判例検索β > 平成29年(行ケ)第1号
選挙無効請求事件
事件番号平成29(行ケ)1
事件名選挙無効請求事件
裁判年月日平成30年2月19日
法廷名福岡高等裁判所  宮崎支部
結果棄却
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主文1
原告らの請求をいずれも棄却する。

2
訴訟費用は原告らの負担とする。
事実及び理由
第1請求
平成29年10月22日施行の衆議院小選挙区選出議員の選挙の宮崎県第1区ないし第3区及び鹿児島県第1区ないし第4区における選挙を無効とする。第2事案の概要
1本件は,平成29年10月22日に施行された衆議院議員総選挙(以下「本件選挙」という。)について,宮崎県第1区ないし第3区及び鹿児島県第1区ないし第4区の選挙人であった原告らが,衆議院小選挙区選出議員の選挙(以下「小選挙区選挙」という。)の選挙区割りに関する公職選挙法の規定は憲法に違反して無効であるから,これに基づき施行された本件選挙の上記各選挙区における選挙も無効であると主張して提起した選挙無効訴訟である。2前提事実(当事者間に争いのない事実及び証拠等により容易に認定することができる事実)
原告ら
本件選挙における衆議院小選挙区選出議員の選挙区のうち,原告Aは宮崎県第1区の,原告Bは同県第2区の,原告Cは同県第3区の,原告Dは鹿児島県第1区の,原告Eは同県第2区の,原告Fは同県第3区の,原告Gは同県第4区の各選挙人であった。(争いなし)
本件選挙

平成29年9月28日に衆議院が解散され,同年10月22日に本件選挙が施行された。本件選挙当時の衆議院議員の選挙制度では,定数は465人で,そのうち289人が小選挙区選出議員,176人が比例代表選出議員であり(公職選挙法4条1項),小選挙区選挙については,全国に289の選挙区を設け,各選挙区において1人の議員を選出するものとされ
わずこれらの規定を併せて「区割規定」と,本件選挙当時の区割規定を「本件区割規定」と,本件区割規定に基づく選挙区割りを「本件選挙区割り」とそれぞれいう。)。

本件選挙当日における各選挙区における選挙人数は別紙「本件選挙の選挙区別選挙当日有権者数(有権者数順)」の「有権者数」欄記載のとおりであり,議員1人当たりの選挙人数の較差は,最小の鳥取県第1区(23万8771人)を1とすると,東京都第13区(47万2423人)が最大の1.979であり,宮崎県第1区(35万6152人)は1.492,同県第2区(28万4933人)は1.193,同県第3区(28万5176人)は1.194,鹿児島県第1区(36万0597人)は1.510,同県第2区(34万8221人)は1.458,同県第3区(32万9979人)は1.382,同県第4区(34万0045人)は1.424であった。(乙1)
小選挙区選挙に係る制度の変遷


衆議院議員の選挙制度については,かつては中選挙区単記投票制が採用されていたところ,平成6年の公職選挙法の改正(平成6年法律第2号,第10号及び第104号)により,小選挙区比例代表並立制が採用されることとなり,当時,衆議院議員の定数500人のうち,300人が小選挙区選出議員,200人が比例代表選出議員であった(平成12年法律第1号による改正前の公職選挙法4条1項)。
そして,上記平成6年の公職選挙法の改正と同時に,衆議院議員選挙区画定審議会設置法(平成6年法律第3号。以下「区画審設置法」という。)が制定された。同法は,内閣府(当時は総理府)に衆議院議員選挙区画定審議会(以下「区画審」という。)を設置し(同法1条),区画審は,小選挙区選出議員の選挙区の改定に関し,調査審議し,必要があると認めるときは,その改定案を作成して内閣総理大臣に勧告するとしている(同法2条)。また,平成24年法律第95号(衆議院小選挙区選出議員の選挙区間における人口較差を緊急に是正するための公職選挙法及び衆議院議員選挙区画定審議会設置法の一部を改正する法律。以下「平成24年改正法」という。)による改正前の区画審設置法3条(以下「旧々区画審設置法3条」という。)は,上記の選挙区の区割りの基準について,①1項において,上記改定案を作成するに当たっては,各選挙区の人口の均衡を図り,各選挙区の人口のうち,その最も多いものを最も少ないもので除して得た数が2以上とならないようにすることを基本とし,行政区画,地勢,交通等の事情を総合的に考慮して合理的に行わなければならないとし,②2項において,各都道府県の区域内の選挙区の数は,各都道府県にあらかじめ1を配当し(以下,この方式を「1人別枠方式」という。),この1に,小選挙区選出議員の定数に相当する数から都道府県の数を控除した数を人口に比例して各都道府県に配当した数を加えた数とすることとしていた(以下,この基準を「旧々区割基準」という。)。

