判例検索β > 平成29合年(わ)第179号
虚偽有印公文書作成・同行使、受託収賄、地方公務員法違反
事件番号平成29合(わ)179
事件名虚偽有印公文書作成・同行使,受託収賄,地方公務員法違反
裁判年月日平成29年12月26日
法廷名東京地方裁判所
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事件番号

平成29年

第179号

事件名

虚偽有印公文書作成・同行使,受託収賄,地方公務員法違反

宣告日

平成29年12月26日

宣告裁判所

東京地方裁判所刑事第16部
主文
被告人を懲役3年に処する
この裁判が確定した日から5年間その刑の執行を猶予する。
被告人から金80万円を追徴する。
理由
(罪となるべき事実)
被告人は,平成26年2月14日から平成29年8月13日までの間,B市長として,同市職員を任用する権限を有し,その採用等の事務を統括掌理する職務に従事していたものである。被告人は,
第1

B市職員採用試験の実施等の職務にそれぞれ従事していた同市総務課人事給与担当課長補佐Cらと共謀の上,平成26年度B市職員採用資格試験(上級事務)の合格者を決定するに当たり,その職務に関して,行使の目的で,平成26年10月8日頃,A県B市(以下省略)のB市役所(以下,所在地の記載は省略する)4階総務課において,真実は,受験者であるDの第1次試験の点数等について,教養科目の標準偏差が28,その粗点が12,専門科目の標準偏差が44,その粗点が15,適性科目の標準偏差が31,その粗点が52,合計の標準偏差が103,その粗点が79,順位が46であったのに,Cにおいて,事情を知らない担当主査Eをして,パーソナルコンピュータ等を用いて,「平成26年職員採用試験1次試験結果(上級事務)」と題する一覧表のDの点数等を記載すべき欄に,教養科目の標準偏差が48,その粗点が20,専門科目の標準偏差が46,その粗点が16,適性科目の標準偏差が21,その粗点が35,合計の標準偏差が115,その粗点が71,順位が34と虚偽の記載をさせるとともに,「起案書」と題する書面の件名欄に「平成26年度B市職員採用試験第1次試験の結果について(通知)」,起案者欄に「総務課人事給与担当E」と各記載させ,起案者欄に「E」と刻した印鑑を押印させて,これに一覧表を添付させるなどして,Dの試験の結果が一覧表記載のとおりである旨の内容虚偽の文書を作成した上,
同日頃,
これを内容の真実な文書として,
前記総務課内に備え付けて行使した。
第2

平成27年4月1日,B市役所において,平成26年度B市職員採用資格試験(上級事務)の受験成績に基づかずに合格者と決定したDを同市職員に任命し,もって能力の実証に基づかないで職員の任用をした。

第3

B市職員採用試験の実施等の職務にそれぞれ従事していた同市秘書人事課人事給与担当主幹Fらと共謀の上,平成27年度B市職員採用資格試験(上級事務)の合格者を決定するに当たり,その職務に関して,行使の目的で,平成27年10月8日頃,B市役所4階秘書人事課において,真実は,受験者であるGの第1次試験の点数等について,教養科目の標準偏差が41,その粗点が16,専門科目の標準偏差が41,その粗点が14,合計の標準偏差が103,その粗点が59,順位が41であり,受験者であるHの第1次試験の点数等について,教養科目の標準偏差が33,その粗点が13,適性科目の標準偏差が21,その粗点が29,合計の標準偏差が97,その粗点が57,順位が44であったのに,Fが,パーソナルコンピュータ等を用いて,「平成27年職員採用試験1次試験結果(上級事務)」と題する一覧表のGの点数等を記載すべき欄に,教養科目の標準偏差が52,その粗点が21,専門科目の標準偏差が45,その粗点が16,合計の標準偏差が118,その粗点が66,順位が30,同じ一覧表のHの点数等を記載すべき欄に,教養科目の標準偏差が52,その粗点が21,適性科目の標準偏差が23,その粗点が32,合計の標準偏差が118,その粗点が68,順位が30とそれぞれ虚偽の記載をするとともに,「起案書」と題する書面の件名欄に「平成27年度B市職員採用試験第1次試験の結果について(通知)」,起案者欄に「秘書人事課人事給与担当F」と各記載し,起案者欄に「F」と刻した印鑑を押印して,これに一覧表を添付するなどして,G及びHの試験の各結果が一覧表記載のとおりである旨の内容虚偽の文書を作成した上,同日頃,これを内容の真実な文書として,前記秘書人事課内に備え付けて行使した。
第4

