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特許権侵害差止等請求事件 特許権 民事訴訟
事件番号平成29(ワ)780
事件名特許権侵害差止等請求事件
裁判年月日平成30年1月30日
法廷名大阪地方裁判所
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平成30年1月30日判決言渡
平成29年(ワ)第780号
口頭弁論終結日

同日原本受領

裁判所書記官

特許権侵害差止等請求事件

平成29年11月21日
判決原告
P1

同訴訟代理人弁護士

平野惠稔同古庄俊哉同
手代木

啓被告
株式会社エヌ・ティ・ティ・データ

同訴訟代理人弁護士

髙梨義
同補佐人弁理士

伊藤
健太郎

被告
株式会社東京スター銀行

被告
株式会社百五銀行

被本同根浩告
株式会社秋田銀行

被告
株式会社大分銀行

幸被告
株式会社東日本銀行

被告
株式会社筑邦銀行

被告京被告
長野県信用組合

都信用金庫
上記8名訴訟代理人弁護士

服部誠中村閑同同同片大西
ひとみ

上記被告9名補助参加人

バスコ


データ

インターナショナル
フト

ミット

英二
セキュリティ
ゲゼルシャ

ベシュレンクテル

ハフツング

同訴訟代理人弁護士

萩尾保繁同山口健司同神
恒太郎

同関口尚久同伊藤隆大
同補佐人弁理士

南山知広同石井上浩二主文1
原告の請求をいずれも棄却する。

2
訴訟費用及び参加に要した費用は原告の負担とする

第1
1実及び理由
請求
被告株式会社エヌ・ティ・ティ・データは,別紙物件目録記載1の二次元コ
ードによるトランザクション認証機能を実現するソフトウェアを提供し,提供の申出をしてはならない。
2
被告株式会社東京スター銀行,被告株式会社百五銀行,被告株式会社秋田銀
行,被告株式会社大分銀行,被告株式会社東日本銀行,被告株式会社筑邦銀行,被告京都信用金庫,被告長野県信用組合は,別紙物件目録記載2の二次元コードを生成して,インターネットバンキング利用者の端末上に送信し,同端末上の取引画面に表示させてはならない。
3
被告株式会社エヌ・ティ・ティ・データは,原告に対し,1200万円及び
これに対する平成29年2月9日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
4
被告株式会社東京スター銀行,被告株式会社百五銀行,被告株式会社秋田銀
行,被告株式会社大分銀行,被告株式会社東日本銀行,被告株式会社筑邦銀行,被告京都信用金庫,被告長野県信用組合は,原告に対し,それぞれ120万円及びこれに対する平成29年11月22日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

第2
1
事案の概要等
事案の概要

本件は,発明の名称を「二次元コード,ステルスコード,情報コードの読み取り装置及びステルスコードの読み取り装置」とする後記本件特許権を有する原告が,被告エヌ・ティ・ティ・データ(以下「被告NTTデータ」という。)がその余の被告ら(以下「被告金融機関ら」という。)に対して別紙物件目録記載1の二次元コードによるトランザクション認証機能(以下「本件認証機能」という。)を実現するソフトウェアを提供し,
被告金融機関らが同ソフトウェアを利用等する行為につき,
後記本件特許権の侵害(被告NTTデータについては予備的に間接侵害)を主張し
て,被告NTTデータに対し,①本件特許権に基づき,本件認証機能を実現するソフトウェアの提供,
提供の申出の差止め,
②不法行為に基づく損害賠償請求として,
損害金2400万円のうちの一部である1200万円及びこれに対する平成29年2月9日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求め,被告金融機関らに対し,①本件特許権に基づき,同二次
元コードを生成して,利用者の端末に送信し,同端末上の取引画面に表示させる行為(同二次元コードの生産行為)の差止め,並びに②不法行為に基づく損害賠償請求として,損害金各240万円の一部である120万円及びこれに対する平成29年11月22日(訴えの変更申立書送達の日の翌日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。

2
前提事実(当事者間に争いのない事実又は後掲の各証拠及び弁論の全趣旨に
より容易に認められる事実)
(1)当事者

原告は,後記本件特許権の特許権者であり,マイクロインテレクス株式会社
を起業し,同社の代表取締役として,光学情報カラーコードの高度化とインフラの普及,また,ハイテクシューズの研究開発を行っている。

被告NTTデータは,インターネット,ケーブルテレビ,通信衛星等のネッ
トワークを利用した情報処理,情報仲介及び情報提供業務並びに商取引及び決済処理業務等を業とする株式会社であり,インターネットバンキング機能提供サービスである「AnserBizSOL」を金融機関向けに提供している(甲3)。ウ
被告株式会社東京スター銀行(以下「被告東京スター銀行」という。),被
告株式会社百五銀行(以下「被告百五銀行」という。),被告株式会社秋田銀行(以下「被告秋田銀行」という。),被告株式会社大分銀行(以下「被告大分銀行」という。),被告株式会社東日本銀行(以下「被告東日本銀行」という。)及び被告株式会社筑邦銀行(以下「被告筑邦銀行」という。)は,いずれも銀行法に基づく銀行業を行う株式会社であり,
被告京都信用金庫は,
信用金庫法に基づく信用金庫,

被告長野県信用組合は,いずれも中小企業等協同組合法及び協同組合による金融事業に関する法律に基づく信用組合であり,被告NTTデータからインターネットバンキング機能提供サービスである「AnserBizSOL」の提供を受けている。エ
被告ら補助参加人

被告ら補助参加人(以下「補助参加人」という。)は,被告NTTデータに対して,後記本件認証機能に用いられている二次元コード読み取り機能付きハードウェアトークン及びソフトウェア等を提供している。
(2)本件特許権

原告は,以下の特許(以下「本件特許」という。)に係る特許権者である(甲
1,甲2。以下「本件特許権」といい。その明細書を「本件明細書」といい,本件特許の請求項1にかかる発明を「本件発明」という。)。
特許番号

特許第3910705号

発明の名称

二次元コード,ステルスコード,情報コードの読み取り装置及び
ステルスコードの読み取り装置

登録日
平成19年2月2日

出願番号

特願平9-328040

出願日

平成9年11月28日

公開番号

特開平11-161757

公開日

平成11年6月18日

特許請求の範囲
【請求項1】
反射又は放射の波長特性が異なる3種以上の表示領域を二次元的な配列で並べて形成され,この配列における表示領域の波長特性の組み合せを情報表示の要素としたことを特徴とする二次元コード

本件発明の構成要件の分説

本件発明の構成要件を分説すると以下のとおりである。
A
反射又は放射の波長特性が異なる3種以上の表示領域を二次元的な配列で並
べて形成され,
B
この配列における表示領域の波長特性の組み合せを情報表示の要素とした
C
ことを特徴とする二次元コード

(3)被告らの行為

被告NTTデータは,利用者が,残高照会や振込等の銀行取引を,インター
ネットを通じて行うことができるインターネットバンキング機能提供サービスである「AnserBizSOL」を金融機関向けに提供している(甲3)。

被告金融機関らは,被告NTTデータから提供を受けて法人顧客向けインタ
ーネットバンキングサービスとしてAnserBizSOLを導入・利用している。被告金融機関らの法人顧客は,AnserBizSOLを通じて,被告金融機関らとインターネットを利用した取引を行うことができる。

被告NTTデータは,平成27年11月,AnserBizSOLに「二次元コードに
よるトランザクション認証機能」
(以下「本件認証機能」という。
)を導入すること
を発表し,平成28年4月,被告秋田銀行に対して,本件認証機能の提供を開始した。その後,被告NTTデータは,被告東京スター銀行,被告百五銀行,被告大分銀行,被告東日本銀行,被告京都信用金庫,被告長野県信用組合,被告筑邦銀行に
対しても,本件認証機能の提供を開始した(甲14)

(4)本件認証機能

本件認証機能は,インターネットバンキングの取引実行時に,送金先の口座
番号や送金の金額情報などを二次元コード読み取り機能付ハードウェアトークン(甲15)に表示し,利用者が目視で送金情報を確認した上で取引続行の可否を選択できるようにすることで,マルウエアの送金情報改ざんによる不正送金を未然に防止することを可能とする機能である(甲4)


AnserBizSOLによるインターネットバンキングサービスは,被告NTTデー
タのサーバ上で管理・運用されており,インターネットバンキングサービスの利用者は,被告NTTデータのサーバにアクセスすることによりサービスを利用する。このことは,同サービスを利用する被告金融機関ら全てに共通する。ウ
本件認証機能の具体的な利用の流れは,以下のとおりである(甲4)。

(ア)利用者がインターネットバンキングにおいて取引内容確認ボタンを押下後,取引内容をもとに独自の暗号化処理にて生成した二次元コードが利用者の画面上に表示される。
(イ)利用者がその二次元コードをコード読み取り機能付ハードウェアトークンで読み取ると,取引内容がハードウェアトークン上に表示される。正常な取引の場合は,利用者が入力した取引内容と一致する内容がハードウェアトークン上に表示される。他方,改ざんされた取引の場合は,利用者が入力した取引内容とは異なる内
容がハードウェアトークン上に表示され,かかる表示により,利用者は取引内容の改ざんを認識することができる。
(ウ)利用者が,トークン上に表示された内容を目視で確認後,パソコン上で取引の確定又は中止を選択できる。利用者が「取引可」を選択した場合,ハードウェアトークン上に表示されるワンタイムパスワードをパソコン画面に入力することで送
金処理を実行することができる。
(5)本件認証機能において利用されている二次元コードの説明

本件認証機能においては,利用者が実行しようとしている取引内容が改ざんされていないかどうかをハードウェアトークンで確認するために,当該取引内容を暗号化した二次元コード(以下「本件コード」という。
)が利用されている。本件コード
は,別紙物件目録記載2の例に示すような赤色,青色,緑色及び白色の点(セル)で構成されたカラーコードである。
3
争点

(1)争点1(本件コードは本件発明の技術的範囲に属するか。

(原告の主張)

本件コードの構成

本件コードは,以下の構成を有する。
a
赤色,青色,緑色及び白色のセルを水平方向及び垂直方向の配列で並べて形
成され,
b
この配列における赤色,青色,緑色及び白色のセルの色の組み合わせをイン
ターネットバンキングにおいて実行される取引内容にかかる情報表示の要素としたc
二次元コード


本件発明と本件コードの対比

(ア)構成要件A
本件コードの「赤色,青色,緑色及び白色のセル」は,構成要件Aの「反射又は放射の波長特性が異なる3種以上の表示領域」
に相当する。
そして,
本件コードは,
かかる4色のセルを水平方向及び垂直方向に配列して形成されており,かかる配列は,構成要件Aの「二次元的な配列」に相当する。
したがって,本件コードは,本件発明の構成要件Aを充足する。
(イ)構成要件B
本件コードは,赤色,青色,緑色及び白色のセルの色の組み合わせでインターネ
ットバンキングにおいて実行される取引内容に係る情報を表示するものであり,構成要件Bの「この配列における表示領域の波長特性の組み合わせを情報表示の要素
とした」を充足する。
(ウ)構成要件C
本件コードは二次元コードであるから,構成要件Cを充足する。

補助参加人の主張について

補助参加人は,構成要件Cの「二次元コード」は「印刷された二次元コード」を意味すると主張する。
しかし,本件発明の特許請求の範囲の記載には,本件発明に係る二次元コードが「印刷された」ものであることは一切記載されておらず,むしろ,本件発明に係る二次元コードが「放射」型,すなわち,ディスプレイ等の光を放出する表示媒体に
表示するものとしても構成できることが明記されている。また,本件明細書の本件発明の課題に関する記載を参酌しても,
本件発明が解決しようとする上記各課題は,
必ずしも印刷された情報コードに限られるものではなく,ディスプレイ等に表示された情報コードにおいても当てはまるものであるから,構成要件Cの「二次元コード」を「印刷された」ものと限定的に解釈することはできない。

したがって,構成要件Cの「二次元コード」に関する補助参加人の主張は失当であるから,その主張に係る構成要件Cの解釈を前提として構成要件Cの非充足はいえない。
(被告らの主張)
原告の主張は争う。

