判例検索β > 平成27年(ワ)第355号
司法修習生給費制廃止違憲給費等請求事件
事件番号平成27(ワ)355
事件名司法修習生給費制廃止違憲給費等請求事件
裁判年月日平成29年9月29日
法廷名大分地方裁判所
結果棄却
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平成29年9月29日判決言渡

同日原本領収

裁判所書記官

平成27年(ワ)第355号

司法修習生給費制廃止違憲給費等請求事件
(第1事件)


年(ワ)第550号

同(第2事件)

平成28年(ワ)第113号

同(第3事件)

口頭弁論終結日

平成29年5月12日
判決
当事者の表示

別紙当事者目録記載のとおり
主文1
原告らの請求をいずれも棄却する。

2
訴訟費用は,全事件を通じ,原告らの負担とする。

第1

実及び理由
請求
被告は,原告らに対し,それぞれ1万円を支払え。

第2

事案の概要
本件は,平成25年11月に司法修習生を命じられ,平成26年12月に司法修習生の修習(以下「司法修習」という。)を終えた原告らが,①平成16年法律第163号(以下「平成16年改正法」という。)による裁判所法の改正(以下「平成16年改正」という。)による,給費制(司法修習生がその修習期間中,国庫から給与を受ける制度をいう。以下同じ。)の廃止は,憲法に違反して無効であるとして,被告に対し,平成16年改正前の裁判所法67条2項に基づき,未払給与の内金の支払を求め,②内閣総理大臣が平成16年改正法案を国会に上程するなどした行為及び国会議員の平成16年改正法の立法行為が,いずれも国家賠償法上違法であるとして,同法1条1項に基づき,逸失利益及び慰謝料の内金の支払を求める事案である(選択的併合)。
1
争いのない事実等


当事者等
原告らは,いずれも平成25年11月27日に司法修習生を命じられ(以下,同日に採用された司法修習生を「67期司法修習生」という。),同日から平成26年12月まで司法修習を行い,同月,司法修習を終えた者である。原告らを含む67期司法修習生は,司法修習の期間中,国庫から給与を受けていない。
(2)

関係法令の定め
別紙「関係法令の定め」記載のとおりであり,このうち給費制に関する規
定の概要は次のとおりである。
ア(ア)

平成16年改正前の裁判所法67条2項は,司法修習生は国庫から
給与を受ける旨規定していたところ,平成16年改正法は同項を司法修習生の修習専念義務を定める内容に改め,司法修習生は国庫から給与を受ける旨の規定が存在しないこととなった。また,平成16年改正法は裁判所法67条の2を新設し,最高裁判所が司法修習生に対し,その修習期間中に,修習資金を貸与する制度を創設した。
(イ)

平成16年改正法の施行日は,
平成22年11月1日であり
(同法附

則1項),同日前に採用され,同法の施行後も引き続き修習をする司法修習生の給与については,なお従前の例による,とされていた(同法附則2項)ものの,裁判所法の一部を改正する法律(平成22年法律第64号。同年12月3日公布,同日施行。以下「平成22年改正法」という。)は,裁判所法附則4項を,①同法67条の2の規定は平成23年10月31日までは適用しない,
②この場合において,
67条2項を
「司
法修習生は国庫から給与を受ける。」と読み替える旨の規定に改めた上で,裁判所法附則4項の規定は平成22年11月1日から同年12月2日までに採用された司法修習生についても適用し(平成22年改正法附則2項),平成23年10月31日までに採用され,同日後も引き続き修習をする司法修習生の給与については,なお従前の例による(同法附則3項)としたことから,同日までに採用された司法修習生は給与を受けることができたが,原告ら67期司法修習生を含む,平成23年11月1日以降に採用された司法修習生は,給与を受けられないこととなった。

裁判所法の一部を改正する法律(平成29年法律第23号。以下,この法律による裁判所法の改正を「平成29年改正」という。)により,司法修習生に修習給付金を支給する制度が設けられたが,同法の施行日は平成30年11月1日であり,同日以降に採用された司法修習生には,修習給付金が支給されることとなる。

2
争点
(1)

平成16年改正前の裁判所法67条2項に基づく請求
平成16年改正法は,憲法上の要請である給費制を廃止する点で,違憲であり,無効であるか。


平成16年改正法は,憲法27条1項及び2項に違反し,違憲無効であるか。

(2)

国家賠償法1条1項に基づく損害賠償請求

アイ3
平成16年改正に関する被告の国家賠償法上の責任の存否
原告らの損害

争点に対する当事者の主張
(1)

争点(1)ア(平成16年改正法は,憲法上の要請である給費制を廃止する
点で,違憲であり,無効であるか)について
(原告らの主張)

憲法は,次のとおり,戦前の司法制度の問題点を踏まえて,その基本理念である司法の権威の確立と国民の基本的人権の擁護を実現するために,その担い手としての裁判官,検察官,弁護士の憲法上の職責を規定し,国がこれらの法曹三者を統一修習により養成する責務を負うことを当然の前提として,
憲法附属法典としての裁判所法に制度設計を委ねていたところ,
その趣旨は,
統一修習制度と給費制を不可欠の要素とするものであるから,
立法府が給費制を廃止することは,
憲法の委託の趣旨を超えるものであり,
憲法に違反する。
(ア)

戦前は,
①裁判所が法律に関する憲法解釈権限,
法令審査権を有して

いないために,立法府が司法府に対して優位に立ち,②行政府が,裁判官の任命,監督を行う点で,司法府より上位に立ち,③弁護士は憲法上の位置付けを与えられていない上に,検事正又は検事長の監督に服しており,行政府である検察が弁護士より上位に立っていた等の問題点があり,裁判所は,立法府,行政府に追従することを余儀なくされ,国民の権利擁護という役割を十分に果たすことができなかった。
戦後は,戦前の前記の問題点を踏まえ,国民の基本的人権の保障を実現するために,①憲法においては,基本的人権の保障が規定される(11条以下,97条)とともに,これを実現すべく,特別裁判所の禁止(76条2項)
,裁判官の独立及び身分保障(76条3項,78条,7
9条6項,80条2項)
,弁護人依頼権及び国選弁護人の付与義務(3
4条,37条3項)等が規定され,法曹三者の存在とそれぞれの職責が明文化され(以上に加えて,77条2項)
,②司法制度改正審議会にお
いては,国民の権利保障のためには弁護士の役割が重要であることから,法曹一元化を目指すこととされた。
(イ)

前記(ア)の経緯を踏まえて,
戦後,新たな憲法の下で,新たな法曹養成

制度が設けられた。すなわち,戦前の法曹養成制度では,裁判官及び検察官の養成課程において,司法官試補は,司法の一翼を担うものとして身分保障を受け,国家がその養成に責任を負い,給与の支払を受けていたのに対し,弁護士の養成課程においては,国家は弁護士試補の養成責任を全く負わず,
弁護士試補は給与の支払を受けることもなかったため,
法曹三者の相互理解の形成が著しく阻害され,弁護士に有能な人材が集まることが阻害されるなどの弊害が生じていた。このような弊害を解消して,憲法上明記された法曹三者の職責を果たし,国民の権利擁護を担うことのできる人材を養成するために必要不可欠な制度として,司法官試補と弁護士試補とを別個に養成するのではなく,国の責任で法曹三者を統一して養成する統一修習制度として,司法修習が導入された。前記の経緯からすれば,司法修習は,法の支配の貫徹,司法権の独立及び民主化を実現するために設けられたものであり,憲法上明記された法曹三者の職責を果たし得る人材を養成するため,憲法上の要請に基づく必要不可欠の制度というべきであるから,国が司法修習により法曹を養成することは憲法上の義務というべきである。
(ウ)

司法修習制度が設けられた前記(イ)の経緯に鑑みると,憲法は,法曹
三者が高度の専門的実務能力と職業倫理を備えることも要請していると解すべきであり,このような質の高い法曹を確保するために,憲法は,法曹養成課程において有為かつ多様な人材を確保することをも要請していると解すべきである。
ところで,有為かつ多様な人材を確保するとの観点からすれば,個々の司法修習生が経済的事情によって司法修習を断念し,あるいは,司法修習に専念できないという事態を生じさせることは許されないから,司法修習の効果的な実施は経済的な給付を伴って初めて実現されるというべきであり,給費制は,司法修習の本質から導かれる修習専念義務と表裏一体をなすものとして,憲法上の国の責務というべきである。
現に,裁判所法の制定に際しては,給費制は当然の前提とされており,司法省は,裁判所法案の立法趣旨として,①司法修習生は,裁判官,検察官のみならず,弁護士にもなることができるのであり,司法官試補よりも広い資格が与えられるから,従来の試補と同様に給与を受けるのは当然である旨,②司法修習は,裁判官,検察官になるには必ず経なければならないものであり,弁護士になる者についても国家事務を行うものであるから給与を支給する旨説明していた。また,平成16年改正により裁判所法に修習専念義務が創設的に規定されたところ,これは修習専念義務と給費制が表裏一体のものであることを示している。(エ)

