判例検索β > 平成27年(ワ)第12965号
損害賠償請求事件 特許権 民事訴訟
事件番号平成27(ワ)12965
事件名損害賠償請求事件
裁判年月日平成30年1月11日
法廷名大阪地方裁判所
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平成30年1月11日判決言渡

同日原本交付

裁判所書記官

平成27年(ワ)第12965号損害賠償請求事件
口頭弁論終結日平成29年10月23日
判原決告
藤崎電機株式会社

同訴訟代理人弁護士

上和同雨宮
沙耶花

同大川恒星
同訴訟代理人弁理士

豊栖康司被山
大川原化工機株式会社

告則
同訴訟代理人弁護士

口徳雄同前川拓郎同谷川直人
同訴訟代理人弁理士

渡邉一平
同補佐人弁理士

藤本昇同阪北田明主文1
原告の請求をいずれも棄却する。

2
訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由

第1

請求

被告は,原告に対し,3億2505万円及びこれに対する平成28年1月21日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2
1
事案の概要等
事案の概要

本件は,発明の名称を「液体を微粒子に噴射する方法とノズル」とする特許権を有する原告が,被告による別紙被告製品目録記載の各製品の製造販売が,下記のとおり,原告の特許権侵害に当たると主張して,被告に対し,①特許権侵害の不法行為に基づく損害賠償請求として,損害金(対象期間は平成25年1月1日ないし同年12月31日)3000万円及び弁護士費用相当額300万円並びにこれらに対する不法行為後の日である平成28年1月21日(訴状送達日の翌日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を,②不当利得返還請求権に基づき,不当利得金(対象期間は平成20年1月1日から平成23年12月31日)2億6550万円の返還,及び同期間における悪意の受益が不法行為に当たるとして,不法行為に基づく損害賠償請求として弁護士費用相当額2655万円の支
払並びにこれらに対する請求後又は不法行為後の日である平成28年1月21日(訴状送達日の翌日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。

(1)後記イ号製品及びロ号製品は,それぞれ,後記本件発明4及び本件発明6の
技術的範囲に属し,後記ハ号製品及びニ号製品は後記本件発明4の技術的範囲に属するため,被告による後記イ号製品ないしニ号製品の製造販売は,後記本件発明4又は本件発明6に係る特許権の侵害となる。
(2)後記イ号製品ないしニ号製品はそれぞれ後記本件発明1及び本件発明2の方法の使用にのみ用いられる物であり,又は,後記本件発明1及び本件発明2の方法
の使用に用いられる物であってその発明による課題の解決に不可欠なものであり,被告は,その発明が特許発明であること及びその物がその発明の実施に用いられることを知る者であるため,被告による後記イ号製品ないしニ号製品の製造販売は,後記本件発明1及び本件発明2に係る特許権の間接侵害(特許法101条4号又は5号)となる。

2
前提事実(争いがない事実以外は,後掲証拠及び弁論の全趣旨により明らか
に認められる。なお,書証の枝番号は,特に記載しない限りその全てを示す趣旨である。以下,同様である。)
(1)当事者
原告は,電気工事業,電気機械,電気器具の販売等を目的とする会社である。被告は,乾燥装置,焼却装置,廃棄物処理装置の設計,製造及び販売等を目的とする会社である。
(2)原告の有する特許権
原告は,以下の特許(以下「本件特許」といい,その特許出願の願書に添付された明細書及び図面を「本件明細書」という。また,本件特許に係る発明のうち,請求項1の発明を「本件発明1」,請求項2の発明を「本件発明2」,請求項4の発
明を「本件発明4」,請求項6の発明を「本件発明6」といい,これらを合わせて「本件発明」ということがある。)に係る特許権を有する。本件明細書の記載は,本判決添付の特許公報記載のとおりである。
特許番号
発明の名称

液体を微粒子に噴射する方法とノズル

出願日

平成8年2月16日

優先日

平成7年2月16日

登録日

特許第2797080号

平成10年7月3日

特許請求の範囲

本判決添付の特許公報のとおり

(3)本件発明の構成要件の分説
本件発明を構成要件に分説すると,以下のとおりである。
本件では,後記イ号製品等が,本件発明の構成要件のうち,少なくとも下線部分を充足するか否かにつき争いがある。
【本件発明1】
A:液体を薄膜流とし,この薄膜流を気体流で空気中に噴射して,液体を微粒子
に噴射する方法において,
B:加圧された空気を,空気口から開放された空間に噴射して高速流動する空気流とすると共に,
C:空気口から噴射される空気を,液体の流動方向に平滑な平滑面に向けて噴射して,この平滑面に接触しながら平滑面と平行に一定の方向に高速流動する空気流とし,
D:空気流を高速流動させている平滑面の途中に,空気流の流動方向に交差するように,しかも,空気流と平滑面との間に液体を供給し,供給された液体を,高速流動する空気流で平滑面に押し付けて薄く引き伸ばして薄膜流とし,E:この薄膜流を平滑面から離して微粒子として噴射することを特徴とするF:液体を微粒子に噴射する方法。

【本件発明2】
G:平滑面が傾斜面である
H:請求項1に記載される液体を微粒子に噴射する方法。
【本件発明4】
ア:液体を流動させて薄膜流とする傾斜面を有し,この傾斜面を流動する液体の
薄膜流を空気中に微粒子として噴射するノズルにおいて,
イ:傾斜面を液体の流動方向に平滑な面とすると共に,
ウ:この傾斜面に加圧空気を噴射して,傾斜面に接触しながら,しかも,傾斜面と平行に一定の方向に高速流動する空気流をつくる空気口と,
エ:空気流を高速流動させている傾斜面の途中に,空気流の流動方向に交差する
ように液体を供給する供給口とを備え,
オ:供給口から傾斜面に供給された液体を,高速流動する空気流で平滑面に押し付けて薄く引き伸ばして薄膜流とし,薄膜流を空気流で空気中に微粒子として噴射することを特徴とする
カ:液体を微粒子に噴射するノズル。

【本件発明6】
キ:下記の全ての構成を有する,液体を微粒子に噴射するノズル。(Ⅰ)

ノズルは,液体をリング状に噴射する供給口と,この供給口に液体を供給
する筒状の液体路と,供給口から噴射される液体を流動させる傾斜面と,この傾斜面に加圧空気を噴射する空気口と,この空気口に空気を供給する空気路とを備える。
供給口は,所定幅のスリット状に形成されている。
供給口は,リング状に形成されている。

(Ⅳ)

供給口は,傾斜面の途中に開口されている。

(Ⅴ)

供給口の傾斜面に対する角度αは,鈍角に設計されている。

(Ⅵ)

傾斜面は,液体の流動方向に平滑面となっている。

(Ⅶ)

空気口は,傾斜面の途中に開口された供給口に向かって開口されている。
(Ⅷ)

(Ⅱ)
(Ⅲ)

空気路に,軸方向に流動する空気をスパイラルに回転させるヘリカルリブ
を配設しており,空気口から噴射される空気がスパイラル状に回転しながら傾斜面に沿って噴射されるように構成されている。
(4)被告の行為
被告は,別紙被告製品目録記載1のノズル(以下「イ号製品」という。),イ号製品を備え付けた微粒子製造用スプレードライヤ(同目録記載2。以下「ロ号製品」という。),同目録記載3のノズル(以下「ハ号製品」という。),及び,ハ号製品を備え付けた微粒子製造用スプレードライヤ(同目録記載4。以下「ニ号製品」といい,イ号製品ないしニ号製品を合わせて「イ号製品等」ということがあ
る。)を製造販売している。
(5)イ号製品等は,二段階の微粒化構造を有するノズル又は微粒子製造用スプレードライヤであり,その製品カタログでは,第一段階として,気液の外部混合式二流体ノズルにより微粒化を行った後,第二段階において,噴霧流同士を空中衝突させて再微粒化を図るものとされている(甲3,4,乙12)。

(6)被告は,発明の名称を「液体を微粒子にする方法及びこれに用いるノズル」とする特許(特許番号第4718811号,以下「被告特許」ということがある。)の特許権者である(甲10の添付資料4)。
3
争点

(1)イ号製品等は,本件発明の構成要件を充足するか。

イ号製品及びハ号製品の構成(争点1-ア)


イ号製品等が,「傾斜面」又は「平滑面」に該当する構成を備え,「傾斜面
又は平滑面の途中」に液体供給口を備えるものであるか【本件発明1の構成要件D,本件発明2の構成要件G及びH,本件発明4の構成要件ア及びエ,本件発明6の構成要件キⅠ,Ⅳ及びⅦの充足性】(争点1-イ)

イ号製品等が,加圧空気を「傾斜面」又は「平滑面」上で「高速流動する空
気流」とするものか【本件発明1の構成要件C,本件発明2の構成要件H,本件発明4の構成要件ウの充足性】(争点1-ウ)

イ号製品等が,液体を傾斜面又は平滑面に「押しつけ」て「薄膜流」とする
ものか【本件発明1の構成要件D,本件発明2の構成要件H,本件発明4の構成要件オの充足性】(争点1-エ)

イ号製品及びロ号製品が,「空気をスパイラルに回転させるヘリカルリブ」
を具備しているか否か

【本件発明6の構成要件Ⅷの充足性】(争点1-オ)

イ号製品等が,「液体を微粒子に噴射する」ものであるか【本件発明1の構
成要件A,E及びF,本件発明2の構成要件H,本件発明4の構成要件ア,オ及びカ,本件発明6の構成要件キの充足性】(争点1-カ)
(2)不当利得額及び損害額(争点2)
4
争点に関する当事者の主張

(1)イ号製品及びハ号製品の構成(争点1-ア)
(原告の主張)
イ号製品及びハ号製品の構成は,別紙「イ号製品説明書(原告)」,「ハ号製品説明書(原告)」記載のとおりである。
(被告の主張)
イ号製品及びハ号製品の構成は,別紙「イ号製品説明書(被告)」,「ハ号製品説明書(被告)」記載のとおりである。
(2)イ号製品等が,「傾斜面」又は「平滑面」に該当する構成を備え,「傾斜面又は平滑面の途中」に液体供給口を備えるものであるか(争点1-イ)(原告の主張)

本件発明の「傾斜面」とは,その一部において,空気口の外側に空気流が高
速流動する区間を有していれば足りる。したがって,仮に,「ひと続きの傾斜面」であるイ号製品の上側傾斜面7A’,下側傾斜面7B’及び内部傾斜面7C’,ハ号製品の上側傾斜面7A”,下側傾斜面7B”及び内部傾斜面7C”のうち,内側傾斜面7C’,7C”で高速流動が生じていないとしても,上側傾斜面7A’から内部傾斜面7C’まで,及び,上側傾斜面7A”から内部傾斜面7C”までの全体が「傾斜面」に該当するものである。なお,実際には,内部傾斜面7C’,7C”でも,空気流の高速流動が生じていることから,上側傾斜面7A’から内部傾斜面7C’まで,及び,上側傾斜面7A”から内部傾斜面7C”までの全体が
「傾斜面」に該当することは明らかである。
そして,イ号製品及びハ号製品においては,液体供給口が7A’と7B’の間,7A”と7B”の間にそれぞれ設けられているから,「傾斜面の途中に開口されている」といえる。
【イ号製品詳細図】

【ハ号製品詳細図】

仮に,内部傾斜面7C’,7C”が「傾斜面」に該当しない場合であって
も,イ号製品及びハ号製品の下側傾斜面7B’,7B”でも空気流は高速流動しており,これらも「傾斜面」に該当することから,これら製品は,「傾斜面」に当たる上側傾斜面7A’,7A”及び下側傾斜面7B’,7B”をそれぞれ備え,液体供給口が「傾斜面の途中に開口されている」といえる。

