判例検索β > 平成29年(ネ)第245号
商標権侵害差止等請求控訴事件 商標権 民事訴訟
事件番号平成29(ネ)245
事件名商標権侵害差止等請求控訴事件
裁判年月日平成29年9月21日
法廷名大阪高等裁判所
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平成29年9月21日判決言渡同日原本交付裁判所書記官

平成29年(ネ)第245号商標権侵害差止等請求控訴事件(原審大阪地方裁判所平成27年(ワ)第5578号)
口頭弁論終結日平成29年6月29日
判決
控訴人

株式会社絨毯ギャラリー

同訴訟代理人弁護士


被控訴人

根晴幸
有限会社オリエンタルアート

同訴訟代理人弁護士

西脇怜史同宮島明紀主文1
本件控訴を棄却する

2
控訴費用は,控訴人の負担とする。
事実及び理由

第1

控訴の趣旨

1
原判決を取り消す。

2
被控訴人は,原判決別紙被告商品目録記載の商品又はその包装に,原判決別紙被告標章目録記載1ないし同3の各標章を付してはならない。

3
被控訴人は,商品又はその包装に原判決別紙被告標章目録記載1ないし同3の各標章を付した原判決別紙被告商品目録記載の商品を販売し,引き渡し又は販売若しくは引渡しのために展示してはならない。
4
被控訴人は,原判決別紙被告商品目録記載の商品に関する広告に,原判決別紙被告標章目録記載1ないし同3の各標章を付して展示し,頒布し又はこれを内容とする情報に同各標章を付して電磁的方法により提供してはならない。
5
被控訴人は,その占有に係る,商品又はその包装に原判決別紙被告標章目録記載1ないし同3の各標章を付した原判決別紙被告商品目録記載の商品,及び原判決別紙被告標章目録記載1ないし同3の各標章を付した原判決別紙被告商品目録記載の商品に関する広告を廃棄せよ。

6
被控訴人は,その営業に関し,原判決別紙被告ウェブサイト目録記載の各ウェブサイト及び会社説明書に,原判決別紙被告標章目録記載1ないし同3の各標章を使用してはならない。

7
被控訴人は,原判決別紙被告ウェブサイト目録記載の各ウェブサイトから原判決別紙被告標章目録記載1ないし同3の各標章を削除せよ。

8
被控訴人は,控訴人に対し,2904万円及びこれに対する平成27年6月23日から支払済みまで年6%の割合による金員を支払え。

9
訴訟費用は,第1,2審とも被控訴人の負担とする。

第2

事案の概要

1
事案の要旨
本件は,後記2(2)の商標権の商標権者である控訴人が,原判決別紙被告標章目録記載1の標章を付したじゅうたん等の敷物をイランから輸入し,日本国内において販売している被控訴人に対し,商標権侵害を理由に下記の請求をしている事案である。



商標法37条1号,同法36条1項に基づく,原判決別紙被告商品目録記載の商品又はその包装に,原判決別紙被告標章目録記載1ないし同3の各標章を付する行為の差止請求(第1の2)



商標法37条1号,同法36条1項に基づく,商品又はその包装に原判決別紙被告標章目録記載1ないし同3の各標章を付した商品を販売し,引き渡し又は販売若しくは引渡しのために展示する行為の差止請求(第1の3)③

商標法37条1号,同法36条1項に基づく,原判決別紙被告商品目録記載の商品に関する広告に,原判決別紙被告標章目録記載1ないし同3の各標章を付して展示し,頒布し又はこれを内容とする情報に同各標章を付して電磁的方法により提供する行為の差止請求(第1の4)



商標法36条2項に基づく,商品又はその包装に原判決別紙被告標章目録記載1ないし同3の各標章を付した原判決別紙被告商品目録記載の商品,及び同各標章を付した同商品に関する広告の廃棄請求(第1の5)



商標法37条1号,同法36条1項に基づく,原判決別紙被告ウェブサイト目録記載の各ウェブサイト及び会社説明書に,原判決別紙被告標章目録記載1ないし同3の各標章を付す行為の差止請求(第1の6)



商標法36条2項に基づく,原判決別紙被告ウェブサイト目録記載の各ウェブサイトからの原判決別紙被告標章目録記載1ないし同3の各標章の削除請求(第1の7)



商標権侵害の不法行為に基づく損害賠償請求及びこれに対する平成27年6月23日(訴状送達日の翌日)から支払済みまで商事法定利率年6%の割合による遅延損害金請求(第1の8)
原審は,控訴人の請求をいずれも棄却したため,控訴人がこれを不服として
控訴を申し立てた。
2
前提事実(当事者間に争いのない事実及び各項に記載の書証により容易に認定できる事実。なお,以下において,枝番号の記載を省略した書証については,枝番号を全て含むものとする。)

(1)

当事者等

控訴人は,ZOLLANVARI社(以下「ゾ社」という。)と日本におけるじゅうたんの総代理店契約を締結し,ゾ社の製品であるじゅうたん等の敷物(以下,単に「じゅうたん」ということがある。)をゾ社から輸入し,日本国内において,これらの卸売及び小売販売を行う株式会社である(以下,控訴人がゾ社から輸入して日本国内において販売するゾ社の製品であるじゅうたんを「控訴人商品」という。)。控訴人は,控訴人商品の販売につき,BDコーポレーション株式会社,株式会社すぎむらなど多数の国内の会社と販売代理店契約を締結している。

