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訴訟代理人の訴訟行為排除決定に対する抗告審の取消決定に対する許可抗告事件
事件番号平成29(許)6
事件名訴訟代理人の訴訟行為排除決定に対する抗告審の取消決定に対する許可抗告事件
裁判年月日平成29年10月5日
法廷名最高裁判所第一小法廷
裁判種別決定
結果破棄自判
原審裁判所名福岡高等裁判所
原審事件番号平成28(ラ)423
原審裁判年月日平成29年1月27日
判示事項1 弁護士法25条1号に違反する訴訟行為及び同号に違反して訴訟代理人となった弁護士から委任を受けた訴訟復代理人の訴訟行為について,相手方である当事者は,上記各行為を排除する旨の裁判を求める申立権を有する
2 弁護士法25条1号に違反することを理由として訴訟行為を排除する旨の決定に対し,自らの訴訟代理人又は訴訟復代理人の訴訟行為を排除するものとされた当事者は即時抗告をすることができるが,その訴訟代理人又は訴訟復代理人は自らを抗告人とする即時抗告をすることができない
3 破産管財人を原告とする訴訟において,破産者の依頼を承諾したことのある弁護士が被告の訴訟代理人として訴訟行為を行うことが,弁護士法25条1号に違反するとされた事例
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平成29年(許)第6号

訴訟代理人の訴訟行為排除決定に対する抗告審の取消

決定に対する許可抗告事件
平成29年10月5日

第一小法廷決定

主文1
原決定を破棄する。

2
原々決定中,相手方Y1は長崎地方裁判所平成28
年(ワ)第50号売掛金支払等請求事件につき弁護
士の職務として相手方株式会社洛友商事の訴訟代理
をしてはならないとした部分を取り消す。

3
前項の取消部分に関する抗告人竹松エキスプレス株
式会社破産管財人X1の申立てを却下する。

4
原々決定に対する相手方株式会社洛友商事のその余
の抗告を棄却する。

5
原々決定に対する相手方Y2,同Y3及び同Y1の
抗告を却下する。

6
抗告手続の総費用は相手方らの負担とする。

第1
1由
事案の概要
本件は,破産者竹松配送サービス株式会社の破産管財人である抗告人X2,
破産者竹松エキスプレス株式会社の破産管財人である抗告人X1及び破産者有限会社竹松運輸の破産管財人である抗告人X3を原告とし,相手方株式会社洛友商事を被告とする訴訟において,抗告人らが,上記各破産者との間で委任契約を締結していた弁護士である相手方Y2及び同Y3が相手方洛友商事の訴訟代理人として訴訟行為をすることは弁護士法25条1号に違反すると主張して,相手方Y2及び同Y3の各訴訟行為の排除を求めるとともに,相手方Y2から委任を受けるなどして相手方洛友商事の訴訟復代理人等となった弁護士である相手方Y1の訴訟行為の排除を求める事案である。
2
(1)

記録によれば,本件の経緯は次のとおりである。
有限会社竹松運輸,竹松配送サービス株式会社及び竹松エキスプレス株式
会社(以下,併せて「竹松三社」という。)は,それぞれ,平成26年4月3日,相手方Y2及び同Y3との間で,再生手続開始の申立て,再生計画案の作成提出等についての委任契約(以下「本件各委任契約」という。)を締結した。(2)

竹松運輸は,平成26年4月24日,相手方Y2及び同Y3を申立代理人と
して,長崎地方裁判所に対し,再生手続開始の申立てをした。その申立書には,竹松運輸は,相手方洛友商事をスポンサーとして,再生手続を進める予定である旨記載されていた。
竹松運輸は,平成26年5月16日,再生手続開始の決定を受けた。しかし,相手方洛友商事は,同年6月下旬,竹松運輸に対する支援を打ち切った。竹松運輸は,同年7月11日,再生手続廃止の決定を受け,同決定は同年8月6日の経過により確定した。
(3)

竹松運輸は,平成26年8月7日,破産手続開始の決定を受け,抗告人X
3が破産管財人に選任された。

竹松配送サービス及び竹松エキスプレスは,それぞれ,平成26年8月21日,破産手続開始の決定を受け,抗告人X2が竹松配送サービスの破産管財人に,抗告人X1が竹松エキスプレスの破産管財人に,選任された。
(4)