しかしながら,
平成16年改正は,
目的達成のための手段としての関

連性がなく,
立法事実も存しないにもかかわらず,
行われたものである。
すなわち,平成16年改正による給費制の廃止は,59回の司法制度改革審議会(以下「審議会」という。)において給費制廃止について実質的な議論はなされていないにもかかわらず,その後に,法曹養成検討会(以下「検討会」という。)で給費制の議論が提起されたところ,検討会では給費制や法曹養成制度の意義を踏まえた議論はされず,時間的制約を理由に貸与制を前提とした意見のとりまとめが強行され,検討会に続き,国会の議論においても,十分な議論や反対意見の吟味を経ることはなかった。このように,給費制の廃止は,その議論の過程において,司法制度及び法曹養成制度に係る改革の基本理念との関連性について全く検討されることなく決定されたものであり,本来の目的である前記理念を達成するための手段としての関連性がなく,むしろ前記理念に反するものである。また,被告は,平成16年改正による給費制の廃止の根拠として,給費制の維持に対する国民の理解が得られないことを挙げていたが,かかる立法事実は存在しない。平成29年改正により,給費制が復活させられたが,これによって平成16年改正法による給費制の廃止が根拠を欠くものであり,平成16年改正の際に内閣及び国会が給費制を廃止することの長期的な見通しを全く持っていなかったことが露見したというべきである。
よって,平成16年改正による給費制の廃止は,目的達成のための手段としての関連性がなく,立法事実も存しない中で,裁判官,検察官を含む法曹を養成する任務を蔑ろにし,戦前の法曹養成制度を再現し,あるいはそれにも悖る改悪をし,
その根幹を改廃するものである。
憲法は,
憲法附属法典である裁判所法に制度設計を委託しているところ,給費制の廃止は,憲法の委託した趣旨を逸脱し,立法裁量の限界を超えるものであって,憲法の要請に明確に反しており,違憲無効である。

被告の主張に対する反論
(ア)

被告は,法曹養成制度の具体的内容が憲法の規律するところではな
く,
法律事項として立法府の政策的な判断に委ねられている旨主張する。しかしながら,裁判所法は,憲法の規定する司法の民主化を具体化するために制定された憲法附属法典であり,憲法上の要請である給費制を前提として,平成16年改正前の裁判所法67条2項が制定されたのであるから,法曹養成制度の具体的内容が立法府の政策的な判断に委ねられているとするのは妥当でない。また,被告の主張によれば,司法審査の客体とされ得る立法府が,その主体たる法曹の養成を任意に設計し得るということになり,これは,憲法が要請する司法の独立や,司法の最も重要な憲法上の権限である法令審査権ないし違憲立法審査権と相反するものであって,憲法の基本原理に反する。
(イ)

被告は,給費制が修習の実効性を確保するための配慮である旨主張す
るが,司法修習生の給与額が裁判官に準じたものとされ,一般の国家公務員上級職より上位のものであったことは,司法修習生が公務員以上の職責を担っていることを示すものであり,司法修習生に対する給与が配慮であったなどということはできない。
(被告の主張)
憲法は,司法権の担い手として法曹三者の存在を前提としているが,給費制はもとより,司法修習の方法や在り方,更には法曹養成の方法や在り方に関する規定を,何ら設けていないのであって,司法修習制度ないし給費制は憲法上保障されているものではない。法曹養成に関して,我が国においていかなる制度を採用するか,採用された法曹養成制度の具体的内容をどのようなものにするかといった事項は,憲法の規律するところではなく,法律事項として立法府の政策的な判断に委ねられている。
従って,司法修習制度ないし給費制は,憲法上保障されているものではなく,平成16年改正前の給費制は,司法修習生をして修習に専念させるための配慮にすぎない。


争点(1)イ(平成16年改正法は,憲法27条1項及び2項に違反して,違憲無効であるか)について

(原告らの主張)

勤労者の賃金支払請求権は,憲法27条1項によって保障された勤労者の権利であり,その重要性に鑑み,同条2項は賃金に関する規定は法律をもって定めるとしているが,次のとおり,司法修習は憲法27条1項に規定する「勤労」に該当し,平成16年改正前の裁判所法67条2項は勤労者である司法修習生の賃金支払請求権を実現する規定であったにもかかわらず,平成16年改正法は同項を削除し,司法修習生に賃金が支払われなくなったのであるから,平成16年改正法は憲法27条1項及び2項に違反する。
(ア)

憲法27条1項にいう「勤労」をする者と労働各法にいう「労働者」
は同義であると解されるため,司法修習生が労働基準法9条にいう「労働者」に該当するならば,司法修習は憲法27条1項にいう「勤労」に該当することとなる。ここで,労働基準法9条の「労働者」に当たるためには,①事業又は事務所に使用される者であること,②賃金を支払われる者であることが必要である。
このうち,①の要件(以下「使用従属性」という。)については,次の判断要素を考慮すれば,司法修習生は,これを充たす。
a
仕事の依頼・業務従事の指示等に対する諾否の自由の有無
司法修習生は,司法修習の目的から,修習内容を自由に取捨選択することは予定されておらず,配属庁が作成したカリキュラムに従って修習を行うことを義務付けられており,修習の具体的な内容について拒否することは許されなかった。

b
業務遂行上の指揮監督の有無
①最高裁判所は,
司法修習生の任免権を有しており,
司法修習生は,
修習内容の遂行及び修習生活上の一般事項について,厳格な指揮命令を受けていること(裁判所法66条1項,司法修習生に関する規則17条,18条),②司法修習生は,1年間の修習を義務付けられ(同法67条1項),司法研修所長は,修習の全期間を通じて,修習に関して,司法修習生を統轄するとされているとともに,実務修習期間中は,その配属地の高等裁判所長官,地方裁判所所長,検事長,検事正又は弁護士会長の監督をも受けるとされていること(同規則1条,8条)③司法修習生は,

修習期間中,
司法修習の目的を実現するため,
修習に専念する義務が課されているとともに(同法67条2項),最高裁判所の許可を受けない限り,原則として,兼業を禁止されていること(同規則2条),④司法修習生は,修習の時間中,指導担当者に同行することを原則とし,同人の指揮監督のもと,具体的な修習に臨み,詳細かつ具体的な指導を受けること,⑤司法修習生は守秘義務を負っていること(同規則3条)からすれば,司法修習生は業務遂行上の指揮監督を受けている。

c
時間的・場所的拘束の有無
司法修習生は,希望に反して全国の裁判所所在地に配属され,新たな住居を探して転居することを余儀なくされることもある。実務修習においては,平日は概ね午前9時から午後5時まで,所定の休憩時間を除き,指導担当者から指示された法律業務等を行うことが義務付けられている。
また,
前記b③のとおり,
修習専念義務が課されており,
修習の時間外も原則として兼業が禁止されているため,一日中時間的な拘束を受けている。さらに,国外旅行をする際には,司法研修所長の承認が必要で,修習を欠席する際には,一般職の職員と同様の規律の下に承認されることとされている。このように,司法修習生は,司法修習期間中,時間的・場所的に極めて強度の拘束を受けている。d
業務の代替性の有無
司法修習は,各司法修習生を実務法曹として養成するために行われるものであり,本人に代わって第三者が行うことは,予定されておらず,許容もされておらず,業務の代替性が認められない。

e
報酬の労務対価性,公租公課の負担
新64期以前に司法修習生に支払われていた給与は,月額約20万円であり,また,その給与が支払われる際には源泉徴収及び共済組合掛金の天引が行われていた。

(イ)

また,前記(ア)②の要件については,司法修習生が,使用従属性の下
で,賃金を支払われるべき者と解すべきところ,司法修習を労務として提供するという,司法修習の実態は平成16年改正前と何ら変わるところはないから,司法修習生は,これを充たす。

被告の主張に対する反論
(ア)

被告は,憲法27条1項の「勤労」の不可欠の要素として,使用者に
対する労務の提供が必要であるところ,司法修習生は労務を提供していない旨主張する。
しかしながら,労務の提供とは,労働契約における債務の本旨に従った履行の提供を意味するところ,司法修習に関する事務は国の事務とされている上(裁判所法14条),国は,司法修習生に対し修習専念義務を課し(同法67条2項),司法権の一翼を担う法曹となるにふさわしい品位と能力を備えるように努めなければならない(司法修習生に関する規則4条)としているから,司法修習に従事すること自体が職務というべきであり,国の指揮命令に従って修習すること自体が,債務の本旨に従った履行の提供に当たる。
(イ)

被告は,司法修習は臨床教育課程であって,裁判官,検察官又は弁護
士の職務を行う権限を有していないのであり,これらの職務を行うことは何ら予定されていないから,司法修習に従事すること自体は労務の提供に当たらない旨主張する。
しかしながら,一定の法律関係にある者による指揮命令に従って,本来の職務を遂行するために必要な教育を受け,監督に服している場合にも,たとえ教育的側面があるとしても,これは労務の提供に当たり,権限を持って職務を遂行することは不要であると解すべきである。現に,①行政職公務員が研修を受講すること,②裁判所書記官の権限を持たない裁判所事務官が裁判所職員総合研修所の書記官養成課程で研修を受けること,③家庭裁判所調査官の権限を持たない家庭裁判所調査官補が同研修所の家庭裁判所調査官養成課程で研修を受けること,④民間企業において,従業員が,本来的な職務に従事せずに,必要とされる知識や技術等を身につけるための教育ないし訓練を受けることのいずれもが労務の提供に当たるとされ,給与の支払がされている。司法修習生は,国との間で特殊な公的地位を与えられた契約関係にあり,裁判所法に基づく最高裁判所の指示,定めに従い,司法修習という職務を遂行しているから,その職務遂行は労務の提供に当たるといえる。
(ウ)

被告は,前記(イ)①ないし③について,研修を受ける者は,国家公務
員としての身分,立場があり,これらの研修が現在就いている官職若しくは将来就くことが見込まれる官職において求められる職務遂行能力を身につける点で司法修習とは異なる旨主張するが,国家公務員としての身分,立場の有無は労務の提供の有無に関係がない上に,司法修習が,戦前の法曹養成制度の反省を踏まえて,裁判官,検察官のみならず弁護士となる者をも区別しないで国家がその養成に当たるとの考えに基づいて設けられた統一修習であることからすれば,将来官職に就くことが見込まれるかは重視すべきではなく,将来就くことが見込まれる法曹三者としての職務遂行能力を身につけるために行われることからすれば,同様に労務の提供と考えるべきである。
(被告の主張)

