旨の意見と上記省令中の郵便等販売に係る規制の緩和を求める趣旨の意見とが対立し,議論は収束しなかった。
厚生労働省は,同月,上記省令の附則部分に離島居住者に対する第二類医薬品に係る郵便等販売を一定期間に限り認めるなどの経過措置を追加する等の省令案の作成作業を行い,同年6月1日,同経過措置等に係る部分(平成21年厚生労働省令第114号)を含む平成21年改正後施行規則が施行された。
(以上につき,甲46,乙51の2・資料2及び参考資
料1-3,弁論の全趣旨)
(2)最高裁平成25年1月11日判決の言渡しに至る経過

原告を含む医薬品等のインターネット販売を行う事業者2名は,平成21年5月25日,国を相手に,旧薬事法下の一般用医薬品のうち第一類医薬品及び第二類医薬品につき,平成21年改正後施行規則の規定にかかわらず郵便等販売をすることができる権利ないし地位を有することの確認等を求める訴えを東京地方裁判所に提起したところ,同地方裁判所は,平成22年3月30日,上記権利ないし地位の確認請求をいずれも棄却する旨の判決をした。
(甲46,乙51の2・資料2,弁論の全趣旨)


上記2名が上記判決を不服として控訴したところ,東京高等裁判所は,平成24年4月26日,上記判決のうち上記権利ないし地位の確認請求を棄却した部分を取り消し,同請求をいずれも認容する旨の判決をした。(
乙51の2・資料2,弁論の全趣旨)


国が上記イの判決を不服として上告受理申立てをしたところ,最高裁判所は,これを上告審として受理した上,平成25年1月11日,上告を棄却する旨の判決をした(最高裁平成25年1月11日判決)
。同判決は,
上告を棄却する理由として,平成21年改正後施行規則のうち,店舗販売業者に対し,旧薬事法下の一般用医薬品のうち第一類医薬品及び第二類医薬品について,①当該店舗において対面で販売させ又は授与させなければならない(159条の14第1項,2項本文)ものとし,②当該店舗内の情報提供を行う場所において情報の提供を対面により行わせなければならない(159条の15第1項1号,159条の17第1号,2号)ものとし,③郵便等販売をしてはならない(142条,15条の4第1項1号)ものとする各規定が,上記各医薬品に係る郵便等販売を一律に禁止することとなる限度において,旧薬事法の委任の範囲を逸脱した違法なものとして無効である旨の判示をした。
(乙51の2・資料2,弁論の全趣旨)
(3)一般用医薬品又は要指導医薬品の副作用,販売状況等に関する調査結果等ア
平成14年度の一般用医薬品の副作用報告265件の中には,風邪薬を長期間にわたり多量に服用して肝機能障害を起こした例,併用禁止薬を併用したため間質性肺炎を発症した例,解熱鎮痛剤によるアレルギー歴があり投与禁忌であった者が再度解熱鎮痛剤を服用したためアナフィラキシーショックを発症した例,授乳中の母親が風邪薬を服用したため乳児に発赤が生じた例など,薬剤師等から十分な情報提供が行われていれば副作用の発生を防止することができた可能性のあったものが,約30件含まれている。
(乙18)


副作用等に基づく添付文書の改訂については,①製造販売業者が医薬品医療機器総合機構に確認の上で自主的に改訂する自主改訂と②同機構による情報の収集・整理及びこれに基づく検討等を経て厚生労働省の通知や事務連絡による指示によって行われる改訂の2種類があり,同機構がウェブサイト上で公表する医薬品・医療機器等安全性情報には,上記②の改訂に係る情報が掲載されているところ,平成22年3月から平成27年8月までに公表された上記②の改訂の情報の中には,製造販売後調査の期間経過後に生じた重篤な副作用症例に基づき添付文書の改訂が行われた事例が相当数存在している。
(甲57,乙37,弁論の全趣旨)
他方,製造販売後調査の期間内に相当数の副作用報告がされる医薬品も存在しており,例えば,平成17年8月1日に一般用医薬品としての製造販売の承認を受けたケトプロフェンを含有する製剤(販売名・オムニードケトプロフェンパップ及びテイマックスケトプロフェンパップ)については,その製造販売後調査の期間中の副作用として,1035症例の特別調査において34例54件の副作用(うち未知あるいは重篤な副作用なし)が報告され,一般調査においても,4例4件の副作用(うち未知あるいは重篤な副作用なし)が報告された。また,平成22年1月22日に一般用医薬品としての製造販売の承認を受けたロキソプロフェンナトリウム水和物を含有する製剤(経口投与の解熱鎮痛薬)については,その製造販売後調査の期間中の副作用として,1万0448症例の特別調査において317例435件の副作用(うち重篤な副作用なし)が報告され,一般調査においても,276例437件の副作用(うち重篤な副作用14例18件(うち死亡1例1件)
)が報告された。
(乙39の1及び2,弁論の全趣
旨)

医薬品によるものと疑われる副作用の症例の厚生労働大臣に対する報告については,診察や患者からの相談等を通じてその情報を知った医療関係者が,①製造販売業者を経由して同大臣に報告するルートと,②直接同大臣に報告するルートの2種類がある。
上記①のルートにより,平成19年度から平成23年度までに製造販売業者から厚生労働大臣に対してされた一般用医薬品によるものと疑われる副作用報告は,合計1220例(毎年250例前後)ある。上記1220例のうち,死亡事例は,総合感冒剤(風邪薬)によるもの12例(中毒性表皮壊死融解症,肝障害,間質性肺疾患,スティーブンス・ジョンソン症候群等)
,解熱鎮痛消炎剤によるもの4例(ライ症候群,喘息発作重積,
代謝性アシドーシス等)
,漢方製剤によるもの2例(間質性肺疾患)など
合計24例となっている。
(乙5,56の2・資料3)
なお,一般用医薬品の種類別にみると,その品目数(平成25年5月当時)と市場規模(平成23年度)は,第一類医薬品が約100品目で約400億円,第二類医薬品が約8290品目で約6400億円,第三類医薬品が約2950品目で約2600億円であったところ,副作用報告症例数(平成23年度)は,第一類医薬品が12例,第二類医薬品が228例,第三類医薬品が12例であり,それぞれの市場規模に応じた販売数1000万個当たりの副作用発生頻度を推計すると,第一類医薬品が6.0,第二類医薬品が3.6,第三類医薬品が0.5であった。
(甲3・5,10
頁)

平成22年7月29日から平成23年11月30日までの間に,旧薬事法77条の4の2の規定に基づき製造販売業者から国へ報告された一般用医薬品によるものと疑われる副作用の症例において,販売経路についても報告のあった84例のうち,インターネット販売で購入された一般用医薬品による副作用の報告はなく,通信販売で購入された一般用医薬品による副作用の報告は1例であった。なお,上記報告においては購入経路の記載が必要的とされておらず,購入経路が不明であるか,又は記載されていないものが全体の約7割(全300例中,不明159例,未記載57例)を占めている。
(乙51の2・資料3)


平成25年2月1日から同月26日にかけて,薬剤師の在籍する松本市の薬局104を調査対象として行われた一般用医薬品における専門家の意識と実態に関する調査(有効回収数88件)によると,患者に対して薬の服用方法等を説明する際の分かりやすさについて肯定的に評価する薬剤師の割合(
「よくわかる」と「どちらかと言えばわかりやすい」の合計)は,店舗で直接対面して行う説明につき100.0%,テレビ電話による説明につき53.4%,電話による説明につき30.7%,インターネット等の記載を患者に読んでもらう方法による説明につき20.4%であり,説明の信頼性について肯定的に評価する薬剤師の割合(
「信頼できる」と
「概ね信頼できる」の合計)は,店舗で直接対面して行う説明につき98.8%,テレビ電話による説明につき46.6%,電話による説明につき23.9%,インターネット等の記載を患者に読んでもらう方法による説明につき8.0%であった。また,一般用医薬品のインターネットなどによる販売についてどのように考えるか10項目で聞いたところ,①購入者の状態が分からないため,適切な医薬品を選択する機会が失われ,安全性や有効性が確保できないと考える薬剤師の割合は61.4%(
「そう思う」
の割合。以下同じ。,②医療機関への受診が必要な際も,専門家から購)
入者へのアドバイスの機会がなくってしまうと考える薬剤師の割合は72.7%,③対面販売と同様に,適切な医薬品の選択や安全性の確保ができると考える薬剤師の割合は5.7%であった。
(乙19)

厚生労働省は,薬局・薬店が医薬品の販売に際して消費者に適切に説明を行っているかどうか等について調査する医薬品販売制度実態把握調査を平成21年度から毎年度行っているところ,平成26年10月から12月までの調査期間に行われた平成26年度の同調査によると,要指導医薬品の店頭販売(薬局・店舗販売業の店舗における店頭での販売をいう。以下同じ。
)の状況について,購入者が使用者本人であることの確認があった割合は80.1%,使用者の状況について確認があった割合は89.5%,購入者への情報提供があった割合は96.1%,薬剤師により情報提供が行われた割合は91.1%であった。また,第一類医薬品の販売状況について店頭販売とインターネット販売を比較すると,使用者の状況について確認があった割合は,店頭販売で87.6%,インターネット販売で83.9%,購入者への情報提供があった割合は,店頭販売で93.8%,インターネット販売で53.2%,購入者からの相談への適切な回答があった割合は,店頭販売で95.3%,インターネット販売で86.8%,薬剤師により相談への対応が行われた割合は,店頭販売で89.8%,インターネット販売で62.9%であった。
(乙27の1及び2,28の1及び
2)
(4)新ルール検討会の設置及び同検討会における議論等

厚生労働大臣は,最高裁平成25年1月11日判決を受けて,平成25年1月11日,一般用医薬品の使用は,有益な効果をもたらす一方で副作用の発生のリスクを伴うものであり,薬局・薬店の方々におかれては,医薬品の販売を行う際,安全確保のための方策に十分配意していただくことが重要であり,厚生労働省としては,今後,関係事業者などの関係者に広く御参画をいただき,法令などの郵便等販売に関する新たなルールを早急に検討することとしているなどとする談話を発表した。
(乙23)