被控訴人は,主としてカーペット,家具用品,室内装飾品の輸入及び販売を行う特例有限会社であり,主として原判決別紙被告ウェブサイト目録記載の各ウェブサイト(以下,まとめて「被控訴人ウェブサイト」という。)を介して商品を販売している。


ゾ社は,イラン・イスラム共和国(以下「イラン」という。)のシラーズに拠点を置き,ギャッベ(カシュガイ族の手織りじゅうたん)を始めとする南ペルシアの部族民による手織りじゅうたんを世界各国に供給する協同組合である。ゾ社においては,Aがその代表者を務め,Bがセールスマネージャーを務めて控訴人との取引を担当している。なお,その商標である「ZOLLANVARI」は,日本国内においても取引者間,需要者間で広く認識されている(甲2の3,甲19)。

(2)

控訴人が有する商標権
控訴人は,以下の商標の商標権者である(以下,この商標権を「控訴人商標権」といい,その登録商標を「控訴人商標」という。)。
登録番号

商標登録第5385564号

商品及び役務の区分

第27類

指定商品

洗い場用マット,畳類,人工芝,敷物,壁掛け(織
物製のものを除く。),体操用マット,壁紙

出願番号

商願2010-051092

出願日

平成22年6月28日
登録日

平成23年1月21日

登録商標

原判決別紙原告登録商標のとおり

(3)

控訴人商標権取得の経緯(甲1,2)

控訴人は,平成22年6月28日,控訴人商標につき登録出願した。特許庁審査官は,控訴人商標は,動物の図形と「ZOLLANVARI」の文字より成るところ,ゾ社が商品「敷物」に使用し,控訴人商標の登録出願前から取引者,需要者に広く認識されている商標「ZOLLANVARI」と同一又は類似であり,かつ同一又は類似の商品に使用するものであり,商標法4条1項10号に該当することを理由に,同年9月29日(起案日)付けで拒絶理由通知をした(甲2の3)。


控訴人は,平成22年11月8日,特許庁審査官に対し,控訴人商標の登録につきゾ社の同意を得る手続を進めていることを理由に意見書の提出期限の猶予を求めた。


その後,控訴人は,控訴人が日本国におけるゾ社の総代理店であること,及び控訴人が控訴人商標を日本国において使用し,かつ,当該商標を日本国において登録出願をする権限を有することについてのゾ社代表者作成の証明書を取得し,平成22年11月25日,これを添付した手続補正書を特許庁に提出した(甲2の9~甲2の11)。


特許庁審査官は,平成23年1月4日(起案日),控訴人商標の登録査定をし(甲1の2),同月21日,控訴人商標の登録がなされた(甲1の1)。

(4)

被控訴人によるじゅうたん等の販売及びその広告

被控訴人は,被控訴人ウェブサイトを開設し,原判決別紙被告商品目録記載の商品(じゅうたん,玄関マット,ラグ,カーペットの織物製の敷物)を,主として被控訴人ウェブサイトで販売し,又は販売のために被控訴人ウェブサイト上に掲載している(以下,被控訴人がゾ社の製品であるとして販売している商品を「被控訴人商品」という。)。

被控訴人商品の中には,原判決別紙被告標章目録記載1の標章(以下「被控訴人標章1」という。)が付された原判決別紙タグ目録記載1の形式のタグ(以下「被控訴人タグ」という。)が添付されたものが少なくとも50枚程度ある。


被控訴人ウェブサイトには,被控訴人商品を説明する部分に,被控訴人標章1のほか,原判決別紙被告標章目録記載2及び同3の各標章(以下,それぞれ「被控訴人標章2」,「被控訴人標章3」という。また,被控訴人標章1ないし同3を「被控訴人各標章」と総称する。)が,原判決別紙目録1ないし同4の態様で表示されている。

(5)

控訴人商標と被控訴人各標章との類似性
被控訴人商品は,いずれも控訴人商標の指定商品である第27類の「洗い場用マット,敷物,体操用マット」に含まれるものであるところ,被控訴人各標章は,以下のとおり,いずれも控訴人商標に類似している。

控訴人商標は,直線を用いて描いたライオンの絵と「ZOLLANVARI」の文字を組み合わせた商標である。被控訴人標章1は,これとほぼ同一のライオンの絵と同じ文字列を組み合わせたものに,更にその下部にペルシア文字の文字列を組み合わせたものである。被控訴人標章1は,外観において控訴人商標に類似し,「ゾランバリ」又は「ゾランヴァリ」という称呼において控訴人商標と同一であって,両者は,全体として類似している。

被控訴人標章2は,控訴人商標の文字列部分である「ZOLLANVARI」から成るものであるが,控訴人商標と外観において類似し,同じ「ゾランバリ」ないし「ゾランヴァリ」という称呼を有するものであって,控訴人商標に類似している。


被控訴人標章3は,「ゾランヴァリ」とのカタカナの文字列であるが,控訴人商標と同じ称呼を有するものであって,控訴人商標に類似している。3
争点

(1)

被控訴人商品に被控訴人タグを付したのは被控訴人か

(2)

被控訴人各標章の使用行為は商標権侵害としての実質的違法性を欠くと
いえるか
(3)
4
控訴人に生じた損害
当事者の主張

(1)

