判例検索β > 平成27年(ワ)第16310号
未払賃金等請求事件
事件番号平成27(ワ)16310
事件名未払賃金等請求事件
裁判年月日平成29年10月6日
法廷名東京地方裁判所
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平成29年10月6日判決言渡

同日原本受領

平成27年(ワ)第16310号

未払賃金等請求事件

口頭弁論終結日

裁判所書記官

平成29年6月21日
判主1決文
被告は,原告に対し,311万9551円及びうち295万1349円に対する平成27年2月16日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

2
被告は,原告に対し,90万円及びこれに対する本判決確定の日の翌日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

3
原告のその余の請求をいずれも棄却する。

4
訴訟費用はこれを10分し,
その1を原告の負担とし,
その余は被告の負
担とする。

5
この判決は,第1項に限り,仮に執行することができる。

第1
1実及び理由
請求
被告は,
原告に対し,335万0674円及びうち317万0589円に
対する平成27年2月16日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

2
被告は,原告に対し,317万0589円及びこれに対する本判決確定の日の翌日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

第2

事案の概要
本件は,被告に雇用されていた原告が,被告に対し,平成24年12月11日から平成27年1月10日までの間(以下「本件請求期間」という。)

における時間外労働,休日労働及び深夜労働に対する割増賃金(割増手当)合計317万0589円並びにこれに対する各支払日の翌日から平成27
年2月15日まで民法所定の年5分の割合による確定遅延損害金18万0085円及び同月16日から支払済みまで前同様の遅延損害金の支払を求めるとともに,労働基準法(以下「労基法」という。
)114条所定の付加
金及びこれに対する本判決確定の日の翌日から支払済みまで前同様の遅延損害金の支払を求める事案である。

1
前提事実(争いのない事実又は後掲の証拠〔枝番のあるものは特に断らない限り枝番を含む。以下も同様である。
〕及び弁論の全趣旨によって認めら
れる事実)


当事者


被告は,スポーツ施設,スポーツ教室の経営等を目的とする株式会社であり,全国各地で会員制のスポーツクラブを運営している。従業員数は1万3000名ないし1万4000名であり,そのうち正社員は約1000名である。
(甲1,証人a)
〔1頁〕
,弁論の全趣旨)


原告は,平成元年11月11日,被告との間で期間の定めのない労働契約を締結し(以下,この契約を「本件労働契約」という。,同日から)
平成27年3月24日に退職するまでの間,被告において勤務した。原告は,本件請求期間のうち,平成24年12月から平成26年2月
までの間は支店長職にあったが,降格配転され,同年3月から平成27年1月までの間はマネージャー職に就いていた。

(甲14,乙11,原告本人〔1頁〕
,弁論の全趣旨)


関連する就業規則等の定め
社員就業規則(以下「就業規則」という。

第36条(適用の除外)

本章1,2節で定める就業時間,休日,及び休憩の規定にかかわらず,次の者については別段の取扱いをすることがある。

1.管理監督の地位にある者,または別途会社で定めた者
2.機密の事項を取扱う者
3.行政官庁へ届け出た監視断続勤務の者
第54条(給与)
社員の給与は別に定める規程による。

(甲4)

社員給与規程(以下「給与規程」という。

給与規程は,その第4条(給与体系及び種類)において,給与体系及び給与の種類を次のとおりとすることを定め,その給与体系及び種類を
前提として後記第15条以下の規定を設けている。


所定内給与
本給(年齢給,職能給)
,役職手当,都市手当,住宅手当,家族
手当,調整手当,持家促進手当



所定外給与
時間外勤務手当,休日勤務手当,深夜勤務手当,通勤手当,住宅

補助,寒冷地手当


臨時の給与
基準賞与,成果配分

第15条(本給)
社員の本給は「年齢給」及び「職能給」に区分し,それぞれ次の通り設定する。
1.年齢給
年齢給は各年度の4月1日現在の満年齢及び社員区分に基づ
き設定する。

2.職能給
職能給は職務の要求する能力,責任の程度並びに職務遂行能力

を評価し,資格制度により格付けされた等級及び社員区分に基
づき設定する。
第16条(本給の設定)
本給は資格制度の定める等級に応じ賃金表に基づき決定し,
支給す
る。
第17条(役職手当)
役職手当は別表Ⅳに定める役職に会社が任用した者に対し所定の
手当を支給する。
(なお,別表Ⅳは,統括マネージャーの役職につき6万円,会社が
定めた施設に係る支店長・支配人である支店長A・支配人Aの役職につき6万円,
その他の施設に係る支店長・支配人である支店長B・
支配人Bの役職につき5万円,副支店長・副支配人の役職につき1万円,総括スーパーバイザー・シニアマネージャーの役職につき5万円,マネージャー・スーパーバイザーの役職につき5000円と
することを定めている。

第22条(時間外勤務手当)
時間外勤務手当及び休日勤務の取扱いについては社員就業規則第
34条に定めるところにより,
社員が時間外勤務及び休日勤務を行
った場合勤務時間あたり次の通り算出し支給する。

1.時間外勤務手当
家族手当を除く所定内給与/(年間所定内労働時間/12月)
×1.3
2.時間外深夜勤務手当
家族手当を除く所定内給与/(年間所定内労働時間/12月)
×1.6

3.休日勤務手当

家族手当を除く所定内給与/(年間所定内労働時間/12月)
×1.35
第23条(時間外勤務手当の特例)
前条1項に関わらず,月間法定労働時間を60時間超えた場合,勤務時間あたりの割増率を1.5と読み替えて算出し支給する。

第24条(深夜勤務手当)
深夜勤務手当は所定の就業基準に基づく勤務時間が午後10時か
ら翌日の午前6時までの間におよぶものについて,
その間勤務した
時間(ただし,休憩時間及び睡眠時間を除いた実働時間)に対して1時間につき次の通り算出し加算する。

家族手当を除く所定内給与/(年間所定内労働時間/12月)
×0.3
第25条(手当の除外者)
第22条に定める時間外勤務手当並びに休日勤務手当は,
社員就業
規則第36条に定めたる者並びに行政官庁へ届け出た監視断続勤

務の者については支給しない。
(甲3)

人事考課のガイドライン等
被告の人事考課のガイドラインによれば,被告においては,上から順
にEM職,GM職,SM職,M職,L職,F職の6段階の職層制度が採用されている。また,各職層に対応して,9段階の等級が定められており,EM職についてはM6級,GM職についてはM5級,SM職についてはM4級又はM3級,M職についてはM2級又はM1級,L職についてはL2級又はL1級,F職についてはF1級の各等級に該当するもの
とされていた。
SM職に求められる(期待される)役割とその職責は,
「所属部門の年

度方針に基づき担当組織の年度計画を立案し,目標を達成させる役割」もしくは「特定の専門分野において全社的に高く貢献すること」であるところ,被告においては,SM職以上の職層にある従業員が就業規則36条1号の定める「管理監督の地位にある者」に該当するものと取り扱われており,これらの者に対しては,給与規程25条に従って,同規程
22条及び23条による時間外勤務手当及び休日勤務手当が支給されていない。
本件請求期間中の原告の職層はSM職であり,等級はM3等であった。(甲2,乙3,弁論の全趣旨)


原告の労働条件等
本件請求期間中の原告の給与額(月額)は,期間ごとに以下のアないしウのとおりであった。給与の支払方法は,毎月10日締め,当月25日払であった。

平成25年1月から平成25年4月までの支給分
(平成24年12月
11日から平成25年4月10日までの勤務分)




役職手当



本給

33万4800円

前払退職月額

5万円

平成25年5月から平成26年3月までの支給分
(平成25年4月1
1日から平成26年3月10日までの勤務分)



役職手当



本給



2500円

34万0300円

前払退職月額

5万円
2500円

平成26年4月から平成27年1月までの支給分
(平成26年3月1
1日から平成27年1月10日までの勤務分)


本給

34万0300円



役職手当

5000円



前払退職月額

2500円
(争いのない事実,甲2,弁論の全趣旨)



原告の実労働時間等
本件請求期間中の原告の始業時刻及び終業時刻は,別紙1及び2の「始
業時間」欄及び「終業時間」欄記載のとおりである。


深夜割増手当の支払
被告は,本件請求期間中,原告に対し,給与規程24条に定める深夜勤務手当として,別紙1の「既払い割増賃金」欄記載の金額(ただし,「-」
の表記を除いた数額。
)を支払った。