厚生労働省医薬食品局長は,最高裁平成25年1月11日判決を受けて,平成25年2月,従来の規制に代わる一般用医薬品のインターネット販売等について新たなルール等を検討することを目的として,別紙4-1のとおり関係各界の専門家・有識者等の構成員から成る一般用医薬品のインターネット販売等の新たなルールに関する検討会(新ルール検討会)を設置した。新ルール検討会は,同年6月付けで,同検討会における議論の内容を取りまとめた「これまでの議論の取りまとめ」と題する報告書(新ルール検討会報告書。甲3)を公表した。
同報告書は,①一般用医薬品のインターネット販売等の新たなルールの検討に当たっては,安全性の確保と利便性のバランスを考慮し,安全性確保のための方策を講じた上でインターネット販売等による利便性を求めるニーズに応えていくことが必要であるとした上,②一般用医薬品の販売は専門家と購入者側との十分な情報交換(コミュニケーション)の下で行われる必要があるとし,そのコミュニケーション手段に求められる機能として,
(a)医薬品の適正使用のために,専門家が購入者側か
ら収集する必要がある情報(文字,音声,映像,実像,接触等)を収集できること,
(b)専門家と購入者側との間のやり取りに双方向性がある
こと,
(c)専門家と購入者側との間のやり取りが同時又は遅滞なく適時適切に行われること,
(d)専門家から購入者側に対して受診勧奨が行え
ること等の機能が求められるとした。
そして,第一類医薬品に関しては,
(a)につき,
(ⅰ)医療用から一
般用へ転用されてから間もないなど,一般用医薬品としての安全性評価が確立されておらずリスクが不明であるものや,
(ⅱ)日常に支障を来す
副作用のおそれがあり,特に注意が必要なものが含まれるため,購入される医薬品の種類等に応じて,販売する専門家(薬剤師)の判断の下,購入者側から使用者に関して収集され得る最大限の情報が収集される必要があること,
(b)につき,個々人の状況や理解度等に合わせて,販売
する専門家により適切に情報提供される必要及び提供された情報が使用者に確実に理解される必要があること,
(c)につき,購入者側からの購
入の意思決定をする上で必要な質問に対して,販売する専門家により,販売がなされる前に,同時又は遅滞なく,適時適切に応答される必要があり,販売後も,使用者からの使用上の留意事項等の質問に対して,販売する専門家により同時又は遅滞なく,適時適切に応答される必要があること,
(d)につき,使用者の状況等に応じて,販売する専門家により,積極的かつ確実な受診勧奨が行われる必要があるなどとした。もっとも,異論も併記されており,
(a)については,最大限の情報収集を行わなけ
れば副作用の発生が防げないことを科学的知見に基づいて立証できない医薬品については,必ずしも最大限の情報収集を義務化する必要がないとの意見もあった。
また,同報告書は,一般用医薬品販売に用いられる各コミュニケーション手段の特徴について検討を行い,①店頭における対面,②テレビ電話,③電話,④メール・ウェブ画面(インターネット通信を行う通信機器の画面をいう。以下同じ。
)での文字情報のやり取り(以下「メール・
ウェブ」という。
)の各手段につき,通常収集可能な情報を挙示するとと
もに,各手段が持っている特徴及び利点・欠点等を整理した。その内容は,収集の対象となる情報のうち「⑦症状の性質,状態等のうち,専門家が目視でのみ確認できるもの(症状の外見や状態等)
」及び「⑧症状の
性質,状態等のうち,専門家が嗅いだり,接触することでのみ確認できるもの(口臭,体臭,症状の状態等)
」について,店頭における対面で
はいずれも十分収集し得るとするのに対し,テレビ電話では前者の情報は一部収集できないものがあり,後者の情報は収集できないとし,電話及びメール・ウェブではいずれも収集できないとするものであり,また,テレビ電話の特徴及び利点・欠点等につき,音声及び映像を通じたやり取りが基本となるところ,映像と実像との差があるほか,嗅覚や接触からの情報は得られないなどとした。
そして,同報告書は,以上の点を踏まえて,リスク区分ごとの各コミュニケーション手段の評価や位置付けを行った。
このうち,第一類医薬品については,そのほとんどが医療用から一般用に転用(スイッチ)されるものであり,使用者による自己判断だけではなく,販売の際に,薬剤師が能動的に使用者の状況を把握した上で,医療機関へ受診勧奨すべきケースがあり,また,医療用から一般用に転用された直後のものについては,その使われ方が大きく変わることとなり,一般用としての安全性評価が確立しておらずリスクが不明の状態であるとされたが,その販売方法(インターネット販売の可否等)については合意が得られず,以下のような様々な意見が併記され,今後の対応においては,第一類医薬品が専門家たる薬剤師の判断により慎重に販売されるよう,情報通信技術の利活用も踏まえつつその販売方法について適切に判断すべきであるとした。
すなわち,①第一類医薬品には,その使用に当たってのリスクを可能な限り低減するため,薬剤師による目視,接触等を含め,使用者に関して収集され得る最大限の情報を収集すべきものがあり,その販売に当たっては,そうした情報が収集できる体制をとった上で慎重に販売すべきであるとの意見,②医療用から一般用に転用された直後の品目や劇薬に指定されたものなどについては,薬剤師による目視,接触等を含め,最大限の情報収集が必要ではないかとの意見,③薬剤師の五感を用いた情報収集により未然に被害を防げた事例が新ルール検討会に複数報告されているとの意見等があったとする一方で,④第一類医薬品については,薬剤師による目視,接触等によらなくとも,使用に当たってのリスクを可能な限り低減するために必要な使用者に関する情報収集が可能であり,第一類医薬品の全てをインターネットで販売することが可能との意見,⑤その販売に当たっては,そうした情報が収集できる体制をとった上で,薬剤師の判断による必要な情報の収集,適切な情報の提供,副作用発生時の相談等をメール,ウェブ画面,電話等で受け付けることもできるのではないかとの意見,⑥目視,接触等による確認ができなければリスクが大きすぎて販売してはならないということであれば,使用者の代理の者による購入(以下「代理購入」という。
)や症状が出る前の買い置きに
よる使用も禁止しないと整合性が取れないとの意見や,目視,接触等が店頭で義務付けられていないこととの整合性が取れないとの意見,⑦目視,接触等に頼らなければ副作用被害や有害事象を防止することができないことが科学的に証明されている一般用医薬品はないのではないか,使用者に関して収集され得る最大限の情報を収集すべき類型のものがあるのであれば,そうしたものは医療用とすべきではないか,あるいは,未知のリスクを販売時点で低減することは難しく,その低減のためには,購入履歴(薬歴)を管理し,販売後にフォローアップすることが重要なのではないかとの意見等があった。
また,第二類医薬品のうち,指定第二類医薬品(第二類医薬品のうち,特別の注意を要するものとして厚生労働大臣が指定するものをいう。以下同じ。
)についても,上記と同様に合意が得られなかったが,指定第二
類医薬品以外のものについては,その販売の体制を限定しないで,安全性確保のための一定の条件を課した上で販売することが可能であることにつき合意が得られた。
(以上につき,甲3,乙51の2)

日本薬剤師会は,平成25年5月10日付けで「対面による販売の利点」と題する書面(乙20)を作成し,同書面は,同日に開催された第8回新ルール検討会に提出された。同書面の内容は,対面による販売には,①患部の状態を確認することができる,②患者のにおいを確認することができる,③患者の動作,挙動を確認することができる,④患者を医療機関に紹介することができるという4つの利点があるとして,これらの利点に沿う25の事例を挙げるものであった。
(乙20,58の2)

(5)規制改革会議の見解
内閣府に設置されていた規制改革会議は,平成25年3月8日付けで,一般用医薬品のインターネット等販売については,これを広く認めることにより,店頭で購入することができない消費者など国民が自らの判断で選択肢を広げることのできる環境を実現し,その利便性を高めるとともに,インターネットや店頭という販売形態の別にかかわらず,安全性を確保することが重要であるとし,早急に,インターネット等で全ての一般用医薬品の販売を可能とすること,その際,それぞれの販売形態の特性や自主的なガイドラインも踏まえ,安全性を適切に確保する仕組みを設けること等を政府に対して強く求めたいなどとする見解を示した。
(乙53の2・参考資料1)
(6)内閣総理大臣又は内閣の見解等

第183回国会の衆議院において,浅尾慶一郎議員(以下「浅尾議員」という。
)が平成25年5月15日に提出した質問第73号「医薬品のイ
ンターネット販売に関する質問主意書」
(甲4)には,副作用報告の実証
データにつき,①平成21年の旧薬事法の施行までにインターネット販売に起因する副作用報告は示されていなかったが,その後,インターネット販売に起因するものであって,かつ対面販売であれば防止することができたといえる副作用報告はあったか,その他医薬品のインターネット販売を禁止すべき新たな具体的事実が発生したか,生じたとする場合,その事実につき具体的に説明されたいとし,②逆に,対面販売にもかかわらず発生した副作用についてはどのように調査しているか,その調査方法・内容・結果を明らかにされたいとする趣旨の質問が含まれていたところ,内閣総理大臣は,同月24日に提出した答弁書(甲5)において,上記質問に対し,旧薬事法77条の4の2の規定に基づく副作用等の報告については,平成22年7月29日から一般用医薬品の購入経路に関する情報を報告の対象としたが,その後においても購入経路に関する情報の記載がない等購入経路が不明な報告が多いことから,浅尾議員指摘の旧薬事法の施行後にインターネット販売及び対面販売により購入された一般用医薬品の副作用被害の発症例の数については,いずれも正確に示すことは困難であり,また,上記の副作用等の報告については,医薬品と副作用との因果関係等の評価に関し,インターネット販売及び対面販売のいずれについても販売時の情報提供の内容等に係る調査が実施されていないことから,上記質問に係る①インターネット販売に起因するものであって,かつ対面販売であれば防止することができたといえる副作用報告等の有無及び②対面販売にもかかわらず発生した副作用の調査結果等については,いずれも答えることは困難である旨の答弁をした。
(甲4,5)

内閣総理大臣は,平成25年6月5日,
「成長戦略第3弾スピーチ」と
題するスピーチの中で,同日の規制改革会議からの答申を受け,消費者の安全性を確保しつつ,しっかりしたルールの下で,全ての一般医薬品のインターネット販売を解禁する,インターネットでの取引がこれだけ定着した現代で,対面でもインターネットでも,とにかく消費者の安全性と利便性を高めるというアプローチが筋であるとする趣旨を述べた。
(甲6)


内閣は,平成25年6月14日,日本再興戦略(甲7)の閣議決定を行い,同戦略の中で,①一般用医薬品については,インターネット販売を認めることとし,その際,消費者の安全性を確保しつつ,適切なルールの下で行うこととし,②ただし,スイッチ直後品目及び劇薬指定品目については,他の一般用医薬品とはその性質が異なるため,医療用に準じた形での慎重な販売や使用を促すための仕組みについて,その成分,用法,用量,副作用の発現状況等の観点から,医学・薬学等それぞれの分野の専門家による所要の検討を行い,所要の制度的な措置を講じ,③検討に当たっては,インターネット販売か対面販売かを問わず,合理的かつ客観的な検討を行うものとする旨の方針を示した。
(甲7,乙62の2・資料2)

(7)スイッチ直後品目検討会合等の設置及び同会合等における議論の結果等ア
厚生労働省医薬食品局長は,上記(6)ウの日本再興戦略における方針を受けて,平成25年8月,①スイッチ直後品目及び劇薬指定品目について医療用に準じた形での慎重な販売や使用を促すための仕組みについて所要の検討を行い,同年秋頃までに結論を得ることを目的として,別紙4-2のとおり医学,薬学の専門家6名の構成員から成るスイッチ直後品目等の検討・検証に関する専門家会合(スイッチ直後品目検討会合)を設置するとともに,②一般用医薬品の販売に当たっての具体的なルールを作成することを目的として,別紙4-3のとおり関係各界の専門家・有識者等の構成員から成る一般用医薬品の販売ルール策定作業グループ(以下「販売ルール策定グループ」という。
)を設置した。
(甲9,10)

内閣府に設置されていた規制改革会議は,平成25年9月12日付けで,①一般用医薬品のインターネット販売について,スイッチ直後品目等28品目についてインターネット販売が制約される方向で議論が進められる懸念があるが,インターネット販売と対面販売とに不合理な差を設けることは,同年6月の閣議決定(上記(6)ウの日本再興戦略)の趣旨に反するものであるとし,②安全性の確保を前提に,インターネットを活用して国民の選択肢の拡大と利便性の向上を図るため,スイッチ直後品目検討会合等において上記閣議決定の趣旨を徹底するとともに,政府に対し,インターネット販売に過剰な規制を設け,国民の利便性が損なわれることがないよう十分留意すること,今後の審議及び取りまとめに当たっては,上記閣議決定の内容に従い,インターネット販売と対面販売とに合理的根拠のない差を設けず,それぞれの販売形態の特性を踏まえた合理的かつ客観的な検討を行った上で,双方に安全性確保の仕組みを設けること等について,適切な対応を要請する旨の意見を公表した。
(甲8)


スイッチ直後品目検討会合は,平成25年10月8日付けで,同会合における議論の内容を取りまとめた「スイッチ直後品目等の特性及び販売時の留意点について」と題する報告書(スイッチ直後品目検討会合報告書。甲10)を公表した。同報告書の内容は,①スイッチ直後品目の特性として,医療従事者による厳格な管理から外された直後で,かつ一般用として専門家の関与が大きく減少し,広く様々な状態の下で使用され得る医薬品であるため,新たな健康被害・有害事象が発現するおそれがあることや,そのリスクも不明な状況であり,必要なリスク低減方策も採られていないことを指摘し,新たな健康被害・有害事象が発現する原因として,(a)使
用者の変化,適用から外れた状態での使用,
(b)連用や本来受診すべき状
態の放置,
(c)多量や頻回の使用,乱用,
(d)服用中の他の医薬品や健
康食品等との相互作用及び(e)副作用の兆候の見逃しを挙げ,②スイッチ直後品目の販売時の留意点として,上記特性を踏まえ,
(a)薬剤師と購
入者の双方向での柔軟かつ臨機応変なやり取りを通じて,使用者の状態を慎重に確認するとともに適切な指導と指導内容の確実な理解の確認を行った上で販売するなど,医療用医薬品に準じた最大限の情報収集と,個々人の状態を踏まえた最適な情報提供を可能とする体制を確保した上で,丁寧かつ慎重な販売が求められ,
(b)広く大量に購入できるような形や簡便に
購入できる形での流通は避けるべきであり,
(c)副作用等があった際に,
販売した薬剤師が責任をもって即座に対応できることが必要であるとし,上記(a)の留意点に関し,
(ⅰ)服用している医薬品や健康食品等との相
互作用,副作用の兆候等も含め,薬剤師が使用者の状態を的確に把握する必要性や,特に,使用者は自らの症状の程度や状態について正しく判断・申告できないおそれがあるため,薬剤師が知識・経験を持って直接判断する必要性等があること,及び(ⅱ)薬剤師から使用者に対して,当該スイッチ直後品目の特性(一般用医薬品としてのリスクが不明であり,新たな健康被害・有害事象が発現するおそれがあることを含む。
)や使用方法,個
々の使用者の状態に応じた注意事項等を伝達・指導するとともに,購入者の反応や対応等によりこの伝達・指導事項を確実に理解したことを薬剤師が確認する必要性があることを踏まえるものとし,③スイッチ直後品目の使用者以外の代理人への販売や,症状が出ていない時点での常備薬としての購入は認めるべきではないとし,④スイッチ直後品目については,少なくとも一般用医薬品としてのリスクが不明である期間中は,経過観察の期間として,これまでの販売方法ではなく,上記②及び③の内容を確実に担保した上で販売することが適当であるなどとするものであった。なお,同報告書において,
「五感」という文言は用いられていない。
(甲10)

