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特許権を受ける権利を有することの確認等請求,真の発明者ではない旨の宣誓手続請求反訴事件 特許権 民事訴訟
事件番号平成27(ワ)25780等
事件名特許権を受ける権利を有することの確認等請求,真の発明者ではない旨の宣誓手続請求反訴事件
裁判年月日平成30年1月22日
法廷名東京地方裁判所
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平成30年1月22日判決言渡
平成27年(ワ)第25780号

同日原本交付

裁判所書記官

特許権を受ける権利を有することの確認等請求

事件
平成29年(ワ)第13193号
口頭弁論終結日

真の発明者ではない旨の宣誓手続請求反訴事件

平成29年10月23日
判本訴原告

A
(以下「原告A」という。)

本訴原告・反訴被告

B
(以下「原告B」といい,原告Aと併せて「原告ら」という。)

上記二名訴訟代理人弁護士

藤丸同勝海寿同飯尾同松本美同平澤祐
同補佐人弁理士

川崎
本訴被告・反訴原告

近大福工人美子拓奈子人仁業株式会社
(以下,単に「被告」という。)
同訴訟代理人弁護士

田貴久
同訴訟復代理人弁護士

赤松俊治
同補佐人弁理士

永谷昌樹主1文
原告Aが,別紙1特許出願目録記載の特許請求の範
囲の請求項1ないし4記載の各発明について,特許

を受ける権利の共有持分を4分の1ずつ有すること
を確認する。

2
原告Bが,第1項の各発明について,特許を受ける
権利の共有持分を4分の1ずつ有することを確認す
る。

3
被告が,第1項の各発明について,特許を受ける権
利の共有持分を2分の1を超えて有しないことを確

認する。
4
被告は,原告Aに対し,33万円及びこれに対する
平成26年1月29日から支払済みまで年5分の割
合による金員を支払え。

5
原告らのその余の本訴請求をいずれも棄却する。

6
被告の反訴請求を棄却する。

7
訴訟費用は,本訴反訴を通じてこれを7分し,その
4を原告Aの負担とし,
その1を原告Bの負担とし,
その余を被告の負担とする。

8
この判決は,第4項に限り,仮に執行することがで
きる。
事実及び理由

第1

請求

1
本訴請求



原告らが別紙1特許出願目録記載の特許請求の範囲の請求項1ないし4記載
の各発明について,特許を受ける権利の共有持分を2分の1ずつ有することを確認する。


被告が別紙1特許出願目録記載の特許請求の範囲の請求項1ないし4記載の
各発明について,特許を受ける権利を有しないことを確認する。


被告は,原告Aに対し,1100万円及びこれに対する平成26年1月29
日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

2
反訴請求

原告Bは,別紙1特許出願目録記載の特許請求の範囲の請求項1ないし4記載の各発明について,自らが真の発明者ではない旨の宣誓をせよ。
第2
1
事案の概要等
請求の概要

本訴請求は,原告らが,発明の名称を「地盤改良装置」とする特許出願(特願2014-14297。以下「本件特許出願」という。)の願書に添付した特許請求の範囲の請求項1ないし同4に各記載の発明(以下,請求項の番号に応じて「本件発明1」などといい,本件発明1ないし同4を併せて「本件各発明」という。)は,いずれも原告らによる共同発明であるとして,本件特許出願の出願人である被告に対し,本件各発明について原告らが特許を受ける権利の共有持分を2分の1ずつ有していること及び被告が特許を受ける権利を有しないことの各確認を求めると共に(なお,原告らは,仮に,原告らのほかに被告の従業員が共同発明者として認定された場合には,予備的に,原告らが被告と共に本件各発明について特許を受ける権
利の共有持分を有することの確認を求める旨を明らかにした。),原告Aが,被告が原告Aを発明者として記載しないまま本件特許出願をしたことは発明者名誉権侵害の不法行為を構成すると主張して,被告に対し,損害賠償金1100万円(慰謝料1000万円及び弁護士費用100万円)及びこれに対する不法行為後の日である平成26年1月29日から支払済みまでの民法所定年5分の割合による遅延損害
金の支払を求めた事案である。
反訴請求は,被告が,本件特許出願の願書の発明者欄(参照のため,本件特許出願に係る公開特許公報〔甲9〕を本判決の別紙2として添付する。)には,原告Bが発明者として記載されているものの,原告Bは本件各発明の真の発明者ではないとして,原告Bに対し,同発明者欄の削除補正に要する,自らが本件各発明の発明
者ではない旨の宣誓を求めた事案である。
2
前提事実等(当事者間に争いがないか,後掲の証拠及び弁論の全趣旨により
容易に認められる事実等。なお,書証の枝番号の表記は省略することがある。)⑴

当事者

原告Aは,山梨県甲府市内で,「C鉄工」の屋号にて地盤改良装置等の建設機械の開発・製造等を業とする個人事業主である。
原告Bは,原告Aの子であり,C鉄工の従業員である。
被告は,コンクリートブロック及びセメント製品の製造・開発等を業とする株式会社である。


角堀掘削ヘッドの納品

原告Aは,平成25年9月12日,被告に対し,ベースマシンに設置された地盤改良装置のうち,オーガモーターに接続されるロッドの先端に取り付けられる掘削ヘッド部分であって,地表面に対して垂直方向の回転軸を有し地表面と略平行となるように設けられた水平掘削翼と,水平掘削翼の回転軸と直角の回転軸を有し地表面と略垂直となるように設けられた2つの横掘削翼とからなり,これにより地盤を上方から見て正方形状に掘削することができる掘削ヘッド(以下「本件角堀掘削ヘ
ッド」という。)を,ガイドパイプと共に納品した(甲6)。


本件特許出願

被告は,
平成26年1月29日,
別紙1特許出願目録記載のとおりの特許出願
(本
件特許出願)をした。本件特許出願の願書の発明者欄には,本件各発明の発明者として,被告の従業員であるD(以下「D」という。),E(以下「E」という。),F(以下「F」といい,D及びEと併せて「被告従業員ら」ということがある。)及び原告Bの氏名が記載されている。


本件各発明

本件特許出願の願書に添付した特許請求の範囲の請求項1ないし同4記載の発明(本件各発明)は,次のとおりである。

請求項1記載の発明(本件発明1)

地盤を攪拌しセメントミルクを混合し硬化させて基礎杭を構成するためのもので
あって,先端部に該セメントミルクを噴射するノズル,進行方向に掘削するための先端掘削翼,及び該先端掘削翼の回転軸と直角の回転軸を持つ横掘削翼を,該先端掘削翼より根本側に中心軸を挟んで向かい合って少なくとも2つ設けたことを特徴とする地盤改良装置。

請求項2記載の発明(本件発明2)

該横掘削翼は,該先端掘削翼より根本側で,且つ該先端掘削翼近傍に設けたものである請求項1記載の地盤改良装置。

請求項3記載の発明(本件発明3)

全横掘削翼の回転面と直角の攪拌面積が,該先端掘削翼が掘削する面積の1/6以上である請求項1又は2記載の地盤改良装置。

請求項4記載の発明(本件発明4)

全横掘削翼は2つである請求項1乃至3のいずれか1項に記載の地盤改良装置。3


本件各発明の共同発明者は誰か(争点1)



発明者名誉権の侵害により原告Aが受けた損害の額(争点2)



反訴事件につき,訴えの利益があるか(争点3)



