判例検索β > 平成28年(ワ)第2440号
損害賠償請求事件
事件番号平成28(ワ)2440
事件名損害賠償請求事件
裁判年月日平成29年11月30日
法廷名千葉地方裁判所
戻る / PDF版
平成28年(ワ)第2440号
平成29年11月30日
口頭弁論終結日

千葉地方裁判所民事第5部判決

平成29年9月14日

主1
損害賠償請求事件


被告らは,原告らに対し,連帯して278万円及びこれに対する平成28年7月2日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

2
被告らは,原告Aに対し,連帯して33万円及びこれに対する平成28年7月2日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

3
被告らは,原告Bに対し,連帯して33万円及びこれに対する平成28年7月2日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

4
原告らのその余の請求をいずれも棄却する。

5
訴訟費用は,これを10分し,その4を原告らの負担とし,その余を被告らの負担とする。

6
この判決は,第1項ないし第3項に限り,仮に執行することができる。事
第1
1実及び理由
請求
被告らは,原告らに対し,連帯して308万3000円及びこれに対する平成28年7月2日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2
被告らは,原告Aに対し,連帯して150万円及びこれに対する平成28年7月2日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

3
被告らは,原告Bに対し,連帯して150万円及びこれに対する平成28年7月2日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

第2
1
事案の概要等
事案の概要
(1)被告法人は,民間養子縁組あっせん業者であり,被告Cはその代表理事,
被告Dはその理事である。
原告らは,被告法人との間で,後述の特別養子縁組あっせん契約(以下「本件あっせん契約」という。
)を締結した者である。
(2)本件は,被告C及び理事である被告Dが,原告らに対し,被告法人の人的体制に関し虚偽の説明をするなどし,実費として使用する意思がないにもかかわらずその旨申し向けて,原告らを誤信させて本件あっせん契約を締結させ,実費名目の金銭を受け取ったと原告らが主張して,被告C及び被告Dに対しては,一般社団法人及び一般財団法人に関する法律(以下「一般社団法人法」という。
)117条1項又は不法行為責任に基づき,被告法人に対し
ては,一般社団法人法78条に基づき,実費名目で支払った費用225万円,被告法人の登録料2万円,子育てを行うために支出した費用26万円及び弁護士費用55万3000円の合計308万3000円並びに原告らが子を実親に返還した日(不法行為の日)である平成28年7月2日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の連帯支払を求めるとともに,原告らが,被告らに対し,上記同様の責任に基づき,原告一人当たり慰謝料150万円及び上記同様の遅延損害金の連帯支払を求める事案である。(3)被告法人は,適式の呼出しを受けながら,本件の口頭弁論期日に出頭せず,答弁書その他の準備書面も提出しない。また,被告C及び被告Dは,答弁書を提出し,請求の趣旨に対する答弁(原告らの請求を棄却する判決を求める旨)をしたのみで,請求の原因に対する認否・反論をしない。2
前提事実(争いのない事実並びに各項目末尾掲記の各証拠及び弁論の全趣旨により容易に認定することができる事実)
(1)ア原告A(昭和38年3月2日生まれの男性)と原告B(昭和50年8月5日生まれの女性)は,夫婦である。

被告法人は,養子縁組のあっせんを行うことを目的として,平成27年10月20日に設立された一般社団法人である。被告法人は,千葉県知事
に第二種社会福祉事業の届出をしていた民間養子縁組あっせん事業者である。
[甲10]

被告Cは,被告法人の代表理事を務める者である。


被告Dは,被告法人の理事を務める者である。

(2)原告らは,平成27年11月頃より,複数の養子縁組あっせん団体に特別養子縁組のあっせんの申込みをしたが,いずれの団体からも原告Aの年齢を理由に断られた。
[甲20]
(3)原告らは,被告法人のウェブサイト(以下「本件ウェブサイト」という。
)を閲覧したところ,
「当会としては,養育が問題ないと判断した場合に
限り,50歳以上でも養親になることは可能」という記載があったため,被告法人に対し,特別養子縁組のあっせんの申込みをした。
[甲1,20]
(4)原告らは,申込みの後,千葉県船橋市所在の被告法人の事務所において,被告Cと面談した(なお,被告Dもテレビ電話により面談に参加した。。原)
告Aは,上記面談後,被告Cに対し,被告法人の登録料として2万円を支払った。
[甲16]
(5)被告Dは,平成28年2月10日,原告らに対し,
「只今,振り込めば2
番目になります。今,入院中の産みの親が1人いますが多分2週間以内に1番目の方が決まると思います。そうすると次になります。,
」「育ての親で濃
い方が10人面接を待っていただいている状態なのでそこで良い方がいれば,次の順番を決める予定になっています。今なら2番目ですが同じ様に迷っている方もいるのでお急ぎならご検討宜しくお願いします」等と記載したメールを送信した。