販売ルール策定グループは,平成25年10月8日付けで,同グループにおける議論の内容を取りまとめた「一般用医薬品の販売ルール等について」と題する報告書(甲9)を公表した。同報告書の内容は,①一般用医薬品の販売ルールとして,店舗における専門家の関与の下で販売され,専門家による的確な確認・情報提供等が行われることを担保するための種々の措置を講じ,②偽販売サイトや偽造医薬品対策としても種々の措置を講ずることとするというものであった。
(甲9)

(8)旧薬事法改正法案の原案の作成及び修正並びにこれについての内閣法制局に対する説明等

厚生労働省医薬食品局は,平成25年8月までに,旧薬事法改正法案の原案を作成して内閣法制局の審査に付した上,同月,これについての説明資料(甲37)を作成し,同月20日付け法制局審査資料とした。同説明資料は,①スイッチ直後品目等の要指導医薬品はリスク不明の状態である等の特性を有するため,購入者が用法・用量,使用上の注意(禁忌事項,飲み合わせ)等に関する情報を十分に理解するとともに,購入者の個別具体的な状況に応じて,薬剤師が指導を行うことにより,その適正な使用を確保し,副作用等による健康被害のリスクを可能な限り小さくする必要があるとし,②対面によるやり取りにおいては,薬剤師が,五感を用いて把握する購入者の反応,雰囲気,状態等を踏まえながら,説明すべきポイント,強調すべきこと等の強弱をつけて情報提供すること等が可能であり,購入者としても,薬剤師の情報提供等を聞きながら,疑問に思ったことについて会話の中でその都度質問できるため,理解が深まりやすいとし,他方,対面以外の方法によるやり取りは,メール,電話,テレビ電話のいずれについても,対面によるやり取りと比べて劣るものと考えられるとし,③医薬品が多量購入・頻回購入により乱用されると健康被害のリスクが高まるが,自宅にいながらインターネット等を用いて対面以外の方法による購入を認めることにより,店舗に実際に赴いて対面により購入する場合と比べて,複数の店舗からの多量購入・頻回購入が容易になると考えられるとし,④スイッチ直後品目及びダイレクト直後品目については,(a)薬剤
師は,五感を用いて把握する購入者の反応,雰囲気,状態等を最大限踏まえ,また,その理解度を確実に確認しながら,説明すべきポイント,強調すべきこと等の強弱をつけて適切に情報を提供し,
(b)薬剤師は,上記(
a)に加えて,他に使用する医薬品,健康食品等との相互作用,副作用の兆候,長期連用等について見逃さず,場合によっては,他の代替可能な一般用医薬品への変更や,医療機関における受診等について指導するなどの取扱いを徹底することが不可欠であるとし,⑤上記④のような取扱いの徹底によって全ての健康被害の発生を防止することができるとは限らないが,要指導医薬品の特性を踏まえると,そのリスクを可能な限り低減し,最も安全性を確保し得る手段を採ることが適当であり,こうした観点からは,対面以外の方法によっては上記④のような取扱いを徹底することが困難であるため,対面による情報提供及び指導を行うことが必要であるなどとするものであった。
また,上記の原案は,要指導医薬品について,旧薬事法下の一般用医薬品と同様に代理購入を認める内容のものであったところ,厚生労働省医薬食品局は,内閣法制局の担当官から,①要指導医薬品について,代理購入を認めるにもかかわらず情報提供及び指導を対面によらなければならない理由及び②代理購入を認めるにもかかわらず,使用者本人に対するテレビ電話を用いた情報提供及び指導では不可とする理由を問われたのに対し,上記説明資料において,上記①の問につき,代理購入を認めるからといって,要指導医薬品について対面以外の方法によることを認めることは本末転倒であり,使用者本人による購入又は代理購入のそれぞれの場合において,リスクを可能な限り低減し,最も安全性を確保し得る手段として,対面による情報提供及び指導を行うことが必要であるなどと回答し,上記②の問につき,情報通信技術の進展により,高性能のテレビ電話を利用すれば,対面に近いやり取りは一定程度可能であるとも考えられるが,それでもなお実際の対面には劣るものであり,そのため,傷病等により使用者本人が自ら店舗に赴くことができないような場合には,使用者本人に対してテレビ電話を用いた情報提供や指導を行うよりも,使用者の状態等を把握している代理人に対して,飽くまで対面により情報提供及び指導を行うことが適当であるなどと回答した。
(以上につき,甲37)

厚生労働省医薬食品局は,平成25年9月,要指導医薬品の購入者(販売又は授与の相手方)につき,これを使用しようとする者又は現にその看護に当たっている者に限定する内容の条項案を含む「薬事法及び薬剤師法の一部を改正する法律案

第四部長御指摘の事項について」と題する書

面(甲38)を作成し,同月16日付け法制局審査資料とした。
(甲3
8)

厚生労働省医薬食品局は,上記イの後,要指導医薬品に関する情報提供及び指導は,実際にこれを使用しようとする者に対して行う必要があることから,販売等の相手方は使用者に限ることとする(正当な理由がある場合は,この限りでない。
)とする説明資料を作成し,平成25年9月26
日付け法制局審査資料とした。
(甲39,乙36)


厚生労働省医薬食品局は,平成25年10月,旧薬事法改正法案に係る説明資料(甲30)を作成し,内閣法制局の審査資料とした。同説明資料は,要指導医薬品という区分の新設に係る改正の趣旨につき,①旧薬事法下の一般用医薬品のうちスイッチOTC及びダイレクトOTCは,いずれも,製造販売開始後にそのリスク等に関する調査及び評価を行っている期間中は,専門的知識のない一般の需要者が使用する中で,これまで予見されていない副作用が発生し得るものであって,このような性質を踏まえると,スイッチ直後品目等は,一般の消費者に使用されるに際し,他の一般用医薬品と比べて,用法・用量,使用上の注意(禁忌事項,飲み合わせ)等に関する情報が十分に理解された上での適正使用を徹底することが必要であるとし,②加えて,薬剤師は,使用者が他に使用している医薬品との相互作用,副作用の兆候,長期連用等について見逃さず,その薬学的知見に基づき,使用者に関する情報を踏まえ,販売等する医薬品の飲み方(服用を止めるべきタイミング等)を個別具体に指示し,場合によっては医療機関への受診や他の代替可能な一般用医薬品への変更を促すことが必要であるとした上,③これらの対応については,対面による情報提供の方が対面以外の方法による情報提供よりも,薬剤師と購入者との直接のやり取りを通じて,購入者の理解を確認しながら,より柔軟かつ丁寧に行うことができることから,スイッチ直後品目等の販売時の情報提供については,従来どおり,薬剤師が対面により行うこととすることが適当である(購入者については,今後限定することとする。
)などとするものであった。
なお,同説明資料によれば,
「薬学的知見に基づく指導」とは,薬剤師が
有する薬学的知見に基づき,購入者から確認した使用者に関する情報(年齢,性別,症状,体質,服用履歴等)を踏まえ,当該使用者の個別具体の状態,状況等に合わせて,要指導医薬品の使用に関しすべきこと,すべきでないことを示し,それに従うよう誘導する行為をいい,具体的には,当該医薬品の飲み方(用法・用量,服用を止めるべきタイミング等)を個別具体に指示すること,症状や併用医薬品等を踏まえ他の医薬品への変更を促すこと,医療機関への受診を促すこと等が想定されるとされている。(以
上につき,甲30,弁論の全趣旨)
(9)スイッチ直後品目検討会合の座長が用意したメッセージの読上げ及び4大臣の会合等

厚生労働省医薬食品局長は,平成25年10月29日に開催された第2回産業競争力会議医療・介護等分科会の場で,スイッチ直後品目検討会合のB座長が用意した,
「我々としては,スイッチ直後品目と劇薬について
は,薬剤師と患者さんとが直接顔を合わせて,よく話し合い,薬剤師が患者さんの状態を五感を用いて判断し,販売する必要があると思っている。
」とのメッセージ(座長メッセージ)が記載されたメモを読み上げた。同メモは,作成日付の記載がなく,作成名義の記載もないものであった。医薬食品局長は,同メモを持っていた経緯につき,同年11月27日の衆議院厚生労働委員会において,スイッチ直後品目検討会合の構成員全員が対面販売の必要があるとの意見でまとまったと理解していたが,同年10月8日付けのスイッチ直後品目検討会合報告書には具体的にインターネット販売を禁止するとは書いていないのではないかという意見が聞こえてきたことから,B座長と相談して座長メッセージを準備してもらったものであり,日付もクレジットもないメモである点については,必要なときに出してくださいという形で預かっていたものであるなどと説明した。(甲
14ないし16,乙32の2)


平成25年11月5日,厚生労働大臣,内閣官房長官,経済再生担当大臣及び規制改革担当大臣の4名による会合が行われた際,規制改革担当大臣は,
「代替案」と題する書面(乙6)により,スイッチ直後品目等のインターネット販売を禁止するのでなく,これを販売することができる主体を店舗販売業者であって厚生労働大臣に登録をした者に限るなどとする代替案を示し,これがスイッチ直後品目検討会合に諮られることとなったが,同会合は,同日付け「
「代替案」について」と題する書面(乙7)により,
①スイッチ直後品目等については,その特性や,購入者が自らの症状の程度や状態,副作用の兆候等を正しく判断・申告できないおそれがあることから,
「販売時」に,薬剤師が,対面により,患者の症状等を直接五感を用いて判断することが必要であり,インターネット販売は認められないとし,②上記代替案の内容は,基本的に「販売後」の対応に関するものであり,また,
「販売時」に五感を用いて判断することをどのように代替する
かも示されておらず,スイッチ直後品目検討会合の考え方を代替できる内容ではないとする見解を示した。
(甲16,乙6,7,32の2)
(10)

旧薬事法改正法案の国会における審議の経過等
旧薬事法改正法案は,平成25年11月12日,内閣から第185回国会に提出され,同月20日,衆議院厚生労働委員会に付託された。(乙
9)


平成25年11月20日の衆議院厚生労働委員会において,旧薬事法改正法案の趣旨説明の聴取が行われ,厚生労働大臣は,同法案の提案の理由として,健康長寿社会の実現を目指すためには,医薬品の販売制度について,国民の利便性に配慮しつつ,安全性を十分に確保する必要があり,今回の改正は,最高裁平成25年1月11日判決,同年6月に閣議決定された日本再興戦略等を踏まえ,医薬品の販売方法に関する新たなルールの整備等を行うなど所要の措置を講ずるものであるとする趣旨を述べた。(弁論
の全趣旨)


