判例検索β > 平成29年(ワ)第14909号
不正競争 民事訴訟
事件番号平成29(ワ)14909
裁判年月日平成30年1月23日
法廷名東京地方裁判所
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平成30年1月23日判決言渡

同日原本交付

平成29年(ワ)第14909号

裁判所書記官

損害賠償請求訴訟事件

口頭弁論終結日平成29年12月1日
判決原WD
同訴訟代理人弁護士

渡辺被告
株式会社シーエム


同訴訟代理人弁護士

SC実石井琢磨田中和慶伏木壮太徹亮被告A
同訴訟代理人弁護士

室木飯田庄司正樹中川大河主聡文
1原告の請求をいずれも棄却する。
2訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
第1請求
被告らは,原告に対し,各自180万円及びこれに対する平成29年5月25日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2事案の概要
本件は,
歯科医師らによる自主学習グループであり,
「WDSC」
の表示を使用
して歯科治療技術の勉強会を主催する活動等を行っている法人格なき社団である原告が,被告株式会社シーエム(以下「被告シーエム」という。)が企画,編集
した雑誌中に掲載された記事において「WDSC」の表示を被告A(以下「被告A」という。
)が自己の宣伝広告に使用したことが不正競争防止法2条1項1号の不正競争に当たると主張して,被告らに対し,同法4条に基づき,各自損害賠償金180万円及びこれに対する不法行為の後の日(訴状送達の日の翌日)であ
る平成29年5月25日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。
1前提事実
(当事者間に争いのない事実並びに後掲の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実)
当事者等


原告
原告は,日常歯科臨床における実技の習得を目的として定期的に講習会の開催等を行っている法人格なき社団であり,歯科医師らが会員である。原告の名称である
「WDSC」「Weekend
は,

Dental

Study

Club」の頭文字を取ったものである。

被告ら
被告シーエムは,広告代理,出版を業とする株式会社である。
被告Aは,歯科医師であり,肩書地において,(省略)

」との名称の歯科医
院(以下「被告A医院」という。
)を経営している。被告Aは原告の会員では
なく,過去に会員であったこともない。

被告らの行為
株式会社学研プラス(以下「学研プラス」という。
)は,平成27年10月2
9日,
「本気で探す

頼りになるいい歯医者さん

2016」
と題する雑誌
(以

下「本件雑誌」という。
)を発行した。本件雑誌には,被告シーエムが企画,編
集した,以下の記事等が掲載された。
(甲1)

原告の活動内容や活動の意義に関する紹介,原告の代表者会長や会員である歯科医師のインタビュー,原告が開催する勉強会に関するコラム等の原告
の広告記事(本件雑誌44頁~46頁。以下,この部分の記事を「本件原告広告記事」という。。


原告の会員である歯科医師63名の氏名,歯科医院名,所在地及び電話番号等の一覧(本件雑誌47頁)
。この一覧には,被告Aの父親であり,原告の
会員であるBの氏名,歯科医院名,所在地及び電話番号等の記載がある。被
告Aの氏名等の記載はない。

右上最上段部分に「WDSC最新レポート」との記載があり,右上部分に「WDSCに所属する歯科医師が在籍する歯科医院」と題する記事(本件雑誌48頁)
。同記事の下半分には,被告Aの顔写真,氏名,経歴,被告A医院
に所属する歯科衛生士らの写真,同医院の業務内容,診療時間,所在地,電話番号等,被告A及び被告A医院を紹介する記事が掲載されている(以下,この部分の記事を「本件記事①」という。。

エ「症例実績に優れた歯科医に聞く先進歯科治療特集」と題する記事(本件雑誌54頁,55頁)
。同記事1頁目(54頁)には6名,2頁目(55頁)

には9名の合計15名の歯科医師の氏名,顔写真,歯科医院名等が記載された紹介欄がある。そして,同記事1頁目(54頁)の6名の中に,被告A及び被告A医院の紹介欄があり,同紹介欄の右上部分には「WDSC」との記載がある(以下,この被告A及び被告A医院の紹介欄を「本件記事②」といい,
「本件記事①」と併せて「本件各記事」という。。)

