判例検索β > 平成27年(ワ)第16829号
特許権侵害差止等請求事件 特許権 民事訴訟
事件番号平成27(ワ)16829
事件名特許権侵害差止等請求事件
裁判年月日平成29年9月14日
法廷名東京地方裁判所
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平成29年9月14日判決言渡

同日原本交付

平成27年(ワ)第16829号
口頭弁論終結日

裁判所書記官

特許権侵害差止等請求事件

平成29年6月27日
判原決告
株式会社エコパウダー

同訴訟代理人弁護士

大野聖二大野浩之
同訴訟代理人弁理士

酒谷誠一被
アーテック工房株式会社


同訴訟代理人弁護士


雄一郎

中雅敏堀田明希大坪
めぐみ

有吉
修一朗

森1田田主龍岡
同訴訟代理人弁理士

村太田靖之文
被告は,別紙被告製品目録記載の製品の生産,使用,譲渡又は譲渡の申出をしてはならない。

2
被告は,別紙被告製品目録記載の製品を廃棄せよ。

3
被告は,原告に対し,1億0151万2946円及びこれに対する平成27年6月30日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
4
原告のその余の請求を棄却する。

5
訴訟費用は,これを10分し,その3を原告の,その余を被告の負担とする。
6
この判決は,第3項に限り,仮に執行することができる。

第1

実及び理由
請求

1
主文第1項及び第2項と同旨

2
被告は,原告に対し,1億4028万9071円及びこれに対する平成27年6月30日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2

事案の概要
本件は,発明の名称を「防蟻用組成物」とする特許権を有する原告が,被告に対し,別紙被告製品目録記載の製品(以下「被告製品」という。)の生産等が特許権侵害に当たると主張して,①特許法100条1項及び2項に基づく被告製品の生産等の差止め及び廃棄,②民法709条及び特許法102条2項に基づく損害賠償金1億2918万4341円及びこれに対する不法行為の後の日(訴状送達の日の翌日)である平成27年6月30日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払,③民法703条に基づく不当利得金1110万4731円及びこれに対する履行の請求を受けた後の日(訴状送達の日の翌日)である平成27年6月30日から支払済みまで同割合による遅延損害金の支払を求める事案である。

1
前提事実(当事者間に争いのない事実並びに後掲の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認定できる事実)
当事者
原告は防蟻剤等の生産,販売等を業とする株式会社である。
被告は防蟻剤等の生産,販売等を業とする株式会社である。
原告の特許権

原告は,次の特許権(以下「本件特許権」といい,その特許を「本件特
許」その特許出願の願書に添付された明細書を
と,
「本件明細書」
という。

の特許権者である。
特許番号
発明の名称

防蟻用組成物

発明者A出願日
平成15年6月24日(特願2003-179339号)

優先日
平成14年6月28日

登イ
第4177719号

録日
平成20年8月29日

本件特許の出願は,
原告の代表者であるA
(以下
「原告代表者」
という。

がした。


本件特許権の特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである(以下,請求項1の発明を「本件発明」という。)。
「植物由来の炭粉末と,被膜形成性ポリマーエマルジョン,水溶性多糖類及びポリアミド樹脂からなる群から選ばれた1種又は2種以上と,ホウ酸類とを含有することを特徴とする防蟻用組成物。」


本件発明は,以下の構成要件に分説される(以下,それぞれの構成要件を「構成要件A」などという。)。
A
植物由来の炭粉末と,

B
被膜形成性ポリマーエマルジョン,水溶性多糖類及びポリアミド樹脂からなる群から選ばれた1種又は2種以上と,

CDオ
ホウ酸類と
を含有することを特徴とする防蟻用組成物。
原告は,本件特許に係る無効審判の手続において,本件特許の特許請求
の範囲請求項1につき,平成28年5月13日付けで訂正請求をした(以下,
この訂正請求に係る請求項1記載の発明を
「本件訂正発明」
という。。

本件訂正発明は,以下の構成要件に分説される(下線部は訂正箇所)。(甲

42)
E
塗膜形成用の防蟻用組成物であって,

A
植物由来の炭粉末と,

B’被膜形成性ポリマーエマルジョンと,
C
ホウ酸類と

D
を含有し,

F
前記ホウ酸類の含有量は1~40質量%である

D
ことを特徴とする防蟻用組成物。

被告の行為等

被告は,遅くとも平成20年5月から平成28年10月10日までの期間,被告製品を製造,販売した。


被告製品は,微粉末混合木炭,合成アクリルエマルジョン及びホウ酸を配合する塗膜形成用の防蟻用防蟻剤である。被告製品がホウ酸を含むことは当事者間に争いがなく,平成27年6月に株式会社住化分析センターが被告製品を分析したところ,ホウ酸の含有量は2.6%程度であった(甲5)。
なお,被告は,平成28年10月12日以降,被告製品と同名の商品にホウ酸を配合することを中止したと主張し,同日以降の被告製品と同一名称の商品について,ホウ酸が配合されていることを認めるに足りる証拠はない。また,被告は,本件特許の優先日(平成14年6月28日。以下「本件優先日」という。)より前から被告製品と同一名称(ヘルスコ・キュアー)の商品を販売していた(以下,本件優先日前に販売された被告製品と同一名称の商品を「被告先行製品」という。)

2
争点
被告製品が本件発明及び本件訂正発明の技術的範囲に属することは当事者間に争いはなく,争点は次のとおりである。

先使用の抗弁の成否
無効理由の有無
被告は,本件特許には後記の無効理由があり,特許無効審判により無効にされるべきものであるから,原告は本件特許権を行使することができない(特許法104条の3第1項)と主張する。

冒認出願(特許法123条1項6号)


特開平1-295948号公報(乙36。以下「乙36公報」という。)に記載された発明(以下「乙36発明」という。)に基づく新規性欠如

乙36発明,特開平8-143401号公報(乙37。以下「乙37公報」という。)に記載された発明(以下「乙37発明」という。),林産試験場報第12巻第6号(乙39。以下「乙39文献」という。)に記載された発明(以下「乙39発明」という。)及び特開平11-29742号公報(乙40。以下「乙40公報」という。)に記載された発明(以下「乙40発明」という。)に基づく進歩性欠如


乙37発明,特開2000-26218号公報(乙38。以下「乙38公報」という。)に記載された発明(以下「乙38発明」という。),乙40発明及び特開平5-339114号公報(乙41。以下「乙41公報」という。)に記載された発明(以下「乙41発明」という。)に基づく進歩性欠如
本件訂正発明に係る無効理由の有無
原告は上記

の無効理由に対し,上記

オの訂正請求をしたとして訂正

の再抗弁を主張する。これに対し,被告は本件訂正発明には以下の無効理由があると主張する。

冒認出願


特開平3-200701号公報(乙48。以下「乙48公報」という。)に記載された発明(以下「乙48発明」という。)及び特開平7-279
271号公報(乙49。以下「乙49公報」という。)に記載された発明(以下「乙49発明」という。)に基づく進歩性欠如

乙48発明及び乙36発明に基づく進歩性欠如


乙48発明及び特開2002-121497号公報(乙50。以下「乙50公報」という。)に記載された発明(以下「乙50発明」という。)に基づく進歩性欠如


サポート要件違反(特許法36条6項1号)又は実施可能要件違反(同条4項1号)
損害額及び不当利得額

3
争点に関する当事者の主張
争点

(先使用の抗弁の成否)について

(被告の主張)

被告の前代表者であるB(以下「被告前代表者」という。)は,平成11年2月又は遅くとも同年11月に木炭,アクリル系樹脂及びホウ酸を配合する防蟻用組成物の発明を完成させた。被告前代表者は同年7月頃,被告を設立し,被告は,上記発明の実施品である住宅建材用の防蟻防腐剤である被告先行製品の製造,
販売を開始した。
被告が本件優先日以前に製造,
販売していた被告先行製品は木炭,アクリル系樹脂及びホウ酸を配合する防蟻用組成物であり,本件発明と同一の構成である。被告は,被告先行製品に含有されるホウ酸の量について,販売先等に合わせて複数のパターンのものを製造,販売しており,被告先行製品のホウ酸含有量は必ずしも定まっていなかったが,被告製品は被告先行製品と同一の発明の範囲内のものである。
被告による被告製品の製造,販売は,被告が本件優先日前に行っていた被告先行製品の発明及び事業の目的の範囲内にあり,被告は本件特許権に対して先使用権(特許法79条)を有するから,被告が被告製品の製造,
販売等をする行為は本件特許権を侵害しない。

被告前代表者は,平成8年頃から,防蟻効果を有する住宅建材用の木炭塗料の開発に着手し,その過程で,ホウ酸に着目し,ホウ酸を防蟻用組成物の主成分である樹脂成分や木炭に含有させ,耐水性を持つ防蟻用塗料の製品の開発に着手した。被告前代表者は,農林水産省森林総合研究所(現独立行政法人森林総合研究所。以下,時期にかかわらず「森林総合研究所」という。)に対して被告前代表者が開発した防蟻用組成物を対象とした野外耐蟻性実験を依頼し,森林総合研究所は,平成10年9月10日から平成14年2月9日にかけて野外耐蟻性実験を行い,被告が平成11年2月に試験の結果を確認し,
また同年11月にも試験の結果を確認して,
木炭,
アクリル系樹脂及びホウ酸を配合する防蟻用組成物に係る発明が完成するに至った。上記試験の試験成績書(乙12)によれば,実験に供された供試品として「鉱石入り通気型木炭塗料塗装杭」があり,この「鉱石」がホウ酸を示している。また,被告が作成した被告先行製品の商品カタログ(甲32,乙26)や被告先行製品の冊子(甲9)添付の製品安全データシート(甲9の14枚目。以下「甲9データシート」という。)にも,被告先行製品がホウ酸を示す「天然鉱石」を含むことが記載されていた。被告は,被告先行製品にホウ酸が配合されていることを明記すると,ホウ酸が有害物質であるとの誤解から,被告先行製品も健康に問題がある製品であるという誤解を生む可能性があったため,「ホウ酸」と直接明記せず,ホウ酸はホウ酸塩鉱物に硫酸を反応させて生成することから「鉱石」などと表示したのである。


被告が,本件優先日(平成14年6月28日)より前に,木炭,アクリル系樹脂及びホウ酸を配合する防蟻用組成物の発明を完成させ,その実施品として被告先行製品を製造,販売していたことは,①被告が,平成14年頃,被告先行製品の原料となる,ホウ酸(乙28の1・2),アクリル
系樹脂であるウルトラゾールH-40(乙30),備長炭パウダー(乙32)を購入していること,②被告における,被告先行製品の製造,販売の担当者であったC氏が作成した,被告先行製品の製造記録等を記載したノート(乙33。以下「乙33ノート」という。)のうち,平成14年6月4日から同年11月2日にかけて記録された部分に,被告先行製品の原料である,アクリル系樹脂を示す「H―40」(ウルトラゾールH-40),木炭粉末を示す「炭」,ホウ酸を示す「B」(Bはホウ素の元素記号である。),「ホーサン」の記載があり,特に,平成14年6月17日にはホウ酸を使用して複数の組成の被告先行製品を製造した製造記録が記載されていること(6~9頁),③C氏が平成13年10月23日から平成15年4月5日にかけて作成したノート(乙34。以下「乙34ノート」という。)及び平成15年1月17日から同年8月15日にかけて作成したノート(乙35。以下「乙35ノート」という。)にも,アクリル系樹脂,木炭,ホウ酸を配合する組成が複数記載されていること,④平成14年6月24日製造の被告先行製品を分析した報告書(乙3。以下「乙3報告書」という。)において,ホウ酸が0.63%含有されているとの分析結果が出ていることからも明らかである。
(原告の主張)