平成25年11月22日の衆議院厚生労働委員会において,旧薬事法改正法案の質疑が行われた。
同日の質疑において,新原秀人議員(以下「新原議員」という。
)が本
件対面販売規制を設ける法案が提出された経緯等を尋ねる質問をしたのに対し,政府参考人である厚生労働省医薬食品局長は,医学,薬学の専門家6名から成るスイッチ直後品目検討会合において議論した結果,インターネットでは事跡が残ったり夜中でも対応できたりするメリットもあるが,スイッチ直後品目については,患者本人が気が付いていないようなこと(例えば顔がむくんでいるとか,あるいは目の周りが黄色くなっているとかというようなこと)が対面だと分かるけれども,患者が分からないのではインターネットでは申告のしようがなく,あるいは,お年寄りなどで自分の症状をうまく表現ができない方もいるだろうというようなことも含めて,臨機応変な対応をした方がよいだろうということで,スイッチ直後品目については対面で販売をすべきだという結論になったという次第である旨の答弁をした。また,中島克仁議員(以下「中島議員」という。
)が,要指導医薬品のカテゴリーができてインターネ
ット販売が認められなかった理由と根拠等を尋ねる質問をしたのに対し,医薬食品局長は,スイッチ直後品目検討会合の専門家の議論では,スイッチ直後品目は,リスクが不明である一方,使用者が自らの症状や状態,副作用の兆候等を正しく判断,申告できないおそれがあるということで,薬剤師が対面で使用者本人の状態等を直接五感を用いて判断した上で販売することが必要であるという意見が出されたことから,こうした専門家の意見を踏まえて,要指導医薬品という医療用医薬品に準じたカテゴリーを新たに設けて,薬剤師による対面での販売を義務付けることとしたものである旨の答弁をした。
新原議員が,要指導医薬品となることが想定される28品目の医薬品が挙げられているところ,これに選ばれる過程等を尋ねる質問をしたのに対し,厚生労働大臣は,劇薬以外のスイッチ直後品目23品目についてはまだリスクが不明であり,それを売るときには五感を使って確認しなければいけない,顔のむくみがあるか,黄疸があるかなど色々なことをなかなか本人では気付かないところもあるので,そういうところに留意しながら確認をするという意味で,インターネットでこれを売るわけにはいかないなどと述べた。また,中島議員が,インターネット販売の全面解禁に至っておらず,一歩後退ではないかなどと報道されていることに対する厚生労働大臣の認識等を尋ねる質問をしたのに対し,厚生労働大臣は,その答弁の中で,専門家である薬剤師の方々が五感をもって確かめなければならない分野があるということで要指導医薬品というカテゴリーをつくったわけであるなどと述べた。
新原議員がスイッチ直後品目23品目や劇薬で過去に薬害等の問題が起きたことはないか等を尋ねる質問をしたのに対し,医薬食品局長は,スイッチ直後品目については,医療用医薬品で使用実績があり,医療の厳格な管理の中でも副作用の報告があるが,インターネット販売は,医療用医薬品は認めていないし,OTC薬も従来第三類医薬品だけを認めていたので,インターネットで売って何か被害が出たのかは具体的には把握していない旨の答弁をした。
高橋千鶴子議員が,インターネット販売がきちんとできているかの実態についての調査がどのようになっているのか等を尋ねる質問をしたのに対し,医薬食品局長は,平成22年からどのような経路で副作用の被害が起こったかのデータをとるようにしており,同年7月29日から平成25年6月30日までの間で,全体で635件の副作用の被害(因果関係が不明なものを含む。
)が出ているところ,このうち44件の副作
用が,必ずしもインターネット販売でということではないが対面販売以外で生じたものである旨の答弁をした。また,重徳和彦議員が,インターネット販売をしたから,あるいは対面販売でなかったから副作用が起こった事例が実際にどのくらいあるのか等を尋ねる質問をしたのに対し,医薬食品局長は,上記答弁と同旨の副作用の件数を述べるとともに,上記の副作用に関する調査は,販売経路がはっきりしないものが400件以上あるものである旨を述べた。
(以上につき,乙32の1)

平成25年11月27日の衆議院厚生労働委員会において,旧薬事法改正法案の質疑,討論が行われた後,同法案の採決が行われ,賛成多数で可決された。その際,政府に対し,医師又は歯科医師から交付された処方箋により調剤された薬剤については,その販売又は授与の際に,薬剤師が対面により患者等に対して必要な情報提供,薬学的知見に基づく指導等を行うことを義務付ける仕組みを今後とも堅持することなど4つの事項について適切な措置を講ずるよう求める旨の附帯決議を付することが,賛成多数で議決された。
同日の質疑において,河野正美議員(以下「河野議員」という。
)が対面
販売の重要性に関する見解を問う質問をしたのに対し,医薬食品局長は,対面での販売は,臨機応変なやり取りができる点や,使用者本人が分かっていないような状態もきちんと把握ができ,あるいは本人が症状をうまく訴えられないようなことも対応ができる点でインターネット等での販売よりも優れている面がある旨の答弁をした。また,河野議員が,一般用医薬品のインターネット販売が禁止されないことについて,インターネット販売で対面販売に代わるだけの安全性を担保できるのかを尋ねる質問や,インターネットで五感は使えないが大丈夫かを尋ねる質問をしたのに対し,医薬食品局長は,関係者の方で時間をかけてルールを決めたことから,実質的に,一般用医薬品の販売については,慎重で安全性に配慮をした販売ができ,対面との間で差がないような安全性の配慮ができると考えている旨の答弁をした。
(以上につき,乙32の2,33)


平成25年11月28日の衆議院本会議において,旧薬事法改正法案の討論が行われた後,同法案の採決が行われ,賛成多数で可決された。(乙3
2の3)


旧薬事法改正法案は,平成25年12月2日,参議院厚生労働委員会に付託された。
(乙9)

平成25年12月3日の参議院厚生労働委員会において,旧薬事法改正法案の趣旨説明の聴取が行われ,厚生労働大臣は,同法案の趣旨として,上記イと同旨を述べた。
(弁論の全趣旨)


平成25年12月5日の参議院厚生労働委員会において,旧薬事法改正法案の質疑,討論が行われた後,同法案の採決が行われ,賛成多数で可決された。
同日の質疑において,藤井基之議員が旧薬事法改正法案の国会提出や衆議院の議論を経て同日の質疑に至った感想等を尋ねる質問をしたのに対し,厚生労働大臣は,その答弁の中で,スイッチOTCに関しては,医療用医薬品と似通った,非常に薬理効果の強い薬であるから,それに関してどのように取り扱うのかを,医学,薬学の専門家の方々に議論してもらい,その結果を基に,今般法案を提出したということである旨の認識を述べた。
東徹議員が,医薬品の販売経路,態様によって副作用の出現に有意差が生ずるのか,海外での医薬品のインターネット販売において,過去にインターネット販売が原因となって生じた重篤な副作用事例があるか等を尋ねる質問をしたのに対し,医薬食品局長は,医薬品の副作用に関して販売経路,態様によって差があるかという点については,従来から紹介しているような少数の例しかなく,これを判定するだけの材料は持ち合わせていないとし,海外の事例については,インターネットで販売された偽造薬で重篤な健康被害が出たという例を1例把握しているが,偽造薬のケース以外には把握していないとする趣旨の答弁をした。
(以上につき,乙32の4)


平成25年12月5日の参議院本会議において,旧薬事法改正法案の採決が行われ,賛成多数で可決された。
(乙32の5)

上記ケの可決により成立した薬事法及び薬剤師法の一部を改正する法律は,平成25年12月13日,平成25年法律第103号として公布され,同法律は,一部の規定を除き,平成26年6月12日に施行された。(前
提事実(4))

(11)

スイッチOTC等のリスク評価手続についての方針の決定等
平成25年12月20日,薬事・食品衛生審議会医薬品等安全対策部会が開催され,①スイッチOTCのリスク評価手続について,原則4年間でリスク区分を決定するための評価を行ってきたが,スイッチ直後品目検討会合報告書での指摘を踏まえ,製造販売後調査の期間や内容は現状どおりとしつつ,リスクが不明な期間をできるだけ短縮するため,リスク区分の評価とは別に,原則3年間で一般用医薬品としての販売可否の評価を行い,問題がないことが確認されれば,要指導医薬品から一般用医薬品へ移行するものとし,②ダイレクトOTCのリスク評価について,新規に開発された医療用医薬品と同様に使用経験がなく,副作用発生頻度の年次毎の変動や長期服薬時の安全性等を確認する必要があること等を踏まえ,これまでと同様に4ないし8年の再審査のための調査期間で製造販売後調査を行うこととし,一般用医薬品としての評価手続の期間を短縮することにより,上記調査期間終了時点で一般用医薬品としての販売可否の評価を行い,問題がないことが確認されれば,要指導医薬品から一般用医薬品へ移行するものとするなどの方針が決定された。
(甲11,27,乙31)


厚生労働省医薬食品局安全対策課長は,上記部会において,過去に医療用医薬品から一般用医薬品に転用されたものについて,副作用が非常に増えたとか,安全性が毀損されたというような情報は特になく,かなりのものは4年目に第二類医薬品となり,第一類に残ったものについても,副作用が大きな原因でなるというよりは,使い方について,より細かい注意が必要であるなどの理由で第一類に残るものがほとんどだと理解している旨の認識を示した。
(甲27)
(12)

要指導医薬品の指定の経過
薬事・食品衛生審議会要指導・一般用医薬品部会は,平成26年1月29日及び同年4月4日の2回にわたり,当時のスイッチ直後品目等(いずれも別紙3記載1(1)の製剤に該当するもの)及び5品目の劇薬について要指導医薬品の指定の要否を審議し,いずれもその指定を要する旨の議決をした。その審議に当たっては,
「スイッチ直後品目等一覧」と題する資
料(甲56の2,乙26)が配付され,同資料には,検討の対象となる個別の品目について,①品目の概要(効能・効果,用法・用量,審査時の主な注意事項等)
,②医療用医薬品情報(医療用医薬品としての使用経験があるものにつき,医療用医薬品としての効能・効果,用法・用量等),③
副作用情報(一般用医薬品及び医療用医薬品それぞれについての副作用報告の有無及び内容)及び④添付文書情報等に基づいた留意点((a)禁忌
等に関連して販売時に収集・確認すべき事項及び(b)副作用に関連して販売時及び服用後・使用後に注意を促すべき事項)が記載されていた。また,併せて,
「スイッチ直後品目等(添付文書・審査報告書等)
」と題す
る資料(乙67)が配付され,同資料に含まれている個別の品目に係る添付文書の内容及び医薬品医療機器総合機構の審査報告書(副作用症例等に関する見解等を含むもの)の内容が審議に供された。
(甲20,31ない
し33,56の2,乙26,46,47,67)


厚生労働大臣は,別紙3記載1の製剤につき,薬事・食品衛生審議会から,平成26年4月17日付けで,要指導医薬品としての指定を適当とする答申を受け,同年6月6日厚生労働省告示第255号により,上記製剤を医薬品医療機器等法4条5項4号の規定に基づき同大臣が定める要指導医薬品として指定した。
(甲22,乙3,4)


厚生労働大臣は,別紙3記載2の製剤につき,薬事・食品衛生審議会から,平成26年12月12日付けで,要指導医薬品としての指定を適当とする答申を受け,平成27年3月13日厚生労働省告示第58号により,上記製剤を医薬品医療機器等法4条5項3号の規定に基づき同大臣が定める要指導医薬品として指定した。
(乙40,48)

厚生労働大臣は,別紙3記載3の製剤につき,薬事・食品衛生審議会から,平成27年6月22日付けで,要指導医薬品としての指定を適当とする答申を受け,同年7月27日厚生労働省告示第324号により,上記製剤を医薬品医療機器等法4条5項3号の規定に基づき同大臣が定める要指導医薬品として指定した。
(乙41,49の1及び2)


厚生労働大臣は,別紙3記載4の製剤につき,薬事・食品衛生審議会から,平成28年12月27日付けで,要指導医薬品としての指定を適当とする答申を受け,平成29年1月13日厚生労働省告示第10号により,上記製剤を医薬品医療機器等法4条5項3号の規定に基づき同大臣が定める要指導医薬品として指定した。
(乙73,75)


上記イないしオのとおり要指導医薬品として指定された医薬品のうち,別紙2記載の製剤及び劇薬である製剤以外のものについては,現在までにその指定の対象から除かれている。
(前提事実(5),甲22,乙2,15,
34,35,40ないし44,72ないし74)

(13)