憲法27条1項の「勤労」に当たるためには,その行為が使用者に対する労務の提供に当たることが当然の前提であり,不可欠の要素である。ところで,司法修習は,国に対する勤務又は給付の性質を持つものではなく,法曹に必要な能力を養成するため,すなわち,司法修習生自身の自己研さんのための,実際の法律実務活動の中で行われる臨床教育課程である。司法修習生は,裁判官,検察官又は弁護士の職務を遂行する権限を有していないし(裁判所法43条,検察庁法18条1項1号,弁護士法4条参照),また,法令上,その他の国の事務に関する職務を遂行する固有の権限や義務も定められておらず,裁判所等の国家機関が所掌する事務の分配を定める規定もない。そもそも,司法修習生が,司法修習の過程で,これらの職務に関して何らかの権限を行使して職務を遂行したり,法律実務家として職務を遂行したりすることは予定されておらず,司法修習生はそのような職責も負っていない。また具体的な修習内容に照らしても,司法修習生は,修習の過程で,裁判官,検察官,弁護士の職務その他国の事務に関する職務に従事していない。従前,司法修習生に国庫から一定額の給与が支給されていたのは,司法修習が国に対する勤務又は給付ではないことを前提に,法曹の資格要件としての司法修習の重要性に鑑み,司法修習生をして修習に専念させるなどのための配慮としてなされていたものであって,司法修習生が勤労者に該当することが当然の前提とされていたからではない。
従って,司法修習生の修習は,国に対する労務の提供には当たらない。イ
原告らは,司法修習生が修習専念義務を負っていること,時間的・場所的に拘束を受けていること等の事情をあげるが,修習専念義務は,高い識見と円満な常識を養い,法律に関する理論と実務を身につけ,裁判官,検察官又は弁護士にふさわしい品位と能力を備えるという司法修習制度の目的から導かれるものであり,司法修習が司法制度を担う法曹に必須の課程として国家によって運営されるものであること,修習の内容も法曹に必要な能力を養成するために高度に専門的であること,司法修習が臨床教育課程として実際の法律実務活動の中で行われるものであり,実際の法曹と同様に中立公正な立場を維持し,利益相反活動を避ける必要があることなどから必要とされるものであるから,司法修習生が修習専念義務を課され,時間的・場所的拘束を受けていること等の事情は,国と司法修習生の間の使用従属関係を示すものでも,司法修習が国に対して対価・補償の支払義務を生じさせるような勤務又は給付であることを示すものでもない。

原告らは,公務員について研修を受けることが労務の提供に当たるとされていることをもって,司法修習も労務の提供に当たる旨主張する。しかしながら,裁判所事務官,裁判所書記官,家庭裁判所調査官補,家庭裁判所調査官は,
いずれも特別職国家公務員として,
国家公務員の身分,
立場を有する者であり,研修期間中の給与は,裁判所職員臨時措置法が準用する一般職の職員の給与に関する法律等によって支給されるものであるのに対し,司法修習生は,裁判所法により,公務員とは身分・立場が異なるものとして特別の地位が法定され,国の事務に関する職務を遂行することを予定されていないから,これらの者と司法修習生を同列に論ずることはできない。
また,国家公務員の研修は,現在就いている官職又は将来就くことが見込まれる官職の職務の遂行に必要な知識及び技能を修得させ,能力及び資質を向上させることを目的とするものであり(国家公務員法70条の5第1項参照),その職責を適切に果たすことができるよう,現在就いている官職又は将来就くことが見込まれる官職において求められる職務遂行能力を身に付けるために日頃から職務内外で行われる知識及び技能の習得の一環として行われるものであって,国の職務命令に基づくものである(人事院規則10-3第6条1項参照)。およそ研修を受けることのみを職務とし,研修が終了した時点で退職するような官職は存在しない。これに対し,司法修習は,司法修習生自身の自己研さんのための,実際の法律実務活動の中で行われる臨床教育課程であり,司法修習生は,裁判官,検察官又は弁護士の職務を遂行する権限を有していないし(裁判所法43条,検察庁法18条1項1号,弁護士法4条参照),また,法令上,その他の国の事務に関する職務を遂行する固有の権限や義務も定められておらず,裁判所等の国家機関が所掌する事務の分配を定める規定もない。
従って,国家公務員と司法修習生は身分,立場が異なり,国に対して職務を遂行すべきとされているか否かについても異なる上,国家公務員の研修と司法修習は性格が異なるものであるから,これらを同列に論ずることはできない。


争点(2)ア
(平成16年改正に関する被告の国家賠償法上の責任の存否)

ついて

(原告らの主張)
前記(1)及び(2)(原告らの主張)のとおり,司法修習生は,憲法上の権利として,給費を受ける権利を有しており,平成16年改正法は,これを侵害する違憲無効なものであるところ,内閣は,平成13年12月に,内閣総理大臣を本部長とする推進本部を設置するとともに,平成14年3月19日,修習生の給費の在り方について検討を行う旨の方針を含む推進計画を閣議決定し,平成16年10月,給費制を廃止する内容の法案を国会に提出した。内閣総理大臣は,内閣の一般国務遂行の最高責任者,司法改革推進本部長として,憲法99条に基づく憲法尊重擁護義務を負っているところ,原告らを含む司法修習生の憲法上の権利を侵害するような方針を定め,その方針を実現する法案を提出したのであるから,内閣総理大臣の行為は,憲法尊重擁護義務に違反し,違法であるとともに,内閣総理大臣には故意又は過失がある。
また,立法に際して,平成16年改正法の法案が憲法に違反するものであることが明白であったといえるから,国会議員が平成16年改正法を立法した行為は,故意又は過失に基づき,違法に原告らを含む司法修習生の給費を受ける権利又は勤労の権利を侵害したといえ,
国家賠償法1条1項に基づき,
被告は,原告らに対し,前記各行為により,原告らに生じた損害を賠償すべき責任を負う。
(被告の主張)
前記(1)及び(2)(被告の主張)のとおり,給費制ないし司法修習生の給費を受ける権利は,憲法上保障されているものではないから,平成16年改正による給費制の廃止は,憲法に違反しない。
従って,平成16年改正に係る内閣総理大臣及び国会議員の行為は,国家賠償法上違法ではない。


争点(2)イ(原告らの損害)について

(原告らの主張)

逸失利益
原告らは,給費制廃止により,給費相当額を得られないという損害を被り,その額は,少なくとも一人当たり237万2480円(基本給20万4200円×4か月+19万4460円×8か月)を下らない。

精神的損害
原告らは,修習専念義務を課せられ,他に賃金を得ることができない状況下での生活を強いられ,貸与を受けることによって債務が増加したり,自己の財産が減少したりするなど多大な経済的負担を強いられながら日々修習に取り組まざるを得ず,充実した修習を受ける機会を妨げられた。また,原告らのうち貸与を受けた者は,234万円から331万5000円の貸与金返還義務を負担し,将来の経済的保証もない中,貸与金の返済に対する不安を抱えるとともに,貸与金を返還し終えるまでの間,期限の利益を喪失させないためにも,滞りなく毎月の返済や毎年の職業・住所等の報告を履践しなければならない。このような点で,原告らが被った精神的苦痛を慰謝するための慰謝料は,各自100万円を下らない。
原告らの損害額は,それぞれ合計337万2480円となるところ,原告らは,このうち1万円をそれぞれ請求する。

(被告の主張)
否認ないし争う。
第3
1
当裁判所の判断
給費制の制定に至る経緯として,次の点が認められる。
(1)

戦前の法曹養成制度
大日本帝国憲法下においては,法曹の養成は一元化されておらず,次のと
おり,裁判官又は検察官の養成については裁判所構成法に,弁護士の養成については弁護士法に規定されていた(乙1,46,弁論の全趣旨)。ア
裁判所構成法は,①判事又は検事への任命資格として,司法官試補として1年6月以上,裁判所及び検事局にて実務の修習を行い,かつ考試を経ることが必要であること,②司法官試補は,勅令で定める試験に合格した者の中から司法大臣が任命すること,
③1年以上修習をした司法官試補は,
その修習を現に監督する判事の命あるときは,区裁判所における司法事務を取り扱うことができること,④予審判事及び地方裁判所の受命判事もその附属の司法官試補をしてその事務を取り扱わせることが出来ること,⑤ただし,司法官試補は裁判をすること,証拠調べを行うこと(④の場合を除く),登記を行うことは出来ないこと等を規定するとともに,司法官試補は奏任官の待遇とし,一定額の給与が支給されていた。

弁護士法は,①弁護士となるには,弁護士試補として1年6月以上の実務修習を行い,考試を経ることが必要であること,②弁護士試補の修習は弁護士会が担当すること等を規定していたが,弁護士試補には国から給与は支給されていなかった。

(2)

戦後の裁判所法の起草,制定
裁判所法は,昭和22年4月16日に公布され,同年5月3日に施行され
たところ,司法省内部においては,以下のような裁判所法の要綱案及び草案が起草されていたことが認められる。

第3次裁判所法案要綱(案)(昭和21年8月7日作成。甲A9の1)においては,試補の制度について,司法官試補及び弁護士試補の別を廃して,司法修習生(仮称)とすることが定められた。


第1次裁判所法案(昭和21年8月22日作成。甲A9の2)においては,①司法修習生は試験に合格した者の中から,最高裁判所長官が,これを任命すること,②司法修習生は司法研修所に属し,その長官の監督を受けること,③司法修習生は二級官吏とみなすこと,④司法修習生はその在任中一定額の給与を受けること,⑤司法修習生は2年以上司法研修所及びその委任を受けた裁判所,検察庁その他の官庁又は団体で司法その他に関する学理及び実務を修習した後,試験を経なければならないこと,⑥司法修習生は,別に本法その他の法律で定めた権限を有する外,その修習を現に担当する判事,検事又は弁護士の命あるときはその裁判所の司法事務,検察庁の検察事務又は弁護士の事務を取り扱うことができる(ただし,裁判をすること,判事に代り証拠調べをすること,登記をすること,弁護士事務の取扱に関して報酬を受けることの各権限を有しない。)こと,⑦各裁判所の長官は,その裁判所で修習中の司法修習生に,司録官の事務を臨時に取り扱わせることができること等の規定が存した。