平成28年4月1日,B市役所において,平成27年度B市職員採用資格試験(上級事務)の受験成績に基づかずに合格者と決定したG及びHを同市職員に任命し,もってそれぞれ能力の実証に基づかないで職員の任用をした。
第5

B市職員採用試験の実施等の職務にそれぞれ従事していた同市秘書人事課人事給与担当課長補佐Fらと共謀の上,平成28年度B市職員採用資格試験(上級事務)の合格者を決定するに当たり,その職務に関して,行使の目的で,平成28年10月12日頃,B市役所4階秘書人事課において,真実は,受験者であるIの第1次試験の点数等について,教養科目の標準偏差が29,その粗点が14,合計の標準偏差が107,その粗点が66,順位が19であったのに,Fが,パーソナルコンピュータ等を用いて,「平成28年職員採用試験1次試験結果(上級事務)」と題する一覧表のIの点数等を記載すべき欄に,教養科目の標準偏差を34,その粗点を16,合計の標準偏差を112,その粗点を68,順位を15と虚偽の記載をするとともに,「起案書」と題する書面の件名欄に
「平成28年度B市職員採用試験第1次試験の結果について
(通知),

起案者欄に「秘書人事課人事給与担当F」と各記載し,起案者欄に「F」と刻した印鑑を押印して,これに一覧表を添付するなどして,Iの第1次試験の結果が一覧表記載のとおりである旨の内容虚偽の文書を作成した上,同月13日頃,
これを内容の真実な文書として,
前記秘書人事課内に備え付けて行使した。

第6

平成29年2月8日,A県B市(以下省略)の被告人方において,平成28年度B市職員採用資格試験(上級事務)に補欠合格したJの実父であるK及び被告人と親交を有するLから,Jを同市職員として早期に採用されることにつき有利かつ便宜な取り計らいをされたい旨の請託を受けてこれを承諾し,同日同所において,Kからその謝礼として供与されるものであることの事情を知りながら,現金80万円の供与を受け,もってその職務に関し賄賂を収受した。第7

平成29年4月3日頃,B市役所において,平成28年度B市職員採用資格試験(上級事務)の受験成績に基づかずに合格者と決定したIを同市職員に任命し,もって能力の実証に基づかないで職員の任用をした。

(量刑の理由)
被告人は,市長として,率先垂範して廉潔・公正に市の行政を執行し,職員を指導・監督すべき立場にあった。それにもかかわらず,被告人は,特定の受験者について職員への採用を依頼され,市長就任の年から3年間にわたり連続して,部下職員に採用試験の結果を改ざんするよう指示して内容虚偽の公文書を作成行使させるなどし,合計4名を不正に任用している。本件犯行は,公平・公正さが強く求められる職員採用試験に関する公文書及び地方公務員の任用制度に対する信頼を著しく低下させるのみならず,情実採用を否定し,客観的な能力の実証によって採用しなければならないとする地方公務員法の趣旨を大きく損なうものである。また,被告人は,補欠合格者の早期採用を依頼されて80万円と少なくない賄賂を収受しており,公務の清廉性を汚し,市民の信頼を裏切っている。動機及び経緯についてみても,自らを支援する者の恩義に報いて便宜を図ろうという自己本位な考え方に基づくものであって,特段酌むべき事情は見当たらない。以上の犯情に照らせば,被告人に対しては,厳しい非難が妥当するのであって,その刑事責任は,同種事案の中では,相当に重いものである。
他方,被告人が罪を認め,市長職を辞し,給与を返上し,退職金を受領しないなどして反省の態度を示していること,前科がないこと,知人による更生への支援も期待できること等被告人にとって有利に斟酌すべき事情も認められるところ,これらの事情を併せ考慮すれば,被告人を実刑に処するのがやむを得ないとまではいえない。
そこで,被告人に対し,主文の刑を科した上,その刑の執行を猶予するのが相当であると判断した。
(求刑・懲役3年,主文同旨の追徴,弁護人の科刑意見・執行猶予付きの懲役刑)平成29年12月26日
東京地方裁判所刑事第16部

裁判長裁判官

島田一
裁判官

島田環
裁判官

髙野将人
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