判例検索β > 平成25年(ワ)第30271号
職務発明対価金請求事件 特許権 民事訴訟
事件番号平成25(ワ)30271
事件名職務発明対価金請求事件
裁判年月日平成29年10月27日
法廷名東京地方裁判所
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平成29年10月27日判決言渡

平成25年(ワ)第30271号
口頭弁論終結日

同日原本領収

裁判所書記官

職務発明対価金請求事件

平成29年8月2日
判決原甲多田光毅同大石忠生同石田晃士同大倉丈明同告
同訴訟代理人弁護士

北和尚被告
キヤノン株式会社

同訴訟代理人弁護士

正和櫻庭信之同濱野敏彦同小川裕子同神谷圭佑同須内隆裕
同訴訟復代理人弁護士

坪野未来同益田美佳同小幡真之同渡邊典和同倉同岩今野主文
1
原告の請求を棄却する。

2
訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由河渉
第1
1
請求
被告は,原告に対し,1億円及びこれに対する平成26年1月16日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

2
仮執行宣言

第2

事案の概要

1
本件は,原告が,被告の在職中に職務上行った発明について特許を受ける権利を被告に譲渡したことについて,被告に対し,平成16年法律第79号による改正前の特許法(以下「改正前特許法」という。)35条3項及び4項に基づき,未払の相当の対価の額62億7761万8968円のうち1億円及びこれに対する本訴状送達の日の翌日である平成26年1月16日から支払済みま
で民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。2
前提事実(当事者間に争いのない事実又は文中掲記した証拠及び弁論の全趣旨により容易に認定できる事実)
(1)当事者


原告は,昭和59年5月から平成23年2月までの間,被告の従業員であった者である。


被告は,各種光学機械器具の製造及び販売,各種精密機械器具の製造及び販売等を業とする株式会社である。

(2)被告における職務発明の取扱いに関する諸規定
被告は,従業員が職務上行った発明・考案・創作にかかる権利の承継及び対価の支払に関して,「発明・考案・創作に関する取扱規程」(以下「本件取扱規程」という。)を設けている。
本件取扱規程においては,従業員の職務発明につき,国内外における特許を受ける権利は被告がこれを承継し(第5条),被告は出願時,権利確定時
及び実施時にそれぞれ所定の対価を当該従業員に支払う(18条ないし21条)ものとされている。

そして,本件取扱規程は,平成17年3月31日以前に被告が承継した職務発明については,同年4月1日以降に行われる職務発明に関する手続にも適用される(第38条)。
(3)原告の職務発明
原告は,被告の在職中に,リチウムイオン二次電池に関する複数の発明(以下「本件各職務発明」という。)をした(ただし,原告の寄与割合については当事者間に争いがある。)。同発明は,被告の業務範囲に属し,かつ,原告の職務に属する発明であった。
(4)特許を受ける権利の承継

原告は,被告に対し,平成7年5月18日から平成11年8月31日までの間,本件各職務発明についてそれぞれ「発明・考案・創作

譲渡証書」を

提出した。そこには,「下記発明考案創作に関して『発明・考案・創作に関する取扱規程』に基づき,国内および外国における特許,実用新案・意匠の登録を受ける権利を貴社に譲渡いたします。」との記載があった。〔乙59ないし64〕
被告は,これに基づき,本件各職務発明に係る特許を受ける権利の承継を受けたものとして,国内及び諸外国において特許出願手続を行い,別紙特許権目録1及び2記載の国内外の各特許権を取得した(以下,別紙特許権目録1記載の各特許権をそれぞれ「本件特許権1-1」ないし「本件特許権1-
5」と,併せて「本件特許権1」といい,別紙特許権目録2記載の各特許権を「本件特許権2-1-①」ないし「本件特許権2-5-⑦」と,併せて「本件特許権2」といい,「本件特許権1」と「本件特許権2」を併せて「本件各特許権」といい,これらの特許権に係る特許を以下「本件特許1-1」などという。また,本件各特許権のうち別紙特許権目録1及び2記載の
各請求項の発明をそれぞれ「本件発明1-1」などといい,なお同別紙において1個の特許権につき複数の請求項が摘示されているものについては「本
件発明2-3-②(請求項2)」などといい,併せて「本件各発明」という。)。
(5)本件各特許権の内容
本件各特許権の内容は,別紙特許権目録1及び2の各記載のとおりである(以下,本件各特許権に係る明細書及び図面を「本件明細書等1-1」などという。なお,外国特許の明細書等の訳文の一部については当事者間に争いがある。)。
(6)本件各発明の構成要件の分説
本件各発明を構成要件に分説すると,次のとおりである(以下,それぞれ
の符号に従い「構成要件a」などという。)。〔弁論の全趣旨〕

本件発明1-1
a
負極,セパレーター,正極,電解質と,電池ケースを有する二次電池において,

bc
前記負極面上に垂直に投影した前記正極の投影面が該負極面内にあり,
d
前記負極の大きさが前記正極の大きさより大きく,

正極エッジ先端から負極エッジ先端までの最短距離が,前記正極と前記負極との間の距離の10倍以上であることを特徴とする二次電池。

本件発明1-2
a
負極,セパレータ,正極,非水電解質もしくは非水電解液,ハウジング(電池ケース),から成る再充電可能なリチウム電池が,コイン
形,もしくは角形,または円筒形で,
b
前記正極がリチウム含有の遷移金属酸化物で,

c
前記負極と前記正極は前記セパレータを介して互いに対向し,対抗する面を持ち,

d
負極面と正極面間はそれぞれの面に垂直な距離dで隔てられ,負極エッジから正極エッジの最短距離が前記dの10倍以上で,

e
正極面の負極面への投影面が負極面内にあり,負極面積は正極面積より大きく,電極のエッジにかかる電界が小さくなるように,配置され,それによって(リチウムの)樹状突起の形成が阻害され,電池寿命が長くなる。


本件発明1-3
a
負極(100;301),セパレータ(105;307),正極(102;303)がハウジング(電池ケース)(108;306)内に設けられ,電解質あるいは電解液(104)を内包する再充電可能な電池(蓄電池)において,

b
前記負極は,前記正極と対向して配置され前記正極より大きな面積を有し,負極面に投影した正極面は負極面内にあり,

c
負極エッジから正極エッジまでの最短距離(l)が,負極と正極間の距離(d)の5倍以上である。


本件発明1-4
a
負極(anode),セパレータ,正極(cathode),電解質または電解液,およびハウジングを含む充電式電池(蓄電池)において,

b
前記負極と前記正極は,セパレータを介して互いに対向するように位置して,

c
前記負極は,上記の充電式電池が組み立てられた時にはリチウム元素を含有しない負極活物質を含み,

d
前記負極と前記正極は,それぞれ対向するようにして平面を持ち,
e
前記負極と前記正極は,負極面と正極面に対して垂直に測定された負極と正極間の距離(d)を有し,負極エッジと正極エッジとの間の
最短距離が,前記距離(d)の5倍以上になるように配置され,およびf
前記正極側を負極面上に垂直に投影して提供される正極面が負極面内にあり,前記負極は,正極よりも大きな面積を有することを特徴とする充電式電池。


本件発明1-5
a
再充電可能なリチウム電池,再充電可能なニッケル-亜鉛電池,亜鉛-酸素電池,再充電可能な臭素-亜鉛電池からなる群から選択される二次電池は,負極,セパレータ,正極,電解質または電解液,およびハウジング,から成り,

b
前記負極および前記正極は,電池内で互いに対向して距離を保って配置され,

c
対向する負極面の面積は正極の面積より大きく,

d
負極エッジの先端と正極エッジ先端間の距離は,負極と正極間の距離の5倍以上であり,

e
正極面を負極面へ垂直に投影した正極面が負極面内にあるように,負極が正極より大きく構成され,

f
それによって(リチウムの)樹状突起の形成が阻害され,電池寿命が長くなる。


本件発明2-1-①
a
電池ケース内の電解質中にセパレータによって隔てられた正極と負極とを有する二次電池において,

b
上記負極が少なくとも酸ともアルカリとも反応する両性金属と合金化した金属粉末で構成されており,

c
該金属粉末の粒径が100μm以下であることを特徴とする二次電池。


本件発明2-1-②
a
ケースの中に含有されている電解質中にあるセパレータで分離され
ている負極と正極から成るリチウム二次電池において,
b
負極が,少なくともアルミニウム,亜鉛,スズ,鉛,ガリウム,セリウム,ストロンチウムからなる群から選択される少なくとも一つの酸ともアルカリとも反応する両性金属と合金化した,ニッケル,コバルト,銅,チタン,鉄からなる群から選択される少なくとも一つの金
属の少なくとも金属粉末から成り,
c
充放電によりリチウム〔被告の主張する訳:リチウムイオン〕の酸化還元反応が起きる。


本件発明2-2-①
a
負極,セパレータ,正極,電解質あるいは電解液を少なくとも有するリチウム二次電池において,

b
負極が少なくとも充電時にリチウムと合金を作る金属元素と充電時にリチウムと合金を作らない金属元素を構成要素として有し,

c
充電時にリチウムと合金を作らない金属部分から負極側の出力端子が引き出され,

d
前記電解液と接し,正極と対向する負極表面の導電体部の粗さの
(最大山から最深谷までの)最大高さRmaxの1/2と中心線平均粗さRaとの差が,負極表面正極表面間の距離の1/10以下であり,
e
前記負極表面の導電体部の粗さに関して,測定長をL,測定長L当たりの山の数をnとする時,1+(4nRa/L)が1.05以上で
あることを特徴とするリチウム二次電池。

本件発明2-2-②
ab
負極を含む再充電可能なリチウム電池において,
負極は,(a)充電時に生成されるリチウムと合金化できない第1の金属を含む集電体と,(b)充電時に生成されるリチウムと合金化できない第1の金属と充電時に生成されるリチウムと合金化できる第
2の金属とを含む,前記集電体上の層とを含み,
c
前記第1の金属は,ニッケル,チタン,銅,銀,金,白金,鉄,コバルト,クロム,タングステン,モリブデンの少なくとも一つからなる群より選択され,

d
前記第2の金属は,アルミニウム,マグネシウム,カリウム,ナトリウム,カルシウム,ストロンチウム,バリウム,ケイ素,ゲルマニウム,スズ,鉛,インジウム,亜鉛の少なくとも一つからなる群より選択され,

eコ
前記負極は最初の充電前にリチウムを含まない。
本件発明2-2-③

a
初回の充電する前の作製された状態の再充電可能なリチウム電池は,少なくとも負極(202),セパレータ(205),正極(203),電解質(204)または電解液,前記負極(202)に電気的に接続された負極端子(206)から構成されている再充電可能なリチウム電池において,

b
前記負極(202)と前記正極(203)は電解質(204)または電解液で電気的に接触しており,

c
前記負極(202)は,(a)集電体(101,200)および
(b)上記集電体と接している層(102,201)から成り,

d
前記集電体(101,200)は,充電時にリチウムと合金形成不能な,ニッケル,チタン,銅,銀,金,白金,鉄,コバルト,クロム,タングステン,モリブデンからなるグループから選択される1種以上の金属から成り,

e
前記負極(202)は前記層(102,201)の表面領域を有し,上記表面領域が電解質(204)または電解液と接触して前記正極(203)と対向している,

f
前記負極端子(206)は前記集電体(101,200)から引き出され,前記正極(203)はリチウムを含有する正極活物質を含み,以下のことを特徴とする。

g
前記層(102,201)は(i)充電時にリチウムと合金化ができない金属(106)と(ii)充電時にリチウムと合金化可能な金
属から成る,
h
前記層(102,201)は前記金属(106)を含み,前記金属(106)はその表面に多く存在している,そして前記層(102,201)は充電が行われる前にはリチウムを含まない,

i
前記金属(106)は,ニッケル,チタン,銅,銀,金,白金,鉄,コバルト,クロム,タングステンから成るグループから選ばれる1種類以上の金属から成り,前記金属(ⅱ)は,アルミニウム,マグネシウム,カリウム,ナトリウム,カルシウム,ストロンチウム,バリウム,シリコン,ゲルマニウム,アンチモン,鉛,インジウム,亜鉛からなるグループから選択される1種類以上の金属から成る。


本件発明2-2-④
a
負極は,(1)リチウムと合金化不可能な,ニッケル,チタン,銅,銀,金,白金,鉄,コバルト,クロム,タングステン,モリブデンからなる群から選ばれた1種以上の金属(a)を含む集電体と,(2)
リチウムとの合金不可能な,ニッケル,チタン,銅,銀,金,白金,鉄,コバルト,クロム,タングステン,モリブデンからなる群から選ばれた1種以上の金属(a)と,リチウムとの合金可能でアルミニウム,マグネシウム,カリウム,ナトリウム,カルシウム,ストロンチウム,バリウム,シリコン,ゲルマニウム,アンチモン(Sb),鉛,
インジウム,亜鉛からなる群から選ばれた1種以上の金属(b)を含有する前記集電体上の層,から構成され,

b
前記層(2)は電解質または電解質溶液と接して,正極と対向し,使用時に負極末端に接続され,前記集電体(1)に隣接した部分を持つ表面領域を有し,前記表面領域と上記部分が金属(a)を含有することを特徴とする,

c
少なくとも負極,セパレータ,正極,および電解質または電解質溶液からなり,前記負極末端が電気的に前記負極と接続され,前記負極と正極の電解質または電解液と電気的に接する再充電可能なリチウム電池。


本件発明2-3-①
a
少なくとも負極,正極,電解質からなり,リチウムイオンの酸化還元反応を充放電に利用した二次電池において,

b
前記負極は負極活物質を有し,その負極活物質は,少なくとも,メカニカルグラインディング処理によってX線回折角度2θに対する回折線強度を取ったX線回折チャートにおけるピークが存在しない非晶質相を有するに至った炭素材料と銅,チタン,ニッケルから選択され
るリチウム以外の物質に対して電気化学的に不活性な材料との複合体,c
あるいは,メカニカルグラインディング処理によってX線回折角度2θに対して最も強い回折強度が現れたピークの半価幅が0.48度以上を示す非晶質相を有するに至った炭素材料と銅,チタン,ニッケルから選択されるリチウム以外の物質に対して電気化学的に不活性な
材料との複合体を成分とすることを特徴とするリチウム二次電池。ス
本件発明2-3-②(請求項2)
a
少なくとも負極,正極と電解質,から構成され,充放電でリチウムイオンの酸化還元反応を利用するリチウム二次電池において,

b
前記負極が少なくとも非晶質相を持つ活物質を有し,

c
前記活物質の,回折角2θ(シータ)に対する回折強度を示したⅩ線
回折チャートでは最大回折強度のピークの半価幅が0.48度より狭くなく,
d
前記活物質が,コバルト,ニッケル,マンガン,鉄から成る群から選択される少なくとも一つの元素(i)と,リチウム電池の充電/放電反応時負極のリチウム以外の物質に電気化学的に不活性で貴な標準
電極電位を有する少なくとも一つの金属(ii),から成る複合体である。

本件発明2-3-②(請求項9)
a
請求項2記載のリチウム二次電池において,貴な標準電極電位を有する少なくとも一つの金属は,コバルト,ニッケル,スズ,鉛,銀,
銅,金から成るグループから選択される。

本件発明2-3-③(請求項1)
a
少なくとも負極,正極および電解質から成り,充電/放電でリチウムイオンの酸化/還元反応を利用するリチウム二次電池において,

b
前記負極は,活物質として非晶質層を含有する材料から成る複合材料を有し,

c
前記非晶質層を有する材料は,回折角2θ(シータ)に対する回折強度を示したⅩ線回折チャートにおいて最大回折強度のピークの半価幅が0.48度より狭くなく,

d
〔原告による訳文〕
非晶質層を有する金属,炭素,リチウム電池の充電/放電時に利用される活物質のリチウム以外の物質に電気化学的に不活性である材料,から選択される元素を少なくとも含む。
〔被告による訳文〕

非晶質層(相)を有する金属と炭素から選択された少なくとも一つと,リチウム電池の充電/放電時に利用される活物質のリチウム以外の物
質に電気化学的に不活性である材料と,を含む。

本件発明2-3-③(請求項6)
a
請求項1に記載のリチウム二次電池において,前記負極を構成する材料は,非晶質相を有し,

b
電気化学反応により生成されるリチウムと合金化する,アルミニウム,マグネシウム,鉛,カリウム,ナトリウム,カルシウム,ストロンチウム,バリウム,シリコン,ゲルマニウム,スズ,インジウムから選択される少なくとも一つの元素を含む金属材料を含有する。


本件発明2-3-③(請求項7)
a
請求項1に記載のリチウム二次電池において,前記負極を構成する材料は非晶質相を有し,

b
電気化学反応により生成されるリチウムと合金化しないニッケル,コバルト,チタン,銅,銀,金,タングステン,モリブデン,鉄,白金,クロム,から選択される少なくとも一つの元素を含む金属材料を含有する。


本件発明2-3-④(請求項5)
a
少なくとも負極,正極および電解質から構成され,充電/放電でリチウムイオンの酸化/還元反応を利用するリチウム二次電池において,
b
〔原告による訳文〕
前記負極は活物質として,少なくとも炭素と,非晶質相を有する金属と,リチウム電池の充放電で利用される活物質がある電極中のリチウム以外に電気化学的に不活性な材料,のうち一つを含む結晶物質の混合物に物理的エネルギーを加えて形成される複合体を含有し,
〔被告による訳文〕

前記負極は,炭素と非晶質相を有する金属の少なくとも一つを含む結晶物質と,リチウム電池の充放電で利用される活物質がある電極中の
リチウム以外に電気化学的に不活性な材料,との混合物に物理的エネルギーを加えて形成される複合体を含有する,
c
前記複合体は少なくとも非晶質相を有し,Ⅹ線回折における回折角2θ(シータ)に対する最大回折強度のピークの半価幅が0.48度より狭くない。


本件発明2-3-④(請求項9)
a
請求項5~7のいずれか一項に記載の電池において,負極中の前記物質は非晶質相を有し,電気化学反応により析出リチウムと合金化する,アルミニウム,マグネシウム,鉛,カリウム,ナトリウム,カルシウム,ストロンチウム,バリウム,シリコン,ゲルマニウム,スズ,
インジウムから選択される少なくとも一つの金属元素を含有する。ト
本件発明2-3-④(請求項11)
a
請求項5~7のいずれか一項に記載の電池において,前記物質は負極中で電気化学的に不活性であり,非晶質相を有し,電気化学反応により析出リチウムと合金化しない,ニッケル,コバルト,チタン,銅,
銀,金,タングステン,モリブデン,鉄,白金,クロムから選択される少なくとも一つの金属元素を含む。

本件発明2-3-⑤
a
少なくとも負極板,正極,電解質,から構成され,充放電でリチウムイオンの酸化還元反応を利用するリチウム二次電池において,

b
前記負極が示す少なくとも非晶質相を持つ活物質を有し,

c
前記活物質の,回折角2θ(シータ)に対する回折強度を示したⅩ線回折チャートでは最大回折強度のピークの半価幅が0.48度より狭くなく,

d
前記活物質が,コバルト,ニッケル,マンガン,鉄から成る群から選択される少なくとも一つの元素(i)と,リチウム電池の充電/放
電反応時負極のリチウム以外の物質に電気化学的に不活性で貴な標準電極電位を有する少なくとも一つの金属(ii),から成る複合体である。

本件発明2-4-①
a
板状の集電体と,該板状の集電体の片面もしくは両面に平均粒径0.5~60μmの粒子からなる主材35重量%以上を含有する電極材料層を有し,

b
前記電極材料層の空隙率が0.10~0.86の範囲内にあり,

c
上記電極材料層における主材が,結晶子の大きさが10~50nmの範囲にある金属スズ又はスズ合金から構成される材料からなり,
d
前記集電体が,銅,ニッケル,鉄,ステンレススチール,チタンから選択される一種類以上の金属材料からなることを特徴とするリチウムの酸化還元反応を利用した二次電池の負極に用いられる電極構造体。

本件発明2-4-②(請求項1)
a
対抗する面の少なくとも片面に形成された電極材料層を有する板状の集電体を含む電極構造体において,

b
電極材料層が,0.5~60ミクロンの平均粒径の粒子状主母材を35重量%以上含み,

cd
1.00~6.56g/c㎥の範囲の密度を有し,

e
0.10から0.86の空隙率を有し,

前記主母材は,シリコン,ゲルマニウム,スズ,鉛,インジウム,マグネシウム,亜鉛から成る群から選択される一つ以上の元素から構成され,

f
前記集電体が電池反応に非反応性の,銅,ニッケル,鉄,チタン,及びこれらの金属の2以上の合金からなる群から選択される金属材料で構成されている。


本件発明2-4-②(請求項40)
a
少なくとも負極,正極,電解質から成り,活物質の酸化還元反応を利用して充放電を行う再充電可能な電池において,

b
前記負極が,対向する面の少なくとも片面に電極材料層が形成された板状の集電体から成り,

c
前記電極層は,平均粒径0.5~60ミクロンの粒子状主母材を35重量%以上含み,

d
0.10から0.86の空隙率を有し,1.00~6.65g/c㎥の範囲の密度を有し,

e
前記粒子状主母材は,シリコン,ゲルマニウム,錫,鉛,マグネシウム,及び亜鉛からなる群から選択される一つ以上の元素から構成され,

f
前記集電体は,銅,ニッケル,鉄,チタン,これらの金属の二つ以上の合金からなる群から選択される電池反応において不活性である金属材料で成っていることを特徴とする。


本件発明2-4-③
a
電極構造体が,対向面を持つ板状の集電体と,この集電体の少なくとも片面に形成された電極材料層とから構成され,

b
上記電極材料層は,平均粒径が0.5~60μmである粒子状の母材を35重量%以上含有し,

c
0.10~0.86の空隙率を有し,

d
上記母材に加えて導電補助材を含有し,前記粒子状の母材が,結晶子サイズ10~50nmの金属スズ材もしくはスズ合金材から成る。

本件発明2-4-④
a
対向面を持つ板状の集電体と,この集電体の少なくとも片面に形成された電極材料層とから構成された電極構造体において,

b
上記電極材料層は,平均粒径が0.5~60μmである粒子状の母材を35重量%以上含有し,

cヒ
本件発明2-4-⑤(請求項1)
a
0.10~0.86の空隙率を有する。

対向する面を有する板状の集電体の少なくとも一つの面に電極材料層が形成された電極構造体において,

b
前記電極材料層が,平均粒径0.5~60μmで,シリコン,ゲルマニウム,スズ,鉛,インジウム,マグネシウム,亜鉛から成る群から選択される一つ以上の元素から構成されている粒子状の主母材を35重量%以上含む。


本件発明2-4-⑤(請求項44)
a
少なくとも負極,正極,電解質から成り,活物質の酸化還元反応を利用して充放電を行う再充電可能な電池において,

b
前記負極が,対向する面を有する板状の集電体とその集電体の少なくとも片面に形成された電極材料層から構成され,

c
前記電極層は,平均粒径0.5~60ミクロンの粒子状主母材を35重量%以上含み,前記粒子状主母材は,シリコン,ゲルマニウム,錫,鉛,マグネシウム,及び亜鉛からなる群から選択される一つ以上の元素から構成される。


本件発明2-5-①(請求項1)
a
非化学量論比組成の非晶質Sn・A・X合金を主成分とし,

b
比表面積が1㎡/g以上である粒子を含有するするリチウム二次電池用負極電極材。

c
(上記式中,Aは,遷移金属の少なくとも一種を示し,

d
Xは,O,F,N,Mg,Ba,Sr,Ca,La,Ce,Si,Ge,C,P,B,Bi,Sb,Al,In及びZnから成る群から
選ばれた少なくとも一種を示す。ただし,Xは,含有されていなくてもよい。
e
また,上記式の各原子の原子数において,Sn/(Sn+A+X)=20~80原子%の関係を持つ。

f
また,XがOの場合,その含有量は0.05重量%以上5重量%以下であり,XがFの場合その含有量は5重量%以下である。


本件発明2-5-①(請求項2)
a
非化学量論比組成の非晶質Sn・A・X合金を主成分とした粒子を含有するリチウム二次電池用負極電極材。

b
(上記式中,Aは,遷移金属の少なくとも一種を示し,Xは,O,F,N,Mg,Ba,Sr,Ca,La,Ce,Si,Ge,C,P,B,Bi,Sb,Al,In及びZnから成る群から選ばれた少なくとも一種を示す。ただし,Xは,含有されていなくてもよい。

c
また,上記式の各原子の原子数において,Sn/(Sn+A+X)=20~80原子%の関係を持つ。

d
また,XがOの場合,その含有量は0.05重量%以上5重量%以下であり,XがFの場合その含有量は5重量%以下である。

f
前記合金は,Si,Ge,Al,Zn,Ca,La及びMgから成るグループから選択される一元素と,Co,Ni,Fe,Cr及びCuから成るグループから選択される一元素を含有している。)。


本件発明2-5-②
a
実質的に非化学量論比組成の非晶質Sn,A,Ⅹ合金を含む粒子から成る,リチウム二次電池の負極用電極材料において,

b
前記式Sn,A,ⅩのAが遷移金属元素から成るグループから選択された少なくとも1種の元素を示し,

c
Xは,酸素,フッ素,窒素,マグネシウム,バリウム,ストロンチ
ウム,カルシウム,ランタン,セシウム,シリコン,ゲルマニウム,炭素,リン,ホウ素,鉛,ビスマス,アンチモン,アルミニウム,ガリウム,インジウム,タリウム,亜鉛,ベリリウム,プラセオジウム,ネオジウム,サマリウム,ユウロピウム,ガドリニウム,テルビウム,ディスプロシウム,ホルミウム,エルビウム,ツリウム,イッテルビ
ウム,ルテチウム,ヒ素,セレン,テルル,リチウム,イオウから成るグループから選択される少なくとも1種類の元素を示し,元素Ⅹは付加的に存在していてもよく,
d
非晶質Sn,A,Ⅹ合金の構成元素スズSnの含有量は,Sn/
(Sn+A+Ⅹ)=20~80原子%で,

e
前記非晶質Sn,A,Ⅹ合金から成る前記粒子の比表面積は1㎡/g以上であり,

f
前記非晶質Sn,A,Ⅹ合金から成る前記粒子が酸素元素を含む場合の酸素含有量は0.05重量%~5重量%の範囲で,

g
前記非晶質Sn,A,Ⅹ合金から成る前記粒子がフッ素元素を含む場合のフッ素含有量は0.05重量%~5重量%の範囲である。


本件発明2-5-③
a
実質的に非化学量論比組成の非晶質Sn,A,Ⅹ合金を含む粒子から成る電極材料と,さらに電気化学反応でリチウムと合金化しない材料から成る集電体から構成される再充電可能なリチウム電池の負極用
電極構造体において,
b
Aは遷移金属元素クロム,マンガン,鉄,コバルト,ニッケル,銅,モリブデン,テクネチイウム,ルテニウム,ロジム,パラジウム,銀,イリジウム,白金,金,チタン,バナジウム,イットリウム,スカン
ジウム,ジルコニウム,ニオブ,ハフニウム,タンタル,タングステンから成るグループから選択された少なくとも1種の元素を示し,
c
Xは,酸素,フッ素,窒素,リチウム,イオウのグループ,鉛,ビスマス,アルミニウム,ガリウム,インジウム,チタン,亜鉛,ベリリウム,マグネシウム,カルシウム,ストロンチウムから成るグループ(a),ランタン,セシウム,プラセオジウム,ネオジウム,サマリウム,ユウロピウム,ガドリニウム,テルビウム,ディスプロシウム,
ホルミウム,エルビウム,ツリウム,イッテルビウム,ルテチウムから成るグループ(b),ホウ素,炭素,シリコン,リン,ゲルマニウム,ヒ素,セレン,アンチモン,テルルから成るグループ,のうちの一つのグループから選択された少なくとも1種類以上の元素を示し,
d
元素Ⅹは必ずしも含まれなくてもよく,

e
非晶質Sn,A,Ⅹ合金の構成元素スズSnの含有量は,Sn/
(Sn+A+Ⅹ)=20~80原子%で,

f
前記合金中の酸素とフッ素の含有量はそれぞれ5重量%を超えない範囲で,かつ酸素とフッ素の大部分は前記合金粒子の表面に存在する。

本件発明2-5-④
a
実質的に非化学量論比組成の非晶質Sn,A,Ⅹ合金(式中,Aは遷移金属元素のうちから選択される1種以上の元素を表し,

b
Xは窒素,マグネシウム,バリウム,ストロンチウム,カルシウム,ランタン,セシウム,シリコン,ゲルマニウム,炭素,リン,ホウ素,
鉛,ビスマス,アンチモン,アルミニウム,ガリウム,インジウム,タリウム,亜鉛,ベリリウム,プラセオジウム,ネオジウム,サマリウム,ユウロピウム,ガドリニウム,テルビウム,ディスプロシウム,ホルミウム,エルビウム,ツリウム,イッテルビウム,ルテチウム,ヒ素,セレン,テルル,リチウム,イオウからなる群から選択される
1種以上の元素を示しており,ただし,Ⅹは存在しても存在しなくてもよく,

c
上記の非晶質Sn・A・Ⅹ合金の構成元素スズSnの含有量は,Sn/(Sn+A+Ⅹ)=20~80原子%である)を含む粒子を含有し,

d
上記非晶質Sn・A・Ⅹ合金を含む前記粒子の比表面積が1㎡/g以上のリチウム二次電池の負極用電極材料。


本件発明2-5-⑤
ab
その負極電極材料が,非晶質のSn・A・Ⅹ合金粒子を含有し,

c
そのSn・A・Ⅹ合金組成物は非化学量論比であり,

d
少なくともリチウム二次電池の負極用電極材料において,

上記Sn・A・Ⅹの式中で,Aは遷移金属元素を含む群から選ばれる少なくとも1種の元素を表し,Xは,窒素,マグネシウム,バリウム,ストロンチウム,カルシウム,ランタン,セシウム,シリコン,ゲルマニウム,炭素,リン,ホウ素,鉛,ビスマス,アンチモン,アルミニウム,ガリウム,インジウム,タリウム,亜鉛,ベリリウム,プラセオジウム,ネオジウム,サマリウム,ユウロピウム,ガドリニ
ウム,テルビウム,ディスプロシウム,ホルミウム,エルビウム,ツリウム,イッテルビウム,ルテチウム,ヒ素,セレン,テルル,リチウム,イオウからなる群から選択される1種以上の元素を示しており,e
非晶質上記Sn・A・Ⅹ合金中のスズSnの組成は,Sn/(Sn+A+Ⅹ)=20~80原子%で,

fモ
上記非晶質Sn・A・Ⅹ合金の比表面積が1㎡/g以上である。
本件発明2-5-⑥(請求項1)

a
再充電可能なリチウム電池の負極用電極材料が実質的に非化学量論比組成を有する非晶質Sn・A・Ⅹ合金から成る粒子を含有し,

b
上記式Sn・A・Ⅹにおいて,Aはクロム,マンガン,鉄,コバルト,ニッケル,銅,モリブデン,テクネチイウム,ルテニウム,ロジ
ム,パラジウム,銀,イリジウム,白金,金,チタン,バナジウム,イットリウム,スカンジウム,ジルコニウム,ニオブ,ハフニウム,タンタル,タングステンから成るグループから選択された少なくとも1種の遷移金属元素を示し,
c
Ⅹは含有されなくてもよく,酸素,フッ素,窒素,マグネシウム,バリウム,ストロンチウム,カルシウム,ランタン,セシウム,シリコン,ゲルマニウム,炭素,リン,ホウ素,鉛,ビスマス,アンチモン,アルミニウム,ガリウム,インジウム,タリウム,亜鉛,ベリリウム,プラセオジウム,ネオジウム,サマリウム,ユウロピウム,ガドリニウム,テルビウム,ディスプロシウム,ホルミウム,エルビウ
ム,ツリウム,イッテルビウム,ルテチウム,ヒ素,セレン,テルル,リチウム,イオウからなる群から選択される1種以上の元素であってもよい,
d
前記非晶質上記Sn・A・Ⅹ合金中のスズSnの組成は,Sn/
(Sn+A+Ⅹ)=20~80原子%で,

e
前記非晶質Sn・A・Ⅹ合金から成る粒子は1㎡/g以上の比表面積を有している。

f
もし,前記非晶質Sn・A・Ⅹ合金から成る粒子に酸素O元素が含まれている場合,その酸素量は0.05重量%~5重量%の範囲の量で,

g
もし,前記非晶質Sn・A・Ⅹ合金から成る粒子にフッ素F元素が含まれている場合,そのフッ素量は0.05重量%~5重量%の範囲の量である。


本件発明2-5-⑥(請求項16)
a
再充電可能なリチウム電池の負極用電極材料が実質的に非化学量論比組成を有する非晶質Sn・A・Ⅹ合金から成る粒子を含有し,

b
上記式Sn・A・Ⅹにおいて,Aはクロム,マンガン,鉄,コバルト,ニッケル,銅,モリブデン,テクネチイウム,ルテニウム,ロジム,パラジウム,銀,イリジウム,白金,金,チタン,バナジウム,イットリウム,スカンジウム,ジルコニウム,ニオブ,ハフニウム,タンタル,タングステンから成るグループから選択された少なくとも
1種の遷移金属元素を示し,
c
Ⅹは炭素Cもしくは炭素Cと酸素,フッ素,窒素,マグネシウム,バリウム,ストロンチウム,カルシウム,ランタン,セシウム,シリコン,ゲルマニウム,炭素,リン,ホウ素,鉛,ビスマス,アンチモン,アルミニウム,ガリウム,インジウム,タリウム,亜鉛,ベリリ
ウム,プラセオジウム,ネオジウム,サマリウム,ユウロピウム,ガドリニウム,テルビウム,ディスプロシウム,ホルミウム,エルビウム,ツリウム,イッテルビウム,ルテチウム,ヒ素,セレン,テルル,リチウム,イオウからなる群から選択される1種以上の元素の元素で,d
前記非晶質上記Sn・A・Ⅹ合金中のスズSnの組成は,Sn/
(Sn+A+Ⅹ)=20~80原子%で,

e
前記非晶質Sn・A・Ⅹ合金から成る粒子は1㎡/g以上の比表面積を有している。

f
もし,前記非晶質Sn・A・Ⅹ合金から成る粒子に酸素O元素が含まれている場合,その酸素量は0.05重量%~5重量%の範囲の量
で,
g
もし,前記非晶質Sn・A・Ⅹ合金から成る粒子にフッ素F元素が含まれている場合,そのフッ素量は0.05重量%~5重量%の範囲の量である。


本件発明2-5-⑦
a
少なくともリチウム二次電池の負極用電極材料は,実質的に非化学
量論比組成の非晶質のSn・A・Ⅹ合金粒子を含有することを特徴とし,
b
上記Sn・A・Ⅹの式中で,Aは遷移金属元素を含む群から選ばれる少なくとも1種の元素を表し,

c
Ⅹは,酸素,フッ素,窒素,マグネシウム,バリウム,ストロンチウム,カルシウム,ランタン,セシウム,シリコン,ゲルマニウム,炭素,リン,ホウ素,ビスマス,アンチモン,アルミニウム,インジウム,亜鉛からなる群から選択される1種以上の元素を示しており,Ⅹは含有されていてもいなくてもよい。

d
上記非晶質Sn・A・Ⅹ合金の構成元素であるスズSnの組成は,Sn/(Sn+A+Ⅹ)=20~80原子%である。

(7)本件各特許権の発明者欄の記載
本件各特許権の特許公報の発明者欄には,別紙特許権目録1及び2の各発明者欄記載のとおり,原告のほか,訴外A(以下「A」という。),訴外B(以下「B」という。),訴外C(以下「C」という。),訴外D(以下「D」という。),訴外E(以下「E」という。)及び訴外F(以下「F」という。)が発明者として記載されている。
(8)原告に対する既払額
被告は,原告に対し,本件各職務発明に関する対価として,別紙既払額一
覧表記載のとおり合計18万8595円を支払った。
(9)本件発明1-1に係る特許の取消し
特許庁は,平成15年11月27日,本件発明1-1に係る特許につき,新規性がないとしてこれを取り消す旨の決定をした(以下「本件取消決定」という。)。なお,本件において,原告は,本件発明1-1について被告の
実施を主張していない。
(10)被告による消滅時効の援用

被告は,平成26年10月10日の第3回弁論準備手続期日において,本件発明1-2ないし1-5に係る相当対価請求について,消滅時効を援用した。
(11)本件各発明に先立つ公知技術
本件各発明に先立つ公知技術が記載された刊行物として,以下の文献が存
在する。

実願平1-60816号(実開平2-150760号)のマイクロフィルム(公開日平成2年12月27日。乙1。以下「乙1公報」といい,同公報に係る考案を「乙1考案」という。)


特開平5-82128号公報(公開日平成5年4月2日。乙9。以下「乙9公報」といい,同公報に係る発明を「乙9発明」という。)

特開平4-355052号公報(公開日平成4年12月9日。乙10。以下「乙10公報」といい,同公報に係る発明を「乙10発明」という。)


特開平9-245771号公報(公開日平成9年9月19日。乙11。以下「乙11公報」といい,同公報に係る発明を「乙11発明」という。)


特開平6-187971号公報(公開日平成6年7月8日。乙16。以下「乙16公報」といい,同公報に係る発明を「乙16発明」という。)


特開平4-129177号公報(公開日平成4年4月30日。乙106。以下「乙106公報」といい,同公報に係る発明を「乙106発明」という。)


特開平8-124568号公報(公開日平成8年5月17日。乙108。以下「乙108公報」といい,同公報に係る発明を「乙108発明」という。)


特開平6-290780号公報(公開日平成6年10月18日。乙109。以下「乙109公報」という。)


特開昭60-202675号公報(公開日昭和60年10月14日。乙110。以下「乙110公報」という。)

3
争点
(1)本件特許権1に係る各発明について

本件発明1-2ないし1-5の実施の有無


本件発明1-2ないし1-5の特許無効に基づく技術的優位性欠如の有無
(ア)乙1考案による新規性欠如の有無

(イ)公然実施の有無
(ウ)被告による無効主張の許否

消滅時効の成否

(2)本件特許権2に係る各発明について

本件特許権2に係る各発明の実施の有無
(ア)本件発明2-1-①及び2-1-②の実施の有無(イ)本件発明2-2-①ないし2-2-④の実施の有無(ウ)本件発明2-3-①ないし2-3-⑤の実施の有無(エ)本件発明2-4-①ないし2-4-⑤(請求項44)の実施の有無(オ)本件発明2-5-①(請求項1)ないし2-5-⑦の実施の有無

本件特許権2に係る各発明の技術的優位性欠如の有無
(ア)本件発明2-1-①の乙9発明に対する技術的優位性欠如の有無(イ)本件発明2-1-①の乙10発明に対する技術的優位性欠如の有無(ウ)本件発明2-1-①の特許法36条違反による技術的優位性欠如の有

(エ)本件発明2-1-②の乙10発明に対する技術的優位性欠如の有無
(オ)本件発明2-2-②の乙106発明に対する技術的優位性欠如の有無(カ)本件発明2-2-④の乙106発明に対する技術的優位性欠如の有無(キ)本件発明2-3-①の乙11発明に対する技術的優位性欠如の有無(ク)本件発明2-3-②(請求項2)及び同(請求項9)の乙11発明に対する技術的優位性欠如の有無

(ケ)本件発明2-3-③(請求項1),同(請求項6)及び同(請求項7)の乙11発明に対する技術的優位性欠如の有無
(コ)本件発明2-3-④(請求項5),同(請求項9)及び同(請求項11)の乙11発明に対する技術的優位性欠如の有無
(サ)本件発明2-3-⑤の乙11発明に対する技術的優位性欠如の有無
(シ)本件発明2-4-④の乙108発明に対する技術的優位性欠如の有無(ス)本件発明2-4-⑤(請求項1)及び同(請求項44)の乙108発明に対する技術的優位性欠如の有無
(セ)本件発明2-4-⑤(請求項1)及び同(請求項44)の乙16発明に対する技術的優位性欠如の有無

(3)相当の対価の算定
アイ1
共同発明者間の寄与割合


第3

使用者の貢献度


被告の得た独占的利益の額

相当な対価の額

争点に関する当事者の主張
争点(1)ア(本件発明1-2ないし1-5の実施の有無)について
〔原告の主張〕
被告は,以下のとおり,平成12年頃から現在まで販売しているリチウムイオン二次電池において,本件発明1-2ないし1-5を実施している。(1)本件発明1-2について

被告が販売するリチウムイオン二次電池のバッテリーパックのうち,代表的な製品である「NB-5L」及び「LP-E6」(以下,併せて「本件各キヤノン・バッテリーパック」という。)は,以下のとおり,本件発明1-2の構成要件aないしeをいずれも充足する。

構成要件aについて
本件各キヤノン・バッテリーパックは,一般的な二次電池と同様に,負極,セパレータ,正極,非水電解質もしくは非水電解液(本件では一般的なリチウムイオン二次電池と同様に六フッ化リン酸リチウムを使用),ハウジング(電池ケース)の機構を有している。そして,このうち「NB-5L」は角型の形状を有し,「LP-E6」は円筒形の形状
を有するから,いずれも構成要件aを充足する。

構成要件bについて
本件各キヤノン・バッテリーパックは,一般的なリチウムイオン二次電池と同様に,リチウムとコバルト,ニッケル又はマンガンの遷移金属元素との複合酸化物からなっているから,いずれも構成要件bを充足す
る。

構成要件cについて
本件各キヤノン・バッテリーパックは,一般的な二次電池と同様に,負極と正極がセパレータを介して互いに対向する面を持つから,いずれも構成要件cを充足する。


構成要件dについて
本件各キヤノン・バッテリーパックにおける負極面と正極面間の「垂直な距離d」は,「NB-5L」では18μm,「LP-E6」では26μmである。また,負極エッジ先端から正極エッジ先端までの最短距
離は,「NB-5L」では200μm,「LP-E6」では450μmである。

したがって,本件各キヤノン・バッテリーパックにおいては,負極エッジ先端から正極エッジ先端までの最短距離が「垂直な距離d」の10倍以上であるから,構成要件dを充足する。

構成要件eについて
本件各キヤノン・バッテリーパックにおいては,対向する構造を持つ正極と負極の端部には最外周と中心部のいずれにもずれが生じており,いずれも負極の方が正極よりも外側にはみ出しているのであって,これにより,正極面の負極面への投影面が負極面内にあり,負極面積は正極面積より大きくなっている。

また,本件各キヤノン・バッテリーパックは,これらの機構を有することにより,負極のエッジ部に生ずる電界の集中を回避して,樹状突起の形成が阻害され,電池の長寿命化を図ることができる。
したがって,本件各キヤノン・バッテリーパックは,構成要件eを充足する。

(2)本件発明1-3ないし1-5について
本件発明1-2ないし1-5の各構成要件はおおむね同一である。このうち本件発明1-2は,負極エッジ先端と正極エッジ先端の距離が負極面と正極面間の垂直な距離dの「10倍以上であること」を構成要件としているところ(上記(1)の構成要件d),本件発明1-3ないし1-5は
これが「5倍以上」とされている点で異なる。しかし,本件各キヤノン・バッテリーパックは,いずれも負極エッジ先端と正極エッジ先端の距離が負極面と正極面間の垂直な距離dの「10倍以上」であり,本件発明1-3ないし1-5の構成要件も充たすものである。
また,本件発明1-5においては「再充電可能なリチウム電池,再充電可
能なニッケル-亜鉛電池,亜鉛-酸素電池,再充電可能な臭素-亜鉛電池からなる群から選択される二次電池」であることが構成要件となっているが,
本件各キヤノン・バッテリーパックはいずれも「再充電可能なリチウム電池」であるから,当該構成要件も充足する。
したがって,本件各キヤノン・バッテリーパックは,本件発明1-3ないし1-5の全ての構成要件を充足する。
(3)被告による実施品の譲渡
被告は,本件各キヤノン・バッテリーパックを搭載したコンパクトデジタルカメラやデジタル一眼レフカメラ等の製品を販売している上,これらの製品の付属品として,バッテリーパック単体としても販売を行っている。そして,平成12年頃以降に販売された被告のビデオカメラ,コンパクト
デジタルカメラ,デジタル一眼レフカメラ等の製品に搭載され,また,これらの製品の付属品として販売されたバッテリーパックは,いずれも本件各キヤノン・バッテリーパックと同様に,本件発明1-2ないし1-5の構成要件を充足するものである。
したがって,被告は本件発明1-2ないし1-5が用いられた製品を少な
くとも「譲渡」(特許法2条3項1号)しているから,被告による本件発明1-2ないし1-5の実施は明らかである。
〔被告の主張〕
(1)本件発明1-2について
以下のとおり,本件各キヤノン・バッテリーパックは本件発明1-2の構
成要件bないしeを充足しない。

構成要件bについて
原告は,本件各キヤノン・バッテリーパックが,一般的なリチウムイオン二次電池と同様にリチウムとコバルト,ニッケル又はマンガンの遷移金属元素との複合酸化物からなっている旨主張するが,これを裏付ける証拠はない。


構成要件cについて

原告は,本件各キヤノン・バッテリーパックが,一般的な二次電池と同様に負極と正極がセパレータを介して互いに対向する面を持つと主張するが,原告提出の書証(甲18)に記載された図は「類似の構造」というだけであって,本件各キヤノン・バッテリーパックの構造そのものではなく,その解体プロセスも不明である。


構成要件dについて
原告提出の書証(甲18)には,セパレータの厚みにつき,単に「報告者記載」の計測結果が並べられているだけであって,解体や測定のプロセスの説明も客観性を担保する記述もない。

また,上記書証における負極エッジ先端から正極エッジ先端までの最短距離の測定方法は不適切である。
さらに,上記書証においては,本件各キヤノン・バッテリーパックのうち「NB-5L」のX線CT図が不鮮明であるため,同図から,負極エッジ先端から正極エッジ先端までの最短距離を検証することは困難で
ある。
そして,上記書証によれば,本件各キヤノン・バッテリーパックのうち「LP-E6」については,その上部側に電極の幅方向における「負極エッジ先端から正極エッジ先端までの最短距離」が存在し,その上部側の,電極の幅方向における「負極エッジ先端から正極エッジ先端まで
の最短距離」がセパレータの厚みdの10倍未満であるため,構成要件dを充足しない。
加えて,上記書証には,「NB-5L」の「正極内側」と「負極外側」の「中心部における・・・ズレ」は0mmとあり,また,「正極外側」と「負極内側」の中心部におけるズレも0mmとある。上記書証によれ
ば,中心部は負極と正極の先端がセパレータを介してそろっているとされているから,負極エッジ先端から正極エッジ先端までの最短距離は,
セパレータの厚みと同じとなり,その結果,負極エッジ先端から正極エッジ先端までの最短距離(18μm)は,負極面と正極面の距離d(18μm)の10倍以上ではないことになる。

構成要件eについて
原告は,本件各キヤノン・バッテリーパックにおいては,対向する構
造を持つ正極と負極の端部には最外周と中心部のいずれにもずれが生じており,いずれも負極の方が正極よりも外側にはみ出していると主張するが,原告提出の書証(甲18)の各写真はその証明になっていない上,解体と測定のプロセスの説明を欠き,客観性が担保されていない。したがって,同書証によっても,構成要件eの充足性は証明されていな
い。
(2)本件発明1-3ないし1-5について

上記(1)のとおり,本件各キヤノン・バッテリーパックが本件発明1-2の構成要件を充足しているとは認められない。そして,本件発明1-3ないし1-5と本件発明1-2とは,原告も認めているとおり実質的
に同一であるから,本件各キヤノン・バッテリーパックが本件発明1-3ないし1-5を充足するという原告の主張は失当である。

また,本件発明1-4は「前記負極は,・・・電池が組み立てられた時にはリチウム元素を含有しない負極活物質を含み」という構成要件c
を含むが,原告は「電池が組み立てられた時にリチウム元素を含有しない負極活物質を含」んでいることを立証していない。
(3)被告による実施品の譲渡について
原告は,被告のビデオカメラ等に搭載されたバッテリーパックが本件各キヤノン・バッテリーパックと同様に本件発明1-2ないし1-5の各構成要
件を充足すると主張するが,そもそも,これらが同一の構成を有することを裏付ける根拠は示されていない。

したがって,仮に本件各キヤノン・バッテリーパックが本件発明1-2ないし1-5の各構成要件に該当しているとしても,そのことから,被告の製品に搭載された全てのリチウムイオン二次電池が上記各構成要件に該当していることにはならないのであって,原告の主張は証拠に基づくものではない。2
争点(1)イ(ア)(乙1考案による新規性欠如の有無)について
〔被告の主張〕
(1)総論
本件発明1-1に係る特許権は,乙1考案に照らして新規性がないことを理由に取り消す旨の本件取消決定が下されている。そして,本件特許権1-1と,そのファミリー特許である本件特許権1-2ないし1-5とは,請求項の類似性が極めて高いことが明らかである。
したがって,本件発明1-2ないし1-5は,仮に実施がされていたとしても,いずれも技術的優位性が認められず,被告の独占的利益の源泉になっているとはいえないから,上記各発明に関する相当な対価の支払請求は認め
られない。
(2)本件発明1-1について
まず,本件発明1-1に新規性がないとする特許庁の本件取消決定に誤りはない。
この点につき原告は,本件発明1-1にいう「エッジ部」と乙1考案にい
う「端面」とが異なることを前提に,両発明は課題の捉え方が異なる旨主張するが,そもそも「エッジ部」と「端面」とは同じ部位を指すものである。また,原告は,両者を同一であるとした本件取消決定の計算は,一般的に負極の「エッジ部」が湾曲していることを全く考慮に入れていない点で誤りがある旨主張するが,一般的に負極の「エッジ部」が湾曲していることを示
す証拠はない。
(3)本件発明1-2ないし1-5について

本件発明1-2ないし1-5の構成要件は,全て乙1公報に記載されており,本件発明1-2ないし1-5は乙1考案により公知であるから,技術的優位性はない。
〔原告の主張〕
(1)総論
特許権の有効性は各国ごとに判断される以上,本件発明1-1に係る特許権が取り消されたとしても,なお有効な特許として存続している本件特許権1-2ないし1-5に「技術的優位性」がないことになるわけではない。また,そもそも本件発明1-1に対する本件取消決定が確定したのは,被
告の知的財産部の過誤が原因であって,本件発明1-1には本来取り消されるべき理由はなかったものである。
(2)本件発明1-1について
本件発明1-1と乙1考案とは,その特徴において全く異なる発明である。まず,本件発明1-1では,「考案が解決しようとする課題」として,
「リチウムのデンドライトが電界の集中し易い負極エッジ部に高い割合で発生する」(本件明細書等1-1の段落【0016】)ことが挙げられているのに対して,乙1公報では同様の課題は全く開示されていない。乙1公報には「このように金属リチウムがデンドライト状に成長するのは,電池の充電の間に,リチウムが負極の幅方向及び長さ方向の端面に集まりやすく」(乙
1公報の【考案が解決しようとする課題】)との開示はあるが,そもそも「端面」と「エッジ部」は全く異なる部位である。
また,本件発明1-1では,負極面上に垂直に投影した正極の投影面が該負極面内にあるという関係(本件明細書等1-1の図2)や,正極エッジ先端から負極エッジ先端までの最短距離が前記正極と前記負極との間の距離の
10倍以上であるという,正極エッジ先端から負極エッジ先端までの最短距離の最小値が規定されていることが大きな特徴となっているが,乙1公報で
はこのような概念や特徴は全く開示されていない。この点につき本件取消決定は,乙1考案には「両極エッジ間の最短距離については規定されていない」ことを明確に認定しながらも,実施例において示されている「セパレータの厚み」及び「正極に対して負極がはみ出る長さ」を三平方の定理に当てはめて計算し,「正極エッジ先端から負極エッジ先端までの最短距離が,前記正
極と前記負極との間の距離の10倍以上であるといえる」などと結論付けているが,これは,一般的に負極の「エッジ部」が湾曲していることを全く考慮に入れていない点で誤っている。
したがって,被告が審決取消訴訟を提起していれば,特許庁による本件取消決定は取り消されていたはずである。

