判例検索β > 平成28年(ワ)第24175号
特許権侵害差止等請求事件 特許権 民事訴訟
事件番号平成28(ワ)24175
事件名特許権侵害差止等請求事件
裁判年月日平成29年9月21日
法廷名東京地方裁判所
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平成29年9月21日判決言渡

同日原本交付

平成28年(ワ)第24175号
口頭弁論終結日

裁判所書記官

特許権侵害差止等請求事件

平成29年6月8日
判決原告
株式会社光未来

同訴訟代理人弁護士

溝田宗司
同補佐人弁理士

田中泰彦被告
株式会社豊大

同訴訟代理人弁護士


被告補助参加人

株式会社ハイジェンテック
ソリューション

同訴訟代理人弁護士


同補助参加人補佐人弁理士

大石皓一岸本高史主文1
原告の請求をいずれも棄却する。

2
訴訟費用は原告の負担とする。

第1

実及び
請求
理由1
被告は,別紙1被告製品目録記載の製品(以下「被告製品」という。)を輸入
し,販売し,貸し渡し,又は販売若しくは貸渡しの申出をしてはならない。
2
被告は,被告製品及びその半製品を廃棄せよ。

3
被告は,原告に対し,3980万円及びこれに対する平成28年8月5日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

第2

事案の概要
本件は,原告が被告に対し,被告による被告製品の輸入等が原告の特許権を侵害すると主張して,特許法100条1項に基づき被告製品の輸入等の差止めを,同条2項に基づき被告製品及びその半製品の廃棄を,民法709条及び特許法102条2項に基づき損害賠償金3980万円及びこれに対する不法行為の後である平成28年8月5日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。
1
前提となる事実(当事者間に争いのない事実並びに後掲の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実)
当事者

原告は,水素水サーバーの製造及び販売等を業とする株式会社である。

被告は,健康食品の製造販売や水素水サーバーの輸入販売等を業とする株式会社である。


被告補助参加人は,被告製品を製造して被告に販売している。
原告の特許権


原告は次の特許権(以下「本件特許権」といい,その特許を「本件特許」という。また,その特許出願の願書に添付された明細書及び図面を「本件明細書」という。
)の特許権者である。
発明の名称

気体溶解装置及び気体溶解方法

特許番号

第5865560号


平成27年5月26日(特願2015-529952

願日
号)
登日
平成28年1月8日

優イ録先日
平成26年5月27日

本件特許権の特許請求の範囲の請求項1及び2の記載は次のとおりである(以下,請求項1の発明を「本件発明1」
,請求項2の発明を「本件発明
2」という。。

本件発明1


水に水素を溶解させて水素水を生成し取出口から吐出させる気体溶解装置であって,
固体高分子膜(PEM)を挟んだ電気分解により水素を発生させる水素発生手段と,
前記水素発生手段からの水素を水素バブルとして水に与えて加圧送水する加圧型気体溶解手段と,
前記加圧型気体溶解手段で生成した水素水を導いて貯留する溶存槽と,
前記溶存槽及び前記取出口を接続する管状路と,を含み,
前記溶存槽に貯留された水素を飽和状態で含む前記水素水を前記加圧型気体溶解手段に送出し加圧送水して循環させ前記水素バブルをナノバブルとするとともにこの一部を前記水素発生手段に導き電気分解に供することを特徴とする気体溶解装置。

本件発明2



前記溶存槽から前記加圧型気体溶解手段を経て前記溶存槽への循環経路において,前記加圧型気体溶解手段は生成した前記水素バブルを時間とともに平均径を小さくするように加圧送水することを特徴とする請求項1記載の気体溶解装置。



本件発明1及び2は,以下の構成要件に分説される(以下,それぞれの構成要件を「構成要件A」などという。。

本件発明1
A:水に水素を溶解させて水素水を生成し取出口から吐出させる気体溶解装置であって,
B:固体高分子膜(PEM)を挟んだ電気分解により水素を発生させる水素発生手段と,
C:前記水素発生手段からの水素を水素バブルとして水に与えて加圧送水する加圧型気体溶解手段と,
D:前記加圧型気体溶解手段で生成した水素水を導いて貯留する溶存槽と,
E:前記溶存槽及び前記取出口を接続する管状路と,を含み,
F:前記溶存槽に貯留された水素を飽和状態で含む前記水素水を前記加圧型気体溶解手段に送出し加圧送水して循環させ前記水素バブル
をナノバブルとするとともにこの一部を前記水素発生手段に導き
電気分解に供することを特徴とする気体溶解装置
本件発明2
G:前記溶存槽から前記加圧型気体溶解手段を経て前記溶存槽への循環経路において,前記加圧型気体溶解手段は生成した前記水素バブルを時間とともに平均径を小さくするように加圧送水することを特
徴とする請求項1記載の気体溶解装置
被告及び被告補助参加人(以下「被告ら」という。
)の行為等

被告は,被告製品の輸入販売をしている。


被告製品は,水素を水に溶解させて水素水を生成する水素水サーバーであり,分離型電気分解方式(PEM方式)により水又は水素水を電気分解して水素を得る機能を有する水素発生器及び当該水素発生器から発生した水素を水に与えて加圧送水するポンプのほか,カーボンフィルタ,冷水タンク,カーボンフィルタと冷水タンクを接続する細管,冷水タンクに溶接された金属管を備えている。
被告製品の外観及び被告製品内部の機器の配置等は,別紙2図面1のとおりであり,被告製品内部の機器は,別紙2図面2のとおりである。被告製品を稼働させると,水が冷水タンクにある循環用吸い込み口からポンプへ送られ,ポンプにおいて水素発生器から送られた水素とともに加圧されて水素水が生成される。生成された水素水は,ポンプからカーボンフィルタへ送られ,カーボンフィルタから細管を経て冷水タンクにある循環用吐き出し口を通って冷水タンクへと送られた後,冷水タンクの循環用吸い込み口からポンプへ送られて上記過程を繰り返す方法により循環する。冷水タンクには上記循環用吐き出し口及び循環用吸い込み口のほかに水素水取り出し穴があり,冷水タンクの水は,上記の循環をするほか,水素水取り出し穴から冷水タンクに溶接された金属管を通じて被告製品の外部に取り出される(甲5,12)

冷水タンクは大気圧下にあり,冷水タンク内の水素水については圧力の調整は行われていない。

被告補助参加人は,被告の委託を受けて被告製品を製造し,被告に販売している。

2
争点
被告製品の本件発明1及び2の技術的範囲への属否(被告らは後記ア~キ以外の構成要件の充足性を争わない。


「取出口」
(構成要件A,E)の充足性


「溶存槽」
(構成要件D,E,F)の充足性

ウ「前記溶存槽及び前記取出口を接続する管状路」
(構成要件E)の充足性
エ「前記溶存槽及び前記取出口を接続する管状路」
(構成要件E)について
の均等侵害の成否

「溶存槽に貯留された・・・水素水を前記加圧型気体溶解手段に送出し加圧送水して循環させ」
(構成要件F)の充足性


「溶存槽に貯留された・・・水素水を前記加圧型気体溶解手段に送出し加圧送水して循環させ」
(構成要件F)についての均等侵害の成否


「前記溶存槽から前記加圧型気体溶解手段を経て前記溶存槽への循環経路」
(構成要件G)の充足性
本件特許の無効理由の有無(本件特許権の行使の可否。特許法104条の
3第1項)