争点

被告は,原告Bに対し,真の発明者ではない旨の宣誓を求める請求権を有す
るか(争点4)
4
争点に対する当事者の主張



争点1(本件各発明の共同発明者は誰か)について

【原告らの主張】

事実経過の概要

原告Aは,被告に対し,平成16年頃及び平成20年頃に,それぞれ円柱杭型地盤改良装置を製作して納品し(以下,同円柱杭型地盤改良装置又はそのベースマシンについて,平成16年に納品したものを単に「1号機」と,平成20年に納品したものを単に「2号機」ということがある。),その後もメンテナンス等で被告と
の取引を継続していた。
原告Aは,平成22年頃,被告からの依頼により,正方形状に地盤を掘削することができる治具を製作したが,失敗に終わった。これ以降,原告Aは,正方形状に地盤を改良する方法を検討していたが,平成24年3月頃,水平掘削翼とその上方左右に垂直掘削翼を取り付け,ギアを用いて垂直掘削翼を回転させる構成を思いつき,このアイデアに基づく簡単な図を作成した(甲23)。
平成25年1月10日,原告らは,被告の事業所を訪問して,被告従業員らからパワーブレンダー工法(セメント系固化材等をスラリー状にして混練し,地中に噴射して原位置土と強制的に攪拌混合して固化させる地盤改良方法)の現場を見せら
れ,パンフレット等の資料の交付も受け(甲2),「水平方向に地盤を広範囲に連続攪拌する機能を備えた地盤改良装置」(「水平方向に」とは,掘削ヘッドを地中で動かすという意味ではなく,掘削ヘッドが地上に出た状態で水平方向に動かすことができるという意味である。)を製作するよう求められた。原告Aは,この時,被告従業員らに対し,水平掘削翼と垂直掘削翼とをギアを用いて組み合わせるとい
うアイデアを被告従業員らに披露している。
原告らは,被告からの製作依頼を受けて,原告Aのアイデアに基づき,同年2月20日付けで見積書(甲4)を提示した上,同年3月9日にはCAD図面等を交付している(甲5,乙7の2,7の3)。原告らと被告との間には,同日頃,同CAD図面等に基づき,オーガモーターや掘削ヘッド等からなる攪拌混合機(以下「本
件攪拌混合機」という。)について,製作物供給契約が成立した。原告らは,平成25年8月10日,掘削ヘッドの試作機を用いて,原告らの事業所の敷地内で試掘を行った。事業所の敷地面積の都合上,垂直方向にのみ掘削を行ったところ,正方形状の穴を掘ることに成功した(甲6)。原告らは,被告から「水平方向に地盤を広範囲に連続攪拌する機能を備えた地盤改良装置」の製作を依頼さ
れてはいたが,「角柱杭型地盤改良装置」の製作を依頼されたものではなかったところ,正方形状の穴が形成されたのを目の当たりにして,ここにセメントを混ぜる
ことにより,角柱杭を生成できることを覚知した。ここに,「角柱杭型地盤改良装置」としての本件各発明が完成したものである。
原告らは,本件各発明について被告に知らせたところ,被告が直ちに納品して欲しいとのことであったので,平成25年9月12日,本件攪拌混合機のうち,完成していた本件角堀掘削ヘッドとガイドパイプ部分のみを納品した。さらに,早く試掘をしたいとの被告の要望を受け,原告らは,同年10月21日,本件角堀掘削ヘッドとガイドパイプ部分を,当初は設置する予定のなかった2号機に取り付けて試掘したところ,見事に角柱杭を生成することができた。なお,被告は,本件角堀掘削ヘッドの納品を受けてから上記試掘までの間に,本件角堀掘削ヘッドをリバース
エンジニアリングして,本件特許出願に必要な図面を作成していたものと考えられる。
原告は,その後,本件攪拌混合機を完成させ,当初の依頼に従い,リーダレス型ベースマシン(以下「3号機」ということがある。)に本件攪拌混合機を取り付けたが,ガイドリーダー(ロッドの外側に固定される支持具)が設置されていない3
号機では,垂直に地面を掘削することが困難であったので,被告は,平成25年12月,原告らに対し,本件攪拌混合機をガイドリーダーのある2号機に付け替えるよう依頼した。このような付け替えは当初予定されていなかったので,本件攪拌混合機には別途振れ止め(掘削ヘッドの重みで攪拌混合機が前のめりとなることを防ぐ部材)及び延長ガイドロッドを取り付けることを要した(甲31,44)。
被告は,平成26年1月,本件各発明の発明者である原告らに秘して本件特許出願をしていたが,同年6月になってようやく,原告Bを共同発明者として特許出願したいなどと述べ,原告Aがこれを断ったところ,同年8月頃,原告Bが被告に対して特許を受ける権利を譲渡する旨の契約書案(甲11)を提示するなどしてきたものである。


本件各発明の発明者について

(ア)本件角堀掘削ヘッドの構成につき,着想及び具体化のいずれの部分も原告ら
が行ったこと
本件各発明は,原告らが製作した本件攪拌混合機のうち,本件角堀掘削ヘッド部分に係るものである。
本件発明1の発明特定事項である「進行方向に掘削するための先端掘削翼,及び該先端掘削翼の回転軸と直角の回転軸を持つ横掘削翼を,該先端掘削翼より根本側に中心軸を挟んで向かい合って少なくとも2つ設けた」との構成及び本件発明2の発明特定事項である「該横掘削翼は,該先端掘削翼より根本側で,且つ該先端掘削翼近傍に設けた」との構成は,原告Aが平成24年3月頃に作成した図(甲23)に既に現れており,原告Aは,平成25年1月10日,そのアイデアを被告に披露
し,
本件角堀掘削ヘッドを含む本件攪拌混合機の製作へと進んでいったものである。本件発明4の発明特定事項である「全横掘削翼は2つである」との構成も同様である。
本件発明1の発明特定事項である
「先端部に該セメントミルクを噴射するノズル」
を有する構成は,原告Bが平成25年2月頃に原告Aに提案し,同月20日付け見
積書(甲4)に反映させたものである。
本件発明3の発明特定事項である「全横掘削翼回転面と直角の攪拌面積が,該先端掘削翼が掘削する面積の1/6以上」との部分は,被告による指示があったものではなく,原告らが試行錯誤して垂直掘削翼の爪(刃)の位置,向き及び角度等を設定して完成した本件角堀掘削ヘッドの構成を,被告が出願に際してそのまま特許
請求の範囲に記載したものである。
(イ)本件攪拌混合機は,角型の「基礎杭を構成するためのもの」として製作を依頼されたものではないこと
前記アにおいて主張したとおり,原告らは,被告から「水平方向に地盤を広範囲に連続攪拌する機能を備えた地盤改良装置」の製作を依頼されたものであり,「角
柱杭型地盤改良装置」の製作を依頼されたものではない。本件攪拌混合機を用いて角柱杭を形成することができることは,平成25年8月10日,原告らが事業所で
試掘を行い,正方形状の穴を目の当たりにした時に覚知し,これを知らされた被告も,当初の予定を変更して,本件攪拌混合機をガイドリーダーのある2号機に設置するなどしたものである。
被告が当初「角柱杭」を生成することを前提としていなかったことは,原告Aが作成した見積書(甲4,乙5)に「角柱杭」との記載がなく,パワーブレンダーから取った「パワーホルダー」との記載があること,被告が作成したとする注文書(乙8。原告らは同注文書を受領したことを否認する。)に「角柱杭」との記載がなく,かえって「浅層改良機」との記載があること,被告がコマツ山陰株式会社(以下「コマツ山陰」という。)に提案させた機械(乙19ないし22)も角柱杭の生成を目
的としたものではないとうかがわれること,本件攪拌混合機を設置する予定であった3号機はガイドリーダーのないリーダレス機であり(甲27,29),熟練したオペレータでも正確に垂直かつ方向の揃った角柱杭を打つことが困難であること,3号機には「アーム・ブーム角度検出センサー」及び「オーガ部左右傾き検知用角度センサー」など,水平方向に地盤を広範囲に攪拌するからこそ必要となるセンサ
ーが取り付けられていること(甲39ないし41)などの事情から明らかである。(ウ)被告従業員らが本件各発明を着想し,具体化したとの客観的証拠はないこと以上に対して,被告従業員らが本件各発明を着想し,具体化したことを示す客観的な証拠は,
本件には全く提出されていない。
すなわち,
被告従業員らが話し合い,
説明する際に作成したというメモなどが書証として提出されているわけではなく,
本件攪拌混合機の発注後納品に至るまで,被告従業員らが原告らに具体的な指示を行ったことを示す証拠等も提出されていない。被告従業員らは,機械に精通しておらず,本件各発明の具体的な着想として主張し又は陳述する事項は,本件角堀ヘッドを見てからする後付けの説明にすぎず,機械に関する無理解を露呈しているものである。