(甲2,弁論の全趣旨)
2
争点
原告は,本件労働契約に基づき本件請求期間において従事した時間外労働,休日労働及び深夜労働について,SM職の職層者である原告につき「管
理監督の地位にある者」
として時間外労働及び休日労働に係る割増手当の支
給を排除する給与規程25条が労基法37条1項に反して無効であり,SM
職より下層の職層者を対象とし労基法より有利な割増率を定める給与規程22条及び23条が原告にも適用されるなどとして,割増賃金(割増手当)とこれに対応する付加金等の支払を求めた上,
仮に同規程22条及び23条

の適用がないとしても,
少なくとも労基法37条1項等によって計算される
割増賃金とこれに対応する付加金等の支払を求め得ると主張するのに対し,被告は,実労働時間の時間数を否認し(争点⑵)
,原告に対する給与規程2
2条及び23条の適用の可否(争点⑶)
,付加金付加の適否(争点⑷)を争
うとともに,
支店長又はマネージャー職にあった原告が労基法41条2号に

定める管理監督者であることを抗弁として主張するものである。
そして,

件において,
原告は,
原告が労基法上の管理監督者に当たらないことを給与

規程22条及び23条の適用を根拠付ける事実として主張し,
被告は,
原告
が管理監督者であるがゆえに割増賃金が一切発生しない旨を抗弁するなどの本件の事案に鑑み,この管理監督者該当性(争点⑴)から主張を整理し,判断を加える。


管理監督者該当性



実労働時間(休憩時間)



手当(割増賃金)の未払額



付加金の支払を命ずることの当否及びその額

3
争点に関する当事者の主張



争点⑴(管理監督者該当性について)

(被告の主張)
労基法41条2号に定める管理監督者に該当するかどうかについては,①職務内容,権限及び責任,②勤務態様,③賃金等の待遇の観点から判断すべきところ,以下に述べる点からすれば,原告は,支店長職及びマネージャー職のいずれの立場にあった際も,労基法上の管理監督者の地位にあったというべきであり,時間外労働及び休日労働に対する割増賃金請求権は一切発生しない。

支店長職
職務内容,権限及び責任

支店長の主たる業務は,施設の管理業務,対顧客業務,従業員の労務管理業務であり,施設を修理・リニューアルする権限や当該支店における販売促進活動を実施する権限等を有していた。
また,
支店長は,
これらの業務に関して,
被告の幹部により構成される経営会議に出席
して説明を行ったり,これらの者が支店を巡回する際に,直接意見交
換をしたりすることもあった。
さらに,支店長は,従業員の労務管理に関して,アルバイトを採用
及び解雇する実質的権限を有しており,
原告が問題とする人事部長の
関与は,
採用時の応募者に対する説明事項の適切な説明の有無や必要
書類の具備,
解雇時の必要書類の具備や私物の返還の有無を確認する
程度のものでしかない。アルバイトの時給,担当業務,更新の有無,昇格・昇給についても決定していた。加えて,支店長は,支店内の全従業員の勤務シフトを最終決定する権限,人事考課を行う権限,時間外労働等を命じる権限,
年休の時季指定に対する時季指定変更権の行
使について決定する権限,指導・教育の権限,三六協定を締結する権限等を有していた。

勤務態様
支店長の仕事は当該支店の管理業務が大半を占めており,
一般の従
業員のように勤務シフトに組み込まれて顧客に直接サービスを提供することはほとんどなく,従業員の欠員等が生じた場合であっても,支店長がそれらの業務を行うか,
他の従業員に代行させるかは支店長

自身が決定していた。さらに,被告においては,支店長も,年間カレンダーに沿った勤務計画を作成したり,
タイムカードを打刻したりし
ていたが,これは,深夜労働時間の把握及び過重労働による健康障害の防止の観点から行われていたにすぎず,
1日の労働時間が8時間を
下回った場合や,
遅刻や早退をした場合であっても賃金が減額等をさ

れることはないなど,
支店長は自らの労働時間に関する裁量を有して
いた。
賃金等の待遇
支店長は,役職手当として月額5万又は6万円が支給されるもの
とされており,
原告に対しても,
支店長手当として5万円が支払われ

ていた。また,SM職の従業員の賃金額は,直下の職層であり被告において管理監督者として取り扱われていないM職の従業員の平均的
な賃金額を10%ないし90%上回っていた。
まとめ
以上のとおり,
支店長は,
重要な職務上の権限等を有していたこと,
労働時間に裁量があったこと,賃金等について一般の労働者に比べて優遇措置を講じられていたこと等の事情からすれば,支店長であ
った原告が,労基法上の管理監督者に該当することは明らかである。イ
マネージャー職
職務内容,権限及び責任
マネージャーは,
自己が管理する部門の従業員の勤務シフトを実質

的に決定する権限のほか,
一般の従業員に対して一次考課を行う権限,
時間外労働等を命じる権限,
年休の時季指定に対して時季変更権の行
使の要否を決定する権限など,
自己が統括する部門のスタッフの労務
管理を行う権限及び責任を有していた。
勤務態様

年間カレンダーに沿った勤務計画の作成やタイムカードの打刻等
の指示は,
深夜労働時間の把握及び過重労働による健康障害防止を目
的としたものであったこと,
1日の労働時間が8時間を下回った場合
や遅刻や早退をした場合であっても,
賃金が減額等されることはなか
ったこと,一般の従業員と異なり,主として売上,施設,労務等の管
理業務を行っていたことは,支店長の場合と同様である。
したがって,マネージャーについても,労働時間に関する裁量があった。
賃金等の待遇
マネージャーには,
1か月当たり5000円の役職手当が支給され

ており,原告も同手当を受給していた。さらに,マネージャーを含むSM職の従業員の賃金額が,
直下の職層であるM職の従業員の平均的

な賃金額を10%ないし90%上回っていたことは,
上記ア

で述べ

たとおりである。
まとめ
以上のとおり,マネージャーは,支店において重要な職務上の権限等を有していたことに加え,一般の従業員と比較し,労働時間につい
ての裁量を有していたこと,
賃金等についても優遇措置が講じられて
いたことに照らせば,被告におけるマネージャーは,労基法上の管理監督者に該当する。
(原告の主張)

支店長職
職務内容,権限及び責任について
支店長は,支店内の施設の修理や備品の購入,自身や部下が負担した交通費の精算についても,単独で決定する権限はなく,被告の本部やエリアマネージャー等の決裁を得る必要があった。

さらに,支店の従業員の労務管理についても,アルバイトを採用及び解雇する際には人事部長等の決裁が必要であり,採用に際しての人選を行ったにすぎなかったほか,被告が定めた業務部門別の総労働時間や人件費の枠内で,アルバイトの採用や従業員の勤務シフトを決定する必要があり,人事考課についても一次考課又は二次考課を上長に
提出するにすぎないなど,その権限は限定的であった。加えて,原告が従業員に対して一方的に時季変更権を行使したことはなく,三六協定の締結も人事部からの指示に従ったものにすぎない。
勤務態様
支店長は,他の従業員同様,タイムカードによる労働時間の管理を
受けながら,毎月の勤務計画を立ててこれに従って勤務をする必要があり,その勤務計画では年間の所定労働時間が1900時間となるよ
うに計画をする必要があっただけでなく,勤務計画と異なる出勤をする場合には,週報で上長に報告する必要があった。また,外出をする際にも,上長の許可が必要であった。
さらに,支店長は,アルバイトに欠員が出た場合や,被告が定めた業務部門別の総労働時間の枠内で一般の従業員の勤務シフトを回すこ
とができない場合には,自ら勤務シフトに入って当該業務を行う必要があり,実際に,原告は,毎日最低1時間ないし2時間はフロントの勤務シフトに入っていたほか,被告の指示で,週に1,2回のレッスンを担当したり,支店の清掃,レジ締め等の閉店準備,近隣へのチラシのポスティング等を行ったりするなど,その業務内容も一般の従業
員と変わりがなかった。
このようなことからすれば,労働時間について原告に裁量があったということはできない。
賃金等の待遇
支店長の役職手当として月5万円が支給されていたものの,
他方で,