原告らは,その後も,頻繁に被告C及び被告Dから,100万円を振り込む意思の有無を確認するメールが送られてきたため,振り込むことを決め,原告Aは,その名義で,同年4月11日,指定された被告D名義の口座に100万円を振り込んだ。
[甲2ないし5]
(6)被告Cは,平成28年4月11日,本件ウェブサイトに登録してきた実親となる女性(以下「本件実親」という。
)から,受任者を被告法人,委任事
項を①養子縁組あっせんを当会に専属依頼する件,②他団体に委託した場合,損害規定が生じる件,及び,③養親紹介後,親権・養育権ともに放棄する件,並びに,委託者を本件実親とする内容の委任状の交付を受けた。[甲19]
(7)被告Dは,平成28年4月29日及び同月30日,原告らに対し,「残り
金額125万円を振り込んだら確定となります」「6月上旬出産で神奈川で,
す。順調にすんで,検診も問題ないです。,
」「良かったら契約書に判をし
て,1週間以内に残金振込みになりますがいかがでしょうか?」等と記載したメールを送信した。
原告Aは,同年5月1日,千葉県船橋市所在の被告法人の事務所において,被告法人との間で,特別養子縁組あっせん契約(本件あっせん契約)を締結するとともに,被告Cに対し,残金125万円のうち100万円を現金で支払った。
原告Aは,同月4日,同所において,被告Cに対し,更に現金25万円を支払った。
[甲6,7,12]
(8)原告らは,平成28年6月19日,本件あっせん契約に基づき,助産院Eにおいて,被告Dから本件実親の子(以下「本件養子」という。
)の引渡し
を受けた。

[甲12]
(9)原告らは,平成28年6月24日,F弁護士(以下「F弁護士」という。
)に対し,特別養子縁組の申立手続を委任した。他方,本件実親は,同日,F弁護士に対し,本件養子の返還を求める旨連絡した。
[甲19,20]
(10)原告らは,平成28年7月2日,本件養子との特別養子縁組を断念し,本件養子を本件実親に返還した。
[甲20,21]
(11)被告法人は,平成28年9月27日,千葉県から,社会福祉法72条1項に基づき,被告法人が,同法70条に基づく報告の求めに応じないこと,及び,養子縁組あっせんにおいて,不当な行為(養親希望者に金品を支払わせることにより優先的にあっせんをしたこと,実親への相談支援等親子に係る一連の支援を適切に実施するために社会福祉士等を配置しあっせんに関与させることをしていないなど)をしたことを理由に,事業停止命令を受けた。
[甲10]
(12)被告C及び被告Dは,成人及び児童のための正当な職業紹介の機関以外の者が,営利を目的として,児童の養育をあっせんする行為をしたとして,児童福祉法違反の罪により千葉地方裁判所に起訴された。同裁判所は,平成29年7月13日,被告両名をそれぞれ懲役1年6月及び罰金50万円に処し,裁判が確定した日から3年間,それぞれその懲役刑の執行を猶予する判決を宣告した。なお,同判決は,情状として,被告人らが社会福祉士等の適切な人的・物的体制を整えず,養親希望者や実親に対する諸々の専門的な調査や相談支援を実施していないことも認定している。
[甲12]
3
原告らの主張する本件の争点

(1)被告らの不法行為責任の有無(争点1)
(2)原告らに生じた損害の有無及び額(争点2)
4
争点に関する原告らの主張
(1)争点1(被告らの不法行為責任の有無)について
【原告らの主張】
被告Cは,被告法人の代表理事として,被告Dは,被告法人の理事として,当初から営利目的で養子縁組あっせんを行うことを意図し,真実は,法令に沿って養子縁組あっせんを行う意思もなく,社会福祉士や看護師による支援などのノウハウや人的・物的体制も整備していないにもかかわらず,整備しているとの虚偽の内容で千葉県に第二種社会福祉事業の届出を行い,被告法人のウェブサイトを立ち上げるなど養子縁組あっせんの事業の外形のみ整え,特別養子縁組の希望者を募っていた。原告らはこれを見て申し込み,被告らは,原告らに対し,被告法人の社会福祉士や看護師などのスタッフの人件費や育児相談などの各種サポート等の実費がかかるなどと虚偽の説明をしたため,原告らは,被告法人が法令に沿って養子縁組のあっせんを行っている団体であり,そのために必要な経費を負担することはやむを得ないと誤信して,各種費用を支払ったのであるから,被告C及び被告Dは,一般社団法人法117条1項の責任又は不法行為責任を負う。また,被告法人は,一般社団法人法78条に基づき,同様の責任を負う。
(2)争点2(原告らに生じた損害の有無及び額)について
【原告らの主張】