平成8年10月20日,平成12年6月25日及び平成17年9月11日に施行された各衆議院議員総選挙に関する選挙無効訴訟において,最高裁は,旧々区割基準に従って定められた区割規定について,いずれも憲法14条1項,15条1項,43条1項等に違反するとは認められないと判断した(最高裁平成11年(行ツ)第7号同年11月10日大法廷判決・民集53巻8号1441頁,最高裁平成13年(行ツ)第223号同年12月18日第三小法廷判決・民集55巻7号1647頁,最高裁平成18年(行ツ)第176号同19年6月13日大法廷判決・民集61巻4号1617頁等)。


平成21年8月30日,衆議院議員総選挙が施行された(以下「平成21年選挙」という。)。同選挙当日における議員1人当たりの選挙人数の最大較差は2.304倍であり,較差が2倍以上の選挙区は45選挙区に上っていたところ,同選挙に係る選挙無効訴訟において,最高裁平成22年(行ツ)第207号同23年3月23日大法廷判決・民集65巻2号755頁(以下「平成23年大法廷判決」という。)は,次のとおり判示した。
すなわち,①選挙区の改定案の作成に当たり,選挙区間の人口の最大較差が2倍未満になるように区割りをすることを基本とすべきものとする旧々区画審設置法3条1項の定めは,投票価値の平等に配慮した合理的な基準を定めたものということができる,②平成21年選挙時には,1人別枠方式の下でされた各都道府県への定数配分の段階で,既に各都道府県間の投票価値にほぼ2倍の最大較差が生ずるなど,1人別枠方式が選挙区間の投票価値の較差を生じさせる主要な要因となっていたことは明らかである,③人口の少ない地方における定数の急激な減少への配慮等の視点から導入された1人別枠方式は,遅くとも平成21年選挙時には立法時の合理性が失われていたものというべきであり,旧々区割基準のうち1人別枠方式に係る部分及び旧々区割基準に従って改定された区割規定の定める選挙区割りは憲法の投票価値の平等の要求に反する状態に至っていたものであるが,憲法上要求される合理的期間内における是正がされなかったとはいえないので,旧々区画審設置法3条等が憲法14条1項等の憲法の規定に違反するということはできない,④事柄の性質上必要とされる是正のための合理的期間内に,上記の状態を解消するため,できるだけ速やかに旧々区割基準中の1人別枠方式を廃止し,旧々区画審設置法3条1項の趣旨に沿って区割規定を改正するなど,投票価値の平等の要請にかなう立法的措置を講ずる必要がある。

