判例検索β > 平成29年(ネ)第10076号
営業秘密使用差止等請求控訴事件 不正競争 民事訴訟
事件番号平成29(ネ)10076
事件名営業秘密使用差止等請求控訴事件
裁判年月日平成30年1月15日
法廷名知的財産高等裁判所
原審裁判所名東京地方裁判所
原審事件番号平成28(ワ)35978
裁判要旨判決年月日 平成30年1月15日 担
当 知的財産高等裁判所 第4部

事 件 番 号 平成29年(ネ)10076号
○ 営業秘密に係る情報の使用又は開示の差止め等を求める訴えの準拠法は,通則法
17条により,「不法行為によって生ずる債権の成立及び効力」として,「加害行為の
結果が発生した地の法」である。
○ 日本法人が保有していた情報の使用又は開示が日本国内において行われた場合,
情報の使用及び開示の差止め等の請求は,結果発生地である日本法が準拠法になる。
○ 不競法2条1項8号所定の「重大な過失」とは,取引上要求される注意義務を尽
くせば,容易に不正開示行為等が判明するにもかかわらず,その義務に違反する場合を
いう。
(関連条文)不正競争防止法2条1項8号,3条1項,2項,通則法17条
判 決 要 旨
本件は,控訴人が,文書に掲載された原告製品に関する情報(本件情報)を取得した上,
別件訴訟等においてその文書を証拠提出した被控訴人の行為は,控訴人の営業秘密である
本件情報につき,不正開示行為であること若しくは同行為が介在したこと (不正開示行為
等)を重大な過失によ り知らないで取得し,使用するなどしたものであ る旨主張して,被
控訴人に対し,本件情報の使用及び開示の差止め等を求めた事案である。
原判決は,被控訴人が 文書を取得した時点で,不正開示行為等を疑うべき状況にあった
と認めることはできず,被控訴人に重大な過失は認められないとして,控訴人の請求を棄
却したため,控訴人がこれを不服として控訴した。
本判決は,概要以下の とおり,準拠法は日本法であると判断した上, 被控訴人に重大な
過失は認められないとして,本件控訴を棄却した。
営業秘密に係る情報の使用又は開示の差止め等を求める訴えは違法行為に対する民事上
の救済の一環にほかならないから,法 律関係の性質は不法行為であり,その準拠法は,通
商法17条により 「加害行為の結果が発生した 地の法」による。控訴人が我が国に本店所
在地を有する日本法人であり,当該情報の使用又は開示が日本国内において行われた場合,
行為の結果が発生した地は日本と解すべきであり,日本法を準拠法とすべきである。
不競法2条1項8号所定の「重大な過失」とは,取引上要求される注意義務を尽くせば,
容易に不正開示行為等が判明するにもかかわらず,その義務に違反する場合をいうものと
解すべきである。被控訴人が,本件情報の記載された文書を取得するに当たって,文書の
内容がそれを被控訴人が自社の製品に取り入れるなどした場合に控訴人に深刻な不利益を
生じさせるようなものであれば, 取引上要求される 注意義務が発生することを根拠付ける
要素の1つとなり得る のに対し,文書が通常の営業活動の中で取得されたものであること
は,かかる注意義務の発生を妨げる事実に該当する。
文書の内容がそれを被控訴人が自社の製品に取り入れるなどした場合に控訴人に深刻な
-1-
不利益を生じさせるようなもの とは認められないこと,文書が通常の営業活動の中で取得
されたものであること 等の本件の事実関係の下では, 被控訴人において, 文書の取得に当
たって,不正開示行為等であることについて重大な疑念を抱いて調 査確認すべきとの取引
上要求される注意義務があったとまではいえない。
-2-
戻る / PDF版
平成30年1月15日判決言渡
平成29年(ネ)第10076号