(3)本件発明1-2ないし1-5について
本件特許権1-2ないし1-5は,各登録国において有効と認められ,登録されたものであり,現時点においても有効に存続しているものであって,本件発明1-2ないし1-5が新規性を有することは明らかである。3
争点(1)イ(イ)(公然実施の有無)について

〔被告の主張〕
訴外ソニー株式会社(以下「ソニー」という。)は,遅くとも,本件特許権1-1ないし1-5の優先日(いずれも平成6年5月30日)の約1年半前の平成4年11月,リチャージャブル・バッテリーパック「NP-500」(以下単に「NP-500」という。)を販売している。
このNP-500に格納された電池は,以下のとおり,本件発明1-1ないし1-5の各構成要件を充足していたから,本件発明1-1ないし1-5に係る特許権には,公然実施による無効事由がある(特許法29条1項2号,123条1項2号)。

(1)本件発明1-1について
NP-500は,以下のとおり,本件発明1-1の構成要件aないしdを
いずれも充足する。

構成要件aについて
訴外●(省略)●作成の報告書(乙68。以下「乙68報告書」という。)には,①NP-500に格納された電池には負極,セパレータ及び正極があること,②上記電池には電池ケースがあること,③上記電池
には電解質があることが記載されている。
したがって,NP-500に格納された電池は,構成要件aを充足する。

構成要件bについて
乙68報告書によれば,セパレータを介して対向した状態で捲回され
ていた「正極」の内側と「負極」の外側,及び,「正極」の外側と「負極」の内側は,いずれも全長及び幅の双方において「負極」(負極活物質層)の方が「正極」(正極活物質層)よりも長くなっている。
したがって,NP-500に格納された電池は,「負極」の方が「正極」よりも大きく,構成要件bを充足する。


構成要件cについて
乙68報告書によれば,①全長方向のうち巻き始め部分において,「負極」(負極活物質層)は「正極」(正極活物質層)よりもはみ出しており,②全長方向のうち巻き終わり部分においても,「負極」(負極
活物質層)は「正極」(正極活物質層)よりはみ出しており,③幅方向においても,「正極」は「負極」の内側にある。
したがって,NP-500に格納された電池の「正極」は,四辺が全て「負極」よりも内側に配置され,「負極」の四辺全てが「正極」よりはみ出しているから,負極面上に垂直に投影した正極の投影面は負極面
内にあるのであって,NP-500に格納された電池は構成要件cを充足する。


構成要件dについて
乙68報告書によれば,同報告書の「観察条件(3)-写真13

X
Z断面(下部)外周部のX線CT画像」(乙68報告書22頁)及び同図に負極活物質層及び正極エッジを中心とした半径252μmの円を加筆した図からも明らかなように,「正極」エッジ先端から「負極」エッ
ジ先端までの最短距離と前記「正極」と前記「負極」との間の距離の比が10倍以上であることは明白である。
したがって,NP-500に格納された電池は構成要件dを充足する。(2)本件発明1-2ないし1-5について
上記(1)のとおり,NP-500は,本件発明1-1の構成要件を充足し
ていることに加え,①本件発明1-2の構成要件aの「非水電解液」を有し,構成要件bの「前記正極がリチウム含有の遷移金属酸化物で」あり,構成要件cの「前記負極と前記正極は前記セパレータを介して互いに対向」しており,②本件発明1-3の構成要件bの「前記負極は,前記正極と対向して配置され」ており,③本件発明1-4の構成要件bの「前記負極と前記正極は,セパレータを介して互いに対向するように位置して」おり,④本件発明1-5の構成要件bの「前記負極および前記正極は,電池内で互いに対向して」いる。
したがって,NP-500は,本件発明1-1と同様に,本件発明1-2
ないし1-5の構成要件も充足する。
(3)原告の主張に対する反論

「公然」実施について
この点に関して原告は,平成10年12月16日までは「鋼材のような高密度厚部材の内部の形状を0.1mm単位で正確に測定できる」と
いう高性能の工業用X線CT装置は存在せず,したがって本件発明1-1ないし1-5は平成6年5月30日当時公然実施されていなかったな
どと主張する。
しかし,「0.1mm単位」で正確に測定できるX線CT装置は,本件発明1-1ないし1-5の優先日である平成6年5月30日時点で既に十分存在していたものである。

乙68報告書の分析対象について
また,原告は,①乙68報告書において分析対象とした電池と,平成6年5月30日以前に販売されていたNP-500の電池とが,同一の電池であるという事実は確認されていない,②仮に分析対象とした電池が同日以前に製造されたものであったとすれば,著しい劣化が生じてい
るであろうことは容易に想像できるなどと主張する。
しかし,上記①については,ソニーに対する調査嘱託の回答により,同一の電池であることが確認されている。また,上記②については,何ら裏付けのない主張である。
〔原告の主張〕

以下のとおり,NP-500は本件発明1-1ないし1-5を実施したものではなく,本件発明1-1ないし1-5は公然実施されていないから,被告の主張は理由がない。
(1)「公然」実施について
リチウムイオン二次電池について,一般又は不特定の者が工業用X線CT
装置を用いた非破壊内部構造分析を実施することが可能となったのは,訴外株式会社日立製作所(以下「日立製作所」という。)が「鋼材のような高密度厚部材の内部の形状を0.1mm単位で正確に測定できる」(甲48)という高性能の工業用X線CT装置を開発した平成10年12月16日以降である。そのため,平成6年5月30日当時,工業用X線CT装置を用いた非
破壊内部構造分析によって本件特許権1に係る発明の実施の有無を確認することは,物理的・理論的に不可能であった。

また,ソニー等によって,NP-500の分析結果が公表されていたなどの事実も存在しない。
したがって,NP-500が平成6年5月30日以前から販売されており,仮に当該製品に本件特許権1に係る発明が実施されていたとしても,平成6年5月30日の時点では,発明の内容を不特定の者が容易に知り得るような状況で当該発明が実施されていた事実はなく,「その内容が公然知られる状況」又は「公然知られるおそれのある状況で実施をされた」ことはあり得ないのであるから,本件特許権1に係る発明は公然実施されていない。(2)乙68報告書の分析対象について

本件発明1-1ないし1-5に関して公然実施が認められるためには,その前提として,少なくとも優先日である平成6年5月30日より前の時点において販売されていたNP-500が上記各発明の構成要件を充足していることが必要となる。
しかし,本件においては,乙68報告書において分析対象とした電池(以
下「乙68対象電池」という。)と,平成6年5月30日以前に販売されていたNP-500の電池とが,同一の電池であるという事実は確認されていない。すなわち,NP-500の電池はソニーが他の競合電池メーカーに先んじて商品化した初期のリチウムイオン二次電池であるため,販売後も随時改良や修正等が加えられていることが推察されるのであって,乙68対象電
池は改良等が施された後のものである可能性がある。
また,仮に乙68対象電池が平成6年5月30日以前に製造されたものであったとすれば,製造から最低でも21年が経過していることになり,著しい劣化が生じているであろうことが容易に想像できる。
したがって,乙68対象電池は,平成6年5月30日以前に流通していた
リチウムイオン二次電池に本件発明1-1ないし1-5が実施されていることを分析するための対象として不適切であり,乙68報告書をもって本件発
明1-1ないし1-5の実施を証明することはできない。
(3)本件発明1-1について

構成要件cについて
被告は,NP-500に格納された電池の「正極」は,四辺が全て「負極」よりも内側に配置され,「負極」の四辺全てが「正極」よりは
み出しているから,負極面上に垂直に投影した正極の投影面は負極面内にあると主張する。
しかし,乙68報告書には,全長方向の巻き始め部分及び巻き終わり部分では正極集電体及び負極活物質層が撮像されておらず,「負極」(負極活物質層)が「正極」(正極活物質層)よりもはみ出している事
実は認められない。
したがって,NP-500が本件発明1-1の構成要件cを充足することは何ら立証されていない。

構成要件dについて
被告は,「正極」エッジ先端から「負極」エッジ先端までの最短距離と前記「正極」と前記「負極」との間の距離の比が10倍以上であることは明白などと主張する。
しかし,被告がその主張の根拠とする乙68報告書には,「正極」エッジ先端から「負極」エッジ先端までの最短距離と前記「正極」と前記
「負極」との間の距離の比が10倍以上であることは,一切記載されていない。それどころか,上記報告書には「『正極』エッジ先端から『負極』エッジ先端までの最短距離」との記載すら存在しない。
被告の主張はいずれも証拠に基づかないものであり,NP-500が本件発明1-1の構成要件dを充足することは何ら立証されていない。
(4)本件発明1-2ないし1-5について
上記(3)によれば,NP-500は本件発明1-2ないし1-5の各構成
要件も充足していない。
4
争点(1)イ(ウ)(被告による無効主張の許否)について

〔原告の主張〕
(1)知的財産高等裁判所平成19年(ネ)第10056号同21年6月25日判決〔ブラザー工業事件控訴審判決〕は,「発明者たる一審原告らから『特許を受ける権利』の譲渡を受けた一審被告が,同権利を特許権とすべくその後自らの責任において出願し取得した特許権につき,職務発明報酬請求訴訟において上記特許権につき無効事由があると主張することは,譲渡契約時に予定されていなかった事情に基づき譲渡契約の効力を過去に遡って斟酌しよ
うとする点で背理であり,譲渡人たる従業者が特許無効事由があることを知りながら譲渡した等の特段の事情がない限り,許されないと解される」,「有効な特許権の存在を前提にこれを実施してきた使用者が,職務発明報酬対価請求訴訟を提起されるに至って初めて無効事由の存在を主張して当該利益の従業者への配分を免れようとすることは,前記特許法旧35条3項及び
4項の趣旨のみならず禁反言の見地からも到底容認できるものではない。」と判示している。
(2)本件についてみると,被告は,本件発明1-2ないし1-5に係る特許の有効性及び有用性を理解した上で,自社特許を活用するために上記各特許に関する分析調査等を繰り返していたにもかかわらず,原告から職務発明の対
価の請求を受けるや否や,一転して,それまで議論の俎上に上がったことすらない無効事由の存在を主張するなどして,原告への対価の支払を免れようとしているのである。
このような被告の対応は,改正前特許法35条3項及び4項の趣旨及び禁反言の見地から容認されない。

したがって,本訴において被告が本件発明1-2ないし1-5に係る特許権の無効に関する主張を行うことは,法的に許容されない。

〔被告の主張〕
争う。
5
争点(1)ウ(消滅時効の成否)について

〔被告の主張〕
(1)本件発明1-2ないし1-5については,いずれも登録された日から本訴提起の時点である平成25年11月15日までに既に10年を経過しており,かつ,原告の主張する自社実施の時期(平成12年頃)からも本訴提起の時点までに10年を経過している。
したがって,仮に本件発明1-2ないし1-5の実施が認められるとして
も,その相当対価請求権は既に時効消滅している。
(2)原告の主張に対する反論
この点に関して原告は,被告の本件取扱規程21条1項が「支払時期に関する条項」であることを前提に,被告の消滅時効の起算点は誤りであると主張する。

しかし,本件取扱規程21条1項は,実施対価の支払時期を画するものではなく,被告社内の内部的な手続及び支払の要件を定めたものにすぎないから,原告の主張は失当である。
〔原告の主張〕
勤務規則等に対価の支払時期が定められているときは,勤務規則等の定めに
よる支払時期が到来するまでの間は,相当の対価の支払を受ける権利の行使につき法律上の障害があるものとして,その支払を求めることができないというべきところ(最高裁平成13年(受)第1256号同15年4月22日第三小法廷判決・民集57巻4号477頁参照),被告の本件取扱規程には支払時期に関する条項があるから(本件取扱規程21条1項),被告の主張する消滅時
効の起算点は誤りである。
そして,原告が本件発明1-2ないし1-5の実施を認識したのは平成21
年8月19日であり,また本件取扱規程に基づいて支払時期が到来したのは平成22年1月1日であるから,いずれにせよ消滅時効期間は満了していない。6
争点(2)ア(ア)(本件発明2-1-①及び2-1-②の実施の有無)について
〔原告の主張〕
原告作成の報告書(甲21。以下「甲21報告書」という。)等によれば,ソニーが製造し,主に同社のデジタルビデオカメラ等において使用されている「Nexelion」の代表的な製品である「NP-FV50」のバッテリーパック(以下単に「NP-FV50」という。)では,以下のとおり,本件発明2-1-①及び2-1-②が実施されている。
(1)本件発明2-1-①について

構成要件aについて
NP-FV50は,一般的な二次電池と同様に,電池ケース内に電解質(溶媒中に溶解した際に陽イオンと陰イオンに電離する物質)を有し,その中にセパレータによって隔てられた正極と負極を有する二次電池である。

したがって,NP-FV50は構成要件aを充足する。

構成要件bについて
NP-FV50を解体の上,負極を走査型電子顕微鏡(以下「SEM」ともいい,SEMで観察することを「SEM観察」ともいう。)で観察
したところ,2種類の粒子が検出された。
また,当該粒子をEDX(電子線照射により発生する特性Ⅹ線を検出し,エネルギーで分光することによって,元素分析や組成分析を行う手法。)により元素分析したところ,2種類の粒子のうち粒子1は黒鉛(C)であり,粒子2はスズ(Sn)を主元素とするスズ(Sn)合金
であることが判明した。
このうちスズ(Sn)は酸ともアルカリとも反応する金属であるため,
両性金属に含まれるから,NP-FV50は,「負極が少なくとも酸ともアルカリとも反応する両性金属と合金化した金属粉末で構成」されており,構成要件bを充足する。

構成要件cについて
NP-FV50の負極断面をSEM観察し,画像解析から粒子の面積
を計算し,その直径を算出したところ,NP-FV50の負極から検出されたスズ合金粒子の粒径(粒子径)は最も大きいものでも約9.9μm程度であることが観測された。
したがって,スズ合金粒子の粒径は100μm以下である。
よって,NP-FV50は,構成要件cを充足する。


小括
以上のとおり,NP-FV50は本件発明2-1-①の構成要件aないしcを全て充足する。

(2)本件発明2-1-②について
本件発明2-1-②は本件発明2-1-①とおおむね同一であるが,負極が両性金属と「ニッケル,コバルト,銅,チタン,鉄からなる群から選択される少なくとも一つの金属」と合金化した金属粉末からなることが付加されている点で異なる。
この点,NP-FV50では,2種類の粒子のうちの粒子2には両性金属
であるスズの他,コバルト及びチタンが含まれており,この点も充足する。したがって,NP-FV50は,本件発明2-1-②の構成要件も充足する。
〔被告の主張〕
(1)本件発明2-1-①の構成要件bについて

甲21報告書の別紙8頁「図10」の「粒子2のEDXスペクトル」は,粒子2が,成分として炭素(C),酸素(O),スズ(Sn),コバルト
(Co),チタン(Ti),鉄(Fe),フッ素(F),リン(P),アルミニウム(Al),ケイ素(Si)を含有していることを示しているが,構成要件(b)の「合金」に該当することまでは示していない。
また,粒子2は,「図10」のとおり,金属ではない炭素(C),酸素(O),フッ素(F)を含んでおり,構成要件(b)の「金属粉末」に該当しない。
さらに,第三者の調査機関作成に係る「解体電池内部部材調査」報告書と題する書面(甲23の1。以下「甲23の1報告書」という。)と原告作成の甲21報告書とを比較すると,甲23の1報告書では「Pは電解液由来と
判断しております。Al,Siも検出されていますが,コンタミの可能性があります。」と注記されている一方,炭素(C)がバインダー由来,黒鉛であるか否かには何ら言及していないのに対し,甲21報告書では上記注記のうち「Al,Siも検出されていますが,コンタミの可能性があります。」との部分は記載されておらず,かえって「Cは,バインダー由来,黒鉛由来
の可能性がある」という原告独自の記載がされている。
したがって,甲21報告書から,NP-FV50が構成要件bを充足することを導くことはできない。
(2)本件発明2-1-②について

構成要件bについて
本件発明2-1-①の構成要件bについての上記(1)の記載は,本件発
明2-1-②の構成要件bについても同様に当てはまる。イ
他の構成要件について
本件発明2-1-②には「充放電によりリチウムの酸化還元反応が起きる」との構成要件cがあるところ,これについては,甲21報告書に
「リチウムイオン二次電池の一般的な性質として,リチウムの酸化還元反応を充放電反応に利用していることから,構成要件cも充足する」と
する原告作成の説明文があるにすぎず,甲23の1報告書を含め,上記記載を裏付ける客観的な証拠がない。
NP-FV50の構成要件cの充足性の証明には,NP-FV50において,「リチウムイオンの酸化還元反応」が実際に起こっていること,この酸化還元反応が充放電により生じることを明らかにしなければなら
ないが,原告はその証明ができていない。
したがって,NP-FV50が本件発明2-1-②の構成要件cを充足するとは認められない。
7
争点(2)ア(イ)(本件発明2-2-①ないし2-2-④の実施の有無)について
〔原告の主張〕
NP-FV50では,以下のとおり,本件発明2-2-①ないし2-2-④がいずれも実施されている。
(1)本件発明2-2-①について

構成要件aについて
NP-FV50は,電解質中に,セパレータで分離される負極及び正極を有するリチウムイオン二次電池である。
したがって,NP-FV50は構成要件aを充足する。


構成要件bについて
NP-FV50の負極を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察したところ,2種類の粒子のうち粒子2からスズ(Sn)が検出されている。また,当該粒子には,スズ(Sn)の他,炭素(C),酸素(O),フッ素(F),コバルト(Co),チタン(Ti),鉄(Fe),リン(P),アルミニウム(Al),シリコン(Si)がそれぞれ検出され
ている。
このうちスズ(Sn)は,リチウムと合金化する金属であり,また,
コバルト(Co),チタン(Ti),鉄(Fe)はリチウムと合金化しない金属である。
したがって,NP-FV50の負極は,リチウムと合金化する金属であるスズ(Sn)とリチウムと合金化しない金属であるコバルト(Co),チタン(Ti)及び鉄(Fe)を有していることになり,NP-
FV50は構成要件bを充足する。

構成要件cについて
NP-FV50の負極の集電体は銅箔(Cu箔)であり,負極のタブリード(正電極及び負電極と外部との電気の出し入れを行なう。出力端子ともいう。)が,集電体(電池反応により活物質で発生した電子を集
め,又は供給する。)より引き出されている。また,一般的なリチウムイオン二次電池と同様に,NP-FV50のタブリード(出力端子)にはニッケル(Ni)が用いられている。
銅(Cu)及びニッケル(Ni)は,いずれもリチウムと合金化しない金属である。

したがって,NP-FV50は構成要件cを充足する。

構成要件dについて
NP-FV50を解体の上,負極表面をレーザー顕微鏡により観察したところ,Rmax(最大高さ)が0.716μm,Ra(中心線平均
粗さ)が3.830μmとの結果を得た。Rmax(最大高さ)の1/2は1.915μm(3.830μm÷2)であり,Ra(中心線平均粗さ)は0.716μmであるため,その差は1.199μm(1.915μm-0.716μm)となる。
他方,負極表面正極表面間の距離(セパレータの厚み)は19μmで
あるため,その1/10は1.9μm(19μm÷10)である。したがって,最大高さRmaxの1/2と中心線平均粗さRaとの差
1.199μmは,負極表面正極表面間の距離の1/10である1.9μmより小さい(1.199μm<1.9μm)ことになり,NP-FV50は構成要件dを充足する。

構成要件eについて
NP-FV50を解体の上,負極表面をレーザー顕微鏡により観察し,
測定長L=128μmの範囲でその表面粗さを計測したところ,ピーク形状の山の数nは少なくとも5以上観測された。
また,調査の対象とした試料は上記構成要件dにおいて述べた調査の対象試料と同一であるから,Ra(中心線平均粗さ)は0.716μmである。

したがって,1+(4nRa/L)=1+(4×5×0.716/128)=1.111となり,1.05以上であるから,NP-FV50は構成要件eを充足する。

小括
以上のとおり,NP-FV50は,本件発明2-2-①の構成要件を全て充足する。

(2)本件発明2-2-②について
本件発明2-2-②の構成要件は本件発明2-2-①の構成要件と実質的に同一であるから,NP-FV50は本件発明2-2-②の構成要件も充足する。
(3)本件発明2-2-③について
本件発明2-2-③においては,負極層がリチウムと合金化できない金属と,リチウムと合金化可能な金属から成ることが規定されている。そして,リチウムと合金化可能な金属として,「アルミニウム,マグネシウム,カリ
ウム,ナトリウム,カルシウム,ストロンチウム,バリウム,シリコン,ゲルマニウム,アンチモン,鉛,インジウム,亜鉛から選択される1種類以上
の金属」(構成要件i)と規定され,この中には,スズ(Sn)が含まれていない点で,本件発明2-2-①と異なる。
しかし,上記(1)イのとおり,NP-FV50の解体調査によれば,負極に含まれる2種類の粒子のうち粒子2から,スズ(Sn)の他,炭素(C),酸素(O),フッ素(F),コバルト(Co),チタン(Ti),鉄(Fe),リン(P),アルミニウム(Al)及びシリコン(Si)がそれぞれ検出されており,アルミニウム及びシリコンがが含まれているから,当該構成要件も充足する。
そして,その余の構成要件は本件発明2-2-①の構成要件と実質的に同
一であるから,NP-FV50は本件発明2-2-③の構成要件も充足する。(4)本件発明2-2-④について
本件発明2-2-④においても同様に,リチウムと合金可能な金属として列挙される金属にスズ(Sn)が含まれておらず,本件発明2-2-③と同様にアルミニウム(Al)及びシリコン(Si)が列挙されているところ
(構成要件a),上記(1)イのとおり,NP-FV50の負極に含まれる粒子2にはアルミニウム及びシリコンが含まれているから,当該構成要件も充足する。
そして,その余の構成要件は本件発明2-2-①の構成要件と実質的に同一であるから,NP-FV50は本件発明2-2-④の構成要件も充足する。
〔被告の主張〕
(1)本件発明2-2-①について

構成要件bについて
構成要件bは「充電時にリチウムと合金を作る金属元素」と「充電時にリチウムと合金を作らない金属元素」を要件としているが,原告はこ
れらの要件充足性の立証をしていない。
すなわち,「充電時にリチウムと合金を作る金属元素」との要件を充
足しているといえるためには,例えば,NP-FV50の負極材料であるスズ(Sn)がリチウムと合金を作るのが「充電時」であることを立証する必要があるが,NP-FV50の負極材料であるスズ(Sn)が実際に充電時にリチウムと合金を作っていることを示す証拠はない。同様に,「充電時にリチウムと合金を作らない金属元素」との要件を充足
しているというには,例えば,NP-FV50の負極材料であるコバルト(Co)がリチウムと合金を作らないことが「充電時」のものとして立証されなければならないが,NP-FV50の負極材料であるコバルト(Co)が実際に「充電時」にリチウムと合金を作っていないことを示す証拠はない。

したがって,NP-FV50は構成要件bを充足しない。

構成要件cについて
甲21報告書別紙5頁の図3及び図4には,負極のタブリードが集電体より引き出されたことを示すものがない。甲21報告書別紙6頁にはタブリードが正極はアルミニウム(Al)材,負極はニッケル(Ni)
材と「推定」するとの記載があるが,なぜ直接認定せずに「推定」なのか,合理的な説明がされておらず,そのような推定に至ったプロセスも明らかにされていない。
したがって,NP-FV50は構成要件cを充足しない。

構成要件dについて
甲21報告書には,Rmax(最大高さ)及びRa(中心線平均粗さ)の測定方法は記載されていない。
また,第三者の調査機関作成に係る「レーザー顕微鏡による負極表面形状測定」報告書と題する書面(甲23の2。以下「甲23の2報告書」
という。)では,「測定視野」は128μm×128μmの領域に限定して任意の2箇所が測定され,うち1箇所の「NP-FV50②」の方は,
Rmaxに4.908,Raに0.511とあり,それぞれ当てはめて計算すると,「最大高さRmaxの1/2と中心線平均粗さRaとの差」=1.943μmとなり,1.9μm(負極表面正極表面間の距離の1/10)より大きい。したがって,「NP-FV50②」のデータによれば,「最大高さRmaxの1/2と中心線平均粗さRaとの差が,負
極表面正極表面間の距離の1/10以下であ」るとする構成要件dを充足していない。
そもそも,甲21報告書は測定箇所の選定等に問題があり,構成要件dの充足の証拠となっていない。
したがって,NP-FV50は構成要件dを充足しない。


構成要件eについて
原告は「ピーク形状の山の数nは,少なくとも5以上観測された」と主張するが,甲21報告書別紙16頁の図15からは,具体的にどれを「山」というのか,また,なぜそれらを「山」といえるのか,不明であ
る。
また,構成要件eの「1+(4nRa/L)が1.05以上であること」は,「充放電前の負極の表面粗さとサイクル寿命の相関を取ると,図8のようなデータが得られ」た点から定められたものであり(本件明細書等2-2-①の段落【0030】),構成要件eの充足性判断には
「充放電前の負極」の測定が必要である。これに対し,原告は「市販されているリチウムイオン二次電池の解析を第三者の調査機関に依頼」しているが(甲21報告書1頁),リチウムイオン二次電池は一定の充放電を経た後に市販されるものであるから,甲23の2報告書の測定は充放電後の試料により実施されたことが認められる。そうすると,「充放
電前の負極」の試料ではないから,構成要件eの充足性判断には不適切である。

したがって,NP-FV50は構成要件eを充足しない。
(2)本件発明2-2-②について

構成要件b及びcについて
(ア)「第一の金属」が同一の金属であること

構成要件bは「負極が,(a)充電時に生成するリチウムと合金化しない第一の金属から成る集電体,(b)集電体上の層が充電時に生成するリチウムと合金化しない第一の金属と,充電時に生成するリチウムと合金化する第二の金属から構成されてい」るというものであるが,本件明細書等2-2-②(甲4の4)のコラム25の下から12行目に「s
aid

first

metal」と記載されていることから,構成要

件bの二つの上記「第一の金属」は,同じ金属を指していることになる。ところが,原告は,構成要件bの(a)「充電時に生成するリチウムと合金化しない第一の金属から成る集電体」として銅を挙げているのに対し,(b)集電体上の層の「充電時に生成するリチウムと合金化しない第一の金属」としてはコバルト(Co),チタン(Ti)及び鉄(Fe)を挙げており,これら二つの「第一の金属」は同じ金属になっていない。
したがって,NP-FV50は構成要件bを充足しない。
むしろ,甲21報告書によれば,構成要件bの「集電体上の層(負極
層)」を構成する金属として,構成要件cで特定されている金属のうち,チタン(Ti),コバルト(Co),鉄(Fe)は検出されているが,銅(Cu)は検出されていない。また,甲21報告書からすると,構成要件bの「集電体」を構成する金属として,構成要件cに列挙されている金属のうち,銅(Cu)は検出されているが,チタン(Ti),コバ
ルト(Co),鉄(Fe)が検出されていない。
したがって,NP-FV50における集電体上の層(負極層)と集電
体とが同じ「第一の金属」で構成されていないことが甲21報告書に明示されているのであるから,甲21報告書によれば,NP-FV50は構成要件b及びcを充足しない。
(イ)「充電時に生成するリチウムと合金化しない/する」についての主張立証の不存在

上記(1)アと同様に,原告は,NP-FV50における負極材料である金属が「充電時に生成するリチウムと合金化しない/する金属」であるという点について立証しておらず,また,甲21報告書にも「充電時」の分析結果であることを示す記載はない。
したがって,NP-FV50は構成要件bを充足しない。


構成要件eについて
原告は,構成要件eの「前記負極は初期充電する前にリチウムが含まれていない」のうち,リチウムが含まれていないのが「初期充電する前」であることの立証をしていない。

すなわち,原告は,「市販されているリチウムイオン二次電池の解析を第三者の調査機関に依頼し」たものであるところ(甲21報告書1頁),リチウムイオン二次電池は一定の充放電を経た後に市販されるものであり,したがって,甲21報告書に記載された測定は,全て初期充電がされた後の試料に対して実施されている。そのため,こうした試料
を分析したところで,構成要件eを充足したと認めることはできない。また,甲21報告書には「放電完了の負極からはリチウムは検出されておらず」との記載があるが(甲21報告書19頁),その根拠が不明である。リチウムイオン二次電池の場合,放電時に負極中のリチウムの全てが放出され尽くされるわけではないため,必ず一定量は検出される
はずであるから,測定によってリチウムが実際に検出されなかったとすれば,測定の方法に欠陥があることを示している。

したがって,NP-FV50は構成要件eを充足しない。
(3)本件発明2-2-③について

構成要件dについて
原告は,構成要件dの「前記集電体(101,200)は,充電時にリチウムと合金形成不能な,ニッケル,チタン,銅,銀,金,白金,鉄,
コバルト,クロム,タングステン,モリブデンからなるグループから選択される1種以上の金属から成り」のうち,NP-FV50の集電体が「充電時にリチウムと合金形成不能な・・・金属から成」っている点について,立証していない。
したがって,NP-FV50は構成要件dを充足しない。


構成要件gについて
上記(1)アと同様に,原告は,構成要件gの「前記層(102,201)は(i)充電時にリチウムと合金化ができない金属(106)と(ii)充電時にリチウムと合金化可能な金属から成る」という点について,やはり立証していない。

したがって,NP-FV50は構成要件gを充足しない。

構成要件hについて
原告は,構成要件hの「前記層(102,201)は前記金属(106)を含み,前記金属(106)はその表面に多く存在している,そして前記層(102,201)は充電が行われる前にはリチウムを含まな
い」のうち,「前記金属(106)はその表面に多く存在している」点及び「充電が行われる前」に「リチウムを含まない」点を立証していない。
したがって,NP-FV50は構成要件hを充足しない。

構成要件iについて
甲21報告書の別紙8頁図10の「粒子2のEDXスペクトル」には,
アルミニウム(Al)とシリコン(Si)が記載されているが,甲23の1報告書には「Al,Siも検出されていますが,コンタミの可能性があります」との注記がされている。しかも,甲21報告書の別紙10頁によれば,ICPによる分析の結果,アルミニウムもシリコンも検出されていない。

訴外●(省略)●も,平成26年4月4日付け報告書(乙6。以下「乙6報告書」という。)において●(省略)●分析しているが,やはりアルミニウムは検出されていない。また,シリコンについても,同報告書において●(省略)●と指摘されており,シリコンをコンタミとして除外している。

結局,アルミニウム及びシリコンはコンタミにすぎず,NP-FV50は構成要件iを充足しない。
(4)本件発明2-2-④について

構成要件aについて
上記(3)エのとおり,アルミニウム及びシリコンはコンタミであって,
NP-FV50には含まれていない元素である。
したがって,NP-FV50は構成要件aを充足しない。

構成要件bについて
原告は,構成要件bの「前記表面領域と上記部分が金属(a)を含有する」という点を主張立証していない。

したがって,NP-FV50は構成要件bを充足しない。
8
争点(2)ア(ウ)(本件発明2-3-①ないし2-3-⑤の実施の有無)について
〔原告の主張〕
NP-FV50では,以下のとおり,本件発明2-3-①ないし2-3-⑤がいずれも実施されている。

(1)本件発明2-3-①について

構成要件aについて
NP-FV50は,負極,正極及び電解質を有している。また,NP-FV50は,リチウムイオンの酸化還元反応を充放電に利用した二次電池である。

したがって,NP-FV50は構成要件aを充足する。

構成要件cについて
●(省略)●作成の平成26年4月7日付け報告書(乙5。以下「乙5報告書」という。)のⅩ線回折パターンにおいて,NP-FV50と
同機種の「NP-FH50」の合金の最も回折強度の強いピーク4の半価幅は1.18度であって0.48度より大きく,NP-FV50における2θ=42.6度,45度付近のピークの半価幅も0.48度より大きい。
また,当該スズ合金粒子にはチタン(Ti)が含まれており,スズ
(Sn)は電気化学的にリチウム以外の物質に不活性な金属であるから,当該スズ合金粒子は,「炭素材料と銅,チタン,ニッケルから選択されるリチウム以外の物質に対して電気化学的に不活性な材料との複合体」である。
さらに,NP-FV50の負極断面をSEM観察した結果,スズ合金
粒子の形状は,真球状ではなく,角張った粒子であることが判明した。スズ合金粒子が溶解あるいは蒸発によって形成された場合は真球状になり,機械粉砕によって形成された場合は角張った粒子になることから,NP-FV50の負極におけるスズ合金粒子は,機械粉砕,すなわちメカニカルグラインディング処理によって形成されたものと結論付けられ
る。
したがって,NP-FV50は構成要件cを充足する。なお,構成要
件bとcとは選択的であるから,重ねて構成要件bを充足する必要はない。

小括
以上のとおり,NP-FV50は,本件発明2-3-①の構成要件を全て充足する。

(2)本件発明2-3-②(請求項2)及び同(請求項9)についてア
本件発明2-3-②(請求項2)は,負極活物質が「コバルト,ニッケル,マンガン,鉄からなる群から選択される少なくとも一つの元素(i)と,リチウム電池の充電/放電反応時負極のリチウム以外の物質に電気化学的に不活性な材料(ii)との複合体」(構成要件d)であることを
要する点で,本件発明2-3-①とは異なる。
この点,NP-FV50の解体調査によれば,負極に含まれる2種類の粒子のうち粒子2から,スズ(Sn),炭素(C),酸素(O),フッ素(F),コバルト(Co),チタン(Ti),鉄(Fe),リン(P),アルミニウム(Al)及びシリコン(Si)がそれぞれ検出さ
れており,コバルトと,リチウム以外の物質に電気化学的に不活性なチタンが含まれているから,当該構成要件も充たす。

また,本件発明2-3-②(請求項2)は,負極活物質が「貴な標準電極電位を有する少なくとも一つの金属を含有する」(構成要件d)ことを要する点においても異なるが,標準電極電位が貴な材質としては,
主に「コバルト,ニッケル,スズ,鉛,白金,銀,銅,金,合金」などが挙げられるところ,上記のとおり,NP-FV50の負極に含まれる粒子にはコバルト及びスズが含有されていることから,当該構成要件も充たす。

そして,本件発明2-3-②(請求項2)のその余の構成要件及び本件発明2-3-②(請求項9)の構成要件は本件発明2-3-①の構成
要件と実質的に同一であるから,NP-FV50は本件発明2-3-②(請求項2)及び同(請求項9)の各構成要件も充足する。
(3)本件発明2-3-③(請求項1),同(請求項6)及び同(請求項7)並びに本件発明2-3-④(請求項5),同(請求項9)及び同(請求項11)について
これらの各発明の構成要件は本件発明2-3-①の構成要件と実質的に同一であるから,NP-FV50はこれらの各発明の各構成要件も充足する。(4)本件発明2-3-⑤について
本件発明2-3-⑤についても本件発明2-3-②(請求項2)と同様の
相違点があるが,上記(2)のとおりこれを充足する。
したがって,NP-FV50は本件発明2-3-⑤の構成要件を充足する。〔被告の主張〕
(1)本件発明2-3-①について

構成要件aについて
原告が甲21報告書の根拠とする第三者機関作成の甲23の1報告書
及び甲23の2報告書には,NP-FV50がリチウムイオンの酸化還元反応を充放電に利用した二次電池であることを裏付ける記載はなく,根拠となる証拠も提出されていない。NP-FV50が構成要件aを充足していることを立証するためには,NP-FV50において「リチウムイオンの酸化還元反応」が実際に起こっていること,この酸化還元反
応が充放電に利用されていることを証明しなければならないが,原告は証明していない。
したがって,NP-FV50は構成要件aを充足しない。

構成要件cについて
(ア)ピークの半価幅
ピークの半価幅につき,甲21報告書別紙23頁には,乙5報告書の
一部を拡大し,原告が手書きで計測したと思われる書き込みが見られる。しかし,実際に乙5報告書の広角X線回折法で測定した●(省略)●がピークと認めなかった箇所を,原告がピークと判断した理由は,明らかにされていない。しかも,原告のように計測を手書きによったのではベースラインの決定が随意となってしまい,「半価幅」の測定値に客観性がない。さらに,NP-FH50とNP-FV50とで原告のベースラインの引き方に一貫性がない。
構成要件cは「X線回折角度2θに対して最も強い回折強度が現れたピークの半価幅」というものであるが,乙5報告書3頁のとおり,約2
6度付近に,42.6度や45度付近のピークと比較して遥かに強い回折強度が現れたピークの存在が明らかに認められる。
したがって,42.6度又は45度付近に「最も強い回折強度が現れたピーク」が存在するとする原告の主張は失当である。42.6度又は45度付近のピークの半価幅が0.48度よりも大きいこと(それ自体
も信用性に欠ける。)をもってしても構成要件cの充足性は立証されていない。
(イ)炭素材料が複合体の構成要素とされていること
構成要件cには「炭素材料と銅,チタン,ニッケルから選択されるリチウム以外の物質に対して電気化学的に不活性な材料との複合体」と記
載されている。すなわち,複合体の構成要素として,「炭素材料」に加え,「銅,チタン,ニッケルから選択されるリチウム以外の物質に対して電気化学的に不活性な材料」の2種類が必須である。
この点,原告は「当該スズ合金粒子は,『炭素材料と銅,チタン,ニッケルから選択されるリチウム以外の物質に対して電気化学的に不活性
な材料との複合体』である」と主張しているが,原告がいうところの「スズ合金粒子」に「炭素材料」が含まれていることについて,具体的
に主張も立証もしていない。
かえって,原告は,甲21報告書別紙8頁に「Cは,バインダー由来,黒鉛由来の可能性がある:報告者記載」と記載し,原告がいうところの「スズ合金粒子」には「炭素材料」が含まれていないとの考えを示して,NP-FV50が本件発明2-5-①の構成要件dを充足していると主張している。NP-FV50の負極活物質に構成要件cで規定される「炭素材料」が含まれていないとする原告のこの考えを前提とすれば,むしろ,NP-FV50は本件発明2-3-①の構成要件cを充足していないことになる。

(ウ)銅,チタン,ニッケルから選択されるリチウム以外の物質に対して電気化学的に不活性な材料
チタン(Ti)がリチウム以外の物質に対して電気化学的に不活性な材料であるとする記述は,甲21報告書21頁にあるが,これは原告本人が根拠を示すことなく書いただけのものである。甲21報告書の引用
元とする甲23の1を精査しても,チタンがリチウム以外の物質に対して電気化学的に不活性な材料であることを示す記述は見当たらない。構成要件cの「リチウム以外の物質に対して電気化学的に不活性な材料」とは,リチウム以外の全ての物質に対して電気化学的に不活性な材料を指す。このため,NP-FV50の負極層に含まれるチタンがリチ
ウム以外の物質に対して電気化学的に不活性な材料であることを立証するには,「リチウム以外の物質」を具体的に「全て」列挙し,列挙した「リチウム以外の物質」の全てに対してNP-FV50の負極層に含まれるチタンが実際に電気化学的に不活性であることを立証する必要があるが,原告はこの立証をしていない。

したがって,NP-FV50は構成要件cを充足しない。
(エ)メカニカルグラインディング処理

甲21報告書21頁の「メカニカルグラインディング処理によって形成されたものと結論付けられる」との記載は,原告自身が具体的な根拠も示さずに記載したものである。同別紙7,8頁にも,メカニカルグラインディング処理によって形成されたことを示す記述はない。原告が甲21報告書の根拠とする第三者機関作成の甲23の1報告書にも,このことを認めるに足りるような記載はうかがわれない。
また,原告は,「機械粉砕によって形成された場合は,角張った粒子になる」という前提から,「NP-FV50の負極におけるスズ合金粒子は,機械粉砕,すなわちメカニカルグラインディング処理によって形
成されたもの」との結論を導いている。しかし,「機械粉砕によって形成された場合は,角張った粒子になる」という前提自体が成り立っていない。
(オ)メカニカルグラインディング処理によって非晶質相を有するに至ったこと

構成要件cには「メカニカルグラインディング処理によって・・・半価幅が0.48度以上を示す非晶質相を有するに至った」とあり,メカニカルグラインディング処理と,半価幅が0.48度以上を示す非晶質相を有するに至ったこととの因果関係が規定されている。
しかるに,甲23の1報告書には,メカニカルグラインディング処理
によって半価幅が0.48度以上を示す非晶質相を有するに至ったことを認める記述はない。
また,仮に,①NP-FV50の負極層の粒子が角張っており,②当該角張った粒子がメカニカルグラインディング処理によって形成されたものであり,③当該角張った粒子が半価幅0.48度以上を示す非晶質
相を有する合金であったとしても,その粒子の合理的な製造方法として他の方法の可能性もあるのであるから,NP-FV50の負極層の粒子
が,メカニカルグラインディング処理によって半価幅が0.48度以上を示す非晶質相を有するに至ったものであるとの証明はできない。(2)本件発明2-3-②(請求項2)について

構成要件aについて
構成要件aのうち「充放電でリチウムイオンの酸化還元反応を利用す
る」については,本件発明2-3-①の構成要件aの場合と同じ理由により,NP-FV50は本件発明2-3-②(請求項2)の構成要件aを充足しない。

構成要件cについて
構成要件cの「前記活物質の,回折角2θ(シータ)に対する回折強
度を示したX線回折チャートでは最大回折強度のピークの半価幅が0.48度より狭くなく」については,上記(1)イ(ア)と同様の理由により,NP-FV50は本件発明2-3-②の構成要件cを充足しない。ウ
構成要件dについて
構成要件dのうち,金属(ⅱ)が「充電/放電反応時負極のリチウム以外の物質に電気化学的に不活性」であるという点に対しては,例えば,スズが充電/放電反応時にリチウム以外の物質と反応している可能性があるにもかかわらず,原告は主張も立証もしていない。
金属(ⅱ)としてのスズが「充電/放電反応時負極のリチウム以外の
物質に電気化学的に不活性」であることを立証するには,まず,充電/放電反応時にNP-FV50の負極層に含まれるスズと接触する「リチウム以外の物質」を具体的に全て列挙し,列挙した「リチウム以外の物質」の全てに対して,NP-FV50の負極層に含まれるスズが実際に充電時及び放電反応時に電気化学的に不活性であることが証明されなけ
ればならないが,原告はその立証をしていない。
したがって,NP-FV50は構成要件dを充足しない。

(3)本件発明2-3-②(請求項9)について
本件発明2-3-②(請求項9)は同(請求項2)に従属する請求項であるため,NP-FV50は本件発明2-3-②(請求項9)の構成要件aも充足しない。
(4)本件発明2-3-③(請求項1)について

構成要件aについて
構成要件aのうち「充電/放電でリチウムイオンの酸化/還元反応を利用する」との点は,本件発明2-3-①の構成要件aと同様の理由により充足しない。


構成要件cについて
構成要件cのうち「前記非晶質層(相)を有する材料は,回折角2θ(シータ)に対する回折強度を示したX線回折チャートにおいて最大回折強度のピークの半価幅が0.48度より狭くなく」については,上記(1)イ(ア)と同様の理由により充足しない。


構成要件dについて
構成要件cの正しい和訳は「非晶質層(相)を有する金属と炭素から選択された少なくとも一つと,リチウム電池の充電/放電時に利用される活物質のリチウム以外の物質に電気化学的に不活性である材料と,を含む」である。

このように,構成要件dには,(i)非晶質層(相)を有する金属と炭素から選択された少なくとも一つ,及び(ii)リチウム電池の充電/放電時に利用される活物質のリチウム以外の物質に電気化学的に不活性である材料,の少なくとも2種の物質を含むことが規定されており,構成要件cの立証には上記(i)と(ii)の2種の物質が含まれていることの証明が必
要である。
しかし,原告は,上記(ii)に加えて上記(i)が含まれている点について
立証していない。
(5)本件発明2-3-③(請求項6)について

構成要件aについて
本件発明2-3-③(請求項6)は同(請求項1)に従属する請求項であるから,NP-FV50は本件発明2-3-③(請求項6)の構成
要件aも充足しない。

構成要件bについて
構成要件bの「アルミニウム,マグネシウム,鉛,カリウム,ナトリウム,カルシウム,ストロンチウム,バリウム,シリコン,ゲルマニウム,スズ,インジウムから選択される少なくとも一つの元素を含む金属
材料」が「電気化学反応により生成されるリチウムと合金化する」ことを立証するには,構成要件bで規定される金属材料のうちNP-FV50の負極層に含まれる金属材料(例えば,スズ)が,電気化学反応により生成されるリチウムと実際に合金を作っていることの証明が必要であるが,原告はその立証をしていない。

したがって,NP-FV50は構成要件bを充足しない。
(6)本件発明2-3-③(請求項7)について

構成要件aについて
本件発明2-3-③(請求項7)は同(請求項1)に従属する請求項であるから,NP-FV50は本件発明2-3-③(請求項7)の構成要
件aも充足しない。

構成要件bについて
構成要件bの「ニッケル,コバルト,チタン,銅,銀,金,タングステン,モリブデン,鉄,白金,クロム,から選択される少なくとも一つ
の元素を含む金属材料」が「電気化学反応により生成されるリチウムと合金化しない」ことを立証するには,構成要件bで規定される金属材料
のうちNP-FV50の負極層に含まれる金属材料(例えば,コバルト)が,電気化学反応により生成されるリチウムと実際に合金を作っていないことの証明が必要であるが,原告はこの証明をしていない。
したがって,NP-FV50は構成要件bを充足しない。
(7)本件発明2-3-④(請求項5)について

構成要件aについて
構成要件aのうち「充電/放電でリチウムイオンの酸化/還元反応を利用する」については,本件発明2-3-①の構成要件aと同様の理由により充足しない。


構成要件bについて
(ア)結晶物質の混合物
構成要件bの正しい和訳は「・・・炭素と非晶質相を有する金属の少なくとも一つを含む結晶物質と,リチウム電池の充放電で利用される活物質がある電極中のリチウム以外に電気化学的に不活性な材料,との混
合物」である。
このように,構成要件bの混合物は,(i)炭素と非晶質相を有する金属の少なくとも一つを含む結晶物質と,(ii)リチウム電池の充放電で利用される活物質がある電極中のリチウム以外に電気化学的に不活性な材料との混合物である。したがって,構成要件bの立証には,物理的エネ
ルギーを加える前の混合物が,上記(i)の結晶物質と上記(ii)の材料との混合物であったことの証明が必要である。
そのため,構成要件bの充足立証には,物理的エネルギーを加える前の混合物が,上記(i)の結晶物質と上記(ii)の材料との混合物であったことが証明されなければならないところ,原告は,この点の立証をして
いない。また,このうち上記(i)の「結晶物質」の証明には,炭素か,非晶質相を有する金属のいずれかの存在を立証する必要があり,さらに,
非晶質相を有する金属の場合は,それが物理的エネルギーを加える前の段階で非晶質相を有する結晶物質であったことが証明されなければならないが,原告は,この点の立証もしていない。
(イ)物理的エネルギーを加えて形成される複合体
原告は,構成要件bのうち「混合物に物理的エネルギーを加えて形成
される複合体を含有」するという点の立証をしていない。
すなわち,上記(ア)のとおり,物理的エネルギーを加える前の混合物が,(i)炭素と非晶質相を有する金属の少なくとも一つを含む結晶物質と,(ii)リチウム電池の充放電で利用される活物質がある電極中のリチウム以外に電気化学的に不活性な材料との混合物であったことの証明が
必要であるが,原告はこの証明をしていない。
したがって,NP-FV50は構成要件bを充足しない。

構成要件c
(ア)非晶質相
原告は,構成要件cのうち「前記複合体は少なくとも非晶質相を有」
するとの点を立証していない。
したがって,NP-FV50は構成要件cを充足しない。
(イ)X線回折角2θに対する最大回折強度のピークの半価幅
構成要件cのうち「X線回折における回折角2θ(シータ)に対する最大回折強度のピークの半価幅が0.48度より狭くない」点について,
上記(1)イ(ア)と同様の理由から,NP-FV50は構成要件cを充足しない。
(8)本件発明2-3-④(請求項9)について

本件発明2-3-④(請求項5)と共通する点
本件発明2-3-④(請求項9)は,同(請求項5)に従属する請求項であり,上記(7)と同様の理由から,NP-FV50は本件発明2-3
-④(請求項9)の構成要件aを充足しない。

リチウムと合金化すること
原告は,構成要件aのうち「電気化学反応により析出リチウムと合金化する」という点を立証していない。
「電気化学反応により析出リチウムと合金化する」という点は,本件
発明2-3-③(請求項6)の構成要件bと同じであり,したがって,上記(5)イと同様の理由から,NP-FV50は本件発明2-3-④(請求項9)の構成要件aを充足しない。
(9)本件発明2-3-④(請求項11)についてア
本件発明2-3-④(請求項5)と共通する点
本件発明2-3-④(請求項11)は,同(請求項5)に従属する請求項であり,上記(7)と同様の理由から,NP-FV50は本件発明2-3-④(請求項11)の構成要件aを充足しない。

リチウムと合金化しないこと
原告は,構成要件aのうち「電気化学反応により析出リチウムと合金
化しない」という点を立証していない。
「電気化学反応により析出リチウムと合金化しない」という点は,本件発明2-3-③(請求項7)の構成要件bと同じであり,上記(6)イと同様の理由から,NP-FV50は本件発明2-3-④(請求項11)の構成要件aを充足しない。

(10)本件発明2-3-⑤について

構成要件aについて
構成要件aのうち「充放電でリチウムイオンの酸化還元反応を利用する」という点については,本件発明2-3-①の構成要件aと同様の理
由から,NP-FV50は本件発明2-3-⑤の構成要件aを充足しない。


構成要件cについて
構成要件cの「回折角2θ(シータ)に対する回折強度を示したX線回折チャートでは最大回折強度のピークの半価幅が0.48度より狭くな」いという点については,上記(1)イ(ア)と同様の理由から,NP-FV50は構成要件cを充足しない。


構成要件dについて
原告は,構成要件dのうち,金属(ⅱ)が「リチウム電池の充電/放電反応時負極のリチウム以外の物質に電気化学的に不活性」であるという点を立証していない。例えば,スズが充電/放電反応時にリチウム以外の物質と反応している可能性があるが,原告はこの可能性を否定でき
ていない。
上記(2)ウに記載のとおり,例えば,金属(ⅱ)としてのスズが「充電/放電反応時負極のリチウム以外の物質に電気化学的に不活性」であることの立証には,まず,充電/放電反応時にNP-FV50の負極層に含まれるスズと接触する「リチウム以外の物質」を具体的に全て列挙し,
列挙した「リチウム以外の物質」の全てに対してNP-FV50の負極層に含まれるスズが実際に充電時及び放電反応時に電気化学的に不活性であることを証明しなければならないが,原告はこの証明ができていない。
したがって,NP-FV50は構成要件dを充足しない。