本件発明1の二重特許禁止(同法39条3項)の違反


本件発明1のサポート要件(同法36条6項1号)
,明確性要件(同項2
号)及び実施可能要件(同条4項1号)の違反


本件発明2のサポート要件,実施可能要件,明確性要件の違反
原告の損害額

3
争点に対する当事者の主張

(原告の主張)
取出口とは,
水素水を気体溶解装置の外部に取り出すための口を意味する。
被告製品においては,金属管が水素水を被告製品の外部に取り出す蛇口の役割を果たすから,被告製品の金属管は取出口を充足する。
(被告らの主張)
取出口は,
溶存槽に貯留された水素水を気体溶解装置の外部に取り出すた
めの口を意味し,管状路の開口部を指す。
被告製品の金属管が水素水を外部に取り出す機能を有する部材であるとするならば,取出口は金属管の開口部であり,金属管の全体ではない。
(原告の主張)
「溶存槽」は,生成した水素水を導いて貯留するものであり,被告製品のカーボンフィルタは,加圧型気体溶解手段であるポンプで生成した水素水を一時的にせよ貯留するものであるから,溶存槽に該当する。
被告らは,溶存槽とは「生成した水素水を加圧し貯留する」ものをいうと主張するが,そのように限定して解釈すべきではない。もっとも,被告らの解釈を前提としても,被告製品のカーボンフィルタは,生成した水素水中の溶存し切っていない水素を加圧して水素水に溶解させるとともに,水素水中のバブルを微細なものとするから,
「生成した水素水を加圧し貯留する」
機能
を有しており,構成要件Dを充足する。
(被告らの主張)
本件明細書では,
「生成した水素水を導いて加圧し貯留する溶存槽」
(段落
【0017】【0023】,

)「溶存槽に加圧貯留された水素水」
(段落【00
21】【0025】

)等と記載されているから,構成要件Dの溶存槽は,単に
水素水を貯留するに止まらず,
「加圧し貯留する」ことを構成要素とするもの
である。
被告製品のカーボンフィルタは,水素水を貯留したり保存したりするものではなく,水中の塩素やその他の異物を吸着するためのものである。被告製品では,水素水はカーボンフィルタを通過するのみであり,カーボンフィルタに貯留されない。また,被告製品のカーボンフィルタは,水素水を加圧して貯留する機能も有しない。被告製品のカーボンフィルタは構成要件Dを充足しない。
争点

ウ(
「前記溶存槽及び前記取出口を接続する管状路」
(構成要件E)

の充足性)について
(原告の主張)

被告製品では,カーボンフィルタと冷水タンクを接続する細管が備えられているところ,この冷水タンクには金属管が溶接されていることから,冷水タンクと金属管はほぼ一体であるとみなすことができる。また,細管と冷水タンクの接続箇所及び冷水タンクと金属管の接続箇所がともに冷水タンクの下面に設けられており,これらの接続箇所の距離も非常に近いことからすると,上記細管は,カーボンフィルタと金属管を直接的に接続するものと評価してよい。したがって,被告製品は「前記溶存槽及び前記取出口を接続する管状路」を備える。

構成要件Eでは,管状路は溶存槽と取出口を直接的に接続するものに限定されていないから,構成要件Eの「接続」には,溶存槽と取出口を間接的に接続する管状路も含まれる。
「接続」という文言が間接的な接続を含む
趣旨で用いられている例は複数あるし,間接的な接続という概念は,機械及び通信の分野で通常用いられる概念である。
取出口は水素水を気体溶解装置の外部に取り出す機能を有するが,大気圧である外部とつながっているため,加圧状態で水素水中に閉じ込められていた水素が気圧の減少により解放され,
大気中に放出される。
このため,
本件発明1では,圧力変動のあり得る溶存槽と取出口の間に管状路の降圧移送手段を設けている。管状路の降圧移送手段は,加圧状態から大気圧状態まで圧力変動がありうる構成と構成の間に接続されていればよく,本件発明1でいえば,溶存槽の出口から大気圧に解放される取出口に至るまでの間に接続されていればよい。
被告製品の細管は,圧力を大気圧までゆっくりと戻すために設けられているものであり,溶存槽であるカーボンフィルタの出口と取出口である金属管を間接的に接続するものであるから,管状路に該当する。

(被告らの主張)

被告製品の金属管は,溶接によって冷水タンクに取り付けられているだけであり,冷水タンクと金属管は別の機能及び構造を有する別個の物体であるから,冷水タンクと金属管が一体であるとはいえない。被告製品の細管は,
金属管ではなく冷水タンクに接続されているから,
「前記溶存槽及び
前記取出口を接続する管状路」を充足しない。

本件発明1の特許請求の範囲や本件明細書には,管状路は溶存槽と取出口を間接的に接続するものでもよい旨の記載も示唆もなく,本件明細書の図面にも間接的な接続を示す例は記載されていない。したがって,構成要件Eの「接続」が間接的な接続を含むと解することはできない。