営業秘密使用差止等請求控訴事件

(原審・東京地方裁判所平成28年(ワ)第35978号)
口頭弁論終結日

平成29年12月5日
判控決訴人
同訴訟代理人弁護士

株式会社ブイ・テクノロジー

溝田宗司鮫島正洋髙野芳徳
同補佐人弁理士

白坂被
ウシオ電機株式会社

控訴人
同訴訟代理人弁護士

一主良由竹勝一大塚文昭

同補佐人弁理士



弁理士

尾相同松柴絵里谷口信行文1
本件控訴を棄却する

2
控訴費用は控訴人の負担とする。
事実及び理由

第1

控訴の趣旨

子里子1
原判決を取り消す。

2
被控訴人は,原判決別紙営業秘密目録記載の情報を使用又は開示してはなら
ない。
3
被控訴人は,原判決別紙営業秘密目録記載の情報が記録された文書,磁気デ
ィスク,光ディスクその他の記録媒体を廃棄せよ。
4
被控訴人は,
原判決別紙謝罪広告目録記載の謝罪広告を同目録記載の要領で,

同目録記載の新聞紙に,各1回宛掲載せよ。
5
第2
1
訴訟費用は,第1,2審とも被控訴人の負担とする。
事案の概要(略称は,原判決に従う。

本件は,控訴人が,本件各文書に掲載された原告製品に関する情報(本件情
報)を取得した上,別件訴訟等において本件各文書を証拠又は疎明資料として裁判所に提出した被控訴人の行為は,控訴人の営業秘密である本件情報につき,不正開示行為であること若しくは同行為が介在したこと(以下「不正開示行為等」ともいう。
)を重大な過失により知らないで取得し,使用するなどしたものであって,不競法2条1項8号所定の不正競争に該当する旨主張して,被控訴人に対し,①同法3条1項に基づく本件情報の使用及び開示の差止め,②同条2項に基づく本件情報が記録された文書及び記録媒体の廃棄,並びに③同法14条に基づく謝罪広告の掲載を求めた事案である。
2
原判決は,被控訴人が本件各文書を取得した時点で,不正開示行為等を疑う
べき状況にあったと認めることはできず,被控訴人に不競法2条1項8号所定の重大な過失は認められないとして,控訴人の請求を棄却した。
控訴人は,原判決を不服として,控訴を提起した。
3
前提事実及び争点は,原判決「事実及び理由」の第2の2及び3に記載のと
おりであるから,これを引用する。
第3

当事者の主張

争点に関する当事者の主張は,以下のとおり,争点4(被告の行為は不正競争に
該当するか)
についての当審における当事者の主張を付加するほかは,
原判決の
「事
実及び理由」の第3に記載のとおりであるから,これを引用する。〔当審における控訴人の主張〕
1
原判決は,不競法2条1項8号所定の重大な過失がなかったと判断する根拠
として,本件各文書の内容について,それを被控訴人が自社の製品に取り入れるなどした場合に控訴人に深刻な不利益を生じさせるようなものであるとは認められないこと,本件各文書が通常の営業活動の中で取得されたものであることを挙げている。
しかし,秘密保持契約においては,通常,取引において開示された情報全て,あるいは,取引において開示された情報であって秘密表示がされたものが秘密情報として扱われ,ある情報が秘密保持義務の対象となるか否かは,当該情報の価値とは関係がない。また,通常の営業活動により情報を取得したからといって,守秘義務違反による不正開示行為等を疑うべきかどうかという点について変わりはないから,「守秘義務違反による不正開示行為であること又は不正開示行為が介在したことを疑うべき状況にあった」かどうかとは一切関係がなく,原判決の判断枠組みには誤りがある。
2
仮に,原判決の判断枠組みによったとしても,以下のとおり,原判決の認定
には誤りがある。
(1)