原告に支払われるべき残業代が2年間で317万円以上に上っていることからすると,上記手当は,労基法上の管理監督者としての待遇にふさわしいものであったとはいえない。

マネージャー職
職務内容,権限及び責任について
マネージャーには,
アルバイトの採用や解雇についての権限はなく,
新規スタッフ採用の手続についてみれば,面接を行った後,支店長に対するアルバイト採用伺いを起案し,さらに支店長から人事部長までが承認した上で,アルバイト登録申請を行うというものであった。ま
た,勤務シフトを最終的に決定する権限もなかった。人事考課においても,一次考課を行うにすぎず,その後に支店長等の二次考課,部長
等の決定の手続があった。
物品,
備品の購入に関する権限もなかった。
被告においては,職層上SM職よりも一段下であるM職のマネージャーがいるところ,これらの者は,被告において管理監督者として取り扱われておらず,時間外割増手当等も支給されているが,SM職とM職のマネージャーは,その権限や責任において違いはないことからす
ると,SM職であるマネージャーについて管理監督者に該当するものと取り扱うことは,明らかに合理性を欠く。
勤務態様について
マネージャーは,年間の所定労働時間が1900時間となるように勤務計画をする必要があり,
日々の勤務は勤務シフトに従って勤務し,

支店長による出退勤時間の指示に従う必要もあったのであり,労働時間の裁量はなかった。また,業務の9割が勤務シフトに組み込まれた顧客対応等の現業業務であった。
賃金等の待遇について
マネージャーについては,1か月当たり5000円の役職手当しか
支給されていなかった。そして,上記

で述べたとおり,マネージャ

ーには,SM職の者とM職の者がいたが,M職のマネージャーには残業代が支払われる分,SM職のマネージャーよりも賃金総額が高くなるという事態も生じていたことからすると,上記手当が,労基法上の管理監督者としての待遇にふさわしいものであったとは到底いえない。


争点⑵(実労働時間〔休憩時間〕
)について
(原告の主張)
各勤務日における休憩時間は,別紙1の「休憩時間」欄記載のとおりである。

(被告の主張)
原告が主張する休憩時間のうち,始業時刻から終業時刻までの時間が8
時間を超える日であって,休憩時間が1時間未満となっているものについては否認する。休憩時間は1時間であった。


争点⑶(手当〔割増賃金〕の未払額)について

(原告の主張)

給与規程に基づく割増手当の額
原告と被告との間の労働契約中の時間外労働,休日労働及び深夜労働に係る賃金に関する労働条件は,給与規程によるべきである。
この点,被告は,原告を含むSM職の従業員につき,給与規程25条によって,同規程22条及び23条所定の時間外勤務手当及び休日
勤務手当の支給対象から除外される取扱いとなっており,それら条項に定められた割増率が原告と被告との間の労働契約中の労働条件にならない旨を主張するが,前記⑴「原告の主張」のとおり,そもそも原告は労基法上の管理監督者に該当しないから,SM職の従業員を割増賃金の支給対象外とする同規程25条の定めは,労基法に定める基
準に達しない労働条件を定めていることで同法に違反するものとして無効になり(労基法13条)
,その結果,SM職の従業員について
も,被告従業員に対して原則的に時間外労働,休日労働に係る割増手当を支給するという同規程22条及び23条が適用され,それら所定の時間外勤務手当及び休日勤務手当が支払われると解するのが当然
の論理的帰結であるし,当事者の合理的意思解釈にも沿うというべきである。
給与規程において,前払退職月額は所定内給与以外の給与体系に明確に位置づけられておらず,割増手当の算定基礎額から明確に除外されていない上,前払退職月額は労基法37条5項及び労働基準法施行
規則(以下「労基則」という。
)21条各号の定める除外賃金に含まれ
ておらず,労基法で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約
はその部分について無効となるから(労基法13条)
,前払退職月額は
給与規程における割増手当の算定基礎額に含まれるというべきである。以上を前提とすると,割増手当の算定基礎額は,基本給,役職手当及び前払退職月額の合計額(平成25年1月〔給与の支給日の属する月を指す。以下も同様である。
〕から同年4月までの間は38万730
0円,同年5月から平成26年3月までの間は39万2800円,同年4月から平成27年1月までの間は34万7800円)となり,これを月平均所定労働時間である158.3時間で除して基礎時給を算出すると,平成25年1月から同年4月までの間は2446円,同年
5月から平成26年3月までの間は2481円,同年4月から平成27年1月までの間は2197円となる。
上記基礎時給に,給与規程所定の割増率を乗じ,さらに原告の労働時間に応じて各月の時間外勤務手当,休日勤務手当及び深夜勤務手当の額を計算すると,それぞれ別紙1の「時間外割増賃金①」(時間外勤

務手当のうち月の時間外労働時間が60時間を超えない部分に対応するもの)「時間外割増賃金②」

(時間外勤務手当のうち月の時間外労働
時間が60時間を超える部分に対応するもの)「法定休日割増賃金」,

「深夜割増賃金」欄記載の金額となり,同別紙「既払い割増賃金」欄記載の既払金額を控除すると,給与規程所定の割増手当の不足額は同
別紙「合計」欄記載の金額を合計した317万0589円,これらの平成27年2月15日までの確定遅延損害金は合計18万0085円となる(ただし,原告は,別紙1の割増賃金額の計算をするに当たって,基礎時給の計算上,前提となる月平均所定労働時間を概数とし,かつ,算出された金額について1円未満の切上げ,切捨ての処理をし
ないまま計算をしていることから,当裁判所は,同別紙の各月の「合計」欄記載の金額をもって確定的な請求金額とみることなく,これら
を合計した上記請求金額をもって確定された請求金額とみることとすにおいても同様である。。

仮に,前払退職月額が給与規程における割増手当の算定基礎額に含まれないとすると,割増手当の算定基礎額は,基本給及び役職手当の合計額(平成25年1月から同年4月までの間は38万4800円,
同年5月から平成26年3月までの間は39万0300円,同年4月から平成27年1月までの間は34万5300円)となり,これを前記月平均所定労働時間で除して基礎時給を算出すると,平成25年1月から同年4月までの間は2430円,同年5月から平成26年3月までの間は2465円,同年4月から平成27年1月までの間は21
81円となる。
上記基礎時給を前提に,

給与規程所

定の割増手当の不足額は合計314万9397円,これらの平成27年2月15日までの確定遅延損害金は合計17万8915円となる。イ
労基法37条所定の時間外割増賃金及び休日割増賃金の額
時間外勤務手当及び休日勤務手当について定めた給与規程22条及び23条が原告に適用されないとしても,労基法37条所定の時間外割増賃金及び休日割増賃金は支払われるべきである。
この場合の算定基礎額について,前払退職月額が労基法37条5項及
び労基則21条各号の定める除外賃金に含まれないことは,上記


述べたとおりであるから,この場合の算定基礎額及び基礎時給も,上記ア
の場合と同額となる。
そして,上記の基礎時給に労基法所定の割増率を乗じ,原告の労働時
間に応じて各月の時間外割増賃金及び休日割増賃金の額を計算すると,合計305万0369円となり,これらの平成27年2月15日までの確定遅延損害金は合計17万3472円となる。

(被告の主張)

給与規程に基づく割増手当について
原告を含むSM職の従業員については,給与規程25条によって,就業規則36条に定める者として給与規程22条及び23条所定の
時間外勤務手当及び休日勤務手当の支給対象から除外される者に当たるとする取扱いをされていたものであり,同規程22条及び23条に定められた割増率が原告と被告との間の労働契約中の労働条件にはなっていない。
仮に,原告が労基法上の管理監督者に該当せず,時間外勤務手当及
び休日勤務手当の不支給が労基法37条違反となるとしても,その結果,被告は同条所定の時間外割増賃金及び休日割増賃金を支払う義務を負うにすぎないのであって,原告の主張するように,当然の論理的帰結として原告につき給与規程22条及び23条に定める割増率が適用されるものではない。また,当事者間の労働契約中の労働条件とし
てそれら給与規程の割増率による割増賃金は支払われない取扱いとされていたのであるから,当該契約に係る当事者の合理的意思解釈の問題など生じない。
また,深夜勤務手当に関し,給与規程は,各種勤務手当の算定基礎額について,
「家族手当を除く所定内給与」と定めているところ,所定

内給与に前払退職月額は含まれていないから(同規程4条)
,前払退職
月額は,給与規程所定の勤務手当の算定基礎額に含まれない。なお,その場合の基礎時給の額が原告主張の金額

にな

ることについては争わない。
さらに,仮に,前払退職月額が労基法上の除外賃金に該当しないとしても,被告は,原告に対し,給与規程に基づく深夜勤務手当を支払っているところ,同額は労基法37条4項所定の深夜割増賃金を上回
るから,深夜割増賃金の未払もない。

労基法37条所定の時間外割増賃金及び休日割増賃金について
月平均所定労働時間及び算定基礎額に前払退職月額が含まれるとし
た場合の基礎時給の額が原告主張(
「原告の主張」ア