(エ)小括
以上からすれば,
本件各発明の発明特定事項は,
全て原告A又は原告Bが着想し,

具体化したものであって,他方で被告従業員らはその過程に何ら関与していないから,本件各発明は,原告らによる共同発明というべきである。

特許を受ける権利の帰属について

原告らは,平成26年11月25日,本件各発明につき防御的に特許出願しているところ(甲32・同出願に係る公開特許公報),同日までに,本件各発明についての特許を受ける権利の共有持分について,各2分の1とする旨を合意した。したがって,本件各発明についての特許を受ける権利は,原告A及び原告Bがそれぞれ2分の1を有している。
【被告の主張】


事実経過の概要

被告は,従来,原告Aから納品を受けた1号機や2号機で地盤改良を行っていたが,円柱杭による地盤改良では,重複部分が生じる問題があった。被告は,地盤改良の効率を上げるため,平成22年頃,原告Aに対し,正方形で地盤改良ができる機械の提案を依頼し,治具の提供を受けたが,これは失敗に終わった(乙1ないし4。原告Aがこのとき作成した見積書〔乙1〕には「角セメント杭,打ち込み用治具製作」との記載があり,原告Aも,正方形状に穴を掘る目的が角杭を形成することにあることを認識していた。)。また,被告は,平成24年頃には,コマツ山陰に対し,四角形で地盤改良を行いたいので,

そのような機械の製作をできないか。

と依頼し,
現に具体的な図面に基づく機械の提案も受けていた
(乙18ないし22)


このように,被告では,正方形状に穴を掘って角柱を形成して地盤改良を行う機械の実現可能性を探っていたところ,被告従業員らは,平成24年12月頃,社内で議論し,既に角柱杭を生成するものとして普及していた2枚の垂直掘削翼(ツインブレード)が設けられたのみの機械(甲2)に,被告が当時使用していた1号機,2号機のような水平掘削翼を組み合わせれば,推進力が乏しいという従来の機械の
問題点を解決しつつ,角柱杭による無駄のない地盤改良が可能になると考えた。そして,デファレンシャルギアの仕組みを用いて,水平掘削翼の回転軸の回転を直角
に変換し,垂直掘削翼を回転させることなどを,ギアの絵を描くなどしながら具体的に協議し,四角形での地盤改良が可能であるとの結論に至った。ここに,本件各発明が完成したものである。
そこで,被告従業員らは,平成25年1月10日,原告Aに対し,ツインブレード型の機械やリーダレス型機械の資料等(甲2)を示し,「1号機や2号機の水平掘削翼より上方に,水平掘削翼の回転軸と直角の回転軸を持つ垂直掘削翼を2つ付けたらほぼ正方形の穴を掘ることができるのではないか」「Cさんの今のに,ツインブレードみたいな横羽を付ければ角が取れるんじゃない」「ダンプなどでも使われている方向を変換するギアもある」「水平掘削翼と垂直掘削翼を一緒に回すこと
ができるし,こうすれば正方形に掘れる」「例えば車のデフのような構造であればよいのでは」などと,具体的な構成を指示し,角柱杭型地盤改良装置の製作を依頼した。なお,被告が同日,原告らに対してパワーブレンダー様の広範囲に攪拌する地盤改良装置の製作を依頼した事実はない。
原告Aは,
同年8月21日,
被告に対し,
手紙及び写真を送付した
(乙9,
10)


そこには,
「アタッチメント,オーガ,一式製作」が仕上がった旨の記載はあるが,「角柱杭が生成できるようになった」などの記載はない。もともと,被告は,角柱杭型地盤改良装置の製作を依頼しているのであるから,
角柱杭が生成できることは,
当然のことであったからである。
したがって,本件攪拌混合機や,これを構成する本件角堀掘削ヘッドは,被告が
原告らに対して製作を依頼したのがそのまま納品されたものである(このことは,原告Aが作成した製造委託前の見積額〔乙5〕と製造後の見積額〔乙6〕とが一致していることからも明らかである。)。
被告は,本件角堀掘削ヘッドにより角柱杭が形成されることを確認した後,本件特許出願をすることとしたが,これに先立ち,原告Aに対して特許出願の意向を確
認したところ,「うちはいいから,会社(被告を指す。)で出して。」として,これを了承した。もっとも,被告は,原告らと今後も良好な関係を築いていきたいとの
思いから,本件各発明の発明者ではないものの,原告Aの息子である原告Bを共同発明者として願書に記載したものである。

本件各発明の発明者について

(ア)被告従業者らは,地盤改良等を業とする被告の従業員として,地盤改良機械の構造についても熟知していたところ,上記アのとおり,平成24年12月頃,本件各発明を完成させたものである。
本件発明1の発明特定事項である「地盤を攪拌しセメントミルクを混合し硬化させて基礎杭を構成するためのもの」で「先端部に該セメントミルクを噴射するノズル」及び「進行方向に掘削するための先端掘削翼」を有する構成は,被告従業員ら
が平成24年12月に議論を行う前提とされていたものである。
本件発明1の発明特定事項である「該先端掘削翼の回転軸と直角の回転軸を持つ横掘削翼を,該先端掘削翼より根本側に中心軸を挟んで向かい合って少なくとも2つ設けた」との構成のうち,「直角の回転軸」との部分は,Eが平成24年12月の議論に先立って被告の役員であるG(以下「G」という。)と議論していたデフ
ァレンシャルギアを用いるというアイデアをたたき台として,「中心軸を挟んで向かい合って少なくとも2つ設けた」との部分は,既に普及していた機械が有するツインブレードを組み合わせるとのアイデアをきっかけに,それぞれ被告従業員らが着想したものである。
本件発明4の発明特定事項である
「全横掘削翼は2つである」
との構成も同様である。

本件発明2の発明特定事項である「該横掘削翼は,該先端掘削翼より根本側で,且つ該先端掘削翼近傍に設けた」との構成も,被告従業員らが平成24年12月の議論の中で,各掘削翼の接触防止,地中の転石等も考慮し,なるべく深く柱状改良するためには横掘削翼が先端掘削翼の近傍にあったほうがよい旨を決めたものである。

本件発明3の発明特定事項である「全横掘削翼回転面と直角の攪拌面積が,該先端掘削翼が掘削する面積の1/6以上」との部分は,被告従業員らが平成24年1
2月の議論の中で,横掘削翼にはバックホウの先端部の爪を取り付けてはどうかとの話になり,取り付ける爪の角度及び長さについて,手書きで絵を描きながらある程度の長さが必要となる旨を確認したものである。
以上のとおり,被告従業員らは,平成24年12月に行った議論の中で,本件各発明について着想及び具体化して完成させ,これを,平成25年1月,そのまま原告Aに伝えて,角柱杭型地盤改良装置の製作を依頼したものである。したがって,本件各発明は,被告従業員らによる共同発明である。(イ)以上に対して,
原告らは,
被告従業員らが具体的構成を指示して依頼した
「角
柱杭型地盤改良装置」を単に製作した者にすぎず,本件各発明の発明者ではない。
原告Aが本件各発明の着想をした根拠として提出する図(甲23)は,日付すら入っていないものであって,平成24年3月頃に作成されたかは不明である。なお,そもそも原告らは,「被告が特許申請をしている発明は,原告Aのアイデア・着想部分のみである」として,原告Bが本件各発明の発明者ではないことを自認しているところである。


