判例検索β > 平成29年(ネ)第1579号
商標権侵害差止請求控訴事件 商標権 民事訴訟
事件番号平成29(ネ)1579
事件名商標権侵害差止請求控訴事件
裁判年月日平成29年11月30日
法廷名大阪高等裁判所
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平成29年11月30日判決言渡同日原本交付裁判所書記官

平成29年(ネ)第1579号商標権侵害差止請求控訴事件(原審大阪地方裁判所平成28年(ワ)第6268号)
口頭弁論終結日平成29年9月14日
判決
控訴人兼被控訴人

ビジネスラリアート株式会社
(以下「一審原告」という。)

同訴訟代理人弁護士

木村
圭二郎

同松井亮行
同訴訟代理人弁理士

柳野隆生
同補佐人弁理士

大西裕人
被控訴人兼控訴人

株式会社ロックオン
(以下「一審被告」という。)

同訴訟代理人弁護士

川主1内康雄文
一審被告の控訴に基づき,原判決を次のとおり変更する。

(1)

一審被告は,「ADEBiS(アドエビス)」,「THREe(スリー)」,
「SOLUTION(ソリューション)」及び「EC-CUBE(イーシーキューブ)」に係る役務を提供するに当たり,インターネット上のホームページ,パンフレット及び看板等の広告に別紙「標章目録」記載3,4及び6の各標章を使用してはならない。
(2)

一審被告は,インターネット上のホームページ,パンフレット及び看板等から別紙「標章目録」記載3,4及び6の各標章を抹消せよ。(3)
2
一審原告のその余の請求をいずれも棄却する。

一審原告の控訴を棄却する。

3(当審における追加請求)
(1)

一審被告は,一審被告のホームページ(http://www.lockon.co.jp)
からリンクが張られた2017年9月期第2四半期決算説明会の動画閲覧画面及び2017年9月期第2四半期決算説明資料において,別紙「抹消対象目録」記載の箇所の別紙「標章目録」記載7の標章を使用してはならない。
(2)

一審被告は,上記(1)の動画閲覧画面及び説明資料から,別紙「抹消
対象目録」記載の箇所の別紙「標章目録」記載7の標章を抹消せよ。(3)
4
一審原告の当審におけるその余の追加請求をいずれも棄却する。
訴訟費用は,第1,2審を通じてこれを2分し,それぞれを各自の負担
とする。
事実及び理由
第1
1
控訴の趣旨
一審原告

(1)

原判決を次のとおり変更する。

一審被告は,「ADEBiS(アドエビス)」,「THREe(スリー)」,「SOLUTION(ソリューション)」及び「EC-CUBE(イーシーキューブ)」に係る役務を提供するに当たり,インターネット上のホームページ,パンフレット及び看板等の広告に別紙「標章目録」記載1ないし6の各標章を使用してはならない。


一審被告は,インターネット上のホームページ,パンフレット及び看板等から,別紙「標章目録」記載1ないし6の各標章を抹消せよ。

(2)

当審における訴えの追加

一審被告は,「ADEBiS(アドエビス)」,「THREe(スリー)」,「SOLUTION(ソリューション)」及び「EC-CUBE(イーシーキューブ)」に係る役務を提供するに当たり,インターネット上のホームページ,パンフレット及び看板等の広告に別紙「標章目録」記載7の標章を使用してはならない。


一審被告は,インターネット上のホームページ,パンフレット及び看板等から,別紙「標章目録」記載7の標章を抹消せよ

(3)

訴訟費用は,第1,2審とも一審被告の負担とする。

(4)

仮執行宣言

2
一審被告

(1)

原判決中,一審被告敗訴部分を取り消す。

(2)

前項の取消部分に係る一審原告の請求をいずれも棄却する。

(3)

訴訟費用は,第1,2審とも一審原告の負担とする。

第2

事案の概要

1
事案の要旨
原審における本件は,原判決別紙「商標権目録」記載の商標権を有する一審原告が,一審被告が別紙「標章目録」記載1ないし6の各標章をインターネット上のホームページ等の広告に使用する行為が上記商標権を侵害すると主張して,一審被告に対し,商標権に基づき,商品又はサービスを提供するに当たり,広告に上記各標章を使用することの差止め及びホームページ等からの上記各標章の抹消を求めた事案である。
原審は,一審原告の請求を,「ADEBiS(アドエビス)」,「THREe(スリー)」,「SOLUTION(ソリューション)」及び「EC-CUBE(イーシーキューブ)」に係る役務を提供するに当たり,広告に別紙「標章目録」記載3ないし6の各標章を使用することの禁止及びホームページ等からのこれらの標章の抹消を求める限度において認容した。
これに対し,一審原告は,上記各役務を提供するに当たり,広告に別紙「標章目録」記載1及び2の各標章を使用することの禁止及びホームページ等からのこれらの標章の抹消を求める敗訴部分を不服として控訴を申し立てた。また,当審において,上記各役務を提供するに当たり,広告に別紙「標章目録」記載7の標章を使用することの禁止及びホームページ等からの同標章の抹消を求める請求を追加した。
他方,一審被告は,その敗訴部分を不服として控訴を申し立てた。2
前提事実(証拠等の掲記のない事実は当事者間に争いがない。)

(1)

当事者

一審原告は,コンピュータ・システム及びソフトウェアの開発,販売,レンタル及び保守,インターネットを利用した各種情報処理サービス及び情報提供サービスの提供等を目的とする株式会社である。


一審被告は,コンピュータに関するシステム開発・販売,情報処理サービス業,情報提供サービス業等を目的とする株式会社である。

(2)

一審原告の商標権
一審原告は,原判決別紙「商標権目録」記載1及び2の商標権(以下,それぞれ「本件商標権1」,「本件商標権2」といい,併せて「本件各商標権」という。また,これらの商標権に係る登録商標をそれぞれ「本件商標1」,「本件商標2」,「本件各商標」という。)を有している。

(3)

本件各商標の役務区分
本件各商標の各商標登録出願時点での商標法施行令1条別表に規定された第9類,第35類及び第42類の商品及び役務並びにこの商品及び役務に属するものとして,同時点での商標法施行規則6条別表に規定された商品及び役務の内容は,原判決別紙「役務区分」のとおりである(以下,これら時点での上記政令及び省令の別表によるものを,単に「第9類」,「第35類」,「第42類」のようにいう。)。
(4)

一審被告の行為

一審被告は,「ADEBiS(アドエビス)」,「THREe(スリー)」及び「SOLUTION(ソリューション)」という役務を提供している(以下,これらの役務を併せて「被告3サービス」という。これらの役務と本件各商標の指定商品・指定役務との同一・類似性には争いがある。)。
また,一審被告は,ダウンロード可能なソフトウェアである「EC-CUBE(イーシーキューブ)」をインターネット等のネットワークを介して,需要者に提供している(以下,被告3サービスと「EC-CUBE」を併せて「被告4サービス」という。)。「EC-CUBE」に係る役務は第42類の「電子計算機用プログラムの提供」に該当し,同役務によって提供されるソフトウェアは第9類の「電子応用機械器具及びその部品」に該当し,本件各商標の指定商品及び役務と同一である。


一審被告は,自らのホームページ(http://www.lockon.co.jp
以下

「被告ホームページ」という。)のトップ画面(甲7の1頁)並びにトップ画面の「企業情報」,「事業内容」,「採用情報」,「ブログ」,「ニュース」及び「IR情報」の項目をそれぞれ選択して表示される画面(甲8,22~27の各1頁)の左上ヘッダ部分に別紙「標章目録」記載6の標章(以下「被告標章6」といい,同目録記載の他の各標章も同様に呼称する。また,被告標章1ないし7を併せて「被告各標章」という。)を使用し,被告標章6の表示の中には被告標章1が含まれている。また,一審被告は,被告ホームページの「プレスリリース」中の「EC-CUBE」を広告宣伝するページ(甲28の1頁)及び被告ホームページの「採用情報」の画面に表示されるYouTube上の動画(甲10の1・2)において,被告標章1を,その上に「L」字様の図形を,その下に「ImpactOnTheWorld」との文字をそれぞれ配する態様で使用している。さらに,一審被告は,パンフレット(甲15)の表紙に,被告標章6を使用している。

一審被告は,フェイスブックの公式ページ(甲11)において,被告標章2を使用している。


一審被告は,被告ホームページ中の「SOLUTION」を紹介する画面(甲9の4)の上部ヘッダ部分に,被告標章3を使用している。


一審被告は,その事務所の正面玄関口に被告標章4を表示し,看板として利用している(甲12,13)。


一審被告は,被告ホームページのトップ画面の下部の「OFFICIALBLOG」という項目及び「ブログ」のページに掲載した写真(甲7の4頁,甲25の2,3頁,甲30の1~3頁)に重ねて被告標章5を使用している。

一審被告は,被告ホームページのトップ画面の「IR情報」からリンクできる,2017年9月期第2四半期決算説明会の動画閲覧画面において,当該動画の左上部分及び当該動画の再生時に表示される「2017年9月期第2四半期決算説明資料」中に被告標章7を使用した(甲46~49)。
(5)

本件各商標と被告各標章の対比
被告各標章は,本件各商標と類似する。

3
争点

(1)

被告3サービスの役務は,本件各商標の指定役務と同一又は類似するか
(争点1)
(2)

一審被告は,被告4サービスについて被告各標章を使用しているか(争点
2)
(3)

商標法26条1項1号により,本件各商標権の効力が被告各標章に及ばな
いか(争点3)
(4)
第3
1
差止めの必要性(争点4)
争点に関する当事者の主張
争点1(被告3サービスの役務は,本件各商標の指定役務と同一又は類似するか)について
【一審原告の主張】
以下のとおり,被告3サービスは,本件各商標の指定役務である「電子計算機用プログラムの提供」(第42類)に該当するから,本件各商標の指定役務と同一又は類似である。
(1)