一般用医薬品及び要指導医薬品の品目数及び市場規模
一般用医薬品に該当する医薬品の品目数は,平成28年5月30日時点で
1万0374品目である。要指導医薬品に該当する医薬品の品目数(販売開始後のもの)は,要指導医薬品制度が施行された平成26年6月12日の時点で20品目(劇薬である5品目を含む。
)であり,その後,おおむね14
品目から23品目の範囲内で推移している。
(甲31,乙46,65の1及
び2,弁論の全趣旨)
また,一般用医薬品の市場規模は,平成23年度において約9400億円(第一類医薬品約400億円,第二類医薬品(指定第二類医薬品を含む。以下同じ。
)約6400億円,第三類医薬品約2600億円)
,平成24年
度において約9240億円(第一類医薬品約423億円,第二類医薬品約6128億円,第三類医薬品約2689億円。なお,いずれも1億円未満を四捨五入した金額であるため,これらを合計しても一般用医薬品全体に係る金額と一致しない場合がある。以下同じ。,平成25年度において約927)
3億円(第一類医薬品約444億円,第二類医薬品約6043億円,第三類医薬品約2786億円)
,平成26年度において約8893億円(第一類医
薬品約395億円,第二類医薬品約5856億円,第三類医薬品約2641億円)
,平成27年度において約9360億円(第一類医薬品約398億円,第二類医薬品約6112億円,第三類医薬品約2849億円)であった。他方,要指導医薬品の市場規模は,平成26年度において約51億円,平成27年度において約26億円であり,一般用医薬品と要指導医薬品を合わせた市場規模は,平成26年度において約8944億円,平成27年度において約9385億円であった。
(以上につき,甲3,乙66)
(14)

インターネット販売を行う店舗の数等
平成25年2月末時点において,第一類医薬品又は第二類医薬品のインタ
ーネット販売を行っている薬局・薬店であって,郵便等販売を実施する旨の届出がされているものの数は,150店舗であったが,平成26年6月末時点で,インターネット販売を行う店舗の数は1039店舗,平成27年1月末時点では1178店舗となっている。また,その販売サイトの数は,平成26年6月末時点で1390,平成27年1月末時点で1641となっている。
(乙24,25)
(15)

原告の営業利益等
原告の営業利益は,平成25年12月期(同年4月から同年12月まで)
につき5752万8000円の黒字,平成26年12月期につき3億2039万1000円の赤字,平成27年12月期につき2億6418万5000円の赤字であった。
また,原告は,最高裁平成25年1月11日判決を受けて第一類医薬品及び第二類医薬品のインターネット販売を再開したところ,原告が平成25年1月から平成26年6月までの間に販売した第一類医薬品(当時の区分によるもの)であって,同月12日以降要指導医薬品となりインターネット販売をすることができなくなったものの粗利益は,平成25年1月から平成26年6月までの累計で8285万8299円であった。
(以上につき,甲6
5)
(16)

インターネット販売において実際に行われている購入者との意思疎通等
の方法

原告における方法
原告は,第一類医薬品のインターネット販売を行うに当たり,購入者との間でチャット等により文字情報のやり取りをするシステムを導入し,これを意思疎通の基本的手段として用いている。具体的には,購入者が特定の第一類医薬品を注文すると,①まず,医薬品ごとの使用上の注意事項を記載した画面を表示し,購入者がこれを読みその内容を確認した旨をボタン操作で送信することにより,情報が提供されたことを確認し,②次に,購入前アンケートの画面が表示され,当該第一類医薬品を使用しようとする者の年齢,他の薬剤又は医薬品の使用の状況その他の薬剤師による確認が義務付けられている事項(医薬品医療機器等法36条の10第2項,医薬品医療機器等法施行規則159条の15第4項)につき,購入者がそれを記載し又は選択するという方式によりその確認を行い,③その後,原告の店舗に勤務する薬剤師は,購入者から送信された同アンケートの回答内容を検討し,必要と判断するときは,購入者との間でチャットが行える画面を表示させ,更に確認すべき事項を確認するなどして,販売の可否を判断し,また,販売を可とするに当たり,使用に関する必要な指導をしたり,注意喚起をしたりする。
(甲40,41)

他社における方法
購入者が動画の撮影及び通信が可能な機器を有している場合には,スカイプやフェイスタイム等のいわゆるビデオ通話が可能なシステムを用いて,店舗に勤務する薬剤師との間で映像及び音声を通じた会話を行い得るものとしている事業者がある。
(甲40)

2
争点1(本件取消しの訴えの適法性)について
(1)処分の取消しの訴え(行政事件訴訟法3条2項)その他の抗告訴訟の対象となる行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為(行政処分)とは,公権力の主体たる国又は公共団体が行う行為のうち,その行為によって,直接国民の権利義務を形成し又はその範囲を確定することが法律上認められているものをいう(最高裁昭和28年(オ)第1362号同30年2月24日第一小法廷判決・民集9巻2号217頁,最高裁昭和37年(オ)第296号同39年10月29日第一小法廷判決・民集18巻8号1809頁参照)。
(2)本件各指定は,医薬品医療機器等法4条5項3号(ただし,平成26年6月6日厚生労働省告示第255号による指定については同項4号)の規定に基づき,同号において厚生労働大臣が指定すべきものとされている要指導医薬品について,具体的な医薬品を有効成分により指定したものである。同号イからニまでに掲げる医薬品(スイッチ直後品目,ダイレクト直後品目,毒薬及び劇薬)が厚生労働大臣の指定により要指導医薬品とされると,薬局開設者等は,薬剤師等に対して販売又は授与を行う場合を除き,当該医薬品を使用しようとする者以外の者に対して正当な理由なくその販売又は授与を行ってはならないとともに,その販売又は授与の際に薬剤師に対面による情報の提供及び薬学的知見に基づく指導を行わせなければならないこととなるなど,一般用医薬品とは異なる販売規制が及ぶこととなる(上記第2の1(3))

このような要指導医薬品の指定は,医薬品医療機器等法上の要指導医薬品制度の適用対象となるべき医薬品を定めるものであり,不特定多数の者を対象として一般的に適用されるものとなるから,同法の規定を補充し,同法の規定と一体となって国民を拘束するものであって,実質的には法規の性質を有し,法の執行行為としての行政処分とはその性質を異にするということができる。
そして,要指導医薬品の指定の法的効果は,薬局開設者等が実際に要指導医薬品の販売又は授与を行おうとする場合に初めて現実化,具体化するものであり,また,その法的効果は,限られた特定の者の法的地位に対してのみ影響を与える性質のものでもない。
以上のとおり,要指導医薬品の指定が,その指定を受けた医薬品の販売又は授与について上記のような販売規制を及ぼすという意味において一定の法状態の変動を生じさせるものであることは否定できないとしても,かかる効果は,不特定多数の者に対する一般的抽象的なそれであるにすぎず,このような効果が生じることをもって,特定の個人の具体的な権利ないし利益を直接的に制限する処分があったとみることはできない。
したがって,要指導医薬品の指定である本件各指定は,抗告訴訟の対象となる行政処分には当たらないというべきである。
このように解したとしても,要指導医薬品の指定がされた医薬品について上記の販売規制を受けることなく実際に販売又は授与を行おうとする者は,確認の利益を有する限り,実質的当事者訴訟を活用してその権利を有することを確認するなどの手段を採ることにより,自己の法的地位を主張することができるから,格別の不都合は生じず,その救済に欠けるとはいえない。他方,要指導医薬品の指定について行政処分該当性を肯定し,それに瑕疵があっても取り消されるまでは有効であるとか,出訴期間内に取消訴訟を提起しなければ重大明白でない瑕疵を主張してその効力を争うことができなくなるなどと解することは,必ずしも妥当でないと考えられる。
(3)原告は,建築基準法42条2項所定のいわゆるみなし道路の指定及び保安林の指定解除に関する最高裁判所の判例(最高裁平成10年(行ヒ)第49号同14年1月17日第一小法廷判決・民集56巻1号1項及び最高裁昭和52年(行ツ)第56号同57年9月9日第一小法廷判決・民集36巻9号1679頁)等を引用し,不特定多数の者を対象として一般的に適用される行為であるというだけでは行政処分該当性を否定されない旨主張する。しかしながら,上記の指定又は指定解除による法的効果は,本件で問題となっている要指導医薬品の指定におけるそれとは異なるものであって,いずれの判例も事案を異にし,本件に適切でない。
(4)以上によれば,本件取消しの訴えは,抗告訴訟の対象となる行政処分に当たらないものを対象として提起されたものであって,不適法であり,却下を免れない。
3
争点2(本件対面販売規制の憲法22条1項適合性)について
(1)判断の枠組み

憲法22条1項は,狭義における職業選択の自由のみならず,職業活動の自由の保障をも包含しているものと解すべきであるが,職業の自由は,それ以外の憲法の保障する自由,殊にいわゆる精神的自由に比較して,公権力による規制の要請が強く,憲法の上記規定も,特に公共の福祉に反しない限り,という留保を付している。しかし,職業の自由に対する規制措置は事情に応じて各種各様の形をとるため,その憲法22条1項適合性を一律に論ずることはできず,具体的な規制措置について,規制の目的,必要性,内容,これによって制限される職業の自由の性質,内容及び制限の程度を検討し,これらを比較考量した上で慎重に決定されなければならない。そして,その合憲性の司法審査に当たっては,規制の目的が公共の福祉に合致するものと認められる以上,そのための規制措置の具体的内容及び必要性と合理性については,立法府の判断がその合理的裁量の範囲にとどまる限り,立法政策上の問題としてこれを尊重すべきであるが,その合理的裁量の範囲については,事の性質上おのずから広狭があり得るのであって,裁判所は,具体的な規制の目的,対象,方法等の性質と内容に照らして,これを決すべきものといわなければならない(最高裁昭和43年(行ツ)第120号同50年4月30日大法廷判決・民集29巻4号572頁,最高裁昭和63年(行ツ)第56号平成4年12月15日第三小法廷判決・民集46巻9号2829頁参照)


規制の目的
医薬品医療機器等法は,医薬品等の品質,有効性及び安全性の確保並びにその使用による保健衛生上の危害の発生及び拡大の防止のために必要な規制を行うこと等を目的とし(1条)
,医薬品の製造,販売等につ
いて各種の規制を設けている。
同法における各種の規制のうち,薬局の開設及び医薬品の販売業についての許可制(4条,24条)は,医薬品が国民の生命及び健康を保持する上での必需品であることから,不良医薬品の供給から国民の生命,健康に対する侵害を防止するという目的を達成するために設けられたものである(最高裁昭和50年4月30日判決参照)
。また,医薬品の製
造販売の承認に関する規制(14条)は,医薬品は,人体にとって本来異物であり,治療上の効能,効果とともに何らかの有害な副作用の生ずる危険が内在するものであって,副作用の点を考慮せずにその有用性を判断することはできず,治療上の効能,効果と副作用の両者を考慮した上で,その有用性が肯定される場合に初めて医薬品としての使用が認められるべきものであることに照らし,医薬品の品質面の安全性のみならず,副作用を含めた安全性の確保を目的とするものであると解されるのであり(最高裁平成元年(オ)第1260号同7年6月23日第二小法廷判決・民集49巻6号1600頁参照)
,上記の製造販売の承認を与
えられた後に行われる再審査,再評価の制度(14条の4,14条の6)も,同様の目的を達成するために設けられたものということができる。
薬事法の平成18年改正においては,国民の健康意識の高まりを始め,一般用医薬品を取り巻く環境の変化等を踏まえ,セルフメディケーション(自分自身の健康に責任を持ち,軽度な身体の不調は自分で手当てをすること)を支援する観点から,その販売に当たっては,リスクの程度に応じた情報提供等が行われる体制を整備することが必要であるとの考え方に基づき,新たに,一般用医薬品という類型及びその区分を設けて(旧薬事法36条の3)「よりよく効く薬」

(同時に副作用等に注意
して使用すべきもの)を医師等の指示等に基づくことなく購入することを容易にするとともに,併せて,その適正な使用を図るための販売上の制限(情報提供をすること等)を付するという方向の改正が行われた(認定事実(1)エ及びオ)

この改正は,医薬品の適切な選択及び適正な使用に資するよう,一般用医薬品をリスク(副作用等により健康被害が生ずるおそれ)の程度に応じて区分し,その区分ごとに,専門家が関与した販売方法を定める等,医薬品の販売制度全般の見直しを行うこと等により,保健衛生上の危害の発生の防止を図ることをその趣旨,目的とするものであった。
そして,本件対面販売規制の性格は,上記の平成18年改正と同様に,一般用医薬品たり得る医薬品(スイッチ直後品目等)の販売制度に関する規制の一つとして位置付けられるものであり,本件対面販売規制に関する旧薬事法改正法案の国会審議においても,
「健康長寿社会
の実現を目指すため(中略)
,安全性を十分に確保する」趣旨のもので
あるとの説明がされていること(認定事実(10)イ)からすると,本件対面販売規制も,保健衛生上の危害の発生の防止を図ることを目的とするものであると解される。

