判例検索β > 平成29年(ワ)第39441号
発信者情報開示請求事件
事件番号平成29(ワ)39441
事件名発信者情報開示請求事件
裁判年月日平成30年2月23日
法廷名東京地方裁判所
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平成30年2月23日判決言渡

同日原本領収

平成29年(ワ)第39441号
口頭弁論終結日

裁判所書記官

発信者情報開示請求事件

平成30年1月12日
判決原告
株式会社MAXING

同訴訟代理人弁護士

渡邉俊提箸欣也野口耕治藤沢浩一豪哲成小鶴被告椋谷太郎優秀哲
エヌ・ティ・ティ・コミュニ
ケーションズ株式会社

同訴訟代理人弁護士

五主島丈裕文12
被告は,原告に対し,別紙2発信者情報目録記載の情報を開示せよ。
3
被告は,原告に対し,別紙3発信者情報目録記載の情報を開示せよ。
4
被告は,原告に対し,別紙1発信者情報目録記載の情報を開示せよ。
訴訟費用は被告の負担とする。

第1

実及び理由
請求
主文同旨

第2
1
事案の概要
本件は,原告が,インターネット接続サービスを提供する被告に対し,氏名不詳者が同サービスを利用してインターネット上の動画共有サイトにアップロ
ードした動画のデータは原告が著作権を有する映像作品を複製して作成したものであるから,同氏名不詳者の行為により原告の公衆送信権(著作権法23条1項)が侵害されたことは明らかであると主張して,特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律(以下「プロバイダ責任制限法」という。)4条1項に基づき,被告が保有する発信者情報の開示
を求める事案である。
2
前提事実(当事者間に争いのない事実又は文中掲記した証拠及び弁論の全趣旨により認定することができる事実)
(1)当事者
原告は,主にアダルトビデオの制作,販売を業とする株式会社である。
被告は,インターネットサービス等の電気通信事業を営む株式会社である。
(2)動画のアップロード
氏名不詳者(以下「本件各発信者」という。)は,別紙動画目録1ないし3記載の日時において,被告から同目録1ないし3記載のインターネットプ
ロトコルアドレスの割当てを受けてインターネットに接続した上,インターネット上の動画投稿サイトに動画(以下「本件各動画」という。)をアップロードし,もって不特定多数の者が再生できる状態にした。(甲1の1ないし甲3の2,弁論の全趣旨)
3
争点
(1)権利侵害の明白性
(2)開示を受けるべき正当理由の有無

第3
1
争点に関する当事者の主張
争点(1)(権利侵害の明白性)について

〔原告の主張〕
別紙原告作品目録記載1ないし3の各映像作品(以下「原告各作品」とい
う。)は,原告が制作,販売しているものであり,その著作権は原告に帰属しているところ,本件各動画はいずれも原告各作品の一部分を抜き出したものである。
そして,本件各発信者は,原告に無断で本件各動画を動画投稿サイトにアップロードしたものであり,原告の公衆送信権を侵害したことは明らかである。
〔被告の主張〕
原告各作品の著作権者が原告であること,及び,本件各動画がいずれも原告各作品の一部分を抜き出したものであることは不知。権利侵害の明白性が認められることについては否認ないし争う。
被告が別紙動画目録1ないし3の送信に係るインターネットサービス利用契
約の契約者に対して意見照会をしたところ,当該契約者は本件各動画を送信した事実を認めていなかったのであって,当該契約者が本件各発信者であるとは認められない。
2
争点(2)(開示を受けるべき正当理由の有無)について

〔原告の主張〕
原告は本件各発信者に対して不法行為に基づく損害賠償等の請求をする予定であるが,この権利を行使するためには,被告が保有する本件各発信者の住所,氏名等の情報の開示を受けることが必須である。
〔被告の主張〕
否認ないし争う。

第4
1
当裁判所の判断
争点(1)(権利侵害の明白性)について
(1)関係各証拠によれば,原告の管理するウェブサイトにおいて原告各作品に係る動画が販売されており(甲7の1ないし3),また,原告各作品のDV
D媒体のパッケージにはいずれも原告の名称及び登録商標が販売元として通常の方法により表示されているのであって(甲8の1ないし3,甲9),こ
れに弁論の全趣旨を併せて考慮すれば,原告各作品の著作権者は原告であると認められる。
また,原告代理人弁護士作成の各報告書(甲4ないし6)によれば,本件各動画はいずれも原告各作品の一部分を抜き出したものであると認められる。そして,本件各発信者は本件各動画を動画投稿サイトにアップロードしたものであるところ,この点につき不法行為等の成立を阻却する事由をうかがわせるような事情は見当たらない。
したがって,本件各発信者の上記行為によって原告の著作権(公衆送信権)が侵害されたことは明らかというべきである。

(2)この点に関して,被告は,別紙動画目録1ないし3の送信に係るインターネットサービス利用契約の契約者に対して意見照会をしたところ,当該契約者は本件各動画を送信した事実を認めていなかったのであって,当該契約者が本件各発信者であるとは認められない旨主張する。
しかし,当該契約者の回答書(乙1)によれば,当該契約者は送信の事実
を積極的に否認することなく,単に「不明」と回答しているにすぎない上,「提示された賠償金に対し,支払い能力がない」〔判決注:原文ママ〕とも記載しており,むしろ,本件各動画か否かはともかく,何らかの動画を違法にアップロードしたこと自体は自認しているようにもうかがわれる。被告は,当該契約者が本件各発信者ではないことの根拠として,①契約者
が不特定多数の第三者に同一のインターネット回線契約を使用させている,②法人が契約者である場合にその従業員が発信者となる,③個人が契約者である場合に同居している者が発信者となる,などといった事情が一般に認められ得る旨指摘するが,そのような事情が一般的に認められるということはできない。かえって,インターネット上の動画共有サイトにアップロードさ
れた動画については,当該動画の送信に係るインターネットサービス利用契約の契約者が行ったものと推認するのが相当であるところ,本件において同
推認を覆すに足りる証拠は存在しない。
したがって,被告の上記主張は採用することができない。
2
争点(2)(開示を受けるべき正当理由の有無)について
上記1によれば,原告は本件各発信者に対して著作権(公衆送信権)侵害を理由とする不法行為に基づく損害賠償請求権等を有するところ,その行使のた
めには,本件各発信者の住所,氏名等の開示が必要であるものと認められる。したがって,原告には被告から上記開示を受けるべき正当な理由があるものということができる。
3
結論
よって,本訴請求はいずれも理由があるからこれを認容することとし,主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第40部

裁判長裁判官

佐藤文
裁判官

瀬達
裁判官

孝遠山敦士
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