判例検索β > 平成26年(ワ)第3662号
国家賠償請求事件
事件番号平成26(ワ)3662
事件名国家賠償請求事件
裁判年月日平成29年9月13日
法廷名東京地方裁判所
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平成29年9月13日判決言渡
平成26年(ワ)第3662号
口頭弁論終結日

同日原本領収

裁判所書記官

国家賠償請求事件

平成29年5月16日
判主決文1
原告らの請求をいずれも棄却する。

2
訴訟費用は原告らの負担とする。

第1

実及び理由
請求
被告は,原告らに対し,各10万円及びこれに対する平成25年2月20日
から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2

事案の概要

1
事案の要旨
本件は,東京朝鮮中高級学校(以下「本件朝鮮学校」という。)を設置,運
営する学校法人東京朝鮮学園(以下「東京朝鮮学園」という。)が,平成22年11月30日付けで,文部科学大臣に対し,「公立高等学校に係る授業料の不徴収及び高等学校等就学支援金の支給に関する法律」(以下「支給法」という。)2条1項5号,「公立高等学校に係る授業料の不徴収及び高等学校等就学支援金の支給に関する法律施行規則」(以下「本件省令」という。)1条1
項2号ハ,及び「公立高等学校に係る授業料の不徴収及び高等学校等就学支援金の支給に関する法律施行規則第1条第1項第2号ハの規定に基づく指定に関する規程」(以下「本件規程」という。)14条1項(いずれもその当時のもの。)に基づいて,本件朝鮮学校につきいわゆる外国人学校のうち支給法に定める高等学校等就学支援金(以下「就学支援金」という。)の支給の対象とな
るもの(以下「支給対象外国人学校」という。)としての指定をすることを求める旨の申請(以下「本件申請」という。)をしたところ,同大臣から平成25年2月20日に本件朝鮮学校につき支給対象外国人学校としての指定をしない旨の処分(以下「本件不指定処分」という。)を受けたことに関して,本件不指定処分がされた時点において本件朝鮮学校の高級部の生徒であったとする原告らが,被告に対し,本件不指定処分により就学支援金を受給する権利,憲法26条が保障する教育を受ける権利等を侵害され,精神的苦痛を受けたと主
張して,国家賠償法1条1項に基づく損害賠償として,各10万円及びこれに対する本件不指定処分の日(平成25年2月20日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。
2
関係法令の定め及び支給法に基づく就学支援金制度の概要


関係法令の定め
別紙「関係法令の定め」のとおり(なお,同別紙中の略称等については,本判決の本文中においてもこれを用いることとする。)。
支給法に基づく就学支援金制度の概要

支給法の目的等
支給法は,公立高等学校(地方公共団体の設置する中等教育学校の後期課程及び特別支援学校の高等部を含む。以下同じ。)について授業料を徴収しないこととするとともに,公立高等学校以外の高等学校等(以下「私立高等学校等」という。)の生徒等が,その授業料に充てるために就学支援金の支給を受けることができることとすることにより,
高等学校等における教育に係る経済的負担の軽減を図り,もって,教育の機会均等に寄与することを目的とするものである(支給法1条,2条2項及び3項参照)。
従来は,高等学校等の後期中等教育段階の学校における教育に係る費用負担については,義務教育と異なり,憲法上無償であることが要求
されるものではなく(憲法26条2項参照),また,私立学校を含め一律に無償とすることは実際上困難であることなどから,受益者である生徒等に授業料等の負担を求めることを原則としつつ,経済的理由により就学困難な者に対する奨学金事業の実施,公立高校における授業料減免,私立高校が行う授業料減免への補助等,主として低所得者層を対象として支援がされてきた。
これに対し,支給法は,①高等学校等における教育を受けるには,授業料のほかにも様々な費用がかかり,保護者には決して軽くない経済的負担が生じている現状があり,特に,近年の経済情勢の悪化に伴ってその負担が相対的に重くなっていることから,進学の意欲のある者が経済的理由で就学が困難となることがないよう,一層の教育費負担軽減を図
り,教育の機会均等を確保することが喫緊の課題となっていること,②今日,高等学校等は,その進学率が約98パーセント(平成20年度学校基本調査)に達し,その教育の効果は広く社会に還元されるものとなっていることに鑑みれば,高等学校等の教育に係る費用については,社会全体で負担していくことが適当であると考えられること,③諸外国で
は,多くの国で後期中等教育を無償としており,いわゆる国際人権A規約中の中等教育の無償化の漸進的導入に関する規定について留保しているのは我が国を含む2か国のみであって,これを撤回するための施策を展開していくことが求められていたこと等の状況の変化に伴い,全ての意志ある高校生等が安心して勉学に打ち込めるよう,高等学校等の教育
に係る費用負担のあり方を見直し,受益者(個人)に応分の負担をさせるという考え方からこれを社会全体で負担するという考え方に重点を移して施策を進めることが国民的要請になっているとの前提に立って,このような国民的要請に応え,高等学校等の授業料の実質無償化に向けた取組を進めるための施策の一環として,国が必要な経費を負担すること
等により,公立高等学校について授業料を徴収しないこととするとともに,私立高等学校等の生徒等が,その授業料に充てるため,就学支援金の支給を受けることができることとしたものである。(以上につき,乙1・3頁)

就学支援金の額
就学支援金は,受給資格を有する生徒に対して,①原則として,公立高等学校の生徒等の授業料の負担軽減額と同額の月額9900円(年額1
1万8800円)を限度として支給すべきものとされ(支給法6条1項,本件施行令3条1項),②支給対象高等学校等が本件施行令4条1項に定める私立高等学校等である受給権者であって同条3項に定めるいわゆる低所得世帯のものについては,例外的に,その額を上記①において支給すべきものとされる額の1.5倍又は2倍とすることとされた(支給
法6条2項,本件施行令4条3項1号及び2号)。
なお,平成25年法律第90号による支給法の改正により,保護者等の収入の状況に照らして経済的負担を軽減する必要があるとは認められない者,すなわち,いわゆる高所得世帯の生徒等については,就学支援金は支給されないこととされた。


支給法における就学支援金制度の仕組み等
支給法における授業料実質無償化の枠組み
a
支給法は,高等学校等(支給法2条1項)の授業料を実質的に無償化するための具体的な制度設計として,公立高等学校(同条2項)については,生徒が負担する授業料による収入相当額を国が地方公共団
体に対して交付することにより,生徒から授業料を徴収しないこととする一方で,私立高等学校などの公立高等学校以外の高等学校等(私立高等学校等。同条3項)については,在学する生徒等に対して就学支援金を支給するものとしている(支給法4条1項)。
b
支給法において前記aのような2つの枠組みが採用されているのは,支給法制定の趣旨を実現する上で,設置者や学校の種別に応じて,最も合理的と思われる方法を採ったことによるものとされている。
すなわち,公立高等学校について,生徒が負担する授業料による収入相当額の資金を国が地方公共団体に対して支給するとともに,地方公共団体が負担していた授業料減免相当額については引き続き地方公共団体が負担することにより,公立高等学校の授業料を不徴収とすることとされたのは,①高等学校等の生徒の約7割を占め,我が国における高等学校教育の中核を担う公立高等学校については,支給法制定の趣旨を実現するため,授業料の無償化を確実に措置する必要性が高いこと,②授業料の設定については,設置者である地方公共団体が権
限を有するものの,広く地域住民に高等学校教育を提供する教育機関として,組織運営の実態やそれに関する経費に一定の共通性があり,実際にも,ほとんどの地方公共団体において,地方交付税単価に準拠して授業料を設定するなど,授業料の額には余り差がないため,国が標準的な授業料額を設定して授業料の不徴収に必要な経費を措置する
ことが比較的容易であること,③就学支援金を個人に支給する場合に比べ,受給資格の認定申請等の手続が不要となるなど,事務負担の軽減に資することなどによるものとされている。
他方,私立高等学校等について,在学する生徒等に対して就学支援金を支給するものとされたのは,①建学の精神に基づいて特色ある教
育を行っており,授業料設定も含め,その自主性を尊重する必要があること,②平均授業料額が公立高等学校と比較して高く,国の支援により授業料の無償化を実現すれば,多額の財政負担が生じることなどに鑑みると,公立高等学校と同様に授業料の不徴収を義務付けてこれに要する経費を国が措置することによる授業料の無償化を図ることは
現実的に困難であったため,私立高等学校等の生徒等に公立高等学校の授業料の額に相当する就学支援金(低所得世帯の生徒については加算した額)を一律に支給することとし,学校設置者がこれを代理受領して授業料に係る債権の弁済に充てることとすることにより,公立高等学校と同程度の負担軽減を図る方法が採られたものとされている。(以上について,乙1・4頁)
支給法における就学支援金制度の仕組み

a
支給法は,①私立高等学校等に在学する生徒又は学生で日本国内に住所を有する者に対し,当該私立高等学校等における就学について就学支援金を支給するものとし(支給法4条1項),②上記の生徒等(同条2項各号のいずれかに該当する者を除く。)は,就学支援金の支給を受けようとするときは,本件省令で定めるところにより,その
在学する私立高等学校等の設置者を通じて,当該私立高等学校等の所在地の都道府県知事に対し,就学支援金の支給を受ける資格を有することについての認定を申請し,その認定を受けなければならないとする(支給法5条)とともに,③国が就学支援金の支給に要する費用の全額に相当する金額を都道府県に交付し(支給法15条1項),都道
府県知事が受給権者である生徒等に対して就学支援金を支給することとした上で(支給法7条1項),④支給対象学校の設置者は,受給権者である生徒等に代わって就学支援金を受領し,当該受給権者である生徒等の授業料に係る債権の弁済に充てるものとしている(支給法8条)。

b
前記aのとおり,就学支援金制度は,私立高等学校等に在学する生徒等で日本国内に住所を有する者を就学支援金の受給権者とした上で,国が地方公共団体に対して当該生徒等に係る就学支援金の支給に要する費用を交付し,地方公共団体の長から支給される当該生徒等に係る
支給分を当該私立高等学校等の設置者が代理受領し,当該私立高等学校等が当該生徒等に対して有する授業料に係る債権の弁済に充当させることとするものであって,私立高等学校等の設置者に対して助成をする制度ではなく,生徒等個人に対して助成をする制度である。
このように,支給法における就学支援金制度が生徒等個人に対する助成とされているのは,学校法人以外の者が設置する高等学校,専修学校,各種学校等に通う生徒等を含め,その在学する学校の設置者の
種類や意向にかかわらず,より幅広く後期中等教育段階において学ぶ生徒等に対して確実な支援をすることを可能とするためであるとされている(乙1・4頁から5頁)。また,私立高等学校等の設置者が受給権者に代わって就学支援金を受け取り,これを授業料債権に充当する仕組みが採用された(支給法8条)のは,支給法の目的(支給法1
条)を達するためには,受給権者である生徒等個人に支給した「高等学校等就学支援金」が授業料以外に流用されることを防止する必要がある一方,地方公共団体等を通じて受給権者である生徒等個人に直接支給する仕組みとする場合には事務的な負担が大きくなることから,極力これを抑制する合理的な仕組みとする必要もあるためであるとさ
れている(乙1・11頁)。
支給対象外国人学校について
a
支給法2条1項5号は,専修学校及び各種学校については,高等学校の課程に類する課程を置くものとして文部科学省令で定めるものに
限り就学支援金制度の対象となる私立高等学校等に含まれるものと定め,これを受けて,本件省令1条1項2号は,「各種学校であって,我が国に居住する外国人を専ら対象とするもの」(以下「外国人学校」という。)のうち,①高等学校に対応する外国の学校の課程と同等の課程を有するものとして当該外国の学校教育制度において位置付けら
れたものであって,文部科学大臣が指定したもの(同号イ),②同号イに掲げるもののほか,その教育活動等について,文部科学大臣が指定する団体の認定を受けたものであって,文部科学大臣が指定したもの(同号ロ)及び③同号イ及びロに掲げるもののほか,文部科学大臣が定めるところにより,高等学校の課程に類する課程を置くものと認められるものとして,文部科学大臣が指定したもの(同号ハ)を,就学支援金制度の対象となる私立高等学校等に含まれる各種学校,すな
わち,支給対象外国人学校としている。そして,同号ハの規定による指定の基準及び手続等を定めるものとして,本件規程が定められた。b
①本件省令1条1項2号イは,大使館等を通じて日本の高等学校に対応する外国の学校と同等の課程を有するものとして当該外国の学校教育制度において位置付けられていることが確認できるもの(いわゆ
る民族系外国人学校)を,②同号ロは,国際的に実績のある学校評価団体の認証を受けていることが確認できるもの(いわゆるインターナショナルスクール)を,それぞれ念頭に置いたものであり,大使館等の証明や国際的な評価機関による認証によって,高等学校の課程に類する課程を置くものであることが担保されるものを対象としたものと
される。③他方,上記①及び②のような制度的な担保のない外国人学校も存在し得るものと考えられたことから,同号ハは,そのような外国人学校については,その該当性の審査を文部科学大臣が個別に判断することとしたものとされる。(以上につき,甲8,16,17,弁論の全趣旨)

3
前提事実(証拠を付記しない事実は,当事者間に争いがないか,弁論の全趣旨により容易に認められる。なお,以下,証拠について枝番を全て挙げる場合には,枝番の記載を省略する。)


当事者等(以下において役職を付する場合には,当時のものを指すこととする。)

原告らは,本件不指定処分当時,いずれも本件朝鮮学校の高級部に在籍する生徒であった(弁論の全趣旨)。

東京朝鮮学園は,本件朝鮮学校を設置,運営する学校法人であるところ,本件朝鮮学校は,昭和30年(1955年)に,学校教育法による各種学校(同法134条1項)の認可(同法134条2項,4条1項前段)を受けている。



東京朝鮮学園は,文部科学大臣に対し,平成22年11月30日付けで,本件朝鮮学校について本件省令1条1項2号ハによる支給対象外国人学校としての指定を求める本件申請を行った(甲22)。



文部科学大臣は,平成22年11月23日に起こった朝鮮民主主義人民共和国(以下「北朝鮮」という。)の大韓民国延坪島(ヨンピョン島)の砲撃
事件を契機に,本件朝鮮学校を含む全ての朝鮮高級学校について,本件省令1条1項2号ハによる支給対象外国人学校としての指定に関する手続を停止し(甲23),その理由について,「北朝鮮による砲撃が,我が国を含む北東アジア地域全体の平和と安全を損なうものであり,政府を挙げて情報収集に努めるとともに,不測の事態に備え,万全の体制を整えていく必要がある
ことに鑑み,当該指定手続を一旦停止」した旨の説明をした(甲24から26)。その後,本件申請に係る審査等の手続は,平成23年8月頃に再開された。

平成24年12月に衆議院議員総選挙が施行された後,同月26日に開催された衆議院本会議において安倍晋三が内閣総理大臣に指名されるなどして,いわゆる第2次安倍内閣(以下単に「安倍内閣」という。)が発足し,上記衆議院議員総選挙が施行される前の民主党を中心とする政権(以下「民主党政権」という。)から自由民主党(以下「自民党」という。)を中心とする政権(以下「自民党政権」という。)へのいわゆる政権交代が生じた(公知
の事実。なお,上記民主党政権下の自民党を「野党時代の自民党」ということがある。)。
安倍内閣において文部科学大臣に就任した下村博文衆議院議員(以下「下村文部科学大臣」という。なお,行政機関ないしその長としての文部科学大臣を指す場合には,単に「文部科学大臣」という。)は,平成24年12月28日,本件省令1条1項2号ハを削除するとの方針を明らかにし(甲27),本件省令1条1項2号の改正案を公表した(甲28)。そして,文部科学大臣は,平成25年2月20日,本件省令1条1項2号を改正し,本件省令1条1項2号ハを削除した(甲29・平成25年2月20日文部科学省令第3号。以下,同改正を「本件省令改正」という。)。
文部科学大臣は,平成25年2月20日,東京朝鮮学園に対し,「公立高
等学校に係る授業料の不徴収及び高等学校等就学支援金の支給に関する法律施行規則第1条第1項第2号ハに基づく文部科学大臣による指定について(通知)」と題する書面(以下「本件不指定通知」という。)により,本件朝鮮学校につき支給対象外国人学校としての指定をしない旨の本件不指定処分を行った。なお,同書面には,本件不指定処分の理由として,①本件省令
改正により本件省令1条1項2号ハを削除したこと及び②東京朝鮮学園の本件規程13条適合性の審査において同条に適合すると認めるに至らなかったことが挙げられていた。(甲30)
本件朝鮮学校は,平成25年4月17日付けで,文部科学大臣に対し,本件不指定処分に対する異議申立てをしたところ,文部科学大臣は,平成25
年10月31日,かかる申立てを棄却した(乙36)。

原告らのうち2名は,民事訴訟法132条の2第1項に基づき,被告に対し,平成25年9月26日付けの書面により,本件不指定処分が違法であることを理由とする慰謝料請求に係る訴えの予告通知をした上で,同月30日,本件不指定処分の理由として本件不指定通知に①本件省令
1条1項2号ハの削除及び②本件規程13条に適合すると認めるに至らなかったことが挙げられていることにつき,本件不指定処分の理由の個数(上記①と②の2つであるのか,これらを併せた1つであるのか。)及び上記②の理由の趣旨(本件朝鮮学校が本件規程13条に「適合しない」と認めたことが本件処分の理由となるという趣旨か,本件朝鮮学校が同条に「適合する」と認めるに至らなかったことが本件処分の理由となるという趣旨か。)を照会した(甲31,32)。


被告は,平成25年10月25日,上記アの照会に対し,前者の照会事項については,本件不指定処分の理由は上記アの①と②の2つである旨を,後者の照会事項については,文部科学大臣が,本件朝鮮学校につき,本件規程13条に定める「指定教育施設は,高等学校等就学支援金の授業料に係る債権の弁済への確実な充当など法令に基づく学校の運営を適
正に行わなければならない。」との基準に適合するものとは認めるに至らないと判断したという趣旨である旨を,それぞれ回答した(甲33)。4
争点及び争点に関する当事者の主張


本件不指定処分が文部科学大臣の裁量権の範囲からの逸脱又はその濫用があるものとして違法であるか否か(争点1)

原告らの主張
本件不指定処分は,本件規程15条に基づく審査会の専門的意見を聴かないまま政治的外交的配慮から行われたものであり違法であること処分に当たり本来最も重視すべき諸要素,諸価値を不当,安易に軽視
し,その結果当然尽くすべき考慮を尽くさず,又は本来考慮に容れるべきでない事項を考慮に容れ,若しくは本来過大に評価すべきでない事項を過重に評価し,これらのことにより処分に関する判断が左右されたものと認められる場合には,処分における判断は,裁量判断の方法ないしその過程に誤りがあるものとして違法というべきであるところ,支給法
における支給対象外国人学校の指定手続の審査においては,同法の趣旨・目的に鑑みて,「高等学校の課程に類する課程」を有するかどうかという観点からの制度的・客観的審査のみが予定されている一方,政治的外交的配慮は許されず,また,本件規程15条に従って設置された高等学校等就学支援金の支給に関する審査会(以下,単に「審査会」という。)の専門的意見の聴取は処分を行うに当たって重視すべき事項である。しかしながら,本件不指定処分は,下記に主張するとおり,本来最も重視すべき審査会の専門的意見を聴取しない一方で,本来考慮に容れるべきでない政治的外交的な事項を考慮に容れて行われたものであって,違法である。
a
支給法の趣旨・目的及び本件省令1条1項2号ハへの委任の趣旨からすると,教育課程とは無関係の事情である政治的外交的理由によって支給対象外国人学校を選別することは許されないこと
支給法の趣旨・目的は「全ての意志ある」「生徒の学びを保障」し,「教育の機会均等に寄与する」という点にあり,支給対象外国人学校の範囲を定めるに当たっても,「全ての意志ある高校生等」が教育の
機会均等の保障からこぼれ落ちないようにする趣旨で本件省令1条1項2号ハを設け,「高等学校の課程に類する課程を置く」外国人学校であれば,広く制度の対象とする制度設計が行われた。このような法の趣旨・目的及び本件省令1条1項2号ハへの委任の趣旨からすれば,支給対象外国人学校の指定基準を定めるに当たって,あるいは具体的
な指定手続において,政治的外交的理由によって特定の教育施設を排除することは,「高等学校の課程に類する課程」を置くかどうかという教育上の観点とは無関係の事情を考慮するものであって,許されないことは明らかである。
このことは,支給法の法案審議の過程等で「政府統一見解」として
再三にわたって表明され,これを前提に法律案が審議可決されたのであって,明確に示された立法者意思として支給法の確定的な解釈基準となっているといえる上,支給法成立後に文部科学大臣の諮問機関として設置された高等学校等就学支援金の支給に関する検討会議(以下「検討会議」という。)が,平成22年8月30日付けで公表した「高等学校の課程に類する課程を置く外国人学校の指定に関する基準等(報告)」(甲14。以下「指定に関する基準等に係る報告」とい
う。)において改めて確認されていることからも明らかである。
以上のとおり,支給対象外国人学校の指定手続において,政治的外交的理由によって指定又は不指定の判断をしてはならないことは,支給法及び本件省令の立法者意思を構成しており,支給法及び本件省令の解釈に当たって何より重要な解釈基準となるものである。

b
政治的外交的理由により指定又は不指定の判断をしてはならないことは,支給法及び本件省令の確定的解釈基準となっており,国会における法改正なくして行政府が一方的にこれを変更することは許されないこと