規制の対象,方法等
本件対面販売規制の対象となるスイッチ直後品目等は,もともと医療従事者による管理の下で専門家が関与した上で販売されていたもの(スイッチ直後品目)であるか,医療用としての製造販売を経ずに当初から一般用医薬品としての製造販売の承認を与えられたもの(ダイレクト直後品目)であり,一般用医薬品としてのリスクが不明であるという特性を有するものである。そして,既に一般用医薬品として販売されている医薬品であっても,その不適正な使用により副作用が生じた症例(死亡事例を含む。
)が報告されていることは認定事実(3)のとおりであり,
このような副作用の発生を需要者において確実性をもって予想することは困難であると考えられる。
スイッチ直後品目等に内在する上記のような副作用の発生の危険に関する不確定なリスクの存在に照らすと,それを受容するか否かに関する判断をどの程度の水準において需要者個人の自己決定に委ねることが社会的にみて適切か(国民の生命,健康に対する侵害を未然に防止するための万全の措置を採るという予防原則の観点に立つべきか,そうではなく,利便性を優先すべきか)という問題は,一概に決することが困難な性質のものである。
本件対面販売規制の対象は,スイッチ直後品目,ダイレクト直後品目,毒薬及び劇薬であり,要指導医薬品とされるのがこれらの品目に限られていることからすると,その性質上,要指導医薬品に指定される品目が多数に及ぶ事態は想定し難く,実際に要指導医薬品に指定された品目数及びその市場規模をみても,一般用医薬品を含めた市場の中で僅かな割合にとどまる(認定事実(13))
。なお,本件対面販売規制は,平成21
年改正後施行規則とは異なり,第一類医薬品及び第二類医薬品の全てについて対面販売をすることを義務付けるものではない。
また,スイッチ直後品目については製造販売後調査の期間(原則として3年)が経過した後,また,ダイレクト直後品目については再審査のための調査期間(4年ないし8年)が経過した後,一般用医薬品としての販売可否の評価を行い,問題がなければ一般用医薬品に移行することとされているから,その規制の期間は限定されている。
これらの点からすると,本件対面販売規制は,郵便等販売をその事業の柱とする店舗販売業者に対しては一般用医薬品に限った郵便等販売を行うことを余儀なくされるという制約を生じさせるとしても,その開業又は事業の継続そのものの断念に結び付くような大きな制約的効果を有する規制であるとは認め難い。
そして,規制の方法としても,狭義における職業選択の自由そのものに制約を課するものではなく,職業活動の内容及び態様に対する規制にとどまるということができ,その職業活動の自由を相当程度制約するものであることが明らかであるとまではいえない。

小活
以上のような本件対面販売規制の目的,対象,方法等,すなわち,①本件対面販売規制は,保健衛生上の危害の発生の防止を図ることを目的とするものではあるものの,②その規制の対象が,一般用医薬品として販売することのリスクが不明な状況であるのにその受容に関する判断の一端を需要者個人の自己決定に委ねるという形態で販売されるものであって,いかなる強度の規制を設け,どの程度の水準において需要者個人の自己決定に委ねるのが社会的にみて適切かを一概に決することが困難な性質を有すること,③また,その規制が,スイッチ直後品目等の限られた品目を対象とすることから多数に及ぶ事態は想定し難く,かつ,限定された期間において行われ,職業活動の内容及び態様に対する規制にとどまると評価し得るものであることに照らすと,本件対面販売規制の合憲性の審査に当たっては,規制の目的が公共の福祉に合致するものであるとともに,その目的を達成するための手段として,その規制の必要性が認められ,かつ,規制内容につき合理性が認められるのであれば,立法府の判断はその合理的裁量の範囲にとどまるものとして尊重すべきであると解することが相当である。オ
原告の主張について
これに対し,原告は,本件対面販売規制は消極目的規制であるから,その合憲性を肯定するためには,職業の自由に対するより緩やかな規制によってはその目的を達成することができないと認められること(厳格な合理性の基準によること)を要する旨主張する。
しかしながら,憲法22条1項適合性の司法審査に当たり,立法府の判断をどの程度尊重すべきかという問題は,具体的な規制の目的,対象,方法等の性質と内容に照らして総合的にこれを決すべきものであって,規制の目的のみならず規制の態様も吟味すべきものであることは,上記アで判示したとおりであるから,規制の目的から直ちに,厳格な合理性の基準を用いるべきことが導かれるものとはいえない。したがって,原告の上記主張は,採用することができない。
また,原告は,本件対面販売規制によりインターネット販売を行う事業者が受ける権利の制約の程度は,薬局開設に係る距離制限規制による制約と比較しても小さいとはいえない旨主張するが,上記ウ

で判示したとこ

ろに照らし,採用することができない。
(2)本件対面販売規制の目的について
本件各規定を含む医薬品医療機器等法上の要指導医薬品に関する諸規定の内容並びに平成25年法律第103号の立法過程における厚生労働大臣の趣旨説明及び国会審議の内容(認定事実(10))等によれば,同法律は,製造販売後調査若しくは再審査のための調査に係る調査期間を経過しておらず,一般用医薬品としての安全性の評価が確定していない医薬品(スイッチ直後品目等)又は毒性若しくは劇性が強い医薬品(毒薬,劇薬)について慎重な販売及び使用を促すという観点から,これらの医薬品につき厚生労働大臣が要指導医薬品として指定する制度を設けたものであり,本件対面販売規制の目的は,上記のような性質を有する要指導医薬品につき,その不適正な使用による国民の生命,健康に対する侵害を防止し,もって保健衛生上の危害の発生の防止を図ることにあると解される。
このような目的は,公共の福祉に合致することが明らかであるということができる。
(3)本件対面販売規制の必要性及び合理性について

一般用医薬品の性質とその販売時における規制の必要性等について医薬品は,治療上の効能,効果とともに何らかの有害な副作用の生ずる危険が内在するものであることは上記(1)イ

で判示したとおりであ

るところ,これについて不適正な使用(投与禁忌や他の医薬品等との相互作用(飲み合わせ)を看過しての使用,本来の用法・用量を超えた多量又は頻回にわたる使用,乱用,本来受診すべき状態を放置しての長期間の連用等)がされた場合には,上記の危険が顕在化し,副作用等による健康被害を生ずるおそれがある以上,その適正な使用を図る必要性があることは,論を俟たない。
そして,一般用医薬品のように,医師等の処方箋や指示に基づかず,一般の需要者の選択によって使用されることが目的とされる医薬品であって,その効能及び効果において人体に対する作用が著しくないとされるものであっても,不適正な使用が行われた場合には,副作用等による健康被害が生じ得るものであること(認定事実(3)アないしエ)からすれば,適正な使用を図る必要性があることに変わりはなく,一般用医薬品の購入を希望する者に対してそれを販売するという局面においては,使用に当たって必要な情報を適切に提供し,又は購入者からの相談があればこれに応じることを通じて,購入者がその内容等を十分に理解できるようにすることが必要であることは,容易に肯定し得るところである。他方,一般用医薬品とされて一般の需要者の選択によって使用されることが可能とされる医薬品であっても,個々の医薬品としての安全性やリスクの程度(副作用の発生状況等)には様々なものがあり得ることからすれば(認定事実(3)ウ)
,その適正な使用を図るため,リスクの高
低による数種類程度の類型的な区分を設けた上,その販売に際しての情報提供や相談応需の在り方に関する規制について,リスクの区分ごとに差異を設け,リスクが高いものほど,情報提供や相談応需を専門性が高い者に担わせ,また,情報提供の確実性を高めるために書面による情報提供を義務付けることなどにより,不適正な使用を防止するための規制態様を強めるという手法を採用することには,相応の合理性があるということができる。

スイッチ直後品目等の性質とその販売時における規制の必要性等について
スイッチ直後品目等は,製造販売後調査又は再審査のための調査に係る調査期間を経過しておらず,一般用医薬品としての安全性の評価が確定していない医薬品である(上記第2の2(3)ないし(6)参照)。最初に
要指導医薬品に指定されたスイッチ直後品目(別紙3記載1(1)の製剤)についてみても,医療用医薬品として使用されている期間において何らかの副作用報告が存在するものがほとんどであり,それが100例以上に及ぶものがあるほか,死亡例があるものも多い(甲56の2,乙26)

平成25年2月に設けられた新ルール検討会においては,各界の有識者(別紙4-1参照)を構成員として,一般用医薬品全体についてのインターネット販売等のルールについての検討が行われたが,同年6月の取りまとめでは,スイッチ直後品目等を含む第一類医薬品全体を対象として様々な意見が出され,①その使用に当たってのリスクを可能な限り低減するため,薬剤師による目視,接触等を含め,使用者に関して収集され得る最大限の情報を収集すべきものがあり,その販売に当たっては,そうした情報が収集できる体制をとった上で慎重に販売すべきであるとの意見と,②薬剤師による目視,接触等によらなくとも,使用に当たってのリスクを可能な限り低減するために必要な使用者に関する情報収集が可能であるとの意見が対立した。そして,①の意見に沿うものとして,薬剤師の五感を用いた情報収集により未然に被害を防げた事例があるとの指摘がされる一方で,②の意見に沿うものとして,目視,接触等に頼らなければ副作用被害や有害事象を防止することができないことが科学的に証明されているものはないとの指摘がされた(認定事実(4)イ)。
その後,同月の閣議決定により,スイッチ直後品目及び劇薬指定品目については,他の一般用医薬品とはその性質が異なるため,その成分,用法,用量,副作用の発現状況等の観点から,医学・薬学等それぞれの分野の専門家による所要の検討を行うとの方針が示され(認定事実(6)ウ)
,同年8月,医学,薬学の専門家6名の構成員(別紙4-2参照)から成るスイッチ直後品目検討会合が設けられた。そして,同会合が明らかにした報告書は,スイッチ直後品目については,一般用医薬品として広く様々な状態の下で使用され得る医薬品であるため,新たな健康被害・有害事象が発現するおそれがある上,そのリスクも不明な状況であり,必要なリスク低減方策も採られていないことから,販売時においては,薬剤師と購入者の双方向での柔軟かつ臨機応変なやり取りを通じて,使用者の状態を慎重に確認するとともに,適切な指導と指導内容の確実な理解の確認を行った上で販売するなど,医療用医薬品に準じた最大限の情報収集と,個々人の状態を踏まえた最適な情報提供を可能とする体制を確保した上で丁寧かつ慎重な販売が求められる旨を指摘するものであった(認定事実(7)ウ)

以上のような検討経緯からすると,第一類医薬品全体に関していえば,新ルール検討会において,インターネット販売をした場合のリスクの評価等について様々な意見が出されており,それらの意見はそれぞれに相応の論拠を有するものであったといえるものの,スイッチ直後品目等についていえば,医学,薬学の専門家により構成されたスイッチ直後品目検討会合において指摘されたとおり,新たな健康被害・有害事象が発現するおそれがあり,そのリスクも不明な状況であるという特性があると認められるものであって,そのような評価が不合理であるとすべき事情も見当たらない。
そして,スイッチ直後品目等のリスクに関する知見に不十分な点があるのであれば,厳格な比例原則を当てはめず,医薬品の不適正な使用による国民の生命,健康に対する侵害を未然に防止するための万全の措置として,予防原則の観点から,リスクの原因となる要素をできる限り除去する措置を講じるべきであるという考え方を採ることは,無意義ではないし(甲48・625頁参照)
,また,仮に不適正な使用により実際に
副作用等による健康被害が生じた場合には,現実の被害が個人に帰属し,生命・健康という重大な法益の侵害につながることとなるところ,このような場合を想定して,セルフメディケーションにおける真の自己決定に資するためには,薬剤師が,その販売を行う際に,購入者から最大限の情報収集を行い得る状況の下で,使用者の状態を的確に把握し,当該医薬品についての情報を提供するなどの意思疎通を行い,購入者の納得を得させることが必要であるとする考え方も,一定の説得力を有するものということができる。
以上の点からすると,スイッチ直後品目等の有するリスクの状況に照らし,その販売においては,薬剤師の判断の下,使用者に関して収集され得る最大限の情報を収集した上で,適切な指導と指導内容の確実な理解の確認を行い,販売する必要があるとすることには,相応の合理性があるというべきである。

対面による販売を義務付けることの合理性について
スイッチ直後品目検討会合報告書においては,薬剤師による使用者への情報提供及び薬学的知見に基づく指導が実効的に行われるためには,薬剤師が購入者との間で双方向での柔軟かつ臨機応変なやり取りが可能な状況の下で,使用者の状態を的確に把握した上,当該医薬品の適正な使用のために必要な情報を提供し,個々の使用者の状態に応じた注意事項等の伝達や受診勧奨等の指導を行うとともに,購入者が情報提供及び指導の内容を確実に理解したことを確認することが有用である旨が指摘されており,このような観点は,旧薬事法改正法案の国会審議における厚生労働大臣や医薬食品局長の答弁においても表われていたところである(認定事実(7)ウ,(10)ウ,