抗告人らは,それぞれ,平成27年8月から平成28年2月にかけて,相
手方洛友商事を被告とする4件の訴訟を長崎地方裁判所に提起した。これらの各訴訟における主たる請求の内容は,①抗告人X2が,相手方洛友商事に対し,竹松配送サービスの相手方洛友商事に対する送金等に関して否認権を行使して金員の支払を求めるとともに,竹松配送サービスの相手方洛友商事に対する運送代金債権に基づき金員の支払を求めるもの(以下,この請求に係る事件を「甲事件」という。),②抗告人X1が,相手方洛友商事に対し,竹松エキスプレスの相手方洛友商事に対する送金に関して否認権を行使して金員の支払を求めるもの(以下,この請求に係る事件を「乙事件」という。),③抗告人X3が,相手方洛友商事に対し,竹松運輸の相手方洛友商事に対する不当利得返還請求権に基づき金員の支払を求めるもの(以下,この請求に係る事件を「丙事件」という。)及び④抗告人X1が,相手方洛友商事に対し,竹松エキスプレスの相手方洛友商事に対する運送代金債権及び不当利得返還請求権に基づき金員の支払を求めるもの(この請求に係る事件は,長崎地方裁判所平成28年(ワ)第50号売掛金支払等請求事件(以下「丁事件」という。)である。)であった。甲事件,乙事件,丙事件及び丁事件は,併合審理された(以下,併合後の訴訟を「本件訴訟」という。)。
上記の竹松配送サービス及び竹松エキスプレスの相手方洛友商事に対する各運送代金債権並びに竹松運輸及び竹松エキスプレスの相手方洛友商事に対する各不当利得返還請求権は,いずれも,相手方Y2及び同Y3が竹松三社から本件各委任契約に基づく委任を受けていた間に発生したとされるものであり,上記の否認権行使に係る竹松配送サービス及び竹松エキスプレスの相手方洛友商事に対する各送金等も,その間に行われたものであった。
(5)

相手方Y2及び同Y3は,甲事件,乙事件,丙事件及び丁事件について,相
手方洛友商事からそれぞれ委任を受けて訴訟代理人となった。相手方Y1は,甲事件,乙事件及び丙事件について,相手方Y2から委任を受けて訴訟復代理人となり,丁事件について,相手方洛友商事から委任を受けて訴訟代理人となった。(6)

抗告人らは,平成28年8月1日,長崎地方裁判所に対し,本件訴訟にお
いて相手方Y2,同Y3及び同Y1が訴訟行為をすることが弁護士法25条1号に違反することを理由として,上記相手方3名の各訴訟行為の排除を求める申立て(以下「本件申立て」という。)をした。
原々審は,本件申立ては理由があるとして,本件申立て後の上記相手方3名の各訴訟行為を排除する旨の決定(原々決定)をした。相手方らは,原々決定に対し,即時抗告をした。3
原審は,破産管財人が提起した訴えの相手方の訴訟代理人である弁護士が,
過去に破産者から上記訴えに係る請求に関連する法律事務等の委任を受けていたとしても,破産管財人が独立した権限に基づいて財産の管理処分権を行使することなどに照らすと,上記弁護士の訴訟行為は弁護士法25条1号にいう「相手方の・・・依頼を承諾した事件」に当たらないとして,原々決定を取り消した。また,原審は,本件申立てを裁判所の職権発動を促すものと解し,本件申立てを却下しなかった。
第2
1
職権による検討
弁護士法25条1号は,先に弁護士を信頼して協議又は依頼をした当事者の
利益を保護するとともに,弁護士の職務執行の公正を確保し,弁護士の品位を保持することを目的とするものであるところ,同号に違反する訴訟行為については,相手方である当事者は,これに異議を述べ,裁判所に対しその行為の排除を求めることができるものと解される(最高裁昭和35年(オ)第924号同38年10月30日大法廷判決・民集17巻9号1266頁参照)。また,同号に違反して訴訟代理人となった弁護士から委任を受けた訴訟復代理人の訴訟行為についても,相手方である当事者は,同様に,訴訟復代理人の選任が同号に違反することを理由として,これに異議を述べ,裁判所に対しその行為の排除を求めることができるものと解される。そして,上記のとおり,同号が当事者の利益の保護をも目的としていることからすると,相手方である当事者は,裁判所に対し,同号に違反することを理由として,上記各訴訟行為を排除する旨の裁判を求める申立権を有するものと解すべきである。
次に,当事者は,その訴訟代理人及び訴訟復代理人の訴訟行為が排除されるか否かについて利害関係を有することは明らかであるから,同号に違反することを理由として自らの訴訟代理人又は訴訟復代理人の訴訟行為を排除する旨の決定に対する不服申立ての機会を与えられるべきである。他方で,上記決定については,訴訟の迅速な進行を図るため,その判断内容を早期に確定する必要性が認められる。このことは,訴訟手続からの排除という点で類似する除斥又は忌避を理由がないとする決定についても同様であり,この決定に対する不服申立ては即時抗告によるものとされている(民訴法25条5項)。以上の点に照らすと,弁護士法25条1号に違反することを理由として訴訟行為を排除する旨の決定に対しては,自らの訴訟代理人又は訴訟復代理人の訴訟行為を排除するものとされた当事者は,民訴法25条5項の類推適用により,即時抗告をすることができるものと解するのが相当である。これに対し,上記決定において訴訟行為を排除するものとされた訴訟代理人又は訴訟復代理人は,当事者を代理して訴訟行為をしているにすぎず,訴訟行為が排除されるか否かについて固有の利害関係を有するものではないと解される。したがって,上記決定に対しては,上記訴訟代理人又は訴訟復代理人は,自らを抗告人とする即時抗告をすることはできないものと解するのが相当である。
2
これを本件についてみると,原審が原々決定に対する相手方洛友商事の即時
抗告を適法なものとして取り扱ったことは正当である。しかし,原審は,本件申立てにつき,同号に違反することを理由として訴訟行為を排除するように職権の発動を促すものと解し,相手方洛友商事の訴訟代理人及び訴訟復代理人の訴訟行為が同号に違反することを理由として排除されるものではない旨判示したにもかかわらず,原々決定を取り消すのみで本件申立てを却下していない上,原々決定に対する相手方Y2,同Y3及び同Y1の即時抗告を適法なものとして取り扱っており,原審の上記判断には,裁判に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。第3