原告らの主張に対する反論

原告らは,被告が当初依頼したのは「水平方向に地盤を広範囲に連続攪拌する機能を備えた地盤改良装置」であって「角柱杭型地盤改良装置」ではないなどと主張するが,正方形状の穴を掘ることにより地盤を改良する装置の製造を依頼していることは原告らも認めるところであり,そのような装置であれば,角柱杭での地盤改良が当然に可能となるのであるから,原告らは,単に表現上の問題を殊更大きな問題であるかのように主張しているにすぎない。そもそも,本件攪拌混合機を用いて「水平方向に地盤を広範囲に連続攪拌」しようとして,掘削ヘッドが地中に埋まった状態でベースマシンのアームを引くなどしても,ケーシングが支障となってスムーズに移動せず,故障してしまう(乙41ないし45・施工実験の結果)。本件攪
拌混合機は,その形状からして,単に垂直方向のみに掘削するものであって,角柱杭を形成する以外の用途はなく,当初からその用途に用いるものとして製作を依頼
している。
原告らは,あたかも,柱状掘削機にはガイドリーダーが必須であり,リーダレス型の3号機では角柱杭による地盤改良ができないかのような主張をするが,誤りである。実際にガイドリーダーが無くとも角柱杭の生成に成功しているところであるし(乙43ないし45),本件攪拌混合機にはシリンダーが設けられており(乙7の1),これにより掘削の向きを揃えて精密に地盤改良することができる。また,原告らは,3号機に取り付けられているセンサーは,水平方向に地盤を広範囲に攪拌するからこそ必要となるものであるとするが,これらのセンサーは,掘削面に対する回転軸の角度(地面に対して垂直であるか)のほか,掘削ヘッドの水平面上の
向きも測るものであって,パワーブレンダーのような地盤を面で広く掘削する地盤改良装置にはむしろ不要であり,角柱杭型地盤改良装置にこそ必要なものである。なお,リーダレス型基礎機械は,リーダ型のものと比べて,杭を打つたびにベースマシンを移動させる必要が無いという利点があり,被告としては,平成24年2月頃にはリーダレス型基礎機械の導入を検討していたものである(乙37,38)。

特許を受ける権利の帰属について

被告は,被告従業員らの職務発明である本件各発明について,被告従業員らから特許を受ける権利の譲渡を受けたから,同権利は,被告が有するものである。⑵

争点2(発明者名誉権の侵害により原告Aが受けた損害の額)について
【原告Aの主張】
被告は,本件各発明の発明者が原告らであることを知りながら,故意に原告Aを発明者欄から除外した本件特許出願をして,原告Aの発明者名誉権を侵害した。同行為により,原告Aは,慰謝料1000万円に相当する精神的損害を受けたほか,弁護士費用として100万円の損害を受けた。
【被告の主張】

否認し,争う。
既に主張したとおり,原告Aは本件各発明の共同発明者ではない。


争点3(反訴請求事件につき,訴えの利益があるか)について

【被告の主張】
本件特許出願の願書には,発明者として原告Bの氏名が記載されているところ,争点1について主張したとおり,原告Bは本件各発明の共同発明者ではない。本件特許出願の出願人である被告としては,真実と異なる発明者の記載を削除する補正をする必要があるが,特許庁は,発明者を削除する旨の手続補正書には,同発明者が真の発明者でない旨の宣誓書を添付すべきとしている(乙49・方式審査便覧)。しかし,原告Bは,本訴請求において,自らが本件各発明の共同発明者である旨を主張しているから,同宣誓書を任意に作成するとは考え難い。
そうすると,
被告が求める補正を実現するためには,
判決により,
原告Bに対し,
同人が本件各発明の発明者ではない旨の宣誓を命じる必要がある。【原告Bの主張】
法規を適用して請求の当否を判断するに足りる具体的な権利関係の存否を主張しない訴えや,およそ実定法上権利として認められていないことが一見して明白な訴
えは,裁判所が審理の対象とし,被告に応訴を強いるまでの必要性がないから,訴えの利益を欠くものと解される。
「真の発明者ではない旨の宣誓を求める」被告の反訴は,このような宣誓を求め得る法的根拠を一切示していないことからして,法規を適用して請求の当否を判断するに足りる具体的な権利関係を主張しておらず,また,実定法上認められていな
い請求であることが一見して明白である。
したがって,
反訴の訴えは,
訴えの利益を欠くものとして却下されるべきである。


争点4(被告は,原告Bに対し,真の発明者ではない旨の宣誓を求める請求
権を有するか)について
【被告の主張】
争点1について主張したとおり,本件各発明の発明者は被告従業員らであり,原告Bではないから,被告は,原告Bに対し,同人が本件各発明の真の発明ではない
旨の宣誓を求めることができる。
【原告Bの主張】
否認し,争う。
既に主張したとおり,原告Bは本件各発明の共同発明者である。
第3

当裁判所の判断

1
争点1(本件各発明の共同発明者は誰か)について



認定事実

前記前提事実,各項目末尾掲記の証拠(ただし,次の認定に反するものを除く。)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。

当事者等の経歴

原告Aは,工業高校を卒業後,工作機械の製作を行う会社に15年間勤務したのち,昭和48年に独立してC鉄工を創業し,以来,地盤改良装置等の重機の製造等を行ってきた(甲33)。
原告Bは,工業高校を卒業後,工業大学にて機械工学を専攻し,卒業後,原告Aが営むC鉄工に就職したが,2年間,日立建機株式会社に出向して,ユンボ等のベースマシンや油圧ショベル等の設計等の業務に従事した。C鉄工に戻ってからは,原告Aと共に地盤改良装置等の設計,
製造等に従事している
(甲34,
原告B本人)

Fは,高校を卒業後,地盤改良を専門とする株式会社ツチケンに入社し,柱状改良機等の製造委託業務等に携わった後,平成20年に被告に転職し,平成25年当
時は被告の環境部に所属していた(甲15,乙30,証人F)。
Dは,工業高校を卒業後,被告に入社し,被告において主に営業や現場管理を担当しており,平成25年当時は環境部環境課長の地位にあった(乙31,証人D)。Eは,農林高校を卒業後,他社にてシールドマシンの操作,機械の分解,組立,修理等に従事した後,被告に転職し,平成25年当時は土木部次長の地位にあった
(乙32,証人E)。

1号機及び2号機の納品等

Fは,
株式会社ツチケンに在職していた平成15年頃,
原告Aを被告に紹介した。
原告Aは,被告に対し,平成16年頃及び平成20年頃,それぞれ円柱杭型地盤改良装置(1号機及び2号機)を製造して納品した。
1号機及び2号機は,オーガモーターにて回転する地表面に対して垂直方向の回転軸の先端に,回転運動により地盤を掘削する刃を複数枚有する水平掘削翼を取り付けたものであって,掘削した箇所にセメントを注入して攪拌し,杭芯を引き抜くことにより,コンクリート製の杭を形成することができるが,水平掘削翼が回転して地盤を掘削することから,上面視の掘削面は円形状になり,形成される杭は円柱状となる。
(以上につき,甲15,25ないし28,30,乙30)