第2次裁判所法案(昭和21年10月21日作成。甲A9の3)においては,①司法修習生は高等文官司法科試験に合格した者の中から,最高裁判所長官が,これを命ずること,②司法修習生は,少なくとも2年間修習をした後修習終了試験に合格したときは,司法修習生を終ること,③司法修習生は,その修習期間中国庫から一定額の給与を受けること,④最高裁判所長官は,司法修習生の行状がその品位を辱かしめ,又は修習の成績が修習終了の試験に合格する見込みがないと認めたときは,その司法修習生を罷免することが出来ること,⑤各裁判所の長官は,その裁判所で修習中の司法修習生に,裁判所書記官の事務を臨時に取り扱わせることができること等の規定が存した。


第3次裁判所法案(昭和21年11月11日作成。甲A9の4)においては,①司法修習生は高等試験司法科試験に合格した者の中から,最高裁判所長官が,これを命ずること,②司法修習生は,少なくとも2年間修習をした後試験に合格したときは,司法修習生を終了すること,③司法修習生は,その修習期間中,国庫から一定額の給与を受けること,④最高裁判所長官は,司法修習生の行状がその品位を辱かしめ,又は修習の成績が修習終了の試験に合格する見込みがないと認めたときは,その司法修習生を罷免することが出来ること等の規定が存した。


第4次ないし第10次裁判所法案(甲A9の5,乙41)においても,第3次裁判所法案と同趣旨の規定が存した。
2
給費制は,裁判所法施行時から平成16年改正まで存続した。平成16年改正に至るまでの給費制についての検討経緯については,別紙「平成16年改正に至るまでの経緯」のとおりである。

3
司法修習の概要(乙40)
原告らを含む67期司法修習生は,まず,あらかじめ司法研修所長の定める実務修習地において,民事裁判修習,刑事裁判修習各2か月間,検察修習2か月間及び弁護修習2か月間で構成される分野別実務修習を行い,これが終わると,選択型実務修習及び司法研修所における集合修習を各2か月間行った(選択型実務修習と集合修習の順序は,実務修習地により異なる。)。(1)

分野別実務修習
裁判修習
民事裁判修習及び刑事裁判修習においては,配属された部の裁判官の指導の下に,弁論,和解,公判などを傍聴し,裁判官の訴訟指揮や証拠調べなどを見聞することにより,裁判所の訴訟運営と心証形成の過程を知り,起案についても指導を受ける。この間,家庭裁判所の実務についても修習が行われる。
司法修習生は,前記指導に先立ち,関係する事件記録を検討するとともに,必要に応じて法令及び判例の調査・検討を行った上で,各種傍聴の前後に担当裁判官との質疑応答や司法修習生同士の討議を行う。また,司法修習生は,裁判官等から,民事保全,民事執行,令状,家事事件等の裁判実務に関する種々の講義を受け,又は問題研究等を行うこともある。また,民事裁判修習において,司法修習生は,事件の争点及び争点に関する事実認定の要点を簡潔に記載した書面のほか,和解条項案,事件の進行や法律問題に関する調査,検討メモを起案し,刑事裁判修習において,事実認定のほか,公判前整理手続における求釈明事項案や争点整理案,法律問題や量刑など,手続の各段階に応じた調査,検討メモを起案することとなる。これらの各種起案について,担当裁判官による添削や講評が行われることとなる。

検察修習
検察修習においては,検察官の指導と監督の下に,被疑者,参考人の取調べなどの捜査修習を通して事件処理を修得し,起訴状や不起訴裁定書の起案の指導を受けるほか,検察官の公判立会を傍聴するなどして訴追官の側から見た刑事訴訟手続を修習する。
司法修習生は,前記修習において,具体的な事件について,事案の真相解明のための捜査方針の検討,捜査(証拠収集,取調べ)の体験,終局処分の在り方の検討等を行うほか,証拠整理・証拠開示,裁判所提出書面の起案,公判準備への同席,公判前整理手続,公判手続の傍聴,控訴審査等への同席等を行う。


弁護修習
弁護修習においては,個々の法律事務所に配属され,担当弁護士の指導により,法律文書の起案をしたり,弁論あるいは公判に同席して証人尋問や弁論の要領を見聞したりするほか,交渉,契約締結などの訴訟外活動や捜査段階の弁護活動など弁護士としての実務を修習する。また,特定のテーマについての合同講義なども受ける。
司法修習生は,前記修習において,あらかじめ聴取すべき事項や収集すべき証拠等について検討した上で,依頼者との打合せや法律相談,接見等に同席し,必要に応じて法令及び判例の調査・検討を行い,裁判所における期日を傍聴するとともに,これら法廷内外の活動の前後において担当弁護士との質疑応答を行うこととなる。また,配属会の司法修習委員会が主催する合同修習において,講義を受けることもある。
また,弁護修習において,司法修習生は,担当弁護士の指示,同席した打合せ等の結果を踏まえ,訴状や準備書面,弁論要旨等の法律文書を起案し,場合によっては,尋問事項等を起案することとなる。これらの各種起案について,担当弁護士による添削や講評が行われることとなる。(2)

選択型実務修習
選択型実務修習は,配属庁会等において,司法修習生の主体的な選択によ
り,分野別実務修習の成果の深化と補完を図り,又は各自が関心を持つ法曹の活動領域における知識・技法の修得を図るものである。裁判所,検察庁,弁護士会などで,それぞれ修習プログラムが提供され,司法修習生は興味と関心に応じたプログラムを選んで修習する。
具体的には,民事事件及び刑事事件を題材とする模擬裁判を行うプログラム,民事執行,破産等の非訟事件,労働事件,知財事件を集中的に見聞するプログラム,刑務所等の施設を見学するプログラムなどが設けられている。また,選択した修習プログラムにおける修習先での修習がないときは,原則として分野別実務修習の弁護修習において修習した弁護士事務所において修習を行う。
(3)

集合修習
集合修習は,分野別実務修習の体験を補完して,体系的,汎用的な実務教
育を行い,法律実務のスタンダードを身につけさせることを旨として行われる。各科目とも,司法修習の総仕上げと実務家として活動するための準備にふさわしい高度な内容を修習する。
具体的には,司法修習生は,司法研修所において,講義を受け,司法修習生同士の討論や,それを踏まえた教官からの講評を受け,また,即日起案を行い,その講評を受けることになる。
4
争点(1)ア
(平成16年改正法は,
憲法上の要請である給費制を廃止する点で,
違憲であり,無効であるか)について
(1)

原告らは,
平成16年改正法は,
憲法上の要請である給費制を廃止する点

で,違憲無効である旨主張するので,この点について検討する。
(2)ア

まず,憲法は,第3章「国民の権利及び義務」中で,弁護人依頼権を規
定する(34条,37条3項)とともに,第6章「司法」においては,①司法権は最高裁判所及び下級裁判所に属すること(76条1項),②特別裁判所の設置の禁止,行政機関は終審として裁判を行うことができないこと(同条2項)のほか,③裁判官の独立(同条3項),④裁判官の身分保障(78条),⑤最高裁判所及び下級裁判所の裁判官の任命(6条2項,79条,80条),⑥最高裁判所が法律,命令,規則又は処分が憲法に適合するか否かを決定する権限を有すること
(81条)
を定めている。
また,
憲法と同日に施行された裁判所法は,憲法で定められた最高裁判所及び下級裁判所について,
①最高裁判所及び下級裁判所の裁判権,
権限,
構成
(第
2編及び第3編),②裁判官の任命資格,身分保障(第4編第1章)に関する規定を有するほか,③司法修習生(同第3章)に関する規定を有し,このうち43条は,判事補は司法修習生の修習を終えた者の中から任命すると規定する。また,検察庁法18条1項1号は,2級の検察官は司法修習生の修習を終えた者の中から任命する旨規定し,弁護士法4条は司法修習生の修習を終えた者は弁護士となる資格を有すると規定する。
以上の規定からは,憲法において,内閣,国会に加えて,司法の章を設け,国の統治機関の一つとして,最高裁判所及び下級裁判所に,司法権が帰属するという統治の基本構造を定めた上で,裁判所法が,司法権の帰属する最高裁判所及び下級裁判所について,より具体的な規定を定め,このうち,判事補について,司法修習生の修習を終えることを任命資格としていること,また検察庁法及び弁護士法が,それぞれ検察官の任命資格,弁護士となる資格について,裁判所法に定める司法修習生の修習を終えることを要件としていると解される。
このような解釈からすれば,裁判所法における司法修習生の規定は,憲法に定める裁判官,検察官,弁護人たり得る資格の前提となる法曹養成課程を定めたものであると解されるから,司法修習は,憲法に規定された司法制度が実効的に機能するための人材を育成する役割を担っているものといえる。

また,
司法修習の内容について検討すると,
前記1(1)及び(2)によれば,
戦前においては,裁判官及び検察官と弁護士とで養成制度が異なったところ,
戦後の裁判所法の起草,
制定に当たっては,
第3次裁判所法案要綱
(案)
の段階から,
司法官試補と弁護士試補の区別をなくして,
裁判官,
検察官,
弁護士の法曹三者を統一的に養成する過程である司法修習が構想されたものであって,現に司法修習生は,前記3のとおり,裁判修習,検察修習,弁護修習の各分野別実務修習及び選択型実務修習を通じて,実際の事件を素材として,裁判官,検察官,弁護士の指導を受けて,それぞれの職務について学習,修得することとなり,法曹三者の立場,職務,職責を実体験で学びながら,研さんを重ね,法曹として活動する上で必要な知識と経験を身につけることが予定されているものである。また,司法修習生は,将来必ずしも自らが就かない職業についても学ぶことから,司法修習は法曹三者の相互理解に寄与していると解される。