被告の主張について

空気口内部を進む気体流は,経路を進行する過程で徐々に減圧されて膨張し,これに応じて加速されていき,空気出口の手前でほぼ大気圧まで減圧されて膨張による加速は終了している。したがって,空気口を出た後の膨張による加速は生じず,空気口の1.5mm以上先で高速化されるとの被告の主張及び被告鑑定書(乙9)の記載は技術的に誤りである。
イ号製品,ハ号製品とも,上側傾斜面7A’,7A”と比較して,約1/5という長さの下側傾斜面7B’,7B”を備えていることや,要部断面図(乙7の2,
乙8の2)上,下側傾斜面7B’,7B”ははっきりと確認できる程の幅を有していることに加え,微粒子のサイズとの対比からしても,高速空気流との関係においても,400μm又は700μmもの距離をもつ下側傾斜面7B’,7B”は,本件発明の「傾斜面」「平滑面」に該当することは明らかである。また,薄膜流同士を衝突させて微粒化させる構成についても,本件明細書の図6
において開示されている。該構成においては,図6の断面図において,三角形状に形成された二つの傾斜面にそれぞれ薄膜流8を形成し,三角形状の先端に薄膜流8同士を合せて,いわば衝突させて微粒子を形成している。よって,本件発明においては,このような薄膜流同士を衝突させる態様も技術的範囲に包含しており,この点においてもイ号製品等の権利侵害は逃れ得ない。

なお,本件特許出願に対して発せられた拒絶理由通知に対して提出した意見書(乙3)の記載における「隙間」とは,内部混合方式のノズルである引用例1(乙4)の第1図に示すボディ1とピントール2との間の「隙間」について言及したものであり,外部混合方式のノズルであるイ号製品等の下方傾斜面はこのような「隙間」には当たらないものであるから,被告の包袋禁反言の主張は失当である。(被告の主張)

本件発明は,空気口から噴出した加圧空気を下側傾斜面で高速流動化させ
て,その後,供給口から液体を供給して高速空気流で上側傾斜面に押し付け薄く引き伸ばして薄膜流とし,その後,微粒化して噴射することを本質的特徴とするものであるため,空気口から噴出された加圧空気が液体供給口に至るまでの間に十分に加速されることを要し,空気口から液体供給口までの間に一定の距離が必要となる。
したがって,液体供給口は空気口から一定の距離をおいて設置されなければならず,この「空気口から液体供給口までの間に,加圧空気が加速されるために必要な一定の距離」こそが,下側傾斜面として設計されている。
また,「傾斜面」とは,高速流動する空気流が流れる平滑面であり,かつ,該平
滑面(傾斜面)に供給された液体を平滑面に押し付けて薄く引き伸ばして薄膜流を形成するための面でなければならない。
したがって,「傾斜面」とは,本件明細書図8の7Aと7Bを指し,「傾斜面の途中」とは,上側傾斜面7Aと下側傾斜面7Bとの間に液体供給口5が設けられていることを意味するものである。


イ号製品等においては,下側傾斜面に相当する傾斜面が存在せず,したがっ
て,「傾斜面の途中」に供給口が設けられていないことは当然である。すなわち,被告鑑定書(乙9)からも明らかなとおり,空気流は,空気口内から外部へ流出することによって3~4倍に加速されるところ,その加速に必要な遷移領域としては,空気口から最低でも1.5mm以上が必要であるところ,下側傾斜面7B’,7B”は,その実寸は0.5mm程度の「線状のエッジ」であって,これが「面」としての傾斜面(平滑面)になりうる余地はない。
また,本来,イ号製品及びハ号製品の原理は,空気口から噴出した加圧空気と供給口から供給された液体を空気口の出口で接触させて気液体として上側傾斜面を介して噴霧して外部衝突点で衝突させ,微粒化することを本質とするものであり,外部衝突点において,気液体が最大限に加速された状態となるように設計されており,空気口から噴出した加圧空気が液体供給口部分で高速化されるように設計されていない。
したがって,下側傾斜面7B’,7B”と称する部分は,何ら空気の高速化に作用しておらず,その作用からしても,本件発明の下側傾斜面7Bに相当するものでないことは明らかである。


原告の主張について

本件発明の「傾斜面」の意義は,本件明細書の記載からして,空気口の外側に存在する傾斜面を意味するものであるから,「傾斜面」の解釈として,「空気口内部の傾斜面をも含む」,「ひと続きの傾斜面」なる意義を有するとの解釈は,特許法70条2項に反する。
また,内側傾斜面7C’,7C”は,単に空気を流出させるための空気口を形成する隙間壁であって,「傾斜面」ではない。
したがって,内側傾斜面7C’,7C”は,「傾斜面」には含まれない。また,原告は,意見書(乙3)において自ら「本発明は,引用例1の公報に記載されます噴霧ノズルのように,ボディ1とピントール2との間に設けた隙間内で,
空気を高速流動させるのではありません。本発明は,加圧された空気を,空気口から開放された空間に噴射して,平滑面に沿って高速流動させます。」と主張し,さらに「高速流動する空気流の途中であって,空気流と平滑面との間に液体を供給する」と主張している。すなわち,意見書において,空気口内では,空気は加圧状態であるから,高速流動する空気流は形成されないため,空気口内の「隙間」を形成
する下方側の傾斜面は高速流動する空気流を沿わせるための傾斜面に当たらないと主張しているのであるから,本件発明のいう平滑面(傾斜面)に,空気口内の隙間を形成する下方側の傾斜面をも含むとする原告の主張は,明らかに包袋禁反言であって許される主張ではない。
(3)イ号製品等が,加圧空気を「傾斜面」又は「平滑面」上で「高速流動する空気流」とするものか(争点1-ウ)
(原告の主張)

空気口内部を進む気体流は,経路を進行する過程で徐々に減圧されて膨張
し,これに応じて加速されていき,空気出口の手前でほぼ大気圧まで減圧されて膨張による加速は終了し,空気出口では既に高速化された気体流が得られていることになる。そして,イ号製品等の空気口内は断面積が相対的に小さいため,加圧空気であっても,断面積が大きい場合に比べれば高速であるといえる。すなわち,流路(流管)内における定常流の質量流量はどの断面でも常に一定であるため,圧力が同じ場合には,断面積が小さいほど流速が早くなるものであり,したがって,イ号製品等の内部傾斜面7C’,7C”においても,高速流動している部分があるといえる。

よって,イ号製品等では,空気口を出る前から高速気体流が得られている。なお,空気流が空気口内から空気口外に流出することにより3~4倍の速度となるとする被告鑑定書(乙9)の記載は,不適切な位置でなされた空気流の圧力の測定結果に基づくものであり,採用できない。

イ号製品等では,遅くとも液体供給口に到達する時点で高速流動化されてい
るのであり,空気口を出て下側傾斜面7B’,7B”を経た時点において既に高速気体流は存在している。
すなわち,被告が空気口内の速度と主張する94.4m/sという速度自体が,微粒化も生じ得る高速な空気流であり,空気口から噴射された場合には,その3~4倍になるというのであるから,イ号製品等で空気口から噴射された空気は,極め
て高速な空気流となっていることは明らかである。
また,イ号製品等が,集束させた気液体を衝突により微粒化させるものであるとすれば,空気流が空気よりも比重のはるかに大きい液体を,しかも,既に相応の圧力を受けて液体供給口を出て直進しようとする液体流を,(a)その進行方向を強制的に変更するように,①「傾斜面に沿ってガイド」し,②「傾斜面の外側に集束させ」,さらに,(b)集束させた気液体を外部衝突点で,③「衝突させて微粒化する」ということであり,そのためには,空気流に相当の運動エネルギーが必要である。
そして,液体流の進行方向を曲げ,かつ,平滑面に沿って薄く引き伸ばすように作用するのは,高速気体流しか考えられない。
したがって,噴霧流同士を衝突させて微粒化しているというイ号製品等の作用効
果からすれば,液体供給口の時点で,極めて高速な空気流が生じているといえる。これを裏付けるように,被告のホームページ上の動画によれば(甲7の58秒頃のキャプチャ画像),液体供給口から出た液体流を気体流が後方から傾斜面に押しつけているように窺え,また,「衝突し,さらに微粒化」と記載されている(甲7の1分頃のキャプチャ画像)ことから,衝突前から微粒化が生じていることも明ら
かであり,かかる衝突前の微粒化のためにも,液体供給口の時点で高速空気流が生じている必要があるといえる。
(被告の主張)
本件特許の請求項1,本件明細書【0033】,【0034】,【0038】及び意見書(乙3)の記載から明らかなように,本件発明においては,空気が空気口
から開放された空間に噴射されると高速となることを前提として,加圧空気を空気口から開放された空間に噴射することによって得られた空気流を高速空気流として定義していることは明らかである。
しかも,該高速空気流は下側傾斜面7Bに沿って極めて高速化(音速)し,この高速化した高速空気流によって下側傾斜面7Bと上側傾斜面7Aとの途中に形成さ
れた供給口5から供給された液体を上側傾斜面7Aの平滑面に押し付けて薄く引き伸ばして薄膜流とするものである。
イ号製品等においては,空気口の出口から液体を供給するとともに該液体を空気口から噴射した空気流で傾斜面に沿ってガイドしながら該傾斜面の外側に集束させ,集束させた気液体を外部衝突点で衝突させて微粒化するものである。被告鑑定書(乙9)のとおり,イ号製品等の空気口内の空気流の速度を推算すると94.4m/sとなり,空気口内から空気口外に流出することによって3~4倍に加速され,高速空気流となる。そして,この高速化は,空気口の出口から空気流が十分高速となった発達領域までの間の遷移領域で生じるものであり,液体供給口に到達する時点では高速流動化されていない。したがって,イ号製品等において空気口内から噴射された空気流は,本件発明で定義されている高速流動化した空気流
ではないのであり,本件発明のように液体供給口から供給された液体を高速空気流によって上側傾斜面7Aに押し付けて薄く引き伸ばして薄膜流とすることはできないのである。
なお,被告がホームページ上の画像においてアナウンスしている表現やテロップの表示は,あくまで被告の営業用ツールとして取引先等にアピールできるように意
識したものであって,本件発明の用語と同意義で使用したものではない他,ハ号製品をそのまま表現したものでもない。
(4)イ号製品等が,液体を傾斜面又は平滑面に「押しつけ」て「薄膜流」とするものか(争点1-エ)
(原告の主張)


イ号製品等においては,液体が傾斜面又は平滑面に押し付けられている。
液膜流と高速気体流が完全に平行な状態は現実には生じ得ず,液体供給口から出る液膜流の方向と,空気口から出る気体流の方向との間に角度が生じることから,傾斜面と平行な空気流により液膜流に対して押し付ける力が作用する。そして,高速気体流が全面を均一に押し付けていることは請求項で要求されていないから,液膜流が部分的に押圧された状態であっても,本件発明を充足する。被告が開設したウェブサイト上において掲載されている動画(甲7,甲8)には,ハ号製品(TJノズル)の動作が説明されており,まず,「液膜噴霧→微小粒子化」と画面に表示され(甲7の5秒頃),「TJノズルとは,従来の二流体ノズルとは違う,液膜噴霧により微粒子化に成功しています」と述べられている(甲7の1秒頃のアナウンス)。
次に,「第一段階

外部混合部」として,「液はエッジ面に沿って薄く引き伸ば

され,液膜を形成」とテロップが表示され(甲7の50秒頃),同様のナレーションが,「原液は,エッジ面に沿って薄く引き伸ばされ,液膜を形成します」(甲7の51秒頃のアナウンス)と入る。
このように,原液すなわち流体が,エッジ面(端面)すなわち傾斜面に沿って薄く引き伸ばされて,液膜を形成しているのであるから,「薄く」引き伸ばされた「液膜」とは,「薄膜流」であることは明らかである。
したがって,少なくともハ号製品については,「高速の空気流で液体を平滑面に押し付けて薄く引き伸ばして薄膜流とするもの」であることを被告が自認しているものといえる。


被告の主張について

イ号製品等においては,被告鑑定書(乙9)で挙げられたコアンダ効果等により生じる作用に比べ,高速気体流が有する運動量が圧倒的に大きく,液体供給口から上方向に放出される気体流の進行方向を,傾斜面に沿う斜め方向に変更させる作用は,傾斜面に沿って流れる高速気体流で生じさせていることは明白である。また,イ号製品等において,液体の吸い上げ作用が生じているから押し付けの作用がないという関係にはなく,高速空気流によって吸い上げられた液体が,液体供給口から出る際,吸い上げの力とは別の作用で高速空気流に押される結果,傾斜面に沿う方向に流れを変えているのであって,むしろ吸い上げ力と空気による液体の押し付け効果の両方が作用していると捉えるのが正確である。