(補助参加人の主張)
本件明細書の従来の技術を記載する段落【0002】には,バーコード等の情報コードが印刷可能な情報表示手段であることが記載され,発明の課題を記載する段落【0005】【0006】には,従来技術の問題点として,印刷されたバーコー,
ドの情報量不足に起因する表示スペースの大型化等の問題が記載されている。そし
て,かかる従来技術の問題を受けて,本件発明の課題について,段落【0009】には,表示パターンを変えなくても表示できる情報量を大幅に増大して,上記問題
を解決できる情報コードを提供することを目的とすると記載されているから,これらの記載からすれば,本件発明は,印刷されたバーコード等の情報コードの表示情報量の不足という問題を解決することを課題する発明であると解される。さらに,構成要件Cの前提となる構成要件Aの,(反射又は)放射の波長特性が「
異なる」との構成の意義について,本件明細書の段落【0011】には,情報コードをステルスコードとして形成した場合に,その表示領域に印刷された蛍光体の放射波長が異なることとして,表示領域に印刷された蛍光体の放射波長が異なることを意味すると明記されているが,ステルスコードが印刷されたものであることは,本件明細書の段落【0050】及び段落【0051】にも記載されている。
したがって,これらの本件明細書の記載からすれば,構成要件Cの「二次元コード」は,あくまでも,
「印刷された二次元コード」を意味するものと限定して解釈さ
れなければならない。
そうすると,本件コードは,利用者端末上に生成・表示されるものであり,印刷された二次元コードではないから,構成要件Cを充足しないというべきである。
(2)争点2(被告らの本件特許権の直接侵害行為の成否)
(主位的主張)
(原告の主張)

被告金融機関らの本件特許権侵害行為

本件コードは本件発明の技術的範囲に属しているところ,
被告金融機関らは,
各々
のインターネットバンキングサービスの利用者がインターネット取引を実行する際に,本件コードを生成して,これを利用者の端末へ送信し,利用者の端末上の取引画面に表示させている。
かかる行為は,本件発明の技術的範囲に属する本件コードを新たに作り出す行為として「生産」
(特許法2条3項1号)に該当し,本件特許権の侵害行為に当たる。イ
被告NTTデータの本件特許権侵害行為

本件認証機能に関する情報処理は被告NTTデータのサーバ上で実行されており,被告NTTデータのサーバが利用者端末に送信したプログラムが利用者端末におい
て本件コードを自動的に生成しているのであるから,被告NTTデータも,本件コードの生成,表示行為(本件発明に係る二次元コードの生産行為)の主体と評価することができる。なお,被告NTTデータは,本件コードを利用者端末上で生成して同端末上に表示するプログラムを送信するサーバの所有・管理の観点から本件コードを生産していると評価できるのであり,被告金融機関らが本件認証機能によるトランザクション認証サービス(以下「本件認証サービス」という。)の提供者であ
るという観点から本件コードの生産を行っていると評価することと両立する。したがって,被告NTTデータも本件特許権の直接侵害行為の主体である。ウ共同直接侵害

上記アの被告金融機関らの行為と上記イの被告NTTデータの行為を総合すれば,本件コードの生産行為は被告金融機関らと被告NTTデータにより共同で行われているということができる。
そして,
被告金融機関らと被告NTTデータとの間には,
共同遂行の意思が認められることは明らかである。
したがって,被告金融機関らと被告NTTデータは,本件コードの生産行為につ
いて主観的にも客観的にも共同しているから,本件発明の共同実施主体というべきであり,被告金融機関らと被告NTTデータの共同行為は,本件特許権の共同直接侵害行為と評価することができる。

被告らの主張について

(ア)被告らは,利用者が本件コードの生成行為の主体である旨主張するが,本件認証機能の情報処理プロセスにおいて利用者が関与しているのは,取引内容の入力のみである。本件コードが最終的に生成された結果が表示される場所が利用者端末であるにすぎないから,被告らの主張は失当である。
(イ)また,被告金融機関らは,利用者の端末に本件コードを表示するためのプログラムを送信しているのは被告NTTデータであり,AnserBizSOLのサービスに関
する情報処理は,本件認証機能に関するものを含めて全て,被告NTTデータのサーバ上で実行されるから,被告金融機関らは本件コードの生産行為を行っていない
旨主張するが,本件認証サービスを利用者に提供しているのは,被告金融機関らであって,被告NTTデータではない。本件認証サービスでは,サービスの提供主体が本件コードを生成して利用者の端末上に表示し,利用者がこれを認証に利用することとなっている。本件認証サービスの主体が被告金融機関らであることからすると,本件認証サービスに関する情報処理が被告NTTデータのサーバ上で実行されるという事情は,被告金融機関らが,被告NTTデータの所有又は管理するプラットフォームを用いて本件コードを生成して利用者の端末上に表示することを含む本件認証サービスを利用者に提供していることを示すにすぎず,被告金融機関らが本件コードの生産行為を行っているとの評価は妨げられない。

(被告らの主張)
本件コードは,表示された状態になって初めて,生成されたと言い得るものであるところ,本件コードが生成されるのは,利用者(エンドユーザー)の端末上であるから,被告らはいずれも,本件コードを生成,すなわち生産しているとはいえない。

また,上記の点を措くとしても,被告NTTデータも被告金融機関らもが本件コードの生成主体であるとの主張は,一方当事者が生成した本件コードを更に他方当事者も生成するという状況をいうことになるが,そのようなことは想定できず,明らかに事実として矛盾しており失当である。
被告NTTデータはAnserBizSOLのシステムを提供し,被告金融機関らは同シス
テムを利用してエンドユーザーにインターネットバンキングサービスを提供しているのみであって,本件コードを両者で共同して「生産」などしていると評価される関係にない。
(被告金融機関らの主張)
「本件コード」とは,
「赤色,青色,緑色及び白色の点(セル)で構成されたカラ

ーコード」を意味するところ,本件認証機能の実現に際して,このようなカラーコード自体が生成され,利用者の端末に送信されることはない。

仮にこの点を措くとしても,利用者の端末に本件コードを表示するためのプログラムを送信しているのは,被告NTTデータであって被告金融機関らではない。すなわち,被告NTTデータは,被告金融機関らに対し,インターネットバンキングサービスである「AnserBizSOL」を提供しているが,当該サービスに関する情報処理は,本件認証機能に関するものを含めて全て,被告金融機関らの利用者の端末と被告NTTデータのサーバとの通信に基づいて,被告NTTデータのサーバ上で実行されるから,被告金融機関らが,利用者の端末に本件コードを表示するためのプログラムを送信することはない。
したがって,この点でも被告金融機関らによる本件特許権の直接侵害行為は存在
しないといえる。
(3)争点3(被告NTTデータの間接侵害行為の成否)
(予備的主張)
(原告の主張)

被告NTTデータによる間接侵害

被告NTTデータが直接侵害行為を行っていないとすれば,以下のとおり,被告NTTデータは特許法101条1項に該当する間接侵害行為を行っているといえる。(ア)「物の発明」
本件発明は,
「物の発明」である。
(イ)「その物の生産にのみ用いる物」
本件コードを生成して利用者の端末上の取引画面に表示させる行為は,本件発明
の技術的範囲に属する本件コードの「生産」に当たるが,かかる生産行為は本件認証機能を実現するソフトウェアによってなされている。
そして,利用者が,本件認証機能により取引を行う際は,本件発明の技術的範囲に属する本件コードが必然的に生成,表示されるから,本件認証機能を実現するソフトウェアは,本件コードを「生産」する用途にのみ用いられる。すなわち,本件
認証機能を実現するソフトウェアは,当該用途以外に,社会通念上,経済的,商業的又は実用的な他の用途を有しないことは明らかであり,本件コード(物)の生産
「にのみ用いる物」に該当する。
(ウ)「業として」「譲渡等・・・譲渡等の申出をする行為」

被告NTTデータが,平成28年4月以降,業として,AnserBizSOLにおける機能として,本件認証機能を実現するソフトウェアを被告金融機関らに譲渡等し,被告金融機関らを含む金融機関らに対して譲渡等の申出をしていることは明らかである。
(エ)本件特許権の直接侵害行為が存在すること
被告金融機関らが本件コードを生成し,
利用者の端末に表示させる行為は,生産」

(特許法2条3項1号)に該当するものであるから,被告金融機関らによる直接侵
害行為が存在する。仮に,利用者が本件コードの生成行為の主体であるとしても,AnserBizSOLは,被告金融機関らの法人顧客向けのインターネットバンキングサービスシステムであり,その利用者は株式会社等の法人である。かかる利用者が本件コードを用いてインターネットバンキングにおける取引認証を行っているという,本件コードを
「使用」
する行為は,
業として,
本件発明を実施する行為となるから,

利用者による直接侵害行為が存在するといえる。
(オ)小括
以上より,被告NTTデータが,本件認証機能を実現するソフトウェアの譲渡等及び譲渡等の申出をする行為は,特許法101条1号所定の要件を充足し,本件特許権の間接侵害行為に該当する。


被告NTTデータの主張について

(ア)被告NTTデータは,
「本件認証機能を実現するソフトウェア」
に本件コード
を表示するためのプログラム以外のプログラムが含まれていると主張するが,利用者が本件認証機能により取引を行う際には,必ず本件コードが生成されるのであるから
(本件コードなくして本件認証機能は機能し得ない。,

「本件認証機能を実現す
るソフトウェア」
には,
本件発明を実施しない用途
(本件コードを生成しない用途)
はなく,
「その物の生産にのみ用いる物」に該当することは明らかである。
(イ)被告NTTデータは,本件コードを表示するためのプログラムが被告金融機関らに送信されていない旨主張するが,被告金融機関らが「本件認証機能を実現するソフトウェア」を含む被告NTTデータのプラットフォームを用いていることは明らかであるから,被告金融機関らに対して「本件認証機能を実現するソフトウェア」の譲渡等(譲渡,貸渡し)
,譲渡等の申出がなされているというべきである。
(被告NTTデータの主張)
ア原告が主張する「本件認証機能を実現するソフトウェア」には,認証機能全体を実現するためのプログラム等が含まれるところ,そのようなプログラム等には,本件コードを表示するためのプログラム以外のプログラムも含まれるから,原告が
主張する「本件認証機能を実現するソフトウェア」が,本件コードの生産「にのみ用いられるもの」であるなどとは到底言えない。
したがって,原告の主張は失当である。

本件コードを表示するためのプログラムは,
被告NTTデータのサーバから,

直接,被告金融機関らの利用者の端末に対して送信されるのであるから,被告NTTデータは被告金融機関らに対し,
かかるプログラムを送信しておらず,
「本件認証
機能を実現するソフトウェア」の譲渡等又は譲渡等の申出などしていない。また,かかるプログラムは,被告NTTデータのサーバ上で生成されるのであるから,被告NTTデータは被告金融機関らに対し,かかるプログラムを生成するためのソフトウェアについても,譲渡等又は譲渡等の申出をしていない。

したがって,原告の上記主張はもとより誤りである。

また本件コードは,利用者の端末において生成されるものであるが,利用者
による本件コードの生成は,業としての実施行為に該当せず,本件特許権に対する直接侵害行為が存在しないから,被告NTTデータに間接侵害が成立する余地はない。
(4)争点4(乙1発明に基づく新規性欠如)
(被告らの主張)

本件発明は,本件特許の出願日(平成9年11月28日)より前である平成5年9月10日に頒布された公開特許公報である特開平5-233898号公報(乙1。
以下「乙1公報」という。)に記載された発明(以下「乙1発明」という。)であるから,特許法29条1項3号の規定により特許を受けることができないものである。したがって,本件特許は,同法123条1項2号に該当し,無効とされるべきである。

乙1発明の構成

(ア)乙1公報の記載
乙1公報には,以下の記載がある。
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は,カルラコードなどマーク状に情報が記録された光学式カードおよびその読取装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】カルラコードは,図4に示すように,携帯用光学式カード1などの
表面の所定領域を白地あるいはこれに近い色に形成した情報記録領域2を,縦方向に等間隔で複数の単位情報記録領域2-1,2-2,2-3,…,2-nに区分けするとともに,これら単位情報記録領域2-1,2-2,2-3,…,2-nをそれぞれ2×2の四つの単位領域a,b,c,dに区分けし,単位領域a,b,c,dのうちの任意の領域に光の反射率の低い黒色のマークMK(マーク有り)を付け
あるいは黒色マークMKを付けない白色部(マーク無し)を設ける,これらの組合せでデータの記録または識別を行うものである。
【0003】カルラコードの各単位情報記録領域2-1,2-2,2-3,…,2-nにおける情報量を考察すると,隣接する四つの単位領域a,b,c,d毎に「マーク無し」,「マーク有り」の二つの状態が存在するため,24=16種類の情報
の記録が可能である。
【0007】