被告3サービスに共通する点
被告3サービスにおいて,顧客は,一審被告があらかじめ準備したアプリケーションソフトの利用を目的として一審被告と取引をしている。また,一審被告は,被告3サービスを,いずれもプラットフォームを提供する事業と称している。プラットフォームとは,ハードウェアやソフトウェア,サービスが動作する基盤となる環境を意味し,それ自体が「電子計算機用プログラム」であるから,その使用を認める行為は,第42類の「電子計算機用プログラムの提供」に該当する。
「ADEBiS」及び「THREe」に関する利用契約約款においても,一審被告が提供する役務がASPサービス(ソフトウェアをインターネット等を通じて利用させるサービス)である旨が定められている。

(2)

「ADEBiS」に係る役務について
「ADEBiS」は,マーケティング効果の測定と,そこで得られたデータの活用に係る役務を提供するものである。顧客は,必要な情報を入力し指令をすれば,一審被告が自らのサーバ内にあらかじめ用意し,利用可能な状態で管理している広告効果計測用の電子計算機用プログラムによって情報の収集解析等が実施され,その処理結果を取得して閲覧することができる。「ADEBiS」に係る役務は,一審被告が開発・設定・管理等を行った一審被告のサーバ内のアプリケーションソフトを,顧客にインターネット回線を通じ利用させている点でASPサービスであり,第42類の「電子計算機用プログラムの提供」に当たる。
(3)

「THREe」に係る役務について
「THREe」は,リスティング広告入札最適化を図るためのアプリケーションソフトである。顧客は,「THREe」に最適化の判定に必要な情報を入力して指令をすれば,電子計算機用プログラムによってリスティング広告の最適化に関する処理が実施され,その処理結果を閲覧できる。「THREe」に係る役務も,「ADEBiS」同様,ASPサービスであり,第42類の「電子計算機用プログラムの提供」に当たる。

(4)

「SOLUTION」に係る役務について
「SOLUTION」に係る役務は,主としてEC(電子商取引)サイトのコンサルティングサービスや受託開発を行うものである。一審被告は,顧客の要望に応じ,インターネット広告媒体の利用状況と効果を蓄積・統合して分析するシステムを構築し,そこで構築されたインターネット広告の分析システムを目的とする電子計算機用プログラムを,インターネット回線を通じて提供している。顧客は,一審被告が提供するプログラムを手段として利用し,自らデータ等の分析を行っている。「ADEBiS」や「THREe」との違いは,当初に人が関与するシステム構築作業(カスタマイズ)があるという点のみである。役務の本質的部分は,一審被告のサーバ内に構築された電子計算機用プログラムを,インターネット回線を通じ,顧客に利用させることを内容とするから,第42類の「電子計算機用プログラムの提供」に該当する。
仮に,上記カスタマイズの局面を役務と捉えるとしても,当該役務は「電子計算機用プログラムの設計・作成又は保守」又は「情報技術(IT)に関する助言(コンサルティング)」として第42類に属する。

【一審被告の主張】
被告3サービスは,以下のとおり,第42類の「電子計算機用プログラムの提供」には該当せず,第35類の「広告業」又は「市場調査又は分析商品の販売に関する情報の提供」に該当する。
(1)

被告3サービスに共通する点

役務の提供にインターネットWEBシステムが含まれている場合に,その役務が第42類であるか否かは,その役務がインターネットWEBシステムを利用しなくても成立するか否かによって判断すべきである。役務の分類は,提供者の需要者に対する訴求と,需要者が実際に得られるサービスの本質で判断され,役務の提供に人手が関与するかは第42類該当性を確定させる要素ではない。
ソフトウェアによって自動的に行われる役務であることを理由に第42類に該当すると考えると,あらゆる役務が電子的手段によって実現されている現在,あらゆる役務が第42類に分類されてしまう。ネットバンキングや検索エンジン事業者の提供するリスティング広告サービスもソフトウェアによって自動的に行われる役務であるが,これらを第42類に分類することは,商標役務分類の意図にも社会通念にも合致しない。
ネットバンキングにおいて利用者が求めているのはソフトウェアを利用できることではなく,送金を完了させることなどであり,検索エンジン事業者の提供するリスティング広告サービスにおいて利用者が求めているのは管理画面を操作できることではなく,広告が表示されることである。これらと同様,被告3サービスにおいては,一審被告もその顧客も,プログラムではなく,広告効果の計測が行われることや,広告の最適化が行われることに着目している。被告3サービスのプログラム部分は,第42類に該当しない他の手段で代替可能であるのに対し,広告効果計測や広告最適化やこれを複合させたものは他の手段によって代替できない。


第42類に該当するASPサービスにおいては,当該サービスを利用すること自体の対価を支払うこととされており,当該ASPサービスを利用した動機が達成されたかどうかで代金額が変わることはない。これに対し,被告3サービスの対価は,プログラムを利用することによってでなく,広告効果計測や出稿自動化が行われることによって発生する。被告3サービスの価値の本質は,ネットワークを通じて提供されるプログラムである管理画面ではなく,一審被告が提供している広告効果計測や入札最適化にある。ウ
被告3サービスにおける管理画面は,一審被告の管理するサーバ上でデータが作成され,ユーザーが使用するブラウザ上で描画される。そこでの操作はサーバに伝達され,サーバは,操作を利用者の指示として受け取り,管理画面上で指示の登録やデータ表示等を行うから,電子計算機用のプログラムがインターネットを介して利用者に提供され,ユーザーは,これを利用している。他方,広告効果計測や入札自動化に係る部分のプログラムは,ユーザーに提供されていない。
被告3サービスは,ネットバンキングや検索エンジン事業者の提供するリスティング広告サービスと同様,管理画面と役務の要部でプログラムが別であって,その利用主体も別である。一審被告が役務提供のために利用しているプログラムは,ユーザーが入力した情報や指示を自動的に参照しているにすぎない。


一審被告が被告3サービスについて「ASPサービス」と表示したことはあるが,これらの役務の本質的要素は,広告効果計測や入札自動化であり,その本質が単なる呼称によって変化することはない。

(2)

「ADEBiS」に係る役務について
「ADEBiS」においては,計測対象の設定と計測結果の報告のためにWEB画面が利用されるものの,電話や文書によることも可能であり,インターネットWEBシステムを利用しなくても役務が成立する。
また,「ADEBiS」に係る役務を提供するには,広告からの遷移結果が一審被告のサーバに送信されるようにするための広告媒体側での措置,当該媒体から一審被告のサーバへのデータ送信が必要である。一審被告は,これらの措置やデータ送信を実施できるようにするために各広告メディアとの折衝や調整を行っている。
「ADEBiS」は,顧客が出稿した各種メディア上の広告の効果を調査し,費用や時間対効果,広告間の比較結果を分析して,その結果を報告するものであり,「(商業)企業の事業若しくは商業機能の管理に関する援助」に当たる。
したがって,「ADEBiS」に係る役務は,第42類ではなく,第35類に該当する。
(3)

「THREe」に係る役務について
「THREe」においては,キーワードや予算の設定と出稿結果の報告のためにWEB画面を利用するものの,電話や文書によることも可能であり,インターネットWEBシステムを利用しなくても役務が成立する。
また,「THREe」に係る役務を提供するには,広告効果の計測先である広告媒体やリスティング広告提供事業者から,定期的に情報を取得し,その情報の分析結果をリスティング広告の出稿に反映させる必要がある。したがって,「THREe」に係る役務は,第42類ではなく,第35類に該当する。

(4)

「SOLUTION」に係る役務について
「SOLUTION」の役務提供過程においてWEB画面が介在することはあるが,それは業務指示や結果報告の手段でしかなく,他の手段によって代替可能であり,インターネットWEBシステムを利用しなくても役務が成立する。また,「SOLUTION」に係る役務の中心は,データを収集するデータ基盤,業界の動向に応じたデータ分析,これらを踏まえた広告に関するコンサルティングであって,ソフトウェアだけでは成立しない。
したがって,「SOLUTION」に係る役務は,広告に関するコンサルティングであるから,第42類ではなく,第35類に該当する。

2
争点2(一審被告は,被告4サービスについて被告各標章を使用しているか)について
【一審原告の主張】
以下のとおり,一審被告による被告ホームページでの被告各標章の使用は,被告4サービスについて,その広告に標章を付して,顧客に提供する行為といえるため,「商品若しくは役務に関する広告・・・を内容とする情報に標章を付して電磁的方法により提供する行為」(商標法2条3項8号)に該当し,一審被告によるパンフレット,看板での被告各標章の使用は,被告4サービスについて,「商品若しくは役務に関する広告・・・に標章を付して展示し,若しくは頒布」(同号)する行為に該当する。
(1)

被告ホームページでの被告各標章の使用
被告ホームページは,パンフレットと同様,全体として一つの媒体として被告4サービスを紹介している。そして,被告ホームページに付された被告各標章は,被告4サービスと関連する態様で用いられている。被告ホームページのどの場所にせよ,特別に顕著な方法で一審被告の名称を記載すれば,被告各標章が付された当該ページ自体には被告4サービスを紹介する内容が掲載されていなくても,商品又は役務に関する広告等を内容とする情報に標章を付して電磁的方法により提供する行為に該当する。

(2)

「採用情報」のページ上の動画における被告標章1の使用
「採用情報」のページで閲覧できるYouTube上の動画(甲10の1・2,甲20の1・2)では,一審被告が「マーケティングロボット」を提供,展開する企業であることが紹介されている。「マーケティングロボット」とは,一審被告のサービスを利用して,企業と顧客のコミュニケーションの円滑化(自動化・効率化)を図ることを意味すると考えられる。したがって,上記動画においては,被告4サービスに関連して,被告標章1が使用されている。
(3)

事務所の正面玄関口における被告標章4の使用
被告標章4が表示されている一審被告の事務所の正面玄関口(甲12,13)は,電話及び4台の椅子が設置されており,来客を予定している。また,仮に,顧客が一審被告の事務所を訪問しなかったとしても,一審被告は,事務所の正面玄関口の写真をホームページやフェイスブックに公開している(甲11)から,被告標章4は,被告4サービスの広告宣伝活動の一環として表示されている。
(4)