上記aで主張したとおり,支給対象外国人学校の指定手続において政治的外交的理由に基づき特定の教育施設を排除してはならないことは支給法の立法者意思であるところ,このような確定的解釈基準を変更するためには,法改正を行うことが必須であって,行政府による解釈基準の変更の見解を示すことのみでこれを変更することはできず,
文部科学大臣が上記確定的解釈基準に反する省令の改正をすることは許されない。
したがって,下村文部科学大臣が,平成24年12月28日の定例記者会見において「外交上の配慮などにより判断しないと,民主党政権時代の政府統一見解として述べていたことについては,当然廃止を
いたします」と述べ(甲27),文部科学省初等中等教育局財務課高校就学支援室(以下「支援室」という。)も従前の政府統一見解を廃止して本件省令1条1項2号ハを削除した旨を公表したこと(甲64)をもってしても,上記確定的解釈基準を変更することはできず,政治的外交的理由から本件省令1条1項2号ハを削除し,本件不指定処分を行ったことを正当化できるものではない。なお,下村文部科学大臣を含む野党時代の自民党関係者がこのことを理解していたことは,自
民党の所属議員が野党時代に参議院に提出した「公立高等学校に係る授業料の不徴収及び高等学校等就学支援金の支給に関する法律の一部を改正する法律案」(甲61。以下「支給法一部改正法案」という。)の内容からも明らかである。
c
本件不指定処分が政治的外交的理由の下で行われたこと
①自民党政務調査会の文部科学部会,拉致問題対策特別委員会が,平成22年3月11日,「朝鮮学校は無償化の対象とすべきでない事を強く表明する決議」をし(甲57),自民党政務調査会の文部科学部会,外交部会,拉致問題対策特別委員会が,平成23年8月29日
の菅直人首相(当時)が文部科学大臣に対して凍結解除を指示し,本件朝鮮学校を含む朝鮮高級学校の就学支援金支給対象の審査手続が再開されることとになったのを受けて,3部会合同会議にて「指示の即時撤回を決議」したこと(甲62)などの自民党の諸部会における決議,②下村博文衆議院議員が,平成23年9月20日,自民党の機関
誌に掲載されたインタビューの中で,いわゆる拉致問題や朝鮮高級学校が反日教育を行っていることを挙げた上で,朝鮮高級学校を就学支援金制度の対象とすべきではないとの見解を明らかにしていること(甲59),③義家弘介参議院議員らを中心とする自民党所属の議員が,平成24年11月16日,朝鮮高級学校への無償化適用を阻止す
ることを目的として本件省令1条1項2号イ,ロ及びハを法律上の規定に格上げした上で,同号ハを削除することを内容とする支給法一部改正法案を参議院に提出する(甲61)など,野党時代の自民党が,朝鮮高級学校を就学支援金の対象から外すことを意図していたことは明らかである。
また,「公立高等学校に係る授業料の不徴収及び高等学校就学支
援金の支給に関する法律施行規則の一部を改正する省令案の概要」と題する文書(甲28)や,「公立高等学校に係る授業料の不徴収及び高等学校就学支援金の支給に関する法律施行令の一部を改正する政令案等に関するパブリックコメント(意見公募手続)の実施について」と題する文書(甲63)などの本件省令改正に関する文書は,安倍内
閣発足後,極めて短時間のうちに作成,公表されていることからすると,下村文部科学大臣は,文部科学大臣への就任後,審査会における審査の状況や文部科学省が集約した情報に基づく総合的判断を行って本件省令改正を決定したのではなく,野党時代の自民党の方針を引き継ぎ,政治的外交的判断に基づいて上記各文書の作成,公表を行った
ものといえる。実際に,下村文部科学大臣は,安倍内閣が発足した2日後である平成24年12月28日の定例記者会見にて,拉致問題に進展がないことなどの政治的外交的理由により本件不指定処分を事実上決定し,そのために本件省令改正を進めたこと,審査会での検討が継続していることを認識しつつ本件省令改正が実現した後に本件不指
定処分を行うことを決めていたこと,さらには,これらについては「政府全体で判断」した結果であることなどを述べている(甲27)。さらに,本件不指定処分が政治的外交的理由の下で行われたこと
は,当時の菅義偉官房長官(以下「菅官房長官」という。)が,上記の下村文部科学大臣の発言につき,「政府全体としての方針であ」る
旨の発言をしたこと(甲74)や古屋圭司拉致問題担当大臣(以下「古屋拉致問題担当大臣」という。)が菅官房長官と同趣旨の発言をしたこと(甲93),メディアの一連の報道(甲82,83),又は本件申請に係る審査において,下村文部科学大臣が審査会の意見を聴かずに不指定とすることを事実上決定したことからも裏付けられる。d
本件省令1条1項2号ハの「高等学校の課程に類する課程」に該当し,支給対象となる外国人学校に該当するか否かの判断をするに当た
っては,審査会の意見を聴くべきであること
審査会は,本件規程15条,17条に規定され,本件設置決定により,具体的内容を定められるものであるところ,本件規程が,支給対象外国人学校を定める際の客観性を担保し,「高等学校の課程に類する課程」としての位置付けが制度的に担保されるような内容を定め,
爾後,本件規程に基づき審査を厳正に行い,高等学校等就学支援金制度の運用の適正を期するためのものであることからすると,審査会の意見を聴かずに,高等学校の課程に類する課程を有するかどうかを適正に判断することはできない。それにもかかわらず,文部科学大臣が,本件規程15条に定める審査会からの意見聴取手続を怠ったときは,
そのこと自体,その判断に当たり「高等学校の課程に類する課程」を有するかどうかという観点からの制度的・客観的審査をしていないということにほかならない。
e
本件不指定処分に当たり審査会の意見を聴いていないこと
審査会においては,本件朝鮮学校について,法令違反の事実等は何ら確認されておらず(甲72の1),指定に向けた障害は存在していなかったこと,審査会においては各朝鮮高級学校を制度の対象として指定することを前提とした留意事項の素案すら議論されていたこと(甲72,73),審査会として不適合という結論が出たことはなく,
本件省令改正が行われた時点においても審査会による審査が継続していた(甲73)といった事情が存するのにもかかわらず,審査会の意見を聴かずに本件不指定処分がされている。
この点について,被告は,本件朝鮮学校を含む朝鮮高級学校と朝鮮総聯又は北朝鮮(以下,朝鮮総聯と北朝鮮を併せて「朝鮮総聯等」という。)の関係に関連して,審査会の調査権限の観点から,審査会による審査の継続が困難であった旨主張する。しかし,そもそも,本件
規程13条の適合性に関しては,外形的事項のほかは認可権者である所轄庁を通した調査・確認のみが予定されていたところ,そのような調査・確認の結果,何らの法令違反も認められなかったことからすると,被告主張の事情は,本件規程13条の適合性判断に影響を与えるものではないし,審査会による審査の結果,教育基本法その他法令違
反の具体的事実は何ら確認されなかった。また,被告自身認めるとおり,本件朝鮮学校が,書面の提出を拒んだり,訪問を拒んだりしたことはなく,本件朝鮮学校が,文部科学省の更なる調査に対しても誠実かつ迅速に対応する準備があったことは明白であって,審査会の審査を継続することについて困難な事情は存在しなかったものといえる。
仮に,被告の主張するように審査会の審査の継続が困難な事情があったとしても,本件規程の定めに関わらず,審査会の意見を聴かずに不指定処分を行い得る根拠とはならない。
f
証人A(以下「A証人」という。)の証言が虚偽であること
A証人は,本件不指定処分当時,文部科学省内には本件朝鮮学校を含む朝鮮高級学校は,本件規程13条に適合すると認めるに至っていないとの認識,朝鮮高級学校の審査に具体的支障があるとの認識及び本件省令1条1項2号ハの規定自体に問題があるとの認識があった旨証言する。

しかしながら,既に述べたとおり,審査会においては法令違反等の事実等は何ら確認されておらず,指定に向けた障害が存しなかったこと,本件朝鮮学校は,本件規程に従い,文部科学省の指示に従った情報提供に協力し,審査会の審査の継続にも困難はなかったこと,文部科学省において審査会の結論についての督促や質問をしたことがなく,審査会自身も判断できないという結論を出したことがないこと,第7回の審査会において,最終的な結論提示の必要性や今後の作業継続に
ついて言及がされていたことなどに照らすと,A証人の上記証言は信用できない。
また,この点を措いても,平成24年12月28日にパブリックコメント関連文書が公表されている(甲63)ところ,文部科学副大臣の職務開始が早くとも平成24年12月27日の午後8時以降であり,
文部科学大臣政務官に辞令が交付されたのが同月27日の午後8時51分であること(甲80の2)などに照らすと,同月28日に,文部科学省内の正規の意思決定手続を経たパブリックコメント関連文書を公表することは到底不可能であり,下村文部科学大臣の就任直後に行われた本件省令の改正案の公表は,審査会の審議経過を含め従前の審
査内容を真摯に検討した上で,教育上の専門的考慮に基づき,文部科学省内の正規の意思決定手続を経て行われたものであるとは到底認められない。仮に,上記A証言のような事実が認められる場合であったとしても,そのことをもって,下村文部科学大臣が従前の審査結果を踏まえて教育の専門的考慮に基づき本件省令改正及び本件不指定処分
を決定したことの根拠とはならない。
g
小括
以上より,支給法における支給対象外国人学校の指定手続の審査においては,上記a,bにおいて主張したとおり,同法の趣旨・目的に
鑑みて,「高等学校の課程に類する課程」を有するかどうかという観点からの制度的・客観的審査のみが予定されている一方,政治的外交的配慮は許されず,dで主張した点からすると審査会の専門的意見の聴取は処分を行うに当たって重視すべき事項であるといえる。
しかしながら,被告による本件不指定処分は,上記c及びeで主張したとおり,本来最も重視すべき審査会の専門的意見を聴取しない一方で,本来考慮に容れるべきでない政治的外交的な事項を考慮に容れ
て行われたものであることから,文部科学大臣の裁量権の範囲から逸脱し,又はこれを濫用したものとして,違法である。
本件朝鮮学校が指定の基準を全て満たしていること
上記
で主張したとおり,本件省令1条1項2号ハを削除して朝鮮高

級学校を不指定とすることは,自民党政権発足時点において「政府全体としての方針」として確定していたのであって,「本件規程13条に適合すると認めるに至らなかった」という処分理由は後発的に考案されたものにすぎないのであるから,本件不指定処分は,本件規程13条適合性を検討するまでもなく違法であるが,この点を措くとしても,以下の
とおり,被告の主張には理由がない。
a
本件朝鮮学校が本件規程2条ないし12条の指定基準を満たしていること
平成24年3月26日に実施された第6回審査会において朝鮮高級学校について「審査基準のうち,裁量の余地のない外形的な基準(教員数,校地・校舎の面積等)については,全校が基準を満たしている」
ことが確認されていること(甲72)からも明らかなとおり,本件朝鮮学校は,本件規程2条ないし12条の指定基準を満たしている。b
本件規程13条の「法令に基づく適正な運営」の判断においては,教育基本法16条1項の「不当な支配」を判断する必要がなく,仮に
判断する必要があっても,これが否定されるのは「不当な支配」により,設置者が代理受領した就学支援金が授業料に係る債権の弁済に充当されない事態が現に発生している場合に限られるべきであること①上記⑴ア

aにおいて主張したとおり,支給法の趣旨・目的は,

「全ての意志ある」「生徒の学びを保障」し,「教育の機会均等に寄与」するという点にあり,かかる支給法の趣旨・目的を達成すべく,「高等学校の課程に類する課程」を置く外国人学校を含め広く制度の対象とするために,本件省令1条1項2号イ,ロのみならず同号ハが設けられたこと,また,支給法及び本件省令の制定過程で,制定権者である文部科学大臣が,政治的外交的配慮を行わず,教育上の観点から客観的に審査・判断すべきであることを明言していたことなどから
すると,本件省令1条1項2号ハに基づく指定に関する基準等を定めた本件規程は「高等学校の課程に類する課程」を置くかどうかという点についての制度的・客観的審査に係る事項を定めた規定としてのみ解釈されるべきことは明らかである(仮に,本件規程13条の「法令に基づく学校の運営を適正に行わなければならない」との定めが教育
課程の客観的な位置付けとは離れて,かつ,就学支援金の授業料債権への充当とは無関係な事項についてまで審査することを許容するものとすれば,明らかに本件省令の委任の範囲を超えるものである。)。そうすると,本件規程13条は,支給法の趣旨・目的を達成するために,就学支援金を生徒らの授業料に係る債権の弁済に充てることを確
実にするため,各校の就学支援金の管理の適正と関係法令の諸規定の遵守を定めた規定であるといえる。また,②本件規程の制定過程において,検討会議が取りまとめた指定に関する基準等に係る報告(甲14)において,「法令に基づく適正な学校の運営について」の項目には,就学支援金の授業料への確実な充当に関する記載しかない。また,
検討会議の第3回に配布された資料1には,本件規程13条の「学校運営」の「関係規定」として教育基本法16条が挙げられておらず,学校運営の「考え方」として,私立学校法における必要な施設・設備,資金,経営に必要な財産を有しなければならない旨の規定や,財産目録等の備付け及び閲覧の規定に基づき,法令上求められている管理及び経営に関係する規定の確実な実施を求める方法が掲載されている(甲69の1)。このことからすると,検討会議における学校の法令に基づく適正な「運営」は,就学支援金の確実な授業料への充当を確保することと捉えられ,そのために確認すべき法令として,「不当な支配」に関する教育基本法16条を考慮することは想定されていないものといえる。さらに,③本件規程13条は,「法令に基づく情報の
提供等」を適正に行うことを定めた本件規程12条に続く規定で「前条に規定するもののほか,」という文言があるように,本件規程12条の付加的補足的な規定であることが明示されていることや,本件規程13条が「高等学校等就学支援金の授業料に係る債権の弁済への確実な充当など」という例示事項に続けて「法令」に基づく適正運営を
規定しており,ここでいう「法令」が,副助詞「など」の前で示された事項と類似又は同趣旨の法令に限定する趣旨であることが明らかであって,広く教育基本法など一般理念を定めた規定も本条にいう「法令」の範囲に読み込むことには文言上無理がある。以上のような上記本件規程13条の趣旨や本件規程13条の制定過程での議論,さらに
は本件規程13条の文言に照らせば,本件規程13条において法令に基づく適正運営に関する審査として予定されているのは,あくまでも就学支援金が確実に生徒の授業料に充てられるかどうかについての制度的・客観的な審査のみであり,「関係法令一般との適合性」といった制度的ないし客観的判断基準のない主観的判断を行うことは,支給
法の趣旨・目的を逸脱し,不当に生徒への就学支援金の支給を阻むものであり到底許されない。
なお,被告は,本件省令1条1項2号イ,ロと同号ハとは規定趣旨や指定要件を異にするものであり,同号イ,ロの指定要件においては法令に基づく適正な学校運営に係る基準の適合性は求められていないなどと主張し,本件省令1条1項2号イ,ロに係る学校と,同号ハに係る学校との間の不均衡を正当化しようとするが,この理解を前提とするならば,本件省令1条1項2号イ,ロに係る学校においては,「不当な支配」を含め関係法令一般との適合性が問題となるような事情が存在していたとしても,そのことは就学支援金制度の対象として指定することの支障とはならないのであるから,この観点からも本件
省令1条1項2号ハの指定に係る本件規程13条の審査範囲は就学支援金の適正な支給や使用が確保できないこととなるような性質・内容の法令違反の有無に限定されると解するほかない。
仮に,本件規程13条の「法令」に教育基本法16条1項が含まれるとしても,支給法に基づく原告らの受給資格を取得する権利又は法
的利益が「経済的,社会的及び文化的権利に関する国際規約」(以下「社会権規約」という。)を具体化し,憲法26条が保障する教育を受ける権利と分かちがたく結びついており,教育の機会均等の趣旨に合致する重要な権利又は法的利益であることに鑑みるならば,本件規程13条にいう法令に基づく適正な運営が実施されていないと判断さ
れるのは,「不当な支配」により受給権者である生徒らが就学支援金を受給できない結果となり,ひいては,全ての意志ある生徒の学びを支援し,教育の機会均等を図るという支給法の目的が実現できなくなる具体的危険が生じていると評価される場合,すなわち,学校と他の団体との間に不当な支配・被支配に該当する関係があり,そのことに
よって,設置者が代理受領した就学支援金が授業料に係る債権の弁済に充当されない事態が現に発生している場合,又は,少なくとも,そのような事態の生じる可能性が客観的な証拠によって具体的に裏付けられる場合に限られる。
c
本件朝鮮学校には,審査の過程においても本件規程13条に違反する具体的事実は確認されなかったこと

第4回審査会において配布された配布資料2「朝鮮高級学校の審
査(ポイント)」(甲70の1)によると,本件規程13条のいう「法令に基づく適正な運営」に関する審査においては,法令違反の有無について「基本的に設置認可を行う所轄庁が判断すべき」との原則が採用され,審査会においては,財務諸表等の作成,理事会等の開催
実績等の外形的事項のほかは,認可権者である所轄庁を通した調査・確認のみを行う旨の方針が確認されるなど,各朝鮮高級学校の法令違反の有無は,所轄庁が判断すべきであるとの基本的立場が取られていた。なお,本件省令1条1項2号ハに基づく審査の対象となっていたホライゾンジャパンインターナショナルスクール及びコリア国際学園
に対する審査においても,本件規程13条の適合性については,財務諸表等の作成,理事会等の開催実績等の外形的事項のほかは,所轄庁による処分の有無等を確認するだけで「法令に基づく適正な運営」がされているものと判断されていること(甲68,69)からも,本件規程13条の「法令に基づく適正な運営」の判断に際しては,外形的
事項のほかは認可権者である所轄庁を通した調査・確認のみが予定されているものといえる。
そして,平成24年3月26日に開催された第6回審査会では,本件朝鮮学校について,本件規程13条に違反する具体的事実が何ら発見されなかったことが確認されるとともに,各朝鮮高級学校を制度の
対象として指定することを前提とした留意事項の素案が示され(甲72),平成24年9月10日に開催された第7回審査会においては,第6回審査会で示された留意事項の素案を整理した留意事項の素案が示され,今後の予定として,「今回の議論を踏まえながら,今後も審査作業を進めていく」,「次回の審査会については,決まり次第,連絡する」ものとされた(甲73)。
以上のとおり,各朝鮮高級学校の法令違反の有無は,所轄庁が判

断すべきであるとの基本的立場の下,本件朝鮮学校については,所轄庁である東京都を通して,法令違反の有無やその運営実態を調査した結果,審査の過程で法令違反の具体的事実は何ら確認されなかったものといえる。
d
本件朝鮮学校と朝鮮総聯等との間に代理受領した就学支援金が授業料に係る債権の弁済に充当されない事態が発生するような不当な支配・被支配の関係が存在せず,本件朝鮮学校を始めとする朝鮮高級学校と朝鮮総聯等との間において「不当な支配」に該当するような関係が存在しないこと

そもそも,外国人学校に在籍する子供たちの学習権を充足させるためには,外国人学校の独立性,自主性は特に尊重されなければならないのであるから,本国又は関連する民族団体との関係性が「不当な支配」に当たるか否かについての判断は,特に慎重にされなければならないというべきである。

本件朝鮮学校は,人事,財政及び教育内容のいずれの側面においても,教育機関としての独立性をもって,自身の判断で教育活動を行っており,財務関係書類が整備され,地方自治体から受給した補助金についても適正に管理してきたのであって,代理受領した就学支援金が授業料に係る債権の弁済に充当されない事態が発生するおそれは一切
ない。
また,異国の地で教育を行う外国人学校に対して,本国または関連する民族団体がその教育活動等を支援することは,一般的な事象であり,東京韓国学校の例でも,大韓民国及び同国を支持する団体である在日大韓民国民団と密接な関係を持ち,多様な支援を受けている。さらに,朝鮮高級学校の教育が不当な支配に当たらないことについては,別件判決(神戸地方裁判所平成26年4月22日,大阪高等裁
判所平成27年2月3日。甲99,100)において明確に否定されているように,本件朝鮮学校を始めとする朝鮮高級学校において「不当な支配」に該当するような関係が存在しなかったことは明白である。e
被告の主張が失当であること
被告は,本件不指定処分の理由として,朝鮮総聯等の影響力や不当な支配,適正な学校運営について十分な確証を得ることができず,就学支援金が授業料に係る債権に充当されないことが懸念されるという点を挙げるのみで,積極的かつ具体的な認定を一切していない。
上記bで主張したとおり,本件規程13条にいう「法令」に教育基
本法16条1項が含まれるとしても,同項の「不当な支配」があるのは,学校と他の団体との間に不当な支配・被支配に該当する関係があり,そのことによって,設置者が代理受領した就学支援金が授業料に係る債権の弁済に充当されない事態が現に発生し,少なくともそのような事態が生じる可能性が生じていることが客観的な証拠によって裏
付けられる場合に限られることからして,被告が縷々主張するような就学支援金が授業料に係る債権に充当されない具体的なおそれを基礎付ける事情でない事情を審査対象とした上で,就学支援金が授業料に係る債権に充当されない具体的なおそれも認定しないまま「認めるに至らなかった」という理由で審査を打ち切り不指定処分にすることは,
他事考慮として裁量権を逸脱するものであって,違法である。
また,①上記⑴ア

aで主張した支給法の趣旨・目的及び行政庁に
課せられた法令の趣旨を誠実に実現する任務及び責務(憲法73条1号,地方自治法138条の2参照)からすると,特定の外国人学校の申請を却下して生徒らへの支給を実質的に拒絶するのであれば,具体的事実を認定した上で特定の要件の不充足を判断すべきであり,具体的事実を確定しない状態で不指定処分を行うことは行政処分を行う根拠として不十分であること,②本件規程16条以下において,指定を受けた教育施設が「高等学校の課程に類する課程」を置く学校であることを確認するための規制や監督の仕組みが設けられていることに鑑みても,抽象的な理由で不指定処分を行うことは支給法の趣旨・目的
に反すること,③本件朝鮮学校には更なる調査に対して誠実かつ迅速に対応する準備があり,審査会においても引き続き審査作業を進めることが予定されているにもかかわらず,文部科学大臣が,本件規程14条及び15条に従った調査等を行う努力を果たさず,何ら具体的事実を認定しないまま,抽象的な理由によって本件不指定処分をしたこ
となどに照らしても,本件不指定処分は違法である。
以上のとおりであって,被告の主張する「朝鮮高級学校に対する北朝鮮や朝鮮総聯の影響力を否定できず,その関係性が教育基本法16条1項で禁じる不当な支配に当たらないことや適正な学校運営がされていることについて十分な確証を得ることができず,就学支援金を支
給したとしても,授業料に係る債権に充当されないことが懸念され」るという不指定処分の理由は,抽象的な可能性を論じるものとして,裁量権の範囲から逸脱し,又はこれを濫用するものとして違法であるから,かかる理由を本件不指定処分の理由であるとする被告の主張は失当である。

f
国際的な観点からも本件処分の違法が宣言されなければならない

こと
いわゆる高校無償化法案の審議以降本件不指定処分に至るまでの過程で,人種差別撤廃委員会をはじめとする国際連合の3つの委員会が,朝鮮高級学校の生徒を高校無償化の対象から除外することについて懸念を示し,あるいは,差別であると指摘しており,国際的な観点からも,本件不指定処分の違法が宣言され,原告らの救済がされなければ
ならない。