)のとおりである

ことは争わず,その余は否認ないし争う。

前払退職月額は,本来,功労報償的要素を有する退職金を前払するものであり,
「通常の労働時間の賃金」
(労基法37条)
に該当しないから,
算定基礎額に含まれない。

争点⑷(付加金の支払を命ずることの当否及びその額)について
(原告の主張)
被告は,原告に対し,時間外労働及び休日労働に対する割増賃金を一切支払っておらず,深夜勤務手当についても一部しか支払っていない上,本件訴訟提起前に原告がこれらの支払を求めた後も一切の支払をしていない。これらの事情を考慮すれば,被告は,原告に対し,請求額と同
額の付加金を支払うべきである。
(被告の主張)
被告が原告に対して時間外労働及び休日労働に対する対価を支払っていないことは認め,その余は否認ないし争う。
被告は給与規程に従って処理をした結果,原告に対して時間外勤務手
当及び休日勤務手当を支払っていなかったにすぎず,上記⑴の「被告の主張」記載の事情に照らせば,原告が労基法上の管理監督者に該当すると判断して労基法所定の時間外・休日割増賃金を支払わなかったことにも相応の理由がある。さらに,被告は,本件について早期に円満な解決を図るため,
原告に対し,
具体的な金額を示して解決策を提案しており,

原告がこれに回答することなく本件訴訟を提起したという経過も併せ考えれば,本件訴訟提起前の被告の対応が誠実さを欠くものであるとも
いえない。
したがって,被告に付加金の支払を命じることは不相当である。
第3

当裁判所の判断

1
争点⑴(管理監督者該当性)について



認定事実
後掲の証拠及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。

職制上の扱い及び責任について
被告においては,6段階の職層のうち,SM職以上が管理監督者に該
当するものとして扱われていたところ,原告が支店長であった平成25年1月当時,約1000名の正社員のうち,SM職の従業員は436名いた。その内訳は,支店長が最も多く177名であったほか,マネージャーが87名含まれており,その他に,無役職者,支配人,統括マネージャー,アシスタントマネージャー,コーチ等が含まれていた。
これに対し,SM職の一つ下の職層であるM職の従業員は463名で
あり,その内訳は,241名がマネージャー,208名が無役職者であり,その他に,副支店長,スーパーバイザー,アシスタントマネージャー,強化コーチ等が含まれていた。
(前提事実⑴ア,⑵ウ,弁論の全趣旨)イ
原告の経歴等
原告は,平成元年11月11日に被告に入社した後,アシスタントマ
ネージャー等を経て,平成12年からフィットネス担当のマネージャーとなった。平成19年12月にはb支店の支店長に昇格し,平成23年10月から平成26年2月までの間はc支店の支店長を務めた(ちなみに,同支店には,原告が在籍した当時,原告のほかに,正社員〔マネージャー〕が1名ないし2名,契約社員が5名ないし6名,アルバイトが40名ほど在籍していた。また,フィットネス部門のマネージャーが配
置されていなかったために,支店長である原告が同部門のマネージャーを兼務していた時期もあった。。

しかしながら,原告は,同年3月にマネージャー(SM職)に降格となり,同月から同年8月までの間,d支店の営業管理担当マネージャーを務め,同年9月から退職までの間はeにおいてマネージャーとして勤務した。
(前提事実⑴イ,甲14,乙11,原告本人〔1,19,36頁〕,弁論
の全趣旨)

支店長について
支店長の主たる業務内容及び勤務実態について

a
支店長が日常的に行う業務は,主として①支店の開店作業(施設の解錠,設備及び人員の点検,売上金の照合,現金の実査等)
,②銀
行への入金(ただし,他の従業員に任せることもある。,③営業時)
間中の巡回(会員への声がけ,設備及び人員の点検等)
,④アルバイ

トの採用面接(月に数件程度)
,⑤支店外での販売促進活動,⑥支店の従業員とのミーティング,
⑦閉店作業
(設備の点検,
現金の実査,
施設の施錠等)
,⑧緊急時の対応等であった。
被告においては,SM職である支店長をいわゆる管理監督者と位
置づけて,これに上記のような管理業務を主に担わせることを本来
的には予定していたものの,少なくとも月末月初の繁忙期や要員の入れ替わりの時期等には,多くの支店において,支店長が,上記の支店長としての本来的な管理業務に加え,フロント業務(受付,電話応対,商品の販売等)に携わっており,また,原告のみならず,fやその他の複数の支店長が,人員不足の状況を踏まえて,日常的
に,管理業務のみならず,フロント業務に携わらざるを得ない状況にあった。また,被告においては,支店長であっても,ライセンス
がある者は定期的にレッスンを行うよう指示されており,原告は,週に数回,45分程度のスタジオレッスンや,インストラクター業務を受け持っていた。
(前提事実⑵ウ,甲11,14,乙5,証人f〔9,10頁〕,証人a
〔11,12,23,24頁〕
,原告本人〔3ないし5,38ないし

40頁〕
,弁論の全趣旨)
b
被告の支店においては,従業員につき勤務シフトが組まれている
ところ,支店長について,支店運営の基本となる時間である開店時や,トラブルが発生することが多い朝のタイミングに出勤すべきと
考えられていた。c支店の営業時間は,平日が午前10時から午後11時まで,土曜日が午前9時から午後9時まで,日曜日が午前10時から午後7時までであり,同支店において,従業員は基本的に早番(出勤時刻は午前8時半)
,中番(出勤時刻は午前11時)
,遅
番(出勤時刻は午後2時)のいずれかの勤務シフトに沿って出勤し
ていたところ,原告は,上記のような被告の考えの下に,開店時にはなるべく支店長が立ち会うよう指示されていたこともあり,午前8時半頃に出勤することが多かったが,他の従業員の勤務シフトの関係で,特定の時間帯の人員が不足する場合や,閉店作業を行う従業員が他にいない場合には,中番や遅番の時間帯に出勤することも
あった。
(甲6,乙17,22,証人a〔24,26頁〕
,原告本人〔1,
2,36,37頁〕

c
以上のほか,支店長は,支店外で行われる警察署や消防署との会
議や研修等に参加することもあったところ,このような業務のため
に外出する必要がある場合にも,あらかじめその旨を上長に申請して承認を得る必要があった。

(証人a〔12頁〕
,原告本人〔34頁〕
,弁論の全趣旨)
支店長の権限について
a
指揮命令系統等
被告においては,被告の直営施設運営事業部が支店業務を統括し

ており,支店間の人員の異動及び配置の検討や,商品やサービスの導入及び変更等の決定等は同事業部が行っていた。支店長は,同事業部長の指揮命令系統に属しており,平成25年1月までの間は同事業部長からブロック長(直営施設運営事業部の下に,北海道ブロック,関東第1ないし第4ブロック,中日本ブロック,関西第1な
いし第3ブロック,西日本ブロックが設けられている。,ブロック)
長から各支店長に対して指揮命令が行われ,同年2月以降は同事業部長から直接又はエリアマネージャーを介して支店長に対して指揮命令が行われていた。
さらに,被告においては,会員数,見学・体験からの申込率,正味
収入等の各項目について,支店ごとに目標値が定められており,支店長はこれらの管理項目(KPI)に沿って支店の運営を行うことが求められていた。支店長は,これらの実績値や月末までの見込み数値,目標達成のための施策の内容やその進捗等を毎週週報により被告から指定された上長(時期により異なるが,直営施設運営事業
部長,ブロック長,エリアマネージャー等)その他の従業員に報告するものとされており,その内容について,上長からの指導を受けていた。
(甲14,乙3,5,9,弁論の全趣旨)
b
従業員の人事及び労務管理上の権限
アルバイトの人事権限
被告においては,支店ごとにアルバイトを採用するものとされ

ており,主として支店長がアルバイトの募集手続及び面接等を行
っていた。採用候補者の人選やあらかじめ設定された範囲内での
時給の決定については支店長に裁量があったが,
支店長は,
被告か
ら示された人件費率等を勘案して採用等を行う必要があった。ま
た,実際にアルバイトを採用する際の手続として,支店長は,採用候補者の学歴や採用予定部門等が記載された「アルバイト内定伺
い書」
を人事部に対して提出することで申請を行い,
人事部の承認
を得た上で,改めて,時給や勤務シフトを記載した「KSLアルバイト契約申請書」に必要書類を添付して人事部長の決裁を受ける