被告ホームページのトップ画面上の写真における被告標章5の使用被告ホームページにおいて写真(甲7の4頁)が掲載されたトップ画面のページには,被告4サービスを紹介するバナーが存在し,被告ホームページを閲覧し,上記の写真を閲覧した顧客は,画面上で少しスクロールするだけで,被告4サービスを紹介するバナーを閲覧することが可能となる。したがって,当該バナーと上記写真での被告標章5の使用には関係性がある。
【一審被告の主張】
「株式会社ロックオン」という文字列だけからでも法人名であることが理解できるが,一審被告が開設するいずれのホームページにおいても,一審被告の「企業情報」,「会社概要」のページ(乙8)等へのリンクが設けられており,一審被告は,商標権者である一審原告が出所でないことを殊更に明示し,説明している。
一審原告が商標法2条3項8号に該当すると主張する一審被告の各行為に関する個別の主張は,以下のとおりである。
(1)

被告標章1及び6について

被告ホームページのトップ画面(甲7)
「株式会社ロックオン」(一審被告)以外の「ロックオン」が提供者であると認識することはなく,一審原告が提供者ではないことが積極的に表示されており,出所の誤認が生じることはない。
また,被告ホームページ等への記載は,商号権の行使であり,これを殊更に商標と解するのは不自然である。どの商品又は役務について使用されているのか関係性を一意に把握することができない。
さらに,被告標章6を構成する商号と商標は,直線的に区別されており,位置的な重なり合いもなく,図形の中に一体的に取り込まれているといった特別の形態をしていない。「株式会社ロックオン」という適法に使用できる商号を,適法に使用できる商標と並列的に記載しているにすぎない。イ
「企業情報」のページ(甲22)
前記アと同様である。
また,一審被告の役務に関する表示がない。「マーケティングプラット
フォームのアドエビス」との記載は社歴を説明しているにすぎず,被告標章1及び6は,役務の出所を示すためには用いられていない。

「事業内容」のページ(甲23)
前記アと同様である。
また,企業の事業紹介のページであるから,企業→役務という方向での関係性の表示であって,役務→企業という関係性を示すことが意図されたものではない。


「採用情報」のページ(甲10の1・2,甲24)
前記アと同様である。
また,一審被告の役務に関する表示がない。「ADEBiS」,「EC-CUBE」との記載はあるが,採用情報における担当職務の説明にすぎず,被告標章1及び6は,役務の出所を示すためには用いられていない。一審被告の企業理念,メンバー紹介等が記載されているが,ASPサービスに分類され得る役務の紹介はされていない。


「ブログ」のページ(甲25)
前記アと同様である。
また,一審被告の役務に関する表示がない。「EC-CUBE」との記載はあるが,ベトナムでの開発の開始を告知しているにすぎず,被告標章1及び6は,役務の出所を示すためには用いられていない。

「ニュース」のページ(甲26)
前記アと同様である。


「IR情報」のページ(甲27)
前記アと同様である。
また,一審被告の役務に関する表示がない。「アドエビス」との記載はあるが,金融商品取引法上要求される事業上の重要事実の開示にすぎず,被告標章1及び6は,役務の出所を示すためには用いられていない。

「プレスリリース」のページ(甲28)
前記アと同様である。
また,一審被告の役務に関する表示がない。被告標章1及び6は,「独自ECサイト立ち上げワンストップセミナー」の出所として明示されているにすぎず,プログラムの提供サービスの出所を示すためには用いられていない。

(2)

被告標章2について
前記(1)アと同様である。
また,一審被告のフェイスブック(甲11,29)において,被告標章2が記事の出所を示すために表示されているが,記事には役務の表示がなく,「・・・さんの投稿をシェアしました」とあるとおり,第三者の記事をリンクする方法によって共有した体裁をとり,自己の役務であるという意図を含んでいないから,被告標章2は,役務の出所を示すためには用いられていない。

(3)

被告標章3について
前記(1)アと同様である。
また,「SOLUTION」のページ(甲9の4)において,「株式会社ロックオン」との記載があり,通常人であれば,提供者を「株式会社ロックオン」であると認識する。提供者の名称が明示されているため,タイトルとして掲げられている「SOLUTION」との記載は,役務の名称として認識される。このように名称と提供元が明示されている場合,「サービスの名称が『ロックオン』である」とか,「サービスの提供元が『株式会社ロックオン』以外の『ロックオン』である」という誤解が生じることはない。
つまり,「株式会社ロックオン」という表示は,その会社種別の表記があることによって,他の商標である「ロックオン」とは異なるものであることを,需要者に認識させ,違う出所であることを積極的に明示している。なお,「SOLUTION」のページ(甲9の4)において,被告標章3の真上にある「デジタル戦略の総合支援パートナー」という語は,抽象的で特定の役務を示すものではない。むしろ,その直後に「株式会社ロックオンのソリューション」とあるから,被告標章3は,営業主体を意味しているとみるのが自然である。
(4)

被告標章4について

一審被告の事務所の入口の写真(甲12,13)
一見しただけでは,会社の事業内容を判別できない。
また,役務との関連性が認められない。一審被告が提供する役務は,インターネットを用いてのみ提供が可能であり,事務所ではその提供はされないし,広告宣伝活動も行われていない。一審被告の顧客は,インターネットや広告代理店を通じて募集され,顧客が事務所に訪問して申し込むことはない。顧客は,全て事業者であるため,一審被告の営業担当社員が業務上顧客に接触する場合は,顧客を訪問する。
事務所入口の「ADEbiS」や「EC-CUBE」に関する広告物は,本件訴訟開始前に撤去した。


ブースセッションの写真(甲14)
平成25年に数日間開催された広告技術に関するイベントに一審被告が出展した際のブーススペースを撮影したものである。一審被告は,同年中に被告標章4の使用を停止し,上記イベント終了後直ちに,当該ブーススペースや被告標章4が付された什器を撤去,廃棄した。
(5)

被告標章5について

被告ホームページのトップ画面の写真(甲7の4頁)
被告標章5は,一審被告の社名の正式な英語表記であり,商号を使用しているにすぎないから,商標的使用に当たらない。
また,当該写真は,社員旅行の集合写真であって,商品又は役務に関する情報は含まれていない。トップ画面には,「EC-CUBE」等に関する情報がバナーとして掲載されているが,これらのバナーと上記写真の関係性を示すような配置や文字情報は存在しない。被告標章5は,「ADEbiS」や「EC-CUBE」に言及する他の部分と同格のコンテンツである上,写真画像に埋め込まれていて,社員旅行に積極的に関連付けて使用されている。したがって,上記写真内の被告標章5は,一審被告の提供する役務の出所を示すものとして使用されていない。


「ブログ」のページの写真(甲30の1~3頁)
前記アと同様である。
被告標章5は,写真内においてのみ使用されていること,「LOCKONCO.,LTD.COMPANYTRIP2016」と,一連の文字列とされていること,写真が社員の集合写真やイベントの写真であること,写真外に「社員旅行記」と付記されていることから,「LOCKONCO.,LTD.」との表記は,この社員旅行がどの会社のものかを示すために用いられている。この写真の外部にも役務の表示はなく,何らかの役務との関係性を看取することはできない。
(6)

被告標章7について
2017年9月期第2四半期決算説明会の動画閲覧画面及び同決算資料(甲47~49)における被告標章7は,簡略化された資料の中で,一審被告という法的主体を示すもので,役務のために用いられていない。上記資料の中では一審被告の商品及び役務に言及しているが,広告宣伝ではなく,経営への貢献・関与を述べるものである。
一審被告の商号の登記は,本件商標1の登録に3年以上も先立つ。純然たる会社情報における社名略称の記載についてまで商標権侵害を主張するのは権利の濫用である。
なお,被告ホームページのトップ画面から2017年9月期第2四半期決算説明会の動画閲覧画面へのリンクは,現在は期間の経過により自動的に削除された。ただし,2017年9月期第2四半期決算説明会の動画閲覧画面は,被告ホームページ中,「株主・投資家の皆様へ」の「IRニュース」のコーナーにある「2017.05.15お知らせ平成29年9月第2四半期決算説明会(動画配信)」との見出しのリンク先に掲載されている。また,上記コーナーからは,上記動画閲覧画面に表示される「2017年9月期第2四半期決算説明資料」がダウンロードできる。
3
争点3(商標法26条1項1号により,本件各商標権の効力が被告各標章に及ばないか)について

【一審被告の主張】
以下のとおり,一審被告は,被告各標章について,一般的なゴシック体を用い,「株式会社」の表記と同じ大きさで,ホームページのテーマカラーと同一の配色を用いている。また,被告各標章は企業スローガンや「L」のロゴ部分に近接して表示されているが,混合した図案とはなっていない。ロゴやスローガンと会社名は,相互に独立した要素として看取するのが通常の感覚である。したがって,被告各標章は,一審被告の名称を普通に用いられる方法で表示するものにすぎない。
(1)

被告標章1及び6

被告ホームページのトップ画面(甲7)並びに「企業情報」(甲22),「事業内容」(甲23),「採用情報」(甲24),「ブログ」(甲25),「IR情報」(甲27)及び「プレスリリース」(甲28)の各ページ
自己のホームページ等において,自己の商号に着色して表示すること,その冒頭部に商号を表示し,ロゴマーク,スローガン等を併記することは一般的である上,被告標章6は被告ホームページの左上に小さく表示されているにすぎない。被告標章6において,一審被告の商号と並んで記載されているのは図形ではなく,「L」,「ImpactOnTheWorld」といった文字であって,それぞれ登録商標である。商号権と商標権を適法に行使しているにすぎない。
被告標章1は,ゴシック体という一般的字体,えんじ色という謙抑的な色調,本文と同様の文字サイズで表示され,えんじ色は,一審被告のいわゆるコーポレートカラーとして多用されている。そのため,企業ロゴのみが突出する字体,サイズ,色使いとはなっていない。
被告標章1は,ページ左上部分という,企業のホームページにおいて企業名を表示する際に一般的である位置に表示されている。

「ニュース」のページ(甲26)
前記アと同様である。
また,被告標章1は,プレスリリースの見出しに表示されている。プレスリリースは,報道各社へ配信する都合上,フォーマットが限定され,おおむね100字以内で表現する必要がある。そして,どの企業がリリースをするかは,配信する報道各社及び閲覧者にとって肝要な事実であり,通常,冒頭部に企業名が記載される。これらのプレスリリースでは,「株式会社ロックオン」とは,冒頭部に一度記載されているだけである。加えて,企業のプレスリリースの読み手において,冒頭部の企業名が,企業名から離れた他人の商標であると誤認する可能性もない。