以上検討したところによれば,司法修習制度は,法令上の位置付けとしては憲法に定める裁判官,検察官,弁護人たり得る資格の前提となる法曹養成課程であり,憲法に規定された司法制度が実効的に機能するための人材を育成する役割を担うとともに,その実際の内容としても,法曹として活動する上で必要な知識と経験を身につけた上で,法曹三者の相互理解を深める課程であるといえるから,我が国の司法制度上,極めて重要な制度であるといえる。

(3)

前記(2)のような司法修習制度の重要性を踏まえると,司法修習生がその
修習期間中に経済的に困窮することのないように,給費制により,司法修習生が給与を受ける制度上の手当てをすることが望ましい。
しかしながら,憲法は,法曹養成制度について明文の規定を欠いている上に,法曹養成制度の在り方について具体的に示唆する規定も有しないから,具体的な法曹養成制度の在り方については,立法に委ねられていると解するほかない。
確かに,憲法においては,司法の章が設けられ,弁護人依頼権が規定されていること等に鑑みると,司法を担う人材である裁判官,検察官,弁護士の法曹三者について,優れた人材が集まり得る施策を採った上で,充実した法曹養成課程において法曹三者の養成を期することは,我が国の司法制度の充実,強化に資するものである。
しかしながら,国の根本規範であるという憲法の性質に加えて,どのような法曹養成制度が望ましいかについては様々な意見があり得るところであり,そのような意見の中で,どのような制度が法曹三者,ひいては司法制度全体にとって望ましいかを定めるには,法曹三者の視点のみに限ることなく,国民全体の利益の視点も踏まえて,決することが相当であり,そのような観点からすると,その主体としては立法府が予定されていると考えられ,憲法が特定の内容の制度を設けることを要請し,又は特定の内容の制度を保障しているものと解することは困難である。
従って,具体的な法曹養成制度の在り方については,その制度設計によって,国民の多くが法曹三者を志すことを断念せざるを得ず,司法制度が,憲法から要請される機能を維持できなくなる場合など,司法制度が実効的に機能するための人材を育成し,法曹三者の相互理解を深めるという法曹養成の目的に照らし,著しく不合理な制度であるといった特段の事情がない限り,立法の裁量に委ねられていると解するのが相当である。
以上を前提に給費制について検討すると,平成16年改正に当たっては,①司法試験合格者を年間3000人に増加させるとの構想を前提に,給費制を維持し,
司法修習生に対して支給する給与額も増加させることについては,国民の理解が得られないのではないか,②司法制度改革として,前記の法曹人口の増加の他に,被疑者段階における公的弁護制度,裁判員制度,日本司法支援センター等の新たな制度を設けることが予定され,それに伴う新たな支出が必要とされる状況下で,国の厳しい財政事情を前提とした場合,前記のような諸施策を含む司法制度改革における施策を全体として考慮したときに,給費制をそのまま維持することは困難ではないか,③他の専門職を養成する過程と比較した場合,法曹の養成過程にある者についてのみ,国費で給与を支給するということに合理性はないのではないか,などという指摘がされる中で,立法府において,平成16年改正法を制定し,給費制を廃止した結果,法曹志望者が減少し(甲A22),現に司法修習中に給与を受けていない原告らを含む司法修習生の中には,経済的不安を抱えながら司法修習に臨まざるを得ない者がいることは認められるものの,司法制度が実効的に機能するための人材を育成し,法曹三者の相互理解を深めるという目的に照らし,著しく不合理であるなどという特段の事情までは認めることはできず,平成16年改正法が,憲法に違反するということはできない。

5
従って,この点に関する原告らの主張は採用できない。
争点(1)イ(平成16年改正法は,憲法27条1項及び2項に違反し,違憲無
効であるか)について


原告らは,司法修習生の修習が,憲法27条1項に規定する「勤労」に該当し,平成16年改正による給費制の廃止によって給与を受けることができなくなったことを根拠に,平成16年改正法が,憲法27条1項及び2項に反し,違憲無効である旨主張する。

(2)ア

ところで,憲法27条1項にいう「勤労」の主体は,労働基準法9条所
定の
「労働者」
と同義と解されるところ,
「労働者」
に該当するためには,
使用者の指揮監督下において労務の提供をすることが必要であると解される(最高裁判所平成17年6月3日第二小法廷判決・民集59巻5号938頁参照)。そして,ここにいう労務の提供に当たる行為は,他者のための労務の遂行という性質を有するものをいい,
専ら教育的な性質のみを
有し,
教育を受ける者の研さんのみを目的とする行為は含まれないと解するのが相当である。
イ(ア)

これを司法修習についてみると,
司法修習においては,
法曹三者の立

場,職責を実体験で学びながら,研さんを重ね,まさに法曹として活動する上で必要な知識と経験を身につけることが予定されていることは,前記認定説示のとおりであり,それゆえ,司法修習は,教育的な性質を有し,司法修習生の研さんを目的とするものといえる。
(イ)

次に,
司法修習がこれらの性質,
目的以外のものを有しているかにつ

いて検討する。
司法修習生は,裁判官,検察官又は弁護士の職務を遂行する権限を有しておらず(裁判所法43条,検察庁法18条1項1号,弁護士法4条参照)法令上,

その他の国の事務に関する職務を遂行する固有の権限,
義務は定められておらず,また,裁判所等の国家機関が所掌する事務の司法修習生への分配を定める規定も存在しない(司法研修所が司法修習に関する事務を取り扱う旨の裁判所法14条の規定は,司法修習生が国家の事務を遂行することを意味しない。戦後の裁判所法案の立案段階においては,第2次裁判所法案において存した,司法修習生の権限を定める規定が,第3次裁判所法案以降において,削除されていることは前記1(2)のとおりである。。
)さらに,
司法修習の具体的内容
(前記3参照)
からすれば,司法修習生は,司法修習の過程で,これらの職務に関して何らかの権限を行使して職務を遂行したり,法律実務家として職務を遂行したりすることは予定されておらず,
そのような職責も負っていない。
また,原告らが司法修習において前記のように職務を遂行し,職責を負っていたと認めるに足りる証拠はないし,他に原告らが行った司法修習が他者のための労務の遂行という性質を有していた,すなわち,教育的な性質以外のものを有しており,自身の研さん以外の目的を有していたと認めるに足りる証拠もない。
(ウ)

従って,司法修習は,専ら教育的な性質を有し,司法修習生の研さん
のみを目的とするものというべきであり,他者のための労務の遂行という性質を持つとは考え難く,国に対する労務の提供には当たらないと解するのが相当である。
現に,平成16年改正前においては,司法修習生が,考試に合格しなかった場合でも,その身分を直ちに失わないにもかかわらず,給与を与えないとされていたことや,裁判所,検察庁又は法律事務所のいずれにおいても,
分野別実務修習又は選択型実務修習が行われていない期間に,
司法修習生に代わる代替職員が補充されることはなく,また他の職員が司法修習生の役割を代替することもないことは,以上の点を裏付けるものといえる。
(3)

この点,原告らは,行政職公務員,家庭裁判所調査官,裁判所書記官等に
課せられる研修と同様であるとして,司法修習が労務の提供に当たる旨主張する。
しかしながら,司法修習生は,司法修習の修了後に,国家公務員として職務を担当することが必ずしも予定されていないのに対し,原告らが主張する研修は,国が国家公務員の身分を有する者に対して,その者が今後も国家公務員として身分を保持し続けることを前提に,将来担当する職務について有益である等の理由から,
国が命じて国家公務員に受講させるものであるから,
研修を受講することは,専ら教育的な性質のみを有し,教育を受ける者の研さんのみを目的とする行為とはいえないのであり,司法修習は,これらの研修と同列に論ずることはできず,これらの研修と同質であることを理由に,司法修習が労務の提供に当たると解することはできない。
また,原告らは,民間企業における教育ないし訓練と同様であるとして,司法修習が労務の提供に当たるとも主張するが,民間企業における教育ないし訓練は様々であり,必ずしもこれと司法修習とを比較することが相当であるとはいえず,これを根拠に司法修習が労務の提供に当たると解することはできない。


従って,司法修習は,労務の提供とはいえない以上,原告らが主張する,仕事の依頼・業務従事の指示等に対する諾否の自由のないこと,場所的・時間的拘束を受けていること,代替性がないこと等を考慮したとしても,憲法27条1項の「勤労」に該当せず,原告らが,憲法上,勤労の対価としての給費を受ける権利を有するものとは認めることはできず,この点に関する原告らの主張は採用できない。

3
結論
以上によれば,その余の点について判断するまでもなく,平成16年改正法が憲法に違反し無効であることを前提とする平成16年改正前の裁判所法67条2項に基づく原告らの請求,平成16年改正法が憲法に違反することを前提とする国家賠償法1条1項に基づく原告らの請求は,
いずれも理由がないから,
これらをいずれも棄却することとし,主文のとおり判決する。
大分地方裁判所民事第2部

裁判長裁判官

後藤慶一郎
裁判官

西澤健太郎
裁判官

渋谷俊介
(別紙)
関係法令の定め
1
日本国憲法
(1)

第3章


国民の権利及び義務

27条


すべて国民は,勤労の権利を有し,義務を負ふ。



賃金,就業時間,休息その他の勤労条件に関する基準は,法律でこれを定める。

(省略)