【発明が解決しようとする課題】しかしながら,従来のカルラコードは,各単位情報記録領域2-1~2-nの一の単位領域に対しては,黒色の一種類のマークMKしか記録せず,読取装置もこれに応じて一種類の光によりマークMKがあるか否かを検出するように構成しているため,記録密度に制約があり,多くの情報を記録する場合などは,情報記録領域2を拡大しなければならない。これでは,携帯用のカードのように大きさに制約があるものに対してカルラコードで情報を記録する場合,記録情報にも制約を受け,光学式カードの汎用性にも問題を生じてしまう。【0008】以上の問題点を解決するため,マークを多色にして同一光源で照射して情報記録領域2からの反射光量の中間値で識別することも考えられるが,信頼性,

再現性に乏しく現実的でない。また,実用化しようとすると,マークの均一性,読取装置に厳しい条件を課すこととなり,現実的ではない。
【0009】本発明は,かかる事情に鑑みてなされたものであり,その目的は,限られた広さの中で実質的に記録密度を高めた光学式カードおよびその記録情報を高い信頼性かつ高い再現性を維持し,かつ容易に読み取れる読取装置を提供すること
にある。
【0010】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため,本発明では,記録面に所定の着色領域が形成され,この領域に照射された光の反射光により記録情報の内容が判別される光学式カードにおいて,上記領域を,一の波長の光に対する反射特性
がそれぞれ異なる少なくとも三つの反射特性のうちの一の反射特性を有するようにした。
【0015】
【作用】本発明の光学式カードによれば,単位情報記録領域に記録される情報の種類が多くなり,実質的に一単位記録領域当たりの記録密度が向上する。
【0016】本発明の光学式カードによれば,単位情報記録領域が多色化されているので,記録される情報の種類が多くなり,実質的に一単位記録領域当たりの記録
密度が向上する。
【0020】
【実施例】図1は,本発明に係る光学式カードを示す図であって,従来例を示す図2と同一構成部分は同一符号をもって表す。すなわち,1は光学式カード,2は情報記録領域,2-1,2-2,2-3,…,2-nは単位情報記録領域,a,b,c,dは単位情報記録領域2-1,2-2,2-3,…,2-nをそれぞれ2×2のマトリクス状に区分けした単位領域,MK1は第1のマーク,MK2は第2のマーク,MK3は第3のマークをそれぞれ示している。
【0021】第1のマークMK1は,たとえば赤色の塗料インクを所定の単位領域
a~dに対して印刷することにより形成されている。この赤色の第1のマークMK1は,たとえば波長6500オングストローム(Å)近傍の波長帯の光に対する反射率が高く,他の波長帯の光に対する反射率が低い,すなわち吸収率が高い。【0022】第2のマークMK2は,たとえば緑色の塗料インクを所定の単位領域a~dに対して印刷することにより形成されている。この緑色の第2のマークMK
2は,たとえば波長5200Å近傍の波長帯の光に対する反射率が高く,他の波長帯の光に対する反射率が低い,すなわち吸収率が高い。
【0023】第3のマークMK3は,たとえば赤色と緑色との混合である黄色の塗料インクを所定の単位領域a~dに対して印刷することにより形成されている。この黄色の第3のマークMK3は,たとえば波長6500Å近傍の波長帯の光および
波長5200Å近傍の波長帯の光に対して,ともに反射率が低い,すなわち両光に対して吸収率が高い。
【0024】このように,本実施例の光学式カード1は,従来のカードのようにマークMKとして黒色の一色ではなく,赤色と緑色と黄色の三色を用いて,いわゆる多色刷りのパターンを有するカードとして構成している。この構成により,一の単
位領域に対して2値の情報ではなく,3値の情報を与えることができ,隣接する四つの単位領域から構成される一単位情報記録領域に対して44=256種類の情報
の記録が可能となっている。
【0044】
【発明の効果】以上説明したように,本発明の光学式カードによれば,従来の光学式カードに比べて,
単位情報記録領域当たりの記録密度の向上を図れる利点がある。
また,本発明の読取装置によれば,上記光学式カードに記録された情報を,容易にかつ高い信頼性および高い再現性を維持し精度よく読み取ることができる。【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る光学式カードの一実施例を示す図である。
【図4】カルラコードの説明図である。

【図1】

【図4】

(イ)乙1発明の構成
前記のとおり,乙1公報には,従来の白黒のカルラコード(【図4】)では情報量が少ないこと等の課題と(段落【0007】等),その解決手段として,単位領域の着色を,例えば赤色,緑色及び黄色の3色に多色化することによって,記録可能な情報の種類を増やし,記録密度を向上させられることが記載されている(段落【0015】,【0016】,【0024】等)。すなわち,乙1公報には,単位領域の色を組み合わせることによって,情報を表すことが開示されている。
また,図1及び図4に示されるように,カルラコードは,単位領域を二次元的な配列で並べて形成されている。さらに,着色の色によって,波長特性が異なることも説明されている(段落【0021】ないし【0024】等)。
したがって,乙1発明は,以下の構成を有する。
a
3色の単位領域を二次元的な配列で並べて形成する

b
この配列における単位領域の色を組み合わせることによって,情報を表す
c
カルラコード


本件発明と乙1発明の対比

(ア)構成要件Aについて

本件発明の構成要件Aは,「反射又は放射の波長特性が異なる3種以上の表示領域を二次元的な配列で並べて形成され,」である。
他方,乙1発明の構成aは,「3色の単位領域を二次元的な配列で並べて形成する」である。
まず,乙1発明の「単位領域」は,本件発明の「表示領域」に相当する。また,乙1発明において,単位領域を3色で着色する以上,反射の波長特性が少なくとも3種存在することは明らかである。さらに,乙1発明において,単位領域を二次元的な配列で並べて形成する点は,本件発明において「表示領域を二次元的な配列で並べて形成」することと同義である。

したがって,乙1発明の構成aは,本件発明の構成要件Aに相当する。(イ)構成要件Bについて
本件発明の構成要件Bは,「この配列における表示領域の波長特性の組み合わせを情報表示の要素とした」である。
他方,乙1発明の構成bは,「この配列における単位領域の色を組み合わせるこ
とによって,情報を表す」である。
乙1発明において,単位領域の色を組み合わせることは,単位領域の波長特性を組み合わせることに他ならない。そして,乙1発明は,単位領域の色を組み合わせることによって,
情報を表すものであるから,
色の組み合わせを
「情報表示の要素」
としていることも明らかである。

したがって,乙1発明の構成bは,本件発明の構成要件Bに相当する。(ウ)構成要件Cについて
本件発明の構成要件Cは,「ことを特徴とする二次元コード。」である。他方,乙1発明の構成cは,「カルラコード」である。
乙1発明は,カルラコードに関する発明であるところ,カルラコードとは,「マ
ーク状に情報が記録された光学式カード」の一種であって,単位領域を二次元的な配列で並べて形成するものである(乙1公報の段落【0002】,図1,図4等)。
したがって,乙1発明の「カルラコード」が二次元的な情報コードであることは明らかであるから,乙1発明の構成cは,本件発明の構成要件Cに相当する。(エ)小括
以上より,本件発明の構成要件AないしCは,乙1発明の構成aないしcと同一であるから,本件発明は乙1に記載された発明であり,新規性を欠く。ウ
原告の主張について

(ア)原告は,乙1発明のコードについて,単位情報記録領域が2×2の単位領域で構成されてはいるものの,単位情報記録領域は,乙1公報の【図1】の水平方向のみにしか情報表示の要素を有しない点で,二次元コードとはいえないと主張するほか複数の単位情報記録領域が図1の水平方向に並べられ,水平方向に順次読み込まれるものであるから,このコードの情報表示の要素は乙1公報の【図1】の水平方向のみ(一次元)であるなどと主張する。
かかる原告の主張は,乙1における「単位情報記録領域」が本件発明の「情報表示の要素」に相当することを前提として,当該「単位情報記録領域」(すなわち「情

報表示の要素」)が水平方向のみに並べられているから,乙1発明のコードは一次元であるとする趣旨と思われるが,本件発明の構成要件Aは,「表示領域」が二次元的な配列で並べられることを規定しているのであって,「情報表示の要素」を二次元的に配列にすることを規定しているわけではない。そして,本件発明における「表示領域」とは,固有の反射又は放射の波長特性を有し表示する領域であって,
所定の配列で並べられ,当該配列における反射又は放射の波長特性の組み合わせによって情報を表すものをいうのであるから,乙1発明の「単位領域」がこれに該当するところ,乙1発明において「単位領域」が「二次元」に配列されているから,上記原告の主張は,本件発明に対する誤った理解に基づくものであり,その前提からして失当である。

(イ)原告は,本件発明の「コード」とは,「独立コード」すなわち本来の目的である有意なデータを示す情報(「有意情報」)に加え,コードの情報の読み取りの
起点や順序を確定するための情報(「構造情報」)が含まれるコードを意味する一方,乙1発明のようなカルラコードは,「構造情報」を有しないから,本件発明の「コード」を意味しないなどと主張する。
しかし,本件発明の特許請求の範囲の記載には,「二次元コード」が,原告が主張するような「独立コード」である旨の限定は一切なく,原告の上記主張は,特許発明の要旨について,特許請求の範囲に記載のない限定を付することに他ならないから,失当である。
また,本件明細書においても,本件発明の「二次元コード」及び「コード」を殊更に限定する趣旨の説明はまったく見当たらず,原告の上記主張は,本件明細書の
記載を参酌したとしても到底導き出すことができない。
さらに,乙1の記載内容は本件特許に係る出願日(平成9年11月28日)における当業者の技術水準を基に理解されるべきものであるところ,仮に原告が主張するように,QRコードのような「独立コード」が平成6年に開発されたのだとすれば,本件発明の新規性の有無を判断するに際して,乙1発明のコードに「独立コー
ド」が含まれることは,本件特許に係る出願日における当業者の技術水準に照らしてむしろ当然ということになるから,いずれにしても原告の主張は全く反論になっていない。
(原告の主張)

乙1発明が構成要件A及びCの「二次元」コードではないこと

(ア)本件発明に係る「二次元」コードの意義
本件発明の構成要件A及びCの「二次元」とは,一般的に,次元の数が二つであることを意味する。また,本件明細書の段落【0048】には「二次元コードは二次元に配列した表示領域(黒又は白で塗り分けられる最少表示単位)の組み合せにより情報を表示するもの」と記載されている。

そうすると,構成要件A及びCの「二次元」とは,縦(垂直)方向及び横(水平)方向の表示領域の組み合わせを情報表示の要素とすることを意味する。
(イ)乙1発明が構成要件Aの「二次元」的な配列及び構成要件Cの「二次元」コードに係る構成を有しないこと
乙1公報の【図1】においては,表示領域が水平方向のみならず,一見,垂直方向にも配列されているように見えるが,これは,単に情報の読み取り単位である,単位情報記録領域が,2×2の単位領域で構成されているからにすぎない。乙1発明のコードの単位情報記録領域は幾何学的には二次元形状であるものの,複数の単位情報記録領域で形成されるコード自体は,単位情報記録領域の垂直方向及び水平方向の表示領域の組み合わせを情報表示の要素としているものではなく,あくまで,
複数の単位情報記録領域が図1の水平方向に並べられ,水平方向に順次読み込まれ
るものである(段落【0041】)から,このコードの情報表示の要素は【図1】の水平方向のみ(一次元)である。
したがって,乙1発明は本件発明の構成要件A及びCに係る構成を有しない。イ
乙1発明が構成要件Cに係る「コード」の発明ではなく,コードが印刷され
た光学式カードとその読取装置の発明であること
(ア)本件発明の構成要件Cに係る「コード」は,それ自体で情報コードとしての独立性が担保されたコードを意味する(以下,乙1発明にいうコードと区別するため,この意味でのコードを「独立コード」ということがある。)。本件発明の特許請求の範囲には,コードの上下左右の決定に関する記載がなく,また,当該コードを読み取り方向が特定された有体物に印刷・表示してコードの上
下左右を確定するという記載もない。同様に,本件明細書の発明の詳細な説明の記載をみても,コードの上下左右の決定に関する記載や当該コードを読み取り方向が特定された有体物に印刷表示してコードの上下左右を確定するという記載もない。・
これらは,本件発明における「コード」が,構造情報を含む独立コードであることの証左である。