被控訴人商品に被控訴人タグを付したのは被控訴人か

(控訴人の主張)
被控訴人タグは,被控訴人が付したものである。したがって,被控訴人の当該行為は,控訴人商標権を侵害する。

被控訴人商品に付されている被控訴人タグは,ゾ社が作製したものではなく,またゾ社が付したものでもない。
ゾ社は,仕入れたじゅうたんについて社内で厳重に選別した上で,日本その他世界各地に輸出する製品には原判決別紙タグ目録記載2の形式のタグ(以下「控訴人タグ」という。)を付している。控訴人タグを付する価値のない二級品は,控訴人タグとは異なる原判決別紙タグ目録記載3のタグ(以下,この記載形式を含むタグを「別紙3のタグ」という。)を付してイラン国内の一般業者に販売している。そのような二級品は,イラン国内の市場(バザール)でノーブランドの商品として販売され,流通している。


被控訴人タグが,控訴人タグと異なるものであることや,被控訴人商品の一部にしか付されていないことをもって,被控訴人タグをゾ社が付した理由とすることはできない(被控訴人が無断で付するからといって,控訴人タグと同じものを付したり,被控訴人商品の全部に付したりするとは限らない。)。


被控訴人は,被控訴人タグを付して被控訴人商品を販売していたが,控訴人から商標権侵害で警告を受けた後,又は本件訴訟が提起される前後において,被控訴人タグを付さずに被控訴人商品を販売するようになった。仮に被控訴人タグを付したのがゾ社であれば,被控訴人が被控訴人タグを付した被控訴人商品の販売をやめることはあり得ない。

本件訴訟が提起される頃にされた被控訴人代表者の夫であるCとゾ社のBとの間の会話においても,被控訴人タグをゾ社が付したとの発言は全くなかった。

(被控訴人の主張)
被控訴人タグは,ゾ社が付したものである。

ゾ社が被控訴人に対してゾ社の製品を販売することは控訴人との間の契約に違反する可能性があることから,ゾ社において,被控訴人に対して販売した事実を隠蔽し,又は発覚した際に言い逃れるため,被控訴人タグと控訴人タグを異なるものにしていると考えられる。


被控訴人タグを付したのが被控訴人であれば,ゾ社の製品であることを明確にするために,全ての商品に被控訴人タグを付したはずであるのに,被控訴人タグは,被控訴人商品の一部にしか付されていない。


被控訴人タグを付したのがゾ社であっても,被控訴人が,紛争を回避するため,経営判断として譲歩し,被控訴人タグを付した商品の販売をやめるのは不合理ではない。


本件訴訟が始まる頃にされたCとゾ社のBとの間の会話は,被控訴人タグを付したのがゾ社であることが前提となっていたから,被控訴人タグを付したのがゾ社であるかなどというやり取りがないのは当然である。
(2)

被控訴人各標章の使用行為は商標権侵害としての実質的違法性を欠くと
いえるか
(被控訴人の主張)

最高裁判例との関係について
最高裁判所平成15年2月27日第一小法廷判決・民集57巻2号125頁(以下「フレッドペリー事件最高裁判決」という。)は,「商標を保護することにより,商標の使用をする者の業務上の信用の維持を図り,もつて産業の発展に寄与し,あわせて需要者の利益を保護する」(商標法1条)という商標法の目的からして,商標の機能である出所表示機能及び品質保証機能を害することがなく,商標を使用する者の業務上の信用及び需要者の利益を損なわない場合には,実質的な違法性を欠くとして,商標権侵害を否定したものである。
本件においては,ゾ社が被控訴人に販売したゾ社の製品が,ゾ社の製品として販売されるのであるから,控訴人商標の出所表示機能及び品質保証機能が害されることはない。控訴人商標の実質的な権利者であるゾ社の業務上の信用が損なわれることもないし,需要者の利益が損なわれることもない。
また,控訴人商標の実質的権利者はゾ社であって,ゾ社において,被控訴人商品が,ゾ社の製品として日本で販売されることを許容していた場合には,商標権侵害としての実質的違法性はないのであって,ゾ社がイランで商標権を取得しているか否かは無関係である。
したがって,本件について商標権侵害としての実質的違法性を欠くと判断することは,フレッドペリー事件最高裁判決に反しない。

被控訴人標章1が付された被控訴人商品の販売等について
被控訴人が,被控訴人標章1が記載された被控訴人タグが付された被控訴人商品を販売し,販売のために被控訴人ウェブサイトに掲載した行為は,真正商品の並行輸入として商標権侵害としての実質的違法性を欠く。
(ア)

前記(1)における被控訴人の主張のとおり,被控訴人タグは,ゾ社が
付したものである。
(イ)

被控訴人タグが付されていたものを含む被控訴人商品は,被控訴人が,平成22年4月から平成26年4月までの間,イランにあるゾ社の本社倉庫において,ゾ社との間で締結した売買契約に基づき,6回にわたってゾ社から購入し,日本に輸入したものである。そのことは,各取引における輸出入書類(インボイス,パッキングリスト,船荷証券及び原産地証明書)と契約書の内容が整合し,パッキングリストにおける番号と,被控訴人ウェブサイトで販売している商品に付された番号が同一であること,ゾ社に対して代金が支払われていることから明らかである。控訴人は,日本におけるゾ社の唯一の特約販売店であり,ゾ社の直営店と同じ扱いと待遇を得ている関係の中で,ゾ社からゾ社の標章を控訴人名義で登録する権限を与えられたのである。
したがって,ゾ社と控訴人は同視し得る関係にあり,被控訴人標章1は,控訴人商標と同一の出所を表示するものといえる。
(ウ)