9
争点(2)ア(エ)(本件発明2-4-①ないし2-4-⑤(請求項44)の実施の有無)について

〔原告の主張〕
NP-FV50では,以下のとおり,本件発明2-4-①ないし2-4-⑤(請求項44)がいずれも実施されている。
(1)本件発明2-4-①について


構成要件aについて
NP-FV50の集電体には銅箔が用いられており,その両面には電極材料層がコーティングされている。
そして,負極の電極材料層の主材はスズ合金であり,NP-FV50の電極材料層をICP発光分光分析法(試料をArプラズマに導入し,
励起された元素が基底状態に戻る際に放出される光を分光して,波長から元素の定性,強度から定量を行う分析方法。)によって分析したところ,スズ(Sn)及びスズと合金化しているチタン(Ti),鉄(Fe),コバルト(Co)の重量の合計は55.97重量%であり,35重量%を上回ることが明らかとなった。

また,NP-FV50負極断面をSEM観察した結果によれば,スズ合金粒子の平均粒子径は約0.9μmであるため,構成要件で規定されている0.5~60μmの範囲内である。
したがって,NP-FV50は構成要件aを充足する。

構成要件bについて
空隙率(気孔率)とは,総体積に対する空隙部分の比を意味するところ,これは,水銀の表面張力が大きいことを利用して,粉体の細孔に水銀を浸入させるために圧力を加え,圧力と圧入された水銀量から比表面積や細孔分布を求める方法(水銀圧入法)により求めることができる。NP-FV50の負極材料層につき,水銀圧入法を用いて空隙率(気
孔率)を計測したところ,空隙率(気孔率)は18%であり,構成要件bで規定されている10%から86%の範囲内であることが明らかとなっている。
したがって,NP-FV50は構成要件bを充足する。

構成要件cについて
乙5報告書に掲載されたX線回折パターンを元に計測したところ,N
P-FH50及びNP-FV50のいずれにおいても,スズ合金の結晶子サイズは10nmないし50nmであった。
したがって,NP-FV50は構成要件cを充足する。

構成要件dについて
NP-FV50を解体して調査したところ,NP-FV50の集電体
は銅箔(Cu箔)であった。
したがって,NP-FV50は構成要件dを充足する。

小括
以上のとおり,NP-FV50は,本件発明2-4-①の構成要件を全て充足する。

(2)本件発明2-4-②(請求項1)及び同(請求項40)についてア
本件発明2-4-②(請求項1)及び同(請求項40)は,電極材料層が「1.00~6.56g/c㎥の範囲の密度を有」することを構成要件とする点で,本件発明2-4-①と実質的に異なる。この点,原告において,NP-FV50を調査の上,負極電極層密度
の下限値及び上限値を求めたところ,下限値は1.45g/c㎥,上限値は5.97g/c㎥であることが明らかとなっている。

また,本件発明2-4-②(請求項1)及び同(請求項40)においては,「前記主母材は,シリコン,ゲルマニウム,スズ,鉛,インジウム,マグネシウム,亜鉛から成る群から選択される一つ以上の元素から
構成され」ることなどが規定されている点で,本件発明2-4-①とは異なるが,NP-FV50の電極材料層の主材はスズ(Sn)合金であり,これも充足する。

そして,本件発明2-4-②(請求項1)及び同(請求項40)のその余の構成要件は本件発明2-4-①の構成要件と実質的に同一であるから,NP-FV50は本件発明2-4-②(請求項1)及び同(請求
項40)の各構成要件も充足する。
(3)本件発明2-4-③及び同2-4-④についてこれらの各発明の構成要件は本件発明2-4-①の構成要件と実質的に同一であるから,NP-FV50はこれらの各発明の各構成要件も充足する。
(4)本件発明2-4-⑤(請求項1)及び同(請求項44)について本件発明2-4-⑤においても,本件発明2-4-②(請求項1)及び同(請求項40)と同様に主母材を構成する元素が列挙されているが,NP-FV50の電極材料層の主材はスズ(Sn)合金であることから,同様に充
足する。
そして,本件発明2-4-⑤(請求項1)及び同(請求項44)のその余の構成要件は本件発明2-4-①の構成要件と実質的に同一であるから,NP-FV50は本件発明2-4-⑤(請求項1)及び同(請求項44)の各構成要件も充足する。

〔被告の主張〕
(1)本件発明2-4-①について

構成要件aについて
(ア)NP-FV50において「チタン(Ti),鉄(Fe),コバルト(Co)」が「スズと合金化している」ことは立証されておらず,これ
らの元素が「主材」に当たることも立証されていない。
したがって,NP-FV50は構成要件aの「主材35重量%以上」を充足しない。
(イ)また,甲21報告書にはスズ合金粒子の平均粒子径が約0.9μmである旨記載されているが,負極層のどの範囲を測定したかは明らかにさ
れておらず,「平均粒径」の測定といえる根拠も不明である。「平均粒径」とは,負極層全体に含まれる各粒子の直径の平均を意味するところ,
甲21報告書をみても,原告が負極層全体から平均粒径を算出したのか定かでなく,上記「0.9μm」の数値に客観性がない。
したがって,NP-FV50は構成要件aの「平均粒径0.5~60μmの粒子からなる主材」も充足しない。

構成要件bについて
原告は,水銀圧入法により空隙率(気孔率)を計測したところ,空隙率(気孔率)は18%であったと主張する。
しかし,本件明細書等2-4-①では水銀圧入法以外の方法によって空隙率が求められている上(本件明細書等2-4-①の段落【0026】),水銀と他の金属との合金であるアマルガムを生成する試料には,
性質上,水銀圧入法を使用できないのであって,NP-FV50の空隙率の測定に水銀圧入法を用いるのは適切ではない。
そして,SEM測定によれば,負極の電極材料層における空隙率はNP-FH50が4.6%,NP-FV50が4.1%であった(乙4)。したがって,NP-FV50は構成要件bを充足しない。


構成要件cについて
上記8の〔被告の主張〕(1)イ(ア)のとおり,原告は手書きで計測していて,ベースラインの決め方が随意である上,NP-FH50とNP-FV50とで原告のベースラインの引き方に一貫性がない。こうした客
観性に欠ける「半価幅」を利用して求めた「結晶子サイズ」も必然的に客観性を欠いている。
また,原告は,「2θ=42.6度のピークの半価幅は0.7度となりScherrer式から計算された結晶子サイズは12.1nm」となることを結晶時サイズの根拠としているが,「2θ=42.6度のピ
ーク」がスズ合金に帰属し,かつその結晶子サイズが「12.1nm」であるとの結論は,分析の専門家でもない原告が客観的な根拠を示すこ
となく導いたものであって,信用することができない。仮に原告が主張するように「2θ=42.6度のピーク」がスズ合金で,かつ,その結晶子サイズが「12.1nm」であったとすると,NP-FV50の負極のスズ系物質は,結晶子サイズがそれぞれ12.1nm,1.2nm,1.1nmの各微結晶が混在して構成されていることになる。

また,原告は,NP-FV50の負極電極材の主成分のX線回折ピークは「非常にブロード」であるとしている一方で,NP-FV50の負極電極材料層における主材のX線回折ピークを「非常にブロード」とはほど遠い半価幅0.7度としており(甲21報告書),主張に一貫性がない。

そして,甲23の1報告書には「2θ=32°付近のブロードピークはSn合金と考えられ,半価幅が7.98°である」とあり,この値を「Scherrerの式」(本件明細書等2-4-①の段落【0068】)に代入して(角度の単位をラジアンに変換した上で,λ=0.15418nm(標準的に用いられるCuKαの波長)として)計算すると,結
晶子サイズは約1.1nmとなり,乙5報告書の分析結果である1.2nmとほぼ一致する。
したがって,NP-FV50は構成要件cを充足しない。
(2)本件発明2-4-②(請求項1)について

構成要件bについて
構成要件bの「0.5~60ミクロンの平均粒径の粒子状主母材を35重量%以上含」む点については,本件発明2-4-①の構成要件aと同様の理由により,NP-FV50は本件発明2-4-②(請求項1)の構成要件bを充足しない。


構成要件cについて
構成要件cの「0.10から0.86の空隙率を有」する点について
は,本件発明2-4-①の構成要件bと同様の理由により,NP-FV50は本件発明2-4-②(請求項1)の構成要件cを充足しない。(3)本件発明2-4-②(請求項40)についてア
構成要件aについて
原告は,NP-FV50が構成要件aの「活物質の酸化還元反応を利
用」する点について立証していない。構成要件aの充足性を立証するには,NP-FV50の「活物質」を具体的に特定し,特定したその活物質が酸化還元反応することを証明し,その上で,活物質の酸化還元反応が充放電に利用されていることを証明しなければならないが,原告はこれらの点を一切証明していない。


構成要件cについて
構成要件cの「平均粒径0.5~60ミクロンの粒子状主母材を35重量%以上含」む点については,本件発明2-4-①の構成要件aと同様の理由により,NP-FV50は本件発明2-4-②(請求項40)の構成要件cを充足しない。


構成要件dについて
構成要件dの「0.10から0.86の空隙率を有」する点については,本件発明2-4-①の構成要件bと同様の理由により,NP-FV50は本件発明2-4-②(請求項40)の構成要件dを充足しない。
(4)本件発明2-4-③について

構成要件bについて
構成要件bの「平均粒径が0.5~60μmである粒子状の母材を35重量%以上含有」する点については,本件発明2-4-①の構成要件aと同様の理由により,NP-FV50は本件発明2-4-③の構成要件bを充足しない。


構成要件cについて

構成要件cの「0.10~0.86の空隙率を有」する点については,本件発明2-4-①の構成要件bと同様の理由により,NP-FV50は本件発明2-4-③の構成要件cを充足しない。ウ
構成要件dについて
構成要件dの「粒子状の母材が,結晶子サイズ10~50nmの金属
スズ材もしくはスズ合金材から成る」点については,本件発明2-4-①の構成要件cと同様の理由により,NP-FV50は本件発明2-4-③の構成要件dを充足しない。
また,原告は,構成要件dの「母材を加えて導電補助材を含有」する点について立証していない。

(5)本件発明2-4-④について

構成要件bについて
構成要件bの「平均粒径が0.5~60μmである粒子状の母材を35重量%以上含有」する点については,本件発明2-4-①の構成要件aと同様の理由により,NP-FV50は本件発明2-4-④の構成要
件bを充足しない。

構成要件cについて
構成要件cの「0.10~0.86の空隙率を有する」点については,本件発明2-4-①の構成要件bと同様の理由により,NP-FV50
は本件発明2-4-④の構成要件cを充足しない。(6)本件発明2-4-⑤(請求項1)について
構成要件bの「平均粒径0.5~60μmで,・・・粒子状の主母材を35重量%以上含む」点については,本件発明2-4-①の構成要件aと同様の理由により,NP-FV50は本件発明2-4-⑤(請求項1)の構成要
件bを充足しない。
(7)本件発明2-4-⑤(請求項44)について

構成要件aについて
原告は,構成要件aの「活物質の酸化還元反応を利用」する点について立証していない。構成要件aの充足性を立証するには,NP-FV50の「活物質」を具体的に特定し,特定した活物質が酸化還元反応することを証明し,その上で,活物質の酸化還元反応が充放電に利用されて
いることを証明しなければならないが,原告はこれらの点を一切証明していない。
したがって,NP-FV50は構成要件aを充足しない。

構成要件cについて
構成要件cの「平均粒径0.5~60ミクロンの粒子状主母材を35
重量%以上含」む点については,本件発明2-4-①の構成要件aと同様の理由により,NP-FV50は本件発明2-4-⑤(請求項44)の構成要件cを充足しない。15

争点(2)ア(オ)(本件発明2-5-①(請求項1)ないし2-5-⑦の実施の有無)について

〔原告の主張〕
NP-FV50では,以下のとおり,本件発明2-5-①(請求項1)ないし2-5-⑤がいずれも実施されている。
(1)本件発明2-5-①(請求項1)について

構成要件aについて
NP-FV50負極電極材は,スズ(Sn)合金を主成分としている。また,NP-FV50の負極をX線回折分析した乙5報告書によれば,スズ(Sn)合金のピークは,非常にブロード(幅が広い)であるため,非晶質(結晶のような規則正しい構造をもたない物質。無定形物質)を
有する物質であると判断される。
さらに,NP-FV50の負極成分をICP分析により測定したとこ
ろ,主成分であるスズ(Sn)合金の元素組成比は整数比とはならないことが判明したため,主成分であるスズ(Sn)合金は非化学量論比組成(二種以上の金属元素が簡単な整数比で結合していないこと)である。したがって,NP-FV50は構成要件aを充足する。

構成要件bについて
NP-FV50の負極電極材におけるスズ(Sn)合金粒子の比表面積を計算した結果(甲21報告書)によれば,NP-FV50のスズ合金粒子の比表面積は1㎡/gより大きい。
したがって,NP-FV50は構成要件bを充足する。


構成要件cについて
NP-FV50の負極電極材からは,チタン(Ti),鉄(Fe)及びコバルト(Co)が検出されており(甲21報告書),これらはいずれも遷移金属元素(周期表で第3族元素から第11族元素の間に存在する元素の総称)に該当する。
したがって,NP-FV50は構成要件cを充足する。


構成要件dについて
NP-FV50の負極層からは,酸素(O),フッ素(F),シリコン(Si),炭素(C),リン(P)及びアルミニウム(Al)が検出されている(甲21報告書)。

この点,酸素はそのほとんどが電解液の有機溶媒に起因し,リンは残留電解質(LiPF6)に起因するものであり,炭素は電極層を形成し,導電を補助する黒鉛(Graphite),残留する有機溶媒,バインダー(フッ素樹脂)に起因すると考えられる。また,フッ素は残留電解質(LiPF6),バインダー(フッ素樹脂)に起因すると考えられるこ
とから,検出された元素のうち,これら酸素,フッ素,炭素及びリンは,いずれも負極の本来の構成元素ではないと考えられる。

ただし,上記のとおり,NP-FV50の負極には,シリコン及びアルミニウムが含まれている。
したがって,NP-FV50は構成要件dを充足する。

構成要件eについて
NP-FV50の負極には,Aに該当するものとしてチタン(Ti),
コバルト(Co)及び鉄(Fe)が検出され,Xに該当するものとしてシリコン(Si)及びアルミニウム(Al)が検出されている。
EDX分析及びICP分析の結果から,これらの元素のうちスズの原子%を計算すると,48.7%であることが明らかとなっており(甲21報告書),20原子%から80原子%の範囲内にある。

したがって,NP-FV50は構成要件eを充足する。

小括
以上のとおり,NP-FV50は本件発明2-5-①(請求項1)の構成要件全てを充足している。

(2)本件発明2-5-①(請求項2)ないし2-5-⑦の充足性について本件発明2-5-①(請求項1)の構成要件と,本件発明2-5-①(請求項2)ないし2-5-⑦の構成要件とは実質的に異ならない。したがって,NP-FV50は本件発明2-5-①(請求項2)ないし2-5-⑦の各構成要件をいずれも充足する。

〔被告の主張〕
(1)本件発明2-5-①(請求項1)について

構成要件aについて
(ア)合金
甲21報告書別紙8頁「図10

粒子2のEDXスペクトル」によれ

ば,粒子2が成分として炭素(C),酸素(O),スズ(Sn),コバルト(Co),チタン(Ti),鉄(Fe),フッ素(F),リン
(P),アルミニウム(Al),ケイ素(Si)を含有しているようであるが,粒子2が「合金」である根拠は示されていない。
(イ)非化学量論比組成
ソニーのプレスリリース(甲5の1,2)によれば,「Nexelion」の負極材を構成する粒子には炭素が含まれている。

しかるに,甲21報告書別紙10頁には「(注)C,O,Fは非分析成分としての残分」とあり,炭素が検出対象とされていない。これは,ICP発光分析法が塩酸・硝酸等の混酸によって分解・濾過を行うもので,炭素に用いるには不適当な方法であり,「Nexelion」の負極材を構成する粒子は炭素を含むにもかかわらず,「Nexelion」
の成分分析にICP発光分析法を使ってしまっているからである。このように,「Nexelion」の負極材を構成する粒子が非化学量論比組成の合金であるとの結論は,不適切な分析方法により得られたものであるから,構成要件aの充足性の根拠にはならない。
加えて,本件明細書等2-5-①には「この『非化学量論比組成の合
金』は,二種以上の金属元素が簡単な整数比で結合している金属間化合物とは,相違するものである。」(段落【0021】)と記載されており,「非化学量論比組成の合金」の概念を説明しているが,原告は,NP-FV50の負極層を構成する粒子が金属間化合物ではないことの立証をしていない。

したがって,NP-FV50は構成要件aを充足しない。

構成要件eについて
(ア)総論
原告は,甲21報告書を引用し「NP-FV50の負極には,Aに該
当するものとしてチタン(Ti),コバルト(Co)及び鉄(Fe)が検出され,Xに該当するものとしてシリコン(Si)及びアルミニウム
(Al)が検出されている。」,「EDX分析及びICP分析の結果から,これらの元素のうちスズの原子%を計算すると,48.7%であることが明らかとなっている」と主張しているが,以下のとおり,失当である。
(イ)甲21報告書別紙11頁の計算方法
原告は,甲21報告書別紙11頁において,負極材に炭素が存在しないことを前提に計算している。しかし,甲21報告書別紙8頁のEDX分析では炭素が検出されており,ソニーも負極材に炭素が含まれている旨発表している(上記ア(イ))。

したがって,炭素を除外している甲21報告書別紙11頁の計算には合理性がない。
なお,原告は,甲21報告書別紙8頁で「粒子2のPは電解液由来と判断される。(Cは,バインダー由来,黒鉛由来の可能性がある。:報告者記載)」と記載して,炭素検出の原因をバインダーに求めようとし
ているが,甲23の1報告書には炭素がバインダー由来であることを示唆する記述はなく,上記は原告独自のものであって,根拠が示されていない。
(ウ)乙6報告書
乙6報告書では,NP-FV50のスズ(Sn)は20ないし80原
子%の範囲内にないことが示されている。
この点に関して原告は,乙6報告書の測定点(Figure1ないし6)がいずれもスズ合金と炭素を主成分とするバインダー(結合剤・連結剤)との境界部分であって,測定の対象として全く不適切であるなどと主張する。しかし,乙6報告書を作成した●(省略)●の測定は合理
的であって,原告の主張する測定対象の方が不適切である。
(エ)Xが酸素(O)の場合及びXがフッ素(F)の場合

構成要件eでは「XがOの場合,その含有量は0.05重量%以上5重量%以下であり,XがFの場合その含有量は5重量%以下である。」とされているところ,甲21報告書では負極材から酸素(O)及びフッ素(F)が検出されたことが示されている。そうすると,構成要件eを充足するためには,これらの元素の含有量(重量%)を正確に定量する
ことが必要であるが,原告はこの点について立証していない。
(2)本件発明2-5-①(請求項2)について

本件発明2-5-①(請求項1)と共通する点
上記(1)アにおいて本件発明2-5-①(請求項1)の構成要件aにつき主張したことは,そのまま同(請求項2)の構成要件aの「非化学量
論比組成の非晶質Sn・A・X合金を主成分とし」ているという点に同様に当てはまる。
また,上記(1)イ(イ)及び(ウ)において本件発明2-5-①(請求項1)の構成要件eにつき主張したことは,同(請求項2)の「上記式の各原子の原子数において,Sn/(Sn+A+X)=20~80原子%の関
係を持つ」という点にも当てはまる。
さらに,上記(1)イ(エ)において本件発明2-5-①(請求項1)の構成要件eにつき主張したことは,同(請求項2)の構成要件dに同様に当てはまる。

構成要件eについて
原告は,構成要件eの「前記合金は,Si,Ge,Al,Zn,Ca,La及びMgから成るグループから選択される一元素と,Co,Ni,Fe,Cr及びCuから成るグループから選択される一元素を含有している。」という点を立証していない。

甲21報告書別紙11頁には,「スズ合金中の主成分はスズ(Sn),コバルト(Co),チタン(Ti),鉄(Fe),シリコン(Si),
アルミニウム(Al)から構成されている」とあるが,第三者機関からは,「Al,Siも検出されていますが,コンタミの可能性があります。」と指摘されており(甲23の1報告書),アルミニウム及びシリコンがスズ合金の主成分ではなく,誤って混入したことが示唆されている。アルミニウム及びシリコンはICP分析ではほとんど検出されていないことからも(同報告書),第三者機関が上記で指摘したとおりアルミニウム及びシリコンはコンタミと考えるのが合理的である。アルミニウム及びシリコンがコンタミであれば,アルミニウム及びシリコンを除いた,「Ge,Zn,Ca,La,Mg」のいずれかが含まれているこ
とが必要であるが,甲21報告書別紙8頁のEDX分析と同別紙10頁のICP分析のいずれからも「Ge,Zn,Ca,La,Mg」は検出されていない。
したがって,構成要件eの「前記合金は,Si,Ge,Al,Zn,Ca,La及びMgから成るグループから選択される一元素と・・・を
含有している。」を充足しているとはいえず,NP-FV50は構成要件eを充足しない。
(3)本件発明2-5-②について
上記(1)アで本件発明2-5-①(請求項1)の構成要件aにつき主張したことは,同2-5-②の構成要件aの「非化学量論比組成の非晶質Sn,
A,X合金を含む」点にも当てはまる。
また,上記(1)イ(イ)及び(ウ)で本件発明2-5-①(請求項1)の構成要件eにつき主張したことは,同2-5-②の構成要件dにも当てはまる。さらに,上記(1)イ(エ)で本件発明2-5-①(請求項1)の構成要件eにつき主張したことは,本件発明2-5-②の構成要件f及びgに同様に当て
はまる。
したがって,NP-FV50は本件発明2-5-②の構成要件a,d,f
及びgを充足しない。
(4)本件発明2-5-③について
上記(1)アで本件発明2-5-①(請求項1)の構成要件aにつき主張したことは,同2-5-③の構成要件aの「非化学量論比組成の非晶質Sn,A,X合金を含む」点にも当てはまる。
また,上記(1)イ(イ)及び(ウ)で本件発明2-5-①(請求項1)の構成要件eにつき主張したことは,同2-5-③の構成要件dに同様に当てはまる。さらに,上記(1)イ(エ)で本件発明2-5-①(請求項1)の構成要件eにつき主張したことは,同2-5-③の構成要件eにも当てはまる。
したがって,NP-FV50は本件発明2-5-③の構成要件a,d及びeを充足しない。
(5)本件発明2-5-④について
上記(1)アで本件発明2-5-①(請求項1)の構成要件aにつき主張したことは,同2-5-④の構成要件aに同様に当てはまる。
また,上記(1)イ(イ)及び(ウ)で本件発明2-5-①(請求項1)の構成要件eにつき主張したことは,同2-5-④の構成要件cにも当てはまる。したがって,NP-FV50は本件発明2-5-④の構成要件a及びcを充足しない。
(6)本件発明2-5-⑤について

上記(1)アで本件発明2-5-①(請求項1)の構成要件aにつき主張したことは,同2-5-⑤の構成要件bの「非晶質のSn・A・X合金粒子を含有し」及び構成要件cの「そのSn・A・X合金組成物は非化学量論比であり」に同様に当てはまる。
また,上記(1)イ(イ)及び(ウ)で本件発明2-5-①(請求項1)の構成要
件eにつき主張したことは,同2-5-⑤の構成要件eにも当てはまる。したがって,NP-FV50は本件発明2-5-⑤の構成要件b,c及び
eを充足しない。
(7)本件発明2-5-⑥(請求項1)について
上記(1)アで本件発明2-5-①(請求項1)の構成要件aにつき主張したことは,同2-5-⑥(請求項1)の構成要件aの「非化学量論比組成を有する非晶質Sn・A・X合金から成る」の点に同様に当てはまる。また,上記(1)イ(イ)及び(ウ)で本件発明2-5-①(請求項1)の構成要件eにつき主張したことは,同2-5-⑥(請求項1)の構成要件dにも当てはまる。
さらに,上記(1)イ(エ)で同①(請求項1)の構成要件eにつき主張したこ
とは,本件発明2-5-⑥(請求項1)の構成要件f及びgにも当てはまる。したがって,NP-FV50は本件発明2-5-⑥(請求項1)の構成要件a,d,f及びgを充足しない。
(8)本件発明2-5-⑥(請求項16)について上記(1)アで本件発明2-5-①(請求項1)の構成要件aにつき主張し
たことは,同2-5-⑥(請求項16)の構成要件aの「非化学量論比組成を有する非晶質Sn・A・X合金から成る」にも同様に当てはまる。また,上記(1)イ(イ)及び(ウ)で本件発明2-5-①(請求項1)の構成要件eにつき主張したことは,同2-5-⑥(請求項16)の構成要件dにも当てはまる。

さらに,上記(1)イ(エ)で本件発明2-5-①(請求項1)の構成要件eにつき主張したことは,同2-5-⑥(請求項16)の構成要件f及びgにも当てはまる。
したがって,NP-FV50は本件発明2-5-⑥(請求項16)の構成要件a,d,f及びgを充足しない。

(9)本件発明2-5-⑦について
上記(1)アで本件発明2-5-①(請求項1)の構成要件aにつき主張し
たことは,同2-5-⑦の構成要件aのうち「非化学量論比組成の非晶質のSn・A・X合金粒子を含有する」点にも同様に当てはまる。
また,上記(1)イ(イ)及び(ウ)で本件発明2-5-①(請求項1)の構成要件eにつき主張したことは,同2-5-⑦の構成要件dにも当てはまる。したがって,NP-FV50は本件発明2-5-⑦の構成要件a,dを充
足しない。
争点(2)イ(ア)(本件発明2-1-①の乙9発明に対する技術的優位性欠如の有無)について

〔被告の主張〕
本件発明2-1-①は,以下のとおり,出願時点において乙9公報によって既に知られている技術にすぎないから,二次電池の技術水準を向上させるものでもなければ,「Nexelion」を含めた二次電池の発展に何ら貢献するものでもない。
したがって,仮に「Nexelion」が本件発明2-1-①の全ての構成
要件に該当するとしても,同発明には何らの技術的な優位性がなく,「Nexelion」の売上げに寄与していない。
(1)構成要件aについて
乙9公報の【図1】は「本発明のリチウム二次電池の一例を示す断面図」であり,段落【0026】には「図1において,1は負極,2は正極,3は
セパレータ」と記載されているから,本件発明2-1-①の構成要件aは乙9公報に開示されている。
(2)構成要件bについて
乙9公報の請求項1は「負極活物質として平均粒径100μm以下のリチウム合金粉末を用いたことを特徴とするリチウム二次電池」であり,段落
【0012】には「リチウム合金としては,リチウム(Li)と,たとえばアルミニウム(Al),鉛(Pb),亜鉛(Zn),スズ(Sn),ビスマ
ス(Bi),インジウム(In),マグネシウム(Mg),カリウム(Ca)〔判決注:原文ママ〕,カドミウム(Cd),銀(Ag),ケイ素(Si),ホウ素(B),金(Au),白銀(Pt),パラジウム(Pd),アンチモン(Sb)などの単独または2種以上との合金が挙げられる。」と記載され,同公報では負極活物質に用いるリチウム合金粉末としてリチウムスズ合金粉末が記載されている。
スズは酸ともアルカリとも反応する両性金属の一種であり,リチウムは金属であるので,リチウムスズ合金粉末は,構成要件bの「酸ともアルカリとも反応する両性金属と合金化した金属粉末」に該当する。

したがって,本件発明2-1-①の構成要件bは乙9公報に開示されている。
(3)構成要件cについて
乙9公報の段落【0011】には「負極活物質として用いるリチウム合金粉末の粒径が小さくなればなるほど充放電に伴うなう〔判決注:原文ママ〕
負極の微粉化を防止する効果は向上するが,リチウム合金粉末の粒径が小さくなりすぎると,内部抵抗が上昇するので,リチウム合金粉末としては平均粒径100μm以下で平均粒径0.5μm以上のものが好ましい。」と記載されており,構成要件cの「平均粒径100μm以下」という点の開示がされている。

(4)発明の課題・目的について
本件発明2-1-①及び乙9発明の課題・目的は,リチウムのデンドライトの発生を抑制して,リサイクル寿命を延ばすという点で共通している。(5)小括
以上のとおり,本件発明2-1-①の構成要件aないしcは全て先行技術
文献である乙9公報に開示されており,同公報には「Nexelion」の特徴であるスズ系負極についての開示もある。また,本件発明2-1-①及
び乙9発明の課題・目的も,リチウムのデンドライトの発生を抑制してリサイクル寿命を延ばすという点で共通している。
〔原告の主張〕
(1)構成要件aについて
そもそも本件発明2-1-①の構成要件aに記載されている「電池ケース
内の電解質中にセパレータによって隔てられた正極と負極とを有する」という特徴は,多くのリチウムイオン二次電池(あるいは電池全般)に共通する一般的かつ基本的な内容であって,前提事実を示すにすぎない構成要件である。また,被告が摘示する乙9公報において初めて開示された技術でもない。(2)構成要件bについて

本件発明2-1-①は,負極活物質としてリチウム合金を用いないことを前提として特許出願し,登録されたものであり,負極にリチウム合金(粉末)を用いることを前提とする乙9発明とはそもそも発明の内容が全く異なる。したがって,本件発明2-1-①の構成要件bが乙9公報において開示されていることにはならない。

(3)構成要件cについて
上記(2)のとおり,本件発明2-1-①と乙9発明は,その前提とする発明内容を全く異にする発明であり,乙9発明は本件発明2-1-①の先行技術とはならないものであって,乙9公報において,負極活物質にリチウム合金(粉末)を用いるという本件発明2-1-①とは異なる前提のもとで,そ
の平均粒径が100μm以下と定められていたとしても,負極活物質にリチウム合金を用いないことを前提とする本件発明2-1-①の構成要件cが開示されていることにならない。25

争点(2)イ(イ)(本件発明2-1-①の乙10発明に対する技術的優位性欠如の有無)について

〔被告の主張〕

本件発明2-1-①は,以下のとおり,出願時点において乙10公報によって既に知られている技術にすぎないから,二次電池の技術水準を向上させるものでもなければ,「Nexelion」を含めた二次電池の発展に何ら貢献するものでもない。
したがって,仮に「Nexelion」が本件発明2-1-①の全ての構成要件に該当するとしても,同発明には何らの技術的な優位性がなく,「Nexelion」の売上げに寄与していない。
(1)構成要件aについて
乙10公報は,リチウムを吸蔵,放出することのできる金属粉末又は合金
粉末を活物質とした非水電解質二次電池用負極に関する発明を開示しており(【請求項1】等),その【図1】は,「本発明の実施例の非水電解質二次電池用負極を用いた電池の縦断面図」であり,段落【0010】には,「図1において,成型した正極1をケース2に置く。正極1の上にセパレータ3としての多孔性ポリプロピレンフィルムを置いた。負極4を,ポリプロピレ
ン製ガスケット5を付けた封口板6に圧着した。」と記載されている。したがって,本件発明2-1-①の構成要件aは,乙10公報に開示されている。
(2)構成要件bについて
乙10公報の段落【0018】には,「本実施例においては,96%Al
-6%Niで表される組成のアルミニウム合金粉末を負極活物質に・・・用いて構成した負極」と記載され,両性金属であるアルミニウムと合金化した金属粉末で構成された負極について示されている。
したがって,本件発明2-1-①の構成要件bは,乙10公報に開示されている。

(3)構成要件cについて
乙10公報の段落【0019】には,「負極は,300メッシュパスの9
6%Al-6%Niアルミニウム合金粉末と導電剤としての繊維状黒鉛と結着剤を重量比で45:45:10ならびに47.5:47.5:5:5の割合で混合し負極合剤を得た。この負極合剤0.1gを直径17.5mmに2トン/c㎡でプレス成型し負極とした。」と記載されている。
ここで,粉体状の固体物質を粒径の大小によって分離する際には「ふるい」(ふるい分け金網等)を用いたふるい分析又は分粒等を行うが,一定以上の大きさの粉末が入り込まないようにするための「ふるい」の目開き(ふるい分け金網等の網目の大きさ)を示す基準として,「メッシュ」を用いる。メッシュは,25.4mm(1inch)間にある線の数,又は網目の数をい
う(乙50)。そして,メッシュをJISにおける目開きに換算すると,281メッシュは53μm,330メッシュは45μmとなるから(乙51),上記段落【0019】に記載の「300メッシュ」とは,53μm未満の目開きであることを示している。
また,「メッシュパス」は,粉体の粒径を表す慣用的な表現であって,
「メッシュ」によって表される目開きの「ふるい」でふるい分けられた(当該「ふるい」を通り抜けた)粉体の粒径を意味する。そのため,上記段落【0019】の「300メッシュパスの96%Al-6%Niアルミニウム合金粉末」とは,53μmよりも小さい粒径の粉末を意味しており,構成要件cの「金属粉末の粒径が100μm以下」に該当する。

したがって,本件発明2-1-①の構成要件cは,乙10公報に開示されている。
(4)本件発明2-1-①及び乙10発明の課題・目的について本件発明2-1-①及び乙10発明の課題・目的は,リチウムのデンドライトの発生を抑制して,サイクル寿命を延ばすという点で共通している。
(5)小括
以上のとおり,本件発明2-1-①の構成要件aないしcは全て先行技術
文献である乙10公報に開示されている。また,本件発明2-1-①及び乙10発明の課題・目的も,リチウムのデンドライトの発生を抑制してサイクル寿命を延ばすという点で共通している。
〔原告の主張〕
(1)構成要件aについて
構成要件aは,本件発明2-1-①において,技術的優位性のある発明の前提事実となる構成要件を示すにすぎないものであり,仮にこれが乙10公報等の先行する技術文献に開示されていたとしても,本件発明2-1-①の技術的優位性に何ら影響を与えるものではない。

(2)構成要件bについて

乙10発明は,負極の活物質を「リチウムを吸蔵,放出することのできる金属粉末もしくは合金粉末」とすることに特徴があるのではなく,「結着剤として塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂を用いる」ことを特徴とする二次電池用負極についての発明である。
この点において,乙10発明は,新規の負極材についての発明である
本件発明2-1-①とは明らかに発明の内容を異にするものである。イ
加えて,乙10公報が示す負極活物質は,「リチウムを吸蔵,放出することのできる金属粉末もしくは合金粉末」ということのみであり,合金化される金属元素の限定などが一切ないことからも,本件発明2-1
-①の技術的意義とは明確に異なる。
すなわち,本件発明2-1-①は,両性金属元素以外のリチウムと合金化しない金属元素(ニッケル,コバルト,銅,チタン,鉄など)を合金化することによって,電子伝導をスムーズに行えるとともに,両性金属元素のみでは生じやすい微粉化を防ぎ,その形状を維持できる点に特
徴がある。このため,本件発明2-1-①では,選択される両性金属の群と,それと合金化される金属(リチウムと合金化しない金属)の群と
を具体的に列挙している。
さらに,上記の作用を得るため,ニッケル,コバルト,銅,チタン,鉄等の元素と合金化する両性金属の量は50%以下となるのがより好ましく(本件明細書等2-1-①の段落【0012】),逆にいえば,ニッケル,コバルト,銅,チタン,鉄等の元素は主成分といえるだけの量
を有している必要がある。
これに対して,被告が摘示する乙10公報の実施例では,ニッケル(Ni)の含有量は6%足らずであり,ニッケルは負極の主成分とはなっていない(段落【0018】)。被告が摘示する実施例においては,ニッケルがたまたま含有されていたにすぎない程度の分量しか存在せず,
被告が摘示する実施例「96%Al-6%Ni」では,本件発明2-1-①にかかる上記作用を発揮し得ない。

以上のとおり,乙10発明は本件発明2-1-①とは全く内容の異なる発明であり,被告が摘示する乙10公報の実施例では,本件発明2-
1-①にかかる発明の効果を生じさせるものではない。したがって,本件発明2-1-①の構成要件bが,乙10公報において事前に開示されていることにはならない。
(3)構成要件cについて
本件発明2-1-①において,合金粉末の粒径を「100μm以下」にす
ることの技術的意義は,比表面積を高めることにより,負極へのリチウムイオンの拡散を容易にし,充電時発生するにリチウムのデンドライトの成長を抑制することにあるが(本件明細書等2-1-①の段落【0035】),乙10公報においては,合金粉末の粒径を「300メッシュパス」とすることの意義は何ら示されていない。むしろ,上記のとおり,乙10発明は「結着
剤として塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂を用いる」ことを特徴とする発明であり,同結着剤を用いるために合金を粉末状にしているにすぎない。
したがって,本件発明2-1-①の構成要件cにおいて,合金粉末の粒径が「100μm以下」とされていることと,乙10公報の実施例において,「300メッシュパスの96%Al-6%Niアルミニウム合金粉末」が用いられたことの技術的意義は全く異なるのであるから,本件発明2-1-①の構成要件cが乙10公報において開示されていることにはならない。
争点(2)イ(ウ)(本件発明2-1-①の特許法36条違反による技術的優位性欠如の有無)について

〔被告の主張〕
本件発明2-1-①では,「エッチング除去して多孔質化」することが本件発明2-1-①の技術的効果を奏する上で必要と記載されているのに(本件明細書等2-1-①の段落【0011】,【0012】,【0034】,【0035】,【0039】〔各実施例は全てエッチング処理を施したものである。〕,【0041】及び【0043】),請求項1には対応する要件が全く記載されていない。

したがって,本件発明2-1-①は,効果のない範囲を含んでいるから,特許法36条により技術的優位性が極めて低い。
〔原告の主張〕
本件明細書等2-1-①のうちエッチング処理が記載された段落【0011】,【0034】,【0039】及び【0041】においては,エッチング
処理はいずれも高比表面積の金属粉を得るための手段として記載されているにすぎず,必ずエッチング処理をしなければ本件発明2-1-①の作用効果を得られないというわけではない。本件明細書等2-1-①においては「負極が・・・金属粉末で構成」されることが記載されており,エッチング処理という手段は記載されていない。

なお,被告の指摘する本件明細書等2-1-①の各段落のうち段落【0012】,【0035】及び【0041】には,エッチング処理が必要である旨の
記載はない。
したがって,本件発明2-1-①が効果のない範囲を含んでいるという被告の主張には理由がない。5

争点(2)イ(エ)(本件発明2-1-②の乙10発明に対する技術的優位性欠如の有無)について

〔被告の主張〕
本件発明2-1-②は,以下のとおり,出願時点において乙10公報によって既に知られている技術にすぎないから,二次電池の技術水準を向上させるものでもなければ,「Nexelion」を含めた二次電池の発展に何ら貢献するものでもない。
したがって,仮に「Nexelion」が本件発明2-1-②の全ての構成要件に該当するとしても,同発明には何らの技術的な優位性がなく,「Nexelion」の売上げに寄与していない。
(1)構成要件aについて

乙10公報は,リチウムを吸蔵,放出することのできる金属粉末又は合金粉末を活物質とした非水電解質二次電池用負極に関する発明を開示しており(乙10公報の【請求項1】等),その【図1】は,「本発明の実施例の非水電解質二次電池用負極を用いた電池の縦断面図」であり,段落【0010】には,「図1において,成型した正極1をケース2に置く。正極1の上にセ
パレータ3としての多孔性ポリプロピレンフィルムを置いた。負極4を,ポリプロピレン製ガスケット5を付けた封口板6に圧着した。」と記載されている。
したがって,本件発明2-1-②の構成要件aは,乙10公報に開示されている。

(2)構成要件bについて
乙10公報の段落【0018】には,「本実施例においては,96%Al
-6%Niで表わされる組成のアルミニウム合金粉末を負極活物質に」「用いて構成した負極について説明する。」と記載されている。
したがって,乙10公報には,本件発明2-1-②の構成要件bが開示されている。
(3)構成要件cについて
乙10公報の【請求項1】には,「リチウムを吸蔵,放出することのできる金属粉末もしくは合金粉末を活物質とし」とあり,「リチウムを吸蔵,放出」することが記載されている。
したがって,乙10公報には,本件発明2-1-②の構成要件cが開示さ
れている。
(4)本件発明2-1-②及び乙10発明の課題・目的について本件発明2-1-②及び乙10発明の課題・目的は,リチウムのデンドライトの発生を抑制して,リサイクル寿命を延ばすという点で共通している。(5)小括
以上のとおり,本件発明2-1-②の構成要件aないしcの全ては,先行
技術文献である乙10公報に開示されている。また,本件発明2-1-②及び乙10発明の課題・目的も,リチウムのデンドライトの発生を抑制して,リサイクル寿命を延ばすという点で共通している。
〔原告の主張〕
(1)構成要件aについて
本件発明2-1-②の構成要件aは,多くのリチウムイオン二次電池に共通する一般的かつ基本的な内容であって,前提事実を示すにすぎない構成要件である。また,被告が摘示する乙10公報おいて初めて開示された技術でもない。

(2)構成要件bについて

そもそも乙10発明は,負極の活物質を「リチウムを吸蔵,放出する
ことのできる金属粉末もしくは合金粉末」とすることに特徴があるのではなく,「結着剤として塩化ビニル-酢酸ビニル共重樹脂を用いる」ことを特徴とする二次電池用負極についての発明である。
この点において,乙10発明は,新規の負極材についての発明である本件発明2-1-①とは明らかに発明の内容を異にする。

また,乙10発明が示す負極活物質は,「リチウムを吸蔵,放出することのできる金属粉末もしくは合金粉末」ということのみであり,合金化される金属元素の限定などが一切ないことからも,本件発明2-1-②の技術的意義とは明確に異なる。

すなわち,本件発明2-1-②は,両性金属元素以外のリチウムと合金化しない金属元素(ニッケル,コバルト,銅,チタン,鉄など)を合金化することによって,電子伝導をスムーズに行えるとともに,両性金属元素のみでは生じやすい微粉化を防ぎ,その形状を維持できる点に特徴がある。このため,本件発明2-1-②では,選択される両性金属の
群と,それと合金化される金属(リチウムと合金化しない金属)の群とを具体的に列挙している。
さらに,上記の作用を得るため,ニッケル,コバルト,銅,チタン,鉄等の元素と合金化する両性金属の量は50%以下となるのがより好ましく,逆にいえば,ニッケル,コバルト,銅,チタン,鉄等の元素は主
成分といえるだけの量を有している必要がある。現に,本件発明2-1-②の実施例では,負極がスズ(Sn)とニッケル(Ni)の合金である場合の実施例においては,いずれも含有量が20%を超えており,ニッケルも主成分とされている。
これに対して,被告が摘示する乙10公報の実施例では,ニッケル
(Ni)の含有量は6パーセント足らずであり,ニッケルは負極の主成分とはなっていない(段落【0018】)。被告が摘示する実施例にお
いては,ニッケルが不純物等としてたまたま含有されていたにすぎない程度の分量しか存在せず,被告が摘示する実施例「96%Al-6%Ni」では,本件発明2-1-②の上記作用を発揮し得ない。ウ
以上のとおり,乙10発明は本件発明2-1-②とは全く内容の異なる発明であり,被告が摘示する乙10公報の実施例では,本件発明2-
1-②にかかる発明の効果を生じさせるものではない。したがって,本件発明2-1-②の構成要件bが乙10公報に事前に開示されていることにはならない。10

争点(2)イ(オ)(本件発明2-2-②の乙106発明に対する技術的優位性欠如の有無)について

〔被告の主張〕
本件発明2-2-②は,以下のとおり,出願時点において乙106公報によって既に知られている技術にすぎないから,二次電池の技術水準を向上させるものでもなければ,「Nexelion」を含めた二次電池の発展に何ら貢献するものでもない。
したがって,仮に「Nexelion」が本件発明2-2-②の全ての構成要件に該当するとしても,同発明には何らの技術的な優位性がなく,「Nexelion」の売上げに寄与していない。
(1)構成要件aについて

乙106公報は,「従来の技術およびその課題」に「発明者は,・・・この電池が充電電気量に比して放電電気量が少ないという問題点があることを見いだした」と記載されているように,再充電可能な電池についてのものであり(乙106公報1頁右欄),また,特許請求の範囲に「リチウムの吸蔵放出が可能な金属を主体とする金属粉末またはそのリチウム合金粉末と,ニ
ッケル,チタン,ステンレス,銅,鉄などのリチウムを吸蔵しない金属の粉末または繊維との混合物を用いた負極板を備えたことを特徴とする有機電解
質電池」と記載されているように,リチウム電池に関する発明である。したがって,本件発明2-2-②の構成要件aは,乙106公報に開示されている。
(2)構成要件bについて
乙106公報には,「Al(94wt%)-Bi(5wt%)-Mn(1wt%)合金をガスアトマイズ法によって平均粒径が8ミクロンの粉末に加工した。そして,このアルミニウム合金粉末とINCO社製のTYPE255ニッケル粉末とを重量比2:1で混合し,0.28g採集して325meshのステンレス金網に包み込んで径が10mmで厚さが1.9mmの負極
板ペレット(2)を試作した」と記載されている(乙106公報2頁右上欄)。
この点に関して原告は,「コバルト(Co),チタン(Ti),鉄(Fe)はリチウムと合金化しない金属である。」,「銅(Cu)及びニッケル(Ni)は,いずれもリチウムと合金化しない金属である。」,「リチウムと合
金化可能な金属として,『アルミニウム,マグネシウム,カリウム,ナトリウム,カルシウム,ストロンチウム,バリウム,シリコン,ゲルマニウム,アンチモン,鉛,インジウム,亜鉛から選択される1種類以上の金属』と規定され」,「本件ソニー・バッテリーパックの負極にはAl(アルミニウム)及びSi(シリコン)が含まれており(甲21号証

別紙8頁,10頁),

これらの金属がリチウムと合金化可能であることは一般的な事実である」などと主張している。また,原告は,本構成要件に関し,構成要件a及びbにおける「第一の金属」が「同じ金属」でなければならないことを否定する主張を行っている。
被告はこれらの原告の主張を争うものであるが,仮にこれらの原告の主張
を前提とすると,乙106公報には,負極が,「充電時に生成されるリチウムと合金化できない第1の金属を含む集電体」である「ステンレス金網」と,
集電体上の層が「充電時に生成されるリチウムと合金化できない第1の金属」である「ニッケル」と,「充電時に生成されるリチウムと合金化できる第2の金属」である「Al(アルミニウム)」から構成されていることが開示されていることになる。ここで,ステンレス鋼とは「通常Crを11%以上含有する合金鋼と定義され」,「大別すると,組成からFe-Cr系とFe-Cr-Ni系に,・・・分類される」(乙107)。
したがって,原告の主張を前提とすると,本件発明2-2-②の構成要件bは乙106公報に開示されているというべきである。
(3)構成要件cについて

上記(2)のとおり,原告の主張を前提とすると,乙106公報には,「充電時に生成されるリチウムと合金化できない第1の金属を含む集電体」である「ステンレス金網」及び「充電時に生成されるリチウムと合金化できない第1の金属」である「ニッケル」が開示されていることになる。
したがって,原告の主張を前提とすると,本件発明2-2-②の構成要件
cは乙106公報に開示されているというべきである。
(4)構成要件dについて
上記(2)のとおり,原告の主張を前提とすると,乙106公報には,「充電時に生成されるリチウムと合金化できる第2の金属」である「Al(アルミニウム)」が開示されているから,本件発明2-2-②の構成要件dは乙
106公報に開示されているというべきである。
(5)構成要件eについて
上記(2)のとおり,乙106公報に開示されている「負極板ペレット」は,その原料としてリチウムを含んでおらず,最初の充電前にリチウムを含まないから,本件発明2-2-②の構成要件eは乙106公報に開示されている。
(6)小括
以上のとおり,本件発明2-2-②の構成要件aないしeの全ては,先行
技術文献である乙106公報に開示されている。
〔原告の主張〕
(1)構成要件aについて
構成要件aは,本件発明2-2-②において,技術的優位性のある発明の前提事実となる構成要件を示すにすぎないものであり,仮にこれが乙106公報等の先行する技術文献に開示されていたとしても,本件発明2-2-②の技術的優位性に何ら影響を与えるものではない。
(2)構成要件bについて

被告は乙106公報の実施例において引用された「ステンレス金網」が構成要件bの「集電体」に該当すると主張するようであるが,乙10
6公報には,当該「ステンレス金網」が「集電体」として用いられていることの記載はなく,立証もないし,「ステンレス金網」の材料や構成元素は何ら立証されていない。

さらに,仮に乙106公報における「ステンレス金網」が「集電体」として用いられるものであったとしても,乙106発明と本件発明2-2-②とは技術的意義が全く異なる。
すなわち,乙106公報の上記実施例においては,アルミニウム合金粉末とニッケル粉末とをステンレス金網に包み込んで負極板ペレットを作製しているところ,ステンレス金網を集電体とする場合,リチウムと
合金を作る金属元素であるアルミニウムが,セパレータと接して正極と最も近くなり,充電によりリチウムのデンドライト成長が起きやすくなるから,これにより,短絡(ショート)を生じやすい構造となっており,およそ実用化に耐えない技術である。
これに対して,本件発明2-2-②においては,集電部にリチウムと
合金を作らない金属元素を配置するか,リチウムと合金を作らない金属の集電部材上にリチウムと合金を作る金属元素を含有する層を設けてい
ることから,乙106公報とは異なり,本件発明2-2-②においてはこのような短絡(ショート)を生じることはない。

したがって,本件発明2-2-②の構成要件bは乙106公報において開示されているとはいえない。

(3)構成要件cについて
上記(2)アのとおり,乙106公報に記載された「ステンレス金網」が本件発明2-2-②の構成要件bの「集電体」であることや,その材料・構成元素は,何ら明らかではない。
また,集電体上の層を構成する金属元素について,乙106公報の実施例
において「ニッケル」が開示されていたとしても,これは,本件発明2-2-②の構成要件cにおいて列挙された金属元素のうち一つを開示したものにすぎず,構成要件cが開示されたことにはならない。
したがって,この構成元素を内容とする本件発明2-2-②の構成要件cも乙106公報によって開示されていない。

(4)構成要件dについて
集電体上の層を構成する金属元素について,乙106公報の実施例において「Al(アルミニウム)」が開示されたとしても,これは,本件発明2-2-②の構成要件dにおいて列挙された金属元素のうち一つを開示したものにすぎず,構成要件dが開示されたことにはならない。

(5)乙106公報が参考文献として開示されていること
本件発明2-2-②と実質的に同様の発明である本件発明2-2-①において,乙106公報が参考文献として開示されているが,それにもかかわらず本件発明2-2-①の新規性が認められて特許登録に至っている。(6)小括

以上のとおり,少なくとも本件発明2-2-②の構成要件bないしdは,いずれも乙106公報によって事前に開示されていたものではなく,これに
反する被告の主張はいずれも理由がない。
争点(2)イ(カ)(本件発明2-2-④の乙106発明に対する技術的優位性欠如の有無)について