なお,本件特許の請求項4ないし7においては,本件発明の二次元コードの読み取り装置の内容が記載されているが,当該読み取り装置にコードの上下左右を確定
するための機能があるとの記載はない。このことからも,本件発明の二次元「コード」は独立コードであることが想定されているということができる。また,そもそも本件発明は,「構造情報」を有さないコードであるカルラコードが普及しなかったことを受けて開発されたものであり,その経緯に照らせば,本件発明にいう「二次元コード」とは,構造情報を有する独立コードを指すことは明らかである。
以上のとおり,本件発明の構成要件Cに係る「コード」は,構造情報を有する独立コードを意味する。
(イ)他方,乙1発明のコードは,乙1公報【図1】に示すとおり,連続した単位
情報記録領域2-1ないし2-nからなるものであり,単位情報記録領域の各々は「田」の字の四つの単位領域(表示領域)からなる(段落【0020】)。このように「田」の字の単位情報記録領域の連続からなる乙1発明のコードは,有意情報のみを含むものであって,構造情報は,光学式カードとその読取装置により付与され,それ自体で上下左右を識別することができない。乙1公報には,コードの構造
情報に関しては何ら記載がなく,むしろ,当該コードは,光学式カードの記録面に形成されることが前提とされていること(【請求項1】)からも明らかなとおり,光学式カードの記録面に形成されて初めて上下左右が確定し読み取りが可能となるものである。すなわち,乙1発明は,当該コード自体で情報コードとしての独立性が担保されていないものである。

このように,乙1発明は,コードを光学式カードの記録面に形成しなければ成立しない点で,あくまで「光学式カード」に印刷されることを必須の構成とする発明であって,独立コードの発明ではない。このことは,乙1発明の名称が「光学式カードおよびその読取装置」とされていることからも明らかである。したがって,乙1発明のコードは,構成要件Cに係る「コード」(独立コード)
には当たらず,乙1発明は本件発明の構成要件Cに係る構成を有しない。ウ
本件発明が新規性を有すること

以上のとおり,本件発明と乙1発明とは,少なくとも本件発明の構成要件A及びCに係る構成について相違する。
したがって,本件発明は,乙1発明と異なる発明であり,新規性を有する。(5)争点5(乙2発明に基づく新規性欠如)
(被告らの主張)
本件発明は,本件特許の出願日(平成9年11月28日)より前である平成8年10月11日を公開日とする公開特許公報である特開平8-263580号公報(乙2。以下「乙2公報」という。)に記載された発明(以下「乙2発明」という。)であるから,特許法29条1項3号の規定により特許を受けることができないもの
である。したがって,本件特許は,同法123条1項2号に該当し,無効とされるべきである。

乙2発明の構成

(ア)乙2公報の記載
乙2公報には,以下の記載がある。
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は小さなスペースに大量の情報を表示することができる識別コードマークに関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来,物を認識する識別コードマークとして「バーコード」と呼
ばれる1次元のものと,黒と白の方形図形a,bを図1に示すように架空のます目(実際には表示されない)A内に市松状にマトリックス表示した「2次元コード」が知られているが,もっとスペース効率の良い識別コードマークの出現が望まれていた。
【0003】

【発明が解決しようとする課題】そこで本発明は,小さいスペースで表示し得る情報量を飛躍的に向上することが出来る疑似3次元識別コードマーク,即ち,恰も
高さ方向にもコード表示素子を配置したと同じ情報量を表示し得る識別コードマークを得ることを課題とするものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明は,最近の画像処理技術が形状,色調,色彩をそれぞれ識別し得るようになったことによりなされたもので,第1の発明は,単位図形をマトリックス状に配置した2次元コード識別コードマークにおいて,単位図形を2種以上の色調又は色彩で表示するようにしたことを特徴とする識別コードマークである。
【0007】

【作用】第1~第3の発明によると,恰も3次元コードのように,表示し得る情報量を飛躍的に向上することができる。
【0008】
【実施例】図2は本発明の実施例1を示すもので,黒の単位図形1,1’の形状は従来の2次元コードと同じであるが,色調を2種類としたものである。なお色彩
を例えば赤,黒の2種類としても同じであるが,この構成によると,図1に示す従来の2次元コードによって表示される情報の種類が2の4乗=16種類であったものが,3の4乗=81種類と飛躍的に向上する。
【0009】図3は本発明の実施例2を示すもので,単位図形を丸2と四角3の2種類を単位図形とし,且つ2種類の色調(濃淡)又は色彩(赤と黒)としたもの
で,この場合は5の4乗=625種類の情報を表示出来る。
【0010】
【異なる実施例】以上,理解を容易にするため,単純構成の2つの実施例を例示したが,図形の種類,色彩の種類及びマトリックス状に配置する単位図形の数等を増加することにより,恰も3次元コードのように表示し得る情報量が飛躍的に増大
した識別コードマークが得られる。
【図面の簡単な説明】

【図1】従来の2次元コードの識別コードマークの一例を示す図である。【図2】本発明の実施例1を示す図である。
【図1】

【図2】

(イ)乙2発明の構成
前記のとおり,乙2公報には,従来の白黒の二次元コードよりも情報量が多いコードマークを得るという課題と(段落【0002】,【0003】),その解決手段として,単位図形の色を,例えば赤,黒及び白の3色とすることによって,二次元コードに表示し得る情報量を増大させることが記載されている。すなわち,乙2
公報には,単位図形の色を組み合わせることによって,情報を表すことが開示されている。
なお,図2は,「1」及び「1’」は黒の単位図形であって,その色調が異なる例を示した図であるが,段落【0008】において,色調を変化させる代わりに「色彩を赤,黒の2種類としても同じ」との説明があることから,「1」が黒の単位図
形であり,「1’」が赤の単位図形であると置き換えた例も開示されている。この点,上記の段落【0008】の記載において,赤,黒の2種類の色彩である旨記載されているが,
白の単位図形の存在が前提にされていることは明らかである。
すなわち,
乙2においては,
従来の二次元コードの例である図1の説明として,
「黒
と白の方形図形a,b」との説明がなされているところ(段落【0002】),図
2の「b」も白の方形図形であることは明らかであるし,段落【0008】において,図2の二次元コードの情報量を3の4乗=81種類としていることから,各単位図形において3種類の情報が読み取り可能であることが記載されているため,情
報の識別要素として,
白の単位図形の存在が前提にされていることは明らかである。
しかも,段落【0010】においては,色彩の種類をさらに増加させることも記載されている。
したがって,乙2発明は,以下の構成を有する。
a
3色以上の単位図形を二次元的な配列で並べて形成する

b
この配列における単位図形の色を組み合わせることによって,情報を表す
c
二次元コード


本件発明と乙2発明の対比

(ア)構成要件Aについて
本件発明の構成要件Aは,「反射又は放射の波長特性が異なる3種以上の表示領域を二次元的な配列で並べて形成され,」である。
他方,乙2発明の構成aは,「3色以上の単位図形を二次元的な配列で並べて形成する」である。
まず,乙2発明の「単位図形」は,本件発明の「表示領域」に相当する。また,
乙2発明においては,単位図形を3色以上の色を用いて着色するから,反射の波長特性が3種以上存在することは明らかである。さらに,乙2発明において,単位図形を二次元的な配列で並べて形成する点は,本件発明において「表示領域を二次元的な配列で並べて形成」することと同義である。
したがって,乙2発明の構成aは,本件発明の構成要件Aに相当する。
(イ)構成要件Bについて
本件発明の構成要件Bは,「この配列における表示領域の波長特性の組み合せを情報表示の要素とした」である。
他方,乙2発明の構成bは,「この配列における単位図形の色を組み合わせることによって,情報を表す」である。

乙2発明において,単位図形の色を組み合わせることは,単位図形の波長特性を組み合わせることに他ならない。そして,乙2発明は,単位図形の色を組み合わせ
ることによって,
情報を表すものであるから,
色の組み合わせを
「情報表示の要素」
としていることも明らかである。
したがって,乙2発明の構成bは,本件発明の構成要件Bに相当する。(ウ)構成要件Cについて
本件発明の構成要件Cは,「ことを特徴とする二次元コード。」である。他方,乙2発明の構成cは,「二次元コード」であるから,乙2発明の構成cは,本件発明の構成要件Cに相当する。
(エ)小括
以上より,本件発明の構成要件AないしCは,乙2発明の構成aないしcと同一
であるから,本件発明は乙2に記載された発明であり,新規性を欠く。ウ
原告の主張について

(ア)原告は,乙2発明は構成要件Cにかかる構成を有しないため,本件発明は無効理由2を有しない旨主張しており,その理由として,まず,「乙2発明はコードを構成する識別コードマークについての発明」であることを挙げている。原告の主張は,乙2発明の「識別コードマーク」は,コードではなく,コードを構成する一要素にすぎないことを主張する趣旨と思われるが,乙2公報には,原告が引用する段落【0004】を含め,「識別コードマーク」がコードを構成する一要素であるかのような記載は一切存在せず,むしろ,乙2公報においては,「識別コードマーク」という用語が,1次元の「バーコード」や「2次元コード」のよう
なコードそのものを指す用語として用いられていることは明らかであるから,乙2発明についても,3色以上の単位図形を二次元的な配列で並べたものが「識別コードマーク」に該当するものとして説明され(段落【0004】,【0008】,【0010】),乙2発明の「識別コードマーク」も,コードそのものを指していることは明らかである。したがって,「識別コードマーク」がコードを構成する一要素
であるかのような原告の上記主張は明らかに誤りである。
(イ)原告は,本件発明の構成要件Cに係る「コード」は独立コードを意味すると
ころ,
乙2発明のコードは独立コードではないと主張するが,
かかる原告の主張は,
その前提となる本件発明の理解を誤ったものであり,失当である。(原告の主張)

乙2発明が構成要件Cに係る「コード」の発明でないこと

本件発明の構成要件Cは,二次元「コード」であることを要する。乙2発明はコードを構成する識別コードマークについての発明であり(段落【0004】等),乙
2発明は構成要件Cに係る構成を有していない。
また,本件発明の構成要件Cに係る「コード」は独立コードを意味する。乙2発明のコードは,1色のみで塗り分けられる最少表示単位である単位図形を
2種類以上の色調又は色彩で表示し,これらをマトリックス状に配置したものであり(
【請求項1】,乙2明細書の【図2】のように「田」の字の四つのマスを2種類)
以上の色調又は色彩で表示したものが乙2発明の典型的な実施例となる。このように乙2発明のコードは,有意情報のみを含むものであって,構造情報を有しておらず,それ自体で上下左右を識別することができない。よって,乙2発明は,当該コ
ード自体で情報コードとしての独立性が担保されていないものである。したがって,乙2発明のコードは,構成要件Cに係る「コード」
(独立コード)に
は当たらず,乙2発明は本件発明の構成要件Cに係る構成を有しない。イ
本件発明が新規性を有すること

以上のとおり,本件発明と乙2発明とは,少なくとも本件発明の構成要件Cに係る構成について相違する。
したがって,本件発明は,乙2発明と異なる発明であり,新規性を有する。(6)争点6(丁1発明に基づく新規性欠如)
(補助参加人の主張)
本件発明は,本件特許の出願前(平成9年11月28日)より前である平成7年
7月11日に頒布された実用新案公報である実用新案登録第3013294号公報(丁1。以下「丁1公報」という。)に記載された発明(以下「丁1発明」とい
う。)であるから,特許法29条1項3号の規定により特許を受けることができないものである。
したがって,本件特許は,同法123条1項2号により,直ちに無効とされるべきである。