34条
何人も,理由を直ちに告げられ,且つ,直ちに弁護人に依頼する権利を与へられなければ,抑留又は拘禁されない。又,何人も,正当な理由がなければ,拘禁されず,要求があれば,その理由は,直ちに本人及びその弁護人の出席する公開の法廷で示されなければならない。


37条


すべて刑事事件においては,被告人は,公平な裁判所の迅速な公開裁判を受ける権利を有する。



刑事被告人は,すべての証人に対して審問する機会を充分に与へられ,又,公費で自己のために強制的手続により証人を求める権利を有する。


刑事被告人は,いかなる場合にも,資格を有する弁護人を依頼することができる。被告人が自らこれを依頼することができないときは,国でこれを附する。

(2)

第6章


司法

76条


すべて司法権は,最高裁判所及び法律の定めるところにより設置する下級裁判所に属する。


特別裁判所は,これを設置することができない。行政機関は,終審として裁判を行ふことができない。



すべて裁判官は,その良心に従ひ独立してその職権を行ひ,この憲法及び法律にのみ拘束される。


77条


最高裁判所は,訴訟に関する手続,弁護士,裁判所の内部規律及び司法事務処理に関する事項について,規則を定める権限を有する。



検察官は,最高裁判所の定める規則に従はなければならない。

(省略)

78条
裁判官は,裁判により,心身の故障のために職務を執ることができないと決定された場合を除いては,公の弾劾によらなければ罷免されない。裁判官の懲戒処分は,行政機関がこれを行ふことはできない。


80条


下級裁判所の裁判官は,最高裁判所の指名した者の名簿によつて,内閣でこれを任命する。その裁判官は,任期を十年とし,再任されることができる。但し,法律の定める年齢に達した時には退官する。



下級裁判所の裁判官は,すべて定期に相当額の報酬を受ける。この報酬は,在任中,これを減額することができない。


81条
最高裁判所は,一切の法律,命令,規則又は処分が憲法に適合するかしないかを決定する権限を有する終審裁判所である。

2
裁判所法
(1)

14条
(省略)司法修習生の修習に関する事務を取り扱わせるため,最高裁判所
に司法研修所を置く。
(2)

66条1項
司法修習生は,司法試験に合格した者の中から,最高裁判所がこれを命ず
る。
(3)

67条
1項
司法修習生は,少なくとも1年間修習をした後試験に合格したときは,司法修習生の修習を終える。


2項
(ア)

平成16年改正前のもの
司法修習生は,その修習期間中,国庫から一定額の給与を受ける。た
だし,修習のため通常必要な期間として最高裁判所が定める期間を超える部分については,この限りでない。
(イ)

平成16年改正後のもの
司法修習生は,その修習期間中,最高裁判所の定めるところにより,
その修習に専念しなければならない。
(4)


67条の2(平成16年改正により新設)
最高裁判所は,司法修習生の修習のため通常必要な期間として最高裁判所が定める期間,司法修習生に対し,その申請により,無利息で,修習資金(司法修習生がその修習に専念することを確保するための資金をいう。以下この条において同じ。)を貸与するものとする。



修習資金の額及び返還の期限は,最高裁判所の定めるところによる。


最高裁判所は,修習資金の貸与を受けた者が災害,傷病その他やむを得ない理由により修習資金を返還することが困難となつたとき,又は修習資金の貸与を受けた者について修習資金を返還することが経済的に困難である事由として最高裁判所の定める事由があるときは,その返還の期限を猶予することができる。この場合においては,国の債権の管理等に関する法律(昭和31年法律第114号)第26条の規定は,適用しない。④

最高裁判所は,修習資金の貸与を受けた者が死亡又は精神若しくは身体の障害により修習資金を返還することができなくなつたときは,その修習資金の全部又は一部の返還を免除することができる。



前各項に定めるもののほか,修習資金の貸与及び返還に関し必要な事項は,最高裁判所がこれを定める。

(5)

附則4項(平成22年改正法による改正後のもの)
第67条の2の規定は,
平成23年10月31日までの間は,
適用しない。

この場合において,第67条第2項中「最高裁判所の定めるところにより,その修習に専念しなければならない」とあるのは「国庫から一定額の給与を受ける。ただし,修習のため通常必要な期間として最高裁判所が定める期間を超える部分については,この限りでない」と,同条第3項中「前項に定めるもののほか,第1項」とあるのは「第1項」とする。
3
裁判官の報酬等に関する法律附則14条


平成16年改正前のもの
裁判官の報酬等の応急的措置に関する法律(昭和22年法律第65号)は,これを廃止する。但し,司法修習生の受ける給与については,なお従前の例による。



平成16年改正後のもの
裁判官の報酬等の応急的措置に関する法律(昭和22年法律第65号)は,これを廃止する。

4
裁判官の報酬等の応急的措置に関する法律8条(平成16年改正前の裁判官の報酬等の応急的措置に関する法律附則14条但書により,なお従前の例によることとされた部分)
(1)

司法修習生の受ける給与の額は,
当分の間,
最高裁判所の定めるところに

よる。


(省略)

(3)

司法修習生には,第1項の給与の外,当分の間,一般の官吏の例による給
与を支給することができる。
5
平成16年改正法附則
(1)

この法律は,平成22年11月1日から施行する。

(2)

この法律の施行前に採用され,この法律の施行後も引き続き修習をする
司法修習生の給与については,なお従前の例による。
6
平成22年改正法附則
(1)

この法律は,公布の日(平成22年12月3日)から施行する。

(2)

この法律による改正後の裁判所法(以下「新裁判所法」という。)附則第
4項の規定は,平成22年11月1日からこの法律の施行の日の前日までに採用された司法修習生についても,適用する。
(3)

新裁判所法附則第4項に規定する日までに採用され,同日後も引き続き
修習をする司法修習生の給与については,同日後においても,なお従前の例による。
(4)

新裁判所法附則第4項後段の規定により読み替えて適用する裁判所法第
67条第2項の規定による給与については,裁判所法の一部を改正する法律(平成16年法律第163号)附則第3項による改正前の裁判官の報酬等に関する法律(昭和23年法律第75号)第14条ただし書に規定する給与の例による。
(5)

この法律の施行の際,現に裁判所法第67条の2第1項に規定する修習
資金の貸与の申請をしている司法修習生については,この法律の施行の日に同項の申請を撤回したものとみなす。

7
(省略)
司法修習生に関する規則

(1)

1条
司法研修所長は,修習の全期間を通じて,修習に関しては,司法修習生を統轄する。
(2)

2条
司法修習生は,最高裁判所の許可を受けなければ,公務員となり,又は他
の職業に就き,若しくは財産上の利益を目的とする業務を行うことができない。
(3)

3条
司法修習生は,修習にあたつて知つた秘密を漏らしてはならない。
(4)

4条
司法修習生の修習については,高い識見と円満な常識を養い,法律に関す
る理論と実務を身につけ,裁判官,検察官又は弁護士にふさわしい品位と能力を備えるように努めなければならない。
(5)

8条
最高裁判所は,
実務修習の間,
司法修習生に対する監督を高等裁判所長官,

地方裁判所長,検事長,検事正又は弁護士会長に委託する。
(6)

17条
司法修習生で次の各号のいずれかに該当する者は,これを罷免する。

禁錮以上の刑に処せられた者


成年被後見人又は被保佐人


破産者で復権を得ない者

(7)

18条
最高裁判所は,司法修習生に次に掲げる事由があると認めるときは,これ
を罷免することができる。

品位を辱める行状,修習の態度の著しい不良その他の理由により修習を継続することが不相当であるとき。


病気,成績不良その他の理由により修習を継続することが困難であるとき。
ⅲ8
本人から願出があつたとき。

司法修習生の給与に関する規則(最高裁判所規則平成21年第10号による廃止前のもの)
(1)

1条
司法修習生の給与月額は,20万4200円とする。

(2)

3条
司法修習生には,第1条に規定する給与のほか,一般職の国家公務員の例
に準じて,扶養手当,地域手当,住居手当,通勤手当,期末手当及び勤勉手当を支給する。
以上

(別紙)
平成16年改正に至るまでの経緯
1
審議会における検討
(1)

審議会は,
司法制度改革審議会設置法に基づき,
21世紀の我が国社会に

おいて司法が果たすべき役割を明らかにし,国民がより利用しやすい司法制度の実現,国民の司法制度への関与,法曹の在り方とその機能の充実強化その他の司法制度の改革と基盤の整備に関し必要な基本的施策について調査審議すること(同法2条1項)を目的として,平成11年7月,内閣に設置された(同法1条,乙4,5)。
(2)

審議会においては,第50回,第57回において,給費制について言及さ
れた(甲A13,14)。

第50回(平成13年3月2日)
事務局から各委員に「法科大学院構想に対する各界からの主な指摘」と題する表が配布され,同表の中には,経済界等からの指摘として「現行の司法修習は,修習期間の長さが適切か,修習内容が適切か,給費制は必要か等,
様々な疑問があり,
抜本的な見直しが必要である」
との記載があり,
それが読み上げられたが,その後の意見交換の中では,給費制について言及されることはなかった(甲A13)。


第57回(平成13年4月24日)においては,3名の委員から,給費制の廃止,それに代わる補填の制度を考えるべきとの意見が出された(甲A14)。

(3)

審議会は,平成12年11月,審議会でのそれまでの審議結果を整理し,
各課題について検討の基本的方向性についての考え方を取りまとめた中間報告を公表した。中間報告は,豊かな素養ある法曹が,公益的な活動も含めた社会的責務を果たしていくことを求めるもので,司法修習に関する箇所に,給費制についての記載はなかった。(乙6)
(4)