角堀りにて地盤改良を行うための取組み等

(ア)一般に軟弱な地盤を改良する方法のうち,スラリー状の固化材を鉛直方向に円柱状に掘削,攪拌,混合し,これらを順次横方向に連接して地盤全体を改良する方法による場合には,上面視の掘削面が円形状であり,円弧からはみ出た部分は別途掘削,攪拌,混合する必要があるため,非効率であり,また,攪拌したセメントにムラができるなどの問題点が存した(甲9,45,乙30ないし33,証人H,証人F,証人D,証人E)。
(イ)このようなことから,被告は,上面視四角形状に地盤を掘削できる装置を入手したいと考え,平成22年頃,原告Aに対し,何らかの装置を製作できないか打
診した。原告Aは,これに対し,既存の1号機,2号機の先端に設置して掘削することにより,角形のセメント杭を打ち込むことを目した角形ケーシング状を治具を製作し,被告に納品した。しかし,この治具を用いた試掘を実施したところ,治具が破損したため,成功しなかった(甲33,乙1ないし4,乙30,31,原告A本人,証人F,証人D)。

(ウ)また,被告は,平成24年頃,コマツ山陰に対し,上面視四角形状に地盤を掘削することにより地盤改良を行う装置の引き合いを出した。コマツ山陰は,これ
に応じ,被告に対し,トレンチャー型の浅層・中層の地盤改良装置(バックホウのアームの先端に側面視楕円形状,上面視長方形状の攪拌機を備え,同攪拌機にはキャタピラーのように回転するチェーン及び複数の攪拌翼が備え付けられた装置)を提案したが,他社が保有する特許権との抵触関係が懸念されたことから,取引には至らなかった。その後,コマツ山陰は,平成25年3月頃,被告に対し,ツインブレード型の浅層・中層の地盤改良装置(バックホウのアームの先端に,地表面に対して略垂直に設けられた2枚の回転掘削翼を備えた装置)を提案したが,被告がこれを採用するには至らなかった(乙18ないし22,30,証人H,証人F)。エ
平成25年1月10日の打合せ

原告らは,
平成25年1月10日,
被告の求めに応じて被告の事業所を訪問した。
被告側からは,G,F及びDが応対した。
G,F及びDは,同日,原告Aに対し,被告が新たに調達するリーダレス型のベースマシンに取り付けるオーガモーターや掘削ヘッドの製作を依頼したが,その際,
掘削面を上面視四角形状にするため,市場に一般に流通していたツインブレード型
の地盤改良装置を参考に,現在1号機や2号機で使用されている,地表面に対して垂直方向の回転軸の先端に,地表面と略平行になるように掘削翼を取り付けた構成に加えて,同回転軸と直角の回転軸を有し,その先端に地表面と略垂直となるように2枚の回転掘削翼を設ける構成としてはどうか,ギアとして車のデファレンシャルギアなどを用いれば,直角な回転軸も備えることができるのではないかなどと話
した。
さらに,G,F及びDは,被告の事業所の近くの現場に原告らを連れて行き,パワーブレンダー型地盤改良装置(リーダレス型のベースマシンに設置するトレンチャー型の地盤改良装置のうち,
特定の形状の攪拌翼を備える構成によるものであり,
浅層ないし中層〔地表面から約5メートル程度ほどの深度〕の地盤スラリー状の固
化材を攪拌,混合することにより広範囲に改良するもの)による地盤改良作業を見学させた。もっとも,パワーブレンダー型地盤改良装置には他社の特許権があるの
で,これとの抵触を避けるようにとの指示をした。
これらの過程で,被告は,原告らに対し,参考資料として,パワーブレンダー型地盤改良装置のパンフレット及びツインブレード型地盤改良装置のパンフレットを交付した。
(以上につき,甲2,35,45,乙30,31,33,乙40,
原告A本人,原告B本人,証人F,証人D)

本件見積書の提出と本件攪拌混合機の発注

(ア)原告Aは,上記エのとおりの被告の意向を受けて,新たに調達するリーダレス型ベースマシンに取り付ける地盤改良装置の製作について検討し,その中で,ギアとしてはヘリカルギアを使用することが相当と考え,これらの内容を盛り込んだ平成25年2月20日付け見積書(本件見積書)を作成し,同日,被告へ送付した。本件見積書には,「パワー,ホルダー掘削機1000×1000新規制作一式」「ギャーヘルカル,ギャー使用。」「オガーは中通しでは,ありません。」「バケット用アダプタ使用(3×4×8枚溶接仕上げ)」「本体(ZAXIS330)」な
どの記載がある。
被告は,本件見積書に装置のベースマシンへの取付費用が含まれていなかったことから,原告Aに対し,その費用も追加で見積もるよう求めたが,基本的な方向性については問題ない旨回答した。
(以上につき,甲4,33,48,乙24,30,原告A本人,証人F)
(イ)原告らは,本件見積書について被告から肯定的な返答が得られたので,被告から依頼を受けた地盤改良装置(本件攪拌混合機)の製作に取りかかることとし,原告Bが,平成25年3月7日までに,本件攪拌混合機のうち本件角堀掘削ヘッドに相当する部分のCAD図面を作成した。同CAD図面には,ロッド(オーガモーターにより回転される地表面に対して垂直方向の回転軸)の先端に設置される水平
掘削翼のほか,
地表面と略垂直となるように備え付けられた2枚の横掘削翼があり,同横掘削翼がロッドと直角方向の回転軸により回転される構成が示されている。ま
た,セメントを噴出するためのノズルは,既存の1号機及び2号機と同様に,ノズルをロッドの中に通して先端掘削翼の中央に配する構成とされた。原告らは,同月8日又は9日頃,被告の事業所を訪れ,上記CAD図面を交付して内容を説明したほか,1号機又は2号機に設置されているオーガモーターを預かり,C鉄工の事業所へ持ち帰った。
(以上につき,甲5,乙7の2,7の3,30,
原告A本人,原告B本人,証人F)
(ウ)原告Aは,平成25年3月21日頃,被告に対し,本件攪拌混合機のベースマシンへの取付費用を含めた見積書をファックス送信し,被告は,同見積書に記載
された代金額に問題がないと判断し,同日,原告Aに対し,注文書を送付した。同注文書には,「件名」欄に「浅層改良機【先端部(長尺攪拌翼)】」,「品質及び規格」欄に「□1000×1000」との各記載がある。
同年4月頃,3号機のベースマシン(リーダレス型のZX-330)が,原告らの事業所に近い日立建機の山梨県内の事業所に納品された。また,被告は,原告A
に対し,
本件攪拌混合機の代金のうち,
300万円を前受金として同月10日頃に,
134万4000円を同年6月10日頃に,それぞれ支払った。
(以上につき,甲10,29,30,乙8,30,37,38)

本件角堀掘削ヘッドの完成と納品

(ア)原告Aは,平成25年7月12日,それまでに完成させた本件角堀掘削ヘッドの試作品を被告の事業所に持ち込み,2号機に設置して掘削を試みたが,ギアがうまくかみ合わずに動かなかった。
このため,原告らは,試作品を持ち帰り,この問題を解決するため,ギアボックス内にある上下2個の傘歯状のヘリカルギアのうち下側のギアについては,主軸に固定しないこととし,このために含油軸受とスラストベアリングによる縁切りを採
用することとした。なお,この構成は,主に原告Bの着想によるものであった。(以上につき,甲32,33,46,乙30,原告B本人)