実費

225万円

原告らは,被告らから実費として使用するとの説明を受けて被告Dに対し,100万円を,被告Cに対し,125万円を支払ったが,実際には実費として認められている人件費等の経費には使用していなかった。したがって,合計225万円が原告らに生じた損害である。


登録料

2万円

原告らは,被告法人に特別養子縁組あっせんを申し込むに際し,被告法人に対し,登録料2万円を支払ったが,登録料が実費にあたらないことは明らかである。したがって,登録料2万円が原告らに生じた損害である。

子育てを行うために支出した費用

26万円

原告らは,子育てを行うためにチャイルドシート,ベビーベッド,おむつ,粉ミルク等を購入し,また,助産院で授乳,沐浴等の研修を受けたところ,これらに要した費用は26万円を下らない。原告らは被告らの不法行為により養子縁組ができなかったのであるから,その支出した費用26万円が原告らに生じた損害である。

慰謝料

各150万円

原告らは,一旦は子の引渡しを受けて14日間養育していたにもかかわらず,被告C及び被告Dの不法行為が原因で,本件実親に子を返還せざるを得なくなり,精神的苦痛を被ったものであり,これに対する慰謝料は,各150万円が相当である。
オ5
弁護士費用

55万3000円

被告C及び被告Dの主張
争点1及び争点2のいずれも各主張事実は否認ないし争う。

第3
1
当裁判所の判断
争点1(被告らの不法行為責任の有無)について
(1)法令の定め等

児童福祉法34条1項8号は,何人も,成人及び児童のための正当な職業紹介の機関以外の者が,営利を目的として,児童の養育をあっせんする行為をしてはならないと規定しており,同法60条2項は,同法34条1項8号に違反した者について,3年以下の懲役若しくは100万円以下の
罰金に処し,又はこれを併科することを定めている。

養子縁組あっせんを業として行う際には,社会福祉法2条3項2号において,
「児童の福祉の増進について相談に応ずる事業」に該当し,第二種社会福祉事業としての規制に服することとされている。


厚生労働省雇用均等・児童家庭局長通知である平成26年5月1日付け「養子縁組あっせん事業の指導について」
(雇児発0501第3号)
(以下
「本件局長通知」という。
)においては,養子縁組あっせんに係る指導の
留意事項について,営利を目的として養子縁組あっせんを行うことは,厳に禁止されるものであるが,交通,通信等に要する実費又はそれ以下の額を徴収することは差支えないと指摘されている。
また,本件局長通知においては,養子縁組あっせんを行う者に対し指導を行うべき事項として,①実親が養子縁組に関し意思決定を行う前に,実親に対して,その経済的な問題や子育ての問題を解決するための児童相談所や福祉事務所等からの公的な支援を受けながら自ら養育することができる可能性や,自ら養育しない場合に子の里親委託などの選択肢をとりうる可能性について説明を行うこと,及び,②実親は,原則として養子縁組成立の審判が確定するまで養子縁組の同意を撤回することができるとされており,実親の熟慮や養子縁組の同意の撤回を妨げる行為として,実親に対し養子縁組の同意の撤回を禁止することなどの行為をしてはならないこと等も指摘されている。
さらに,本件局長通知においては,社会福祉事業としての養子縁組あっせん事業の適正な運営に係る指導の留意事項について,養子縁組あっせん事業を適切に実施するため,社会福祉士,児童福祉法13条2項に定める児童福祉司となる資格を有する者,医師,保健師,助産師又は看護師である相談員を2名以上(うち1名は社会福祉士であることが望ましい。)配
置するように指導すること等が指摘されている。

[甲8]

