判例検索β > 平成28年(ネ)第5534号
事件番号平成28(ネ)5534
裁判年月日平成29年9月27日
法廷名東京高等裁判所
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平成29年9月27日判決言渡

同日原本領収

裁判所書記官

平成28年(ネ)第5534号,第5692号旧取締役に対する損害賠償,詐害行為取消請求控訴,同附帯控訴事件(原審・東京地方裁判所平成23年(ワ)第27674号(以下「第1事件」という。),第27677号(以下「第2事件」という。))
平成29年4月17日口頭弁論終結
主1文
第1審原告及び第1審被告らの各控訴について
第1審原告及び第1審被告らの各控訴(ただし,第1審被告Cの控訴については,原判決主文第2項のうち第1審被告Bと第1審被告Cとの間の平成22年11月10日支払に係る1億2000万円の贈与契約を取り消す部分並びに第4項のうち第1審被告Cに対し1億2000万円及びこれに対する平成23年9月10日から支払済みまで年5分の割合による金員の第1審原告への支払を命ずる部分に対するものに限る。)をいずれも棄却する

2
第1審原告の附帯控訴について
第1審被告Cは,第1審原告に対し,8000万円及びこれに対する平成23年9月10日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
3
第1審原告と第1審被告Bとの間の控訴費用は,これを5分し,その1を第1審原告の負担とし,その余を第1審被告Bの負担とし,第1審原告と第1審被告Dとの間の控訴費用は,第1審被告Dの負担とし,第1審原告と第1審被告Cとの間の訴訟費用は,第1,2審とも第1審被告Cの負担とする。
4
なお,原判決主文第2項の第1審被告Bと第1審被告Cとの間の平成22年
5月27日支払に係る8000万円の贈与契約のうち1316万円を超えて支払を約するとの合意部分を取り消す部分,同第4項のうち第1審被告Cに対し6684万円及びこれに対する平成23年9月10日から支払済みまで年5分の割合による金員の第1審原告への支払を命ずる部分並びに同第6項のうち第
1審原告の第1審被告Cに対する請求に関する部分は,上記第2項の請求の認容によりいずれも失効している。
事実及び理由
第1

当事者の求めた裁判

1
第1審原告の控訴の趣旨


原判決中第1審被告Bに関する部分を次のとおり変更する。



第1審被告Bは,第1審原告に対し,50億円及びこれに対する平成23年9月12日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

2
訴訟費用は,第1,2審とも第1審被告Bの負担とする。
第1審被告Bの控訴の趣旨



原判決中第1審被告B敗訴部分を取り消す。



上記部分につき,第1審原告の請求を棄却する。



訴訟費用は,第1,2審とも第1審原告の負担とする。

3
第1審被告Cの控訴の趣旨


原判決中第1審被告C敗訴部分を取り消す。



上記部分につき,第1審原告の請求をいずれも棄却する。



訴訟費用は,第1,2審とも第1審原告の負担とする。

4
第1審被告Dの控訴の趣旨


原判決中第1審被告Dに関する部分を取り消す。



第1審原告の第1審被告Dに対する請求をいずれも棄却する。



訴訟費用は,第1,2審とも第1審原告の負担とする。

5
第1審原告の附帯控訴の趣旨


主位的趣旨
第1審被告Cは,第1審原告に対し,8000万円及びこれに対する平成23年9月10日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え(第1審原告は,当審において,第1審被告Bと第1審被告Cとの間の平成22年
5月27日支払に係る8000万円について債権者代位権に基づく不当利得返還請求を追加し,これを主位的請求とした。)。


予備的趣旨(第1審原告は,当審において,第1審被告Bと第1審被告C
との間の平成22年5月27日支払に係る8000万円について原審における詐害行為取消請求を予備的請求とした。)

原判決主文第2項の第1審被告Bと第1審被告Cとの間の平成22年5
月27日支払に係る8000万円の贈与契約のうち1316万円を超えて支払を約するとの合意部分を取り消す部分,同第4項のうち第1審被告Cに対し6684万円及びこれに対する平成23年9月10日から支払済みまで年5分の割合による金員の第1審原告への支払を命ずる部分並びに同第6項のうち第1審原告の第1審被告Cに対する請求に関する部分を次のとおり変更する。

第1審被告Bと第1審被告Cとの間の平成22年5月27日支払に係る
8000万円の贈与契約を取り消す。

第1審被告Cは,第1審原告に対し,8000万円及びこれに対する平
成23年9月10日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。⑶

訴訟費用は,第1,2審とも第1審被告Cの負担とする。

(第1審原告の附帯控訴の趣旨は,上記の趣旨のものと解することができる。)
第2
1
事案の概要等
第1事件は,預金保険法附則7条1項所定の整理回収業務を行う第1審原告が,経営破綻した日本振興銀行株式会社(以下「日本振興銀行」という。)の取締役であった第1審被告Bに対し,日本振興銀行の取締役会において,平成20年10月28日及び同年11月17日の2回にわたり,株式会社SFCG(以下「SFCG」という。)から商工ローン債権を買い取ることを承認する旨の決議がされた(以下,この2回の取締役会決議を「本件取締役会決議」と
いう。)際に,上記債権の買取りに賛成したことには取締役としての善管注意義務違反があるなどと主張して,日本振興銀行から譲り受けた会社法423条1項の損害賠償請求権に基づき,上記注意義務違反により日本振興銀行に生じた損害の一部である50億円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成23年9月12日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。
第2事件は,第1審被告Bが,第1審被告Cとの間で各贈与契約を締結して,自己名義の預金口座から第1審被告C名義の預金口座へ平成22年5月27日に8000万円を,同年11月10日に1億2000万円をそれぞれ送金し,また,第1審被告Dに対し,第1審被告Bが第1審被告Dから日本振興銀行の株式を1億6250万円で買い取る旨の売買契約を締結してその代金を支払ったところ,第1審原告が,①第1審被告Bの第1審被告C名義の預金口座への同年5月27日の8000万円の送金について,主位的に,その送金の際に締結された贈与契約は通謀虚偽表示で無効であり,第1審被告Bは第1審被告Cに対し8000万円の不当利得返還請求権を有しているが,無資力である第1審被告Bがその権利を行使しないと主張して,第1審被告Cに対し,債権者代位権による不当利得返還請求権に基づき,8000万円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成23年9月10日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による利息の支払を求め(この請求は,当審において追加されたものである。),予備的に,上記8000万円の贈与契約は詐害行為に当たると主張して,詐害行為取消権に基づき,上記贈与契約の取消しを求めるとともに,第1審被告Cに対し,8000万円及びこれに対する前同日から支払済みまで前同割合による遅延損害金の支払を求め,②第1審被告Bの第1審被告C名義の預金口座への平成22年11月10日の送金に係る1億2000万円の贈与契約は詐害行為に当たると主張して,詐害行為取消権に基づき,上記贈与契約の取消しを求めるとともに,第1審被告Cに対し,1億2000万円及び
これに対する訴状送達の日の翌日である平成23年9月10日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求め,③第1審被告Bと第1審被告Dとの間の上記売買契約は詐害行為に当たると主張して,詐害行為取消権に基づき,上記売買契約の取消しを求めるとともに,第1審被告Dに対し,1億6250万円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である同月11日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。
原判決が,第1事件の第1審被告Bに対する請求を37億5693万4826円及びこれに対する平成23年9月12日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で認容し,その余を棄却し,第2事件の第1審被告Cに対する請求(ただし,上記の債権者代位権による不当利得返還請求を除く。)を,第1審被告Bと第1審被告Cとの間の平成22年5月27日支払に係る8000万円の贈与契約のうち1316万円を超えて支払を約するとの合意部分及び同年11月10日支払に係る1億2000万円の贈与契約をいずれも取り消し,第1審被告Cに対し1億8684万円及びこれに対する平成23年9月10日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金を支払を求める限度で認容し,その余をいずれも棄却し,第2事件の第1審被告Dに対する請求を全部認容したところ,第1審原告が,第1審被告Bに対する請求のうち敗訴部分を不服として,第1審被告らが,いずれもその敗訴部分を不服として,それぞれ控訴をし,第1審原告が,第1審被告Cに対する請求のうち敗訴部分を不服として附帯控訴をした上,当審において,第1審被告Bと第1審被告Cとの間の平成22年5月27日支払に係る8000万円について債権者代位権に基づく不当利得返還請求を追加してこれを主位的請求とし,原審における詐害行為取消請求を予備的請求とした。
2
前提事実,争点及びこれに関する当事者の主張は,次の3ないし5のとおり当審における第1審被告らの主張を付加するほかは,原判決の「事実及び
理由」欄の「第2

事案の概要」の2及び3に記載のとおりであるから,こ

れを引用する。ただし,原判決を次のとおり訂正する。


原判決中の各「原告」をいずれも「第1審原告」と,各「被告B」をい
ずれも「第1審被告B」と,各「被告C」をいずれも「第1審被告C」と,各「被告D」をいずれも「第1審被告D」と,各「分離前被告E」をいずれも「原審分離前被告E」と,各「分離前被告F」をいずれも「原審分離前被告F」と,各「分離前被告G」をいずれも「原審分離前被告G」とそれぞれ改める。


原判決5頁13行目の「平成20年10月29日のSFCGからの債権
買取り」を「平成20年10月28日の取締役会決議及びそれに基づく同月29日のSFCGからの債権買取り」と改める。


原判決7頁12行目の「平成20年11月21日のSFCGからの債権買取り」を「平成20年11月17日の取締役会決議及びそれに基づく同月21日のSFCGからの債権買取り」と改める。



原判決9頁8行目の「法律」の次に「(以下「出資法」という。)」を加える。



原判決11頁20行目の「平成22年5月24日付け合意書」の次に「(以下「本件合意書1」という。)」を加え,12頁3行目及び17行目の各「被告Cに対し,」をいずれも「自己名義の株式会社三菱東京UFJ銀行日本橋支店の銀行口座(以下「三菱東京UFJ銀行日本橋口座」という。)から第1審被告C名義の株式会社三菱東京UFJ銀行三鷹支店の銀行口座(以下「三菱東京UFJ銀行三鷹口座」という。)宛てに」と改め,12頁6行目から7行目にかけての「平成22年11月9日付け合意書」の次に「(以下「本件合意書2」という。)」を加え,16行目の「平成22年5月24日付け合意書」を「本件合意書1」と改める。


原判決15頁22行目の「SFCGの」の次に「株価」を加える。


原判決38頁20行目から39頁21行目までを次のとおり改める。「c

本件代位弁済スキームは,巨額の貸倒引当金の計上が必要となること
を避けるため,日本振興銀行の資金を原資として,いわゆる「飛ばし」の一環としてされたものであり,「飛ばし」は含み損が生じた資産を第三者に譲渡するなどして損失を隠す行為であって,表面的には不良資産が見えなくなるが損失は隠されているだけであり,実質的には損失が回復されるわけではないから,SMEGによる代位弁済が法的に有効であったとしても損害は存する。
なお,原判決は,日本振興銀行はSMEGから代位弁済を受け,その代位弁済が無効であるとはいえないから,上記代位弁済の範囲では損害が発生したとはいえないと判断した。しかし,原判決は,本件における損害について,「本件各債権買取りに係る買取代金とこれにより日本振興銀行が取得した本件買取債権の経済的価値との差額が損害になる」とし,「本件各債権買取りに係る買取代金と現実の回収可能額との差額(回収不能額)」を検討するとしているのであるから,問題とされるべきは「現実の回収可能額」のはずであり,代位弁済の有効無効という法的効力と経済的な実質を伴った現実の回収可能性は次元を異にする問題であって,代位弁済が法的に有効であっても,経済的な実質を伴った現実の回収可能性が認められない場合には,なお損害は存することになる。

本件代位弁済スキームでは,SMEGの代位弁済により,合計197
億9307万1931円の買取債権が処理されたが,本件買取債権からは60億7005万8693円分の買取債権(以下「本件代位弁済対象債権」という。)が処理され,これについて日本振興銀行は直接回収を行うことができなくなった。
本件代位弁済対象債権は,本件代位弁済スキームで処理された買取債
権の30.7%に相当するところ,アリゾナ等による回収額は86億6483万0432円であり,その30.7%に相当する26億6010万2942円が本件代位弁済対象債権分の回収額となるから,結局,本件代位弁済対象債権については上記60億7005万8693円から上記26億6010万2942円を控除した残金34億0995万5751円が回収不能となっており,これを損害と見ることができる。
しかし,本件債権買取りによる損害は,「飛ばし」が行われたことにより日本振興銀行が保有していた本件代位弁済スキームにより処理された買取債権がバックファイナンスによる本件ネットワーク企業に対する貸金債権に置き換わり,そのバックファイナンスの回収不能という形で現実化したものであり,バックファイナンスの回収不能の実態は買取債権の回収不能にほかならないから,バックファイナンスの回収不能額をもって買取債権の回収不能額と評価すべきである。そして,バックファイナンスの額は247億円であるところ,バックファイナンスの返済原資はアリゾナ等からの出資金の返還等以外には考えられておらず,アリゾナ等が出資金の返還として本件ネットワーク企業に支払ったのは合計86億6483万0432円であるから,バックファイナンスの回収不能額は160億2886万9568円であり,そのうち30.7%が本件代位弁済対象債権分であるから,本件代位弁済スキームにより本件代位弁済対象債権について生じた損害は49億2086万2957円となる。
また,本件ネットワーク企業へのバックファイナンスについては,平成22年2月15日又は同年4月26日に他の債権との一本化が行われたが,その一本化された後を含め,本件ネットワーク企業から日本振興銀行に回収された金額は168億6117万8069円であり,これが全てバックファイナンスの返済であると仮定してもその残金は78億3
882万1931円であるから,本件代位弁済スキームにおける回収不能額は78億3882万1931円を下回ることはなく,そのうち30.7%が本件代位弁済対象債権分であるから,本件代位弁済スキームにより本件代位弁済対象債権について生じた損害は24億0651万8332円を下回ることはない。
したがって,本件代位弁済スキームにより処理された本件代位弁済対象債権について,上記の34億0995万5751円,49億2086万2957円又は24億0651万8332円の損害が発生した。」⑻

