判例検索β > 平成29年(ネ)第337号
事件番号平成29(ネ)337
裁判年月日平成29年11月22日
法廷名東京高等裁判所
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主文1
第1審原告の控訴を棄却する。

2
第1審被告の控訴により,原判決主文第1項から第3項までを次のとおり変更する。
第1審被告は,第1審原告に対し,110万円及びこれに対する
平成25年10月9日から支払済みまで年5分の割合による金員
を支払え。
第1審被告は,第1審原告に対し,別紙4の1記載のウェブサイ
ト中の別紙4の2

及び

の各「中国猛毒米」の五文字のうち「猛

毒」の二文字を削除せよ。
第1審原告のその余の請求を棄却する。
3
訴訟費用中,訴えの提起及び各控訴の提起に要した手数料のうち2万3500円を第1審被告の負担とし,141万5500円を第1審原告の負担とし,その余の訴訟費用は,第1,2審を通じ,これを10分し,その1を第1審被告の負担とし,その余を第1審原告の負担とする。

4
この判決は,第2
事実及び理由

第1
1
当事者の求めた裁判
第1審原告の控訴の趣旨
原判決を次のとおり変更する。
第1審被告は,第1審原告に対し,損害賠償金1億6500万円及びこれに対する不法行為の日である平成25年10月9日から支払済みまで民事法定利率年5分の割合による遅延損害金を支払え。
第1審被告は,第1審原告に対し,第1審被告発行の「週刊

A」,読売

新聞全国版朝刊,朝日新聞全国版朝刊及び中日新聞朝刊に,別紙2記載の謝罪広告を別紙3記載の掲載条件で,各1回掲載せよ。
第1審被告は,第1審原告に対し,別紙4の1記載のウェブサイト中,別紙4の2記載の部分の全部を削除せよ。
訴訟費用は,第1,2審を通じ,第1審被告の負担とする。
2
第1審被告の控訴の趣旨
原判決中,第1審被告敗訴部分を取り消す。
前項の部分について第1審原告の請求をいずれも棄却する。
訴訟費用は,第1,2審を通じ,第1審原告の負担とする。

第2
1
事案の概要
第1審被告は,平成25年10月9日,「週刊

A」(2013年10月1

7日号,以下「10.17号」という。)を発行し,10.17号に別紙1記載の記事(以下「本件記事」という。)を掲載するとともに,10.17号に関する別紙5の新聞広告,別紙6の中吊り広告及び別紙4記載のウェブサイト広告(以下,上記3種類の広告を合わせて「本件広告」という。)を掲載した。別紙1(本件記事)には,1から21までの番号が付された部分がある。この別紙1に付した番号は,第1審原告が本件記事中の違法な部分として指摘する別表の番号1から番号21までの記載(別紙争点整理表の「本件記事」欄に多数引用されている。)が,本件記事中のどの部分であるかを示すものである。本件は,
本件記事及び本件広告により第1審原告の名誉が毀損されたとして,第1審原告が第1審被告に対し,損害賠償1億6500万円及び民法723条に基づく名誉回復措置を求める事案である。
2
原判決は,損害賠償金2492万3597円(非財産的損害600万円,名誉回復措置のための費用1666万3597円,弁護士費用226万円)及びこれに対する遅延損害金の支払並びにウェブサイト広告の一部削除の限度で第1審原告の請求を認容したため,第1審原告及び第1審被告がそれぞれの敗訴部分を不服として控訴した。
第3
1
当事者の主張
第1審原告の主張
本件記事及び本件広告による社会的評価の低下及び真実性・相当性別紙争点整理表中「社会的評価の低下の有無」及び「真実性・相当性の抗弁」欄中の各「原告の主張」欄記載のとおりである。
公共性及び公益目的
第1審被告は,第1審原告を誹謗し読者の関心を煽ることで10.17号の販売を促進することを目的として,本件記事及び本件広告を掲載した。第1審被告が専ら公益を図る目的で本件記事及び本件広告を掲載したとする第1審被告の主張は,否認し争う。
損害及び名誉回復措置

損害賠償(弁護士費用を除く)

1億5000万円

第1審原告は,①社会的信用の失墜等(5000万円を下らない。),②売上げ減少による営業損失等の財産的損害(民事訴訟法248条により算定),③名誉回復のための社告・意見広告掲載費用(1億1530万円)のうち,1億5000万円を請求する。

弁護士費用


第1審原告の社会的評価の回復のために不可欠な謝罪広告の掲載(「週刊
1500万円

A」及び主要新聞紙3紙)及びウェブサイト広告の削除

よって,不法行為による損害賠償請求権に基づいて,1億6500万円及びこれに対する不法行為の日である平成25年10月9日から支払済みまで民事法定利率年5分の割合による遅延損害金の支払を求めるとともに,民法723条に基づく原状回復措置として「週刊

A」及び主要新聞紙3紙に別

紙2記載の謝罪広告を別紙3の掲載条件で掲載すること並びにウェブサイト広告の削除を求める。
2
第1審被告の主張
本件記事及び本件広告による社会的評価の低下及び真実性・相当性別紙争点整理表中「社会的評価の低下の有無」及び「真実性・相当性の抗弁」欄中の各「被告の主張」欄記載のとおりである。
公共性及び公益目的について
本件記事及び本件広告は,B

商事株式会社(以下「B

商事」という。)