平成23年大法廷判決を踏まえ,政党間の協議や国会における審議等を経て,平成24年11月16日,旧々区画審設置法3条2項を削除し,公職選挙法4条1項の衆議院議員の定数を480人から475人に,小選挙区選出議員の数を300人から295人にそれぞれ改正することなどを内容とする平成24年改正法が成立し(同法附則3条1項,附則別表において,福井県,山梨県,徳島県,高知県及び佐賀県の区域内の選挙区の数をそれぞれ1減ずるいわゆる0増5減を行い,区画審はこれを踏まえて改定案を作成するものとされた。),同法のうち区画審設置法の改正に係る部分は同月26日に施行された(以下,平成24年改正法による改正後の区画審設置法3条を「旧区画審設置法3条」という。)。
区画審は,平成25年3月28日,内閣総理大臣に対し,平成24年改正法附則及び旧区画審設置法3条を踏まえ,各都道府県の区域内の選挙区の数を0増5減とすることを前提として,17都県42選挙区の選挙区割りを改めることを内容とする改定案を勧告した。
そして,これを踏まえて,同年6月24日,上記改定案に従って区割規定を改正するように平成24年改正法を改正することなどを内容とする平成25年法律第68号(衆議院小選挙区選出議員の選挙区間における人口較差を緊急に是正するための公職選挙法及び衆議院議員選挙区画定審議会設置法の一部を改正する法律の一部を改正する法律。以下「平成25年改正法」という。)が成立し,同法は同年6月28日に施行され,新たな区割規定は同年7月28日に施行された。
この結果,平成22年の国勢調査の結果に基づく議員1人当たりの人口の最大較差は1.998倍となった。(乙3の1,2,乙4)

平成24年12月16日,平成25年改正法による改正前の区割規定
(平成21年選挙のときにおけるものと同一である。)に基づき,衆議院議員総選挙が施行された(以下「平成24年選挙」という。)。同選挙当日における議員1人当たりの選挙人数の最大較差は2.425倍であり,較差が2倍以上の選挙区は72選挙区に上っていたところ,同選挙に係る選挙無効訴訟において,最高裁平成25年(行ツ)第209号,第210号,第211号同年11月20日大法廷判決・民集67巻8号1503頁(以下「平成25年大法廷判決」という。)は,次のとおり判示した。すなわち,平成24年選挙当時の区割規定の定める選挙区割りは平成21年選挙の際と同様に憲法の投票価値の平等の要求に反する状態にあったものといわざるを得ないが,平成23年大法廷判決を受けて,上記エのとおりの是正の実現に向けた一定の前進と評価し得る法改正が成立するに至っており,国会における是正の実現に向けた取組が平成23年大法廷判決の趣旨を踏まえた立法裁量権の行使として相当なものではなかったということはできないから,憲法上要求される合理的期間内における是正がされなかったとはいえず,区割規定が憲法14条1項等の憲法の規定に違反するものということはできないが,国会においては今後も旧区画審設置法3条の趣旨に沿った選挙制度の整備に向けた取組が着実に続けられていく必要があるというべきである。

衆議院議院運営委員会は,平成26年6月19日,衆議院に,衆議院選挙制度に関する調査・検討等を行うための有識者による衆議院議長の諮問機関として,衆議院選挙制度に関する調査会(以下「調査会」という。)を設置した。調査会は,議員以外の学識経験のある委員により構成され,現行制度を含めた選挙制度の評価,衆議院議員定数削減の処理,一票の較差を是正する方途等の諮問事項について調査,検討し,その意見を集約して,衆議院議長に答申するものとし,各会派は調査会の答申を尊重するものとされた。
調査会は,同年9月11日から平成28年1月14日までに17回の会合を開催し,上記諮問事項について検討等を行い,同日,衆議院議長に対し,①衆議院議員の定数の削減については,小選挙区選出議員を6人削減して289人と,比例代表選出議員を4人削減して176人とすることが考えられること,②小選挙区選挙については,

選挙区間の一票の較差を

2倍未満とし,小選挙区選挙の定数を各都道府県に人口に比例して配分すること,

都道府県への議席配分は,各都道府県の人口を一定の数値で除

し,それぞれの商の整数に小数点以下を切り上げて得られた数の合計数が小選挙区選挙の定数と一致する方式により行い,各都道府県の議席は,その人口を当該数値(除数)で除した商の整数に小数点以下を切り上げて得られた数とすること,

都道府県への議席配分の見直しは,制度の安定性

を勘案し,10年ごとに行われる大規模国勢調査の結果による人口に基づき行うこと,

大規模国勢調査の中間年に実施される簡易国勢調査の結果,

較差が2倍以上となる選挙区が生じたときは,区画審は各選挙区間の較差が2倍未満となるように関係選挙区の区画の見直しを行うものとするが,この見直しについては,本来の選挙区の区画の見直しが10年ごとに行われることを踏まえて必要最小限のものとし,都道府県への議席配分の変更は行わないことなどを内容とする答申をした。(乙8の1ないし17,乙9,10)