についての均等侵害の成否)について
(原告の主張)
本件発明1は溶存槽と取出口との間に管状路を設けるものであるところ,被告製品は,溶存槽に当たるカーボンフィルタと取出口に当たる金属管との間に冷水タンクが介在し,管状路に当たる細管がカーボンフィルタの出口と冷水タンクの入口を接続するものである点において,本件発明1の構成と相違する。しかし,被告製品は,以下のとおり本件発明1と均等である。ア
本件発明1の全体像
本件発明1の目的及び課題
本件発明1では,生成した水素水から水素を離脱させずに過飽和の状態を安定的に維持するという課題を解決するために,加圧型気体溶解手段の排出口から出た水素水を溶存槽の入口に送り,溶存槽の出口から出た水素水を再び加圧型気体溶解手段の吸入口に送り,再び加圧型気体溶解手段の排出口から溶存槽の入口へと送るというように,溶存槽と加圧型気体溶解手段との間で水素水を「循環」する。
この循環は高圧力下でなされる必要はなく,循環経路に大気圧に戻る構成が含まれていても,当該構成に降圧移送手段(管状路)が接続されていれば足りる。降圧移送手段により徐々に圧力を大気圧に移行させることにより,水素水中のナノバブルが大気中に開放されることなく,水素水の濃度が高いまま維持されるからである。本件明細書の段落【0037】は,
「排出せずに循環」することで気体の溶解濃度を高めることの
重要性を述べただけであり,循環経路に降圧移送手段が含まれることを排除したものではない。循環経路に降圧移送手段が含まれてもよいことは,本件明細書の記載等(段落【0043】【0053】等)から明ら,
かである。
特許請求の範囲の記載
本件発明1では,取出口,加圧型気体溶解手段,加圧型気体溶解手段から水素水を導いて貯留する溶存槽を備え,溶存槽と取出口が管状路で接続されていることが規定されている。そして,水素水は加圧型気体溶解手段から溶存槽に流れ,溶存槽から加圧型気体溶解手段に流れることにより循環するところ,溶存槽には管状路が接続され,管状路には取出口が接続されていることから,溶存槽の出口と加圧型気体溶解手段の入口との間には,管状路と取出口が接続されていることになる。また,取出口は大気圧下にある外部に開放されているため,水素水から水素が抜けることを防ぐ目的で,圧力を徐々に降圧する降圧移送手段である管状路を設けている。
本件明細書の記載
本件明細書には,溶存槽と加圧型気体溶解手段が接続されている構成が示されるとともに,溶存槽に加圧貯留された水素水を「再度」
,加圧型
気体溶解手段に送出してもよい旨が記載されており,水素水を加圧型気体溶解手段から溶存槽へ,溶存槽から加圧型気体溶解手段へ,再び加圧型気体溶解手段から溶存槽へと循環させることが記載されている(段落【0024】。また,本件明細書の段落【0042】には,溶存槽は,)
上側から気体を溶解した液体を取り込み,下側から降圧移送手段へと送られることが好ましいと記載されている。当該記載によれば,溶存槽には気体を溶解した液体を取り込む口と降圧移送手段へと送る口が設けられている一方,他の口が設けられることに関する記載はないから,溶存槽は上記2つの口のみを備えるものといえる。このように,溶存槽が上記2つの口のみを備えるものであることからすれば,溶存槽の出口から出た水素水は,降圧移送手段(管状路)及び取出口を間に介して,加圧型気体溶解手段の吸入口に送られることが記載されているといえる。イ
第一要件
上記アの本件発明の全体像に照らせば,本件発明1の本質的部分は2つであり,そのうちの1つは管状路を備えていることである。
本件発明1の管状路は,水素水が大気圧に急峻に戻るのを防ぐため,加圧状態から大気圧状態までの圧力変動があり得る構成と構成の間に接続されるものである。本件発明1では,循環経路における取出口は大気圧下にある外部に解放されているから,ゆっくりと降圧する降圧移送手段としての管状路を循環経路に設けている。
被告製品では,カーボンフィルタの出口から出る水素水には圧力がかかっているが,当該水素水が冷水タンクに入ると大気圧に戻るため,カーボンフィルタの出口と冷水タンクの入口の間に細管を設けている。被告製品の細管は,加圧状態にある構成と大気圧状態までの圧力変動があり得る構成との間を接続するものであり,圧力を大気圧までゆっくりと戻すという点において,本件発明1の管状路と技術的思想は相違しない。
したがって,被告製品の構成は,本件発明1と本質的部分において相違するものではない。


第二要件
本件発明1においても被告製品においても,溶存槽と加圧型気体溶解手段との間で水素水を循環させて水素濃度を高め,管状路(降圧移送手段)を通し徐々に大気圧に降圧することで高めた水素濃度を維持する点が共通する。したがって,被告製品は第二要件を充足する。

第三要件
取出口の前に冷水タンクを設け,この冷水タンクに管状路を接続することは容易である。

(被告らの主張)
本件発明1と被告製品との相違点は,本件発明1がウォーターサーバーを気体溶解装置の外部に位置付け,気体溶解装置の構成から除いているのに対し,被告製品は冷水タンクを当該装置の内部に位置付けている点にある。ア
第一要件
本件発明1は,ウォーターサーバーを気体溶解装置の外部に置くものであるのに対し,被告製品は,ウォーターサーバーと同等の機能や作用を有する冷水タンクを気体溶解装置の内部に設置しているものである。この相違は,水素水の循環の構成と作用を左右する重大な要素であるから,本件発明1と被告製品とは本質的部分において相違する。
本件発明1の特許請求の範囲には,前記溶存槽及び前記取出口を接続す「
る管状路」とのみ記載があり,管状路がゆっくりと降圧する降圧移送手段としての機能を有している旨の記載はないから,管状路が降圧移送手段としての機能を有していることは必要ではなく,管状路が降圧の機能を有することは本件発明1の本質的部分ではない。


第二要件
被告製品は,気体溶解装置の外部のウォーターサーバーを,気体溶解装置の内部に取り込んだものであるところ,被告製品には,本件発明1の目的である「ウォーターサーバー等に容易に取り付けられる」という目的はなく,その目的達成のために小型化する必要もないことになる。したがって,本件発明1と被告製品とは課題も課題の解決手段も異なり,同一の作用効果を生じるものではないから,本件発明1の構成と被告製品の構成とに置換可能性はない。

第三要件
被告製品が均等の第一要件及び第二要件を欠くものであることは明らかであるため,
第三要件以下を検討するまでもなく,
均等侵害は成立しない。
争点

オ(
「溶存槽に貯留された・・・水素水を前記加圧型気体溶解手段に

送出し加圧送水して循環させ」
(構成要件F)の充足性)について
(原告の主張)

本件発明1の「循環」とは,加圧型気体溶解手段の排出口から出た水素水を溶存槽の入口に送り,溶存槽の出口から出た水素水を再び加圧型気体溶解手段の吸入口に送り,再び加圧型気体溶解手段の排出口から溶存槽の入口へと送ることを繰り返すように,溶存槽と加圧型気体溶解手段との間で水素水を循環することを意味する。


被告製品では,溶存槽であるカーボンフィルタから出た水素水は,冷水タンク等を介して加圧型気体溶解手段であるポンプに送られる。そして,被告製品の電源が入っている間は,この動作が繰り返されるものであるから,被告製品が「溶存槽に貯留された・・・水素水を前記加圧型気体溶解手段に送出し加圧送水して循環させ」ていることは明らかである。

被告らは,溶存槽から送出されてこれに接続された管状路を通り,更に管状路に接続された取出口に至った水素水は,取出口から装置の外部に吐出されて再び循環経路に戻ることはなく,溶存槽から出た水素水は,溶存槽の出口から出た後に,加圧型気体溶解手段に至る循環経路と降圧移送手段を経て取出口に至る経路に分岐すると主張する。
しかし,本件発明1の「循環」経路に「管状路」が含まれることは前記
記されていることからすると(段落【0023】,溶存槽の出口から出た)
後に分岐部分を設けることはない。また,取出口は蛇口のようなものであるから,取出口に至った水素水でも取出口で必ずしも取り出されるとは限らず,取り出されない限りは循環経路を循環する。

被告らは,被告製品では,カーボンフィルタとポンプの間に冷水タンクが含まれるから,循環経路に冷水タンクが介在し,故に,被告製品が構成要件Fの「循環」を充足しないと主張している。
しかし,
「管状路」の降圧移送手段により,徐々に大気圧に降圧され水素
水の水素濃度が維持されていることからすると,
本件発明においては,
「取
出口」と「管状路」の間にウォーターサーバーや水槽などの構成が入ることを除外するものではない。したがって,循環経路に冷水タンクが介在しても,
「循環」の充足性には影響を与えない。よって,被告製品が「循環」を充足することは明らかである。

(被告らの主張)

本件明細書においては,ウォーターサーバーは気体溶解装置に含まれるものではないとされているから,溶存槽と加圧型気体溶解手段との間に本件発明の構成要素ではない冷水タンクが介在することによって成立している被告製品の循環経路は,本件発明1の構成と明確に異なる。