2争点
不正競争防止法2条1項1号の不正競争の成否

「WDSC」の表示は周知な商品等表示といえるか


誤認混同のおそれの有無
被告Aの故意過失の有無
原告の損害額

3争点に関する当事者の主張
「WDSC」の表示は周知な商品等表示といえるか)について
(原告の主張)

「WDSC」の商品等表示該当性について
原告は,歯科治療技術の勉強会等を開催し,会員である歯科医師らに対して歯科治療の技術等の習得の場を提供することによって,患者に対して会員
である歯科医師の高度な技術による治療を保障し,歯科医療に対する世間の評価を高め,
歯科医療全体の水準を高めること及び歯科治療の需要者に対し
て原告の会員が勉強会に参加することで高度な技術を習得していることを宣伝して顧客を誘引することを活動内容としている。原告のこのような活動は不正競争防止法2条1項1号の「他人の営業」に該当し,
「WDSC」は原

告の上記営業についての商品等表示に該当する。

「WDSC」の表示の周知性について
不正競争防止法2条1項1号は,商品等表示の混同惹起行為によって,需要者が事業者を混同して誤った取引を行い,事業者が顧客を失う被害を受け
ることを防止するための規定である。商品等表示の周知性の要件は,需要者が,
当該商品等表示がある事業者の事業の表示であることを知らなければ商品等表示の混同は起こりえないから要求されているもので,周知性とは表示を混同した需要者にとって当該表示が特定の事業者の事業を表していると認識されることを意味し,類似する商品等表示が使用された時点において混
同が生じるにもかかわらず,周知性がないとして不正競争防止法2条1項1号に基づく請求が否定されることはない。
「WDSC」の表示は,学研プラスが平成26年6月に発行した「安心の歯科治療2015」と題する雑誌(以下「平成26年雑誌」という。)におい
て,被告シーエムが企画,編集した本件原告広告記事と概ね同一内容の原告の広告記事が掲載され,そこで用いられた。そして,平成26年雑誌の初版発行部数10万冊が完売するなど好評だったことから,学研プラスは平成2
7年10月に本件雑誌を発行し,本件雑誌の初版発行部数10万冊は完売した。
本件における周知性の認識の主体である「需要者」は平成26年雑誌及び本件雑誌を購読した全国の読者であるところ,
「WDSC」
の表示は,
平成2
6年雑誌及び本件雑誌の読者に広く認識されるに至った。また,本件では,
原告が本件雑誌によって
「WDSC」
の表示の周知性を獲得するのと同時に,
「WDSC」
の表示を使用することによる被告らの混同惹起行為が行われた
ところ,このような場合,本件雑誌における「WDSC」の使用も「WDSC」の表示の周知性を基礎付づける事情に含まれる。
(被告シーエムの主張)

「WDSC」の商品等表示該当性について
原告の活動内容及び
「WDSC」
が商品等表示に該当するかどうかは不知。


「WDSC」の表示の周知性について
平成26年雑誌及び本件雑誌の初版発行予定部数が10万部であったこ
とは認めるが,実際に何部発行されたかについては不知。
平成26年12月31日時点での全国の歯科医師の数は10万3972人であるのに対し,原告は会員が63名という小規模な団体にすぎないこと,本件雑誌が発行されるまで,
原告は平成26年雑誌以外の全国誌等に広告掲
載をしていないこと,
平成26年雑誌から本件雑誌の発行日である平成27

年10月29日までの期間は1年程度であること,
「WDSC」との略称に
顕著性があるとはいえないこと等からすると,
「WDSC」の表示が歯科治
療の需要者から広く認識されていたとはいえない。なお,原告は本件雑誌についても原告の商品等表示の周知性を基礎づける事情に含まれると主張するが,
損害賠償請求の場合には表示使用時に周知性を具備していることが必要であるから,原告の主張は失当である。
(被告Aの主張)
いずれも不知。
争点

-イ(誤認混同のおそれの有無)について

(原告の主張)