平成26年12月14日,平成25年改正法による改正後の平成24年改正法により改正された区割規定(以下「旧区割規定」という。)に基づき,衆議院議員総選挙が施行された(以下「平成26年選挙」という。)。同選挙当日における議員1人当たりの選挙人数の最大較差は2.129倍であり,較差が2倍以上の選挙区は13選挙区に上っていたところ,同選挙に係る選挙無効訴訟において,最高裁平成27年(行ツ)第253号同年11月25日大法廷判決・民集69巻7号2035頁(以下「平成27年大法廷判決」といい,平成23年大法廷判決及び平成25年大法廷判決と併せて「本件各大法廷判決」という。)は,次のとおり判示した。すなわち,①平成25年改正法による改正後の平成24年改正法により改定された選挙区割りにおいては,上記0増5減の措置における定数削減の対象とされた県以外の都道府県について旧々区割基準に基づいて配分された定数の見直しを経ておらず,1人別枠方式を定めた旧々区画審設置法3条2項が削除された後の旧区画審設置法3条の定める区割基準(以下「旧区割基準」という。)に基づいた定数の再配分が行われていないことから,いまだ多くの都道府県において,そのような再配分が行われた場合に配分されるべき定数とは異なる定数が配分されているということができ,上記のような投票価値の較差が生じた主な要因は,いまだ多くの都道府県において,旧区割基準に基づいて定数の再配分が行われた場合とは異なる定数が配分されていることにあるというべきであり,このような平成26年選挙時における投票価値の較差の状況やその要因となっていた事情などを総合考慮すると,平成25年改正法による改正後の平成24年改正法による選挙区割りの改定の後も,平成26年選挙時に至るまで,上記選挙区割りはなお憲法の投票価値の平等の要求に反する状態にあったものといわざるを得ない,②平成26年選挙は平成23年大法廷判決の言渡しから2回目の衆議院解散に伴い施行された総選挙ではあるが,平成26年選挙までに,2回の法改正を経て,旧々区画審設置法3条2項の規定が削除されるとともに,直近の平成22年の国勢調査の結果によれば全国の選挙区間の人口の較差が2倍未満となるように定数配分と選挙区割りの改定が行われ,平成26年選挙当時の投票価値の最大較差は前回の平成24年選挙当時よりも縮小し,更なる法改正に向けて調査会において選挙制度の見直しの検討が続けられている,③国会における是正の実現に向けた取組が平成23年大法廷判決及び平成25年大法廷判決の趣旨を踏まえた立法裁量権の行使として相当なものでなかったということはできず,憲法上要求される合理的期間を徒過したものと断ずることはできないから,平成26年選挙時において,平成25年改正法による改正後の平成24年改正法により改正された区割規定の定める選挙区割りは,憲法14条1項等の憲法の規定に違反するものということはできない,④国民の意思を適正に反映する選挙制度が民主政治の基盤であり,投票価値の平等が憲法上の要請であること等に照らせば,より適切な民意の反映が可能となるよう,国会においては,今後も,調査会において行われている投票価値の較差の更なる縮小を可能にする制度の見直しを内容とする具体的な改正案の検討と集約が早急に進められ,旧区画審設置法3条の趣旨に沿った選挙制度の整備に向けた取組が着実に続けられていく必要があるというべきである。

調査会の答申を踏まえ,政党間の協議や国会における審議等を経て,平成28年5月20日,衆議院議員選挙区画定審議会設置法及び公職選挙法の一部を改正する法律(同年法律第49号。以下「平成28年改正法」という。)が成立した。同法は,①区画審設置法を改正して,
区画審が改

定案を勧告するに当たっては,各選挙区の人口(最近の国勢調査(統計法5条2項の規定により行われる国勢調査に限る。)の結果による日本国民の人口をいう。)の均衡を図り,各選挙区の人口のうち,その最も多いものを最も少ないもので除して得た数が2以上とならないようにすることとし(旧区画審設置法3条の「2以上とならないようにすることを基本とし」の「を基本」を削っている。),行政区画,地勢,交通等の事情を総合的に考慮して合理的に行わなければならないとし,