本件発明1の特許請求の範囲の記載によれば,溶存槽から送出されて管状路を通り,管状路に接続されて取出口に至った水素水は,取出口から装置の外部に吐出され,再び循環経路に戻ることはないことが示されているから,溶存槽から送出された水素水は,①加圧型気体溶解手段に送られて循環する経路と,②管状路を通って取出口に至り外部に吐出される経路とのいずれかを通ることになる。溶存槽の出口は1か所であるなどの記載はないし,溶存槽の出口から出た後に分岐部分を設けることもできるから,上記2つの経路を設けることは可能である。
本件明細書の段落【0037】にも,
「本発明の気体溶解装置1は,加圧
型気体溶解手段3で加圧して気体を溶解した液体を,排出せずに循環して加圧型気体溶解手段3に送り,循環した後に,降圧移送手段5に送ることが好ましい。との記載があり,これは循環される水素水が管状路を通らな」
いことを示したものといえる。また,溶存槽から出た水素水の全てが降圧移送手段(管状路)に送出されるとすると,その時点で水素水は常圧に降圧されてしまうから,
「過飽和の状態を安定に維持しこれを提供」
するとい
う本件発明1の課題を達成することができない。
このように,本件発明1においては,循環する水素水は溶存槽から出た後に管状路を通ることはないという構成が用いられている一方,被告製品は,管状路を通って水素水が循環するものであるから,被告製品は構成要件Fを充足しない。

本件発明1の循環経路に管状路が含まれると解する場合には,本件発明1に係る気体溶解装置においては,溶存槽から管状路に送り出された水素水は取出口に送られ,すべて取出口から気体溶解装置の外部に吐出されるのであり,水素水は気体溶解装置の外部に設けられた部材又は要素によって形成された循環経路を介して加圧型気体溶解手段に循環されると解さざるを得ない。
これに対し,被告製品の冷水タンクは気体溶解装置の構成要素であるから,水素水は被告製品の内部に形成された循環経路を通って循環されるように構成されている。したがって,被告製品は構成要件Fを充足しない。段
に送出し加圧送水して循環させ」
(構成要件F)についての均等侵害の成否)
について
被告製品は循環経路に冷水タンクが含まれるため,本件発明1の「循環」という文言を充足しないとしても,被告製品の構成と本件発明1は以下のとおり均等である。

第一要件
本件発明1の本質的部分は2つであり,そのうちの1つは,溶存槽と加圧型気体溶解手段の間で水素水を循環させて,高濃度の水素水を作ることである。
従来の技術では,水素水を得ることができるものの,気体を過飽和の状態に液体へ溶解させ,
この過飽和の状態を安定に維持できるものではなく,
提供される水素水の濃度が低く,十分な水素水の効果が得られるものではなかった(段落【0013】。例えば,本件明細書の特許文献4(甲13))
に記載の技術は,水供給部からの水と水素供給部からの水素ガスを気液混合ポンプで混合させ,水素水を生成するものであるが,循環については開示されていない。これでは過飽和の状態を安定に維持できるものではないため,本件発明1では,溶存槽に貯留された水素を飽和状態で含む水素水を加圧型気体溶解手段に送出し加圧送水して循環させることにより,水素水に溶存しているバブルをナノバブルとし,過飽和状態の水素水を生成することを可能としている。このように,溶存槽と加圧型気体溶解手段の間で水素水を「循環」させることに本件発明1の本質的な特徴部分がある。被告製品でも,加圧型気体溶解手段であるポンプと溶存槽であるカーボンフィルタの間で水素水を循環することで,生成した水素水から水素を離脱させずに,過飽和の状態を安定的に維持している。本件発明1と被告製品で相違しているのは,循環経路に冷水タンクが入っているか否か,すなわち,
「取出口」と「管状路」の間に,冷水タンクに相当する構成が入っているか否かである。
冷水タンクには水を貯留し冷やす程度の機能しかなく,
生成した水素水から水素を離脱させずに過飽和の状態を安定的に維持するという効果の点では全く寄与するものではないから,被告製品の循環経路は,本件発明1の循環経路と技術思想の面では全く相違しない。
したがって,被告製品の構成は,本件発明1と本質的部分において相違するものではない。

第二要件
本件発明1においても被告製品においても,溶存槽と加圧型気体溶解手段との間で水素水を循環させて水素濃度を高め,管状路(降圧移送手段)を通し徐々に大気圧に降圧することで高めた水素濃度を維持する点が共通する。よって,作用効果は同一である。


第三要件
本件明細書において,水槽及び外部のウォーターサーバーが循環経路に含まれる旨が記載されていることからも明らかなとおり,被告製品の製造時点(平成27年12月頃)において循環経路に冷水タンクを含めることは極めて容易である。
さらに,平成26年5月29日に公開された文献(乙5)には,気体溶解装置の発明において,外部のウォーターサーバーを循環経路に含めることが記載されている(段落【0034】。また,同年9月18日に公開さ)
れた文献(甲17)の段落【0068】には,ウォーターサーバーの発明において,循環経路に内部の温水タンクを含めることが開示されている。これらを併せると,被告製品のように,循環経路に内部の冷水タンクを含めることは容易である。


第五要件
本件発明1においては,ウォーターサーバーを循環経路に含める構成を意識的に除外したことはない。

(被告らの主張)

第一要件
本件発明1は,ウォーターサーバーを気体溶解装置の外部に置くものであるのに対し,被告製品は,ウォーターサーバーと同等の機能や作用を有する冷水タンクを気体溶解装置の内部に設置しているものである。この相違は,水素水の循環の構成と作用を左右する重大な要素であるから,本件発明1と被告製品とは本質的部分において相違する。
なお,生成した水素水から水素を離脱させずに,過飽和の状態を安定的に維持するという課題は,水素水を循環させることによって達成されたものではなく,溶存槽と取出口を接続する管状路,すなわち降圧移送手段を設けることによって達成されたものであるから,溶存槽と加圧型気体溶解手段の間で水素水を循環させることは本件発明1の本質的部分ではない。イ
第二要件,第三要件
前記


イ及びウで述べたところと同様である。

第五要件
本件発明1は,補正により拒絶理由が解消され特許登録されたものであるが,
上記補正の内容は,
「前記溶存槽に貯留された前記水素水を前記加圧
型気体溶解手段に送出し加圧送水する」を「前記溶存槽に貯留された水素を飽和状態で含む前記水素水を前記加圧型気体溶解手段に送出し加圧送水して循環させ前記水素バブルをナノバブルとする」とするものである。本件明細書に記載された実施例のうち,ウォーターサーバーを有しないものは実施例2のみであるが,原告は,手続補正書とともに提出した意見書において,上記補正をサポートする記載は実施例2ではなく,ウォーターサーバーを用いた実施例1であることを明言していた。
このような経緯からすれば,原告がウォーターサーバーを本件発明1に必須の構成要件ではないと主張することは禁反言又は信義則に照らし許されない。本件は,上記経緯に照らし発明の技術的範囲を縮小解釈すべき事案であり,均等論を適用すべきか否かを検討する余地はない。