被控訴人商品は,前記(イ)のとおり,控訴人商標の実質的な権利者で
あるゾ社が直接販売した真正商品なのであるから,実質的な商標権者であるゾ社の商品に対する品質管理が及んでおり,被控訴人商品と控訴人商品とは,控訴人商標が保証する品質において実質的に差異がない。ゾ社が被控訴人に販売した商品にどのようなタグが付されているかは,ゾ社内部の問題にすぎず,品質には関係しない。

被控訴人ウェブサイトにおける被控訴人各標章の使用について
被控訴人が,被控訴人商品の広告に被控訴人各標章を付して被控訴人ウェブサイトに掲載する行為は,商標権侵害としての実質的違法性を欠く。

(ア)

被控訴人商品は,ギャッベというイランの遊牧民による手織りじゅうたんであり,日本で広く生産・販売されているものではない。また,ゾ社は,ギャッベの販売業者として世界的に著名であり,「ゾランヴァリ」も,じゅうたんについての商標として広く取引者及び需要者に認識されている。そのため,被控訴人が,ゾ社から購入した真正商品である被控訴人商品を販売するに当たり,被控訴人ウェブサイトにおいて,被控訴人各標章を付しても,需要者が被控訴人商品の出所として認識するのは,被控訴人ではなく,控訴人商標の実質的権利者であるゾ社である。したがって,控訴人商標の出所表示機能は害されない。
(イ)

被控訴人商品は,被控訴人が日本で販売することを目的として,控訴人商標の実質的権利者であるゾ社から直接購入したものであるから,ゾ社自身が,被控訴人商品をゾ社の製品として流通に置くことを承諾している。したがって,被控訴人が,被控訴人商品を販売するに当たり,被控訴人各標章を付しても,控訴人商標の品質保証機能は害されない。
(ウ)

被控訴人ウェブサイトにおいて被控訴人商品に被控訴人各標章を表示することは,需要者が商品を選択するに当たって必要不可欠なものであるから,これによって需要者の利益が損なわれることはない。

(控訴人の主張)

最高裁判例との関係について
真正商品の並行輸入の法理が適用される範囲を,フレッドペリー事件最高裁判決の認める場合よりも拡大することは,内国商標権を不当に弱めるものである上,真正商品以外の商品が混入する可能性が大きくなり,外国商標権者の商標の出所表示機能及び品質保証機能を守ろうとする上記法理の趣旨が失われてしまうから,妥当でない。
また,ゾ社は,イランではじゅうたんに関して「ゾランヴァリ」の商標権を有しておらず,外国における商標権者ではないから,本件においては,真正商品の並行輸入の法理に基づいて商標権侵害としての実質的違法性がないとする前提に欠けている。


被控訴人標章1が付された被控訴人商品の販売等について
被控訴人が,被控訴人標章1が記載された被控訴人タグが付された被控訴人商品を販売し,販売のために被控訴人ウェブサイトに掲載した行為は,商標権侵害としての実質的違法性に欠けるものではない。
(ア)

前記(1)における控訴人の主張のとおり,被控訴人タグは,ゾ社が付
したものではない。
(イ)

Bは,被控訴人代表者の夫Cとの間の会話において,販売したギャッベがどこの国で販売されるかについては一切触れれていない。両者の会話中には,タグの話も,ゾ社の商標を使用できるか否かの話も全く出て来ない。したがって,ゾ社が被控訴人に対し,被控訴人が日本で販売することを前提として,ゾ社の製品を販売したとはいえない。

(ウ)

被控訴人は,ゾ社が控訴人タグを付する価値のないものとして別紙3のタグを付した上で,イラン国内の市場(バザール)にノーブランド商品として放出したじゅうたんをゾ社の製品として日本に輸入し,販売している。被控訴人商品は,ゾ社の製品であっても,ゾ社の認める品質の保証はない。
内国商標権が成立している状況において,並行輸入の法理の下,外国から商品を持ち込む者は,その商品と内国商標権を付して販売されている商品との間の品質が同一であることについて立証する必要があるが,被控訴人は,被控訴人商品が真正商品と同じ品質であることにつき立証できていない。


被控訴人ウェブサイトにおける被控訴人各標章の使用について
被控訴人が,被控訴人商品の広告に被控訴人各標章を付して被控訴人ウェブサイトに掲載する行為は,商標権侵害としての実質的違法性に欠けるものではない。

(ア)

被控訴人は,被控訴人商品の全てをゾ社から購入したように主張するが,Bが関与した取引であっても,被控訴人商品の全てがゾ社の製品であるとの保証はない。被控訴人ウェブサイトの被控訴人商品を説明する部分に被控訴人各標章を付する行為は,被控訴人商品があたかもゾ社の製品であるかのように消費者に信じ込ませる悪質な行為であり,控訴人商標の出所識別機能を害する。
(イ)

被控訴人商品がゾ社の製品であったとしても,ゾ社の製品の質にはばらつきがあり,どの織子が製造したものか明らかでない以上,被控訴人商品と控訴人商品との間に,控訴人商標が保証する品質に実質的な差異がないとはいえない。

(3)

控訴人に生じた損害

(控訴人の主張)