が中国産米を国産米と偽装し,第1審原告がこの米を使用した弁当やおにぎりを一般消費者に販売したため,一般消費者の健康が危険に晒されたことに関する第1審原告の責任という論点を広く国民に提供するものである。一般消費者の健康は,公衆の正当な関心の対象であり,本件記事及び本件広告は,公共の利害に関する事実に係り,公益を図る目的で掲載された。
第1審原告の損害及び名誉回復措置について
第1審原告の主張は否認し,争う。
第4
1
当裁判所の判断
認定事実
当事者間に争いのない事実,掲記の各証拠及び弁論の全趣旨によれば,以下
の事実が認められる(以下,書証が枝番号すべてを含む場合は,書証番号のみを記載する。)。
当事者等

第1審原告は,東京証券取引所市場第一部に上場する純粋持株会社であり,「

C
」の名称で総合スーパー事業を営む完全子会社の

D
株式会社など,小売業を中心に連結子会社262社,持分法適用関連会社25社による企業グループ(以下「

C
グループ」という。)を

構成している。

第1審被告は,出版物の刊行等を主たる目的とする株式会社であり,「週

A」,「

E
」等を発行している。10.17号が発行された当
時の「週刊
Bア
A」の平均印刷部数は,約70万部であった。(甲7)

商事等による中国産米等の国産米への偽装
B
商事等は,組織的に中国産米・米国産米の国産米等への偽装等を行
っていた。具体的には,①B

商事等は,少なくとも平成22年10月か

ら平成25年9月までの間,国産又は国内特定産地の一般消費者向け及び業務用生鮮食品として販売した玄米及び精米4386トンの一部について,事実と異なる産地等を表示し,米飯類製造・販売業者等に販売した。②その原料米として外国産(中国産及び米国産)うるち精米791トン等を使用した。③このため,米飯類製造・販売業者が平成23年5月24日から平成25年9月3日までの間,外国産を含むうるち精米を原料として米飯加工品(おにぎり,弁当等)を製造した上で,原料米穀を「国産」と表示し,
4477万個を日本国内のスーパー等に販売する結果となった
(以
下,B

商事等による食品偽装問題を「本件偽装問題」という。)。

上記アの経緯により,B

商事から国産と表示された中国産混入米を買

い入れた業者の中には,F
及び株式会社

グループの株式会社

HG
(以下「本件製造元2社」という。)が

あった。
この偽装米を原料として本件製造元2社が製造した米飯加工品
(お
にぎり,弁当等)は,平成21年頃から,

C
グループが仕入れ,原材

料を国産米と表示して販売してきた。
Bア
商事等による食品偽装問題の発覚
第1審原告は,平成25年9月25日,プレスリリースとして,「お客
さまへのお詫びとお知らせ」(乙2)を公表した。上記「お客さまへのお詫びとお知らせ」には,

C
グループ店舗で販売している弁当,おにぎ

り類の一部商品につき,原材料に「国産米」と表示しているにもかかわらず,卸業者であるB

商事から本件製造元2社に対し中国産米が混入され

た精米が納入されていたことが判明したこと,販売期間は平成24年12月2日から平成25年9月4日までであること,使用された中国産米は,農林水産省が認めた検査で安全性項目を満たし,主食用として輸入されたものであること,上記の件につき深くお詫びするとともに,今後は商品製造過程における管理体制を強化し再発防止に万全を尽くすつもりであることなどが記載されている。(乙2)

本件偽装問題については,後記ウの農林水産省による平成25年10月4日のプレスリリースよりも前から,朝日新聞等の全国紙において,遅くとも平成25年9月30日以降,

C
グループの店舗で原材料を国産米

と表示して販売された弁当やおにぎりに中国産米が混入していた疑いがあるとして,農林水産省が調査を行っていること,同省は米を納入していたB
商事が産地を偽装していたとみて立入検査をしていること,B

商事

は加工用米も混入させていた疑いがあることなどが報道されていた。また,後記ウの農林水産省のプレスリリース後も,B

商事等による偽装の態様

やこれに対する農林水産省の対応等について連日報道されていた。(乙3~7)

農林水産省は,平成25年10月4日,「B

商事株式会社等による米

穀の不適正取引に対する措置について」と題するプレスリリースを行った。その内容は,大要以下のとおりであった。
農林水産省等が平成25年8月から同年10月までの間,B

商事等
が判

明した。
農林水産省等による立入検査の結果によれば,安全性に問題がある米穀が食用に流用されたという事実は確認されていない。

第1審原告は,平成25年10月4日,プレスリリースを更新し,「お客さまへのお詫びとお知らせ(10月4日更新)」(甲19)を公表した。上記「お詫びとお知らせ」には,同年9月25日の「お詫びとお知らせ」で公表したよりも販売対象期間は3年前にさかのぼり,主食用には使えない加工用米も混入されていた可能性があること,これらの米穀は農林水産省が安全性に問題はないとしていることなどが記載されている。(甲19)第1審被告による本件記事の掲載