原判決40頁4行目から13行目までを次のとおり改める。


SFCGは,融資をするに当たって,債務者から「金銭消費貸借・手形割引等継続取引並びに限度付根保証承諾書兼金銭消費貸借契約証書」を徴求していたが,これは「金銭消費貸借・手形割引等継続取引並びに限度付根保証承諾書」(以下「承諾書」という。)の部分と「金銭消費貸借等取引約定」の部分に分かれており,承諾書は継続的取引の基本となる契約書(基本契約書)と解されるが,承諾書では複数の貸口が存在する場合の充当方法が合意されており,実際,SFCGは,全ての貸口について毎月の弁済日を一定日に統一し,複数の貸口が存在する場合は,債務者に対し,借入金全体についての元利金合計額を示し,それを入金するよう通知していたものである。したがって,債務者のSFCGに対する弁済は,各貸付けごとに個別的な対応関係をもって行われることが予定されているものではなく,承諾書に基づく借入金の全体に対して行われるものと解されるのであり,充当の対象となるのはこのような全体としての借入金債務であると解することができるのであって,利息制限法に基づく引き直し計算により過払金が生じている場合には,当該過払金を弁済当時存在する他の借入金債務に充当することはもとより,弁済当時他の借入金債務が存在しないときでもその後に発生する新たな借入金債務に充当する旨の合意を含んで
いるものと解するのが相当であるから,一連一体計算による引き直し計算を行うのが相当である。また,日本振興銀行の民事再生手続において金融整理管財人により一連一体計算がされ,日本振興銀行の経理上も約定元本残高と一連一体計算に基づく引き直し計算結果との差額が損失として計上されていたが,これらは,膨大な数の買取債権について引き直し計算を迅速に行うため,一定の合理的な基準に基づく画一的な処理が必要であったという点で十分合理的であるところ,本件でも,対象債権は膨大な数量であり,それに時間をかけて引き直し計算を行うことは不可能であるから,実務的な観点からも一連一体計算による引き直し計算を行うのが相当である。そして,一連一体計算による引き直し計算による減額金額は,本件買取債権1に係るものについては12億8853万3322円,本件買取債権2に係るものについては10億9059万8326円の合計23億7913万1648円となる。」


原判決40頁24行目の「売却する」を「一括売却する」と改め,41頁11行目末尾に改行して次のとおり加える。


なお,原判決は,スカイブリッジへの上記売却価格は日本振興銀行に係る民事再生手続の開始及びその遂行過程における売却という特別の事情の下で定まったものであるから,上記の引き直し計算後の残高と上記売却代金との差額は,第1審被告Bが本件各債権買取りの承認決議に賛同した善管注意義務違反行為から通常生ずべき損害であるということはできず,また,特別の事情によって生じた損害であるとしても,第1審被告Bが当該事情を予見することができたとまで認めるに足りる証拠はないとするが,一括売却による不良債権処理は,銀行の破綻処理の過程で行う特別な処理ではなく,銀行の一般的・経常的な不良債権処理手段の一つであり,しかも,スカイブリッジへの売却価格は決して廉価ではなく,対象債権の実態を反映した適正・公正に形成された価格であり,特に民事再生手続での売却であるから不当に安くなったというものではないから,上記売却損(合計3億6451万9072円)は通常生ずべき損害と見るべきである。また,仮に日本振興銀行に係る民事再生手続の開始及びその遂行過程における売却を特別の事情と見た場合でも,本件買取債権1は290億円,本件買取債権2は170億円という巨額のものであるから,第1審被告Bとしては,SFCGが延滞等となった本件買取債権を約定どおり買い戻すことができなければ,これによって日本振興銀行の経営が危殆に瀕し,法的倒産手続の開始に至ること,その遂行過程において一括売却という形で不良債権を売却せざるを得ないことは,当然に予見可能であったから,第1審被告Bの善管注意義務違反行為と上記売却損の損害との間には相当因果関係がある。」

原判決42頁23行目及び25行目の各「「代位弁済(3Aスキーム)」」をいずれも「本件代位弁済スキーム」と改め,43頁2行目末尾に改行して次のとおり加える。


なお,第1審原告は,アリゾナ等による回収不能額又はバックファイナンスにおける回収不能額のうち本件代位弁済対象債権分は本件各債権買取りの承認との間で相当因果関係が認められる損害であると主張するが,SMEGによる代位弁済,アリゾナ等によるSMEGの求償権の買取り,本件ネットワーク企業によるアリゾナ等に対する出資及び日本振興銀行による本件ネットワーク企業に対する融資は,いずれも本件各債権買取りが承認された後に行われたものであり,本件各債権買取りの承認とは全く別個の行為であるから,アリゾナ等による回収不能額及びバックファイナンスにおける回収不能額のうち本件代位弁済対象債権分は本件各債権買取りの承認によって通常生ずべき損害であるとはいえないし,特別の事情によって生じた損害であり,第1審被告Bがそれを予見し又は予見することができたということもできないから,本件各債権買取りの承認との間に相当因果関係は認められない。」

原判決45頁25行目末尾に改行して次のとおり加える。
「⑸

第1審原告は第1審被告Cに対し債権者代位権に基づき8000万円
の不当利得返還請求をすることができるか否か
(第1審原告の主張)

第1審被告Bは,平成22年5月27日,近い将来日本振興銀行
の経営が破綻し,同行の株主及び債権者から代表者であった第1審被告Bに対し民事責任追及がされることは免れないことを覚悟し,同行の株主及び債権者から預金の仮差押えを受けること避けるた
め,当時残高が約8140万円あった第1審被告B名義の三菱東京UFJ銀行日本橋口座から第1審被告C名義の三菱東京UFJ銀行三鷹口座に8000万円を移動させた上,上記8000万円の移動の理由を説明するために急きょ第1審被告Cと示し合わせて本件合意書1を作成したものであるから,本件合意書1による合意(以下「本件贈与契約1」という。)は通謀虚偽表示により無効である。したがって,第1審被告Bは,第1審被告Cに対し,不当利得返還請求権に基づき,8000万円及びこれに対する第1審被告Cが8000万円を受領した同日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による利息の支払を求めることができる。


第1審被告Bは第1審被告Cに対し上記不当利得返還請求権を行

使しておらず,かつ,第1審被告Bは無資力である。

したがって,第1審原告は,第1審被告Cに対し,債権者代位権

による上記不当利得返還請求権に基づき,8000万円及びこれに対する第1審被告Cが8000万円を受領した日の後である訴状送達の日の翌日である平成23年9月10日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による利息の支払を求めることができる。」
(第1審被告Cの主張)
第1審原告の主張は争う。
第1審被告Bと第1審被告Cは,平成22年5月24日,本件合意書1を作成して,第1審被告Bと第1審被告Cが離婚することや第1審被告Bが第1審被告Cに対し離婚の慰謝料,財産分与及び養育費として8000万円を支払うことなどを合意し,第1審被告Bは,第1審被告Cに対し,当該合意に基づき8000万円を支払ったものであるから,当該合意は通謀虚偽表示ではないし,第1審被告Cが8000万円を不当利得したものでもない。」

原判決45頁末行の「⑸」を「⑹」と改める。

原判決46頁3行目から8行目までを次のとおり改める。


仮に本件贈与契約1が通謀虚偽表示でないとしても,本件贈与契約1は,その全額が慰謝料,財産分与及び養育費の支払に仮託してされた財産処分であるから,詐害行為取消しの対象となるというべきである。なお,原判決は,1316万円の支払を約する合意部分は養育費の要素を考慮した財産分与として相当であるとして,その限度で詐害行為取消しの対象とならないと判断したが,養育費はその性質上定期的に支払われるべきものであり,第1審被告Bが支払時期が到来していない養育費をまとめて支払ったことはその時期が義務に属しない支払をしたものであって,第1審被告Bは,支払える見込みのない多額の損害賠償債務を負うことが明らかになった後に時期が義務に属しない支払をしたものであるから,その行為も詐害行為取消しの対象となる。また,仮に相当額の養育費の支払は詐害行為取消しの対象とならないとしても,第1審被告Bは,平成22年5月10日に日本振興銀行の取締役会長兼代表執行役を辞任したから,同行からの役員報酬がなくなることは明らかであるし,第1審被告Bが検査忌避の容疑で逮捕され,自己の経営する会社も破綻し,執筆・講演料等もなくなることも容易に予想でき,離婚時に第1審被告Bの今後の収入が激減することは確実であったから,その前年の第1審被告Bの日本振興銀行の役員報酬(年額2009万5835円)を前提に養育費を算定するのは誤りであり,第1審被告Bが巨額の損害賠償債務を抱えていたことも考慮し,第1審被告Bの養育費の額は大幅に減額されるべきである。」

原判決46頁10行目の「合意」を「本件合意書2による合意」と改め
る。

原判決48頁23行目末尾に改行して次のとおり加える。


第1審原告は,将来分の養育費の支払は時期が義務に属さないものであるから詐害行為になると主張するが,根拠のない主張である。」

原判決49頁22行目の「DMDJAPAN株式会社」の次に「(以下「DMDJAPAN」という。)」を加える。

3
当審における第1審被告らの主張(後記4の第1審被告Cの主張及び後記5の第1審被告Dの主張を除く。)
⑴ア

原判決は,平成21年最高裁決定を参照して,融資業務に際して要求さ
れる銀行の取締役の注意義務の程度は高く,銀行の取締役にいわゆる経営判断の原則が適用される余地があるとしても,その余地はその分だけ限定的なものにとどまるとした上,本件各債権買取りは,直接的には融資業務に当たらないとしても,広く預金者から集めた資金を投じた上で本件買取債権の債務者又はSFCGからその回収を図る必要があるものであるから,第1審被告Bが本件各債権買取りの可否・当否を決定するに当たっては,一般の株式会社の取締役の場合に比べ相当程度高い水準の注意義務が課せられていたと解するのが相当であるとして,第1審被告Bの取締役としての善管注意義務違反を認定した。

しかし,平成21年最高裁決定は明示的に「融資業務に際して」と判示しているところ,本件各債権買取りは融資業務に当たらないから,本件を融資業務と同視して注意義務の程度を一般の株式会社の取締役の場合に比べ高い水準のものとし,経営判断の原則の適用される余地を限定することは相当でない。日本振興銀行は,本件各債権買取りを顧客基盤の拡充という経営戦略に沿って行ったものであるところ,最高裁判所平成21年(受)第183号同22年7月15日第一小法廷判決(裁判集民事234号225頁。以下「平成22年最高裁判決」という。)の趣旨に照らせば,本件各債権買取りによる顧客基盤拡充という経営戦略・事業計画の策定は,正に将来予測にわたる経営上の専門的判断に委ねられるべき事項であるから,その決定の過程,内容に著しく不合理な点がない限り,取締役としての善管注意義務に違反するものではないというべきである。ウ
そして,①本件各債権買取りは,営業コストを掛けずに,かつ,大量の
顧客を一気に獲得でき,これにより経営基盤を拡充できる点で優れたビジネスモデルであり,また,他のノンバンクが1度は財務状況を審査し融資を実行した顧客であるという点でも,審査コストの削減・リスクヘッジの意味で優れた方法であり,さらに,日本振興銀行にとって競争相手に当たるノンバンクの利益の源を奪う競争戦略の観点からも優れた方法であるから,日本振興銀行にとって大きなメリットがあり,顧客基盤拡充のために債権買取りの必要性が高かったことや,②本件各債権買取りの過半に当たる再譲渡部分は,従前の債権買取りにおける買取債権を相対的に問題のないものに入れ替えるために行われたものであり(再譲渡によって得られた債権は,旧債権よりも質が良いか同程度である。),この再譲渡は買取債権全体の質を高める方向に働くことを考慮すれば,本件各債権買取りの承認は,経営判断として合理的なものであったというべきである。

また,日本振興銀行は,SFCGの平成20年7月期有価証券報告書記
載の貸倒引当金が営業貸付金総額の約5.9%であったことを前提として,保守的に貸倒率を1割以下と見積もってSFCGの保証残高総額の約1割を超える物的担保を徴求し,担保株式の価格が下落した際には追加担保を徴求していたから,買取債権の担保として十分であった。この点につき,原判決は,SFCGの営業貸付金に対する貸倒引当金の割合が適切なものであったことを認めるに足りる証拠はないとした上で,SFCGにいたH財務部長及び日本振興銀行にいたI執行役の各陳述書(甲イ59,105)や証言から,SFCGの保証残高総額の約1割を超える物的担保の徴求では貸倒れリスクを回避する措置として十分ではなかったと判断したが,有価証券報告書は公認会計士又は監査法人の監査証明を得た上で内閣総理大臣に提出される書類であり,そこに記載された数字は正確であることが強く期待されるところ,H財務部長は5.9%が不正確であるとまでは証言等をしていないし,I執行役はSFCGに勤務した経験はなく,ノンバンク勤務当時の感覚で証言等をしたのみであるから,同人らの証言等のみをもって有価証券報告書の記載の信用性を否定した原判決の判断は誤りである。また,金融庁の「貸金業制度等に関する懇談会」において配布された資料(乙A8の2)において,昭和54年から平成18年までの期間において消費者金融大手5社の合計貸倒率が10%を超えたことはないとの統計が示されているのであるから,このことからも貸倒率を1割以下と見積もることの合理性が裏付けられる。
また,日本振興銀行は,本件各債権買取りに当たり,その買取代金純増分(すなわち再譲渡部分を除いた分)の25%相当額をSFCGからSMEGに対し貸し付けることを条件としていた。この点につき,原判決は,本件各債権買取り当時,SFCGのSMEGに対する貸金債権と日本振興銀行のSFCGに対する債権を相殺することができる法律関係が成立していたことを認めるに足りる的確な証拠はないとするところ,確かに,SFCGと日本振興銀行の保証契約に基づいてSFCGが負担する一切の債務につきSMEGが保証する旨の保証委託契約を締結したのは本件各債権買取り後の平成21年1月26日であるが,第1審被告Bは平成20年10月頃から,SFCGが日本振興銀行に対する保証債務を履行できなくなった場合に備えて,SFCGの保証債務とSFCGのSMEGに対する貸付債権とを相殺することができるようSFCGとSMEGとの保証委託契約を締結するよう指示していたものであり,実際にSMEGのSFCGに対する貸金債務を返済することなくSFCGの日本振興銀行に対する保証債務と相殺することができたことからすれば,SFCGのSMCGに対する上記貸付が買取債権の保全としての機能を有していたことは明らかである。
なお,日本振興銀行がSFCGに債権を再譲渡したが,日本振興銀行がSFCGから債権を買い取ることができない(したがって,SFCGが相殺に供すべき代金債権が存在しないことになる。)とか,日本振興銀行がSFCGから債権譲渡代金の弁済を現実に受けることのできる見込みがない場合にはSFCGの信用力が問題となるが,債権の再譲渡は日本振興銀行の権利であって義務ではなく,日本振興銀行において,債権の再譲渡をせず,債権を保有し続ければよいのであるから,本件各債権買取りはSFCGの信用力に依拠したものではなく,SFCGの信用力の有無やそれについての第1審被告Bの認識は本件各債権買取りの合理性を減殺するものではない。
また,原判決は,本件残存債権のうち利息制限法所定の制限利率に基づき引き直し計算をした減額部分は,そもそも日本振興銀行において法的に回収を図ることができなかったものであるとし,法的に請求し得るかどうかの観点のみからその合理性を判断しているようであるが,日本振興銀行からの資金調達を望む第三債務者が日本振興銀行に対して利息制限法に基づく引き直し計算を主張する可能性は高くなく,仮にそのような主張がされることがあったとしても,一括して買い取った債権全体において収益が出ている限り,本件各債権買取り全体の合理性が否定されることにはならないし,収益が出る見込みもあったから,本件買取債権の中に利息制限法の制限を超える金利のものが含まれていたとしても,そのことは本件各債権買取りの合理性を減殺するものではない。