〔被告の主張〕
本件発明2-2-④は,以下のとおり,出願時点において乙106公報によって既に知られている技術にすぎないから,二次電池の技術水準を向上させるものでもなければ,「Nexelion」を含めた二次電池の発展に何ら貢献するものでもない。
したがって,仮に「Nexelion」が本件発明2-2-④の全ての構成
要件に該当するとしても,同発明には何らの技術的な優位性がなく,「Nexelion」の売上げに寄与していない。
(1)構成要件aについて
乙106公報には,「Al(94wt%)-Bi(5wt%)-Mn(1wt%)合金をガスアトマイズ法によって平均粒径が8ミクロンの粉末に加
工した。そして,このアルミニウム合金粉末とINCO社製のTYPE255ニッケル粉末とを重量比2:1で混合し,0.28g採集して325meshのステンレス金網に包み込んで径が10mmで厚さが1.9mmの負極板ペレット(2)を試作した」と記載されている(乙106公報2頁右上欄)。

ここで,ステンレス鋼は,上記15の〔被告の主張〕のとおり「通常Crを11%以上含有する合金鋼と定義され」,「大別すると,組成からFe-Cr系とFe-Cr-Ni系に,・・・分類される」(乙107)。したがって,乙106公報には,負極が,(1)「鉄」及び「クロム」を含む「集電体」と,(2)「ニッケル」及び「Al(アルミニウム)」を含
有する「集電体上の層」が開示されているから,原告の主張を前提とすると,本件発明2-2-④の構成要件aは乙106公報に開示されていることにな
る。
(2)構成要件bについて
乙106公報の第1図には,正極である「正極板ペレット(1)」と負極である「負極板ペレット(2)」とがセパレータを介して対向配置されているボタン型有機電解質電池が記載されている(乙106公報3頁)。また,乙106公報には,正極,負極,セパレータに「1.0M過塩素酸リチウム/エチレンカーボネート+アセトニトリル電解液を真空含浸した」ことが記載されている(乙106公報2頁左下欄)。さらに,乙106公報には,「アルミニウム合金粉末と・・・ニッケル粉末とを重量比2:1で混合し・
・・負極板ペレット(2)を試作した」と記載されている(乙106公報2頁右上欄)。「アルミニウム合金粉末」と「ニッケル粉末」は混合されているから,「負極板ペレット(2)」においてニッケルは均一に存在していることが認められる。
したがって,原告の主張を前提とすると,本件発明2-2-④の構成要件
bは乙106公報に開示されていることになる。
(3)構成要件cについて
乙106公報の第1図には,正極である「正極板ペレット(1)」と負極である「負極板ペレット(2)」とがセパレータである「微孔性セパレーター(3)」及び「不織布セパレーター(4)」を介して対向配置されている
ボタン型有機電解質電池が記載されている(乙106公報3頁)。また,乙106公報の2頁には,正極,負極,セパレータに「1.0M過塩素酸リチウム/エチレンカーボネート+アセトニトリル電解液を真空含浸した」ことが記載されている。さらに,乙106公報の「従来の技術およびその課題」の,「発明者は,・・・この電池が充電電気量に比して放電電気量が少ない
という問題点があることを見いだした」との記載から,再充電可能な電池についての発明であるといえる(乙106公報1頁右欄)。

したがって,本件発明2-2-④の構成要件cは乙106公報に開示されている。
(4)小括
以上のとおり,本件発明2-2-④の構成要件aないしcの全ては,先行技術文献である乙106公報に開示されている。
〔原告の主張〕
(1)構成要件aについて

本件発明2-2-④の構成要件aが開示されているというためには,同構成要件に記載された「リチウムと合金化不可能な,ニッケル,チタン,銅,銀,金,白金,鉄,コバルト,クロム,タングステン,モリブ
デンからなる群から選ばれた1種以上の金属(a)を含む集電体」が開示されていなければならない。
しかし,上記15の〔原告の主張〕のとおり,そもそも乙106公報における「ステンレス金網」が上記「集電体」として用いられたものであることは,乙106公報上何ら明らかではなく,立証もない上,この
「ステンレス金網」が上記「ニッケル,チタン,銅,銀,金,白金,鉄,コバルト,クロム,タングステン,モリブデンからなる群から選ばれた1種以上の金属」を含むことも何ら立証されていない。

また,本件発明2-2-④の構成要件aが開示されているというためには,「リチウムとの合金不可能な,ニッケル,チタン,銅,銀,金,白金,鉄,コバルト,クロム,タングステン,モリブデンからなる群から選ばれた1種以上の金属(a)と,リチウムとの合金可能でアルミニウム,マグネシウム,カリウム,ナトリウム,カルシウム,ストロンチウム,バリウム,シリコン,ゲルマニウム,アンチモン(Sb),鉛,
インジウム,亜鉛からなる群から選ばれた1種以上の金属(b)を含有する前記集電体上の層」が開示されていることが必要である。

しかし,乙106公報において開示されているのは,上記「金属
(a)」として「ニッケル」と,上記金属(b)として「アルミニウム」が僅かに該当するのみであり,乙106公報においてたまたまこれらの元素が用いられていたとしても,上記構成要件aが開示されていることにはならない。


さらに,上記15の〔原告の主張〕と同様に,乙106発明と本件発明2-2-④とは技術的意義が全く異なる。
すなわち,乙106発明の上記実施例においては,リチウムと合金を作る金属元素であるアルミニウムが,セパレータと接して正極と最も近
くなり,充電によりリチウムのデンドライト成長が起きやすくなるから,これにより,短絡(ショート)を生じやすい構造となっており,およそ実用化に耐えない技術である。
これに対して,本件発明2-2-②においては,集電部にリチウムと合金を作らない金属元素を配置するか,リチウムと合金を作らない金属
の集電部材上にリチウムと合金を作る金属元素を含有する層を設けていることから,本件発明2-2-④においてはこのような短絡(ショート)を生じることはない。

したがって,本件発明2-2-④の構成要件aは,乙106公報には開示されていない。

(2)構成要件bについて
本件発明2-2-④の構成要件bの「使用時に負極末端に接続さ」れることは,乙106公報には何ら記載されておらず,開示されていない。また,本件発明2-2-④の構成要件bにおいては,集電体上の層が,「集電体(1)に隣接した部分を持つ表面領域を有」することが必要である
が,乙106公報にはそもそも「集電体」に関する記載はなく,これも開示されていない。

さらに,被告は,乙106公報に「『アルミニウム合金粉末』と『ニッケル粉末』は混合されているから,『負極板ペレット(2)』においてニッケルは均一に存在していることが認められる」と主張し,本件発明2-2-④の構成要件bの「前記表面領域と上記部分が金属(a)を含有すること」が開示されていると主張するが,「混合」されていることからなにゆえ「ニッ
ケルは均一に存在していること」が認められるのか,被告はその理由を何ら主張・立証できていない。
したがって,本件発明2-2-④の構成要件bは乙106公報には開示されていない。
(3)構成要件cについて
本件発明2-2-④の構成要件cの「前記負極末端が電気的に前記負極と接続され」ることが乙106公報には開示されているとの点につき,被告は主張・立証できていない。
したがって,本件発明2-2-④の構成要件cは,乙106公報には開示されていない。

(4)小括
以上のとおり,本件発明2-2-④の構成要件aないしcは,いずれも乙106公報には開示されていない。20

争点(2)イ(キ)(本件発明2-3-①の乙11発明に対する技術的優位性欠如の有無)について

〔被告の主張〕
本件発明2-3-①は,以下のとおり,出願時点において乙11公報によって既に知られている技術にすぎないから,二次電池の技術水準を向上させるものでもなければ,「Nexelion」を含めた二次電池の発展に何ら貢献するものでもない。
したがって,仮に「Nexelion」が本件発明2-3-①の全ての構成
要件に該当するとしても,同発明には何らの技術的な優位性がなく,「Nexelion」の売上げに寄与していない。
(1)構成要件aについて
乙11の段落【0007】には,「本発明は,リチウム含有遷移金属化合物である正極活物質,導電剤及び結着剤を含有する正極混合物を含有する層を有するシート状正極,リチウムイオンを吸蔵・放出可能な負極材料,導電剤及び結着剤を含有する負極混合物を含有する層を有するシート状負極,及びリチウム塩を含む非水電解質よりなる非水二次電池において,該負極シートが,有機溶剤に分散させてなる分散液を集電体上に塗布,乾燥することに
より得られたものであることを特徴とする非水二次電池」と記載されている。したがって,本件発明2-3-①の構成要件aは乙11公報に開示されている。
(2)構成要件bについて
乙11公報の段落【0030】には「所定の粒子サイズにするには,良く
知られた粉砕機や分級機が用いられる。例えば,・・・振動ボールミル・・・遊星ボールミル・・・」と記載されており,メカニカルグラインディング処理について開示されている。
また,乙11公報の段落【0020】には,「ここで言う主として非晶質とはCuKα線を用いたX線回折法で2θ値で20°から40°に頂点を有
するブロードな散乱帯を有する物であ」り,「最も好ましくは結晶性の回折線を有さないことである」と記載されている。回折線を有さない場合には,ピークがブロードになるために,ピークが存在しないことがあるから,ピークが存在しない点は,乙11公報に開示されている。
そして,乙11公報の段落【0017】には,「本発明に用いられる負極
材料はリチウムを吸蔵・放出可能な酸化物またはカルコゲン化物である」と記載されており,同段落【0020】には,「上記の複合酸化物または複合
カルコゲン化物は電池組み込み時に主として非晶質であることが好ましい」と記載されているから,乙11公報には負極材料として非晶質を用いることが開示されている。
さらに,乙11公報の段落【0066】には,「負極材料として,合成例記載の化合物Aを86重量部,導電剤としてアセチレンブラック3重量部とグラファイト6重量部の割合で混合し」と記載されており,負極材料として炭素材料を用いることが開示されている。
また,乙11公報の段落【0019】には,負極材料の例として,例えば,スズ化合物である「SnTiO2」,「SnTiO3」,「SnNiO2」,
「SnNiO3」,「SnCuO2」が開示されており,銅(Cu),チタン(Ti),ニッケル(Ni)を含むスズ化合物を負極材料として用いることが開示されている。
このように,乙11公報には,メカニカルグラインディング法,負極材料としてピークが存在しない非晶質を用いること,負極材料として炭素材料を
用いること,及び負極材料として銅(Cu),チタン(Ti)又はニッケル(Ni)を含むスズ化合物を用いることが開示されているのであるから,構成要件bは,乙11公報に開示されている。
(3)構成要件cについて
上記(2)のとおり,メカニカルグラインディング法は乙11公報に開示さ
れている。
また,乙11公報の段落【0020】には,「ここで言う主として非晶質とはCuKα線を用いたX線回折法で2θ値で20°から40°に頂点を有するブロードな散乱帯を有する物であ」り,「最も好ましくは結晶性の回折線を有さないことである」と記載されている。回折線を有さない場合には,
ピークがブロードになるため,半価幅は0.48度より大きくなるといえるから,半価幅が0.48度より大きい点は,乙11公報に開示されている。
そして,上記(2)のとおり,乙11公報には,負極材料として,炭素材料を用いること及び銅(Cu),チタン(Ti)又はニッケル(Ni)を含むスズ化合物を用いることが開示されている。
したがって,本件発明2-3-①の構成要件cは乙11公報に開示されている。
(4)本件発明2-3-①及び乙11発明の課題・目的について本件発明2-3-①及び乙11発明の課題・目的は,高容量のリチウム二次電池を提供するという点で共通している。
(5)小括
以上のとおり,本件発明2-3-①の構成要件aないしcは,全て乙11
公報に開示されている。そして,本件発明2-3-①及び乙11発明の課題・目的も,高容量のリチウム二次電池を提供するという点で共通している。〔原告の主張〕
(1)構成要件aについて
本件発明2-3-①の構成要件aは,リチウムイオン二次電池全般につい
て該当する一般的かつ基本的な内容であって,被告が摘示する乙11公報において初めて開示された技術でもない。
(2)構成要件bについて

メカニカルグラインディングについて
被告は,本件発明2-3-①におけるメカニカルグラインディング処理の意義を何ら考慮することなく,乙11公報の公報中の「粉砕機や分級機が用いられる。例えば・・・振動ボールミル・・・遊星ボールミル・・」との記載(段落【0030】)と,本件発明2-3-①の公報中の「メカニカルグラインディングを行う為の装置としては・・・遊星ボ
ールミルや・・・振動ボールミル,各種粉砕機」との記載(本件明細書等2-3-①の段落【0071】)のみから,乙11公報においてメカ
ニカルグラインディング処理が開示されていると主張しているにすぎない。
したがって,乙11公報では,何らメカニカルグラインディング処理について開示されていない。

発明内容が異なることについて
乙11公報は,負極材について「リチウムイオンを吸蔵・放出可能な負極材料を含有する層を少なくとも一層有する」としか記載されていないところ(請求項1),上記(1)のとおり,負極材にリチウムイオンを吸蔵・放出可能な材料を用いること自体は,何ら新規な技術ではない。むしろ,乙11公報の段落【0006】に記載されているように,乙
11発明の最も大きな特徴は,負極材ではなく,「負極シートの塗布液(電極混合物の分散液)の調製に際して有機溶剤を用いることが有効であると見出した」点にある(乙11公報の3頁)。
したがって,乙11発明は,新規の負極材についての発明である本件発明2-3-①とは明らかに発明の内容を異にする。

負極材料が異なることについて
乙11公報では,その負極材料は「リチウムを吸蔵・放出可能な酸化物またはカルコゲン化物」とされている(乙11公報の請求項7,請求項9及び段落【0017】)。

他方,本件発明2-3-①の負極材料は,「非晶質を有するに至った炭素材料と銅,チタン,ニッケルから選択されるリチウム以外の物質に対して電気化学的に不活性な材料との複合体」(請求項6より抜粋)であり,かかる複合体は,「金属」から成るとされている(本件明細書等2-3-①の段落【0037】及び【0041】)。
この点,「酸化物」及び「カルコゲン化物」と「金属」とは全く異なるものであり,仮に,酸化物に遷移金属が含まれていても,それはあく
まで「酸化物」及び「カルコゲン化物」であって,金属ではあり得ない。以上のとおり,そもそも乙11発明と本件発明2-3-①とは,負極材料において全く異なる発明であり,乙11公報の負極材に炭素や銅,チタン,ニッケルが使用されることが記載されていたとしても,それにより,負極材料として金属材料を用いることをその発明内容とする本件
発明2-3-①が開示されていることにはならない。(3)構成要件cについて
本件発明2-3-①の構成要件cにおいては,X線回折チャートにおけるピークの半価幅が0.48度以上を示すことが明記されている。
他方,乙11公報では,段落【0020】において「X線回折法で2θ値
で20°から40°に頂点を有するブロードな散乱帯を有する」という記載は存在するものの,ブロードな散乱帯のピークの半価幅が0.48度以上であることは一切開示されていない。
したがって,本件発明2-3-①の構成要件cが乙11公報において事前に開示されていたとはいえない。

争点(2)イ(ク)(本件発明2-3-②(請求項2)及び同(請求項9)の乙11発明に対する技術的優位性欠如の有無)について

〔被告の主張〕
本件発明2-3-②(請求項2)及び同(請求項9)は,以下のとおり,出願時点において乙11公報によって既に知られている技術にすぎないから,二次電池の技術水準を向上させるものでもなければ,「Nexelion」を含めた二次電池の発展に何ら貢献するものでもない。
したがって,仮に「Nexelion」が本件発明2-3-②(請求項2)又は同(請求項9)の全ての構成要件に該当するとしても,同発明には何らの
技術的な優位性がなく,「Nexelion」の売上げに寄与していない。(1)本件発明2-3-②(請求項2)の構成要件aについて
乙11公報の段落【0007】には,「本発明は,リチウム含有遷移金属化合物である正極活物質,導電剤及び結着剤を含有する正極混合物を含有する層を有するシート状正極,リチウムイオンを吸蔵・放出可能な負極材料,導電剤及び結着剤を含有する負極混合物を含有する層を有するシート状負極,及びリチウム塩を含む非水電解質よりなる非水二次電池において,該負極シートが,有機溶剤に分散させてなる分散液を集電体上に塗布,乾燥することにより得られたものであることを特徴とする非水二次電池」と記載されている。
したがって,本件発明2-3-②の請求項2の構成要件aは,乙11公報
に開示されている。
(2)本件発明2-3-②(請求項2)の構成要件bについて乙11公報の段落【0017】には「本発明に用いられる負極材料はリチウムを吸蔵・放出可能な酸化物またはカルコゲン化物である」と記載されており,同段落【0020】には「上記の複合酸化物または複合カルコゲン化
物は電池組み込み時に主として非晶質であることが好ましい」と記載され,非晶質の負極材料を用いることが開示されている。
したがって,本件発明2-3-②(請求項2)の構成要件bは,乙11公報に開示されている。
(3)本件発明2-3-②(請求項2)の構成要件cについて
乙11公報の段落【0020】には,「ここで言う主として非晶質とはCuKα線を用いたX線回折法で2θ値で20°から40°に頂点を有するブロードな散乱帯を有する物であ」り,「最も好ましくは結晶性の回折線を有さないことである」と記載されている。この場合には,X線回折法で2θ値で20度から40度に存在するピークが最大回折強度のピークであり,また,
回折線を有さない場合には,ピークがブロードになるため,半価幅は0.48度より大きくなるといえる。

したがって,本件発明2-3-②(請求項2)の構成要件cは,乙11公報に開示されている。
(4)本件発明2-3-②(請求項2)の構成要件dについて乙11公報の段落【0019】には,「これらの化合物に遷移金属が含まれていてもよ」いとして,負極材料の例が記載されており,その中で,スズ化合物である「SnMnO2」,「SnMnO3」,「SnFeO2.5」,「SnFeO3.5」,「SnCoO2」,「SnCoO3」,「SnNiO2」,「SnNiO3」が記載されている。Coはコバルト,Niはニッケ
ル,Mnはマンガン,Feは鉄であり,また,スズ(Sn)は「リチウム電池の充電/放電反応時負極のリチウム以外の物質に電気化学的に不活性で貴な標準電極電位を有する少なくとも一つの金属」に該当するから,上記のスズ化合物である「SnMnO2」,「SnMnO3」,「SnFeO2.5」,「SnFeO3.5」,「SnCoO2」,「SnCoO3」,「SnNiO2」,「SnNiO3」は,構成要件dの複合体に該当する。

したがって,本件発明2-3-②(請求項2)の構成要件dは,乙11公報に開示されている。
(5)本件発明2-3-②(請求項9)の構成要件aについて乙11公報の段落【0017】には,「該負極材料がPb,Sn,GeまたはSiから選ばれる少なくとも一種の元素を主体とする酸化物またはカル
コゲン化物であることが好ましい。」と記載されている。
したがって,本件発明2-3-②の(請求項9)の構成要件aのうち,スズ酸化物については,乙11公報に開示されている。
(6)本件発明2-3-②(請求項2)及び同(請求項9)並びに乙11発明の課題・目的について

本件発明2-3-②(請求項2)及び同(請求項9)並びに乙11発明の課題・目的は,高容量のリチウム二次電池を提供するという点で共通してい
る。
(7)小括
本件発明2-3-②(請求項2)の構成要件aないしd及び本件発明2-3-②(請求項9)の構成要件aは,全て先行技術文献である乙11公報に開示されている。そして,本件発明2-3-②及び乙11発明の課題・目的は,高容量のリチウム二次電池を提供するという点で共通している。〔原告の主張〕
(1)本件発明2-3-②(請求項2)の構成要件aについて本件発明2-3-②(請求項2)の構成要件aは,リチウムイオン二次電
池全般に共通する特徴であって,乙11公報で初めて開示された発明でもない。
(2)本件発明2-3-②(請求項2)の構成要件b,d及び本件発明2-3-②(請求項9)の構成要件aについて
乙11公報において負極材料として使用されるのは「酸化物」又は「カル
コゲン化物」であるところ,本件発明2-3-②(請求項2)では「前記活物質が,コバルト,ニッケル,マンガン,鉄から成る群から選択される少なくとも一つの元素(ⅰ)と,・・・有する少なくとも一つの金属(ⅱ)から成る複合体」とされており,負極材料は金属である。「酸化物」又は「カルコゲン化物」は「金属」ではないため,両者はそもそも負極材料が異なって
おり,酸化物にスズ(Sn)などの遷移金属が含まれていても,それはあくまで「酸化物」及び「カルコゲン化物」であって,金属ではあり得ない。したがって,本件発明2-3-②(請求項2)の構成要件b,d及び本件発明2-3-②(請求項9)の構成要件aは,被告が摘示する乙11公報において事前に開示されていることにはならない。

(3)本件発明2-3-②(請求項2)の構成要件cについて本件発明2-3-②(請求項2)の構成要件cでは,X線回折チャートに
おけるピークの半価幅が0.48度以上を示すことが明記されている。他方,乙11公報には「X線回折法で2θ値で20°から40°に頂点を有するブロードな散乱帯を有する」(段落【0020】)という記載は存在するものの,ブロードな散乱帯のピークの半価幅が0.48度より大きいことは一切開示されていない。

本件発明2-3-②(請求項2)においては,放電容量が大きく,かつサイクル寿命が長いという効果を生じる下限値として,半価幅が0.48度より大きくなる構成を提示しているのであって,0.48度以上という下限値を示していることに技術的意義がある。
したがって,本件発明2-3-②(請求項2)の構成要件cは,被告が摘
示する乙11公報において,事前に開示されていることにはならない。争点(2)イ(ケ)(本件発明2-3-③(請求項1),同(請求項6)及び同(請求項7)の乙11発明に対する技術的優位性欠如の有無)について
〔被告の主張〕
本件発明2-3-③(請求項1),同(請求項6)及び同(請求項7)は,以下のとおり,出願時点において乙11公報によって既に知られている技術にすぎないから,二次電池の技術水準を向上させるものでもなければ,「Nexelion」を含めた二次電池の発展に何ら貢献するものでもない。したがって,仮に「Nexelion」が本件発明2-3-③(請求項1),
同(請求項6)又は同(請求項7)の全ての構成要件に該当するとしても,同発明には何らの技術的な優位性がなく,「Nexelion」の売上げに寄与していない。
(1)本件発明2-3-③(請求項1)の構成要件aについて乙11公報の【0007】には,「本発明は,リチウム含有遷移金属化合
物である正極活物質,導電剤及び結着剤を含有する正極混合物を含有する層を有するシート状正極,リチウムイオンを吸蔵・放出可能な負極材料,導電
剤及び結着剤を含有する負極混合物を含有する層を有するシート状負極,及びリチウム塩を含む非水電解質よりなる非水二次電池において,該負極シートが,有機溶剤に分散させてなる分散液を集電体上に塗布,乾燥することにより得られたものであることを特徴とする非水二次電池」と記載されており,非晶質の負極材料を用いることが開示されている。
したがって,本件発明2-3-③(請求項1)の構成要件aは,乙11公報に開示されている。
(2)本件発明2-3-③(請求項1)の構成要件bについて乙11公報の段落【0017】には,「本発明に用いられる負極材料はリ
チウムを吸蔵・放出可能な酸化物またはカルコゲン化物である」と記載されており,同段落【0020】には,「上記の複合酸化物または複合カルコゲン化物は電池組み込み時に主として非晶質であることが好ましい」と記載されている。
したがって,本件発明2-3-③(請求項1)の構成要件bは,乙11公
報に開示されている。
(3)本件発明2-3-③(請求項1)の構成要件cについて乙11公報の段落【0020】には,「ここで言う主として非晶質とはCuKα線を用いたX線回折法で2θ値で20°から40°に頂点を有するブロードな散乱帯を有する物であ」り,「最も好ましくは結晶性の回折線を有
さないことである」と記載されている。この場合には,X線回折法で2θ値で20度から40度に存在するピークが最大回折強度のピークであり,また,回折線を有さない場合には,ピークがブロードになるため,半価幅は0.48度より大きくなるといえる。
したがって,本件発明2-3-③(請求項1)の構成要件cは,乙11公
報に開示されている。
(4)本件発明2-3-③(請求項1)の構成要件dについて
乙11公報の段落【0017】には,「該負極材料がPb,Sn,GeまたはSiから選ばれる少なくとも一種の元素を主体とする酸化物またはカルコゲン化物であることが好ましい。」と記載されている。スズ(Sn)は,構成要件dの「リチウム電池の充電/放電時に利用される活物質のリチウム以外の物質に電気化学的に不活性である材料」に該当するから,本件発明2-3-③(請求項1)の構成要件dは,乙11公報に開示されている。(5)本件発明2-3-③(請求項6)の構成要件a及びbについて上記(1)ないし(3)に加え,乙11公報の段落【0017】には,「該負極材料がPb,Sn,GeまたはSiから選ばれる少なくとも一種の元素を主
体とする酸化物またはカルコゲン化物であることが好ましい。」と記載されている。
したがって,本件発明2-3-③の請求項6の構成要件a及びbは,乙11公報に開示されている。
(6)本件発明2-3-③(請求項7)の構成要件a及びbについて
上記(1)ないし(3)に加え,乙11公報の段落【0019】には,「これらの化合物に遷移金属が含まれていてもよ」いとして,負極材料の例が記載されており,その中で,「SnTiO2」,「SnTiO3」,「SnWO3」,「SnWO4」,「SnFeO2.5」,「SnFeO3.5」,「Sn
CoO2」,「SnCoO3」,「SnNiO2」,「SnNiO3」,「SnCuO2」,「SnCuO3」,「SnMoO3」,「SnMoO4」,「SnMoO5」,「SnAgO1.5」,「SnAg2.5」が記載されている。
したがって,本件発明2-3-③(請求項7)の構成要件a及びbは,乙11公報に開示されている。

(7)本件発明2-3-③(請求項1),同(請求項6)及び同(請求項7)と乙11発明の課題・目的について

本件発明2-3-③(請求項1),同(請求項6)及び同(請求項7)と乙11発明の課題・目的は,高容量のリチウム二次電池を提供するという点で共通している。
(8)小括
本件発明2-3-③(請求項1)の構成要件aないしd,同(請求項6)
の構成要件a及びb並びに同(請求項7)の構成要件a及びbは,全て先行技術文献である乙11公報に開示されている。また,本件発明2-3-③(請求項1),同(請求項6)及び同(請求項7)と乙11発明の課題・目的は,高容量のリチウム二次電池を提供するという点で共通している。〔原告の主張〕
乙11発明の負極材料は「酸化物」または「カルコゲン化物」である。他方,本件発明2-3-③(請求項1)の負極は金属を主体とする複合体であるため,両者はそもそも負極材料が異なっている。酸化物にスズ(Sn)などの遷移金属が含まれていても,それはあくまで「酸化物」及び「カルコゲン化物」であって,金属ではあり得ない。

争点(2)イ(コ)(本件発明2-3-④(請求項5),同(請求項9)及び同(請求項11)の乙11発明に対する技術的優位性欠如の有無)について
〔被告の主張〕
本件発明2-3-④(請求項5),同(請求項9)及び同(請求項11)は,以下のとおり,出願時点において乙11公報によって既に知られている技術にすぎないから,二次電池の技術水準を向上させるものでもなければ,「Nexelion」を含めた二次電池の発展に何ら貢献するものでもない。したがって,仮に「Nexelion」が本件発明2-3-④(請求項5),同(請求項9)又は同(請求項11)の全ての構成要件に該当するとしても,
同発明には何らの技術的な優位性がなく,「Nexelion」の売上げに寄与していない。

(1)本件発明2-3-④(請求項5)の構成要件aについて乙11公報の段落【0007】には,「本発明は,リチウム含有遷移金属化合物である正極活物質,導電剤及び結着剤を含有する正極混合物を含有する層を有するシート状正極,リチウムイオンを吸蔵・放出可能な負極材料,導電剤及び結着剤を含有する負極混合物を含有する層を有するシート状負極,及びリチウム塩を含む非水電解質よりなる非水二次電池において,該負極シートが,有機溶剤に分散させてなる分散液を集電体上に塗布,乾燥することにより得られたものであることを特徴とする非水二次電池」と記載されている。

したがって,本件発明2-3-④(請求項5)の構成要件aは,乙11公報に開示されている。
(2)本件発明2-3-④(請求項5)の構成要件bについて乙11公報の段落【0017】には,「本発明に用いられる負極材料はリチウムを吸蔵・放出可能な酸化物またはカルコゲン化物である。」と記載さ
れており,同段落【0020】には,「上記の複合酸化物または複合カルコゲン化物は電池組み込み時に主として非晶質であることが好ましい。」とあり,負極材料として非晶質を用いることが開示されている。
また,乙11公報の段落【0017】には,「該負極材料がPb,Sn,GeまたはSiから選ばれる少なくとも一種の元素を主体とする酸化物また
はカルコゲン化物であることが好ましい。」と記載されており,負極材料として,鉛,スズ,ゲルマニウム,シリコンの少なくとも一種の元素を主体する酸化物が好ましい旨が開示されている。さらに,乙11公報の段落【0019】には,「これらの化合物に遷移金属が含まれていてもよ」いとして,負極材料の例が記載されており,その中で,「SnTiO2」,「SnTi
O3」,「SnWO3」,「SnWO4」,「SnFeO2.5」,「SnFeO3.5」,「SnCoO2」,「SnCoO3」,「SnNiO2」,
「SnNiO3」,「SnCuO2」,「SnCuO3」,「SnMoO3」,「SnMoO4」,「SnMoO5」,「SnAgO1.5」,「SnAg2.5」が記載されている。スズ(Sn)は,構成要件bの「リチウム電池の充
放電で利用される活物質がある電極中のリチウム以外に電気化学的に不活性である金属」に該当する。
そして,乙11公報の段落【0030】には,「所定の粒子サイズにするには,良く知られた粉砕機や分級機が用いられる。」として,物理的エネルギーを加えて形成されることが開示されている。
したがって,乙11公報には,負極材料として非晶質を用いること,負極
材料としてスズ化合物(リチウム電池の充放電で利用される活物質がある電極中のリチウム以外に電気化学的に不活性である金属)を用いること,及び物理的エネルギーを加えて形成されることが開示されているから,本件発明2-3-④の請求項5の構成要件bは,乙11公報に開示されている。(3)本件発明2-3-④(請求項5)の構成要件cについて
乙11公報の段落【0020】には,「ここで言う主として非晶質とはCuKα線を用いたX線回折法で2θ値で20°から40°に頂点を有するブロードな散乱帯を有する物であ」る,「最も好ましくは結晶性の回折線を有さないことである。」と記載されている。この場合には,X線回折法で2θ値で20度から40度に存在するピークが最大回折強度のピークであり,回
折線を有さない場合には,ピークがブロードになるため,半価幅は0.48度より大きくなるといえる。
したがって,本件発明2-3-④の請求項5の構成要件cは,乙11公報に開示されている。
(4)本件発明2-3-④(請求項9)の構成要件aについて
上記(1)ないし(3)に加え,上記(2)のとおり,負極材料として非晶質を用いること及び負極材料として,鉛,スズ,ゲルマニウム,シリコンの少なく
とも一種の元素を主体する酸化物が好ましいことが,乙11公報に開示されている。
したがって,本件発明2-3-④(請求項9)の構成要件aは,乙11公報に開示されている。
(5)本件発明2-3-④(請求項11)の構成要件aについて上記(1)ないし(3)に加え,上記(3)のとおり,チタン,タングステン,鉄,コバルト,ニッケル,銅,モリブデン,銀の化合物については,乙11公報に開示されている。
したがって,本件発明2-3-④(請求項11)の構成要件aは,乙11
公報に開示されている。
(6)本件発明2-3-④(請求項5),同(請求項9)及び同(請求項11)と乙11発明の課題・目的について
本件発明2-3-④(請求項5),同(請求項9)及び同(請求項11)と乙11発明の課題・目的は,高容量のリチウム二次電池を提供するという
点で共通している。
(7)小括
以上のとおり,本件発明2-3-④(請求項5)の構成要件aないしc,同(請求項9)の構成要件a及び同(請求項11)の構成要件aは,全て乙11公報に開示されている。また,本件発明2-3-④(請求項5),同
(請求項9)及び同(請求項11)と乙11発明の課題・目的は,高容量のリチウム二次電池を提供するという点で共通している。
〔原告の主張〕
(1)乙11発明の負極材料は「酸化物」または「カルコゲン化物」である。他方,本件発明2-3-④(請求項5),同(請求項9)及び同(請求項11)
の負極は金属を主体とする複合体であるため,両者はそもそも負極材料が異なっている。酸化物にスズ(Sn)などの遷移金属が含まれていても,それ
はあくまで「酸化物」及び「カルコゲン化物」であって,金属ではあり得ない。
(2)また,本件発明2-3-④(請求項5)の構成要件cではX線回折におけるピークの半価幅が0.48度以上を示すことが明記されているが,乙11公報には「X線回折法で2θ値で20°から40°に頂点を有するブロード
な散乱帯を有する」(乙11公報の段落【0020】)という記載は存在するものの,ブロードな散乱帯のピークの半価幅が0.48度より大きいことは一切開示されていない。本件発明2-3-④(請求項5),同(請求項9)及び同(請求項11)においては,放電容量が大きく,かつサイクル寿命が長いという効果を生じる下限値として,半価幅が0.48度より大きくなる
構成を提示しているのであって,0.48度以上という下限値を示していることに上記各発明の技術的意義がある。
争点(2)イ(サ)(本件発明2-3-⑤の乙11発明に対する技術的優位性欠如の有無)について

〔被告の主張〕
本件発明2-3-⑤は,以下のとおり,出願時点において乙11公報によって既に知られている技術にすぎないから,二次電池の技術水準を向上させるものでもなければ,「Nexelion」を含めた二次電池の発展に何ら貢献するものでもない。

したがって,仮に「Nexelion」が本件発明2-3-⑤の全ての構成要件に該当するとしても,同発明には何らの技術的な優位性がなく,「Nexelion」の売上げに寄与していない。
(1)構成要件aないしdについて
本件発明2-3-⑤の構成要件は,本件発明2-3-②(請求項2)の構
成要件と同じである。
したがって,上記18の〔被告の主張〕と同じ理由により,本件発明2-3
-⑤の構成要件aないしdは,全て先行技術文献である乙11公報で開示されている。
(2)本件発明2-3-⑤及び乙11発明の課題・目的について本件発明2-3-⑤及び乙11発明の課題・目的は,高容量のリチウム二次電池を提供するという点で共通している。

〔原告の主張〕
乙11発明の負極材料は「酸化物」または「カルコゲン化物」である。他方,本件発明2-3-⑤の負極は金属を主体とする複合体であるため,両者はそもそも負極材料が異なっている。酸化物にスズ(Sn)などの遷移金属が含まれていても,それはあくまで「酸化物」及び「カルコゲン化物」であって,金属
ではあり得ない。
争点(2)イ(シ)(本件発明2-4-④の乙108発明に対する技術的優位性欠如の有無)について

〔被告の主張〕
本件発明2-4-④は,以下のとおり,出願時点において乙108公報によって既に知られている技術にすぎないから,二次電池の技術水準を向上させるものでもなければ,「Nexelion」を含めた二次電池の発展に何ら貢献するものでもない。
したがって,仮に「Nexelion」が本件発明2-4-④の全ての構成
要件に該当するとしても,同発明には何らの技術的な優位性がなく,「Nexelion」の売上げに寄与していない。
(1)構成要件aについて
乙108公報の段落【0011】には,「合金粉から成る層を集電部材上に形成する」ことが記載されているから,本件発明2-4-④の構成要件a
は乙108公報に開示されている。
(2)構成要件bについて

乙108公報の段落【0012】には,「合金粉末の粒径としては,・・・10μm以下がより好ましい」と記載されており,同段落【0039】には,「合金粉末に導電補助材のアセチレンブラックを3wt%と結着材のポフッ化ビニデン5wt%を混合し,N-メチルピロリドンと共に混練して得たペーストを,コーターを用いてニッケル箔上に塗布,乾燥した後,プレス処理」することにより電極材料層を形成することが記載されている。したがって,乙108公報には,本件発明2-4-④の構成要件bが開示されている。
(3)構成要件cについて

乙108公報の段落【0013】には,「両性金属の合金粉末から両性金属の一部を選択的に溶出させて多孔質の両性金属の合金粉末を得る」ことが記載されており,同段落【0015】には,「エッチング法によって溶出させる両性金属の量としては,60%以下が好まし」いことが記載されている。両性金属の合金粉末から60%もの両性金属を溶出させたのであれば,電極
活物質層の空隙率は「0.10~0.86」となっている蓋然性が高い。したがって,本件発明2-4-④の構成要件cである「0.10~0.86の空隙率を有する」点は,乙108公報に実質的に開示されている。なお,粉体を原料として電極活物質層を作成するに当たり,電極活物質層の空隙率,空孔率を調整することは,例えば乙109公報の【請求項23】
に,「電極内の空隙率P(%)が以下の範囲内にあることを特徴とするリチウム二次電池。10≦P≦30」と記載されているように,本件発明2-4-④の優先日において既に周知の技術的事項にすぎない。また,乙110公報には,「Sn-Cd合金でNaCl0wt%のもの(極板A)」,「極板Aの多孔率は約40Vol%である」との記載があり,スズ合金を負極とし
て用いた場合にも,空隙率(多孔率)を「0.10~0.86」の範囲内にすることは,本件発明2-4-④の優先日において既に周知の技術的事項に
すぎない。
(4)本件発明2-4-④及び乙108発明の課題・目的について本件発明2-4-④及び乙108発明の課題・目的は,デンドライト成長の抑制によるサイクル寿命の向上という点で共通している。
(5)小括
本件発明2-4-④の構成要件のうち,構成要件a及びbは先行技術である乙108公報に開示されており,構成要件cは乙108公報に実質的に開示されている。しかも,構成要件cは,本件発明2-4-④の優先日において既に周知の技術的事項にすぎない。さらに,本件発明2-4-④及び乙1
08公報の課題・目的も共通している。
〔原告の主張〕
(1)構成要件aについて
「集電体」が「対向面を持つ」こと及びこれが「板状」であることは,乙108公報の段落【0011】には何ら開示されていない。また,上記「合
金粉から成る層」が,構成要件aの「電極材料層」と同義であることは,何ら記載されていない。
したがって,本件発明2-4-④の構成要件aは,乙108公報には開示されていない。
(2)構成要件bについて

乙108公報の段落【0012】においては,合金粉末の粒径の下限値は定められておらず,本件発明2-4-④の構成要件bとは異なる。また,上記段落【0012】においては,正確には「合金粉末の粒径としては,・・・100μm以下が好ましく,10μm以下がより好ましい」と記載されており,当該記載からすると,結局,合金粉末の粒径の上限値は
「100μm」とされているのであるから,平均粒径の上限値を60μmとする本件発明2-4-④の構成要件bとは異なる。この点,被告は意図的に
引用部分から「100μm」との記載を省略したものと思われる。さらに,乙108公報の段落【0039】においては,「N-メチルピロリドン」の重量%は何ら記載されておらず,母材が35重量%以上含有されていることは何ら明らかではない。
したがって,本件発明2-4-④の構成要件bは,乙108公報には何ら
開示されていない。
(3)構成要件cについて

乙108公報での開示の有無について
被告は「両性金属の合金粉末から60%もの両性金属を溶出させたのであれば,電極活物質層の空隙率は『0.10~0.86』となってい
る蓋然性が高い」との推論を主張するが,この推論がなにゆえ成り立つのか,被告は何ら立証していない。そもそも,合金粉末からの両性金属の溶出量と,負極における粒子の空隙率とは何ら関係がないのであって,「60%もの両性金属を溶出させ」ることから「電極活物質層の空隙率は『0.10~0.86』」となるとの経験則は成立しない。

したがって,本件発明2-4-④の構成要件cは,乙108公報に開示されていない。

乙109公報での開示の有無について
乙109公報の【請求項23】は,「負極活物質としてカーボンを用
いるリチウム二次電池」と明確に記載されており,負極活物質としてSn(スズ)合金を用いる本件発明2-4-④とは異なる。また,本件発明2-4-④の構成要件cは,電極材料層表面に適切な空隙を設けることにより,電極材料層表面の崩壊や,亀裂が生じることを防ぎ,もって,高容量,長寿命電池を実現することを目的とするもの
であるところ(本件明細書等2-4-④の段落【0070】及び【0071】),乙109公報に係る発明において空隙率を設けることの目的
は,「活物質と電解液間のリチウムイオンの反応を円滑にすることができ,重量当たりの放電容量を増加させること」という点にあり(乙109公報の段落【0074】),乙109公報においては電極材料層表面の崩壊や亀裂が生じることが何ら認識されておらず,これを防止するための技術ではない点で全く異なる。

さらに,乙109公報の【請求項23】に定められた空隙率は「10≦P≦30」であるのに対して,本件発明2-4-④の構成要件cにおける空隙率は「0.10~0.86」であり,空隙率の上限値が異なるから,技術内容自体が全く異なる。

乙110公報での開示の有無について
被告の摘示する乙110公報の記載により本件発明2-4-④の構成要件cが開示されているといえるためには,構成要件cにおける「空隙率」が乙110公報における「多孔率」とが同義であることが立証されなければならないが,被告はこの点を何ら立証していない。

また,乙110公報の「極板Aの多孔率は約40Vol%である」との記載は,実施例における一つの実験値として記載されているだけであり,実施例における実験の結果,「少なくとも多孔度は50Vol%以上であることが必要である」,「多孔度は90Vol%くらいが極板強度の点で限界であるので,望ましくは60~90Vol%位がよい。多
孔率を従来の40Vol%くらいであったものを50~90Vol%に上げることによって,電極内部への電解液の浸透を十分にし,充放電の利用率を高めることができる。」と記載されているとおり(乙110公報3頁),乙110公報の発明の内容は,「多孔率を従来の40Vol%くらいであったものを50~90Vol%に上げる」ことにあり,請
求項も同範囲とされている。
そして,本件発明2-4-④の構成要件cは,空隙率を「0.10~
0.86」の範囲とするものであり,仮に「空隙率」と「多孔率」とが同義であったとしても,「50~90Vol%」とする乙110公報の発明とはその下限値も上限値も異なる。
したがって,本件発明2-4-④の構成要件cは,乙110公報には開示されていない。

争点(2)イ(ス)(本件発明2-4-⑤(請求項1)及び同(請求項44)の乙108発明に対する技術的優位性欠如の有無)について

〔被告の主張〕
本件発明2-4-⑤(請求項1)及び同(請求項44)は,以下のとおり,出願時点において乙108公報によって既に知られている技術にすぎないから,二次電池の技術水準を向上させるものでもなければ,「Nexelion」を含めた二次電池の発展に何ら貢献するものでもない。
したがって,仮に「Nexelion」が本件発明2-4-⑤(請求項1)又は同(請求項44)の全ての構成要件に該当するとしても,同発明には何ら
の技術的な優位性がなく,「Nexelion」の売上げに寄与していない。(1)本件発明2-4-⑤(請求項1)の構成要件aについて乙108公報の段落【0011】には,「合金粉から成る層を集電部材上に形成する」ことが記載されているから,本件発明2-4-⑤(請求項1)の構成要件aは乙108公報に開示されている。

(2)本件発明2-4-⑤(請求項1)の構成要件bについて乙108公報の段落【0012】には,「両性金属の合金粉末の粒径としては,・・・10μm以下がより好ましい」と記載されており,同段落【0039】には,「合金粉末に導電補助材のアセチレンブラックを3wt%と結着材のポフッ化ビニデン5wt%を混合し,N-メチルピロリドンと共に
混練して得たペーストを,コーターを用いてニッケル箔上に塗布,乾燥した後,プレス処理」することにより電極材料層を形成することが記載されてい
る。また,乙108公報の【請求項5】には,「両性金属が,アルミニウム,亜鉛,錫,鉛から選択される少なくとも一種類以上の金属で構成されている」と記載されている。
したがって,本件発明2-4-⑤(請求項1)の構成要件bは,乙108公報に開示されている。
(3)本件発明2-4-⑤(請求項44)の構成要件aについて乙108公報の【図2】には,「正極」,「負極」,「電解質」が開示されているから,本件発明2-4-⑤(請求項44)の構成要件aは乙108公報に開示されている。

(4)本件発明2-4-⑤(請求項44)の構成要件bについて本件発明2-4-⑤(請求項44)の構成要件bが乙108公報で開示されていることは,上記(1)のとおりである。
(5)本件発明2-4-⑤(請求項44)の構成要件cについて本件発明2-4-⑤(請求項44)の構成要件cが乙108公報に開示さ
れていることは,上記(2)のとおりである。
(6)小括
以上のとおり,本件発明2-4-⑤(請求項1)の構成要件a及びb並びに同(請求項44)の構成要件aないしcは,全て先行技術文献である乙108公報に開示されている。

〔原告の主張〕
(1)本件発明2-4-⑤(請求項1)の構成要件aについて乙108公報における「集電部材」が構成要件aの「対抗する面」を有すること及びこれが「板状」であることは,乙108公報には何ら記載されていない。

また,乙108公報における「合金粉から成る層」が構成要件aの「電極材料層」と同義であることも,乙108公報には何ら記載されていない。
したがって,本件発明2-4-⑤(請求項1)の構成要件aは,乙108公報には開示されていない。
(2)本件発明2-4-⑤(請求項1)の構成要件bについて乙108公報の段落【0012】においては,合金粉末の粒径の下限値は定められておらず,本件発明2-4-⑤(請求項1)の構成要件bとは異なる。
また,上記段落【0012】においては,正確には「合金粉末の粒径としては,・・・100μm以下が好ましく,10μm以下がより好ましい」と記載されており,当該記載からすると,結局,合金粉末の粒径の上限値は
「100μm」とされているのであるから,平均粒径の上限値を60μmとする本件発明2-4-⑤(請求項1)の構成要件bとは異なる。次に,乙108公報の段落【0039】においては,合金粉末及び「N-メチルピロリドン」の重量%は何ら記載されておらず,したがって,主母材が35重量%以上含まれていることは何ら明らかではない。

さらに,乙108公報の【請求項5】に掲げられた構成元素と本件発明2-4-⑤(請求項1)の構成要件bの構成元素とは,「錫」及び「鉛」が一致しているだけであり,その他は一致していない。
したがって,本件発明2-4-⑤(請求項1)の構成要件bは,乙108公報に開示されていない。

(3)本件発明2-4-⑤(請求項44)の構成要件aについて構成要件aの「活物質の酸化還元反応を利用して充放電を行う再充電可能な電池」が乙108公報に開示されていることは,立証されていない。(4)本件発明2-4-⑤(請求項44)の構成要件bについて上記(1)のとおり,本件発明2-4-⑤(請求項44)の構成要件bは乙
108公報に開示されていない。
(5)本件発明2-4-⑤(請求項44)の構成要件cについて
上記(2)のとおり,本件発明2-4-⑤(請求項44)の構成要件cは乙108公報に開示されていない。
争点(2)イ(セ)(本件発明2-4-⑤(請求項1)及び同(請求項44)の乙16発明に対する技術的優位性欠如の有無)について

〔被告の主張〕
本件発明2-4-⑤(請求項1)及び同(請求項44)は,以下のとおり,出願時点において乙16公報によって既に知られている技術にすぎないから,二次電池の技術水準を向上させるものでもなければ,「Nexelion」を含めた二次電池の発展に何ら貢献するものでもない。

したがって,仮に「Nexelion」が本件発明2-4-⑤(請求項1)又は同(請求項44)の全ての構成要件に該当するとしても,同発明には何らの技術的な優位性がなく,「Nexelion」の売上げに寄与していない。(1)本件発明2-4-⑤(請求項1)の構成要件aについて乙16公報の段落【0021】には,「この負極材をエキスパンドメタル
の両面に塗布し,全体の厚みが0.6mmとなるようにした。これを真空乾燥した後,φ15mmのディスク状に切り出し,1~8ton/c㎡の範囲で加圧し,気孔率が11.3,16.1,22.3,27.0,33.4,39.6,46.5%の負極を作製した。」と記載されている。ここでは「負極材をエキスパンドメタルの両面に塗布し」て負極を作成しているため,
この「エキスパンドメタル」は構成要件aの「対向する面を有する板状の集電体」に該当する(乙17参照)。
また,乙16公報の段落【0021】には,「この負極材をエキスパンドメタルの両面に塗布」することが記載されているから,この負極材は構成要件aの「前記集電体の少なくとも一方の面に形成された電極材料層」に該当
する。
したがって,本件発明2-4-⑤(請求項1)の構成要件aは,乙16公
報に開示されている。
(2)本件発明2-4-⑤(請求項1)の構成要件bについて乙16公報の段落【0015】には,「電極劣化の原因となる合金の崩壊を抑えるためには,充放電時における合金の体積変化を吸収できるように電極構造を最適化する必要がある。具体的には,活物質として微細な合金粒子を用い,成型した電極内に適度の空隙を設けることによって,合金粒子の膨張収縮に応じて空隙が縮小拡大し合金内に生じる応力を緩和する。即ち,電極のマクロ構造に弾性をもたせることが望ましい。合金粒子の粒径は,45μm以下であることが望ましい。」と記載されており,合金粒子の粒径が4
5μm以下であることが望ましい点が開示されている。合金粒子の粒径を45μm以下にすることは,乙16公報の段落【0021】や同段落【0025】にも記載されている。
乙16公報の段落【0019】には,「Al,Cd,In,Sn,Pb,Biから選ばれた粉末をそれぞれLi-Pb合金粉末に添加した負極材を用
い,加圧成型し負極を作製した場合には,気孔率が20~35%の範囲で良好なサイクル特性を得た。」と記載されており,また,同段落【0021】には「(実施例1)・・・約45μm以下のLi-Pbの合金粉末を得た。このLi-Pbの合金粉末90重量%(以下wt%という)に・・・十分混合しペースト状の負極材を得た。」と記載され,同段落【0025】には
「(実施例2)・・・約45μm以下のLi-Alの合金粉末を得た。このLi-Alの合金粉末70wt%に・・・十分混合しペースト状の負極材を得た。」と記載されている。
このように,乙16公報には,45μm以下のLi-Pb合金粉末あるいはLi-Al合金粉末を35重量%以上含有する負極材について開示されて
いる。Pbは鉛であり,Alはアルミニウムであるので,「45μm以下のLi-Pb合金粉末あるいはLi-Al合金粉末を35重量%以上含有する
負極材」は,構成要件bの「前記電極材料層が,平均粒径0.5~60μmで,シリコン,ゲルマニウム,スズ,鉛,インジウム,マグネシウム,亜鉛から成る群から選択される一つ以上の元素から構成されている粒子状の主母材を35重量%以上含む」に該当する。
したがって,本件発明2-4-⑤(請求項1)の構成要件bは,乙16公報に開示されている。
(3)本件発明2-4-⑤(請求項44)の構成要件aについて乙16公報の【図2】には「正極」及び「負極」が開示されており,また,同公報の段落【0016】には「電解質」である「非水系電解液」が開示さ
れている。
したがって,本件発明2-4-⑤(請求項44)の構成要件aは乙16公報に開示されている。
(4)本件発明2-4-⑤(請求項44)の構成要件bについて本件発明2-4-⑤(請求項44)の構成要件bが乙16公報で開示され
ていることは,上記(1)のとおりである。
(5)本件発明2-4-⑤(請求項44)の構成要件cについて本件発明2-4-⑤(請求項44)の構成要件cが乙16公報に開示されていることは,上記(2)のとおりである。
(6)本件発明2-4-⑤(請求項1)及び同(請求項44)と乙16発明の課
題・目的について
本件発明2-4-⑤(請求項1)及び同(請求項44)と乙16発明の課題・目的は,リチウムのデンドライトの発生等の問題を抑制して,リサイクル寿命を延ばすという点で共通している。
(7)小括