被告が本件特許の優先日(平成14年6月28日)前に製造,販売していた被告先行製品はホウ酸を配合する組成のものではなかった。
原告が本件訴訟前に被告から受領した,被告先行製品の分析試験結果報告書(甲8。以下「甲8報告書」という。)によれば,本件優先日前に製造されたものとされる複数の試験体のうち,「ヘルスコキュアーD→平成14年6月24日製造分」名の試験体以外の試験体のホウ酸の含有量は0.002%ないし0.003%とごく微量であって,これはホウ酸が原料として配合されたものではなく,他の原料に自然に含まれて
いたものであり,被告先行製品はホウ酸を配合する組成ではなかった。甲8報告書では「平成14年6月24日製造分」名の試験体のホウ酸の含有量は0.68%であり,また,乙3報告書では「平成14年6月24日製造分」名の試験体のホウ酸の含有量は0.63%であった。甲8報告書の「平成14年6月24日製造分」名の試験体と乙3報告書の「平成14年6月24日製造分」名の試験体は同一製品であると考えられるが,この試験体が本件優先日前に製造された製品である被告先行製品であることは立証されていない。
被告が本件優先日前に製造,販売していた被告先行製品がホウ酸を配合する組成ではないことは,①甲9データシートには原料としてホウ酸の記載がないこと,②被告先行製品のカタログ(甲32)に「天然素材におけるミネラル分中の金属のみ検出」と記載されていること,③被告先行製品の冊子(甲9)中の財団法人化学物質評価研究機構作成の平成13年8月31日付け試験報告書で「ホウ素」は判定量値0.02wt%と記載されていることからも明らかである。
被告先行製品のカタログのうち甲第11号証のカタログには被告が取得した米国特許第6,995,199号(甲12の2)及び中国特許第ZL02813892.9号(甲12の3)の特許番号が付記されており,被告が米国特許を取得した平成18年2月7日以降に作成されたものであると考えられるところ,同米国特許及び中国特許,甲9データシートに被告先行製品の特徴として記載されている特許(特願2001-209762号。甲12の1)はいずれもタールを含有し,防蟻防腐効果を有する塗料に関する発明であること等からすれば,被告先行製品に配合されていたのはホウ酸ではなくタールであると考えられる。

仮に,被告が被告先行製品にホウ酸を配合していたとしても,①上記アのとおり,被告先行製品には,ごく微量しかホウ酸が含まれていないもの
もあり,ホウ酸が原料として配合されていると考えられる被告先行製品は,甲8報告書及び乙3報告書の試験体である「平成14年6月24日製造分」のみであること,②被告先行製品のカタログ(甲32)に「天然素材におけるミネラル分中の金属のみ検出」と記載されていること,③被告は,タールを配合する防蟻剤を発明していたこと等からすれば,本件優先日当時において,被告が,ホウ酸を含有させることを通常の知識を有する者が反復継続して目的とする効果を挙げる程度にまで具体的・客観的なものとして構成していたとはいえず,ホウ酸を含有させる発明として完成していたとはいえない。

また,本件明細書において,ホウ酸の含有量は防蟻用組成物中1~40質量%が好ましいとされている(段落【0045】)。仮に甲8報告書及び乙3報告書の試験体である「平成14年6月24日製造分」が本件優先日前に製造された被告先行製品であったとしても,これらのホウ酸の含有量は0.63%又は0.68%であるのに対し,現在の被告製品におけるホウ酸含有量は2.6%と4倍以上の違いがあること,また,ホウ酸以外の原料である木炭や樹脂の含有量について,上記試験体と平成20年5月に作成された被告製品の製品安全データシート(甲3)には大きな違いがあることからすれば,乙3報告書の「平成14年6月24日製造分」の製品は被告製品と同一の範囲内にあるものとはいえず,被告製品について先使用権は認められない。
(無効理由の有無)について


冒認出願
(被告の主張)
原告代表者は,以下のとおり,被告先行製品の特約販売店という立場であり,自らは発明に一切関与していないにもかかわらず,被告前代表者が提供した被告先行製品の情報等を元に,被告前代表者が開発した木炭,アクリル系樹脂及びホウ酸を配合する防蟻用組成物について本件特許の出願をした。出願人を原告代表者とする本件特許の出願は,本件発明について特許を受ける権利を有しない者による出願である。
被告は,平成11年7月15日,原告代表者が代表を務める株式会社日榮住宅建設との間で,
被告が製造する木炭塗料製品等の特約店契約
(乙
4)を締結し,平成12年6月14日には原告も上記特約店契約の当事者として加わり(乙5),原告代表者や原告は被告が製造する木炭塗料製品等の特約販売店となった。
(被告の主張)のとおり,被告前代表者は木炭,アクリル系樹
脂及びホウ酸を配合する防蟻用組成物を発明した。そして,被告は,平成13年7月,かかる発明の実施品である被告先行製品の製造,販売を開始し,同月15日,原告との間で被告先行製品の特約店契約(乙2)を締結し,原告は被告先行製品の特約販売店として,被告製品の販売を行った。
原告代表者は,被告が製造する木炭塗料等の特約販売店等として被告前代表者と交流を持つようになり,被告前代表者は原告代表者に対してホウ酸が防蟻剤として効果があることや被告先行製品の原料について情報提供を行った。
(原告の主張)
原告代表者は,自ら研究を行って本件発明をして,本件特許を出願した。
すなわち,原告代表者は,本件優先日前から炭粉末に関する特許(甲19の1,甲19の3,甲19の4)を出願するなどしており,炭の研究を行っていた。また,原告代表者は遅くとも平成4年から住宅のエコ化に関する研究を始め,
それに伴い,
ホウ酸による防蟻剤の研究も行い,
本件発明をするに至った。原告代表者が自ら研究を行い,本件発明をするに至ったことは,原告代表者が平成14年5月17日に本件発明に関する実験を行っていること(甲28),同年4月12日にD弁理士ら宛の,本件特許の出願を依頼する書面(甲29の1・2)を作成していることからも明らかである。
原告は被告との間で被告先行製品の特約店契約を締結したが,
(原告の主張)のとおり,被告前代表者は,木炭,アクリル系樹脂及びホウ酸を配合する防蟻用組成物を発明していないし,被告先行製品はホウ酸を配合する組成ではない。また,原告は被告から被告先行製品の成分を示す安全データシートすら受け取っておらず,原告が被告から知見を得て本件発明に至ったという事実はないし,被告前代表者が原告代表者に対してホウ酸が防蟻剤として効果があることを述べたこともない。イ
乙36発明に基づく新規性欠如
(被告の主張)
本件発明と乙36発明とを対比すると,両者は防蟻効果を有するホウ酸類を植物由来の炭粉末に吸着保持させた防蟻用組成物である点,防蟻用組成物の原料として,ホウ酸類と,酢酸ビニル-エチレン共重合体やアクリル酸エステルからなるポリマーエマルジョン,水溶性多糖類又はポリアミドのいずれかを含むという点,及び家屋の床下の建材等に使用されるものである点で共通しており,乙36発明は本件発明の構成要件を全て備えているから本件発明は新規性を欠く。
(原告の主張)
争う。


乙36発明,乙37発明,乙39発明及び乙40発明に基づく進歩性欠如
(被告の主張)
本件発明と乙36発明は,本件発明が防蟻用組成物を水その他の溶媒に分散させて対象となる家屋の床下の木材等に塗布又は噴霧して塗膜を形成する態様で使用されるものであるのに対し,乙36発明が防蟻用組成物をカプセル化物に包含させて,このカプセル化物を対象となる家屋の床下の土壌に散布する態様で使用される点で相違し,その他の構成は一致する。
上記相違点について,乙37公報には白蟻防除剤を吸着させた活性炭を被膜形成ポリマーに分散させ,それを木材等に塗布して使用する態様が記載され(段落【0007】),また,被膜形成ポリマーとして酢酸ビニル-エチレン共重合体やアクリル系ポリマーが採用される旨記載されていること(段落【0023】),乙39文献には高沸点アクリル系樹脂にホウ酸を混合した処理剤にて試験片に塗膜を形成する態様が記載されていること,乙第40公報には,防蟻効果を有する木炭の特性を利用した建築用塗料にナイロン樹脂(ポリアミド樹脂)を配合することが記載され(段落【0010】【0011】),また,建築用塗料であることから当然に家屋の床下等の建築建材に塗布されて塗膜を形成する態様で使用されることを想定することができること,乙36発明と先行文献(乙37公報,乙39文献及び乙40公報)に係る発明は技術分野,課題,作用,機能が共通していることから,乙37公報,乙39文献及び乙40公報に記載されている態様を乙36発明に組み合わせることは当業者が容易に想到し得る。
(原告の主張)
争う。

乙37発明,乙38発明,乙40発明及び乙41発明に基づく進歩性欠如
(被告の主張)
本件発明と乙37発明は,乙37発明にはホウ酸類が含まれない点,水溶性多糖類やポリアミド樹脂が含まれる場合がない点で本件発明と相違し,その他の構成は一致する。
上記各相違点について,乙38公報には床下害虫防除剤としてコレマナイト(ホウ酸ないしホウ酸カルシウム等を含む)が含まれることが記載され(【請求項1】),乙40公報には塗料組成物にポリアミド樹脂が配合されることが記載され(【請求項1】),乙第41公報には殺虫シートの防蟻成分としてホウ酸類に含まれる成分であるオルトホウ酸が採用されることが記載されているところ(【請求項1】),乙37発明と先行文献(乙38公報,乙40公報及び乙41公報)に係る発明は技術分野,課題,作用,機能が共通しているから,乙38公報,乙40公報及び乙41公報に記載されている構成を乙37発明に組み合わせることは当業者が容易に想到し得る。
(原告の主張)
争う。
争点

(本件訂正発明に係る無効理由の有無)について

冒認出願
(被告の主張)
上記

(被告の主張)のとおり,出願人を原告代表者とする本件特許

の出願は,本件訂正発明について特許を受ける権利を有しない者による出願である。
(原告の主張)
上記

(原告の主張)のとおり,原告代表者は本件訂正発明の発明者

であり,本件訂正発明について特許を受ける権利を有する。

乙48発明及び乙49発明に基づく進歩性欠如
(被告の主張)
本件訂正発明と乙48発明は,乙48発明に植物由来の炭粉末が含まれない点で本件訂正発明と相違するが,その余の構成は一致する。上記相違点について,乙49公報には防蟻装置において活性炭とホウ酸類を組み合わせて,建造物の基礎構造に防蟻防腐効果を付与する態様が記載されているところ(段落【0015】【0024】【0033】),乙48発明と乙49発明は技術分野,課題,作用,機能が共通しているから,乙48発明と乙49発明を組み合わせることは当業者が容易に想到し得る。また,本件訂正発明の効果は乙48発明と乙49発明が奏する効果の総和を超える格別なものとはいえない。
原告は,活性炭等を乙48発明のアクリル酸エステル系重合体水性エマルジョンに混ぜ込むと連続被膜に包まれて湿気を吸収するという効果を得られなくなると主張するが,吸湿作用が低減されるという原告の主張に根拠はなく,仮に,吸湿作用が低減されたとしても,本来の目的であるホウ酸を保持する効果が高まるのであれば,乙48発明に乙49発明の活性炭等を採用した態様を組み合わせることは十分に考えられる。
また,原告は乙40公報の記載からアクリル酸エステル系重合体水性エマルジョンに木炭粉末を混ぜ込むことや混ぜ込んだものを塗膜形成用の防蟻用組成物にすることには阻害要因が存在すると主張するが,被告は乙40発明を組み合わせて進歩性違反の無効主張をしておらず,原告の主張は失当である。
(原告の主張)
乙48発明は塗膜を形成するための組成物であり,乙49発明は建造物の防蟻装置に関する発明であり,装置本体に防蟻資材を載置することが想定されている。乙48発明と乙49発明では構成が全く異なるから,当業者にとって乙48発明に乙49発明を組み合わせることは容易に想到し得るものではない。被告は本件訂正発明には格別な効果はないと主張するが,比較実験例等(甲40)によれば,本件訂正発明が乙48発明と比較して顕著な効果を有していることは明らかである。
また,乙49公報では,活性炭等がホウ酸等を保持するためではなく,地面からの湿気を吸収するために用いられることが開示されているところ(段落【0014】【0035】【0037】),活性炭等を乙48発明のアクリル酸エステル系重合体水性エマルジョンに混ぜ込むと連続被膜に包まれて湿気を吸収するという効果を得られなくなるから,乙48発明に乙49発明を組み合わせることには阻害要因が存在する。
さらに,乙40公報ではアクリル系樹脂と木炭粉末の相性が悪いことが記載されていることから(段落【0019】【0020】),アクリル酸エステル系重合体水性エマルジョンに木炭粉末を混ぜこむことや混ぜ込んだものを塗膜形成用の防蟻用組成物にすることには阻害要因が存在する。