したがって,本件各債権買取りについては,その決定の過程,内容に著
しく不合理な点はないから,第1審被告Bには取締役としての善管注意義務違反はない。


原判決の損害についての判断は,次のとおり不当である。

前記のとおり,債権買取契約の解除を行うのは,同時に債権買取りを行
って保有する債権をより良い債権と入れ替えることができることが前提であったから,SFCGが破綻したことによって,新たな債権の買取りも,債権買取契約の解除に基づく買取代金返還請求権の回収もできないような場合に債権買取契約を解除して,譲受債権及びこれに付された物的担保を手放すことは全く不合理なことであり,そのような場合にまで「本件買取契約の一部解除をすることが予定されていた」ということはできない。そして,本件譲渡解除債権に係る債権買取契約の解除は第1審被告Bが行ったものではないし,第1審被告Bが企図した結果でもないから,SFCGが破綻して本件譲渡解除債権に係る買取代金返還請求権の回収ができなかったことによる損害は,第1審被告Bによる本件各債権買取りの承認とは因果関係がない。

債権の買取りは債権の入替えのためのものであり,旧債権の譲渡契約の
解除と新債権の買取りは対になるものであった以上,それによる損害は,「債権買取りを承認しなかった場合に入替え前の旧債権から回収が見込まれた金額」と「債権買取りを承認した場合の入替え後の譲受債権から回収できた金額及び回収が見込まれた金額」とを比較し,前者が後者を上回る場合の差額が損害とされるべきである。
仮に原判決が認定したとおり,SFCG破綻後の解除までをも「債権買取りの承認」と相当因果関係のある行為と解するのであれば,その損害は,「旧債権を保持し続け,これをSFCG破綻によって解除した場合に,SFCGへの不当利得返還請求権が回収できなかったことによる損害」と「本件各債権買取りを行ったが,SFCG破綻によって解除した場合に,SFCGへの不当利得返還請求権が回収できなかったことによる損害」の差額となるはずである。

入替えが行われた債権を除いて,純増分の債権のみを問題にするのであ
れば,本件各買取債権のうち,どれがその純増分であるかを明らかにし,それについて,その後に債権譲渡契約の解除をした者がどの程度であるかを明らかにしなければならず,仮に区別が困難であるとしても,割合的認定をすべきである。

債権の買取りは債権の入替えのためのものであり,旧債権の譲渡契約の
解除と新債権の買取りは対になるものであったことからすれば,その損害については,「入替え前の旧債権についての引き直し計算による減殺部分」と「入替え後の新債権について引き直し計算による減殺部分」を比較し,後者が前者を上回る場合のその差額が損害とされるべきである。4
当審における第1審被告Cの主張


原判決は,離婚合意をした平成22年5月下旬頃及び協議離婚の届出をし
た同年6月頃時点における第1審被告Bの保有資産として,①第1審被告B名義のシンガポール銀行の銀行口座(以下「シンガポール銀行口座」という。)に預金されていた4億4850万5670円,②第1審被告Cに振込送金された8000万円,③仮差押えに係る三菱東京UFJ銀行日本橋口座等の預金155万4349円,④仮差押えに係る楽天証券株式会社(以下「楽天証券」という。)への預託金1億円,⑤西武ホールディング株式(評価額432万8850円),⑥マンション(固定資産税上の評価額595万5890円)を認定したが,その認定には次のとおり誤りがある。ア
第1審被告Bが日本振興銀行株式の売却代金が入金された三菱東京UF
J銀行日本橋口座から金員が振込送金される前のシンガポール銀行口座に関して受領した利子は,平成19年が217万3981円(丙A10),平成20年が817万7635円(丙A11),平成21年(同年1月1日から同年11月1日まで)は754万1115円(丙A12の1)であるところ,当時の外国銀行の一般的な金利水準である年利3%を前提とすると,平成20年末の時点で元金が2億6666万円(利子を年額800万円として計算)あったことになる。そして,第1審被告Bは,シンガポール銀行口座に平成21年11月9日に2億円,同月30日に1億5000万円,平成22年3月24日に2億5000万円を送金しているから,同年5月下旬頃及び同年6月頃の時点では,シンガポール銀行口座の預金残高は8億6666万円であった。したがって,その時点でのシンガポール銀行口座の預金残高を4億4850万5670円とした原判決の認定は誤りである。

三菱東京UFJ銀行日本橋口座の預金は,日本振興銀行株式の売却代金
が入金される前の平成18年1月から平成21年10月20日までの間に3200万円も残高が増加したから,株式会社三菱東京UFJ銀行の平成23年8月3日時点の陳述書(甲ロ35の2)に基づき離婚時(平成22年6月1日)の三菱東京UFJ銀行日本橋口座の残高を115万円余(定期預金300万円から反対債権(借入金184万7818円)を控除した残金)とした原判決の認定は誤りである。

楽天証券に対する預託金は,平成22年5月下旬頃及び同年6月頃の時点では存在せず,その後にシンガポール銀行口座の預金を原資として楽天証券に預託されたものであるから,これを離婚時の第1審被告Bの資産に計上した原判決の認定は誤りである。

第1審被告Bは離婚時に少なくとも7000株の日本振興銀行株式を保
有しており,その価値は7億円を下らなかったから,これを離婚時の第1審被告Bの資産に計上しなかった原判決の認定は誤りである。

第1審被告Bは離婚時に株式会社メディア・コンセプト(以下「メディ
ア・コンセプト」という。)に2億9000万円の貸付債権を有しており,それは額面どおりの資産価値を有していたから,これを離婚時の第1審被告Bの資産に計上しなかった原判決の認定は誤りである。


前記のとおり,シンガポール銀行口座及び三菱東京UFJ銀行日本橋口座
には日本振興銀行株式の売却代金以外の金員もあったから,それらの全部又はほとんどが日本振興銀行株式を売却した譲渡金が資金移動されたものであるとの原判決の認定は誤りである。


原判決は,日本振興銀行株式は,基本的には第1審被告Bの能力と才覚に
依拠して取得したものであって,同株式ないしその譲渡代金を夫婦の積極的な共同財産に含める以上,第1審被告Bが負う第1事件の損害賠償債務についても,第1審被告Bが同行の取締役としての職務を遂行する過程で,積極的な共同財産の取得・形成と密接に関連して発生した債務として消極的な共同財産に含まれると解するのが相当であるとしたが,第1審被告Bが日本振興銀行株式を取得した原資は,主として日本銀行勤務時の給与所得,日本銀行退職後に経営していた株式会社フィナンシャル(以下「フィナンシャル」という。),DMDJAPANなどの役員報酬であるから,長年家事労働等によって第1審被告Bを支えてきた第1審被告Cの寄与があったことは明らかであるし,第1審被告Bの損害賠償債務は,これを負うことによって第1審被告Bの預貯金の形成に寄与したり,第1審被告Bの日本振興銀行株式の保有に寄与したという関係にはなく,婚姻共同生活の維持に無関係な債務によって債務超過となったものであるから,上記損害賠償債務を消極的な共同財産に含めることは相当でない。


原判決は,第1審被告Bの平成21年の収入が日本振興銀行から得た役員
報酬2009万5835円であると認定して養育費を算定したが,第1審被告Bの同年の収入は日本振興銀行からの2009万5835円だけでなく,フィナンシャルからの約3336万円及びDMDJAPANからの約4300万円を加えた合計約9645万円であって,これを前提に子らの養育費の総額を算定すると,第1審被告Cの収入が0円であるとして算定すれば6364万円が相当であり,第1審被告Cの収入が400万円であるとして算定すれば6060万円が相当であるから,少なくともその範囲では詐害行為取消しの対象とならない。
5
当審における第1審被告Dの主張


本件株式譲渡合意の対価の額(1株当たり13万円)は,日本振興銀行の
平成22年3月期末時点での1株当たりの純資産額が約13万3022円であったことを踏まえて算定されたものであるから相当な金額であり,第1審被告Bは日本振興銀行株式をその価値に見合った相当な対価で買い戻したものであるから,その行為は詐害行為に当たらない。。
なお,原判決は,①平成22年2月26日に日本振興銀行の立入検査を担当していた金融庁の検査官が,日本振興銀行の取締役であった原審分離前被告Eに対し,同行が多額の貸付けをしていたSMEGの債務者区分は「破綻懸念先」とするのが相当であるとの記載のある確認表を交付したこと,②同年3月2日,金融庁の検査官が,原審分離前被告Eに対し,日本振興銀行が平成21年3月末時点において561億1200万円の債務超過に陥っており,単体での自己資本比率がマイナス16.78%である旨の記載のある確認表を交付したこと,③日本振興銀行は平成22年6月期において約1870億円の債務超過に陥っていたことという事情を根拠として,本件株式譲渡合意の時点においては,日本振興銀行株式の価値がほとんどゼロであったと認定する。しかし,上記①及び②の各確認表は一検査官の意見を表明したものにすぎず,その意見が誤ったものである可能性を多分に含むものであるから,それらの確認表の記載内容を基にして日本振興銀行の財務状況等がその記載内容のとおりであったと認定することはできないし,上記③の事情は同年7月20日付けで自己査定マニュアルが改訂された結果生じた事後的な事態にすぎないから,いずれも本件株式譲渡合意の時点においては,日本振興銀行株式の価値がほとんどゼロであったことの根拠となるものではない。⑵

本件株式譲渡合意は,第1審被告Dが日本振興銀行の経営権争いの渦中に
あった第1審被告Bに対する支援資金として1億円を用意して第1審被告Bに貸し付け,その後,株式保有という形で第1審被告Bの経営支援をする目的で日本振興銀行の株式を保有していたところ,第1審被告Bが平成22年5月に日本振興銀行の取締役会長を辞任することになり,第1審被告Dが日本振興銀行の株式を保有すべき理由がなくなったから行われたものであって,その時期に本件株式譲渡合意がされたのは,第1審被告Dが日本振興銀行の株式を保有していた時期,理由に照らしごく自然なことであり,当然の成り行きであった。したがって,第1審被告Bには詐害の意思があったということはできない。なお,第1審被告Bは,同時期に,自身が経営する会社の従業員であったJら4名(以下「Jら」という。)からも日本振興銀行の株式を買い戻しており,また,本件株式譲渡合意における対価の額は同年3月期末時点での1株当たりの純資産額を参照して算出されているが,これらの事実は,第1審被告Bに民事責任追及を逃れ資産を隠匿しようとする目的がなかったことを示すものである。


第1審被告Dは,株式会社北陸銀行に勤務していたが,銀行経営に携わる
業務に従事したことはなく,また,第1審被告Dは,兄である第1審被告Bとは6歳離れており,第1審被告Bが大学に進学して以来,第1審被告Bと一緒に生活したことはなく,顔を合わせる機会は多くて年2回程度で,電話で話をする機会も年に数回程度であり,第1審被告Bとの会話も,近況やその時その時の用件に関する話や雑談に終始していて日本振興銀行に関する話題が出ることはほとんどなく,日本振興銀行に関して話すことがあっても,「最近どう?」,「問題ないよ」,「大丈夫」といった程度のものであったし,本件株式譲渡合意当時,第1審被告Bは誰からも損害賠償責任を追及されておらず,その兆候もなかった。したがって,第1審被告Dは,本件株式譲渡合意をした当時,第1審被告Bが日本振興銀行に損害を与えたとして損害賠償責任を追及される可能性があることを知り得なかったから,債権者を害する事実を知らなかった。
第3
1
当裁判所の判断
当裁判所は,第1事件における第1審原告の第1審被告Bに対する請求は,
37億5693万4826円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成23年9月12日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があり,その余は理由がなく,第2事件における第1審原告の第1審被告C及び第1審被告Dに対する請求(ただし,第1審被告Cに対する8000万円の支払については当審で追加された主位的請求)はいずれも理由があると判断する。その理由は,次の2ないし4のとおり当審における第1審被告らの主張に対する判断を付加するほかは,原判決の「事実及び理由」欄の「第3

当裁判所の判断」(別紙を含む。)に記載のとおりである

から,これを引用する。ただし,原判決を次のとおり改める。


原判決中の各「原告」をいずれも「第1審原告」と,各「被告B」をい
ずれも「第1審被告B」と,各「被告C」をいずれも「第1審被告C」と,各「被告D」をいずれも「第1審被告D」と,各「分離前被告E」をいずれも「原審分離前被告E」と,各「分離前被告F」をいずれも「原審分離前被告F」と,各「分離前被告G」をいずれも「原審分離前被告G」とそれぞれ改める。