しかるに,薬剤師が,対面以外の方法で,店舗以外の場所にいる者に対して情報提供及び薬学的知見に基づく指導を行おうとすると,そのための通信手段としては,①電話,②メール・ウェブ画面による文字情報のやり取り(いわゆるチャットのように即時かつ双方向のやり取りが可能なもの)
,③テレビ電話等が一般的なものとして想定されるところ,電話や,メール・ウェブ画面での文字情報のやり取りを行う場合は,薬剤師が確認すべきとされる使用者の症状の状態や程度を目視により直接確認することができず,この直接確認できない情報を使用者の側から薬剤師に対して適切に伝達できなければ,薬剤師は使用者の症状の状態等を的確に把握することができないことにもなりかねず(なお,最初に要指導医薬品に指定されたスイッチ直後品目(別紙3記載1(1)の製剤)についてみると,副作用に関連する事項として使用者における皮膚の発疹・発赤等の特定の症状の有無を販売時に確認すべきであるとされる医薬品が多い(甲56の2,乙26))
。,また,医薬品に関する使用者の
理解についても,使用者の挙動などの反応等を踏まえてその理解の程度を確認することが困難であるという難点があることは否定できない。また,テレビ電話についても,将来的に通信環境等がさらに充実した場合はともかく,現時点では,テレビ画面を通じて捕捉可能な使用者の症状の状態,外見や挙動等から得られる非言語情報は対面の場合よりも限定的なものとなるおそれが大きいことから,薬剤師が使用者の症状の状態や程度を目視により的確に確認したり,使用者の外見や挙動等から使用者の状態を的確に把握したりする手段として万全のものではないことは否定し難い。
これらの点に鑑みると,薬剤師が対面以外の方法により行い得る情報収集は,そのコミュニケーション手段としての性質上,必ずしも,使用者に関して収集され得る最大限の情報収集を可能とするものとはならず,薬剤師による情報提供及び薬学的知見に基づく指導が,対面の方法による場合と遜色なく行われるとまではいえないと評価することには,相応の合理性があるというべきである。
このことは,①認定事実(3)オのとおり,販売に携わる薬剤師の意識と実態に関する調査において,テレビ電話による説明につき,その分かりやすさ及び信頼性について肯定的に評価する者の割合がいずれも約5割程度(分かりやすさにつき53.4%,信頼性につき46.6%)にとどまり,店舗で直接対面して行う説明との間で相当な乖離があるという結果や,インターネット販売において,対面販売と同様に適切な医薬品の選択や安全性の確保ができると考える者の割合が僅少である(5.7%)という結果が示されていることや,②認定事実(4)ウのとおり日本薬剤師会が作成し新ルール検討会に提出された平成25年5月10日付け「対面による販売の利点」と題する書面(乙20)において,薬剤師が対面により患部の状態や患者の動作,挙動を確認し,あるいは患者のにおいを確認することで適切な受診勧奨その他の薬学的知見に基づく指導を行い,健康被害の発生又は拡大を防止することができた事例が一定数示されていることからも,それなりに裏付けられていると解することが可能である。そして,対面販売を行わない場合に生じるリスクの程度が実証的ないし統計的な見地からは不明であるとしても,上記の調査等に依拠して,要指導医薬品として指定されるスイッチ直後品目等について薬剤師による対面による情報収集に基づいた情報提供及び薬学的知見に基づく指導を対面により行わせることとしなかった場合に,その不適正な使用が生じる場合が増加する可能性があると評価することは,あながち不合理なことではない。
以上のとおりであるから,薬剤師において,使用者に関して収集され得る最大限の情報を収集するという必要性を満たしつつ,薬剤師による使用者への情報提供及び薬学的知見に基づく指導を実効的に行う方法として,実際に対面した上で販売するという手段を採用することには,相応の合理性があるということができる。
他方,対面による販売を義務付けた場合,要指導医薬品の郵便等販売ができなくなるが,その対象は,スイッチ直後品目等に限られることから多数に及ぶ事態は想定し難く,実際にも,現時点における要指導医薬品は品目数及び市場規模においても一般用医薬品を含めた市場の中で僅かな割合(0.6%程度又はそれ未満)にとどまっており(認定事実(13))
,製造販売後調査又は再審査のための調査に係る調査期間を経過
すれば,製造販売の承認を取り消されない限り一般用医薬品として郵便等販売が可能となること等に照らせば,本件対面販売規制は,郵便等販売をその事業の柱とする店舗販売業者に対し,その開業又は事業の存続を困難とするような大きな不利益を課すものではなく,職業活動の内容及び態様に対する規制にとどまるということができ,その職業活動の自由を相当程度制約するものであるとはいえない。

小活
以上のとおり,本件対面販売規制による店舗販売業者の職業活動の自由に対する制約は,上記(2)の公共の福祉に合致する正当な目的を達成するための手段として,その規制の必要性が認められ,かつ,規制内容につき合理性が認められるということができる。
したがって,本件対面販売規制を定める本件各規定は,立法府の合理的裁量の範囲を逸脱するものと断じることはできず,憲法22条1項に違反するものということはできない。

(4)原告の主張について

インターネット販売による副作用発生の実証性について
原告は,要指導医薬品のインターネット販売を禁止するには,実証的な調査により,それ固有の副作用が有意的に発生すると予想されることが不可欠であるところ,インターネット販売により副作用のリスクが顕在化するという想定は単なる観念上のものにすぎない旨主張する。
この点,一般に,憲法の定める自由を制約する措置が憲法に適合するというためには,当該措置を講じなかった場合に生じる害悪の発生の程度が科学的証明その他の実証的な根拠をもって示されることが常に不可欠のものとまではいえない(表現の自由を制約する措置に関するものとして,最高裁昭和62年(あ)第1462号平成元年9月19日第三小法廷判決・刑集43巻8号785頁における伊藤正己裁判官の補足意見参照)。そし
て,本件対面販売規制が憲法22条1項に適合するか否かの判断に当たり,厳格な合理性の基準を用いるべきものとはいえないことは上記(1)オで判示したとおりであるところ,本件対面販売規制につきその規制の必要性と規制内容の合理性が認められることは上記(3)エで判示したとおりである。本件対面販売規制の主な対象となるスイッチ直後品目が,従来は医師その他の医療従事者の管理の下で使用されていたものであり,その間に副作用症例が報告されていたものがほとんどであることや,ダイレクト直後品目については医療従事者の管理の下で使用された経験すらないものであること等に照らせば,これらスイッチ直後品目等について,一般用医薬品としての製造販売の承認がされた後もなお相応の期間は慎重を期して対面販売によることが望ましいとすることは,あながち不合理ではなく,実証性を欠くためにその合理性は強固なものとはいえないとしても,単なる観念上の想定にすぎないとまではいえない。したがって,この点に関する原告の主張は採用することができない。

スイッチ直後品目等のリスクについて
原告は,スイッチOTC及びダイレクトOTCは,その定義上「その効能及び効果において人体に対する作用が著しくないもの」という要件を満たす医薬品群であり,従来からそのような医薬品として特段の問題なく販売され,その程度のリスクしかないとされてきたものであるところ,要指導医薬品の指定の対象となるスイッチ直後品目等も上記医薬品群に属するものであるにもかかわらず,これについてリスク不明で必要なリスク低減方策も採られていないとする被告の見解は,法の文理を無視するものであって根拠に欠ける旨主張する。
しかしながら,
「その効能及び効果において人体に対する作用が著しく
ない」とされる医薬品であっても,医薬品としての安全性やリスクの程度(副作用の発生状況等)には様々なものがあり得るところ(認定事実(3)ウ,上記(3)ア

参照)
,あるスイッチ直後品目について,従来の医療

用医薬品としての使用の経験等からみて「その効能及び効果において人体に対する作用が著しくないもの」という類型に属すると認められることから一般用医薬品に転用(スイッチ)することを認めるものの,実際に医師その他の医療従事者の管理を離れて使用された実績等がないことから,その場合のリスクがなお不明であり,その販売に当たり適正な使用を担保する手段を講ずる必要性が高いと判断される場合を想定し得る。この点は,医療用医薬品としての使用の経験すらなく,当初から一般用医薬品としての製造販売の承認を与えられるダイレクト直後品目についても同様である。要指導医薬品は,このようなスイッチ直後品目等の存在を念頭においたものと解されるから,医師その他の医療従事者の管理を離れて使用された場合のリスクが不明であるという医薬品を「その効能及び効果において人体に対する作用が著しくないもの」というカテゴリーに含めることは,法の文理を無視するものとはいえない。したがって,この点に関する原告の主張は採用することができない。

薬剤師の対面販売による副作用防止の可能性について
原告は,座長メッセージや旧薬事法改正法案の国会審議における厚生労働大臣及び医薬食品局長の答弁において薬剤師が五感を用いて使用者の状態を判断する必要性についての言及があることに関し,薬剤師という資格は,その資格要件や訓練において五感を用いて他人の病状や心理を読み取る能力を有する者を前提としていないことから,薬剤師が行う対面販売の優位性が制度的に一般的に保障されているものではないなどとして,薬剤師が五感を用いることを本件対面販売規制の必要性及び合理性を基礎付ける根拠とすることはできない旨主張する。
しかしながら,薬剤師が医薬品に関する情報の提供及び薬学的知見に基づく指導を行うために購入者とコミュニケーションを取ることは,薬剤師が職業人として通常備えていると考えられる一般的な能力である上,薬学部におけるカリキュラム作成の参考とされる「薬学教育モデル・コアカリキュラム」において,
「適切に患者情報を収集した上で,状態を正しく評
価し,
(中略)個々の患者に適した薬物療法を提案・実施・評価できる能力を修得する」ことが一般目標として掲げられていること(乙68)等に照らせば,立法府において,薬剤師が目視等により身体所見を観察するなどして適切に患者情報の収集を行い得るという前提に立って医薬品の販売に関する制度設計を行うことは,不合理であるとはいえない。したがって,この点に関する原告の主張は採用することができない。

対面販売によるリスク原因の除去の可能性について
原告は,これまでに知られていない新たな健康被害・有害事象を薬剤師が予見することは不可能であるから,スイッチ直後品目の特性とされるリスクの不明確さを仮に肯定するとしても,そのようなリスクは,対面販売かインターネット販売かという販売方法のいかんを問わず,販売時の情報提供によって防ぐことのできる性質のリスクではないとして,本件対面販売規制には何らの合理性も認められない旨主張する。
しかしながら,スイッチ直後品目検討会合報告書(甲10)によれば,スイッチ直後品目は,単に一般用医薬品としてのリスクが不明であるのみならず,①使用者の変化,適用から外れた状態での使用,②連用や本来受診すべき状態の放置,③多量や頻回の使用,乱用,④服用中の他の医薬品や健康食品等との相互作用及び⑤副作用の兆候の見逃しといった原因により新たな健康被害・有害事象が発現するおそれがある旨の指摘がされているのであるから,現時点の医学的ないし薬学的知見を前提として適正に使用したとしても防止することができないリスク(未知の副作用による健康被害など)が存在するという一つの側面があるとしても,他面において,上記のような原因による新たな健康被害・有害事象の発現を未然に防止するために可能な限りその適正な使用を図る必要があると判断することは,不合理であるとはいえない。したがって,この点に関する原告の主張は採用することができない。

インターネット販売の優位性をいう主張について
原告は,インターネット販売では購入者の情報等の記録が残ることから,未だ不明確な副作用に関する注意喚起や事後フォロー,使用者別の副作用発生状況の調査等の事後検証の可能性の点において,要指導医薬品についてはインターネット販売を行うことの方が圧倒的な優位性を有する旨主張する。
しかしながら,既に判示したとおり,スイッチ直後品目等の有するリスクの状況に照らし,その販売においては,薬剤師の判断の下,使用者に関して収集され得る最大限の情報を収集した上で,適切な指導と指導内容の確実な理解の確認を行い,販売することが必要であって,本件対面販売規制はこの必要性に沿うものであるところ,インターネット販売は,購入者の情報等の記録に基づく事後の連絡や副作用発生状況の調査等の可能性の点において利点を有するとしても,必ずしも上記の必要性に十分に沿うものとはいえないから,原告がインターネット販売の利点として主張する上記諸点は,本件対面販売規制の合理性を直ちに否定する根拠となるものではないというべきである。したがって,この点に関する原告の主張は採用することができない。


