判例検索β > 平成29年(ワ)第123号
差止請求事件 商標権 民事訴訟
事件番号平成29(ワ)123
事件名差止請求事件
裁判年月日平成30年2月14日
法廷名東京地方裁判所
戻る / PDF版
平成30年2月14日判決言渡
平成29年(ワ)第123号
口頭弁論終結日

同日原本領収

裁判所書記官

差止請求事件

平成29年12月4日
判決原告A被告
有限会社ジョイファーム小田原

同訴訟代理人弁護士

岡主田健太郎文1ⅰ
原告の請求をいずれも棄却する。

2
訴訟費用は原告の負担とする。

第1
1実及び理由
請求
被告は,別紙被告商品目録記載の各商品の包装に,別紙被告標章目録記載の
各標章を付してはならない。
2
被告は,別紙被告商品目録記載1の商品の包装に別紙被告標章目録記載1の
標章を付したもの並びに別紙被告商品目録記載2及び3の各商品の包装に別紙被告標章目録記載2の標章を付したものを販売若しくは販売のために展示してはならない。
第2
1
事案の概要等
事案の要旨

本件は,第35類「加工食料品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」(以下「本件指定役務」という。)を指定役務とする「ジョイファーム」との標準文字の登録商標(以下「本件商標」という。)に係る商標権(以下「本件商標権」という。)を有する原告が,被告が別紙被告商品目録記載1ないし3の各商品(以下,番号順に「被告商品1」などといい,各商品を一括して「被告各商品」という。)の包装に別紙被告標章目録記載1又は2の各標章(以下,番号順に「被告標章1」,「被告標章2」といい,一括して「被告各標章」という。)を付する行為等が本件商標権を侵害するものとみなされる(商標法37条)旨主張して,被告に対し,商標法36条1項に基づき,被告各商品の包装に被告各標章を付す行為並びに被告商品1の包装に被告標章1を付したもの及び被告商品2及び3の包装に被告標章2を付したものの販売若しくは販売のための展示の差止めを求める事案である。2
前提事実(当事者間に争いがないか,後掲の証拠及び弁論の全趣旨により容
易に認められる事実)

当事者


原告は,宮城県内の農園でブルーベリー等を栽培し,ブルーベリーソース,
ブルーベリージャム等に加工して「ジョイファーム」ないし「ジョイ・ファーム」という屋号で販売するなどしてきた者である(甲2,6,8,10ないし13,乙5,6)。

被告は,神奈川県小田原市周辺の農家で組織された,農産物の生産,加工及
び販売等を業とする「有限会社ジョイファーム小田原」という商号の特例有限会社(会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律3条2項)である(乙1,4)。


本件商標権

原告は,次の事項により特定される本件商標権を有している。
登録番号

第5848068号

登録商標

ジョイファーム(標準文字)


出願日

平成26年11月11日(以下「本件出願日」という。)


出願番号

商願2014-099298

オアイ
登録日

平成28年5月13日


商品及び役務の区分並びに指定役務
第35類
加工食料品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する
便益の提供(本件指定役務)
なお,本件商標権に係る登録出願時の商品及び役務の区分並びに指定役務は,別紙出願当初の商品及び役務の区分並びに指定役務のとおりであったが,原告は,平成27年8月6日起案の拒絶理由通知を受け,同月24日付け手続補正書により,商品及び役務の区分並びに指定役務を上記カのとおりとする補正をしたものである。(以上につき,甲1,5,乙7ないし9)


被告の行為
被告は,被告各商品を製造,販売している。


被告は,被告商品1(緑みかんシロップ)を販売するに当たって,別紙被告
商品目録記載1の写真のとおり,被告商品1の容器に貼付されているラベルに被告標章1を付している(なお,ラベルの「名称」欄には,単に「シロップ」と記載されている。)。
また,被告は,被告商品2(梅ジャム)及び3(ブルーベリージャム)を販売するに当たって,別紙被告商品目録記載2及び3の各写真のとおり,被告商品2及び3の容器に貼付されているラベルに被告標章2を付している。(以上につき,甲3,4,乙11ないし13)