原判決81頁2行目及び6行目並びに87頁4行目,6行目,11行目
(一つ目のもの)及び13行目の各「売却」をいずれも「一括売却」と改める。


原判決83頁24行目から85頁16行目までを次のとおり改める。「イ

本件代位弁済スキームにより処理された債権に関する損害
第1審原告は,日本振興銀行はSMEGから本件買取債権のうち60億7005万8693円の本件代位弁済対象債権の代位弁済を受けたが,これは,本件代位弁済スキームに従ったものであり,日本振興銀行の資金を原資としてされたいわゆる「飛ばし」であり,これにより債権が回収されたということはできないから,本件代位弁済対象債権については,アリゾナ等による回収ができなかった34億0995万5751円又は本件代位弁済スキームにより処理された買取債権が置き換わったバックファイナンスの回収不能額のうち本件代位弁済対象債権分の49億2086万2957円若しくは24億0651万8332円の損害が発生したと主張する。
確かに,
築したのは日本振興銀行自身であり,日本振興銀行が本件ネットワーク企業に対して融資した金銭が本件代位弁済に充てられたことが強く
実によれば,日本振興銀行はSMEGから本件代位弁済を受け,出捐額の少なくとも一部の回収をしていることが認められるのみならず,SMEGはその後,アリゾナ等に対し,SFCGに対する求償債権を譲渡する一方,アリゾナ等は本件ネットワーク企業から匿名組合契約に基づく出資を受け,本件ネットワーク企業は日本振興銀行から融資を受けたこと,SMEG,アリゾナ等及び本件ネットワーク企業はあ件訴訟に現れた全証拠によっても,これらの法人格を否認し,又は,これらの法人が日本振興銀行の法人格と同一視できるとまでは認められない。)が認められるから,SMEGの日本振興銀行に対する本件代位弁済を無効ということはできず,他にこれを無効と解する法的根拠は見当たらない。したがって,本件代位弁済が日本振興銀行の資金を原資としてされたものであり,いわゆる「飛ばし」の一環としてされたものであるとしても,そのことから当然に,SMEGの日本振興銀行に対する本件代位弁済の効果を否定することはできず,本件代位弁済により債権が回収されたとはいえないと断ずることもできない。この点につき,第1審原告は,「飛ばし」は含み損が生じた資産を第三者に譲渡することによって損失を隠す行為であって,表面的には不良資産が見えなくなるが損失は隠されているだけであり,実質的には損失が回復されるわけではないから,本件代位弁済スキームによりSMEGから代位弁済された部分について損害の発生を否定することは不当であると主張するが,日本振興銀行はSMEGから本件代位弁済を受け,出捐額の少なくとも一部の回収をしているのであるから,その範囲で損害を受けていないといわざるを得ず,本件代位弁済スキームが「飛ばし」の一環であるとしても,それは,第1審原告が自認するとおり本件各債権買取りが行われた後に行われたものであって,本件において第1審被告Bの善管注意義務違反が問題とされている本件各債権買取りの承認と直接関係するものではなく,仮に本件代位弁済スキームそれ自体に問題があるのであれば,その行為自体について第1審被告Bの日本振興銀行の取締役としての責任が問われるべきであるから,第1審原告の上記主張は採用することができない。
したがって,本件代位弁済スキームの存在自体は認められるもの
の,これにより日本振興銀行が代位弁済を受けた金額について,日本振興銀行に損害が生じたものと認めることはできないから,この点に係る第1審原告の主張は理由がないというほかはない。」


原判決86頁6行目の「

」の次に「a」を加え,9行目末尾に改行して

次のとおり加える。
「b

なお,第1審原告は,前記第2の3⑶イ

b(本判決による訂正後の

もの)のとおり,SFCGが融資をするに当たって債務者から徴収していた「金銭消費貸借・手形割引等継続取引並びに限度付根保証承諾書兼金銭消費貸借契約証書」等を理由に一連一体計算を行うのが相当であると主張する。
確かに,証拠(甲イ185の1)によれば,SFCGが融資をするに当たって債務者から徴収していた「金銭消費貸借・手形割引等継続取引並びに限度付根保証承諾書兼金銭消費貸借契約証書」は,左側の「金銭消費貸借・手形割引等継続取引並びに限度付根保証承諾書」(承諾書)の部分と右側の「金銭消費貸借等取引約定」の部分に分かれており,承諾書には,債務者が「金銭消費貸借等取引約定」及び「金銭消費貸借・手形割引等継続取引並びに限度付根保証承諾書兼金銭消費貸借契約証書」裏面の「承諾条項」のとおり契約が成立したことを承諾する旨の文言があり,上記「承諾条項」の前文には,「主債務者及び連帯保証人(中略)は,債権者(株式会社SFCG)と手形割引・金銭消費貸借取引によって生じた債務の履行について,別紙個別(金銭消費貸借等契約及び手形割引取引契約)約定のほか本承諾条項に従うものとします。」と記載され,11条1項には,SFCGの判断により複数貸付けを一つの貸付けとすること(以下「貸付統合」という。)ができる旨定められ,18条1項には,債務者らからの利息の入金が行われた場合,充当処理の対象となる貸口への充当処理は利息制限法所定の利率に基づく利息の充当を最初に行い,その残余の金員があるときは貸付日の古い貸付けより順次約定利息に充まで充当する旨定められていたことが認められる。
しかしながら,証拠(甲イ185の1)によれば,SFCGが顧客から徴収していた「金銭消費貸借・手形割引等継続取引並びに限度付根保証承諾書兼金銭消費貸借契約証書」は右側の「金銭消費貸借等取引約定」の部分に契約番号が印字されていることが認められるところ,第1審被告Bが提出したある特定の債務者の顧客データ(乙A9)及び計算書兼債権書類等明細書(乙A10の5)によれば,SFCGは,当該債務者について,既存の消費貸借契約に残債務があって取引続行中であっても,新たな貸付けを行う際に新たな契約番号を付して貸付けを行っていたことが認められるから,SFCGは,債務者と新たな消費貸借契約を締結する度に「金銭消費貸借・手形割引等継続取引並びに限度付根保証承諾書兼金銭消費貸借契約証書」を取り交わしていたことがうかがわれるところである。
また,SFCGが実際に貸口統合を行っていたことを認めるに足りる証拠はなく,かえって,第1審被告Bが提出したある特定の債務者の顧客データ(乙A9)によれば,SFCGは,当該債務者との間で同時に複数の消費貸借契約を締結し,それぞれに契約番号を付して貸付けを行い,契約番号によって利率も異なっていることが認められるから,SFCGは,当該債務者について,各消費貸借契約ごとに貸付けを管理していたものと認められるところである。
したがって,SFCGにおいては,債務者に対し一つの基本契約に基づき貸付けをしていたわけではなく,個々の貸付けごとに別の契約番号を付し,それぞれについて管理していたことがうかがわれる上,本件においては,債務者に対する具体的な貸付けの状況が明らかでないから,債務者のSFCGに対する弁済が基本契約に基づく借入金の全体に対して行われていたとか,一つの基本契約が締結されているのと同様の貸付けが繰り返されていたと認めることはできず,第1審原告の上記主張は採用することができない。
また,第1審原告は,本件の対象債権は膨大な数量であり,それに時間をかけて引き直し計算を行うことは不可能であるから,実務的な観点から一連一体計算を行うのが相当であると主張するが,本件において利息制限法による引き直し計算を行うのは,第1審被告Bが賠償すべき損害の額を認定するためであり,損害の立証責任は第1審原告にあるのであるから,時間をかけて対象債権の引き直し計算を行うことが不可能であることによる不利益は第1審原告が負うべきであって,そのことを理由に一連一体計算を行って損害額(本件買取債権から回収できない減額分)が拡大することを認め,その不利益を第1審被告Bに負担させることは相当でないから,第1審原告の上記主張は採用することができない。」


原判決87頁18行目の「したがって,」を次のとおり改める。


この点につき,第1審原告は,①一括売却による不良債権処理は,銀行
の破綻処理の過程で行う特別な処理ではなく,銀行の一般的・経常的な不良債権処理手段の一つであり,しかも,スカイブリッジへの売却価格は決して廉価ではなく,対象債権の実態を反映した適正・公正に形成された価格であり,特に民事再生手続での売却であるから不当に安くなったというものではないから,上記売却損は通常生ずべき損害と見るべきである,②仮に日本振興銀行に係る民事再生手続の開始及びその遂行過程における売却を特別の事情と見た場合でも,本件買取債権1は290億円,本件買取債権2は170億円という巨額のものであるから,第1審被告Bとしては,SFCGが延滞等となった本件買取債権を約定どおり買い戻すことができなければ,これによって日本振興銀行の経営が危殆に瀕し,法的倒産手続の開始に至ること,その遂行過程において一括売却という形で不良債権を売却せざるを得ないことは,当然に予見可能であったから,第1審被告Bの善管注意義務違反行為と損害との間には相当因果関係があると主張する。しかしながら,一括売却による不良債権処理が,銀行の破綻処理の過程で行う特別な処理ではなく,銀行の一般的・経常的な不良債権処理手段の一つであるとしても,日本振興銀行の係る民事再生手続の遂行過程において行われた一括売却による売却代金が,一般的・経常的な不良債権処理として一括売却を行った場合の売却代金と同等であることを認めるに足りる証拠はないから,本件残存債権の一括売却による損害を通常生ずべき損害と認めることはできない。また,本件買取債権の金額が巨額だったというだけでは第1審被告Bにとって本件残存債権の一部が日本振興銀行に係る民事再生手続において一括売却されることを予見することができたとまで認めることはできない。したがって,第1審原告の上記主張は採用することができない。
よって,」


原判決89頁8行目から101頁12行目までを次のとおり改める。「4

認定事実
前提事実,証拠(後記認定事実末尾記載の各証拠のほか,原審における第1審被告ら各本人)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。
第1審被告B,原審分離前被告F,Kらは,平成21年3月頃,SFCGの再生手続の管財人から,日本振興銀行が買い取ったSFCGの貸付債権は,SFCGから他社にも譲渡されており,日本振興銀行は五百数十億円の債権について他社に劣後している旨の情報提供を受けた。この話を聞いた第1審被告Bは,Kに対し,日本振興銀行が債務超過になるとして,この件は第三者に絶対他言しないよう口止めした。
さらに,SFCGについて再生手続が廃止となり破産手続開始決定がされた後である平成21年4月22日,日本振興銀行は,SFCGの破産管財人から,貸付債権の債権譲渡の登記データの交付を受けた。(甲イ60,122,203)
原審分離前被告Eは,日本振興銀行の立入検査を担当していた金融庁の検査官から,①平成22年2月26日,日本振興銀行が多額の貸付けをしていたSMEGの債務者区分は「破綻懸念先」とするのが相当であるとの記載のある確認表の交付を受け,②同年3月2日,日本振興銀行が平成21年3月末時点において561億1200万円の債務超過に陥っており,単体での自己資本率がマイナス16.78%である旨の記載のある確認表の交付を受けた(甲イ203)。
しかし,公表された日本振興銀行の平成21年度(平成22年3月期)の決算書類には,SFCGがその貸付債権を二重譲渡したことにより日本振興銀行に発生した多額の損失は反映されず,SMEGの債務者区分を「破綻懸念先」とすることにより必要となる多額の貸倒引当金も計上されていなかった(甲イ12)。
第1審被告Bは,いずれも日本振興銀行の取締役会における承認
決議を経て,①平成21年10月27日,DMDJAPANに対し,自己の保有する日本振興銀行株式を売却し,その代金6億4747万5000円を第1審被告B名義の三菱東京UFJ銀行日本橋口座宛てに振込送金させ,②同月28日,フィナンシャルに対し,自己の保有する同株式を売却し,その代金1億6732万5000円を同銀行口座宛てに振込送金させ,③平成22年3月19日,SMEGに対し,自己の保有する同株式を売却し,その代金3億1825万円を同銀行口座宛てに振込送金させた(この時点で,日本振興銀行株式の売却代金として同銀行口座に振り込まれた資金額は,合計11億3305万円である。)。日本振興銀行株式の売却代金とは別に,第1審被告Bは,三菱東京UFJ銀行日本橋口座から,平成21年11月2日フィナンシャルに対し,7147万円を振込送金し,平成22年3月5日同社から同銀行口座宛てに3000万円の振込送金を受けた。(甲ロ50,53~55,58)

これと並行して,第1審被告Bは,三菱東京UFJ銀行日本橋口
座から,①平成21年10月28日にメディア・コンセプトに対し2億9000万円を振込送金し,②シンガポール銀行口座宛てに同年11月9日及び同月30日に3億5000万円を,平成22年3月24日に2億5000万円をそれぞれ送金し,③同月5日に税金として9214万1800円を支払い,④同年5月27日に第1審被告C名義の三菱東京UFJ銀行三鷹口座宛てに8000万円を振込送金した(甲ロ26,50,58)。


また,第1審被告Bは,シンガポール銀行口座から,①平成22年6月9日に第1審被告D名義の株式会社北陸銀行本店営業部の銀行口座に1億6250万円を振込送金し,②同年8月20日に株式会社三井住友銀行麹町支店の「預り金

弁護士

L」名義の銀行口

座(以下「L弁護士預り金口座」という。)宛てに9994万8500円を振込送金し,次いで,③シンガポール銀行口座を閉じることに伴い,同年11月4日に同口座の残高であった1億8605万7170円をL弁護士預り金口座宛てに振込送金した(これらを合計すると,シンガポール銀行口座にもともと預金されていた資金額は,合計4億4850万5670円となる。)。
さらに,フィナンシャルは,平成22年11月1日L弁護士預り
金口座宛てに5000万円を振込送金した。
(甲ロ26,32,50)

そして,第1審被告Bは,L弁護士預り金口座から,①平成22年12月7日に保釈保証金として1000万円を支払い,②同年11月10日に第1審被告C名義の三菱東京UFJ銀行三鷹口座宛てに1億2000万円を振込送金し,③第1審被告B名義の株式会社ジャパンネット銀行すずめ支店の銀行口座宛てに,同年12月22日に1億円を,平成23年6月8日に5000万円をそれぞれ振込送金した。さらに,第1審被告Bは,同銀行口座から楽天証券に対し,平成22年12月26日に1億円を,平成23年6月8日に5000万円をそれぞれ振込送金した。(甲ロ26,50)
本件合意書1の作成日付である平成22年5月24日時点での預金
残高は,①株式会社みずほ銀行丸之内支店の普通預金が4636万6368円(ただし,このうち4500万円は第1審被告Bが第1審被告C名義の三菱東京UFJ銀行三鷹口座宛てに合計8000万円を送金した同月27日に出金されており,同出金後の残金は19万1102円である。),②三菱東京UFJ銀行日本橋口座の普通預金が7897万1616円(これにその後新たに若干入金されたものの中から同日に合計8000万円が第1審被告C名義の三菱東京UFJ銀行三鷹口座宛てに振込送金され,その後の残金は140万0904円である。),③株式会社三菱東京UFJ銀行田町支店の普通預金が0円であり,また,本件合意書2の作成日付である同年11月9日時点での預金残高は,①株式会社みずほ銀行丸之内支店の普通預金が131万6918円,②三菱東京UFJ銀行日本橋口座の普通預金が469万3246円,③株式会社三菱東京UFJ銀行田町支店の普通預金が17万3023円,④株式会社ジャパンネット銀行すずめ支店の普通預金が17万2501円であった(甲ロ58)。なお,第1審被告Bは,上記各時点において,株式会社三菱東京UFJ銀行日本橋支店に300万円の定期預金を有していた可能性がある(甲ロ35の2,58)。また,第1審被告Bは,株式会社西武ホールディングスの株式5000株を保有していたが,同株式の1株当たりの純資産額は平成22年3月末時点で825.34円,平成23年3月末時点で829.29円であったから,平成22年5月27日及び同年11月10日の時点での5000株の評価額は410万円程度であった(甲ロ43,46)。
さらに,第1審被告Bは,文京区a町b丁目c番地d・c番地e所在のマンションの区分所有権を有していたが,その平成23年度固定資産評価証明書上の評価額は建物及び敷地持分合計で約595万5890円であった(甲ロ29,30)から,平成22年度の固定資産税評価額も同程度であったと解される。他方,同建物及び敷地持分には,第1審被告Bがこれを購入した同年2月26日付けで,オリックス信託銀行を債権者とする2120万円の抵当権設定登記が経由されている(甲ロ30)。
日本振興銀行が平成21年度(平成22年3月期)決算において51億円の赤字に転落したことを発表した同年5月17日以降,新聞紙上においては,①同月27日,金融庁が日本振興銀行を行政処分する方針を固めたことや日本振興銀行の金融庁の調査に対する非協力的な姿勢について検査忌避の疑いで刑事告発を検討していることが,②同月28日,金融庁が日本振興銀行に対し,7項目に及ぶ重大な法令違反を理由として,新規大口融資の約4か月間停止等を柱とする業務停止命令を出したことや,日本振興銀行の社長は経営陣の処分を検討していることが,③同年6月11日,金融庁が日本振興銀行を刑事告発する方向で最終調整に入ったことが,④同月12日,警視庁が日本振興銀行や関係先を家宅捜索し,執行役らを任意聴取していることが,⑤同年7月14日,警視庁が第1審被告Bを銀行法違反容疑で取り調べる方針であることが,⑥同日,第1審被告Bが逮捕されたことがそれぞれ報道された(甲ロ40の1・3~6・8・9~13)。
5
第1審原告は第1審被告Cに対し債権者代位権に基づき8000万円の不当利得返還請求をすることができるか否かについて
本件においては,次の点を指摘することができる。

