判例検索β > 平成29年(う)第18号
殺人、銃砲刀剣類所持等取締法違反
事件番号平成29(う)18
事件名殺人,銃砲刀剣類所持等取締法違反
裁判年月日平成29年9月15日
法廷名広島高等裁判所  岡山支部
結果棄却
原審裁判所名岡山地方裁判所
原審事件番号平成28(わ)229
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平成29年9月15日宣告広島高等裁判所岡山支部判決
平成29年(う)第18号殺人,銃砲刀剣類所持等取締法違反被告事件原審岡山地方裁判所平成28年(わ)第229号

主文
本件控訴を棄却する
控訴審における未決勾留日数中170日を原判決の刑に算入する。理由
第1弁護人の控訴理由
原判決の無期懲役の量刑は重すぎて不当である。
第2

控訴理由に対する判断
原判決が量刑理由の項で述べるところは概ね相当であり,被告人を無期懲役に処した原判決の量刑が重すぎるとはいえない。
すなわち,被告人は自らが所属する暴力団組織と対立する暴力団組織の幹部であった被害者に対し,被害者が所属する組織の者のやり方が気に入らないなどという理由で殺害にまで及んだというのであって,その動機は所属する組織への忠誠心を満たすためのものといえる。暴力団組織に所属する者特有の論理に基づいた犯行であり,その動機,経緯は一般社会の倫理観からかけ離れた極めて反社会的なものであって到底容認できない。加えて,犯行の3か月前頃から岡山市内の一室を借り受け,原動機付自転車の提供を受けるなどした上で多数回に渡って被害者方の下見を繰り返し,現場の状況や被害者の行動パターンを十分把握するなどした上で犯行に及んでおり,入念に準備された計画的犯行であること,確実に被害者を殺害すべく殺傷能力の高いけん銃を用いて至近距離から合計4発発砲しており,強固な殺意が認められること,住宅街において人が活動する時間帯に敢行され,現に流れ弾が人のいた倉庫に着弾しており,一般市民が巻き添えになる危険性が高い犯行であること等からすると本件は殺
人の中でも違法性,有責性の高い事案である。そうすると,被告人が自首するとともに犯行に用いたけん銃等の所在を明らかにしたこと等を踏まえても,有期懲役刑を選択すべき事案とはいえず,原判決の無期懲役の量刑が重すぎて不当であるとはいえない。
弁護人は,原判決は,自首することは被告人自身にとって想定されていたものといえる上,出頭後けん銃等が発見されるまで1週間近く要していること等からすると自首が捜査に寄与した程度にも限度があり,量刑上大きく考慮することはできないとするが,自首は想定されていたわけではなく,捜査に対する寄与も過小評価されており不当であると主張する。確かに,被告人自身は予め自首するつもりで本件犯行に及んだわけではないと供述しており,自首が想定されていたとまでは評価できない。また,自首減軽が刑事政策的な目的によるものであることからすると,仮に自首が想定されていたとしても,その評価を限定的に解すべき理由はない。けん銃等の発見が遅れた点についても,被告人の供述によりけん銃等が発見されたことに変わりはなく,それが若干遅れたからといって,その評価が大きく下がるものではない(なお,原判決は銃刀法上の自首は成立しないとするが,自首をした被告人の供述によって捜査機関がけん銃等の占有を取得したのであるから銃刀法上の自首が成立すると解すべきであるが,処断刑の範囲は変わらないから法令適用の誤りが判決に影響するものではない。)。そうすると原判決が自首の点を大きく考慮することはできないとした理由は根拠に欠け,その評価はやや限定的に過ぎるといえる。しかし,他方,被告人の自首により本件の真相が全面的に解明されたとはいえない。すなわち,けん銃等の入手先や警察に出頭した際の同行者も解明されていない。自首によって全面的に真相が明らかになった場合との比較において,被告人の自首の評価が若干劣るのはやむをえない。そして,本件の犯情,特に暴力団組織に所属する者特有の反社会的な動機に基づく犯行であることや殺意の強固さ,住宅街でのけん銃を用いた犯行であって一般市民に対する危険性が相当に
高いことからすると,自首等の点を十分に評価したとしても有期懲役刑を選択しなければならない事案であるとまではいえない。
弁護人は,原判決は,本件は組織的な動機に基づく犯行であるとするが,あたかも組織の命を受けて行われた犯行であり,組織同士の抗争の一環であると評価したかのようであって,動機の評価として妥当性を欠くと主張する。しかし,原判決は,自らが所属する暴力団組織への忠誠心を満足させるための犯行であることをもって組織的な動機と評価しているのであって,このような動機の評価に誤りはない。
弁護人は,原判決は,被告人の動機を反社会的と評価しているが,被害者も対立組織の分裂や切り崩しなどの反社会的行為を行っており,動機形成過程における被害者の反社会的活動も考慮すべきであると主張する。しかし,被害者が被告人の所属する組織の切り崩しなどを行っていたとしても,それにより本件犯行を正当化できるものではなく,被告人の動機が反社会的であることに変わりはない。弁護人の主張は理由がない。
弁護人は,原判決は,本件犯行により一般市民にも危害が及ぶ可能性が十分にあったとするが,本件犯行の危険性を過大に評価していると主張する。しかし,被告人が発砲行為をしたのは午前10時前の住宅街である上,けん銃から発射された銃弾は跳弾等によりあらゆる方向に飛ぶ可能性があり,現に人がいた倉庫に着弾していることに表れているとおり,一般市民の死傷者がなかったことが偶然に過ぎないのであって犯行の危険性についての原判決の評価に誤りはない。
弁護人は,原判決は,我が国における治安や国民生活の平穏を十全ならしめるためには,この種事案に対して厳罰をもって臨むべきであるとして一般予防の点を強調しているが,刑罰は,罪と罰の均衡に照らして慎重に吟味すべきであって一般予防の点を強調するのは相当でないと主張する。しかし,行為責任の観点から想定される量刑の範囲内で宣告すべき刑を決めるにあたって,一般
予防の観点を考慮することが許されるのは当然である。原判決の量刑は,行為責任の観点から想定される量刑の範囲を逸脱しておらず,一般予防の観点を過大視したものとはいえない。
なお,当審における事実の取調べの結果によれば,原判決後に,被告人が,被害者の7名の相続人のうち1名に対し賠償金を支払ったことが認められるが,原判決の量刑を変更すべき事情とはいえない。
第3

結論
刑事訴訟法396条により本件控訴を棄却することとし,当審における未決
勾留日数の算入につき刑法21条を適用して,主文のとおり判決する。平成29年9月15日
広島高等裁判所岡山支部第1部

裁判長裁判官

長井秀典
裁判官

村川主和
裁判官

藤井秀樹
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