指定商品又は役務の区分についての法令の規定

商標法6条1項,2項は,商標登録出願について,商標の使用をする商品又は役務を政令で定める商品及び役務の区分に従って指定してしなければならないと規定しており,これを受けて,商標法施行令は,同区分を同施行令別表に定めるとともに,各区分に属する商品又は役務は,「千九百六十七年七月十四日にストックホルムで及び千九百七十七年五月十三日にジュネーヴで改正され並びに千九百七十九年十月二日に修正された標章の登録のための商品及びサービスの国際分類に関する千
九百五十七年六月十五日のニース協定」1条に規定する国際分類に即して,経済産業省令で定めると規定している(同施行令2条)。また,これを受けて,商標法施行規則は,同区分に属する商品又は役務を同施行規則別表に定めている(同施行規則6条)。
商標法施行規則別表には,第29類の「加工野菜及び加工果実」に属する商品として「ジャム」が挙げられ,第32類の「清涼飲料」に属する商品として「シロップ」が挙げられている。


類似商品・役務審査基準

特許庁が商標登録出願の審査などに当たり商品又は役務の類否を検討する際の基準としてまとめている類似商品・役務審査基準(国際分類第10-2014版対応)(以下,単に「類似商品・役務審査基準」という。)では,第35類の「加工食料品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」(35K03)は,第29類の「加工野菜及び加工果実」(32F04)と類似すると推定されている一方で,第32類の「清涼飲料

果実飲料

飲料用野菜ジュース」(29C0

1)と類似するとは推定されていない。なお,類似商品・役務審査基準では,第35類の「清涼飲料及び果実飲料の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」(35K03)は,第32類の「清涼飲料

果実飲料

飲料用野菜

ジュース」(29C01)と類似すると推定されているが,前記⑵のとおり,本件商標権に係る登録出願の過程で,指定役務から除外されている。
(以上につき,乙7ないし9,18の1ないし5)
3


被告各商品は本件指定役務に類似するか(争点1)



被告各標章は本件商標に類似するか(争点2)



被告が被告各標章につき先使用権(商標法32条)を有するか(争点3)


争点

本件商標は商標法4条1項10号に該当するか(争点4)

第3
1
争点に対する当事者の主張
争点1(被告各商品は本件指定役務に類似するか)について

【原告の主張】


被告各商品はいずれも「加工野菜及び加工果実」(32F04)に分類され
るところ,類似商品・役務審査基準において,「加工野菜及び加工果実」(32F04)は,本件指定役務(35K03)に類似する商品であると推定されている。したがって,被告各商品は本件指定役務に類似する。


これに対し,被告は,加工食料品のほとんどは,商品の製造と小売又は卸売
の業務において行われる顧客に対する便益の提供(以下「小売等役務」という。)が別々の事業者によって行われるのが一般的であるなどと主張するが,現代において商流は多様化しており,製造業者と販売業者の区別は意味をなさないというべきである。被告も各種イベントで商品を販売していること(甲39の1・2),自社のオンラインショップでジャム等を販売している会社も存在すること(甲40の1・2)などからも,被告の主張は失当である。
また,被告は,被告商品2及び3についてはケンコーコム株式会社(以下「ケンコーコム」という。)にしか販売しておらず,同社が商品の出所を誤認するおそれはない旨主張するが,将来,原告が同社と取引を開始した場合には,同社において
も誤認混同のおそれが生じる。
さらに,原告は,現在もインターネットで本件商標を付したブルーベリージャム等を販売しており(甲30),ケンコーコムを通じて被告各商品をインターネットで購入する需要者においても,原告の商品と誤認混同する可能性は大いにある。【被告の主張】



そもそも,本件指定役務のような小売等役務を指定役務とする商標権に係る
禁止権の範囲は商品そのものに標章を付する行為には及ばないと解すべきである(知財高裁平成23年9月14日判決・判時2128号136頁参照)。⑵