証拠(甲ロ58)及び弁論の全趣旨によれば,第1審被告Bは,

平成22年5月27日,当時残高が約8140万円あった自己名義の三菱東京UFJ銀行日本橋口座から第1審被告C名義の三菱東京UFJ銀行三鷹口座宛てに8000万円を送金したことが認められる。

前提事実のとおり,上記送金がされた平成22年5月27日は,

金融庁による日本振興銀行に対する一部業務停止・改善命令がされた日である。なお,上記のとおり,同日朝には,新聞で,金融庁が日本振興銀行を行政処分する方針を固めたことや,日本振興銀行の金融庁の調査に対する非協力的な姿勢について検査忌避の疑いで刑事告発を検討していることが報道されている。
そして,①本件買取債権はその回収可能性に相当程度疑念を生じさせる状況にあったにもかかわらず,日本振興銀行による本件買取債権の調査は甚だ不十分であり,同債権を買い取ると決断するに当たっての安全性の確認も十分とはいえず,その信用力に依拠することを企図したSFCGの経営状態は極めて危険な状態にあることを十分認識していたにもかかわらず,日本振興銀行がSFCGから徴求した担保は甚だ不十分であったが,第1審被告Bはこうした状況の下にありながら,短期的な収益の確保ないし危殆状況下における投下資金の回収等のために本件各債権買取りの承認決議に賛同したこと,②東京地方裁判所は,平成21年2月24日,SFCGに対し再生手続開始決定をし,その後,SFCGが日本振興銀行に譲渡した商工ローン債権を信託銀行にも二重譲渡していた事実が明らかになったことなどから,同年3月24日,再生手続廃止決定をし,同年4月21日,破産手続開始決定をしたこと,③第1審被告Bは,同年3月頃,SFCGの再生手続の管財人から,日本振興銀行が買い取ったSFCGの貸付債権はSFCGから他社にも譲渡されており,五百数十億円の債権について日本振興銀行は他社に劣後している旨の情報提供を受け,Kに対し,日本振興銀行が債務超過になるとして,この件は第三者に絶対他言しないよう口止めしたこ
と,④日本振興銀行は,平成21年6月から平成22年3月まで金融庁の立入検査を受け,同月2日,立入検査を担当していた金融庁の検査官から,日本振興銀行が平成21年3月末時点において561億1200万円の債務超過に陥っており,単体での自己資本率がマイナス16.78%である旨の記載のある確認表の交付を受けたこと,⑤金融庁は,上記立入検査の結果,法令等遵守態勢や顧客保護等管理態勢,大口融資や債権買取業務に関する信用リスク管理態勢及び資産査定管理態勢等の経営管理態勢の不備,検査対象の電子メールを削除したという検査忌避,出資法違反の疑い等を認め,平成22年4月27日,日本振興銀行に対し,検査結果を通知するとともに,同年3月31日時点の財産状況や各種法令違反に対する認識等,業務及び財産の状況に関する報告を求めたこと,⑥第1審被告Bは,同年5月10日,日本振興銀行の取締役会長兼代表執行役を辞任したこと,⑦日本振興銀行は,同年5月27日,金融庁から,同年6月7日から同年9月3日まで1億円超の新規融資や債権買取り,融資・預金の勧誘等といった業務の停止を命じられるとともに,受検態勢や法令等遵守態勢等の抜本的再構築の実施を求める改善計画の提出等を求める一部業務停止・改善命令を受けたことは前記認定のとおりであり,これらの事実によれば,第1審被告B
は,自己名義の三菱東京UFJ銀行日本橋口座から第1審被告C名義の三菱東京UFJ銀行三鷹口座宛てに8000万円を送金した
際,自らに対する刑事・民事の責任追及の可能性ないし蓋然性が高いことを察知していたと認めるのが相当である。

本件合意書1については,次のとおり不自然な点がある。
すなわち,本件合意書1は第1審被告Bと第1審被告Cが離婚す
ることや第1審被告Bが第1審被告Cに対し離婚の慰謝料,財産分与及び養育費として8000万円を支払うことなどを内容とするものであるが,8000万円もの支払を約するものであるにもかかわらず,慰謝料,財産分与及び養育費の内訳が記載されておらず,その支払期限も記載されておらず(丙A1),それらについて第1審被告Cが確認をしたことをうかがわせる証拠もない。
また,第1審被告Cは,原審の本人尋問において,平成22年5
月24日に本件合意書1及び離婚届を作成したと供述するが,前記4の認定事実によれば,協議離婚の話が出てきた経緯が唐突であ
り,離婚届作成時に第1審被告Bと第1審被告Cとの婚姻関係が破綻していたことを認めるに足りる的確な証拠はないし,破綻原因が何かについても明確な立証もない。
さらに,8000万円は,同月27日に第1審被告B名義の三菱
東京UFJ銀行日本橋口座から第1審被告C名義の三菱東京UFJ銀行三鷹口座宛てに7500万円及び500万円に分けて振込送金されたものである(甲ロ26,58)ところ,同日の時点で第1審被告B名義の三菱東京UFJ銀行日本橋口座には約8140万円の残高があったのである(甲ロ58)から,その時点で第1審被告Bが本件合意書1に基づき8000万円の支払義務を負っていたのであればそれを1度に送金するのが自然であるが,第1審被告Bはそのようにはしていない。

証拠(甲ロ39,原審における第1審被告C本人)によれば,①
第1審被告Cは,DMDJAPANの取締役であったが,同社は第1審被告Bの個人的な事業を管理をする会社であり,第1審被告Cは,その経営には関与していなかったこと,②第1審被告Cは,DMDJAPANから毎月約35万円の振込送金を受けてこれを生活費に費消し,不足額は第1審被告Bから別途貰ったり,第1審被告Bのクレジットカード(家族カード)で支払っていたことが認められ,これらの事実によれば,DMDJAPANから第1審被告Cに支払われた上記金員は家族の生活費として支払われていたものと推認されるところ,証拠(甲ロ39)によれば,第1審被告Cと第1審被告Bが離婚した後も,DMDJAPANから第1審被告Cに対し平成22年6月25日に31万7700円,同年7月23日に28万7410円が,同年8月25日に28万7910円が,同年9月24日に28万7910円が,同年10月25日に23万7910円支払われていたことが認められ,離婚後も第1審被告Bが第1審被告C及び子らの生活費を負担していたことがうかがわれる(なお,第1審被告Cは,確かに第1審被告Bから第1審被告CへのDMDJAPANの役員報酬の支払は生活費の送金としての役割を果たしていたが,第1審被告Cが離婚前から受領していたのは,あくまでも同社の役員報酬であり,第1審被告Cが第1審被告Bと離婚したからといって同社が第1審被告Cの役員報酬の支払を逃れられる訳ではないから,離婚後も同社から役員報酬の支払があったことをもって第1審被告Bが第1審被告Cらの生活費を負担していたとはいえないと主張するが,第1審被告Cが同社の経営には関与していなかったこと,離婚前に同社からの第1審被告Cに支払われた金員は家族の生活費として支払われていたものであることは前記認定のとおりであるところ,第1審被告Bが離婚後も第1審被告Cを取締役から解任せず,第1審被告Cも取締役を辞任せずに,第1審被告Bが引き続き経営に関与していない第1審被告Cに役員報酬として金員を支払い続けたのであるから,第1審被告Bが離婚後も第1審被告C及び子らの生活費を負担していたことがうかがわれるというべきである。)。

証拠(甲ロ41の1,42,59)によれば,第1審被告Cは,

第1審被告Bが勾留されていた平成22年11月10日にL弁護士預かり金口座から第1審被告C名義の三菱東京UFJ銀行三鷹口座に1億2000万円が振り込まれると,その後間もない同月25日に株式会社SBI証券(以下「SBI証券」という。)に口座を開設し(振込先金融機関は第1審被告C名義の三菱東京UFJ銀行三鷹口座),第1審被告Bが同年12月8日に保釈された直後の同月13日から第1審原告が第1審被告Cの預金の仮差押え(発令日・平成23年7月25日)をするまで株取引を行い,その取引の開始に当たっては,SBI証券に対し,年収は1000万円ないし2000万円,保有する金融資産は1億円以上であり,株式現物取引及び転換社債取引の経験が各10年,貯蓄型投資信託の経験が15年あると申告し,その取引においては,多数回にわたり多額の取引
(1日の入金額が1000万円となる日が何度もあった。)を行っていたことが認められる。第1審被告Cは,原審の本人尋問において,株取引及び投資信託取引の経験を問われて,結婚する前に「何かファンド,中国ファンドとか何か,国債とかそういうのを,ちょっと買った覚えがあります」と答えているとおり,株取引の経験が少なかったにもかかわらず,SBI証券に対し,あたかも株取引の経験が多いかのように申告し,実際にも,上記のとおり,多数回にわたり多額の取引を行っていたものであるから,これが第1審被告Cの判断による株取引であるとは考え難く,第1審被告Cが第1審被告Bの保釈直前にSBI証券に口座を開設し,第1審被告Bの保釈直後の平成22年12月13日以降上記口座を使用して株取引が開始されたことを併せて考慮すれば,第1審被告Cが上記口座を開設したのは第1審被告Bの指示に基づくものであり,実質的には,第1審被告Bが保釈直後から第1審被告C名義の三菱東京UFJ銀行三鷹口座が仮差押えされるまで,SBI証券に株取引の資金を入金し,巨額の株取引を行っていたものと推認される。
したがって,以上の事情を総合すれば,第1審被告Bは,平成22年5月27日,日本振興銀行の債権者等から民事責任を追及されることを覚悟し,債権者等から預金の仮差押えを受けること避けるため,当時残高が約8140万円あった第1審被告B名義の三菱東京UFJ銀行日本橋口座から第1審被告C名義の三菱東京UFJ銀行三鷹口座宛てに2回に分けて合計8000万円を移動させ,その
後,上記8000万円の移動の理由を説明するために急きょ第1審被告Cと示し合わせて本件合意書1を作成したものと推認される。よって,本件贈与契約1は通謀虚偽表示で無効であるから,第1審被告Bは,第1審被告Cに対し,8000万円の不当利得返還請求権を有している。
第1審被告Bが第1審被告Cに対し上記不当利得返還請求権を行使していないこと
弁論の全趣旨によれば,第1審被告Bは,第1審被告Cに対し,上記不当利得返還請求権を行使していないことが認められる。
第1審被告Bが無資力であること
前記説示のとおり,第1審被告Bは第1審原告に対し37億5693万4826円の損害賠償債務を負っているところ,現時点において第1審被告Bがめぼしい財産を所有していることをうかがわせる証拠はないから,第1審被告Bは無資力であることが認められる。
したがって,第1審原告は,第1審被告Cに対し,債権者代位権に基づき8000万円の不当利得返還請求をすることができる。
6
第1審被告Cに対する詐害行為取消権の成否について
次に,第1審被告Cに対する詐害行為取消権の成否について判断する。なお,第1審被告Bの第1審被告C名義の三菱東京UFJ銀行三鷹口座への8000万円の送金に関してされた本件贈与契約1が通謀虚偽表示で無効であることは上記説示のとおりであるが,本件では本件贈与契約2が詐害行為取消権の対象となるか否かを判断する必要があるので,本件贈与契約1についても,予備的判断として併せて判断することとする。以下では,第1審被告Bと第1審被告Cが本件合意書1を作成し,第1審被告Bと第1審被告Cが離婚すること,第1審被告Bは第1審被告Cに対し離婚に伴う慰謝料,財産分与及び養育費として8000万円を支払うことを合意したことを前提とすることとする。
本件各贈与契約の詐害行為性について

第1審被告Bから第1審被告Cへの財産移転
前提事実及び上記の前提によれば,第1審被告Bと第1審被告C
は平成22年5月24日付けで本件合意書1を作成し,第1審被告Bと第1審被告Cとは離婚すること,第1審被告Bは第1審被告Cに対し離婚に伴う慰謝料,財産分与及び養育費として8000万円を支払うことなどを合意したこと,第1審被告Bは同月27日第1審被告Cに対し8000万円を振込送金したこと,第1審被告Bと第1審被告Cは同年6月1日に協議離婚の届出をしたこと,第1審被告Bと第1審被告Cは同年11月9日付けで再度本件合意書2を作成し,第1審被告Bは第1審被告Cに対し離婚に伴う財産分与として1億2000万円を支払うことなどを合意したこと,第1審被告Bは同月10日第1審被告Cに対し1億2000万円を振込送金したことが認められるから,上記8000万円は離婚に伴う慰謝料,財産分与及び養育費の趣旨で,上記1億2000万円は離婚に伴う財産分与の趣旨で,第1審被告Bと第1審被告Cとの合意により支払われたものというべきである。

第1審被告Bの無資力
前記4の認定事実によれば,第1審被告Bは,

本件合意書1の作成日付である平成22年5月24日時点に
おいて,①シンガポール銀行口座にもともと預金されていた前記4
(1億2533万7984円,300万円の定期預金が存在し
ていれば1億2833万7984円である。),③株式会社西武ホールディングスの株式(評価額410万円程度),④マンション(固定資産税評価額600万円程度)を有していたこと