厚生労働省雇用均等・児童家庭局家庭福祉課長通知である平成26年5月1日付け「養子縁組あっせん事業を行う者が養子の養育を希望する者等から受け取る金品に係る指導等について」
(雇児福発0501第5号)
(以
下「本件課長通知」という。
)においては,本件局長通知における「交
通,通信等に要する実費」について,個別的に金額の計上が可能な費用として,①実親への相談・支援に要した交通及び通信に要した費用,②養親希望者への研修,家庭調査及び相談・支援の実施,児童の安全確保や家庭調査の実施等の活動に要した交通及び通信に要した費用,③出産に要した費用,④養親希望者の児童の引き取りまでの間の養育等に要した費用,⑤家庭裁判所への提出書類作成費,⑥文書の翻訳料及びビザ申請書類作成費,⑦成長後の児童の相談・支援等に必要な養子縁組あっせんに係る文書の保存に要する費用については,実際にかかった費用を,個別的に金額の計上が困難な費用として,⑧養子縁組が成立しなかったケースにおける実親への相談・支援に要した交通及び通信に要した費用,⑨人件費又は物件費等の事業運営に必要な費用については,前年度の費用や養親希望者等の延べ数を参考に,当該年度の養親希望者等の数の推計により按分する等,適切な方法によってあらかじめ算定した額を積算しても差し支えないと指摘されている。
また,本件課長通知においては,養親希望者等に対し,実費以下の額を「養子縁組あっせんに必要な負担金」として請求することは差し支えないが,請求にあたっては,請求する実費の呼称については,
「養子縁組あっ
せんに必要な負担金」とし,請求されている金品がどの実費に充当されるものであるかが容易に理解できるものとするとともに,その内訳をあらかじめ養親希望者等に説明すること等の事項の遵守を求めること等も指摘されている。

[甲9]
(2)認定事実
証拠(各項目末尾掲記のもの)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。

被告法人の事務所は,アパートの一室に所在しており,法人名の看板もなく,室内にはパソコンが設置されているのみで,乳幼児を保育するベッド等の備品は一切なかった。
[甲18]


被告C及び被告Dは,被告法人について,千葉県知事に第二種社会福祉事業の届出をする際,インターネットを介し,看護師3名及び社会福祉士1名を募集し,被告法人の構成員として届け出た。被告法人は,これらの者に対し,顧問料名目で毎月1万円を支払っていたものの,被告法人の養子縁組あっせん事業における活動は一切なかった。
[甲16]


被告C及び被告Dは,原告らに対し,本件実親とのマッチング以前に,優先的に養子縁組あっせんを受けることができる旨告げて,明細を一切説明しないで養子縁組あっせんに要する実費名目で225万円の支払を受けた(前記前提事実のとおり,平成28年4月11日に100万円,5月上旬に2回に分けて125万円)
。被告C及び被告Dは,現在に至るまで,
原告らに対し,実費の明細を明らかにしていない。
被告Dは,原告Aから支払を受けた100万円を被告C及び被告Dの引っ越し費用,被告法人のウェブサイトの外注費用,広告費等に支出し,被告Cは,原告Aから支払を受けた125万円をインターネット上で商品を安く仕入れて高く売る事業(いわゆる「せどり」
)の仕入費等に支出し
た。
[甲13ないし16]


本件実親は,同年4月上旬頃,被告法人のウェブサイトの妊婦専用の問い合わせフォームを経由して登録し,同月11日付けで,前記前提事実のとおり,被告法人に養子縁組あっせんを専属委任する旨の委任状を提出した。
その際,被告Cは,本件実親に対し,被告法人には,看護師の資格を有する職員や子供の面倒を見る資格を有する職員がいること,子供を預かるスペースがあること等を説明した。
被告Dは,原告らに対し,本件実親の承諾なく,本件実親の個人情報が記載された本件養子の出生届を交付した。本件実親は,このような被告法人の不誠実な対応に不信感を抱き,特別養子縁組の同意を撤回しようと考え,被告Cに対し,本件養子の返還を申し出た。
結局,原告らは,本件養子を本件実親に返還した。
[甲19]