原判決は,
本件各文書の内容について,
それを被控訴人が自社の製品に取り

入れるなどした場合に控訴人に深刻な不利益を生じさせるようなものであるとは認められないと認定した。
しかしながら,本件各文書には,光配向用偏光光照射装置において,必要照射量を確保する上で必要となる短尺ランプの本数及び配置方法が開示されているところ,被控訴人のウェブサイトによれば,平成24年3月の時点で,
「高電力(高輝度)タ
イプの短尺ランプを千鳥配置して,ワークに必要な幅を照射する」「高電力の短尺,
ランプを千鳥配置する方式も有力」との記載があり,短尺ランプを用いた光配向用
偏光光照射装置を製造することが示唆されているから,短尺ランプの本数が有用な情報であることは間違いない。
この情報が技術的に有用ではないとしても,必要照射量を確保する上で必要となる短尺ランプの本数が分かると,控訴人が製造する光配向用偏光光照射装置の一部の原価コストが判明するため,入札等で有利になり,有用性が認められる。(2)

原判決は,
本件文書は,
被控訴人の通常の営業活動の中で取得されたもので

あると認定した。
しかしながら,被控訴人は,本件各文書の入手ルートを明らかにできないと主張しており,本件各文書が,通常の営業活動によって取得されたものではないことは明らかである。そもそも,BtoB(企業間取引)製品の資料は他に流通するものではなく,本件各文書のような競合会社のBtoB製品の資料で,Confidentialの記載がある文書を取得することは通常の営業活動ではあり得ず,被控訴人が,文書の保有者に対してこのような資料が欲しいと伝え,対価を払うなどして取得したとしか考えられない。
そして,本件各文書を取得する際に,本件各文書にConfidentialの記載があったのであれば,そのような文書を取得することに法的問題がないのか,本件各文書の開示者に確認するなどすべきであったことは明らかである。中国の不正競争防止法10条3項によれば,商業秘密の保有者は,約束に違反して商業秘密を開示してはならないとされるのであるから,被控訴人に本件各文書を開示する行為は,同法違反のリスクを伴う行為であり,本件各文書の保有者が,通常の営業活動でこのようなリスクを伴う行為をするはずはない。被控訴人が入手ルートを明らかにできないのは,本件各文書の不法開示を受けているからであり,通常の営業活動ではなかったからにほかならない。
(3)

原判決は,
被控訴人が本件各文書を受領した時点で,
控訴人が取引先との間

で本件各文書に関する秘密保持契約を締結したか否かを直ちに認識できたとは認められない,本件各文書のConfidentialの記載をもって,本件各文書が
直ちに契約上の守秘義務の対象文書であることが示されているともいえないと認定した。
しかしながら,大規模企業の約8割が取引先と秘密保持契約を締結しているところ,ともに東証一部上場企業である控訴人及び被控訴人のいずれにとっても,取引先と秘密保持契約を締結することは極めて通常のことであり,まして,海外の企業と取引する際には,
秘密保持契約を締結することは欠かせないことである。
実際に,
控訴人は,●●●,●●●●及び●●●との間で秘密保持契約を締結していた。したがって,被控訴人において,控訴人が取引先と秘密保持契約を締結しているであろうことも当然認識できたはずである。
本件各文書のConfidentialの記載によれば,被控訴人は,本件各文書を取得した時点で,守秘義務違反による不正開示行為であること,又は不正開示行為が介在したことを疑うべき状況にあったことは明らかである。少なくとも,秘密表示がされた情報については,強い保護を及ぼすことが当事者間の合理的意思であり,
その情報の価値にかかわらず,
秘密としての厳重な管理が要求されることが,
客観的に見て取れる。
〔当審における被控訴人の主張〕
1
本件においては,被控訴人が「本件各文書に記載された営業秘密に該当する
情報が守秘義務に反して開示されたことを知らなかったこと」に重過失があったかどうかが問題になるところ,被控訴人において,本件各文書に記載された情報が営業秘密に該当する情報ではないと認識し,当該認識を有するに至ったことに重過失がなければ,
「本件各文書に記載された営業秘密に該当する情報が守秘義務に反して開示されたことを認識しなかったこと」にも重過失はなかったことになるから,被控訴人が「本件各文書に記載された営業秘密に該当する情報が守秘義務に反して開示されたことを知らなかったこと」に重過失がなかったといえるためには,被控訴人において,本件各文書に記載された本件情報が守秘義務の対象となるとの認識がなかったことについて重過失がなかった場合のみならず,本件情報がそもそも営
業秘密に該当する情報ではないと認識したことについて重過失がなかった場合も含まれる。
2
本件各文書には何ら有用な情報が記載されていない。

