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所得税更正処分等取消請求事件
事件番号平成28(行ヒ)303
事件名所得税更正処分等取消請求事件
裁判年月日平成29年12月15日
法廷名最高裁判所第二小法廷
裁判種別判決
結果棄却
原審裁判所名東京高等裁判所
原審事件番号平成27(行コ)236
原審裁判年月日平成28年4月21日
判示事項1 競馬の当たり馬券の払戻金が所得税法35条1項にいう雑所得に当たるとされた事例
2 競馬の外れ馬券の購入代金が雑所得である当たり馬券の払戻金を得るため直接に要した費用として所得税法37条1項にいう必要経費に当たるとされた事例
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平成28年(行ヒ)第303号
平成29年12月15日

所得税更正処分等取消請求事件

第二小法廷判決

主文
本件上告を棄却する
上告費用は上告人の負担とする。
理由
上告代理人定塚誠ほかの上告受理申立て理由について
1
本件は,長期間にわたり馬券を購入し,当たり馬券の払戻金を得ていた被上
告人が,平成17年分から同22年分までの所得税の確定申告をし,その際,当たり馬券の払戻金に係る所得(以下「本件所得」という。)は雑所得に該当し,外れ馬券の購入代金が必要経費に当たるとして,総所得金額及び納付すべき税額を計算したところ,所轄税務署長から,本件所得は一時所得に該当し,外れ馬券の購入代金を一時所得に係る総収入金額から控除することはできないとして,上記各年分の所得税に係る各更正並びに同17年分から同21年分までの所得税に係る無申告加算税及び同22年分の所得税に係る過少申告加算税の各賦課決定を受けたことから,上告人を相手に,上記各更正のうち確定申告額を超える部分及び上記各賦課決定の取消しを求める事案である。
2
原審の適法に確定した事実関係等の概要は,次のとおりである。

(1)ア

被上告人は,自宅のパソコン等を用いてインターネットを介して馬券を
購入することができるサービスを利用し,平成17年から同22年までの6年間にわたり,中央競馬のレースで,1節(競馬開催日又はこれが連続する場合における当該連続する競馬開催日を併せたもの等をいう。)当たり数百万円から数千万円,1年当たり合計3億円から21億円程度となる多数の馬券を購入し続けた。上記サービスは,当たり馬券の払戻金等をその後の馬券の購入に充てることや,馬券の購入代金及び当たり馬券の払戻金等の決済を節ごとに銀行口座で行うことを可能にするものであった。被上告人は,日本中央競馬会に記録が残る平成21年の1年間においては,中央競馬の全レース3453レースのうち2445レース(全レースの約70.8%)で馬券を購入した。

被上告人による馬券の購入方法はおおむね次のとおりである。

まず,日本中央競馬会に登録された全ての競走馬や騎手の特徴,競馬場のコースごとのレース傾向等に関する情報を継続的に収集し,蓄積する。そして,その情報を自ら分析して評価し,レースごとに,競争馬の能力,騎手(技術),コース適性,枠順(ゲート番号),馬場状態への適性,レース展開,競争馬のコンディション等の考慮要素を評価,比較することにより着順を予想する。その上で,予想の確度の高低と予想が的中した際の配当率の大小との組合せにより,購入する馬券の金額,種類及び種類ごとの購入割合等を異にする複数の購入パターンを定め,これに従い,当該レースにおいて購入する馬券を決定する。馬券購入の回数及び頻度については,偶然性の影響を減殺するために,年間を通じてほぼ全てのレースで馬券を購入することを目標とし,上記の購入パターンを適宜併用することで,年間を通じての収支(当たり馬券の払戻金の合計額と外れ馬券を含む全ての有効馬券の購入代金との差額)で利益が得られるように工夫する。
(2)

被上告人は,上記(1)の馬券の購入により,平成17年から同22年までの
各年において,全ての有効馬券の購入代金の合計額に対する当たり馬券の払戻金の合計額の比率である回収率がいずれも100%を超えており,その収支上,同17年に約1800万円,同18年に約5800万円,同19年に約1億2000万円,同20年に約1億円,同21年に約2億円,同22年に約5500万円の利益を得ていた。
(3)