以上によれば,本件発明2-4-⑤(請求項1)の構成要件a及びbの全てが先行技術文献である乙16公報で開示されており,また,同(請求項4
4)の構成要件aないしcの全てが乙16公報に開示されている。さらに,本件発明2-4-⑤(請求項1)及び同(請求項44)と乙16発明の課題・目的は,リチウムのデンドライトの発生等の問題を抑制して,リサイクル寿命を延ばすという点で共通している。
〔原告の主張〕
(1)本件発明2-4-⑤(請求項1)の構成要件aについて本件発明2-4-⑤(請求項1)の構成要件aは,多くのリチウムイオン二次電池について該当する一般的かつ基本的な内容であって,被告が摘示する乙16公報で開示されていることにはならない。
(2)本件発明2-4-⑤(請求項1)の構成要件bについて
乙16発明は,その負極にリチウム合金を用いることが前提とされた発明である。
これに対し,本件発明2-4-⑤(請求項1)は,負極活物質としてリチウム合金を用いないことを前提として出願し登録されたものであり,負極にリチウム合金を用いることを前提とする乙16発明とはそもそも発明の内容
が全く異なる。
したがって,両者はその内容全く異にする発明であることから,本件発明2-4-⑤(請求項1)の構成要件bは,被告が摘示する乙16公報において開示されていることにはならない。
(3)本件発明2-4-⑤(請求項44)の構成要件aないしcについて
上記(2)のとおり,本件発明2-4-⑤(請求項44)の構成要件a及びcは,乙16公報において開示されていることにはならない。
争点(3)ア(被告の得た独占的利益の額)について

〔原告の主張〕
(1)本件発明1-2ないし1-4について

実施品の売上高

被告がこれまでに販売している被告製のリチウムイオン二次電池には,全て本件発明1-2ないし1-4に係る特許が実施されている。このリチウムイオン二次電池は,少なくともビデオカメラ,コンパクトデジタルカメラ,デジタル一眼レフカメラ等の製品に搭載されて販売されているほか,これらの製品の付属品としてバッテリーパックや充電池単体と
しても販売されている。
平成12年から平成24年までの米国(本件発明1-2),欧州(同1-3),韓国(同1-4)及びカナダ(同1-5)におけるカメラの売上高等を総合すると,同期間での当該各地域におけるリチウムイオン二次電池の売上高は,少なくとも2166億6349万2182円を下
らないものと考えられる。

被告が受けるべき利益の額
上記アの売上高のうち超過売上高の占める割合を10%,本件発明1-2ないし1-4に係る特許の仮装実施料率を4.6%として計算すると,本件発明1-2ないし1-4に関して被告が受けるべき利益の額は,
9億9665万2064円となる。
(2)本件発明2-1-①ないし2-5-⑦についてア
実施品の売上高
ソニーのリチウムイオン二次電池「Nexelion」には,全て本
件発明2-1-①ないし2-5-⑦に係る特許が実施されている。そして,「Nexelion」は,平成17年2月以降に販売された同社の家庭用ビデオカメラやノートパソコンに搭載されて販売されているほか,これらの製品の交換・修理用部品としてバッテリーパックや充電池単体としても販売されている。

平成17年から平成24年までの全世界におけるソニー製家庭用ビデオカメラの売上高等を総合すると,同期間での「Nexelion」の
売上高は,1557億7300万円を下らないものと考えられる。イ
被告が受けるべき利益の額
「本件発明2-1-①及び2-1-②」,「本件発明2-2-①ないし2-2-④」,「本件発明2-3-①ないし2-3-⑤」,「2-4-①ないし2-4-⑤(請求項44)」及び「2-5-①(請求項1)
ないし2-5-⑦」に係る特許の実施料率をそれぞれ0.9%として計算すると,上記各発明に関して被告が受けるべき利益の額はそれぞれ14億0196万4200円となる。
〔被告の主張〕
(1)本件発明1-2ないし1-4について

被告がビデオカメラ,コンパクトデジタルカメラ,デジタル一眼レフカメラを製造及び販売していること,これらの製品の一部にリチウムイオン二次電池が搭載されていることは認め,その余は争う。被告はこれまで,リチウムイオン二次電池を商業ベースで自社製造したことはなく,「自社製のリチウムイオン二次電池」等の原告の主張は否認する。

(2)本件発明2-1-①ないし2-5-⑦について不知ないし争う。
争点(3)イ(使用者の貢献度)について

〔原告の主張〕
(1)本件発明1-2ないし1-4について
原告が被告においてリチウムイオン二次電池の研究開発を開始した端緒は被告の業務命令ではあったものの,その後の研究開発は実質的に原告単独で行ってきたものであり,その当時のリチウムイオン二次電池の課題は原告の独創的な着想のもと,原告自らが自主的に解決したものである。

また,発明完成後においても,本件特許権1に係る明細書の大部分は原告が自ら完成させたものである。

以上からすると,本件発明1-2ないし1-4に係る特許について,通常実施権の経済的価値を超過した被告の貢献度は,多くとも10%を上回ることはない。
(2)本件発明2-1-①ないし2-5-⑦について上記(1)と同様の事情に照らせば,本件発明2-1-①ないし2-5-⑦
に係る各特許について,通常実施権の経済的価値を超過した被告の貢献度は,いずれも10%を上回ることはない。
〔被告の主張〕
原告によるリチウムイオン二次電池の研究開発が被告の業務命令を端緒としていることは認め,その余は争う。

争点(3)ウ(共同発明者間の寄与割合)について

〔原告の主張〕
(1)本件発明1-2ないし1-4について

本件発明1-2ないし1-4は,その大部分を原告自らが行って完成させたものであり,共同発明者間における原告の貢献度は少なくとも9
5%を下回ることはない。

この点につき,本件発明1-2ないし1-4に係る各特許の特許公報には,発明者として,原告以外にも当時の被告従業員であったB,A及びCが記載されている。

しかし,当時,被告では従業員に特許発明のノルマが課されており,このようなノルマを達成するために,何ら発明に関与していない従業員についても,発明者と同じ部署に所属しているなどの理由のみで形式上発明者として掲載されるという扱いが横行していた。B及びCはノルマ達成のために名目上発明者として掲載されている者であり,両名は本件
発明1-2ないし1-4の研究には一切携わっていない。
また,Aは,原告の部下として,原告の指示のもと,本件発明1-2
ないし1-4の効果を実証するための実験の補助を行っていたにすぎず,同人の貢献度は多くとも5%を上回ることはない。
(2)本件発明2-1-①ないし2-5-⑦についてア
本件発明2-1-①及び2-1-②について本件発明2-1-①及び2-1-②は,その全部を原告自らが行って
完成させたものであり,共同発明者間における原告の貢献度は100%である。
この点,上記各発明に係る各特許の特許公報には,発明者として原告以外にもC,B及びAが記載されているが,同人らはノルマ達成のために名目上発明者として記載されている者にすぎず,発明には一切携わっ
ていない。

本件発明2-2-①ないし2-2-④について本件発明2-2-①ないし2-2-④は,その全部を原告自らが行って完成させたものであり,共同発明者間における原告の貢献度は100%である。

この点,上記アと同様に,上記各発明に係る各特許の特許公報には,発明者として原告以外にもC,B及びAが記載されているが,同人らはノルマ達成のために名目上発明者として記載されている者にすぎず,発明には一切携わっていない。

本件発明2-3-①ないし2-3-⑤について本件発明2-3-①ないし2-3-⑤は,その全てを原告自らが行って完成させたものであり,共同発明者間における原告の貢献度は100%である。
この点,上記各発明に係る各特許の特許公報には,発明者として原告
以外にもB及びDが記載されているが,同人らはノルマ達成のために名目上発明者として記載されている者にすぎず,発明には一切携わってい
ない。

本件発明2-4-①ないし2-4-⑤(請求項44)について本件発明2-4-①ないし2-4-⑤(請求項44)の共同発明者間における原告の貢献度は,少なくとも60%を下回ることはない。この点,上記各発明に係る各特許の特許公報には,発明者として原告
以外にもC,B,E及びFが記載されている。
このうち,B,E及びFはノルマ達成のために名目上発明者として掲載されている者にすぎず,発明には一切携わっていない。
他方,Cに関しては,原告の部下として,原告の指示のもと,発明の効果を実証するための実験の補助を行ったが,Cの貢献はあくまで原告
の指示に基づく実験の補助に留まるものであり,発明の着想及びそれを検証するための実験の指示は全て原告による。したがって,上記各発明におけるCの貢献度割合は多くとも40%を上回ることはない。

本件発明2-5-①(請求項1)ないし2-5-⑦について本件発明2-5-①(請求項1)ないし2-5-⑦の共同発明者間における原告の貢献度は,少なくとも70%を下回ることはない。
この点,上記各発明に係る各特許の特許公報には,発明者として原告以外にもCが含まれている。上記エと同様,Cは原告の部下として,原告の指示のもと,発明の効果を実証するための実験の補助を行ったが,
Cの貢献はあくまで原告の指示に基づく実験の補助に留まるものである上,本件発明2-5-①(請求項1)ないし2-5-⑦におけるデータ取得のための実験に要した労力は本件発明2-4-①ないし2-4-⑤(請求項44)までに及ばない。したがって,本件発明2-5-①(請求項1)ないし2-5-⑦におけるCの貢献度は多くとも30%を上回
ることはない。
〔被告の主張〕

(1)「対価比率」の記載について
原告が本件各職務発明についてそれぞれ作成した「発明・考案・創作

渡証書」(乙59ないし64。前記第2,2(4)参照)には,以下のアないしカのとおり「対価比率」の記載があり,これが共同発明者間の寄与割合である。
上記「発明・考案・創作

譲渡証書」は,「対価比率」の数字も含めて,

原告を含む共同発明者らが自署・押印して提出したものであり,特にこのうち一部(乙62ないし64)は,原告が共同発明者の所属する部門の管理職という当時の職責の下で,確認,承認したものである。
また,被告は,上記「対価比率」に従い,原告に対して多数回に及ぶ対価
の支払を行っているところ,原告は本件訴訟に至るまで,この支払に対して異議を述べていなかった。

本件発明1-1ないし1-5について
原告:A:B:C=1:1:1:1


本件発明2-1-①及び2-1-②について原告:B:A:C=2:2:1:1


本件発明2-2-①ないし2-2-④について原告:A:B:C=1:1:1:1


本件発明2-3-①ないし2-3-⑤についてB:原告:D=6:3:1


本件発明2-4-①ないし2-4-⑤(請求項44)について原告:C:B:E:F=5:4:1:1:2


本件発明2-5-①(請求項1)ないし2-5-⑦について原告:C=7:3

(2)「ノルマ」の不存在について
この点に関して原告は,当時,従業員に対して特許発明に関する厳格なノ
ルマ(特許の提案件数の年間ノルマ等)が課されていたため,ノルマ達成困難な「非」発明者に対して「対価比率」を与える慣習が存在したと主張するが,被告にはそのようなノルマ制はなく,非発明者に対し対価比率を与える慣習もない。
争点(3)エ(相当な対価の額)について

〔原告の主張〕
(1)各特許の相当対価の額
以上をまとめると,本件各発明に係る特許の相当対価は,以下のとおりとなる。

本件発明1-2ないし1-4の相当対価
9億9665万2064円×(1-0.1)×0.95=8億5213万7514円


本件発明2-1-①及び2-1-②の相当対価14億0196万4200円×(1-0.1)×1=12億6176万7780円


本件発明2-2-①ないし2-2-④の相当対価14億0196万4200円×(1-0.1)×1=12億6176万7780円


本件発明2-3-①ないし2-3-⑤の相当対価14億0196万4200円×(1-0.1)×1=12億6176万
7780円

本件発明2-4-①ないし2-4-⑤(請求項44)の相当対価14億0196万4200円×(1-0.1)×0.6=7億5706万0668円


本件発明2-5-①(請求項1)ないし2-5-⑦の相当対価14億0196万4200円×(1-0.1)×0.7=8億8323
万7446円

合計
62億7773万8968円

(2)未払の相当対価の額
被告が原告に対して本件各職務発明に関する対価として支払った額は,い
ずれも多くとも各2万円を上回るものではないことから,原告は,被告に対し,以下の未払額に係る支払請求権を有する。

本件発明1-2ないし1-4の未払額
8億5211万7514円


本件発明2-1-①及び2-1-②の未払額12億6174万7780円


本件発明2-2-①ないし2-2-④の未払額12億6174万7780円


本件発明2-3-①ないし2-3-⑤の未払額12億6174万7780円


本件発明2-4-①ないし2-4-⑤(請求項44)の未払額7億5704万0668円


本件発明2-5-①(請求項1)ないし2-5-⑦の未払額8億8321万7446円


合計
62億7761万8968円

〔被告の主張〕
争う。なお,被告が原告に対して本件各職務発明に関する対価として支払った金額は,上記第2,2(8)のとおり,合計18万8595円である。第4
1
当裁判所の判断
本件各発明の意義

(1)本件発明1-1(対応外国特許に係る発明:本件発明1-2ないし1-5)について

本件明細書等1-1には,次の記載がある。
(ア)産業上の利用分野

・「本発明は二次電池に関し,更に詳しくはとくにリチウムイオンの反応を利用した,あるいは亜鉛又は亜鉛合金を負極に用いた二次電池において充放電の繰り返しによって発生するリチウムまたは亜鉛のデンドライトの成長を抑え,長寿命化を達成する二次電池に関する。」(段落【0001】)

(イ)従来の技術
・「最近,大気中に含まれるCO2の増加による温室効果で地球の温暖化が生じる可能性が指摘されている。火力発電所は化石燃料などを燃焼させて得られる熱エネルギーを電気エネルギーに変換しているが,燃焼に伴ってCO2が排出されるため新たな火力発電所の建設が難し
くなってきている。そこで,発電機の有効利用として余剰電力である夜間電力を一般家庭に設置した二次電池に蓄えて負荷を平準化する,いわゆるロードレベリングを行うことが提唱されつつある。また,COx,NOx,CHなどを含む大気汚染に係わるといわれる物質を排出しない電気自動車のため軽量で高エネルギー密度の二次電池の開発
の要求,ブック型パーソナルコンピューターやワードプロセッサーやビデオカメラや携帯電話などのポータブル機器の電源用として小型,軽量で高性能な二次電池の要求がますます高まっている。」(段落【0002】)
・「高性能の二次電池のひとつとしてリチウムイオンを層間化合物に導
入したものを正極活物質に,負極活物質にカーボンを用いたロッキングチェアー型リチウムイオン電池の開発が進み,一部実用化されつつ
ある。しかし,現在入手可能なリチウムイオン電池は,金属リチウムを負極活物質に使用するリチウム電池本来の特徴である高エネルギー密度を達成しているとはいえない。」(段落【0003】)
・「リチウム二次電池は充電時に負極上に樹枝状リチウムが折出する場合がある。この現象は電池内で正負極間の短絡や自己放電を引きおこす原因となり得る。」(段落【0004】)
・「より高エネルギー密度を達成しながら,リチウムの反応性を抑えデンドライトの発生を抑えるために負極にリチウム・アルミニウムなどのリチウム合金を使用する方法も試みられている。たとえば,特開昭
63-13264号公報,特開平5-47381号公報,特開平5-190171号公報などには負極にリチウム合金を使用したリチウム電池が示されている。」(段落【0005】)
・「また組織状アルミニウムと,リチウムと合金化しない金属繊維との混合焼結体を基体とした負極が特開昭63-114057号公報に,
リチウム金属からなる基材の表面に,リチウム金属との金属間化合物を生成しにくい金属粉を一様に付着させたものを負極とすることが特開平5-234585号公報に夫々示されている。」(段落【0006】)
・「更に,JOURNAL

HEMISTRY

OF

APPLIED

ELECTROC

22(1992),620~627頁には表面を

エッチング処理したアルミニウム箔を負極に用いたリチウム二次電池が示されている。」(段落【0007】)
(ウ)発明が解決しようとする課題
・「しかしながら,充放電サイクルを実用レベルまで繰り返すと,上述した如くの対策を施しているにも係わらずデンドライトの成長が起こり実用的に充分満足できる性能のものとなっているとはいえないのが
実情である。」(段落【0008】)
・「特に,上記した負極をセパレータを挟んで正極に近接対向させた場合には,充放電サイクルの寿命が短くなることがあった。その中には,著しく寿命の短いものも多く発生していた。」(段落【0009】)・「また,亜鉛や亜鉛合金を負極に用いた,ニッケル亜鉛電池,電気亜鉛電池においても,上記リチウム合金やアルミニウムを負極に用いたリチウム二次電池と同様に,著しくサイクル寿命の短いものが発生する問題があった。」(段落【0010】)
・「このように,エネルギー密度が高く,サイクル寿命の長い,リチウ
ム二次電池,ニッケル亜鉛二次電池,空気亜鉛二次電池,臭素亜鉛二次電池の出現が待ち望まれているのに対して,現実には未だ解決すべき問題点を有しているのが,実情である。」(段落【0011】)・「(発明の目的)本発明は上記問題点に鑑み成されたものであって,エネルギー密度が高く,サイクル寿命の長い二次電池を提供すること
を目的とする。」(段落【0012】)
・「更に本発明は,電池の構成が従来に比して煩雑でなく,作製方法や手順も従来と同様の技術を利用できる取扱い性にも優れた二次電池を提供することを目的とする。」(段落【0013】)
・「加えて本発明は,作製される電池の性能にばらつきがなく,良品率
も高い生産性に優れた二次電池を提供することを目的とする。」(段落【0014】)
(エ)課題を解決するための手段及び作用
・「上記問題を解決し,かつ,上記目的を達成する本発明の二次電池は,負極,セパレーター,正極,電解質と,電池ケースを有する二次電池
において,前記負極の大きさが前記正極の大きさより大きく,前記負極面上に垂直に投影した前記正極の投影面が該負極面内にあり,正極
エッジ先端から負極エッジ先端までの最短距離が,前記正極と前記負極との間の距離の10倍以上であることを特徴とする。」(段落【0015】)
(オ)発明の効果
・「以上詳述したように,本発明によれば,負極の大きさを正極の大き
さより大きくすることで,負極活物質がリチウムあるいは亜鉛である二次電池の充電時に発生する性能劣化の原因であるデンドライトの成長を抑制でき,長寿命で高エネルギー密度の二次電池,具体的にはリチウム二次電池,ニッケル亜鉛二次電池,空気亜鉛二次電池,臭素亜鉛二次電池などの作製が可能になる。また,充電効率をより向上させ
ることができ,充電時間の短縮をはかることができる。」(段落【0121】)

以上の記載によれば,本件発明1-1の意義は,以下のとおりと認められる。
従来,リチウム二次電池において,充放電を繰り返すと,負極に樹枝
状のリチウムの結晶(デンドライト)が形成され,電池内で短絡や自己放電を引き起こす原因となる課題があったことから,本発明は,これを解決して,エネルギー密度が高く,サイクル寿命の長い二次電池を提供することを目的としたものである。
本発明は,正極に対する負極の面積,距離等を所定の範囲に特定した
ことを特徴とし,これにより,デンドライトの形成を抑制でき,長寿命で高エネルギー密度のリチウム二次電池を得ることができるという効果を奏するものである。
(2)本件発明2-1-①(対応外国特許:本件発明2-1-②)についてア
本件明細書等2-1-①には,次の記載がある。
(ア)産業上の利用分野

・「本発明は,リチウムを負極に用いるリチウム二次電池あるいは,亜鉛を負極に用いるアルカリ二次電池乃至臭素二次電池並びに,その負極材料形成方法及び負極材料の取扱方法に関する。」(段落【0001】)
(イ)従来の技術
・「最近,CO2の増加による温室効果で地球の温暖化が生じることが予測され,新たな火力発電所の建設が難しくなってくるため,発電機の有効利用として夜間電力を一般家庭に設置した二次電池に蓄えて負荷を平準化する,いわゆるロードレベリングを行うことが考えられて
いる。また,大気汚染物質を排出しない電気自動車のための高エネルギー密度の二次電池の開発の要求,ブック型パーソナルコンピューター,ワードプロセッサー,ビデオカメラ,携帯電話等のポータブル機器における電源に高性能な二次電池の要求がますます高まっている。上記高性能の二次電池としてリチウムイオンを層間化合物に導入した
ものを正極活物質に,負極活物質にカーボンを用いたロッキングチェアー型リチウムイオン電池の開発が進み,一部実用化されつつある。」(段落【0002】)
(ウ)発明が解決しようとする課題
・「しかし,リチウムを負極に用いた高エネルギー密度リチウム二次電
池は,未だ実用化されるに至っていない。その理由は,充放電の繰り返しによって発生し短絡の主原因になるリチウムのデンドライトの発生を抑えることに成功していないためである。リチウムのデンドライトが成長して,負極と正極が短絡すると電池の持つエネルギーが短時間で消費されるため,発熱し,電解液の溶媒が分解してガスを発生し
内圧が高まり最終的には爆発,あるいは発火するといった事故が発生することになる。また,リチウムの反応性を抑えるために負極にリチ
ウム-アルミニウムなどのリチウム合金を使用する方法も試されているが,サイクル寿命の長いものは実用化されていない。」(段落【0003】)
・「さらに,JOURNAL
CHEMISTRY

OF

APPLIED

ELECTRO

22(1992)620-627では,表面を

エッチングしたアルミニウム箔を負極に用いたリチウム二次電池の報告がされている。しかし,充放電サイクルを実用域まで繰り返すと充放電の繰り返しでアルミニウム箔が膨張収縮を繰り返し,亀裂が入り,集電性の低下とともにデンドライトの成長が起こる等の理由により,実用レベルでの長サイクル寿命の電池は得られていない。また,亜鉛を負極に用いたニッケル亜鉛電池や空気亜鉛電池などのアルカリ二次電池,及び臭素亜鉛二次電池についても,リチウム二次電池と同様に亜鉛のデンドライトの成長を抑制できないために実用化できていない。したがって,エネルギー密度が高く,サイクル寿命の長い,リチウム
二次電池や亜鉛を用いたアルカリ二次電池の開発が望まれている。」(段落【0004】)
・「そこで,本発明は,上述の従来の欠点を解決し,エネルギー密度が高く,サイクル寿命の長いリチウムを負極に用いるリチウム二次電池あるいは,亜鉛を負極に用いるアルカリ二次電池乃至臭素二次電池並
びに,その負極材料形成方法及び負極材料の取扱方法を提供することを目的とする。」(段落【0005】)
(エ)課題を解決するための手段
・「本発明は,上記課題を達成するため,つぎのように構成した二次電池を提供するものである。(1)電池ケース内の電解質中にセパレー
タによって隔てられた正極と負極とを有する二次電池において,前記負極が少なくとも酸ともアルカリとも反応する両性金属と合金化した
金属粉末で構成されており,該金属粉末の粒径が100μm以下であることを特徴とする二次電池。・・・」(段落【0006】)
・「両性金属の合金は両性金属が酸ともアルカリとも反応するために,両性金属の合金粉から両性金属を選択的にエッチング溶出することによって,細孔を有した高比表面積の金属粉を得ることができる。本発明の負極は,このようにして形成された多孔質の金属粉末と集電部材から構成されているものである。実際の負極としては,両性金属とニッケル,コバルト,銅,チタン,鉄等の金属との合金粉末から,両性金属の一部をエッチング等によって選択的に溶出させた多孔質両性金
属の合金粉末を,金属の集電部材上に形成したものを用いる。・・・」(段落【0011】)
・「両性金属の合金粉末の作製法としては,両性金属の合金粉末はニッケル,コバルト,銅,チタン,鉄等の塩化物,臭化物,ヨウ化物等のハロゲン化物塩,硝酸塩,硫酸塩,酢酸塩,ギ酸塩,シュウ酸塩等の
金属塩溶液中で両性金属と反応させたり,あるいはニッケル,コバルト,銅,チタン,鉄等の金属と両性金属を溶融して得る。・・・」(段落【0012】)
・「また,溶出後の両性金属の合金粉末の比表面積は大きい程,電池にした場合の電極の実効電流密度が低下してリチウム金属(アルカリ二
次電池の場合は亜鉛金属)のデンドライト成長を抑制でき,また,両性金属とリチウムが合金化する反応面積が増加し,両性金属とリチウムの合金形成時の体積変化を抑制できるので,比表面積はできるだけ大きい方が好ましく,具体的には10㎡/g以上が好ましく,30㎡/g以上がより好ましい。これにより,板状金属から形成する負極よ
り大きい比表面積の負極を形成することができる。」(段落【0016】)

(オ)作用
・「両性金属の合金は両性金属が酸ともアルカリとも反応するために,両性金属の合金粉から選択的に両性金属をエッチング溶出することによって,細孔を有した高比表面積の金属粉を得ることができる。」(段落【0034】)

・「本発明の負極はこのような多孔質の金属粉末で構成されているため,比表面積が高められ,電解液との接触面積が増加し,負極へのリチウムイオン(アルカリ電池の場合は水素イオン)の拡散を容易にすることができるから,充放電時に負極表面の実質的な電流密度を低減することができる。その結果,充電時に発生するリチウムあるいは亜鉛の
デンドライトの成長が抑制されることになる。」(段落【0035】)(カ)発明の効果
・「本発明の二次電池は,負極を多孔質の形成し易い両性金属の合金粉末で構成することによって,比表面積を高めて充電時に発生する二次電池のデンドライトの成長を抑制し,充放電サイクル寿命を延ばすこ
とを可能と共に,高容量・高エネルギー密度の二次電池を得ることができる。」(段落【0041】)

以上の記載によれば,本件発明2-1-①の意義は,以下のとおりと認められる。

従来,リチウム二次電池において,充放電を繰り返すと,負極に樹枝状のリチウムのデンドライトが形成され,電池内で短絡を引き起こす原因となる課題があったことから,本発明は,これを解決して,エネルギー密度が高く,サイクル寿命の長いリチウム二次電池を提供することを目的としたものである。

本発明は,負極を,酸ともアルカリとも反応する両性金属と合金化した金属粉末で構成し,合金粉末の粒径を100μmとしたことを特徴と
する。両性金属の合金は,両性金属が酸ともアルカリとも反応するために,両性金属の合金粉から選択的に両性金属をエッチング溶出することによって,細孔を有した高比表面積の金属を得ることができる。
本発明の二次電池は,負極を多孔質の形成しやすい両性金属の合金粉末で構成することによって,比表面積を高めて充電時に発生するデンド
ライトの成長を抑制し,充放電サイクル寿命を延ばすことを可能とするとともに,高容量・高エネルギー密度の二次電池を得ることができるという効果を奏するものである。
(3)本件発明2-2-①(対応外国特許:本件発明2-2-②ないし2-2-④)について

本件明細書等2-2-①には,次の記載がある。
(ア)産業上の利用分野
・「本発明は,リチウムを負極に用いるリチウム二次電池に関し,特に,充放電の繰り返しによって発生するリチウムのデンドライト(樹脂状
突起)の発生を抑えることができ集電能の低下を抑えることが可能なリチウム二次電池に関する。」(段落【0001】)
(イ)従来の技術
・「最近,大気中に含まれるCO2の増加による温室効果で地球の温暖化が生じる可能性が指摘されている。火力発電所は化石燃料などを燃
焼させて得られる熱エネルギーを電気エネルギーに変換しているが,燃焼に伴ってCO2が排出されるため新たな火力発電所の建設が難しくなってきている。そこで,発電機の有効利用として余剰電力である夜間電力を一般家庭に設置した二次電池に蓄えて負荷を平準化する,いわゆるロードレベリングを行うことが提唱されつつある。また,C
Ox,NOx,SOx,炭化水素などを含む大気汚染に係わるといわれる物質を排出しない電気自動車のための軽量で高エネルギー密度の
二次電池の開発の要求,ブック型パーソナルコンピューターやワードプロセッサーやビデオカメラや携帯電話などのポータブル機器の電源に使用する,小型・軽量で高性能な二次電池の開発の要求がますます高まっている。」(段落【0002】)
(ウ)発明が解決しようとする課題
・「上記高性能の二次電池のひとつとして,リチウムイオンを層間化合物に導入したものを正極活物質に,負極活物質にカーボンを用いたロッキングチェアー型リチウムイオン電池の開発が進み,一部実用化されつつある。しかし,現在手にすることのできるリチウムイオン電池
は,金属リチウムを負極活物質に使用するリチウム電池本来の特徴である,高エネルギー密度を十分には達成していない。高エネルギー密度二次電池として注目度の高いリチウム金属を負極に用いる高容量のリチウム蓄電池は充分な実用化がなされているとはいえない。リチウム二次電池は充電時に負極上に樹枝状リチウムが析出する場合がある。
この現象は短絡や自己放電の原因となる場合がある。高容量のリチウム蓄電池(二次電池)の充分な実用化がなされていない理由のひとつは,充放電の繰り返しによって発生し,短絡の主原因になる,リチウムのデンドライトの発生を抑えることに成功していないためである。リチウムのデンドライトが成長して,負極と正極が短絡すると電池の
持つエネルギーがその部分で短時間で消費されるため,電池は発熱したり,電解液の溶媒が熱などにより分解しガスを発生し電池内の内圧が高まったりする場合がある。いずれにしてもデンドライトの成長は短絡による電池の損傷や寿命低下につながり易い。」(段落【0003】)

・「また,リチウムの反応性を抑えデンドライトの発生を抑えるために負極にリチウム-アルミニウムなどのリチウム合金を使用する方法も
試されている。しかしながら,デンドライトの発生を抑制できても高エネルギー密度でかつサイクル寿命が充分に長いものは実用化に至っていないのが現状である。」(段落【0004】)
・「負極にリチウム合金を使用する例としては,たとえば特開昭63-13264号公報,特開平5-47381号公報,特開平5-190171号公報などに示されている。しかしながら,負極にリチウム合金を使用しても充放電をくり返すうちに負極が膨張,収縮をくり返し,負極にクラックなどが生じ充分な集電性を維持できなくなる場合があった。」(段落【0005】)

・「また,特開昭63-114057号公報には繊維状アルミニウムと,リチウムと合金化しない金属繊維との混合焼結体を基体とした負極が示されている。しかしながら,この場合は,充放電にともなう繊維状アルミニウムの膨張,収縮によりリチウムと合金化しない金属繊維との結合力の低下やそれとの界面でのクラックの発生が生じ,充分な集
電性を維持できなくなる場合があった。」(段落【0006】)
・「更に,特開平5-234585号公報にはリチウム金属からなる基材の表面に,リチウム金属との金属間化合物を生成しにくい金属粉末を一様に付着させデンドライトの析出が少なくし,充電効率を高く,サイクル寿命を向上させる電池が示されている。しかしながら,やは
り基材であるリチウム金属は充放電により膨張,収縮をくり返し,付着させた粉末の脱落や基材のクラックを生じる結果,上述したように負極の充分な集電性の維持やデンドライトの析出の抑制が充分にできなくなる場合がある。」(段落【0007】)
・「また,JOURNAL

HEMISTRY

OF

APPLIED

ELECTROC

22,620-627,(1992)には,表面

をエッチング処理したアルミニウム箔を負極に用いたリチウム二次電
池の報告がされている。しかし,充放電サイクルを実用域まで繰り返すと充放電の繰り返しでアルミニウム箔が膨張収縮を繰り返す結果,アルミニウム箔に亀裂が入り,集電性の低下とともにデンドライトの成長が起こる。したがってこの場合も実用レベルでの長サイクル寿命の電池は得られていない。このように,エネルギー密度が高く,サイクル寿命の長い負極及びリチウム二次電池の出現が待ち望まれているのに対して,現実には未だ解決すべき問題点を有しているのが実情である。」(段落【0008】)
・「(発明の目的)本発明は,上述の問題点を解決し得,長サイクル寿
命で高エネルギー密度のリチウム二次電池を提供することを目的とする。」(段落【0009】)
・「又本発明は充放電時のリチウムの析出溶解による微粉化及び亀裂の発生による集電能の低下を抑えることのできる負極構造を有する電池用電極及び該電極を有するリチウム二次電池を提供することを目的と
する。」(段落【0010】)
(エ)課題を解決するための手段及び作用
・「上記問題点を解決し,上記目的を達成する本発明の電池用電極は,少なくとも充電時にリチウムと合金を作る金属元素と充電時にリチウムと合金を作らない金属元素を構成要素として有し,充電時にリチウ
ムと合金を作らない金属部分から出力端子が引き出され,前記電解液と接し正極と対向する負極表面の導電体部の粗さの(最大山から最深谷までの)最大高さRmaxの1/2と中心線平均粗さRaとの差が,負極表面正極表面間の距離の1/10以下であり,前記負極表面の導電体部の粗さに関して,測定長をL,測定長L当たりの山の数をnと
する時,1+(4nRa/L)が1.05以上であることを特徴とする。」(段落【0011】)

・「本発明者は,上記問題点を解決すべく,鋭意研究を重ねた結果,リチウムと合金化する金属とリチウムと合金化しない金属の複合化した負極を適切に使用することによって,リチウムのデンドライトの発生が抑え,長寿命のリチウム二次電池が得られることを見いだしたことに基づいている。」(段落【0013】)
・「即ち,上記問題点は,負極,セパレーター,正極,電解質あるいは電解液,電池ケースを少なくとも有する二次電池において,負極が少なくともリチウムと合金を作る金属元素とリチウムと合金を作らない金属元素から構成され,リチウムと合金を作らない金属から負極側の
出力端子が引き出されているリチウム二次電池により解決できる。このように負極集電部にリチウムと合金を作らない金属を配置することによって,充放電時のリチウムの析出溶解による微粉化及び亀裂の発生での,集電能の低下を抑えることができる。」(段落【0014】)・「本発明の負極中の,リチウムと合金を作る金属元素,あるいはリチ
ウムと合金を作らない金属元素を選択的にエッチングして負極の比表面積を高めることも好ましい。負極の比表面積を高めることによって,負極表面の反応性を高め実質の電流密度を下げ,充放電反応を円滑にし,その結果サイクル寿命を伸ばすことができる。」(段落【0024】)

・「凹凸形状を設け比表面積を高めた負極表面に突起部が存在する時,突起部では充電時に電界が集中し,電流密度が増大する為,リチウムのデンドライト成長が起こりやすく,短絡原因に成り易い。」(段落【0025】)
・「そこで,電解液と接し正極と対向する負極表面の導電体部の粗さの
(最大山から最深谷までの)最大高さRmaxの1/2と中心線平均粗さとの差を,負極表面と正極表面間の距離の1/10以下とするこ
とは望ましい。」(段落【0026】)
・「又,負極表面の導電体部の導電率が均一もしくは実質的に均一な場合に,触針法で電池を組み立てる前の負極表面を図6に示されるように最大高さRmaxと中心線平均粗さRaとを計測し,その後該負極を用いて電池を形成し充電電圧を高めたリチウムのデンドライト成長が起こり易い条件で各種負極のサイクル寿命を計測し,相関を取った。その結果,図7に示されるように正極と対向する負極表面の導電体部の粗さ(最大山から最深谷までの)最大高さRmaxの1/2と中心線平均粗さRaとの差と,負極のサイクル寿命との間に,ある程度の
相関が取れた。つまり負極表面の導電体部の粗さの最大高さから最小高さを引いたものの1/2と中心線平均粗さとの差が,負極表面と正極表面間の距離の1/10以下とした場合とサイクル寿命がより長くなることが判明した。」(段落【0028】)
・「本発明の負極は,リチウムと合金を作る金属元素を含有する部材と
リチウムと合金を作らない金属元素から成る集電部から構成されているので,充放電を繰り返しても,リチウムと合金を作らない金属元素から成る集電部材は劣化することがなく,集電能を維持することができ,定電流充電時の充電電圧の上昇を抑え,デンドライト発生を抑制でき,結果的にサイクル寿命を伸ばすことが可能になる。」(段落
【0045】)
・「〈リチウムと合金を作る金属元素とリチウムと合金を作らない金属元素〉リチウムと合金を作る金属元素としては,アルミニウム,マグネシウム,カリウム,ナトリウム,カルシウム,ストロンチウム,バリウム,シリコン,ゲルマニウム,スズ,鉛,インジウム,亜鉛など
が使用でき,特にアルミニウム,マグネシウム,カルシウム,鉛が好適である。」(段落【0054】)

・「リチウムと合金を作らない金属元素としては,ニッケル,チタン,銅,銀,金,白金,鉄,コバルト,クロム,タングステン,モリブデン,などが使用でき,特にニッケル,チタン,銅,白金,鉄,が好適である。集電部材としては,上記元素の単一金属のほかに上記元素から成る合金が採用できる。また,ステンレススチールもリチウムと合
金を作らない集電部材として好ましい材料である。」(段落【0055】)

以上の記載によれば,本件発明2-2-①の意義は,以下のとおりと認められる。

従来,リチウム二次電池において,リチウムのデンドライトの発生を抑えるために,負極にリチウム合金が使用されていたところ,充放電の繰り返しにより負極が膨張,収縮を繰り返し,負極に亀裂が生じるという問題があったことから,本発明は,これを解決して,サイクル寿命が長く,エネルギー密度が高いリチウム二次電池を提供することを目的と
したものである。
本発明は,負極に,リチウムと合金化する金属と,リチウムと合金化しない金属を使用することを特徴の一つとする。リチウムと合金を作らない金属を配置することで,リチウムの析出溶解による微粉化及び亀裂の発生,デンドライト発生を抑制でき,結果的にサイクル寿命を延ばす
という効果を得ることができる。
また,本発明は,負極表面に突起部が存在すると充電時に電解が集中して,リチウムのデンドライト成長が起こりやすいため,負極表面の導電体部の粗さを特定の条件とすることを特徴の一つとする。「負極表面の導電体部の粗さの(最大山から最深谷までの)最大高さRmaxの1
/2と中心線平均粗さRaとの差が,負極表面正極表面間の距離の1/10以下」とすることにより,サイクル寿命が長くなるという効果を奏
するものである。
(4)本件発明2-3-①(対応外国特許:本件発明2-3-②ないし2-3-⑤)について

本件明細書等2-3-①には,次の記載がある。
(ア)発明の属する技術分野
・「本発明は,リチウム二次電池及びその二次電池と製造方法に関する。より詳細には,二次電池の充放電の繰り返しによって発生する電極活物質の膨張収縮による電極インピーダンス上昇を抑制して長寿命化したリチウム二次電池及びその製造方法に関する。また,リチウムイオ
ンのインターカーレート及びデインターカーレートできるサイトを増加させたことによって正極及び負極を高容量化した高エネルギー密のリチウム二次電池及びその製造方法に関する。」(段落【0001】)(イ)従来の技術
・「最近,大気中に含まれるCO2ガス量が増加しつつある為,温室効
果により地球の温暖化が生じると予測されている。火力発電所は,化石燃料などを燃焼させて得られる熱エネルギーを電気エネルギーに変換しているが,CO2ガス量を多量に排出する為,新たな火力発電所を建設することが難しくなってきている。したがって,火力発電所などの発電機にて作られた電力の有効利用として,夜間電力を一般家庭
に設置した二次電池に蓄えて,これを電力消費量が多い昼間に使用して負荷を平準化する,いわゆるロードレベリングが提案されている。」(段落【0002】)
・「また,COX,NOX,CHなどを含む大気汚染に係わる物質を排出しないという特徴を有する電気自動車用途では,高エネルギー密度
の二次電池の開発が期待されている。さらに,ブック型パーソナルコンピューター,ワードプロセッサー,ビデオカメラ及び携帯電話など
のポータブル機器の電源用途では,小型・軽量で高性能な二次電池の開発が急務になっている。」(段落【0003】)
・「小型・軽量で高性能な二次電池としては,黒鉛層間化合物を二次電池の負極に応用する例がJOUNAL
OF

OCHEMICAL

117,

SOCIETY

THE

ELECTR

222

(197

0)に報告されて以来,例えば,炭素材を負極活物質に,リチウムイオンを層間化合物に導入したものを正極活物質に用い,炭素材の層間に充電反応でリチウムイオンをインターカーレートして蓄えるロッキングチェアー型二次電池いわゆる”リチウムイオン電池”の開発が進み,実用化されている。このリチウムイオン電池では,ゲスト材料であるリチウムイオンを層間にインターカレートできる,ホスト材料である炭素材を負極に用いることによって,充電時のリチウムのデンドライト成長を抑えて,充放電サイクルにおいて長寿命を達成している。」(段落【0004】)

・「上述のリチウムイオン電池では長寿命の二次電池を達成できることから,更に負極に各種の炭素材を応用する提案及び研究も盛んに行われている。特開昭62-122066では,水素

/

炭素の原子比

が0.15未満,(002)面の面間隔が0.337ナノメートル以上,c軸の結晶子の大きさが15ナノメートル以下である炭素材料を負極に用いた二次電池が提案されている。また,特開昭63-217295では,(002)面の面間隔が0.370ナノメートル以上,真密度が1.70g/ml未満,かつ空気気流中における示差熱分析で700℃以上に発熱ピークを有しない,炭素材料を負極に用いた二次電池が提案されている。各種炭素材の電池負極への応用する研究例
として,電気化学,Vol

57,

p614

素繊維,第34回電池討論会講演要旨集,

(1989)では炭

p77

(1993)で

はメソフェーズ微小球体,第33回電池討論会講演要旨集,
7
(1992)では天然グラファイト,第34回電池討論会講演要

旨集,

p77

(1993)ではグラファイトウィスカー,電気化

学協会第58回大会講演要旨集,
p21

p158(1991)ではフルフ

リルアルコール樹脂の焼成体が報告されている。」(段落【0005】)
・「しかし,リチウムを貯蔵する負極活物質として炭素材を用いるリチウムイオン電池では,充放電の繰り返し中安定して取り出せる放電容量(リチウムのデインターカーレート)が,黒鉛層間化合物の理論容
量を越えるものはまだ得られていない。すなわち炭素原子6個に対して1個のリチウム原子を蓄えられる黒鉛層間化合物の理論容量を越えるものはまだ得られていない。したがって,炭素材を負極活物質としているリチウムイオン電池は,サイクル寿命は長いが,金属リチウムそのものを負極活物質に使用するリチウム電池のエネルギー密度には
及ばない。仮に,充電時にリチウムイオン電池の炭素材負極に理論容量以上のリチウム量をインターカレートしようとした場合には,炭素材負極表面にリチウム金属がデンドライト(樹枝)状に成長し,最終的には充放電サイクルの繰り返しで負極と正極間の内部短絡に至るので,グラファイト負極の理論容量を越える”リチウムイオン電池”で
は実用化するに十分なサイクル寿命が得られていない。」(段落【0006】)
・「これに対し,金属リチウムを負極に用いた高容量のリチウム二次電池の実用も望まれているが,実現には至っていない。その理由は,充放電のサイクル寿命が極めて短いためである。充放電のサイクル寿命
が極めて短い主原因としては,金属リチウムが電解液中の水分などの不純物や有機溶媒と反応して電極上に絶縁膜を形成し,これが原因で
充放電の繰り返しによってリチウム金属がデンドライト(樹枝)状に成長し,負極と正極間の内部短絡を引き起こし寿命に至ることにあると,一般的に考えられている。」(段落【0007】)
・「また,上述のリチウムのデンドライトが成長して負極と正極が短絡状態となった場合,電池の持つエネルギーがその短絡によって短時間に消費されることによって発熱したり,電解液の溶媒が分解してガスを発生することによって内圧が高まったりして電池を破損してしまう場合もある。」(段落【0008】)
・「上述の金属リチウム負極の問題点である,金属リチウムと電解液中
の水分や有機溶媒とが反応するのを抑えるために,負極にリチウムとアルミニウムなどからなるリチウム合金を用いる方法も提案されている。しかしながら,この場合,リチウム合金が硬いためにスパイラル状に巻くことができないのでスパイラル円筒形電池の作製ができないこと,サイクル寿命が思ったほど延びないこと,金属リチウムを負極
に用いた電池に匹敵するエネルギー密度は得られないこと,などの理由から,広範囲な実用化には至っていないのが現状である。」(段落【0009】)
・「特開平5-190171,特開平5-47381,特開昭63-114057,特開昭63-13264号公報では負極に各種リチウム
合金を使用する案,及び特開平5-234585ではリチウム表面にリチウムと金属間化合物を生成しにくい金属粉を設ける案が提案されているが,いずれも負極の寿命を飛躍的に伸ばす決定的な方法となり得ていない。」(段落【0010】)
・「一方,JOURNAL

HEMISSTRY

OF

22

APPLIED

(1992)

ELECTROC

620-627には,リ

チウム一次電池よりエネルギー密度が劣るが,表面がエッチングされ
たアルミニウム箔を負極として用いた高エネルギー密度のリチウム二次電池の報告が掲載されている。しかし,充放電サイクルを実用域まで繰り返した場合,アルミニウム箔が膨張収縮を繰り返し,亀裂が入ってしまい,集電性が低下するとともにデンドライトの成長が起こり,実用レベルで使用可能なサイクル寿命を有する二次電池は得られていない。」(段落【0011】)
・「このような事情から,現在実用化されている炭素材負極より長寿命でかつ高エネルギー密度の負極材料の開発が熱望されている。」(段落【0012】)

・「更に,高エネルギー密度のリチウム二次電池を実現するには,負極のみならず正極材料の開発も必須である。現状では,正極活物質としてリチウムイオンを層間化合物に挿入(インターカレート)したリチウム-遷移金属酸化物が主に使用されているが,理論容量の40~60%の放電容量しか達成されていない。特に実用化電池として長サイ
クル寿命の電池を得ようとすると,理論容量に対してできるだけ少ない量しか充放電できず,高容量化に反する。これは,例えば第34回電池討論会2A04(p39-40)よりコバルト酸リチウムを例にとると,コバルト酸リチウムを充電してリチウムをデインターカレートしていくと3/4を超えたあたりで結晶構造が単斜晶から六方晶へ
変化する。その際,C軸が極端に縮むため,次の放電以降リチウムの可逆性が極端に悪くなりサイクル特性が悪くなる。これはニッケル酸リチウム等においても同様の現象が起こることが知られている。」(段落【0013】)
・「この構造変化を抑制する為,例えば第34回電池討論会2A08
(p47-48)ではコバルト酸リチウム中のリチウムの一部をナトリウム,カリウム,銅,銀で置換すること等が提案されているが,利
用率及びサイクル特性を向上するには至っていない。また,ニッケル酸リチウムに対してはコバルト,マンガン,アルミニウム等の添加が報告されているがいずれも結晶構造変化を抑制し利用率の向上及びサイクル特性を改善させるには至っていない。」(段落【0014】)・「以上のような状況からも解るように,リチウムイオンをゲストとして充放電反応に利用する,”リチウムイオン電池”も含めたリチウム二次電池(以下,本発明ではリチウムイオンの酸化還元反応によるインターカレーションとデインターカレーション反応を電極における充放電反応に利用した二次電池を,炭素材を負極に用いる”リチウムイ
オン電池”も含めて,リチウム二次電池と呼ぶ)では,実用域のサイクル寿命を備え,かつ現在実用化されている炭素材負極及び遷移金属酸化物正極より更なる高容量な負極及び正極の開発が強く望まれている。」(段落【0015】)
(ウ)発明が解決しようとする課題

・「本発明は,上記事情に鑑みてなされたもので,その課題とすることろは,リチウムイオンの酸化還元反応を充放電反応に利用するリチウム二次電池において,高容量な正極あるいは負極を構成する高容量正極活物質あるいは負極活物質を有する電極を備えた二次電池並びにその製造方法を提供することである。」(段落【0016】)

(エ)課題を解決するための手段
・「本発明の第二は,少なくとも負極,正極,電解質からなり,リチウムイオンの酸化還元反応を充放電に利用した二次電池において,以下の(i),(ii)のいずれかの特徴を有する。
(i)前記負極は負極活物質を有し,該負極活物質は,少なくとも,
メカニカルグラインディング処理によってX線回折角度2θに対する回折線強度を取ったX線回折チャートにおけるピークが存在しない非
晶質相を有するに至った炭素材料と銅,チタン,ニッケルから選択されるリチウム以外の物質に対して電気化学的に不活性な材料との複合体,あるいは,メカニカルグラインディング処理によってX線回折角度2θに対して最も強い回折強度が現れたピークの半価幅が0.48度以上を示す非晶質相を有するに至った炭素材料と銅,チタン,ニッケルから選択されるリチウム以外の物質に対して電気化学的に不活性な材料との複合体を成分とする。・・・」(段落【0018】)
・「尚,本発明においては,“活物質”とは電池における充電及び放電の電気化学反応(該反応の繰返し)に関与する物質を総称するもので
ある。」(段落【0020】)
(オ)発明の実施の形態
・「以下,各形態において使用する電極(a)及び(b)について詳細に説明する。電極(a)は,上述したようなX線回折による特性を持ち,非晶質相を有しかつコバルト,ニッケル,マンガン,鉄から少な
くとも選択される一種類以上の元素を含む材料を成分とする,活物質を有するもので,上記1),2),3),5)の形態でリチウム二次電池の正極及び/又は負極に用いる。かかる活物質を構成する非晶質相を有する材料は,好ましくはリチウム電池の充放電反応に関して可逆性がある,即ちリチウムイオンの酸化還元反応を生じさせる,コバ
ルト,ニッケル,マンガン,鉄から少なくとも選択される一種類以上の元素を含有する結晶性の材料を出発物質とし,これを非晶質化することによって得たものである。かかる活物質は,リチウム二次電池の正極又は負極に用いた場合,リチウムイオンのインターカーレート及びデインターカーレートできるサイトが増大しており,高容量の正極
活物質あるいは負極活物質として機能する。」(段落【0023】)・「一方,電極(b)は,上述したX線回折による特性を持つ非晶質相
を有した金属元素及び炭素から選択される少なくとも一種類以上を含む材料と,リチウム二次電池の充放電反応中に当該活物質が用いられる電極においてリチウム以外の物質に対して電気化学的に不活性となる材料との複合体を活物質として有するもので,上記4)又は5)の形態でリチウム二次電池の負極に適用される。かかる活物質を構成する複合体は,好ましくは,金属元素及び炭素から選択される少なくとも一種類以上を含む結晶性の材料に,リチウム二次電池の充放電反応中に当該活物質が用いられる電極においてリチウム以外の物質に対して電気化学的に不活性となる材料を同時に添加して複合化することに
より得られる。このようにして最終的に得られる非晶質相を有する複合体では,電極(a)で説明した場合と同様に,上述の電気化学的に不活性な材料は出発物質である結晶性の材料の表面で反応して,この結晶質の材料の結晶質の部分を別の状態,すなわち原子配列を不規則化した非晶質状態にさせたものである。」(段落【0037】)