必要があった。
もっとも,
支店長による上記申請が承認されないこ
とはほとんどなく,原告の申請が承認されなかったことも一度も
なかった。
また,
アルバイトを解雇する際にも,
所定の書類を揃えた上で手
続を取り,人事部長の決裁を経る必要があった。

これに対し,
アルバイトの配置や更新については,
支店長が自ら
の判断で決定していた。
(甲11,14,乙9,14,15,証人f〔3,4,12頁〕
,証
人a〔5,16ないし18頁〕
,原告本人〔8ないし10,18,
19,27頁〕
,弁論の全趣旨)

従業員の労務管理権限
支店の従業員の勤務シフトは,当該部門のマネージャーが案を
作成したものを支店長が最終決定しており,従業員から勤務シフ
トの変更を希望された場合の調整等も支店長が行っていた。また,支店長は,人事部の指示の下で使用者として三六協定を締結して

いたほか,
マネージャーと共に,
従業員に対して時間外労働や休日
労働を命じる権限を有していた。
さらに,
一般の従業員が有給休暇

を申請してきた際に,
勤務シフトの回りを踏まえ,
話合いによって
調整を図る役割を担っていた。
もっとも,
被告においては,
直営施設運営事業部が支店長の意見
も聴取しつつ,
各支店の規模や営業時間,
会員数等に応じて算出し
た当該支店の業務部門(営業管理部門,スイミング部門,フィットネス部門等)
ごとの総労働時間数等の目安
(平成24年4月から平
成26年3月までの間は
「運営モデル」平成26年4月以降は

「ガ
イドライン」と呼ばれるもの。以下,これらを合わせて「運営モデル等」ということもある。
)が定められており,その内容や運用方

針は時期により多少異なっていたものの,
基本的に,
支店長は運営
モデル等に沿って従業員の配置や勤務シフトを決定するものとさ
れていた。支店の各従業員がどの業務に何時間従事したかについ
ては,被告のイントラネット上の勤怠管理システムにより管理さ
れており,被告の本部においてもこれらを即時に把握することが

可能であった。遅くとも,平成25年頃からは,運営モデル等で定められた総労働時間数と実際の総労働時間数との間に差が生じた
場合には,直営施設運営事業部が支店長に対してその理由を報告
するよう求めており,乖離が大きい場合には,一定の指導(理由の報告と改善策の提案を促される等)がなされることもあった。ま

た,
平成26年1月からのガイドラインの試行的運用に先立ち,

日本エリアの支店長が集められた会議の席で,直営施設運営事業
部のaは,
支店長らに対し,
ガイドラインで定められた総労働時間
数を超えないよう指示するとともに,
超えそうな場合には,
支店長
自ら一般の従業員と同様のシフト業務(フロント業務等の現業業

務。以下「シフト業務」という。
)を行うことにより,一般の従業
員の労働時間をコントロールするよう指示した。

(甲11,14,乙12,13,17ないし23,証人f〔6ないし8,16,17,20頁〕
,証人a〔5ないし8,19,20,2
8,29,31頁〕
,原告本人〔10ないし12,24,27,3
7ないし39頁〕
,弁論の全趣旨。なお,aは支店長がシフト業務
を行うことは,業務の適正の観点から望ましくないことを理由に,
支店長に対して上記指示を行ったことはない旨を供述する〔証人
a(9頁)
〕が,当時,原告は頻繁にシフト業務を行っていた上,
これについて週報等で上長に報告していたものであり〔乙5,原
告本人(38,39頁),それにもかかわらず,上長が原告に対し〕
てシフト業務を行わないよう指示した事実は証拠上何らうかがわ

れないことを併せ考慮すれば,aの上記供述は信用することがで
きない。

その他の人事上の権限
支店の従業員の人事考課については,マネージャーが一次評価
(一次考課)
,支店長が二次評価(二次考課)を行い,ブロック長

が最終的な決定権限を有していた。
また,マネージャーの人事考課は,一次評価(二次考課)を支店
長が行い,ブロック長が決定するものとされていた。
支店長は,
それらの人事考課に際して,
その対象者との間で年に
4回の面談を行っていた
(あるいは,
マネージャーが対象者との間

で行った面談の内容を聴取していた。。

(乙3,証人f〔15頁〕
,原告本人〔25,26頁〕
,弁論の全
趣旨)
c
施設管理上の権限
支店長は,支店内の設備の修繕管理や,備品の整備等に係る責任

を負っていた。もっとも,設備の修繕については,基本的に,被告の
施設管理部が定めた年間工事計画に沿って行われており,これ以外に出捐を伴う修理等を行う必要がある際には,その都度事前に申請を行い,エリアマネージャー又は直営施設運営事業部長の承認を得る必要があった。
また,支店の備品の購入についても,時期により手続が若干異な

っていたものの,原則として,事前に金額に応じて「購入伺い」又は「決裁書」を起案して申請を行い,直営施設運営事業部の承認を得る必要があった。
そして,原告が支店長としてフロントの天井照明の破損箇所やト
レーニングマシンの破損箇所の修理,汚損した浴室鏡の交換を申請した際には,最終的には天井照明,トレーニングマシンの修理や浴室鏡の清掃が行われたものの,上長であるエリアマネージャーに反対されるなどの理由でいずれの申請も速やかに承認されることはなく,設備備品の管理責任者であるはずの原告が求めるような時機を
尊重した速やかな修理等が行われなかった。
(甲11,14,乙9,証人f〔4,5,20,21頁〕
,証人a〔2
1ないし23,32頁〕
,原告本人〔12ないし16頁〕
,弁論の全
趣旨)
d
対顧客業務上の権限について
支店ごとに行う販売促進活動については,支店長が中心となっ
て検討・実施していたが,実際に販売促進活動を行う場合には,
事前にその内容等を本部に報告し,
その承認を得る必要があった。
また,販売促進活動費については,従前の入会実績等を踏まえて
支店ごとに予算が定められており,原則としてその範囲内で行う

必要があったが,支店長がその必要性や予想される効果等につい
て直営施設運営事業部に説明をした上で,増額が認められること

もあった。
(乙9,証人f〔5,6,20,21頁〕
,証人a〔3,4,1
4,15頁)
支店において従前のプログラムの内容の変更や新たなプログラ
ムの導入をしたり,これに伴う実施時間枠ないし営業時間の変更
をしたりする場合には,少なくとも直営施設運営事業部長の決裁
が必要であり,特に多額の出捐を伴う場合には,社長等の経営幹
部で構成される経営会議において承認を得る必要があった。
なお,
経営会議に上程された場合には,直営施設運営事業部長が出席し

て内容の説明等を行うことになっており,原則として支店長は同
会議に出席していなかった。
(乙9,証人a〔15,16頁〕

支店長自身の労務管理について
被告においては,支店長やマネージャーを含め,正社員及び契約社
員は,1年間の総労働時間が1900時間となり,かつ,1か月当たりの総労働時間が被告の定める最低所定時間以上法定労働時間以下となるように,各月の労働時間数を予め計画するものとされていた(これらを入力した表は,
「KSL年間カレンダー」と呼ばれていた。以下
これを指して「年間カレンダー」という。。また,被告の従業員は,)

毎月,各日の出退勤時間及び従事する業務部門を入力した勤務計画を作成するものとされており,支店長は,前月末ないし当月初め頃に,当月11日以降の他の従業員の勤務シフトを決定した後,遅くとも同月5日頃までに自身の勤務計画を作成することになっていた。
さらに,支店長は,一般の従業員同様,タイムカードに出退勤時刻
を打刻するとともに,その日のうちに,被告のイントラネット上の勤怠管理システムに出退勤時刻や実労働時間を入力するよう指示されて
いた。
以上に加えて,支店長の場合は,毎週上長に提出していた週報において,翌週の勤務予定(出勤時刻及び業務内容)並びにその週の勤務実績(出退勤時刻及び業務内容)を報告するものとされていた。
なお,勤務計画や週報の提出後に,支店長が自身の出勤時刻を変更する場合,特段上長の許可を得る必要はなかったが,週報を提出する時点での勤務計画において定めた出勤時刻を変更することが予定されている場合には,変更後の出勤時刻を報告することになっていた。また,休日の予定を変更する場合には,事前に上長にその旨を報告する
必要があった。
(甲5,6,14,乙5,22,証人f〔19頁〕
,証人a〔25,26,
28ないし30頁〕
,原告本人〔30,37,38頁〕