第1審被告は,本件記事を「週刊
平成25年2月ころから,「週刊

A」の10.17号に掲載する前の
A」において,わが国に流通している

中国製食品や安価な食品等の安全性に関する記事を連載していた。また,同年8月には,同様のテーマの下に,「週刊

A」特別取材班編著にかか

る「中国食品を見破れ」という題名の書籍(乙46)を発行していた。(乙8~10,17~30,46~48)。

第1審被告は,平成25年10月9日,10.17号を発行し,10.17号の32頁から36頁までに本件記事(別紙1,甲5)を掲載した。

本件記事の取材班は,第1審被告の契約記者である
記者」という。),第1審被告の社員である
という。),

K
(以下「K

JI
(以下「I

(以下「J

記者」

記者」という。)等であった。取材班

は,平成25年10月初め頃,本件記事の取材を開始し,同月4日には,インターネット検索等により,B

商事には過去に遺伝子組み換え米や毒

性のあるメタミドホス汚染米で摘発されたことがあることを確認した。本件記事は,取材班の取材に基づいて,本文をJ

記者が執筆し,10.1

7号35頁の「中国産食品のおもな産地偽装事件(過去3年間)」と題する表をI
人J

記者が作成した。(甲5,乙11~16,47,証人I

,証



第1審被告による本件広告の掲載

新聞広告
第1審被告は,平成25年10月9日発行の読売新聞,朝日新聞,毎日新聞,日本経済新聞,産経新聞及び中日新聞等の全国紙や全国の主要地方新聞及びスポーツ新聞に,10.17号の新聞広告(別紙5,甲2の1~6,26~55)を掲載した。

中吊り広告
第1審被告は,平成25年10月9日以降,全国の主要な電車の車内中吊り広告として,新聞広告とほぼ同じ内容(ただし多色刷り)の10.17号の広告(別紙6,甲3)を掲載した。


ウェブサイト広告
第1審被告は,平成25年10月9日以降,第1審被告が運営するウェブサイトに,10.17号の目次(別紙7)及び中吊り広告(別紙6)を掲載している(甲3,4)。
第1審原告による本件社告の掲載
第1審原告は,平成25年10月10日,読売新聞朝刊,朝日新聞朝刊及
び中日新聞朝刊等に,「『週刊

A』(10月17日号)の掲載記事に対する

第1審原告
(判決文中では実名)
の見解と対応について」
と題する社告
(甲8,
横幅は紙面1頁の3分の1程度,縦幅は記事1段分と2段分の中間程度,以下「本件社告」という。)を掲載した。本件社告には,①本件記事は,第1審原告があたかも人体に有害な食品を安全な食品と偽って販売していたかのような誤解を読者に与えるものであり,
第1審原告の商品取引姿勢に関する内容も
事実と異なる記述が多く含まれていること,②第1審原告は,第1審被告に対し10.17号の販売即時中止と回収,訂正,謝罪等,断固たる措置をとる予定であること,
③農林水産省は「安全性に問題がある米穀が食用に流用されたという事実は確認されていない」と発表していること,④今後は精米から商品製造に至るまでの品質管理体制を一層強化することで再発防止に努めるつもりであることなどが記載されている。第1審原告は,本件社告の掲載費用として,株式会社L

に対し1135万8900円を支払った。(甲8~11)
第1審原告による本件意見広告の掲載
原告は,平成25年10月16日,読売新聞朝刊,朝日新聞朝刊その他主要新聞紙に意見広告を掲載した(甲12,新聞1頁分を全部使用する全面広告である。以下「本件意見広告」という。)。本件意見広告には,「『安全・安心』なお米とは何か。私たちは,もういちど原点に立ち戻ります。」との大見出しの下,
①B

商事による米の産地偽装行為により外国産米が混入されたにもか

かわらず国産米を使用した弁当・おにぎりとして販売したことにつきお客さまに深くお詫び申し上げること,②第1審原告は,本件を厳粛に受け止め,販売するすべての米に対して,
取引先とともに精米段階からの一層厳格な管理を実
施し,
再発防止に努めること,③本件記事の内容は事実と大きく異なるものであり,
現在第1審被告に対して本件記事の訂正を求めていることなどが記載されている。第1審原告は,本件意見広告の掲載費用として,株式会社L

対し合計1億0404万3462円を支払った。(甲12~15)2
本件記事本文について
まず,本件記事中の見出しを除く本文(別紙争点整理表「本件記事」の②から⑦まで。ただし,別表番号1から番号8までの部分を除く。)について判断す
る。
別紙争点整理表「本件記事」欄②の主張について

第1審原告は,別表番号2(見出し),番号8(リード),番号9及び12(本文)に基づき「第1審原告の行った検査が本来要求される水準を満たさない杜撰な検査だったことが原因で,人体にとって危険な中国産米が大量に混入した弁当やおにぎりが,C

グループの店舗で販売された

事実」という第1審原告の名誉を棄損する事実ないし論評が摘示されたと主張する。見出し及びリード部分は

判断するので,本文(別表

番号9及び12)について判断する。なお,本文(別表番号9及び12)には,「人体にとって危険な」という事実の摘示はなく,この点は,広告及び記事見出しについての判断の項目

で,後に検討

する。

本文(別表番号9及び12)は,事実の摘示というよりは論評であり,第1審原告の検査態勢について機能不全などの否定的評価をするものとして,その社会的評価を低下させる。
他方において,これが公共の利害に関する事実に係り,目的が専ら公益を図る点にあり,論評の域を逸脱していないことは,本件記事本文の記述自体から明らかである。


下記のとおり,論評の前提事実は真実であると認められる。
証拠(甲19,21,乙2,11,12,15,16,証人I
弁論の全趣旨によれば,C
B
グループは,
B
)及び

商事と直接の取引はなく,

商事から仕入れた米を加工調理する本件製造元2社から弁当やおに
ぎりの納入を受けており,原料米の産地証明書を確認しておらず,本件製造元2社への立入検査はしていたが,直接B
なかったこと,B