本件合意書2の作成日付である同年11月9日時点において,
①シンガポール銀行口座からL弁護士預り金口座に入金された2億8600万5670円(なお,この時点でシンガポール銀
行口座は存在しない。),②銀行預金(635万5688円,300万円の定期預金が存在していれば935万5688円),
③株式会社西武ホールディングスの株式(評価額410万円程度),④マンション(固定資産税評価額600万円程度)を有していたこと
がそれぞれ認められる。なお,第1審被告Bが他に見るべき資産
を有していることをうかがわせる証拠はない
他方,前記4の認定事実によれば,第1審被告Bは,上記マン
ションに設定された抵当権の被担保債務を負っていたが,当該抵
当権の設定日が同年2月26日であることからすると,被担保債
務2120万円のうちの相当部分が残存していたものと認められ
る。
また,第1審被告Bが37億5693万4826円の債務を負
うことは,第1事件において認定・説示したとおりである。
したがって,本件各贈与契約及び同各契約に基づく財産移転行
為により,第1審被告Bの一般財産が更に減少し,結果として第
1審原告がより一層完全な弁済を受けられなくなるというべきで
あるから,第1審被告Bは,本件各贈与契約締結時,無資力であ
ったと認められる(なお,第1審被告Bが現時点において無資力
であることは前記5⑷に説示したとおりであり,本件各贈与契約締結時の後に資力が回復したこともなかった。)。

本件各贈与契約の詐害行為性
ところで,離婚に伴う財産分与が詐害行為取消権行使の対象と
なるか否かについて検討するに,離婚に伴う財産分与は,民法7
68条3項の規定の趣旨に反して不相当に過大であり,財産分与
に仮託してされた財産処分であると認めるに足りるような特段の
事情がない限り,詐害行為とはならないと解するのが相当であり
(最高裁判所昭和57年(オ)第798号同58年12月19日
第二小法廷判決・民集37巻10号1532頁),仮に上記要件
が認められると判断された場合でも,詐害行為取消権の行使の対
象となるのは,不相当に過大な部分であり,かつ,その限度に限
られると解するのが相当である(最高裁判所平成10年(オ)第
560号同12年3月9日第一小法廷判決・民集54巻3号10
13頁。以下「平成12年最高裁判決」という。)。
また,離婚に伴う慰謝料として配偶者の一方が負担すべき損害
賠償債務の額を超えた金額を支払う旨の合意は,上記損害賠償債
務の額を超えた部分について,詐害行為取消権行使の対象となる
と解するのが相当である(平成12年最高裁判決)。
そこで,以下,これらの判断枠組みにより検討する。
本件贈与契約1について

共同財産の清算的要素
第1審被告Bが本件合意書1の作成日付である平成22年
5月24日時点

aの

とおりであるところ,これ(ただし,株式会社みずほ銀行丸
之内支店の普通預金4636万6368円のうち4500万
円は同月27日に出金されており,本件合意書1の作成頃に
出金が予定されていたと解されるから,これを除いた部分)
は夫婦共同財産の清算をするに当たって考慮すべき第1審被
告Bの積極財産に当たるというべきである。
他方,第1審被告Bが上記時点において前記マンションに
設定された抵当権の被担保債務である2120万円のうちの
相当部分
あり,これは夫婦共同財産の清算をするに当たって考慮すべ
き第1審被告Bの消極財産に当たるというべきである。
さらに,前記4の認定事実によれば,第1審被告Bが上記
時点において有していた積極財産のうちシンガポール銀行口
座及び三菱東京UFJ銀行日本橋口座については,その全部
又はほとんどが,日本振興銀行株式を売却した譲渡代金が資
金移動されたものであると認められるが,第1審被告Bが日
本振興銀行株式を取得するに当たり,第1審被告Dその他の
親族からその購入資金の一部の提供を受けており,また,第
1審被告Cに一部の寄与があったことは否定できないが,日
本振興銀行株式は,基本的には第1審被告Bが日本振興銀行
の経営に携わる過程において,その能力と才覚に依拠して取
得し,その価値を高めたものであり,夫婦の共同財産を清算
するという趣旨からすれば,同株式ないしその譲渡代金を夫
婦の積極的な共同財産に含める以上,第1審被告Bが同じく
同行の取締役としての職務を遂行する過程で上記の積極的な
共同財産の取得・形成と密接に関連して負った第1審被告B
の本件損害賠償債務についても夫婦の消極的な共同財産に含
まれると解するのが相当であって,前者を夫婦の積極的な共
同財産に含めながら,後者を夫婦の消極的な共同財産に含め
ないことは権衡を欠くといわざるを得ない。
そして,第1審被告Bが37億5693万4826円の債
務を負うことは,第1事件において認定・説示したとおりで
あるから,これと,上記

の第1審被告Bの積極財産及び消

極財産とを合算すると,第1審被告Bと第1審被告Cが清算
すべき共同財産はマイナスということになる(なお,念のた
め述べると共同財産の清算に当たり,仮に日本振興銀行株式
ないしその譲渡代金に由来する財産を第1審被告Bの積極財
産に含めず,37億5693万4826円の債務を第1審被
告Bの消極財産に含めないとしても,第1審被告Bの積極財
産は,株式会社みずほ銀行丸之内支店の預金4636万63
68円のうちの136万6368円,株式会社西武ホールデ
ィングスの株式5000株(評価額410万円程度)及び前
記マンション(固定資産税評価額600万円程度)にすぎず,
これと前記マンションに設定された抵当権の被担保債務を合
算すると,第1審被告Bと第1審被告Cが清算すべき共同財
産はマイナスということになる。)。
こうした事情に加え,前記のとおり,協議離婚の話が出て
きた経緯が唐突であり,離婚届作成時に第1審被告Bと第1
審被告Cとの婚姻関係が破綻していたことを認めるに足りる
的確な証拠はないし,破綻原因が何かについても明確な立証
はないことをも勘案すると,第1審被告Bが本件贈与契約1
に基づき第1審被告Cに資金移動した8000万円は,共同
財産の清算としての財産分与としては不相当に過大であり,
財産分与に仮託してされた財産処分であると認めるに足りる
特段の事情があるというべきである。

離婚による損害賠償(慰謝料)の要素
本件贈与契約1に基づく8000万円の支払が慰謝料の趣旨
を含むものであることは上記のとおりであるが,協議離婚の届
出時,第1審被告Bと第1審被告Cとの婚姻関係が破綻してい
たことを認めるに足りる的確な証拠はなく,破綻原因が何かに
ついても明確な立証がないことも上記のとおりであり,第1審
被告Bが第1審被告Cに対し,損害賠償(慰謝料)債務を負担
していると断ずることはできないから,本件贈与契約1のうち
慰謝料を支払う旨の合意部分は,不相当に過大であり,財産分
与に仮託してされた財産処分であると認めるに足りる特段の事
情があるというべきである。

養育費の要素
本件贈与契約1に基づく8000万円の支払が養育費の趣旨
を含むものであることは上記のとおりであるが,養育費はその
性質上定期的に支払われるべきものであり,第1審被告Bが支
払時期が到来していない養育費をまとめて支払ったことは,そ
の期限の利益を放棄したものにほかならないところ,期限は原
則として債務者の利益のために定められており,その放棄は債
務者の義務の履行ではないから,期限の利益の放棄は代物弁済
や担保の提供等と同じ性質の行為として詐害行為となると解す
るのが相当である。したがって,第1審被告Bの上記行為は,
詐害行為取消権行使の対象になるというべきである。


よって,本件贈与契約1は,その全部が詐害行為取消権行使
の対象になるというべきである。
本件贈与契約2について

第1審被告Bが本件合意書2の作成日付である平成22年11
月9日時点において
あるところ,これは夫婦共同財産の清算をするに当たって考慮す
べき第1審被告Bの積極財産に当たるというべきである。他方,
上記時点で前記マンションに設定された抵当権の被担保債務21
20万円のうちの相当部分が残存しているものと認められること
や,第1審被告Bが37億5693万4826円の損害賠償債務
を抱えており,これらは夫婦共同財産の清算をするに当たって考
慮すべき第1審被告Bの消極財産に当たるというべきであること
は,本件贈与契約1の場合と同様である。したがって,上記時点
でみても,第1審被告Bと第1審被告Cが清算すべき共同財産は
マイナスである(なお,仮に日本振興銀行株式ないしその譲渡代
金に由来するL弁護士預り金口座の2億8600万5670円を
第1審被告Bの積極財産に含めず,37億5693万4826円
の債務を第1審被告Bの消極財産に含めないとしても,第1審被
告Bと第1審被告Cが清算すべき共同財産はマイナスである。)。この点を措くとしても,前提事実及び前記4の認定事実によれ
ば,本件贈与契約1においては清算条項を置いていること,前記
4
Bの身柄拘束中にさ

れたものであり,特に同③の送金はシンガポール銀行口座を閉じることに伴ってされたものであることが認められるから,本件贈
与契約2は,シンガポール銀行口座に預金していた資金を国内に
移転し,保釈保証金として裁判所に納付した後の残額を分配・送
金する過程でされたものというべきであって,第1審被告Bと第
1審被告Cとの間に真に共同財産を清算する意図があったといえ
るかも疑問である。
したがって,本件贈与契約2は,それが不相当に過大であるこ
とはもちろん,財産分与に仮託してされた財産処分であるという
べきであって,詐害行為取消権行使の対象になる。
第1審被告Bの詐害の意思について

前記5⑴イの①ないし⑦の事実によれば,第1審被告Bは,自らに対する民事責任追及の可能性ないし蓋然性が高いことを察知し,それを免れ資産を隠匿する目的で本件贈与契約1(及び同契約に基づく資金移転行為)を行ったと認めるのが相当であるから,第1審被告Bには詐害の意思があったというべきである。

また,上記アの事情に加え,本件贈与契約2及び同契約に基づく
1億2000万円の資金移動は,シンガポール銀行口座を閉じることに伴ってL弁護士預り金口座宛てに振込送金された資金を原資としてされたこと,証拠(丙A2,原審における第1審被告B本人)によれば,本件合意書2は第1審被告Bが身柄拘束中に取り交わされたものであることが認められることを考慮すれば,第1審被告Bには本件贈与契約2(及び同契約に基づく資金移転行為)の当時,詐害の意思があったと認めるのが相当である。



第1審被告Cの善意について

第1審被告Cは,第1審被告Bの逮捕報道以前に,テレビで第1
審被告Bや日本振興銀行に関する報道を見たことはなく,本件贈与契約1当時,第1審被告Bが銀行経営に関して個人的に損害賠償責任を負うことを知りようがなかったなどとして,本件贈与契約1の当時善意であった旨主張し,第1審被告Cの供述等(原審における第1審被告C本人,丙A3)中にはこれに沿うかのごとき供述等がある。
しかしながら,証拠(丙A3)によれば,第1審被告Cは,第1
審被告Bと婚姻する前,教職に就いていた経歴があることが認められる上,前提事実,前記4の認定事実及び証拠(甲ロ40の1)によれば,第1審被告Bは,平成22年5月10日,日本振興銀行の取締役会長兼代表執行役を辞任したこと,日本振興銀行は,同月17日,平成21年度(平成22年3月期)決算において51億円の赤字に転落したことを発表したが,同年5月18日の新聞紙上では,第1審被告Bの辞任が同行の赤字転落の責任を明確化するためであるという報道がされたことが認められ,上記のとおり,離婚届作成時に第1審被告Bと第1審被告Cとの婚姻関係が破綻していたことを認めるに足りる的確な証拠はなく,破綻原因が何かについても明確な立証はないから,これらの事情を総合すると,第1審被告Bの銀行経営に関する損害賠償責任について全く知りようがなかったなどとする第1審被告Cの上記供述等を直ちに信用するには躊躇を覚えざるを得ず,他に第1審被告Cの善意を認めるに足りる証拠はない。

上記の事情に加え,証拠(丙A3,原審における第1審被告C本
人)によれば,本件贈与契約2は第1審被告Bの逮捕・起訴後にされたものであり,第1審被告Cは第1審被告Bと顔を合わせることなく本件合意書2を作成したことが認められるから,第1審被告Cが,第1審被告Bの法的責任や今後の責任追及の見込み等について何も知らなかったというのは,不自然というほかはない。したがって,第1審被告Cが,本件贈与契約2の当時善意であったと認めることもできない。



したがって,本件各贈与契約は,いずれもその全部が詐害行為取消権行使の対象となるというべきである。」



原判決102頁19行目の「証拠」から23行目の「認められ,」まで
を「証拠(甲ロ34)によれば,第1審被告Dは,平成18年6月1日から平成23年2月1日までの間,第1審被告Bが取締役として実質的に経営していたDMDJAPANにおいて監査役であったことが認められる。また,証拠(丙B6)及び弁論の全趣旨によれば,第1審被告Dは,同じ金融機関である株式会社北陸銀行に勤務している上,7500万円を支払って日本振興銀行株式を取得した同行の株主であったことが認められるから,第1審被告Dは,同じ金融機関に勤務する者として,また,株主として,同行の状況に強い関心を抱いていたことが推認される。そして,」と改める。
2
当審における第1審被告らの主張(前記第2の4の第1審被告Cの主張及び前記第2の5の第1審被告Dの主張を除く。)に対する判断
⑴ア