この点を措くとしても,被告商品1については,類似商品・役務審査基準に
おいて,本件指定役務(35K03)の類似群コードに「29C01」(清涼飲料)が挙げられていない点で,本件指定役務に類似しない。


被告商品2及び3については,類似商品・役務審査基準では類似すると推定されているが,加工食料品のほとんどは,商品の製造と小売等役務の提供が別々の事業者によって行われるのが一般的であり,ジャムにしても,スーパーマーケット,コンビニエンスストア,生協といった製造業者以外の第三者によって消費者に販売されるのがほとんどであること,被告商品2及び3には,製造元(「(有)ジョイファーム小田原

●(省略)●)が被告標章2と同じラベルに表示されていること

などに照らすと,小売等役務を提供する事業者との間で出所の混同を招くおそれはない。
また,被告は,被告標章2を包装に付した被告商品2及び3を,被告と継続的な取引関係にあるケンコーコムにしか販売しておらず,同社が被告商品2及び3の出所を誤認するおそれはない。さらに,インターネットで被告商品2及び3を購入する一般消費者は,販売業者が製作したウェブサイトの表示を見て購入を決めるのであり,容器のラベルの表示は商品選択にとって重要でない。
以上により,被告商品2及び3は本件指定役務に類似しない。
2
争点2(被告各標章は本件商標に類似するか)について

【原告の主張】
被告標章1の「(有)」の部分は商号の一部分として通常使用されるものであり,また,同標章の「小田原」の部分及び被告標章2の「Odawara」の部分は役務の提供場所を表示する識別力を有さない文字であるから,被告各標章のうち,本件商標と実質的に対照されるべき部分は,被告標章1の「ジョイファーム」の部分
及び被告標章2の「Joyfarm」の部分であり,これらの部分は,外観,観念(喜びの農場),称呼が本件商標と同一である。
加えて,本件商標の周知性,著名性,原告及び被告の商圏の同一性等にも照らせば,被告各標章が包装に付された被告各商品を手に取った取引者及び需要者において,原告又はその関係者の業務に係る商品又は役務であると誤認混同するおそれが
ある。
したがって,被告各標章は本件商標に類似する。
【被告の主張】


被告標章1

被告標章1には,冒頭に有限会社を示す「(有)」の文字が付されていること,同じラベルのすぐ上に,みかんのイラストと共に「小田原農家さんの味。さわやかな香りをどうぞ。」と記載されていること,同じラベルに「製造者」として「(有)ジョイファーム小田原」等と記載されていることに照らすと,需要者は,被告商品1は神奈川県小田原市にある有限会社ジョイファーム小田原という農家が作った緑みかんシロップであると認識するから,本件商標と観念が大きく異なる。また,被告標章1は「(有)ジョイファーム小田原」という13文字(括弧を含
む)から成る商標であり,「ジョイファーム」という7文字から成る本件商標とは外観及び称呼も異なる。
さらに,被告は,被告標章1を包装に付した被告商品1をいずれも被告と継続的な取引関係にあるパルシステム生活協同組合連合会(以下「パルシステム」という。),神奈川県,山梨県等の生協,ケンコーコムにしか販売しておらず,これら
の取引先が被告と宮城県の原告とを誤認混同することはない。
以上より,被告標章1と本件商標は類似しない。