控訴人が,被控訴人のウェブサイトに記載されていると指摘した光配向用偏光光照射装置は,短尺ランプの長手方向が基板の搬送方向に対して直交するように配置されるものであって,短尺ランプの長手方向が基板の搬送方向に対して平行になるように配置された原告製品とは,その構造が全く異なり,必要なランプの本数も異なるから,有用な情報ではない。被控訴人は,平成26年初めには,短尺ランプの長手方向が基板の搬送方向に対して直交するように配置された装置の事業化の検討を,研究開発も含めて全て中止していたのであるから,短尺ランプの本数の情報が有用性を有することはあり得ない。
また,
仮に被控訴人が控訴人の装置に用いられるランプの本数を知ることができ,短尺ランプに相当する原価が算出できたとしても,そのことから装置全体の原価が分かるわけではない。
したがって,被控訴人が,本件各文書に営業秘密が記載されていると認識しなかったことに重過失があるとはいえない。
3
被控訴人は,平成27年に,被控訴人の通常の営業活動の中で,第三者から
本件各文書を受領したが,本件各文書を受領した当時,当該第三者から秘密情報として扱うように指示されたり,
秘密保持契約の締結を求められたりしたことはなく,
何らかの報酬や利益と引換えに本件各文書を得たということもなかった。当時,一般的に,中国や台湾のメーカーから,競業他社の仕様書などを示されることは特に珍しいことではなかったことや,被控訴人においても,競業他社に知られたくないノウハウなど営業秘密として保護すべき情報はなるべく文書に記載しないようにしていたことからも,被控訴人は,本件各文書には重要な秘密情報は記載されていると認識しなかった。
本件各文書にConfidentialの記載があるものの,上記の本件各文書
を通常の営業活動により入手したとの経緯や取得時の事情に照らすなら,被控訴人が,本件各文書に営業秘密が記載されていると認識しなかったことにつき,重過失があるとはいえない。
4
取引先と秘密保持契約を締結すること自体が企業実務として一般的であると
しても,
本件各文書が,
控訴人と取引先との間で秘密保持契約が締結されたうえで,
当該秘密保持の対象となった文書であるか否かは被控訴人には知り得ない。むしろ本件各文書の内容や取得経緯からすれば,被控訴人は,本件各文書は秘密保持の対象となる文書ではないと認識したのである。本件各文書には,Confidentialの記載があるが,かかる記載は,直ちに守秘義務の対象であることを示すものではない。
したがって,本件各文書が開示者において秘密保持義務を負う対象でないとの認識に至ったことについて重過失があるとはいえない。
第4

当裁判所の判断

当裁判所も,控訴人の請求は棄却すべきものと判断する。
その理由は,以下のとおりである。
1
争点1(準拠法は日本法か)について

本件は,日本法人である控訴人が,日本法人である被控訴人に対して,営業秘密に係る情報の使用又は開示の差止め,かかる情報が記載された文書等の廃棄及び謝罪広告を求めるものである。控訴人は,被控訴人が本件各文書を台湾企業である●●●又は中国企業である●●●●及び●●●より,日本国外において,不正開示行為等であることを重大な過失により知らないで当該情報を取得等したと主張しており,渉外的要素を含むものであるから,その準拠法を決定する必要がある。本件訴えは,被控訴人の行為が控訴人に対する関係で違法であることを原因として差止め等を求めるというものであるところ,違法行為により権利利益を侵害された者が提起する差止め,廃棄及び謝罪広告の請求に関する訴えについては,いずれも違法行為に対する民事上の救済の一環にほかならないから,法律関係の性質は不
法行為であり,その準拠法については,通則法17条によるべきである。よって,同条所定の「不法行為によって生ずる債権の成立及び効力」として,「加害行為の結
果が発生した地の法」によるべきことになる。
控訴人は,被控訴人が日本国内における営業秘密に係る情報の使用又は開示をしたことが違法であると主張しているところ,控訴人が我が国に本店所在地を有する日本法人であること及び当該情報の使用又は開示が日本国内において行われたことは,当事者間に争いがない。そうすると,かかる行為の結果が発生した地は,使用又は開示が行われ,
権利侵害という結果が発生した地である日本と解すべきであり,
日本の法律を準拠法とすべきである。
よって,本件においては,日本の不競法が適用される。
2
争点4(被告の行為は不正競争に該当するか)について