・「また,電極(b)は,リチウム電池の充放電反応中においてリチウム以外の物質に対して電気化学的に不活性となる材料との複合体を成分とする活物質からなる負極としたことで,電池反応中に活物質の不要な分解や不要な酸化膜の形成が抑制され,良好な性能の充放電反応がなされる。」(段落【0039】)

・「本発明で採用する上記方法は,物理エネルギーを付与し,一種類以上の原材料に対して遠心力を付与することで原材料同士が衝突し,その際の衝突エネルギー等で反応を生じさせるもので,機械的に粉砕したり,二種類以上の材料を機械的に混合して合金を形成する方法に相当するメカニカルグライディング法あるいはメカニカルアロイ法(特
に金属同士を原材料に用いて合金を合成する場合)を用いて行うことができる。従って本発明においては,一般的なメカニカルグライディ
ング法あるいはメカニカルアロイ法に用いられる装置を適用することが可能であるが,原材料等に遠心力を与えてその際発生する衝突エネルギーで混合反応させる点,必要に応じて上述した電気化学的に不活性となる材料と混合して複合体を作る点,結晶質から非晶質相を含有した材料を作る点で,一般的なメカニカルグライディング法あるいは
メカニカルアロイ法に対して更に特徴的な要素を備えた方法を採用する。」(段落【0064】)
・「更に,メカニカルグライディングで非晶質を含有した活物質を調製した場合,メカニカルグライディング前の結晶質の時よりもリチウムイオンをインターカーレート及びデインターカーレートできるサイト
が増大して容量が大きくなるので,このサイトにリチウムイオンが入るようにメカニカルグライディング時にあらかじめリチウム化合物等を添加してやることによって電極の高容量化を図ることもできる。添加するリチウム化合物としては,水酸化物,窒化物,硫化物,炭酸塩,アルコキシド等がある。特に窒化リチウムはそれ自身イオン導電性が
あるので,上記サイト中に入れなかった場合でも導電性があり,好適である。また,リチウム化合物を添加する場合,リチウム塩が溶融あるいは分解して活物質層間に入り易くするために,メカニカルグライディングの条件において,例えば遠心力を付与したり,雰囲気温度を高める等の条件を選ぶ方が好適である。」(段落【0092】)


以上の記載によれば,本件発明2-3-①の意義は,以下のとおりと認められる。
本発明は,高容量で,サイクル寿命の長いリチウムイオン二次電池を提供することを目的とする。

本発明の負極は,メカニカルグラインディング処理によって,非晶質相を有するに至った,炭素材料とリチウム以外の物質に対して電気化学
的に不活性となる材料(銅,チタン,ニッケルから選択される。)との複合体を活物質とすることを特徴の一つとする。メカニカルグラインディング処理で非晶質化することによって,リチウムイオンのインターカレート及びディンターカレートできるサイトが増大しており,高容量の負極活物質として機能することができる。

また,本発明は,リチウム以外の物質に対して電気化学的に不活性となる材料との複合体を成分とする活物質からなる負極とすることによって,電池反応中における活物質の不要な分解や不要な酸化膜の形成が抑制され,良好な性能の充放電反応がなされる。
(5)本件発明2-4-①(対応外国特許:本件発明2-4-②ないし2-4-⑤(請求項44))について

本件明細書等2-4-①には,次の記載がある。
(ア)発明の属する技術分野
・「本発明は,二次電池に関し,より詳細には充放電の繰り返しによっ
て発生するリチウム又は亜鉛のデンドライトを抑えた二次電池に関する。」(段落【0001】)
(イ)従来の技術
・「最近,大気中に含まれるCO2ガス量が増加しつつある為,室温効果により地球の温暖化が生じる可能性が指摘されている。火力発電所
は化石燃料などを燃焼させて得られる熱エネルギーを電気エネルギーに変換しているが,燃焼によりCO2ガスを多量に排出するため新たな火力発電所は,建設することが難しくなって来ている。したがって,火力発電所などの発電機にて作られた電力の有効利用として,余剰電力である夜間電力を一般家庭に設置した二次電池に蓄えて,これを電
力消費量が多い昼間に使用して負荷を平準化する,いわゆるロードレベリングが提案されつつある。」(段落【0002】)

・「また,COX,NOX,CHなどを含む大気汚染にかかわる物質を排出しないという特徴を有する電気自動車用途では,高エネルギー密度の二次電池の開発が期待されている。さらに,ブック型パーソナルコンピューター,ワードプロセッサー,ビデオカメラ及び携帯電話等のポータブル機器の電源用途では,小型・軽量で高性能な二次電池の開発が急務になっている。」(段落【0003】)
・「このような小型・軽量で高性能な二次電池としては,充電時の反応で,リチウムイオンを層間からデインターカレートするリチウムインターカレーション化合物を正極物質に,リチウムイオンを炭素原子で
形成される六員環網状平面の層間にインターカレートできるグラファイトに代表されるカーボン材料を負極物質に用いたロッキングチェアー型のいわゆる“リチムイオン電池”〔判決注:原文ママ〕の開発が進み,一部実用化されつつある。」(段落【0004】)
・「しかし,この“リチウムイオン電池”では,カーボン材料で構成さ
れる負極は理論的には炭素原子当たり最大1/6のリチウム原子しかインターカレートできないため,金属リチウムを負極物質に使用したときのリチウム一次電池に匹敵する高エネルギー密度の二次電池は実現できない。もし,充電時に“リチウムイオン電池”のカーボンからなる負極に理論量以上のリチウム量をインターカレートしようとした
場合あるいは高電流密度の条件で充電した場合には,カーボン負極表面にリチウム金属がデンドライト(樹枝)状に成長し,最終的に充放電サイクルの繰り返しで負極と正極間の内部短絡に至る可能性がありグラファイト負極の理論容量を越える“リチウムイオン電池”では十分なサイクル寿命が得られていない。また,既知の水溶液系の電解液
を使用した二次電池ほどは高電流密度での充電はできない。」(段落【0005】)

・「一方,金属リチウムを負極に用いる高容量のリチウム二次電池が高エネルギー密度を示す二次電池として注目されているが,実用化に至っていない。その理由は,充放電のサイクル寿命が極めて短いためである。充放電のサイクル寿命が極めて短い主原因としては,金属リチウムが電解液中の水分などの不純物や有機溶媒と反応して絶縁膜が形成されていたり,金属リチウム箔表面が平坦でなく電界が集中する箇所があり,これが原因で充放電の繰り返しによってリチウム金属がデンドライト状に成長し,負極と正極間の内部短絡を引き起こし寿命に至ることにあると,考えられている。」(段落【0006】)

・「また,上述のリチウムのデンドライトが成長して負極と正極が短絡状態となった場合,電池の持つエネルギーがその短絡部において短時間に消費されるため,電池が発熱したり,電解液の溶媒が熱により分解してガスを発生し,電池内の内圧が高まったりすることがある。いずれにしても,デンドライトの成長により,短絡による電池の損傷や
寿命低下が引き起こされ易くなる。」(段落【0007】)
・「上述の金属リチウム負極を用いた二次電池の問題点である,金属リチウムと電解液中の水分や有機溶媒との反応進行を抑えるために,負極にリチウムとアルミニウムなどからなるリチウム合金を用いる方法が提案されている。しかしながら,この場合,リチウム合金が硬いた
めにスパイラル状に巻くことができないのでスパイラル円筒形電池の作製ができないこと,サイクル寿命が充分に延びないこと,金属リチウムを負極に用いた電池に匹敵するエネルギー密度は充分に得られないこと,などの理由から,広範囲な実用化には至っていないのが現状である。」(段落【0008】)

・「この他,充電時にリチウムと合金を形成する金属として,前記のアルミニウムや,カドミウム,インジウム,スズ,アンチモン,鉛,ビ
スマス等が挙げられており,これら金属や,これら金属からなる合金,及び,これら金属とリチウムの合金を負極に用いた二次電池が,特開平8-64239,特開平3-62464,特開平2-12768,特開昭62-113366,特開昭62-15761,特開昭62-93866,特開昭54-78434号公報に開示されている。」(段落【0009】)
・「しかし,これら公開公報に記載の二次電池では負極の形状を明示しておらず,また上記合金材料を一般的な形状である箔状を含む板状部材とし二次電池(リチウムを活物質とした二次電池)の負極として用
いた場合,電極材料層における電池反応に寄与する部分の表面積が小さく,大電流での充放電が困難である。更に,上記合金材料を負極として用いた二次電池では,充電時のリチウムとの合金化による体積膨張,放出時に収縮が起こり,この体積変化が大きく,電極が歪みを受けて亀裂が入る。そして,充放電サイクルを繰り返すと微粉化が起こ
り,電極のインピーダンスが上昇し,電池サイクル寿命の低下を招くという問題があるために実用化には至っていないのが現状である。」(段落【0010】)
・「特開昭60-202675においては,金属や合金粉末,結着剤,及び溶媒に可溶性の充填剤からなる合剤を圧縮成形した後に,溶媒中
に浸漬し,前記充填剤を溶解させることで多孔率を向上させた,非水電解質二次電池用の負極が提案され,かかる方法で多孔率を向上させた電極を用いたリチウム二次電池で,2mA/c㎡以上の比較的高い電流密度において,充放電容量が向上することが示されている。しかしながら,上記二次電池のサイクル寿命については未知数である。」
(段落【0011】)
・「一方,8TH

INTERNATIONAL

MEETING

ON

LITHIUM

ABSTRACTS

BATTERIESのEXTENDED

WED-02

(P69~72)において,直

径0.07mmの銅ワイヤーに,電気化学的に,スズ,もしくはスズ合金を堆積させることで,粒子サイズの細かい(200~400nm)層を形成することができ,堆積層の厚みを薄く(約3μm)した電極とリチウムを対極にした電池で,充放電サイクル寿命が向上すると報告されている。」(段落【0012】)
・「上記文献では,0.25mA/c㎡の電流密度で,1.7Li/Snまで充電し,0.9V

vs

Li/Li+までの放電を繰り返し

た評価において,直径1.0mmの銅線の集電体上に同様にスズ合金を堆積させて得られた粒子サイズ(粒径)が2000~4000nmの電極に対して,200~400nmのスズ粒子の電極が約4倍,Sn0.91Ag0.09合金電極が約9倍,Sn0.72Sb0.28合金電極が約11倍寿命が向上すると報告されている。」(段落
【0013】)
・「しかし,上記文献は,対極にリチウムを用いて評価されたもので,実際の電池形態での結果は報告されておらず,また,前記のようなサイズの粒子からなる電極は,直径0.07mmの銅線の集電体上に堆積させて作製したものであり,実用的な電極形状のものではない。ま
た,上述したように,直径1.0mmといった広い面積の領域上に同様の方法でスズ合金を堆積させた場合粒子サイズ(粒径)が2000~4000nmである層が形成されるが電池としての寿命が著しく低下している。」(段落【0014】)
・「特開平5-190171号公報,特開平5-47381号公報,特
開昭63-114057号公報,特開昭63-13264号公報では,各種リチウム合金を使用した電池において,及び特開平5-2345
85号公報ではリチウム表面にリチウムと金属間化合物を生成しにくい金属粉を一様に負極に付着させデンドライトの析出を抑制し,充電効率を高めサイクル寿命を向上させた電池が開示されている。しかし,いずれも負極の寿命を飛躍的に伸ばす決定的な方法となり得ていない。」(段落【0015】)
・「「JOURNAL

OF

APPLIED

ELECTROCHE

MISTRY」22(1992年)620~627頁には,表面がエッチングされたアルミニウム箔を負極として用いたリチウム二次電池の報告が掲載されている。しかし,充放電サイクルを実用域まで繰り返した場合,アルミニウム箔が膨張収縮を繰り返し,亀裂が入ってしまい,集電性が低下するとともにデンドライトの成長が起こり,この場合でも実用レベルで使用可能なサイクル寿命を得ることはできない。加えて,ニッケル亜鉛電池,空気亜鉛電池からなる二次電池においても,充放電の繰り返しによって,負極材料である亜鉛のデンドライト
が発生し,セパレータを貫通して,亜鉛負極と正極が短絡してしまうため,サイクル寿命が短いという問題があった。」(段落【0016】)
・「このように,リチウム二次電池(以後充放電によるリチウムイオンの酸化還元反応によるインターカレーションとデインターカレーショ
ン反応を電極における充放電反応に利用した二次電池を,カーボン材料を負極に用いる“リチウムイオン電池”も含めて,リチウム二次電池と呼ぶことにする)や亜鉛二次電池(以後亜鉛を負極物質に用いた二次電池を亜鉛二次電池と呼ぶことにする)では,エネルギー密度の増大やサイクル寿命の長寿命化が大きな課題となっている。」(段落
【0017】)
(ウ)発明が解決しようとする課題

・「本発明は,上記事情に鑑みてなされたものであり,特にリチウム又は亜鉛からなる負極活物質を用いた二次電池に有用な電極構造体,サイクル寿命が長い,高エネルギー密度の二次電池を提供することを目的とする。」(段落【0018】)
(エ)課題を解決するための手段
・「本発明は,板状の集電体と,該板状の集電体の片面もしくは両面に平均粒径0.5~60μmの粒子からなる主材35重量%以上を含有する電極材料層を有し,
前記電極材料層の空隙率が0.10~0.86の範囲内にあり,

前記電極材料層における主材が,結晶子の大きさが10~50nmの範囲にある金属スズ又はスズ合金から構成される材料からなり,
前記集電体が,銅,ニッケル,鉄,ステンレススチール,チタンから選択される一種類以上の金属材料からなることを特徴とするリチウムの酸化還元反応を利用した二次電池の負極に用いられる電極構造体を
提供するものである。」(段落【0019】)
(オ)発明の実施の形態
・「本発明者は,前述した従来のリチウム又は亜鉛の酸化還元反応を利用した二次電池における負極の性能に起因した欠点を解決すべく,鋭意研究を重ねた結果,板状の集電体一方の面又は両面に,粒子形状を
制御し平均粒径を0.5~60μmとした主材の粒子からなり,該主材35重量%以上含有する層(電極材料層)を有する電極構造体を作製し,該電極構造体を,特にリチウム又は亜鉛の酸化還元反応を利用した二次電池の負極として用い,高容量,高エネルギー密度,及びサイクル寿命の長い二次電池が実現できることを見出した。」(段落
【0021】)
・「更に,上述のような粒子の粒径の制御に加えて,該粒子からなる層
の空隙率を最適化し,例えば後述するように少なくとも初期の1~3サイクルの充放電において,充放電の繰り返しによる該負極層(電極材料層)での活物質イオンの出入りに起因した体積膨張及び収縮による,該負極層表面での亀裂は生じない(尚,本発明においては,“活物質”とは電池における充電及び放電の電気化学的反応(該反応の繰
り返し)に関与する物質を総称するものであり,更に自身で上記反応に関与する物質である限りに,上記反応に関与する他の物質をも包含する。リチウム二次電池においては,負極活物質であるリチウムが充電時に負極側に保持され,放電時に電解液中に溶解してリチウムイオンとなる。また,亜鉛二次電池では,負極活物質である亜鉛が放電時
に水酸化物イオンと反応して水酸化亜鉛又は酸化亜鉛に変化する)。」(段落【0025】)
・「〔結晶子の大きさ〕金属スズ,もしくはスズ合金粒子の結晶子,特に電極構造体に対して充放電を全く行う以前(未使用の状態)での結晶子の大きさを,好ましくは10nm以上50nm以下の範囲に,よ
り好ましくは10nm以上30nm以下の範囲に制御することがより好ましい。このように微細な結晶粒のものを用いることによって,充放電時の電気化学反応をより円滑にすることができ,充電容量を向上できる,また,充放電時のリチウムの出入りによって生じる歪みを小さく抑えて,サイクル寿命を伸ばすことが可能になる。」(段落【0
067】)

以上の記載によれば,本件発明2-4-①の意義は,以下のとおりと認められる。
従来,リチウム二次電池において,リチウムのデンドライトの発生を
抑えるために,負極にリチウム合金が使用されていたところ,充放電により膨張,収縮が起こり,電極に亀裂が入り,微粉化が起こるという問
題があったことから,本発明は,これを解決して,サイクル寿命が長く,エネルギー密度が高いリチウム二次電池を提供することを目的としたものである。
本発明は,板状の集電体上に,特定の平均粒径を有する粒子からなる電極材料層を形成し,かつ,かかる層の空隙率を最適化したことを特徴
とするものである。これにより,リチウムイオンの出入りに起因した体積膨張及び収縮による,負極層表面での亀裂を防止することができる。また,金属スズ又はスズ合金粒子の結晶子の大きさを10ないし50nmの範囲の微細なものにすることにより,充放電時の電気化学反応を円滑にし,また,リチウムイオンの出入りによる歪みを小さく抑えるこ
とができる。
(6)本件発明2-5-①(請求項1)及び同(請求項44)(対応外国特許:本件発明2-5-②ないし2-5-⑦)についてア
本件明細書等2-5-①には,次の記載がある。
(ア)発明の属する技術分野
・「本発明は,二次電池用負極電極材,電極構造体,リチウムの酸化反応及びリチウムイオンの還元反応を利用したリチウム二次電池及びこれらの製造方法に関する。より詳細には,本発明は高容量でサイクル寿命の長い,二次電池用負極電極材,それを用いた電極構造体と二次
電池及びそれらの製造方法に関する。」(段落【0001】)
(イ)従来の技術
・「最近,大気中に含まれるCO2ガス量が増加しつつある為,室温効果により地球の温暖化が生じる可能性が指摘されている。火力発電所は化石燃料などを燃焼させて得られる熱エネルギーを電気エネルギー
に変換しているが,燃焼によりCO2ガスを多量に排出するためあらたな火力発電所は,建設することが難しくなって来ている。したがっ
て,火力発電所などの発電機にて作られた電力の有効利用として,余剰電力である夜間電力を一般家庭に設置した二次電池に蓄えて,これを電力消費量が多い昼間に使用して負荷を平準化する,いわゆるロードレベリングが提案されつつある。」(段落【0002】)
・「また,COx,NOx,炭化水素などを含む大気汚染にかかわる物質を排出しないという特徴とを有する電気自動車用途では,高エネルギー密度の二次電池の開発が期待されている。さらに,ブック型パーソナルコンピュータ,ワードプロセッサー,ビデオカメラ及び携帯電話等のポータブル機器の電源用途では,小型・軽量で高性能な二次電
池の開発が急務になっている。」(段落【0003】)
・「このような小型・軽量で高性能な二次電池としては,充電時の反応で,リチウムイオンを層間からデインターカレートするリチウムインターカレーション化合物を正極物質に,リチウムイオンを炭素原子で形成される六員環網状平面の層間にインターカレートできるグラファ
イトに代表されるカーボン材料を負極物質に用いたロッキングチェアー型のいわゆる“リチウムイオン電池”の開発が進み,一部実用化されつつある。」(段落【0004】)
・「しかし,この“リチウムイオン電池”では,カーボン材料で構成される負極は理論的には炭素原子当たり最大1/6のリチウム原子しか
インターカレートできないため,金属リチウムを負極物質に使用したときのリチウム一次電池に匹敵する高エネルギー密度の二次電池は実現できない。もし,充電時に“リチウムイオン電池”のカーボンからなる負極に理論量以上のリチウム量をインターカレートしようとした場合あるいは高電流密度の条件で充電した場合には,カーボン負極表
面にリチウム金属がデンドライト(樹枝)状に成長し,最終的に充放電サイクルの繰り返しで負極と正極間の内部短絡に至る可能性があり
グラファイト負極の理論容量を越える“リチウムイオン電池”では十分なサイクル寿命が得られていない。」(段落【0005】)
・「一方,金属リチウムを負極に用いる高容量のリチウム二次電池が高エネルギー密度を示す二次電池として注目されているが,実用化に至っていない。その理由は,充放電のサイクル寿命が極めて短いためである。充放電のサイクル寿命が極めて短い主原因としては,金属リチウムが電解液中の水分などの不純物や有機溶媒と反応して絶縁膜が形成されていたり,金属リチウム箔表面が平坦でなく電界が集中する箇所があり,これが原因で充放電の繰り返しによってリチウム金属がデ
ンドライト状に成長し,負極と正極間の内部短絡を引き起こし寿命に至ることにあると,考えられている。」(段落【0006】)
・「また,上述のリチウムのデンドライトが成長して負極と正極が短絡状態となった場合,電池の持つエネルギーがその短絡部において短時間に消費されるため,電池が発熱したり,電解液の溶媒が熱により分
解してガスを発生し,電池内の内圧が高まったりすることがある。いずれにしても,デンドライトの成長により,短絡による電池の損傷や寿命低下が引き起こされ易くなる。」(段落【0007】)
・「上述の金属リチウム負極を用いた二次電池の問題点である,金属リチウムと電解液中の水分や有機溶媒との反応進行を抑えるために,負
極にリチウムとアルミニウムなどからなるリチウム合金を用いる方法が提案されている。しかしながら,この場合,リチウム合金が硬いためにスパイラル状に巻くことができないのでスパイラル円筒形電池の作製ができないこと,サイクル寿命が充分に延びないこと,金属リチウムを負極に用いた電池に匹敵するエネルギー密度は充分に得られな
いこと,などの理由から,広範囲な実用化には至っていないのが現状である。」(段落【0008】)

・「この他,充電時にリチウムと合金を形成する金属として,前記のアルミニウムや,カドミウム,インジウム,スズ,アンチモン,鉛,ビスマス等が挙げられており,これら金属や,これら金属からなる合金,及び,これら金属とリチウムの合金を負極に用いた二次電池が,特開平8-64239号公報,特開平3-62464号公報,特開平2-12768号公報,特開昭62-113366号公報,特開昭62-15761号公報,特開昭62-93866号公報,特開昭54-78434号公報に開示されている。」(段落【0009】)
・「しかし,これら公開公報に記載の二次電池では負極の形状を明示し
ておらず,また上記合金材料を一般的な形状である箔状を含む板状部材とし二次電池(リチウムを活物質とした二次電池)の負極として用いた場合,電極材料層における電池反応に寄与する部分の表面積が小さく,大電流での充放電が困難である。」(段落【0010】)
・「更に,上記合金材料を負極として用いた二次電池では,充電時のリ
チウムとの合金化による体積膨張,放出時に収縮が起こり,この体積変化が大きく,電極が歪みを受けて亀裂が入る。そして,充放電サイクルを繰り返すと微粉化が起こり,電極のインピーダンスが上昇し,電池サイクル寿命の低下を招くという問題があるために実用化には至っていないのが現状である。」(段落【0011】)

・「一方,8TH
N
INTERNATIONAL

LITHIUM

TRACTS

MEETING

BATTERIESのEXTENED

O
ABS

WED-2(P69~72)において,直径0.07

mmの銅ワイヤーに,電気化学的に,スズ,もしくは合金を堆積させることで,粒子サイズの細かい(200~400nm)層を形成することができ,堆積層の厚みを薄く(約3μm)した電極とリチウムを対極にした電池で,充放電サイクル寿命が向上すると報告されてい
る。」(段落【0012】)
・「上記文献では,0.25mA/c㎡の電流密度で,1.7Li/Sn(スズ1原子当たり1.7個のLiと合金化する)まで充電し,0.9VvsLi/Li+
までの放電を繰り返した評価において,直径

1.0mmの銅線の集電体上に同様にスズ合金を堆積させて得られた粒子サイズ(粒径)が2000~4000nmの電極に対して,200~400nmのスズ粒子の電極が約4倍,Sn0.91Ag0.09合金電極が約9倍,Sn0.72Sb0.28合金電極が約11倍寿命が向上すると報告されている。」(段落【0013】)

・「しかし,上記文献は,対極にリチウムを用いて評価されたもので,実際の電池形態での結果は報告されておらず,また,前記のようなサイズの粒子からなる電極は,直径0.07mmの銅線の集電体上に堆積させて作製したものであり,実用的な電極形状のものではない。また,上述したように,直径1.0mmといった広い面積の領域上に同
様の方法でスズ合金を堆積させた場合粒子サイズ(粒径)が2000~4000nmである層が形成されるが電池としての寿命が著しく低下している。」(段落【0014】)
・「特開平5-190171号公報,特開平5-47381号公報,特開昭63-114057号公報,特開昭63-13264号公報では,
各種リチウム合金を使用した電池において,及び特開平5-234585号公報ではリチウム表面にリチウムと金属間化合物を生成しにくい金属粉を一様に負極に付着させデンドライトの析出を抑制し,充電効率を高めサイクル寿命を向上させた電池が開示されている。しかし,いずれも負極の寿命を飛躍的に伸ばす決定的な方法となり得ていな
い。」(段落【0015】)
・「特開昭63-13267号公報では,板状のアルミニウム合金を主
な例とした非晶質合金とリチウムとを電気化学的に合金化したリチウム合金を負極に用いた,充放電特性の優れたリチウム二次電池が開示されているが,高容量を維持し,かつ実用領域のサイクル寿命の電池は実現できていない。」(段落【0016】)
・「また,特開平10-223221号公報では,Al,Ge,Pb,Si,Sn,Znの元素の低結晶または非晶質の金属間化合物を負極に用いた,高容量でサイクル特性に優れた二次電池が開示されているが,金属間化合物の低結晶化または非晶質化は困難であり,高容量で且つ長サイクル寿命の電池は実現できていない。」(段落【001
7】)
・「このように,リチウム二次電池(以後充放電によるリチウムの酸化反応及びリチウムイオンの還元反応を利用した二次電池を,カーボン材料を負極に用いる“リチウムイオン電池”も含めて,リチウム二次電池と呼ぶことにする)では,エネルギー密度の増大やサイクル寿命
の長寿命化が大きな課題となっている。」(段落【0018】)
(ウ)発明が解決しようとする課題
・「本発明は,上記事情に鑑みてなされたものであり,特にリチウムの酸化反応及びリチウムイオンの還元反応を利用した二次電池に有用な二次電池用負極電極材および電極構造体,サイクル寿命が長い,高エ
ネルギー密度の二次電池及びこれらの製造方法を提供することを目的とする。」(段落【0019】)
(エ)課題を解決するための手段
・「本発明の第1の電極材は,非化学量論比組成の非晶質Sn・A・X合金を主成分とし比表面積が1㎡/g以上である粒子を含有するリ
チウム二次電池用負極電極材である。
(上記式中,Aは,遷移金属の少なくとも一種を示し,Xは,O,F,
N,Mg,Ba,Sr,Ca,La,Ce,Si,Ge,C,P,B,Bi,Sb,Al,In及びZnから成る群から選ばれた少なくとも一種を示す。ただし,Xは,含有されていなくてもよい。また,上記式の各原子の原子数において,Sn/(Sn+A+X)=20~80原子%の関係を持つ。また,XがOの場合,その含有量は0.05重量%以上5重量%以下であり,XがFの場合その含有量は5重量%以下である。)
本発明の第2の電極材は,非化学量論比組成の非晶質Sn・A・X合金を主成分とした粒子を含有するリチウム二次電池用負極電極材であ
る。
(上記式中,Aは,遷移金属の少なくとも一種を示し,Xは,O,F,N,Mg,Ba,Sr,Ca,La,Ce,Si,Ge,C,P,B,Bi,Sb,Al,In及びZnから成る群から選ばれた少なくとも一種を示す。ただし,Xは,含有されていなくてもよい。また,上記
式の各原子の原子数において,Sn/(Sn+A+X)=20~80原子%の関係を持つ。また,XがOの場合,その含有量は0.05重量%以上5重量%以下であり,XがFの場合その含有量は5重量%以下である。前記合金は,Si,Ge,Al,Zn,Ca,La及びMgから成るグループから選択される一元素と,Co,Ni,Fe,C
r及びCuから成るグループから選択される一元素を含有している。)・・・」【0020】
・「上記記載の「非化学量論比組成の合金」は,二種以上の金属元素が簡単な整数比で結合していない合金のことである。この「非化学量論比組成の合金」は,二種以上の金属元素が簡単な整数比で結合してい
る金属間化合物とは,相違するものである。より具体的には,既に周知となっている金属間化合物(規則的な原子配列を有し構成金属とは
全く異なる結晶構造を取る)の元素組成,即ち二種以上の金属元素が簡単な整数比で結合している構造式で表される組成(化学量論組成),からずれた組成を本発明では「非化学量論組成」と呼称する。」(段落【0021】)
(オ)発明の実施の形態
・「本発明者らは,電気化学反応でリチウムの酸化反応及びリチウムイオンの還元反応を利用した二次電池において,負極に,少なくとも充電時の電気化学反応でリチウムと合金化する,非化学量論比組成の非晶質Sn・A・X合金を主成分とした粒子(以下,「非晶質合金粒子」
と記す)を含有する電極材を用いた電極構造体を使用することで,高容量で長寿命のリチウム二次電池を提供できることを見出した。」(段落【0056】)
・「負極が電気化学反応でリチウムとの合金を形成する非化学量論比組成の非晶質合金粒子から形成されていることで,粒子間にスキマ(空
間)ができ,充電時の非晶質合金粒子の膨張が許容できる空間が確保されるため,電極の破壊が抑制される。さらにこの非晶質合金粒子が,非晶質相を有することで,リチウムとの合金化時に体積膨張が低減できる。そのため,リチウム二次電池の負極に用いた場合は充放電での負極の電極材料層の膨張収縮が少なく,充放電サイクルの繰り返しに
よっても性能低下が少ない二次電池を達成することが可能になる。仮に負極が電気化学反応でリチウムとの合金を形成する板状の金属から成っていた場合,充電時の負極の膨張は大きく,充電と放電のくり返しにより,クラックが起き,負極の破壊が起こり,長寿命の二次電池を達成することはできない。」(段落【0058】)

・「〔非晶質合金粒子の好ましい比表面積〕
非晶質合金粒子をリチウムニ次電池の負極材料として用いる場合,充
電時に析出するリチウムとの反応性を高め,均一に反応させるように,非晶質合金粒子は取り扱いが容易で電子伝導が低下して電極を形成した場合の電極のインピーダンスが高くならない程度に,また,電極材料層を形成しやすい程度に,粒子径は細かく,比表面積も大きい方が電気化学反応を容易にする点で好ましい。」(段落【0116】)
・「前記非晶質合金粒子の比表面積は,1㎡/g以上,さらには,5㎡/g以上であることが好ましい。
前記金属粉末の比表面積は,ガス吸着を用いたBET(Brunauer-Emmett-Teller)法で計測される。」(段落【0117】)

・「表1の結果から,非晶質スズ合金粉末を負極活物質(負極材料)に用いたリチウム二次電池では,スズの含有量が増すに従って,充放電のクーロン効率と充放電容量が増すことがわかった。しかし,スズ含有量が多すぎると非晶質化に必要な粉砕処理時間も増し,かつ非晶質化が容易でなくなり,充放電のサイクル寿命は低下することがわかっ
た。」(段落【0171】)
・「充放電のクーロン効率と充放電容量及び充放電サイクル寿命を考慮すると,スズの含有量は,好ましくは20原子%~80原子%,より好ましくは30原子%~70原子%であることがわかる。なお,ここでは示していないが,コバルト元素以外の遷移金属元素との合金も同
様の結果であった。」(段落【0172】)

以上の記載によれば,本件発明2-5-①(請求項1)及び同(請求項44)の意義は,以下のとおりと認められる。
従来,リチウム二次電池において,リチウムのデンドライトの発生を
抑えるために,負極にリチウム合金が使用されていたところ,充放電により膨張,収縮が起こり,電極に亀裂が入り,微粉化が起こるという問
題があったことから,本発明は,これを解決して,サイクル寿命が長く,高エネルギー密度のリチウム二次電池を提供することを目的とする。本発明は,負極に,非化学量論比組成の非晶質スズ・A・X合金を主成分とした粒子を使用することを特徴とするものであり,これにより,粒子間に隙間ができ,粒子の膨張が許容できる空間が確保されるため,
破壊が抑制され,高容量で長寿命となるものである。
また,比表面積を1㎡/g以上とすることも特徴であり,比表面積は大きい方が電気化学反応を容易にするものである(請求項1のみ)。さらに,スズの含有量を20ないし80原子%とすることにより,充放電のクーロン効率と充放電容量を増加させるものである。

2
争点(1)イ(ア)(乙1考案による新規性欠如の有無)について事案に鑑み,まず,争点(1)イ(ア)について検討する。
(1)本件発明1-1について
被告は,本件発明1-2ないし1-5に技術的優位性が認められないこと
の前提として,本件発明1-1に係る特許権が乙1考案に照らして新規性がないことを理由に取り消されている事実(前記第2,2(9))を指摘する。これに対し,原告は,本件発明1-1と乙1考案とは全く異なる発明であって,本件発明1-1には本来取り消されるべき理由はなかった旨主張する。そこで,原告の上記主張の当否について検討する。


課題の相違について
まず,原告は,本件発明1-1と乙1考案とでは課題の捉え方が異なると主張する。
しかし,仮に別異の技術的課題を解決するための発明であったとしても,結果として開示されている技術的事項が同一であるならば,発明と
して同一であることに変わりがないのであって,原告の上記主張は新規性の判断を左右するものではない。


計算方法について
(ア)次に,原告は,本件発明1-1では,負極面上に垂直に投影した正極の投影面が該負極面内にあり,正極エッジ先端から負極エッジ先端までの最短距離が上記正極と上記負極との間の距離の10倍以上であると規
定されていることが大きな特徴となっているのに対し,乙1公報ではこのような特徴が開示されていないと主張する。そして,本件取消決定では乙1考案の実施例に示されている実施例において示されている「セパレータの厚み」及び「正極に対して負極がはみ出る長さ」を三平方の定理に当てはめて計算し,「正極エッジ先端から負極エッジ先端までの最
短距離が,前記正極と前記負極との間の距離の10倍以上であるといえる」と結論付けているところ,これは,一般的に負極のエッジ部が湾曲していることを考慮に入れていない点で誤っていると主張する。
しかし,そもそも乙1公報には,負極のエッジ部が湾曲していることを示す記載は見当たらないのであるから,エッジ部の湾曲を考慮に入れ
ずに算定した点に誤りはないというべきであって,原告の上記主張はその前提を欠く。
(イ)この点につき原告は,本件明細書等1-1の段落【0021】,同【0022】及び図8(b)の記載や,訴外沖エンジニアリング株式会社のウェブサイト(甲30)の記載等からすれば,リチウムイオン二次
電池の負極のエッジ部が湾曲していることは証拠上明らかであると主張する。
しかし,原告自身が提出する甲23の1報告書では,負極が直線上に撮影されているのであって,湾曲しているようには見えない(7頁図1)。そして,仮に一般的に負極のエッジ部が湾曲しているとしても,
乙1公報の実施例に示されている「セパレータの厚み」は25μmであるのに対し,「正極に対して負極がはみ出る長さ」は0.5mm(50
0μm),1mm(1000μm),2mm(2000μm)であり,少なくとも20倍程度はあるのであって,湾曲を考慮に入れても,三平方の定理を当てはめた数値が「正極エッジ先端から負極エッジ先端までの最短距離が,前記正極と前記負極との間の距離の10倍」を下回ることになるとは考え難い。

(ウ)また,原告は,仮に負極のエッジ部が湾曲しておらず直線であったとしても,負極が正極からはみ出した後,エッジ部に至るまでの箇所では湾曲しており,このような場合には三平方の定理は利用することができないなどと主張する。
しかし,これも,原告自身の提出する甲23の1報告書でははみ出し
部分が湾曲しているように見えないのであって(7頁図1),原告の主張はその前提を欠く。

小括
以上によれば,本件発明1-1は乙1考案に照らして新規性を欠くものとした特許庁の本件取消決定に誤りがあるということはできない。
(2)本件発明1-2ないし1-5について

本件発明1-1が乙1考案に照らして新規性を欠くとした特許庁の本件取消決定に誤りはないというべきところ,本件発明1-2ないし1-5を本件発明1-1と比較した場合,発明としては実質的に同一である
と認められる上,本件発明1-1と相違する構成要件があるとしても,これらは以下のとおり乙1公報に開示されている。
したがって,本件発明1-2ないし1-5についても,乙1考案に照らして新規性を欠くことが明らかである。
(ア)本件発明1-2について

本件発明1-2は,本件発明1-1にはない構成要件として,「前記正極がリチウム含有の遷移金属酸化物で,」(構成要件b)及び「前記
負極と前記正極は前記セパレータを介して互いに対向し,対抗する面を持ち,」(構成要件c)がある。
しかし,前者については,乙1公報の実用新案登録請求の範囲に「LixMO2(Mは1種又は1種よりも多い遷移金属を表し・・・)を用いた帯状の正極」と記載されており,後者については,同請求の範囲に「・・・帯状の負極と・・・帯状の正極と,帯状のセパレータとがその長さ方向に沿って渦巻き状に巻回されて,上記負極と上記正極との間に上記セパレータが介在するように構成された」と記載されていることなどから,いずれも乙1公報に開示されているというべきである。

(イ)本件発明1-4について
本件発明1-4には,本件発明1-1にはない構成要件として,「前記負極は、上記の充電式電池が組み立てられた時にはリチウム元素を含有しない負極活物質を含み,」(構成要件c)がある。
しかし,リチウムイオンが負極の炭素結晶層間に挿入されるというリ
チウムイオン二次電池の原理(甲26,42)に照らせば,乙1考案の負極は,組み立てられた時にはリチウム元素を含有しないということができるから,上記構成要件は乙1公報に開示されているというべきである。
(ウ)数値範囲について

本件発明1-1においては,正極エッジ先端から負極エッジ先端までの最短距離が,正極と負極との間の距離の「10倍以上」と規定されているのに対し(本件発明1-1の構成要件d),本件発明1-3ないし1-5では「5倍以上」と規定されている(本件発明1-3の構成要件c,本件発明1-4の構成要件e,本件発明1-5の構成要件d)。
しかし,乙1考案において当該距離の比が10倍以上であることが示されている以上,当然に「5倍以上」であることも開示されているとい
うべきである。

したがって,本件発明1-2ないし1-5については,乙1考案に照らし,技術的価値を欠き,独占の利益を生じさせるものではないというべきである。

3
争点(1)イ(イ)(公然実施の有無)について
被告は,ソニーが本件特許権1-1ないし1-5の優先日以前にNP-500を販売しており,これに格納された電池は本件発明1-1ないし1-5の各構成要件を充足していたから,上記各発明に係る特許権には公然実施による無効事由があると主張し,これを裏付けるものとして乙68報告書を提出する。
そこで,以下,この点について検討する。
(1)乙68報告書の分析対象について

まず,乙68報告書には,バッテリーパックNP-500に搭載されたソニー製リチウムイオン二次電池を分析した旨の記載がある。


この点について原告は,乙68報告書において分析対象とした電池(乙68対象電池)と,平成6年5月30日以前に販売されていたNP-500の電池とが,同一の電池であるという事実は確認されていないなどと主張する。
しかし,乙68報告書において分析の対象としたバッテリーパックNP-500には品番印字部分に「5K2JC」と印字され(乙68報告
書4頁),同バッテリーパックから取り出したセルには「D02AI01Z」と印字されていたものである(同8,9頁)。そして,ソニーに対する調査嘱託の結果によれば,「5K2JC」と印字されたNP-500の製造年月は平成4年10月であり,「D02AI01Z」と印字されたセルの製造年月日は同年9月1日であると認められる。

したがって,乙68対象電池は,平成6年5月30日以前に製造・販売されていたNP-500の電池と同じ構造を有するものと認めるのが
相当であるから,原告の上記主張は採用することができない。
なお,原告は,仮に乙68対象電池が同日以前に製造されたものであったとすれば,製造から最低でも21年が経過していることになり,著しい劣化が生じているであろうことは容易に想像できるなどとも主張するが,推測の域を出ず,客観的裏付けを欠くものであって,採用するこ
とができない。
(2)本件発明1-1について

構成要件aについて
構成要件aは「負極,セパレーター,正極,電解質と,電池ケースを有する二次電池において,」というものであるところ,乙68報告書に
よれば,①NP-500に格納された電池には負極,セパレータ及び正極があること,②上記電池には電池ケースがあること,③上記電池には電解質があることが認められる。
したがって,NP-500に格納された電池は,構成要件aを充足する。


構成要件bについて
構成要件bは「前記負極の大きさが前記正極の大きさより大きく,」というものであるところ,乙68報告書によれば,セパレータを介して対向した状態で捲回されていた「正極」の内側と「負極」の外側,及び,「正極」の外側と「負極」の内側は,いずれも全長及び幅の双方におい
て「負極」(負極活物質層)の方が「正極」(正極活物質層)よりも長くなっているものと認められる。
したがって,NP-500に格納された電池は,「負極」の方が「正極」よりも大きいのであるから,構成要件bを充足する。

構成要件cについて
構成要件cは「前記負極面上に垂直に投影した前記正極の投影面が該
負極面内にあり,」というものであるが,以下,この点について検討する。
(ア)まず,全長方向のうち巻き始め部分については,乙68報告書19頁の写真において,「負極」(負極活物質層)は撮影できていないものの,負極集電体はその巻き始めから明瞭に撮影できている。そして,負極集電体の巻き始めから「正極」(正極活物質層)に対向する箇所に到達するまでの長さは少なく見積もっても14mm(1万4000μm)以上はあるところ,巻き始めにおける負極活物質の未塗工部は内側で3.6mm,外側で4.5mmであるから(乙68報告書29頁表4-1),
以下の図で示すとおり,巻き始め部分において「負極」(負極活物質層)は「正極」(正極活物質層)よりもはみ出しているものということができる。

次に,全長方向のうち巻き終わり部分については,乙68報告書1
5頁の各写真によれば,以下の図に示すとおり,負極集電体の巻き終わりから「正極」(正極活物質層)に対向する箇所に到達するまでの長さは少なく見積もっても15mm(1万5000μm)以上はあるところ,巻き終わりにおける負極活物質の未塗工部は内側外側共に11.3mmであるから(乙68報告書29頁表4-1),巻き終わり部分においても「負極」(負極活物質層)は「正極」(正極活物質層)よりはみ出しているものということができる。

以上から,全長方向では,巻き始め・巻き終わり共に「負極」の方が「正極」よりも外側にある,すなわち「正極」が「負極」の内側にあるということになる。
(イ)次に,幅方向については,乙68報告書の13,14,17及び18頁の各写真では,いずれの箇所も,負極の集電体が「正極」(正極活物質層)よりも外側にはみ出しており,これらの画像では「負極」(負極活物質層)自体は撮影できていないものの,幅方向では「正極負極共に幅方向の端部には活物質未塗工領域は見られな」い(同28頁)ことから,負極集電体の幅方向の長さと「負極」(負極活物質層)の幅方向の
長さは一致しており,幅方向は,「正極」が「負極」の内側にある。(ウ)このように,NP-500に格納された電池の「正極」は,四辺が全て「負極」よりも内側に配置され,「負極」の四辺全てが「正極」よりはみ出しているから,負極面上に垂直に投影した正極の投影面は,負極面内にある。

したがって,NP-500に格納された電池は,構成要件cを充足する。
(エ)原告の主張に対する判断
この点につき原告は,乙68報告書には全長方向の巻き始め部分及び巻き終わり部分では正極集電体及び負極活物質層が撮像されておらず,
「負極」(負極活物質層)が「正極」(正極活物質層)よりもはみ出している事実は認められないなどと主張する。
しかし,このうち正極集電体については,巻き始め部分では乙68報告書19頁の「写真10」を拡大した写真(乙135の写真②)及びその画像データのコントラスト等を調整した写真(同写真③及び④)によ
り,また巻き終わり部分については乙68報告書20頁の「写真11」の画像データのコントラスト等を調整した写真(乙136の写真⑥)により,いずれも正極集電体が撮像されているものと認められる。
また,負極活物質層については,巻き始め部分では,①負極集電体は撮像されていること,②負極活物質層は負極集電体上に,正極活物質層
又は正極集電体と対向して存在すること(乙68報告書28頁),③負極には,負極集電体に対して負極活物質層が塗工されていない部分(未塗工部分)があり,負極の巻き始めにおける負極活物質の未塗工部分の長さは,内側で3.6mm,外側で4.5mmであること(乙68報告書29頁表4-1)から,負極活物質層の箇所を把握することが可能で
あるものと認められる。巻き終わり部分でも,①負極集電体は撮影されていること,②負極活物質層は負極集電体上に,正極活物質層又は正極集電体と対向して存在すること,③負極の巻き終わりにおける負極活物質の未塗工部分の長さは,内側・外側いずれも11.3mmであること(乙68報告書29頁表4-1)から,同様に負極活物質層の箇所を把
握することが可能であるものと認められる。
したがって,原告の上記主張は採用することができない。

構成要件dについて
構成要件dは「正極エッジ先端から負極エッジ先端までの最短距離が,
前記正極と前記負極との間の距離の10倍以上であることを特徴とする二次電池。」というものであるが,以下,この点について検討する。
(ア)まず,「正極」と「負極」とはセパレータを介して対向しており,それぞれセパレータと接しているから(乙68報告書27,28頁),「正極」と「負極」との間の距離はセパレータの厚みに等しいところ,セパレータの厚みは,平均で24.9μm,最も厚い箇所で25.2μmである(乙68報告書33頁表6-1)。
(イ)この点,まず全長方向については,巻き始め部分及び巻き終わり部分それぞれにおいて,以下の図に示すとおり,「正極」エッジ先端を中心として,セパレータの最大厚み(=正極と負極の間の最大距離)25.2μmの10倍に当たる252μmを半径とした円弧を記入しても,負
極活物質層の端である「負極」エッジ先端には到底届かない。よって,全長方向では,巻き始め部分・巻き終わり部分共に「正極」エッジ先端から「負極」エッジ先端までの最短距離が,正極と負極との間の距離の10倍以上である。

(ウ)次に,幅方向については,正極エッジ先端から負極エッジ先端までの
距離が最短となっているのは,乙68報告書18頁の写真9における下端右側(外周部)の箇所であるところ,当該箇所を拡大して撮影した写真13(同22頁)の観察結果によれば,写真13及び写真9の下端右側(外周部)における,一番右端の「負極」の一番右端の「正極」に対するはみ出し長さは「489.1μm」であり,右端から二番目の「負極」の一番右端の「正極」に対するはみ出し長さは「496.8μm」である。なお,これらの写真に「負極」(負極活物質層)は写っていないものの,「目視で確認の結果,正極負極共に幅方向の端部には活物質未塗工領域は見られなかった」(同28頁)とあることから,負極活物
質は負極集電体の幅方向末端まで塗工され存在しているものと認められる。
このように,「正極」と「負極」との間の距離は最大で25.2μmであるから,以下の図に示すとおり,「正極」エッジ先端を中心として,セパレータの最大厚み(=正極と負極の間の最大距離)25.2μmの
10倍に当たる252μmを半径とした円弧を記入しても,負極活物質層の端であるところの「負極」エッジ先端には到底届かない。

(エ)以上から,「正極」エッジ先端から「負極」エッジ先端までの最短距離と前記「正極」と前記「負極」との間の距離の比が,10倍以上であることは明らかである。
したがって,NP-500に格納された電池は構成要件dを充足する。(オ)原告の主張に対する判断
まず,原告は,全長方向につき,①正極集電体の巻き始め部分や巻き終わり部分が乙68報告書の写真上明らかではないため,「正極」エッジ先端の位置も不明である,②巻き始め部分及び巻き終わり部分の「中心」の位置自体が,根拠に基づくものではない上,この円弧が半径25
2μmかどうかも不明である,などと主張する。
しかし,上記①については,上記ウのとおり採用することができない。また,上記②については,正極活物質層の巻き始め部分及び巻き終わり部分は,上記ウのとおり乙68報告書に撮像されており,これらの像に基づいて巻き始め部分及び巻き終わりの「中心」を特定することは可能
であるし,この円弧が半径252μmであることは乙68報告書19頁の写真10のスケールバーに基づくものであるから,原告の上記主張も
採用することができない。
次に,原告は,幅方向につき,なぜ正極エッジ先端から負極エッジ先端までの距離が最短となっているのが「乙68報告書18頁の写真9における下端右側(外周部)の箇所」なのか,理由が明らかではないなどと主張する。

しかし,乙68報告書では,幅方向についての全ての正極と負極のエッジの写真が写真2,3,8,9(同13,14,17,18頁)で示されており,これらによれば,XY断面,XZ断面における正極端部と負極端部との最短距離は上記写真9に現れているものと理解することができるのであるから(同18頁参照),原告の上記主張は採用すること
ができない。

小括
以上によれば,NP-500に格納された電池は,本件発明1-1の構成要件を全て充足するものと認められる。

(3)本件発明1-2ないし1-5について
上記(2)のとおり,NP-500は,本件発明1-1の構成要件を全て充足していることに加え,①本件発明1-2の構成要件aの「非水電解液」を有し(乙68報告書36頁),構成要件bの「前記正極がリチウム含有の遷移金属酸化物で」あり(同39頁),構成要件cの「前記負極と前記正極は
前記セパレータを介して互いに対向」しており(同28頁),②本件発明1-3の構成要件bの「前記負極は,前記正極と対向して配置され」ており(同28頁),③本件発明1-4の構成要件bの「前記負極と前記正極は,セパレータを介して互いに対向するように位置して」おり(同28頁),④本件発明1-5の構成要件bの「前記負極および前記正極は,電池内で互い
に対向して」いる(同28頁)。
したがって,NP-500は,本件発明1-2ないし1-5の各構成要件
を全て充足すると認められる。
(4)小括
以上によれば,ソニーが本件特許権1-2ないし1-5の優先日以前にNP-500を販売しており,これに格納された電池は本件発明1-2ないし1-5の各構成要件を充足していたから,上記各発明に係る特許権はいずれ
も公然実施により無効にされるべきものである(特許法29条1項2号,123条1項2号)。
(5)原告の主張に対する判断
この点に関して原告は,日立製作所が「鋼材のような高密度厚部材の内部の形状を0.1mm単位で正確に測定できる」(甲48)という高性能の工
業用X線CT装置を開発した平成10年12月16日までは,リチウムイオン二次電池について工業用X線CT装置を用いた非破壊内部構造分析を実施することは不可能であり,したがって本件発明1-1ないし1-5は,平成6年5月30日当時,公然実施されていなかったなどと主張する。しかし,関係各証拠(乙136ないし139)によれば,平成6年5月3
0日当時,既に「0.1mm単位」で正確に測定できるX線CT装置が存在していたものと認められるから,原告の上記主張は,その前提を欠き,採用することができない。
4
争点(1)イ(ウ)(被告による無効主張の許否)について
(1)原告は,被告は原告から職務発明の対価の請求を受けるや否や,それまで議論の俎上に上がったことすらない無効事由の存在を主張するなどして,原告への対価の支払を免れようとしているものであって,このような被告の対応は改正前特許法35条3項及び4項の趣旨及び禁反言の見地から容認されず,本訴において被告が本件発明1-2ないし1-5に係る特許権の無効に
関する主張を行うことは法的に許容されないなどと主張する。
(2)しかし,上記のとおり,本件発明1-1に係る特許は平成15年11月2
7日の時点で本件取消決定により既に取り消されていたものであって,その対応外国特許である本件発明1-2ないし1-5に係る特許につき,本件発明1-1と同様に乙1考案に照らして新規性を欠くことが明らかであるから,本件発明1については,被告が有効な特許権を前提としてこれを実施してきたとはいえない。
加えて,公然実施による無効についても,関係各証拠によれば,①リチウムイオン二次電池であるNP-500は,ソニーが他社に先んじて開発に成功した後,高い市場シェアを維持したものであり(乙65),平成6年5月当時,既に競合他社の分析にさらされていたことがうかがわれること,②原
告自身,本件発明1-2ないし1-5の優先日よりも前の平成5年5月,「ソニーエナジーテック製リチウムイオン電池」を解体しているところ(乙74),ソニーのカタログ(乙76,77)及びソニーに対する調査嘱託の回答によれば,原告が解体した「ソニーエナジーテック製リチウムイオン電池」とはNP-500であると認められること,③上記解体の際,原告は,
正極材及び負極材の大きさ等を計測しており(乙74),NP-500が,負極,セパレーター,正極,電解質と電池ケースを有し(本件発明1-1の構成要件a),負極の大きさが前記正極の大きさより大きく(同b),負極面上に垂直に投影した前記正極の投影面が該負極面内にある(同c)を認識していたようにうかがわれる上,「正極エッジ先端から負極エッジ先端まで
の最短距離」の「正極と負極との間の距離」に対する割合についても認識していた可能性を否定することはできないこと,などの各事実が認められる。このような各事実,特に原告自身の認識に照らせば,被告が本訴においてNP-500に係る公然実施による無効を主張することが,被告による実施の事実と大きく矛盾するものではないから,特許法35条の趣旨及び禁反言の
見地から許容することができないとまでいうことはできない。
(3)以上の諸事情に照らせば,本訴において,被告が本件発明1-2ないし1
-5に係る特許権につき,その無効に関する主張を行い,もって技術的価値がない旨の主張をすることが,直ちに法的に許容されないということはできない。
なお,原告は知的財産高等裁判所平成19年(ネ)第10056号同21年6月25日判決〔ブラザー工業事件控訴審判決〕の示した判断基準を引用
するが,仮に同判断基準によったとしても,上記(2)の諸事情に照らせば,本件特許1-1は,平成15年11月27日の時点において本件取消決定によって既に取り消されているのであって,その対応外国特許である本件発明1-2ないし1-5に関しても,被告が有効な特許権と認識していたとはいえないから,「有効な特許権の存在を前提にこれを実施してきた使用者が職
務発明対価請求訴訟を提起されるに至って初めて無効事由の存在を主張した」ものと評価することはできず,被告による無効主張が改正前特許法35条3項及び4項の趣旨や禁反言の法理に反するとはいえない。
したがって,原告の上記主張は,採用することができない。
5
争点(2)ア(ア)(本件発明2-1-①及び2-1-②の実施の有無)について(1)本件発明2-1-①について