「前記溶存槽から前記加圧型気体溶解手段を経て前記溶存槽への

循環経路」
(構成要件G)の充足性)について
(原告の主張)
前記

及び

で述べたところによれば,
被告製品は構成要件Gを充足する。
(被告らの主張)
前記
争点

及び

で述べたとおりである。

(本件特許の無効理由の有無)について

本件発明1の二重特許禁止の違反

(被告らの主張)
原告は,実用新案登録第3190824号の実用新案権(以下「本件実用新案権」という。
)を有している。本件実用新案権は本件発明1の先願に
該当するところ,本件発明1は,本件実用新案権の実用新案登録請求の範囲の請求項1に記載された考案(以下「本件考案1」という。
)と同一であ
るか,
少なくとも請求項2に記載された考案
(以下
「本件考案2」
という。

と同一である。
本件考案1には,水素水を循環させるとの記載はないが,気体を溶解した水を循環(リサイクル)させることは,気体を高濃度で液体に含有させる上での常套手段であり,水素水中の水素濃度を高めるためにこのような手段を用いることは,当業者にとって当然になし得る設計事項である。また,本件実用新案明細書には,循環に関する言及もある。なお,本件考案1には,水素バブルをナノバブルとする旨の記載はないが,本件考案1に係る気体溶解装置においても,
「水素バブルをナノバブルとする」
現象が発
生していることは,自然法則上自明である。
仮に本件考案1が「電気分解によって水素を発生する水素発生機構」を備えないとしても,本件考案2には「前記水素発生機構が,電気分解により水素を発生させるものである」との記載があるから,少なくとも本件考案2は本件発明1と同一である。
したがって,本件発明1は,特許法39条3項の規定により特許を受けることができないものである。
(原告の主張)
本件考案1及び2には,循環に関する構成がない。また,本件実用新案明細書は,本件特許の出願後に公開されたものであるから,公知資料ではない。

本件発明1のサポート要件,明確性要件及び実施可能要件の違反

(被告らの主張)
本件発明1の特許請求の範囲には「前記溶存槽に貯留された水素を飽和状態で含む前記水素水を前記加圧型気体溶解手段に送出し加圧送水して循環させ前記水素バブルをナノバブルとする」と記載されているが,本件明細書には,図1の気体溶解装置に関し,溶存槽に貯留された水素を飽和状態で含む水素水を加圧型気体溶解手段に送出し加圧送水して循環させるという記載はない。
本件発明1にはウォーターサーバーについての言及は全くない。そして,本件明細書では,図3のウォーターサーバーに気体溶解装置を取付けた装置で水素水を循環することができることが記載されているにとどまり,図1の気体溶解装置において,どのようにすれば水素水を循環することができるかということについては全く記載されていない。
本件発明1は,補正により拒絶理由が解消され特許登録されたものであるが,
上記補正の内容は,
「前記溶存槽に貯留された前記水素水を前記
加圧型気体溶解手段に送出し加圧送水する」を「前記溶存槽に貯留された水素を飽和状態で含む前記水素水を前記加圧型気体溶解手段に送出し加圧送水して循環させ前記水素バブルをナノバブルとする」とするものである。そして,原告が手続補正書とともに提出した意見書で上記補正の根拠としたのは,ウォーターサーバーを有する構成である実施例1であった。したがって,原告が,請求項1を補正するにあたり,ウォーターサーバーを必須要件と考えていたことは明白である。
このように,本件明細書の記載によれば,本件発明1はウォーターサーバーを必要不可欠な要件としていることは明らかであるにもかかわらず,本件発明1の特許請求の範囲にはウォーターサーバーに関する記載がなく,本件発明1は明確でないから,本件発明1はサポート要件及び明確性要件を満たさない。
本件明細書の発明の詳細な説明の記載は,当業者が本件発明1を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものではないから,本件発明1は実施可能要件を満たさない。
(原告の主張)
本件発明1の技術的思想は,溶存槽と加圧型気体溶解手段との間で水素水を循環させることにあるから,溶存槽と加圧型気体溶解手段の間に何らかの構成や部品があっても,本件発明の技術的思想に反しない。本件発明1の技術的思想に照らせば,本件発明1の構成が外部のウォーターサーバーに取り付ける構成に限られないことは明らかである。
また,本件明細書には,外部のウォーターサーバーの代わりに,装置内部に水槽を設ける構成が記載され,溶存槽から水槽を経て加圧型気体溶解手段に水素水を送出することも記載されており,外部のウォーターサーバーは本件発明1に必須ではない。したがって,本件発明1がサポート要件及び明確性要件を満たさないという被告らの主張は失当である。
本件明細書の発明の詳細な説明は,当業者が本件発明1を実施することができる程度に記載されているから,
本件発明1は実施可能要件を満たす。

本件発明2のサポート要件,明確性要件及び実施可能要件の違反

(被告らの主張)
本件発明2の特許請求の範囲には,前記溶存槽から前記加圧型気体溶解「
手段を経て前記溶存槽への循環経路において,前記加圧型気体溶解手段は生成した前記水素バブルを時間とともに平均径を小さくするように加圧送水する」ことが規定されている。
しかし,本件明細書には,本件発明2に対応する記載は全くなく,本件発明2は不明確であるから,本件発明2はサポート要件及び明確性要件を満たさない。
本件明細書の発明の詳細な説明の記載は,当業者が本件発明2を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものではないから,本件発明2は実施可能要件を満たさない。
(原告の主張)
前記イにおいて述べたところと同様である。
争点

(原告の損害額)について

(原告の主張)
被告は,本件特許権が成立した後,被告製品を少なくとも100台販売した。被告製品1台当たりの利益の額は39万8000円であるから,被告は被告製品の販売により少なくとも3980万円の利益を得ており,原告は同額の損害を被った(特許法102条2項)

(被告らの主張)
争う。
第3

当裁判所の判断

1
本件発明の概要
本件明細書の記載
本件明細書(甲2)には,以下の記載がある。

【技術分野】
「本発明は,気体溶解装置及び気体溶解方法に関し,特に,気体を過飽和の状態に液体へ溶解させ,かかる過飽和の状態を安定に維持し提供できる気体溶解装置及び気体溶解方法に関する。(段落【0001】




【発明が解決しようとする課題】
「上記特許文献1~6記載の技術は,
水素水を得ることはできるものの,
気体を過飽和の状態に液体へ溶解させ,この過飽和の状態を安定に維持できるものではなく,提供される水素水の濃度が低く,十分な水素水の効果が得られるものではなかった。さらに,装置が大掛かりであるため十分なスペース等が必要となり,ウォーターサーバー等へ容易に取付けることができないという問題点があった。(段落【0013】


「また,特許文献7記載の技術は,降圧機構が複数のキャピラリーを有しているため,降圧機構のスペースを広く取る必要があり,ウォーターサーバー等に容易に取付けることができないという問題点があった。さらに,
複数のキャピラリーを有しているため製造や故障時の修理が煩雑になり,ウォーターサーバー等に取付けて使用するには,実用化の面で問題があった。
(段落【0014】

「そこで,本発明の目的は,前記の従来技術の問題点を解決し,気体を過飽和の状態に液体へ溶解させ,かかる過飽和の状態を安定に維持しこれを提供でき,さらにウォーターサーバー等へ容易に取付けることができる気体溶解装置を提供することにある。(段落【0015】