抗告人らの抗告理由について

前記第1の2の事実関係によれば,竹松三社は,破産手続開始の決定を受ける前に,相手方Y2及び同Y3との間で,本件各委任契約を締結していたのであるから,相手方Y2及び同Y3は,竹松三社の依頼を承諾して,竹松三社の業務及び財産の状況を把握して事業の維持と再生に向けて手続を主導し,債権の管理や財産の不当な流出の防止等について竹松三社を指導すべき立場にあったものである。そして,本件訴訟における主たる請求の内容は,相手方Y2及び同Y3が竹松三社から委任を受けていた間に発生したとされる竹松三社の相手方洛友商事に対する各債権を行使して金員の支払を求めるもの並びに上記の間に行われた竹松配送サービス及び竹松エキスプレスの相手方洛友商事に対する各送金等に関して否認権を行使して金員の支払を求めるものである。したがって,本件訴訟が竹松三社の債権の管理や財産の不当な流出の防止等に関するものであることは明らかである。また,本件訴訟において相手方洛友商事と対立する当事者は竹松三社の各破産管財人である抗告人らであるのに対し,本件各委任契約の依頼者は竹松三社であるが,破産手続開始の決定により,破産者の財産に対する管理処分権が破産管財人に帰属することになることからすると,本件において弁護士法25条1号違反の有無を検討するに当たっては,破産者である竹松三社とその各破産管財人とは同視されるべきである。
そうすると,本件訴訟は,相手方Y2及び同Y3にとって,同号により職務を行ってはならないとされる「相手方の・・・依頼を承諾した事件」に当たるというべきである。
以上によれば,相手方Y2及び同Y3が本件訴訟において相手方洛友商事の訴訟代理人として訴訟行為を行うことは,同号に違反するものというべきである。したがって,本件訴訟における相手方Y2及び同Y3の各訴訟行為は排除されるべきものであり,甲事件,乙事件及び丙事件について相手方Y2から委任を受けて訴訟復代理人となった相手方Y1の訴訟行為も排除されるべきものである。しかるに,原審は,本件訴訟における相手方Y2及び同Y3の各訴訟行為の排除を認めず,甲事件,乙事件及び丙事件における相手方Y1の訴訟行為の排除も認めなかったものであり,原審の上記判断には,裁判に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。この点に関する論旨は理由がある。
これに対し,丁事件においては,相手方Y1は相手方洛友商事から委任を受けて訴訟代理人となっているところ,相手方Y1の訴訟行為が同号に違反することをうかがわせる事情はなく,その訴訟行為を排除することはできない。この点に関する論旨は理由がない。
第4

結論

以上によれば,原決定は破棄を免れない。そして,以上説示したところによれば,原々決定中,丁事件につき相手方Y1の訴訟行為の排除を認めた部分は不当であるから,これを取り消し,上記取消部分に関する抗告人X1の申立ては理由がないから,これを却下し,原々決定のその余の部分は正当であるから,原々決定に対する相手方洛友商事のその余の抗告を棄却し,原々決定に対する相手方Y2,同Y3及び同Y1の抗告は不適法であるから,これを却下することとする。
よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり決定する。
(裁判長裁判官
小池


山口

裁判官


裁判官

池上政幸

木澤克之)
裁判官

大谷直人

裁判官

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