「採用情報」のページの動画(甲10)
被告標章1は,ゴシック体という一般的字体,えんじ色という謙抑的な色調で表示され,文字サイズは,行の高さとして見ると画面全体に対し10分の1程度である。そのため,企業ロゴのみが突出する字体,サイズ,色使いとはなっていない。
「採用情報」のページで閲覧できる動画は,企業を紹介するもので,この種の動画において企業名を中心に表示することは通常のことである。企業名を表示する以上,文字サイズが同じである場合には,どの位置に表示するかによって目立ち方は変わらない。
企業紹介の動画では,これを閲覧する者にどの企業の動画かを認識させるため,冒頭部に企業名を表示するのが通常である。

(2)

被告標章2
被告標章2は,フェイスブックのページ(甲11,29)の記事のタイトル部分に表示されている。フェイスブックの個別の記事について,ユーザーが名称の表示方法を変更することはできず,記事の冒頭部には投稿者の氏名・名称が表示される。そのため,フェイスブックの個別の記事の冒頭部にアカウント名が表示されるのは普通のことである。
被告標章2は,本文と同等の文字サイズで,字体も本文と同じゴシック体で表示されており,若干太字となっているのは,インターネットブラウザが,当該文字がリンクであることを認知して設定しているものであり,一審被告が特別に操作をしたものではない。また,リンクが若干太字となるのは,インターネットホームページにおいては通常のことである。
フェイスブックは実名制であるから,アカウント名は企業名を表し,利用者としても,そのように認識している。そのため,一般の閲覧者が記事冒頭部の企業名を,別のサービス名であると誤認することもない。

(3)

被告標章3
前記(1)アと同様である。「株式会社ロックオン」との商号及び商標「L」が並列的に記載されているだけである。
また,「SOLUTION」のページ(甲9の4)において,被告標章3は,ゴシック体という一般的字体,黒という文字色で,最も一般的な色調,本文より小さい文字サイズで表示されている。そのため,企業ロゴのみを特に目立たせる字体,サイズ,色使いとはなっていない。
(4)

被告標章5
「ブログ」のページ(甲30)において,被告標章5は,社員旅行を紹介するための記念写真中に記載された「2016年の社員旅行」であることを表示するための記載である。「LOCKONCO.,LTD.」は,一審被告の名称そのものではないが,定款に定めている一審被告の名称の英文表記である。「CO.,LTD.」は,CompanyLimitedの略であって,「会社」を表す表記であることは周知であり,会社名の本体部分の英文表記に「CO.,LTD.」を付記することは,企業名を表示するために必要な方法である。この写真は,一審被告の社員がベトナム支社を訪問した際の現地採用従業員との記念写真であり,文字入れ編集後の写真を現地での企業PRに使用する目的で作成された。そのため,ベトナムの閲覧者がどの企業のPR写真であるかを判別できるように,英文字で記載することには合理性がある。
また,被告標章5は,一般的なゴシック体で表示され,「K」の先が若干伸びているが,注目を集める機能を有するような特異性はない。また,被告標章5は,「ロックオン社員旅行」という意味のタイトル部分に表示されているため,ブログ記事の本文より文字が大きいことには必然性がある。大きさもブログ記事の本文の縦幅として10分の1以下,横幅も半分以下であり,特別に大きくはない。字体及び位置的な表示形態の両面において,一般需要者の注意を惹くような態様で用いられていない。

【一審原告の主張】
一審被告の名称は,一般的な書体による黒文字で,「株式会社ロックオン」と表示すれば足り,特殊な色や書体を用い,特殊な図形と組み合わせて,殊更に需要者の注意を惹く場所に配置する等して,表示する必要はない。むしろ,以下のとおり,被告各標章は,自らの事業主体としての名称を表示することを目的とするのではなく,会社名に赤色等の目立つ色を用い,殊更に需要者の注意を惹く場所に配置し,他の図形と組み合わせて目を惹くようにし,他の文字と組み合わせて会社のブランドを強く印象づけ,殊更に出所表示機能を企図するものである。そのような使用は,商標法26条1項1号の「普通に用いられる方法で表示する」ものとはいえない。
(1)

被告標章1について

被告ホームページでの表示方法
一審被告は,被告ホームページの左上に被告標章1を使用している。ホームページは,自社の商品及び役務を広告宣伝する機能を有し,その左上部分(ヘッダ部分)は,当該ホームページにアクセスする需要者の注意を最も惹きやすい箇所であり,需要者は,当該箇所に表示される標章を,当該企業の出所表示機能を有するハウスマークとして認識する。
ホームページのヘッダ部分における表示は,製造者・販売者等に関する情報提供として必要な範囲のものとはいえない。会社等に関する情報は,ホームページ内の「会社概要」等とタイトルを付された部分に表記されるのが一般的であり,会社情報に関心のある需要者は,当該場所で情報提供されれば十分だからである。
被告標章1は,出所表示機能を有する場所に表示され,コーポレートカラーである濃い赤色で着色を施されている。自己の名称を自己のホームページ等において着色して表示する必要性は乏しい。
加えて,一審被告は,被告標章1の傍らに,いずれも登録商標である「L」字様の図形(商標登録第5450134号)及び「ImpactOnTheWorld」(商標登録第5450135号)の文字を配している。これら一審被告の出所表示機能を有する登録商標と組み合わされた被告標章1の表示方法は,1つのハウスマークと見ることができる。
一審被告は,被告ホームページのHTML内に「LOCKON」,「ロックオン」とのキーワードメタタグを組み込んで,検索エンジンで「ロックオン」とのキーワードで検索すれば,被告ホームページが表示されるようにし,「株式会社」が付かない「ロックオン」との表示を用いて一審被告の商品等が宣伝されるホームページに結び付けているから,一審被告が「ロックオン」という文言を標章として用いる意思を有していることは明らかである。
したがって,上記の表示方法は,殊更に出所表示機能を企図するものである。

YouTube上の動画での表示方法
事業概要等を内容とするYouTube上の動画(甲10の1・2)における表示方法は,配置の仕方及び色がやや異なるものの,被告ホームページ上での表示方法と同様,被告標章1の傍らに,いずれも登録商標である上記「L」字様の図形及び「ImpactOnTheWorld」の文字を配している。したがって,この表示方法も,殊更に出所表示機能を企図するものである。

(2)

被告標章2について
前記(1)アと同様である。
また,各企業は,広告宣伝の効果を期待して,フェイスブックのページに,出所表示機能を有する自社のハウスマークを表示し,需要者は,フェイスブックのページに表示される標章を,当該企業の出所表示機能を有するハウスマークとして認識する。一審被告は,自らの提供する役務を広告宣伝するためにフェイスブック(甲11)を利用し,被告標章2を,その傍らに,登録商標である上記「L」字様の図形を配置して表示している。
一審被告の出所表示機能を有する登録商標と組み合わされた被告標章2の表示方法は,殊更に出所表示機能を企図するものであり,取り分けフェイスブックの一審被告のページの冒頭左上において,「L」字様の図形が殊更に強調されており,当該ページを見た需要者は,「L」字様の図形と組み合わされた被告標章2を,一審被告の事業に係る商品及び役務の出所を表示するものとして認識する。
(3)

被告標章3について
ホームページは,自社の商品及び役務を広告宣伝する機能を有し,その左上の箇所は,当該ホームページにアクセスする需要者の注意を最も惹きやすい箇所であり,需要者は,当該箇所に表示される標章を,当該企業の出所表示機能を有するハウスマークとして認識する。
「SOLUTION」のサービスを紹介するホームページ(甲9の4)の中央やや左上において,被告標章3が表示され,その傍らに,一審被告の出所表示機能を有する登録商標である上記「L」字様の図形が配され,組み合わされている。このような表示方法は,殊更に出所表示機能を企図するものである。
(4)

被告標章4について
一審被告は,その事務所の正面玄関口に被告標章4を表示し,看板として利用している(甲12,13)。
商標法26条1項1号の適用を受ける前提として,当該標章が会社商号と同一である必要があるが,被告標章4は,「LOCKON」のみで「株式会社」が付されていない。
したがって,被告標章4の使用については,同号は適用されない。
(5)

被告標章5について
一審被告は,ホームページのトップ画面(甲7)の下部の「OFFICIAL
BL

OG」という項目において,被告標章5を掲載する必要性のない写真に使用し,欧文字の「K」に丸みを持たせた上で,「K」の右下部分を通常より長く描くという特徴的な書体を用いており,出所表示機能を殊更に企図して使用している。
(6)

被告標章6について

ホームページでの表示方法
前記(1)アと同じく,殊更に出所表示機能を企図するものである。

パンフレットでの表示方法
パンフレットは,ホームページと同様に,自社の商品及び役務を広告宣伝する機能を有し,その表紙は,需要者がまず目にする,注意を最も惹きやすい箇所である。需要者は,当該箇所に表示される標章を,当該企業の出所表示機能を有するハウスマークとして認識する。それゆえ,各企業は,そのような出所表示機能を企図して,パンフレットの表紙にハウスマークを表示している。
したがって,被告4サービスを広告宣伝する内容が含まれたパンフレット(甲15)の表紙に表示されている被告標章6は,出所表示機能を有する場所に表示され,その上,コーポレートカラーである濃い赤色を背景とする着色を施している。
加えて,被告標章6は,一審被告の出所表示機能を有する登録商標である上記「L」字様の図形及び「ImpactOnTheWorld」の文字と組み合わされて表示されている。このような表示方法は,殊更に出所表示機能を企図するものである。

4
争点4(差止めの必要性)について

【一審原告の主張】
被告標章1・2は,単体で使用されるおそれがある。
一審被告は,被告標章3ないし6の使用を禁じられると,被告標章1及び2のとおりの「株式会社ロックオン」との文字を,他の図形や文字とは組み合わせない態様で被告ホームページの左上に使用する可能性が極めて高い。【一審被告の主張】
争う。
第4