本件記事①では,
「WDSCに所属する歯科医師が在籍する歯科医院」と
題する記事が掲載され,同記事中において,被告A医院の紹介記事が掲載さ
れ,
同歯科医院の院長として被告Aの名前と顔写真が掲載されており,本件記事②では,被告Aの名前と顔写真が掲載され,被告Aの紹介欄の右上部には「WDSC」との記載があることから,本件各記事を読んだ者は,被告Aが「WDSC」という団体に所属する歯科医師であると認識する。このように,被告Aは本件各記事において,
「WDSC」の表示を自己の広告に使用

しているところ,上記

のとおり,
「WDSC」の表示は平成26年雑誌及

び本件雑誌を読んだ読者にとって周知なものであるから,
本件各記事を読ん
だ読者は,被告Aが原告の会員であると誤解するおそれがある。
そして,
不正競争防止法2条1項1号の「他人の営業と混同を生じさせる
行為」は,他人と自己の営業に混同が生じる場合の他,営業の出所につき混
同が生じる場合も含むと解すべきであるから,
被告Aが原告の会員であると
の誤解を生じさせる行為は,
「他人の営業と混同を生じさせる行為」に該当
する。

これに対し,被告シーエムは,本件記事①の読者は原告の会員であるBが在籍する歯科医院の紹介記事であると理解するのであって,被告Aが原告の会員であると誤解するおそれはなく,また,本件記事②は目次にすぎず,被告Aが原告の会員であることを示す記事ではない旨主張する。
しかしながら,
本件記事①にはBが被告A医院に所属していることの説明は一切ないこと,本件雑誌47頁の原告の会員の一覧(前提事実

,イ)に

記載されているBの歯科医院の住所地は「
(省略)
」であり,被告A医院の住
所地と番地が異なることからすると,本件各記事の読者が,同記事が原告の会員であるBが在籍する歯科医院の紹介記事であると理解することはありえない。また,本件記事①の「WDSCに所属する歯科医師が在籍する歯科医院」の「在籍」とは当該歯科医院において当該歯科医師から常時診療を受けられる態勢が整っていることを意味するというべきであるところ,Bが被
告A医院で診療を行っているのは1か月のうち10日程度であり,「在籍」
しているとはいえない。
(被告シーエムの主張)
被告Aの父親であり,被告A医院に所属する歯科医師であるBは,本件雑誌発行当時,
原告の会員であり,
本件雑誌47頁の原告に所属する会員の一覧
(前

提事実

,イ)にも会員として紹介されている。そして,本件記事①にはわざ
わざ「WDSCに所属する歯科医師が在籍する歯科医院」と明記しているところ,被告A医院には原告の会員であるBが在籍しているから,本件記事①の読者は,文字どおり,原告の会員であるBが在籍する歯科医院の紹介記事であると理解するのであって,被告Aが原告の会員であると誤信するおそれはない。また,本件記事②は本件雑誌の目次であり,紹介欄右上部の「WDSC」の記載は,
本件記事①が原告に関する記事であることを分かりやすく示すために記載したものであって,被告Aが原告の会員であることを示すために記載したものではない。
(被告Aの主張)

いずれも不知。
被告Aの故意過失の有無)について
(原告の主張)
本件各記事は,
被告シーエムと被告Aが綿密に打ち合わせた上で作成された
のであり,被告Aは原告の会員ではないにもかかわらず,本件雑誌の読者に,被告Aが原告の会員であるという誤信を生じさせることを知りながら,被告シーエムに記事の掲載を発注して掲載させたのであるから,被告Aには故意又は過失があるというべきである。
(被告シーエムの主張)
否認ないし争う。本件各記事の掲載に至る経緯は,下記の被告Aの主張のとおりであり,被告Aは本件雑誌発行前には,被告A医院の広告記事に「WDS
C」の表示が使われることを認識しておらず,また,認識し得る機会はなかった。被告Aに故意又は過失はなく,被告Aに不法行為は成立しないから,被告シーエムとの間で共同不法行為は成立しない。
(被告Aの主張)
否認ないし争う。