各都道府県の区域内の

選挙区の数は,各都道府県の人口を小選挙区基準除数(その除数で各都道府県の人口を除して得た数(1未満の端数が生じたときは,これを1に切り上げるものとする。)の合計数が公職選挙法4条1項に規定する小選挙区選出議員の定数に相当する数と合致することとなる除数をいう。)で除して得た数(1未満の端数が生じたときは,これを1に切り上げるものとする。)とし(以下,この方式を「アダムズ方式」という。),

選挙区

の改定案の勧告は,統計法5条2項本文の規定により10年ごとに行われる国勢調査(以下「国勢調査」という。)の結果による人口が最初に官報で公示された日から1年以内に行うものとしつつ,区画審は,同項ただし書の規定により同調査が行われた年から5年目に当たる年に行われる国勢調査(以下「簡易国勢調査」という。)の結果によれば各選挙区の日本国民の人口の最も多いものを最も少ないもので除して得た数が2以上となったときは,当該簡易国勢調査の結果による人口が最初に官報で公示された日から1年以内に,改定案の勧告を行うが,当該勧告案の作成に当たっては,各都道府県の区域内の選挙区の数は変更しないものとし(以下,平成28年改正法による改正後の区画審設置法を「現区画審設置法」ということがある。),②公職選挙法を改正して,衆議院議員の定数につき,小選挙区選出議員の数を295人から289人に,比例代表選出議員の数を180人から176人にするなどし,③附則において,
区画審は,上記①

の改正にかかわらず,平成27年の簡易国勢調査の結果に基づく選挙区割りの改定案を作成及び勧告するものとし,同改定案の作成に当たっては,同簡易国勢調査を
による定数配分により得られる小選挙区の数(以下「新方式小選挙区定数」という。)が,平成28年改正法による改正前の公職選挙法別表第一における都道府県の区域内の小選挙区の数(以下「改正前小選挙区定数」という。)より少ない都道府県のうち,当該都道府県の上記簡易国勢調査人口を新方式小選挙区定数で除して得た数が最も少ない都道府県から順次その順位を付した場合における第1順位から第6順位までに該当する都道府県は,新方式小選挙区定数とし,その余の都道府県は,改正前小選挙区定数とし(いわゆる0増6減。この結果,青森県,岩手県,三重県,奈良県,熊本県及び鹿児島県の区域内の選挙区の数をそれぞれ1減ずるいわゆる0増6減を行うこととなった。),
上記簡易国勢調査人口が,同人口の最も少ない都道府県の区域内における同人口の最も少ない小選挙区の同人口以上であって,かつ,同人口の2倍未満であること,さらに,各小選挙区の平成32年見込人口(平成27年簡易国勢調査人口に,平成27年簡易国勢調査人口を平成22年国勢調査人口で除して得た数を乗じて得た数をいう。以下同じ。)が,同見込人口の最も少ない都道府県の区域内における同見込人口の最も少ない小選挙区の同見込人口以上であって,かつ,同見込人口の2倍未満であることを基
を代表する国会議員を選出するための望ましい選挙制度の在り方については,民意の集約と反映を基本としその間の適正なバランスに配慮しつつ,公正かつ効果的な代表という目的が実現されるよう,不断の見直しが行われるものとすることなどが定められた。(乙13の1ないし3)