審議会は,平成13年6月12日,中間報告についての各界各層からの
様々な意見を踏まえた上,更に議論を重ねるなどした結果として,司法制度改革審議会意見書(甲A12の1・2,乙7)を取りまとめた。同意見書では,給費制の在り方について,「修習生に対する給与の支給(給費制)については,将来的には貸与制への切替えや廃止をすべきではないかとの指摘もあり,新たな法曹養成制度全体の中での司法修習の位置付けを考慮しつつ,その在り方を検討すべきである。」とされた(乙7)。内閣は,同月15日,同意見書について,最大限に尊重して司法制度改革の実現に取り組むこととし,3年以内を目途に関連法案の成立を目指す旨閣議決定をした。2
司法制度改革推進本部(以下「推進本部」という。)及びその下に置かれた検討会における検討
(1)

推進本部は,
司法制度改革推進法に基づき,
司法制度改革を総合的かつ集

中的に推進することを目的として,平成13年12月1日,内閣に設置された。(同法8条,乙8)。推進本部における司法修習や給費制,貸与制の検討は,推進本部の下に置かれた検討会において行われた。
(2)

内閣は,
平成14年3月19日,
司法制度改革推進計画
(以下
「推進計画」

という。乙9)を閣議決定した。推進計画は,質の高い豊かな人間性や専門知識等を有する法曹の養成を理念とし,審議会の意見の趣旨に則って行われる司法制度の改革と基盤の整備に関し政府が講ずべき措置について,その全体像を示すとともに,推進本部の設置期限(平成16年11月30日)までの間に行うことを予定するものにつき,措置内容,実施時期,法案の立案等を担当する府省等を明らかにするものである。推進計画では,給費制の在り方について,
「司法修習生の給費制の在り方につき検討を行う。とされた。

(乙9)
(3)

検討会は,委員11名により構成され(乙10),平成14年1月11日
から平成16年9月1日までの約2年8か月間にわたり,全24回開催された。このうち給費制に関して行われた議論の概要は次のとおりである。ア
第7回(平成14年5月10日,乙10)
事務局から「司法修習制度に関する論点」と題する資料が配付され,事務局の担当者は,給費制については,今後司法修習生の大幅な増加が見込まれる状況にあって,政府の財政事情等とも関連する問題であり,慎重な御検討を要請する旨述べた。これを受け,ある委員は,修習専念義務を課す以上はそれに対して経済的担保を与えるのが当然ではないかとの議論がある等の意見を述べた。


第8回(同年6月4日,乙11)
ある委員は,給費制が望ましいことに違いはないが,予算面での制約,あるいは国民感情からして,エリートに手厚いと捉えられるおそれがあり,あるいは他の高等専門職育成プロセスとのバランスという点を考えると,給費制維持を堅持するだけでは,反対意見を抑えて給費制を維持することは困難ではないのではないかという気がする,ただし,司法修習生は,将来,法曹となり,支払能力を有するようになるはずであるから,貸与制の導入を考えてよいのではないかとの意見を述べた。また,他の委員は,支払能力の観点からは,少なくとも法曹としての将来の可能性を有する者で,法曹となって収入が得られる時点で返済をすることが可能であるから,貸与制を選択する方向で適切な経済的援助をするのがよいとの意見を述べた。
また,法務省担当者は,法科大学院の学費,奨学金制度,司法修習の期間,内容等法曹養成制度全体の在り方の中で給費制について検討してほしい旨の意見を述べ,日本弁護士連合会(以下「日弁連」という。)担当者は,弁護士の公的役割という観点からできる限り給費制を存続してほしい旨の意見を述べ,最高裁判所(以下「最高裁」という。)担当者は,法曹志望者の経済的負担,司法修習の内容,期間等の要因を考えて検討してほしい旨の意見を述べた後に,司法修習生の給与,諸手当に要する費用が,司法修習生1000人,司法修習期間1年6か月である現状においては,1年当たり約65億円である旨説明した。
田中成明座長(以下「田中座長」という。)は,最後に,給費制をできるだけ維持すべきとの意見もあるが,やはり貸与制などの代替的な措置の可能性も視野に入れて見直しを検討することは避け難いので,そのような方向を踏まえて引き続き検討するなどと述べた。

第9回(同年6月28日,乙12)
日弁連担当者は,給費制の見直しの検討の要否は,法曹養成制度全体の費用負担の大きさと,その中でどうすれば期待される法曹を育てることができるのか,その全体の中に位置付けて考慮されるべきで,給費制のみを取り出してその要否を検討するのでは不十分であるとし,結論として給費制を維持すべきとの意見を述べた。
これに対し,ある委員は,個々の法曹志望者の視点から見ると,その意見はよく理解できるが,他方で,国民,社会の視点から見た場合に,果たして現在の議論だけで納得を得ることができるかどうかというところが重要であると思う,高収入の法律事務所を指向するという傾向がかなりの者に見られるという現実を前提とした場合には,給費制を全面的に現状のまま維持するということが果たして説得力を有するのか,疑問であるとの意見を述べた。
また,ある委員は,法曹養成とは,弁護士だけを養成するわけではないので,
公の仕事をする者とか,
弁護士でも公益的な仕事をする者について,
前倒しで公費を使うという説明も,その限りでは分かるところがあるが,その使い方が給費という形であることが論理必然かというと,そうではないようにも思う,との意見を述べた。
最後に,田中座長が,前の議論の時には,貸与制などの代替措置の可能性も含めて検討するということになっていたので,やはりその線で検討を続ける,是が非でも給費制の維持を前提に検討することは前の議論の整理とも違うと述べ,前回までの議論の整理に従い,事務局において関係機関と調整しながら進めていくことにしたいと述べた。

第14回(同年12月20日,乙13)
事務局から,「平成15年度予算の編成等に関する建議」(甲A28)には,司法修習生手当について,早期に給費制を廃止し,貸与制への切り替えを行うべき旨の記載があること,「規制改革の推進に関する第2次答申~経済活性化のために重点的に推進すべき規制改革」(甲A30)においては,給費制について,法科大学院を含めた法曹養成制度全体を視野に入れつつ,その廃止を含めて見直すべきとされていることが説明された。川端和治委員(以下「川端委員」という。)は,法科大学院制度を導入して,学生に生ずる経済的負担については制度全体を通じて考えることはやむを得ないが,直ちに,給費制のみについて見直しを行うのは合理性がない,法曹資格を得て,将来の所得によって十分返済可能な範囲で負担していくという制度はその限りで合理性があるが,ある程度の資力がないとその過程をくぐり抜けられない,あるいは背負った負債の返済のために進路が限られてしまい,非常に高額な給与を支払う法律事務所に行けそうもない者あるいは行きたくない者は法曹になることができないという制度になってしまうとの意見を述べた。
井上正仁委員(以下「井上委員」という。)は,給費制は,いろいろな歴史的な経緯から生まれた特異な制度であることは間違いなく,医師など社会的に意義のある他の職種の養成と比べた場合,今の時代に十分説明がつくのか,現在の給費制は,経済的に困窮している者については確かによいが,裕福な家庭の子女にまで給費を与えなければならない理由はないなどとして,貸与制への切替えを考えるべきとの意見を述べた。
木村孟委員(以下「木村委員」という。)は,数年来,奨学金に関する様々な議論に参画しているが,全体として給費制に対する反発は非常に強い,法科大学院は,専門職大学院全体として捉えられ,ビジネススクールと同じではないかという議論があり,この点を相当考えなければ,給費制を維持すべきとの主張は認められないだろうとの意見を述べた。

第18回(平成15年7月14日,乙16)
事務局の片岡弘参事官(以下「片岡参事官」という。)が,まず給費制を維持することは極めて困難な状況にあると結論を述べた上で,司法修習生が年間3000人となった場合に,単純計算で約30億円の予算の増額が必要になり,司法修習の実施に要するその他の費用についても年間数十億円の規模で増額が必要となり,給費制を維持するとなれば,少なくとも総計50億円以上の予算の増額を確保する必要がある,そのような予算を確保することができるか否かも問題であるが,今般の司法制度改革においては,被疑者段階における公的弁護制度の導入,司法ネットの整備,裁判員制度など,相当規模の財政措置が必要となると思われる事項が少なからず存在する,関係機関との協議を進める上で,あくまでも司法修習生の給費制を維持することを目標として協議を進めるのかについて,検討会の意見を聴取したい旨述べた。田中座長は,これを受けて,給費制の問題については,一定の方向性を示さないと全体の制度の検討が進まないという状況に来ている旨述べた。
川端委員は,法曹になるためには相当な資力の準備がないとなれないという制度になってしまう可能性があるから,慎重に考えるべきである旨の意見を述べた。これに対し,今田幸子委員(以下「今田委員」という。)は,積極的に奨学金制度を充実させる,という英断をしても良いとの意見を述べ,木村委員は,従前,日本の産業の空洞化を防ぐために理工系学部の博士課程の学生に給費制の奨学金を出すべきだと主張したが,どうして理工系学部の学生だけ優遇するのかとされて,全く相手にされなかった,主張を間違えると,法曹も同様の状況になりかねないが,状況は非常に厳しいと思う,加えて,世界的に先進諸国で高等教育については受益者負担という考え方が広がっているので,国として法曹養成に重きを置くとしても,難しい旨の意見を述べ,井上委員は司法制度改革全体として整備していくときに,国全体として出費がかさんでいく状況で,給費制を維持できるのかどうかを考えると,これまでとは違う仕組みを考えないといけないのではないかとの意見を述べた。
日弁連担当者は川端委員の意見と同様であるとの意見を述べ,最高裁担当者は,給費制は司法修習生が司法修習に専念していくという意味では非常に効果的でありがたい制度だが,一連の司法制度改革の中で,新しい制度を設ける際には,様々な費用が掛かり,国民の負担にも関わってくるところ,制度改革における政策的判断なので,検討会でよく議論して欲しい旨の意見を述べ,また,法務省担当者は今後の議論を聞いて考えたい旨の意見を述べた。
最後に,田中座長が,いつまでも給費制の維持ということを前提に検討しているというだけでは,関係機関との調整も難しく,国民的な理解が得られるのかという問題もあるので,給費制に固執するのではなく,貸与制への移行も含めて,弾力的に検討するという方向でとりまとめて良いかと,諮ったところ,異議がなかったことから,事務局に対して,そのような方向で検討するようにと述べた。