(イ)原告らは,平成25年8月10日,上記のとおり調整を加えた本件角堀掘削ヘッドを別のベースマシンに取り付け,試掘を行ったところ,上面視ほぼ正方形状に地盤を掘削することができた。原告らは,上記試掘の様子,正方形状に掘ることができた地面の様子及び本件角堀掘削ヘッドを構成する各部分等を撮影して,その写真を,「写真と図面をお送りしました。図面と本体と,多少異なるところがあります。本体名前をクヴァドラート1000と,つけました。アタッチメント,オーガ,一式製作仕上がりました。本体,(操作弁,電磁弁,配管,鋼管取り付け加工ママ
中です。大変遅くなりまして,申し明けございません。」との手紙と共に被告に送付した。上記手紙を受領したDは,原告Aに電話し,「クヴァドラート」との語の意義を確かめるなどした。
(以上につき,甲6,乙9,30,31,原告A本人,原告B本人,証人D)(ウ)上記(イ)の段階では,いまだ3号機のベースマシンの改造が終了していなかったが,被告が,本件角堀掘削ヘッドを先に納品するよう求めたので,原告らは,平成25年9月12日,本件角堀掘削ヘッド及びガイドパイプのみを,被告に納品
した。
原告らと被告は,同年10月21日,被告の作業現場において,本件角堀掘削ヘッドを2号機に取り付けてセメントを用いて試掘を行ったところ,深さ4メートル程度の角柱杭を生成することができた。原告らは,本件角堀掘削ヘッドの横掘削翼に設置されている爪の本数を減らすようにとの被告の指示を受けて,本件角堀掘削
ヘッドをC鉄工の事業所に持ち帰った。
(以上につき,甲33,34,乙30,31,33,
原告A本人,原告B本人,証人F,証人D)。
(エ)原告らは,その後,3号機のベースマシンの改造,被告から新たに依頼を受けた深度演算用センサーやオーガ部傾き角度センサーの取付けなどの作業を終え,
平成25年12月20日,本件角堀掘削ヘッドを3号機に取り付けた装置(本件攪拌混合機)を被告に納品した。

なお,本件攪拌混合機を用いて地盤改良を行う場合において,本件角堀掘削ヘッドが地中に入った状態のまま(ヘッドを地上に引き抜くことなく),本件角堀掘削ヘッドを前後左右に動かすことは困難であった(実験したところ,本件角堀掘削ヘッドが破損した。)。
(以上につき,甲24,39ないし41,49,乙39,41ないし45,48)(オ)

被告は,平成26年1月,原告Aから本件攪拌混合機の費用の明細を確認す
る趣旨で再度見積書を徴求し,同年2月,原告Aに対し,精算金を支払った。被告が原告Aに対して支払った金額の合計額は,原告Aが平成25年3月に提示した当初の見積額と同額である(甲43,乙6)。

特許出願の準備等

被告は,平成25年10月25日,被告代理人に電子メールを送信し,本件攪拌混合機について特許出願したい旨を伝え,同年11月18日及び平成26年1月16日にF,D及びEが被告代理人等と打合せをし,また,F,D及びEが明細書の記載に修正を施すなどした。なお,出願に際して,本件角堀掘削ヘッドの現物は原告らの手元にあって被告が所持していなかったことから,本件角堀掘削ヘッドの写真を基に明細書等が作成された。
そして,被告は,平成26年1月29日,本件各発明について,発明者をF,D,E及び原告Bと,出願人を被告とそれぞれ記載した特許願を特許庁に提出した(本件特許出願)。
(以上につき,乙13,27ないし29)


本件角堀ヘッドの2号機への取り付け

被告は,平成26年2月頃,原告Aに対し,本件角堀ヘッドを2号機に取り付けたいとして,同月以降,ガイドロッド(8メートル,4メートル,2メートルのもの)及び振れ止めアタッチメントを発注し,本件角堀ヘッドの2号機への取り付け作業も依頼した。
さらに,被告は,平成26年の夏頃,業者に依頼して,2号機に,XYZ軸の各
挙動を計測し,角柱杭をより整然と正確に並べて施工することができる高価なセンサーを設置し,また,3号機に設置されていたオーガ部傾き角度センサーを2号機に付け替えるなどした。
(以上につき,甲31,33,49,52,原告A本人)

特許を受ける権利に関するやりとり

(ア)Fは,
平成26年2月5日,
被告代理人に対し,
本件特許出願を例に挙げて,
社外の発明者への報奨金等についてどのように取り扱えばよいかを問い合わせた。被告代理人が,原告Bと被告との間で特許を受ける権利についてどのような合意があるのか尋ねたところ,Fは,原告Bとの間に対価の合意はないと回答した。被告代理人は,これを受けて,同月11日,原告Bが被告に本件各発明につき特許を受ける権利を無償で譲渡する旨の規定のある契約書案
(以下
「本件契約書案」
という。

を作成し,Fに送付した(甲11,乙14)。
(イ)Fは,平成26年6月18日,原告Aが被告の本社を訪問した際,本件角堀掘削ヘッドの同型機を島根県内の業者に製造させる旨を告げた(甲33,乙30,
原告A本人,証人F)。
(ウ)Fは,平成26年8月7日,C鉄工の事業所に訪問して原告Aに面会し,本件契約書案と共に,特許願の提出を証する書面1枚を交付して,原告Aに対し,本件契約書案に原告Bが署名押印した上で被告に返送するよう求めた。原告Aは,原告Bと相談する旨述べたが,原告Bは,本件契約書案に署名押印しなかった(甲1
1,12,33,34,乙30)。

原告らによる特許出願

原告らは,平成26年11月25日,本件角堀掘削ヘッドを基にした発明について,原告ら両名を発明者として,特許出願をした(甲32)。

事実認定の補足説明

上記認定事実について,事実認定の理由を次に補足説明する。

原告らは,原告Aが,平成24年3月には,水平掘削翼とその上方左右に横
掘削翼を取り付け,ギアを用いて横掘削翼を回転させる構成を思いつき,このアイデアに基づく簡単な図を作成したと主張し,書証として甲第23号証を提出し,原告Aも本人尋問において同旨の供述をする。
しかし,甲第23号証には日付等の記載はなく,平成24年3月頃までに作成されたことをうかがわせるような他の記載も一切見当たらないから,原告らの上記主張は採用することができない。

被告は,被告従業員らが平成24年12月頃社内で議論し,Dが,既に普及
していたツインブレードが設けられた機械と,被告が当時使用していた1号機,2号機のような水平掘削翼とを組合せたらよいと話し,Eがダンプカーのデファレンシャルギアの仕組みを用いれば水平掘削翼の回転軸の回転を直角に変換し,垂直掘削翼を回転させることができ,トルクの乏しさを解消することができるなどと話すなどして,
ギアの絵を描くなどして具体的な構成まで完成させた旨主張し,
証人F,
証人D,証人Eも証人尋問において同旨の証言をする。
前記認定事実(⑴エ)のとおり,被告は,平成25年1月10日,原告らに対し
て本件攪拌混合機の製作を依頼するに際して,ツインブレード型の地盤改良装置を参考にして,現在,回転軸の先端に掘削翼が設けられている1号機や2号機の構成に加えて,同回転軸と直角方向の回転軸を持たせ,その先端に横掘削翼を設ける構成を提案しており,また,車のデファレンシャルギアなどを用いれば直角の回転軸を実現できるのではないかなどと話していることからすれば,これに先立つ平成2
4年12月の段階で,被告従業員らが,水平掘削翼と,これと直角に回転する横掘削翼とから構成されるという,本件角堀掘削ヘッドの基本的な構成を着想していたと認めるのが相当である。もっとも,被告従業員らが,これらのアイデアを具体的にメモしたという書面や図面は,本件に証拠として一切提出されていない。そうすると,被告従業員らにおいて,本件角堀掘削ヘッドの基本的な構成を着想したこと
を超えて,その具体的な構成までも明確化させていたとまで認めることは困難である。