仮に被告の主張するとおり,液体供給口から供給された液体が,吸い上げられながら平滑面に沿って略平行に引きずられて流動するものであって,高速気体流が傾斜面に液体を押しつけていないとすれば,液体流は傾斜面と接触しておらず,傾斜面から浮き上がっている,すなわち,傾斜面と液体流の間には空間(真空状態か)が生じていることになるが,そのようなことはあり得ない。なぜなら,空気であれば高速空気流以上の運動量を有していなければ存在していられないし,真空であれば,真空側に引き寄せられてしまうはずだからである。
そして,空間のある状態であれば傾斜面は液体流に触れないので濡れないし,そもそも,接触しないのであれば傾斜面の存在自体が不要となる。
(被告の主張)
イ号製品等においては,液体供給口から噴射された液体を平滑面(傾斜面)に
「押し付ける」のではなく,平滑面(傾斜面)に平行する方向に空気口から噴出された空気流によって,液体供給口から供給された液体が,吸い上げられながら平滑面に沿って略平行に引きずられて流動するのであって,本件発明のように「平滑面に押し付けて薄く引き伸ばして薄膜流とする」ものではないから,「押し付けて」との要件を欠くことは明らかである。

被告鑑定書(乙9)によれば,「傾斜面に沿って流れる薄膜も存在するが,これは平滑面と平行に流れる空気流においては平面への垂直方向に押し付ける作用が無いため,平滑面方向へ押し付けられたことにより形成された液膜ではなく,いったん平滑面に付着した液体がコアンダ効果等により,平滑面を流れるものと考える。」とのことであり,イ号製品等においては,空気流によって液体を傾斜面に押
し付けて薄く引き伸ばして薄膜流とするものではないことが明らかとなった。また,被告鑑定書(乙9)によれば,上側傾斜面に沿った液体の表面は,空気口から噴出する空気流によって波立ってちぎれて細かな液滴となって空気流と混じって高速噴流となる現象が生じていることが確認できたものであるが,この現象は,液体が空気流によって上側傾斜面から離れる方向に引っ張られることにより生じる
現象であり,高速流動する空気流によって上側傾斜面に押し付けるとの作用からは生じ得ない現象であることが確認できた。
このように,イ号製品等は,本件発明のように,上側傾斜面に押し付けて薄く引き伸ばして薄膜流として微粒子化するのではなく,上側傾斜面は噴霧の方向制御として作用するが微粒子化にはほとんど作用していないことが判明したものであり,噴霧流同士の衝突前には微粒子化が生じていないことが明白となった。被告がホームページ上の画像においてアナウンスしている表現やテロップの表示は,あくまで被告の営業用ツールとして取引先等にアピールできるように意識したものであって,本件発明の用語と同意義で使用したものではない他,ハ号製品をそのまま表現したものでもない。
「薄く引き伸ばされ液膜を形成」とは,単に,空気流によって,液体の一部が引
っ張られることによって,液膜が薄く引き伸ばされることを表現したものである。(5)イ号製品及びロ号製品が,「空気をスパイラルに回転させるヘリカルリブ」を具備しているか否か(争点1-オ)
(原告の主張)
イ号製品及びロ号製品は,空気路に軸方向に流動する空気をスパイラルに回転さ
せるヘリカルリブを配しており,空気口から噴射される空気がスパイラル状に回転しながら傾斜面に沿って噴射されるように構成されている。
(被告の主張)
イ号製品及びロ号製品においては,「空気をスパイラルに回転させるヘリカルリブ(22)」を欠くため,「空気がスパイラル状に回転しながら傾斜面(7)に沿
って噴射される」との構成要件をも欠くものである。
(6)イ号製品等が,「液体を微粒子に噴射する」ものであるか(争点1-カ)(原告の主張)

イ号製品等では,平滑面(傾斜面)に沿って薄く引き伸ばされた薄膜流が形
成されるため,平滑面(傾斜面)から離れた段階で微粒子化がなされる。そうである以上,その後,衝突させてさらに微粒子化させることは,付加的な要素にすぎず,イ号製品等は,「液体を微粒子に噴射する」ものである。
そして,被告自身のホームページにおいて,「液膜噴霧→微小粒子化」と画面に表示され,①「二段階の微粒化機構」が採用されていること,②第一段階においては,「液はエッジ面に沿って薄く引き伸ばされ,液膜を形成」して,傾斜面から微粒子が飛翔していることが動画によって示され(被告動画(甲7)の50秒頃のキャプチャ画像中において,2箇所の黄色の丸で微粒子を示す。),第二段階において,衝突で「さらに微粒化」が生じていると説明されていることからすれば,衝突前の第一段階でも「微粒化」が生じていることについて,被告は自認しているというべきである。
また,ロ号製品のカタログ(甲3及び甲4の各2頁中段右側)には,「第1段
階」として,「気液の外部混合により微粒化」,「第2段階」として,「噴霧流同士を空中衝突させて再微粒化」との記載があることからも,衝突前にも微粒化していることは明らかである。
したがって,イ号製品等では,噴霧流同士の衝突前に「微粒子」が得られているというべきである。


被告は,本件発明における「微粒子」とは10μm以下の微粒子に限られる
と主張し,イ号製品等では衝突前に10μm以下の微粒子は得られないと主張する。
しかし,まず,微粒子とは,粒子よりも細かい粒であるが,物体の種類や性質によっても粒の大きさは異なり,あくまで相対的な概念であるに過ぎず,本件発明の「微粒子」の大きさを厳密に定義することは不可能であるから,これを10μm以下と解釈すべきではない。
また,被告は,請求項において微粒子の粒径が数値で規定されていない,という点を軽視している。
さらに,本件明細書においては,粒径の値が示されているのは2箇所であり,①
「このため,この構造のノズルは,液体を極めて微細な,たとえば1~5μmの微粒子として噴射できる特長がある。」(【0052】),②「ちなみに,本発明者が試作したノズルは,1分間に1000gの液体を噴射して,粒子径を10μm以下の微粒子の液滴を噴射することに成功した」(【0072】)と説明され,いずれも「たとえば」「試作したノズルは」とあるとおり,例示に過ぎない。被告が根拠とする【0011】,【0012】における開示は,被告も認めるとおり背景技術の記載であって,いずれも本件発明の開発過程における試作の数値に過ぎず,本件発明に関する記述ではない。
また,意見書(乙3)の説明も,本件発明によれば,「液体を,10μm以下の極めて小さい微粒子として,安定して噴射することが可能です。しかも,極めて長時間,安定して連続的に,噴射することが可能です。」とあるとおり,一例として
10μm以下の微粒子としながら,安定して噴射することが可能であることを述べているに過ぎず,粒径が10μm以下に限定される旨を述べたものではない。さらに,被告特許においては,発明の名称を「液体を微粒子にする方法及びこれに用いるノズル」としているところ,その実施例で得られる「微粒子」の平均粒子径D50として,実施例1で7.88μm,6.47μm,5.69μmとし,実
施例2で14.06μm,9.70μm,7.29μm,実施例3で21.25μm,14.61μm,10.22μm等となっており,被告自身が,10μmの倍以上である21.25μmも微粒子と解釈していることになるが,10μm以上のものは微粒子でないとする本件における被告の主張は,これと矛盾する。ウ
仮に「微粒子」を10μm以下のものを指すと解釈すべきものとしても,次
のとおり,イ号製品等は噴霧流同士の衝突前に10μm以下の微粒子が得られるものである。
(ア)本件発明においては,D50(頻度の累積が50%になる粒子径(メジアン径))を用いて粒径の評価をしている。
本件発明の技術分野では,D50を用いて粒径の評価をするのが一般的であり,
被告特許及び被告のカタログにおいてもD50が用いられていることからすれば,属否の議論は,D50に基づく評価を前提に行うべきである。
(イ)原告による実験結果
原告は,イ号製品を用いて,噴霧流同士を衝突させる通常の使用状況と,開口部の半分以上を閉塞して噴霧流同士の衝突が生じさせない状況とにおいて,それぞれ得られた微粒子の粒径を測定した。その結果は別紙「原告による実験結果1」の表AないしFのとおりであり,噴霧流同士の衝突が生じない場合において,D50及びザウター平均径ともに10μm以下の微粒子が得られた。
(ウ)イ号製品等のカタログ(乙12)の記載
イ号製品等のカタログには,1頁の液滴の粒子径を示す対数グラフにおいて,イ号製品,ハ号製品ともに,粒子径1~15μm程度の微粒子を得ることが可能であ
ること,粒子径1~3μmの水を噴霧できることが示されている。カタログの記載は自社製品の信用に関わるものであり,信ぴょう性が高いというべきであるところ,前記数値を前提とし,噴霧流同士の衝突前後の粒子径がD50で比較すると2倍,ザウター平均径で比較すると3倍程度になることを踏まえて計算すると,イ号製品等は,噴霧流同士の衝突前において,D50,ザウター平均径ともに10μm未
満の微粒子を製造することができることは明らかである。
また,カタログ3頁に示される電池正極材及び電池負極材の粉体の粒度分布図によれば,原液固形分濃度がそれぞれ30%,20%のもとで,電池正極材の粉体の粒子径D50が3.2μm,電池負極材の粉体の粒子径D50が4.2μmになるというのであり,粉体の粒子径は,固形濃度分50%を用いて計算すると,液滴の粒
子径の8割程度であることからすると,理論上,電池正極材の液滴の粒径は4.78μm,電池負極材の液滴の粒径は7.18μmと計算される。したがって,少なくとも電池正極材については,衝突前の粒径を2倍と仮定した場合,衝突前において,10μm以下の微粒子を製造することができるのは明らかである。なお,イ号製品を用いて,噴霧流同士を衝突させる通常の使用状況のもと実施し
た実験の結果,気液比(体積比)を32600に設定すると,D50が4μm,ザウター平均径が3.47μmの液滴を得ることが可能であることが判明した。(エ)被告の実験について
同じ噴霧装置であっても,試験条件が異なれば得られる粒径も異なるのが当然であり,試験条件を変化させれば,衝突前であっても10μm以下の微粒子を得ることは可能である。
イ号製品等については,本来,数μmの粒子を生成できることが被告ホームページやカタログで謳われているにもかかわらず,被告実験では,噴霧流同士を衝突させるという本来の用法にもかかわらず,ザウター平均径でようやく10μm程度の微粒子が得られたが,D50では17.09μmの微粒子しか得られなかったものであり,これは,意図的に粒径を大きくするように,噴霧水量を多めに設定するな
どして試験条件を調整したものであることが明らかである。
被告実験において設定された気液比等の条件について合理的な説明がない以上,たまたま,衝突の前後で10μm以上,又は以下の粒径が得られたとしても,そのような一点の結果でもってハ号製品が非侵害であることの立証とはならない。(被告の主張)


本件明細書【0011】や【0012】の背景技術の記載や,【0072】
の発明の効果の記載,さらには,乙3の意見書の第6頁第26ないし27行目の「本発明の噴射方法とノズルは,液体を,10μm以下の極めて小さい微粒子として安定して噴射することが可能です」との主張等から明らかなように,本件発明の本質は,「10μm以下の微粒子」を噴射するための噴射方法とノズルを提供することにある。
このことは,本件明細書【0008】において,「本発明の重要な目的は,液体を極めて小さい微粒子に噴射できる」,【0009】において,「本発明の他の重要な目的は・・・しかも微細な液滴に噴射できる液体を微粒子に噴射する方法とノズルを提供することにある」との記載,【0020】の作用の項で,「本発明は・
・・液体を超微粒子にできる特長がある」との記載からも明らかである。また,本件明細書の【0003】には図1と図2の従来例が記載され,図1のノズルでは,「液体を10μm以下の微細な粒子に噴射できる」が,このノズルは噴射する液体が特定され,種々の微細な粒子で噴霧できない等の欠点があるとその問題が【0005】に記載され,【0006】には,「粒子径を10μm以下とするノズルは,中心孔の内径を0.2mm以下とする必要がある」と記載されている。また,【0012】の「10μm以下の微粒子が得られる」との記載,【0072】に「微粒子を10μm以下の微粒子の液滴を噴射することに成功した」との記載も総合すると,本件発明の請求項記載の「微粒子」の粒径は,10μm以下の微粒子であることは容易に理解できる。