区画審は,平成29年4月19日,内閣総理大臣に対し,平成28年改正法附則及び現区画審設置法3条を踏まえて,各都道府県の区域内の選挙区の数を0増6減とすることを前提として,19都道府県97選挙区の選挙区割りを改めることを内容とする改定案を勧告した。
そして,これを踏まえて,同年6月9日,上記改定案に従って区割規定を改正するように平成28年改正法を改正することなどを内容とする平成29年法律第58号(衆議院議員選挙区画定審議会設置法及び公職選挙法の一部を改正する法律の一部を改正する法律。以下「平成29年改正法」といい,平成24年改正法,平成25年改正法,平成28年改正法及び平成29年改正法による一連の改正を「本件各改正」という。)が成立し,同法は同年6月16日に施行され,新たな区割規定(本件区割規定)は同年7月16日に施行された。
この結果,平成27年の簡易国勢調査の結果に基づく都道府県間の議員1人当たりの人口(総人口から外国人人口を除いたものである。以下同じ。)の最大較差は1.844倍で,平成32年見込人口に基づく最大較差は1.937倍となるものとされ,上記簡易国勢調査の結果に基づく選挙区間の議員1人当たりの最大較差は1.956倍で,平成32年見込人口に基づく最大較差は1.999倍となるものとされた。(乙13の1,2,乙14の1,乙18の1,2,4)
3原告らの主張
本件各大法廷判決は,定数配分及び選挙区割りを決定するに当たっては,議員1人当たりの選挙人数あるいは人口以外の要素も,合理性を有する限り,国会において考慮することが憲法上許容されているものと解されるとするところ,1人別枠方式は,人口比例以外の要素である都道府県という合理性のない要素を考慮して各都道府県の区域内の選挙区の数を決定しているので,それ自体,憲法の投票価値の平等の要求に反するものであった。
そして,本件選挙においては,投票価値の較差が2倍を超えた選挙区の数はゼロであったが,1人別枠方式を廃止し,平成22年の国勢調査の結果に基づきアダムズ方式により各都道府県の区域内の選挙区の数を配分すると7増13減が必要となるところ,平成29年改正法では6県に係る0増6減を行ったのみで,12都県に係る7増7減はいまだ実施されていないので,これらの都県の区域内の選挙区の数は1人別枠方式に基づき決定されたものであるといわざるを得ない。
したがって,全選挙区の有機的一体性により,本件選挙区割り全体が憲法の投票価値の平等の要求に反する状態にあるというべきである。
平成23年大法廷判決は,旧々区画審設置法3条1項は,最大較差2倍という数値を小選挙区選挙における投票価値の較差について合憲,違憲の結論を決める画一的に量的な基準とする趣旨ではないと判断していると解される。したがって,投票価値の最大較差が2倍以上でなかったからといって,憲法の投票価値の平等の要求に反しないというわけではない。
本件選挙日は,平成23年大法廷判決以降,既に6年6か月30日が経過している。
区画審設置法4条1項では,区画審による選挙区の改定案の作成及び勧告は,統計法5条2項本文の規定により10年ごとに行われる国勢調査の結果による人口が最初に官報で公示された日から1年以内に行うものとされており,平成24年改正法附則3条3項では,改定案の勧告は,同法施行日(平成24年11月26日)から6か月以内に行うものとされている。これらの規定を考慮すると,国会が1人別枠方式が違憲状態にあることを知った平成23年大法廷判決の言渡日から6年6か月30日後に施行された本件選挙時においては,合理的期間の末日は徒過している。
憲法56条2項は「両議院の議事は,・・・出席議員の過半数でこれを決し」と,憲法1条は「主権の存する日本国民」と,憲法前文第1文は「日本国民は,正当に選挙された国会における代表者を通じて行動し」とそれぞれ定めているところ,これらの規定からすると,国民主権を前提とする以上,両議院の議事を決する過半数の出席議員を選出する主権者の数は,必ず全出席議員を選出する主権者の数の過半数でなければならない。
そして,全出席議員の過半数が必ず全出席議員を選出する国民(主権者)の過半数から選出されるようにするためには,選挙が全出席議員の過半数が必ず全出席議員を選出する主権者(国民)の過半数から選出される仕組みでなければならず,これを実現するための方法は人口比例選挙以外にない。憲法は,各選挙区の人口は必要とあれば都道府県の境界をまたいでも均一とすることを求めていることに照らすと,アダムズ方式は,都道府県を単位として人口に基づいて議員定数の配分を決定しているので,憲法の要求する人口比例選挙を実現することができず,投票価値の平等の要求に反するというべきである。