商事への立入検査はしてい

商事が過去に遺伝子組換米及びメタミドホス汚染米の

関係で食品衛生法違反により公表されたことを把握していなかったこと,第1審原告コーポレート・コミュニケーション部の
告のI

M
は,第1審被

記者の電話取材(平成25年10月4日)に対して以上の内容の

説明をしたことが認められる。

よって,
「本件記事」欄②のうち本文(別表番号9及び12)の点に違法はない。
別紙争点整理表「本件記事」欄③の主張について


第1審原告は,別表番号4(見出し)
,番号8(リード)
,番号10及び
19(本文中の見出し)並びに番号11(本文)に基づき「C

グルー

プの店舗で販売される全商品の8割が中国産であり,それにより人体にとって危険な中国産の食品を第1審原告が大量に販売して利益を得ている事実」という第1審原告の名誉を棄損する事実ないし論評が摘示されたと主張する。見出し及びリード部分は

判断するので,本文中の見出

し及び本文(別表番号10,11及び19)について判断する。

本文中の見出し及び本文(別表番号10,11及び19)は,第1審原告の社会的評価を低下させない。取扱商品中の中国産比率やその増減,依存状況,ボロ儲けしているかどうかということ自体は,価値中立的な事実の摘示であるからである。
なお,
本文中の見出し及び本文
(別表番号10,
11及び19)には,
「人体にとって危険な」という事実の摘示はなく,こ
の点は,広告及び記事見出しについての判断の項目
で,後に検討する。


よって,本件記事」

欄③のうち本文中の見出し及び本文
(別表番号10,
11及び19)の点には,違法がない。
別紙争点整理表「本件記事」欄④の主張について


第1審原告は,別表番号5(見出し)
,番号8(リード)
,番号13及び
15から18まで(本文)に基づき「第1審原告が,農家に対し,米を標準的な価格よりも著しく安い価格で納入するよう不当な圧力を加えており,それが原因で,
B
商事が中国産米を国産米に混入する行為を行った事実」

という第1審原告の名誉を棄損する事実ないし論評が摘示されたと主張する。見出し及びリード部分は

判断するので,本文(別表番号1

3及び15から18まで)について判断する。

本文(別表番号13及び15から18まで)は,C

グループが無理

難題を要求して取引先いじめを行うという否定的評価をするものとして,その社会的評価を低下させる。なお,
「買い叩き」とはある価格帯を超えな
い価格でしか買わない意思を明示する交渉態度であって,それ自体は価値中立的な用語であるが,その余の表現(
「中間業者が苦しくなり」「信じ難

い値段」など)によって,全体として社会的評価を低下させる。
他方において,これが公共の利害に関する事実に係り,目的が専ら公益を図る点にあり,論評の域を逸脱していないことは,本件記事本文の記述自体から明らかである。

下記のとおり,摘示事実ないし論評の前提事実は真実であると認められる。
証拠(乙16,証人I

)によれば,C

グループに限らず日本国

内の食品流通小売大手が要求する仕入れ値は通常より非常に安価なことが多いこと,C

グループのバイヤーがコシヒカリの新米(通常卸値

1キロ当たり300円程度)について「1キロ当たり200円で持ってこい」と発言したこと,C

グループの要求に応じるには,B

商事

のように安い中国産米又は非主食用米を混ぜないと採算が合わないこと,食品流通小売大手に価格決定権を握られて卸売業者の経営が苦しいこと,I
記者はC

グループとかつて取引を行っていた米卸業者への取材

(平成25年10月5日)によりこれらの事情を聴取したことが認められる。
証拠(証人J

)によれば,B

グループの仕入れ値が厳しく,C

商事の

N
管理部長は,C

グループに価格変更(値上げ)を

申し出れば取引打切りが必至と認識していたこと,K

記者は

N
への取材(平成25年10月4日)によりこれらの事情を聴取したことが認められる。

よって,
「本件記事」欄④のうち本文(別表番号13及び15から18まで)の点に違法はない。
別紙争点整理表「本件記事」欄⑤の主張について


第1審原告は,
別表番号13及び14
(本文)
に基づき
「第1審原告が,
和菓子店に対し,商品を標準的な価格よりも著しく安い価格で納入するよう不当な圧力をかけており,それが原因で,和菓子店が餡や桜の葉に中国産の不衛生な原材料を使用しているとの事実」という第1審原告の名誉を棄損する事実ないし論評が摘示されたと主張する。

本文(別表番号13及び14)は,第1審原告が無理難題を要求して取引先いじめを行うという否定的評価をするものとして,その社会的評価を低下させる。
他方において,これが公共の利害に関する事実に係り,目的が専ら公益を図る点にあり,論評の域を逸脱していないことは,本件記事本文の記述自体から明らかである。


下記のとおり,摘示事実は真実であると認められる。
証拠(乙14,47,証人J
が非常に安価であること,C

)によれば,C

グループの仕入れ値

グループに和菓子を納入する和菓子店が

取引打切りを避けるために不衛生であるか安価な中国産の原材料を使用していること,J

記者はB

商事本店のある三重県O

市の商工会議

所に所属する関係者への取材によりこれらの事情を聴取したことが認められる。

よって,
「本件記事」欄⑤の本文(別表番号13及び14)の点に違法はない。
別紙争点整理表「本件記事」欄⑥の主張について


第1審原告は,別表番号20(本文)に基づき「第1審原告が,Q

豆の製造会社に対し,納豆を標準的な価格よりも著しく安い価格で納入するよう不当な圧力を加えており,それが原因で,当該製造会社の経営が立ち行かなくなり,第1審原告との納豆の取引を中止した事実」という第1審原告の名誉を棄損する事実ないし論評が摘示されたと主張する。イ
本文(別表番号20)は,第1審原告が無理難題を要求して取引先いじめを行うという否定的評価をするものとして,その社会的評価を低下させる。なお,
「不当な圧力」という事実は摘示されていない。
他方において,これが公共の利害に関する事実に係り,目的が専ら公益を図る点にあり,論評の域を逸脱していないことは,本件記事本文の記述自体から明らかである。