被告の主張
本件不指定処分は,審査会の専門的意見を聴かないまま政治的外交的理由によってされたものでなく,適法なものであること

a
本件不指定処分が政治的外交的理由により行われたものでないこと文部科学省においては,朝鮮高級学校について審査を継続していたものの,法令に基づく適正な学校運営がされていないとの疑念を払しょくすることができず,審査会委員からも審査に限界がある旨の意見が出されていた(甲72の2)などの事情があり,それ以上の審査が
困難であった。そのため,当時主任視学官として就学支援金にまつわる事務を所管していたA証人は,平成24年12月26日に就任した下村文部科学大臣に対し,本件不指定処分を行うとともに本件省令1条1項2号ハの規定を削除する省令改正を行う案のほか,文部科学省の事務方としても,審査に限界があり,これ以上審査を継続しても本
件規程13条に適合するとの結論には至らないとの心証を持っている旨の報告,説明をし,下村文部科学大臣は,それまでの審査の経過,それを踏まえたA証人らからの報告を踏まえて,本件不指定処分及び本件省令改正を行う旨の判断をしたものである。
A証人ら就学支援金にまつわる業務を所管していた文部科学省の職
員は,継続していた審査の状況を踏まえ,下村文部科学大臣の就任前から,本件朝鮮学校を含む朝鮮高級学校が本件規程13条に適合すると認めるに至らず,本件省令1条1項2号ハの規定の審査に限界があると認識していたため,政権交代の結果就任する新文部科学大臣から承認が得られた場合に備えて,あらかじめ意見公募手続の概要の案を起案して準備していた。また,A証人らは,意見公募手続の概要についてあらかじめ起案しており,上記のとおり,下村文部科学大臣に説
明し,本件不指定処分及び本件省令改正について下村文部科学大臣の了承を得た後に,上記文書を正式に「電子政府の総合窓口(e-Gov)」のシステムに登録したものであって,原告らが主張するように,閣僚懇談会が終了した後からこれら文書の起案を始めたものではない。以上の事実関係の下で本件不指定処分はされたのであるから,本件
不指定処分が政治的外交的理由に基づいて行われたものでないことは明らかである。
b
原告らの主張が失当であること
原告らは,①野党時代の自民党の見解や下村博文衆議院議員の発言
において北朝鮮の拉致問題等を理由に朝鮮高級学校に対する就学支援金の支給に反対姿勢が示されていたこと,②下村文部科学大臣が,就任後の記者会見において拉致問題の進展がないこと等に言及していたこと,③菅官房長官や古屋拉致問題担当大臣も同趣旨の発言をしていたこと,④文部科学大臣が審査会の意見を聴かずに本件不指定処分を
したことなどを指摘して,本件不指定処分が政治的外交的理由により行われたなどと主張する。
しかしながら,上記①のうち,野党時代の自民党の姿勢は,あくまで政権交代前の野党としての姿勢にすぎないのに対し,下村文部科学大臣がした本件不指定処分は,文部科学省という行政機関としての見
解に基づいてその長である文部科学大臣の立場においてされたものであり,野党時代の自民党の姿勢とは切り離して考えるべきであるから,野党時代の自民党の姿勢をもって,直ちに本件不指定処分が政治的外交的理由によってされたということはできない。また,下村博文衆議院議員の機関紙での発言は,いずれも野党議員としての発言であり,文部科学大臣として本件不指定処分をした理由について答えた発言ではなく,これをもって本件不指定処分の理由が政治的外交的理由であ
るということはできない。
上記②及び③に関する原告らの主張は,一般論を述べているにすぎない下村文部科学大臣らの発言を,本件不指定処分が政治的外交的理由によりされたものであるかのように恣意的に引用するものであって失当である。かえって,下村文部科学大臣は,本件不指定処分前日の
平成25年2月19日及び同処分後の同年5月24日の記者会見において,本件不指定処分が政治的外交的理由によりされたものではなく,本件規程13条の基準に適合すると認めるに至らなかったことを理由とする趣旨の発言をしている(乙63,73)のであるから,原告らの主張には理由がない。

の意見は,文部科学大臣の判断要素の一つにすぎないこと,審査会の議論を考慮して本件不指定処分を行っていることからすると,原告らの主張する事実をもって,本件不指定処分が政治的外交的理由によりされたものと認めることはできない。

本件朝鮮学校が支給対象外国人学校として指定されるためには,本件規程13条を含む各要件を充足する必要があったこと
a
就学支援金制度の仕組み
支給法は,公立高等学校について授業料を徴収しないこととする

とともに,私立高等学校等の生徒等が,その授業料に充てるために就学支援金の支給を受けることができるようにすることで,高等学校等における教育に係る経済的負担の軽減を図り,もって教育の機会均等に寄与することを目的として制定されたものである(支給法1条,2条2項及び3項)。そして,支給法2条1項5号は,就学支援金制度の対象となる「私立高等学校等」のうち,専修学校及び各種学校については,「高等学校の課程に類する課程を置くものとして文部科学省令で定めるもの」として文部科学省令に委任している。同規定を受けて制定されたのが本件省令であり,本件省令1条1項2号ハは,「高等学校の課程に類する課程を置くもの」として,「文部科学大臣が定めるところにより,高等学校の課程に類する課程を置くものと認めら
れるものとして,文部科学大臣が指定したもの」と規定した。本件規程は,本件省令1条1項2号ハを受けて制定されたものである。
そして,本件規程は,第1章において「総則」,第2章において
「指定の基準」,第3章において「指定の手続等」をそれぞれ定めているところ,指定の基準については,修業年限,授業時数,同時に授
業を行う生徒,授業科目,教員数,教員の資格,校地等,校舎等,校舎の面積,設備に関する基準が定められているほか,本件規程12条が,指定教育施設においては,学校教育法134条2項において準用する同法42条及び43条並びに学校教育法施行規則190条において準用する同規則66条1項の規定による学校運営の状況に関する自
己評価及びその結果の公表並びに情報の積極的な提供,私立学校法64条5項において準用する同法47条1項及び2項の規定による財産目録等の備付け及び閲覧,その他の法令に基づく情報の提供等が適正に行われなければならない旨を定め,さらに,本件規程13条が,本件規程12条に規定するもののほか,指定教育施設は,高等学校等就
学支援金の授業料に係る債権の弁済への確実な充当など法令に基づく学校の運営を適正に行わなければならない旨を定めている。
本件省令1条1項2号ハを根拠とするものについては,これらの
各要件を充足しているものと認められたときは支給対象外国人学校としての指定を受けることができる。その一方で,上記各要件を充足していると認められない場合や上記各要件を充足していると認めるに至らない場合には,要件を充足していないのであるから,支給対象外国
人学校としての指定を受けられないことになる。
b
本件規程13条の趣旨
本件規程13条は,本件省令1条1項2号ハによる支給対象外国人学校としての指定の基準として,就学支援金の授業料に係る債権の弁
済への確実な充当など法令に基づく学校運営の適正性を定めている。これは,支給対象外国人学校についても,就学支援金制度の対象となる学校であって財務関係を含む学校運営の適正を求める趣旨,内容の学校教育法及び私立学校法の各規定の適用がある私立高等学校及び専修学校(高等課程)と同様に,就学支援金が授業料に係る債権の弁済
として確実に充当が行われることが確認できる態勢等が整っていることが当然の要件となるものであり,これを含めて高等学校の課程に類する課程を行うための学校運営が法令に基づく適正なものであり,国民の租税負担によって授業料の負担を軽減するにふさわしいものであると確認できることが必要であるとの趣旨に基づくものである。

すなわち,①支給法が,高等学校等における教育に係る経済的負担の軽減を図り,もって教育の機会均等に寄与することを目的とし(1条),支給対象高等学校等(6条)の設置者が,受給権者に代わって就学支援金を受給し,受給権者の授業料に係る債権の充当に充てることとするという仕組みを採用していることからすると,同法は,就学
支援金が受給権者である生徒等に対する授業料に係る債権に確実に充当されることを要請しているものであって,設置者によって他に流用されるおそれが否定できないにもかかわらず就学支援金を支給することを許容するものではなく,支給対象外国人学校についても,就学支援金制度の対象となる学校であって財務関係を含む学校運営の適正を求める趣旨,内容の学校教育法及び私立学校法の各規定の適用がある私立高等学校及び専修学校(高等課程)と同様に,就学支援金が授業
料に係る債権の弁済として確実に充当が行われることが確認できる態勢等が整っていることが当然の要件となる。このような理由から,支給対象外国人学校の指定を受ける基準及び手続等を定める本件規程の「第2章

指定の基準」中の規定である本件規程13条において,就

学支援金の授業料債権への充当が適正に行われていることを特に例示
して定めているのである。②また,各種学校についても,適正な学校運営を求める趣旨,内容の学校教育法の規定や私立学校法の規定が準用されるところ(学校教育法134条2項,私立学校法64条5項),支給法2条1項5号が「高等学校の課程に類する課程を置くものとして文部科学省令で定める」各種学校を就学支援金支給の対象学校とな
り得るものとしていることからすると,支給法は,高等学校の課程に類する課程の履修を含む適正な学校運営を求める学校教育法や私立学校法の規定ないしその趣旨に違反する各種学校を就学支援金の支給対象とすることを許容するものではない。そこで,この点について,本件規程13条において,法令に基づく学校の運営を適正に行わなけれ
ばならないと定めているものである。
c
本件規程13条が支給法2条1項5号及び本件省令1条1項2号ハの委任の範囲において定められ,又は支給法の細則的事項を定める規定として適法・有効であること

①支給法2条1項5号及び本件省令1条1項2号ハの「高等学校の課程」は,高等学校学習指導要領の「教育課程」に限らず,広く内容,学校の組織及び運営体制も含むものであるから,本件規程13条は,支給法2条1項5号及び本件省令1条1項2号ハの委任の範囲において定められたものというべきである。②また,本件規程13条の規定は,委任の範囲について上記①と別異に解する余地があったとしても,支給法19条を受けて,支給法の趣旨を体現し,その細則的事項を定
める執行命令の規定として適法・有効である。
本件規程13条適合性の判断について文部科学大臣に裁量があり,その中で考慮される教育基本法16条1項の「不当な支配」の判断についても同大臣に裁量があること
a
本件規程13条適合性判断について文部科学大臣に裁量があることそもそも,支給法は,国会での法案審議の過程,同法の仕組み並びに同法や本件省令並びに本件規程の文言,趣旨及び目的から明らかなとおり,同法2条1項5号に定める「高等学校の課程に類する課程を置く」ということの内容を含めて,どのような各種学校について当該
課程を置くものとして就学支援金支給の対象校とするのかの判断を文部科学大臣に委ねている。
そして,

支給法は,就学支援金が受給

権者である生徒等の授業料に係る債権に確実に充当されることを要請し,法令に基づく学校運営を適正に行うことができない学校を就学支援金支給の対象校とすることを許容しておらず,これを受けた本件規程13条は,支給対象外国人学校の指定の要件として,就学支援金が授業料に係る債権に確実に充当される学校であること,法令に基づく適正な学校運営が行われている学校であることを定めているところ,この点に関する検討は,その性質及び内容からして専門的,技術的検
討を伴うものであり,文部科学行政に通暁する文部科学大臣の専門的,技術的判断に委ねられているものというべきである。
したがって,本件規程13条適合性の判断は文部科学大臣に委ねられており,同判断について同大臣に裁量がある。
b
本件規程13条適合性の判断において教育基本法16条1項の「不当な支配」の有無を考慮することは支給法及び本件規程13条の趣旨
等に基づくものであり,文部科学大臣においてこれを考慮することが許されないとはいえないこと
支給法にも本件省令にも,就学支援金支給の対象校とするか否かを判断する際の審査が,形式的な審査や事務的な事項についての最低限の審査に限定される旨の規定は存せず,本件規程13条の審査の範囲
も形式的な審査や事務的な事項についての最低限の審査に限定されるとはいえない。実際,本件規程13条は,就学支援金が授業料に係る債権に確実に充当される学校であること,法令に基づく適正な学校運営が行われている学校であることを支給対象外国人学校の指定の要件として定めている。

そして,教育基本法は教育の基本理念を定めた法であり,他の全ての教育関係法規の基本法たる性格を持ち,全ての教育関係法規は教育基本法に制定された基本的理念を実施するための法律として解釈されるべきものであること(同法18条参照)に照らせば,上記「法令」に教育基本法が含まれないとする理由はない。また,同法16条1項
の「不当な支配」を受ける学校は,就学支援金が授業料に係る債権の弁済として確実に充当されることが確認できる態勢等が整っているとはいえず,「高等学校等就学支援金の授業料に係る債権の弁済への確実な充当」が行われているとはいえないこと,そのような学校の運営が学校教育法の定める目標や理念に沿って適正に行われることについ
て疑念を生じさせるような場合には,我が国の高等学校の課程に類する課程を置くものとは評価し難いのであり,「法令に基づく学校の運営」が適正に行われているとはいえないことなどからしても,本件規程13条の審査において教育基本法16条1項の「不当な支配」の有無を考慮することは,当然に許されているというべきである。
以上の点は,平成22年3月5日の衆議院文部科学委員会において,「高等学校の課程に類する課程を置く」学校であることに関して,本邦の外国人学校の全てに支給法案を適用するのかとの質問に対し,文部科学大臣が,「文部科学省令において対象を定める際の客観性を保持するために,高等学校の課程に類する課程として,その位置づけが,学校教育法その他により制度的に担保されているということを規定す
ることと予定をいたしております。」と答弁していること(乙3の1)や,検討会議第4回の「高等学校の課程に類する課程を置く外国人学校の指定に関する基準等について(骨子)(案)」(乙4の3)や,検討会議第5回の「高等学校の課程に類する課程を置く外国人学校の指定に関する基準等について(報告)(案)」(甲13の資料1)の
「(3)法令に基づく適正な学校の運営について」の項目の中で,「各種学校の運営については,学校教育法,私立学校法などにおいて諸規定が設けられている。就学支援金に係る文部科学大臣の指定を受ける各種学校については,…就学支援金の管理その他の法令に基づく学校の運営が適正に行われることを改めて求めることが適当である。」
とされるなど,本件規程13条の「法令」の範囲を学校教育法及び私立学校法に限定していないこと,教育基本法が,教育の根本法であることからも,本件規程13条の「法令」に教育基本法が含まれていることは明らかである。
なお,原告らは,仮に本件規程13条にいう「法令」に教育基本法
16条1項が含まれ得るとしても,本件規程13条にいう「法令に基づく適正な運営」が実施されていないと判断されるのは,学校と他の団体との間に不当な支配・被支配に該当する関係があり,そのことによって設置者が代理受領した就学支援金が授業料に係る債権の弁済に充当されない事態が現に発生している場合,又は,少なくとも,そのような事態が生じる具体的可能性が生じている場合に限られると主張するが,法令に基づく適正な学校運営がされていないと判断される場
合が,原告らの主張するような場面に限定されていなければならないとする規定はなく,上記諸点に照らせば原告らの主張は失当である。c
本件規程13条適合性の判断の中で考慮される教育基本法16条1項の「不当な支配」の判断についても文部科学大臣に裁量があること上記aで述べたとおり,本件規程13条適合性の判断は文部科学大
臣に委ねられており,同判断について同大臣に裁量があること,教育基本法16条1項が禁止する「不当な支配」の有無については,本件規程13条の適合性判断と同様に,その性質及び内容からして専門的,技術的検討を伴うものであることからして,教育基本法16条1項の「不当な支配」の判断は,文部科学大臣の専門的,技術的判断に委ねられているというべきであり,同大臣に裁量がある。
本件不指定処分は文部科学大臣に与えられた裁量権を逸脱,濫用したものではないこと
a
文部科学大臣が本件朝鮮学校について,本件規程13条の基準に

適合すると認めるに至らないと判断したことは不合理とはいえないこと
文部科学大臣は,本件申請を受け,本件規程15条に基づき,審
査会の意見を聴くとともに,支援室をして,審査会の審査と並行して,高等学校の課程に類する課程を置く外国人学校の審査の参考とするた
め,本件朝鮮学校を含む朝鮮高級学校につき,各種の文書照会等の調査をした。この調査は,就学支援金が授業料に係る債権の弁済として確実に充当される学校であること,教育基本法等の関係法令に即した適正な学校運営をしている学校であることなどを審査する観点から行われたものである。
そして,①国内外の新聞報道,朝鮮総聯のホームページ,公安調査庁の報告等の種々の資料(乙22から33,49,52)からは,本件朝鮮学校を含む朝鮮高級学校が朝鮮総聯等と密接な関係にあり,同校において適正な学校運営がされていないと疑われたばかりか,朝鮮総聯が朝鮮高級学校を利用して資金を集めていることも疑われた。②また,支援室は,上記調査の中で,本件朝鮮学校を含む朝鮮高級学
校に対し,朝鮮総聯等との関係について回答を求めたところ,本件朝鮮学校からの回答は,朝鮮総聯等による影響を否定するような記載ではあったものの,朝鮮総聯のホームページには朝鮮総聯が朝鮮高級学校の運営等に関わっている旨の記載があり(乙22),また,本件朝鮮学校の回答の中にも,朝鮮高級学校の教職員や生徒が,客観的には,
朝鮮総聯の傘下団体に加入し,活動していることがうかがわれる内容のものがあった(乙7・1頁)ため,結局,上記①のような疑いを払しょくするには至らなかった。
文部科学大臣は,こうした事情を踏まえ,本件朝鮮学校を含む朝鮮高級学校に対する朝鮮総聯等の影響力は否定できず,その関係性が教
育基本法16条1項で禁じる「不当な支配」に当たらないことや適正な学校運営がされていることについて十分な確証を得ることができず,就学支援金を支給したとしても,授業料に係る債権が充当されないことが懸念され,本件朝鮮学校について,本件規程13条に適合するものと認めるに至らないと判断したものであって,その判断は何ら不合
理ではない。文部科学大臣のかかる判断に誤りがなかったことは,東京都による東京朝鮮学園についての報告書やアンケート等(乙51,67)からも事後的に裏付けられている。
b
本件不指定処分に当たり公安調査庁等による調査,報告を参考に

したことは何ら問題がないこと
そもそも,本件規程13条の適合性の判断は,同条が「高等学校
等就学支援金の授業料に係る債権の弁済への確実な充当など法令に基づく学校の運営を適正に行わなければならない」と定めていることや,検討会議において,学校運営の態勢に言及され,指定に関する基準等に係る報告において「高等学校の課程に類する課程を置くもの」に求められる基準において,就学支援金の管理その他の法令に基づく学校
運営の適正を求めることが適当とされていることなどからも明らかなように,単に教育内容などの教育的観点のみから行われるものではなく,金銭の出納,資金管理の適正性,法令に基づく学校の運営の適正性などの金銭の管理や学校の管理運営の観点からも行われなければならないものであり,公安調査庁や警察庁の報告等が教育行政上の観点
からされていなかったとしても,これらを判断材料として用いることに何ら問題はない。
そして,公安調査庁は,法務省設置法(平成11年法律第93号)26条及び29条並びに公安調査庁設置法(昭和27年法律第241号)に基づいて設置された破壊活動防止法の規定による破壊的団体の
規制に関する調査及び処分の請求等を行い,もって,公共の安全の確保を図ることを任務とする行政機関であり,公安調査庁がその調査対象団体である朝鮮総聯に対して行った調査,報告を軽視することはできない。また,国会における警察庁の答弁についても,朝鮮高級学校と朝鮮総聯がどのような関係にあるのか調査した上,公の国家機関と
してその実態を述べたものであって,上記金銭の出納,資金管理の適正性,法令に基づく学校運営の適正性などの金銭の管理や学校の管理運営の適正の有無を判断するための資料に含めることが認められないものとはいえない。むしろ,本件規程13条の適合性を判断するに当たっては,朝鮮高級学校の同条に関する状況を把握する必要があり,公的な行政機関から情報を取得することは,むしろ当然である。さらに,公安調査庁や警察庁の調査,報告は,本件不指定処分に当たって
の判断資料の一つにすぎないことからしても,文部科学大臣が本件不指定処分の判断に当たってこれらを参考にしたこと自体に問題があるとする原告らの主張は失当である。
国際的な観点からも本件不指定処分の違法が宣言されるべきと主張する原告らの主張に理由がないこと

本件不指定処分は,本件朝鮮学校を含む朝鮮高級学校について,支給対象外国人学校の指定要件である本件規程13条の基準に適合していると認めるに至らないことからされたものであり,人種差別に基づいてされたものではない。人種差別撤廃委員会等の所見は,我が国の就学支援金制度の仕組みや,支給法,本件省令,本件規程,本件規程13条の基
準を踏まえたものでも,朝鮮高級学校や朝鮮総聯等に対する具体的な事実調査を行った上でされたものでもないし,適正な学校運営がされていないと疑われるような事情等があったことを踏まえてされたものでもない。人種差別撤廃委員会に対しては,文部科学省から,人種差別撤廃条約に係る審査において,差別ではない旨回答しているところである。


本件省令改正が支給法2条1項5号の委任の範囲を逸脱するものであるか否か(争点2)