当裁判所の判断

1
争点1(被告3サービスの役務は,本件各商標の指定役務と同一又は類似するか)について

(1)

認定事実
前提事実及び後掲証拠によれば,被告3サービスについて,以下の事実が認められる。

一審被告の事業
一審被告の平成27年12月24日提出の有価証券報告書においては,一審被告の事業について,以下のとおり説明されている(甲32)。
(ア)

一審被告の事業は,マーケティングプラットフォーム事業と商流プ
ラットフォーム事業の2つのセグメントで構成されており,いずれもデジタルマーケティング(デジタルデータやデジタル施策を使って,マーケティング全体の最適化を行うこと)活動を行う企業に向けたものである。
なお,プラットフォームとは,ハードウェアやソフトウェア,サービスが動作する基盤となる環境のことである。
(イ)

マーケティングプラットフォーム事業は,マーケティングプラット
フォームシステム「ADEBiS」の開発・販売と,顧客企業内に蓄積されたデータを組み合わせ,インターネット広告出稿の最適化を行うサービスである「THREe」で展開するものである。
(ウ)

商流プラットフォーム事業は,EC(電子商取引)オープンプラット
フォームである「EC-CUBE」と,電子商取引ビジネスのコンサルティング・開発を行うサービスである「SOLUTION」で展開するものである。イ
「ADEBiS」に係る役務

(ア)「ADEBiS」は,顧客が利用するインターネット広告がどれだけの成果を上げているかを計測するサービスである。
具体的には,一審被告の顧客が広告を掲載したサイトにおいて,閲覧者が当該広告をクリックし,顧客が計測対象とするサイトに移動する際に,一審被告のADEBiSサーバを経由するようにする(リダイレクト方式)。そして,計測対象サイトにおいて,成果を計りたい箇所にコンバージョンタグを埋め込み,それを通じてADEBiSサーバが遷移に係るID等の情報を取得し,遷移の計測データが管理画面に反映される。一審被告の顧客は,管理画面において,どの広告の効果を計測するか,どのサイトのために計測を行うか,閲覧者が遷移先のサイト内のどのページを見た時に広告効果があったと判断するかなどを設定する。一審被告のサーバに収集された閲覧者の行動に関するデータは,一定の頻度で解析される。顧客は,一審被告のデータベースに蓄積管理された解析データをWEB画面に表示させて閲覧する。当該画面では,広告が表示された回数,対象の広告がクリックされた回数,計測対象サイトのページに設置されている「計測タグ」が反応した回数,対象の広告から発生した遷移の数,広告出稿に掛けたコスト,売上総額,広告の費用対効果等が表示される((ア)全体につき乙18)。
(イ)

「ADEBiS」は,「ADEBiS利用契約約款」(甲39)において,ASP(ApplicationServiceProvider)サービスであるとされている。また,平成27年12月24日提出の有価証券報告書(甲32)においては,SaaS(SoftwareasaService)方式で提供しているとされている。ASPについては,「インターネットを通じて顧客にビジネス用アプリケーションをレンタルするサービスのこと」(甲32の9頁),「インターネット上でアプリケーションを提供するサービスの提供者(事業者)のこと」(甲36),「ソフトウェアをインターネットなどを通じて利用者に遠隔から利用させる事業者のこと。また,そのようなサービス」,「利用者の提供するソフトウェアを,インターネットなどのネットワークに接続されたサーバコンピュータに展開する。利用者はWEBブラウザや専用のクライアントソフトなどを通じてサーバにアクセスし,これを利用する。」(甲38)と説明されている。
SaaSについては,「必要な機能を必要な分だけサービスとして利用できるようにしたソフトウェアのこと」(甲32)と説明されている。ウ
(ア)

「THREe」に係る役務
「THREe」は,「ADEBiS」や媒体側に蓄積しているデータを独自の最適化エンジンにより解析し,リスティング広告(検索エンジンを利用して一定のキーワードで検索した際に表示される,当該キーワードに関連する広告)の出稿や入札を最適化するものである。
具体的には,一審被告の顧客は,管理画面において,広告の予算や方針等,広告出稿に関する概括的な情報を設定する。その情報は,一審被告のデータベースにおいて蓄積管理され,一審被告が設定したロジックに基づいて一定の頻度で広告最適化計算が行われる。顧客は,一審被告のデータベースにおいて蓄積管理されたその処理結果である最適化や運用の結果をWEB画面で閲覧する((ア)全体につき甲32,乙18)。
(イ)

「THREe」は,「THREe利用契約約款」(甲40)において,ASPサービスであるとされている。
また,「THREe」のホームページ(甲9の2,乙11)には,「THREe」につき,「AIによる自動運用

『ヒト型ポートフォリオ』で,面倒

な運用管理を簡単に行えますまるで人が考えているかのような運用を自動で行ってくれる機能を搭載。完全自動運用により,管理の時間短縮と効率改善が同時に狙えます!」,「月予算に基づき,日予算を自動調整。安心・確実に予算管理を行えます予算管理に必要な設定は『月予算』のみ!これだけで,ポートフォリオが毎朝,残予算から適切な日予算を算出して,効果的なキャンペーンに予算を寄せて配信します。」と記載されている。

「SOLUTION」に係る役務
「SOLUTION」は,多数の広告媒体の利用状況及び効果を蓄積し,統合して分析し,効果的な広告戦略を策定するものである。一審被告は,顧客との間で,データの収集,活用のためのコンサルティングを行い,どのようなデータの蓄積が必要かを検討し,「ADEBiS」等に基づいてシステムを構築し,提供する(乙18)。
被告ホームページでは,「SOLUTION」は,顧客に最適化した「プライベートDMP」を構築するものとして紹介されている。DMP(DataManagementPlatform)は,「様々なサーバに蓄積されるビッグデータや自社サイトのログデータなどを一元管理・分析し,広告配信などのアクションプランの最適化を実現するデータ統合管理ツールのこと」と説明されている(甲32,乙12)。

(2)

判断

第42類の「電子計算機用プログラムの提供」の意義
商標法施行規則別表において定められた商品又は役務の意義は,商標法施行令別表の区分に付された名称,商標法施行規則別表において当該区分に属するものとされた商品又は役務の内容や性質,国際分類を構成する類別表注釈において示された商品又は役務についての説明,類似商品・役務審査基準における類似群の同一性などを参酌して解釈するのが相当である(最高裁判所平成23年12月20日判決・民集65巻9号3568頁参照)。
本件商標2の場合,一審原告が本件で主張する第42類は,その名称を「科学技術又は産業に関する調査研究及び設計並びに電子計算機又はソフトウェアの設計及び開発」とするものであるところ,その出願時の商標法施行規則別表では,「電子計算機のプログラムの設計,作成又は保守」と並んで,「電子計算機用プログラムの提供」が属するものとされ,その出願時に用いられていた国際分類(第10版)を構成する類別表注釈では,第42類に属する役務について,「第42類には,主として,個別的又は集団的に人により提供されるサービスであって,諸活動のうちの複雑な分野の理論的又は実用的な側面に関連するものが含まれる。当該サービスは,科学者,物理学者,エンジニア,コンピュータプログラマー等のような専門家によって提供されるものである。」とされており,特許庁による解説では,「電子計算機のプログラムの設計,作成又は保守」について,「このサービスには,いわゆる,ソフトウェアの開発業者等が提供するサービスが含まれます。」とされ,「電子計算機用プログラムの提供」については,「電気通信回線を通じて,電子計算機用プログラムを利用させるサービスです。」とされ,類似商品・役務審査基準では,「電子計算機用プログラムの提供」は,第9類の「電子計算機用プログラム」に類似するとされている。
そして,第9類では,「電子応用機械器具及びその部品」として,「電子計算機用プログラム」が含まれるとされ,国際分類を構成する類別表注釈では,「この類には,特に,次の商品を含む。」,「記録媒体又は頒布方法の如何に拘わらず,全てのコンピュータプログラム及びソフトウエア,すなわち,磁気媒体に記録されたソフトウェア,又はコンピュータネットワークからダウンロードされるソフトウエア」とされている(以上,甲33)。
これらのことからすると,第42類の「電子計算機用プログラムの提供」とは,コンピュータプログラマーによって設計開発されたコンピュータ用プログラムを,電気通信回線を通じて利用させる役務を含むものであると解するのが相当であり,「電子計算機用プログラムの設計・作成又は保守」とは,コンピュータプログラマー等のソフトウェアの開発業者が電子計算機用プログラムを設計ないし作成し,又はその手直し等をする役務であると解するのが相当である。そして,第9類の「電子計算機用プログラム」がそれによって提供される目的ないし機能を問わないものであるのと同様に,第42類の役務における上記のプログラムも,その利用により達成される目的ないし機能を問わないものであると解するのが相当である。そして,これは,本件商標1についても同様であると解される。

「ADEBiS」に係る役務について
「ADEBiS」においては,一審被告の顧客がインターネットを通じて計測対象サイトを設定し,どのような効果を計測するか等を設定すると,一審被告が構築したシステムにより,広告の閲覧者の行動に関するデータが取得,蓄積,分析され,顧客は分析結果を閲覧することができる。上記の処理はソフトウェアによってなされており,一審被告は,利用契約約款等により対外的に「ADEBiS」がASPサービスやSaaSである旨を説明している。このように,一審被告の顧客は,電気通信回線を通じて,広告効果計測の条件を指定し,その条件に従ってソフトウェアによる処理がなされた後に,その結果を閲覧しており,そのような態様によって一審被告が提供するソフトウェアを利用していると認められる。
そうすると,一審被告は,顧客に「ADEBiS」のソフトウェア,すなわち,電子計算機用プログラムを利用させるサービスを提供していると認められ,「ADEBiS」に係る役務は,第42類の「電子計算機用プログラムの提供」に該当するというべきである。