【課題を解決するための手段】
「本発明者らは,前記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果,降圧移送手段を設け,さらに液体にかかる圧力を調整することで,前記目的を達成し得ることを見出し,本発明を完成するに至った。(段落【0016】」

「即ち,本発明の気体溶解装置は,水に水素を溶解させて水素水を生成し取出口から吐出させる気体溶解装置であって,生成した水素水を導いて加圧し貯留する溶存槽と,前記溶存槽及び前記取出口を接続する管状路において前記取出口からの水素水の吐出動作による前記管状路内の圧力変動を防止し層流を形成させる降圧移送手段と,を含むことを特徴とする。かかる発明によれば,生成した水素水から水素を離脱させることなくこの外部に提供することができるのである。(段落【0017】


「上記発明において,前記溶存槽に加圧貯留された水素水を再度,前記加圧型気体溶解手段に送出し水素バブルと同時に加圧送水することを特徴としてもよい。(段落【0021】


「上記発明において,前記溶存槽に加圧貯留された水素水を水槽中に導き,前記水槽中の水を前記加圧型気体溶解手段に送出し水素バブルと同時に加圧送水することを特徴としてもよい。(段落【0022】



【発明を実施するための形態】
「図1は,本発明の気体溶解装置の一例を示す断面図である。図中,1は気体溶解装置,2は気体発生手段,3は加圧型気体溶解手段,4は溶存槽,5は降圧移送手段である。気体溶解装置1は,気体を発生させる気体発生手段2と,この気体を加圧して液体に溶解させる加圧型気体溶解手段3と,気体を溶解している液体を溶存及び貯留する溶存槽4と,この液体が細管5aを流れることで降圧する降圧移送手段5と,
を有している。段


落【0029】

「ここで,降圧移送手段5は,溶存槽4及び取出口10を接続する管状路5aにおいて,取出口10からの水素水の吐出動作による管状路5a内の圧力変動を防止しこの中に層流を形成させる。例えば,降圧移送手段5の管状路5aは,内部を流れる液体の圧力にもよるが比較的長尺であり径の小さいことが好ましく,管状路5aの取出口近傍に管径を絞った若しくは拡げたテーパーを与えた圧力調整部を含むものであってもよい。(段落」
【0030】

「電気分解により発生した水素は加圧型気体溶解手段3の吸入口8へと送られ,そのポンプ3aにより加圧されることで,液体吸入口7から吸入した水に加圧溶解される。水素を加圧溶解した水は,加圧型気体溶解手段3の吐出口9から吐出され,
溶存槽4に過飽和の状態で溶存される
(S5)

溶存槽4に溶存された液体は,降圧移送手段5である細管5a内で層流状態を維持して流れることで降圧され(S6)水素水吐出口10から外部へ,
吐出される(S7)」
。(段落【0034】

「さらにまた,本発明の気体溶解装置1は,加圧型気体溶解手段3で加圧して気体を溶解した液体を,排出せずに循環して加圧型気体溶解手段3に送り,循環した後に,降圧移送手段5に送ることが好ましい。これにより,
より気体の溶解濃度を高めることができる。
また,
循環回数としては,
特に限定されないが,1~10回以内で最高溶存濃度に達することであることが好ましく,1~5回で最高溶存濃度に達することとがより好ましい。(段落【0037】


「図3は,本発明の気体溶解装置の使用の一例を示す図である。図中,100はウォーターサーバーである。ウォーターサーバー100に気体溶解装置1’
を取付けることで,
ウォーターサーバー100中の水を用いて,
水素ガスを発生させ,さらにそれを用いて過飽和の水素水を供給することできる。また,過飽和の水素水をウォーターサーバー100中に保存できるとともに,循環できるので,常に過飽和の水素水を供給することができる。(段落【0043】


本件発明の意義
従来技術では,気体を過飽和の状態に液体へ溶解させ,過飽和の状態を安定に維持して外部に提供することが難しく,また,ウォーターサーバー等へ容易に取付けることができないという課題があった。本件発明1は,水に水素を溶解させる気体溶解装置において,水素を飽和状態で含む水素水を装置の気体溶解手段,溶存槽等で循環させるとともに,水素水にかかる圧力を調整することにより,水素を飽和状態で水に溶解させ,その状態を安定的に維持し,水素水から水素を離脱させずに外部に提供するという作用効果を奏し,また,装置の外部にあるウォーターサーバー等に容易に取り付けることができるというものである。
2
争点

ア(
「取出口」
(構成要件A,E)の充足性)について

本件発明1は気体溶解装置の発明であるところ,本件発明1の「取出口」は,
特許請求の範囲の記載によれば,
水素水が吐出されるものとされている。
「取出口」とは,
「取り出す」という文言と「口」という文言を組み合わせた
用語であり,一般に「取り出す」という文言は「取って外に出す」ことを意味し,
「口」という文言には,
「外から内に通ずる所」という意味がある(広
辞苑第六版)ことからすると,
「取出口」とは,中から外に出すために中と外
が通ずる所であると解される。また,本件明細書の発明の詳細な説明には,溶存槽に溶存された液体が水素水吐出口から外部へ吐出される旨の記載があり(段落【0034】,本件明細書の図1によれば,上記記載中の水素水吐)
出口とは,特許請求の範囲にいう「取出口」に該当するものであることが明らかである。そうすると,構成要件Aの「取出口」は,生成された水素水を気体溶解装置の中から外部に取り出すための構成を意味すると解される。原告は,被告製品の金属管が「取出口」に当たると主張する。
前記第2の

及び証拠(甲3,4)によれば,被告製品は,水素発生

器,ポンプ及びカーボンフィルタ等と冷水タンクが一体的に構成された気体溶解装置である水素水サーバーであり,水素水は,被告製品の内部の部材である冷水タンクに溶接された金属管を通じて被告製品の外部に取り出されることが認められる。したがって,被告製品の金属管は,水素水を気体溶解装置の外部に取り出すための構成であり,その開口部は「取出口」に当たると認められる。
3
争点

イ(
「溶存槽」
(構成要件D,E,F)の充足性)について

原告は,本件発明1の「溶存槽」は水素水を貯留する機能を有するものであり,被告製品のカーボンフィルタが溶存槽に当たると主張するのに対し,被告らは,
「溶存槽」
は水素水を加圧して貯留する機能を有するものをいい,
被告製品のカーボンフィルタは加圧する機能も液体を貯留する機能も有しないから,溶存槽に当たらないと主張している。なお,
「溶存槽」の機能に
関する被告らの上記主張は,
「溶存槽」は加圧のための手段を備えることを
要する旨を主張する趣旨と解される。

特許請求の範囲の記載によれば,本件発明1の「溶存槽」は,液体を「溶存」する「槽」であり,加圧型気体溶解手段で生成した水素水が導かれ,貯留されるものであることが明らかであるが,他に備えるべき手段についての記載はない。これに対し,本件特許権の特許請求の範囲の請求項3には,
「前記溶存槽は前記加圧型気体溶解手段からの前記水素水を加圧貯留することを特徴とする請求項2記載の気体溶解装置」と記載されている。