乙48発明及び乙36発明に基づく進歩性欠如
(被告の主張)
上記イ(被告の主張)のとおり,本件訂正発明と乙48発明は,乙48発明が植物由来の炭粉末が含まれない点で異なるが,その余の構成は一致する。
上記相違点について,乙36公報にはホウ素化合物を含む防腐防虫防蟻剤を活性炭に吸着させて防蟻防腐効果を長期に維持する態様が明記されているところ(2頁目左下欄~右下欄),乙48発明と乙36発明は技術分野,課題,作用,機能が共通しているから,乙48発明と乙36発明を組み合わせることは当業者が容易に想到し得る。また,本件訂正発明の効果は乙48発明と乙36発明が奏する効果の総和を超える格別なものとはいえない。
原告は,乙36公報には合成樹脂エマルジョンを用いると乾燥被膜形成に時間がかかるなどの欠点があると記載されており,乙36公報に接した当業者はかかる欠点を認識するから,アクリル酸エステル系重合体水性エマルジョンを必須の構成としている乙48発明と乙36発明を組み合わせようとは思わないと主張するが,乙36公報にはそのような記載はなく,被膜形成に時間がかかるのはアスファルト乳剤の混合に起因するものであり,原告の主張は失当である。
また,原告は,乙48公報にはマイクロカプセル化の欠点が明記されており,乙48公報に接した当業者はかかる欠点を認識するから,乙48発明とカプセル化を必須の構成としている乙36発明を組み合わせようとは思わないと主張するが,乙36発明はカプセル化を必須の要件とする発明ではなく,原告の主張は失当である。
また,原告は乙40公報の記載からアクリル酸エステル系重合体水性エマルジョンに木炭粉末を混ぜ込むことや混ぜ込んだものを塗膜形成用の防蟻用組成物にすることには阻害要因が存在すると主張するが,被告は乙40発明を組み合わせて進歩性違反の無効主張をしておらず,原告の主張は失当である。
(原告の主張)
乙48発明は塗膜を形成するための組成物であり,他方,乙36発明はカプセルに入れた防腐防虫防蟻薬剤を土壌に散布することを必須の構成要素とするものであり,乙48発明と乙36発明では構成が全く異なるから,当業者にとって乙48発明に乙36発明を組み合わせることは容易に想到し得るものではない。被告は本件訂正発明には格別な効果はないと主張するが,上記イ(原告の主張)のとおり,本件訂正発明が乙48発明と比較して顕著な効果を有していることは明らかである。
乙36公報には合成樹脂エマルジョンを用いると乾燥被膜形成に時間がかかるなどの欠点があると記載されており(2頁左上欄下~右上欄),乙36公報に接した当業者は合成樹脂エマルジョンの欠点を認識するから,アクリル酸エステル系重合体水性エマルジョンを必須の構成としている乙48発明と乙36発明を組み合わせようとは思わない。また,乙48公報にはマイクロカプセル化は機械的に撹拌することが必要であって手数を必要とすると記載されており(3頁左上欄),乙48公報に接した当業者はマイクロカプセル化の欠点を認識するから,乙48発明とカプセル化を必須の構成としている乙36発明を組み合わせようとは思わない。さらに,乙40公報ではアクリル系樹脂と木炭粉末の相性が悪いことが記載されていることから(段落【0019】【0020】),アクリル酸エステル系重合体水性エマルジョンに木炭粉末を混ぜこむことや混ぜ込んだものを塗膜形成用の防蟻用組成物にすることには阻害要因が存在する。

乙48発明及び乙50発明に基づく進歩性欠如
(被告の主張)
上記イ(被告の主張)のとおり,本件訂正発明と乙48発明は,乙48発明が植物由来の炭粉末が含まれない点で異なるが,その余の構成は本件訂正発明と一致する。
上記相違点について,乙50公報には,エマルジョン系樹脂で構成された塗装材に炭粉を配合して吸湿性,防虫性を付与する態様が記載されているところ(【請求項1】段落【0009】),乙48発明と乙50発明は技術分野,課題,作用,機能が共通しているから,乙48発明と乙50発明を組み合わせることは当業者が容易に想到し得る。また,本件訂正発明の効果は乙48発明と乙50発明が奏する効果の総和を超える格別なものとはいえない。
原告は,乙48公報には防蟻防虫防腐剤の濃度は大きいほど良いこと及び無機ホウ素系防蟻防虫防腐剤が水に溶けにくいことが記載されており,これを見た当業者は無機ホウ素系防蟻防虫防腐剤以外の溶質を極力減らそうと考えることになるが,乙48発明に乙50発明を組み合わせた場合,含有されるホウ酸類の濃度が大幅に減ることになってしまうから,防蟻防虫防腐剤の濃度を大きくするという乙48発明の要求と相反し,当業者は防蟻防虫防腐剤の溶解を阻害するような成分を追加しようとは思わないと主張するが,無機ホウ素系防蟻防虫防腐剤が水に溶けにくいことと無機ホウ素系防蟻防虫防腐剤以外の溶質を極力減らすことは理論的につながるものではなく,防蟻防虫防腐剤の濃度を下げることなく,それ以外の溶質を配合することは可能である。
(原告の主張)
乙50発明は,木炭に加えてグラファイトシリカ又はグラファイトシリカ及び光触媒酸化チタンを加えたことが特徴とされ,取扱い安全で環境にやさしく,分散性等に優れた塗装材を提供することを解決課題にしていること(段落【0003】【0009】【0010】),塗装材一般を対象としており,
防蟻剤として用いることは全く想定されていないこと,
他方,
乙48発明には木炭や乙50公報で開示されているその他の原料の特性を生かすという思想はないことからすれば,乙48発明と乙50発明を組み合わせる動機付けは存在しない。また,被告は本件訂正発明には格別な効果はないと主張するが,上記イ(原告の主張)のとおり,本件訂正発明が乙48発明と比較して顕著な効果を有していることは明らかである。乙48公報には防蟻防虫防腐剤の濃度は大きいほど良いこと及び無機ホウ素系防蟻防虫防腐剤が水に溶けにくいことが明記されており(5頁左上欄~右上欄),これを見た当業者は無機ホウ素系防蟻防虫防腐剤以外の溶質を極力減らそうと考えることになるが,他方,乙48発明に乙50発明を組み合わせた場合,含有されるホウ酸類の濃度が大幅に減ることになってしまうから,防蟻防虫防腐剤の濃度を大きくするという乙48発明の要求と相反し,また,当業者は,防蟻防虫防腐剤の溶解を阻害するような成分の追加しようとは思わないから,乙48発明に乙50発明を組み合わせることには阻害要因が存在する。

サポート要件違反又は実施可能要件違反
(被告の主張)
本件訂正発明の構成要件Fについて,本件明細書では実施例1~22が示されているが,ホウ酸又はホウ酸ナトリウムの配合量は15質量%と20質量%の2点しか開示されておらず,本件訂正発明の構成要件Fで規定した数値の全範囲は網羅されておらず,発明の詳細な説明の内容が本件発明の課題を解決し目的を達成できるとはいえない。また,本件訂正発明のホウ酸類の含有量を下限近く,あるいは上限近くに設定した場合に,ホウ酸類の保持効果や防蟻力がどのような変化を示すのか,実施例及び比較例の数値からでは予測することが困難であり,本件特許の課題である,長期的に防蟻効果を発揮するための防蟻用組成物を得るために,当業者は過度の試行錯誤をせざるを得ない。さらに,本件明細書における製造方法の記載は,被膜形成性ポリマーエマルジョン,水溶性多糖類等を区別することなく一括りで記載しており,具体的な撹拌時の温度等についても何ら言及がなされておらず,防蟻用組成物の製造方法が具体的に記載されていない。したがって,本件訂正発明はサポート要件又は実施可能要件に違反している。
(原告の主張)
本件訂正発明の構成要件Fは,本件明細書の段落【0045】に対応しており,当業者は,「ホウ酸類の含有量」が「防蟻用組成物中1~40質量%」である場合に本件訂正発明の課題を解決できることを,発明の詳細な説明の記載によって理解できる。そして,本件訂正発明は,塗膜形成用の防蟻用組成物において,炭粉末,被膜形成性ポリマーエマルジョン及びホウ酸を配合することによって,水への溶脱を顕著に防止し,雨水等に晒されても長期に防蟻効果を発揮できることを特徴としており,ホウ酸類の濃度の数値限定は,望ましい数値範囲を示したものにすぎないから,そもそも具体的な測定結果をもって裏付けられている必要はなく,数値範囲について網羅的に実験を行い,その結果を実施例として明細書に記載する必要はない。また,本件訂正発明の範囲内にあるホウ酸類の含有量を有する防蟻用組成物を製造等することに何らの困難性はなく,当業者が本件訂正発明を容易に実施できることは明らかであって,本件明細書では具体的な製造方法も開示している。したがって,本件訂正発明はサポート要件又は実施可能要件に違反していない。
損害額及び不当利得額

不法行為に基づく損害賠償請求について
原告は,被告による平成24年6月18日から平成28年10月10日までの被告製品の生産等による本件特許権侵害行為につき,不法行為に基づく損害賠償金の支払を求めるところ,同期間における被告製品の販売による売上額が1億7245万2731円であること,被告製品の利益率が68.1%であることは当事者間に争いがない。
(原告の主張)
被告が被告製品を販売したことにより得た利益は1億1744万0310円であり,同額が原告の受けた損害であると推定される(特許法102条2項)。また,本件訴訟と因果関係のある弁護士費用相当額は1174万4031円を下らない。
推定覆滅事由に関する被告の主張は否認ないし争う。①被告は,被告製品にホウ酸を使用していることをアピールしていること,②防蟻剤の成分を変更したことによる影響は相当期間が経過しないと発生しないため,被告製品の組成を変更しても売上げが減少せず,クレーム等がないという被告の主張は失当であること,③防蟻剤製品において白蟻発生時に保険が適用されることは一般的なものであることからすれば,被告の主張する推定覆滅事由はいずれも理由がない。
(被告の主張)
損害額に関する原告の主張は争う。
また,
①本件特許の特徴は防蟻用組成物にホウ酸を配合する点にあるが,被告は被告製品にホウ酸を使用していることをアピールしていないこと,②被告は平成28年10月11日以降,被告製品にホウ酸を配合することを中止しているが,その後も売上げは減少しておらず,購入者から被告製品の使用感や効果について意見やクレームを受けていないこと,③被告製品は,人体に有害な成分を排除し,自然素材由来の安全性を持つ商品であり,また,白蟻発生時には保険が適用される商品であり,これらの点を積極的にアピールしたことが販売に大きく寄与していることからすれば,本件発明の被告製品の売上に対する寄与は多くとも20%であり,被告の利益のうち80%については特許法102条2項による推定が覆滅される。イ
不当利得返還請求について
原告は,被告による平成20年8月29日から平成24年6月17日までの被告製品の生産等による本件特許権侵害行為につき,不当利得に基づく本件特許実施料相当額の利得金の支払を求めるところ,同期間における被告製品の売上額が2億2209万4610円であることは当事者間に争いはない。
(原告の主張)
本件発明は塗膜形成用の防蟻用組成物全体に関する発明であること,被告製品の利益率は68.1%と高額であること,原告と原告代表者との実施許諾契約における実施料は5%とされていたこと等を踏まえると,本件特許の実施料率は5%を下らない。
(被告の主張)
原告の主張は争う。本件特許の実施料率は高くとも2%である。
第3
1
当裁判所の判断
本件発明の技術的意義
本件明細書(甲2)の発明の詳細な説明欄には,以下の記載がある。ア
発明の属する技術分野
・「本発明はホウ酸系防蟻用組成物に関する。さらに詳しくは,白蟻の予防もしくは駆除効果に優れ,その効力の持続性に優れ,しかも,木材腐食性にも優れたホウ酸系防蟻用組成物に関する。」(段落【0001】)