原告らは,平成25年1月10日に被告の本社を訪れた際,「水平方向に地
盤を広範囲に連続攪拌する地盤改良装置」
の製作を求められたにとどまると主張し,
原告Aは,本人尋問において,同日の打合せでは四角形状に掘削するという話すらなかったなどと供述する。
しかし,原告らが同日に交付を受けた資料(甲2)の中には,市場に一般に流通していたツインブレード型の地盤改良装置に関するものがあったこと,原告Aが同日の打合せ後に被告に送付した本件見積書には,「パワー,ホルダー掘削機1000×1000新規制作一式」との記載があり,四角形状に地盤を掘削することが示唆されていること,原告らがその後被告に交付したCAD図面にはロッドの先端に
設置される水平掘削翼と,地表面と略垂直となるように備え付けられた2枚の横掘削翼があり,同横掘削翼がロッドと直角方向の回転軸により回転される構成が示されていることなどからして,被告は,平成25年1月10日の打合せ時に,既に水平掘削翼と,これと直角に回転する横掘削翼とからなる地盤改良装置の製作を原告らに依頼したと認めるのが自然である。


被告は,Fが原告Aに対して,本件攪拌混合機ないし本件角堀掘削ヘッドに
ついて特許出願したい旨を伝えたところ,原告Aが「うちはいいから,会社で出して。」と述べた,また,原告Aは,平成25年12月21日,被告従業員らに対し,本件特許出願の発明者について「私は年だから息子のほうをお願いします。」と述べたなどと主張し,被告従業員らの各陳述書(乙30ないし32)があるほか,証人Fも証人尋問において同旨の証言をする。
しかし,前者(原告Aが「うちはいいから,会社で出して。」と述べたとの事実)については,それがいつ,どのような場面において原告Aからされた発言であるかが主張上も,証人Fの証言上も明確でないから,同事実を認定するには至らない。後者(原告Aが「私は年だから息子のほうをお願いします。」と述べたとの事実)
については,Fは,証人尋問において,「A社長と相談したら,自分じゃなくて若い者にしてもらったらいいかなというふうに聞いた」,「ありがとうございますと
言われたような気がします。」,
「島根に来られたときなんで,ちょっとはっきり,
日付までおぼえてないですけれども。」などと証言するにとどまり,原告Aがいかなる文脈で,どのような趣旨で発言したのかについて明確に証言しないから,発言した日時,場所等はもとより,原告Aが,本件各発明について,被告による本件特許出願に際し,自らを発明者として記載せず,原告Bを発明者として記載することを了承する趣旨で上記のような発言をしたとまで認定することは困難である。⑶

本件各発明の発明者について


発明者の意義について

「発明」とは,自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のものをいうから(特許法2条1項),「発明者」というためには,当該発明における技術的思想の創作行為に現実に関与することを要する。
そして,発明は,その技術内容が,当該の技術分野における通常の知識を有する者(当業者)が反復実施して目的とする技術効果を挙げることができる程度まで具体的,客観的なものとして構成されていなければならず(最高裁昭和49年(行
ツ)第107号同52年10月13日第一小法廷判決・民集31巻6号805頁参照),また,特許法が保護すべき発明の実質的価値は,従来の技術では達成し得なかった技術的課題を解決する手段を,具体的構成をもって社会に開示した点に求められる。これらのことからして,「発明者」というためには,特許請求の範囲の記載により画される技術的思想たる発明のうち,当該発明特有の課題解決手段を基礎
付ける部分(特徴的部分)につき,これを当業者が実施できる程度にまで具体的,客観的なものとして構成する創作活動に現実的に関与した者であることを要するというべきである。

本件発明1について

本件発明1は,「地盤を攪拌しセメントミルクを混合し硬化させて基礎杭を構成するためのものであって,先端部に該セメントミルクを噴射するノズル,進行方向に掘削するための先端掘削翼,及び該先端掘削翼の回転軸と直角の回転軸を持つ横
掘削翼を,該先端掘削翼より根本側に中心軸を挟んで向かい合って少なくとも2つ設けたことを特徴とする地盤改良装置。」との特許請求の範囲により画される発明である。
本件特許出願の願書に添付した明細書(以下「本件明細書」という。)の段落【0006】ないし同【0009】の記載によれば,本件発明1は,従来技術が有する課題(地盤を攪拌し,セメントミルクを注入して杭を生成する地盤改良装置において,先端の攪拌翼〔掘削翼〕が回転するタイプであるため,重複して掘削する必要があり,また,部分によりセメントの強度が異なるとの問題)を解決するため,従来技術の構成(進行方向に掘削するための先端掘削翼)に加えて,先端部にセメン
トミルクを噴射するノズル及び先端掘削翼の回転軸と直角の回転軸を持つ横掘削翼を,先端掘削翼より根本側に中心軸を挟んで向かい合って少なくとも2つ設けたとの構成を採用することにより,
簡単に矩形状に杭を構築できるとの作用効果を生じ,
上記課題を解決するものであり,これらの構成が本件発明1の特徴的部分ということができる。

しかるところ,前記認定事実(⑴エ,なお⑵イも参照。)によれば,被告は,平成22年1月10日,原告らに対して被告が新たに調達するリーダレス型のベースマシンに取り付けるオーガモーターや掘削ヘッドの製作を依頼するに際して,市場に一般に流通していたツインブレード型の地盤改良装置を参考に,現在1号機や2号機で使用されている先端掘削翼を有する掘削装置に,デファレンシャルギアなど
を用いて回転軸と直角の回転軸を持たせこれに2枚の横掘削翼を設ける構成としてはどうかなどと提案し,指示していることが認められるから,被告従業員らは,同日に先立ち,水平掘削翼と,これと直角に回転する回転軸に設置された横掘削翼とから構成されるという,本件発明1の特徴的部分に通じる着想を有していたものと認められる。

なお,この点に関連して,原告らは,被告が原告らに製造を依頼したのは,「水平方向に地盤を広範囲に連続攪拌する機能を備えた地盤改良装置」であって,角柱
杭を形成することは予定されておらず,原告らが平成25年8月10日に行った試掘により覚知したと主張する。前記認定事実(⑴エ,オ,ク)によれば,被告は,浅層ないし中層の地盤改良装置を原告らの参考とさせ,原告らに交付した注文書には「浅層改良機」との記載があり,また,平成26年に至ってから本格的に本件角堀掘削ヘッドを深層まで杭を打ち込むことが可能な2号機において稼動させることを前提とした種々の発注等を行っていることなどが認められるから,被告は,
当初,
角堀掘削ヘッドを浅層ないし中層の地盤改良用途を中心に用いることを構想していた可能性が相応に認められる。しかし,浅層ないし中層の地盤改良であっても,杭を並べて打つことにより広範囲を改良する工法は一般的に行われているから(本件
明細書の段落【0007】の記載や,甲第45号証にもかかる工法をうかがわせる記載がある。),被告が当初有していた着想が,角柱杭を形成することを予定していなかったということはできない。
もっとも,被告は,原告らに対し,上記の基本的な構成のアイデアを示し,参考資料としてパワーブレンダー型地盤改良装置とツインブレード型地盤改良装置のパ
ンフレットを交付したにとどまり,これを超えて,簡易な模型や図面等を提供したとの事実は何ら認められないところ,前記認定事実(⑴エ,オ)のとおり,原告らは,これら基本的な着想を基に使用するべきギアを決めるなどして仕様を定め,本件見積書やCAD図を作成して本件角堀掘削ヘッドの構成を具体的に決定し,また製作においては地盤改良装置等の重機の製造等に長年従事してきた原告Aをもって
も半年以上の期間を要し,さらに,現実に動作する製品を製作するにはギアの調整等に試行錯誤を要したことなどからしても,被告が平成25年1月10日に原告らにした着想の開示さえあれば,これを具体的,客観的なものとして構成し,反復して実施することが,当事者にとって自明程度のものにすぎないということはできない。そうすると,被告従業員らにより示された本件発明1の特徴的部分の着想を当
業者が実施可能な程度に具体化する過程において,原告らが相応に創作的な貢献をしたものと認めるのが相当である。