被告Aは,平成27年7月頃,被告シーエム担当者から,本件雑誌に原告の広告記事を掲載することを企画しているから被告Aも広告記事を掲載しないかとの電話による勧誘を受けた。被告Aは,被告A自身は原告の会員ではないことを説明した上で,本件雑誌に被告A医院の広告を出することを承諾した。被告シーエム担当者は,
電話口の相手が被告Aではなく原告の会員であったB

であり,被告A医院の院長もBであると誤解しており,そのまま被告A医院の広告記事の作成に取りかかった。そのため,被告シーエム担当者が作成した原稿にはBが被告A医院の院長であるとの記載があった。被告Aは,被告シーエム担当者から送られてきた原稿を確認し,院長の記載に誤記があったことから,被告シーエム担当者に対し,被告A医院の院長はBではなく被告Aであること
を説明し,記事の内容も訂正するように要請した。被告シーエム担当者は,被告Aからの要請を受けて原稿を訂正し,本件記事①の原稿を作成したが,被告シーエム担当者が被告Aに対して送付した当該原稿は,被告A医院の紹介記事部分(本件記事①の下段部分)のみであり,
「WDSC最新レポート」や,
「W
DSCに所属する歯科医師が在籍する歯科医院」との記載はなく,本件記事②は送付しなかった。
以上のとおり,被告Aは,本件雑誌に被告A医院の広告を出すつもりで被告シーエムと広告掲載契約を締結したのであり,
被告A医院の広告に
「WDSC」
の表示を使用する意思はなかった。また,被告Aは,本件各記事において,被告A医院の広告記事に「WDSC」の表示が使われていることを認識しておらず,また,認識し得る機会はなかった。

したがって,本件各記事において被告A医院の広告記事に「WDSC」の表示が使われていることについて,被告Aに故意又は過失はない。
争点

(原告の損害額)について

(原告の主張)
本件各記事によって,
本件雑誌の読者に被告Aが原告の会員であるとの誤信
が生じ,原告の商品等表示の信用が毀損された。原告としては,本件各記事によって毀損された信用を回復するためには,被告Aが原告の会員ではないことを周知しなければならないところ,そのためには全国紙に訂正記事を掲載する必要があり,これに要する費用相当額が損害となる。損害額の算定は不正競争防止法9条によるべきであるが,訂正記事を掲載するための費用は最低でも1
80万円である。
(被告シーエムの主張)
争う。
仮に本件雑誌の読者に被告Aが原告の会員であるとの誤信が生じたとしても,原告の商品等表示の信用が毀損されたとはいえないし,全国紙への訂正記事掲載費用の立証は容易であるから,不正競争防止法9条の適用はない。
(被告Aの主張)
争う。
第3当裁判所の判断
1争点

-ア(
「WDSC」の表示は周知な商品等表示といえるか)について

前提事実に加え,証拠及び弁論の全趣旨によれば,原告は昭和54年に発足したこと(甲1)
,学研プラスが平成26年6月に発行した平成26年雑誌に
おいて本件原告広告記事と概ね同一内容の原告の広告記事が掲載されたこと,平成26年雑誌は発行予定部数が10万部であったこと,平成26年12月31日時点での歯科医師の数は10万3972人であること(乙A1),本件雑
誌発行時点における原告の会員は63名であること(甲1)が認められる。原告は,
「WDSC」の表示は原告の商品等表示であって需要者の間で広く
認識されており,本件雑誌に掲載された本件各記事において被告Aが「WDSC」
の表示を自己の広告に使用したことが原告の商品等表示を使用した不正競争行為に該当する旨主張する。
本件雑誌は,
「本気で探す