下記のとおり,摘示事実ないし論評の前提事実は真実であると認められる。
証拠(乙14,47,証人J

)によれば,プライベートブランド商品

(以下「PB商品」という。
)の製造業者のC

グループへの納入価格は

非常に安価であり,原材料や資材の価格高騰の納入価格への転嫁をCグループが容認せず,PB商品製造業者の経営悪化の原因となること,J記者は以上のような経緯でC
手を引いた会社(Q

グループのPB商品(納豆)製造から

納豆製造)の元幹部への取材によりこれらの事情を

聴取したことが認められる。

よって,
「本件記事」欄⑥の本文(別表番号20)の点に違法はない。別紙争点整理表「本件記事」欄⑦の主張について


第1審原告は,
別表番号1
(見出し)番号8

(リード)
及び番号21
(本
文)に基づき「第1審原告が,消費者の安全や健康を無視して,人体にとって危険な中国産の食品原材料を取引先に使用させることにより,安さと利益を追求する企業であって,消費者の安全を危険に晒すという重大な罪を犯したとの論評」という第1審原告の名誉を棄損する事実ないし論評が摘示されたと主張する。
見出し及びリード部分は

判断するので,

本文(別表番号21)について判断する。

本文(別表番号21)は,事実の摘示というよりは論評であり,Cグループが中国食品販売により消費者の安全を危険にさらす一方で自らの利益を追求するなどの否定的評価をするものとして,その社会的評価を低下させる。
他方において,これが公共の利害に関する事実に係り,目的が専ら公益を図る点にあり,論評の域を逸脱していないことは,本件記事本文の記述自体から明らかである。

下記のとおり,論評の前提事実は真実であると認められる。
証拠(甲5,乙47,48,証人I

,J

)によれば,中国産農産物

の生産や流通の環境について,廃棄物による農業用水の汚染や農薬規制の緩さなどから農地の環境水準一般が日本国内よりも劣悪であり,収穫後の物流過程における衛生環境水準一般も日本産農産物よりも劣悪であること,これらの事柄が本件記事に記載されていること(別紙1の最初のページ及び別表番号14)が認められる。そうすると,中国食品販売により消費者の安全にリスクが生じることは事実であると認められる。
また,食品卸業者は非常に安価な価格でないとC

グループに仕入れ

てもらえず,表示と異なる安価な中国産混入などの産地偽装の温床となっていることは,前記認定のとおりである。
「自らの罪を重く受け止めるべき」
(別表番号21)という表現も,社会
的責任,道義的責任という意味であって,犯罪や刑事的責任を指すものでないことは,本件記事全体を通読すれば明らかであって,正当な論評の範囲を逸脱するものではない。

よって,
「本件記事」欄⑦の本文(別表番号21)の点に違法はない。本件記事は,本文だけに限定すれば,第1審原告の名誉等を侵害する違法
な部分はない。本件偽装問題の背景には,食品流通小売大手に価格決定権を握られているため,納入業者に中国産を含む安価な原料に頼る傾向が生じ,その結果国民の食の安全にリスクが生じているのではないかという問題提起をするものとして,一つの良質の言論である。表現の自由が保障された日本国憲法の下においては,名誉毀損訴訟を提起して言論や表現を萎縮させるのではなく,言論の場で良質の言論で対抗していくことにより,互いに論争を深めていくことが望まれる。
他方,本件広告等の問題については,3以下で検討する。
3
本件広告等について
次に,
本件広告並びに本件記事の見出し及びリード部分
(別紙争点整理表
「本
件広告」
欄の①から⑤まで及び
「本件記事」
欄の①の主張)
について判断する。
別紙争点整理表「本件広告」欄①の主張について

第1審原告は,本件広告(別紙5から7まで)のうち「中国猛毒米偽装(本件記事における別表番号1の見出しに対応)「C


の大罪を暴く

(前同)「弁当,おにぎり1500万食(本件記事における別表番号7の」
見出しに対応)「報道は氷山の一角(本件記事における別表番号6の見出」
しに対応)
」の記載につき,
「第1審原告が,猛毒に汚染された中国産米を
安全な米であると偽装して,1500万食分の弁当やおにぎりとして顧客に販売した事実」という第1審原告の名誉を毀損する事実ないし論評が摘示されたと主張する。

なお,本件記事本文と異なり,広告を見る電車乗客や新聞読者は,意図的に広告を読むというよりは,無意識のうちに広告(特にサイズの大きな文字)に目を奪われることが多いことに留意すべきである。


アの広告の記載は,C

グループが猛毒を現実に含有する中国産米を

原料とする米加工品(弁当・おにぎり)を現実に販売した事実を摘示するものとして,第1審原告の社会的評価を低下させる。
第1審被告は,アの広告の記載が摘示する事実は,C

グループによ

る猛毒米の販売ではなく,米の産地や用途の偽装を原因とするC

グル

ープの弁当等に中国産米が混入した事実及び中国産米は人体に有害な蓋然性が高い事実を摘示するものであって,猛毒を含有する中国産米等のCグループによる販売があったことを現実に生じた確定的な事実として摘示したものではないと主張する。しかしながら,
「中国猛毒米偽装」と「C
の大罪を暴く」という見出しが目立つように大きなサイズの文字で並列して記載され,特に「中国猛毒米」と「
字サイズで描かれているため,