従来の技術
・「このように,最近,木造家屋や他の建物,構築物等における木材を加害する白蟻に対し,その予防もしくは駆除対策(防除対策)が高まりつつある中で,安全性の高い,効力の強い防蟻用組成物の開発が望まれている。」(段落【0005】)
・「毒性が低く安全である薬剤としてホウ酸またはその塩(以下,ホウ酸類ともいう。)があるが,安定に配合できる濃度が低く高い効力が得られない上に,これらを配合する防蟻用組成物は水に容易に溶け,例えば長時間雨等にさらされるとホウ酸類が流出してしまい,効力がなくなってしまうという欠点がある。日本では,ホウ酸類は処理木材から溶脱する危険性があるため,木材保存剤として現在認められていない。」(段落【0006】)
・「また,従来の防蟻用組成物は,白蟻以外を原因とする木材の腐食からの防御という点では必ずしも充分に配慮されたものではない。」(段落【0007】)


発明が解決しようとする課題
・「本発明は上記事情に鑑みてなされたもので,その目的は,安全性の高いホウ酸類を配合する防蟻用組成物の上記欠点を改善して,防蟻効果に優れ,しかもその効果が長期にわたって持続し,さらに木材の菌等蟻以外による腐食耐久性にも優れたホウ酸類配合の防蟻用組成物を提供することにある。」(段落【0008】)

課題を解決するための手段
・「すなわち,本発明は,植物由来の炭粉末と,被膜形成性ポリマーエマルジョン,水溶性多糖類及びポリアミド樹脂からなる群から選ばれた1種又は2種以上と,ホウ酸類とを含有することを特徴とする防蟻用組成物である。」(段落【0010】)
・「本発明においては,植物由来の炭粉末を主成分とした被膜形成性ポリマー,水溶性多糖類及びポリアミド樹脂含有組成物がホウ酸類を保持して木材等の表面に塗膜を形成する。そして,本発明防蟻用組成物の実使用下においては,該塗膜が白蟻の木材への侵入を防ぐとともに,白蟻は塗膜中の食毒性防蟻剤であるホウ酸類を食べ,木材等を食害する前に死んでしまう。したがって,木材等を食害されることがなく防蟻効果が有効に発揮される。」(段落【0014】)
・「前記塗膜は,木材上において炭粉末及び各種ポリマーの相乗的機能によって,例えば,ホウ酸類を強固に吸着保持し,さらに,木材等の塗布対象物への優れた付着性を発揮し,優れた撥水性と接着性により木材から流出されることなく,長期にわたってホウ酸類の防蟻効果を持続させることができる。」(段落【0015】)
・「また,前記塗膜の優れた耐水性により木材への水の侵入を阻止し,塗膜の防菌性,通気性とあいまって木材は長期に渡って腐食することがない。」(段落【0016】)


発明の実施の形態
・「次に,本発明に配合されるホウ酸類は,前記のとおりホウ酸又はホウ酸塩であり,防蟻効果のある水溶性のものであれば特に限定されない。ホウ酸塩としては,ホウ酸アルカリ金属塩,特にホウ酸ナトリウムが好ましい。
ホウ酸類の含有量は防蟻用組成物中1~40質量%が好ましく,
さらに好ましくは3~30質量%である。」(段落【0045】)・「防蟻用組成物の形態としては,炭粉末,被膜形成性ポリマー等が水その他の溶媒に分散された水分散系である。また,本発明の防蟻用組成物はエアゾールの原液として使用され,噴霧タイプの使用形態が可能である。したがって,本発明の防蟻用組成物を使用するに当たっては,一般に塗布または噴霧される。例えば,木材面に塗布し(噴霧,刷毛塗り,ローラー塗り等による),次いで自然条件下で乾燥することにより,所望の防蟻効力を有する塗膜状の防蟻用組成物が木材上に形成される。」(段落【0055】)

実施例
・「(実施例1~5)表2に示す処方の防蟻用組成物を以下の方法で調製した。A容器にアクリル系ポリマーエマルジョン,酢酸ビニル系ポリマーエマルジョン,でんぷん,メチルセルロース,ポリアミド樹脂のいずれかと,界面活性剤と,エタノールと,酸化亜鉛と,多孔質シリカとを混入して撹拌し,静置した(A容器)。また,B容器にホウ酸ナトリウム,ソルビット,水を混入して撹拌し,静置した(B容器)。翌日前記A容器に木炭粉末を静かに入れ,
ゆっくりと木炭粉末を沈殿させておき,
すべて沈殿した後撹拌した。次いで,A容器とB容器とを混ぜ,さらにヒノキチオールを入れ,よく撹拌した。」(段落【0075】)
・「表3から明らかなように,木炭粉末と,アクリル系ポリマーエマルジョン,酢酸ビニル系ポリマーエマルジョン,でんぷん,メチルセルロースまたはポリアミド樹脂とを配合する実施例1~5のホウ酸系防蟻用組成物は,いずれも優れた防蟻効果を発揮し,その持続性も優れていることが分かる。」(段落【0081】)
・「表4から分かるように,木炭粉末と,アクリル系ポリマーエマルジョン,酢酸ビニル系ポリマーエマルジョン,でんぷん,メチルセルロースまたはポリアミド樹脂とを配合する実施例1~5のホウ酸系防蟻用組成物は,いずれも炭粉末を含有しているにも係わらず剥がれ落ちることがなく,優れた付着性を示した。」(段落【0084】)
・「表5から明らかなように,木炭粉末と,アクリル系ポリマーエマルジョン,酢酸ビニル系ポリマーエマルジョン,でんぷん,メチルセルロースまたはポリアミド樹脂とを配合する実施例1~5のホウ酸系防蟻用組成物は,いずれも優れた木材腐食耐久効果を発揮することが分かる。」(段落【0086】)

発明の効果
・「以上,詳述したように本発明によれば,安全性の高いホウ酸類を植物由来の炭粉末と被膜形成性ポリマーエマルジョン,水溶性多糖類及びポリアミド樹脂からなる群から選ばれた1種又は2種以上とともに配合して防蟻用組成物を調製したので,従来ホウ酸類配合の防蟻用組成物有していた欠点を改善して,白蟻の予防もしくは駆除効果に優れ,しかもその効果が長期にわたって持続し,さらに蟻以外の菌等に対しても耐久性に優れた,安全な防蟻用組成物が得られる。」(段落【0126】)また,本件特許の審査過程において,原告代表者が特許庁に提出した意見
書(甲40)には,以下の記載がある。
・「(8)本出願人は,下記の実験において本願発明の防蟻用組成物の防蟻効果が,引用文献に記載の発明のものに比べて優れていることを明らかにしています。〔実験〕当初明細書の実施例1,3及び5(下記表1)において,「ホウ酸ナトリウム」の配合を削除した防蟻用組成物(比較実験例A1,A3及びA5)(下記表2),同じく当初明細書の実施例1,3及び5において,「木炭粉末」の配合を削除した防蟻用組成物(比較実験例B1,B3及びB5)(下記表3)を当初明細書記載の方法と同様の方法で製造し,これらについて,当初明細書記載の評価方法にしたがって,シロアリの「死中率」,試験体の「質量減少率」を評価しました。その評価結果を,当初明細書の実施例1,3及び5,並びに無処理試験体の結果と共に下記表4に示しました。なお,「死中率」は高い程,また「質量減少率」は低い程,効果があります。」
・「当初明細書に記載のとおり,表4中,実施例及び各比較実験例の,上段は耐候操作ありの場合,また下段は耐候操作なしの場合のデータを示します。なお,耐候操作は,本願明細書中に記載があるように,試料処理木材片を水に浸せきした後,底部に水をはったデシケータ中に入れて恒温室に放置する「湿潤操作」と,その処理木材片を熱風恒温器中に放置する「揮散操作」を繰り返す操作で,雨にさらされる自然環境下での使用状態を想定した試験操作です。また,無処理試験体(再)は,この意見書作成にあたって,比較実験例の各データをとる際に,同時に行った結果です。無処理試験体(再)は無処理試験体とは差がないデータが得られています。このことから,本試験法には再現性があり,表4の比較実験例の各データは出願時の実施例のデータと比較して議論しても問題ないことが分かります。なお,無処理試験体は耐候操作なしの場合のデータです。」
・「(9)表4から明らかなように,ホウ酸ナトリウムの配合がない比較実験例A1,A3及びA5の防蟻用組成物は,いずれも,耐候操作をしない場合でも,前記操作をした場合でも,死中率は低く,試験体の質量減少率は高く,防蟻効果はありません。また,木炭粉末の配合がない比較実験例B1,B3及びB5の防蟻用組成物は,耐候操作をしない場合は死中率は高く,試験体の質量の減少率は低く防蟻効果を発揮するものの,耐候操作を行って試験をしたものは,死中率は低く,試験体の質量の減少率は高くなり,防蟻効果はなくなってしまいます。これらに対して,木炭粉末とホウ酸ナトリウムとを混合した実施例1,3及び5の防蟻用組成物は,耐候操作の有無にかかわらず優れた防蟻効果を発揮し,これらの効果は,木炭粉末及びホウ酸ナトリウムそれぞれ単独配合する場合の効果に比べて,単に相加的に防蟻効果を向上させるレベルではなく,相乗的な格別優れた防蟻効果を発揮します。」
・「(10)具体的には,例えば,耐候操作を行った場合の試験において,死中率(平均)において,比較実験例A1の防蟻用組成物が18.8%,比較実験例B1の防蟻用組成物が22.8%であるのに対して,実施例1の防蟻用組成物は100%であり,同じく比較実験例A3が20.4%,比較実験例B3が24.4%であるのに対して,実施例3は100%であり,さらに,比較実験例A5が17.6%,比較実験例B5が22.0%であるのに対して,実施例5は100%であり,実施例の防蟻用組成物に明らかな効果がみられます。また,質量減少率(平均)において,比較実験例A1の防蟻用組成物が30.4%,比較実験例B1の防蟻用組成物が22.4%であるのに対して,実施例1の防蟻用組成物は0.4%であり,同じく比較実験例A3が29.2%,比較実験例B3が26.0%であるのに対して,実施例3は0.4%であり,さらに,比較実験例A5が30.0%,比較実験例B5が23.6%であるのに対して,実施例5は0.3%であり,これらにおいても実施例の防蟻用組成物に明らかな効果がみられます。なお,比較実験例A5の防蟻用組成物は引用文献1(判決注:乙40公報である。)に記載の発明の防蟻用組成物に,比較実験例A1の防蟻用組成物は引用文献2(判決注:乙50公報である。)に記載の発明の防蟻用組成物に,また,比較実験例B1の防蟻用組成物は引用文献3,4に記載の発明の防蟻用組成物に該当しています。防蟻剤の主たる用途である建築用途を考えた場合,耐候操作を行った場合に効果を発揮することが特に重要であり,耐候操作を行った条件で顕著な相乗的な効果を発揮する本発明の木炭粉末とホウ酸ナトリウムを配合する防蟻用組成物は,引用文献1~4に記載の発明に比べて格別優れた効果を有する発明であることが明らかです。」
本件発明の意義及び作用効果
ホウ酸系防蟻用組成物
に関するものである。木造家屋や他の建物,構築物等に使用する防蟻用組成物の薬剤として,毒性が低く安全なホウ酸類があるが,ホウ酸類は,安定に配合できる濃度が低く高い効力が得られない上に,これを配合する防蟻用組成物は水に容易に溶け,例えば長時間雨等にさらされるとホウ酸類が流出してしまい,効力がなくなってしまうという欠点があった。本件発明は,炭粉末と,被膜形成性ポリーマーエマルジョン,水溶性多糖類及びポリアミド樹脂からなる群から選ばれた1種また2種以上と,ホウ酸類とを含有することで,上記の欠点を改善して,白蟻の予防や駆除効果に優れ,しかもその効果が長期にわたって持続し,さらに蟻以外の菌等に対しても耐久性に優れた,安全な防蟻効果を得られるとの作用効果を奏するものである。
さらに,上記