丁1発明について

(ア)丁1公報の記載について
丁1公報には,以下の記載がある。
【請求項1】表面の所定領域に情報をコードで印刷して記録したプリペイドカードにおいて,前記コードは4種類以上の色からの1色を有するエリアを組合せてなる集合体であることを特徴とするプリペイドカード。
【0002】
【従来の技術】
近年,表面に情報をコードで印刷して記録する印刷記録のプリペイドカードがよく提案されていた。コードとしては,黒バーと白バー(又はスペース)の組み合わ
せを一方向に並べてなるバーコードが周知である。また,黒マークと白マークを二次元的に配列し,より多くの情報を持てるようにしたものも提案されている。【0003】
【考案が解決しようとする課題】
従来のコードは,基本的に黒マークと白マークの配列により所定の情報を持つよ
うにしたものであり,黒と白からなる2値コードある。従って,占有面積の割りに少ない情報しか持てないため,カード表面の情報記録量が制限された。また,バー(又はマーク)をかなり精密に印刷する必要があり,専用の印刷装置を用いなければならない。
【0004】

本考案は,このような不都合を解消し,占有面積に比べてより多くの情報を持てるプリペイドカードを提示することを目的とする。

【0005】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために本考案では,表面の所定領域に情報をコードで印刷して記録したプリペイドカードにおいて,前記コードは4種類以上の色からの1色を有するエリアを組合せてなる集合体であることを特徴とするプリペイドカードを提供する。
【0006】
【作用】
上記本考案のプリペイドカードにおいて,情報を記録するため用いられるコード
は,4種類以上の色からの1色を有するエリアを組合せてなる集合体であり,前記一のエリアは4種類以上のパターンが出来る。従って,カード表面の所定の情報領域に,より多くの情報を持たせることができる。
【0007】
【実施例】

図1によると,本考案に係るプリペイドカードCは,表面1に,印刷情報記録領域3を形成し,この記録領域3に図2に示すコード2を用いて,情報データ20が印刷して形成された。
【0008】
図2(a)によると,コード2は方形のエリア21と22を間隔を取らず,一字
状に組合せてなるものであり,エリア21又は22は図2(b)に示すようなそれぞれ白,青,赤,黒色のエリアW,S,R,Bのいずれかである。図2(c)はコード2のパターン図であって,6種類のパターンが示されているが,実際に,コード2は4×4=16種類のパターンが出来る。したがって,同様な記録領域3に,コード2を用いて形成される情報の量は従来の黒白マーク配列コ
ード及びバーコードの情報の量より多くなる。
【0009】

【考案の効果】
以上の説明から容易に理解できるように,本考案プリペイドカードは,印刷密度は従来通りでも,情報の密度を高めることができ,より多くの情報を持たせることができる。
【図1】本考案のプリペイドカードの一実施例の説明図である。
【図2】図1に示すプリペイドカードの記録するには用いるコードの説明図である。
【図1】

【図2】

(イ)丁1発明について
丁1公報には,カード表面1上に形成され,複数行×22列,換言すれば,水平方向及び垂直方向に配列された領域から成る印刷情報記録領域3が記載されている(段落【0007】及び【図1】)。

そして,
印刷情報記録領域3を構成する各エリアには,
4種類以上の色
(例えば,
白,青,赤,黒色)からの1色が付与される(【請求項1】,段落【0005】,段落【0006】,段落【0008】,【図1】及び【図2】)。また,隣り合って配置されたエリアのうち2つが,コード2を構成する。印刷情報記録領域3は,情報データ20を形成する情報表示の要素として,コード2のエリアの色の組合せを用いている(段落【0007】及び段落【0008】)。したがって,丁1公報には,以下の丁1発明が記載されている。
丁1a:4種類以上の色からの1色を有するエリアを水平方向及び垂直方向の配列で並べて形成され,

丁1b:この配列におけるエリアの色の組み合せを情報表示の要素とした丁1c:ことを特徴とするコード。

本件発明と丁1発明との対比

(ア)構成要件Aについて
本件発明の構成要件Aは,「反射又は放射の波長特性が異なる3種以上の表示領域を二次元的な配列で並べて形成され,」である。
他方,丁1発明の構成丁1aは,「4種類以上の色からの1色を有するエリアを水平方向及び垂直方向の配列で並べて形成」されるものであるところ,丁1発明の構成丁1aの「エリア」は,情報を表示する領域であるから,本件発明の構成要件Aの「表示領域」に相当する。また,丁1発明の構成丁1a「色」は,本件発明の
構成要件Aの「反射…の波長特性」に相当する。
そうすると,丁1発明の構成丁1aの「4種類以上の色からの1色を有するエリア」は,表示領域が4種類以上の反射の波長特性で構成されるものであるから,表示領域の反射の波長特性が3種類以上ある場合に含まれるため,本件発明の構成要件Aの「反射又は放射の波長特性が異なる3種以上の表示領域」に相当する。
さらに,
丁1発明の構成丁1aは,
「水平方向及び垂直方向の配列で並べて形成」
されるものであるため,本件発明の構成要件Aの「二次元的な配列で並べて形成」
に相当する。
したがって,丁1発明の構成丁1aは,本件発明の構成要件Aと一致する。(イ)構成要件Bについて
本件発明の構成要件Bは,「この配列における表示領域の波長特性の組み合せを情報表示の要素とした」である。
他方,丁1発明の構成丁1bは,「この配列におけるエリアの色の組み合せを情報表示の要素とした」ものであるところ,上記のとおり,
「エリア」
(丁1a)は,
本件発明の構成要件Aの「表示領域」に相当する。また,丁1発明の構成丁1bの「色」は,本件発明の構成要件Bの「波長特性」に相当する。

そうすると,丁1発明の構成丁1bは,配列における表示領域の波長特性の組合せを情報表示の要素としたものであるため,本件発明の構成要件Bの「この配列における表示領域の波長特性の組み合せを情報表示の要素としたこと」に相当する。したがって,丁1発明の構成丁1bは,本件発明の構成要件Bと一致する。(ウ)構成要件Cについて

本件発明の構成要件Cは,「ことを特徴とする二次元コード。」である。他方,丁1発明の構成丁1cは,「ことを特徴とするコード。」である。本件発明における「二次元」コードとは,二次元(例えば,縦(垂直)と横(水平)
)に配列した表示領域の組み合わせにより情報を表示するものを意味するものである。

丁1公報には,カード表面上に形成され,複数行×22列,換言すれば,水平方向及び垂直方向に配列された領域から成る印刷情報記録領域に記載された情報データが記載されている(段落【0007】及び【図1】。印刷情報記録領域,さら)
には,情報データを構成する各エリアには,4種類以上の色(例えば,白,青,赤,黒色)からの1色が付与される(
【請求項1】
,段落【0005】
,段落【0006】


段落【0008】【図1】及び【図2】。印刷情報記録領域は,情報データを形成,

する情報表示の要素として,エリアの色の組合せを用いている(段落【0007】
及び段落【0008】。

これらの記載からすれば,丁1発明は,縦(垂直)と横(水平)に配列したエリア(本件発明の「表示領域」に相当する。
)の組み合わせにより情報を表示するもの
であるから,丁1発明のコード(情報データ)が,本件発明の「二次元」コードに相当することは明らかである。
また,丁1発明は,「エリア」(丁1a),すなわち,表示領域を,「水平方向及び垂直方向の配列で並べて形成」(丁1a)し,「エリア(表示領域)の色(波長特性)の組み合せを情報表示の要素」(丁1b)とした「コード」(丁1c)である。

そうすると,丁1発明の構成丁1cの「コード」は,水平方向及び垂直方向の二次元に配列した表示領域の組合せにより情報を表示するものであるから,本件発明の構成要件Cの「二次元コード」に相当する。
したがって,丁1発明の構成丁1cは,本件発明の構成要件Cと一致する。ウ
まとめ

以上のとおり,本件発明の構成要件AないしCは,丁1発明の構成丁1aないし丁1cと一致するから,本件発明は,丁1公報に記載された発明である。(原告の主張)

丁1発明が構成要件A及びCの「二次元」コードではないこと

本件発明の構成要件A及びCの「二次元」とは,縦(垂直)方向及び横(水平)方向の表示領域の組み合わせを情報表示の要素とすることを意味する。丁1発明におけるコードは,方形のエリアを間隔を取らず「一字状に」組み合わせてなるものであり(丁1公報の段落【0008】,横(水平)方向のみにしか情)
報表示の要素を有しない点で従来の技術であるバーコード等と同じ一次元のコードである。

丁1公報の【図1】によれば,表示領域が横方向(カードの短手方向)のみならず,一見,縦方向(カードの長手方向)にも配列されているように見えるが,これ
はプリペイドカードのコードを印刷するための所定領域の幅に限界があることに起因するものであり,横一列のコードを何重にも折り返し,折り畳んで配列しているにすぎない。すなわち,プリペイドカードの幅の関係で折り返されていることよって縦方向にも方形のエリアが配列されているように見えるものの,この縦方向の配列は情報を表示するものではない。丁1発明の印刷情報記録領域3の情報データ20は,一文字状に組み合わせた方形のエリア21,22の組み合わせを用いて形成されているのみであり【図1】

及び
【図2】,
)その情報表示の要素は横方向のみ
(一
次元)である。
したがって,丁1発明におけるコードは,横方向及び縦方向の表示領域の「組み
合せ」により情報を表示するものではない点で,本件発明の構成要件A「表示領域を二次元的な配列で並べて形成され」の構成を有しておらず,また,構成要件Cに係る「二次元」コードには当たらない。よって,丁1発明は本件発明の構成要件A及びCに係る構成を有しない。

丁1発明が構成要件Cに係る「コード」の発明ではなく,コードが印刷され
たプリペイドカードの発明であること
本件発明の構成要件Cに係る「コード」は独立コードを意味する。丁1発明は,プリペイドカードに関する発明であり,構造情報は,プリペイドカードの読み取り方向により特定され,この発明におけるコードは,有意情報のみを表している。丁1発明のコードは,白色,青色,赤色又は黒色のいずれかの色で塗
り分けられる最少表示単位である方形の表示領域(以下コード内の最少表示単位を「表示領域」という。
)を間隔を取らず一字状に組み合わせてなるものであり(丁1
公報の段落【0008】,当該コード自体からは上下左右を識別することができな)
い。丁1公報には,コードの構造情報に関しては何ら記載がなく,むしろ,コードがプリペイドカードの表面の所定領域に印刷して記録されることが前提とされてい
ること(
【請求項1】
)からも明らかなとおり,プリペイドカードに印刷されて初め
てコードの上下左右が確定し読み取りが可能となるものである。よって,丁1発明
は,当該コード自体で情報コードとしての独立性が担保されていないものである。このように丁1発明は,コードをプリペイドカードに印刷して初めて成立するものである点で,あくまで「プリペイドカード」に印刷されることを必須の構成とする発明であって,独立コードの発明ではない。このことは丁1発明の考案の名称が「プリペイドカード」とされていることからも明らかである。
したがって,丁1発明のコードは,構成要件Cに係る「コード」
(独立コード)に
は当たらず,丁1発明は本件発明の構成要件Cに係る構成を有しない。ウ
本件発明が新規性を有すること

以上のとおり,本件発明と丁1発明とは,少なくとも本件発明の構成要件A及びCに係る構成について相違する。
したがって,本件発明は,丁1発明と異なる発明であり,新規性を有する。(7)争点7(丁2発明に基づく新規性欠如)
(補助参加人の主張)
本件発明は,本件特許の出願前(平成9年11月28日)より前である平成5年
10月8日に日本国内において公開された公開特許公報である特開平5-258095号公報(丁2。以下「丁2公報」という。)に記載された発明(以下「丁2発明」という。)であるから,特許法29条1項3号の規定により特許を受けることができないものである。
したがって,本件特許は,同法123条1項2号により,直ちに無効とされるべ
きである。