CC
」の名詞2個が最大の文

による猛毒米の販売という直接的な

表現はないものの,広告に視線を奪われた電車乗客や新聞読者は「
C
による猛毒米の販売」という印象を抱く者が大半であると認められる。他方,広告に視線を奪われた乗客や読者が,
「中国猛毒米」という表現を,
人体に有害な蓋然性が高いという中国産米の一般的な特質が表現されたものと理解することは,非常に少ないというべきである。
「偽装」の語も,
偽装の対象が「産地」であれば「中国米偽装」と表現すれば足りるものであって,
「中国猛毒米偽装」という表現は,広告に視線を奪われた電車乗
客や新聞読者の大半に,偽装の対象が「産地」ではなく,
「毒性物質含有
の有無」であると認識させるに十分である。
第1審被告は,本件広告当時は既にB

商事による中国米「産地」偽装

問題が広く報道されていたから「中国猛毒米偽装」という広告は「産地」偽装の意味であり,偽装問題の主体もB

商事と理解されると主張する。

しかしながら,第1審被告の発行する「週刊

A」は,他のメディアが未

だ報じていない新事実の報道(いわゆるスクープ,特ダネ)に優れていることは本件広告当時における公知の事実である。したがって,広告に視線を奪われた電車乗客や新聞読者の多くは,新事実の報道(スクープ,特ダネ)の可能性も含めて「中国猛毒米」という表現に反応する。そうすると,「中国猛毒米偽装」と「
としての「

CC
の大罪」という表現からは,新事実の報道

による毒性物質含有米の販売」という印象を抱く者が大

半であって,
「産地偽装の中国米・有害の可能性のある中国米」の

Cに
よる販売という印象を抱く者は非常に少ないと認められる。第1審被告の主張を採用するには無理がある。
エC
グループが猛毒を現実に含有する中国産米を原料とする米加工品

(弁当・おにぎり)を現実に販売した事実を認めるに足りる証拠はなく,また,第1審被告の担当記者において当該事実が真実であると信じる相当の理由があったことを基礎付ける事実を認めるに足りる証拠もない。オ
よって,アの広告の記載は,

C
グループが猛毒を現実に含有する中

国産米を原料とする米加工品を現実に販売した事実を摘示するものとして,その限度において,違法である。
別紙争点整理表「本件広告」欄②の主張について

第1審原告は,本件広告(別紙5から7まで)のうち「

C
は本誌に

ズサン検査を認めた
(本件記事における別表番号2の見出しに対応)の記

載につき,第1審原告が要求される水準に満たない杜撰な検査を行ってい「
たと認めた事実」という第1審原告の名誉を棄損する事実ないし論評が摘示されたと主張する。

アの広告の記載は,事実の摘示というよりは論評であり,第1審原告の検査態勢がずさんであるという否定的評価をするものとして,その社会的評価を低下させる。
他方において,これが公共の利害に関する事実に係り,目的が専ら公益を図る点にあり,論評の域を逸脱していないことは,本件記事本文及び本件広告の記述自体から明らかである。


前記2の

ウ記載のとおり,
論評の前提事実は真実であると認められる。


よって,
「本件広告」欄②の点に違法はない。
別紙争点整理表「本件広告」欄③の主張について


第1審原告は,
本件広告
(別紙5及び6)
のうち
「遺伝子組み換え米


毒メタミドホス汚染米でも摘発の前科(本件記事における別表番号3の見出しに対応)
」の記載につき,
「第1審原告が遺伝子組み換え米や猛毒のメ
タミドホスで汚染された米でも摘発された前科があるという事実」という第1審原告の名誉を棄損する事実ないし論評が摘示されたと主張する。イ
本件記事本文によれば,本件記事において遺伝子組み換え米やメタミドホス汚染米で摘発の前科があると報道されたのは,
く,B

C
グループではな

商事である。ところで,本件記事を読まずに本件広告だけに視線

を奪われる電車乗客や新聞読者も多数存在するところ,本件広告だけに視線を奪われる電車乗客や新聞読者が摘発の前科があるのは

C
グループ

であるという印象を抱くのが通常であれば,本件広告は第1審原告の社会的評価を低下させるものとなる。しかしながら,アの広告の記載は小さい文字によるもので,電車乗客や新聞読者の目を引くものではなく,主語に当たる表現も省略されている上,アの広告の直前には同程度の大きさの文字で
「偽装商社の強欲女社長」B


商事の女性社長のことを指している。


という広告の記載がある。そうすると,一般の電車乗客や新聞読者は,摘発された前科がある主体は偽装商社と理解した上で,第1審原告は偽装商社ではないと判断するか,又は摘発された前科がある主体が何か分からないと判断するのが通常であると解される。以上によれば,アの広告の記載は,第1審原告の社会的評価を低下させるものではない。

よって,
「本件広告」欄③の点に違法はない。
別紙争点整理表「本件広告」欄④の主張について


第1審原告は,本件広告(別紙5から7まで)のうち「農家にキロ200円買い叩き
(本件記事における別表番号5の見出しに対応)の記載につ

き,
「第1審原告が農家から1キロ200円で米を買い叩いた事実」
という
第1審原告の名誉を棄損する事実ないし論評が摘示されたと主張する。

アの広告の記載は,第1審原告が農家から1キロ200円という安値でしか米を買わないという事実を摘示するものである。
ところで,買い叩き」

とはある価格帯を超えない価格でしか買わない意思を明示する交渉態度であって,それ自体は価値中立的な用語である。また,本件記事本文においては,買い叩きの対象が1キロ300円程度のコシヒカリの新米であることが記載されているが,本件広告においては,買い叩きの対象が記載されていない。本件広告中の前後の表現から買い叩きの対象が米であることは分かる。そして,国産米でも産地銘柄によっては取引価格が1キロ210円程度のものも存在し,この場合1キロ200円の要求を信じがたい値段とも言い難い。
そうすると,
ア記載の広告「農家にキロ200円買い叩き」