(3)前記前提事実及び認定事実のとおり,①被告C及び被告Dは,被告法人が養子縁組あっせん事業を適切に行う人的・物的体制がないにもかかわらず,活動の実体のない看護師や社会福祉士の資格を有する者が,被告法人において,養子縁組あっせん事業に関与するかのように装って,千葉県知事に第2種社会福祉事業の届出を行った上,②被告C及び被告Dは,原告ら及び本件実親に対しても,被告法人が養子縁組あっせん事業を適切に行う人的・物的体制を備えているかのように装って,養子縁組あっせんを行い,③本件実親に対しても,看護師や社会福祉士等の専門家による指導・助言等が一切行われず,また,被告Dが本件実親の承諾なく本件養子の出生届を原告らに交付し,結果として本件実親をして被告らに対し不信感を抱かせ,原告らが本件実親に子を返還せざるを得なくなったものであり,④また,被告C及び被告Dは,原告らに対し,本件課長通知が定める交通,通信等に要する実費が何ら具体的に発生していない段階で,優先的に養子縁組あっせんを受けられる
という勧誘方法により,内訳明細を一切説明することなく,合計225万円もの実費名目の金員の支払を要求し,その支払を受け,⑤実費名目で支払を受けた金員の大半を交通,通信等に要する実費には明らかに該当しない費用に支出したものである。
以上を総合すると,被告C及び被告Dは,共謀の上,法令に沿った適切な養子縁組あっせん事業を行い得るだけの人的・物的体制を整備していないにもかかわらず,故意に,原告らに対し,本件ウェブサイトや口頭で虚偽の説明をして,適切な体制を整備しているものと原告らに誤信させて,営利目的で原告らと被告法人との間で,本件あっせん契約を締結させ,実際は実費でないのに実費名目の金員225万円を原告Aに支払わせたほか,原告らにその他の費用を支出させて損害を与えたと認めるのが相当である。
(4)したがって,被告C及び被告Dの上記行為は違法であり,原告らに対し,詐欺による不法行為責任又は一般社団法人法117条1項の賠償責任を負う。
また,代表理事である被告Cは,被告法人の職務を行うについて上記詐欺による不法行為を行ったものであるから,被告法人は,原告らに対し,一般社団法人法78条に基づく賠償責任を負う。
2
争点2(原告らに生じた損害の有無及び額)について
(1)実費

225万円

証拠(甲5,12,15,16)及び弁論の全趣旨によれば,原告Aは,前記欺罔行為により,実際には実費ではないのに実費名目で,平成28年4月11日,指定された被告D名義の口座に100万円を振り込み,同年5月1日及び同月4日,被告Cに対し,125万円を現金で支払ったことが認められるから,上記合計225万円を被告らの不法行為と相当因果関係のある原告らの損害と認める。
なお,本件あっせん契約の当事者となったのは原告Aのみであり,上記2
25万円を現実に交付し,あるいはその名義で振り込んだ行為者も原告Aであるものの,原告らは夫婦であり,本件あっせん契約は原告ら夫婦が本件養子の養親となるもので,原告ら両名が前記欺罔行為により錯誤に陥り上記実費を出捐したというべきであるから,不法行為責任ないし一般社団法人法の責任の関係では,これらはいずれも原告らの損害と認める。
(2)登録料

2万円

証拠(甲16)及び弁論の全趣旨によれば,原告らは,適法かつ適切な養子縁組あっせんを受けられるものと誤信して,被告Cに対し,被告法人の登録料2万円を支払ったことが認められ,これは実費にあたらないことから,被告らの不法行為と相当因果関係のある原告らの損害と認める(これらが原告らの損害と認められることは,前記(1)で述べたとおりである。。)
(3)子育てを行うために支出した費用

26万円

証拠(甲20,22,23(枝番を含む。)及び弁論の全趣旨によれば,)
原告らは,本件養子の子育てを行うために,チャイルドシート,ベビーベッド,おむつ,粉ミルク等を購入し,その費用として22万4076円を支払ったこと,原告らは,助産院において,授乳,沐浴等の研修を受け,その費用として10万1566円を支払ったことが認められるから,民事訴訟法248条の趣旨にも鑑み,原告らが請求する26万円を被告らの不法行為と相当因果関係のある原告らの損害と認める。
(4)慰謝料

各30万円

原告らが特別養子縁組を希望するに至った経緯,原告らが子育てを行った期間,本件養子を家族の一員として迎え,我が子のように子育てをしていたこと,その他本件に顕れた諸般の事情を考慮すれば,原告らに生じた精神的苦痛の慰謝料としては,原告一人当たり30万円をもって相当と認める。(5)まとめ
被告らが原告らに連帯して支払うべき金額は,実費,登録料及び子育てに
要した費用253万円となり,これに本件に現れた一切の事情を考慮し,弁護士費用として25万円を加算すると,278万円となる。
被告らが原告Aに連帯して支払うべき金額は,慰謝料30万円となり,これに本件に現れた一切の事情を考慮し,弁護士費用として3万円を加算すると,33万円となる。
被告らが原告Bに連帯して支払うべき金額は,慰謝料30万円となり,これに本件に現れた一切の事情を考慮し,弁護士費用として3万円を加算すると,33万円となる。
第4

結論
よって,原告Aの請求は主文第1項及び第2項の限度で理由があるからその限度で認容し,原告Bの請求は主文第1項及び第3項の限度で理由があるからその限度で認容し,その余は理由がないから棄却することとし,主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官

高瀬順久

裁判官

本間陽子

裁判官

吉元祥太郎)

トップに戻る

saiban.in