丁2発明について

(ア)丁2公報の記載について
丁2公報には,以下の記載がある。
【0012】図1に示すように,本発明の一実施例に係る光学式カードの読み取り書き込み装置20は,カード挿入口22を有する。このカード挿入口22から,例えば図2に示すような光学式カード1が挿入される。光学式カード1は,いわゆ
るカルラコードで情報が記録される情報記録領域2を有する。情報記録領域2は,一定の読み取り方向Aに沿って,複数の単位情報記録領域2-1,2-2,2-3,…,2-nに区分けしてあり,これら単位情報記録領域2-1,2-2,2-3,…,2-nを,それぞれ例えば2×2の四つの単位領域a,b,c,dに区分けし,単位領域a,b,c,dのうちの任意の領域に光の反射率の低い黒色マーク部MBを付け,あるいは黒色マークMBを付けない白色マーク部MWを設け,これらの組合せでデータの記録または識別を行う。黒色のマーク部MBは,例えば黒色インキを用いて所定のパターンにオフセット印刷することなどで構成される。白色マーク部MWは,カード10の表面の地色で構成しても良いが,銀色インキあるい
は白色インキを用いて所定のパターンにオフセット印刷することなどで構成される。
【0013】カルラコードの各単位情報記録領域2-1,2-2,2-3,…,2-nにおける情報量を考察すると,隣接する四つの単位領域a,b,c,d毎に「黒色マーク部」,「白色マーク部」の二つの状態が存在するため,単位領域当た
り24=16ビットの情報の記録が可能である。
【0023】なお,本発明は,上述した実施例に限定されるものではなく,本発明の範囲内で種々に改変することができる。例えば,上述した実施例では,カルラコードを構成する単位領域a,b,c,dには,黒色マーク部MKおよび白色マーク部MBの二種類のマークを付するように構成したが,これに限定されず,三色以
上のマークを付するように構成することもできる。その場合には,隣接する四つの単位領域から構成される一単位情報記録領域に対して44=256種類の情報の記録が可能となる。ただし,この実施例の場合には,マークの色を判別する必要があることから,波長が相違する光を照射してその反射特性を検出するなどの工夫が必要となる。

【図2】従来例に係る光学式カードの読み取り書き込み装置の概略断面図である。

【図2】

(イ)丁2発明について
丁2公報には,光学式カード1上に形成された情報記録領域2が記載されているところ,情報記録領域2は,連続した単位情報記録領域2-1~2-nから成るものである(【図2】)。
そして,単位情報記録領域の各々は,2行×2列,換言すれば,水平方向及び垂直方向に配列された四つの単位領域a,b,c及びdからなる(段落【0012】及び段落【0013】)。

単位領域の各々は,三色以上のマークを付し,又は,何も付さないように構成することもできる(段落【0012】及び段落【0023】)。
一の単位情報記録領域は,四つの単位領域の色の組合せを情報表示の要素としている。
したがって,丁2公報には,以下の発明が記載されている。

丁2a:色が異なる4種以上の単位領域を水平方向及び垂直方向の配列で並べて形成され,
丁2b:この配列における単位領域の色の組み合せを情報表示の要素とした丁2c:ことを特徴とする単位情報記録領域。

本件発明と丁2発明との対比

(ア)構成要件Aについて

本件発明の構成要件Aは,「反射又は放射の波長特性が異なる3種以上の表示領域を二次元的な配列で並べて形成され,」である。
「二次元」とは,例えば,縦と横のように次元が2つあることを指すところ,本件明細書においては,
「二次元コードは二次元に配列した表示領域
(黒又は白で塗り
分けられる最少表示単位)
の組み合せにより情報を表示するもので,
PDF417,
カルラコード等が知られている。

(甲2公報の段落
【0048】と記載されている。

したがって,本件発明における「二次元コード」とは,二次元(例えば,縦(垂直)と横(水平)
)に配列した表示領域の組み合わせにより情報を表示するものを意味する。

丁2発明の構成丁2aは,「色が異なる4種以上の単位領域を水平方向及び垂直方向の配列で並べて形成され」るものである。
本件発明における「表示領域」とは,固有の反射又は放射の波長特性を有し表示する領域であって,所定の配列で並べられ,当該配列における反射又は放射の波長特性の組み合わせによって情報を表すものをいう
(甲2公報の段落
【0010】

【0

011】等参照)ところ,情報が表示される領域である丁2発明の「単位領域」はこれに該当する。
そして,丁2発明において「単位領域」が「二次元」に配列されていることは,原告自身「単位情報記録領域が2×2の単位領域で構成されている」と述べて,認めているとおりである。

また,丁2発明の構成丁2aの「色」は,本件発明の構成要件Aの「反射…の波長特性」に相当する。
そうすると,丁2発明の構成丁2aの「色が異なる4種以上の単位領域」は,表示領域が反射の波長特性の異なる4種類以上で構成されるものであるから,表示領域の反射の波長特性が3種類以上ある場合に含まれるため,本件発明の構成要件A
の「反射又は放射の波長特性が異なる3種以上の表示領域」に相当する。さらに,
丁2発明の構成丁2aは,
「水平方向及び垂直方向の配列で並べて形成」

されるものであるため,本件発明の構成要件Aの「二次元的な配列で並べて形成」に相当する。
したがって,丁2発明の構成丁2aは,本件発明の構成要件Aと一致する。(イ)構成要件Bについて
本件発明の構成要件Bは,「この配列における表示領域の波長特性の組み合せを情報表示の要素とした」である。
他方,丁2発明の構成丁2bは,「この配列における単位領域の色の組み合せを情報表示の要素とした」ものであるところ,上記のとおり,
「単位領域」
(丁2a)
は,本件発明の構成要件Aの「表示領域」に相当する。また,丁2発明の構成丁2
bの「色」は,本件発明の構成要件Bの「波長特性」に相当する。そうすると,丁2発明の構成丁2bは,配列における表示領域の波長特性の組合せを情報表示の要素としたものであるため,本件発明の構成要件Bの「この配列における表示領域の波長特性の組み合せを情報表示の要素としたこと」に相当する。したがって,丁2発明の構成丁2bは,本件発明の構成要件Bと一致する。
(ウ)構成要件Cについて
本件発明の構成要件Cは,「ことを特徴とする二次元コード。」である。他方,丁2発明の構成丁2cは,「ことを特徴とする単位情報記録領域。」である。
丁2公報には,単位領域ごとに三色以上のマークを付し,又は,何も付さないよ
うに構成することにより,2×2の四つの単位領域からなる1つの単位情報記録領域において,
4⁴=256種類の情報の記録が可能となることが記載されている(丁
2公報の段落【0012】及び段落【0023】並びに【図2】参照)。つまり,1つの単位情報記録領域のみに着目したとしても,縦(垂直)方向及び横(水平)方向の二次元に配列された単位領域(本件発明の「表示領域」に相当する。)の組
み合わせにより情報を表示しているから,丁2発明のコード(単位情報記録領域)が,本件発明の「二次元コード」に相当することは明らかである。
また,丁2発明は,「カルラコード」に関する発明であるところ(丁2公報の段落【0012】,【0013】,【0023】及び【図2】参照),「カルラコード」は,本件明細書において,本件発明の「二次元コード」の例として明示されている(本件明細書の段落【0048】)のであるから,この点からも,丁2発明のコード(単位情報記録領域)が本件発明の「二次元コード」に相当することは明らかである。
したがって,丁2発明の構成丁2cは,本件発明の構成要件Cと一致する。ウ
まとめ

以上のとおり,本件発明の構成要件AないしCは,丁2発明の構成丁2aないし丁2cと一致するから,本件発明は,丁2公報に記載された発明である。(原告の主張)

丁2発明が構成要件A及びCの「二次元」コードではないこと

本件発明の構成要件A及びCの「二次元」とは,縦(垂直)方向及び横(水平)方向の表示領域の組み合わせを情報表示の要素とすることを意味する。丁2発明におけるコードは,四つの単位領域を有する単位情報記録領域が2-1ないし2-nまで並んでいるものであり(丁2公報の【図2】,単位情報記録領域)
が2×2の単位領域で構成されてはいるものの,情報記録領域は,丁2公報の【図2】の水平方向のみにしか情報表示の要素を有しない点で,
「二次元」コードといえ
ないもので,情報の構造という意味では,一次元のコードである。
すなわち,丁2公報の【図2】においては,表示領域が水平方向のみならず,一見,垂直方向にも配列されているように見えるが,これは,単に情報の読み取り単位である,単位情報記録領域が,2×2の単位領域で構成されているからにすぎない。
丁2発明のコードの単位情報記録領域は幾何学的には二次元形状であるものの,複数の単位情報記録領域で形成されるコード自体は,単位情報記録領域の垂直方向
及び水平方向の表示領域の組み合わせを情報表示の要素としているものではなく,あくまで,複数の単位情報記録領域が図2の水平方向に並べられ,水平方向に順次
読み込まれるものである(丁2公報の段落【0004】
)から,このコードの情報表
示の要素は丁2公報の【図2】の水平方向のみ(一次元)である。したがって,丁2発明は本件発明の構成要件A及びCに係る構成を有しない。イ
丁2発明は光学式カードの読み取り書き込み方法と読み取り書き込み装置で
あること
本件発明の構成要件Cに係る「コード」は独立コードを意味する。丁2発明のコードは,丁2公報の【図2】に示すとおり,連続した単位情報記録領域2-1ないし2-nからなるものであり,単位情報記録領域の各々は「田」の字の四つの表示領域からなる(丁2公報の段落【0012】。このように「田」の)

字の単位情報記録の連続からなる丁2発明のコードは,有意情報のみを含むものであって,それ自体で上下左右を識別することができない。丁2には,コードの構造情報に関しては何ら記載がなく,むしろ,当該コードは,光学式カードの表面に書き込まれることが前提とされていること(
【請求項2】
)からも明らかなとおり,光
学式カードの表面に印字されて初めて上下左右が確定し読み取りが可能となるので,
当該コード自体で情報コードとしての独立性が担保されていない。このように,丁2発明は,コードを光学式カードの表面に書き込まなければ成立しない点で,あくまで「光学式カード」に印刷されることを必須の構成とする発明であって,独立コードの発明ではない。このことは丁2発明の名称が「光学式カードの読み取り書き込み方法と読み取り書き込み装置」とされていることからも明ら
かである。
したがって,丁2発明のコードは,構成要件Cに係る「コード」
(独立コード)に
は当たらず,丁2発明は本件発明の構成要件Cに係る構成を有しない。ウ
本件発明が新規性を有すること

以上のとおり,本件発明と丁2発明とは,少なくとも本件発明の構成要件A及びCに係る構成について相違する。
したがって,本件発明は,丁2発明と異なる発明であり,新規性を有する。
(8)争点8(丁3発明に基づく新規性欠如)
(補助参加人の主張)
本件発明は,本件特許の出願日(平成9年11月28日)より前である平成8年12月13日に日本国内において公開された公開特許公報である特開平8-329172号公報(丁3。以下「丁3公報」という。)に記載された発明(以下「丁3発明」という。)であるから,特許法29条1項3号の規定により特許を受けることができないものである。
したがって,本件特許は,同法123条1項2号により,直ちに無効とされるべきである。


丁3発明について

(ア)丁3公報の記載について
丁3公報には,以下の記載がある。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は,平面状の記録面に,記録すべきデジタル情報を2次元パターンとして記録するデジタル情報記録方法に関する。また,そのようなデジタル情報記録方法によって記録されたデジタル情報を解読するのに適したデジタル情報解読装置に関する。
【0002】

【従来の技術】最近,紙などの平面状の記録面内に設けられた情報記録領域に,ビットに対応する行列状の桝目を仮想的に設定し,上記各桝目に0と1のデータを表す白または黒を付して,記録すべきデジタル情報を2次元パターンとして表現する記録方式が盛んに開発されている。
【0041】このデジタル情報記録方法では,図1(a)に示すように,記録面2
0内に設けられた正方形の情報記録領域23に,行列状に複数隙間なく並ぶ正方形の枡目を仮想的に設定する。この例では,情報記録領域23は,簡単のため縦11
個×横11個の枡目で構成されるものとしているが,さらに多くの枡目で構成されたものであっても良い。
【0042】図1(a)に示すように,記録すべきデジタル情報に対応して情報記録領域23の各枡目に0又は1を割り当ててなる第1次パターン30を設定する。なお,図1(a),(b)では便宜上,値0をとる枡目を白,値1をとる枡目をハッチングで表している。
【0043】図1(b)に示すように,上記記録面20内での位置を示すための位置情報パターンとして特定パターン22を設定する。この特定パターン22は,値1が割り当ててられた1個の枡目からなる中心部41と,その周囲を環状に取り囲
む値0が割り当てられた8個の枡目からなる第1環状部42と,さらにその周囲を環状に取り囲む値1が割り当てられ16個の枡目からなる第2環状部43とで構成されている。全体として5行×5列の合計25個の枡目を含む正方形のブロックとなっている。この例では,特定パターン22を情報記録領域23の中央に配置する。