控訴人は,被控訴人が不正開示行為等について悪意で本件各文書を取得等したことを主張していない。
したがって,本件においては,被控訴人が,不正開示行為等につき重大な過失により知らないで取得等したか否かが問題となるところ,この点については,下記のとおり,控訴人の当審における主張に対する判断を付加するほかは,原判決の「事実及び理由」の第4記載のとおりであるから,これを引用する。
(1)

控訴人は,本件各文書の内容について,それを被控訴人が自社の製品に取り
入れるなどした場合に控訴人に深刻な不利益を生じさせるようなものであるとは認められないこと,
本件各文書が通常の営業活動の中で取得されたものであることは,守秘義務違反による不正開示行為等を疑うべき状況にあったかどうかとは一切関係がないから,原判決が,これらの事情を不競法2条1項8号所定の重大な過失の判断根拠にしたことは,誤りである旨主張する。
不競法2条1項8号所定の「重大な過失」とは,取引上要求される注意義務を尽くせば,容易に不正開示行為等が判明するにもかかわらず,その義務に違反する場合をいうものと解すべきである。被控訴人が,本件情報の記載された本件各文書を
取得するに当たって,本件各文書の内容がそれを被控訴人が自社の製品に取り入れるなどした場合に控訴人に深刻な不利益を生じさせるようなものであることは,不正開示行為等であることについて重大な疑念を抱いて調査確認すべき取引上の注意義務が発生することを根拠付ける要素の1つとなり得る。これに対し,本件各文書が通常の営業活動の中で取得されたものであることは,不正開示行為等であることについて重大な疑念を抱いて調査確認すべき取引上の注意義務の発生を妨げる事実に該当すると解される。
よって,本件各文書の内容がそれを被控訴人が自社の製品に取り入れるなどした場合に控訴人に深刻な不利益を生じさせるようなものとは認められないこと,本件各文書が通常の営業活動の中で取得されたものであることは,被控訴人が不正開示行為等を重大な過失により知らなかったことと関係がないとはいえず,控訴人の主張は採用できない。
(2)

控訴人は,本件各文書は,原告製品において,必要照射量を確保する上で必
要となる短尺ランプの本数及び配置方法を開示するものであるところ,短尺ランプを用いた光配向用偏光光照射装置を製造することが示唆されていること,また,短尺ランプの本数が分かると,少なくとも,控訴人が製造する光配向用偏光光照射装置の一部の原価コストが判明することから,有用性があり,原判決が,被控訴人に知られてしまうだけで控訴人が深刻な不利益を被る情報ではないと認定したことは誤りである旨主張する。
しかしながら,被控訴人のウェブサイトには,平成24年3月の時点で,「高電力
(高輝度)
タイプの短尺ランプを千鳥配置して,
ワークに必要な幅を照射する」

「高
電力の短尺ランプを千鳥配置する方式も有力」との記載があるものの(甲28),被
控訴人は,遅くとも平成26年初めには,その研究開発を含め,短尺ランプを用いた光配向用偏光光照射装置の事業化を中止したと述べており
(乙2)平成24年3