原告らの主張
本件不指定処分の真実の理由が,政治的外交的理由により本件省令1
条1項2号ハを削除した点にあること
上記⑴ア

cで主張したとおり,本件不指定処分は,政治的・外交的
理由に基づくものであり,実際,本件不指定処分に至るまで本件規程13条の適合性は問題となっておらず,上記⑴ア

eで主張したとおり,

審査会での審査を継続することを妨げる事情はなく,実際に審査が継続していたのにもかかわらず,本件省令改正が行われて本件不指定処分がされた結果,朝鮮高級学校に対する審査は,審査会としての結論が出されないまま強制的に打ち切られた。
すなわち,審査会において引き続き審査を継続させて本件規程15条に基づき意見を述べさせた場合,既に不指定とすることを決定していた「政府全体としての方針」と矛盾する意見が述べられることが容易に想
定される状況にあったのであり,文部科学大臣は,上記「政府全体としての方針」を実現するため,審査会の意見を聴かないまま審査を打切りとし,不指定処分を行うために本件省令改正を行ったのである。そして,本件省令改正により審査会における審査が打ち切られ,本件規程13条に適合すると認めるに至らなかったことになり,本件不指定処分が実現
したものといえる。
以上より,本件不指定処分は,本件省令1条1項2号ハの削除が先行し,判断の終期が恣意的に決定された結果された処分であって,本件不指定処分の主たる理由は本件省令改正にあるものと認められる。
このことは,審査会の審査が本件省令1条1項2号ハの削除によって
打切りとなったこと,本件不指定処分に係る「決裁・供覧」文書(乙65)の件名や件名のすぐ下にある伺い文の記載からも明らかである。本件省令1条1項2号ハの削除(本件省令改正)が法の委任の趣旨に反すること
a
法の委任の趣旨及び仕組み
支給法は,「教育の機会均等に寄与することを目的と」し(同法1条),「全ての意志ある後期中等教育段階にある生徒の学びを保障」すべく制定されたものであり,そのため,支給法は,就学支援金を生徒に代理して受領する高等学校等の中に,「高等学校の課程に類する課程を置くものとして文部科学省令で定める」各種学校を定めたのである(同法2条1項5号)。このように,「高等学校の課程に類する課程」につき,支給法が本件省令に委任した趣旨は,教育行政につい
ての専門技術的な知見に基づき,「高等学校の課程に類する課程」を置くか否か(後期中等教育を行っているか否か)について制度的・客観的な判断基準を設けることにより「高等学校の課程に類する課程」を置く学校を適切に認定し,もって「全ての意志ある後期中等教育段階にある生徒の学びを保障」することにある。また,支給対象外国人
学校の指定手続において「政治的外交的配慮を行ってはならず」,「教育上の観点から客観的に判断すべき」であることは,法案審議の段階で正式な政府統一見解として公に確認され,これを前提に法律が可決成立し,さらに法律制定後も繰り返し確認されていたのであり,このことは,法の委任の趣旨の確定に当たって当然に考慮されなけれ
ばならない。
b
重要な権利利益の侵害
支給法は,社会権規約13条2項⒝の遵守(留保の撤回)を目指したものであり,支給法に基づく原告らの受給資格を取得する権利又は法的利益は,社会権規約の上記規定を具体化したものであるから,支
給法に基づく,原告らの権利又は法的利益は,憲法26条が保障する教育を受ける権利と分かちがたく結びついており,教育の機会均等の趣旨に合致する重要な権利利益であって,この観点からも行政機関の裁量は狭いというべきである。
c
本件省令1条1項2号ハの削除は朝鮮高級学校の生徒が就学支援金を受ける道を閉ざすもので支給法の趣旨に反する
本件省令1条1項2号ハが設けられたのは,本件省令1条1項2号イ,ロには該当しないが,朝鮮高級学校のように,高等学校と同水準の普通教育を行い,卒業生の大学入学資格も認められている高等学校と同等性を有する学校が存在するという現実を直視したからである。そして,実際に,ホライゾンジャパンインターナショナルスクール及
びコリア国際学園が本件省令1条1項2号ハによって指定されている。本件省令1条1項2号ハが削除されれば,本件省令1条1項2号イ,ロに該当しない朝鮮高級学校は支給法に基づき指定される余地はなくなるから,同校の生徒は再申請の場合を含めて就学支援金受給の可能性を一切閉ざされることになる。

このような就学支援金受給の可能性を閉ざす省令改正は,「高等学校の課程に類する課程」を置く学校を適切に認定し,もって「全ての意志ある後期中等教育段階にある生徒の学びを保障」するという支給法の委任の範囲を逸脱しており,違法無効である。
d
被告の主張が失当であること
被告が本件朝鮮学校を含む各朝鮮中高級学校についても,本件省令1条1項2号イ,又は同号ロによる指定可能性を主張する点については,本件省令1条1項2号ハの削除により,同規定によって本件朝鮮学校の生徒が就学支援金を受給することができなくなったという事実
は変わらず,将来の本件朝鮮学校の学校教育法制上の位置づけの変更可能性は何ら関係がない。この点を措いても,本件省令1条1項2号イに該当するためには,日本と北朝鮮との間に国交が回復し,「大使館を通じて日本の高等学校の課程に相当する課程であることが確認できるもの」となる必要があり,本件朝鮮学校の生徒らの努力によって
解決し得るものではなく,本件省令1条1項2号ロに該当するためには,欧米圏の言語による教育を実施して国際的に実績のある学校評価団体による認証を受ける必要があるところ,本件朝鮮学校が朝鮮語という民族語による民族教育を行う外国人学校という特質を維持することができなくなることを意味しており,いずれの主張も失当である。また,本件規程13条適合性の審査に限界があるとの主張については,そもそも本件規程が,指定の申請にあたり提出すべき必要書類(14条),文部科学大臣の学識経験者等で構成される会議に対する意見の聴取(15条)を定めるにとどまり,指定に係る審査において,強制的に立入調査を実施して書類を押収することを予定しておらず失当である。そもそも,被告の主張は,本来支給法が予定していない事
項を調査・審査することを前提とするもので法の趣旨に反する。そして,本件朝鮮学校においては,申請に当たり必要書類を提出し,その後も文部科学省の指示に従って追加書類の提出を行い,担当者の訪問を受けるなど,全て本件規程の定めに従い,文部科学担当者の指示に従って必要な作業を行っており,書類の提出を拒んだり,訪問を拒ん
だりしたことはない。さらに,ホライゾンジャパンインターナショナルスクール及びコリア国際学園は本件省令1条1項2号ハによって指定されているところ,これらの学校については審査に支障はなく,指定の判断に至ったのに対し,本件朝鮮学校についてだけ,どのような支障があり得たのかについて被告が具体的な主張立証を行っていない
点からも,認定の有無を判断するための審査において実際には支障がなかったことを裏付けるものである。
なお,証人B(以下「B証人」という。)の文部科学省においては,本件省令1条1項2号ハの削除に当たり,支給法の委任の趣旨に反するかどうか全く検討していない旨の証言は,中央省庁である文部科学
省が国会の制定法を無視したということは到底考えられないことからも,信用できないというべきである。

被告の主張
以下において述べるとおり,本件省令改正は,支給法の委任の趣旨を逸脱するものではない。また,そもそも,本件朝鮮学校が本件規程13条の基準に適合するものとは認めるに至らず,支給対象外国人学校に指定
することはできないとした文部科学大臣の判断が不合理なものとはいえない以上,本件省令1条1項2号ハの削除が支給法の委任の趣旨を逸脱するものか否かは,本件不指定処分の適法性の判断を左右するものではない。
本件省令改正は支給法の委任の趣旨を逸脱するものではないこと
支給法2条1項5号に定める「高等学校

の課程に類する課程を置く」ということの内容を含めてどのような各種学校を当該課程を置くものとして就学支援金支給の対象学校とするかの判断は,その確認方法も含めて,教育行政に通暁し,専門的,技術的検討をすることができる文部科学大臣に委ねられている。したがって,文部科学省令である本件省令において就学支援金支給の対象学校とする高等学校の課程に類する課程を置く各種学校の基準や評価方法をどのように定めるかについては,支給法の委任の趣旨を逸脱しない範囲内又は支給法実施のための細則的事項を定める範囲内において,文部科学大臣に専門的,技術的な観点からの裁量権が認められている。

そして,本件省令改正は,本件朝鮮学校を含む朝鮮高級学校について,指定に係る審査の過程において指定の基準を満たすかどうかの審査に限界があることが明らかになったこと,他方,当時,同規定によって指定した一部の外国人学校以外に同規定による指定を求める外国人学校はなく,同規定を存続させる必要性もないことを理由とするものであって,
政治的外交的理由によって行われたものではない。基準適合性の審査に限界があることが判明した規定について,これを放置せずに削除する省令改正を行うことが文部科学大臣の裁量の範囲内であることは当然であり,本件省令改正は支給法の委任の趣旨を逸脱するものではない。また,本件省令1条1項2号ハの規定は,「高等学校の課程に類する課程」を有することの制度的担保がない場合にも,「高等学校の課程に類する課程」を有すると認められる場合に,例外的に支給対象外国人学校として指定する場合の根拠となる規定であり,どのような学校を支給対象外国人学校として指定するかは文部科学行政に通暁する文部科学大臣の専門技術的判断に委ねられているのである。このような本件省令1条1項2号ハの規定の位置づけを踏まえれば,指定要件に適合するかど
うかの審査に限界があることが判明した同規定について,これを放置せずに削除する本件省令改正が支給法の委任の趣旨に反しないことは明らかである。
なお,本件省令改正は,東京朝鮮学園の本件申請後にされたものであるが,上記のような諸事情を踏まえ,文部科学大臣において,基準適合
性の審査に限界があることが判明した規定を放置せずに削除することが裁量の範囲にあることが当然であることは上記のとおりであるし,そもそも本件省令改正は,東京朝鮮学園に新たな義務を課したり既存の権利を奪うようなものではなく,東京朝鮮学園において従来と同様の態勢の下で従来どおりの教育活動を行うことは何ら妨げられていないのである
から,本件省令改正が東京朝鮮学園の本件申請後にされたことは,本件省令改正の適法性を左右するものではない。
本件省令改正は政治的理由により行われたものではないこと
本件省令改正は,

本件朝鮮学校の審査過程

において指定の基準を満たすかどうかの審査に限界があることが明らかになったこと,他方,当時,同規定によって指定した一部の外国人学校以外に同規定による指定を求める外国人学校はなく,同規定を存続させる必要性もなかったことから行われたものであり,何ら政治的外交的理由によるものではない。
原告らは,下村文部科学大臣の「外交上の配慮などにより判断しないと,民主党政権時の政府統一見解として述べていたことについては,当然廃止」とする発言をもって本件省令改正が政治的理由により行われたものと主張するが,同発言は,政権が交代した以上,それまでの政府見解をいったん白紙に戻した上で新たな方針で運営を行うという当然のことに言及したものにすぎず,これをもって本件省令改正が政治的理由によるものであるとするのは誤りである。

本件省令1条1項2号ハを削除しても朝鮮高級学校の生徒が就学支援金を受給する可能性を一切閉ざすことにはならないこと
原告らは,本件省令改正により,本件省令1条1項2号ハが削除されれば,朝鮮高級学校の生徒が就学支援金支給を受ける可能性が一切閉ざされることとなるから,そのような省令改正は支給法の委任の範囲を逸
脱しており違法である旨主張する。
しかしながら,そもそも,支給法は,外国人学校を含む各種学校については,「高等学校の課程に類する課程を置くものとして文部科学省令で定めるものに限り」(同法2条1項5号)と定め,その限りで就学支援金の支給対象となることができる旨を規定しているにすぎず,原告ら
がいうような「全ての意志ある後期中等教育段階にある生徒」を対象としているものではない。外国人学校が「高等学校の課程に類する課程」を有するものと認められなかったために就学支援金の支給を受けられなかったとしても,そのことは,法令の定める支給要件を充足するものと認められなかった結果である。支給法は,そもそも,法令の定める支給
要件を充足するものとは認められない外国人学校について支給対象外国人学校とはしていないのである。
また,本件朝鮮学校を含む各朝鮮高級学校は,制度上,支給法2条1項1号ロの「高等学校」にもなり得るし,本件省令1条1項2号イによる指定,同号ロによる指定もあり得るところであり,同号ハによる指定を受けなければ就学支援金の支給対象校となることができないということはない。

以上より,原告らの主張には理由がない。


本件不指定処分が審査会の意見の聴取について定めた本件規程15条に違反して違法となるか否か(争点3)

原告らの主張
審査会の結論を明示することが制度上要請されていること

a
審査会は,本件設置決定の定めに基づいて設置されたものであるところ,本件設置決定は本件規程15条,17条に定める「教育制度に関する専門家その他の学識経験者で構成される会議」の具体的内容を定めるものであり,本件設置決定の根拠は本件規程にあるとともに,本件規程の制定根拠は,支給法2条5号に由来することからすると,
審査会が支給法に由来する制度上の正規の合議制審査機関であるものといえる。
b
審査会の議事運営方法は明文で定められ,会議体としての結論を示すことが制度上要請されていたこと

審査会は,本件運営決定に則って運営されるものであるところ,①本件規程に定める指定の基準に基づき審査を行うなど,専門技術的見地から客観的に判断するよう制度設計され,②また,単に文部科学大臣から提供された情報のみならず,実地調査の権能を有し,自ら情報収集し,具体的な審査をすることが予定されており,③さらに,審査
会の定足数が過半数とされ,議事は出席した委員の過半数で決することとされ,「可否同数のときは,座長の決するところによる」として合議体としての意思決定手続が詳細に規定される(本件運営決定の1項)など,客観的な基準に基づき,実地調査という情報収集についての権能も行使でき,個々の委員の意見ではなく会議体としての意見を示すことが求められる点で,指定の可否について具体的根拠を持った結論を示すことが制度上要請されていたというべきである。

c
審査会への諮問の法的位置づけ
また,本件規程15条が,文部科学大臣が本件省令1条1項2号ハの「指定を行おうとするとき」は「あらかじめ」,審査会の意見を「聴くものとする」と定めているところ,一般に,法令において「…
ものとする」という用語は,行政官庁等に対して一定の行為を義務付ける場合に用いられていることからすると,本件規程15条に定める審査会の意見聴取手続が,支給法に由来する制度上の義務であることは明らかである。
したがって,文部科学大臣は,自らが選任した教育制度に関する専
門家等によって組織された審査会の意見を聴いた上で指定の可否を判断すべきであり,さらに,審査会が客観的な基準に基づき十分な調査審議を経た上で形成した結論に対しては,これを最大限尊重すべきであって,特段の事情のない限りこれに反する判断を行うことは許されないというべきである。

文部科学大臣が,審査会の意見を聴かないで本件不指定処分をしたことが違法であること
本件省令1条1項2号ハの「高等学校の課程に類する課程」に該当し,支給対象外国人学校に該当するか否かの判断をするに当たって審査会の意見を聴くべきであること,本件不指定処分に当たり文部科学大臣が審
査会の意見を聴かずに判断したことは,既に述べたとおりであるが,一般に,行政庁が行政処分をするに当たって,諮問機関に諮問し,その決定を尊重して処分をしなければならない旨を法が定めているのは,処分行政庁が,諮問機関の決定(答申)を慎重に検討し,これに十分な考慮を払い,特段の合理的な理由のない限りこれに反する処分をしないように要求することにより,当該行政処分の客観的な適正妥当と公正を担保することを法が所期しているためであると考えられるから,かかる場合
における諮問機関に対する諮問の経由は,極めて重大な意義を有するものというべきである。したがって,行政処分が諮問を経ないでされた場合は勿論,これを経た場合においても,当該諮問機関の審理,決定(答申)の過程に重大な法規違反があること等により,その決定(答申)自体に法が右諮問機関に対する諮問を経ることを要求した趣旨に反すると
認められるような瑕疵があるときは,これを経てされた処分も違法として取消しを免れないというべきである(最高裁昭和42年(行ツ)第84号同50年5月29日第一小法廷判決・民集29巻5号662頁参照)。
そして,本件不指定処分をするに当たって,文部科学大臣は,審査会
の意見を聴いておらず,少なくとも審査会の結論が示される前に本件不指定処分がされているのであるから,本件不指定処分は,その過程に重大な違法が存するというべきであって,違法な処分というべきである。イ
被告の主張
審査会の意見は,文部科学大臣の判断の際の考慮要素の一つであるこ

本件規程13条に定める指定要件を充足するか否かの検討は,その性質及び内容からして自ずと専門的,技術的検討を伴うものであり,国会での議論や本件規程の制定経緯からみても,まずは教育行政に通暁する文部科学大臣の専門的,技術的判断に委ねられているのであって,審査会の意見についても,同大臣の上記裁量判断の考慮要素の一つにすぎない。
すなわち,支給法は,そもそも審査会を設置すること自体何ら規定しておらず,審査会は法令の根拠を有するものではなく,文部科学大臣が審査会の意見を聴くことが法令上要請されているものでもない。本来は,あくまで文部科学大臣の権限と責任においてされるべき処分につき,本件省令1条1項2号ハによる指定の際に,教育上の観点から客観的に判断するという点に鑑み,その判断の際の考慮要素の一つとして,専門家等から構成された会議で同大臣が定めるものの意見を聴くことが判断に資するとされ,文部科学大臣により,文部科学大臣決定により本件規程
が設けられたのである。そのことは,本件規程15条が「文部科学大臣は,規則第1条第1項第2号ハの規定による指定を行おうとするときは,あらかじめ,教育制度に関する専門家その他の学識経験者で構成される会議で文部科学大臣が別に定めるものの意見を聴くものとする」と定めるのみで,「議により」などの文言により規定されていないことからも
裏付けられる。
また,本件規程15条は,平成22年6月30日に行われた第2回検討会議における意見(乙4の1・5頁)を踏まえ,大学認可の際に文部科学大臣が大学設置・学校法人審議会に諮問する制度(学校教育法95条,同法施行令43条)を参考として制定された規定である。そして,
大学設置・学校法人審議会の答申において,審議会への諮問に対する答申が出た場合に,答申どおりに認可しなければならないということまで法律が規定しておらず,文部科学大臣が,一定の要件を満たせば当然に認可しなければならないという拘束を受けているわけではないことなどと指摘されているところ,本件規程15条についても別異に解する理由
はないことから,本件規程15条も文部科学大臣の判断を拘束するものとはいえない。
審査会の意見を踏まえて本件不指定処分がされたこと
本件朝鮮学校を含む朝鮮高級学校の指定の可否については,審査会での審査の過程で,朝鮮総聯との関係など適正な学校運営が行われるかどうかにつき懸念が示され,これらの点についての真偽の確証を得ることには限界があるなどの指摘もなされていたところ,こうした審査状況に
照らせば,本件朝鮮学校を含む朝鮮高級学校の指定の可否について,審査会で明確な結論を出すことは困難であったものといえる。
そして,文部科学大臣は,第4回から第7回まで計4回にわたって開催された審査会において,本件朝鮮学校を含む朝鮮高級学校の本件規程13条適合性について明確な結論を出すことは困難である旨の意見が出
されていたこと(甲70から73),A証人ら文部科学省職員からも,朝鮮高級学校に対する審査に限界がある旨の報告を受けたことから,これらの意見も考慮した上で,本件朝鮮学校が同条に定める基準に適合するものとは認めるに至らないと判断し,本件不指定処分をしたものであり,審査会の意見を踏まえて本件不指定処分を行ったものといえる。


本件不指定処分が原告らの権利,利益を不当に侵害するものであるか否か(争点4)

原告らの主張
支給法は,社会権規約13条2項⒝の遵守(留保の撤回)を目指したも
のであり,支給法に基づく原告らの受給資格を取得する権利又は法的利益は,社会権規約の上記規定を具体化したものであるから,支給法に基づく,原告らの権利又は法的利益は,憲法26条が保障する教育を受ける権利と分かちがたく結びついており,教育の機会均等の趣旨に合致する重要な権利利益であって,文部科学大臣の行った本件不指定処分は,
原告らの受給資格を取得する権利又は法的利益を直接侵害するものである。

被告の主張
本件不指定処分は,本件朝鮮学校が本件規程13条に適合すると認めるに至らないことを理由としてされたものであり,本件規程に定める指定の基準及び手続等を離れて,原告らのみを差別して不指定としたというものではない。そして,指定の基準を満たす学校及びその生徒等とその
基準を満たさない学校及びその生徒等との間で扱いが異なるのは,当然のことであり,これが不合理な差別的取扱いに当たるものではない。繰り返し主張したとおり,本件朝鮮学校については,指定の基準を満たさなかったため本件不指定処分がされたのであって,原告らの主張は,指定の要件を満たさない結果として就学支援金の受給権者とならなかっ
たことを「権利又は法的利益を直接侵害する」などとして議論をすり替えるものであり,失当というほかない。
なお,被告は,本件不指定処分が違法であった場合においても原告らの権利又は法的利益を何ら侵害しないという主張をするものではない。⑸

国家賠償法6条の相互保証の有無(争点5)

原告らの主張
原告らは,韓国籍又は朝鮮籍であり,このうち韓国籍の原告らについては,韓国には国家賠償法に相互保証の規定があることから日本の国家賠償法の適用があり,朝鮮籍の原告らについては,韓国籍と二重国籍となることから韓国の国家賠償法の相互保証規定により,同様に日本の国家
賠償法の適用がある。
したがって,原告らの請求は国家賠償法6条を満たしている。

被告の主張
外国人である原告らについては,日本国に対する損害賠償請求権が認め
られるには,当該外国の国家賠償制度において,「相互の保証」(国家賠償法6条)があることを要する。そして,かかる相互保証があることの主張立証責任については,当該外国人にあるものと解されている。しかしながら,本件においては,原告らの国籍が書証をもって明らかにされておらず,日本人が当該国の公務員の違法行為によって被害を受けた場合に,当該外国に対して国家賠償を請求することができたとの主張,立証もされていないから,相互保証があるとは認められないというべき
である。
第3

争点に対する判断

1
認定事実
前提事実並びに後掲各証拠及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認めら
れる。


支給法案に係る内閣法制局説明資料(甲38)の記載
支給法案に係る内閣法制局説明資料(平成22年1月9日作成)には,支給法案において,就学支援金制度の適用対象となる専修学校及び各種学校が,専修学校及び各種学校のうち「高等学校の課程に類する課程を置くものとし
て文部科学省令で定めるもの」とされていることの説明として,「高等学校等就学支援金制度は,広く後期中等教育段階に属する生徒に係る教育費負担を軽減するために創設するものであることから,専修学校及び各種学校における高等学校の課程に類する課程についても,本制度の対象とすることとしている。なお、文部科学省令で定めるものに限定するのは,専修学校及び各
種学校における教育内容が多種多様であるからである。」,「具体的には,学校教育法上『…中学校…を卒業した者…に対して,中学校における教育の基礎の上に,心身の発達に応じて…教育を行う』(第125条第2項)こととされている専修学校高等課程などを対象として定める方向で検討している。この他,外国人学校は学校教育法上専修学校の対象から除かれていることか
ら,各種学校の認可を受けている外国人学校であって一定の基準を満たすものについても対象とすることを検討している。」との記載がされている(甲38・8頁)。