そして,イ号製品等では,以下のとおり,通常の使用方法の下で噴霧流同士
の衝突前に10μm以下の微粒子は得られないから,「液体を微粒子に噴射する」ものではない。
(ア)ノズル技術分野では,液滴の平均粒子径にはザウター平均径が使用されるのが一般的であり,本件明細書において特段の記載がない以上,ザウター平均径で特定された数値であると解するべきである。

(イ)被告による実験結果
イ号製品等においては,気液体が混じった高速噴流が衝突することによって衝突による気体(空気)の振動,渦,気体と液体の速度差などにより,液滴が再分裂してさらなる微粒化が得られ,目的とする10μm以下の微粒子が得られるものである。

これは,ハ号製品を用いて実施した実験結果からも裏付けられる。すなわち,被告実験の結果において,噴霧流同士の衝突があった場合(Lot1)の粒子径は,9.92μmになるのに対し,衝突がない場合(Lot2)には33.71μmであり,ハ号製品が,噴霧流同士を衝突させることによって,本来の目的とする10μm以下の微粒子を噴射することができるノズルであることは明らかである。
したがって,イ号製品等において,噴霧流同士の衝突前には,「微粒子」は生じていない。
(ウ)イ号製品等のカタログの記載について
イ号製品等のカタログ(乙12)の1頁の,「ツインジェットノズル(特許)により1~20μmの微粒子が製造出来ます」との記載及び同内容の粒径分布図は,粉体の粒子径であり,液滴の粒子径ではない。10%の濃度で計算した場合,粉体の粒子径は,液滴の粒子径の約46%となる。
また,同カタログの2頁及び3頁の粒度分布図は,営業的側面から,条件次第ではここまでの微粒化が実現できるという意味で記載されたものであり,工業製品として通常使用される気液比で行われたものではない。また,これらは,液滴の粒径ではなく,液滴を噴霧乾燥させた後の粉体の粒度分布図であり,液滴よりも縮小し
た粒子に関するものである。
そもそも,イ号製品等を含め,現存する二流体ノズルにおいて,液滴として噴霧した液滴の平均粒子径を1~4μmとすることはおよそ不可能であり,5μm程度が限界である。イ号製品等の実際の生産機の気液比は,体積比で約1500ないし1700程度とされている。気液比を極端に大きくすれば,衝突前においても10
μm以下の平均粒子径となることはありうるが,イ号製品等の想定する実際の運転条件とは大きく異なるものであるから,それを議論の対象とすべきではない。(エ)原告の実験について
原告の実験は,そもそも開口部を半分以上塞いだ上,液垂れも生じており,正常噴霧している状態とはいいがたく,また,衝突を完全に排除するものではないこと
からすれば,同実験により得られた液滴径を前提に議論することは無意味である。しかも,原告の実験は,イ号製品等の生産機が想定する気液比の平均値(重量比2.15)とはかけ離れた,大きな気液比の条件下で小さな粒径を得ているにすぎず,その意味でも恣意的な実験である。

原告の主張について

被告がホームページ上の画像においてアナウンスしている表現やテロップの表示は,あくまで被告の営業用ツールとして取引先等にアピールできるように意識したものであって,本件発明の用語と同意義で使用したものではない他,ハ号製品をそのまま表現したものでもない。
原告指摘の「液膜噴霧→微小粒子化」とは,10μm以下の微粒化が生じているとの意味ではないし,①「二段階の微粒子化機構」とは,外部混合状態を第一段階とし,衝突状態を第二段階と称しているだけであり,②「薄く引き伸ばされ液膜を形成」とは,単に,空気流によって,液体の一部が引っ張られることによって,液膜が薄く引き伸ばされることを表現したものである。また,「傾斜面から微粒子が飛翔している」とは,空気流によって引っ張られた液体の表面が上側傾斜面から波立ってちぎれた微粒子が飛翔している現象(乙10)を指すものである。
また,原告は,噴霧流同士の衝突前に微粒化が生じていることを被告が自認しているというが,被告実験の結果からも明らかなように,ここにいう微粒子とは,衝突がない場合の粒子径33.71μm程度の微粒子であって,本件発明の目的とする10μm以下の「微粒子」ではないのである。
(7)不当利得額及び損害額(争点2)

(原告の主張)

被告の売上高

被告は,遅くとも平成20年頃から,イ号製品ないしニ号製品を製造販売しており,このうち,ロ号製品及びニ号製品の概算販売高は表1のとおりである。なお,表1のロ号製品又はニ号製品の価格には,イ号製品又はハ号製品の価格が含まれている。
表1
販売時期

ロ号製品又は
ニ号製品の設
置場所(基
数)

①平成20年

国内(1)

15,000,000円

②平成22年

国外(1)

200,000,000円
ロ号製品又は
ニ号製品の
概算販売高

③平成22年

国外(1)

170,000,000円

④平成23年

国外(1)

300,000,000円

⑤平成23年

国内(1)

200,000,000円

⑥平成25年

国外(1)

100,000,000円

合イ
不当利得額


985,000,000円

2億6550万円

平成20年頃から平成23年までにおける,被告によるロ号製品又はニ号製品の製造売上高は,少なくとも8億8500万円である(表1の①ないし⑤)。そして,被告の利益率は30%を下らないことから,少なくとも2億6550万円が,被告が得た不当利得となる。
本件のスプレードライヤを製造している会社は原告と被告のみであり,しかも,表1記載の被告の売上げについては,全て,原告と被告との間の相見積りにより被告が受注したものであるから,被告による本件特許権侵害がなければ原告が利益を得ていたことは間違いなく,被告の利得により原告が損失を受けるという関係にあ
った。
したがって,被告は,得た利益である2億6550万円全額を原告に対して返還すべきである。

損害額

3000万円

被告は,平成25年に,海外の買主に対して少なくとも1億円のロ号製品又はニ号製品を販売し,少なくとも3000万円の利益を得た(表1の⑥×30%)ものであり,特許法102条2項の規定により,原告は同額の損害を被ったものと推定される。

弁護士費用

2955万円

原告は,弁護士費用相当額として,不当利得金2億6550万円の1割である2655万円の損害を被った。
被告は悪意の受益者であり,イの不当利得に関して不法行為責任を負う者であるから,民法704条後段により,イの不当利得返還義務に加え,弁護士費用相当額の賠償義務を負う。
また,原告は,弁護士費用相当額として,特許権侵害の不法行為による損害金3000万円の1割である300万円の損害を被った。
(被告の主張)
争う。
第3
1
当裁判所の判断
本件発明について

本件明細書によれば,本件発明は,液体を極めて小さい微粒子に噴射する方法とノズルに関し(【0001】),ノズルの傾斜面に沿って高速流動させた空気流によって,供給口から傾斜面に送り出された液体を薄く引き伸ばして薄膜流とすることにより,この薄膜流が傾斜面を離れる時に,表面張力で粉々にちぎれて微粒子の液滴となるようにすることに特徴があり(【0020】),これによって,従来技
術である,加圧した液体と加圧した空気とを混合してノズルの先端から噴射したミストを互いに衝突させて微細な粒子とする方法又はノズルを使用した場合に,液体の種類によって生じうるノズルの詰まりという欠点や(【0005】),微小なノズルから噴射した液体に向けて別のノズルから加圧空気を噴射し,液体が空気に削られることにより小さい液滴とする方法又はノズルを使用した場合に生じるノズル
の詰まり及び処理量の少なさという欠点(【0006】)を解消し,液体を極めて小さい微粒子に噴射できると共に,種々の液体を詰まらない状態で使用でき,また,単位時間当たりの噴射量を多くして,微細な液滴に噴射できるようにした点に技術的意義を有するものである(【0008】,【0009】,【0014】)と認められる。

2
争点1-カ(イ号製品等が,「液体を微粒子に噴射する」ものであるか)に
ついて
(1)本件発明の「微粒子」の意義について

本件明細書においては,加圧した液体と加圧した空気とを混合してノズルの
先端から噴射したミストを互いに衝突させて微細な粒子とする原理をとる従来技術(図1)について,「この構造のノズルは,液体を10μm以下の微細な粒子に噴射できる」(【0003】)が,「数分も使用すると,ノズルの先端に噴霧された液滴が付着して乾燥し,しかもこれが次第に堆積して詰まってしまう欠点があった」と解決すべき課題を挙げ(【0005】),また,非常に細かく噴射した液体に加圧空気を噴射するという原理をとる従来技術(図2)について,「ちなみに,粒子径を10μm以下とするノズルは,中心孔の内径を0.2mm以下とする必要
がある。この内径のノズルの噴霧量は,乾燥重量で1時間に15gにすぎない。このように小さいノズルは極めて詰まりやすい欠点もある。」(【0006】)と解決すべき課題を挙げた上で,「本発明は,従来のこれ等の欠点を解決することを目的に開発されたもので,本発明の重要な目的は,液体を極めて小さい微粒子に噴射できると共に,種々の液体を詰まらない状態で使用できる液体を微粒子に噴射する
方法とノズルを提供することにある。」(【0008】)と発明の目的を述べている。
そして,課題を解決するための手段において,「本発明者は前記の目的を達成するために,図3に示す構造のノズルを試作した。・・・粒子径を5μmとする微粒子を得ることに成功した。しかしながら,この構造のノズルは,液体を噴射する供
給口5の調整が極めて難しく,調整がずれると微粒子の粒子径は20~30μm以上に急激に大きくなった。」(【0011】),「本発明者はさらにこの欠点を解消するために,・・・・設計すると,10μm以下の微粒子が得られる。しかしながら,このことを実現するために,・・・製作が極めて難しくなった。」(【0012】),「本発明の液体を微粒子に噴射する方法とノズルは,従来のこのような
原理とは異なる新しい方法で液体を微粒子にして噴射することに成功したものである。」(【0014】)と記載されている。
さらに,発明の効果において,「ちなみに,本発明者が試作したノズルは,1分間に1000gの液体を噴射して,粒子径を10μm以下の微粒子の液滴を噴射することに成功した。」(【0072】)と記載されている。
以上のとおり,本件明細書においては,まず,従来技術において,粒子径を10μm以下の微粒子に噴射できるノズルは,極めて詰まりやすいという欠点があることを指摘した上で,本件発明はその詰まりやすいという課題を解決することを目的とするものであることを説明し,さらに,課題解決手段の項でノズル試作段階の結果に触れ,いったん粒子径を5μmとする微粒子が得られるノズルの試作に「成功」したが,同ノズルは,調整を誤ると粒子径が20ないし30μmと急激に大き
くなってしまう「欠点」があるので,さらなる試行錯誤の中で,10μm以下の微粒子が得られるノズルを製作し,最終的にはそのノズルの問題点を解決したとしている。
そして,試作したノズルにおいて,1分間に1000gの液体を噴射すれば,粒子径を10μm以下の微粒子の液滴を噴射することに「成功」することを説明して
いる。
これらの本件明細書の記載からすると,本件発明は,単に,ある程度粒径の小さな粒子が噴射されれば足りるというのではなく,液体を「極めて小さい微粒子」に噴射できることが重要な目的のひとつとして挙げられている(【0008】)ように,噴射される「微粒子」の大きさが極めて重要な意味を有するものであることか
ら,本件発明において生成されるべき「微粒子」の粒径の範囲は特定されているものと解するのが相当である。
そして,前記各記載においては,10μm以下の微粒子の噴射を「成功」,20ないし30μmの微粒子の噴射を「欠点」と位置づけており,また,本件発明は,もともと,従来技術によった場合の粒子径10μm以下の微粒子に噴射できるノズ
ルにおける欠点を解決することを目的としたものであるとしていることも踏まえると,本件発明において噴射されるべき「微粒子」は,粒子径10μm以下のものとして設定されており,本件発明の「液体を微粒子に噴射する」とは,高速流動空気によって押しつけられた液体の薄膜流が平滑面ないし傾斜面から離れるときに10μm以下の液滴の微粒子になることをいうと解するのが相当である。そして,この解釈は,出願手続における拒絶理由通知に対して原告が特許庁に提出した意見書(乙3)において,拒絶理由中で引用された文献に記載されたノズルとの相違を説明するに当たり,液体を微粒子として噴霧する噴霧ノズルには内部混合タイプと外部混合タイプがあり,外部混合タイプでは安定して液体を極めて小さい微粒子に噴霧できないために実用化が非常に困難であったが,本件発明は,外部混合タイプのノズルを改良したもので,「本願発明の噴射方法とノズルは,前述の
独特の構成で,液体を極めて小さい微粒子に安定して噴射できる特長があります。本発明の噴射方法とノズルは,液体を,10μm以下の極めて小さい微粒子として,安定して噴射することが可能です」との記載があることとも合致するところである。