の意見書(甲40)の記載によれば,本件発明は,ホウ酸

類と被膜形成性ポリマーエマルジョンのみを配合するもの(従来発明(乙48発明)の配合)と比べて,耐候処理をした場合における死中率と質量減少率に大きな差があり,炭粉末を配合しないものと比べて耐水性が向上している。
なお,乙48公報には,ホウ酸がアクリル製エステル系重合体の連続被膜に包まれることにより,水に溶けにくくなるとの指摘があるにすぎず,耐水実験はしていない(3頁右下欄)。
2
(先使用の抗弁の成否)について
前提事実に加えて,後掲各証拠及び弁論の趣旨によれば,次の事実が認められる。

森林総合研究所は,平成10年9月10日から平成14年2月9日までの期間,被告の依頼に基づき,被告が提供した複数の塗装杭等の野外耐蟻性試験を実施した。同試験では,それらの杭等をシロアリの生息が確認されている場所に設置し,年に2回シロアリの被害の程度を確認した。試験がされた杭等は,「液状活性触媒炭塗料製品塗装杭(商品名:ヘルスコ・キュアー,特殊加工木炭+鉱石入り通気型木炭塗料)」,「製品組成対照材1(特殊加工木炭塗料塗装杭)」,「製品組成対照材2(鉱石入り通気型木炭塗料塗装杭)」,「無処理対照材(スギ辺材杭)」,「餌木(アカマツ辺材)」であった。その試験の結果,「液状活性触媒炭塗料製品塗装杭(商品名:ヘルスコ・キュアー,特殊加工木炭+鉱石入り通気型木炭塗料)」は,耐用年数が3年5月以上であるとされ,対照材に比べ耐蟻性効果があるとされた。(乙12)


被告は,従前,
「ヘルスコート」との名称の商品を販売していたところ,
平成13年7月,防蟻,防腐剤の新製品を開発したとして,新たに「ヘルスコ・キュアー」という名称の被告先行製品の販売を開始し(乙1,19,22),同月15日には原告との間で被告先行製品の特約店契約を締結した(乙2)。


被告は,平成13年7月10日,発明者を被告前代表者とし,発明の名称を「タール水溶液及びタール含有塗料」とする特許出願(特願2001-209762)を行い,平成14年7月8日には,同出願に基づき,特許協力条約に基づく国際特許出願(PCT/JP02/06897)を行った(甲12の1)。被告は,平成17年12月28日に対応中国出願について,中国特許第ZL02813892.9号を取得し(甲12の3),平成18年2月7日に対応米国出願について,米国特許6,995,199号を取得した(甲12の2)。
平成14年7月8日に行った上記国際特許出願の願書に添付された明細書には,同発明の第1の目的はタールを液体中に安定した状態で溶解させた水溶液を提供することであり,第2の目的は塗布したタールを完全に乾燥させることができるようにした防腐・防蟻機能を有する塗料を提供することであるとされ,第1の目的の達成のためにされた発明は,タールとNaOH溶解液とを所要量混入して溶解させたタール水溶液であり,第2の目的のためにされた発明は,樹脂を主成分とし木炭粉末を含有している水溶性の塗料に,タールとNaOH溶解液とを混入して溶解したタール水溶液を混入させたタール含有塗料であるとされる。特許請求の範囲の記載及び明細書には,タール,NaOHを含むタール水溶液,木炭粉末,樹脂,沸石を含むタール含有塗料が記載されているが,ホウ酸に関する記載は一切ない(甲12の1)。

被告先行製品のカタログ(甲32,乙26)には,1枚目下段に「特許出願中」との記載があった。
もっとも,被告はその後,同趣旨の内容のカタログを制作し,そのカタログ(甲11)では,上記の「特許出願中」との記載が「アメリカ・中国にて特許取得!アメリカ特許証

US6,995,199B2

中国特許

ZL02813892.9」との記載に変更された。
被告の製品について,甲第11号証及び乙第26号証のカタログには
「木質系の天然素材と微粉末木質炭素,天然鉱石を配合して開発された独自の防蟻防腐材です。」と説明され,甲第32号証のカタログには「常温硬化型・低臭・水性の忌避材を加えて,更にブレンドした微粉末木炭と天然鉱石を絶妙のバランスで配合して開発された独自の防蟻防腐材です。」と説明されている。
また,
甲第11号証及び甲第32号証のカタログには,
72種類の金属成分を化学物質評価研究所で測定したところ,「天然素材におけるミネラル分中の金属のみ検出」され,「無害性の証明」がされたとの記載がある。これらのカタログに被告先行製品がホウ酸を含んでいることの記載はない。

財団法人化学物質評価研究機構は,被告から依頼を受け,平成13年8月9日から同月30日までの期間,被告先行製品に含有される金属成分の定性及び定量等について試験を行った。そのホウ素の半定量値は0.02wt%であった(甲9)。


被告は,平成15年2月,被告が「ヘルスコ・キュアー」として製造販売する製品の冊子を作成又は発行した
(甲9。「甲9冊子」
以下
という。。

甲9冊子には,被告先行製品の製品安全データシートである甲9データシート,被告が作成した説明文書,上記アの森林総合研究所による試験成績書,上記オの財団法人化学物質評価研究機構の試験報告書等が含まれていた。
甲9データシートには,被告先行製品の成分は「合成アクリルエマルジョン

19%」,「水

「木質系忌避剤

35%」,「高機能微粉末混合木炭

4%」,「天然鉱石

20%」,「その他

21.8%」
0.2%」

との記載があった。甲9データシートに記載された被告先行製品の成分は上記のとおりであり,ホウ酸についての記述はない。
甲9冊子中の製品の説明文書には,
当該製品について,
「新特許出願
(特
願2001-209762号)の本製品の特長は,浄化した木質系忌避剤の水溶化の開発に成功したことにより,自然素材の中で防蟻防腐効果,害虫忌避効果が最高と言われる木質系忌避剤を,水溶性自然硬化型バインダー剤として,通気性のある上記樹脂とブレンドできたことです。」,「天然鉱石を木炭粉の中に混合することで,その天然鉱石が木炭の持つイオン特性を強力に引き出す効果があり,イオンの作用で白蟻の生態機能を狂わせ,弱らせることになると考えられます。」との記載がある。その説明文書にもホウ酸についての記載はない。

被告は,平成21年10月頃,原告に対し,被告先行製品に含まれるホウ酸量の分析結果が以下のとおりであると知らせた(甲8報告書)。甲8報告書は基本的に以下の分析結果のみを記載したものである。
「ヘルスコキュアーA→平成14年1月22日製造分

0.003%

ヘルスコキュアーB→平成14年2月13日製造分

0.002%

ヘルスコキュアーC→平成14年3月27日製造分

0.002%

ヘルスコキュアーD→平成14年6月24日製造分

0.68%

ヘルスコキュアーE→平成14年9月11日製造分

0.11%」

また,株式会社住化分析センターは,平成21年11月,被告の依頼に基づき,「平成14年6月24日製造分ヘルスコキュアー抜取サンプル」名の試験体を分析した。その分析によると,同試験体のホウ酸の含有量は0.63%であり,樹脂の含有量は,8.1~8.2%であり,木炭の含有量は8.1%であった(乙3報告書)。

被告は,被告先行製品の製造記録等を記載したノートであるとして,乙33ノートを提出する。乙33ノートは,平成14年6月より前から同年11月2日までの期間に作成されたものであり,多数の原料の組成,計算式,機器の略図,立方体の図等の書き込み,ノート作成者であるC氏が参加した営業会議や商品説明会等に関するメモ書き,その他,営業や製造に関するメモ書きなどの記載があり,C氏が業務の備忘録として日ごとに記入したと思われるノートである。そして,乙33ノートの平成14年6月17日の日付けが記載された後の部分には,「加湿器」などとの記載がある機器の略図や立方体の図,計算式などの記載をはさんで,木炭,アクリル系樹脂及びホウ酸について,合計7パターンの組成の記載があり(6頁~9頁),そこに記載された各原料の配合量から配合割合を算定すると以下のとおりとなる。また,各パターンの組成の横に記載された原料の重量によれば,各パターンは,被告先行製品の1缶(16kg)から105缶となり,同日の配合量は合計で153缶程度となる。被告は,平成14年当時,被告先行製品を年間1300缶程度,製造,販売していた。木炭

アクリル系樹脂

ホウ酸

8.92%
8.66%
8.76%
8.93%
8.90%
9.33%
8.11%

13.54%
19.05%
18.98%
19.31%
19.29%
19.29%
19.33%

4.76%
2.77%
4.67%
4.76%
4.73%
2.99%
0%

検討

被告先行製品のカタログ及び甲9データシートには,いずれも被告先行製品にホウ酸が配合されていることを示す記述は一切なく,かえって,被告先行製品のカタログには,被告先行製品は天然鉱石を含むがその他の金属成分を含まないことが記載されている(

エ,カ)。また,森林総

合研究所における試験片に塗装されたという被告先行製品について,鉱石が含まれることは記載されているがホウ酸が含まれるとの記載はなかった(上記

ア)。さらに,被告は被告先行製品のカタログで,被告先行製

品は特許出願中であると記載したり,特許を取得したと記載したりしたところ,その特許に係る発明はホウ酸を含むものではなかった(上記
ウ,

エ)。また,その後の被告の製品のカタログや説明文書における記載も上記と同様のものであった(上記

エ,カ)。

これらからすると,被告先行製品にホウ酸が配合されていたことを直ちには認め難い。
これに対し,被告は,顧客に健康に問題がある製品であるというイメージを持たれないように配慮し,「ホウ酸」と直接明記することはせず,ホウ酸はホウ酸塩鉱物に硫酸を反応させて生成することから,「鉱石」と明記したと主張する。しかしながら,技術常識に照らしてもホウ酸を「鉱石」と表記することは不合理であり,また,被告が上記の意図で上記の記載をしたことを認めるに足りる証拠もない。安全データシートは,有害性のおそれがある化学物質を含む製品を他の事業者に譲渡又は提供する際に,対象化学物質などの性状や取扱いに関する情報を提供するための文書であり,その記載には正確性が求められるものと考えられることからも被告の主張はにわかに措信し難い。

甲8報告書及び乙3報告書には,「平成14年6月24日製造分」の試験体のホウ酸の含有量が0.63%又は0.68%であるとの記載がある(

)。しかし,これらの試験体が,平成14年6月24日に製造

された被告先行製品であることを認めるに足りる証拠はない。したがって,上記の割合のホウ酸を含有する製品が本件優先日前に製造されたとは認めることはできない。
また,仮に甲8報告書の各試験体がそこに記載の日に製造されたとしても,甲8報告書によれば,本件優先日前に製造された被告先行製品は,いずれも分析結果の内容から「平成24年6月24日製造分」を除いてごく微量のホウ素が検出されたといえるのみでホウ酸が配合されているとはいえず,これに「平成24年6月24日製造分」の試験体とは異なる組成を示す甲9データシートや財団法人化学物質評価研究機構による試験結果を併せて考えると,「平成24年6月24日製造分」の被告先行製品にホウ酸が含まれていたとしても,ホウ酸が配合される発明が完成していたとはいえない。
この点について,被告は,被告先行製品に含有されるホウ酸の量について,販売先等に合わせて複数のパターンのものを製造,販売しており,ホウ酸含有量は必ずしも定まっていなかったと主張するが,その具体的な事実関係は全く明らかでないし,継続的に顧客に販売するための製品でありながら,ホウ酸含有量が定まっていなかったということ自体にわかに措信し難い。