被上告人は,平成17年分から同21年分までの所得税に係る申告期限後
の確定申告及び同22年分の所得税に係る申告期限内の確定申告を行い,その際,本件所得は雑所得に該当し,外れ馬券の購入代金が必要経費に当たるとして総所得金額及び納付すべき税額を計算したところ,所轄税務署長から,本件所得は一時所得に該当し,上記の各年分の一時所得の金額の計算において外れ馬券の購入代金を一時所得に係る総収入金額から控除することはできないとして,同17年分から同21年分までの所得税に係る各更正及び無申告加算税の各賦課決定並びに同22年分の所得税に係る更正及び過少申告加算税の賦課決定を受けた。
3
所論は,本件所得は営利を目的とする継続的行為から生じた所得に当たら
ず,一時所得に該当すると主張して,本件所得が雑所得に該当するとした上で外れ馬券の購入代金を必要経費として控除することができるとした原審の判断には法令違反があるというものである。
4(1)

所得税法上,利子所得,配当所得,不動産所得,事業所得,給与所得,
退職所得,山林所得及び譲渡所得以外の所得で,営利を目的とする継続的行為から生じた所得は,一時所得ではなく雑所得に区分されるところ(34条1項,35条1項),営利を目的とする継続的行為から生じた所得であるか否かは,文理に照らし,行為の期間,回数,頻度その他の態様,利益発生の規模,期間その他の状況等の事情を総合考慮して判断するのが相当である(最高裁平成26年(あ)第948号同27年3月10日第三小法廷判決・刑集69巻2号434頁参照)。これを本件についてみると,被上告人は,予想の確度の高低と予想が的中した際の配当率の大小の組合せにより定めた購入パターンに従って馬券を購入することとし,偶然性の影響を減殺するために,年間を通じてほぼ全てのレースで馬券を購入することを目標として,年間を通じての収支で利益が得られるように工夫しながら,6年間にわたり,1節当たり数百万円から数千万円,1年当たり合計3億円から21億円程度となる多数の馬券を購入し続けたというのである。このような被上告人の馬券購入の期間,回数,頻度その他の態様に照らせば,被上告人の上記の一連の行為は,継続的行為といえるものである。
そして,被上告人は,上記6年間のいずれの年についても年間を通じての収支で利益を得ていた上,その金額も,少ない年で約1800万円,多い年では約2億円に及んでいたというのであるから,上記のような馬券購入の態様に加え,このような利益発生の規模,期間その他の状況等に鑑みると,被上告人は回収率が総体として100%を超えるように馬券を選別して購入し続けてきたといえるのであって,そのような被上告人の上記の一連の行為は,客観的にみて営利を目的とするものであったということができる。
以上によれば,本件所得は,営利を目的とする継続的行為から生じた所得として,所得税法35条1項にいう雑所得に当たると解するのが相当である。(2)

所得税法は,雑所得に係る総収入金額から控除される必要経費について,
雑所得の総収入金額に係る売上原価その他当該総収入金額を得るため直接に要した費用の額等とする旨を定めているところ(35条2項2号,37条1項),本件においては,上記(1)のとおり,被上告人は,偶然性の影響を減殺するために長期間にわたって多数の馬券を頻繁に購入することにより,年間を通じての収支で利益が得られるように継続的に馬券を購入しており,そのような一連の馬券の購入により利益を得るためには,外れ馬券の購入は不可避であったといわざるを得ない。したがって,本件における外れ馬券の購入代金は,雑所得である当たり馬券の払戻金を得るため直接に要した費用として,同法37条1項にいう必要経費に当たると解するのが相当である。
5
所論の点に関する原審の判断は,以上の趣旨をいうものとして,是認するこ
とができる。論旨は採用することができない。
よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官

菅野博之

裁判官

小貫芳信

山本庸幸)
裁判官

鬼丸かおる

裁判官

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