待遇について
被告において,管理監督者とそうでない従業員との給与額の差は,
役職手当及び昇格昇給の加算並びに職能給の範囲本給の差異により付けられているところ,支店長については,月額5万又は6万円の役職手当が支給されるものとされており(給与規程17条)
,原告も,月額
5万円の役職手当の支給を受けていた。また,M2級からM3級への昇格昇給として4万円の昇給額が定められている(同規程別表Ⅰ⑶)。

さらに,被告においては,本給は年齢給部分と職能給部分とで構成されており(同規程15条)
,後者は等級及び社員区分に応じて定められ
ているところ(同規程16条)
,少なくとも平成25年4月以降,非管
理職の最上等級であるM2級の職能給の範囲本給は,下限が15万5000円,上限が20万1000円であったのに対し,原告が属して
いたM3級の職能給の範囲本給は,下限が16万円,上限が23万円であった(同規程別表Ⅰ⑵)


(前提事実⑵イ,⑶ア・イ,甲3,乙24,弁論の全趣旨)エ
マネージャーについて
マネージャーの業務内容及び権限について
マネージャーは,主として施設内の特定の部門における責任者であ
り,施設長(支配人,支店長等)の指揮命令を受けて勤務をしていた。従業員の人事及び労務管理に関し,マネージャーは,部下の人事考課について一次評価を行う権限及び一般の従業員に対して時間外労働及び休日労働を命じる権限を有していた。他方,マネージャーは,アルバイトの採用面接を行うことがあったほか,担当する部門の従業員
の勤務シフトの案を作成していたが,いずれについても,マネージャーが単独で決定することはできなかった。
被告において,マネージャーは支店長以上の権限を有しておらず,また,管理職であるSM職に位置づけられるマネージャーと,非管理職であるM職に位置づけられているマネージャーとで業務内容や権限
に特段の違いはなかった。
(甲11,乙3,4,証人f〔10,11,17,18頁〕
,証人a〔2
7頁〕
,原告本人〔20,25,26頁〕
,弁論の全趣旨)
マネージャー自身の労務管理について
マネージャーの労務管理の態様は,週報の提出が不要であった点を
除き,支店長とおおむね同様であった。
(弁論の全趣旨)
待遇について
マネージャーについては,役職手当として月額5000円のマネージャー手当が支給されていた。

その他,SM職
(前提事実⑵イ,⑶ウ,甲3,乙24,弁論の全趣旨)


検討
判断基準
労基法41条2号は,いわゆる管理監督者に対しては同法の定める労働時間,休憩及び休日に関する規定を適用しないものとしているところ,
これは,管理監督者については,その職務の性質や経営上の必要から,経営者と一体的な立場において,労働時間,休憩及び休日等に関する規制の枠を超えて活動することが要請されるような重要な職務と責任,権限を付与され,実際の勤務態様も労働時間等の規制になじまない立場にある一方,他の一般の従業員に比して賃金その他の待遇面でその地位に
ふさわしい優遇措置が講じられていることや,自己の裁量で労働時間を管理することが許容されていることなどから,労基法の労働時間等に関する規制を及ぼさなくてもその保護に欠けるところはないと考えられることによるものである。
そうすると,労基法上の管理監督者に該当するかどうかについては,
①当該労働者が実質的に経営者と一体的な立場にあるといえるだけの重要な職務と責任,権限を付与されているか,②自己の裁量で労働時間を管理することが許容されているか,③給与等に照らし管理監督者としての地位や職責にふさわしい待遇がなされているかという観点から判断すべきである。

この点,被告は,原告が本件請求期間中,SM職のM3級の等級にあったところ,SM職は「所属部門の年度方針に基づき担当組織の年度計画を立案し,年度目標を達成させる」又は「特定の専門分野において全社的に貢献する」という役割及び責任を負い,M3級には「事業理念を実践的に理解し,方針に沿って,政策を立案し,主体的に所属組織に働
き掛けることにより,業績寄与することができる責任者として,自らの判断で,円滑に業務遂行し,かつ効果的な改善を実践する能力を保有し
ている」従業員が位置付けられているのであって,この職層・等級の従業員は就業規則36条1号で定める
「管理監督の地位にある者」
として,
給与規程25条により時間外手当・休日手当の支給対象者から除外されている旨主張するが,労基法41条2号所定の管理監督者について,時間外手当・休日手当の支給をしなくてよいとされるのは,上記説示に係
る趣旨によるものであるから,原告の職層等ではなく,実際に就いていた支店長及びマネージャーの地位について,実際の職務内容,責任と権限,勤務態様,管理監督者の地位にふさわしい待遇を受けているかを具体的に検討する。

支店長の管理監督者該当性について
職責及び権限について
前記認定事実によれば,支店長は,施設・設備の維持管理や対顧客サービスの提供,出入金の管理,損益目標達成のための施策の立案・実施等,支店の運営管理全般について責任者としての職責を担うとと
もに,従業員の勤務シフトの決定や,支店内のミーティングの主催,販売促進活動の企画・実施等の権限を有していたことが認められる。もっとも,支店において提供する商品及びサービスの内容の決定並びにそれに伴う営業時間の変更については,原則として被告の直営施設運営事業部が行っており,支店長は,これらに関わる提案をすること
は可能であったものの,独自の判断で決定することはできなかったばかりか,これらのうち特に多額の出損を伴うような重要な事項について上程される経営会議への参加も原則として求められていなかった。さらに,支店長としての日常業務についてみても,アルバイトの採用や解雇,販売促進活動の実施,出捐を伴う設備の修繕や備品の購入
等については,被告の決裁を経る必要があって,設備の修繕については原告の判断が尊重されていないといわざるを得ない状況も存したほ
か,被告が定めた詳細な管理項目(KPI)により支店の損益目標が管理され,その内容について週報等による頻繁な報告や指導が行われたり,運営モデル等に極力沿った労務管理が要請されたりするなど,形式的には支店長が権限を有する事項についても,本部が定めた運営方針や,直営管理運営事業部長やエリアマネージャー等による指導等を通じて,支店の運営管理に関する支店長の裁量は,相当程度制限されていたというべきである。
これらの事実からうかがうことのできる原告が支店長として有する裁量ないし権限の実態からすれば,被告の支店長が実質的に経営者と
一体的な立場にあるといえるだけの重要な職務と責任,権限を付与されていたというに足りる裁量が与えられ,あるいは経営への影響力を有していたとまで認めるのは困難である。
労働時間の裁量について
前記認定事実のとおり,原告は,被告から,なるべく支店の開店時
間に立ち会うよう指示されており,早番で出勤することが多かったとはいえ,比較的柔軟に出勤時刻を調整して,中番や遅番で出勤していたことがうかがわれる。
もっとも,これは,前記認定事実のとおり,支店の一般の従業員がシフト制で勤務をしていたために,特定の時間帯の人員が不足する場
合や,閉店作業を行う従業員が他にいない場合に,原告の勤務時間を調整して対応していたことによるものでしかなく,被告においては,支店長も,一般の従業員と同様,年間の総労働時間が1900時間となり,かつ,各月の労働時間数が一定の範囲内に収まるように,事前に勤務計画を作成し,被告に対して自身の出勤日及び出勤時刻の予定
を報告するとともに,タイムカードの打刻及び勤怠管理システムへの入力等により日々の出退勤時刻や実労働時間を報告するよう指示され
ていたほか,毎週週報を提出して直近の勤務予定(出勤時刻及び業務内容)や勤務実績(出退勤時刻及び業務内容)を上長に報告するものとされ,休日を変更する場合にはあらかじめ上長に報告することが必要であり,
業務により外出する場合であっても上長の承認を要した上,
少なくとも平成25年末頃からは,従業員の総労働時間が被告の定めた指標に沿うものとなるよう支店長自身の労働時間を調整するよう被告から指示されていたもので,これらの事実を踏まえれば,支店長についても,労働時間の実態把握や健康管理上の必要を超えて,労働時間の管理が一定程度行われていたとみるべきである。