本件発明2-1-①の構成要件bは「上記負極が少なくとも酸ともアルカリとも反応する両性金属と合金化した金属粉末で構成されており,」というものであるところ,原告は,NP-FV50の負極は「合金化」した「金属粉末」で構成されていると主張するのに対し,被告は,NP
-FV50の負極は「合金」に該当せず,また「金属粉末」にも該当しないと主張する。
そこで,以下,この点について検討する。

NP-FV50の安全データシート(乙149)には,NP-FV50の負極につき「負極:コバルトスズ炭素(活物質)

ポリフッ化ビニ

リデン(バインダー)」として,炭素が構成元素であることが記載され
ている。なお,同様の記載は,「Nexelion」の他のバッテリーパック(NP-FV70,NP-FV100,NP-FH50,NP-FH70,NP-FH100)にも存在する(乙151ないし155)。また,ソニーの従業員ら作成の「Nexelion」に関する論文(甲65。以下「甲65論文」という。)には,上記「コバルトスズ炭
素」とはスズ,コバルト及び炭素が化学的に結合したものである旨記載されている(同361頁及び362頁の図11)。そして,同論文には,「Nexelion」の負極である「コバルトスズ炭素」は,非金属である炭素の中でコバルトスズ化合物がCo-C(コバルト-炭素)結合により保持されている構造が示されており,このような構造は,合金に
該当するとはいえず,金属にも該当しないというべきである。
したがって,NP-FV50の負極は,「合金化」した「金属粉末」で構成されているとはいえない。

原告の主張に対する判断
(ア)この点に関して原告は,「Nexelion」についてのソニーのプレスリリース(甲5の1,2)に「スズ系アモルファス」と記載されており,これはスズのアモルファス合金をいう旨主張する。
しかし,アモルファスは必ずしも「合金」を意味するものではないし(乙99参照),上記プレスリリース及び甲65論文のいずれも「スズ
系アモルファス負極」との記載にとどまっているのであって,「合金」とは明記されていない。
したがって,原告の上記主張は採用することができない。
(イ)次に,原告は,複数の金属元素又は金属元素と非金属元素からなる金属用のものが「合金」であって,「Nexelion」の負極にスズや
コバルトといった複数の金属元素が含まれている以上は「合金」に該当するから,その粒子も「金属粉末」に該当すると主張する。

しかし,複数の金属元素が含まれていることのみをもって「合金」に該当するとはいえず,そして「合金」に該当しない以上はその粒子をもって「金属粉末」に該当するということもできない。
したがって,原告の上記主張は採用することができない。
(ウ)さらに,原告は,乙5報告書において,NP-FV50の負極に存在
する物質の結晶子サイズを分析したところ,スズ・コバルト合金である「02-0559>CoSn-Cobalt

Tin」と一致する箇所

にピーク4が検出されていた旨主張する。
しかし,乙5報告書の4頁を見ると,ピーク4の回折角(2θ/deg.)は43.021であり,その回折角には「02-0559>Co
Sn-Cobalt

Tin」のピークは存在しない。

したがって,原告の上記主張は採用することができない。
(エ)加えて,原告は,被告の提出した報告書(乙57の2)においても,NP-FH50の負極材のα・βのピークに該当する可能性が高いものとして「CoSn」(スズ・コバルト合金)が挙げられていることを指
摘する。
しかし,上記記載はあくまでも可能性を指摘するものにとどまるのであって,この記載をもって,負極が「合金」であることを立証したものとはいえない。

小括
以上によれば,NP-FV50は本件発明2-1-①の構成要件bを充足しないから,その余の点について判断するまでもなく,同発明を実施したものとはいえない。

(2)本件発明2-1-②について
上記(1)において説示したところからすると,NP-FV50は本件発明2-1-②の「負極が,少なくともアルミニウム,亜鉛,スズ,鉛,ガリウ
ム,セリウム,ストロンチウムからなる群から選択される少なくとも一つの酸ともアルカリとも反応する両性金属と合金化した,ニッケル,コバルト,銅,チタン,鉄からなる群から選択される少なくとも一つの金属の少なくとも金属粉末から成り,」(構成要件b)も充足しない。
したがって,その余の点について判断するまでもなく,NP-FV50は
本件発明2-1-②を実施したものとはいえない。(3)小括
以上のとおり,NP-FV50は本件発明2-1-①及び2-1-②を実施したものとはいえないから,この点についての原告の主張は理由がない。6
争点(2)ア(イ)(本件発明2-2-①ないし2-2-④の実施の有無)について
(1)本件発明2-2-①について
本件発明2-2-①の構成要件dは「前記電解液と接し,正極と対向する負極表面の導電体部の粗さの(最大山から最深谷までの)最大高さRmax
の1/2と中心線平均粗さRaとの差が,負極表面正極表面間の距離の1/10以下であり,」というものであるところ,原告は,NP-FV50の負極表面のRmaxが0.716μm,Raが3.830μmと測定されていることを前提に,NP-FV50が構成要件dを充足する旨主張する。しかし,甲23の2報告書によると,別の測定箇所ではRmaxが4.9
08,Raが0.511と測定されているのであり(甲23の2報告書1頁の表1),これを前提に計算すると,「最大高さRmaxの1/2と中心線平均粗さRaとの差」は1.943μmとなるのであって,1.9μm(負極表面正極表面間の距離の1/10)より大きい。
このように,NP-FV50においては,測定箇所により構成要件dを充
足しない箇所があるから,NP-FV50は構成要件dを充足しない。したがって,その余の点について判断するまでもなく,NP-FV50は
本件発明2-2-①を実施したものとはいえない。(2)本件発明2-2-③について

本件発明2-2-③の構成要件hは「前記層(102,201)は前記金属(106)を含み,前記金属(106)はその表面に多く存在し
ている,そして前記層(102,201)は充電が行われる前にはリチウムを含まない,」というものであり,ここにいう「前記金属(106)」とは「(i)充電時にリチウムと合金化ができない金属(106)」(構成要件g)を指す。
この構成要件hについて,原告は,負極層を塗布・乾燥する間に,比
重の重いスズを多く含む粒子は沈降する傾向にある結果,正極と対向する負極表面(銀箔から遠い面)には相対的にスズの比率が少なくなり,代わりにより軽い粒子であるチタン(前記金属(106))等が多く存在するなどと主張する。
しかし,原告の上記主張は,推測の域を出るものではない。むしろ,
仮にチタンの含有量が沈降に有意差を与えるとすれば,比重が大きいスズやコバルトを多く含む粒子(JFEテクノリサーチ株式会社作成の報告書〔甲24の1〕29頁の「粒子2」)よりも比重の軽い炭素を多く含む粒子(同頁の「粒子1」)が負極表面に極めて多く存在するはずであるが,そのような傾向は見られない(同28頁図33参照)。

また,甲21報告書のICP分析結果によれば,コバルトの原子%が0.251であり,チタンの原子%が0.049であるから(甲21報告書別紙11頁),NP-FV50の負極中に,コバルトはチタンの5倍程度存在する。したがって,リチウムと合金化しない金属(前記金属(106))であると原告自身が主張しているコバルト(前記第3,7
の〔原告の主張〕(1)イ)を無視してチタンの含有量のみで粒子の比重を主張することは相当ではない。


この点に関して原告は,コバルトの含有量と負極表面におけるチタンの比率の方が高いこととは無関係であると主張する。
しかし,構成要件hは負極表面におけるチタンの比率のみを要件としているものではなく,「充電時にリチウムと合金化ができない金属(106)」が「その表面に多く存在している」ことを要件としているので
あって,チタンのみならずコバルトも「充電時にリチウムと合金化ができない金属(106)」である以上,コバルトとチタンとを合わせて考慮する必要がある。
したがって,原告の上記主張は採用することができない。

以上によれば,NP-FV50は本件発明2-2-③の構成要件hを充足しないから,その余の点について判断するまでもなく,NP-FV50は同発明を実施したものとはいえない。

(3)小括
以上のとおり,NP-FV50は本件発明2-2-①及び2-2-③を実施したものとはいえないから,この点についての原告の主張は理由がない。
7
争点(2)ア(ウ)(本件発明2-3-①ないし2-3-⑤の実施の有無)について
(1)本件発明2-3-①について

本件発明2-3-①の構成要件bと同cは選択的な構成要件であるところ,原告は,NP-FV50がこのうち構成要件cを充足すると主張
する。

構成要件cは,「あるいは,メカニカルグラインディング処理によってX線回折角度2θに対して最も強い回折強度が現れたピークの半価幅が0.48度以上を示す非晶質相を有するに至った炭素材料と銅,チタ
ン,ニッケルから選択されるリチウム以外の物質に対して電気化学的に不活性な材料との複合体を成分とすることを特徴とするリチウム二次電
池。」というものである。
しかるに,原告が平成17年4月1日付け電子メール(乙189)でも自認しているとおり,黒鉛(炭素)を大量に含む材料の場合にはメカニカルアロイング処理による非晶質化は進行しないのであるから,メカニカルアロイング処理同様,物理的エネルギーを加える処理であるメカ
ニカルグラインディング処理においても,黒鉛(炭素)を大量に含む材料の場合には非晶質化は進行しないものと解される。
そして,ソニーの従業員ら作成の甲65論文及び●(省略)●作成の報告書(乙206,207。以下,それぞれ「乙206報告書」「乙207報告書」という。)によれば,「Nexelion」の負極活物質
は炭素を大量に含んでいるものと認められる。
したがって,「Nexelion」の一つであるNP-FV50の負極活物質が,メカニカルグラインディング処理その他の物理的エネルギーを加える処理によって非晶質相を有するに至ったとは,にわかに考え難い。


また,メカニカルグラインディング処理その他の物理的エネルギーを加える処理による非晶質化は,「実験室レベルでの少量サンプルの試作はできるものの,量産化に不向き」(乙186の段落【0006】)であるとされており,原告自身も「製造に時間を要する」(乙185)としてこの点を認めている。

したがって,量産化されている「Nexelion」のNP-FV50において,負極活物質の非晶質化のための手段としてメカニカルグラインディング処理その他の物理的エネルギーを加える処理が行われている可能性は,極めて低いものといわざるを得ない。

以上によれば,NP-FV50が「メカニカルグラインディング処理」によって「非晶質相を有するに至った」とは認めることができない。
したがって,NP-FV50は本件発明2-3-①の構成要件cを充足しない。

原告の主張に対する判断
(ア)この点に関して原告は,「Nexelion」の負極活物質の粒子は
角張っており,このことはメカニカルグラインディング処理によって形成されたことの証左である旨主張する。
しかし,仮に「Nexelion」の負極活物質の粒子が角張っていたとしても,これは,メカニカルグラインディング処理以外の方法で非晶質化した後に,「負極材として使用した場合の集電性の向上や短絡防
止のため」(乙186の段落【0031】)に「機械粉砕により粉末化」(同【0030】)された結果である可能性も否定することができない。したがって,「Nexelion」の負極活物質の粒子が角張っていたとしても,このことは上記エの判断を直ちに左右するものではない。(イ)また,原告は,「Nexelion」の負極から検出された炭素の多
くは,負極活物質を構成する元素ではなく,バインダー等であって,メカニカルグラインディング処理をした後に単に混合されたものにすぎないと主張する。
しかし,●(省略)●作成の報告書(乙208)によれば,NP-FV50の負極活物質であるスズを含む粒子は,粒子の中に炭素を大量に
含んでおり,炭素がおおよそ一様な組成分布を示していることが認められる。そして,甲65論文には,「Nexelion」のスズ系アモルファス負極の特徴は,炭素の導入にある旨記載されている。
したがって,NP-FV50において検出された炭素は,負極活物質を構成する元素として積極的に添加されたものであると認められるから,
原告の上記主張は採用することができない。
(ウ)さらに,原告は,訴外株式会社栗本鐵工所(以下「栗本鐵工所」とい
う。)の製品情報(甲83の2ないし5)や訴外日本コークス工業株式会社(以下「日本コークス工業」という。)の製品情報(甲84)に照らせば,メカニカルグラインディング処理による大量生産は可能である旨主張する。
しかし,栗本鐵工所の上記製品情報において具体的に記載されている材料は,二酸化マンガン,酸化チタン等であり,当該製品が炭素を大量に含有するスズ系アモルファス負極材料の製造に適用できることを示す記載はない。また,日本コークス工業の上記製品情報においても,「非晶質(アモルファス)の製造も可能」と記載されているにとどまり,や
はり当該製品が炭素を大量に含有するスズ系アモルファス負極材料の製造に適用できることを示す記載はない。
したがって,原告の上記主張は採用することができない。
(エ)加えて,原告は,①乙206報告書において●(省略)●が使用した装置はスズ合金粒子の表面しか分析することができず,粒子の中心部分
を測定することができたのかにつき疑義がある,②そもそもスズ合金粒子全体に含まれている元素の定性・定量分析を正確に行うためにはICP発光分光分析法によるべきである,③乙207報告書については,物質の組成において最も重要となるのは原子数(原子%)ではなく質量(質量%)であって,スズ合金粒子中の炭素は質量としては15%しか
占めていないなどと主張する。
しかし,上記①については,乙206報告書によれば,試料の表面ではなく断面中の中心部分を測定していることが明らかである(乙206報告書3頁及び5頁)。上記②については,ICP発光分光分析法では炭素を測定することができないものと認められる(甲91,乙209)。
上記③については,「最も重要となるのは原子数(原子%)ではなく質量(質量%)である」との主張自体,客観的裏付けを欠く上,原告も測
定結果を質量%ではなく原子%で示していたところである(甲38・29頁)。したがって,原告の上記主張はいずれも採用することができない。

そして,原告が,構成要件cと選択的である構成要件bについての充足を主張しない以上,その余の点について判断するまでもなく,NP-
FV50は本件発明2-3-①を実施したものとはいえない。(2)本件発明2-3-④(請求項5)について

本件発明2-3-④(請求項5)の構成要件bは「前記負極は活物質として,少なくとも炭素と,非晶質相を有する金属と,リチウム電池の充放電で利用される活物質がある電極中のリチウム以外に電気化学的に
不活性な材料,のうち1つを含む結晶物質の混合物に物理的エネルギーを加えて形成される複合体を含有し,」(原告の主張する訳文)又は「前記負極は,炭素と非晶質相を有する金属の少なくとも一つを含む結晶物質と,リチウム電池の充放電で利用される活物質がある電極中のリチウム以外に電気化学的に不活性な材料,との混合物に物理的エネルギ
ーを加えて形成される複合体を含有する,」(被告の主張する訳文)というものである。
そして,これに続く構成要件cは,「前記複合体は少なくとも非晶質相を有し,Ⅹ線回折における回折角2θ(シータ)に対する最大回折強度のピークの半価幅が0.48度より狭くない。」というものである。
この構成要件b及びcの解釈につき,被告は「物理的エネルギーを加え」たことにより複合体が「非晶質相を有し」,「最大回折強度のピークの半価幅が0.48度より狭くない」ことになったとの因果関係を要すると主張するのに対し,原告はこのような因果関係を要しないと主張する。


そこで検討するに,本件明細書等2-3-④(甲4の10)の段落
【0054】には,「結晶質状態の活物質に物理エネルギーを付与して結晶質状態の活物質を非晶質相の活物質にすることで得られた」として,物理的エネルギーによる非晶質化の因果関係が明記されている。
また,本件発明2-3-④に係る各発明の負極の実施例8,12ないし14,16を通じてみても,いずれも結晶材料に対してメカニカルグラインディング処理を加えることで,炭素等の半価幅を0.48度より狭くない状態にする例しか記載されていない(本件明細書等2-3-④の段落【0165】,【0180】,【0183】,【0186】,【0192】,【0212】及び【0213】段落)。他方,メカニカ
ルグラインディング処理以外には,複合体が非晶質相を有し,X線回折における回折角2θに対する最大回折強度のピークの半価幅が0.48度よりも狭くない状態にするための処理の記載は一切ない。
さらに,本件明細書等2-3-④の段落【0140】には,「結晶性の材料を非晶質化するのに一般的に用いられ,原子構造の配列が短周期
(ミクロ)的にも不規則となる材料を生成する急冷法や溶液反応法とは大きく異なり,出発原料に結晶質を用いて遠心力等の物理エネルギーを付与することが特徴の本発明の方法は,完全に不規則な原子構造ではなくミクロ的には短周期で原子構造が規則的な部分を残している材料を生成する。」として,①本発明の特徴が結晶質を出発材料としてこれに対
して物理的エネルギーを加えることで実現される非晶質化であること,②本発明の物理的エネルギーによる非晶質化が,急冷法や溶液反応法(化学還元法等)による非晶質化と区別されること,が記載されている。以上からすると,本件発明2-3-④(請求項5)の構成要件b及びcについては,被告は「物理的エネルギーを加え」たことにより複合体
が「非晶質相を有し」,「最大回折強度のピークの半価幅が0.48度より狭くない」ことになったとの因果関係を要するものと解するのが相
当である。これに反する原告の主張は,採用することができない。ウ
そして,上記(1)によれば,NP-FV50が「メカニカルグラインディング処理その他の物理的エネルギーを加える処理」によって「非晶質相を有するに至った」とは認めることができない。
したがって,NP-FV50は本件発明2-3-④(請求項5)の構
成要件b及びcを充足しないのであり,同製品は同発明を実施したものとはいえない。
(3)本件発明2-3-④(請求項9)及び同(請求項11)について本件発明2-3-④(請求項9)及び同(請求項11)は,同④(請求項5)その他2項の請求項(請求項6及び7)に従属する請求項であるところ,
上記(2)のとおり,NP-FV50は本件発明2-3-④(請求項5)を実施したものとはいえず,また原告はその他2項の請求項(請求項6及び7)に係る発明の実施を主張しない。
したがって,NP-FV50は本件発明2-3-④(請求項9)及び同(請求項11)を実施したものとはいえない。

(4)小括
以上のとおり,NP-FV50は本件発明2-3-①及び2-3-④(請求項5),同(請求項9)及び同(請求項11)を実施したものとはいえないから,この点についての原告の主張は理由がない。
8
争点(2)ア(エ)(本件発明2-4-①ないし2-4-⑤(請求項44)の実施の有無)について
(1)本件発明2-4-①について

構成要件aについて
本件発明2-4-①の構成要件aは「板状の集電体と,該板状の集電
体の片面もしくは両面に平均粒径0.5~60μmの粒子からなる主材35重量%以上を含有する電極材料層を有し,」というものである。
原告は,「主材35重量%以上」との計算に当たって炭素を考慮することはできないとした上,これを前提に計算すると,NP-FV50の電極材料層においてスズ(Sn)及びスズと合金化しているチタン(Ti),鉄(Fe),コバルト(Co)の重量の合計は55.97重量%であるから,35重量%を上回るなどと主張する。

しかし,前記5(1)イのとおり,NP-FV50の安全データシート(乙149)には,NP-FV50の負極につき「負極:コバルトスズ炭素(活物質)

ポリフッ化ビニリデン(バインダー)」として,炭素

が構成元素であることが記載されている。そして,構成要件aに「主材35重量%以上を含有する電極材料層」としか記載されていない以上,
「主材35重量%以上」か否かを判断するに当たり,構成元素である炭素を除外すべき合理的理由は見当たらない。
したがって,原告の上記主張は,その前提を欠き,採用することができない。NP-FV50において「主材35重量%以上を含有する」ことの立証はないというべきであり,NP-FV50が構成要件aを充足
しているものとは認められない。

構成要件cについて
本件発明2-4-①の構成要件cは「上記電極材料層における主材が,結晶子の大きさが10~50nmの範囲にある金属スズ又はスズ合金か
ら構成される材料からなり,」というものである。
しかるに,前記5(1)において説示したとおり,NP-FVの負極活物質である「コバルトスズ炭素」は「合金」ではなく,「金属スズ」でもない。
したがって,NP-FV50は構成要件cを充足しない。

(2)本件発明2-4-②(請求項1),同2-4-②(請求項40),同2-4-③,同2-4-④,同2-4-⑤(請求項1)及び同2-4-⑤(請求
項44)について

上記(1)アのとおり,「主材35重量%以上を含有する」ことの立証がない以上,NP-FVは本件発明2-4-②(請求項1)の構成要件b,同2-4-②(請求項40)の構成要件c,同2-4-③の構成要件b,同2-4-④の構成要件b,同2-4-⑤(請求項1)の構成要件b及
び同2-4-⑤(請求項44)の構成要件cをいずれも充足しない。イ
また,上記(1)イのとおり,NP-FV50の負極活物質である「コバルトスズ炭素」は「合金」ではなく,「金属スズ」でもない以上,NP-FV50は本件発明2-4-③の構成要件dを充足しない。
(3)小括

以上のとおり,NP-FV50は本件発明2-4-①ないし2-4-⑤(請求項44)のいずれも実施したものとはいえないから,この点についての原告の主張は理由がない。
9
争点(2)ア(オ)(本件発明2-5-①(請求項1)ないし2-5-⑦の実施の有無)について
(1)本件発明2-5-①(請求項1)について

構成要件aについて
本件発明2-5-①(請求項1)の構成要件aは「非化学量論比組成の非晶質Sn・A・X合金を主成分とし,」というものである。
しかるに,前記5(1)において説示したとおり,NP-FV50の負極
活物質である「コバルトスズ炭素」は「合金」ではない。
したがって,NP-FV50は構成要件aを充足しない。

構成要件eについて
(ア)本件発明2-5-①(請求項1)の構成要件eは「また,上記式の各
原子の原子数において,Sn/(Sn+A+X)=20~80原子%の関係を持つ。」というものであり,このうち「A」及び「X」について
は構成要件bに「(上記式中,Aは,遷移金属の少なくとも一種を示し,Xは,O,F,N,Mg,Ba,Sr,Ca,La,Ce,Si,Ge,C,P,B,Bi,Sb,Al,In及びZnから成る群から選ばれた少なくとも一種を示す。ただし,Xは,含有されていなくてもよい。」と規定されている。
(イ)原告は,NP-FV50におけるスズ(Sn)の原子%(構成要件eにいう「Sn/(Sn+A+X)」)は48.7%であり,「20~80原子%」の範囲内にあると主張する。
しかし,原告は上記計算をするに当たり,炭素を分母に含めずに計算
しているところ(甲21報告書報告書別紙11頁),ソニーのプレスリリース(甲5の1,2)や甲23の1報告書(29頁)によれば,「Nexelion」の負極材を構成する粒子には炭素が含まれているのであって,スズの原子%を計算するに当たって炭素を除外すべき合理的理由はないというべきである。

そして,原告は,炭素を分母に含めて計算した場合になおスズの原子%が「20~80原子%」の範囲内にあることを立証しない。かえって,乙6報告書によれば,NP-FV50の負極活物質の組成を測定したところ,6か所の測定点の全てにおいて,スズの割合は20原子%以下となっているというのである。

したがって,NP-FV50は構成要件eを充足しない。
(ウ)原告の主張に対する判断
この点に関して原告は,炭素はスズ合金を構成する元素ではないから,上記計算の際に炭素を含まなくとも問題はないなどと主張する。
しかし,ソニーの従業員ら作成の甲65論文においては,「Nexe
lion」の負極材料はスズとコバルトと炭素が化学的に結合したものであり,炭素が負極材料としての化合物を構成する元素であるとされて
いる。
したがって,原告の上記主張は採用することができない。

小括
以上によれば,その余の点について判断するまでもなく,NP-FV50は本件発明2-5-1①(請求項1)を実施したものとはいえない。
(2)本件発明2-5-①(請求項2)ないし2-5-⑦についてア
上記(1)アのとおり,NP-FVの負極活物質である「コバルトスズ炭素」は「合金」ではない以上,NP-FVは本件発明2-5-①(請求項2)ないし2-5-⑦のそれぞれの構成要件aをいずれも充足しない。

また,上記(1)イのとおり,NP-FVの負極活物質におけるスズの原子%が「20~80原子%」の範囲内にあるとはいえない以上,本件発明2-5-①(請求項2)の構成要件c,同2-5-②の構成要件d,同2-5-③の構成要件e,同2-5-④の構成要件c,同2-5-⑤の構成要件e,同2-5-⑥(請求項1)の構成要件d,同2-5-⑥(請求項16)の請求項d及び同2-5-⑦の構成要件dをいずれも充
足しない。
(3)小括
以上のとおり,NP-FV50は本件発明2-5-①(請求項1)ないし2-5-⑦のいずれも実施したものとはいえないから,この点についての原告の主張は理由がない。

争点(2)イ(オ)(本件発明2-2-②の乙106発明に対する技術的優位性欠如の有無)について
(1)乙106発明の意義
乙106公報には,以下の記載がある。


特許請求の範囲
・「リチウムの吸蔵放出が可能な金属を主体とする金属粉末またはその
リチウム合金粉末と,ニッケル,チタン,ステンレス,銅,鉄などのリチウムを吸蔵しない金属の粉末または繊維との混合物を用いた負極板を備えたことを特徴とする有機電解質電池。」

産業上の利用分野
・「本発明は,有機電解質電池に関する。」


従来の技術およびその課題
・「有機電解質電池は,金属リチウムまたはリチウムアルミニウム合金もしくはリチウム鉛合金などの箔または板からなる負極を用いたものが多い。
これに対して,アルミニウム,ビスマス,シリコン,ボロンおよび鉛
などのリチウムの吸蔵放出が可能な金属の粉末またはこれらのリチウム合金の粉末を負極に用いたものもある。粉末負極板を用いた場合には,負極の作用面積が増大するので電池性能の向上が期待できる。
しかし,発明者は,粉末負極板を用いた有機電解質電池について詳しく検討した結果,この電池が充電電気量に比して放電電気量が少ないと
いう問題点があることを見いだした。」

課題を解決するための手段
・「本発明は,リチウムの吸蔵放出が可能な金属を主体とする金属粉末またはそのリチウム合金粉末と,ニッケル,チタン,ステンレス,銅,鉄などのリチウムを吸蔵しない金属の粉末または繊維との混合物を用い
た負極板を備えたことを特徴とする有機電解質電池を用いて前記課題を解決するものである。」

作用
・「発明者は,粉末負極板の放電利用率が低い原因について検討した結
果つぎの現象を見いだした。すなわち,粉末負極板は,充電によってリチウムを吸蔵すると粉末粒子が著しく体積膨張して電極の孔をつぶす結
果,電極内部への電解液の拡散か困難になる。その後,放電しても一旦膨張した粉末粒子の体積はほとんど収縮しないので電解液の拡散は阻害されたままとなり電極内部に吸蔵されたリチウムは放電が困難となる。このことが放電利用率が低い最大の原因と考えられる。したがって,粉末電極の放電利用率を向上させるには,電極の多孔度を維持することが
重要である。
そこで,発明者は,粉末電極の多孔度を維持するためにリチウムを吸蔵しないニッケル,チタン,ステンレス,銅,鉄などの金属粉末を電極に添加した。
その結果,後の実施例に示すように電池の放電容量を著しく向上させ
ることができた。
なお,電極の電子伝導性を損なわないためには金属粉末なと電子伝導性に優れた添加物を用いた方がよい。」

実施例
・「以下,本発明を好適な実施例を用いて説明する。実施例では,アルミニウム合金についてだけ述べているが,アルミニウムに代えてボロン,シリコンおよび鉛などのリチウムを吸蔵できるその他の金属を用いてもよい。
第1図のようなボタン型有機電解液電池を下記の要領で試作した。7
0wt%のLiCoO2,20wt%のアセチレンブラックおよび10wt%のポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を混合して正極合剤とした。そして,この正極合剤を0.50g採集して,325meshのステンレス製金網に包み込んで,径が12mmで厚さが2.1mmの正極板ペレット(1)を試作した。この正極板ペレットの放電容量は,
0.5モルのリチウムが吸蔵放出されるとした場合に約50mAhである。

Al(94wt%)-Bi(5wt%)-Mn(1wt%)合金をガスアトマイズ法によって平均粒径が8ミクロンの粉末に加工した。そして,このアルミニウム合金粉末とINCO社製のTYPE255ニッケル粉末とを重量比2:1で混合し,0.28g採集して325meshのステンレス金網に包み込んで径が10mmで厚さが1.9mmの負極
板ペレット(2)を試作した。
葉脈状の無孔部と,孔が3次元的に配列した有孔部とを有する平均厚さが23ミクロンのポリエチレン製微孔膜を直径14mmに打ち抜いて微孔性セパレーター(3)を試作した。また,ポリプロピレンの不織布を12mmに打ち抜いて平均厚さが0.2mmの不織布セパレーター
(4)を試作した。これらに1.0M過塩素酸リチウム/エチレンカーボネート+アセトニトリル電解液を真空含浸したのち,耐蝕性ステンレス鋼板製の正極缶(5),負極缶(6),およびポリプロピレン製の絶縁ガスケット(7)からなる電池ケースに収納して径が15.4mmで厚さが4.8mmの本発明のボタン型有機電解質電池(A)を試作した。
また,前記Ni粉末の代わりにFe,CuおよびTiの混合粉末を用いた以外は,前記(A)電池と同様の構成を有する本発明の有機電解質電池(B)を試作した。
また,前記Ni粉末の代わりにSUS繊維(φ0.05mm,長さ0.3mm)を用いた以外は,前記(A)電池と同様の構成を有する本発明
の有機電解質電池(C)を試作した。
つぎに,Al(94wt%)-Bi(5wt%)-Mn(1wt%)合金粉末のみによって負極が構成されている以外は,前記(A)電池と同様の構成を有する比較のための有機電解質電池(D)を試作した。」キ
第1図

(2)本件発明2-2-②と乙106発明との対比ア
構成要件aについて
乙106発明は,乙106公報の「従来の技術およびその課題」に「発明者は,・・・この電池が充電電気量に比して放電電気量が少ないという問題点があることを見いだした」と記載されているように,再充
電可能な電池についてのものである。
また,乙106発明は,乙106公報の特許請求の範囲に「リチウムの吸蔵放出が可能な金属を主体とする金属粉末またはそのリチウム合金粉末と,ニッケル,チタン,ステンレス,銅,鉄などのリチウムを吸蔵しない金属の粉末または繊維との混合物を用いた負極板を備えたことを
特徴とする有機電解質電池」と記載されているように,リチウム電池に関する発明である。
したがって,本件発明2-2-②の構成要件aは,乙106公報に開示されている。

構成要件bについて
乙106公報には,「Al(94wt%)-Bi(5wt%)-Mn(1wt%)合金をガスアトマイズ法によって平均粒径が8ミクロンの粉末に加工した。そして,このアルミニウム合金粉末とINCO社製のTYPE255ニッケル粉末とを重量比2:1で混合し,0.28g採
集して325meshのステンレス金網に包み込んで径が10mmで厚さが1.9mmの負極板ペレット(2)を試作した」と記載されている。
上記記載に証拠(甲21の1・別紙8,10頁,乙107)を併せ考慮すると,乙106公報には,負極が,「充電時に生成されるリチウムと合金化できない第1の金属を含む集電体」である「ステンレス金網」と,集電体上の層が「充電時に生成されるリチウムと合金化できない第1の金属」である「ニッケル」と,「充電時に生成されるリチウムと合
金化できる第2の金属」である「Al(アルミニウム)」から構成されていることが開示されているというべきである。
したがって,本件発明2-2-②の構成要件bは乙106公報に開示されている。

構成要件cについて
上記(1)によれば,乙106公報には,「充電時に生成されるリチウムと合金化できない第1の金属を含む集電体」である「ステンレス金網」及び「充電時に生成されるリチウムと合金化できない第1の金属」である「ニッケル」が開示されている。
したがって,本件発明2-2-②の構成要件cは乙106公報に開示
されている。

構成要件dについて
上記(1)によれば,乙106公報には,「充電時に生成されるリチウムと合金化できる第2の金属」である「Al(アルミニウム)」が開示されている。

したがって,本件発明2-2-②の構成要件dは乙106公報に開示されている。

構成要件eについて
乙106公報に開示されている「負極板ペレット」は,その原料とし
てリチウムを含んでおらず,最初の充電前にリチウムを含まない。したがって,本件発明2-2-②の構成要件eは乙106公報に開示
されている。

小括
以上によれば,本件発明2-2-②の構成要件は全て先行技術文献である乙106公報に開示されていることになる。

(3)原告の主張に対する判断

構成要件aについて
この点に関して原告は,構成要件aは発明の前提事実となる構成要件を示すにすぎないなどと主張する。
しかし,原告の上記主張は,構成要件aが乙106公報に開示されていることまでを否定するものではなく,上記(2)の判断を左右しない。

構成要件bについて
(ア)原告は,乙106公報には「ステンレス金網」が「集電体」として用いられていることの記載はなく,「ステンレス金網」の材料や構成元素も立証されていないなどと主張する。

しかし,本件発明1-1の明細書(本件明細書等1-1)の段落【0043】及び【0046】の記載によれば,電極において,集電体が「充電放電時の電子を効率よく伝導する」機能を有しており,「負極活物質が粉末状でそのままでは負極を形成することが困難な場合には,粉末状の負極活物質を有機高分子などの結着剤で集電体上に結着させて負
極を形成すれば良い」こと,集電体の材質として「ステンレススチール」を用いること,集電体の形状として「メッシュ状」のものを用いることがいずれも当業者の技術常識であると認められる。
したがって,「負極板ペレット」の中でステンレス金網が集電体として用いられていることは,当業者の常識に照らして明白というべきであ
る。
また,「ステンレス」は,「鉄(Fe)を主成分(50%以上)とし,
クロム(Cr)を10.5%以上含むさびにくい合金」であるから(乙164),乙106公報の「ステンレス金網」は,リチウムと合金化しない金属である鉄(鉄がリチウムと合金化しないことは,原告も自認している。)を含んでいることになる。
したがって,原告の上記主張は採用することができない。

(イ)原告は,仮に乙106公報における「ステンレス金網」が「集電体」として用いられるものであったとしても,乙106公報の実施例においては,リチウム合金を作る金属元素であるアルミニウムが,セパレータと接して正極と最も近くなり,充電によりリチウムのデンドライト成長が起きやすくなるから,およそ実用に耐えないのであって,乙106発
明と本件発明2-2-②とは技術的意義が全く異なるなどと主張する。しかし,乙106公報では,「アルミニウム合金粉末と・・・ニッケル粉末とを・・・混合し,・・・採集して・・・ステンレス金網に包み込んで」負極としているのであるから,正極と最も近くなるのはアルミニウムではなくステンレス金網である。また,本件発明2-2-②は
「リチウムと合金を作る金属元素」が正極と最も近くなる負極表面に存在してはならないことを要件としているわけではない。
したがって,原告の上記主張は採用することができない。

構成要件c及びdについて
原告は,乙106公報の実施例に「ニッケル」及び「Al(アルミニウム)」が開示されていたとしても,これは,本件発明2-2-②の構成要件c及びdにおいて列挙された金属元素のうち一つを開示したものにすぎず,構成要件c及びdが開示されたことにはならないと主張する。しかし,一般に,選択肢のうち一つのみを,その選択肢に係る発明特
定事項と仮定したときの請求項に係る発明と,引用発明との対比の結果,両者に相違点がない場合は,当該請求項に係る発明は引用発明に開示さ
れているものというべきである(乙165参照)。
したがって,原告の上記主張は採用することができない。
(4)小括
以上によれば,本件発明2-2-②は出願時点において乙106公報により既に知られている技術にすぎず,乙106発明と実質的に同一の発明と認
められるのであって,本件発明2-2-②に独自の技術的意義はなく,発明の価値は皆無又は非常に小さいものといわざるを得ない。
そうすると,本件発明2-2-②により被告が受けるべき利益も皆無又は極めて小さいといわざるを得ず,仮に本件発明2-2-②によって被告に何らかの受けるべき利益が生じているとしても,被告が原告に対して支払うべ
き相当対価の額が既払額を超えるものと認めることはできない。
争点(2)イ(カ)(本件発明2-2-④の乙106発明に対する技術的優位性欠如の有無)について
(1)乙106発明の意義
乙106発明の意義は,上記10(1)のとおりである。

(2)本件発明2-2-④と乙106発明との対比ア
構成要件aについて
乙106公報には,「Al(94wt%)-Bi(5wt%)-Mn(1wt%)合金をガスアトマイズ法によって平均粒径が8ミクロンの
粉末に加工した。そして,このアルミニウム合金粉末とINCO社製のTYPE255ニッケル粉末とを重量比2:1で混合し,0.28g採集して325meshのステンレス金網に包み込んで径が10mmで厚さが1.9mmの負極板ペレット(2)を試作した」と記載されている(乙106公報2頁右上欄)。

上記記載に証拠(乙107)を併せ考慮すると,乙106公報には,負極が,「鉄」及び「クロム」を含む「集電体」と,「ニッケル」及び
「Al(アルミニウム)」を含有する「集電体上の層」が開示されているといえる。
したがって,本件発明2-2-④の構成要件aは乙106公報に開示されている。

構成要件bについて
乙106公報の第1図には,正極である「正極板ペレット(1)」と負極である「負極板ペレット(2)」とがセパレータを介して対向配置されているボタン型有機電解質電池が記載されている(乙106公報3頁)。
また,乙106公報には,正極,負極,セパレータに「1.0M過塩
素酸リチウム/エチレンカーボネート+アセトニトリル電解液を真空含浸した」ことが記載されている(乙106公報2頁左下欄)。
さらに,乙106公報には,「アルミニウム合金粉末と・・・ニッケル粉末とを重量比2:1で混合し・・・負極板ペレット(2)を試作した」と記載されている(乙106公報2頁右上欄)。「アルミニウム合
金粉末」と「ニッケル粉末」とは「重量比2:1で混合」されているから,「負極板ペレット(2)」においてニッケルは均一に存在しているものというべきである。
したがって,本件発明2-2-④の構成要件bは乙106公報に開示されている。


構成要件cについて
乙106公報の第1図には,正極である「正極板ペレット(1)」と負極である「負極板ペレット(2)」とがセパレータである「微孔性セパレーター(3)」及び「不織布セパレーター(4)」を介して対向配
置されているボタン型有機電解質電池が記載されている(乙106公報3頁)。

また,乙106公報の2頁には,正極,負極,セパレータに「1.0M過塩素酸リチウム/エチレンカーボネート+アセトニトリル電解液を真空含浸した」ことが記載されている。
さらに,乙106公報の「従来の技術およびその課題」における「発明者は,・・・この電池が充電電気量に比して放電電気量が少ないとい
う問題点があることを見いだした」との記載から,乙106発明は再充電可能な電池についての発明であるといえる(乙106公報1頁右欄)。したがって,本件発明2-2-④の構成要件cは乙106公報に開示されている。

小括
以上のとおり,本件発明2-2-④の構成要件aないしcは,全て先行技術文献である乙106公報に開示されていることになる。

(3)原告の主張に対する判断

構成要件aについて
この点に関して原告は,①乙106公報における「ステンレス金網」
が構成要件aの「集電体」として用いられたものなのか明らかではない,②乙106公報で開示されているのは「ニッケル」及び「アルミニウム」のみであるから,構成要件aに列挙された元素全てが開示されていることにはならない,③乙106発明と本件発明2-2-④とは技術的意義が全く異なるなどと主張する。

しかし,上記①については上記10(2)イ及び(3)イ(ア)で説示したところに照らし,上記②については上記10(3)ウで説示したところに照らし,上記③については上記10(3)イ(イ)で説示したところに照らし,いずれも採用することができない。

構成要件b及びcについて
原告は,①構成要件bの「使用時に負極末端に接続さ」れること及び
構成要件cの「前記負極末端が電気的に前記負極と接続され」ることは乙106公報に開示されていない,②乙106公報の実施例がなにゆえ「ニッケルは均一に存在していること」になるのか明らかでないなどと主張する。
しかし,上記①については,乙106公報記載の「負極板ペレット
(2)」はアルミニウム混合粉末とニッケル粉末との混合物をステンレス金網で包み込んだものであって,「使用時に負極末端に接続さ」れ,「前記負極末端が電気的に前記負極と接続され」ることは明らかというべきである。また,上記②については,「負極板ペレット(2)」とはアルミニウム合金粉末とニッケル粉末とを重量比2:1で混合して試作
されたことから明らかというべきである。
したがって,原告の上記主張はいずれも採用することができない。(4)小括
以上によれば,本件発明2-2-④は出願時点において乙106公報により既に知られている技術にすぎず,乙106発明と実質的に同一の発明と認
められるのであって,本件発明2-2-④に独自の技術的意義はなく,発明の価値は皆無又は非常に小さいものといわざるを得ない。
そうすると,本件発明2-2-④により被告が受けるべき利益も皆無又は極めて小さいといわざるを得ず,仮に本件発明2-2-④によって被告に何らかの受けるべき利益が生じているとしても,被告が原告に対して支払うべ
き相当対価の額が既払額を超えるものと認めることはできない。
争点(2)イ(ク)(本件発明2-3-②(請求項2)及び同(請求項9)の乙11発明に対する技術的優位性欠如の有無)について
(1)乙11発明の意義
乙11公報には,以下の記載がある。


発明の属する技術分野

・「本発明は,リチウムイオンの吸蔵(挿入)・放出反応を利用した非水系二次電池に関するものである。」(段落【0001】)

課題を解決するための手段
・「本発明は,リチウム含有遷移金属化合物である正極活物質,導電剤及び結着剤を含有する正極混合物を含有する層を有するシート状正極,
リチウムイオンを吸蔵・放出可能な負極材料,導電剤及び結着剤を含有する負極混合物を含有する層を有するシート状負極,及びリチウム塩を含む非水電解質よりなる非水二次電池において,該負極シートが,有機溶剤に分散させてなる分散液を集電体上に塗布,乾燥することにより得られたものであることを特徴とする非水二次電池にある。」(段落【0
007】)

発明の実施の形態
・「本発明に用いられる負極材料はリチウムを吸蔵・放出可能な酸化物またはカルコゲン化物である。中でも該負極材料が,周期律表13族,
14族,15族の元素から選ばれる少なくとも一種の元素を主体とする酸化物またはカルコゲン化物であることが好ましい。さらには該負極材料がPb,Sn,GeまたはSiから選ばれる少なくとも一種の元素を主体とする酸化物またはカルコゲン化物であることが好ましい。」(段落【0017】)

・「例えば,Ga2O3,SiO,GeO,GeO2,SnO,SnO,PbO,PbO2,Pb2O3,Pb2O4,Pb3O4,Sb2O
,Sb2O4,Sb2O5,Bi2O3,Bi2O4,Bi2O5,Sn
SiO3,GeS,GeS2,SnS,SnS2,PbS,PbS2,Sb2S3,Sb2S5,SnSiS3などが挙げられる。又これらは,酸化リチウムとの複合酸化物,例えばLi2GeO3,Li2SnO2であってもよい。」(段落【0018】)

・「また,これらの化合物に遷移金属が含まれていてもよく,例えばSnMnO2,SnMnO3,SnTiO2,SnTiO3,SnWO3,SnWO4,SnVO3.5,SnVO4.5,SnFeO2.5,SnFeO3.5
,SnCoO2,SnCoO3,SnNiO2,SnNiO3,Sn
CuO2,SnCuO3,SnMoO3,SnMoO4,SnMoO5,SnAgO1.5,SnAg2.5,GeMnO2,GeMnO3,GeTiO2,GeTiO3,GeWO3,GeWO4,GeVO3.5,GeVO4.5

,GeFeO2.5,GeFeO3.5,GeCoO2,GeCoO3,
GeNiO2,GeNiO3,GeCuO2,GeCuO3,GeMoO3,GeMoO4,GeMoO5,GeAgO1.5,GeAg2.5,SiMnO2,SiMnO3,SiTiO2,SiTiO3,SiWO3,SiWO4,SiVO3.5,SiVO4.5,SiFeO2.5,SiFeO3.5

,SiCoO2,SiCoO3,SiNiO2,SiNiO3,Si
CuO2,SiCuO3,SiMoO3,SiMoO4,SiMoO5,SiAgO1.5,SiAg2.5,PbnMnO2,PbMnO3,PbTiO2,PbTiO3,PbWO3,PbWO4,PbVO3.5,PbVO4.5,PbFeO2.5,PbFeO3.5,PbCoO2,PbCoO3,PbNiO2,PbNiO3,PbCuO2,PbCuO3,PbMoO,PbMoO4,PbMoO5,PbAgO1.5,PbAg2.5等を挙
げることができる。又これらは,リチウムとの複合酸化物であっても良い。」(段落【0019】)
・「上記の複合酸化物または複合カルコゲン化物は電池組み込み時に主として非晶質であることが好ましい。ここで言う主として非晶質とはCuKα線を用いたX線回折法で2θ値で20°から40°に頂点を有す
るブロードな散乱帯を有する物であり,結晶性の回折線を有してもよい。好ましくは2θ値で40°以上70°以下に見られる結晶性の回折線の
内最も強い強度が,2θ値で20°以上40°以下に見られるブロードな散乱帯の頂点の回折線強度の500倍以下であることが好ましく,さらに好ましくは100倍以下であり,特に好ましくは5倍以下であり,最も好ましくは結晶性の回折線を有さないことである。」(段落【0020】)

・「本発明においてはSnを主体とする非晶質酸化物がさらに好ましく,なかでも一般式(1)
SnM1aM2bOs

(1)

(式中,M1は,Al,B,P,Ge,Siから選ばれる少なくとも一種以上の元素,M2は周期律表第1族元素,第2族元素,第3族元素,
ハロゲン元素から選ばれる少なくとも一種以上の元素を表し,aは0.2以上2以下の数字,bは0.01以上1以下の数字で0.2<a+b<2,sは1以上6以下の数字を表す。)で示される非晶質酸化物であることが好ましい。」(段落【0021】)
(2)本件発明2-3-②(請求項2)及び同(請求項9)と乙11発明との対比ア
本件発明2-3-②(請求項2)の構成要件aについて乙11公報の段落【0007】の記載からすれば,本件発明2-3-②の請求項2の構成要件aは,乙11公報に開示されているといえる。

本件発明2-3-②(請求項2)の構成要件bについて乙11公報の段落【0017】には「本発明に用いられる負極材料はリチウムを吸蔵・放出可能な酸化物またはカルコゲン化物である」と記載されており,同段落【0020】には「上記の複合酸化物または複合カルコゲン化物は電池組み込み時に主として非晶質であることが好まし
い」と記載されていて,非晶質の負極材料を用いることが開示されている。

したがって,本件発明2-3-②(請求項2)の構成要件bは,乙11公報に開示されている。

本件発明2-3-②(請求項2)の構成要件cについて乙11公報の段落【0020】には,「ここで言う主として非晶質とはCuKα線を用いたX線回折法で2θ値で20°から40°に頂点を有
するブロードな散乱帯を有する物であ」り,「最も好ましくは結晶性の回折線を有さないことである」と記載されている。この場合には,X線回折法で2θ値で20度から40度に存在するピークが最大回折強度のピークであり,また,回折線を有さない場合には,ピークがブロードになるため,半価幅は0.48度より大きくなるといえる。

したがって,本件発明2-3-②(請求項2)の構成要件cは,乙11公報に開示されている。

本件発明2-3-②(請求項2)の構成要件dについて乙11公報の段落【0019】には,「これらの化合物に遷移金属が
含まれていてもよ」いとして,負極材料の例が記載されており,その中で,スズ化合物である「SnMnO2」,「SnMnO3」,「SnFeO2.5」,「SnFeO3.5」,「SnCoO2」,「SnCoO3」,「SnNiO2」,「SnNiO3」が記載されている。Coはコバルト,Niはニッケル,Mnはマンガン,Feは鉄であり,また,スズ(Sn)
は「リチウム電池の充電/放電反応時負極のリチウム以外の物質に電気化学的に不活性で貴な標準電極電位を有する少なくとも一つの金属」に該当するから,上記のスズ化合物である「SnMnO2」,「SnMnO3」,「SnFeO2.5」,「SnFeO3.5」,「SnCoO2」,
「SnCoO3」,「SnNiO2」,「SnNiO3」は,構成要件dの複合体に該当する。
したがって,本件発明2-3-②(請求項2)の構成要件dは,乙1
1公報に開示されている。

本件発明2-3-②(請求項9)の構成要件aについて乙11公報の段落【0017】には,「該負極材料がPb,Sn,GeまたはSiから選ばれる少なくとも一種の元素を主体とする酸化物またはカルコゲン化物であることが好ましい。」と記載されている。
したがって,本件発明2-3-②の(請求項9)の構成要件aのうち,スズ酸化物については,乙11公報に開示されている。

小括
以上のとおり,本件発明2-3-②(請求項2)の構成要件aないしd及び同(請求項9)の構成要件aは,全て先行技術文献である乙11
公報に開示されていることになる。
(3)原告の主張に対する判断