控訴人は,平成3年頃から現在まで,ゾ社の製品であるじゅうたんを輸入して,これを控訴人商品として販売しており,平成23年からは,これに控訴人商標を付して販売している。


逸失利益

(ア)

控訴人の29期,30期におけるゾ社の製品の売上高の推移は,次の
とおりである。
平成25年4月1日から平成26年3月31日まで(29期)
●(省略)●
平成26年4月1日から平成27年3月31日まで(30期)
●(省略)●
(イ)

ゾ社の製品を控訴人商品として販売することにより得られる控訴人の粗利益率は●(省略)●である。

(ウ)

控訴人の粗利益は,29期と30期を比較すると30期は少なくとも●(省略)●減少した。
(計算式)●(省略)●
●(省略)●
平成26年度(30期)の減額要因は,①被控訴人による控訴人商標の不正使用,②消費税率の8%への引上げ,③インド,中国,イラン等によるコピー商品の市場撹乱等が考えられ,それぞれの寄与度が33%の割合とすると,被控訴人が被控訴人商品を被控訴人ウェブサイト等で販売したことにより,控訴人に生じた損害は●(省略)●である。控訴人は,本件訴訟において,このうち2640万円を請求する。(計算式)●(省略)●

弁護士費用
被控訴人による不法行為と相当因果関係のある弁護士費用額は264万円である。

(被控訴人の主張)
争う。
第3

当裁判所の判断

1
認定事実
前記前提事実のほか,証拠(文中に掲記のもの)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実を認めることができる。

(1)

ゾ社の代表者であるAは,本件訴訟が提起された後である平成27年10
月20日,ゾ社が平成19年から平成26年までの間Cに対してじゅうたんを販売していたことを証明する文書をイラン国内において提出した(乙13)。
(2)

被控訴人では,被控訴人代表者の夫であるCが,被控訴人のために,イラ
ンからじゅうたんを仕入れている。
(3)

Cは,ゾ社のセールスマネージャーで,控訴人との取引をも担当するBと
の間で,日本国内から,メールやスマートフォンの無料通信アプリ等で商談を行ったり,輸出入書類の案文のやり取りを行ったりしており,また,イランに行った際には,ゾ社を訪問することもある(乙3,14,17,19,39)。
(4)

被控訴人は,平成22年から平成26年までの間,イランから6度,合
計5000枚以上のじゅうたんを日本に輸入しており,その輸出入書類(インボイス,パッキングリスト,船荷証券及び原産地証明書)において荷送人になっている業者はゾ社ではないが,荷送人の電話番号又はファクシミリ番号としては,いずれもゾ社のものが記載されている(乙13,16,26~30,32,34~36)。
(5)

被控訴人が前記(4)のとおりイランから輸入したじゅうたんについては,
ゾ社のスタンプが押捺され(それに加えて,ゾ社のレターヘッドが印刷された用箋を用いたものや,Bがサインしたものもある。),商品,数量及び価格が記載されたリストが作成された(乙1,26,28)。
(6)

被控訴人が前記(4)のとおりイランから輸入したじゅうたんについては,
C又はその妹が,ゾ社の代表者であるA名義の銀行口座に振り込んで,又はAを受取人とした小切手を振り出して交付して,その代金を支払った(乙8)。
(7)

被控訴人は,平成24年4月6日,ゾ社に宛てて,ギャッベ83枚を返品
した(乙40)。
(8)

本件の証拠上被控訴人商品に付されていたことが確認できる被控訴人タグ
は,商品番号1411416(甲5),同1229(乙11の1),同2270(乙12の1),同132210(乙25),同132228(乙25)及び同1410912(乙25)の6枚である。これらの商品番号は,被控訴人がイランから輸入した際のパッキングリストに記載された商品番号に由来している(甲5,乙11の1,乙12の1,乙25,乙29の2,乙35の2,乙36の5)。
(9)

被控訴人タグの付されていない被控訴人商品には,被控訴人各標章が付さ
れておらず,バーコード,商品番号,寸法及び商品名のみが記載された別紙3のタグが付されている(乙25)。
(10)

被控訴人は,被控訴人商品を別紙3のタグに記載された商品番号で管理し
ており,そのことを被控訴人ウェブサイトも説明し,被控訴人ウェブサイトで商品を選択すれば,その商品番号(「シリアル番号」や「バーコード番号」などと表記している。)を確認することができるようにしている(甲11~18)。
2
争点(1)(被控訴人商品に被控訴人タグを付したのは被控訴人か)について
(1)

前記第2の2及び第3の1で認定した事実によれば,被控訴人代表者の夫
であるCは,被控訴人のために,ゾ社の日本における総代理店である控訴人と同様,ゾ社のセールスマネージャーであるBと商談を行い,ゾ社のスタンプが押捺された商品のリストに基づいて,約4年の間に合計5000枚以上のじゅうたんをイランから輸入し,その代金は,ゾ社の代表者であるAに対して支払われており,返品はゾ社に対して行われていたのである。それに加えて,A自身も,Cに対してじゅうたんを販売していたことを認めていたのであるから,被控訴人商品は,被控訴人がゾ社から購入したものであると認められる。
そして,ゾ社のBは,日本国内にいるCを通じ,日本の会社である被控訴人に対して,ゾ社の製品であるじゅうたんを販売して輸出する取引をしているのであるから,ゾ社においても,被控訴人に販売した商品が日本国内で販売されることを前提として,被控訴人に対してゾ社の製品を販売したものと認められる。
(2)