これに対し,原告は,上記の本件明細書の記載は例示にすぎない等と主張す
るが,前記のとおり,本件明細書の記載では,従来技術の課題,課題を解決するための手段及び発明の効果のいずれにおいても粒子径を10μm以下にすることが記載されているから,これらの記載を総合すれば,本件発明によって噴射される微粒子のあるべき粒子径として10μm以下という数値が設定されていると解するのが相当であり,これら記載を,単に例示として記載された数値にすぎないとする原告
の主張は採用できない。
また,原告は,被告特許において,10μmの倍以上のサイズの粒子も「微粒子」と表現しているとも指摘するが,「微粒子」という概念は一義的なものではなく,ある程度の幅を持ったものであることについては原告自身も認めるものであるところ,そのうちのどの粒子径の微粒子を生成するかは,各発明の目的等に応じて
個別に設定されるべきことであり,仮に被告が他の発明において,10μmを超える粒子径のものを「微粒子」と定義していたとしても,そのことは,本件発明において粒子径が10μm以下のものが微粒子であると主張することと何ら矛盾するものではない。
(2)粒子径の評価指標について
証拠(乙9及び16)及び弁論の全趣旨によれば,分布する粒子径の評価をする際の代表値の取り方には,一般にD50(中位径)とザウター平均径があり,D50は,粒径分布上の50パーセント中位の粒径をとったものであり,ザウター平均径は,粒子の体積の総和と表面積の総和との比をとったものであると認められる。しかし,本件発明によって噴射される微粒子につき,その粒子径の評価に用いられた指標は,本件明細書上明らかではない。

この点,原告は,実際にはD50を用いて粒子径の評価を行っており,本件明細書も同指標に基づいて記載したものであり,一般的にもD50が用いられると主張するのに対し,被告は,一般にはザウター平均径を用いて粒子径を評価することが多いとして,本件発明についても,ザウター平均径を指標として粒子径の評価をすべきであると主張する。

証拠(甲22,23)によれば,スプレードライヤの製造会社であるGEA
N
iro社が作成した資料及びスプレードライ製法による錠剤製造機に関するメルク株式会社のカタログにおいては,D50を用いた粒子径の説明が行われていることが認められる。また,液体を微粒子にする方法に関する被告特許においても,D50を用いた粒子径の評価が行われており,イ号製品等のカタログ上も,D50を用いた粒子径の評価が行われていることが認められる(乙12,乙14)。他方,証拠(乙15)によれば,産業用スプレーノズルと応用機器,ソリューション事業を業とする「霧のいけうち」という会社が作成した2流体ノズル製品の技術資料においては,「数多い小粒子より,数少ない大粒子によって現象が左右されることが多いため,ザウター平均径を噴霧粒子群の代表値とするのが最も好ましい
ようです。一般にもザウター平均径が多用され,本カタログにおいても使用しています。」と記載されており,さらに,証拠(乙16)によれば,ノズルネットワーク株式会社が編集した「役立つノズルの選定知識」と題するウェブページにおいても,液滴平均径の求め方について,「ノズル分野ではほとんどの場合ザウター平均径が使用され」との記載があることが認められる。
また,国際特許分類(B05B7/08B01F3/08B01F5/20B05B1/26B05D1/02)のいずれかを含む特許出願においては,D50を明細書中に含むものが229件,ザウター平均径を明細書中に含むものが65件存在したことが認められる(甲24,甲25)。
以上を踏まえると,噴霧ノズルにおける粒子径の評価指標としては,D50,ザウター平均径のいずれもが一般的に用いられているというべきであるから,技術常識
を考慮しても,本件明細書における粒子径がそのいずれを評価指標とするものかを決することはできない。そうすると,明細書の公示機能に鑑み,本件発明の技術的範囲に属するのは,D50,ザウター平均径のいずれの指標を用いて測定しても,噴射される微粒子の粒子径が10μm以下となる場合に限ると解するのが相当である。

(3)対比の対象となる微粒子について
前記のとおり,本件発明の技術的意義は,傾斜面に沿って高速流動させた空気流によって,供給口から傾斜面に送り出された液体を薄く引き伸ばして薄膜流とすることにより,この薄膜流が傾斜面を離れる時に,表面張力で粉々にちぎれて微粒子の液滴となるようにすることにあり,請求項においても,「薄膜流を平滑面から離
して微粒子として噴射することを特徴とする」(本件発明1),「薄膜流を空気流で空気中に微粒子として噴射することを特徴とする」(本件発明4),「液体を微粒子に噴射するノズル」(本件発明6)と記載されているように,液体が平滑面又は傾斜面上で薄く引き伸ばされ,「微粒子」になった状態で噴射されること,すなわち,平滑面又は傾斜面から離れる時点で引き伸ばされた液体が「微粒子」の状態
になっていることを前提とするものであり,平滑面又は傾斜面から離れた粒子に,他の粒子との衝突など,何らかの要因が加わって,事後的に「微粒子」となることまでその技術的範囲に含むものではないと解するのが相当である。したがって,本件では,イ号製品等において,噴霧流同士が衝突する前に粒子径10μm以下の微粒子が製造されているか否かについて検討すべきである。(4)イ号製品等における衝突前の粒子径について

後掲証拠によれば,イ号製品等を用いて噴霧した場合の粒子径について,
以下のとおり認められる。
(ア)ハ号製品を用いた被告による実験結果(乙9)
ハ号製品では,上流側の液体供給口及び空気口と下流側の液体供給口及び空気口には,それぞれ別個の供給路により液体及び空気が供給されることから,片側の液体及び空気の供給を止めることにより,噴霧流同士が衝突しない状況を作出できる。そして,噴霧空気圧を0.245MPa,気液比を重量比1.70(体積比1317)に設定してハ号製品を作動させ,噴霧流同士の衝突を生じさせた場合(Lot2,衝突あり試験)と,ハ号製品の下流側の液体供給口及び空気口をバルブで止めた上で,噴霧空気圧を上記と同じ,気液比を重量比1.81(体積比1402)
に設定して作動させた場合(Lot1,衝突なし試験)について,それぞれ得られた液滴の粒子径は別紙「被告による実験結果」のとおりであり,衝突ありの場合に得られた粒子径は,D50が17.09μm,ザウター平均径が9.92μm,衝突なしの場合に得られた粒子径は,D50が35.77μm,ザウター平均径が33.71μmであった。

(イ)イ号製品を用いた原告による実験結果1(甲19)
イ号製品はハ号製品と異なり,液体供給口と空気口の起点が一体化しており,片側のみ液体供給と空気供給を停止することができない構造となっている。そのため,衝突なし試験は,円環状の空気口と液体供給口を,開口率がそれぞれ20.3%,13.6%となるようにテフロン樹脂を用いて閉塞し,噴霧流同士の衝突を極
力防止する策を講じて実施している(もっとも,この状態であっても噴霧流の衝突を完全に排除し得るものではないことは原告も認めている。)。そして,イ号製品(RJ-10)を作動させ,噴霧流同士の衝突を生じさせた場合(衝突あり試験)と,可能な限り噴霧流同士が衝突しない状況を作出した上で作動させた場合(衝突なし試験)について,それぞれ得られた液滴の粒子径を測定した結果は,別紙「原告による実験結果1」のとおりである。
まず,試験条件を後記の被告特許の実施例1に合わせて,空気圧を0.15MPa,総液量を50g/min,圧縮空気の流量を160,220,又は310L/min(気液比(体積比)は,3200,4400,6200)の3通りに設定して衝突あり試験を実施した結果は,別紙「原告による実験結果1」表AのD1AないしD3Aのとおりとなり,気液比(体積比)3200の下で,D50が8.2
9μm,ザウター平均径が5.84μmとなった(D1A)。
次に,空気口と液体供給口を前記のとおり閉塞するとともに,空気圧を上記と同様,総液量を,衝突あり試験の場合の半分の25g/min,空気の流量を80L/min(気液比(体積比)3200)とした上で衝突なし試験を実施した結果は,別紙「原告による実験結果1」表AのD1Nのとおり,D50が8.22μ
m,ザウター平均径が5.75となった。
このように,気液比(体積比)3200という同一の条件下における衝突あり試験の結果(D1A)と衝突なし試験の結果(D1N)を対比すると,衝突なし試験の方が,D50,ザウター平均径ともに小さくなるという明らかに不適切な結果となったことから,衝突なし試験の条件設定について,次のとおり補正を施した。


第1補正

上記D1Nのような条件下で衝突なし試験を実施した際,水滴17gがノズルからしたたり落ち,総液量の全てが噴射されないことが判明したことから,D1Nにおいて供給した25gに17gを上乗せした水量42gを「総液量」として供給することにより,噴霧水量25gを確保し,噴射された微粒子の粒子径を測定した。その結果は別紙「原告による実験結果1」表Bのとおりである。


第2補正
供給する空気量と噴霧水量を,D1AないしD3Aの場合から,空気口及び液体供給口の開口率(空気口は20.3%,液体供給口は13.6%)に応じて減ずることとし,圧縮空気の流量を,32,45,63L/minの3通りとし,噴霧水量を7g/minとするため,噴霧口からしたたり落ちる液量分を上乗せした19g/minを「総液量」として供給し,噴射された微粒子の粒子径を測定した。その結果は別紙「原告による実験結果1」表Cのとおりである。


第3補正

供給する空気量と噴霧水量を,D1AないしD3Aの場合から,いずれも液体供給口の開口率(13.6%)に応じて減ずることとし,圧縮空気の流量を22,30,42L/minの3通りとし,噴霧水量を7g/minとするため,噴霧口からしたたり落ちる液量分を上乗せした19g/minを「総液量」として供給し,噴射された微粒子の粒子径を測定した。その結果は別紙「原告による実験結果1」表Dのとおりである。


第4補正

噴霧水量を第2補正及び第3補正と同様に,液体供給口の開口率に応じて7g/minとするため,噴霧口からしたたり落ちる液量分を上乗せした19g/minを「総液量」として供給することとし,気液比(体積比)について,D1AないしD3Aに合わせて3200,4400,6200に近い値となるように,圧縮空気の流量をそれぞれ22,31,44L/minに調整して供給することとし,噴射
された微粒子の粒子径を測定した。その結果は別紙「原告による実験結果1」表Eのとおりである。
(ウ)イ号製品を用いた原告による実験結果2(甲26)
イ号製品を用いて実施した衝突あり試験の結果,別紙「原告による実験結果2」表Gのとおり,試験条件を後記の被告特許の実施例1のNo.3と同様として,気
液比(体積比)を6200とする条件下で得られた粒子径は,D50が5.22μm,ザウター平均径が4.57μmであった。また,気液比を32600とする条件下で得られた粒子径は,D50が4.00μm,ザウター平均径が3.47μmであった。
(エ)イ号製品等のカタログの記載(乙12)
a「弊社が開発しました,少ない空気量で10μm以下の微粒子を作る「ツインジェットノズル」を搭載した,微粒子の大量生産用スプレードライヤです。従来のスプレードライヤでは,10μm以下の微粒子を製造するためには,処理量を抑えるか,固形分濃度を下げることでしか対応できませんでしたが,これらの制約条件を解決し,数μmの微粒子の大量生産を可能としました」
b「微粒子の大量生産が可能