被告標章2

被告標章2は,アルファベット横書きで,かつ,全て同じ色(黒色),大きさ,字体で「Joyfarm-Odawara」と書して成るものであり,標準文字のカタカナ7文字から成る本件商標とは外観が大きく異なる。
被告商品2及び3には,被告標章2が「梅」又は「ブルーベリー」という大きな文字及び写真と共に付されており,同じラベルに「製造者」として「(有)ジョイファーム小田原」等と記載されていることからすると,需要者は,神奈川県小田原市の有限会社ジョイファーム小田原という会社が製造した梅ジャム又はブルーベリ
ージャムであると認識するから,本件商標と観念が大きく異なる。被告は,被告標章2を包装に付した被告商品2及び3を,被告と継続的な取引関係があるケンコーコムにしか販売しておらず,同社が被告と宮城県の原告とを誤認混同することはない。
以上より,被告標章2と本件商標は類似しない。
3
争点3(被告が被告各標章につき先使用権〔商標法32条〕を有するか)に
ついて
【被告の主張】
被告は,平成5年の設立以降,自らを示す名称として,被告各標章や「ジョイファーム小田原」等の名称を使用して,首都圏を中心に多数の会員を有するパルシステムと取引を続けているほか,愛知県等に多数の会員を有する生活協同組合連合会
アイチョイス,首都圏を中心に全国に展開しているらでぃっしゅぼーや株式会社(以下「らでぃっしゅぼーや」という。),全国的にインターネット販売をしているケンコーコムなどの多数の小売業者及び卸売業者との間で長期間にわたり継続的な取引を続けている。その結果,被告各標章は,遅くとも本件出願日までに,被告の業務に係る商品を表示するものとして,需要者の間に広く認識されていた。
なお,被告は,平成5年当時,原告や「ジョイファーム」との屋号を認識しておらず,被告各標章の使用につき不正競争の目的はない。
したがって,被告は被告各標章につき先使用権(商標法32条)を有する。【原告の主張】
争う。被告が設立された平成5年当時,本件商標は原告が出所であることを示す
ものとして需要者の間に広く知られており,被告は,本件商標の周知性にただ乗りするため,あえて「ジョイファーム」を含む商号で設立して原告と同一の商圏に参入したものであるから,被告による被告各標章の使用には不正競争の目的がある。また,被告各標章に周知性があるとしても,それは,このような本件商標の周知性へのただ乗り行為によってもたらされたものである以上,この点に関する被告の主
張は理由がない。
4
争点4(本件商標は商標法4条1項10号に該当するか)について【被告の主張】
上記3【被告の主張】のとおり,被告各標章は,遅くとも本件出願日までに,被告の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されていた。したがって,本件商標は商標法4条1項10号に該当し,商標法46条1項1号の無効理由があるから,商標登録無効審判により無効にされるべきである(商標法39条,特許法104条の3)。
【原告の主張】
争う。上記3【原告の主張】のとおり,被告各標章の周知性は本件商標の周知性へのただ乗りによってもたらされたものである以上,この点に関する被告の主張は
理由がない。
第4
1
当裁判所の判断
認定事実

前記前提事実,後掲の証拠及び弁論の全趣旨によると,原告及び被告の取引形態に関し,次の各事実が認められる。


原告の取引形態

原告は,平成元年頃から,宮城県内の農園で栽培したブルーベリーをブルーベリーソース,ブルーベリージャム等に加工して販売するようになり,宮城県内の生協やデパート等に販売していたほか,食品等の宅配業者であるらでぃっしゅぼーやに販売していた。また,原告は,インターネットで注文を受け,これらの商品を一般消費者に直接販売することがあった。(以上につき,甲2,8,10,22ないし26,43,乙6,弁論の全趣旨。なお,原告は,現在もインターネットで本件商標を付したブルーベリージャム等を販売している旨主張するが,その証拠として提出されたウェブサイト〔甲30〕からは,商品の販売主体を読み取ることができない。)



被告の取引形態


他方で,被告は,神奈川県小田原市の農家が中心となって平成5年に設立され,緑みかんシロップ(包装に被告標章1を付したものを含む。),梅ジャム,ブルーベリージャム等を製造して,首都圏を中心とする生協で構成されるパルシステム,その構成組合である生協,愛知県及び岐阜県の生協で構成される生活協同組合連合会アイチョイス等の団体に販売している。
これらの団体は,いずれも,一般消費者からカタログやインターネットで注文を受け,食品等を自宅等に配達して販売する事業を行っている。(以上につき,甲22ないし26,乙20の1ないし3,乙21の1ないし3,乙30ないし32,弁論の全趣旨)