これに対し,控訴人は,被控訴人商品に付されている別紙3のタグはゾ社がイラン国内で販売する際に付するものであって,被控訴人商品は,ゾ社がイラン国内の市場でCに対して販売したものである旨主張し,A及びBの説明(甲34,40,41,甲44の1,甲52)には,これに沿う部分がある。
しかし,ゾ社が控訴人との間で日本における総代理店契約を締結していることからすると,ゾ社がその製品を日本国内で販売されることを前提として被控訴人に対して販売することは,控訴人との間の総代理店契約に違反することになると考えられる。したがって,AやBとしては,前記(1)の取引を控訴人に対して秘匿したい立場にあるといえる。実際,控訴人が被控訴人に対して商標権侵害の警告を書面で行った後の平成27年3月時点でのBとCとの間の会話(乙47,49)中のBの発言には,じゅうたんは誰か別の人から買った,その人がゾランヴァリ製だと言っていただけだと言ってほしい(乙49の2・2頁)といったものがあることが認められる。これらの発言は,ゾ社と被控訴人との取引があったことを控訴人に対して秘匿するのに口裏を合わせてほしいと協力を求める趣旨のものといえる。また,平成27年3月の段階では,ゾ社からも委任を受けていた控訴人代理人弁護士が,被控訴人代理人弁護士に対し,「ゾ社に電話を架けてインボイスを確認したところ,ゾ社が被控訴人に対して販売した事実はなく,インボイスの控えもない」旨回答しており(甲10の2),A及びBもそのように説明していたことが認められる。これに対し,本件訴訟提起後の同年12月にAが作成した報告書(甲44の1)では,被控訴人が私たちから輸入し販売しているじゅうたんは,イラン国内の地元市場でCに販売したものである旨説明していて,その説明内容は変遷している。これらのことをも考慮すると,A及びBの上記説明は直ちに採用できるものではなく,前記(1)の認定を左右しない。(3)

被控訴人商品は,日本国内で販売されることを前提としてゾ社がその製品
を被控訴人に対して販売したものと認められる以上,その一部に付されている被控訴人タグは,ゾ社が付したとしても不合理ではなく,被控訴人タグに記載された商品番号は,被控訴人がイランから輸入した際のパッキングリストに記載された商品番号に由来しているのであるから,むしろ,イランから輸出したゾ社が付したと考えるのが自然である。
被控訴人代表者は,被控訴人タグが付されるようになった経緯として,平成23年夏頃,控訴人がゾ社から仕入れたじゅうたんの裏にスタンプを押すようになり,そのスタンプがないと本物のゾ社の製品でないとの認識が取引者・需要者の間に広まったことから,Cは,Bに対し,ゾ社との取引停止を通告したところ,ゾ社が取引の継続を求め,Cがその条件として売買契約書やタグ等,ゾ社の製品であることの根拠となるものを要求した旨説明している(乙20)。この説明には特段不合理な点がない。
被控訴人タグは,被控訴人商品の一部にしか付されていないのであるが,被控訴人がこれを付したのであれば,一部にのみ付する合理的理由は見いだし難い。これに対し,被控訴人の主張では,ゾ社が一部にのみ被控訴人タグを付したのは,じゅうたんを山積みにして陳列する際,一番上のじゅうたんにのみ付されていれば,それでタグの役割は十分果たされるとの説明を受けたというものであり,これは,仮にゾ社が被控訴人タグを付したのであれば,控訴人に対しては,総代理店契約との関係上,被控訴人との取引を秘匿したく,被控訴人タグの提供を最小限にしたいと考えていたと推測されるゾ社の対応としては十分あり得ることといえる。
また,控訴人は,ゾ社の製品のうち輸出用として選別された控訴人商品には,被控訴人タグと異なる控訴人タグが付されている旨主張するところ,この点についても,ゾ社としては,日本の被控訴人に輸出用商品を販売することが,控訴人との関係では総代理店契約に違反することから,被控訴人商品には控訴人商品とは異なるタグを付することにしたものであると考えられ,控訴人タグが付されていない輸出用商品の存在を認めることができる。以上によれば,被控訴人タグは,ゾ社によって付されたものであると認められる。
(4)

これに対し,A及びBの説明(甲31,32,甲44の1,甲45の1,
甲52)には,被控訴人タグはゾ社の付したものではないとの部分がある。しかし,既に説示したとおり,A及びBには,控訴人に対する関係で,ゾ社と被控訴人との間の取引内容を秘匿したいとの意向があると考えられることからすれば,上記説明部分は,直ちに採用できるものではなく,上記認定を左右しない。
(5)

控訴人は,被控訴人が,控訴人から商標権侵害行為について警告を受けた
後,自主的に被控訴人タグなしで被控訴人商品を販売するようになったことを指摘し,被控訴人タグを付したのがゾ社であれば,被控訴人がそのような行動をとることはあり得ない旨主張する。
証拠(甲9の1,甲10の1)によれば,控訴人の指摘するとおり,控訴人が,平成27年2月に,被控訴人に対し,商標権侵害行為について書面で警告したのに対し,被控訴人は,同年3月,控訴人に対し,法的責任は争いつつも,控訴人が商標登録しているロゴマークを削除する旨書面で回答したことが認められる。しかし,前記(3)で述べたとおり,被控訴人タグは,もともと被控訴人商品には付されておらず,取引停止を検討した際,ゾ社から取引継続を求めるとともに,一部にだけ付するようになったものであるから,これを除去することによって被控訴人に生じる営業上の支障はさほど大きなものではなかったと考えられる。したがって,被控訴人が被控訴人タグを自主的に除去したことは,被控訴人タグがゾ社によって付されたものであることと矛盾する行動とはいえず,控訴人の上記主張は採用できない。(6)