ツインジェットノズル(特許)により1~2

0μmの微粒子が製造出来ます。」
cツインジェットTJノズル(ハ号製品),ツインジェットRJノズル(イ号製品)のいずれも,粒子径1ないし15μmの微粒子を得ることが可能であることを示す対数グラフが掲載されている。
dRJシリーズ(少量処理用途・イ号製品)及びTJシリーズ(大量処理用途
・ハ号製品)の粒度分布図において,アルミナスラリーを噴霧乾燥した,衝突後の粉体の粒子径D50は6μm程度となっており,「微粒化エアと原液のバランスを変更する事で,粒度分布の調整範囲をもっています」とされている。eツインジェッターシリーズにおけるテスト実施例
RJ-5(イ号製品)を用いた電池正極材の製造テストにおいて,液滴を噴霧乾
燥させた粉体の中位径(D50)は3.2μmであった。このテストでは,噴霧圧力が0.35MPa,原液固形分濃度が30%,気液比が26889(体積比)であった(乙14)。
RJ-10(イ号製品)を用いた電池負極材の製造テストにおいて,液滴を噴霧乾燥させた粉体の中位径(D50)は4.2μmであった。このテストでは,噴霧圧
力が0.3MPa,原液固形分濃度が20%,気液比が8519(体積比)であった(乙14)。
f
ツインジェッターシリーズ標準仕様一覧

RJシリーズ(イ号製品)を用いた定形機であるNL-3(研究開発用),NL-5(サンプル製造用),RL-5(少量生産用),RL-8(少量生産用),RL-10(少量生産用)における水分蒸発量,乾燥室寸法,熱風入口温度,熱風容量等が記載されており,それらから算出される気液比は,順に,重量比3.75(体積比2906),重量比1.16(体積比889),重量比1.43(体積比1108),重量比1.74(体積比1348),重量比1.84(体積比1426)である(乙13)。
g
生産用マイクログラニュライザーの運転実績例

TJシリーズ(ハ号製品)を用いた生産機であるONB-18,ONB-40,OTB-45,ONB-50における原液処理量,水分蒸発量,乾燥室寸法等が記載されており,それらから算出される気液比は,順に,重量比2.05(体積比1588),重量比2.48(体積比1922),重量比1.80(体積比1395),重量比2.27(体積比1759)である(乙13)。

(オ)被告特許の明細書等の記載(甲10の添付資料4)
a
請求項1

「気体及び液体が,ノズル内部の気体流路及び液体流路を通り,前記ノズル先端の二重に配置された円環状スリットへとそれぞれに供給される第1の工程と,前記液体を円環状の第1スリットから,気体を前記第1スリットの外側に配設された円環状の第2スリットから噴射し,高速薄膜流とする第2の工程と,前記第2の工程により生成された前記高速薄膜流が,前記ノズルのガイド面に沿って流れ,前記ノズルの先端から飛び出し,ジェット流となる第3の工程と,前記第3の工程で得られたジェット流を外部衝突点に向けて集束させながら,前記外部衝突点で衝突させ,前記液滴を微粒化する第4の工程と,
前記第4の工程で得られた微粒子を前記外部衝突点を頂点とした円環状に噴霧する第5の工程と,
を備えた液体を微粒子にする方法。」
b
「本発明は,液体を微粒子にする方法及びこれに用いるノズルに関する。」
(【0001】)
c
「特許文献1(注:本件特許に係る公開特許公報)に記載のノズルにおけ
る液体を微粒子化する機構は以下のようなものである。即ち,液体流路15から供給された液体は各々引き伸ばされて別々の薄膜流19となり,各々平滑面17上をエッジ35方向へと移動する。薄膜流19はエッジ35を離れると同時に薄膜流19どうしが一度合流し,その後微粒子に変化していく場合でも,気液比を大きくとれば10μm以下にすることができるとしている。しかしながら,所定
の薄さまで引き伸ばされた薄膜流は,エッジの先端において合流してしまうために所定以上の厚みとなる。即ち,液体を薄膜流にするために要した工程の一部が無駄であるために,微粒子化する液体の量に比して大量の加圧空気が必要である等の液体を微粒子にする効率の面において問題を有していた。また,2液の混合・反応等により粘度が大きくなる場合等は,微粒化性能の低下が起こるという問
題を有していた。」(【0005】)
d
「本発明は,このような従来技術の有する問題点に鑑みてなされたもので
あり,その目的とするところは,液滴が円環状に噴霧されるため,液滴の境界条件の設定が不要であり,そのノズル構造も単純で,小型化することも容易であるとともに,液体を微粒子にするための加圧気体の使用量をより少なく,且つ効率的に使用され,単位時間当たりの微粒子化量をより多くすることができる液体を微粒子にする方法及びこれに用いるノズルを提供することにある。」(【0018】)
e
「本発明の液体を微粒子にする方法及びこれに用いるノズルは,液滴が円
環状に噴霧されるため,液滴の境界条件の設定が不要であり,そのノズル構造も単純で,小型化することも容易であるとともに,液体を微粒子にするための加圧気体の使用量をより少なく,且つ効率的に使用され,単位時間当たりの微粒子化量をより多くすることができる。」(【0028】)
f
「(実施例1~3)図3に示すノズル(ノズル型SJ-10)を表1~3
に示す条件で,それぞれ水噴霧を行い,液滴径をレーザ光散方式粒度分布測定装置(型式:LDSA・1400A[東日コンピュータアプリケーションズ(株)製])を用いて測定した。その結果を表1~3及び図11に示す。」(【0049】。なお,ここでいう表1ないし3は,別紙「被告特許の明細書の実施例」の表1ないし3のとおりである。)
g
「表1~3及び図11の結果から,実施例1~3では,処理量を多くする
場合(例えば,実施例2及び実施例3),空気量もそれに対応して供給することにより,液滴の平均粒子径(D50)を10μm以下に制御できることを確認した。」(【0053】)
h
「(実施例4)図3に示すノズル(ノズル型SJ-10)を表4に示す条
件で,固形分濃度50質量%のデキストリン水溶液(パインデックス♯2[松谷科学製])の噴霧乾燥試験を行った。その結果,得られた微粒子は,平均粒子径(D50)で10μm以下であった。」(【0054】。なお,ここでいう表4は,別紙「被告特許の明細書の実施例」の表4のとおりである。)イ
衝突なし試験に基づく検討

(ア)被告による実験結果について
前記のとおり,ハ号製品を用いた被告による実験では,衝突前の微粒子の粒子径は,D50が35.77μm,ザウター平均径が33.71μmとなり,10μmを大きく超えている。ハ号製品を用いた場合,液体供給口及び空気口の片側を閉塞することにより,通常の噴霧状況と変わらない状況の下で噴霧流同士の衝突が生じない状況を作出することができることから,被告による衝突なし試験の結果は,当該試験条件下での衝突前の液滴の粒度を示すものとして信用するに足りるというべ
きである。
しかし,イ号製品等では,通常の使用方法の下で,この実験結果よりも小さな粒径の液滴を噴射し得ると考えられる。
すなわち,被告の実験は,気液比(以下,気液比は体積比で表記する。)が1300ないし1400の実験条件の下で行われたものであるところ,前記原告及び被告による実験結果からすると,イ号製品等においては,気液比の設定値が高くなるに伴い,製造される液滴の粒子径が小さくなることが認められ,この旨は,被告特許の明細書【0053】にも記載されているところでもあるから,気液比がより大きな実験条件の下では,より小さな液滴径が得られることになると考えられる。確かに,イ号製品等のカタログでの「インクジェッターシリーズ標準仕様一覧」での気液比が概ね1000台とされていることからすると,上記の被告による実験の実
験条件はイ号製品等の標準仕様に近い数値であるとはいえるが,上記の標準仕様の中にも気液比が2906のものがあるから,被告の実験の条件より大きな気液比も,イ号製品等の通常使用の範囲内にあると認められる。また,被告特許の実施例では,イ号製品等と同じ構造で,型式も類似する「SJ-10」のノズルが用いられているから,イ号製品等のカタログに記載された「特許」は,被告特許を指して
いると推認されるところ,その実施例では,気液比6205までの例(実施例1のNo.3)が実施されている。確かに,被告特許が「液体を微粒子にするための加圧気体の使用量をより少なく」する目的と効果を有するものであり(【0028】),イ号製品等のカタログでも,従来のスプレードライヤで10μm以下の微粒子を製造するためには,処理量を抑える(これは空気の量を増やして気液比を上
げることを意味する。)か固形分濃度を下げる(これは液滴が大きくとも乾燥後の粉径が小さくなることを意味する。)という制約条件があったのを解決したもので,「少ない空気量で」10μm以下の微粒子を作る「大量生産用スプレードライヤ」とされていることからすると,イ号製品等においては,大きな気液比を用いることは想定されていないとはいえるが,少なくとも発明の効果を確認するための実
施例において用いられた6205程度の気液比までは,通常使用の範囲内として想定されていると推認するのが相当である。
そして,実験結果でも,衝突後の液滴径についてではあるが,イ号製品について気液比を6200とした場合の原告による実験結果1(D3A)及び2(D3A’)では,D50が4.97ないし5.22μm,ザウター平均径が4.32ないし4.57μmとなっており,気液比を1317とした場合の被告による実験結果(衝突あり)ではD50が17.09μm,ザウター平均径が9.92μmであったのと比べて,液滴径が顕著に縮小している。
そうすると,イ号製品等においては,通常の使用状態の下で,被告の実験結果よりも小さな径の液滴を形成し得ると考えられるから,被告の実験結果をもって,イ号製品等が衝突前に液体を10μm以下の微粒子に噴射するものであるか否かを判
断することはできないというべきである。
(イ)原告による実験結果1(衝突なし試験)について
D1Nの衝突なし試験は,供給する空気の流量と総液量を,空気供給口及び液体供給口の閉塞に伴い,衝突あり試験の半分に減じて実施したものであるところ,その試験結果は,同じく気液比3200の条件下で実施した衝突あり試験の結果(D
1A)よりも,D50,ザウター平均径ともに小さくなっていることから,明らかに不適切というべきである。
これを踏まえて実施した第1補正後の衝突なし試験(D1Nc1)は,供給する空気の流量と噴霧水量を,空気供給口及び液体供給口の閉塞に伴い,衝突あり試験の半分に減じた上で,噴霧口からしたたり落ちる液量分を上乗せした42g/mi
nを「総液量」として供給して噴霧水量25g/minを確保したものであるが,その試験結果も,同じく気液比(体積比)3200の条件下で実施した衝突あり試験の結果(D1A)よりザウター平均径が小さくなっていることから,やはり不適切というべきである。
次に,第2補正ないし第4補正後の衝突なし試験は,供給する空気の流量と噴霧
水量を,空気供給口又は液体供給口の開口率に応じて減じた上で,噴霧口からしたたり落ちる液量分を上乗せした19g/minを「総液量」として供給して噴霧水量7g/minを確保したものであり,供給する空気の流量及び「総液量」が異なる点を除けば,第1補正と同様の思想のもとに補正を加えたものである。第2ないし第4補正後の結果をみると,第1補正の場合のように,同一の気液比の下で実施した衝突あり試験の場合よりもD50又はザウター平均径が小さくなるような,明らかに不適切な結果は生じておらず,気液比が6200よりも小さな条件下で,液滴径が10μm以下となっている。
しかし,第2補正ないし第4補正は,液体供給口及び空気口を閉塞したり,補正を目的とするものではあるものの流量を本来の使用方法よりも減らしたり,原因は不明だが噴霧量を減らしてもなお相当量の水滴がノズルからしたたり落ちる現象が
生じているなど,イ号製品の通常の使用状況である衝突あり試験の場合とは大きく異なる噴霧状態が作出されているから,それにより試験結果に影響が生じた可能性を否定することができない。
この点に加え,そもそも噴射口を閉塞しても,噴霧流同士の衝突を完全に封ずることができていないことも併せ考慮すれば,原告による衝突なし試験については,
直ちに採用することができないといわざるを得ない。
よって,原告による衝突なし試験の結果から,イ号製品等において,衝突前に,D50及びザウター平均径が10μm以下の微粒子が製造されるものと認めることはできない。