また,被告は,インターネット販売を業とするケンコーコムと平成22年1
月頃から取引が継続しており,上記アの各商品等を販売している。なお,同社に対しては,同年6月頃からは包装に被告標章2を付した梅ジャムを,平成25年11月頃からは包装に被告標章2を付したブルーベリージャムをそれぞれ販売している。ケンコーコムが運営する通販サイト「ケンコーコム」には,サイト上部に同社の名称及びロゴが表示されており,また,商品ごとに,商品名,商品の写真,製造元
(製造販売元)等が表示されている。(以上につき,甲41,乙14の1ないし4,乙28の2,弁論の全趣旨)
2
争点1(被告各商品は本件指定役務に類似するか)について



役務と商品とが類似のものであるかどうかは,取引の実情として,商品の製
造・販売と役務の提供とが,通常,同一事業者によって行われている等の事情により,商品又は役務に同一又は類似の商標を使用する場合には,需要者において,当該商品が当該役務を提供する事業者の製造又は販売に係る商品と誤認されるおそれがあると認められる関係があるか否かによって判断するのが相当である(最高裁昭和33年(オ)第1104号同36年6月27日第三小法廷判決・民集15巻6号1730頁,最高裁昭和36年(オ)第1388号同38年10月4日第二小法廷
判決・民集17巻9号1155頁,最高裁昭和37年(オ)第955号同39年6月16日第三小法廷判決・民集18巻5号774頁参照)。
なお,本件において,指定役務は35類の「加工食料品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」であるところ,被告は,小売等役務を指定役務とする商標権に係る禁止効の範囲は商品そのものに標章を付する行為には及ばない旨主張するが,小売等役務商標制度の施行後も,商品と役務とが互いに類似することがあること(商標法2条6項)に変わりはなく,出所の誤認混同を招くおそれが認められる以上,小売等役務を指定役務とする商標権の効力が商品に一切及ばないと解するのは相当とはいえない。


そこで,まず,本件指定役務と被告商品1(緑みかんシロップ)の類否につ
いて検討すると,本件指定役務は「加工食料品」という特定された取扱商品についての小売等役務であるのに対して,前記前提事実⑶,⑷のとおり,被告商品1は,「シロップ」であって,第32類の「清涼飲料」に属する商品であると認められる(被告商品1が第29類の「加工野菜及び加工果実」に含まれる旨の原告の主張は採用することができない。)ところ,「清涼飲料」と「加工食料品」は,いずれも一般消費者の飲食の用に供される商品であるとはいえ,取引の実情として,「清涼
飲料」の製造・販売と「加工食料品」を対象とする小売等役務の提供とが同一事業者によって行われているのが通常であると認めるに足る証拠はない。そうすると,被告商品1に本件商標と同一又は類似の商標を使用する場合に,需要者において,被告商品1が「加工食料品」を対象とする小売等役務を提供する事業者の製造又は販売に係る商品と誤認されるおそれがあるとは認められる関係には
なく,被告商品1が本件指定役務に類似するとはいえないというべきである。⑶ア

他方で,前記前提事実⑶,⑷のとおり,被告商品2(梅ジャム)及び3
(ブルーベリージャム)については,いずれも「ジャム」であって,第29類の「加工野菜及び加工果実」に属する商品であり,本件指定役務において小売等役務の対象とされている「加工食料品」と関連する商品であると認められる。イ
しかしながら,一般に,ジャム等の加工食料品の取引において,製造者は小
売業者又は卸売業者に商品を販売し,小売業者等によって一般消費者に商品が販売される業態は見られるところであり,本件の証拠上も,被告は,その製造に係る梅ジャム等の商品をパルシステム,生協,ケンコーコム等に販売し,これらの事業者によって一般消費者に商品が販売されていると認められるほか(上記1⑵),原告も,商品を自ら一般消費者に販売する以外に,らでぃっしゅぼーや,生協,デパートに販売し,これらの事業者によって一般消費者に商品が販売されていたと認められる(上記1⑴)。
そうすると,他方で,ジャム等を製造して直接一般消費者に販売する事業者が存在するとして原告が提出する証拠(甲40の1・2)の内容を踏まえたとしても,ジャム等の加工食料品の取引の実情として,製造・販売と小売等役務の提供が同一
事業者によって行われているのが通常であるとまでは認めることができないというべきである。