控訴人は,CとBとの間の会話(乙47,49)においても,被控訴人タ
グをゾ社が付したとの発言は全くなかった旨指摘する。
確かに,これらの会話(乙47,49)中には,そのような発言はなかったことが認められる。しかし,Cは,「ライオンマークは削除します。それは問題ありません」と発言しており(乙49の2・2頁),被控訴人は,その時点で既に被控訴人タグを自主的に除去する意向であったことが認められる。そして,それは,前記(5)のとおり,被控訴人タグはゾ社が付したものであることと矛盾する行動とはいえない。そうである以上,Cが,Bに対し,被控訴人タグにつき,ゾ社が付したものであるから,控訴人に対してそのように説明してくれなどと要求していなくても不合理であるとはいえない。したがって,控訴人の上記指摘は,被控訴人タグがゾ社によって付されたものであるとの認定を左右するものではない。
3
争点(2)(被控訴人各標章の使用行為は商標権侵害としての実質的違法性を欠くといえるか)について

(1)

はじめに

控訴人が本件において主張する被控訴人の商標権侵害行為は,①被控訴人商品に被控訴人標章1を付した行為,②被控訴人標章1が付された被控訴人商品を販売し,販売のために被控訴人ウェブサイトに掲載した行為,③被控訴人商品の広告に被控訴人各標章を付して被控訴人ウェブサイトに掲載した行為であるところ,このうち上記①は,前記2のとおり,被控訴人の行為と認められない。上記②及び③は,被控訴人各標章がいずれも控訴人商標に類似し,かつ,被控訴人商品がいずれも控訴人商標の指定商品に含まれるから(前記第2の2(5)),外形的には被控訴人商標権を侵害することになる。
それにもかかわらず,被控訴人の主張するように,これらの行為が商標権侵害としての実質的違法性を欠くといえるかにつき,以下において検討する。


商標権者以外の者が,我が国における商標権の指定商品と同一の商品につき,その登録商標と同一の商標を付したものを輸入する行為は,許諾を受けない限り,商標権を侵害するが,そのような商品の輸入であっても,①当該商標が外国における商標権者又は当該商標権者から使用許諾を受けた者により適法に付されたものであり,②当該外国における商標権者と我が国の商標権者とが同一人であるか又は法律的若しくは経済的に同一人と同視し得るような関係があることにより,当該商標が我が国の登録商標と同一の出所を表示するものであって,③我が国の商標権者が直接的に又は間接的に当該商品の品質管理を行い得る立場にあることから,当該商品と我が国の商標権者が登録商標を付した商品とが当該登録商標の保証する品質において実質的に差異がないと評価される場合には,いわゆる真正商品の並行輸入として,商標権侵害としての実質的違法性を欠くものと解される(フレッドペリー事件最高裁判決)。
(2)

被控訴人標章1が付された被控訴人商品の販売等について

前記2のとおり,被控訴人標章1が記載された被控訴人タグは,ゾ社によって被控訴人商品に付されたと認められる。
他方,証拠(甲53)及び弁論の全趣旨によれば,ゾ社は,イランにおいて,「ZOLLANVARI」をペルシア文字で表記した商標の登録を出願したが拒絶され,「ZOLLANVARI」に関する商標について商標権を取得していないことが認められる。しかし,証拠(甲33)によれば,ゾ社は世界各地に直営店を設けている中で,日本においては,控訴人が,ゾ社の総代理店として,直営店と同じ扱いと待遇を受けていると認められる。それに加えて,控訴人は,前記第2の2(3)のとおり,ゾ社から権限を授与されて初めて控訴人商標の登録を受けることができたのであるから,ゾ社がイランにおいて商標権を有している場合と実質的には変わるところがないといえる。
そうすると,被控訴人が,被控訴人標章1が付された被控訴人商品を輸入した上,これを販売し,販売のために被控訴人ウェブサイトに掲載した行為は,控訴人商標の出所表示機能を害することがないといえる。