という本件広告の表現)が第1審原告の社会的評価を低下させるものとは言い難い。

仮にア記載の広告が第1審原告の社会的評価を低下させるとしても,前記
で認定したとおり,摘示事実ないし論評の前提事実は真実であ

ると認められる。また,ア記載の広告が公共の利害に関する事実に係り,目的が専ら公益を図る点にあり,論評の域を逸脱していないことは,本件記事本文及び本件広告の記述自体から明らかである。

よって,
「本件広告」欄④の点に違法はない。
別紙争点整理表「本件広告」欄⑤の主張について


第1審原告は,本件広告(別紙5から7まで)は,
「第1審原告には暴か
れるべき重大な罪があるとの論評」すなわち,

第1審原告が中国産猛毒米
を安全と偽装して弁当,おにぎり1500万食分を販売したなどの事実を摘示して,第1審原告の社会的評価を著しく低下させ,第1審原告には暴かれるべき重大な罪があるという趣旨の論評の域を逸脱した論評が記載されたと主張する。


この点に関しては,前記

で認定した摘示事実(

C
グループが猛毒

を現実に含有する中国産米を原料とする米加工品を現実に販売した事実)を「大罪」として表現する限度で「

C
の大罪」という表現は論評とし

てもその範囲を逸脱しており,第1審原告の社会的評価を低下させる。なお,
「大罪」という表現は,上記以外の本件記事における論点との関係では,違法性を帯びるものではない。

前記

記載のとおり,第1審原告が猛毒成分を現実に含有する中国産
の米又は米加工品(弁当・おにぎり)を販売した事実を認めるに足りる証拠はなく,また,第1審被告の担当記者において当該事実が真実であると信じる相当の理由があったことを基礎付ける事実を認めるに足りる証拠もない。

よって,
「本件広告」欄⑤の点は,上記の限度で違法である。別紙争点整理表「本件記事」欄①の主張について


第1審原告は,本件記事における別表番号1から7まで(見出し)及び番号8(リード)に基づき「第1審原告が,猛毒に汚染された大量の中国産米を安全な国産米であると偽装して,1500万食分の弁当やおにぎりとして顧客に販売した事実」という第1審原告の名誉を棄損する事実ないし論評が摘示されたと主張する。


別表番号1,6及び7については,前記

と同様であって,猛毒を現実

に含有する中国産米を原料とする米加工品を

C
グループが現実に販

売したという印象を与える限度で違法性がある。
別表番号2については前記
別表番号3については前記

と同様であって,違法性はない。

別表番号5については前記

と同様であって,違法性はない。

と同様であって,違法性はない。

別表番号4(P

社長と中国の親密すぎる関係)は,
「P

社長」が第1

審原告代表者を指すことは多くの読者に理解可能であるが,その余の部分の記載を総合しても第1審原告の社会的評価を低下させるものとは認められない。

別表番号8
(リード)
のうち
「中国産米が国産と偽って弁当などに混入」
は真実であり,別表番号8(リード)のうち「
記C
と同様の理由で,
「中国産使用で暴利」は前記

の検査が杜撰」は前
と同様の理由で

違法性がない。
別表番号8(リード)のうち「中国産使用で消費者の健康を無視」は,前記

と同様の理由で違法性がない。

別紙争点整理表「本件記事」欄②③④及び⑦の一部についてア
別紙争点整理表「本件記事」欄②のうち,別表番号2(見出し)の部分(別紙争点整理表「本件広告」欄②の主張について)におけるのと同様の理由で違法性がない。


別紙争点整理表「本件記事」欄③のうち,別表番号4(見出し)の部分

別紙争点整理表「本件記事」欄④のうち,別表番号5(見出し)の部分
におけるのと同様の理由で違法性がない。

別紙争点整理表「本件記事」欄⑦のうち,別表番号1(見出し)の部分現実に含有する中国産米
を原料とする米加工品を

C
グループが現実に販売したとの誤った印象

を与える限度で違法性がある。

別紙争点整理表「本件記事」欄②③④及び⑦のうち,別表番号8(リー
前記2

のとおり本件記事本文には違法性がなく,本件記事本文が一つの

良質な言論であることを考慮しても,
本件広告等の一部の違法性を阻却するこ
とはできず,その違法性は肯定せざるを得ないものである。
4
第1審原告の損害及び名誉回復措置について
非財産的損害について
本件広告のうち一部及び本件記事のうち見出し部分の一部は,猛毒を現実に含有する中国産米を原料とする米加工品を

C
グループが現実に販売し

たとの誤った印象を一般の消費者に与え,第1審原告の名誉を毀損したものである。電車内の中吊り広告や新聞広告における大きなサイズの文字の情報発信力には,電車乗客や新聞読者の視線を奪う強力なものがあることを考慮すると,第1審原告の受けた損害はわずかなものにとどまるとは言い難い。しかしながら,本件記事の本文(別表番号9から21まで)には違法性が皆無であり,誤った印象を受けたのは,本件記事本文を読まずに本件広告や本件記事の見出し部分に目を奪われた者に限られること,本件広告や本件記事見出しから「猛毒」の二文字を削除して,「中国米偽装,