被告はホウ酸が配合された被告先行製品を製造,販売したと主張し,被告が提出する乙33ノートには平成14年6月17日の記載の後に木炭,アクリル系樹脂及びホウ酸を配合する組成に関する記載がある(
ク)。
しかし,乙33ノートには備忘録的なメモ等の記載もあり,また,上記箇所に成分とその配合が書かれた数字の記載はあるが,それが現実に製造されたことをうかがわせる記載や製造された製品の販売先等の製造記録であれば記載されていてもおかしくない事項の記載も何もなく,記載内容自体も不明確である。また,仮に同記載を製造の記録とすると,同一日に年間生産量の1割以上にも上る多量の製品を7つの組成で次々と製造した理由も明らかでない。更に,乙33ノートには,平成14年6月24日の前後の記載はあるが甲8報告書や乙3報告書の試験体が製造されたという同月24日の記録はない。乙33ノートにされた上記記載がそこに記載された製品を被告が製造したという製造記録であると認めることはできず,乙33ノートによって,被告が,ホウ酸が配合された被告先行製品を製造,販売したと認めることはできない。
なお,被告は,被告先行製品の製造記録等を記載したノートであるとして乙34ノート(ただし,作成期間は平成13年10月23日から本件優先日より後の日である平成15年4月5日)を,また,本件優先日より後の被告の製品の製造記録等を記載したノートであるとして乙35ノート(作成期間は平成15年1月17日から同年8月15日)を提出する。乙34ノートは表紙に「試験」,乙35ノートは表紙に「実験」と記載され,いずれも,多数の原料の組成,計算式,立方体の図などの書き込みがあり,ノート作成者であるC氏が実施した試験等に関する備忘録として日ごとに記入したと思われるノートである。そして,乙34ノート及び乙35ノートにも,木炭,アクリル系樹脂及びホウ酸を配合する組成に関する記載があるものの,乙33ノートと同じく,製造記録であれば記載されていておかしくない事項も何ら記載されておらず,記載内容も不明確である(乙34,35)。これらは,製造記録として信憑性に乏しい上,被告が上記組成のとおりに被告先行製品を製造,販売したことを示す記載もうかがわれず,被告が,ホウ酸が配合された被告先行製品を製造,販売したとは認められない。

被告は,本件優先日前に,ホウ酸(乙28の1・2),ウルトラゾールH-40(乙30),備長炭パウダー(乙32)を購入したと認められる。しかし,これらの原料が被告先行製品の製造に使用されたことの立証はなく,これによって,被告が,ホウ酸が配合された被告先行製品を製造,販売したことを認めるに足りない。


上記

ウ,エのとおり,被告は,平成13年7月10日,被告前代表者

を発明者として防腐防蟻効果の高いタール含有塗料に関する特許出願を行い,被告先行製品のカタログ(甲32,乙26)に「特許出願中」と記載した上,特許を取得するや,カタログにその旨記載している(甲11)。このように被告及び被告前代表者は,特許出願について十分な知識と経験を有し,かつ,積極的に特許出願をする考えを持っていたことがうかがわれる。したがって,上記タール含有塗料に関する特許出願より前に,木炭,アクリル系樹脂及びホウ酸を配合する防蟻用組成物を発明していたのであれば,かかる発明についても特許出願を行うものと考えられるところ,被告はかかる発明について特許出願していないのであり,被告は木炭,アクリル系樹脂及びホウ酸を配合する防蟻用組成物を発明するに至っていなかったと考えるのが自然である。
小活
以上を総合すると,
被告先行製品にホウ酸が配合されていたとは認められ
ず,被告前代表者が,本件優先日前に,木炭,アクリル系樹脂及びホウ酸から構成された防蟻用組成物を発明したことや,
その実施品として被告先行製
品が製造,販売されたことを認めることはできず,先使用の抗弁に関する被告の主張はいずれも採用することができない。
3
(冒認出願)について
前提事実に加えて,後掲各証拠及び弁論の趣旨によれば,次の事実が認められる。

原告代表者は,株式会社日榮住宅建設の代表者として住宅建設の事業を営んでいた(甲20)。


原告代表者は,平成11年9月20日,D弁理士らを代理人として,発明の名称を「健康畳」とする発明についての特許出願(特願平11-264817号)を行った(甲19の1)。この特許請求の範囲の請求項1は「木炭粉末を接着剤により固定したシート素材。」というものであった。

原告代表者は,平成14年3月18日,D弁理士らを代理人として,発明の名称を「炭塗料」とする発明についての特許出願(特願2002-74560号)を行った(甲19の4)。この特許請求の範囲の請求項1は「植物由来の炭粉末,ポリマーエマルジョン,セルロース系水溶性ポリマー及び有機溶剤を含有することを特徴とする炭塗料。」というものであった。


原告代表者は,平成14年8月6日,D弁理士らを代理人として,発明の名称を「エアゾール組成物」とする特許出願(特願2002-228172。優先日平成13年8月7日)を行った(甲19の3)。この特許請求の範囲の請求項1は「植物由来の炭粉末,ポリマーエマルション及び有機溶剤を含有する原液と,噴射剤とを含有することを特徴とするエアゾール組成物。」というものであった。


原告が,遅くとも平成14年頃から製造,販売する「炭の力」名の製品は,原告代表者が開発し,原告が販売していた「炭の華」名の製品の補修用の製品である(甲22,23)。

原告代表者は,平成14年4月12日,「『炭の力(防蟻専用)』開発の経緯について」と題するD弁理士ら宛の書面を作成した。この書面には以下の記載がある(甲29の1・2)。D弁理士は本件特許出願を行った代理人である(甲2)。

「【現状】


(社)日本しろあり対策協会が2001年4月よりクロルピリホスの製造・使用を段階的に中止した。



しかしいまだに農薬系の薬剤を主成分とした防蟻剤が出回ってお

り,シックハウス症候群などの原因となっている。


現在,防蟻専門の炭塗料が他社から数種類発売されているが,白蟻暴露試験で限界があることが証明されている。また,炭塗料にタールを混合させているものもあるが,タールには発ガン性があり,住宅用建材としては大きな問題がある。

【対策】


防蟻専門木炭塗料として当社製品「炭の力」に「ホウ酸」を混合
した。

【ホウ酸】


「ホウ酸」は既に欧米では一般的な防蟻剤の主成分として利用さ
れている。

・「ホウ酸」は創傷の洗浄,うがい薬,洗眼などで利用されていて,人体に極めてやさしい。
・OH基をもつ有機溶媒によく溶ける。
(エタノール:C2H5OH)


難燃性・抗菌性・防ばい性(非揮散性)を有する。

【炭の力(防蟻専用)】


「ホウ酸」は水溶性が高く,水に直接触れると溶け出してしまう
ので,そのままを防蟻剤として利用すると雨や雪によって流れ出してしまう。


木炭塗料「炭の力」に混合させることで,「炭の力」のバインダ
ー剤が乾燥した木炭塗料の中に結晶化した「ホウ酸」を固めてしまうので,水に触れても溶け出すことがない。



木炭塗料の効能と「ホウ酸」の効能の相乗効果により,身体や環
境にやさしい防蟻剤として有用である。

【当社実験結果】


木炭塗料「炭の力」に「ホウ酸」約5%を混合させたものを木材
に塗布し,一カ月間の白蟻暴露試験を行った。対照として用意した木材(何も塗布していないもの)には食害が認められたが,木炭塗料を塗布した木材には全く食害が認められなかった。」

検討
原告は被告先行製品の特約版売店として,被告先行製品の組成等について知り得る立場にいた。しかし上記2のとおり,被告前代表者が,本件優先日前に,木炭,アクリル系樹脂及びホウ酸を配合する防蟻用組成物を発明したことや,その実施品として被告先行製品が製造,販売された事実は認められず,原告代表者が被告からホウ酸を含む被告先行製品の組成に関する情報を得たとも認められない。
そして,原告代表者は,住宅建設事業を営み,建材の防蟻対策について関心を持ち得る立場であり(

),本件優先日前から木炭等に関する研

究を行い,特許出願を行うなどしていた(

)。原告代表者

はD弁理士らに「『炭の力(防蟻専用)』開発の経緯について」と題する書面を送付しているところ(

),同書面は,要するに,安全な防蟻剤

としてホウ酸が考えられるところ,ホウ酸が水に溶けやすいという課題を解決するため,木炭塗料とホウ酸を組み合わせた防蟻剤に関する発明について特許出願を依頼するための書面であることがうかがわれ,被告が製造,販売していた「炭の力」(

)に関する記載もあり,本件特許の内容とも

整合する。そうすると,原告代表者は従前から木炭等に関する研究を行っており,その過程でホウ酸に着目して本件発明に至ったと推認することができ,これを覆すに足りる証拠はない。
したがって,本件発明の発明者は原告代表者と認められ,本件特許の出願が冒認出願であるとの被告の主張を採用することはできない。
4
(新規性又は進捗性欠如)について
(乙36発明に基づく新規性欠如)について

乙36発明の概要
乙36公報の特許請求の範囲請求項2,発明の詳細の説明(2頁右下欄4~12行目,3頁右上欄10~18行目,3頁右上欄下から2行目~左下欄最終行)の記載によれば,乙36公報には,防腐防虫防蟻剤としてのホウ酸類にポリアミドを用いてカプセル化したものを,活性炭に担持させた防蟻用組成物の発明である乙36発明が記載されていると認められる。

本件発明と乙36発明の対比(実質的同一性の有無)
前提事実及び上記1の本件発明の技術的意義によれば,本件発明は,防蟻用組成物の態様について特に限定しておらず,ポリアミド樹脂(構成要件B)を用いてホウ酸類(構成要件C)をカプセル化し,そのカプセルを植物由来の炭粉末(構成要件A)に担持させた防蟻用組成物(構成要件D)という態様も排除されないと考えられる。
そうすると,本件発明と乙36発明は実質的に同一であるといえ,本件発明は乙36発明に基づき新規性を欠くと認められる。
したがって,本件特許は乙36発明に基づき新規性を欠くため,
イに関する被告の主張は理由があり,

(乙36発明等による進

歩性欠如)は判断する必要がない。
(乙37発明,乙38発明,乙40発明及び乙41発明に基づく
進歩性欠如)について

乙37発明の概要
乙37公報には,白蟻防除剤を吸着せしめた,活性炭,ゼオライト,シリカゲル及び活性アルミナからなる群より選ばれた一種または二種以上の吸着剤を,エマルジョンに分散せしめてなる白蟻防除用塗布剤の発明が記載されている(特許請求の範囲請求項1)。また,乙37公報には,活性炭はヤシ殻炭化物を原料として調製すること(段落【0026】),発明に係る塗布剤を木材等に塗布すると,
エマルジョン中の水分が蒸発した後,
木材等の表面には塗膜が形成されること(段落【0030】),発明に使用するエマルジョンの分散質として,ポリ酢酸ビニル,酢酸ビニル-エチレン共重合体,アクリル系ポリマーなどが使用可能であること(段落【0023】)が記載されている。
そうすると,乙37公報には,植物由来の活性炭と被膜形成性ポリマーエマルジョンを含有する防蟻用組成物である乙37発明が記載されているといえる。