【0044】図1(c)に示すように,第1次パターン30の特定の位置に特定パターン22を枡目単位で対応させて重ねる。この例では,特定パターン22を図1(b)で情報記録領域23の中央に配置したことに対応して,第1次パターン30の中央の位置に重ねる。そして,第1次パターン30のうち特定パターン22と重ならない位置の枡目に,第1次パターン30のその位置の枡目がとる値に応じて第1
のマークM1としての色C1,第2のマークM2としての色C2を付与する。また,第1次パターン30のうち特定パターン22の値0をとる枡目(第1環状部42の枡目)と重なる位置の枡目にも,第1次パターン30のその位置の枡目がとる値に応じて第1のマークM1としての色C1第2のマークM2としての色C2を付与する。一方,第1次パターン30のうち特定パターン22の値1をとる枡目(中
心部41及び第2環状部43の枡目)と重なる位置の枡目に,第1次パターン30のその位置の枡目がとる値に応じて,第1及び第2のマークC1,C2と異なる第
3のマークM3としての色C3又は第4のマークM4としての色C4を付与する。このようにして第2次パターン31を作成する。
【0045】第1次パターン30の枡目がとる値と,特定パターン22の枡目がとる値とから,第2次パターン31の枡目に付与されるマークを決定する仕方は,表1に示す通りである。
【表1】

このようにして第1次パターン30と特定パターン22とから第2次パターン31を作成し,この第2次パターン31を情報記録領域23に実際に表現する。特に,図7に示したように情報記録領域が大面積である場合には,特定パターン22を所定の間隔で縦横に複数配置し,各特定パターン22の位置で表1に示したルールに従って処理を行って第2次パターンを作成するのが好ましい。【0046】このようにして記録を行った場合,本来記録すべきデジタル情報を,情報記録領域23の全域にわたって記録することができる。」
【図1】この発明の一実施例のデジタル情報記録方法を説明する図である。
【図1】

(イ)丁3発明について
丁3公報に記載された発明は,平面状の記録面に,記録すべきデジタル情報を2次元パターンとして記録するデジタル情報記録方法に関するものである(段落【0001】)。
丁3公報には,情報記録領域23内に表現された,11行×11列,換言すれば,水平方向及び垂直方向に配列された枡目から成る第2次パターン31が記載されている(段落【0041】及び【図1】(c))。
また,第2次パターン31の枡目の各々には,対応する第1次パターン30及び
特定パターン22の枡目の値に応じて,「第1のマークM1としての色C1」,「第2のマークM2としての色C2」,「第3のマークM3としての色C3」及び「第3のマークM4としての色C4」の4色のいずれか一つが付与される(段落【0044】)。

そして,第2次パターン31は,その枡目の色の組合せを記録すべきデジタル情報の情報表示の要素としている(段落【0001】,【0044】ないし【0046】)。
したがって,丁3公報には,以下の発明が記載されている。
丁3a:4色の枡目を水平方向及び垂直方向の配列で並べて形成され,丁3b:この配列における枡目の色の組み合せを情報表示の要素とした丁3c:ことを特徴とする2次元パターン。

本件発明と丁3発明との対比

(ア)構成要件Aについて
本件発明の構成要件Aは,「反射又は放射の波長特性が異なる3種以上の表示領域を二次元的な配列で並べて形成され,」である。
本件明細書によれば,
「波長特性が異なる3種以上の表示領域」とは,波長特性が
異なる表示領域が3種類以上あることを意味する
(段落
【0011】
参照)そして,

「反射…の波長特性が異なる」
とは,
表示領域の色が異なることを意味すること
(段

落【0011】参照)からすれば,
「波長特性が異なる3種以上の表示領域」とは,
色が異なる表示領域が3種類以上あることを意味するものである。他方,丁3発明の構成丁3aは,「4色の枡目を水平方向及び垂直方向の配列で並べて形成され」るものである。
丁3発明の構成丁3aの「升目」は,情報を表示する領域であるから,本件発明
の構成要件Aの「表示領域」に相当し,丁3発明の構成丁3aの「色」は,本件発明の構成要件Aの「反射…の波長特性」に相当する。
また,丁3公報には,情報記録領域内に表現された,11行×11列,換言すれば,水平方向及び垂直方向に配列された枡目(すなわち,表示領域)から成る第2次パターン31が記載されている(段落【0041】及び【図1】(c)。そし


て,第2次パターン31の枡目の各々には,対応する第1次パターン30及び特定パターン22の枡目の値に応じて,
「第1のマークM1としての色C1」「第2の


マークM2としての色C2」「第3のマークM3としての色C3」及び「第3のマ,
ークM4としての色C4」の4色のいずれか一つが付与される(段落【0044】。

したがって,丁3発明は,升目(本件発明の「表示領域」に相当する。)の色が4
種類で構成されるのであるから,本件発明の構成要件Aの「
(反射又は放射の)波長
特性が異なる3種以上の表示領域」に相当する構成を有することは明らかである。さらに,丁3発明の構成丁3aは,「水平方向及び垂直方向の配列で並べて形成」されるものであるため,本件発明の構成要件Aの「二次元的な配列で並べて形成」に相当する。

したがって,丁3発明の構成丁3aは,本件発明の構成要件Aと一致する。(イ)構成要件Bについて
本件発明の構成要件Bは,「この配列における表示領域の波長特性の組み合せを情報表示の要素とした」である。
他方,丁3発明の構成丁3bは,「この配列における枡目の色の組み合せを情報
表示の要素とした」ものであるところ,上記のとおり,「升目」(丁3a)は,本件発明の構成要件Aの
「表示領域」
に相当する。
また,
丁3発明の構成丁3bの
「色」
は,本件発明の構成要件Bの「波長特性」に相当する。
そうすると,丁3発明の構成丁3bは,配列における表示領域の反射特性の組合せを情報表示の要素としたものであるため,本件発明の構成要件Bの「この配列に
おける表示領域の波長特性の組み合せを情報表示の要素としたこと」に相当する。したがって,丁3発明の構成丁3bは,本件発明の構成要件Bと一致する。(ウ)構成要件Cについて
本件発明の構成要件Cは,「ことを特徴とする二次元コード。」である。他方,丁3発明の構成丁3cは,
「ことを特徴とする2次元パターン。」である。

上記のとおり,丁3発明は,「升目」(丁3a),すなわち,表示領域を,「水平方向及び垂直方向の配列で並べて形成」(丁3a)し,「升目(表示領域)の色
(波長特性)の組み合せを情報表示の要素」(丁3b)とした「2次元パターン」(丁3c)であるから,水平方向及び垂直方向の二次元に配列した表示領域の組合せにより情報を表示するものであり,本件発明の構成要件Cの「二次元コード」に相当する。
したがって,丁3発明の構成丁3cは,本件発明の構成要件Cと一致する。ウ
まとめ

以上のとおり,本件発明の構成要件AないしCは,丁3発明の構成丁3aないし丁3cと一致するから,本件発明は,丁3公報に記載された発明である。(原告の主張)

丁3発明が構成要件Aに係る
「波長特性が異なる3種以上の表示領域」
を有

しないこと
(ア)「波長特性が異なる3種以上の表示領域」の意義
本件発明の構成要件A「波長特性が異なる3種以上の表示領域」とは,波長特性の異なる表示領域が3種類以上あることを意味するが(本件明細書の段落【0011】,これは,単に表示領域が3種類以上あるということをいうにとどまらず,有)
意情報を示す表示領域として,波長特性が異なる表示領域が3種以上存在することを意味すると解すべきである。
本件発明においてコードを構成する表示領域を3種類以上で構成することとした目的は,モノクロの情報コードの情報表示量に限界があるため,表示領域を3種類
以上で構成することで既存の表示パターンを変えずに情報量を大幅に増大させることにある。すなわち,従来のモノクロの情報コードにおいては表示領域に地色とそれ以外の一色しか用いることができないため,多くの情報を表示しようとすると,表示パターンが複雑化するとともに大型化し,実用的でなくなるという問題があった(本件明細書の段落【0006】。本件発明は,波長特性が異なる3種以上の表)

示領域によってコードを形成することで,表示できる情報量のパターンを,表示領域の種類の数と表示領域数を掛け合わせた数へと大幅に増大させ,これにより,従
来の課題を解決するものである
(本件明細書の段落
【0011】
ないし
【0013】。

このように,コードで表示できる情報量を飛躍的に増大するという本件発明の効果(本件明細書の段落【0055】
)に鑑みると,構成要件Aの「波長特性が異なる
3種以上の表示領域」とは,単に表示領域が3種類以上あるということを意味するにとどまらず,有意情報を示す表示領域として,波長特性が異なる表示領域が3種以上存在することを意味すると解するほかない。
(イ)丁3発明における有意情報の表示領域
丁3発明において,コードを構成する表示領域を多色化した目的は,コード内に構造情報を配置するとその分だけ有意情報の記録できる領域が減少することから,
有意情報と構造情報とが重なる部分を多色化することで,有意情報の情報量を減少させることなく構造情報を配置することにある。
丁3発明においては,①記録すべきデジタル情報に対応して情報記録領域23の各枡目に0又は1を割り当ててなる第1次パターン30を設定し(丁3公報の段落【0042】,②記録面20内での位置を示すための位置情報パターンとして特定)

パターン22を設定し(丁3公報の段落【0043】,③第1次パターン30の特)
定の位置に特定パターン22を枡目単位で対応させて重ね,第1次パターン30の枡目がとる値(0又は1)と特定パターン22の枡目がとる値(0又は1)の重なりの組み合わせに応じて,第1のマークM1ないし第4のマークM4を付し(丁3公報の【表1】,第1のマークM1ないし第4のマークM4のそれぞれに対して色C1)

ないしC4を付与する(丁3公報の段落【0044】
)ことによりコードが形成され
る。
丁3発明は,形式的には,色C1ないしC4の4色の表示領域を並べて形成されているようにみえるが,これは単に,有意情報を示す第1次パターン30に,位置情報パターンとしての特定パターン22(有意情報を持たない)を重ねたときの重な
り方の四つの場合を識別するために四つの色を付与しているにすぎない。結局のところ,丁3発明では,第1次パターン30に設定された0又は1という二つの値の
みによって有意情報が示されており,有意情報を示す表示領域の構成自体は,従来のモノクロのコードと何ら変わりはない。このように,丁3発明には,有意情報を示す表示領域としては,0又は1の2種類しか存在しない。
(ウ)丁3発明が構成要件A「波長特性が異なる3種以上の表示領域」を有しないこと
以上のとおり,本件発明の構成要件A「波長特性が異なる3種以上の表示領域」とは,有意情報を示す表示領域として,波長特性が異なる表示領域が3種類以上存在することを意味するのに対し,丁3発明においては,有意情報を示す表示領域としては,0又は1の2種類しか存在しない。

したがって,丁3発明は,構成要件A「波長特性が異なる3種以上の表示領域」に係る構成を有しない。

本件発明が新規性を有すること

以上のとおり,本件発明と丁3発明とは,少なくとも本件発明の構成要件Aに係る構成について相違する。
したがって,本件発明は,丁3発明と異なる発明であり,新規性を有する。(9)争点9(原告に生じた損害の額)
(被告NTTデータ関係)
(原告の主張)

特許法102条3項適用による損害の額

被告NTTデータが本件認証機能を実現するソフトウェアを被告金融機関らに対して譲渡等することによりこれまでに得られた総売上高は,2億円を下らない。本件認証機能は,インターネットバンキングにおける取引内容を暗号化した本件コードによって当該取引内容を確認できるようにすることで,不正な取引が行われるのを未然に防止するものである。このことからすれば,本件コードは,本件認証機能において不可欠な役割を果たしているのであって,本件発明が本件認証機能を
実現するソフトウェアの利用料に係る売上に大きく貢献していることは明らかであるから,本件特許権にかかる実施料率は,10%を下らない。したがって,被告N
TTデータの本件特許権の侵害により原告が被った損害額は,特許法102条3項の適用により,2000万円を下らない。