C
の大罪を暴

く」という内容に変更した場合には違法性は認められなかったであろうことを考慮すると,本件広告及び本件記事見出しによって第1審原告が被った非財産的損害の額は100万円と認めるのが相当である。
営業損害について
第1審原告は,10.17号が発行され本件広告の掲載が開始された平成25年10月9日を含む平成25年第33週において,
で総合スーパーを運営する

DC
グループの中

株式会社(第1審原告の完全子会

社)の弁当及びおにぎりの売上げは,前年同期(平成24年第33週)よりも8.8%減少しており,前週(平成25年第32週)の売上げが前年同期(平成24年第32週)の売上げよりも0.9%増加していることと比較しても,大きく減少していると主張している。
しかしながら,第1審原告主張にかかる数値を前提としても,弁当やおにぎりの売上げは,天候や休日の日数等によって大きく異なる可能性がある。平成25年10月は前年に比べて降水量が多く日照時間も少なかったこと,平成24年第33週は休日が3日含まれているのに対し平成25年第33週の休日は2日であることは,公知の事実である。また,本件広告及び本件記事が掲載される以前に,本件偽装問題は農林水産省のプレスリリースや新聞報道等によって一般の消費者に広く知られるところとなっていた。したがって,本件偽装問題の発覚そのものによって,第1審原告の弁当やおにぎりを買い控えた消費者がいた可能性も十分考えられる。これらの事情を総合すると,本件広告及び本件記事の掲載によって第1審原告の弁当及びおにぎりの売上げが有意に減少したと認定することは困難である。
他に本件広告及び本件記事の掲載によって第1審原告が営業損害を被ったと認めるに足りる証拠はない。第1審原告は民訴法248条に基づいて損害額を認定すべきであると主張するが,同条は,損害が生じたことが認められる場合において,損害の性質上その額を立証することが極めて困難な場合に適用されるものである。本件では第1審原告に営業損害が生じたと認定することはできないから民訴法248条を適用する余地はない。
本件社告及び本件意見広告の費用について
前記2及び3において違法性があるとされた本件広告及び本件記事見出しの内容及び前記

のとおり有意な売上げの減少が見られなかったことに照

らすと,第1審原告において名誉回復のために本件社告及び本件意見広告をしたことが,第1審被告の違法行為により通常生じる損害であるとはいえない。したがって,第1審原告が本件社告及び本件意見広告をするために支出した費用と第1審被告の不法行為との間に相当因果関係があるとは認められない。
表現の自由が保障された日本国憲法の下においては,訴訟を提起して言論や表現を萎縮させるのではなく,言論の場で良質の言論の応酬を行うことにより,互いに論争を深めていくことが望まれる。反論記事を別の雑誌等に寄稿したり,本件偽装問題が発覚した直後の平成25年9月25日及び同年10月4日に「お客様へのお詫びとお知らせ」を公表したように,記者会見,プレスリリースや自社ウェブサイトへの掲載などの方法により,自ら必要と考える意見や反論等を発信する方法が考えられる。他方において,言論に要した巨額の費用を訴訟を提起して相手方に請求することは,言論や表現を萎縮させる結果を産むので好ましくないと考えられる。
弁護士費用について
本件の事案の内容及び認容額等,証拠によって認められる諸般の事情を総合考慮すると,第1審被告の不法行為と相当因果関係がある弁護士費用の額は,上記認容額100万円の1割である10万円とするのが相当である。謝罪広告等について
本件広告等によって第1審原告の社会的評価が低下したとしても,その程度はそれほど重大であったとは認められない。本判決によって第1審被告に対し損害賠償義務が認められることにより,第1審原告の名誉は回復すると推認できる。したがって,第1審原告の名誉回復のために,損害賠償のほかに第1審被告に対し謝罪広告を命ずる必要があるとまでは認められない。他方で,ウェブサイト広告については,現在でも,別紙4の1記載のウェブサイトを閲覧することによって,別紙4の2記載のウェブサイト広告(目次及び中吊り広告)を見ることができる状況が続いている。ウェブサイト広告には,

C
グループが猛毒を現実に含有する中国産米を原料とする米加

工品を現実に販売したと誤解される記載がされていることに照らすと,第1審原告の名誉回復のため,第1審被告に対しウェブサイト広告のうち,「中国猛毒米」という表現中の「猛毒」の二文字の削除を命ずる必要があると認められる。他方,「猛毒メタミドホス汚染米」という表現の中の「猛毒」の二文字の削除を含め,ウェブサイト広告のうちその余の部分の削除を命じる必要性がないことは,前記説示から明らかである。
第5

結論
以上によれば,本件請求は,第1審被告に対し110万円及びこれに対する
不法行為の日である平成25年10月9日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払並びにウェブサイト広告の一部(「中国猛毒米」中の「猛毒」の二文字)削除の限度で理由があるからこれを認容し,その余は理由がないから棄却すべきである。これと異なり損害賠償金2492万3597円の支払及びウェブサイト広告のより多くの部分の削除の限度で第1審原告の請求を認容した原判決は一部失当である。よって,第1審原告の控訴は理由がないからこれを棄却し,第1審被告の控訴に基づいて,上記のとおり原判決を変更することとし,主文のとおり判決する。
東京高等裁判所第11民事部

裁判長裁判官

野山宏
裁判官

吉田彩
裁判官

角井俊文
別紙,別表は省略
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