支給法案に係る国会審議の状況

衆議院文部科学委員会における審議状況
平成22年3月5日の衆議院文部科学委員会における質疑(乙3の
1)
a
川端文部科学大臣は,①専修学校及び各種学校のうち「高等学校の課程に類する課程を置くものとして文部科学省令で定めるもの」として就学支援金制度の対象となるものが既に決まっているか否かという趣旨の質問(馳浩委員)に対し,「省令でございますので,法律成立
後に定めるということでありまして,(中略)国会の議論も踏まえることも必要であろうと認識しておりますので,現時点で決まってはおりません。」と答弁し,②省令で定める基準は普遍的であるべきであり,政治状況,外交状況等により左右されてはならないのではないかという趣旨の質問(馳浩委員)に対し,「私も,この省令で定めると
きの基準はたった1つでありまして,高等学校の課程に類する課程ということが基準でありまして,その判断としては,先生御指摘のように普遍的,客観的に評価されるというものであるべきだと思っております。」と答弁し,③「朝鮮高校」を排除することを内閣総理大臣等が示唆する発言をしているが民族教育を差別するつもりかという趣旨
の質問(馳浩委員)に対し,「(前略)その学校教育施設が高等学校の課程に類する課程であるかどうかを判断するということだけを物差しとして決めていきたいと思います。総理もいろいろな論点があるという中のことを御意見として申されたんだと思いますし,中井大臣は担当のお立場としての思いを述べられたんだと思いますが,所管する
立場としては、委員御指摘のとおり,普遍的に,別の言葉で言えば客観的に基準で判断をするものだと思っております。」と答弁し,④「朝鮮高校」を「拉致,ミサイル,核問題」があるから外交的に除外するとの方針なのかという趣旨の質問(馳浩委員)に対し,「(前略)何度も申し上げますように,その学校が高等学校の課程に類する課程であるかどうかということを普遍的,客観的に判断するという立場で決めてまいりたいと思いますので,今御指摘のような問題は判断の対
象ではございません。」と答弁した(乙3の1・10頁)。
b
また,川端文部科学大臣は,支給法案は「高等学校の課程に類する課程を置く」本邦内の外国人学校の全てに適用するということになるのかという趣旨の質問(宮本岳志委員)に対し,「(前略)文部科学省令において対象を定める際の客観性を保持するために,高等学校の
課程に類する課程として,その位置づけが,学校教育法その他により制度的に担保されているということを規定することと予定をいたしております。そういう意味から,自動的に外国人学校の高等課程に類するものすべてが今の時点で対象になっているということではありません。」と答弁した(乙3の1・16頁)。

c
さらに,川端文部科学大臣は,支給法案で朝鮮高級学校を除外すべきか否かにつき現在どのような状況になっているかという趣旨の質問(松本龍委員)に対し,「(前略)専修学校でどういうものが入れるのか,各種学校でどういうものが入れるのかという,要するに,まさに高等学校の課程に類する課程というものをどういう物差しで評価す
るのかということにすべての議論が集約されるのではないかというふうに思っております。その基準と確認方法についていろいろ検討しているところであります。加えて,この国会の審議も踏まえながら,最終的に省令として決めたいというふうに思っております。」(乙3の1・20頁)と答弁した。

d
鈴木寛文部科学副大臣(以下「鈴木副大臣」という。)は,支給法における支援金制度の対象となる「各種学校」(支給法2条1項5号参照)につき,省令でその定義を定めることとした理由の説明を求める趣旨の質問(吉田統彦委員)に対し,「(前略)高等学校の課程に類するかどうかということがまさに省令で定める内容でございます。専修学校あるいは各種学校というのは,その内容あるいは形態が非常
に多種多様でございまして,これは極めて技術的,専門的事柄であるというふうに考えております。」と答弁した(乙3の1・36頁)。e
川端文部科学大臣は,①支給法における支援金制度の対象となる「各種学校」についてどのような線引きをするかという趣旨の質問
(下村博文委員)に対し,「(前略)高等学校の課程に類する課程としてその位置づけが学校教育法その他により制度的に担保されているという概念から,基本的には入りません。そういう意味では,制度的に担保されていないから原則として支給対象とはしないという方向を今検討しておりますけれども,学校教育法上,専修学校にはなれない
ために例外的に各種学校の認可を受けているのが外国人学校でございます。そういう意味で,例外的に各種学校の認可を受けているもので一定の要件を満たすものについては,就学支援金の支給対象とすることとしたいと考えております。なお,その際の要件として,客観的に我が国の高等学校の課程に類する課程であることが認められるものと
いうことでそのような外国人学校を指定することを考えておりまして,今その中身は検討しておるところでありますし,国会の議論を踏まえながら最終的に決めたいと思っております。」と答弁し,②無償化の対象から朝鮮高級学校を除外することを示唆するような内閣総理大臣等の発言につき川端文部科学大臣がどのように返答をしたかに関する
質問(下村博文委員)に対し,「(前略)文部科学省としては,外交上の配慮とかいろいろなこと,そういう観点でこれを判断の材料にする考えはありません…(中略)制度上,先ほど来きょうも申し上げておりますように,高等学校の課程に類する課程というものをどう客観的に判断できるかということだけを物差しにさせていただきたい」と答弁し,③北朝鮮と我が国とは国交がなく,教育内容のチェックもすることができないにもかかわらず,朝鮮高級学校を就学支援金制度の対象としていいのかという趣旨の質問(下村博文委員)に対し,
「(前略)外国人学校は,どういう客観的物差しでどういう方法でそれを確認するのかというのが,みんなにわかりやすく,そしてはっきりとある種の制度的な客観的担保がないと,おっしゃるように国とし
ての責務を果たすことができないということの中で,まさにこの国会の議論も踏まえて検討させていただきたいし,いろいろな意見をまたいろいろお聞かせもいただきたいと思っております。」と答弁した(乙3の1・38頁から39頁。なお,この答弁中の「それを確認する」とは,「高等学校の課程に類する課程であることを確認する」と
いう趣旨をいうものと解される。)。
平成22年3月10日の衆議院文部科学委員会における質疑(乙3の2)
川端文部科学大臣は,朝鮮高級学校に対する対応を質す趣旨の質問(川口浩委員)に対し,「(前略)今回,『省令で定める』の対象とし
ては,基本的には,各種学校というのは,高等学校の課程に類する課程とみなせるという制度的担保がありませんので基本的には対象外としたいと思っているのですが,各種学校の中の外国人学校だけは,制度上,専修学校の高等課程になれないということで適用を除外されているので,なれないということの中で置かれているから,実質上,高等学校の課程
に類する課程とみなせるかどうかを判断基準をしっかりつくって判断をすることを省令で決めたいというふうにしておりますので,今お問いの部分のいろいろな議論が,この委員会,あるいは御視察,あるいは参考人等々であったと思いますが,私の立場で言えば,客観的にこの学校が高等学校の課程に類する課程を有するというふうに判断するのに,どういう基準,方法でやるかということを今一生懸命検討している」と答弁した(乙3の2・5頁)。
また,川端文部科学大臣は,外交上の問題を考慮して,支給法における支援金制度の対象となる「各種学校」に関する省令に含めるかの判断基準とするのかという趣旨の質問(馳浩委員)に対し,「文部科学省と致しましては,各種学校の対象範囲の議論については,先ほどありまし
たような民族教育の有無という観点,国交があるかないかという観点で判断するものではないということで,あくまで高等学校の課程に類する課程ということでの位置付けをどう担保するか。(中略)今お問い合わせの部分でいえば,民族教育の有無とか,外交上の配慮という観点や,あるいは国交の有無という観点でこれを判断するというものではないと
いうことでございます。」と答弁した(乙3の2・23頁)。
平成22年3月12日の衆議院文部科学委員会における質疑(甲6)質疑に先立って,松野頼久内閣官房副長官から,「(前略)就学支援金の支給対象について,いわゆる高校実質無償化法案は,日本国内に住む高等学校等の段階の生徒が安心して教育を受けることができるよう
にするものであります。このために,外国人学校の取り扱いに関しましても,外交上の配慮などにより判断するべきものではなく,教育上の観点から客観的に判断するべきものであり,政府としては以下のように考えるものでございます。本法案においては,外国人学校を含む専修学校及び各種学校に係る就学支援金の支援の対象範囲については,高等学校
の課程に類する課程として位置づけられるものを文部科学省令で定めることとしております。これまでの各大臣の発言につきましては,高等学校の課程に類する課程としての位置づけを判断する基準や方法についてはさまざまな論点があることを述べたものでございます。文部科学省令については,国会における審議も踏まえつつ,文部科学大臣の責任において判断するものでございます。」との説明がされた(甲6・1頁)。そして,上記のような政府見解ではこれ以上質問をすることができな
いとする下村博文委員の発言に対して,川端文部科学大臣は,「先ほどの松野官房副長官の御発言は,当然ながらこの審議の経過,そして私の発言も踏まえた政府の統一見解でございます。加えて,総理及び関係閣僚が発言をしてきた経過も,政府として統一的に,これまでの各大臣の発言は,高等学校の課程に類する課程としての位置づけを判断する基準
や方法については,さまざまな論点があることを述べたものであるというまさに統一見解を出したところでありまして,最終的に,政府統一見解として,文部科学省令については,国会における審議も踏まえつつ,文部科学大臣の責任において判断するものであるということを改めて政府として確認したところでございます。」と述べた。


参議院文教科学委員会における審議状況
平成22年3月19日の参議院文教科学委員会における質疑(乙3の4)
川端文部科学大臣は,朝鮮高級学校が支給法における支援金制度の
対象となるか否かを問う趣旨の質問(大島九州男委員)に対し,「(前略)各種学校はまさに任意,自由な学校でありますので,基本的には対象にならない。ただ,外国人学校だけは制度上専修学校になれない規定になっておりますので,この学校に関してだけは高校の課程に類するものとみなせるかどうかを客観的に判断できるようにして判定すべきだと
いうふうに思っておりまして,国会でもいろいろな御議論がありますが,その部分で客観性を担保する仕組みを今議論している」と答弁した(乙3の4・4頁)。
平成22年3月25日の参議院文教科学委員会における質疑(乙3の5)
川端文部科学大臣は,支給法の成立後に定められることが予定されている支給対象外国人学校の範囲についての省令の内容に関する質問(水岡俊一委員)に対し,「(前略)外国人学校については,教育内容等について法令上特段の定めがなく,本国における正規の課程と同等の教育活動や独自の教育課程に基づく自由な教育活動を行っており,我が国の学校制度をそのまま当てはめて判断することは適当ではないと考えられ
ます。このため,外国人学校について高等学校の課程に類する課程であることを制度的に担保するための要件として,一つは,我が国の高等学校に対応する本国の学校と同等の課程であると公的に認められること,二番として,国際的に実績のある評価機関による客観的な認定を受けていることとし,これらの要件を満たすものを支給対象としたいと考えて
おります。さらに,これらの二つの方法以外にも,客観的に我が国の高等学校の課程に類する課程であることが認められる基準や方法について,教育の専門家等による検討の場を設け,関係者の意見も聞きながら検討していきたいと考えています。(中略)いわゆる教育専門家による検討の場で基準と評価方法と判定の仕組みを御議論いただいて,それに基づ
いて決めるという第三の道をつくろうと考えております。」と答弁した(乙3の5・3頁)。
平成22年3月30日の参議院文教科学委員会における質疑(乙3の6)
川端文部科学大臣は,朝鮮高級学校について,授業内容がいかなるも
のか確認する方法があるのかとの質問(義家弘介委員)に対し,「(前略)何らかの評価基準を,文部科学省が決めるという前に,客観的に,制度的,専門的に議論をいただいて,中身をどう判断するのか,申し上げましたように,国交がない,国際の認証機関の認証を受けていないという人たちを何かの基準と方法で判断できるかどうかを検討の場を通じて御議論いただいて,それを踏まえて私たちとしては判断をしたいということを申し上げているところでございます。」(乙3の6・6ページ)
と答弁した。さらに,鳩山由紀夫内閣総理大臣(当時)は,朝鮮高級学校が就学支援金支給の対象学校とする指定の対象となるか否かとの質問(同委員)に対し,「(前略)最終的に,これは当然,(中略)検討の場を設けるということになったと。その検討の場でしっかりと検討するということでありまして,決して丸投げをするということではなくて,
むしろこのようなことをすべて文科省の中で決定するというよりも,むしろ第三者的な判断というものをしっかりと求めて,そこでより正しい判断というものがなされることが必要ではないかということで検討の場がつくられたと思っております。」と答弁した(乙3の6・6頁)。⑶

検討会議における議論等

検討会議は,平成22年5月26日から同年8月19日にかけて5回にわたり会議を開き,第1回から第4回までの会議においては,「高等学校の課程に類する課程」が満たすべき基準や「高等学校の課程に類する課程」の審査手続,審査体制,審査方法等の事項について検討し,第5回の会議においては「高等学校の課程に類する課程を置く外国人学校の指定に関す
る基準等」について検討した上で,同月30日付けで,指定に関する基準等に係る報告を取りまとめた(甲9から14,乙4)。

平成22年5月26日に開催された第1回の会議においては,「学校運営」も議題に上り,委員から「情報公開・学校運営に関して,財務諸表を
毎年徴収するなど各種学校に課せられた義務に加え,上乗せして求めることが必要な事項もあるのではないか。」といった発言がされた(乙4の1)。

平成22年6月30日に開催された第2回の会議においては,委員から「判断の客観性を担保する仕組みを組み込んでおくというのであれば,大学の設置認可などからすれば,第三者の意見を聴くというのが普通のやり方だろう。」との発言がされた(乙4の1)。


平成22年7月16日に開催された第3回の会議において配布された資料1の「5.学校運営」の項目中には,①私立学校法や学校教育法などの規定が関係規定として引用される(ただし,教育基本法の規定は引用されていない。)とともに,②「基準のイメージ」として,管理及び経営の方法が適切であることが挙げられ,③「考え方」として,私立学校法におい
ては,必要な施設・設備・資金,経営に必要な財産を有しなければならない旨の規定,財産目録等の備付け及び閲覧の規定があるとの指摘がされた上で,「この事項に基づき,法令上求められている管理及び経営に関する規定の確実な実施を求めてはどうか」,「具体的には,私立学校法に基づく財産目録等の作成・備付等,学校教育法施行規則に基づく学校の自己点
検・評価の実施と公表,学校教育法に基づく積極的な情報提供について,実施の実質化を図ること,就学支援金の管理の適正といったことを求めてはどうか。」との記載がされている(甲11,乙4の2)。
また,第3回の会議においては,委員から,「就学支援金を代理受領する以上は,わが国の法令を遵守することはもちろんのこと,学校運営の体
制がきちんとしているかどうかという観点が重要」といった発言や,「文部科学省としては,就学支援金の支給を適正に行うために必要な限りにおいて学校運営の適切さを確認する必要があるが,学校運営を全体として見る立場にあるのは所轄庁である都道府県知事である。」との発言がされた(乙4の1)。


指定に関する基準等に係る報告(甲14)は,①「Ⅰ基準について」

の「2.基準のポイント」中の「⑶

法令に基づく適正な学校の運営につ

いて」の項目において,就学支援金は,支給法において,生徒が在学する学校が生徒に代理して受領し,生徒の授業料に係る債権の弁済に充てることとされていること,各種学校の運営については,学校教育法,私立学校法などにおいて諸規定が設けられていることを挙げた上で,就学支援金に係る文部科学大臣の指定を受ける各種学校については,各校が就学支援金の管理を適正に行うとともに,これらの関係法令の諸規定を遵守していることは当然であり,「高等学校の課程に類する課程を置くもの」に求められる基準において,就学支援金の管理その他の法令に基づく学校の運営が
適正に行われることを改めて求めることが適当であるとし(甲14・8頁),②また,「Ⅱ

留意事項について」の「3.就学支援金の授業料へ

の確実な充当について」の項目において,就学支援金は,学校への助成金ではなく,法令に定める学校へ就学する生徒の学習活動を支援するため,受給権者である生徒個人に対して支給されるものであり,学校は生徒の申請に基づき,就学支援金を代理受領し,生徒が支払うべき授業料の一部に充当するものであるとした上で,各学校においては,就学支援金が確実に生徒の授業料に充てられるようにするとともに,その原資が貴重な税金であることを踏まえ,経理の透明化を図るよう求めるものとし(甲14・14頁),③さらに,「Ⅲ

審査体制・手続等について」の「1.体制・手

続」の項目において,「外国人学校の指定については,外交上の配慮などにより判断すべきものではなく,教育上の観点から客観的に判断すべきものであるということが法案審議の過程で明らかにされた政府の統一見解である。このため,審査は,教育制度の専門家をはじめとする第三者が,専門的な見地から客観的に行い,対象とするかどうかについて意見を取りま
とめ,最終的には,文部科学大臣の権限と責任において,外国人学校の指定がなされることが適当である」としている(甲14・15頁)。なお,以上と同趣旨の記載が,第4回の検討会議において資料として配布された指定に関する基準等に係る報告の骨子案及び第5回の検討会議において資料として配布された指定に関する基準等に係る報告の案の中にも見られる(甲12,13)。


文部科学大臣談話の内容
高木義明文部科学大臣は,平成22年11月5日,本件規程を定めた際に,これに関する文部科学大臣談話(以下単に「文部科学大臣談話」という。)を公表した(甲7,8)。
文部科学大臣談話は,本件規程の就学支援金制度における位置付けについて,「各種学校のうち,学校教育法第124条により専修学校になることが
できないことから各種学校となっている外国人学校でも,日本国籍を持つ生徒も含め多くの生徒たちが,後期中等教育段階の学びを行っていることから,制度の対象となって」おり,「後期中等教育の判断にあたっては,各種学校である外国人学校について,制度的・客観的に『高等学校の課程に類する』かどうかにより判断する」こととし,まず,本件省令1条1項2号イ,ロに
規定する外国人学校については,同年4月1日から制度の対象とされているとした上で,同号イ,ロに定める方法では確認することができない「後期中等教育に相当する外国人学校が存在し得ると考えられること」から,同号ハにおいて「文部科学大臣が定めるところにより,高等学校の課程に類する課程を置くものと認められるものとして,文部科学大臣が指定したもの」も就
学支援金制度の対象としており,本件規程は,同号ハにある「高等学校の課程に類する課程を置くもの」として指定する際の基準,手続等を定めたものであるとしている。

審査会における議論等

平成23年11月2日に開催された第4回の会議について(甲70)資料2として配布された「朝鮮高級学校の審査(ポイント)」と題する書面には,審査事項に関し,「2.学校経理,就学支援金の適正な使用について」,「3.朝鮮総連との関係について」及び「4.法令に基づく適正な運営について」との項目が置かれている。そして,「3.朝鮮総連との関係について」の項目では,朝鮮高級学校と朝鮮総聯との関係が,教育基本法16条1項の「不当な支配」に当たるかどうか引き続き検討する必要があるとされ,過去の報道等に基づき,教育内容への影響,人事への影響及び財政への影響を学校側に確認すべきとされている。また,「4.法令に基づく適正な運営について」の項目の中では,各学校の法令違反の有無は,基本的に設置認可を行う所轄庁が判断すべきで
あることや,「法令違反」の考え方として,教育基本法を始めとする学校に関係する法令に関する重大な違反が該当する旨の指摘がされている。資料6として配布された「各朝鮮高級学校の法令に基づく適正な運営の確認」と題する書面には,本件朝鮮学校については,本件規程13条の法令に基づく学校の適正な運営の観点から,「学則変更について所轄
庁への認可申請(又は届出)を行っていない」点について整理が必要との指摘がされている。
資料7として配布された「各朝鮮高級学校への書面による確認事項(案)」と題する書面には,朝鮮総聯との関係についての各朝鮮高級学校への確認事項として,教育内容への影響に関する事項,人的な関係に
関する事項及び財政的な関係に関する事項に関する質問が列記されている。
同会議においては,朝鮮高級学校の審査のポイント,申請書類の内容等について検討がされ,審査のポイント等に関する議論の中で,「朝鮮高級学校の審査に当たっては,これまで審査を行ってきたケースと異な
り,時間がかかる可能性がある。懸念される点が多く指摘されていることもあり,いろいろな点を明らかにしていく必要があるのではないか。」との意見が出された。また,各朝鮮高級学校に確認する事項につきおおむね了承がされた。