衝突あり試験及びデータに基づく検討

そこで次に,衝突あり試験の結果得られた粒子径をもとに,イ号製品等において衝突前に粒子径10μm以下の微粒子が得られると推認することができるか否かにつき検討する。
(ア)原告による実験結果1及び2(衝突あり試験)について
a
イ号製品を用いた原告による衝突あり試験の結果は,イ号製品の本来の使用
方法に基づく結果であることから,信用するに足りるものである。b
ところで,衝突あり試験の結果から衝突前の液滴径を推認するためには,衝突の前後における液滴径の変化の度合いが明らかになっている必要がある。そして,衝突なし試験について唯一信用するに足る測定値であると認められる被告による実験結果によれば,気液比1300ないし1400の設定条件下で得られる衝突前の微粒子の粒子径は,衝突後の微粒子の粒子径に比して,D50につき約2.09倍(35.77μm/17.09μm),ザウター平均径につき約3.39倍(33.71μm/9.92μm)となったことが認められる。もっとも,この倍率については,前記のとおり,イ号製品等ではこの試験よりも小さな粒径の液滴を形成し得ると認められ,また,弁論の全趣旨によれば,衝突前後の粒子径の変化の度合いは,一般に,粒子径が小さくなるに伴い逓減する
と認められるから,被告の実験より気液比を高くしてより小さな液滴が形成されるようにした条件下では,衝突前後の変化の度合いは上記よりも小さくなると考えられる。しかし,液滴径が被告の実験よりも小さくなった場合に,衝突前後で液滴径がどのように変わるかについては,これを認めるに足りる的確な証拠がないことから,衝突あり試験及びデータから衝突前の液滴径を推認するに当たって
は,上記の被告の実験における変化の度合いを踏まえて検討する以外にないというべきである。
c
そこで具体的に見ると,まず,原告による衝突あり試験のうち,前記のと
おりイ号製品等の通常使用の範囲内と認められる気液比6200程度以下の条件下でのものを見ると,衝突後のザウター平均径が最小なのは4.32μm(D3A)であるが,これに上記の倍率を適用すると,約14.64μm(4.32μm×3.39倍)となる。そして,この場合,衝突前のザウター平均径が10μmになるためには,倍率が約2.32倍まで低下する必要があるが,被告の実験における衝突後のザウター平均径が9.92μmと既に10μm以下になっていることを考慮すると,衝突後のザウター平均径が4.32μmになる場合の倍率
が約2.32倍にまで低下すると直ちに推認することは困難である。d
次に,原告による衝突あり試験において,上記よりも液滴径が小さくなったものとして,原告による実験結果2のザウター平均径3.47μm(D3Amin)があり,これに上記の倍率を乗じると約11.76μmとなる。この場合に,衝突前のザウター平均径が10μmになるためには,倍率が約2.88倍まで低下すれば足りるが,やはりこの場合にも,倍率がそこまで低下すると直ちに推認することは困難である。
また,そもそもこの試験結果は,気液比が32600という極めて大きな条件下で得られたものである。前記のとおり,イ号製品等は,大きな気液比を用いることを想定していないと認められるところ,その標準仕様では,気液比が多くは1000台で,最大でも2906とされており,被告特許の明細書における実施
例でも気液比6205が最も大きい例であることや,被告特許に係る発明とその実施品と推認されるイ号製品等は,空気の使用量をより少なくする点に目的及び効果を有することからすると,気液比32600というのが,イ号製品の通常の使用方法として想定されていると直ちに認めることはできない。なお,イ号製品等のカタログでは,「テスト実施例」において,電池正極材の粒度分布を示すに
当たり,気液比26889を用いているが,それはテストの実施例として記載されているにとどまる上,他の例の気液比と余りにかけ離れていることからすると,条件次第ではここまでの微粒化が実現できるというアピールをする営業的側面から記載されたもので,工業製品として通常行われる気液比ではないとの被告の主張もあながち否定することはできないというべきである。

この点について原告は,通常の使用方法として想定されている条件下であるか否かにかかわらず,衝突前に10μm以下の液滴径が得られるのであれば,イ号製品等は本件発明4及び6の技術的範囲に属すると認めるべきであると主張する趣旨にも見受けられる。しかし,イ号製品等が衝突前に粒子径10μm以下の液滴を噴射し得るか否かは,その使用方法に依存しているところ,イ号製品等が,
その想定する通常の使用方法の下で衝突前に粒子径10μm以下の液滴を噴射し得るのでなければ,産業社会において実際にそのような機能効用を有する製品として取り扱われることがないのであるから,そのような場合にまで,イ号製品等が衝突前に粒子径10μm以下の液滴を噴射し得る構成を有するということはできない。
e
そして,本件発明においては,前記のとおり,D50及びザウター平均径の
いずれによっても衝突前に粒子径10μm以下の液滴が噴射されることが必要であると解されるから,ザウター平均径の場合について上記のとおり衝突前に10μm以下の液滴を噴射し得るとは認められない以上,D50の場合について検討するまでもなく,原告による衝突あり試験の結果から,イ号製品等において,衝突前に,10μm以下の液滴径が得られる構成を有するということはできない。
(イ)イ号製品等のカタログの記載について
a
上記のとおり,イ号製品等のカタログにおいては,「テスト実施例」におい
て,噴霧流同士の衝突後に得られた粉体のD50が3.2μm(電池正極材)又は4.2μm(電池負極材)であった旨記載されているところ,これらはそれぞれ,原液固形分濃度30%・気液比26889の条件設定下,原液固形分濃度20%・気液比8519の条件設定下で得られた結果である。
そして,イ号製品等のカタログでは,粒子径について,「アルミナスラリーを噴霧乾燥させたものです」(乙12の3枚目)などと記載されており,そこに記載された粒子径は乾燥後の粉体の粒子径であると認められるから,検討に当たってはまず,上記の粒子径を噴霧乾燥前の液滴の粒子径に数値修正すべきところ,理論上,
粉体の粒子径は,液滴の粒子径の固形分濃度の3分の1乗倍に縮小するものであり(弁論の全趣旨),上記テスト実施例で用いられた固形分濃度は,それぞれ30%,20%であることからすると,衝突後の電池正極材の液滴の大きさは4.78μm(3.2μm/0.3の3分の1乗),衝突後の電池負極材の液滴の大きさは7.18μm(4.2μm/0.2の3分の1乗)であることになる。
そして,被告の実験結果によれば,D50で評価した場合,液滴の粒子径は衝突前後で2.09倍の差異が生じたことからすると,電池正極材の衝突前の液滴のD50の粒子径は9.56μm,電池負極材の衝突前の液滴の粒子径は14.36μmとなり,少なくとも電池正極材におけるテスト実施例においては,衝突前のD50が10μm以下の微粒子が得られたことが示されていることとなる。しかし,前記のとおり,本件発明においてはD50及びザウター平均径のいずれによっても衝突前に粒子径10μm以下の液滴が噴射されることが必要であると解されるところ,上記の電池正極材のテストでの衝突後のザウター平均径は不明である。そして,原告による実験結果1及び2によれば,ザウター平均径はD50を若干下回るものとなる傾向があると認められるが,被告の実験結果によれば,ザウター平均径については衝突前後で3倍程度の差異が生じたことからすると,計算上,
衝突前のザウター平均径も10μm以下となると認めるには足りない。また,この電池正極材のテスト実施例は,気液比26889という他の例とは大きく異なる気液比の条件下でのものであって,前記のとおり,営業的側面から記載されたもので,工業製品として通常行われる気液比ではないとの被告の主張もあながち否定することはできない。

そうすると,いずれにしても,これによって,イ号製品等において,衝突前に,10μm以下の液滴径が得られる構成を有すると認めることはできない。b
イ号製品等のカタログには,粒子径1ないし15μm程度の微粒子を得るこ
とが可能であることを示す対数グラフが掲載されており,他に,数μm,又は1ないし20μmの微粒子が製造できる旨の記載もある。
しかし,原告による実験結果2によれば,噴霧流同士の衝突後のD50が4μmとなる液滴を製造するには,気液比を32600とする必要があり,さらに噴霧乾燥後のD50が1μmないし4μmの微粒子に至っては,それ以上の気液比でなければ得られないのは明らかである。そうすると,上記のカタログの記載についても,想定する通常の使用方法からかけ離れた条件の下でのものが営業的側面から記
載されたものであることを否定できないというべきである。
c
したがって,カタログにおける記載をもって,イ号製品等において,衝突前に,10μm以下の液滴径が得られる構成を有すると認めることはできない。(ウ)被告特許の明細書の実施例について
被告特許の明細書の実施例においても,衝突後の液滴のD50の粒子径が記載されているところ,衝突前後のD50が2倍程度と変化することを前提とした場合,計算上,衝突前のD50が10μm以下となると認めるには足りず,またザウター平均径も不明であるから,これをもって,イ号製品等において,衝突前に,10μm以下の液滴径が得られる構成を有すると認めることはできない。(エ)被告のホームページ上の説明等について
被告のホームページ上に掲載されたハ号製品の動作説明においては,同製品が二
段階の微粒化機構を有するものであることが示されており,第一段階の外部混合部について,「液はエッジ面に沿って薄く引き伸ばされ,液膜を形成」と記載され,第二段階の衝突部について,「噴霧流同士が衝突し,さらに微粒化」と記載されていることを総合すると,衝突前の第一段階においても微粒化が生じることが説明されているということができるが,当該説明の中で,微粒化された粒子の大きさにつ
いては言及されていない(甲8)。
また,ロ号製品のカタログ上でも,単に「気液の外部混合により微粒化」,「噴霧流同士を空中衝突させて再微粒化」と説明されるのみで,その粒子の具体的な大きさについては言及されていない(甲3,甲4)。
そして,もともと「微粒子」というものの大きさは,相対的,又は,ある程度幅
のあるものであることからすれば,被告がホームページ等において使用する「微粒化」又は「微粒子」なる語が,必ずしも粒子径10μm以下の微粒子を指すものとは認められない。
また,本件で提出されたイ号製品説明書及びハ号製品説明書を分析し,それぞれの製品において衝突点に至る前に微粒化が生じるか否かについての専門家の意見が
記載された原告鑑定書(甲10)については,同鑑定書の意見においても,イ号製品,ハ号製品ともに「衝突点に至る前に微粒化が生じている」と記載されているにすぎず,衝突点に至る前に粒子径10μm以下の粒子が噴射されているか否かについては言及されていないものであるから,いずれにしても,イ号製品等において,噴霧流同士の衝突前に粒子径10μm以下の微粒子が生成されていることを認めるには足りないものである。
(5)以上より,イ号製品等において,噴霧流同士の衝突前にD50及びザウター平均径のいずれもが10μm以下の微粒子が製造されると認めることはできない。よって,イ号製品等は,少なくとも本件発明1の構成要件A,E及びF,本件発明2の構成要件H,本件発明4の構成要件ア,オ及びカ,本件発明6の構成要件キを充足するとは認められない。

3
以上の次第で,その余の争点につき検討するまでもなく,原告の請求にはい
ずれも理由がないことからいずれも棄却することとし,訴訟費用の負担につき,民事訴訟法61条を適用して,主文のとおり判決する。

大阪地方裁判所第26民事部

裁判長裁判官

髙松宏之野上誠一
裁判官
裁判官

大川潤子
(別紙)
被告製品目録

1
イ号製品

製品名

2
「ツインジェットノズル(RJシリーズ)」

ロ号製品

製品名


「微粒子製造用スプレードライヤ(RJシリーズ)」

上記1の「ツインジェットノズル(RJシリーズ)」(イ号製品)を具備し
ている。

3
ハ号製品

製品名

4
ニ号製品

製品名


「ツインジェットノズル(TJシリーズ)」

「微粒子製造用スプレードライヤ(TJシリーズ)」

上記1の「ツインジェットノズル(TJシリーズ)」(ハ号製品)を具備し
ている。
以上
(別紙)
イ号製品説明書(原告)

1
製品名

2
「ツインジェットノズル(RJシリーズ)」

図面
3
イ号製品の具体的構成

あ:

液体を流動させて薄膜流(8)とする傾斜面(7)を有し,この傾斜面
(7)を流動する液体の薄膜流(8)を空気中に微粒子として噴射した上で,傾斜面(7)の端部から離れた流動方向下流側の外部衝突点(A)において衝突させてさらに微粒子化するノズルにおいて,
い:

上記傾斜面(7)は液体の流動方向に平滑な面であって,流動方向先端側
ほど縮径する円錐台形状の面となっており,
う:

上記傾斜面(7)に加圧空気を噴射して,傾斜面に接触しながら,しかも,
傾斜面と平行に一定の方向に高速流動する空気流をつくる空気口(10)を備え,え:

空気流を高速流動させている傾斜面の途中に,空気流の流動方向に交差す
るように液体を供給する供給口(5)を備え,
お:

供給口から傾斜面(7)に供給された液体を,高速流動する空気流で平滑
面に押し付けて薄く引き伸ばして薄膜流(8)とし,薄膜流(8)を空気流で空気中に微粒子として噴射した上で,傾斜面の端部から離れた流動方向下流側の外部衝突点(A)において衝突させてさらに微粒子化することを特徴とする,か:

き:

下記の全ての構成を有する,液体を微粒子に噴射するノズルである。
(ⅰ)
液体を微粒子に噴射するノズルである。

ノズルは,液体をリング状に噴射する供給口(5)と,この供給口に液体
を供給する筒状の液体路と,供給口から噴射される液体を流動させる傾斜面(7)と,この傾斜面に加圧空気を噴射する空気口(10)と,この空気口(10)に空気を供給する空気路(1)とを備える。
(ⅱ)
(ⅲ)

供給口(5)は所定幅のスリット状に形成されている。
供給口(5)は,リング状に形成されている。

(ⅳ)

供給口(5)は傾斜面の途中に開口されている。

(ⅴ)

供給口(5)の傾斜面に対する角度βは鈍角に設計されている。
(ⅵ)

傾斜面(7)は液体の流動方向に平滑面であって,流動方向先端側ほど縮
径する円錐台形状の面となっている。
(ⅶ)

空気口(10)は傾斜面(7)の途中に開口された供給口(5)に向かっ
て開口されている。
(ⅷ)

空気路(1)に,軸方向に流動する空気をスパイラルに回転させる分配羽
根(22)を配しており,空気口から噴射される空気がスパイラル状に回転しながら傾斜面(7)に沿って噴射されるように構成されている。
(別紙)
ハ号製品説明書(原告)

1
製品名

2
「ツインジェットノズル(TJシリーズ)」

図面
3
さ:

ハ号製品の具体的構成

液体を流動させて薄膜流(8)とする傾斜面(7)を有し,この傾斜面
(7)を流動する液体の薄膜流(8)を空気中に微粒子として噴射した上で,傾斜面(7)の端部から離れた流動方向下流側の外部衝突点(A)において衝突させてさらに微粒子化するノズルにおいて,
し:

上記傾斜面(7)は液体の流動方向に平滑な面であって,流動方向先端側
ほど接近するように一対設けられ,
す:
上記傾斜面(7)に加圧空気を噴射して,傾斜面に接触しながら,しかも,
傾斜面と平行に一定の方向に高速流動する空気流をつくる空気口(10)を備え,せ:

空気流を高速流動させている傾斜面の途中に,空気流の流動方向に交差す
るように液体を供給する供給口(5)を備え,
そ:

供給口から傾斜面(7)に供給された液体を,高速流動する空気流で平滑
面に押し付けて薄く引き伸ばして薄膜流(8)とし,薄膜流(8)を空気流で空気中に微粒子として噴射した上で,傾斜面の端部から離れた流動方向下流側の外部衝突点(A)において衝突させてさらに微粒子化することを特徴とする,た:

液体を微粒子に噴射するノズルである。
(別紙)
イ号製品説明書(被告)
1
製品名「RJシリーズのツインジェットノズル」

2
構成

イ号製品は,次の構成からなる。
①気液体を中心側へ集束するようにガイドする傾斜面1を有し,この傾斜面1を流動する気液体を,傾斜面1の端部から離れた流動方向下流側の外部衝突点Aで衝突させて空気中に微粒子として噴射するノズルにおいて,
②傾斜面1が,気液体の流動方向に平滑な面であって,流動方向先端側ほど縮径する円錐台形状の面からなり,
③この傾斜面1の流動方向基端側に配置され,前記外部衝突点Aに向けて気体を噴射するように円環状に形成された空気口2と,
④傾斜面1の流動方向基端側かつ空気口2の内側に形成される,液体を供給す
るための円環状の供給口3とを備え,
⑤空気口2から噴射する気体と,供給口3から供給する液体とを,ジェット流Bとして前記円錐台形状の傾斜面1でガイドして集束させ,傾斜面1の端部から離れた流動方向下流側の外部衝突点Aで衝突させて空気中に微粒子として噴射する⑥微粒子噴射ノズル

さらに前記ノズルは下記構成を具備する。
(Ⅰ)ノズルは,液体をリング状に供給する供給口3と,該供給口3に液体を供給する筒状の液体路と,気体をリング状に噴射する空気口2と,該空気口2に空気を供給する空気路と,供給口3から供給される液体および空気口2から噴射される空気を流動させる傾斜面1と,を備える
(Ⅱ)供給口3はスリット状である。
(Ⅲ)供給口3はリング状である。
(Ⅳ)供給口3は,空気口2の内側で傾斜面1の流動方向基端側に設けられている。
(Ⅴ)傾斜面1に対する供給口3の角度は鈍角である。
(Ⅵ)傾斜面1は,気液体の流動方向に平滑であり,かつ,流動方向先端側ほど縮径する円錐台形状である。
(Ⅶ)空気口2は,気液体が傾斜面1にガイドされて集束する方向へ向かって開口されている。
(Ⅷ)空気路に分配羽根4を配設しており,空気路内の空気は,該分配羽根4に
よって均一に分配されて流動方向に直線状に空気口2から噴射される。
3
図面
(別紙)
ハ号製品説明書(被告)
1
製品名「TJシリーズのツインジェットノズル」

2
構成

ハ号製品は,次の構成からなる。


気液体を集束するようにガイドする傾斜面1を有し,この傾斜面1を流
動する気液体を,傾斜面1の端部から離れた流動方向下流側の外部衝突点Aで衝突させて空気中に微粒子として噴射するノズルにおいて,


傾斜面1が,気液体の流動方向に平滑な面であって,流動方向先端側
ほど接近するように一対設けられ,


各傾斜面1の流動方向基端側に配置され,前記外部衝突点Aに向けて気
体を噴射するように形成された空気口2と,

各傾斜面1の流動方向基端側かつ空気口2の内側に形成される,液体を
供給するための供給口3とを備え,


空気口2から噴射する気体と,供給口3から供給する液体とを,ジェッ
ト流Bとして各傾斜面1でガイドして集束させ,傾斜面1の端部から離れた流動方向下流側の外部衝突点Aで衝突させて空気中に微粒子として噴射する⑥

微粒子噴射ノズル

さらに前記ノズルは下記構成を具備する。
(Ⅰ)ノズルは,液体を供給する供給口3と,該供給口3に液体を供給する液体路と,気体を噴射する空気口2と,該空気口2に空気を供給する空気路と,供給口3から供給される液体および空気口2から噴射される空気を流動させる傾斜面1と,を備える
(Ⅱ)供給口3はスリット状である。
(Ⅲ)供給口3はリング状である。
(Ⅳ)供給口3は,空気口2の内側かつ傾斜面1の流動方向基端側に設けられている。
(Ⅴ)傾斜面1に対する供給口3の角度は鈍角である。
(Ⅵ)傾斜面1は,気液体の流動方向に平滑であり,流動方向先端側ほど接近するように一対設けられている。
(Ⅶ)空気口2は,気液体が各傾斜面1にガイドされて集束する方向へ向かって開口されている。

3
図面
(別紙)
原告による実験結果1
表A

イ号製品の噴霧条件と結果

No.
D1A
D2A
D3A
D1N

表B

衝突あり
衝突あり
衝突あり
衝突なし

D1Nc1

総液量
g/min5025

気液比
L/L44003200

D10
μm
2.74
3.23
2.50
2.59

D50
μm
8.29
6.50
4.97
8.22

D90ザウター平均径
μm
μm
15.87
5.84
11.62
5.56
9.05
4.32
19.08
5.75

圧縮空気

1次圧力
流量
噴霧水量総液量
MPa
L/min
g/min
g/min
0.6925
気液比
L/L
D10
μm
2.44

結果
D50
D90ザウター平均径
μm
μm
μm
8.3318.84
5.58

気液比
L/L6429
D10
μm
3.39
3.47
3.15

結果
D50
D90ザウター平均径
μm
μm
μm
8.6415.55
6.52
6.6611.17
5.80
5.81
9.88
5.17

気液比
L/L4286
D10
μm
2.94
3.58
3.59

結果
D50
D90ザウター平均径
μm
μm
μm
11.2219.49
7.08
9.5417.15
7.01
7.0211.99
6.07

気液比
L/L4429
D10
μm
2.94
3.56
3.53

結果
D50
D90ザウター平均径
μm
μm
μm
11.2219.49
7.08
8.7015.48
6.69
6.8411.59
5.94

圧縮空気

1次圧力
流量
噴霧水量総液量
MPa
L/min
g/min
g/min
0.6970.6970.697
イ号製品の第3補正後の噴霧条件と結果

D1Nc3
D2Nc3
D3Nc3

条件
衝突なし
衝突なし
衝突なし

圧縮空気

1次圧力
流量
噴霧水量総液量
MPa
L/min
g/min
g/min
0.6970.6970.697
イ号製品の第4補正後の噴霧条件と結果

No.
D1Nc3
D2Nc4
D3Nc4

条件
衝突なし
衝突なし
衝突なし

圧縮空気

1次圧力
流量
噴霧水量総液量
MPa
L/min
g/min
g/min
0.6970.6970.697
イ号製品の衝突なしでの空気流量変化に対する液滴径比較

No.
D1Nc3
D2Nc3
D2Nc4
D1Nc2
D3Nc3
D3Nc4
D2Nc2
D3Nc2

条件
衝突なし
衝突なし
衝突なし

No.

表F

流量
噴霧水量
L/min
g/min50505025

イ号製品の第2補正後の噴霧条件と結果

D1Nc2
D2Nc2
D3Nc2

表E

条件
衝突なし

No.

表D

1次圧力
MPa
0.69
0.69
0.69
0.69

イ号製品の第1補正後の噴霧条件と結果

No.

表C

条件

条件
衝突なし
衝突なし
衝突なし
衝突なし
衝突なし
衝突なし
衝突なし
衝突なし

圧縮空気

1次圧力
流量
噴霧水量総液量
MPa
L/min
g/min
g/min
0.6970.6970.6970.6970.6970.6970.6970.697(液出口開口率流量7g/min)
気液比
L/L4286457162869000

D10
μm
2.94
3.58
3.56
3.39
3.59
3.53
3.47
3.15

結果
D50
D90ザウター平均径
μm
μm
μm
11.2219.49
7.08
9.5417.15
7.01
8.7015.48
6.69
8.6415.55
6.52
7.0211.99
6.07
6.8411.59
5.94
6.6611.17
5.80
5.81
9.88
5.17

(別紙)
原告による実験結果2

表G

イ号製品で5μm以下の粒径が得られるかの確認試験における噴霧条件と結果
D3A'
D3Amin

条件

衝突あり
衝突あり

1次圧力

圧縮空気
流量1

流量2

MPa

No.

L/min

L/min

0.69
0.69
326

N/A
N/A


噴霧水量
液量2
気液比
g/min
g/min
L/L
(ml/min)(ml/min)N/A10
N/AD50

μm
2.69
1.92

結果
D90

μm

D10

μm

5.22
4.00

9.42
8.19

ザウター平均径

μm
4.57
3.47

(別紙)
被告による実験結果

噴霧空気量[NL/min
噴霧水量

ザウター

噴霧空気圧[MPa]

D50


Lot

衝突

[kg/h]

PG-1

PG-2

FI-1

FI-2

0.245

0.245

-

0.245

-

平均径
[μ
m]

[μ
m]

あり

9.92

17.09

なし

33.71

35.77

PG-1:下流側噴霧空気圧力
PG-2:上流側噴霧空気圧力
FI-1:下流側噴霧空気流量
FI-2:上流側噴霧空気流量
(別紙)
被告特許の明細書の実施例
【表1】

【表2】
【表3】

【表4】
【図1】
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