弁護士・弁理士費用相当の損害の額

原告は,本件を解決するためには専門家である弁護士に委任した上で,本件訴訟を提起することを余儀なくされたところ,上記委任事務に係る委任報酬等は,少なくとも400万円を下らない。
この費用の出捐は,
被告NTTデータの不法行為
(本
件特許権侵害行為)と相当因果関係のある損害である。
ウまとめ
以上より,原告が,被告NTTデータの本件特許権侵害により受けた損害は,2
400万円を下回らない。
そこで,原告は,本件訴訟において,被告NTTデータに対し,その一部請求として,1200万円を請求する。
(被告NTTデータの主張)
原告の主張は争う。

(10)争点10(原告に生じた損害の額)(被告金融機関ら関係)(原告の主張)

特許法102条3項適用による損害の額

(ア)被告金融機関らが,各々のインターネットバンキングサービスの利用者に対し本件認証サービスを提供することによりこれまでに得られた総売上額は,各金融機関につき2000万円を下らない。
本件認証サービスは,サービスの提供主体が本件コードを生成して利用者の端末に表示し,利用者がこれを認証に利用することで不正な取引が行われるのを未然に防止するものである。このことからすれば,本件コードは,本件認証サービスの提供において不可欠な役割を果たしているのであって,本件発明が本件認証サービス
の利用料に係る売上げに大きく貢献していることは明らかであるから,本件特許権にかかる実施料率は,10%を下らない。

(イ)また,被告金融機関らが,各々のインターネットバンキングサービスで本件コードを作成した回数は200万回を下らない。
本件認証サービスの重要性,
同サービスの提供における本件コードの不可欠性は,
先に述べたとおりであり,本件特許権にかかる実施料として,原告が受け取るべき額は,被告金融機関らが本件コードを生成するごとに10円を下らない。(ウ)したがって,特許法102条3項の適用による被告金融機関らの本件特許権の侵害により原告が被った損害の額は,売上額に実施料率を乗じた額又は本件コードを作成した回数に生成一回ごとの実施料10円を乗じた額のいずれかによって得られ,その額は被告金融機関らそれぞれにつき200万円を下らない(本件におい
ては,いずれかの計算式により高い金額となる額をもって損害額と主張する。)。イ弁護士費用相当の損害について
原告は,本件を解決するためには専門家である弁護士に委任した上で,本件訴訟を提起することを余儀なくされたところ,上記委任事務に係る委任報酬等は,被告金融機関らそれぞれにつき少なくとも40万円を下らない。この費用の出捐は,被
告金融機関らの不法行為
(本件特許権侵害行為)
と相当因果関係のある損害である。
ウまとめ
原告が,被告金融機関らの本件特許権侵害により受けた損害は,被告金融機関らそれぞれにつき240万円を下らない。
そこで,原告は,本件訴訟において,被告金融機関らに対し,その一部請求とし
て,それぞれ120万円を請求する。
(被告金融機関らの主張)
原告の主張は争う。
第3
1
当裁判所の判断
争点4(乙1発明に基づく新規性欠如)について

事案に鑑み,争点4についてまず判断する。
(1)本件発明の要旨

本件発明の要旨は,
上記第2の2(2)イ記載のとおりであり,
また本件明細書には,
次の記載がある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
(1)本発明のコードは,
反射又は放射の波長特性が異なる3種以上の表示領域
を配列で並べて形成され,この配列における表示領域の波長特性の組み合せを情報表示の要素としたことを特徴とする。
【0011】
ここで,反射又は放射の波長特性が異なるとは,所定の配列で並べられて情報コ
ードを形成する表示領域の色が異なること,及び情報コードをステルスコードとして形成した場合に,その表示領域に印刷された蛍光体の放射波長が異なることをいう。また反射又は放射の波長特性が異なる3種以上の表示領域とは,上記波長特性の異なる表示領域が3種類以上あることを意味し,表示領域の大きさ又は形状の異なるものを使用する場合は,表示領域の種類の数は,これらを組み合わせた数とな
る。
【0012】
この情報コードで表示できる情報量は,表示領域の種類の数を,並べられた表示領域数でべき乗した値となるので,モノクロで表示された情報コードに比べて,非常に多くの情報を表すことが出来るようになる。

【0048】
二次元コードは二次元に配列した表示領域(黒又は白で塗り分けられる最少表示単位)の組み合せにより情報を表示するもので,PDF417,カルラコード等が知られている。この二次元コードにおいて,各表示領域を,反射又は放射の波長特性が異なる3種以上の表示領域によって形成し,この二次元配列における表示領
域の波長特性の組み合せを情報表示の要素とする。
(2)乙1発明


乙1公報(特開平5-233898号公報)は,本件特許の出願日(平成9
年11月28日)より前の平成5年9月10日を公開日とする公開特許公報であるが,上記第2の3(4)(被告らの主張)ア(ア)に列挙したとおりの記載ないし図面があり,これらによれば,従来の白黒のカルラコード(【図4】)では情報量が少ないこと等の課題と(段落【0007】),その解決手段として,単位領域の着色を,例えば赤色,緑色及び黄色の3色に多色化することによって,記録可能な情報の種類を増やし,
記録密度を向上させられることが記載されている
(段落
【0015】,
【0016】,【0024】)。そして,乙1公報の段落【0024】には,「隣接する四つの単位領域から構成される一単位情報記録領域に対して4⁴=256種
類の情報の記録が可能となっている」とあるとおり,隣接する四つの単位領域により形成された情報記録領域が,ある特定の情報を表示することが開示されている。また,乙1公報は,【図1】及び【図4】に示されるように,カルラコードは,単位領域を縦横に2×2に並べて形成され,着色の色によって,波長特性が異なることも説明されている(段落【0021】ないし【0024】)。

以上からすると,乙1公報には,以下の構成からなる発明が記載されている
と認められる。
a
四つの3色の単位領域を2×2に配列して,

b
この配列における単位領域の色を組み合わせることによって,情報を表す単
位情報記録領域を形成する
c
カルラコード

(3)本件発明と乙1発明の構成要件の対比

構成要件Aについて

本件発明の構成要件Aは,「反射又は放射の波長特性が異なる3種以上の表示領域を二次元的な配列で並べて形成され,」であるところ,乙1発明の構成aは,「四
つの3色の単位領域を2×2に配列して,」である。
ところで色が異なるということは,波長特性が異なることであるから,乙1発明
にいう「3色」は,構成要件Aにいう「波長特性が異なる3種」に相当する。また,乙1発明は,四つの3色の「単位領域」を2×2に配列してなる一つの「単位情報記録領域」において,44=256種類の情報の記録が可能となる(段落【0024】)とされているから,乙1発明における「単位領域」は,波長特性を有して表示する領域であって,2×2の配列で並べられ,当該配列における波長特性の組み合わせによって情報を表すものをいうと解されるところ,他方,前掲の本件明細書の記載からすると,本件発明における「表示領域」も,固有の反射又は放射の波長特性を有して表示する領域であって,所定の配列で並べられ,当該配列における反射又は放射の波長特性の組み合わせによって情報を表すものをいうと解されるか
ら,乙1発明の「単位領域」は,構成要件Aにいう「表示領域」に相当する。その上,乙1発明は,この「3色の単位領域」を四つ,縦横に2枚ずつ2×2に配列しているから,これは「波長特性が異なる3種」を「二次元的な配列で並べて形成」しているに相当する。
したがって,乙1発明の構成aは,本件発明の構成要件Aと同一であると認めら
れる。

構成要件Bについて

本件発明の構成要件Bは,「この配列における表示領域の波長特性の組み合わせを情報表示の要素とした」であり,乙1発明の構成bは,「この配列における単位領域の色を組み合わせることによって,情報を表す単位情報記録領域を形成する」である。
前記のとおり,「単位領域」を構成する色はそれぞれ別個の波長特性を有していることからすると,乙1発明の構成bにおいて,「単位領域の色を組み合わせる」とあるのは,本件発明の構成要件Bにいう「表示領域の波長特性を組み合わせる」ことと同じである。

そして,乙1発明の「単位領域」と本件発明の「表示領域」とは同義であることからすると,この四つの「単位領域」から構成される「単位情報記録領域」は「情
報表示の要素」と同義のものということができる。
したがって,乙1発明の構成bは,本件発明の構成要件Bと同一であると認められる。

構成要件Cについて

本件発明の構成要件Cは,「ことを特徴とする二次元コード。」であり,他方,乙1発明の構成cは,「カルラコード」である。
乙1発明は,カルラコードに関する発明であるところ,上記第2の3(4)(被告らの主張)ア(ア)に掲記された乙1公報の段落【0001】,【0002】の記載及び【図1】,【図4】からすると,乙1発明の「カルラコード」とは,「マーク状
に情報が記録された光学式カード」の一種であって,単位領域を二次元的な配列で並べて形成するものであると認められる。
そうすると,乙1発明の構成cの「カルラコード」が二次元的な情報コードであることは明らかである。
したがって,乙1発明の構成cは,本件発明の構成要件Cと同一であるものと認
められる。

原告の主張について

原告は,乙1発明が「二次元」コードでなく,また,「独立コード」ではないとして,乙1発明と本件発明の同一性を争うが,いずれも失当である。(ア)乙1発明が「二次元」コードでないとの主張について
原告は,乙1発明が「二次元」コードでない旨主張するところ,その趣旨は,四つの3色の単位領域を2×2に配列して形成した「単位情報記録領域」をもって本件発明の「情報表示の要素」とし,これが水平方向にしか配列されていない旨をいうものと理解できる。
しかし,そもそも本件発明の構成要件において,二次元的に配列されるとするの
は「表示領域」であって,「情報表示の要素」を二次元的に配列にすることが規定されているわけではない。そして,乙1発明においては,本件発明の「表示領域」
に相当する「単位領域」が「2×2に配列」されていることは,上記アのとおりであるから,1発明が,

原告のいう
「二次元」
コードであることは明らかであって,
原告の主張は失当である。
(イ)乙1発明が「独立コード」でないとの主張について
原告は,本件発明の「コード」とは,独立コード,すなわち,本来の目的である有意なデータを示す情報(有意情報)に加え,コードの情報の読み取りの起点や順序を確定するための情報(構造情報)が含まれるコードを意味すると主張する。しかし,本件発明の特許請求の範囲の記載にも,本件明細書の記載にも,「二次元コード」,「コード」を限定する趣旨の規定はないことから,原告の主張を採用
することはできない。
なお,原告は,本件発明は,「構造情報」を有さないコードであるカルラコードが普及しなかったことを受けて開発されたものであり,その経緯に照らせば,本件発明にいう「二次元コード」とは,構造情報を有するものを指すのが明らかであると主張するものであるが,本件明細書の段落【0048】においては,本件発明の
「二次元コード」の例示としてカルラコードが挙げられていることからすると,かえって,本件発明にいう「二次元コード」又は「コード」は,それが構造情報を有するものか否かは問わないものであると解するのが相当である。
また,そもそも原告が主張するように,独立コードであることが明記されていない本件発明にいう「二次元コード」をもって,「独立コード」をいうと解するのが
本件特許出願当時の当業者の常識であるのなら,本件特許の出願当時の当業者は,乙1発明のカルラコードについても,
そのように解していたはずのことになるから,
いずれにせよ,上記原告の主張は採用できない。
(4)以上より,本件発明の構成要件AないしCは,乙1発明の構成aないしcとそれぞれ同一であるから,本件発明は乙1に記載された発明と同一であり,新規性
を欠くというべきである。
したがって,本件発明は,本件特許の出願日(平成9年11月28日)より前に
頒布された刊行物(乙1公報)に記載された発明(乙1発明)であるから,特許法29条1項3号の規定により特許を受けることができないものであり,本件特許は,
同法123条1項2号に該当し,無効とされるべきであるから,同法104条の3により,原告は被告らに対して本件特許権を行使することができない。2
以上によれば,原告の被告らに対する請求は,その余の点の判断に及ぶまで
もなくいずれも理由がないから棄却することとし,訴訟費用については民事訴訟法61条,参加に要した費用については同法66条,61条を適用して主文のとおり判決する。

大阪地方裁判所第21民事部

裁判長裁判官
森崎英二野上誠一
裁判官

裁判官
大川潤子
(別紙)

物件目録
1
AnswerBizSOLにおける下記2の二次元コードによるトランザクション認証機能を実現するソフトウェア

2
赤色,青色,緑色及び白色のセルを水平方向及び垂直方向の配列で並べて形成された二次元コード(以下に一例を示す。)

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