そして,このような被告における支店長に対する労働時間の管理実態に加え,
原告を含めた複数の支店長が,
人員不足の状況を踏まえて,
管理業務のみならず,フロント業務やインストラクター業務等一般の従業員と同様の業務にも日常的に携わらざるを得ない状況にあり,そのために,本件請求期間中,原告は恒常的に時間外労働を余儀なくさ
れていたことも併せ考慮すれば,被告において,支店長が自己の裁量で労働時間を管理することが許容されていたとも,それが可能であったともみることはできない。
待遇について
前記認定事実のとおり,支店長は,月額5万円又は6万円の役職手
当が付与されるものとされており,原告も5万円を同手当として支給されていた上,本給部分についてみると,職能給部分について,M2級からM3級に昇格する際には昇格昇給4万円が付されるものとされていた一方,少なくとも平成25年4月以降,非管理職の最上等級であるM2級の職能給の範囲本給の幅(レンジ)が15万5000円以
上20万1000円以下であったのに対し,
M3級の範囲本給の幅
(レ
ンジ)は16万円以上23万円であり,これらにおいて想定されるそ
の差は僅かであるばかりか,管理職であるM3級の範囲本給の額が非管理職であるM2級の範囲本給の額を下回る可能性もあったこと,職能給について上記昇格昇給と範囲本給との関係は明確ではないものの,範囲本給の額に昇格昇給の額が加算されるとしても,これに役職手当を加算した場合,M3級とM2級の金額差は4万9000円の差に留
まるものとなる可能性もあったこと(なお,M2級において役職手当が加算される場合には,その差はさらに縮まることになる。,また,)
前記のとおり,支店長が,人員不足の状況を踏まえて,管理業務のみならず,フロント業務やインストラクター業務等一般の従業員と同様のシフト業務も日常的に携わらざるを得ない状況にあって,恒常的に
時間外労働を余儀なくされていたという勤務実態も併せ考えれば,時間外労働及び休日労働に係る割増賃金の支給がされないまま,上記額の役職手当の支給のみでもって,支店長に対し,管理監督者としての地位や職責にふさわしい待遇がされているとはいい難い。
まとめ

以上のような職責及び権限,労働時間の裁量性を含む勤務実態及び賃金等の待遇を総合的にみると,被告の支店長であった当時の原告について,労基法の定める労働時間規制を超えて活動することが,その重要な職務と責任から求められる者であるとは解し難いといわざるを得ず,支店長職にあった当時の原告が管理監督者に該当すると認める
ことはできない。

マネージャーの管理監督者該当性について
前記認定事実によれば,マネージャーは,支店内の特定の部門におけ
る責任者であり,アルバイトの人選や勤務シフトの決定に関して一定の権限を有していたものの,支店長以上の権限を有するものではなく,労働時間の管理に関しても,支店長以上に裁量を有していたことをうかが
わせる事情は何ら見当たらない。さらに,待遇についてみると,マネージャーの役職手当は月額5000円にすぎなかった上,マネージャーの中には,管理職であるSM職ではなく,管理職でないM職に位置づけられていた者もおり,職務内容や責任は同一であるにもかかわらず,後者に該当する場合には,給与規程所定の時間外労働手当及び休日労働手当
の支給対象となる結果,SM職のマネージャーよりも月額給与額が高額となるという事態も生じていること(証人f〔11頁〕
)からすれば,S
M職のマネージャーについて,管理監督者としての地位や職責にふさわしい待遇がされていたとは到底いい難い。
以上によれば,被告のマネージャーであった当時の原告について,労
基法の定める労働時間規制を超えて活動することが,その重要な職務と責任から求められる者であるとは解し難いといわざるを得ず,マネージャー職にあった当時の原告が管理監督者に該当すると認めることはできない。

小括
以上によれば,原告は,支店長職及びマネージャー職のいずれの立場
にあった際も,労基法上の管理監督者の地位にあったものとは認められず,したがって,原告に対しては,時間外労働及び休日労働に対する割増賃金が支払われるべきである。
2


争点⑵(実労働時間〔休憩時間〕
)について
被告のイントラネット上の勤怠管理システムの記録(甲6)には,別紙2の「休憩時間」欄記載のとおりの休憩時間が入力されているところ,被告においては,支店長及びマネージャーを含む全ての従業員が,出退勤時にタイムカードを打刻するほか,日々,被告の上記勤怠管理システムに出
退勤時刻及び実労働時間(出勤時刻から退勤時刻までの時間から,休憩等の時間を控除した時間。
)を入力するよう指示されており,原告もこれに

従っていたこと,従業員が入力した上記記録は,随時被告の本部において確認することが可能であり,
原告は,
支店長として被告に勤務している間,
上記により報告した出退勤時刻や実労働時間について被告から修正等を求められたことはなかったこと(甲6,証人f〔20頁〕
,証人a〔25,
27,28頁〕
,原告本人〔7,8,23,37ないし39頁〕
,弁論の全

趣旨)を踏まえれば,上記勤怠管理システムの記録は原告の勤怠状況を正確に反映しているものと推認するのが相当であり,
この推認を妨げるに足
りる事情も認められない。したがって,上記勤怠管理システムの記録によって,原告の休憩時間が別紙2の「休憩時間」欄記載のとおりのものであったと認められる。



これに対し,被告は,始業時刻から終業時刻までの時間が8時間を超える日であって,休憩時間が1時間未満となっている日についても,休憩時間は1時間であった旨主張するが,被告の主張を裏付ける的確な証拠はなく,この主張を採用することはできない。

3
争点⑶(手当〔割増賃金〕の未払額)について



給与規程に基づく割増手当について


原告と被告との間の労働契約中の割増賃金に係る労働条件について原告は,原告と被告との間の労働契約中の時間外労働及び休日労働に
関する労働条件が給与規程によるべきとして,それら労働に係る割増賃金につき,同規程所定の割増率が乗じられるべき旨を主張し,その理由として,原告を含めたSM職の従業員を割増賃金の支給対象外とする給与規程25条の定めが労基法に違反するもので無効となる結果,原告についても,同規程22条及び23条が適用され,それら所定の時間外勤務手当及び休日勤務手当が支払われると解するのが当然の論理的帰結
であるし,当事者の合理的意思解釈にも沿うというべきである旨を指摘する。確かに,給与規程の規定の体裁は,被告はその従業員に対して同
規程22条及び23条に基づき所定の時間外勤務手当及び休日勤務手当を支払うものとした上で,その適用が除外される者を同規程25条で就業規則36条を引いて明らかにするものとなっており,また,同条の対象者は労基法41条各号に対応するようになっている。
しかしながら,給与規程25条が労基法違反の規定として無効になれば,条文の形式的操作によりただちに同条により排除されていた同規程22条及び23条が適用されることになると解し得るものではなく,同規程25条が同規程22条及び23条の適用を排除していた趣旨を踏まえて当事者の合理的な意思を探求して同規程22条及び23条の適
用の有無を検討する必要がある。その上で,被告においては,前提事実⑵ウのとおり,SM職以上の職層にある従業員とそれより下位の職層にある従業員とでは,被告内部における役割と職責が異なり,SM職以上の職層にある従業員を経営者側に立つ従業員であると認識し位置付けた上で,役職手当の支給といった処遇面での差異も設けていたように,
両者の位置付けが異なっており,その差異は単純に労基法41条2号にいう管理監督者であるかどうかによってのみ決定されていたものとはいい難い。そして,前提事実⑵ウのとおり,SM職以上の職層にある従業員が就業規則36条1号の定める「管理監督の地位にある者」に該当するものと取り扱われており,これらの者に対しては,給与規程25条
に従って,同規程22条及び23条所定の時間外勤務手当及び休日勤務手当が支給されておらず,原告についても,これら時間外勤務手当及び休日勤務手当が支給されていなかったことは当事者間に争いがないところ,これらの事実によれば,原告と被告との間における労働契約中の時間外労働及び休日労働に関する労働条件としては,これら時間外労働
及び休日労働に係る割増賃金を支給しないことが合意内容となっていたものと認められることを併せ考慮すると,SM職より下位の職層にあ
る従業員に対して労基法の定める以上の割増率による割増手当てを支給するという趣旨が,経営者側に立つと認識され位置付けられていたSM職以上の職層にある従業員に対しても妥当するものということはできない。
そうすると,原告につき給与規程22条及び23条の適用があるとす
る原告の上記主張するところは,労基法13条に関する独自の解釈というほかなく,採用することはできない。
もっとも,前記1で説示したとおり,原告は労基法上の管理監督者に該当するとは認められず,原告に対しては,時間外労働及び休日労働に対する割増賃金が支払われるべきであるから,上記合意内容は,時間外労働及び休日労働に対する対価を一切支払わないことを内容とする限りにおいて労基法37条に反し無効であるといわざるを得ず,その無効になった部分は,
同法13条により,
同法37条で定める基準
(割増率)
によるべきである(同条で定める基準による割増賃金額については,後
記⑵において検討する。。