医薬品医療機器等法36条の5第2項について
原告は,要指導医薬品制度は,要指導医薬品を使用しようとする者以外の者に対する要指導医薬品の販売を原則として禁止する旨の医薬品医療機器等法36条の5第2項の規定と本件対面販売規制とが相俟って,体調の悪い病人本人が要指導医薬品を購入するために薬局等に出向くことを義務付ける制度であるが,医療用医薬品から一般用に転用しながら,一般用医薬品とは異なる要指導医薬品という範疇を創設して病人に薬局等に出向かせるという制度は,かえって病状を悪化させるものであっておよそ合理性がない旨主張する。
しかしながら,既に判示したとおり,要指導医薬品の制度は,一般用医薬品としてのリスクがなお不明であり,その販売に当たり適正な使用を担保する手段を講ずる必要性があると認められるスイッチ直後品目等をその対象とすることが念頭に置かれているのであり,本件対面販売規制は,保健衛生上の危害の発生の防止を図るという規制の目的を達成する手段として必要性及び合理性が認められるところ,このようなスイッチ直後品目等の性質に照らせば,これとは異なる純然たる一般用医薬品との比較において,使用者における利便性において一般用医薬品よりも劣るという差を設けたとしても,必ずしも不合理とはいえない。そうすると,要指導医薬品について原則として代理購入をすることが認められていないとしても,医薬品に関する制度として合理性を欠くとまではいえないから,この点に関する原告の主張は採用することができない。

諸外国の例について
原告は,主要先進国等の大半でスイッチ直後品目等を含むOTC薬のインターネット販売が認められており,これが世界の趨勢であることからすれば,本件対面販売規制の立法事実が不存在であることは明らかである旨主張する。
この点,証拠(甲45ないし48,73ないし85,92ないし94の2,乙56の2,71の1及び2)及び弁論の全趣旨によれば,スイッチ直後品目等を含むOTC薬のインターネット販売を認めている国としては,イギリス,ドイツ,フランス,アメリカ,イタリア,ポルトガル,オーストラリア,ニュージーランド,カナダ等があること,上記のインターネット販売を認めていない国としては,ロシア,韓国,トルコがあることがそれぞれ認められる。
これらによれば,スイッチ直後品目等を含むOTC薬のインターネット販売を認めている国が,これを認めていない国より多数であるということができるものの,他方において,OTC薬のインターネット販売を禁止している国も存在すること,上記証拠等によれば,OTC薬のインターネット販売を認めている国においても一定の条件,許可等にかからしめている場合があることがうかがわれること,我が国と諸外国における医療保険制度,医薬品の分類方法等の間に一定の差異が存在することからすれば,OTC薬のインターネット販売を認めている国が多く存在することをもって,直ちに我が国の本件対面販売規制に合理的な根拠がないと断じることは相当でない。
したがって,この点に関する原告の主張は採用することができない。4
争点3(本件各指定が,その指定の要件を欠き違法か。
)について
(1)要指導医薬品としての指定の意義について

医薬品医療機器等法4条5項3号が規定するとおり,要指導医薬品とは,①同号イからニまでに掲げる医薬品(専ら動物のために使用されることが目的とされているものを除く。
)のうち,②その効能及び効果において人
体に対する作用が著しくないものであって,薬剤師その他の医薬関係者から提供された情報に基づく需要者の選択により使用されることが目的とされているものであり,かつ,③その適正な使用のために薬剤師の対面による情報の提供及び薬学的知見に基づく指導が行われることが必要なものとして,厚生労働大臣が薬事・食品衛生審議会の意見を聴いて指定するものをいう(上記第2の1(1)ア


)。

同号において,上記③の要件が設けられ,厚生労働大臣の指定があることをもって要指導医薬品の要件とすることにしたのは,スイッチ直後品目等のように要指導医薬品の指定を受け得る個別の医薬品(すなわち,上記①及び②の要件を満たす医薬品)につき,その指定行為を通じて,「その
適正な使用のために薬剤師の対面による情報の提供及び薬学的知見に基づく指導が行われることが必要なもの」かどうかを判断せしめる趣旨に出たものであり,その判断は,スイッチ直後品目等が,一般的にみて,一般用医薬品としてのリスクが不明な状況であるとの前提に立ちつつ,医学的ないし薬学的な知見からして,当該医薬品を個別にみても,一般用医薬品としてのリスクが不明であり,新たな健康被害・有害事象が発現するおそれがあるといえるかどうかを決定する作用を中核とするものと解される。しかるところ,要指導医薬品の指定の要否に関する上記の判断は,個々の医薬品につき,当該医薬品の副作用の危険性の程度等に関する医学的ないし薬学的知見を要するものであり,厚生労働大臣の医学的ないし薬学的知見の下における専門的かつ裁量的な判断によらざるを得ないものといえる。そして,医薬品医療機器等法,医薬品医療機器等法施行規則等の関係法令において,厚生労働大臣が要指導医薬品の指定の要否を判断するに当たっての具体的な基準が定められていないことに照らすと,その指定の要否に関する判断については,薬事・食品衛生審議会の意見を聴く前提の下で,厚生労働大臣の合理的な裁量に委ねられているものと解するのが相当である。そうすると,厚生労働大臣がその裁量権の行使としてした要指導医薬品の指定は,それが合理性を欠いて裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用したものと認められる場合に限り,違法となるものと解される。(2)検討

これを本件についてみると,前提事実(5)及び弁論の全趣旨によれば,本件各指定に係る別紙2記載の製剤は,いずれもスイッチ直後品目又はダイレクト直後品目であると認められるところ,認定事実(12)ア及び弁論の全趣旨によれば,これらの製剤の要指導医薬品の指定の要否について諮問を受けた薬事・食品衛生審議会は,それぞれの製剤の副作用報告の有無及び内容,販売時等における留意点(禁忌等及び副作用に関連するもの)等の詳細な情報が記載された資料を検討した上,いずれも指定を適当とする答申をしたことが認められる。
そして,厚生労働大臣は,別紙2記載の製剤がスイッチ直後品目等であることを前提として,それらを要指導医薬品と指定することが適当である旨の医学,薬学の専門家等の委員から成る薬事・食品衛生審議会の答申の結果を踏まえて,別紙2記載の製剤につき,いずれもその適正な使用のために薬剤師の対面による情報の提供及び薬学的知見に基づく指導が行われることが必要なものと認めて本件各指定を行ったものと認められるところ,このような厚生労働大臣の判断に不合理な点は見当たらず,その判断が合理性を欠くものということはできない。

この点,原告は,①薬事・食品衛生審議会の委員には,コミュニケーションの専門家が含まれておらず,インターネット等による情報提供及び指導では防ぐことができないリスクが有意的に存在するといった判断を行う能力に欠けていること,②議事の内容をみても,対面による情報提供及び指導が必要かどうかの議論が全くされていないことから,同審議会は要指導医薬品の指定に係る実体法上の要件の充足について審議しておらず,厚生労働大臣が同審議会の答申に依拠して行った本件各指定は違法である旨主張する。
しかしながら,薬事・食品衛生審議会は,医学的ないし薬学的な知見に基づいて,諮問のあった医薬品を個別に検討し,一般用医薬品としてのリスクが不明であり,新たな健康被害・有害事象が発現するおそれがあるといえるかどうかを決定する作用を担っていると解すべきことは上記(1)イで判示したとおりであるから,コミュニケーションの専門家でなければ判断できないというものではない。
そして,認定事実(12)ア及び証拠(甲31,32,乙46,47)によれば,薬事・食品衛生審議会要指導・一般用医薬品部会においては,要指導医薬品の指定の要件及び効果,指定がされない場合の帰結(本件対面販売規制を受けずに郵便等販売が認められることとなること)等を前提としつつ,検討の対象となった個々の品目についての副作用報告の有無及び内容,販売時等における留意点(禁忌等及び副作用に関連するもの)等の情報を資料及び事務局による概要の説明により確認するなどした上でいずれも要指導医薬品の指定を要する旨の議決をしたものであることが認められ,同部会においては,個々の品目につき,本件対面販売規制を通じた適正使用の確保を必要とする程度に一般用医薬品としてのリスクが不明であって新たな健康被害・有害事象が発現するおそれがあるといえるかどうかという観点から指定の要否が検討されたものと評価できる。
そうすると,薬事・食品衛生審議会が要指導医薬品の指定に係る実体法上の要件について審議する能力に欠けるとまではいえないし,これについて審議を経ていないともいえず,同審議会の審議がされていない旨の原告の主張をもって,別紙2記載の製剤についての対面による情報提供及び指導の要否並びにこれを前提とした要指導医薬品の指定の要否に関する厚生労働大臣の判断が合理性を欠くことの根拠とすることはできない。(3)そして,別紙2記載の製剤は,要指導医薬品となるための他の要件に欠けるところもない(別紙2記載の製剤はいずれもスイッチ直後品目又はダイレクト直後品目であることから,医薬品医療機器等法4条5項3号イ又はロに該当するものとして上記(1)アの①の要件を満たすものであり,また,これらの製剤は一般用医薬品としての製造販売の承認を受けたものであり,その効能及び効果において人体に対する作用が著しくないものであることや,医薬関係者から提供された情報に基づく需要者の選択により使用されることが目的とされていることを否定すべき特段の事情は認められないことから,上記(1)アの②の要件についてもこれを満たすものである。。)
(4)したがって,本件各指定は,その指定の要件に欠けるものではなく,適法である。
5
結論
以上によれば,本件取消しの訴えは不適法であるからこれを却下すべきであり,原告のその余の請求(本件確認の訴えに係る請求)は理由がないからこれを棄却すべきである。
よって,訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法7条,民訴法61条を適用の上,主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第38部

裁判長裁判官

谷口
裁判官

工藤哲郎
裁判官

細井直彰豊
(別紙2)

厚生労働大臣が平成26年6月6日厚生労働省告示第255号,平成27年3月13日厚生労働省告示第58号,同年7月27日厚生労働省告示第324号及び平成29年1月13日厚生労働省告示第10号によって指定した要指導医薬品(劇薬を除く。
)のうち,次に掲げるもの,その水和物及びそれらの塩類を有効成分として含有する製剤
1
赤ブドウ葉乾燥エキス混合物

2
アルミノプロフェン

3
イコサペント酸エチル

4
チェストベリー乾燥エキス

5
トリメブチン(過敏性腸症候群治療薬に限る。


6
ネチコナゾール(膣カンジダ治療薬に限る。


7
フッ化ナトリウム(洗口液に限る。


8
ロキソプロフェン(外用剤に限る。


9
ロラタジン
以上
(別紙3)

1
平成26年6月6日厚生労働省告示第255号(甲22)において厚生労働大臣が指定する要指導医薬品であるとされた製剤
(1)次に掲げるもの,その水和物及びそれらの塩類を有効成分として含有する製剤ア
赤ブドウ葉乾燥エキス混合物


アシタザノラスト


アルミノプロフェン


イコサペント酸エチル


イブプロフェン(一日量中イブプロフェン0.6g以上を含有するものに限る。



イブプロフェン・ブチルスコポラミン


エバスチン


エピナスチン


セチリジン


チェストベリー乾燥エキス


トラニラスト


トリメブチン(過敏性腸症候群治療薬に限る。



ネチコナゾール(膣カンジダ治療薬に限る。



フェキソフェナジン


ペミロラストカリウム


メキタジン(一日量中メキタジン6mg以上を含有するものに限る。)

(2)薬事法44条2項に規定する劇薬である製剤

2
平成27年3月13日厚生労働省告示第58号(乙40)において厚生労働大臣が指定する要指導医薬品に加えられた製剤
フッ化ナトリウム(洗口液に限る。,その水和物及びそれらの塩類を有効成)
分として含有する製剤

3
平成27年7月27日厚生労働省告示第324号(乙41)において厚生労働大臣が指定する要指導医薬品に加えられた製剤
ロキソプロフェン(外用剤に限る。,その水和物及びそれらの塩類を有効成)
分として含有する製剤

4
平成29年1月13日厚生労働省告示第10号(乙73)において厚生労働大臣が指定する要指導医薬品に加えられた製剤
ロラタジン,その水和物及びそれらの塩類を有効成分として含有する製剤以上
別紙1及び4については省略
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