平成23年12月16日に開催された第5回の会議について(甲71)資料3として配布された「高校無償化に係る朝鮮学校の審査状況(概要)」と題する書面の「1.総連等との関係」の項目中には,「審査の
観点」として,教育基本法16条1項の「不当な支配」に該当するかという点が挙げられていた。
同会議においては,各朝鮮高級学校に対する実地調査の内容,主たる教材の記述,各朝鮮高級学校に対する書面による確認結果等について検討がされ,その中で,「実地調査の結果では,授業における生徒の様子
など特に懸念されるところは見当たらなかったようだが,朝鮮高級学校と朝鮮総連との関係など学校運営に不透明なことがあれば,疑念がないようクリアにしていく必要があるのではないか。」との意見が出された。ウ
平成24年3月26日に開催された第6回の会議について(甲39,40,72)
資料1として配布された「高校無償化に係る朝鮮高級学校の審査状況(概要)」と題する書面中の「1.審査基準への適合性」の項目には,審査基準のうち裁量の余地のない外形的な基準については,全校が基準を満たしているとの記載や,報道内容のうち審査基準(法令に基づく学
校の運営)に抵触し得る事項(ただし,教育基本法への適合性については後述とされている。)及び申請内容の重大な虚偽となり得る事項については,重大な法令違反に該当する事実は確認できていないとの記載がある。また,「2.朝鮮総連との関係」の項目には,朝鮮総聯による教育基本法16条1項に該当する「不当な支配」が認められれば重大な法
令違反に該当することから必要な確認を行ったとして,教育内容,人事,財政及び学校運営の事項に分けて,確認結果の概要が記載されているが,朝鮮総聯による「不当な支配」が認められる旨の記載はない。
資料4として配布された「朝鮮高級学校への留意事項(素案)」と題する書面中の「5.学校の自主的な運営等について」の項目においては,「特定の団体による『指導』の下に,学校運営が行われているとの誤解を招くことのないよう,学校として自主的に運営を行うとともに,上述
のように学校運営に関する積極的な情報提供に努めること」との記載がある。
同会議においては,朝鮮高級学校に係る審査状況,仮に支給対象外国人学校として指定する場合の留意事項(素案)等につき検討がされた。その中で,「総連関連団体からの寄付等の割合がわずかであるからとい
って,直ちに影響力がないとはいえない。一方,外部からの支援を全て断てというのも難しい。教育的な影響力が,どの程度生徒に対して及んでいるかを把握しておく必要があるのではないか。」との指摘に対し,事務局から「法令に基づく学校運営が適正になされているかどうかという基準で,問題になるのが,教育基本法第2条第5号の教育の目標と,
第16条の不当な支配の禁止に違反しないかどうか。学校と総連の間に一定の関係があるとしても,それが本当に教育基本法違反か否かが,審査における重要な判断基準になる。」との説明がされた。また,「法令違反とまで判断しがたい場合でも,適正に学校運営が行われているかどうかは慎重に判断すべきではないか。」,「いくら確認しても,すっき
り指定することができるようにならない。留意事項の内容について検討すること自体はよいが,学校運営などの面で適正かどうか判断し難いと思われる。」,「そもそも,この審査会において,指定の可否を議論し,結論を出すのは限界があるのではないか。」といった意見も出された。エ
平成24年9月10日に開催された第7回の会議について(甲41,73)
同会議においては,朝鮮高級学校に係る審査状況,仮に支給対象外国人学校として指定する場合の留意事項(素案)等につき検討がされた。その中では,「本審査会として,結論として1つの方向性を示すことが求められているのか。場合によっては,委員の間にいろいろな意見があってまとまらない,ということもありうるのか。」との質問に対し,事務局か
ら「最終的に,どちらかの方向性は示していただくことになるが,その際に,少数意見を併記することも考えられる。」との回答がされており,「本審査会でとりまとめたものを参考に,最終的には大臣が決定することになるということか」との質問に対し,事務局から「そのとおり。」との回答がされている。また,「書面による学校への確認については,報道等
で指摘される事実に関して,学校側が一様に否定する結果になっている。こちらも捜査権があるわけではないので,真偽の確証を得ることについては限界がある側面もあるが,審査基準に関わることについては,引き続きしっかり確認してほしい。」との意見も出された。
そして,事務局から,今後の予定等につき,「今回の議論を踏まえなが
ら,今後も審査作業を進めていく。」,「次回の審査会については,決まり次第,連絡する。」との説明がされた。


社会権規約13条2⒝の規定等に係る留保の撤回
被告(国)は,平成24年9月11日,国際連合事務総長に対し,社会権規約13条2⒝及び⒞の規定にいう「特に,無償教育の漸進的な導入により」
に拘束されない権利の留保を撤回する旨の通告をした(甲98)。⑺

平成24年12月28日の記者会見における下村文部科学大臣等の発言ア
下村文部科学大臣は,平成24年12月28日の記者会見において,「朝鮮学校については拉致問題の進展がないこと,朝鮮総連と密接な関係
にあり,教育内容,人事,財政にその影響が及んでいること等から,現時点での指定には国民の理解が得られず,不指定の方向で手続きを進めたい」と述べるとともに,支給法に基づく審査につき,「外交上の配慮などにより判断しないと,民主党政権時代の政府統一見解として述べていたことについては,当然廃止をいたします」と述べた(甲27)。

菅官房長官は,平成24年12月28日の記者会見において,高校無償化に関する朝鮮高級学校の扱いにつき,「本日の閣僚懇談会で文部科学大
臣から『朝鮮学校については,拉致問題の進展がないことや,朝鮮総連と密接な関係にあることから,現時点での指定には国民の理解が得られず,不指定の方向で手続きを進めたい』旨の提案があり,総理から『その方向でしっかりと進めて頂きたい』旨の御指示がありました。これは政府全体としての方針であり,文部科学大臣においては,総理指示を踏まえて対応
していただきたいと考えております。」と述べた(甲74)。

古屋拉致問題担当大臣は,平成24年12月28日の記者会見において,「今日,閣議の後の閣僚懇談会において,まず文部科学大臣が朝鮮高校について,現時点で拉致問題に進展がない,あるいは朝鮮総連と密接な関係にあり,教育内容,人事,財政にその影響が及んでいることを考えると,
現時点での指定には国民の理解が得られない,こういうことで朝鮮高校を不指定とする方向で今後手続を進めるという趣旨の発言がございました。拉致問題担当大臣の私としては,これに対して,今回の判断は,自分が以前から拉致議連等々において述べてきた考え方と一致をするものであり,今回の文部科学大臣のお考えに賛同する旨の発言をさせて頂きました。」
と述べた(甲90)。


本件省令改正に係る意見公募手続の実施(甲63,64,乙62)ア
文部科学省は,平成24年12月28日,本件省令改正に先立ち,改正案を公示し,同日から平成25年1月26日までの間において,これにつ
いての意見等を公募した。
なお,上記意見等の公募に関連して「電子政府の総合窓口(e-Gov)」と題するウエブページにアップロードされた文書のデータの「文書のプロパティ」上,①「公立高等学校に係る授業料の不徴収及び高等学校就学支援金の支給に関する法律施行規則の一部を改正する省令案の概要」と題する文書(本件省令改正の案の概要を記載したもの。以下「省令案の概要」という。)の電子データの作成日時は,平成24年12月28日午前10
時11分であり(甲81の1),②「公立高等学校に係る授業料の不徴収及び高等学校就学支援金の支給に関する法律施行令の一部を改正する政令案等に関するパブリックコメント(意見公募手続)の実施について」と題する文書(以下「パブリックコメント実施文書」という。)の電子データの作成日時は,同日午前10時12分であった(甲81の2)。


文部科学省は,平成25年2月20日,上記アに係る意見公募手続の結果を公示した。上記アに係る意見公募手続において,合計30,510件の意見が寄せられ,主な意見を別紙に挙げ,同意見に対する文部科学省の考え方を示した。上記別紙中では,①「外交上の配慮などにより判
断しないと言っていたのに方針を変えるのか。」との意見については,「『外交上の配慮などにより判断』しないとの民主党政権時の政府統一見解は廃止した上で,朝鮮学校については,拉致問題の進展がないこと,朝鮮総連との密接な関係にあり教育内容,人事,財政にその影響が及んでいることを踏まえると,現時点での指定には国民の理解が得られない
と判断するものです。」との見解が,②「ハの規定だけではなく,イ,ロの規定も削除するべきである。海外の日本人学校の授業料を無償としている国があれば,その国の生徒に対してのみ相互主義により支給すべきである。」との意見については,「現行法では,各種学校となっている外国人学校についても,日本国籍を持つ生徒も含め多くの生徒たちが,
後期中等教育段階の学びを行っていることから,高等学校等就学支援金制度の対象としています。一方,朝鮮学校については,拉致問題の進展がないこと,朝鮮総連との密接な関係にあり教育内容,人事,財政にその影響が及んでいることを踏まえ,現時点での指定には国民の理解を得られないとの観点から,今回の改正を行うものです。」との見解が,それぞれ文部科学省の考え方として示されている。


本件省令改正に係る「決裁・供覧」と題する文書(乙64)
本件省令改正に係る文部科学省作成の「決裁・供覧」と題する文書(文書番号・24文科初第1127号。以下「本件省令改正に係る決裁・供覧文書」という。)は,①件名欄に「公立高等学校に係る授業料の不徴収及び高等学校等就学支援金の支給に関する法律施行規則の一部を改正する省令について」と,伺い文の欄に「本件は,標記省令改正を行おうとするものである。」と,
それぞれ記載され,②「公立高等学校に係る授業料の不徴収及び高等学校等就学支援金の支給に関する法律施行規則の一部を改正する省令案等の概要」と題する文書(「2.改正の概要」の項目の参考欄に,下村文部科学大臣の平成24年12月28日の閣僚懇談会における「拉致問題の進展がないこと,朝鮮総連と密接な関係にあり教育内容,人事,財政にその影響が及んでいる
ことを踏まえると,現時点での指定には国民の理解を得られない」,「朝鮮学校を不指定とする方向で今後手続を進めてまいりたい」との発言,古屋拉致問題担当大臣の「拉致問題担当大臣としてもこれに賛同する」との発言及び安倍内閣総理大臣の「今後,文部科学大臣においては,その方向でしっかりと進めていただきたい」との発言が引用されている。)及び③本件省令改
正に係る省令の案が添付されたものであり,その「決裁日」は,平成25年2月15日とされている。

本件不指定処分に係る「決裁・供覧」と題する文書(乙65)
本件不指定処分に係る文部科学省作成の「決裁・供覧」と題する文書(文
書番号・24文科初第1130号。以下「本件不指定処分に係る決裁・供覧文書」という。)は,①件名欄に「公立高等学校に係る授業料の不徴収及び高等学校就学支援金の支給に関する法律施行規則第1条第1項第2号ハの規定の削除に伴う朝鮮高級学校の不指定について」と,伺い文の欄に「本件は,公立高等学校に係る授業料の不徴収及び高等学校就学支援金の支給に関する法律施行規則第1条第1項第2号ハの規定の削除に伴い,朝鮮高級学校を不指定とするものである。」と,それぞれ記載され,②本件不指定通知と同内
容の文書(名宛人欄に東京朝鮮学園を含む9法人の各理事長を名宛人とすることが予定されていることを示す記載がされ,本文中の申請日及び学校名も書換えが可能な体裁が採られているものと,学校法人愛知朝鮮学園理事長を名宛人とするものの2通)及び③上記⑼②の文書が添付されたものであり,その「決裁日」は,平成25年2月15日とされている。


平成25年2月15日の記者会見における下村文部科学大臣の発言下村文部科学大臣は,平成25年2月15日の記者会見において,「高校授業料無償化にかかる朝鮮学校の扱いについては,昨年末,総理指示もふまえ,朝鮮学校の指定の根拠規定を削除する省令改正を検討しているところでございます。」と発言した(甲75)。


朝鮮高級学校と朝鮮総聯等との関係を巡る報道等

国内の新聞報道
平成22年2月11日の産経新聞において,北朝鮮が過去半世紀以上にわたり日本国内の「朝鮮学校」に対して合計460億円の資金提供を
行っていた旨の報道がされた(乙23の1)。
平成22年2月21日の産経新聞において,「朝鮮学校」において学費納入時に朝鮮総聯傘下団体の活動費を同時に徴収していた旨報道された(乙32の2)。
平成22年3月11日の産経新聞において,「朝鮮学校」で使用され
ている教科書には故金正日氏の決裁が必要である旨報道された(乙23の3)。
平成22年9月26日の産経新聞において,「朝鮮学校」の生徒のうち朝鮮総聯の幹部等の子供は学費が免除されており,朝鮮高級学校の場合には,朝鮮総聯が学費と同程度の額を教育手当として出すこととされており,同手当は,生徒や保護者が受け取らず,学校側の会計上で学費と相殺する形で処理されている旨報道された(乙23の4)

平成23年10月26日の産経新聞において,「朝鮮学校」の校舎や敷地が朝鮮総聯の関連する金融機関の債務の担保となっており,そのうち高級学校を含む13校の校舎及び敷地が,同金融機関の破たんを受けて,仮差押えがされている旨報道された(乙23の5)。
平成23年11月1日の産経新聞において,朝鮮総聯が朝鮮学園の理
事会議事録を偽造した旨報道された(乙23の6)。
平成23年11月18日の産経新聞において,「朝鮮学校」への自治体からの補助金が朝鮮総聯に流用されている疑いがある旨報道された(乙32の1)。
平成24年10月17日の産経新聞において,朝鮮総聯が高級学校を
含む関係団体等に対して,故金日成氏及び故金正日氏の肖像画を新しい肖像画に交換するよう指示し,同肖像画は朝鮮総聯中央宣伝広報局が一括して準備し,費用は対象機関が負担する旨報道された(乙23の7)。イ
上記ア以外の報道等
在日本大韓民国民団発行の「民団新聞」(平成22年3月17日)には,朝鮮高級学校の「高校3年」では全科目週30時間のうち7時間が民族教育に値しない思想教育もしくはそれに準じることに割り当てられており,そのような問題は「朝鮮学校の上部団体が朝鮮総連であり,人事や配置まで朝鮮総連の指示を受けるという『垂直支配』に起因して
いる」との記載がされている(乙24の2)
在日本大韓民国民団発行「民団新聞」(平成23年1月1日)には,NPO法人の代表が「総連の新たな内部文書」を公開し,「朝鮮学校は金日成-金正日親子へ『忠誠の電文』を送るという思想・政治運動を学校ぐるみで展開している」と批判したとの記事が掲載されている(乙24の1)。
北朝鮮の「労働新聞」(平成24年4月4日)には,「総連は,我
が共和国の堂々たる海外同胞組織であり,在日朝鮮学校は,総連組織が運営する合法的な民族教育機関である。」との記載がある(乙24の3)。
在日本朝鮮人総聯合会中央常任委員会発行の「朝鮮総聯」(平成3年2月1日)には,「朝鮮学校の管理運営は,朝鮮総聯の指導のもとに,
教育会が責任をもって進めている。」との記載がある(乙24の4)。ウ
各種団体からの申入書の記載
北朝鮮による拉致被害者家族会連絡会及び北朝鮮に拉致された日本人を救出するための全国協議会作成に係る平成22年8月25日付け「朝
鮮学校への国庫補助に反対する要請文」には,「朝鮮学校の生徒らは,学内で組織運営されている『在日本朝鮮青年同盟(朝青)という政治組織に全員加盟して,北朝鮮の金正日政権を支える政治活動に参加しています。…(中略)…総連は世論喚起のデモや集会に朝鮮学校生徒を『朝青』組織を通じて大々的に動員しています。朝鮮学校は純粋な教育機関
ではなく,拉致被害者をいまだに返さない朝鮮労働党の日本での工作活動拠点なのです。」との記載がある(乙25)。
在日本大韓民国民団中央本部作成に係る平成22年7月27日付け「朝鮮学校『高校無償化』に関する申し入れ書」には,「問題は教育を受ける子供たちの側にあるのではなく,教育機関たる朝鮮学校そのもの
にあるのです。…(中略)…朝鮮学校は運営面においても教科内容の面においても,また教育全般面においても朝鮮総連の指導を通じ北朝鮮政府の完全なコントロール下にあり,日本社会一般の常識をはるかに越えるような教育,指導が行われています。」,「就学支援金が…(中略)…本来の趣旨から外れて実際には朝鮮総連への迂回支援につながることを本団は憂慮するものであります。」との記載がある(乙26の1)。エ
公安調査庁の資料
公安調査庁作成に係る「内外情勢の回顧と展望

平成25年(201

3年)1月」(平成24年の調査及び情報の収集・分析に基づくもの。)には,「朝鮮総聯は,我が国政府の『高校無償化』措置に関し,かねて朝鮮人学校生徒への適用を実現すべく諸活動に取り組んできたところ,2月から3月までの間,日本人支援者らを前面に出して『無償化』適用を求める集会や街頭署名運動などを集中的に実施した。また,7月から9月までを『無償化』適用実現のための『3か月集中戦』期間に設定し,主として朝鮮人学校の教職員,父兄,生徒らを動員して,各地で街頭宣伝活動を繰り広げたほか,我が国政府や政界関係者に対する要請活動な
どを行い,早期の適用を改めて求めた。」との記載がある(乙27)。公安調査庁作成に係る「内外情勢の回顧と展望

平成24年(201

2年)1月」(平成23年の調査及び情報の収集・分析に基づくもの。)には,「7月に開催された『総聯の新たな全盛期を開くための中央熟誠者大会』では,『朝鮮人学校への生徒勧誘活動に取り組み,来年度の学生数増加が確定した』」との記載や,「思想教育においては,特に,権力の『世襲』に対する組織内の否定的な反応に留意しつつ,段階的に学習・伝達の対象を拡大していくものとみられる。また,組織拡大に向けては,基層組織と並んで,卒業生や生徒父兄なども含め多数の在日韓国・朝鮮人と関わりを有する朝鮮人学校を『活動の拠点』と位置付け,
『同胞再発掘運動』の活発化に努めていくものとみられる。」との記載がある(乙28)。
公安調査庁作成に係る内外情勢の回顧と展望

平成23年(2011

年)1月」(平成22年の調査及び情報の収集・分析に基づくもの。)には,「朝鮮総聯は,2010年(平成22年)初頭から,第22回全体大会(22全大会)に向け,活動を活発化させた。…(中略)…朝鮮人学校への生徒勧誘活動や会員に対する思想教養活動などの組織強化に向けた活動に集中的に取り組むなどして大会への気運醸成に努めた。」との記載や,「朝鮮総聯は,我が国政府の『高校無償化』措置に関し,朝鮮総聯中央に『対策委員会』を設置し(2月),朝鮮人学校生徒への『無償化』適用実現に向けた活動に組織を挙げて取り組んだ。これら活
動では,主に,朝鮮人学校教職員・父兄・生徒,日本人支援者らを前面に出して,『無償化』適用を求める世論の幅広い喚起に努め,我が国政府や政界関係者への要請活動,記者会見,集会・デモ,街頭署名運動などを継続的に実施するとともに,…(中略)…,早期の適用を改めて求めた。」との記載がある(乙29)。

公安調査庁作成に係る内外情勢の回顧と展望

平成22年(2010

年)1月」(平成21年の調査及び情報の収集・分析に基づくもの。)には,「朝鮮総聯は,…(中略)…活動家・会員に対する思想教育を強化するとの方針を改めて打ち出した。」,「朝鮮総聯は,…(中略)…活動家1人が自己に割り当てられた在日朝鮮人5世帯に対する教育・宣伝普及の責任を負う『5戸担当宣伝員体系』の再整備に努める」との記載がある(乙30)。
公安調査庁作成に係る内外情勢の回顧と展望

平成21年(200

9年)1月」(平成20年の調査及び情報の収集・分析に基づくもの。)には,「各地方組織では,組織色を薄めた文化・体育サークル設置や福祉活動など,幅広い在日韓国・朝鮮人を取り込む『受け皿』づくりなどを行った」との記載,「朝鮮総聯は,…(中略)…北朝鮮建国60周年に際しては,幹部活動家,若手活動家,商工人など各階層別の代表団を総勢数百人規模で北朝鮮に派遣し,…(中略)…これら代表団の一部は,朝鮮労働党幹部から,思想教育の徹底などを図るよう指導を受けた。」との記載がある(乙31)。

公安調査庁長官等の国会における答弁
平成22年11月17日の参議院予算委員会において,公安調査庁長官は,「朝鮮総聯の影響は,朝鮮人学校の教育内容,人事,財政に及んでいること,このように承知しております。」との答弁をしている(乙33)。
平成24年11月7日の衆議院文部科学委員会において,警察庁長官
官房審議官は,「朝鮮総聯は,朝鮮高級学校等の朝鮮人学校と密接な関係にあり,同校の教育を重要視し,教育内容,人事及び財政に影響を及ぼしているものと認識しております。」との答弁をしている(乙49)。カ
広島地方裁判所平成19年4月27日判決(乙52。以下「広島地裁平成19年判決」という。)
広島地裁平成19年判決は,C信用組合(以下「C」という。)の学校法人D(以下「D」という。)等に対する貸金債権を譲り受けたとする者が貸金の支払等を求めた事案についての判決であるところ,同判決においては,①Dの実印が「朝鮮学校」の日常の管理運営を行っていた
「教育会」の金庫で保管されていたこと(27頁),②CとDは,朝鮮総聯E県本部の強力な指導の下にある傘下組織のようになっており,両者一体となって学校移転のためのプロジェクトを進めていたこと(46頁),③Dが学校法人の形態をとったのは,日本社会において行政の補助や助成を受けられる地位を確保するためであり,学校の日常的な管理
運営は学校単位で設けられている「教育会」が行っていたものであると学園関係者が認識していたこと(46頁),④平成4年4月及び5月に,Dが学校の移転・建設のために設立した組織名義の預金口座から,朝鮮総聯E県本部への融通金ないしその関連で合計5000万円が出金されたこと(58頁から59頁)などが認定されている。

支援室による調査

支援室は,平成23年11月9日,本件朝鮮学校を含む朝鮮高級学校に対し,文書により,①「教科書内容の変更には,北朝鮮本国の決裁が必要」との新聞報道の真偽,②教育内容について朝鮮総聯の指導を受けることの有無,③朝鮮総聯の傘下と指摘される団体への生徒・教員の自動的加入の有無,同団体の活動への参加の有無,④朝鮮総聯幹部の役員
就任の有無,人事に関する北朝鮮(金正日総書記)ないし朝鮮総聯の関与の有無,⑤朝鮮総聯のホームページに記載された教育会の構成,管理運営等などの事項について照会した(乙6)。
これに対し,本件朝鮮学校は,①

教科書内容の

変更には北朝鮮本国の決裁が必要であるとの報道は事実ではない旨回答し,②同②については,教育内容について朝鮮総聯からの指導はない旨ア
回答し,③同③については,○朝鮮総聯の傘下団体である在日本朝鮮人
教職員同盟(教職同)や在日本朝鮮青年同盟(朝青)への教職員や生徒の加入については,自動的に加入することはなく,本人たちの申請を受イ
けて加入することになっている旨,○教職同は,教員たちの質の向上や新入生の募集を行う一方,日本を始め世界各国の教員たちと交流活動を行っており,生徒たちは,日本の学校の生徒会と同じ活動をしており,自発的に学校生活の充実,クラブ活動,課外活動,ボランティア活動,各学年,学級間の連携を通して,学校行事に積極的に参加するなどの活ア
動を行っている旨,それぞれ回答し,④同④については,○役員につい
ては,寄付行為にのっとり,教職員,保護者,卒業生,同胞学識経験者などから選出しているが,朝鮮高級学校に子供を送る保護者,卒業生,学識経験者等は総聯系の者も多く,関係団体の者が役員に選出される場合もあり,その場合には,必ず寄付行為に掲げている学園の理念を遵守イ
し,理事会の意思決定に従うことを条件にしている旨,○人事に関する
北朝鮮(金正日総書記)ないし朝鮮総聯の関与はない旨,それぞれ回答し,⑤同⑤については,朝鮮総聯ホームページの「朝鮮学校の管理運営
は,朝鮮総聯の協力のもとに,教育会が責任をもって進めている」との記述は正確ではないため,記述の変更を朝鮮総聯に要請しているとしたア
上で,○教育会には,教職員や保護者,卒業生等が任意で参加しており,イ
任意のため総聯の関係団体の者が参加する場合もある,○教育会の意思ウ
決定機関は学園の理事会とは異なる,○教育会は,日本のPTAに当た
る教育支援活動を行っており,学校の予算,決算,人事,教育内容等に関与していない旨,回答した(乙7)。