月以降,現在に至るまで,短尺ランプを用いた光配向用偏光光照射装置を製造していない(弁論の全趣旨)
。また,短尺ランプの本数が判明することにより,仮に短尺

ランプの原価コストが判明するとしても,そのことにより,控訴人が製造する光配向用偏光光照射装置の原価コストがどの程度明らかになるのかは,不明である。よって,
短尺ランプの本数については,
仮に一定の有用性が認められるとしても,
被控訴人に知られてしまうだけで控訴人が深刻な不利益を被る情報とまではいえず,控訴人の主張は採用できない。
(3)

控訴人は,被控訴人が本件各文書の入手ルートを明らかにできないと主張し
ていることから,本件各文書が通常の営業活動によって取得されたものではないことは明らかであると主張する。
しかしながら,被控訴人が本件各文書の入手ルートを明らかにしないことをもって,本件各文書が通常の営業活動によって取得されたものではないことが推認されるとはいえない。また,控訴人は,競合他社のBtoB製品に関する資料を取得することは通常あり得ないと主張するが,かかる経験則が存在するとはいえない。したがって,本件各文書が通常の営業活動によって取得されたものではないことは明らかであるとはいえない。
さらに,被控訴人は,本件各文書のConfidentialの記載から,その取得に当たって,法的問題がないのか確認すべきであった旨主張する。しかしながら,被控訴人が,本件各文書を取得するに当たり,本件各文書のConfidentialの記載以外に,本件各文書の保有者から,本件情報を秘密情報として扱うように指示されたり,
秘密保持契約の締結を求められたり,
あるいは,
報酬や利益と引換えに本件各文書を得たなど,本件情報が秘密情報であることを疑うべき事実があったことを認めるに足りる証拠はない。そうすると,本件各文書のConfidentialの記載のみをもって,被控訴人において,本件各文書の取得に当たって,不正開示行為等であることについて重大な疑念を抱き,保有者に対し法的問題がないのかを問い合わせるなどして調査確認すべき取引上の注意義務があったとまではいえないから,控訴人の主張は採用できない。
(4)

控訴人は,取引先と秘密保持契約を締結することは通常のことであり,実際に,控訴人は,●●●,●●●●及び●●●との間で秘密保持契約を締結していたのであるから,被控訴人は,本件各文書を受領した時点で,控訴人が取引先との間で本件各文書に関する秘密保持契約を締結したか否かを認識していたか,認識できたはずであると主張する。
しかしながら,本件各文書について,控訴人と●●●,●●●●及び●●●との間で秘密保持契約が締結されていたとしても,被控訴人が,控訴人と取引先との間で秘密保持契約を締結した事実や,本件各文書が当該秘密保持の対象となった文書であることを知り得たとはいえない。
また,控訴人は,少なくともConfidentialの記載がある以上,強い保護を及ぼすことが当事者間の合理的意思であり,かかる記載からは,情報の価値にかかわらず,厳重な秘密管理が要求されることが客観的に見て取れるから,被控訴人において不正開示行為等を疑うべき状況にあったと主張する。しかしながら,前記のとおり,被控訴人において,控訴人と取引先との間で秘密保持契約を締結した事実や,本件各文書が当該秘密保持の対象となった文書であることを知り得たとはいえないこと,本件各文書に記載された短尺ランプの本数が,被控訴人に知られてしまうだけで控訴人が深刻な不利益を被る情報とまではいえないこと,被控訴人が,本件各文書を取得するに当たり,本件各文書のConfidentialの記載以外に,本件情報が秘密情報であることを疑うべき事実があったことはうかがわれないことに照らすなら,本件各文書のConfidentialの記載から,直ちに守秘義務の対象であることが示されているとはいえない。そうすると,
かかる記載だけから,
被控訴人において,
本件各文書の取得に当たって,
不正開示行為等であることについて重大な疑念を抱いて調査確認すべき取引上の注意義務があったとまではいえず,控訴人の主張は採用できない。
(5)

小括

以上によれば,控訴人の主張は,いずれも理由がない。
3
結論
よって,本件控訴を棄却することとし,主文のとおり判決する。
知的財産高等裁判所第4部
裁判長裁判官

髙部眞
裁判官

古河謙一
裁判官

関根澄子規子
トップに戻る

saiban.in