第1審被告らは,前記第2の3⑴のとおり主張する。しかしながら,①銀行の取締役に対しても,一般の株式会社の取締役と同様,いわゆる経営判断の原則が適用される余地はあるが,銀行業が広く預金者から資金を集め,これを原資として企業等に融資することを本質とする免許事業であること,銀行の取締役は金融取引の専門家であり,その知識経験を活用して融資業務を行うことが期待されていること,万一,銀行経営が破綻し,あるいは危機に瀕した場合には,預金者及び融資先を始めとして社会一般に広範かつ深刻な混乱を生じさせることなどを考慮すると,融資業務に際して要求される銀行の取締役の注意義務の程度は,一般の株式会社の取締役の場合に比べ,相当程度高い水準のものであると解するのが相当であり,銀行の取締役にいわゆる経営判断の原則が適用されると解されるとしても,その余地はその分だけ限定的なものにとどまるものというべきであること,②(ⅰ)日本振興銀行による本件各債権買取契約の買取代金の支払が,預金とは区別された金銭によりされたものであるとはいえないこと,(ⅱ)日本振興銀行の預金残高は,平成20年3月31日時点で約1274億円,平成21年3月31日時点では約4022億円であったところ,本件各債権買取りの買取金額は合計約460億円に上り,アレンジメント・フィーや債権再譲渡代金等を控除した純増額も176億5790万6161円であったこと,(ⅲ)日本振興銀行は,本件各債権買取契約により,本件買取債権の債務者から債権の回収を図り,場合によってはSFCGからも保証債務の履行の形で回収を図ることになることが認められ,これらの事情によれば,本件各債権買取りは,直接的には融資業務に当たらないとしても,広く預金者から集めた資金を投じた上で,本件買取債権の債務者又はSFCGからその回収を図る必要があるものであるから,第1審被告Bが本件各債権買取りの可否・当否を決定するに当たっては,一般の株式会社の取締役の場合に比べ相当程度高い水準の注意義務が課せられていたと解するのが相当であること,③第1審被告Bはノンバンクの顧客を日本振興銀行の顧客として取り込むことを狙っていたことがうかがわれ,そのこと自体は経営判断の一つであるというべきであるが,他方,銀行の取締役の注意義務の程度は相当程度高い水準のものであると解され,経営判断の原則が適用される余地はその分だけ限定的なものにとどまることも上記のとおりであるから,本件各債権買取りの背景に顧客基盤の拡充という日本振興銀行の経営戦略があったとしても,そのことから直ちに,取締役に広汎な裁量が認められたり,求められる注意義務の程度が軽減されたりするものとは解されないこと,④したがって,第1審被告Bに善管注意義務違反が認められるか否かは,(ⅰ)本件買取債権自体(本件買取債権の債務者の経営状況や資産状態等)を調査するとともに,その信用力に依拠するSFCGの経営状況等をも調査し,その安全性を確認して本件各債権買取りを決定したか否か,(ⅱ)確実な担保を徴求するなど,相当の措置が講じられたか否かを踏まえ,銀行の取締役として求められる水準に照らし,第1審被告Bが本件取締役会決議において本件各債権買取りを承認したことが合理性を有するものであったか否かにより判断すべきであること,⑤そのような観点から第1審被告Bに日本振興銀行の取締役としての善管注意義務違反があったか否かについて検討すると,本件買取債権はその回収可能性に相当程度疑念を生じさせる状況にあったにもかかわらず,日本振興銀行のしたデューデリジェンスは名ばかりで,本件買取債権の調査は甚だ不十分であり,同債権を買い取ると決断するに当たっての安全性の確認も十分とはいえないこと,その信用力に依拠することを企図したSFCGの経営状態は極めて危険な状態にあり,第1審被告Bはそのことを十分認識していたこと,それにもかかわらず,日本振興銀行がSFCGから徴求した担保は甚だ不十分であるというほかなく,日本振興銀行が相当な措置を講じていたということは到底できないこと,第1審被告Bはこうした状況の下にありながら,短期的な収益の確保ないし危殆状況下における投下資金の回収等のために本件各債権買取りの承認決議に賛同したというべきであることが認められるから,第1審被告Bには日本振興銀行の取締役としての善管注意義務違反があったというべきであることは,原判決が説示するとおりである。

ところで,この点に関し,第1審被告らは様々な主張をするが,次のと
おり,いずれも採用することはできない。
第1審被告らは,平成21年最高裁決定は明示的に「融資業務に際して」と判示しているところ,本件各債権買取りは融資業務に当たらないから,本件を融資業務と同視して注意義務の程度を一般の株式会社の取締役の場合に比べ高い水準のものとし,経営判断原則の余地を限定することは相当でないと主張するが,本件各債権買取りについても,その原資が広く預金者から集めた資金であること,本件買取債権の債務者又はSFCGからその債権を確実に回収する必要があること,銀行経営が破綻しあるいは危機に瀕した場合に預金者及び融資先を始めとして社会一般に広範かつ深刻な混乱を生じさせることは融資の場合と同様であり,第1審被告Bが本件各債権買取りの可否・当否を決定するに当たっては融資業務に際して要求されるのと同様の注意義務が要求されるというべきであるから,第1審被告らの上記主張は採用することができない。第1審被告らは,本件各債権買取りの過半に当たる再譲渡部分は,従前の債権買取りにおける買取債権を相対的に問題のないものに入れ替えるために行われたものであり,この再譲渡は買取債権全体の質を高める方向に働くから,本件各債権買取りの判断の合理性を支える事情であると主張する。
しかしながら,日本振興銀行がSFCGとの間で,買取りの対象となった貸付債権について,債務者がその後に支払を延滞した場合はSFCGとの間で当該債権を額面金額で再びSFCGに対して譲渡する再譲渡契約を締結し,買取りの対象となった貸付債権の債務者が取引履歴の開示を請求したり,弁護士が介入したり,過払金返還請求訴訟が提起されたりした場合はSFCGとの間で当該債権に係る債権買取契約を一部解除し,SFCGが日本振興銀行に対し債権額面金額からアレンジメント・フィー及び当該債権につき支払われた弁済金を控除した残額を返還する旨合意し,日本振興銀行が,その枠組みに従って,平成21年2月までの間,SFCGとの間で債権再譲渡契約や債権買取一部解除合意を行ったことは,原判決が認定するとおりであり,本件各債権買取りの際に同時に既存の買取債権の再譲渡等がされているものの,それは,本件各債権買取りがされる以前に締結された債権買取契約に基づくものであって,本件各債権買取りの承認の結果としてされたものではなく,別個の原因によって行われたものである。また,債権買取りに際して行われたというデューデリジェンスは名ばかりのものであって,買取債権の調査が甚だ不十分であったことは原判決が説示するとおりであるから,新債権が旧債権と質的に同じか,それ以上に良質なものであったということもできない。したがって,第1審被告らの上記主張は採用することができない。
第1審被告らは,日本振興銀行は,SFCGの平成20年7月期有価証券報告書記載の貸倒引当金が営業貸付金総額の約5.9%であったことを前提として,保守的に貸倒率を1割以下と見積もってSFCGの保証残高総額の約1割を超える物的担保を徴求し,担保株式の価格が下落した際には追加担保を徴求していたから,買取債権の担保として十分であったと主張するが,SFCGの営業貸付金総額に対する貸倒引当金の割合が適切なものであったことを認めるに足りる的確な証拠はなく,かえってSFCGにいたH財務部長の陳述書(甲イ59)中には,有価証券報告書中の営業貸付金総額に対する貸倒引当金の割合が正しい数字かどうか分からない,もっと多くの延滞が生じていたと思うが,そもそもSFCGの有する債権の実態や残高など,誰に聞いても正確なところは分からないなどとの陳述記載があり,また,日本振興銀行にいたI執行役がノンバンク勤務当時の感覚では融資後半年位の間に顧客の2割ないし4割程度が不渡りを出して倒産しており,そのことを第1審被告Bに報告していたことが認められるから,日本振興銀行において貸倒れリスクを回避する措置が十分採られていたということが到底できないことは原判決が説示するとおりである。
なお,第1審被告らは,有価証券報告書は公認会計士又は監査法人の監査証明を得た上で内閣総理大臣に提出される書類であり,そこに記載された数字は正確であることが強く期待されると主張するが,I執行役は上記のとおり第1審被告Bに報告していたのであって,SFCGの有価証券報告書記載の貸倒率の正確性に疑問を抱かせる状況にあったのであるから,第1審被告らの上記主張は採用することができない。
また,第1審被告らは,金融庁の「貸金業制度等に関する懇談会」において配布された資料(乙A8の2)において,昭和54年から平成18年までの期間において消費者金融大手5社の合計貸倒率が10%を超えたことはないとの統計が示されているから,貸倒率を1割以下と見積もることの合理性が裏付けられると主張するが,上記資料は,本件の商工ローンとは異なる消費者ローンに関するものであり,しかも,統計の時期も過払金返還請求訴訟が本格化する前の平成18年までに限られたものであるから,上記資料により貸倒率を1割以下と見積もることの合理性が裏付けられるということはできず,第1審被告らの上記主張は採用することができない。
第1審被告らは,SFCGと日本振興銀行の保証契約に基づいてSFCGが負担する一切の債務につきSMEGが保証する旨の保証委託契約を締結したのは本件各債権買取り後の平成21年1月26日であるが,第1審被告Bは,平成20年10月頃から,SFCGが日本振興銀行に対する保証債務を履行できなくなった場合に備えて,SFCGの保証債務とSFCGのSMEGに対する貸付債権とを相殺することができるようSFCGとSMEGとの保証委託契約を締結するよう指示していたものであり,実際にSMEGのSFCGに対する貸金債務を返済することなくSFCGの日本振興銀行に対する保証債務と相殺することができたことからすれば,SFCGのSMEGに対する上記貸付が買取債権の保全としての機能を有していたことは明らかであると主張するが,本件各債権買取り当時,SFCGのSMEGに対する貸金債権と日本振興銀行のSFCGに対する債権を相殺することができる法律関係が成立していたことを認めるに足りる的確な証拠はなく,上記貸付けが事実上の担保としての機能を有していたということができないことは原判決が説示するとおりであり,そのことは,仮に第1審被告Bが平成20年10月頃からSFCGとSMEGとの保証委託契約を締結するよう指示していたとしても同様であるから,第1審被告らの上記主張は採用することができない。
第1審被告らは,日本振興銀行がSFCGに債権を再譲渡したが,日本振興銀行がSFCGから債権を買い取ることができない(したがって,SFCGが相殺に供すべき代金債権が存在しないことになる。)とか,日本振興銀行がSFCGから債権譲渡代金の弁済を現実に受けることのできる見込みがない場合にはSFCGの信用力が問題となるが,債権の再譲渡は日本振興銀行の権利であって義務ではなく,日本振興銀行において,債権の再譲渡をせず,債権を保有し続ければよいのであるから,本件各債権買取りはSFCGの信用力に依拠したものではなく,SFCGの信用力の有無やそれについての第1審被告Bの認識は本件各債権買取りの合理性を減殺するものではないと主張する。
しかしながら,日本振興銀行としては,本件買取債権の債務者から返済を受けることを基本としつつも,SFCGが当該債務を連帯保証するとともに,本件買取債権のうち債務者が支払を延滞するなどした債権については,SFCGが当該債権を額面金額で買い戻す義務を負うなどとすることにより,当該債権の買取代金の返還を受けることが担保された仕組みであったからこそ,商工ローン債権を全て(その弁済可能性に関わりなく)額面金額で買い取り,受領する利息も一律年4%とすることに合意したものであり,本件各債権買取契約は,基本的にはSFCGの有する貸付債権の売買契約(債権譲渡)の性質を有するものの,他方で,SFCGの信用力にも依拠し,これにより補完された取引であったと解するのが相当であることは,原判決が説示するとおりであるから,第1審被告らの上記主張は採用することができない。
第1審被告らは,原判決は,本件残存債権のうち利息制限法所定の制限利率に基づき引き直し計算をした減額部分は,そもそも日本振興銀行において法的に回収を図ることができなかったものであるとし,法的に請求し得るかどうかの観点のみからその合理性を判断しているようであるが,日本振興銀行からの資金調達を望む第三債務者が日本振興銀行に対して利息制限法に基づく引き直し計算を主張する可能性は高くなく,仮にそのような主張がされることがあったとしても,一括して買い取った債権全体において収益が出ている限り,本件債権買取り全体の合理性が否定されることにはならないし,収益が出る見込みもあったから,本件買取債権の中に利息制限法の制限を超える金利のものが含まれていたとしても,そのことは本件各債権買取りの合理性を減殺するものではないと主張する。
しかしながら,その当時は商工ローン業者及び消費者金融業者に対する過払金返還請求訴訟が増加する傾向にあったこと(顕著な事実),平成20年4月頃に日本振興銀行によるノンバンクからの債権買取りに関する報道等においても過払金返還請求に関する指摘がされていたこと(甲イ79,80),日本振興銀行の取締役会においても過払金返還請求が行われることを心配する発言が出ていたこと(甲イ78),実際,過払金返還請求に対応するため,債権買取契約において弁護士介入等があった場合に譲渡契約を解除する旨の約定がされていたことからすると,第三債務者が日本振興銀行に対して利息制限法に基づく引き直し計算を主張する可能性が高くないとはいえない。また,本件各債権買取りにおいて,買い取った債権全体において収益が出る見込みがあったことを認めるに足りる的確な証拠もない。したがって,第1審被告らの上記主張は採用することができない。


第1審被告らは,前記第2の3⑵のとおり原判決の損害の判断が不当であ
ると主張するので,検討する。

第1審被告らは,債権買取契約の解除を行うのは,同時に債権買取りを
行って,保有する債権をより良い債権と入れ替えることができることが前提であったから,SFCGが破綻したことによって,新たな債権の買取りも,債権買取契約の解除に基づく代金返還請求権の回収もできないような場合に債権買取契約を解除して,譲受債権及びこれに付された物的担保を手放すことは全く不合理なことであり,そのような場合にまで「本件買取契約の一部解除をすることが予定されていた」ということはできないところ,本件各債権買取りに係る買取債権についての債権買取契約の解除は第1審被告Bが行ったものではないし,第1審被告Bが企図した結果でもないから,SFCGが破綻して本件譲渡解除債権に係る買取代金返還請求権の回収ができなかったことによる損害は,第1審被告Bによる本件各債権買取りの承認とは因果関係がないと主張する。
しかしながら,SFCGは平成21年2月24日に民事再生手続開始決定を受けたものであるところ,証拠(甲イ64,227の1及び2)によれば,①同年3月2日に第1審被告B出席の下で開催された日本振興銀行の取締役会の配付資料には,SFCGからの譲受債権に関して,「⑴債権譲渡契約を解除(再譲渡)して,不当利得返還請求権=共益債権(再生債権)として権利行使する。(配当率は,せいぜい2~3%,高くても10%は超えない)」及び「⑵過払債権をそのまま行使する。」の選択肢を示した上,「上記⑴⑵のどちらが高いかを経営判断する。経済効果が高い方の手段をとるべき。」と記載されていること,②その後,日本振興銀行は同年3月17日から同年6月18日にかけて順次債権買取契約の一部解除を行ったことが認められるのであって,その担当者が,日本振興銀行の株式の相当部分を保有し,同行の取締役会長兼代表執行役を務めていた第1審被告Bの了解を得ずに上記契約解除を行ったとは到底考えられず,上記担当者は,第1審被告Bの指示又は承諾の下で上記契約解除を行ったものと推認される。また,上記取締役会の資料に上記記載がある中で日本振興銀行が契約解除に踏み切ったということは,これを指示又は承諾した者(第1審被告Bを含む。)は,契約解除による不当利得返還請求権を再生債権(後に破産債権)として行使した方が経済効果が高いと判断したものと推認される。
したがって,第1審被告らの上記主張は,その前提を欠いており採用することができない。