「THREe」に係る役務について
「THREe」において,一審被告の顧客が広告出稿に関する情報を設定すると,この情報が保管されて最適化計算が行われて運用され,顧客は,最適化や運用の結果を閲覧することができる。一審被告は,利用契約約款等により,対外的に,「THREe」がASPサービスであり,「ADEBiS」のデータを活用しながら最適化を行っている旨を説明している。また,「THREe」は,「ADEBiS」等のデータを活用して,リスティング広告の出稿や入札を行うところ,上記の処理はソフトウェアによってなされており,一審被告は,利用契約約款により対外的にASPサービスである旨を説明している。このように,一審被告の顧客は,電気通信回線を通じて,広告出稿に関する情報を設定し,その情報に従ってソフトウェアによる処理がなされた後に,その結果を閲覧しており,そのような態様によって一審被告が提供するソフトウェアを利用していると認められる。
そうすると,一審被告は,「ADEBiS」と同様,顧客に「THREe」のソフトウェア,すなわち,電子計算機用プログラムを利用させるサービスを提供していると認められ,「THREe」に係る役務は,第42類の「電子計算機用プログラムの提供」に該当する。

「SOLUTION」に係る役務について
「SOLUTION」は,一審被告が,顧客との間で,多数の広告媒体でのデータの収集,活用のためのコンサルティングを行った上で,顧客に最適な広告戦略を策定するためのデータ統合管理ツール(「プライベートDMP」と称しているもの)を「ADEBiS」等に基づいて構築し,提供するものであり,それによるデータの蓄積及び分析は,ソフトウェアによって行われるものである。そうすると,「SOLUTION」に係る役務は,特定の顧客向けにソフトウェアを用いたシステムを開発して提供するものといえるから,第42類の「電子計算機用プログラムの設計,作成又は保守」に当たるというべきである。


一審被告の主張について
(ア)

一審被告は,被告3サービスが第35類の「広告業」又は「市場調査又は分析商品の販売に関する情報の提供」に該当する旨主張する。確かに,「ADEBiS」及び「THREe」においてソフトウェアによって処理される内容は,広告効果の測定やリスティング広告入札の最適化等であり,「広告」や「市場調査又は分析」に関わるものではある。しかし,前記アのとおり,第42類の「電子計算機用プログラムの提供」は,それによって達成される目的や機能を問わないと解されるから,上記の処理が,一審被告のソフトウェアによって自動的になされ,ソフトウェアによる動作で全てが行われている以上,そのソフトウェアが広告や市場調査等に関わるものであるとしても,「電子計算機用プログラムの提供」に当たるというべきである。
また,「SOLUTION」についても,一審被告が開発して提供するシステムの目的ないし機能が広告出稿の支援にあるとしても,第42類の「電子計算機用プログラムの設計,作成又は保守」は,そのプログラムによって達成される目的や機能を問わないと解されるから,同役務に当たるというべきである。なお,「SOLUTION」にはコンサルティング業務が含まれるが,これは,当該顧客向けにシステムを開発することに必然的に伴う業務であるから,上記の「電子計算機用プログラムの設計,作成又は保守」の一部を構成すると解するのが相当であり,これだけを取り出して第35類の「市場調査又は分析」等に当たると解することは相当でない。

(イ)

一審被告は,役務の提供にインターネットWEBシステムが含まれてい
る場合に,その役務が第42類であるか否かは,その役務がインターネットWEBシステムを利用しなくても成立するか否かによって判断すべきである旨主張する。
しかし,第42類における「電子計算機用プログラムの提供」が,コンピュータプログラマーによって設計開発されたコンピュータ用プログラムを,電気通信回線を通じて利用させる役務を含むものであり,そのプログラムの利用により達成される目的ないし機能を問わないと解するのが相当であることは前記アのとおりであるから,一審被告の上記主張は採用できない。
一審被告は,ソフトウェアによって自動的に行われる役務であることを理由に第42類に該当すると考えると,電子的手段によって実現されているあらゆる役務が第42類に分類されてしまい,ネットバンキングや検索エンジン事業者の提供するリスティング広告サービスといった役務も第42類に分類されるという,商標役務分類の意図や社会通念に合致しない結果になる旨主張する。
確かに,ネットバンキングや,検索エンジン事業者の提供するリスティング広告サービスも,コンピュータプログラムの電気通信回線を通じた利用によって提供されるという側面を有しているとはいえる。しかし,商品及び役務の区分は,究極的には市場における取引の実情を踏まえて定められるべきものであるから,コンピュータプログラムの電気通信回線を通じた利用によって実現される役務の全てが当然に第42類に分類されるのではなく,第42類に分類されるべき役務は,社会通念としてコンピュータプログラムを提供するといえるものでなければならないことは当然である。社会通念上,ネットバンキングのプログラムの提供を受けてこれを使用する主体は銀行であり,銀行の顧客(ネットバンキングによるサービスの利用者)が上記プログラムの提供を受けているわけではないし,リスティング広告を提供するためのプログラムについても,その提供を受けてこれを使用する主体は検索エンジン事業者であって,同事業者が上記プログラムを誰かに提供するものとは考えないのである。
これに対し,一審被告は,コンピュータに関するシステム開発・販売,情報処理サービス業,情報提供サービス業等を目的としていて(前記前提事実(1)イ),なおかつ,被告3サービスについて,プラットフォームを提供する事業と称したり,ASPサービスであることや,SaaS方式で提供していることを自らうたったりしているのであるから,銀行の提供するネットバンキングに係るサービスや,検索エンジン事業者の提供するリスティング広告サービスと同列に考えることはできない。なお,一審被告は,被告3サービスをASPサービスと表示したことにつき,役務の本質が単なる呼称によって変化することはない旨主張するが,役務提供者が付した呼称は,需要者の認識に大きな影響を与えるものとして重要である。
(ウ)

一審被告は,被告3サービスの対価が,プログラムを利用することによってでなく,広告効果計測や出稿自動化が行われることによって発生することをも指摘するが,料金体系によって役務の性質が決定付けられるとは必ずしもいえないから,上記判断を左右するものではない。
(エ)

一審被告は,自らが広告効果測定の仕組みを構築,維持することにより,リスティング広告の最適化のための情報を自らが取得して分析しており,顧客に対してはシステム利用の結果を提供しているにすぎない旨主張し,一審被告の取締役である

A
は,その報告書において,顧

客は,WEB画面を通じて条件や情報を設定し,処理結果を閲覧するにすぎない旨記載している(乙18の2ないし7頁)。
しかし,被告3サービスは,いずれも一審被告自身がプラットフォームを提供する事業であると称しており,ソフトウェア等が動作する基盤となる環境を整えて顧客に利用させることがその目的とされている。システムの構築,維持は,「ADEBiS」及び「THREe」においては一審被告の役務の提供の前提となる事項であって,これらの作業をもって提供される役務の本体部分であると認めることはできない。また,一審被告の顧客は,条件や情報を設定し,処理結果を閲覧するという態様により,一審被告の提供するソフトウェア(電子計算機用プログラム)を利用していると認められる。「電子計算機用プログラムの提供」の役務においては,ユーザーは,当該プログラム自体の運用には関与しないのが通常であるから,一審被告がシステムを構築,維持しているからといって,一審被告がリスティング広告最適化のための情報を取得して,結果を顧客に提供しているのみと捉えることはできない。
また,「SOLUTION」においては,システムの構築,維持は,第42類の「電子計算機用プログラムの設計,作成又は保守」の一部を構成する業務というべきであるから,やはり,一審被告がシステムの構築,維持をしていることをもって,第42類に該当しないとはいえない。
したがって,一審被告の上記主張は,採用できない。

小括
以上によれば,被告3サービスは,本件各商標の指定役務である第42類の「電子計算機用プログラムの提供」又は「電子計算機用プログラムの設計,作成又は保守」に該当し,前記前提事実(4)アのとおり,「EC-CUBE」に係る役務が本件各商標の指定商品である第9類の「電子応用機械器具及びその部品」及び指定役務である第42類の「電子計算機用プログラムの提供」に該当することは当事者間に争いがないから,被告4サービスも本件各商標の指定商品又は指定役務に該当する。

2
争点2(一審被告は,被告4サービスについて被告各標章を使用しているか)について

(1)

認定事実
前記前提事実,後掲証拠及び弁論の全趣旨によれば,一審被告による被告各標章の使用態様について,以下の事実が認められる。

被告ホームページでの使用態様

(ア)

被告ホームページでは,トップ画面(甲7)から,下位の階層である「企業情報」(甲22,乙8),「事業内容」(甲8,23),「採用情報」(甲24),「ブログ」(甲25,30),「ニュース」(甲26),「IR情報」(甲27)の各ページに移ることができる。これらのトップ画面を含む各ページ左上のヘッダ部分に被告標章6が表示され,そのうち「株式会社ロックオン」の部分及び「L」字様の図形がえんじ色(濃い赤色)で着色されている(この着色部分のうちの「株式会社ロックオン」の部分が被告標章1である。)。なお,一審被告は,上記の「L」字様の図形の商標及び「ImpactOnTheWorld」の文字からなる商標をそれぞれ登録している(前者につき商標登録第5450134号,後者につき同第5450135号。弁論の全趣旨)。

(イ)

トップ画面の「NEWS」の項目においては,「アドエビス」,「EC-CUBE」の販売等の記載が見られ(甲7の1頁),同「PICKUP」の項目においては,バナー上に「EC-CUBE」が広告宣伝されている(甲7の3頁)。また,上記トップ画面の下部の「OFFICIALBLOG」という項目で掲載されている社員旅行の写真(甲7の4頁)には,上部の約4分の1ないし3分の1のスペースに,2行にわたって,被告標章5と「COMPANYTRIP2016」との文字が同様の字体で表示されている。

(ウ)

トップ画面の次の階層にある「企業情報」のうちの「代表挨拶」の
ページ(甲22)では,「株式会社ロックオンを設立した理由」に,「私たちのこうした願いを,企業理念である『ImpactOntheWorld』という言葉に込めました。」と記載され,「経営基本方針」に,「世の中へ何かを働きかけたいという強い想いを,企業理念である『ImpactOntheWorld』という言葉に込め,企業価値の最大化を図ります。」と記載されている。「2016年度年頭所感」では,「一つ目の『広告プラットフォーム事業の拡充』に関しては,広告効果測定のアドエビスから,マーケティングプラットフォームのアドエビスへとブランドも大きく刷新し,外部サービスとの連携も始まりました。」と記載されている。
また,上記の「企業情報」のうちの「会社概要」のページ(乙8)では,「事業内容」の欄に,「マーケティングプラットフォーム」として「アドエビス」,「THREe」が,「商流プラットフォーム」として「ECCUBE」,「SOLUTION」が列挙されている。(エ)