本件発明と乙37発明の対比
乙37発明の概要は上記アのとおりであるところ,本件発明と乙37発明を対比すると,乙37発明にはホウ酸類は含有されておらず,この点で本件発明と相違し,その他の点は一致すると認められる。


容易想到性について
被告は,上記相違点について,乙38発明,乙40発明及び乙41発明に基づき容易に想到することができたと主張する。
乙38公報には,コレマナイト(ホウ酸ないしホウ酸カルシウム等を含む)粒子を白蟻の口部等から侵入させることにより,防虫殺虫効果を発揮する旨記載され(段落【0020】【0021】),乙41公報には,繊維上に粒子の微細なホウ酸を均一に担持させた殺虫シートが記載され(段落【0005】),ホウ酸がダニ類に対しては食餌毒であり,微粒になるほどダニ類と接触する機会が増大し,殺虫効果が増大することが記載されている(段落【0026】)。他方,乙37公報には,放散された白蟻防除剤の蒸気が木材組織の空隙やコンクリート等の割れ目を通って内部に浸透し,白蟻を防除する効果を発揮することが記載されている(段落【0030】)。そうすると,乙37発明と乙38発明及び乙41発明とでは防蟻防虫作用の効果を奏するメカニズムが全く異なる。また,乙40発明には,そもそもホウ酸に関する記載はない。そうすると,乙37発明の白蟻防除剤に,乙38発明及び乙41発明のホウ酸を使用することは当業者が容易に想到し得るとはいえない。したがって,本件発明は乙37発明,乙38発明,乙40発明及び乙41発明に基づき進歩性を欠如するとはいえず,また,上記各発明に基づいて本件訂正発明が無効理由を有することもない。
5
訂正の再抗弁主張について
上記4のとおり,
本件発明は,
乙36発明に基づき新規性を欠如しており,
無効審判により無効にされるべきものであるところ,原告は,本件訂正請求による訂正の再抗弁を主張する。
本件訂正請求は,主に,本件特許の構成要件Bを「被膜形成性ポリマーエマルジョンと,」(構成要件B’)に訂正し,「塗膜形成用の防蟻用組成物であって,」(構成要件E)と「前記ホウ酸類の含有量は1~40%の質量%である」(構成要件F)を新たに追加するものである。本件発明が塗膜形成用の防蟻用組成物であることは本件明細書に記載されていること(段落【0014】),本件明細書には「ホウ酸類の含有量は防蟻用組成物中1~40%が好ましく,さらに好ましくは3~30%である。」と記載されていること(段落【0045】)から,上記訂正はいずれも本件明細書の範囲に記載した事項の範囲内であって特許法134条の2所定の訂正請求の要件を満たすと主張し,この点について当事者間に争いはなく,本件訂正請求は訂正請求の要件をすべて満たすと認められる。
また,
被告製品が本件訂正発明の技術的範囲に属することは当事者間に争いがない。


(乙36発明に基づく新規性欠如)について
乙36


本件訂正発明と乙36

発明は,
乙36発明が塗膜形成用の防蟻用組成物ではない点及びホウ素化
合物の含有量について記載がない点で相違する。
また,本件訂正発明は,被膜形成性ポリマーエマルジョンを含有するものであるところ,本件明細書によれば,本件訂正発明における被膜形成性ポリマーとは,水に不溶性のポリマーであって,ポリマーが水に分散されたポリマーエマルジョンを基材に塗布した後,
乾燥して分散媒である水を
揮散させたときに,
基材上に被膜を形成する性質をもったポリマーである
であり(段落【0018】),ポリマーエマルジョンとは,水に不溶性のポリマーが水に分散されたものである(段落【0019】)。そして,被膜形成性ポリマーとして,アクリル系ポリマーや,酢酸ビニル系ポリマーが挙げられている(段落【0030】【0031】)。他方,乙36公報には,カプセルの例として,酢酸ビニル-エチレン共重合体やアクリル酸エステルが挙げられている(3頁左下欄)が,酢酸ビニル-エチレン共重合体やアクリル酸エステルを水に分散させたポリマーエマルジョンは記載されておらず,
エマルジョンについて記載がない点でも本件訂正発明と
相違する。
したがって,
本件訂正発明は乙36発明に基づき新規性を欠如するとは
いえない。

争点

ウ(乙36発明,乙37発明,乙39発明及び乙40発明に基づ
く進歩性欠如)について
本件訂正発明と乙36発明は,上記のとおり,本件訂正発明が塗膜形成用の防蟻用組成物であるのに対し乙36発明がそうでない点,本件訂正発明がホウ酸類を1~40%含有するのに対して乙36発明がホウ素化合物の含有量について触れない点及び本件訂正発明が被膜形成性ポリマーエマルジョンを含有するものであるのに対し,乙36発明が同エマルジョンについて触れない点で相違し,その他の点で一致する。
各相違点のうち,乙36発明が塗膜形成用の防蟻用組成物ではない点及びエマルジョンについて触れない点について,乙36公報には,防腐防虫防蟻用組成物を活性炭に吸着せしめてなる組成物を土壌に散布することを特徴とする家屋の防湿防腐防虫防蟻処理方法であって,薬剤が活性炭に吸着されているので作業者の安全が保たれること,当該吸着物を散布すれば良いため作業が簡単であることという効果を有することが記載されている(特許請求の範囲請求項1,3頁右上欄)。このことからすると,乙36発明は防蟻用組成物を土壌に散布することを必須の要件としているのであり,乙36発明の組成物を使用態様が全く異なる塗膜形成用組成物に変更すること,また,乙36発明の組成物に被膜形成性ポリマーエマルジョンを配合することは当業者が容易に想到し得るとはいえないというべきである。そして,被告主張の各先行文献(乙37公報,乙39文献,乙40公報)に係る発明があるとしても,上記のように乙36発明と本件訂正発明の使用態様が全く異なることからすると,被告主張の上記発明によって上記判断は左右されないというべきである。

以上のとおり,本件訂正発明は,争点
また,争点

6
イの無効理由を解消しており,

ウ,エの無効理由は認められない。

(本件訂正発明にかかる無効理由の有無)について
(冒認出願)について
上記3のとおり,本件特許の出願は冒認出願であるとは認められないから,本件訂正発明も冒認出願の無効理由は認められない。
(乙48発明及び乙49発明に基づく進歩性欠如)について

乙48発明の概要
乙48公報には,アクリル酸エステル系重合体水性エマルジョンと無機ホウ素系防蟻防虫防腐剤を水に溶解させたA液とを混合することを特徴とする防蟻防虫防腐剤組成物の発明が記載されている(特許請求の範囲請求項1)。また,乙48公報には,アクリル酸エステル系重合体水性エマルジョンは,施工後,水が蒸発した状態では連続被膜を形成して,防蟻防虫防腐剤を木部,土壌面に密着させ,水による溶脱を防ぐこと(4頁左上欄4~9行目)が記載されている。さらに,乙48公報の実施例1には,稀釈液とA液の合計100kgのうち,ホウ酸15kg,ホウ砂15kgとの組成が記載されているところ(6頁右上欄4行目~左下欄4行目),ホウ酸はホウ酸類に相当し,また,ホウ砂もホウ酸類に相当し得る物質であるところ,ホウ酸のみがホウ酸類に相当するとしてもホウ酸類の含有量は15質量%,ホウ砂もホウ酸類に相当すると考えるとホウ酸類の含有量は30質量%となる。
そうすると,乙48公報には,塗膜形成用の防蟻用組成物であって,被膜形成性ポリマーエマルジョンと,ホウ酸類を含有し,ホウ酸類の含有量は15質量%又は30質量%であることを特徴とする防蟻用組成物である乙48発明が記載されているといえる。


本件訂正発明と乙48発明の対比
乙48発明の概要は上記アのとおりであるところ,本件訂正発明と乙48発明を対比すると,乙48発明は植物由来の炭粉末を含まない点で本件訂正発明と相違し,その他の点は一致すると認められる。


容易想到性について
上記相違点について,被告は,乙49公報には防蟻装置において活性炭とホウ酸類を組み合わせて,建造物の基礎構造に防蟻防腐効果を付与する態様が記載されており,乙48発明と乙49発明は技術分野,課題,作用,機能が共通するから,乙48発明と乙49発明を組み合わせることは当業者が容易に想到することができ,また,本件訂正発明の効果は乙48発明と乙49発明が奏する効果の総和を超える格別なものとはいえないと主張する。
乙48発明は,建築物の白蟻の駆除及び白蟻による食害の予防のために木材や土壌に塗布し,塗膜を形成して使用する無機ホウ素性防虫防蟻剤組成物であり(乙48公報の1頁右欄8~15行目),乙49発明は,建造物の基礎構造体回りに配置され,建造物への白蟻の侵入を阻止すると同時に床下からの湿気,腐食・腐朽菌の侵入を防止するようにした建造物の防蟻装置である(甲49公報の段落【0001】)。乙49公報には,防蟻薬効成分の担体として活性炭が開示されているが(【請求項2】段落【0011】),乙48公報には,無機ホウ素系防蟻防虫防腐剤がアクリル酸エステル系重合体水性エマルジョン中に溶解又は分解し,施工後水分が蒸発したとき,アクリル酸エステル系重合体の連続被膜に包まれることが記載されており(3頁左下欄17~20行目,右下欄1~3行目),乙48発明は無機ホウ素性防蟻防虫防蟻剤を水やアクリル酸エステル系重合体に直接接触させる発明であって,無機ホウ素性防蟻防虫防蟻剤を活性炭等に担持させることは想定されておらず,その示唆もない。そうすると,乙49公報で薬剤の担体として開示されている活性炭を乙48発明に組み合わせることは当業者が容易に想到し得るとはいえない。
したがって,本件訂正発明は,乙48発明及び乙49発明に基づき進歩性が欠如しているとはいえない。
(乙48発明及び乙36発明に基づく進歩性欠如)について
上記

イのとおり,乙48発明には植物由来の炭粉末が含まれない点で本
件訂正発明と相違するところ,被告は,乙36公報にはホウ素化合物を含む防腐防虫防蟻剤を活性炭に吸着させて防蟻防腐効果を長期に維持する態様が記載されており,乙48発明と乙36発明は技術分野,課題,作用,機能が共通するから,乙48発明と乙36発明を組み合わせることは当業者が容易に想到することができ,また,本件訂正発明の効果は乙48発明と乙36発明が奏する効果の総和を超える格別なものとはいえないと主張する。しかしながら,乙36公報には,防腐防虫防蟻用組成物を活性炭に吸着せしめてなる組成物を土壌に散布することを特徴とする家屋の防湿防腐防虫防蟻処理方法が記載され,防腐防虫防蟻用組成物の担体として活性炭が開示されているが(特許請求の範囲請求項1),上記

のとおり,乙48発明は

無機ホウ素性防蟻防虫防蟻剤を水やアクリル酸エステル系重合体に直接接触させる発明であって,無機ホウ素性防蟻防虫防蟻剤を担体に担持させることは想定されておらず,その示唆もない。そうすると,乙36公報で薬剤の担体として開示されている活性炭を乙48発明に組み合わせることは当業者が容易に想到し得るとはいえない。
したがって,本件訂正発明は,乙48発明及び乙36発明に基づき進歩性が欠如しているとはいえない。
(乙48発明及び乙50発明に基づく進歩性欠如)について
上記