本件発明2-3-②(請求項2)の構成要件aについてこの点に関して原告は,構成要件aはリチウムイオン二次電池全般に共通する特徴にすぎないなどと主張する。

しかし,原告の上記主張は,本件発明2-3-②(請求項2)の構成要件aが乙11公報に開示されていることまでを否定するものではなく,上記(2)の判断を左右しない。

本件発明2-3-②(請求項2)の構成要件b,d及び本件発明2-3-②(請求項9)の構成要件aについて
原告は,本件発明2-3-②(請求項2)の負極材料は「金属」であるのに対し,乙11発明で負極材料として使用されるのは「酸化物」又は「カルコゲン化物」であって「金属」ではないため,本件発明2-3-②(請求項2)の構成要件b,d及び本件発明2-3-②(請求項9)
の構成要件aは乙11公報に開示されていないなどと主張する。
しかし,本件発明2-3-②(請求項2)の構成要件dは「前記活物
質が,コバルト,ニッケル,マンガン,鉄から成る群から選択される少なくとも一つの元素(ⅰ)と,・・・有する少なくとも一つの金属(ⅱ)から成る複合体」と記載されており,そこに摘示されているのはあくまでも「複合体」であって,「金属」ではない。原告は,上記(ⅰ)及び(ⅱ)がいずれも金属であるなどとも主張するが,構成要件dの原文は
「amaterialwhichcontains・・・」(・・・を含む)複合体というものであり,複合体の中に金属である上記(ⅰ)及び(ⅱ)が含まれていれば足りるのであって,複合体自体が金属であることまでは要求されていない。
したがって,原告の上記主張は採用することができない。


本件発明2-3-②(請求項2)の構成要件cについて原告は,本件発明2-3-②(請求項2)においては,X線回折チャートにおけるピークの半価幅が「0.48度以上」であるという下限値を示していることに技術的意義があるにもかかわらず,乙11公報には
この「0.48度以上」という下限値が提示されていないなどと主張する。
しかし,乙11公報の段落【0020】の場合に半価幅が0.48度より大きくなることは上記(2)ウ記載のとおりであって,この「0.48度」という下限値が数値として明示されていないからといって,上記判
断に影響を及ぼすものではない。
したがって,原告の上記主張は採用することができない。
(4)小括
以上によれば,本件発明2-3-②(請求項2)及び同(請求項9)は出願時点において乙11公報により既に知られている技術にすぎず,乙11発
明と実質的に同一の発明と認められるのであって,本件発明2-3-②(請求項2)及び同(請求項9)に独自の技術的意義はなく,発明の価値は皆無
又は非常に小さいものといわざるを得ない。
そうすると,本件発明2-3-②(請求項2)及び同(請求項9)により被告が受けるべき利益も皆無又は極めて小さいといわざるを得ず,仮に本件発明2-3-②(請求項2)及び同(請求項9)によって被告に何らかの受けるべき利益が生じているとしても,被告が原告に対して支払うべき相当対
価の額が既払額を超えるものと認めることはできない。
争点(2)イ(ケ)(本件発明2-3-③(請求項1),同(請求項6)及び同(請求項7)の乙11発明に対する技術的優位性欠如の有無)について(1)乙11発明の意義
乙11発明の意義は,上記12(1)のとおりである。

(2)本件発明2-3-③(請求項1),同(請求項6)及び同(請求項7)と乙11発明との対比

本件発明2-3-③(請求項1)の構成要件aについて乙11公報の【0007】には,「本発明は,リチウム含有遷移金属化合物である正極活物質,導電剤及び結着剤を含有する正極混合物を含
有する層を有するシート状正極,リチウムイオンを吸蔵・放出可能な負極材料,導電剤及び結着剤を含有する負極混合物を含有する層を有するシート状負極,及びリチウム塩を含む非水電解質よりなる非水二次電池において,該負極シートが,有機溶剤に分散させてなる分散液を集電体上に塗布,乾燥することにより得られたものであることを特徴とする非
水二次電池」と記載されており,非晶質の負極材料を用いることが開示されている。
したがって,本件発明2-3-③(請求項1)の構成要件aは,乙11公報に開示されている。

本件発明2-3-③(請求項1)の構成要件bについて乙11公報の段落【0017】には,「本発明に用いられる負極材料
はリチウムを吸蔵・放出可能な酸化物またはカルコゲン化物である」と記載されており,同段落【0020】には,「上記の複合酸化物または複合カルコゲン化物は電池組み込み時に主として非晶質であることが好ましい」と記載されている。
したがって,本件発明2-3-③(請求項1)の構成要件bは,乙1
1公報に開示されている。

本件発明2-3-③(請求項1)の構成要件cについて乙11公報の段落【0020】には,「ここで言う主として非晶質とはCuKα線を用いたX線回折法で2θ値で20°から40°に頂点を有するブロードな散乱帯を有する物であ」り,「最も好ましくは結晶性の
回折線を有さないことである」と記載されている。この場合には,X線回折法で2θ値で20度から40度に存在するピークが最大回折強度のピークであり,また,回折線を有さない場合には,ピークがブロードになるため,半価幅は0.48度より大きくなるといえる(上記12(2)ウ参照)。

したがって,本件発明2-3-③(請求項1)の構成要件cは,乙11公報に開示されている。

本件発明2-3-③(請求項1)の構成要件dについて乙11公報の段落【0017】には,「該負極材料がPb,Sn,GeまたはSiから選ばれる少なくとも一種の元素を主体とする酸化物ま
たはカルコゲン化物であることが好ましい。」と記載されている。スズ(Sn)は,構成要件dの「リチウム電池の充電/放電時に利用される活物質のリチウム以外の物質に電気化学的に不活性である材料」に該当するから,本件発明2-3-③(請求項1)の構成要件dは,乙11公報に開示されている。


本件発明2-3-③(請求項6)の構成要件a及びbについて
上記(1)ないし(3)に加え,乙11公報の段落【0017】には,「該負極材料がPb,Sn,GeまたはSiから選ばれる少なくとも一種の元素を主体とする酸化物またはカルコゲン化物であることが好ましい。」と記載されている。
したがって,本件発明2-3-③の請求項6の構成要件a及びbは,
乙11公報に開示されている。

本件発明2-3-③(請求項7)の構成要件a及びbについて上記(1)ないし(3)に加え,乙11公報の段落【0019】には,「これらの化合物に遷移金属が含まれていてもよ」いとして,負極材料の例が記載されており,その中で,「SnTiO2」,「SnTiO3」,
「SnWO3」,「SnWO4」,「SnFeO2.5」,「SnFeO3.5」,「SnCoO2」,「SnCoO3」,「SnNiO2」,「SnN
iO3」,「SnCuO2」,「SnCuO3」,「SnMoO3」,「SnMoO4」,「SnMoO5」,「SnAgO1.5」,「SnAg2.5」が記載されている。

したがって,本件発明2-3-③(請求項7)の構成要件a及びbは,乙11公報に開示されている。

小括
以上のとおり,本件発明2-3-③(請求項1)の構成要件aないし
d,同(請求項6)の構成要件a及びb並びに同(請求項7)の構成要件a及びbは,全て先行技術文献である乙11公報に開示されていることになる。
(3)原告の主張に対する判断
この点に関して原告は,乙11発明の負極材料は「酸化物」または「カル
コゲン化物」であって金属ではないため,本件発明2-3-③(請求項1)の構成要件は乙11公報に開示されていないなどと主張する。

しかし,原告の上記主張は,上記12(3)イで説示したところに照らし,採用することができない。
(4)小括
以上によれば,本件発明2-3-③(請求項1),同(請求項6)及び同(請求項7)は出願時点において乙11公報により既に知られている技術に
すぎず,乙11発明と実質的に同一の発明と認められるのであって,本件発明2-3-③(請求項1),同(請求項6)及び同(請求項7)に独自の技術的意義はなく,発明の価値は皆無又は非常に小さいものといわざるを得ない。
そうすると,本件発明2-3-③(請求項1),同(請求項6)及び同
(請求項7)により被告が受けるべき利益も皆無又は極めて小さいといわざるを得ず,仮に本件発明2-3-③(請求項1),同(請求項6)及び同(請求項7)によって被告に何らかの受けるべき利益が生じているとしても,被告が原告に対して支払うべき相当対価の額が既払額を超えるものと認めることはできない。

争点(2)イ(サ)(本件発明2-3-⑤の乙11発明に対する技術的優位性欠如の有無)について
(1)本件発明2-3-⑤の構成要件は,本件発明2-3-②(請求項2)の構成要件と同じであるから,上記12で説示したところに照らし,本件発明2-
3-⑤の構成要件aないしdは,全て先行技術文献である乙11公報に開示されていることになる。
(2)以上によれば,本件発明2-3-⑤は出願時点において乙11公報により既に知られている技術にすぎず,乙11発明と実質的に同一の発明と認められるのであって,本件発明2-3-⑤に独自の技術的意義はなく,発明の価
値は皆無又は非常に小さいものといわざるを得ない。
そうすると,本件発明2-3-⑤により被告が受けるべき利益も皆無又は
極めて小さいといわざるを得ず,仮に本件発明2-3-⑤によって被告に何らかの受けるべき利益が生じているとしても,被告が原告に対して支払うべき相当対価の額が既払額を超えるものと認めることはできない。5
結論
以上によれば,本件発明1-1ないし1-5については,新規性を欠き,また公然実施されたものとして,技術的価値を欠くものであって,独占の利益を生じさせる発明とは認められない。
また,本件発明2-1-①,同2-1-②,同2-2-①,同2-2-③,同2-3-①,同2-3-④(請求項5),同2-3-④(請求項9),同2
-3-④(請求項11),同2-4-①ないし2-4-⑤(請求項44),同2-5-①(請求項1)ないし⑦については,いずれも実施されたものとは認めるに足りない。
さらに,本件発明2-2-②,同2-2-④,同2-3-②(請求項2),同2-3-②(請求項9),同2-3-③(請求項1),同2-3-③(請求
項6),同2-3-③(請求項7),同2-3-⑤については,いずれも被告が受けるべき利益が皆無又は極めて小さいといわざるを得ず,仮に何らかの受けるべき利益が生じているとしても,被告が原告に対して支払うべき相当対価の額が既払額を超えるものと認めることはできない。
よって,その余の点について判断するまでもなく,本訴請求は理由がないか
らこれを棄却することとし,主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第40部

裁判長裁判官
東海林保
裁判官

瀬孝
裁判官

遠山敦士
(別紙)
特許権目録1

1本件特許権1-1
(日本国)
特許番号

第3287732号

発明の名称

二次電池

出日
平成7年5月26日

出願公開日

平成8年2月20日

登録日
平成14年3月15日

発明者
原告,A,B,C


特許権者

被告

特許請求の範囲
【請求項1】
負極,セパレーター,正極,電解質と,電池ケースを有する二次電池において,前記負極の大きさが前記正極の大きさより大きく,前記負極面上に垂直に投影した前記正極の投影面が該負極面内にあり,正極エッジ先端から負極エッジ先端までの最短距離が,前記正極と前記負極との間の距離の10倍以上であることを特徴とする二次電池。

2本件特許権1-2
(米国特許)
特許番号

第6,596,432号

発明の名称

再充電可能な電池

出願日
平成7年5月30日

登録日
平成15年7月22日

発明者
特許権者

原告,A,B,C
被告

特許請求の範囲(訳文)
【請求項1】
負極,セパレータ,正極,非水電解質もしくは非水電解液,ハウジング(電池ケース),から成る再充電可能なリチウム電池が,コイン形,もしくは角形,または円筒形で,前記正極がリチウム含有の遷移金属酸化物で,前記負極と前記正極は前記セパレータを介して互いに対向し,対抗する面を持ち,負極面と正極面間はそれぞれの面に垂直な距離dで隔てられ,負極エッジから正極エッジの最短距離が前記dの10倍以上で,正極面の負極面への投影面が負極面内にあり,負極面積は正極面積より大きく,電極のエッジにかかる電界が小さくなるように,配置され,それによって(リチウムの)樹状突起の形成が阻害され,電池寿命が長くなる。
3本件特許権1-3
(欧州特許)
特許番号

第0690520号

発明の名称

再充電可能な電池


平成7年5月30日

願日
特許公開日

平成11年8月18日


原告,A,B,C

明者
特許権者

被告

特許請求の範囲(訳文)
【請求項1】
負極(100;301),セパレータ(105;307),正極(102;303)がハウジング(電池ケース)(108;306)内に設けられ,電解質あるいは電解液(104)を内包する再充電可能な電池(蓄電池)において,前記負極は,前記正極
と対向して配置され前記正極より大きな面積を有し,負極面に投影した正極面は負極面内にあり,負極エッジから正極エッジまでの最短距離(l)が,負極と正極間の距離(d)の5倍以上である。

4本件特許権1-4
(韓国特許)
特許番号

第0243830号

発明の名称

再充電式バッテリー

出願日
平成7年5月30日

登録日
平成11年11月18日

発明者
原告,A,B,C

特許権者

被告

特許請求の範囲(訳文)
【請求項1】
負極(anode),セパレータ,正極(cathode),電解質または電解液,およびハウジングを含む充電式電池(蓄電池)において,前記負極と前記正極は,セパレータを介して互いに対向するように位置して,前記負極は,上記の充電式電池が組み立てられた時にはリチウム元素を含有しない負極活物質を含み,前記負極と前記正極は,それぞれ対向するようにして平面を持ち,前記負極と前記正極は,負極面と正極面に対して垂直に測定された負極と正極間の距離(d)を有し,負極エッジと正極エッジとの間の最短距離が,前記距離(d)の5倍以上になるように配置され,および前記正極側を負極面上に垂直に投影して提供される正極面が負極面内にあり,前記負極は,正極よりも大きな面積を有することを特徴とする充電式電池。
5本件特許権1-5
(カナダ特許)

特許番号

第2150507号

発明の名称

再充電可能な電池


平成7年5月30日

願日
特許公開日

平成11年5月18日


原告,A,B,C

明者
特許権者

被告,C

特許請求の範囲(訳文)
【請求項1】
再充電可能なリチウム電池,再充電可能なニッケル-亜鉛電池,亜鉛-酸素電池,再充電可能な臭素-亜鉛電池からなる群から選択される二次電池は,負極,セパレータ,正極,電解質または電解液,およびハウジング,から成り,前記負極および前記正極は,電池内で互いに対向して距離を保って配置され,対向する負極面の面積は正極の面積より大きく,負極エッジの先端と正極エッジ先端間の距離は,負極と正極間の距離の5倍以上であり,正極面を負極面へ垂直に投影した正極面が負極面内にあるように,負極が正極より大きく構成され,それによって(リチウムの)樹状突起の形成が阻害され,電池寿命が長くなる。

(別紙)
特許権目録2

1本件特許権2-1-①
(日本特許)
特許番号

第3359164号

発明の名称

二次電池


平成6年10月19日

願日
出願公開日

平成8年5月17日

登録日
平成14年10月11日

発明者
原告,A,B,C

特許権者

被告

特許請求の範囲
【請求項1】
電池ケース内の電解質中にセパレータによって隔てられた正極と負極とを有する二次電池において,前記負極が少なくとも酸ともアルカリとも反応する両性金属と合金化した金属粉末で構成されており,該金属粉末の粒径が100μm以下であることを特徴とする二次電池。

2本件特許権2-1-②
(米国特許)
特許番号

第5,795,679号

発明の名称

合金粉を含有する電極を有するリチウム二次電池

出願日
平成7年10月17日

登録日
平成10年8月18日

発明者
原告,A,B,C

特許権者

被告

特許請求の範囲(訳文)
【請求項1】
ケースの中に含有されている電解質中にあるセパレータで分離されている負極と正極から成るリチウム二次電池において,負極が,少なくともアルミニウム,亜鉛,スズ,鉛,ガリウム,セリウム,ストロンチウムからなる群から選択される少なくとも一つの酸ともアルカリとも反応する両性金属と合金化した,ニッケル,コバルト,銅,チタン,鉄からなる群から選択される少なくとも一つの金属の少なくとも金属粉末から成り,充放電によりリチウム〔被告の主張する訳:リチウムイオン〕の酸化還元反応が起きる。

3本件特許権2-2-①
(日本特許)
特許番号

第3495814号

発明の名称

電池用電極及び該電極を有するリチウム二次電池

出日
平成7年5月26日

出願公開日

平成8年2月20日

登録日
平成15年11月21日

発明者
原告,A,B,C


特許権者

被告

特許請求の範囲
【請求項1】
負極,セパレーター,正極,電解質あるいは電解液を少なくとも有するリチウム二次電池において,負極が少なくとも充電時にリチウムと合金を作る金属元素と充電時にリチウムと合金を作らない金属元素を構成要素として有し,充電時にリチウムと合金を作らない金属部分から負極側の出力端子が引き出され,前記電解液と接し
正極と対向する負極表面の導電体部の粗さの(最大山から最深谷までの)最大高さRmaxの1/2と中心線平均粗さRaとの差が,負極表面正極表面間の距離の1/10以下であり,前記負極表面の導電体部の粗さに関して,測定長をL,測定長L当たりの山の数をnとする時,1+(4nRa/L)が1.05以上であることを特徴とするリチウム二次電池。

4本件特許権2-2-②
(米国特許)
特許番号

第6,051,340号

発明の名称

再充電可能なリチウム電池

出願日
平成9年4月11日

登録日
平成12年4月18日

発明者
原告,A,B,C

特許権者

被告

特許請求の範囲(訳文)
【請求項1】
負極を含む再充電可能なリチウム電池において,負極は,(a)充電時に生成されるリチウムと合金化できない第1の金属を含む集電体と,(b)充電時に生成されるリチウムと合金化できない第1の金属と充電時に生成されるリチウムと合金化できる第2の金属とを含む,前記集電体上の層とを含み,前記第1の金属は,ニッケル,チタン,銅,銀,金,白金,鉄,コバルト,クロム,タングステン,モリブデンの少なくとも一つからなる群より選択され,前記第2の金属は,アルミニウム,マグネシウム,カリウム,ナトリウム,カルシウム,ストロンチウム,バリウム,ケイ素,ゲルマニウム,スズ,鉛,インジウム,亜鉛の少なくとも一つからなる群より選択され,前記負極は最初の充電前にリチウムを含まない。

5本件特許権2-2-③
(欧州特許)
特許番号

第690517号

発明の名称

再充電可能なリチウム電池


平成7年5月26日

願日
特許公開日

平成15年10月1日


原告,A,B,C

明者
特許権者

被告

特許請求の範囲(訳文)
【請求項1】
初回の充電する前の作製された状態の再充電可能なリチウム電池は,少なくとも負極(202),セパレータ(205),正極(203),電解質(204)または電解液,前記負極(202)に電気的に接続された負極端子(206)から構成されている再充電可能なリチウム電池において,前記負極(202)と前記正極(203)は電解質(204)または電解液で電気的に接触しており,前記負極(202)は,(a)集電体(101,200)および(b)上記集電体と接している層(102,201)から成り,前記集電体(101,200)は,充電時にリチウムと合金形成不能な,ニッケル,チタン,銅,銀,金,白金,鉄,コバルト,クロム,タングステン,モリブデンからなるグループから選択される1種以上の金属から成り,前記負極(202)は前記層(102,201)の表面領域を有し,上記表面領域が電解質(204)または電解液と接触して前記正極(203)と対向している,前記負極端子(206)は前記集電体(101,200)から引き出され,前記正極(203)はリチウムを含有する正極活物質を含み,以下のことを特徴とする。前記層(102,201)は(i)充電時にリチウムと合金化ができない金属(106)と(ii)充電時にリチウムと合金化可能な金属から成る,
前記層(102,201)は前記金属(106)を含み,前記金属(106)はその表面に多く存在している,そして前記層(102,201)は充電が行われる前にはリチウムを含まない,
前記金属(106)は,ニッケル,チタン,銅,銀,金,白金,鉄,コバルト,クロム,タングステンから成るグループから選ばれる1種類以上の金属から成り,前記金属(ⅱ)は,アルミニウム,マグネシウム,カリウム,ナトリウム,カルシウム,ストロンチウム,バリウム,シリコン,ゲルマニウム,アンチモン,鉛,インジウム,亜鉛からなるグループから選択される1種類以上の金属から成る。
6本件特許権2-2-④
(韓国特許)
特許番号

第0199074号

発明の名称

再充電式リチウムバッテリー


平成7年5月30日

願日
出願公開日

平成7年12月28日

登録日
平成11年3月3日

発明者
原告,A,B,C

特許権者

被告

特許請求の範囲(訳文)
【請求項1】
負極は,(1)リチウムと合金化不可能な,ニッケル,チタン,銅,銀,金,白金,鉄,コバルト,クロム,タングステン,モリブデンからなる群から選ばれた1種以上の金属(a)を含む集電体と,(2)リチウムとの合金不可能な,ニッケル,チタン,銅,銀,金,白金,鉄,コバルト,クロム,タングステン,モリブデンからなる群から選ばれた1種以上の金属(a)と,リチウムとの合金可能でアルミニウム,マグネシウム,カリウム,ナトリウム,カルシウム,ストロンチウム,バリウ
ム,シリコン,ゲルマニウム,アンチモン(Sb),鉛,インジウム,亜鉛からなる群から選ばれた1種以上の金属(b)を含有する前記集電体上の層,から構成され,
前記層(2)は電解質または電解質溶液と接して,正極と対向し,使用時に負極末端に接続され,前記集電体(1)に隣接した部分を持つ表面領域を有し,前記表面領域と上記部分が金属(a)を含有することを特徴とする,
少なくとも負極,セパレータ,正極,および電解質または電解質溶液からなり,前記負極末端が電気的に前記負極と接続され,前記負極と正極の電解質または電解液と電気的に接する再充電可能なリチウム電池。

7本件特許権2-3-①
(日本特許)
特許番号

第3559720号

発明の名称

リチウム二次電池及びその製造方法


平成11年1月29日

願日
出願公開日

平成11年10月15日

登録日
平成16年5月28日

発明者
原告,B,D

特許権者

被告

特許請求の範囲
【請求項6】
少なくとも負極,正極,電解質からなり,リチウムイオンの酸化還元反応を充放電に利用した二次電池において,前記負極は負極活物質を有し,該負極活物質は,少なくとも,メカニカルグラインディング処理によってX線回折角度2θに対する回折線強度を取ったX線回折チャートにおけるピークが存在しない非晶質相を有するに至った炭素材料と銅,チタン,ニッケルから選択されるリチウム以外の物質に対して電気
化学的に不活性な材料との複合体,
あるいは,メカニカルグラインディング処理によってX線回折角度2θに対して最も強い回折強度が現れたピークの半価幅が0.48度以上を示す非晶質相を有するに至った炭素材料と銅,チタン,ニッケルから選択されるリチウム以外の物質に対して電気化学的に不活性な材料との複合体
を成分とすることを特徴とするリチウム二次電池。

8本件特許権2-3-②
(米国特許)
特許番号

第6,517,974号

発明の名称

リチウム二次電池とそのリチウム二次電池の製造方法

出願日
平成11年1月27日

登録日
平成15年2月11日

発明者
原告,B,D

特許権者

被告

特許請求の範囲(訳文)
【請求項2】
少なくとも負極,正極と電解質,から構成され,充放電でリチウムイオンの酸化還元反応を利用するリチウム二次電池において,前記負極が少なくとも非晶質相を持つ活物質を有し,前記活物質の,回折角2θ(シータ)に対する回折強度を示したⅩ線回折チャートでは最大回折強度のピークの半価幅が0.48度より狭くなく,前記活物質が,コバルト,ニッケル,マンガン,鉄から成る群から選択される少なくとも一つの元素(i)と,リチウム電池の充電/放電反応時負極のリチウム以外の物質に電気化学的に不活性で貴な標準電極電位を有する少なくとも一つの金属(ii),から成る複合体である。
【請求項9】

請求項2記載のリチウム二次電池において,貴な標準電極電位を有する少なくとも一つの金属は,コバルト,ニッケル,スズ,鉛,銀,銅,金から成るグループから選択される。

9本件特許権2-3-③
(米国特許)
特許番号

第6,569,568号

発明の名称

リチウム二次電池とそのリチウム二次電池の製造方法

出願日
平成13年11月14日

登録日
平成15年5月27日

発明者
原告,B,D

特許権者

被告

特許請求の範囲(訳文)
【請求項1】
〔原告による訳文〕
少なくとも負極,正極および電解質から成り,充電/放電でリチウムイオンの酸化/還元反応を利用するリチウム二次電池において,前記負極は,活物質として非晶質層を含有する材料から成る複合材料を有し,前記非晶質層を有する材料は,回折角2θ(シータ)に対する回折強度を示したⅩ線回折チャートにおいて最大回折強度のピークの半価幅が0.48度より狭くなく,非晶質層を有する金属,炭素,リチウム電池の充電/放電時に利用される活物質のリチウム以外の物質に電気化学的に不活性である材料,から選択される元素を少なくとも含む。
〔被告による訳文〕
「・・・非晶質層(相)を有する金属と炭素から選択された少なくとも一つと,リチウム電池の充電/放電時に利用される活物質のリチウム以外の物質に電気化学的に不活性である材料と,を含む。」

【請求項6】
請求項1に記載のリチウム二次電池において,前記負極を構成する材料は,非晶質相を有し,電気化学反応により生成されるリチウムと合金化する,アルミニウム,マグネシウム,鉛,カリウム,ナトリウム,カルシウム,ストロンチウム,バリウム,シリコン,ゲルマニウム,スズ,インジウムから選択される少なくとも一つの元素を含む金属材料を含有する。
【請求項7】
請求項1に記載のリチウム二次電池において,前記負極を構成する材料は非晶質相を有し,電気化学反応により生成されるリチウムと合金化しないニッケル,コバルト,チタン,銅,銀,金,タングステン,モリブデン,鉄,白金,クロム,から選択される少なくとも一つの元素を含む金属材料を含有する。

10本件特許権2-3-④
(欧州特許)
特許番号

第938147号

発明の名称

リチウム二次電池とそのリチウム二次電池の製造方法


平成11年1月28日

願日
特許公開日

平成18年9月6日


原告,B,D

明者
特許権者

被告

特許請求の範囲(訳文)
【請求項5】
〔原告による訳文〕
少なくとも負極,正極および電解質から構成され,充電/放電でリチウムイオンの酸化/還元反応を利用するリチウム二次電池において,前記負極は活物質として,少なくとも炭素と,非晶質相を有する金属と,リチウム電池の充放電で利用される活
物質がある電極中のリチウム以外に電気化学的に不活性な材料,のうち一つを含む結晶物質の混合物に物理的エネルギーを加えて形成される複合体を含有し,前記複合体は少なくとも非晶質相を有し,Ⅹ線回折における回折角2θ(シータ)に対する最大回折強度のピークの半価幅が0.48度より狭くない。
〔被告による訳文〕
・・・前記負極は,炭素と非晶質相を有する金属の少なくとも一つを含む結晶物質と,リチウム電池の充放電で利用される活物質がある電極中のリチウム以外に電気化学的に不活性な材料,との混合物に物理的エネルギーを加えて形成される複合体を含有する,・・・」
【請求項9】
請求項5~7のいずれか一項に記載の電池において,負極中の前記物質は非晶質相を有し,電気化学反応により析出リチウムと合金化する,アルミニウム,マグネシウム,鉛,カリウム,ナトリウム,カルシウム,ストロンチウム,バリウム,シリコン,ゲルマニウム,スズ,インジウムから選択される少なくとも一つの金属元素を含有する。
【請求項11】
請求項5~7のいずれか一項に記載の電池において,前記物質は負極中で電気化学的に不活性であり,非晶質相を有し,電気化学反応により析出リチウムと合金化しない,ニッケル,コバルト,チタン,銅,銀,金,タングステン,モリブデン,鉄,白金,クロムから選択される少なくとも一つの金属元素を含む。

11本件特許権2-3-⑤
(中国特許)
特許番号

第99102929.1号

発明の名称

リチウム二次電池とその製造方法


平成11年1月29日

願日
授権公告日

平成17年1月5日


原告,B,D

明者
特許権者

被告

特許請求の範囲(訳文)
【請求項2】
少なくとも負極板,正極,電解質,から構成され,充放電でリチウムイオンの酸化還元反応を利用するリチウム二次電池において,前記負極が示す少なくとも非晶質相を持つ活物質を有し,前記活物質の,回折角2θ(シータ)に対する回折強度を示したⅩ線回折チャートでは最大回折強度のピークの半価幅が0.48度より狭くなく,前記活物質が,コバルト,ニッケル,マンガン,鉄から成る群から選択される少なくとも一つの元素(i)と,リチウム電池の充電/放電反応時負極のリチウム以外の物質に電気化学的に不活性で貴な標準電極電位を有する少なくとも一つの金属(ii),から成る複合体である。

12本件特許権2-4-①
(日本特許)
特許番号

第3619000号

発明の名称

電極構造体,二次電池及びそれらの製造方法


平成10年1月28日

願日
出願公開日

平成11年9月7日

登録日
平成16年11月19日

発明者
原告,C,B,E,F

特許権者

被告

特許請求の範囲
【請求項1】
板状の集電体と,該板状の集電体の片面もしくは両面に平均粒径0.5~60μm
の粒子からなる主材35重量%以上を含有する電極材料層を有し,前記電極材料層の空隙率が0.10~0.86の範囲内にあり,前記電極材料層における主材が,結晶子の大きさが10~50nmの範囲にある金属スズ又はスズ合金から構成される材料からなり,前記集電体が,銅,ニッケル,鉄,ステンレススチール,チタンから選択される一種類以上の金属材料からなることを特徴とするリチウムの酸化還元反応を利用した二次電池の負極に用いられる電極構造体。

13本件特許権2-4-②
(米国特許)
特許番号

第6,432,585号

発明の名称

電極構造体,その電極構造体から構成される再充電可能な電池

出願日
平成10年1月28日

登録日
平成14年8月13日

発明者
原告,B,C,E,F

特許権者

被告

特許請求の範囲(訳文)
【請求項1】
対抗する面の少なくとも片面に形成された電極材料層を有する板状の集電体を含む電極構造体において,電極材料層が,0.5~60ミクロンの平均粒径の粒子状主母材を35重量%以上含み,0.10から0.86の空隙率を有し,1.00~6.56g/c㎥の範囲の密度を有し,前記主母材は,シリコン,ゲルマニウム,スズ,鉛,インジウム,マグネシウム,亜鉛から成る群から選択される一つ以上の元素から構成され,前記集電体が電池反応に非反応性の,銅,ニッケル,鉄,チタン,及びこれらの金属の2以上の合金からなる群から選択される金属材料で構成されている。
【請求項40】

少なくとも負極,正極,電解質から成り,活物質の酸化還元反応を利用して充放電を行う再充電可能な電池において,前記負極が,対向する面の少なくとも片面に電極材料層が形成された板状の集電体から成り,前記電極層は,平均粒径0.5~60ミクロンの粒子状主母材を35重量%以上含み,0.10から0.86の空隙率を有し,1.00~6.65g/c㎥の範囲の密度を有し,前記粒子状主母材は,シリコン,ゲルマニウム,錫,鉛,マグネシウム,及び亜鉛からなる群から選択される一つ以上の元素から構成され,前記集電体は,銅,ニッケル,鉄,チタン,これらの金属の二つ以上の合金からなる群から選択される電池反応において不活性である金属材料で成っていることを特徴とする。

14本件特許権2-4-③
(欧州特許)
特許番号

第855752号

発明の名称

電極構造体,その電極構造体から構成される再充電可能な電池
と,その電極構造体と再充電可能な電池の製造工程

出願日
平成10年1月28日

特許公開日

平成18年11月29日


原告,B,C,E,F

明者
特許権者

被告

特許請求の範囲(訳文)
【請求項1】
電極構造体が,対向面を持つ板状の集電体と,この集電体の少なくとも片面に形成された電極材料層とから構成され,上記電極材料層は,平均粒径が0.5~60μmである粒子状の母材を35重量%以上含有し,0.10~0.86の空隙率を有し,上記母材に加えて導電補助材を含有し,前記粒子状の母材が,結晶子サイズ10~50nmの金属スズ材もしくはスズ合金材から成る。

15本件特許権2-4-④
(韓国特許)
特許番号

第0331186号

発明の名称

電極構造体,その電極構造体が備えられた二次電池と,前記電
極構造体と二次電池の製造方法

出願日
平成10年1月30日

出願公開日

平成10年10月26日

登録日
平成14年3月21日

発明者
原告,B,C,E,F

特許権者

被告

特許請求の範囲(訳文)
【請求項1】
対向面を持つ板状の集電体と,この集電体の少なくとも片面に形成された電極材料層とから構成された電極構造体において,上記電極材料層は,平均粒径が0.5~60μmである粒子状の母材を35重量%以上含有し,0.10~0.86の空隙率を有する。

16本件特許権2-4-⑤
(中国特許)
特許番号

第98106186.9号

発明の名称

電極構造体,二次電池及びそれらの製造方法


平成10年1月28日

願日
授権公告日

平成16年4月7日


原告,B,C,E,F

明者
特許権者

被告

特許請求の範囲(訳文)
【請求項1】
対向する面を有する板状の集電体の少なくとも一つの面に電極材料層が形成された電極構造体において,前記電極材料層が,平均粒径0.5~60μmで,シリコン,ゲルマニウム,スズ,鉛,インジウム,マグネシウム,亜鉛から成る群から選択される一つ以上の元素から構成されている粒子状の主母材を35重量%以上含む。【請求項44】
少なくとも負極,正極,電解質から成り,活物質の酸化還元反応を利用して充放電を行う再充電可能な電池において,前記負極が,対向する面を有する板状の集電体とその集電体の少なくとも片面に形成された電極材料層から構成され,前記電極層は,平均粒径0.5~60ミクロンの粒子状主母材を35重量%以上含み,前記粒子状主母材は,シリコン,ゲルマニウム,錫,鉛,マグネシウム,及び亜鉛からなる群から選択される一つ以上の元素から構成される。

17本件特許権2-5-①
(日本特許)
特許番号

第3620703号

発明の名称

二次電池用負極電極材,電極構造体,二次電池,及びこれらの
製造方法

出願日
平成11年9月16日

出願公開日

平成12年11月7日

登録日
平成16年11月26日

発明者
原告,C

特許権者

被告

特許請求の範囲
【請求項1】

非化学量論比組成の非晶質Sn・A・X合金を主成分とし比表面積が1㎡/g以上である粒子を含有するリチウム二次電池用負極電極材。(上記式中,Aは,遷移金属の少なくとも一種を示し,Xは,O,F,N,Mg,Ba,Sr,Ca,La,Ce,Si,Ge,C,P,B,Bi,Sb,Al,In及びZnから成る群から選ばれた少なくとも一種を示す。ただし,Xは,含有されていなくてもよい。また,上記式の各原子の原子数において,Sn/(Sn+A+X)=20~80原子%の関係を持つ。また,XがOの場合,その含有量は0.05重量%以上5重量%以下であり,XがFの場合その含有量は5重量%以下である。)
【請求項2】
非化学量論比組成の非晶質Sn・A・X合金を主成分とした粒子を含有するリチウム二次電池用負極電極材。(上記式中,Aは,遷移金属の少なくとも一種を示し,Xは,O,F,N,Mg,Ba,Sr,Ca,La,Ce,Si,Ge,C,P,B,Bi,Sb,Al,In及びZnから成る群から選ばれた少なくとも一種を示す。ただし,Xは,含有されていなくてもよい。また,上記式の各原子の原子数において,Sn/(Sn+A+X)=20~80原子%の関係を持つ。また,XがOの場合,その含有量は0.05重量%以上5重量%以下であり,XがFの場合その含有量は5重量%以下である。前記合金は,Si,Ge,Al,Zn,Ca,La及びMgから成るグループから選択される一元素と,Co,Ni,Fe,Cr及びCuから成るグループから選択される一元素を含有している。)。
18本件特許権2-5-②
(米国特許)
特許番号

第6,949,312号

発明の名称

再充電可能なリチウム電池の負極用電極材,その電極材を用い
た電極構造体,その電極構造体を用いた再充電可能なリチウ
ム電池,及びその電極構造体の製造工程とその再充電可能な

リチウム電池の製造工程
出願日
平成11年9月17日

出願公開日

平成12年3月30日

登録日
平成17年9月27日

発明者
原告,C

特許権者

被告

特許請求の範囲(訳文)
【請求項1】
実質的に非化学量論比組成の非晶質Sn,A,Ⅹ合金を含む粒子から成る,リチウム二次電池の負極用電極材料において,前記式Sn,A,ⅩのAが遷移金属元素から成るグループから選択された少なくとも1種の元素を示し,Xは,酸素,フッ素,窒素,マグネシウム,バリウム,ストロンチウム,カルシウム,ランタン,セシウム,シリコン,ゲルマニウム,炭素,リン,ホウ素,鉛,ビスマス,アンチモン,アルミニウム,ガリウム,インジウム,タリウム,亜鉛,ベリリウム,プラセオジウム,ネオジウム,サマリウム,ユウロピウム,ガドリニウム,テルビウム,ディスプロシウム,ホルミウム,エルビウム,ツリウム,イッテルビウム,ルテチウム,ヒ素,セレン,テルル,リチウム,イオウから成るグループから選択される少なくとも1種類の元素を示し,元素Ⅹは付加的に存在していてもよく,非晶質Sn,A,Ⅹ合金の構成元素スズSnの含有量は,Sn/(Sn+A+Ⅹ)=20~80原子%で,前記非晶質Sn,A,Ⅹ合金から成る前記粒子の比表面積は1㎡/g以上であり,前記非晶質Sn,A,Ⅹ合金から成る前記粒子が酸素元素を含む場合の酸素含有量は0.05重量%~5重量%の範囲で,前記非晶質Sn,A,Ⅹ合金から成る前記粒子がフッ素元素を含む場合のフッ素含有量は0.05重量%~5重量%の範囲である。

19本件特許権2-5-③

(欧州特許)
特許番号

第1039568号

発明の名称

リチウム二次電池の負極用電極材,その電極材を用いた電極構
造体,その電極構造体を用いたリチウム二次電池,及びその
電極構造体とそのリチウム二次電池の製造方法

出願日
平成11年9月17日

特許公開日

平成21年11月25日


原告,C

明者
特許権者

被告

特許請求の範囲(訳文)
【請求項1】
実質的に非化学量論比組成の非晶質Sn,A,Ⅹ合金を含む粒子から成る電極材料と,さらに電気化学反応でリチウムと合金化しない材料から成る集電体から構成される再充電可能なリチウム電池の負極用電極構造体において,Aは遷移金属元素クロム,マンガン,鉄,コバルト,ニッケル,銅,モリブデン,テクネチイウム,ルテニウム,ロジム,パラジウム,銀,イリジウム,白金,金,チタン,バナジウム,イットリウム,スカンジウム,ジルコニウム,ニオブ,ハフニウム,タンタル,タングステンから成るグループから選択された少なくとも1種の元素を示し,Xは,酸素,フッ素,窒素,リチウム,イオウのグループ,鉛,ビスマス,アルミニウム,ガリウム,インジウム,チタン,亜鉛,ベリリウム,マグネシウム,カルシウム,ストロンチウムから成るグループ(a),ランタン,セシウム,プラセオジウム,ネオジウム,サマリウム,ユウロピウム,ガドリニウム,テルビウム,ディスプロシウム,ホルミウム,エルビウム,ツリウム,イッテルビウム,ルテチウムから成るグループ(b),ホウ素,炭素,シリコン,リン,ゲルマニウム,ヒ素,セレン,アンチモン,テルルから成るグループ,のうちの一つのグループから選択された少なくとも1種類以上の元素を示し,元素Ⅹは必ずしも含まれなくてもよく,非晶質S
n,A,Ⅹ合金の構成元素スズSnの含有量は,Sn/(Sn+A+Ⅹ)=20~80原子%で,前記合金中の酸素とフッ素の含有量はそれぞれ5重量%を超えない範囲で,かつ酸素とフッ素の大部分は前記合金粒子の表面に存在する。
20本件特許権2-5-④
(韓国特許)
特許番号

第0458098号

発明の名称

リチウム二次電池の負極用電極材,その電極材を用いた電極構
造体,その電極構造体を用いたリチウム二次電池,及び前記
電極構造体と前記リチウム二次電池の製造方法

出願日
平成12年5月18日

出願公開日

平成13年4月16日

登録日
平成16年11月11日

発明者
原告,C

特許権者

被告

特許請求の範囲(訳文)
【請求項1】
実質的に非化学量論比組成の非晶質Sn,A,Ⅹ合金(式中,Aは遷移金属元素のうちから選択される1種以上の元素を表し,Xは窒素,マグネシウム,バリウム,ストロンチウム,カルシウム,ランタン,セシウム,シリコン,ゲルマニウム,炭素,リン,ホウ素,鉛,ビスマス,アンチモン,アルミニウム,ガリウム,インジウム,タリウム,亜鉛,ベリリウム,プラセオジウム,ネオジウム,サマリウム,ユウロピウム,ガドリニウム,テルビウム,ディスプロシウム,ホルミウム,エルビウム,ツリウム,イッテルビウム,ルテチウム,ヒ素,セレン,テルル,リチウム,イオウからなる群から選択される1種以上の元素を示しており,ただし,Ⅹは存在しても存在しなくてもよく,上記の非晶質Sn・A・Ⅹ合金の構成元素スズS
nの含有量は,Sn/(Sn+A+Ⅹ)=20~80原子%である)を含む粒子を含有し,上記非晶質Sn・A・Ⅹ合金を含む前記粒子の比表面積が1㎡/g以上のリチウム二次電池の負極用電極材料。

21本件特許権2-5-⑤
(中国特許)
特許番号

第99801859.7号

発明の名称

リチウム二次電池の負極用電極材,及びその用途


平成11年9月17日

願日
授権公告日

平成17年10月19日


原告,C

明者
特許権者

被告

特許請求の範囲(訳文)
【請求項1】
少なくともリチウム二次電池の負極用電極材料において,その負極電極材料が,非晶質のSn・A・Ⅹ合金粒子を含有し,そのSn・A・Ⅹ合金組成物は非化学量論比であり,上記Sn・A・Ⅹの式中で,Aは遷移金属元素を含む群から選ばれる少なくとも1種の元素を表し,Xは,窒素,マグネシウム,バリウム,ストロンチウム,カルシウム,ランタン,セシウム,シリコン,ゲルマニウム,炭素,リン,ホウ素,鉛,ビスマス,アンチモン,アルミニウム,ガリウム,インジウム,タリウム,亜鉛,ベリリウム,プラセオジウム,ネオジウム,サマリウム,ユウロピウム,ガドリニウム,テルビウム,ディスプロシウム,ホルミウム,エルビウム,ツリウム,イッテルビウム,ルテチウム,ヒ素,セレン,テルル,リチウム,イオウからなる群から選択される1種以上の元素を示しており,非晶質上記Sn・A・Ⅹ合金中のスズSnの組成は,Sn/(Sn+A+Ⅹ)=20~80原子%で,上記非晶質Sn・A・Ⅹ合金の比表面積が1㎡/g以上である。

22本件特許権2-5-⑥
(カナダ特許)
特許番号

第2310475号

発明の名称

再充電可能なリチウム電池の負極用電極材,その電極材を用い
た電極構造体,その電極構造体を用いた再充電可能なリチウ
ム電池,及びその電極構造体の製造工程とその再充電可能な
リチウム電池の製造工程

出願日
平成11年9月17日

特許公開日

平成12年3月30日


原告,C

明者
特許権者

被告

特許請求の範囲(訳文)
【請求項1】
再充電可能なリチウム電池の負極用電極材料が実質的に非化学量論比組成を有する非晶質Sn・A・Ⅹ合金から成る粒子を含有し,上記式Sn・A・Ⅹにおいて,Aはクロム,マンガン,鉄,コバルト,ニッケル,銅,モリブデン,テクネチイウム,ルテニウム,ロジム,パラジウム,銀,イリジウム,白金,金,チタン,バナジウム,イットリウム,スカンジウム,ジルコニウム,ニオブ,ハフニウム,タンタル,タングステンから成るグループから選択された少なくとも1種の遷移金属元素を示し,Ⅹは含有されなくてもよく,酸素,フッ素,窒素,マグネシウム,バリウム,ストロンチウム,カルシウム,ランタン,セシウム,シリコン,ゲルマニウム,炭素,リン,ホウ素,鉛,ビスマス,アンチモン,アルミニウム,ガリウム,インジウム,タリウム,亜鉛,ベリリウム,プラセオジウム,ネオジウム,サマリウム,ユウロピウム,ガドリニウム,テルビウム,ディスプロシウム,ホルミウム,エルビウム,ツリウム,イッテルビウム,ルテチウム,ヒ素,セレン,テルル,リチウ
ム,イオウからなる群から選択される1種以上の元素であってもよい,前記非晶質上記Sn・A・Ⅹ合金中のスズSnの組成は,Sn/(Sn+A+Ⅹ)=20~80原子%で,前記非晶質Sn・A・Ⅹ合金から成る粒子は1㎡/g以上の比表面積を有している。もし,前記非晶質Sn・A・Ⅹ合金から成る粒子に酸素O元素が含まれている場合,その酸素量は0.05重量%~5重量%の範囲の量で,もし,前記非晶質Sn・A・Ⅹ合金から成る粒子にフッ素F元素が含まれている場合,そのフッ素量は0.05重量%~5重量%の範囲の量である。
【請求項16】
再充電可能なリチウム電池の負極用電極材料が実質的に非化学量論比組成を有する非晶質Sn・A・Ⅹ合金から成る粒子を含有し,上記式Sn・A・Ⅹにおいて,Aはクロム,マンガン,鉄,コバルト,ニッケル,銅,モリブデン,テクネチイウム,ルテニウム,ロジム,パラジウム,銀,イリジウム,白金,金,チタン,バナジウム,イットリウム,スカンジウム,ジルコニウム,ニオブ,ハフニウム,タンタル,タングステンから成るグループから選択された少なくとも1種の遷移金属元素を示し,Ⅹは炭素Cもしくは炭素Cと酸素,フッ素,窒素,マグネシウム,バリウム,ストロンチウム,カルシウム,ランタン,セシウム,シリコン,ゲルマニウム,炭素,リン,ホウ素,鉛,ビスマス,アンチモン,アルミニウム,ガリウム,インジウム,タリウム,亜鉛,ベリリウム,プラセオジウム,ネオジウム,サマリウム,ユウロピウム,ガドリニウム,テルビウム,ディスプロシウム,ホルミウム,エルビウム,ツリウム,イッテルビウム,ルテチウム,ヒ素,セレン,テルル,リチウム,イオウからなる群から選択される1種以上の元素の元素で,前記非晶質上記Sn・A・Ⅹ合金中のスズSnの組成は,Sn/(Sn+A+Ⅹ)=20~80原子%で,前記非晶質Sn・A・Ⅹ合金から成る粒子は1㎡/g以上の比表面積を有している。もし,前記非晶質Sn・A・Ⅹ合金から成る粒子に酸素O元素が含まれている場合,その酸素量は0.05重量%~5重量%の範囲の量で,もし,前記非晶質Sn・A・Ⅹ合金から成る粒子にフッ素F元素が含まれている場合,そのフ
ッ素量は0.05重量%~5重量%の範囲の量である。

23本件特許権2-5-⑦
(台湾特許)
特許番号

第468287号

発明の名称

リチウム二次電池の負極用電極材,その電極材を用いた電極構
造体,その電極構造体を用いたリチウム二次電池,及びその
電極構造体とそのリチウム二次電池の製造方法

出願日
平成11年9月18日

登録日
平成13年12月11日

発明者
原告,C

特許権者

被告

特許請求の範囲(訳文)
【請求項1】
少なくともリチウム二次電池の負極用電極材料は,実質的に非化学量論比組成の非晶質のSn・A・Ⅹ合金粒子を含有することを特徴とし,上記Sn・A・Ⅹの式中で,Aは遷移金属元素を含む群から選ばれる少なくとも1種の元素を表し,Ⅹは,酸素,フッ素,窒素,マグネシウム,バリウム,ストロンチウム,カルシウム,ランタン,セシウム,シリコン,ゲルマニウム,炭素,リン,ホウ素,ビスマス,アンチモン,アルミニウム,インジウム,亜鉛からなる群から選択される1種以上の元素を示しており,Ⅹは含有されていてもいなくてもよい。上記非晶質Sn・A・Ⅹ合金の構成元素であるスズSnの組成は,Sn/(Sn+A+Ⅹ)=20~80原子%である。

(別紙)
既払

番号

1額一
発明

本件発明1-1

覧表
費目

金額

出願時(注1)

2000円

2
出願時

1300円

3
権利確定時

1500円

4
同1-2

権利確定時

2400円

5
同1-3

権利確定時

計1万6800円
(注2)

6
同1-4

権利確定時

2400円

7
同1-5

権利確定時

2400円

8
同2-1-①

出願時

1700円

権利確定時

2000円

9
10

同2-1-②

権利確定時

2000円

11

同2-2-①

出願時

2000円

(注3)
12

出願時

1300円

13

権利確定時

2500円

14

同2-2-②

権利確定時

2400円

15

同2-2-③

権利確定時

計1万6000円
(注4)

16

同2-2-④

権利確定時

2400円

17

同2-3-①

出願時

1500円

(注5)
18

出願時

1500円

19

権利確定時

3000円

20

同2-3-②

権利確定時

1800円

21

同2-3-③

権利確定時

1800円

22

同2-3-④

権利確定時

計1万5000円
(注6)

23

同2-3-⑤

権利確定時

3000円

24

同2-4-①

出願時

1700円

(注7)
25

出願時

1500円

(注7)
26

出願時

2000円

27

権利確定時

3847円

28

同2-4-②

権利確定時

1900円

29

同2-4-③

権利確定時

計1万5790円
(注8)

30

同2-4-④

権利確定時

1900円

31

同2-4-⑤

権利確定時

3158円

32

同2-5-①

出願時

3500円

(注9)
33

出願時

2500円

(注9)
34

出願時

3500円

35

権利確定時

7000円

36

同2-5-②

権利確定時

6000円

37

同2-5-③

権利確定時

計2万4000円
(注10)

38

同2-5-④

権利確定時

6000円

39

同2-5-⑤

権利確定時

6000円

40

同2-5-⑥

権利確定時

6000円

41

同2-5-⑦

権利確定時

3600円

(注1)上記2の出願に係る国内優先権の基礎となった出願である。(注2)スイス,ドイツ,スペイン,フランス,英国,イタリア,リヒテンシュタインの計7か国につき,各2400円支払済み。
(注3)上記12の出願に係る国内優先権の基礎となった出願である。(注4)ドイツ,フランス,英国,イタリアの計4か国につき,各4000円支払済み。
(注5)上記18の出願に係る国内優先権の基礎となった出願である。(注6)ドイツ,フランス,英国,イタリア,オランダの計5か国につき,各3000円支払済み。
(注7)上記26の出願に係る国内優先権の基礎となった出願である。(注8)ドイツ,フランス,英国,イタリア,オランダの計5か国につき,各3158円支払済み。
(注9)上記34の出願に係る国内優先権の基礎となった出願である。(注10)ドイツ,フランス,英国,イタリアの計4か国につき,各6000円支払済み。

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