本件明細書の発明の詳細な説明には,生成した水素水を導いて加圧「
し貯留する溶存槽」
(段落【0017】【0023】,

)「前記溶存槽に加圧
貯留された水素水」
(段落
【0022】

【0025】,

「溶存槽4としては,
気体を溶解した状態で加圧下で溶存できれば,特に形状等は限定されず,マイクロフィルターや活性炭(カーボン)フィルターは他のフィルターであってもよい。(段落【0042】

)など,溶存槽が液体を加圧する機能
を備えているかのような記載がある。その一方で,上記の記載を超えて,溶存槽における加圧のための独自の手段についての記載はない。また,発明に係る気体溶解装置について具体的に説明するとして,
「気体を溶解し
ている液体を溶存及び貯留する溶存槽4」
(段落【0029】,水素水は

「加圧型気体溶解手段3の吐出口9から吐出され,溶存槽4に過飽和の状態で溶存される。(段落【0034】,

)「溶存槽4は,溶存タンク41の
上側から気体を溶解した液体を取り込み,下側から降圧移送手段5へと送られることが好ましい。これにより,溶存タンク41中の上部に気体が溜まることで液体と気体を分離出来,気体が溶存した液体のみが降圧移送手段5へと送ることができるため,気体のみを降圧移送手段5へと送られることを防止でき,気体の溶解を安定した状態で生成・維持できる。(段落」
【0042】
)など,溶存槽における液体の加圧に言及していない記載も
ある。

以上のとおり,本件発明1の特許請求の範囲には溶存槽自体が加圧のための独自の手段を備えることは何ら記載がない。本件明細書の記載には,溶存槽が液体を加圧する機能を備えているかのような記載がないわけではないが,加圧のための独自の手段についての記載はなく,また,溶存槽における加圧に触れない記載もある。そして,特許請求の範囲には,本件発明1,本件発明2とは別の発明として溶存槽が水素水を加圧貯留することを特徴とする気体溶解装置の発明が記載されているのであって,溶存槽の加圧貯留に触れる本件明細書の記載はその発明を説明したともいえるものである。これらに照らせば,本件発明1の溶存槽は,加圧された液体を貯留する機能を有するものであり,また,装置内において水素水にかかる圧力を調整するという本件発明1の意義(前記1

)から,装置内部の水素

水に対する加圧状態を維持するものである必要があるとしても,本件発明1の溶存槽において液体を加圧するための手段を備えていることまでを要するものとはいえない。
したがって,本件発明1の「溶存槽」において,液体を加圧するための手段を要する旨の被告らの主張は,採用することができない。
被告製品では,加圧型気体溶解手段であるポンプで生成された水素水がカーボンフィルタに導かれる。証拠(甲8)によれば,被告製品のカーボンフィルタは筒状のものであり,上部に液体の流入口及び排出口が設けられていること,それらの流入口と排出口が直接は接続されていないことが認められる。このような構造からすると,カーボンフィルタに流入した液体は,直ちにカーボンフィルタ外に排出されることはなく,カーボンフィルタの上部に設けられた排出口に至るまでの間は,カーボンフィルタ内にとどまり,貯留されるものと解される。そして,証拠(甲8,9)によれば,カーボンフィルタは,加圧型気体熔解手段であるポンプと管路で接続される上記流入口及び冷水タンクと細管で接続される排出口を有するほかに開口部を有するとは認められず,カーボンフィルタ流入口付近に一定の圧力がかかっていることも認められ,水素水に対する加圧状態が維持されていると認められる。被告らは,被告製品のカーボンフィルタは,水中の塩素やその他の異物を吸着する役割を目的としたものであり,水素水はフィルタを通過するのみであるなどと主張する。しかし,被告製品のカーボンフィルタに上記役割があるとしても,上記構造からすれば,同カーボンフィルタに水素水が貯留されると解されることは上記のとおりであるから,被告らの主張は採用することができない。
したがって,被告製品のカーボンフィルタは,本件発明1の「溶存槽」を充足する。
4
充足性)について
原告は,本件発明1の「前記溶存槽及び前記取出口を接続する管状路」における「接続」は,直接的な接続のほか,間接的な接続も含むと解し,被告製品においてカーボンフィルタと冷水タンクを接続している細管は,本件発明1の「管状路」に該当すると主張している。

本件発明1の特許請求の範囲の記載によれば,
「管状路」は「溶存槽」
と「取出口」を「接続する」とされているのであり,また,溶存槽と取出口との接続に管状路以外の部材を用いることは何ら記載されていない。特許請求の範囲には,溶存槽と取出口が管状路によって接続されていること,すなわち,両端が溶存槽と取出口に接続された管状路によって溶存槽と取出口が接続されていることが記載されているといえる。本件明細書を見ても,管状路以外の部材を介在させて溶存槽と取出口とを接続する構成は一切開示されていない。
また,溶存槽と取出口を接続する「管状路」の意義についてみると,本件明細書には,溶存槽の液体が「管状路」を流れることで降圧され,吐出口から外部に吐出されること
(段落
【0029】

【0030】

【0034】

が記載され,
「管状路」において液体が降圧することが記載されている。そ
して,
前記1

で説示したとおり,
本件発明1が,
気体溶解装置において,

水素水を循環させるとともに,
水素水にかかる圧力を調整することにより,
水素を飽和状態で水に溶解させ,その状態を安定的に維持し,水素水から水素を離脱させずに外部に提供するという意義を有するものであることからすると,本件発明1においては,
「取出口」まで生成された水素水から水
素が離脱しないように水素水が流れる構成を採用する必要がある。本件発明1は,
「溶存槽」と水素水が外部へ取り出される「取出口」とを「管状路」で直接接続し,管状路」

において水素水が降圧されるとすることによって,
本件装置から水素水が取り出される直前まで水素水にかかる圧力を調整し,水素水から水素が離脱しないようにしているといえる。
以上の点を踏まえると,構成要件Eにおける「前記溶存槽及び前記取出口を接続する管状路」とは,
「溶存槽」と「取出口」を接続する部材を「管
状路」に限定し,管状路の両端に溶存槽と取出口が接続される構成とする趣旨であり,
「溶存槽」と「取出口」の間に水素水にかかる圧力の調整がで
きなくなる部材を含まないものと解される。

原告は,特開2016-204855号公報(甲16の1。以下「甲16の1文献」という。
)や特開2009-82332号公報(甲16の2。
以下「甲16の2文献」という。
)で開示されている発明には,
「接続」と
の文言が間接的な接続を含む趣旨で用いられているし,間接的な接続という概念は,機械及び通信の分野で通常用いられるものであると主張する。しかし,上記各文献はいずれも機械の分野に関するものであるが,これらの文献に記載された発明は,本件発明1とは異なり,接続に用いる部材の限定がされているとは解されないものである上,甲16の1文献では,請求項2や段落【0042】等に間接的な接続に関する記載があり,甲16の2文献では,段落【0049】に同文献の発明における接続は間接的なものでもよい旨が記載されている。そうすると,これらの文献は,本件発明1における「接続」という文言に間接的な接続が含まれるとの解釈の根拠とはならないというべきである。また,通信は本件発明1とは分野が大きく異なるものであり,当該分野における概念を本件発明1に直ちに適用することはできない。
原告は,管状路の意義からすれば,管状路は溶存槽の出口から大気圧に解放される取出口に至るまでの間に接続されていればよいとも主張するが,上記のとおり,特許請求の範囲の記載及び本件発明の意義に反するものであり,採用することができない。