イのとおり,乙48発明は植物由来の炭粉末が含まれない点で本件
訂正発明と相違するところ,被告は,乙50公報には,エマルジョン系樹脂で構成された塗装材に炭粉を配合して吸湿性,防虫性を付与する態様が明記されており,乙48発明と乙50発明は技術分野,課題,作用,機能が共通しており,乙48発明と乙50発明を組み合わせることは当業者が容易に想到することができ,また,本件訂正発明の効果は乙48発明と乙50発明が奏する効果の総和を超える格別なものとはいえないと主張する。
乙50公報には,木炭には吸湿性,吸放臭性,防虫性などの効果があることが周知であると記載されているが(段落【0009】),防虫性について具体的な記載はなく,防蟻性については触れられておらず,当業者が乙50公報から読み取ることができる範囲は,炭粉末が一般的な性質として防虫性を有すること,エマルジョン系樹脂との組み合わせで使用することができる(特許請求の範囲請求項1)というものにとどまる。
他方,乙48公報には,乙48発明に使用することができる有機化合物系防蟻防虫剤が例示されているが(4頁右下欄),炭粉末は有機化合物系防蟻防虫剤とはいえず,また,無機ホウ素系防蟻防虫防腐剤が耐久遅効性であるのに対し,有機化合物系防蟻防虫剤は即効性であることが記載されており(4頁左上欄18行目~右上欄最終行),有機化合物系防腐防虫剤を必須の構成としている請求項2及び3に係る発明に関しては,有機化合物系防蟻防虫剤と無機ホウ素系防蟻防虫防腐剤の併用により相乗効果があることが記載されている(9頁右上欄6~9行目,同頁左下欄5~9行目)。このように,乙48公報に記載されている,使用することができる防蟻防虫剤の種類やその意義を踏まえると,乙48発明に対し,乙50公報で一般的な性質として防虫性を有し,エマルジョン系樹脂との組み合わせで使用することができることのみが記載されている炭粉末を配合する動機付けは見当たらないというべきである。
また,本件明細書には,塗膜は,木材上において炭粉末及び各種ポリマーの相乗的機能によって,ホウ酸類を強固に吸着保持し,さらに,木材等の塗布対象物への優れた付着性を発揮し,優れた撥水性と接着性により木材から流出されることなく,長期にわたってホウ酸類の防蟻効果を持続させることができるとの記載があり(段落【0015】),実施例でも,耐候操作なしの試験体と耐候操作あり(水に浸漬し溶脱させている)の試験体とを用意して両者の防蟻効果を比較するなど,ホウ酸類が水に溶けやすいという課題(段落【0006】)を解決し,防蟻効果を長期間持続させるために炭粉末が使用されている。他方,乙48公報では,無機ホウ素系防蟻防虫防腐剤について,施工後水分が蒸発したとき,アクリル酸エステル系重合体の連続被膜に包まれて水に溶けがたくなり,長期間効力を維持するとともに地下水を汚染しないとの記載があり(3頁左下欄下から5行目~右下欄3行目),アクリル酸エステル系重合体によって水への溶出の問題は解決されているから,乙48発明に対し,更に溶出を防止する手段を講じる動機付けは見当たらないというべきである。
したがって,本件訂正発明は,乙48発明及び乙50発明に基づき進歩性が欠如しているとはいえない。
(サポート要件違反又は実施可能要件違反)について
被告は,本件明細書にはホウ酸又はホウ酸ナトリウムの配合量は15質量%と20質量%の2つの実施例しか開示されておらず,本件訂正発明の構成要件Fで規定した数値の全範囲が網羅されておらず,発明の詳細な説明の内容が本件訂正発明の課題を解決し目的を達成できるとはいえないこと,また,被膜形成性ポリマーエマルジョン,水溶性多糖類等を区別することなく一括りで記載しており,具体的な撹拌時の温度等についても何ら言及がなされておらず,防蟻用組成物の製造方法が具体的に記載されていないことから,本件訂正発明はサポート要件又は実施可能性要件を満たしていないと主張する。
しかしながら,本件明細書において,実施例において本件訂正発明に係る組成物が調製され,防蟻効果を発揮することが裏付けられていること,本件訂正発明は,炭粉末,被膜形成性ポリマーエマルジョン及びホウ酸類を組み合わせて含有させることが従来技術にない重要な構成と解されることからするとサポート要件違反があるとは認められない。また,本件明細書には具体的な製造方法が記載されており(段落【0075】【0076】等),被告が指摘する製造方法に関する諸事項は当業者であれば適宜設定できるものといえる。
したがって,本件訂正発明はサポート要件又は実施可能性要件を満たしていないとは認められない。

ず,本件訂正発明について無効理由は認められない。
7
(損害額及び不当利得額)について
以上検討したところによれば,被告による被告製品の生産等は原告の本件特許権を侵害するから,原告は被告に対し,被告による平成24年6月18日から平成28年10月10日までの被告製品の生産等による本件特許権侵害行為について不法行為に基づく損害賠償を,平成20年8月29日から平成24年6月17日までの被告製品の生産等による本件特許権侵害行為について不当利得に基づく本件特許実施料相当額の利得金の返還を求めることができる。そこで,損害額及び不当利得額について検討する。
不法行為に基づく損害賠償請求について

原告は,被告による平成24年6月18日から平成28年10月10日までの被告製品の生産等による本件特許権侵害行為につき,不法行為に基づく損害賠償金の支払を求めるところ,同期間における被告製品の販売による売上額が1億7245万2731円であること,被告製品の利益率が68.1%であることは当事者間に争いがなく,被告が得た利益は1億1744万0309円(円未満切り捨て)[1億7245万2731円(売上額)×0.681(利益率)]となり,同額は原告が受けた損害の額であると推定される(特許法102条2項)。


推定覆滅とその割合について
本件訂正発明は,塗膜形成用の防蟻用組成物全体に関する発明であり,被告製品は塗膜形成用の防蟻用組成物であるから,本件訂正発明は被告製品全体に関わる発明というべきものである。
そして,上記1のとおり,本件訂正発明は,ホウ酸類を植物由来の炭粉末と被膜形成性ポリマーエマルジョンとともに配合して防蟻用組成物を調製したことにより,従来ホウ酸類配合の防蟻用組成物が有していた欠点を改善して,白蟻の予防もしくは駆除効果に優れ,しかもその効果が長期にわたって持続し,さらに蟻以外の菌等に対しても耐久性に優れた,安全な防蟻用組成物が得られる効果を奏するものである。また,本件訂正発明は,従来発明(乙48発明)の配合と比べて,耐候処理をした場合における死中率と質量減少率に大きな差があり,炭粉末を配合しないものと比べて耐水性が向上している。
本件訂正発明の上記作用効果は,防蟻用組成物である被告製品にとって最も重要な効果の一つであるといえ,需要者の購入意欲に大きく結びつくものである。
他方,被告製品は建築物の床下の土台部分の建材に塗布して塗膜形成する防蟻剤であって,被告製品の需要者は建築物の施工業者等であり,一般消費者へ小売りされる性質のものでないことからすると,被告の営業努力や被告と顧客との継続的な関係性といった要素が被告の売上に相当な役割を果たしたことは否定できない。証拠(甲6,63,64の1・2,68,76の1・2)によれば,被告製品の販売代理店や被告製品を使用した建築家等が,被告製品にホウ酸類が含まれていることに関する意見を出し,また,被告製品の特性として木炭とホウ酸が含まれていることを紹介していることが認められるところ,かかる事実も被告が顧客との継続的な関係を築いていたことをうかがわせる。
以上のとおり,本件訂正発明は,塗膜形成用の防蟻用組成物全体に関する発明であることに加えて,本件訂正発明の作用効果は被告製品の需要者の購入意欲に大きく結びつくものであることすれば,法102条2項の推定について,大幅にその推定が覆滅するとはいえない。他方,被告の営業努力や被告と顧客との継続的な関係性といった要素が被告の売上げに大きな役割を果たしたことは否定できないことを踏まえると,本件において,上記アの推定は30%の限度で覆滅し,被告による特許権侵害により原告に生じた損害は上記ア記載の損害の70%であるとするのが相当である。
被告は,
本件における推定覆滅の割合は80%を下回らないと主張し,
その根拠として,上記第2,3

ア(被告の主張)の①ないし③のとお
り主張する。
しかしながら,①住宅建材に使用する防蟻用組成物である被告製品において重要であるのは配合成分自体ではなく,配合成分によってもたらされる防蟻効果や安全性であって,ホウ酸を使用していることを積極的にアピールしていないからといって,本件訂正発明の被告製品の売上げに対する寄与が低いとはいえない。
また,②被告製品にホウ酸を配合することを中止した後も売上げは減少していない等の事情は被告の営業努力や顧客との関係性が寄与しているとも考えられるところ,これらの事情は既に推定覆滅率の判断に当たって考慮している上,被告が新たに販売している製品が本件訂正発明の実施品である被告製品と同等の効果があることの証拠はなく,同程度の性能の代替品があるとも認められない。
そして,③被告が,被告製品について人体に有害な成分を排除し自然素材由来の安全性を持つ商品である旨アピールしているとしても,ホウ酸の配合による効果は本件訂正発明の効果であるといえるのであり,その他被告製品についての被告の営業努力等は

で考慮したとおりで

ある。また,防蟻剤商品において,白蟻発生時に保険が適用されることは広く行われており(甲72,73の1ないし3,74の1・2,75の1・2),被告製品で適用される保険が他社製品に比べて,特に需要者の購入意欲を引き上げるような特性を持っていることをうかがわせるような事情は認められない。
したがって,被告の上記主張は,推定覆滅率についての当裁判所の上記判断を左右するものではない。

小活
以上のとおり,不法行為に基づく損害賠償請求権の額は,8220万8216円(円未満切り捨て)[1億1744万0309円(利益)×0.7]となる。また,本件事案の内容,事案の難易,訴訟の経緯及び認容額等の諸般の事情を考慮すると,被告の不法行為と相当因果関係のある損害としての弁護士費用相当額は820万円と認めるのが相当である。したがって,原告は,被告に対し,不法行為に基づく損害賠償請求権に基づき,9040万8216円及びこれに対する不法行為の後の日である平成27年6月30日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めることができる。
不当利得返還請求について
原告は,被告による平成20年8月29日から平成24年6月17日まで
の被告製品の生産等による本件特許権侵害行為につき,不当利得に基づく本件特許の実施料相当額の利得金の返還を求めるところ,同期間における被告製品の販売の売上額が2億2209万4610円であることは当事者間に争いはない。
そして,本件訂正発明は,塗膜形成用の防蟻用組成物全体に関する発明であること,被告製品の利益率は68.1%であること,原告と原告代表者間の平成20年9月1日付け特許実施許諾契約における実施料は5%であること(甲60),「実施料率〔第5版〕」(平成15年9月。社団法人発明協会研究センター編)において「無機化学製品」に関する実施料率別契約件数について最頻値が5%であるとされること(甲61の48頁),「知的財産の価値評価を踏まえた特許等の活用の在り方に関する調査研究報告書~知的財産(資産)価値及びロイヤルティ料率に関する実態把握~本編」(平成22年3月。株式会社帝国データバンク)において「化学」の技術分野における国内の特許権のロイヤルティ料率の平均値が5.3%であるとのアンケート結果が示されていること(甲62のⅸ頁)等を総合考慮すると,本件特許の実施料率は5%と認めるのが相当である。
したがって,原告は,被告に対し,不当利得返還請求権に基づき,1110万4730円(円未満切り捨て)[2億2209万4610円(売上額)×0.05(実施料率)]及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成27年6月30日(当裁判所に顕著な事実である。)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めることができる。8
結論
よって,原告の請求は主文第1項ないし第3項の限度で理由があるからこれらを認容し(なお,前提事実

のとおり,被告は現在,ホウ酸を配合する被告

製品の生産等をしているとは認められないものの,被告は本件訴訟において原告の請求を争っているのであるから,被告がホウ酸を配合する被告製品を生産等するおそれが直ちに消失するものではない。),原告のその余の請求は理由がないから棄却することとし,また,主文第1項及び第2項については,仮執行宣言を付すことは相当でないから,これを付さないこととし,主文第3項には仮執行宣言を付すこととして,主文のとおり判決する。

東京地方裁判所民事第46部

裁判長裁判官
柴田義明
裁判官


裁判官

大雅下子良仁
別紙
被告製品目録

製品名「ヘルスコ・キュアー」
ただし,ホウ酸類の含有量が1~40質量%である構成のもの
以上
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