本件の証拠上,ゾ社と控訴人との間の総代理店契約において,控訴人が控訴人商品の品質管理に直接関与していることを示すものはなく,控訴人商品の品質管理は,基本的にはゾ社において行われているものと認められる。
これに対し,被控訴人商品については,前記2のとおり,ゾ社から,被控訴人が日本国内で販売することを前提として販売されたものであると認められるから,被控訴人商品の品質については,これが日本において販売されることを前提としてゾ社において管理しているものと認められる。そうすると,ゾ社が外国における商標権者でなくても,控訴人商品につき,控訴人商標の保証する品質は,控訴人がゾ社を通じて間接的に管理をしていて,そのゾ社が,控訴人商品と同じく日本に輸出して日本において販売される商品として被控訴人商品の品質を管理しているのであるから,被控訴人商品と控訴人商品とは,控訴人商標の保証する品質において実質的に差異がないといえる(本件は,被控訴人商品と控訴人商品のいずれも,ゾ社の下で製造されているという点において,フレッドペリー事件最高裁判決の事案と異なるということがいえる。)。
この点に関し,控訴人は,被控訴人商品がゾ社の製品であるとしても,それはイラン国内のバザールで販売していた製品であり,ゾ社が日本輸出向けとして選別し控訴人タグを付した控訴人商品とは品質の点で異なる旨主張し,A及びBの説明(甲34,52)には,被控訴人商品に付されている別紙3のタグ(前記1(9))は,国内市場でのみ使用し,輸出向け商品には使用しないとの趣旨の部分がある。
証拠(乙22の3)及び弁論の全趣旨によれば,ゾ社の取り扱うじゅうたんは,工場で生産されるものではなく,イラン国内において複数の織子から仕入れる手織りのものをゾ社において仕上げていると認められる。そうすると,製品ごとにその品質には相当のばらつきがあることが推認されるから,控訴人が主張するように,輸出向けと国内販売向けの製品を選別するという取扱いも十分考えられるところである。
また,証拠(甲48の1,甲49の1,甲50の1,乙27の2,乙29の1,乙30の1,乙34の1,乙35の1,乙36の4)によれば,控訴人商品のゾ社からの購入代金は1㎡当たり224ないし715米ドルであるのに対し,被控訴人商品のゾ社からの購入代金は1㎡当たり40ないし70米ドルであると認められ,明らかに控訴人商品の方が高いといえる。
しかし,被控訴人代表者及びCが作成した,CとBとの間の会話を反訳及び翻訳した文書(乙49)の注記には,控訴人が取り扱っている商品が主にルリバフなどの高級品であるのに対し,被控訴人はギャッベなどの比較的安価な商品を取り扱っており,控訴人と被控訴人とでは同じゾ社の製品でも取り扱っている商品が違う,顧客層が違うとの記載があるが,直ちに,両者の品質が異なるということにはならない。
また,証拠(乙25)によれば,別紙3のタグが付された被控訴人商品の中には,当該タグを収納しているビニール袋の内側に,当該タグに記載されたのと同じ寸法及び控訴人代表者の姓である「D」との文字が,おそらく意図せずに転写されているものが複数あったことが認められる。このことは,ゾ社において,控訴人向けとなる商品と,被控訴人向けとなる商品とが重なり合っていることを示すものといえる。
そして,上記のとおり,控訴人商品についても,その品質管理を実質的に行っていると認められるゾ社自身が,控訴人商品と同じく日本に輸出して日本において販売される商品として被控訴人商品を被控訴人に販売している以上は,被控訴人商品と控訴人商品とは,控訴人商標の保証する品質において実質的に差異がないとの評価は左右されず,被控訴人商品と控訴人商品の品質が同一とまではいえなくても,控訴人商標の品質保証機能を害することはないというべきである。
そうすると,被控訴人が,被控訴人標章1が付された被控訴人商品を販売し,販売のために被控訴人ウェブサイトに掲載した行為は,控訴人商標の品質保証機能を害することがないといえる。

前記ア及びイのとおり,被控訴人が,被控訴人標章1が付された被控訴人商品を販売し,販売のために被控訴人ウェブサイトに掲載した行為(前記(1)ア②の行為)は,控訴人商標の出所表示機能及び品質保証機能を害することがなく,また,以上に述べたところによれば,商標を使用する者の業務上の信用及び需要者の利益を損なうものでもないから,商標権侵害としての実質的違法性を欠くというべきである。

(3)

被控訴人ウェブサイトにおける被控訴人各標章の使用について

被控訴人商品の広告に被控訴人各標章を付して被控訴人ウェブサイトに掲載する行為(前記(1)ア③の行為)については,これまでの認定及び判断に基づくと,次のとおり指摘することができる。
まず,被控訴人各標章が付された広告において宣伝された被控訴人商品は,被控訴人が,控訴人商標の外国における商標権者と同視できるゾ社から,日本国内で販売することを前提として,購入して輸入したものである。そして,控訴人は,ゾ社の日本における総代理店であって,ゾ社の直営店と同じ扱いと待遇を受けており,控訴人商標の出所表示機能を検討する際には,控訴人とゾ社とは同視することができる。そうであれば,被控訴人商品の広告に,控訴人商標と類似する被控訴人各標章を付して被控訴人ウェブサイトに掲載しても,控訴人商標の出所表示機能を害することがないといえる。
また,被控訴人商品と控訴人商品とは,控訴人商標の保証する品質において実質的に差異がないといえるから,被控訴人商品の広告に,控訴人商標と類似する被控訴人各標章を付して被控訴人ウェブサイトに掲載しても,控訴人商標の品質保証機能を害することがないといえる。


そうすると,被控訴人商品の広告に被控訴人各標章を付して被控訴人ウェブサイトに掲載する行為は,控訴人商標の出所表示機能及び品質保証機能を害することがなく,また,以上に述べたところによれば,商標の使用をする者の業務上の信用及び需要者の利益を損なうこともないから,商標権侵害行為としての実質的違法性を欠くというべきである。
4
結論
以上によれば,その余の争点については検討するまでもなく,控訴人の請求はいずれも理由がない。
よって,当裁判所の上記判断と同旨の原判決は相当であり,本件控訴は理由がないから,これを棄却することとし,主文のとおり判決する。
大阪高等裁判所第8民事部

裁判長裁判官

山田陽三
裁判官

種村好子
裁判官

中尾彰
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