頼りになるいい歯医者さん

2016」という

題名の雑誌であって,表紙には「歯科治療の悩み&不安を解消!」という記載もあり,
多くの歯科医師の紹介欄があり
(甲1)歯科治療を受けることを考え

ている者を主たる読者とするものである。本件各記事は,いずれも歯科医師である被告Aや被告Aが経営する歯科医院を紹介する記事である。
これらからす
ると,
本件における需要者は,
歯科治療を受けることを考えている者といえる。
原告は,
平成26年雑誌及び本件雑誌を購読した全国の読者が需要者である旨
主張するが,上記に照らし採用することができない。
そこで,歯科治療を受けることを考えている者の間で「WDSC」の表示が周知であったかについて検討すると,原告は,昭和54年の発足後,会員である歯科医師らによる歯科医療に係る自主学習グループとして,定期的に勉強会等を開催していたことがうかがわれる
(甲1)しかし,

原告の会員数は全国の

歯科医師数の約0.
06パーセントにすぎず,
原告の会員を通じて
「WDSC」
の表示が広く認識されていたとは認めることはできない。また,本件証拠上,本件雑誌が発行されるまで,原告が全国誌に取り上げられるなどして「WDSC」
の表示が歯科治療を受けることを考えている者に対して広く使用されたのは,平成26年雑誌において前記のとおりの記事が掲載されたのみであり(原告は,
「WDSC」の表示の周知性の根拠として本件雑誌のほか平成26年雑誌における原告に関する記事の存在のみを主張し,平成29年10月2日の弁論準備手続期日において「WDSC」の表示の周知性について追加の主張を行う予定はない旨述べた。,同雑誌の現実の発行部数も明らかではない。原告は)
平成26年雑誌の発行予定部数10万部が発行されたと主張するが,これを認めるに足りる証拠はない。
これによれば,
平成26年雑誌によって
「WDSC」

の表示に接した者は,本件の需要者のうちの限られた者である。
これらのことからすると,本件雑誌が発行された平成27年10月29日の時点までに「WDSC」の表示が,原告の商品等表示として全国の歯科治療を受けることを考えている者の間で広く認識されていたと認めることはできない。

原告は,本件原告広告記事が掲載されている本件雑誌も「WDSC」の表示の周知性を基礎付けることになる旨主張する。
しかし,不正競争防止法2条1項1号の趣旨は,周知な商品等表示として保護するに足る事実状態が形成された場合,その時点から周知の商品表示と類似の商品表示の使用等によって営業主体の混同を生じさせる行為を防止すると
いうものであり,本件においては,損害賠償請求の対象とされている表示の使用を被告らがした時点である本件雑誌の発行時において周知性を備えていることを要すると解すべきである(最高裁判所昭和63年7月19日判決民集42巻6号489頁参照)
。原告の主張のうちこれと異なる趣旨を主張する部分
は採用することはできない。そして,本件雑誌を「WDSC」の表示の周知性
を基礎づける事実として考慮したとしても,前記

の事情のほか,本件雑誌の

発行部数が明らかになっていないこと,本件雑誌を含めた原告を紹介する記事等が掲載された全国誌の発行回数に照らせば,上記結論を左右するものではない。
また,原告は,類似する商品等表示が使用された時点において混同が生じるにもかかわらず,
周知性がないために不正競争防止法2条1項1号に基づく請
求が否定されることはないというべきである旨主張する。しかし,同号は,前記のとおり,周知な商品等表示として保護するに足る事実状態が形成された場合において,周知の商品表示と類似の商品表示の使用等によって営業主体の混同を生じさせる行為を防止するために当該行為を不正競争としたものであり,周知な商品等表示として保護するに足る事実状態が形成されていたいか否か
を問題とせずに不正競争となる旨をいうと解される原告の主張を採用することはできない。
以上によれば,
「WDSC」の表示が,本件各記事の掲載時点において,需要
者である歯科治療を受けることを考えている者の間で広く認識されていたと認めることはできない。
そうすると,本件各記事における「WDSC」の表示が商品等表示であるか
否かやその表示の使用により原告の営業と混同を生じさせたかなどその余の点を検討するまでもなく,原告の請求には理由がない。
2結論
よって,原告の請求は理由がないから棄却することとし,主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第46部

裁判長裁判官

柴田義明
裁判官


裁判官

大雅下子良仁
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