第19回(同年9月9日,乙17)
日弁連副会長は,日弁連においては「司法修習給費制の堅持を求める決議」(甲A33)を行ったことに加えて,給費制の廃止については強く反対する旨の意見を述べたのに対し,井上委員は,公的弁護,裁判員制度など,かなり多額の費用を要する国の財政全体の中で,どのようにプライオリティーをつけて一連の改革を実現していくかという問題であると思う,全体の中で,給費制をずっと死守するということが本当に言えるのかどうか,また,それが適切なのかどうかという視点が大事なのではないかとの意見を述べ,今田委員も,一般の国民的な常識という観点からいうと,政府全体で財政問題を抱えている状況での大改革の中で,給費制の維持というのはやはり難しいとの意見を述べた。
事務局の片岡参事官は,日弁連,法務省,最高裁の法曹三者の中で貸与制への移行を検討している機関は存在しない,法曹三者のコンセンサスを待っていたのでは,かつての司法制度改革がそうであったように,全く改革が進まない,法曹三者から具体的な案が示されないのであれば,事務局の案を提示して検討いただくほかない,との意見を述べた。
田中座長は,日弁連の議論がどの程度社会的に通用するのか,例えば,大学の研究者になるとすると,費用は自己負担であるのであり,法曹だけ取り出して云々といわれても,どの程度国民の納得が得られるのか問題である,法科大学院,公的弁護,司法ネット,裁判員制度等は最終的に費用を要することは間違いないので,全体の中で給費制をどうするかを考えると,前回とりまとめた方向で具体的に検討すべきであると述べた。事務局の片岡参事官は,これを受けて,事務局の作業スケジュールとしては,司法修習生の給費制を貸与制に移行するための法案を,次の通常国会に提出するべく準備を行いたいと考えていると述べて,田中座長は,事務局において,具体的に案を検討し,その具体的な内容について更に議論するようにと述べた。

第20回(同年12月9日,乙18)
事務局の片岡参事官は,「司法修習貸与金(仮称)」(甲A34)と題する書面をもとに貸与制に移行する場合の制度の概要案を説明するとともに,事務局としては,貸与制への切り替えの法案を通常国会に提出したいと考えている旨説明した。
田中座長は,検討会としても一定の方向性を示さなければならない時期に来ている,法曹三者は受益者の立場にあり,その立場上,給費制を維持すべきであるとの意見を述べるのもよく分かるが,この問題は,法曹養成について,国民の負担をどのように考えるべきかという問題であるから,司法制度改革全体の問題についての国民の視点という観点から議論をする必要があると述べた。
川端委員は,
今まで受益者としての立場から発言をしてきたのではなく,
法曹となる者の社会的基盤,経済基盤がゆがむような形になっては困ると考えて発言してきたとの意見を述べたのに対し,今田委員は,財源に制限があるから,全過程にどのように配分するのが合理的なのかという観点からすれば,給費制の維持は全体のバランスから見て,あまりに手厚いという印象があるとの意見を述べ,
ダニエル・フット委員
(以下
「フット委員」
という。)は,貸与制に切り替えて返還免除の制度などの方をポイントにした方が,今後の制度設計としてはより妥当なアプローチではないかとの意見を述べ,今田委員は,公的な役割を担う法曹の場合は返還猶予,そして一定期間の後に免除という制度設計が納得性の観点から望ましいとの意見を述べ,諸石光熙委員(以下「諸石委員」という。)も貸与制に賛成する意見を述べた。
田中座長は,最後に,給費制を続けるか,貸与制への移行を検討するかどうかという選択肢の議論を続けていくとタイムリミットになってしまうので,もう一歩進めて,諸般の事情からやむを得ないとして,どういう制度設計が考えられるかということを検討していくことを了承頂きたいと述べた。

第21回(平成16年2月6日,乙19)
事務局の片岡参事官は,「司法修習貸与金(仮称)」(甲A34)と題する書面により,改めて説明を行った。
法務省の大谷晃大司法法制課長は,法務省としては貸与制への移行という問題について,直ちに賛成するという意思決定ができていない,給費制から貸与制への移行の問題を考えるに当たっては,単に財政事情が厳しいという理由だけではなく,質の高い法曹を養成するための制度としてどのような制度が必要であるのか,国民の負担を可能な限り軽減するためにはどのような制度があるのかといった点を大所高所から議論して欲しいとの意見を述べた。最高裁の小池裕審議官は,政策的に貸与制に切り替える合理性はあり得るが,給費制が採ってきたものと同じ趣旨に立つ経済的支援を講ずる必要性があるとの意見を述べた。日弁連の田中清隆副会長は,日弁連の意見は従来から述べているとおりであり,修習全体のあり方を検討して,総合的に合理的な制度が決められるべきとの意見を述べた。その後,川端委員は,給費制が一番良いとの意見を述べたが,井上委員は,司法修習は国民の前にプロの法律家として出してサービスをしてもらうのにふさわしい資格を身につけるために必要な制度であるから,本来はその対価を支払わなければならないかもしれない,それを免除された上に,さらに生活費まで全部丸抱えというのは筋が通るのか,確かに修習専念義務により生活の糧を得る手段が事実上奪われているが,生活費は本来どのような立場にいようとかかるものであり,それは本来自分が支払うべきだから,当然に給与を支払うということにはならないとの意見を述べ,永井和之委員は,国の法曹養成に対する政策としては,給費制のみではない,貸与制もあり得るとの意見を述べた。フット委員は,司法試験合格者数3000人時代を考えた場合,給費制は維持できないとの意見を述べ,諸石委員は,助成や奨学金貸与等の目処がつけば,もう一度給費制の維持の方向で頑張ろうというのは虫が良すぎるとの意見を述べた。
その後,田中座長は,推進本部の設置期限が今年の11月までなので,この検討会として,それまでに具体的な方向性を示す必要があるとして,あり得る貸与制の具体的な制度設計の検討を行う方向で取りまとめたいと述べた。

第22回(同年5月18日,乙20)
田中座長は,これまで相当な時間をかけて検討してきたが,推進本部の設置期限との関係上,基本的な方向性を示さないといけないとし,少数意見が残るようであれば,それを併記する形で意見を整理することもやむを得ないと述べた。その後,委員の間で,貸与制に関する検討事項について検討を行った後,田中座長が改めて大勢としては貸与制に移行することに賛成であるという前提で意見の整理をするが,少数意見が残った場合にはそれを明記して整理したいと述べた。


第23回(同年6月15日,乙21)
田中座長は「意見の整理(案)」と題して,「司法修習生に対して給与を支給する制度に代えて,国が司法修習生に対して貸与金を貸与する制度を平成18年度から導入する」との内容を含む書面を配布し,少数意見が残る場合には少数意見として併記するとの意見を述べた。これに対し,川端委員は,「給費制は,厳しい専念義務の下での充実した修習の基盤となり,また公益的活動を支える使命感醸成の効果をもたらしているのであり,経済的事情から法曹への道を断念する志望者が出ることを防ぐためにも,なおこれを堅持すべきである。」との少数意見を付記するように希望した以外には,
少数意見の付記を希望する委員はおらず,
検討会の意見として,
貸与制を導入するとの意見がまとめられた。


第24回(同年9月1日,乙22)
意見の整理に沿って,事務局が「司法修習生に対する貸与制について」と題する書面を配布し,検討した貸与制の具体的な制度内容が説明され,これについての委員らによる意見交換がされた後,立案作業を進めることが確認され,検討会は終了した。
3
国会における検討
(1)

法律案の提出
内閣は,検討会の検討結果を受けて,給費制を廃止すること等を内容とす
る平成16年改正法の法案を国会に提出した。
(2)

衆議院法務委員会における議論等(乙23,24)
平成16年改正法の法案については,平成16年11月24日,衆議院法
務委員会において,法務大臣による趣旨説明及び質疑が行われた。その際,山崎潮司法制度改革推進本部事務局長は,①法曹人口の増加に伴い,司法修習生の大幅な増加が見込まれていること,②司法制度改革に伴い,裁判員制度,司法ネット等にそれなりの税金を使うことが必要となるところ,国民の理解を得る必要があること,③公務員でなく,公務にも従事しない者に国が給与を支給するのは,現行法上かなり異例の制度であることから,給費制を維持することについて国民の理解を得ることは困難であり,貸与制に移行する必要がある旨答弁した。
衆議院法務委員会においては,同月26日,平成16年改正法の法案の施行期日を平成18年11月1日から平成22年11月1日と修正する修正案が可決された上で,同法案は修正議決すべきものと決せられた。その後,同法案は,平成16年11月30日に衆議院本会議で,修正案のとおり修正された上,賛成多数により可決された。
(3)

参議院法務委員会における議論等(乙26,27)
修正後の法律案については,同年12月1日,参議院法務委員会において
法務大臣による趣旨説明及び質疑応答が行われ,
前記(2)と同趣旨の趣旨説明
及び答弁が行われた後,修正後の法律案は賛成多数で可決すべきものと決定された。その後,平成16年12月3日,参議院本会議において,同法案は賛成多数で可決された。
以上

(別紙)
当事者目録
以下,第1事件原告ら,第2事件原告及び第3事件原告を合わせて,「原告ら」と
いい,第1ないし第3事件被告を,単に「被告」という。
以上

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