トップ画面の次の階層にある「事業内容」のページ(甲8,23)では,「マーケティングプラットフォーム」に属する「ADEBiS」及び「THREe」,「商流プラットフォーム」に属する「EC-CUBE」及び「SOLUTION」がそれぞれ広告宣伝されている。
また,被告4サービスについて,個別にサービス又は商品の内容が説明され,広告宣伝されているページの閲覧が可能である(甲9の1~甲9の4,乙10~12)。
このうち,「SOLUTION」の広告宣伝がされているページ(甲9の4)では,各ページの最上部ヘッダ部分の左側に「SOLUTION」との記載があり,その右隣に上下2段で,上に「デジタル戦略の総合支援パートナー」との記載があり,その下に被告標章3が表示されている。

(オ)

トップ画面の次の階層にある「採用情報」のページでは,事業概要等を紹介するYouTube上の動画を閲覧することができる。当該動画の冒頭及び末尾に,被告標章1が,その上にえんじ色で着色された「L」字様の図形を,その下に灰色で着色された「ImpactOnTheWorld」の文字をそれぞれ配する態様で表示される(甲10の1・2の各1頁)。同ページのうち,「技術系職種」の「プロダクトマネジメント」では,「ADEBiS」及び「EC-CUBE」が主力製品であると紹介されている(甲10の1・2の各4頁,甲24の2頁)。
(カ)

トップ画面の次の階層にある「ブログ」のページ(甲25)には,
「ロックオンベトナムEC-CUBE開発チーム誕生」の記事があり,「EC|CUBE」との表示も付されている(甲25の1頁)。同ページには,「2016年社員旅行記」の記事が2件掲載され,いずれも,写真の上部の約4分の1ないし3分の1のスペースに,2行にわたって,被告標章5と「COMPANYTRIP2016」との文字が同様の字体で表示されている(甲25の2,3頁,甲30の1~3頁)。
(キ)

トップ画面の次の階層にある「ニュース」のページ中の「プレスリ
リース」(甲26)には,「EC-CUBE」,「ADEBiS」,「THREe」の項目があり,最新版のリリースやサポート期限延長が告知されている。また,「プレスリリース」中の平成28年8月23日の記事のページでは,「EC-CUBE」の導入等に関する無料セミナーの開催が発表されており,そのうちの四角囲いの箇所(甲28の1頁)には,左上の部分に,被告標章1が,その上にえんじ色で着色された「L」字様の図形を,その下に灰色で着色された「ImpactOnTheWorld」との文字をそれぞれ配する態様で表示されている。このページの「『EC-CUBE』について」(甲28の5頁)には,「EC-CUBE」の説明が掲載され,「株式会社ロックオン概要」(甲28の5頁)には,「事業内容」の中で,「マーケティングプラットフォーム」として,「アドエビス」,「THREe」が,「商流プラットフォーム」として,「EC-CUBE」,「SOLUTION」が列挙され,「Category」の「プレスリリース」(甲28の6,7頁)には,「ADEBiS」,「THREe」,「EC-CUBE」が列挙されている。また,「このカテゴリの新着記事」(甲28の6頁)には,「EC-CUBE」の最新版のリリース,サポート期限延長,「アドエビス」の新サービスのリリースが告知されている。
(ク)

トップ画面の次の階層にある「IR情報」のページ(甲27)では,
「IR情報」の「2016.05.25」に,「リリース」として「『アドエビス』の一部サービスに関する料金改定のお知らせ」が告知されている。

フェイスブックでの使用態様
一審被告のフェイスブックの公式ページにおいては,投稿された各記事の冒頭に,投稿者名として「L」字様の図形と共に「株式会社ロックオン(公式ページ)」と記載され,その中で被告標章2が表示されている。一審被告がフェイスブックに投稿している記事には,「EC-CUBE」等のサービス又は商品を広告宣伝する内容も掲載されており,一審被告が「マーケティングメトリックス研究所」及び「EC-CUBE公式ページ」の投稿をシェアした場合には,転載された記事の冒頭の投稿者の表示も同じ青色のゴシック体で表示されている(甲11,29)。


事務所での使用態様
一審被告の事務所の正面玄関口には,「L」字様の図形と被告標章4を並べた看板が表示されており,それらは赤色又は金色で着色され,金色のものにはその下に「ImpactOnTheWorld」の文字が配されており,「ADEBiS」及び「THREe」の広告物が陳列されていた(甲12,13)。ただし,弁論の全趣旨によれば,現在は,上記「ADEBiS」と「EC-CUBE」の広告物は撤去されていることが認められる。
なお,一審被告がイベントに出展した際のブースにおける「LOCKON」との表示(甲14)は,被告標章4とは,斜体であるか否かなどの点において字体が明らかに異なるものであり,被告標章4を表示したものとは認められない。


パンフレットでの使用態様
被告4サービスの概要等の説明や広告宣伝が掲載されたパンフレットの表紙(甲15の1頁)の中央部には,被告標章6がえんじ色を背景とした白抜きで表示されている。
上記パンフレット中の「ImpactOnTheWorld」との文字が大きく掲げられたページ(甲15の2頁)では,「私たちも同じように,高い理想を胸に走り続けることで,世の中へ何かを働きかけられると信じています。その想いを企業理念である『ImpactOnTheWorld』という言葉に込めました。」と説明されている。
(2)

判断

被告標章6について

(ア)

被告標章6は,前記(1)において認定したとおり,被告ホームページ
のヘッダ部分及びパンフレットの表紙において表示されているところ,被告ホームページ及びパンフレットには,被告4サービスの項目,説明又は広告宣伝が掲載されている。そうすると,上記の被告標章6は,被告4サービスの出所表示として機能していると認められるから,一審被告は,被告ホームページ及びパンフレットにおいて,被告標章6を被告4サービスの広告に使用しているといえる。
(イ)

一審被告は,被告ホームページの「企業情報」,「採用情報」,「IR情報」,「プレスリリース」の各ページでは,被告標章6が被告4サービスの出所を示すためには用いられていない旨主張する。
確かに,「企業情報」等のページは,会社としての一審被告自身の広告を行うことを主な目的とするページであるとは認められるが,「事業内容」等のページでは,被告4サービスの広告がなされている上,一審被告が指摘するページでも,前記(1)アにおいて認定のとおり,被告4サービスのいずれかに言及されている。そして,被告ホームページは,トップ画面から下位の階層の各ページまでの全体がひとまとまりの広告媒体を構成し,閲覧者は各ページ間を自由に移動できるものであるから,ホームページ内で提供役務の広告が行われているときには,ホームページのヘッダ部分に表示された被告標章6は,被告4サービスの出所を表示するものとして機能していると認めるのが相当である。
(ウ)

一審被告は,「株式会社ロックオン」と出所を明記しているから被告各標章の表示によって一審原告との間で出所の誤認が生じることはない旨主張する。
しかし,前記前提事実(5)のとおり,被告各標章は本件各商標と類似しているのであり,一審被告が一審原告と異なる「株式会社ロックオン」であることが需要者の間で周知となっていると認めるに足りる証拠もないことからすると,被告各標章の表示によって出所の誤認混同が生じるおそれはあると認められる。

(エ)

一審被告は,被告標章6の表示は商号権の行使であり,かつ,登録商標と並列的に記載しているにすぎない旨主張する。
しかし,被告標章6は,ゴシック体の「株式会社ロックオン」との文字に,一審被告の登録商標であり,企業ロゴと思われる「L」字様の図形と,同じく一審被告の登録商標であり,企業理念ないし企業スローガンである「ImpactOnTheWorld」との文字がバランス良く組み合わされており,外観上ひとまとまりに把握されるものである。そして,このような企業ロゴ及び企業スローガンと組み合わされることにより,「株式会社ロックオン」との文字は,それが単体で使用される場合に比べて,特に需要者の注意を惹く態様となっているのであるから,商標的使用であることを否定することはできない。


被告標章1について
被告標章1は,被告標章6の中に含まれる態様のほかに,「採用情報」のページの動画や「プレスリリース」のページにおいて,上側に「L」字様の図形を,下側に「ImpactOnTheWorld」の文字を組み合わせた態様で表示されている。これらの態様は,いずれも,被告標章1,「L」字様の図形及び「ImpactOnTheWorld」の文字をバランス良く組み合わせたもので,外観上ひとまとまりに把握されるものであるから,被告標章1を独立した商標として使用したとは認められない。そして,本件の証拠上,被告標章1が他の図形や文字と組み合わされずに単独で使用されている実例は見当たらない。
したがって,一審被告は,被告4サービスについて被告標章1を使用しているとは認められない。

被告標章2について
被告標章2は,一審被告のフェイスブックの投稿記事において,投稿者名として,「L」字様の図形と共に表示されているものである。これは,外観上ひとまとまりに把握されるものであるから,被告標章2を独立した商標として使用したとは認められない。そして,本件の証拠上,被告標章2が他の図形や文字と組み合わされずに単独で使用されている実例は見当たらない。
したがって,一審被告は,被告4サービスについて被告標章2を使用しているとは認められない。


被告標章3について

(ア)

被告標章3は,被告ホームページ中の「SOLUTION」の広告ページの
ヘッダ部分において使用されており,「デジタル戦略の総合支援パートナー」との標語の真下に表示されているものである。
そうすると,「SOLUTION」について広告宣伝されているページのヘッダ部分に表示された被告標章3は,「SOLUTION」の出所表示として機能しているといえるから,一審被告は,「SOLUTION」について被告標章3を使用していると認められる。
(イ)

一審被告は,被告標章3には,「株式会社ロックオン」との記載があり,提供者の名称が明示されているから,他の商標である「ロックオン」とは異なる出所であることを積極的に明示している旨主張する。しかし,需要者の間で「株式会社ロックオン」と「ロックオン」では出所が異なることが広く認識されていることを認めるに足りる証拠はないから,一審被告の上記主張は採用できない。
(ウ)