また,第1審被告らは,債権の買取りは債権の入替えのためのものであ
ることを前提に前記第2の3⑵イないしエのとおり主張するが,前記のとおり,本件各債権買取りの際に行われた既存の買取債権の再譲渡等は本件各債権買取りがされる以前に締結された債権買取契約に基づくものであって,本件各債権買取りの承認の結果としてされたものではなく,別個の原因によって行われたものであるから,第1審被告らの上記各主張は,いずれもその前提を欠いており採用することができない。
3
当審における第1審被告Cの主張に対する判断


第1審被告Cは,前記第2の4⑴のとおり主張するので,検討する。ア
第1審被告Cは,第1審被告Bが日本振興銀行株式の売却代金が入金さ
れた三菱東京UFJ銀行日本橋口座から金員が振込送金される前のシンガポール銀行口座の預金に関して受領した利子からすると,平成20年末の時点で元金が2億6666万円あったことになり,その後第1審被告Bがシンガポール銀行口座に合計6億円を送金したから,平成22年5月下旬頃及び同年6月頃の時点では,シンガポール銀行口座の預金残高は8億6666万円であったと主張する。
しかしながら,第1審被告Bが,シンガポール銀行口座から,①同月9日に第1審被告D名義の株式会社北陸銀行本店営業部の銀行口座宛てに1億6250万円を振込送金し,②同年8月20日にL弁護士預り金口座宛てに9994万8500円を振込送金し,③シンガポール銀行口座を閉じることに伴い,同年11月4日に同口座の残高であった1億8605万7170円をL弁護士預り金口座宛てに振込送金したことは前記1⑹のとおり原判決を訂正して認定したとおりであるところ,③の振込送金はシンガポール銀行口座を閉じることに伴い行ったものであり,これにより上記口座の残高はなくなったものと認められるから,同年5月下旬頃以降上記口座から合計4億4850万5670円が出金されて最終的に残高がなくなったものであり,それ以外に上記口座から出金があったことをうかがわせる証拠はないから,同月下旬頃の上記口座の残高は合計4億4850万5670円であったと認めるのが相当である。
したがって,第1審被告Cの上記主張は採用することができない。イ
第1審被告Cは,第1審被告B名義の三菱東京UFJ銀行日本橋口座の
預金は,日本振興銀行株式の売却代金が入金される前の平成18年1月から平成21年10月20日までの間に3200万円も残高が増加したから,株式会社三菱東京UFJ銀行の平成23年8月3日時点の陳述書(甲ロ35の2)に基づき離婚時の三菱東京UFJ銀行日本橋口座の残高を115万円余とした原判決の認定は誤りであると主張するが,第1審被告B名義の三菱東京UFJ銀行日本橋口座の残高を見ると,平成21年10月27日にDMDJAPANから6億4747万5000円が振込入金される直前の残高は60万6085円にすぎないし(甲ロ58),第1審被告Bが平成22年5月27日に第1審被告C名義の三菱東京UFJ銀行三鷹口座宛てに合計8000万円を送金した後の残高が140万0904円であったことは前記1⑹のとおり原判決を訂正して認定したとおりであるから,第1審被告Cの上記主張は採用することができない(なお,本判決においては,前記1⑹のとおり本件合意書1及び本件合意書2の作成日付の時点での残高を認定した。)。

第1審被告Cは,楽天証券に対する預託金は,平成22年5月下旬頃及
び同年6月頃の時点では存在せず,その後にシンガポール銀行口座の預金を原資として楽天証券に預託されたものであるから,これを離婚時の第1審被告Bの資産に計上した原判決の認定は誤りであると主張するところ,このことは当事者間に争いがないから,前記1⑹のとおり原判決の認定を訂正したところである。

第1審被告Cは,第1審被告Bは離婚時に少なくとも7000株の日本
振興銀行株式を保有しており,その価値は7億円を下らなかったから,これを離婚時の第1審被告Bの資産に計上しなかった原判決の認定は誤りであると主張し,離婚時の日本振興銀行株式の評価については第1審被告Dの主張を援用しているところ,離婚時の日本振興銀行株式の価値はほとんどゼロであったと認定するのが相当であることは原判決が説示するとおりである(なお,第1審被告Dの主張を踏まえた判断については,後記4⑴で述べるとおりである。)から,第1審被告Cの上記主張は採用することができない。

第1審被告Cは,第1審被告Bは離婚時にメディア・コンセプトに2億
9000万円の貸付債権を有しており,それは額面どおりの資産価値を有していたから,これを離婚時の第1審被告Bの資産に計上しなかった原判決の認定は誤りであると主張する。
しかしながら,証拠(甲ロ61)によれば,①日本振興銀行はメディア・コンセプトに対し,平成21年8月14日に貸し付けた3億円(以下「本件貸付1」という。),同年9月14日に貸し付けた3億円(以下「本件貸付2」という。)の貸金債権を有していたが,メディア・コンセプトは,本件貸付1について一括返済期限である平成22年7月26日に300万円を返済し,同年8月に更に10万円を返済しただけで,その余の返済をせず,本件貸付2については一括返済期限である同年8月31日を経過しても全く返済せず,その後本件貸付1及び本件貸付2に係る債権を譲り受けた第1審原告に対し平成23年9月から平成25年3月までに返済したのもわずか950万円にとどまること,②メディア・コンセプトの平成22年9月期の営業利益は5347万円の赤字であったこと,③日本振興銀行は同月3日にメディア・コンセプトの同年6月30日を基準日とする自己査定において同社の債務者区分を「実質破綻先」としたこと,④メディア・コンセプトは平成25年7月10日に破産手続開始決定を受けたところ,その配当率は2.06%にすぎなかったことが認められ,これらの事実によれば,第1審被告Bのメディア・コンセプトに対する債権は,離婚時においてほとんど無価値であったと認めるのが相当である。したがって,第1審被告Cの上記主張は採用することができない。⑵

第1審被告Cは,前記第2の4⑵のとおり主張する。しかしながら,第1審被告Cの上記主張は,第1審被告Cの前記第2の4⑴ア及びイの主張を前提とするものであるところ,それらの主張を採用することができないことは前記⑴ア及びイのとおりであるから,第1審被告Cの前記第2の4⑵の主張は採用することができない。


第1審被告Cは,前記第2の4⑶のとおり主張する。しかしながら,第1審被告Bが日本振興銀行株式を取得するに当たり,第1審被告Dその他の親族からその購入資金の一部の提供を受けており,また,第1審被告Cに一部の寄与があったことは否定できないが,日本振興銀行株式は,基本的には第1審被告Bが日本振興銀行の経営に携わる過程において,その能力と才覚に依拠して取得し,その価値を高めたものであり,夫婦の共同財産を清算するという趣旨からすれば,同株式ないしその譲渡代金を夫婦の積極的な共同財産に含める以上,第1審被告Bが同じく同行の取締役としての職務を遂行する過程で上記の積極的な共同財産の取得・形成と密接に関連して負った第1審被告Bの本件損害賠償債務についても夫婦の消極的な共同財産に含まれると解するのが相当であって,前者を夫婦の積極的な共同財産に含めながら,後者を夫婦の消極的な共同財産に含めないことは権衡を欠くといわざるを得ないことは,前記1⑹のとおり原判決を訂正して説示したとおりである。なお,確かに,第1審被告Bの本件損害賠償債務は,これを負うことによって第1審被告Bの預貯金の形成に寄与したり,第1審被告Bの日本振興銀行株式の保有に寄与したというものではないが,上記判断を左右するものではない。
したがって,第1審被告Cの上記主張は採用することができない。


第1審被告Cは,前記第2の4⑷のとおり主張する。しかしながら,養育費はその性質上定期的に支払われるべきものであり,第1審被告Bが支払時期が到来していない養育費をまとめて支払ったことはその時期が義務に属しない支払をしたものであり,第1審被告Bは支払える見込みのない多額の損害賠償債務を負うことが明らかになった後に時期が義務に属しない支払をしたものであって,その行為も詐害行為取消しの対象となることは,前記1⑹のとおり原判決を訂正して説示したとおりであるから,適正な養育費の額について判断するまでもなく,第1審被告Cの上記主張は採用することができない。
4
当審における第1審被告Dの主張に対する判断


第1審被告Dは,前記第2の5⑴のとおり主張する。確かに,日本振興銀行株式の価値について,平成22年5月17日発表された平成21年度(平成22年3月期)決算においては,同月31日時点で1株当たり13万3022円92銭であると記載されているが,①金融庁は,平成21年6月以降実施している立入調査の結果判明した事実として,(ⅰ)日本振興銀行が多額の貸付けをしていたSMEGの債務者区分は「破綻懸念先」とするのが相当であることや,(ⅱ)日本振興銀行が同年3月末時点において既に561億1200万円の債務超過に陥っており,単体での自己資本率がマイナス16.78%であることを指摘していたこと(上記の決算発表における記載は,これらの指摘を考慮していない。),②日本振興銀行は平成22年6月期において約1870億円の債務超過に陥っていたことが認められ,これらの事情によれば,本件株式譲渡合意の時点において,日本振興銀行株式の価値はほとんどゼロであったと認定するのが相当であることは,原判決が説示するとおりである。
この点につき,第1審被告Dは,上記①(ⅰ)及び(ⅱ)は金融庁の一検査官が意見を表明したものにすぎないと主張するが,それらは日本振興銀行について実際に検査を行った検査官の指摘であり,それが不当なものであることをうかがわせる証拠もない(むしろ,証拠(甲イ123)によれば,同年4月16日の金融庁検査局長の検査結果通知においても,SMEGの債務者区分は破綻懸念先が相当であり,日本振興銀行の平成21年3月期における単体自己資本比率が0%を下回り,貸借対照表の資産の部が負債の部を下回る状況にあると見込まれるとされていることが認められる。)から,第1審被告Dの上記主張は採用することができない。
また,第1審被告Dは,上記②は平成22年7月20日付けで自己査定マニュアルが改訂された結果生じた事後的な事態にすぎないと主張するが,当時日本振興銀行の代表取締役であったMが,別件訴訟において,自己査定マニュアルの改訂を納得して行った旨を証言しており(丙B5),その結果,日本振興銀行は同年6月期において約1870億円の債務超過であることが判明して破綻に至ったのであって,本件株式譲渡合意が行われた同年5月24日の時点では既に日本振興銀行は債務超過の状態にあり,その株式の価値はほとんどゼロであったと認められるから,第1審被告Dの上記主張は採用することができない。


第1審被告Dは,前記第2の5⑵のとおり主張する。しかしながら,第1審被告Bと第1審被告Dが本件株式譲渡合意をしたのは平成22年5月24日であるところ,その当時第1審被告Bが無資力であったことは,第1審被告Cに対する請求について説示した(前記1⑹中の6⑴イ)とおりであり,また,第1審被告Cに対する請求について挙げた事実(前記1⑹中の5⑴イの①ないし⑦の事実)からすると,第1審被告Bは自らに対する民事責任追及の可能性ないし蓋然性が高いことを察知し,債権者を害することを知って本件株式譲渡合意をしたことは明らかであるから,第1審被告Bには詐害の意思があったというべきである。
なお,確かに,証拠(甲ロ31)及び弁論の全趣旨によれば,第1審被告Bは,第1審被告Dから株式を買い戻したのと同時期に,自身が経営する会社の従業員であったJらからも日本振興銀行の株式を買い戻したことが認められるが,第1審被告Bが第1審被告Dから買い戻した株式が1250株であるのに対し,Jらから買い戻した株式は合計でも235株にすぎないし,第1審被告BがJらから株式を買い戻した経緯も,その買戻しに当たっての第1審被告B及びJらの認識も具体的に明らかでないから,第1審被告BがJらから同時期に株式の買い戻しをしたからといって,本件株式譲渡合意における第1審被告Bの詐害の意思に関する上記判断が左右されるものではない。


第1審被告Dは,前記第2の5⑶のとおり主張する。しかしながら,①第1審被告Dは,平成18年6月1日から平成23年2月1日まで第1審被告Bが取締役として実質的に経営していたDMDJAPANの監査役であったこと,②第1審被告Dは,同じ金融機関である株式会社北陸銀行に勤務する者として,また,7500万円を支払って日本振興銀行株式を取得した同行の株主として,同行の状況に強い関心を抱いていたものと推認されること,③第1審被告Bが平成22年5月10日に日本振興銀行の取締役会長兼代表執行役を辞任したこと,④日本振興銀行が同月17日に平成21年度(平成22年3月期)決算において51億円の赤字に転落したことを発表したが,同年5月18日の新聞紙上では,第1審被告Bの辞任が同行の赤字転落の責任を明確化するためであるという報道がされたことなどの事情に徴すると,第1審被告Dには,第1審被告Bが日本振興銀行の役員としてした行為に関し,多額の損害賠償責任を追及され又は追及されるおそれがあるとの認識がなかったということはできず,他に第1審被告Dの善意を認めるに足りる証拠がないことは,前記1⑺のとおり原判決を訂正して説示したとおりであるから,第1審被告Dの上記主張は採用することができない。

5⑴

以上によれば,

第1事件における第1審原告の第1審被告Bに対する請求は,37億5693万4826円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成23年9月12日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるからこれを認容し,その余は理由がないからこれを棄却すべきところ,これと同旨の原判決は相当であり,第1審原告及び第1審被告Bの各控訴はいずれも理由がないからこれらを棄却するのが相当である。


第2事件における第1審原告の第1審被告Cに対する請求は,8000万円の支払に関する請求については,第1審原告が当審において主位的請求とした追加請求に理由があるからこれを認容するのが相当であり,1億2000万円の支払に関する各請求については,いずれも理由があるからこれらを認容すべきところ,これと同旨の原判決は相当であり,第1審被告Cの控訴(ただし,1億2000万円の支払に関する請求に関する部分に限る。)は理由がないからこれを棄却するのが相当である。


第2事件における第1審原告の第1審被告Dに対する各請求はいずれも理由があるからこれらを認容すべきところ,これと同旨の原判決は相当であり,第1審被告Dの控訴は理由がないからこれを棄却するのが相当である。



よって,主文のとおり判決する。
なお,原判決主文第2項の第1審被告Bと第1審被告Cとの間の平成22年5月27日支払に係る8000万円の贈与契約のうち1316万円を超えて支払を約するとの合意部分を取り消す部分,第4項のうち第1審被告Cに対し6684万円及びこれに対する平成23年9月10日から支払済みまで年5分の割合による金員の第1審原告への支払を命ずる部分並びに第6項のうち第1審原告の第1審被告Cに対する請求に関する部分は,上記⑴イの第1審原告が当審において主位的請求とした追加請求の認容によりいずれも失効していることから,これを主文で明らかにすることとする。
東京高等裁判所第17民事部

裁判長裁判官

川神裕
裁判官

伊藤繁
裁判官

武藤
真紀子
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