深夜勤務手当について
原告に深夜勤務手当について定めた給与規程24条が適用される
ことについては,当事者間に争いがない。
その上で,前払退職月額が給与規程における割増手当の算定基礎額
に含まれるかどうかについて検討するに,
給与規程上,
「所定内給与」
には前払退職月額が含まれていないことは明らかである上(給与規程4条)被告においても,

割増手当の算定基礎額に前払退職月額を算入
しない扱いとしていることからすれば(甲2,弁論の全趣旨)
,給与規
程上,割増手当の算定基礎額に前払退職月額が含まれないことは明白
である。
この点,原告は,仮に給与規程所定の深夜割増手当の算定基礎額に
前払退職月額が含まれないと解するとしても,前払退職月額は労基法37条5項及び労基則21条各号の定める除外賃金に含まれていないところ,労基法で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約はその部分について無効となることを理由に,前払退職月額が給与規程における割増手当の算定基礎額に含まれる旨主張する。
しかしながら,

労基法37条に定める計算方法によらずに割増賃金を支払うことも,同上の計算方法による割増賃金を下回らない限り適法であると解され,労基法37条に定める計算方法によらない計算方法については,計算方法の個々の部分が労基法等の法令に適合しているかを見ることなく,所定の計算方法により算出された金額を労基法37条に定める計算方
法による計算金額と比較すれば足りる。このことを踏まえて計算すると,算定基礎額に前払退職月額を含めない場合の基礎時給が時期に応じて2430円,2465円,2181円であり,算定基礎額に前払退職月額を含める場合の基礎時給が2446円,2481円,2197円であることは当事者間に争いがないところ,前払退職月額を含め
ない基礎時給に給与規程所定の割増率を乗じた額は,前払退職月額を含めた基礎時給に労基法所定の割増率を乗じた額を上回るから(2430円×0.3=729円,2446円×0.25=612円〔円未満四捨五入〕等)
,給与規程の定める計算方法によって算出された深夜
勤務手当の額が,労基法37条に従い計算された深夜割増賃金の額を
上回っていることは明らかである。そうすると,原告の上記主張は,採用することができない。
そして,上記計算に基づき算出された深夜勤務手当の全額が支払われていることについては,当事者間に争いがないから,深夜勤務手当の未払はない。



労基法37条所定の時間外割増賃金及び休日割増賃金について


算定基礎額について
被告は,前払退職月額は,功労報償的要素を有する退職金を前払する
ものであり,
「通常の労働時間の賃金」
(労基法37条)には該当しない
から,労基法上の割増賃金の算定基礎額に含まれない旨主張する。しかしながら,
一般に,
退職金は,
功労報償的性質を有するとともに,

賃金の後払的性質を有するものと解されるところ,被告においても,退職金の額は勤続年数(日数)に応じて算出するものとされていたことがうかがわれること(給与規程7条等)からすれば,上記前払退職月額について,
賃金の後払としての性質が否定されるものではなく,
「通常の労
働時間及び労働日の賃金」と認めるのが相当である。
その上で,被告においては,退職金前払制度の下,在職中は毎月一定額が前払退職月額として支給されているものと認められることからすれば
(弁論の全趣旨)上記前払退職月額が

「臨時に支払われた賃金」
(労
基則21条4号)に該当するということもできず,その他同条各号に定
める除外賃金に該当するものと解すべき事情も認められないから,前払退職月額は,労基法の割増賃金の算定基礎額に含まれることになる。イ
まとめ
以上を前提とすると,算定基礎額は,基本給,役職手当及び前払退職
月額の合計額となり,この場合の基礎時給の額が,平成25年1月から同年4月までの間は2446円,同年5月から平成26年3月までの間は2481円,同年4月から平成27年1月までの間は2197円となることについては当事者間に争いがない。
そして,上記基礎時給に労基法所定の割増率を乗じ,原告の労働時間について原告主張の限度で時間外労働時間数及び休日労働時間数を算
出し,各月の時間外割増賃金及び休日割増賃金の額を計算すると,それぞれ別紙2の
「時間外割増賃金①」
(時間外勤務手当のうち月の時間外労

働時間が60時間以下の部分に対応するもの)

「時間外割増賃金②」
(時
間外勤務手当のうち月の時間外労働時間が60時間を超える部分に対応するもの)

「法定休日割増賃金」
欄記載の金額となり,
その合計額は,
別紙3「認容額一覧」記載の「割増賃金各月合計額」欄に対応する「合計」欄記載のとおり,295万1349円となる(原告の計算を前提とする請求金額の取扱い


。ここで,原告は,別紙1において

T欄(月単位の時間外労働時間)を設け,これをR欄(1日単位の時間外労働時間)及びS欄(週単位の時間外労働時間)と合算してU欄(月合計時間外労働時間)を導いているところ,このうち原告がいう「月単位の時間外労働時間」は,1か月単位の変形労働時間制(労基法32条の2)が適用されることを前提とする主張であると解される。この点,被告の就業規則には,1か月単位の変形労働時間制が適用される旨の定めがあるが(就業規則22条)
,原告は,変形労働時間制の適用がないこ

と,すなわち労基法32条の労働時間の定めが適用されることを前提に,「1日単位の時間外労働時間」及び「週単位の時間外労働時間」を算出していることがうかがわれることからすれば,変形労働時間制が適用されるとの主張自体,上記の原告の主張と整合しないものであって失当であるといわざるを得ないし,原告に1か月単位の変形労働時間制が適用
されることに関して労基法32条の2所定の要件を充足していることについての具体的な主張立証もないから,いずれにしても,原告について変形労働時間制が適用されると解する余地はない。したがって,別紙2においては,原告に1か月単位の変形労働時間制が適用されることを前提とするT欄を設けていない(なお,原告が「月単位の時間外労働時
間」として主張する時間外労働時間は,本来,当月又はその前後の月の1週間当たり40時間を超える労働時間(労基法32条1項)に該当す
る可能性があるが,この点について原告は具体的な主張をしていないため,上記の限度で認容するものである。。

そして,各期間の割増賃金について,各支払日から平成27年2月15日までの確定遅延損害金の額は,別紙3「認容額一覧」の「遅延損害金」欄記載のとおりであり,その合計額は16万8202円となる。
4
争点⑷(付加金の支払を命ずることの当否及びその額)について


労基法114条によれば,付加金の請求は,違反のあった日から2年以内に行わなければならず,この期間は除斥期間であると解される。法律上の期間の遵守のために必要な裁判上の請求は,
訴えの提起をした時に効力
を生じるところ
(民事訴訟法147条1項)本件訴えが提起されたのは,


平成27年6月15日であり(当裁判所に顕著な事実)
,それより2年以
前に到来している支払日である平成25年5月25日及びこれより前に到来する支払日に係る割増賃金に対応する付加金については,
既に除斥期
間が経過している。
したがって,本件において付加金請求の対象となる未払割増賃金は,別
紙3「認容額一覧」の「付加金対象額」欄記載のとおり,合計230万6486円となる。


労基法114条は,
使用者に同法違反行為に対する制裁を科すことによ
り,将来にわたって違法行為を抑止するとともに,労働者の権利の保護を
図る趣旨で設けられたものであり,
付加金について裁判所が支払を命じる
ことができる旨が規定されていることからすると,
使用者による同法違反
の程度や態様,労働者が受けた不利益の性質や内容,前記違反に至る経緯やその後の使用者の対応などの諸事情を考慮して,
支払の要否及び金額を
検討するのが相当である。

一般的に労基法が定める割増賃金の支払がされないことは,付加金支払を命ずることを相当とすべき事情ではある一方,本件において,被告が割
増賃金の支払をしなかったのは,原告が管理監督者に当たるとの認識によるものであると解されるところ,結果的に原告の管理監督者該当性が認められないとはいえ,特に原告が支店長であった期間については,支店の運営管理の責任者として,従業員の勤務シフトを決定したり,人事考課を行ったりするなど一定の権限を有しており,その待遇も著しく不合理なもの
であるとはいえないことからすれば,原告が管理監督者に該当すると被告において考えたことについても,相応の理由があるというべきであり,被告が割増賃金の支払をしなかったことについて,その態様が著しく悪質であるということもできない。
これらの事情を総合的に考慮すると,本件においては,付加金として付
加金請求の対象となる未払割増賃金の約4割に相当する90万円の支払を命じることが相当である。
第4

結論
以上によれば,原告の請求は,主文第1項及び第2項の限度で理由がある
からこれらを認容し,
その余の請求についてはいずれも理由がないからこれ
を棄却することとして,主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第11部

裁判長裁判官

裁判官

佐上々木田宗真啓史
裁判官

原島麻由
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