また,商品又は役務の類否を検討するに当たっては,実際の取引態様を前提
にすべきところ,被告標章2を包装に付した被告商品2及び3の取引態様は,上記1⑵イで認定したとおり,被告と継続的な取引関係があるケンコーコムにおいて,被告から商品を購入して自社が運営する通販サイトを通じて一般消費者に販売するというものであり,その通販サイトには,ケンコーコムの名称及びロゴが表示されていると共に,商品ごとに製造・販売者が表示されている。
そうすると,ケンコーコムにおいて,被告商品2及び3が小売等役務を提供する事業者の製造又は販売に係る商品であると誤認するおそれがあるとは認め難く,ま
た,通販サイトで被告商品2及び3を購入する一般消費者においても,製造・販売者とインターネット販売業者を区別して認識すると考えられるから,小売等役務を提供するインターネット販売業者の製造又は販売に係る商品であると誤認するおそれがあるとは認め難い。
なお,原告は,将来,原告がケンコーコムと取引を開始した場合には,同社にお
いて誤認混同のおそれが生じる旨主張するが,上記1⑴で認定した原告の取引態様を前提とする限り,同社において小売等役務を提供する事業者の製造又は販売に係る商品と誤認するおそれを生じるとは認め難い。

以上のとおり,本件の証拠上,ジャム等の加工食料品の取引の実情として,
製造・販売と小売等役務の提供が同一事業者によって行われているのが通常であるとまでは認めることができないというべきであり,被告商品2及び3の実際の取引態様を踏まえて検討しても,被告商品2及び3に本件商標と同一又は類似の商標を使用する場合に,需要者において,被告商品2及び3が本件小売等役務を提供する事業者の製造又は販売に係る商品と誤認されるおそれがあると認められる関係にはないというべきである。
したがって,被告商品2及び3が本件指定役務に類似するとはいえないというべ
きである。


これに対し,原告は,類似商品・役務審査基準において,被告商品2及び3
はいずれも「加工野菜及び加工果実」(32F04)に分類され,本件指定役務(35K03)に類似すると推定されていることから,被告商品2及び3は本件指定役務と類似する旨主張する。
しかしながら,類似商品・役務審査基準は,商標登録出願審査事務の便宜と統一のために定められたものであり,裁判所の判断を拘束するものではないから,類似商品・役務審査基準において類似すると推定されているというだけで,本件指定役務と被告商品2及び3が類似するということはできない。
とりわけ,商標権侵害訴訟における商品又は役務の類否の判断の際には,需要者
において,商品の製造・販売者と役務の提供者の出所が誤認混同されるおそれがあるかを実際の取引態様を踏まえて具体的に検討する必要があるというべきところ,本件の証拠上,被告商品2及び3についてそのようなおそれがあると認められないことは上記で認定,説示したとおりである。
したがって,原告の主張は採用することができない。

3
結論

よって,その余の争点について判断するまでもなく,原告の請求はいずれも理由がないから,これらを棄却することとし,主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第29部

裁判長裁判官

嶋和秀伊末藤清隆西山芳樹
裁判官

裁判官

(別紙)
出願当初の商品及び役務の区分並びに指定役務
第35類
飲食料品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,野菜及び果実の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,菓子及びパンの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,米穀類の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,牛乳の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,清涼飲料及び果実飲料の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,茶・コーヒー及びココア
の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,加工食料品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,薬剤及び医療補助品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,花及び木の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,印刷物の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,紙類及び文房具類の小売又は卸
売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,おもちゃ・人形及び娯楽用具の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,楽器及びレコードの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供
トップに戻る

saiban.in