したがって,本件発明1の構成要件Eの「前記溶存槽及び前記取出口を接続する管状路」溶存槽と取出口が管状路により直接接続されるもの,は,
すなわち,管状路の両端に溶存槽と取出口が接続されるものを意味すると解される。
原告は,被告製品の細管が構成要件Eの管状路に該当すると主張する。被告製品の細管の両端は,溶存槽であるカーボンフィルタと,被告製品の
内部に設けられている冷水タンクに接続されていて,被告製品の細管はカーボンフィルタと冷水タンクを接続するものであり,カーボンフィルタと取出口である金属管の開口部とを接続するものとはいえない。
原告は,①冷水タンクには金属管が溶接されていることから,冷水タンクと金属管はほぼ一体であるとみなすことができる,②細管と冷水タンクの接続箇所及び冷水タンクと金属管の接続箇所の距離が非常に近いこと等からすると,細管はカーボンフィルタと取出口である開口部を含む金属管を直接的に接続するものと評価してよいと主張する。
しかし,
構成要件Eの管状路の意義は前記

アのとおりのもので,溶存槽」


と「取出口」の間に水素水にかかる圧力の調整ができなくなる部材を含まないものであるところ,大気圧下にある冷水タンクにおいては水素水にかかる圧力の調整ができなくなるから,細管から取出口である開口部を含む金属管に至るまでに冷水タンクがある被告製品において,冷水タンクに金属管が溶接され,細管と冷水タンクの接続箇所及び冷水タンクと金属管の接続箇所の距離が近いとしても,被告製品の細管が構成要件Eの管状路であるということはできない。原告の主張は採用することができない。
したがって,被告製品の細管が構成要件Eを充足すると認めることはできない。
5
争点

エ(
「前記溶存槽及び前記取出口を接続する管状路」
(構成要件E)に

ついての均等侵害の成否)
前記3のとおり,被告製品は「管状路に当たる細管がカーボンフィルタの出口と冷水タンクの入口を接続する」という構成であり,本件発明1の管状路が「前記溶存槽及び前記取出口を接続する」構成と相違する。しかし,原告は,被告製品の上記構成は本件発明1の上記構成と均等であると主張するので,この点について検討する。
第一要件

前記1

で述べたとおり,本件明細書の記載によれば,従来技術には,

気体を過飽和の状態に液体へ溶解させ,過飽和の状態を安定に維持して外部に提供することが難しく,ウォーターサーバー等へ容易に取付けることができないという課題があった。本件発明1は,このような課題を解決するために,水に水素を溶解させる気体溶解装置において,水素水を循環させるとともに,水素水にかかる圧力を調整することにより,水素を飽和状態で水素水に溶解させ,その状態を安定的に維持し,水素水から水素を離脱させずに外部に提供することを目的とするものである。
本件発明1では,水素を飽和状態で水に溶解させ,その状態を安定的に維持するために,加圧型気体溶解手段で生成された水素水を循環させて,加圧型気体溶解手段に繰り返し導いて水素を溶解させることとし,「前記
溶存槽に貯留された水素を飽和状態で含む前記水素水を加圧型気体溶解手段に送出し加圧送水して循環させ」る(構成要件F)という構成を採用している。また,気体溶解装置において,気体が飽和状態で溶解した状態を安定的に維持し,水素水から水素を離脱させずに外部に提供するためには,水素を溶解させた状態の水素水が気体溶解装置の外部に排出されるまでの間に,水素水にかかる圧力の調整ができなくなることを避ける必要がある。このため,本件発明1では「前記溶存槽及び前記取出口を接続する管状路」
(構成要件E)という構成を採用し,水素を溶解させた水素水が
導かれる溶存槽と水素水を気体溶解装置外に吐出する取出口との間を管状路で直接接続し,水素水にかかる圧力の調整ができなくなることを避けているものと解される。
以上のような本件発明1の課題,解決方法及びその効果に照らすと,生成した水素水を循環させるという構成のほか,管状路が溶存槽と取出口を直接接続するという構成も,本件発明1の本質的部分,すなわち従来技術に見られない特有の技術的思想を構成する特徴的部分に該当するというべきである。
被告製品は,管状路が溶存槽と取出口を接続するという構成を採用していないことは前記4のとおりであるから,被告製品の構成は,本件発明1と本質的部分において相違するものと認められる。

これに対し,原告は,本件発明1の本質的部分は,生成された水素水が大気圧に急峻に戻るのを防ぐため,管状路を加圧状態から大気圧状態までの圧力変動があり得る構成と構成の間に接続することであり,被告製品では,冷水タンクにおいて水素水にかかる圧力が大気圧となるから,カーボンフィルタと冷水タンクを細管で接続する構成は本件発明1と本質的部分において相違しない旨主張する。
しかし,被告製品のように,溶存槽から取出口までの間に水素水にかかる圧力が大気圧となる構成を設けた場合には,被告製品の取出口から水素水が取り出される前に,生成された水素水に対する圧力の調整ができなくなって水素が離脱し得ることになってしまい,水素水から水素を離脱させ「
ずに外部に提供する」という効果を奏することができない。したがって,本件発明1において,溶存槽と大気圧状態までの圧力変動があり得る構成の間に管状路を接続することが本質的部分であると解することはできず,原告の主張は採用することができない。

したがって,被告製品は,均等侵害の第一要件を満たさない。
第二要件及び第三要件


原告は,第二要件につき,被告製品と本件発明1とは,管状路を通して徐々に生成した水素水を大気圧に降圧することにより,水素濃度を維持する点が共通するから,
「管状路に当たる細管が,
カーボンフィルタの出口と
気体溶解装置内に設けられた冷水タンクの入口を接続する」という被告製品の構成を,管状路が溶存槽と取出口を接続するという本件発明1の構成に置換することができると主張する。
しかし,前記

で判示したとおり,被告製品の上記構成では,装置の内

部において水素水にかかる圧力の調整ができなくなり,水素水から水素を「
離脱させずに外部に提供する」という効果を奏することができず,被告製品の構成と本件発明1の構成は作用効果が同一であるとはいえない。したがって,被告製品は,均等侵害の第二要件も満たさない。

原告は,第三要件につき,取出口の前に冷水タンクを設け,この冷水タンクに管状路を接続することは容易であると主張する。しかし,取出口の前に大気圧となる冷水タンクを設けることは,水素水から水素を離脱させ「
ずに外部に提供する」という本件発明1の課題解決原理に反するものであるから,当業者としては,本件発明1に被告製品の上記構成を採用することの動機付けを欠くものといえる。したがって,被告製品は,均等侵害の第三要件も満たさない。
以上で述べたとおり,
「管状路に当たる細管が,
カーボンフィルタの出口と
気体溶解装置内に設けられた冷水タンクの入口を接続する」という被告製品の構成は,均等侵害の第一要件,第二要件及び第三要件を満たさないから,被告製品の上記構成が本件発明1の構成要件Eと均等であるとは認められない。
6
以上によれば,その余の点について判断するまでもなく,原告の請求にはいずれも理由がないから,
これらを棄却することとして,
主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第46部

裁判長裁判官


裁判官


裁判官

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