支援室は,平成23年12月2日,各朝鮮高級学校に対し,文書により,過去5年間における都道府県及び市町村からの補助金等の交付の有無等を照会した(乙8)。

これに対し,本件朝鮮学校は,補助金の交付を受けていることに加えて,過去5年間に都道府県又は市町村から交付されている補助金について問題を指摘されたことは特にない旨回答した(乙9)。

支援室は,平成24年1月19日,各朝鮮高級学校に対し,文書により,理事会・評議員会の開催が確認できる書類(出席者への旅費・謝金,飲食代等の領収書や委任状等)の提出を求めるとともに,法人内での理事等の印鑑の管理の有無,長期借入れの有無を照会した(乙10)。
これに対し,本件朝鮮学校は,理事会等の出席者への旅費,謝金等は支払ったことがないこと,出欠の連絡はほとんど電話で行われており,文
章により行った場合も保管していないこと,定数に満たない場合を除き委任状の提出を特段求めていなかったので,委任状は数件しかないこと,議事録の署名・押印については出席理事本人が署名押印を行っていること(一部理事より学園事務局で認め印を預かっているものもあるが,その場合も必ず理事本人が署名押印していること)などを回答した(乙11)。

支援室は,平成24年2月6日,本件朝鮮学校に対し,会計書類の記載に関して補足的な説明を求めた(乙12)。
これに対し,本件朝鮮学校は,収益事業に関して,貸借対照表の流動負債における「部門勘定」について,本来,学校法人の資産は全て本会計に計上されているが,そのうちの一部は「税法上の収益事業」の用途に使われており(売店,食堂,寄宿舎等),主に収益事業の減価償却資産
の相手勘定として「部門勘定」を使っていることなどを回答した(乙13)。

支援室は,平成24年3月30日,各朝鮮高級学校に対し,文書により,①「全国の朝鮮初中級学校から選抜された生徒約100人が1~2月に北朝鮮を訪問し,故金正日氏,金正恩氏への忠誠を誓う歌劇を披露していた」
との報道の真偽等,②金正恩氏の肖像を教室内に掲示しているか,③「故金正日氏の葬儀について,朝鮮学校の施設が使用され,生徒の動員が行われた」との報道の真偽などを照会した(乙14)。
これに対し,本件朝鮮学校は,上記①については,中級部生徒,教職員が参加したが,高級部の生徒は含まれていない旨,上記②については,
金正恩氏の肖像を掲示しておらず,また,検討もしていない旨,上記③については,学校行事ではなく,追悼行事の委員会から通常の使用申請があり,一般貸出しとして貸したこと,生徒に出席の指示はしておらず,保護者とともに参加した生徒はいた旨などを回答した(乙15)。カ
支援室は,平成24年8月24日,各朝鮮高級学校に対し,文書により,同年6月18日付けの新聞記事における「今月5~7日に全国の朝鮮学校長を対象に開かれた講習には,校長69人が出席。許議長が『金正恩指導体系が確立されるよう確実に教育せよ』と指示した。」との報道に関して,同月5日から7日までの間に朝鮮総聯又は他の団体による講習会に高級学校の校長その他の教員が参加した事実の有無,教育内容に関して特定の示唆を受けた事実の有無などを照会した(乙16)。

これに対し,本件朝鮮学校は,校長が全国朝鮮高級学校校長会の主催する全国朝鮮学校校長講習会に参加したが,教育内容に関し特定の示唆を受けることはなかった旨回答した(乙17)。

支援室は,平成24年10月5日,各朝鮮高級学校に対し,文書により,「各朝鮮高級学校から2~3人ずつ選ばれた生徒が在日本朝鮮青年同盟代
表団として,教員や朝鮮大学校生らと8月23日~9月1日に平壌を訪問し,金正恩第1書記に忠誠を示す行事に参加した」との報道に関して,上記行事(青年節慶祝大会)への生徒,教員の参加の有無,参加した生徒による決議文読み上げの有無,朝鮮総聯の関与の有無などを照会した(乙18)。

これに対し,本件朝鮮学校は,「青年節慶祝大会」に生徒1名及び教員1名が参加したこと,同行事について,金第1書記名による参加指示はなかったこと,夏休み中の在日本朝鮮青年同盟の呼びかけにより,希望者が個人的に参加しているもので,学校の関与はなかったことなどを回答した(乙19)。


支援室は,平成24年10月19日,各朝鮮高級学校に対し,文書により,「朝鮮総連が故・金日成主席,金正日総書記の肖像画を新しい肖像画「太陽像」に10月中に交換するように指示した」との新聞報道に関して,朝鮮総聯等からの新たな肖像画の購入に関する案内又は指示の有無等につ
いて照会した(乙20)。
これに対し,本件朝鮮学校は,「指示はなく,購入の予定はありません。」と回答した(乙21)。

朝鮮総聯のホームページの内容
朝鮮総聯のホームページには,①「朝鮮総聯は,すべての同胞の民族的尊厳を守り,彼らが朝鮮人の魂をもって堂々と生きていけるように民族教育事
業と文化啓蒙活動を繰り広げている。」,「朝鮮総聯と在日同胞は,幼稚園から初級学校,中級学校,高級学校,大学校にいたる120余校の各級学校を日本各地に設立して,在日同胞子女に民主主義的民族教育を実施している。」,「朝鮮総聯は,日本の都道府県ごとに47の地方本部をおいている。」,「地方本部は,中央本部の決定と方針にしたがって管轄地域の諸般
の活動を企画,組織,推進し,管下の階層別団体,事業体,学校を指導する。」,「朝鮮総聯の地方本部は,当該地域を区分して支部をおいている。」,「地域の集団的指導機関である支部常任委員会は委員長,副委員長,専門部署役員,管下の団体責任者,学校長などによって構成される。」などの記載がされている(なお,少なくとも朝鮮総聯と在日同胞が幼稚園から大
学校にいたる120余の各級学校を日本各地に設立し,在日同胞子女に民主主義的民族教育を実施している旨の記載は,平成28年10月14日時点の朝鮮総聯のホームページにも見られる。)ほか,②「2.われわれは,民主主義的民族教育を強化・発展させ,広範な在日同胞子弟を,民族性を所有し知徳体を兼備した有能な民族人材,真の愛国者に育てる。」,「7.われわ
れは,朝鮮民主主義人民共和国を熱烈に愛し擁護し,合弁・合作と交流事業を経済,文化,科学技術の各分野において強化し,国の富国発展に特色のある貢献をする。」などの朝鮮総聯綱領が示されている(乙22,77)。なお,③本件申請に関しての支援室の調査及び審査会における議論がされていた当時の朝鮮総聯のホームページには,「朝鮮学校の管理運営は,朝鮮道連
の協力のもとに,教育会が責任をもって進めている。」との
「朝鮮総聯」(在日本朝鮮人総聯合会中央常任委員会発行)の記載と同様の記載もあった(乙6,44)。
2
争点1(本件不指定処分が文部科学大臣の裁量権の範囲からの逸脱又はその濫用があるものとして違法であるか否か)について


本件省令1条1項2号ハを根拠とする支給対象外国人学校としての指定がされるための要件について

就学支援金制度の仕組み
支給法は,公立高等学校について授業料を徴収しないこととするとともに,私立高等学校等の生徒等については,その授業料に充てるために就学支援金の支給を受けることができるようにすることにより,高等学校等に
おける教育に係る経済的負担の軽減を図り,もって教育の機会均等に寄与することを目的とするものであるところ(支給法1条,2条2項及び3項参照),支給法2条1項5号は,就学支援金制度の対象となる「私立高等学校等」のうち,専修学校及び各種学校については,「高等学校の課程に類する課程を置くものとして文部科学省令で定めるもの」として就学支援
金制度の対象となるものの要件を文部科学省令に委ねた。これを受けて定められたのが本件省令であり,本件省令1条1項2号ハは,支給法2条1項5号にいう「高等学校の課程に類する課程を置くもの」について,「文部科学大臣が定めるところにより,高等学校の課程に類する課程を置くものと認められるものとして,文部科学大臣が指定したもの」と定めた。
そして,本件省令1条1項2号ハを受けて定められた本件規程は,第1章において「総則」,第2章において「指定の基準」,第3章において「指定の手続等」をそれぞれ定めているところ,上記「指定の基準」については,修業年限,授業時数,同時に授業を行う生徒,授業科目,教員数,教員の資格,校地等,校舎等,校舎の面積,設備に関する基準が定められ
ている(本件規程2条から11条)ほか,本件規程12条が,学校教育法等の規定による学校運営の状況に関する自己評価及びその結果の公表並びに情報の積極的な提供や,私立学校法の規定による財産目録等の備付け及び閲覧,その他の法令に基づく情報の提供等が適正に行われるべきことを定め,さらに,本件規程13条が,本件規程12条に規定するもののほか,指定教育施設は,高等学校等就学支援金の授業料に係る債権の弁済への確実な充当など法令に基づく学校の運営を適正に行わなければならない旨を
定めている。
以上の諸規定に照らせば,本件省令1条1項2号ハを根拠として支給対象外国人学校としての指定を受けることができるのは,本件規程の第2章に定める上記の各要件を全て充足しているものと認められる場合に限られるのであって,それ以外の場合,すなわち,上記各要件を充足していると
認められない場合や上記各要件を充足していると認めるに至らない場合には,同号ハを根拠として支給対象外国人学校としての指定を受けることはできないことが明らかである。

本件規程13条の趣旨
支給法が,高等学校等における教育に係る経済的負担の軽減を図り,もって教育の機会均等に寄与することを目的とし(1条),支給対象高等学校等(6条)の設置者が,受給権者に代わって就学支援金を受給し,受給権者の授業料に係る債権の弁済に充てることとするという仕組みを採用していること(8条)からすれば,支給法は,公的な資金から支出
される就学支援金が受給権者である生徒等に対する授業料に係る債権に確実に充当されることを要請しているものであって,設置者によって他に流用されるおそれが否定できないにもかかわらず,就学支援金を支給することを許容するものではないものであることが明らかである。そして,就学支援金制度の対象とされる私立高等学校及び専修学校(高等課
程)については,財務関係を含む学校運営の適正が求められており(学校教育法43条,62条,133条,学校教育法施行規則66条から68条,189条,私立学校法25条1項,47条参照),就学支援金が授業料に係る債権の弁済として確実に充当が行われることを確認できる態勢等の整っていることが,就学支援金を支出するための当然の前提となっているものと考えられることとの均衡からは,外国人学校についても,就学支援金助成制度の対象となるためには,就学支援金が授業料に係る債権の弁済として確実に充当が行われることを確認できる態勢等の整っていることが,就学支援金を支出するための当然の前提となっているものと考えられる。
また,各種学校については,学校教育法134条2項,私立学校法
64条5項の規定により,適正な学校運営を求める趣旨,内容の学校教育法の規定や私立学校法の規定が準用されるところ,「高等学校の課程に類する課程を置くものとして文部科学省令で定める」各種学校を就学支援金の支給対象となる学校とする旨を定める支給法2条1項5号の規定ぶりに照らせば,支給法は,高等学校の課程に類する課程の履修を含
む適正な学校運営を求める学校教育法や私立学校法の規定ないしその趣旨に適合するものと認められない各種学校を就学支援金支給の対象となる学校とすることを許容するものではないものと解される。
支給法の立法の過程を見ると,文部科学大臣において,支給法案は「高等学校の課程に類する課程を置く」本邦内の外国人学校の全てに適
用するということになるのかという趣旨の質問に対し,「(前略)文部科学省令において対象を定める際の客観性を保持するために,高等学校の課程に類する課程として,その位置づけが,学校教育法その他により制度的に担保されているということを規定することと予定をいたしております。そういう意味から,自動的に外国人学校の高等課程に類するも
のすべてが今の時点で対象になっているということではありません。」と答弁する(認定事

b)など,支給対象外国人学校への指定に
際して学校教育法その他の関係法令に基づく適正な学校運営がされていることを考慮することは念頭に置かれていたものということができる。さらに,本件規程の制定に当たっての検討会議における議論等(認
運営」が議題に上り,委員からは,「情報公開・学校運営に関して,財務諸表を毎年徴収するなど各種学校に課せられた義務に加え,上乗せして求めることが必要な事項もあるのではないか。」との発言(第1回),「就学支援金を代理受領する以上は,わが国の法令を遵守することはもちろんのこと,学校運営の体制がきちんとしているかどうかという観点
が重要。」との発言(第3回),「文部科学省としては,就学支援金の支給を適正に行うために必要な限りにおいて学校運営の適切さを確認する必要がある」という趣旨の発言(第3回)などがされており,②指定に関する基準等に係る報告(甲14)においても,「Ⅰ
の「2.基準のポイント」中の「⑶

基準について」

法令に基づく適正な学校の運営に

ついて」の項目において,就学支援金は,支給法において,生徒が在学する学校が生徒に代理して受領し,生徒の授業料に係る債権の弁済に充てることとされていること,各種学校の運営については,学校教育法,私立学校法などにおいて諸規定が設けられていることを挙げた上で,就学支援金に係る文部科学大臣の指定を受ける各種学校については,各校
が就学支援金の管理を適正に行うとともに,これらの関係法令に諸規定を遵守していることは当然であり,「高等学校の課程に類する課程を置くもの」に求められる基準において,就学支援金の管理その他の法令に基づく学校の運営が適正に行われることを改めて求めることが適当であるとされているところである。

以上において述べたところからすれば,本件規程の「第2章

指定

の基準」の中の規定である本件規程13条は,上記のような支給法の目的や仕組み,私立高等学校や専修学校(高等課程)に適用される法令の規定並びに就学支援金が公的な資金から支出されることをも踏まえ,本件省令1条1項2号ハを根拠とする支給対象外国人学校としての指定を受けるための要件として,就学支援金の授業料に係る債権の弁済への確実な充当が行われることや,高等学校の教育課程の履修を含む学校運営
が学校教育法,私立学校法等の法令に従った適正なものであると認められることを要するものとしたものと解される。そして,教育基本法が他の全ての教育関係法規の基本法たる性質を有し,全ての教育関係法規は教育基本法に定められた基本的理念を実施するための法律として解釈されるべきことなどからすれば,本件規程13条の「法令」から教育基本
法を排除すべき理由はなく,本件規程13条の要件適合性の判断に当たって,教育基本法16条1項の「不当な支配」に係る事情を判断の一要素として考慮することも,当然に許容されているものというべきである。ウ
本件規程13条が支給法2条1項5号及び本件省令1条1項2号ハの委任の範囲において定められたものであるか否かについて
支給法2条1項5号は,専修学校及び各種学校のうち「高等学校の課程に類する課程を置くものとして文部科学省令で定めるもの」を就学支援金制度の対象とし,同号を受けて定められた本件省令1条1項2号ハは,「文部科学大臣が定めるところにより,高等学校の課程に類する課程を置
くものと認められるものとして,文部科学大臣が指定したもの」を支給対象外国人学校に含まれるものとしているところ,これらの規定にいう高等学校の「課程」とは,高等学校学習指導要領に定める「教育課程」に限らず,広く教育内容,学校の組織及び運営体制も含むものと解される。すなわち,①学校教育法66条は「中等教育学校の課程は,これを前期
3年の前期課程及び後期3年の後期課程に区分する。」と定めており,同条の「課程」とは,学校が提供し,生徒等が履修すべき体系化された教育そのものを指すものと解されるところ,既に述べたとおり同法においては学校運営の適正が求められていることからすれば,上記の体系化された教育は,法令に従って適正に運営されている学校が提供するものであることが前提とされているものというべきこと,②同法128条4号が「目的又は課程の種類に応じた教育課程及び編制の大綱」と定めて「課程」と「教
育課程」とを使い分けており,また,高等学校に関する規定である同法52条から54条の定めを見ても,「課程」と「教育課程」とが使い分けられていること,③支給法ないし本件省令において,学校教育法におけるのと異なる意味内容のものとして「課程」の語を用いる合理的理由は見当たらないことなどを勘案すれば,支給法2条1項5号及び本件省令1条1項
2号ハの「高等学校の課程」とは,高等学校学習指導要領の「教育課程」に限らず,広く内容,学校の組織及び運営体制も含むものと解すべきである。
そうすると,本件省令1条1項2号ハを根拠とする支給対象外国人学校としての指定を受けるための要件として,就学支援金の授業料に係る債権
の弁済への確実な充当が行われること,高等学校の教育課程の履修を含む学校運営が法令に従った適正なものであると認められることを要するものとした本件規程13条の規定は,支給法2条1項5号及び本件省令1条1項2号ハの委任の範囲内において定められたものということができる。エ
原告らの主張について
原告らは,①本件規程は「高等学校の課程に類する課程」を置くかどうかという点についての制度的・客観的審査に係る事項を定めたものとしてのみ解釈されるべきであって,本件規程13条は,支給法の趣旨・目的を達成するために,就学支援金を生徒らの授業料に係る債権の
弁済に充てることを確実にするため,各校の就学支援金の管理の適正と関係法令の諸規定の遵守を定めた規定である(仮に,本件規程13条の「法令に基づく学校の運営を適正に行わなければならない」との定めが教育課程の客観的な位置付けとは離れて,かつ,就学支援金の授業料債権への充当とは無関係な事項についてまで審査することを許容するものとすれば,明らかに本件省令の委任の範囲を超えるものである。),②検討会議における議論の過程等に照らせば,本件規程13条の学校の適正な「運営」を確認すべき法令として「不当な支配」に関する教育基本法16条を考慮することは想定されていない,③本件規程13条が本件規程12条の付加的補足的な規定であることからして,本件規程13条にいう「法令」に一般理念を定めた教育基本法を読み込むことには無理
がある,④本件省令1条1項2号イ,ロに係る学校においては,「不当な支配」を含めた関係法令一般との適合性を問題としない一方で,本件省令1条1項2号ハに係る学校にのみ要求するのは均衡を欠くなどとして,本件規程13条にいう「法令」に教育基本法16条1項は含まれず,本件規程13条の要件適合性の判断に当たって,教育基本法16条1項
の「不当な支配」を考慮することは許されない旨主張する。
しかしながら,まず,上記①の主張については,上記イ及びウにおいて述べたところに照らし,採用することができない。次に,上記②の主張については,支給法及び本件規程の制定過程(認定
全ての教育関係法規の基本法という教育基本法

の性質からしても,本件規程13条にいう「法令」から教育基本法16条1項を含む同法の規定が殊更に排除されているものとは認め難いから,採用することができない。さらに,上記③の主張については,上記イにおいて述べたような本件規程13条の趣旨に加えて,同条が本件規程「第2章

指定の基準」中の他の規定(2条から12条)とは別個独立

に設けられた規定であること,本件規程13条には本件規程12条とは別個の表題が付されていること,本件規程13条においては「前条に規定するもののほか」と本件規程12条に定める事項とは別個の事項を付け加える趣旨の規定ぶりがとられていることからすれば,本件規程13条をもって,本件規程12条の付加的補足的規定であるとはいい難く,採用することができない。上記④の主張については,本件省令1条1項2号イ又はロに係る外国人学校は,外国の大使館を通じ,又は文部科学大臣の指定する団体の認定により,高等学校の課程に類する課程であることを,制度的に確認することができるものであるのに対し,本件省令1条1項2号ハに係る外国人学校については,そのような制度的な保障が全くなく,高等学校の課程に類する課程であるか否かを個別具体的に
判断せざるを得ないのであって,両者はよって立つ前提を異にするものというべきであるから,原告らの主張は,その前提を欠くものであって,採用することができない。
また,原告らは,仮に,本件規程13条の「法令」に教育基本法16条1項が含まれるとしても,本件規程13条にいう法令に基づく適正
な運営が実施されていないと判断されるのは,学校と他の団体との間に不当な支配・被支配に該当する関係があり,そのことによって,設置者が代理受領した就学支援金が授業料に係る債権の弁済に充当されない事態が現に発生している場合,又は,少なくとも,そのような事態の生じる可能性が客観的な証拠によって具体的に裏付けられる場合に限られる
旨主張する。
しかしながら,既に述べたように,本件省令1条1項2号ハを根拠として支給対象外国人学校としての指定を受けるためには,本件規程13条を含む本件規程の第2章に定める各要件を全て充足しているものと認められることを要するところ,本件規程13条の要件を充足しているも
のというためには,就学支援金の授業料に係る債権の弁済への確実な充当が行われることや,高等学校の教育課程の履修を含む学校運営が法令に従った適正なものであると認められることを要するものというべきである。そして,支給法,本件省令及び本件規程を見ても,原告らが主張するような場合以外は学校運営が法令に従った適正なものであると認めなければならないとの趣旨(原告らの上記主張は,まさにこのような趣旨をいうものにほかならない。)を定めた規定は存しない上,支給法が,公的な資金から支出される就学支援金が受給権者である生徒等に対する授業料に係る債権に「確実に」充当されることを要請しており,学校の設置者によって他に流用されるおそれが否定できないにもかかわらず,就学支援金を支給することを許容するものではないというべきことに照
らせば,そのような流用のおそれを否定することができない場合には,文部科学大臣において支給対象外国人学校に指定しないとの判断をすることは,上記のような支給法の要請に沿うものというべきであって,原告らの上記主張は,採用することができない。
本件規程13条適合性の判断についての文部科学大臣の裁量権について
支給法2条1項5号が,各種学校につき「高等学校の課程に類する課程を置くものとして文部科学省令で定めるものに限り」就学支援金の支給対象とするものと規定し,いかなる各種学校が支給対象となるかの定めを文部科学大臣の定める文部科学省令に委任しているのは,外国人学校は,学校教育法1条の規定する学校及び専修学校(同法124条)として認可を受けること
ができないという同法の体系(同法1条,124条,134条参照)の下でも,後期中等教育を行っている外国人学校が存在し,支給法の目的からすると,そのような外国人学校についても就学支援金の支給対象とし,もって教育の機会均等を図ることが望ましいと考えられる一方,各種学校には,様々な学校が存在し,その教育課程や形態について制度的・客観的な基準が存在
しないことに照らせば,いかなる学校の生徒等に対して就学支援金を支給すべきかは,その性質上,教育行政に通暁した文部科学大臣の専門的,技術的な判断に委ねるほかないとの趣旨に基づくものである。
そして,上記⑴イにおいて述べたとおり,本件規程13条は,支給対象外国人学校の指定の基準の1つとして,就学支援金が授業料に係る債権に確実に充当される学校であることや,法令に基づく適正な学校運営が行われている学校であることを定めているところ,かかる内容の検討は,本件規程の定める他の指定の基準についてとは異なり,その性質及び内容からして専門的,技術的検討を伴うものであることが明らかであって,本件規程13条適合性の判断は,文部科学行政に通暁する文部科学大臣の専門的,技術的判断に委ねられているものというべきである。
また,本件規程13条の要件適合性の判断に当たって,教育基本法16条
1項の「不当な支配」に係る事情を判断の一要素として考慮することが当然に許容されているものというべきこともまた,上記⑴イにおいて述べたとおりであるところ,上記のとおり本件規程13条適合性の判断が文部科学大臣に委ねられていることに加えて,教育基本法16条1項の「不当な支配」が存するかどうかやその程度といった事項もまた,その性質及び内容に照らせば,専門的,技術的検討が必要となることからすると,本件規程13条適合性の判断の中で考慮される教育基本法16条1項の「不当な支配」に係る事情の判断についてもまた,文部科学大臣の専門的,技術的判断に委ねられているものというべきである。
以上のとおりであって,本件規程13条適合性の判断や,その中で考慮さ
れる教育基本法16条1項の「不当な支配」に係る事情の判断については,文部科学大臣の裁量に委ねられているものというべきである。
本件不指定処分が文部科学大臣の裁量権の範囲からの逸脱又はその濫用があるものとして違法であるか否かについて