一審被告は,「SOLUTION」の広告ページにおいて,被告標章3の直後に「株式会社ロックオンのソリューション」との記載があることを指摘するが,甲9号証の4の各ページによれば,当該記載は,被告標章3と異なり,当該ページのヘッダ部分にあるものではないから,被告標章3と結び付けて把握することは相当でなく,上記判断を左右しない。

被告標章4について
被告標章4は,一審被告の事務所の正面玄関口の看板として表示されているところ,通常,企業の事務所においては当該企業の商品又は役務に関する需要者向けの業務又はそのための広告宣伝がなされるのであり,そのことは,専らインターネットを通じて商品及び役務を提供している場合にも当てはまる。現に,被告標章4を用いた看板の傍らには「ADEBiS」と「EC-CUBE」の広告物が陳列されていたのであるし,また,仮に一審被告が主張するように直接の顧客自身が訪問して役務の提供を申し込むことはないとしても,一審被告の事務所に業務上の来客がないとも考え難い。そうすると,一審被告の事務所の正面玄関口における被告標章4の使用は,被告4サービスについての使用であると認められる。
なお,前記(1)ウのとおり,現在は,上記「ADEBiS」と「EC-CUBE」の広告物は撤去されていることが認められるが,そのことをもって事務所において被告4サービスに関する需要者向けの業務が行われていないとはいえないから,上記認定を覆すものではない。


被告標章5について
被告標章5は,被告ホームページのトップ画面とブログのページで掲載された社員旅行の写真に表示されているものであり,次行の被告標章5と同じ字体による「COMPANYTRIP2016」との文字と相まって,一審被告の社員旅行の説明文としての役割を果たしていると認められる。
証拠(甲7,25,30)によれば,被告ホームページにおける被告標章5の文字は,比較的大きく,かつ,その字体も一般的に文章に用いられるものではないもので,特に「K」の文字には,右下部分が通常よりも長く伸びているという特徴があることが認められる。しかし,社員旅行の説明文と看取することができないというほどデザイン性の強いものとまではいえない。また,上記写真自体には被告4サービスに関連する表示はされていない。被告ホームページのトップ画面には「アドエビス」及び「EC-CUBE」について広告宣伝がされており,「ブログ」のページには「EC-CUBE」に関する記事が掲載されているが,同じホームページ内にある記載とはいえ,社員旅行の説明文としての具体的役割を果たしている被告標章5が,これらの役務の出所をも表示しているとはいえない。
したがって,一審被告は,被告4サービスについて被告標章5を使用していると認めることができないというべきである。

(ア)

被告標章7について
被告標章7は,被告ホームページからリンクできる2017年9月期第2四半期決算説明会の動画閲覧画面において,当該動画の左上部分,当該動画の再生時に表示される「2017年9月期第2四半期決算説明資料」中,並びに被告4サービスに係る事業の再編に関する説明及び「EC-CUBEの収益構造」に関する説明の中で被告標章7が表示される(甲46ないし49)。
なお,弁論の全趣旨によれば,現在は,被告ホームページのトップ画面から2017年9月期第2四半期決算説明会の動画閲覧画面へのリンクは存在せず,被告ホームページ中,「株主・投資家の皆様へ」の「IRニュース」のコーナーにある「2017.05.15お知らせ平成29年9月第2四半期決算説明会(動画配信)」からリンクできるようになっていること,上記コーナーからは,上記動画閲覧画面に表示される「2017年9月期第2四半期決算説明資料」がダウンロードできるようになっていることが認められる。
(イ)

被告標章7の上記の表示形態からすると,被告標章7は,被告4サービスの出所を表示していると認めることができ,一審被告は,被告4サービスについて被告標章7を使用していると認められる。

(ウ)

一審被告は,被告標章7は,簡略化された資料の中で,一審被告という法的主体を示すものであること,商品及び役務の広告宣伝ではなく,経営への貢献・関与を述べるものであることを主張するが,一審被告の商品及び役務を広告宣伝する機能を果たす被告ホームページから閲覧可能な状態にした上で,一審被告の商品及び役務に関連して表示されているといえる以上,被告標章7が一審被告の商品及び役務のために用いられていることを否定することはできないというべきである。

(エ)

一審被告は,一審被告の商号の登記は,本件商標1の登録に3年以上も先立つのであって,純然たる会社情報における社名略称の記載についてまで商標権侵害を主張するのは権利の濫用である旨主張するが,一審被告主張の事情をもって直ちに一審原告の当該請求が権利の濫用に当たるということはできず,本件の全証拠によっても,他に権利の濫用であると評価すべき事情を認めるには至らないから,上記判断には影響しない。


小括
以上のとおり,一審被告は,被告標章3,4,6及び7を被告4サービスについて使用していると認められる。被告標章1,2及び5は,被告4サービスについて使用しているとは認められないから,被告標章1,2及び5に係る差止請求は,その余の点について判断するまでもなく,理由がない。
3
争点3(商標法26条1項1号により,本件各商標権の効力が被告各標章に及ばないか)について

(1)

被告標章6について
一審被告は,被告標章6は,冒頭部等の一般的な位置に目立たないようにして表示され,一審被告の会社名が「L」字様の図形や企業理念とは独立して読み取れるから,一審被告の会社名の表示は,自己の名称を「普通に用いられる方法」で表示したものである旨主張する。
しかし,被告標章6は,前記2(2)ア(エ)において説示したとおり,外観上
ひとまとまりに把握されるものであって,ゴシック体の「株式会社ロックオン」との文字に,企業ロゴと思われる「L」字様の図形と,企業スローガンである「ImpactOnTheWorld」との文字と組み合わされることにより,「株式会社ロックオン」との文字が単体で使用される場合に比べて,特に需要者の注意を惹く態様となっている。したがって,被告標章6の使用は,殊更にその部分に需要者の注意を惹きつけることにより,役務の出所を表示させる機能を発揮させる態様での使用というべきであって,被告標章6が,一審被告の商号である文字と,登録商標との組み合わせであることを踏まえても,自己の名称を「普通に用いられる方法で表示する」場合に当たるものとはいえない。
(2)

被告標章3について
被告標章3は,「株式会社ロックオン」の文字に,一審被告の登録商標である「L」字様の図形を組み合わされて表示されており,当該ページに接した需要者の注意を特に惹くような態様で表示されているから,一審被告の商号である文字と,登録商標との組み合わせであることを踏まえても,自己の名称を「普通に用いられる方法で表示する」場合に当たるものとはいえない。(3)

被告標章4について
証拠(甲32の1頁,乙2の1頁,乙8)によれば,一審被告の商号の英訳は「LOCKONCO.,LTD.」であることが認められる。「LOCKON」の文字からなる被告標章4はその略称であるから,被告標章4が「自己の名称」を表示するものとはいえない。なお,この略称が著名であることを認めるに足りる証拠はないから,被告標章4が「著名な略称」を普通に用いられる方法で表示する場合に当たるものともいえない。

4
(1)

争点4(差止めの必要性)について
被告標章1及び2について
一審原告は,一審被告が被告標章3ないし6の使用を禁じられると,被告標章1及び2のとおり,「株式会社ロックオン」との文字を,他の図形や文字とは組み合わせない態様で被告ホームページの左上に使用する可能性が極めて高いから,被告標章1及び2は単体で使用されるおそれがある旨主張する。
しかし,本件の証拠上,現に被告標章1及び2を単体で使用している事例は見当たらないから,一審被告による被告標章1及び2の使用に関し,本件各商標権の侵害及び使用のおそれを認めることはできない。

(2)

被告標章3,4及び6について
一審被告による被告標章3,4及び6の被告4サービスについての使用に関し,本件各商標権の侵害及び使用のおそれが認められるから,被告4サービスを提供するに当たり,ホームページ等にこれらの標章を使用することの禁止及びこれらの標章の抹消を命じるべきである。

(3)

被告標章7について
被告標章7が被告4サービスについて現に使用されていると認められるのは,被告ホームページからリンクできる1つの動画閲覧画面上の表示と,それに関連して閲覧及びダウンロード可能な資料中の表示である。この点について,本件各商標権の侵害が認められる。
他方,本件の全証拠によっても,それ以外に被告標章7が上記と同様の態様で使用されるおそれがあるとは認めるに至らない。加えて,被告標章7は,一般的なゴシック体の文字のみから成っており,商標的使用でない場合及び商標法26条1項1号に該当する場合を除いて一般的に差止めを命じることが困難であることをも勘案すると,被告標章7については,実際に使用された上記態様を超えてその使用の禁止を命じることは相当でなく,現に本件各商標権の侵害と認められる被告標章7の使用の禁止と抹消を命じることにとどめるべきである。
第5

結論
以上の次第で,一審被告の控訴に基づき,一審原告の請求(当審で追加されたものを除く。)についての当裁判所の上記判断と一部異なる原判決を変更することとし,一審原告の控訴は理由がないから棄却することとし,一審原告の当審における追加請求は,主文第3項(1)及び(2)に掲記の限度において理由があるから認容することとし,その余は理由がないから棄却することとする。仮執行宣言については,相当でないからこれを付さないこととする。よって,主文のとおり判決する。
大阪高等裁判所第8民事部

裁判長裁判官

山田陽三
裁判官

種村好

裁判官

中尾彰
(別紙)
標章目録
被告標章1及び同2は,当該色彩で表示された標章を特定するものであり,同3ないし同6は,色彩を問わずに特定するものである。

1
被告標章1

2
被告標章2

3
被告標章3
以下の態様で,「L」字様の図形と組み合わされて用いられた「株式会社
ロックオン」の標章

4
被告標章4
5
被告標章5

6
被告標章6
以下の態様で,「L」字様の図形及び「ImpactOnTheWorld」という文字
と組み合わされて用いられた「株式会社ロックオン」の標章

7
被告標章7
(別紙)

抹消対象目録

1
以下の画面中,左上部の「ロックオン」

2
以下の画面中,縦書きの「ロックオン」
3
以下の画面中,赤色の長方形を背景とした「ロックオン」
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