したがって,本件発明1は,その特徴的部分の着想から具体化に至る過程において,被告従業員ら及び原告らがそれぞれ創作的に貢献したものと認められるから,その発明者は,被告従業員ら及び原告らの5名である。

本件発明2ないし同4について

本件発明2は,本件発明1に「該横掘削翼は,該先端掘削翼より根本側で,且つ該先端掘削翼近傍に設けたものである」との発明特定事項を加え,本件発明3は,本件発明1又は同2に「全横掘削翼の回転面と直角の攪拌面積が,該先端掘削翼が掘削する面積の1/6以上である」との発明特定事項を加え,本件発明4は,本件発明1ないし同3に「全横掘削翼は2つである」との発明特定事項を加えた発明で
ある。これらの発明の特徴的部分は,前記イに述べた本件発明1の特徴的部分のほか,上記発明特定事項にあるものと認められる。
そして,前記イに認定説示したところによれば,これらの特徴的部分の各着想から具体化に至る過程においては,被告従業員ら及び原告らが相応に創作的な貢献をしたというべきであるから,本件発明2ないし同4の発明者も,被告従業員ら及び
原告らの5名である。

共同発明者各自の貢献度について

これまで認定説示してきたとおり,本件各発明は,被告従業員ら及び原告らの共同発明と認められるところ,各自の貢献度については,前記認定事実に認定したとおりの本件各発明に至る経緯を総合し,本件各発明の特徴的部分に係る着想と,その具体化の各過程の価値を等価なものとして,被告従業員らが2分の1,原告らが2分の1として,さらに,被告従業員ら側内部における各人の貢献度,原告ら側内部における各人の貢献度も,それぞれ等価なものと認めるのが相当である(なお,仮に,本件各発明との関係で原告Bを原告Aの単なる補助者とみる余地があるとしても,弁論の全趣旨によれば,原告らは本件各発明についての特許を受ける権利の
共有持分につき,各2分の1とする旨合意したことが認められるから,上記認定が判断左右されるものではない。)。

したがって,本件各発明についての共同発明者間の各貢献度は,原告A及び原告Bが各4分の1,F,D及びEが各6分の1ということになる。なお,前記1の認定事実によれば,被告従業員らは,本件特許出願に先立ち,本件各発明についての特許を受ける権利の共有持分を,少なくとも黙示的に,被告に承継させたものと認められるが,原告らが本件各発明についての特許を受ける権利の共有持分を被告に承継させたと認めることは困難であり,ほかに被告が原告らから本件各発明についての特許を受ける権利の共有持分を承継したと認めるに足りる証拠はない。⑷

争点2の結論

以上によれば,原告A及び原告Bは,それぞれ,本件各発明について特許を受ける権利の各4分の1の共有持分を有しているものと認められる一方,被告は,本件各発明について特許を受ける権利の各2分の1の共有持分を有しているものと認められる。
2
争点2(発明者名誉権の侵害により原告Aが受けた損害の額)について
上記1のとおり,原告Aは本件各発明の共同発明者であるところ,前記前提事実(第2,2⑶)のとおり,被告は,本件特許出願に際して,本件各発明の発明者として原告Aの氏名を記載していない。この点に関して,原告Aが,本件特許出願に関し,本件各発明の発明者として自らの氏名を記載しないことを了承したと認めることが困難であることは,前記⑵エのとおりであり,被告には,原告Aの氏名を記載しなかったことにつき,少なくとも過失が認められる。

被告の上記行為は,原告Aが本件各発明について発明者として記載されるべき人格的利益を侵害するものとして不法行為を構成するというべきであり,これにより原告Aが受けた損害を賠償する責任を負う。
そこで,原告Aが受けた損害につき検討すると,原告Aが本件各発明の共同発明者と認定する本判決が確定すれば,原告Aは本件特許出願書類中の発明者の表記を
訂正できる可能性があること,本件特許出願が公開されたのは平成27年8月3日であること,原告らは本件特許出願が公開される前に自ら本件角堀掘削ヘッドを基
にした発明について特許出願しており,原告らを発明者とする同特許出願は,平成28年5月30日には公開されていることなどなどの事情によれば,発明者として記載されるべき人格的利益を侵害されたことによる原告Aの損害としては,慰謝料30万円,弁護士費用相当額3万円の合計33万円を認めるのが相当である。3
争点3(反訴請求事件につき,訴えの利益があるか)及び争点4(被告は,
原告Bに対し,真の発明者ではない旨の宣誓を求める請求権を有するか)について⑴

訴えの利益について

反訴請求は,被告が,原告Bに対し,本件各発明について自らが真の発明者でない旨の宣誓を求める現在の給付の訴えと解され,被告においてその請求権の存在を主張して給付を求めているのであるから,反訴請求につき訴えの利益が認められるというべきである。
これに対し,原告Bは,反訴請求について,法規を適用して請求の当否を判断するに足りる具体的な権利関係の存否を主張しない訴えであるとか,実定法上認められていない請求であることが一見して明白であるなどとして,訴えの利益を欠き,
却下されるべき旨主張する。
しかし,反訴請求において,被告は,被告が原告Bに対して本件各発明につき自らが真の発明者ではない旨の宣誓を求める請求権を有する旨主張しているのであるから,反訴請求が具体的な権利関係の存否を主張しない訴えであるということはできない。また,現在の給付の訴えにおいて主張する請求権につき,その請求権が発
生するとする法的根拠が明確に主張されていないとしても,そのことのみをもって直ちに訴えの利益を欠くと解することはできない。
したがって,反訴請求につき訴えの利益を欠くとの原告Bの主張は採用することができない。


宣誓を求める請求権の存否について

被告は,被告が原告Bに対して本件各発明につき自らが真の発明者でない旨の宣誓を求める請求権を有する旨主張するものの,原告Bが被告に対しそのような宣誓
をすべき契約上の義務を負う旨の主張をするものでなく,他にかかる請求権を認めるべき法的根拠を見いだすことはできないから,反訴請求には理由がないというほかはない。
4
結論

以上によれば,本訴請求は,原告らが本件各発明につき特許を受ける権利の共有持分各4分の1を有することの確認を求め,被告が本件各発明につき特許を受ける権利の共有持分を,各2分の1を超えて有しないことの確認を求め,また,原告Aが,被告に対し,33万円及び遅延損害金の支払を求める限度において理由があるが,その余の請求には理由がない。また,反訴請求には理由がない。
よって,主文のとおり判決する。

東京地方裁判所民事第29部

裁判長裁判官
嶋末和秀天野研司西山芳樹
裁判官
裁判官
(別紙1)
特出願番許出願号録
特願2014-14297

出願日
平成26年1月29日

出目願人
大福工業株式会社

発明の名称

地盤改良装置


D,E,F,B

明者
特許請求の範囲
[請求項1]地盤を攪拌しセメントミルクを混合し硬化させて基礎杭を構成するためのものであって,先端部に該セメントミルクを噴射するノズル,進行方向に掘削するための先端掘削翼,及び該先端掘削翼の回転軸と直角の回転軸を持つ横掘削翼を,該先端掘削翼より根本側に中心軸を挟んで向かい合って少なくとも2つ設けたことを特徴とする地盤改良装置。

[請求項2]該横掘削翼は,該先端掘削翼より根本側で,且つ該先端掘削翼近傍に設けたものである請求項1記載の地盤改良装置。
[請求項3]全横掘削翼の回転面と直角の攪拌面積が,該先端掘削翼が掘削する面積の1/6以上である請求項1又は2記載の地盤改良装置。
[請求項4]全横掘削翼は2つである請求項1乃至3のいずれか1項に記載の地盤
改良装置。
以上
(別紙2)
省略

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