本件不指定通知には,本件不指定処分の理由の1つとして,本件規程13条に適合すると認めるに至らなかったことが掲げられている(前提事実被告は,文部科学大臣は,本件申請を受
け,本件規程15条に基づき,審査会の意見を聴くとともに,支援室をして,審査会の審査と並行して,高等学校の課程に類する課程を置く外国人学校の審査の参考とするため,本件朝鮮学校を含む朝鮮高級学校につき,各種の文書照会等の調査をしたものであるところ,①国内外の新聞報道,
朝鮮総聯のホームページ,公安調査庁の報告等の種々の資料からは,本件朝鮮学校を含む朝鮮高級学校が朝鮮総聯等と密接な関係にあり,同校において適正な学校運営がされていないと疑われたばかりか,朝鮮総聯が朝鮮高級学校を利用して資金を集めていることも疑われ,②また,支援室は,上記調査の中で,本件朝鮮学校を含む朝鮮高級学校に対し,朝鮮総聯等と
の関係について回答を求めたところ,本件朝鮮学校からの回答は,朝鮮総聯等による影響を否定するような記載ではあったものの,朝鮮総聯のホームページには朝鮮総聯が朝鮮高級学校の運営等に関わっている旨の記載があり,本件朝鮮学校の回答の中にも,朝鮮高級学校の教職員や生徒が,客観的には,朝鮮総聯の傘下団体に加入し,活動していることがうかがわれ
る内容のものがあったため,結局,上記①のような疑いを払しょくするには至らなかったことから,本件朝鮮高級学校を含む朝鮮高級学校に対する朝鮮総聯等の影響力は否定できず,その関係性が教育基本法16条1項で禁じる「不当な支配」に当たらないことや適正な学校運営がされていることについて十分な確証を得ることができず,就学支援金を支給したとして
も,授業料に係る債権が充当されないことが懸念され,本件朝鮮学校について,本件規程13条に適合するものと認めるに至らないと判断したものであって,その判断は不合理ではないと主張する。

よって検討するに,①公安調査庁がその調査,収集した資料の分析に基づいて作成した資料や,公安調査庁長官及び警察庁長官官房審議官の国会における答弁の内容は,朝鮮総聯が朝鮮高級学校等の朝鮮人学校と密接な関係にあり,朝鮮人学校の教育内容,人事,財政に影響を及ぼしているとするものであるところ(

),公安調査庁及び警察庁が,

いずれも法によって設置された国家機関であり(法務省設置法29条及び公安調査庁設置法,内閣府設置法64条,警察法4条及び15条参照),一定の調査,分析能力を備えた組織であると考えられることに照らせば,文部科学大臣において,これらの資料や国会答弁の内容に一定の信を置くことが不合理とはいえないというべきこと,②朝鮮総聯自身のホームページにも,朝鮮総聯が朝鮮高級学校等の朝鮮人学校に影響を及ぼしていることをうかがわせる記載が見られる上

「朝鮮総聯は,日本

の都道府県ごとに47の地方本部をおいている。」,「地方本部は,中央本部の決定と方針にしたがって管轄地域の諸般の活動を企画,組織,推進し,管下の階層別団体,事業体,学校を指導する。」,「朝鮮総聯の地方本部は,当該地域を区分して支部をおいている。」,「地域の集団的指導機関である支部常任委員会は委員長,副委員長,専門部署役員,管下の団
体責任者,学校長などによって構成される。」といった朝鮮総聯の中央本部,地方本部,支部,地方本部の管下の階層別団体,事業体及び学校の関係等に関する同ホームページの記載

も勘案すると,文部科

学大臣において,上記①の資料や国会答弁において指摘されている事情について,全ての朝鮮高級学校に共通するものであると評価したとしても,不合理であるとはいい難いというべきこと,③広島地裁平成19年判決においては,「朝鮮学校」を設置する学校法人が朝鮮総聯の地方本部の強力な指導の下にある傘下組織のようになっており,適正な学校運営がされていないことを疑わせる事情や,朝鮮総聯の地方本部が「朝鮮学校」を利用して資金を集めていることを疑わせる事情が指摘されていること(認定事

),④支援室が本件朝鮮学校を含む朝鮮高級学校に対して朝鮮総聯
等との関係について回答を求めたことに対する本件朝鮮学校側(東京朝鮮学園)からの回答は,朝鮮総聯等による影響を否定するようなものとはなっていたが

,そのような回答は,本件申請の当事者自身の

言い分にほかならないものであって,その性質上,第三者の作成に係る資料とは質的に異なる資料であるということができる上,上記回答の内容は,朝鮮総聯が朝鮮高級学校の運営等に関わっている旨の朝鮮総聯のホームページの記載
のであったというべきこと,⑤審査会の会議における本件申請を含む支給対象外国人学校としての指定の申請についての議論を見ても,本件規程13条適合性が認められるとの積極的意見が述べられたものとはうかがわれ
ず,むしろ,本件規程13条適合性についていくら確認をしてもすっきり指定をすることができるようにならないという趣旨の意見や,審査会における審査の限界を指摘する意見が述べられていたこと(認定事実⑸。なお,文部科学大臣において,このような審査会における議論の内容も勘案した上で本件不指定処分をしたことは,後に述べるとおりである。),⑥その
他,朝鮮総聯等と朝鮮高級学校等の朝鮮学校との関係については,朝鮮総聯等の朝鮮高級学校に対する支配関係を指摘し,あるいは,朝鮮高級学校の資産や補助金が朝鮮総聯の資金に流用されている疑いを指摘する報道等本
件朝鮮学校につき,就学支援金の授業料に係る債権の弁済への確実な充当
が行われることや,学校運営が法令に従った適正なものであることについて,十分な確証を得ることができず,本件規程13条に適合するものと認めるに至らないとした文部科学大臣の判断をもって,不合理なものとまでいうことはできず,本件不指定処分につき,文部科学大臣の裁量権の範囲からの逸脱又はその濫用があるものとは認められないものというべきであ
る。
原告らは,①野党時代の自民党ないし下村衆議院議員を含むその所属議員が朝鮮高級学校を無償化の対象から外すことを意図していたこと,安倍内閣発足後,極めて短時間のうちに本件省令改正に関する文書が作成,公表されていることからすれば,下村文部科学大臣が野党時代の自民党の方針を引き継いで,政治的外交的判断に基づいて本件不指定処分を行ったものと推認できるというべきこと,②下村文部科学大臣は,平成24年12月28日の定例記者会見にて,拉致問題に進展がないことなどの政治的外交的理由により本件不指定処分を事実上決定し,その決定に従って本件省令改正を進めるとの方針を明らかにしたというべきであり,このことは,支援室が本件省令改正に関する「文部科学省の考え
方」として「「外交上の配慮などにより判断」しないとの民主党政権時の政府統一見解は廃止した上で,朝鮮学校については,拉致問題の進展がないこと,朝鮮総連と密接な関係にあり教育内容,人事,財政にその影響が及んでいることを踏まえると,現時点での指定には国民の理解が得られないと判断するものです。」との見解を示していることや,本件
不指定処分に係る決裁・供覧文書において参考として同日の下村文部科学大臣の発言が引用されていることからも裏付けられるというべきこと,③当時の菅官房長官や古屋拉致問題担当大臣も上記②の下村文部科学大臣の発言と同趣旨の発言をしていたこと,④下村文部科学大臣が,審査会の意見を聴かずに本件不指定処分をしたことからすると,本件不指定
処分は,本件不指定通知の記載とは異なり,政治的外交的理由を真の理由としてされたものというべきであって,そのような理由によってされた本件不指定処分は,文部科学大臣の裁量権の範囲からの逸脱又はその濫用があるものとして違法である旨主張する。
しかし,上記

①については,野党時代の自民党ないしその所属議員
の姿勢は,政権交代前の野党ないし野党議員としての姿勢を示すものにすぎない上,「電子政府の総合窓口(e-Gov)」にアップロードされた本件省令改正に関する文書のデータの「文書のプロパティ」上の電子デ,文部科学省職員において
政権交代の結果就任する新たな文部科学大臣から承認が得られた場合に備えてあらかじめこれらの文書を起案しており,下村文部科学大臣の了承を得た後にこれらの文書を「電子政府の総合窓口(e-Gov)」のシステムに登録したとの被告の主張と矛盾するものとはいえないから,本件不指定処分が政治的外交的理由によりされたことを裏付けるものとはいえない。
次に,

おいて原告らが問題にする下村文部科学大臣の定例

記者会見での発言(

)は,その内容を素直に見れば,本件

不指定処分等の個別具体的な処分やその理由について述べたものではないことが明らかである上,本件不指定処分に際して,本件不指定処分に係る決裁・供覧文書により本件不指定通知と同趣旨の文書が決裁・供閲
臣の上記発言をもって本件不指定処分が事実上決定されたものと認めることはできないものというべきである(むしろ,下村文部科学大臣は,平成25年2月10日及び同年5月24日の記者会見において,「私としては朝鮮総連の影響下にある学校は不当な支配に服するというですね,教育基本法にも抵触するのではないかなというふうに思っておりますの
で,是非,子どもには罪がありませんから,朝鮮学校については本来の我が国の学校教育法に基づいた学校に変えていただければ対象になるわけです」(甲44),「朝鮮学校の高校無償化に係る不指定処分については,一つには,朝鮮学校は朝鮮総連と密接な関係にあり,教育内容,人事,財政にその影響が及んでいることなどから,法令に基づく学校の
適正な運営が行われているとの確証が得られなかったために,不指定処分となった」(乙47)などと,本件不指定処分が本件規程13条の基準に適合すると認めるに至らなかったことを理由とするものであるとの趣旨の発言をしているところである。)。
その主張を裏付ける事情として指摘
するもののうち,①原告ら指摘の文部科学省の見解については,本件省令改正についての国民からの意見に対して,拉致という犯罪行為をしている北朝鮮の政治体制等の特殊性を無視して朝鮮高級学校を支給法の対象として指定し,公金を支出することについては国民の理解が得られないという見解を示したものであって,本件不指定処分の理由を示すものではないし,②本件不指定処分に係る決裁・供覧文書において参考とし
て下村文部科学大臣の発言が引用されていることについても,これによる決裁・供閲の対象となっているものは,本件規程13条の基準に適合すると認めるに至らなかったことなどを理由として本件不指定処分をすることについての文書であり,下村文部科学大臣の上記発言は飽くまでも「参考」として掲げられているものにすぎないから,これらの事情を
もって,下村科学大臣が平成24年12月28日の定例記者会見にて政治的外交的理由により本件不指定処分を事実上決定したことの裏付けとなるものとはいい難いものというべきである。
本件不指定処分が政治的外交的
理由によりされたことを裏付けるものとはいえない。

さらに,
原告らが指摘する下村文部科学大臣の記者会見における発言と同趣旨の発言を支持する趣旨の菅官房長官及び古屋拉致問題担当大臣の各発言をもって,本件不指定処分が政治的外交的理由
によりされたことを裏付けるものとはいい難い。

被告は,文部科学大臣は,審査会において本件朝
鮮学校を含む朝鮮高級学校の本件規程13条適合性について明確な結論を出すことは困難である旨の意見が出されていたこと,文部科学省職員から朝鮮高級学校に対する審査に限界がある旨の報告を受けたことから,これらの意見も考慮した上で本件不指定処分をしたものであると主張し,証拠(乙74,75,証人A,証人B)もこれに沿うものとなっているところ,これらの証拠が審査会における議論の状況

や本

件不指定処分に係る決裁・供覧文書に添付されている文書の内容(認定と矛盾するものではないことに照らせば,被告主張のとおり,
文部科学大臣においては,上記のような審査会における議論の状況等も踏まえて本件不指定処分をしたものと認められる(なお,原告らは,①第7回の審査会において,最終的な結論提示の必要性や作業継続について言及がされていたことや,②本件不指定処分に係る決裁・供覧文書の件名欄等に本件不指定処分の理由として本件規程13条に適合すると認めるに至らなかった旨が記載されていないことを問題とする。しかし,
て本件朝鮮学校を含む朝鮮高級学校の本件規程13条適合性について明確な結論を出すことは困難である旨の意見が出されており,第7回の会議においても,この点について真偽の確証を得ることについては限界がある側面もあるとの指摘もされていたことに照らし,上記の認定判断を左右するものとはいえず,上記②についても,本件不指定処分に係る決
裁・供覧文書の起案者が決裁権限のない職員であったこと(証人A)に照らすと,その件名欄等の記載が不正確なものであることをもって,上記の認定判断を左右するものということはできない。)。加えて,後に述べるとおり,審査会の意見は,文部科学大臣による本件省令1条1項2号ハ該当性の審査における考慮要素の1つにとどまるものというべき
ことも勘案すれば,文部科学大臣が審査会の最終的な結論を待たずに本件不指定処分をしたことをもって,本件不指定処分が政治的外交的理由によりされたことを裏付けるものとはいえない。
結局のところ,本件不指定処分をもって,本件不指定通知の記載とは異なり,政治的外交的理由を真の理由としてされたものであるとする原告らの主張は,これを認めるに足りないものというほかない。
原告らは,①各朝鮮高級学校の法令違反の有無は,所轄庁が判断すべきであるところ,本件朝鮮学校については,所轄庁である東京都を通して法令違反の有無やその運営実態の調査がされた結果,審査の過程で法令違反の具体的事実は何ら確認されなかったというべきであるから,本件規程13条に適合しているものと判断されるべきである,②公安調査
庁の見解や警察庁長官官房審議官の国会答弁などは,公安調査庁及び警察庁が,治安維持の観点から朝鮮総聯等の活動を調査した結果をまとめたものにすぎず,教育上の観点から制度的客観的に実施された調査に基づくものではないから,朝鮮高級学校における授業料等の財産管理とは全く無関係なものといわざるを得ない,③本国又は関連する民族団体が
外国人学校に対して何らかの教育活動の支援を行うことは通常行われているのであるから,朝鮮総聯等と本件朝鮮学校を含む朝鮮高級学校との間にそのような関係があるだけで,両者の間に教育基本法16条1項の「不当な支配」・被支配に該当する関係があるものと認めることはできないなどと主張する。

しかしながら,

①については,支給法,本件省令及び本件規程

を見ても,本件規程13条適合性に係る審査について,所轄庁を通じた調査・確認のみに限定するとの定めはなく,既に述べたような就学支援金制度の仕組み,本件規程13条の趣旨,同条適合性の判断についての文部科学大臣の裁量に照らしても,同条適合性に係る審査について,所轄庁を通じた調査・確認のみが予定されているものとは認め難く,原告らの主張は,採用することができない。
また,

②についても,既に述べた本件規程13条の趣旨に照ら
せば,本件規程13条適合性の判断は,単に教育内容などの教育的観点のみから行われるものではなく,財務管理や学校の管理運営といった観点からも行わなければならないのであるから,上記判断のための資料を教育上の観点から実施された調査に基づくものに限定すべき理由はなく,文部科学大臣において,本件規程13条適合性の判断に際して,公安調査庁の資料や同庁長官ないし警察庁担当者の国会での答弁を判断の一資料とすることに問題はないものというべきであるから,原告らの主張は,採用することができない。

さらに,

③については,既に述べたところからすれば,本件不
指定処分は,朝鮮総聯等と本件朝鮮学校を含む朝鮮高級学校との間に本国又は関連する民族団体から外国人学校に対して通常行われる範疇の教育活動への支援がされていることをもって教育基本法16条1項の「不当な支配」・被支配に該当する関係があるとの判断をしたものではないから,原告らの主張は,その前提を欠くものというべきである。
原告らは,①特定の外国人学校の申請を却下して生徒らへの支給を実質的に拒絶するのであれば,具体的事実を認定した上で,特定の要件の不充足を判断すべきであり,具体的事実を確定しない状態で不指定処分をすることは行政処分を行う根拠として不十分であるというべきこと,
②本件規程16条以下において指定を受けた教育施設が「高等学校の課程に類する課程」を置く学校であることを確認するための規制や監督の仕組みが設けられていることに鑑みても,抽象的な理由で不指定処分を行うことは支給法の趣旨・目的に反すること,③本件朝鮮学校にはさらなる調査に対して誠実かつ迅速に対応する準備があり,審査会において
も引き続き審査作業を進めることが予定されているにもかかわらず,文部科学大臣が本件規程14条及び15条に従った調査等を行う努力を果たさず,何ら具体的事実を認定しないまま,抽象的な理由によって本件不指定処分をしたことなどに照らしても,本件不指定処分は違法であるとも主張する。

号ハを根拠として支給対象外国人学校としての指定を受けることができ
るのは,本件規程の第2章に定める各要件を全て充足しているものと認められる場合に限られ,それ以外の場合,すなわち上記各要件を充足していると認められない場合や,上記各要件を充足していると認めるに至らない場合には,同号ハを根拠として支給対象外国人学校としての指定のであって,採用することができない。

以上のとおりであって,本件朝鮮学校につき,就学支援金の授業料に係る債権の弁済への確実な充当が行われることや,学校運営が法令に従った適正なものであることについて,十分な確証を得ることができず,本件規程13条に適合するものと認められるに至らないとした文部科学大臣の判
断をもって,不合理なものとまでいうことはできず,本件不指定処分につき,文部科学大臣の裁量権の範囲からの逸脱又はその濫用があるものとは認められない。また,そうである以上,本件省令改正が支給法2条1項5号の委任の範囲を逸脱するものであるか否か(争点2)は,本件不指定処分の適法性の判断を左右するものではないから,争点2については,判断
する必要がないことになる。
3
本件不指定処分が審査会の意見の聴取について定めた本件規程15条に違反して違法となるか否か(争点3)について
支給法は,審査会を設置すること自体何ら規定していないのであって,文
部科学大臣がその判断に当たって審査会の意見を聴くことが支給法上の要請でないことは,明らかである。
そして,①検討会議における議論の経緯,指定に関する基準等に係る報告の内容(「審査は,教育制度の専門家をはじめとする第三者が,専門的な見地から客観的に行い,対象とするかどうかについて意見を取りまとめ,最終的には,文部科学大臣の権限と責任において,外国人学校の指定がなされることが適当である」と

本件規程15条が,

「文部科学大臣は,規則第1条第1項第2号ハの規定による指定を行おうとするときは,あらかじめ,教育制度に関する専門家その他の学識経験者で構成される会議で文部科学大臣が別に定めるものの意見を聴くものとする。」と規定するのみであって,文部科学大臣が審査会の「議により」判断するというような規定ぶりとなっていないこと,③本件規程13条に定める要件を充足するか否かの検討は,その性質及び内容からして自ずと専門的,技術的検討を伴うものであり,まずは教育行政に通暁する文部科学大臣の専門的,を勘案すると,
審査会の意見聴取について定めた本件規程15条は,文部科学大臣において
本件省令1条1項2号ハによる指定を行おうとするに際し,その判断の際の考慮要素の1つとして,教育制度に関する専門家その他の学識経験者で構成される会議で同大臣が定めるものの意見を聞くことが判断に資すると考えられたことから設けられた規定であるものと解され,本件規程15条に定める審査会の意見は,同大臣の上記裁量判断の際の考慮要素の1つにとどまるも
のというべきである。
この点,原告らは,①本件運営決定によれば,審査会においては指定の可否について具体的根拠を持った結論を示すことが制度上要請されていた,②本件規程15条に用いられている「…ものとする」との用語は,一般に,行政官庁等に対して一定の行為を義務付ける場合に用いられていることからす
ると,本件規程15条に定める意見聴取手続が支給法に由来する制度上の義務であるなどとした上で,文部科学大臣が審査会の最終的な意見を聴かないでした本件不指定処分は違法であるなどと主張する。
しかし,上記①については,原告ら指摘の点と審査会の意見が文部科学大臣の裁量判断の考慮要素の1つにとどまることは,相容れないものではない,採用し難
い主張というべきである。原告らの上記主張は,採用することができない。
以上のとおりであって,文部科学大臣において審査会の最終的な意見を聴かないで本件不指定処分をしたことの一事をもって,本件不指定処分が違法との評価を受けることはないものというべきである(なお,文部科学大臣において,審査会における議論の状況等も踏まえて本件不指定処分をしたものと認められることは,既に述べたとおりである。)。

第4

結論
以上の次第であって,その余の争点について判断するまでもなく,原告らの請求はいずれも理由がないから,これらを棄却することとして,主文のとおり判決する。

東京地方裁判所民事第28部

裁判長裁判官

田中一彦
裁判官

小崎賢司
裁判官

大門真一朗
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