4被告らの主張
憲法は投票価値の平等を要求しているが,投票価値の平等は選挙制度の仕組みを決定する絶対の基準ではなく,国会が正当に考慮することのできる他の政策的目的ないし理由との関連において,調和的に実現されるべきものである。
そして,選挙制度の仕組みの決定については国会に広範な裁量が認められているのであるから,小選挙区選挙における具体的な選挙区を定めるに当たっては,種々の政策的考慮要素を総合的に考慮した上で,国政遂行のための民意の的確な反映を実現するとともに,投票価値の平等を確保するという要請との調和を図ることが求められる。
したがって,このような選挙制度の合憲性は,国会に与えられた裁量権の行使として合理性を有するといえるか否かによって判断されることになり,国会がかかる選挙制度の仕組みについて具体的に定めたところが,上記のような憲法上の要請に反するため,上記の裁量権を考慮してもなおその限界を超えており,これを是認することができない場合に,初めてこれが憲法に違反することになると解すべきである。
そして,本件各大法廷判決は,旧区画審設置法3条(諸般の事情を総合的に考慮して,選挙区間の人口の最大較差が2倍未満になるように区割りをすることを基本とする規定。旧々区画審設置法3条1項も同じ。)について,一貫して,投票価値の平等に配慮した合理的な基準を定めたものと評価してきた。
そうすると,国会において,諸般の事情を総合的に考慮した上,立法時のみならず選挙時においても選挙区間の最大較差が2倍未満となるような立法的措置を講じ,それにより実際に選挙区間の最大較差を2倍未満とすることができたのであれば,国会は本件各大法廷判決の求めた立法的措置,すなわち旧区画審設置法3条の趣旨に沿った立法的措置を講じたものといえるから,当該区割規定の定める選挙区割りが投票価値の平等の要求に反する状態にあるといえないことは明らかである。
国会は,平成23年3月以降,本件各大法廷判決に沿って,できる限りの検討及び協議を尽くすとともに,地方公共団体等から人口比例のみに偏った選挙制度に疑問を呈する意見や一連の選挙制度の改正に伴う弊害等について様々な意見が寄せられる中でも,投票価値の平等の要求に反する状態の是正が最も優先すべき課題であるとの認識の下,投票価値の較差の是正に取り組み,本件各改正を達成したものである。
そして,本件各改正の結果,平成27年の簡易国勢調査の結果に基づく選挙区間の議員1人当たりの人口の最大較差は1.956倍(本件選挙当時の議員1人当たりの選挙人数の最大較差は1.979倍)と2倍未満にまで縮小されるに至ったのみならず,被災地等の例外なく,全小選挙区を通じて較差の縮小が図られたものである。
そうすると,このような選挙区間の最大較差のみをもってしても,本件選挙当時,本件区割規定の定める本件選挙区割りが憲法の投票価値の平等の要求に反する状態に至っていなかったことは明らかである。
平成28年改正法附則は,平成32年の国勢調査に基づく区割規定の改定までの経過措置が必要となったことに伴い規定されたものであり,2倍以上の較差の選挙区を出現させ,増加させる主要な要因とされた1人別枠方式の構造的な問題の解決を求める本件各大法廷判決の指摘を踏まえるとともに,激変緩和を図る観点から,平成27年の簡易国勢調査を基にアダムズ方式により都道府県別定数を計算した場合に減員対象となる都道府県のうち,議員1人当たりの人口の最も少ない都道府県から順に6県を対象として,選挙区の数をそれぞれ1減ずるとともに,将来的にも較差を2倍未満とするため,平成32年見込人口を踏まえた都道府県内における選挙区割の基準を定めるものである。平成28年改正法成立の時点では,直近の平成22年の国勢調査から相当期間が経過していたため,同国勢調査の結果を用いることには,①成立した法律をあえて遡及適用することは例外的であり,アダムズ方式を導入するのは平成32年の国勢調査以降とするのが自然であること,②平成27年の簡易国勢調査の結果で試算した場合との定数配分の結果に違いが生じるなど,平成22年の国勢調査の結果を用いる合理性に欠けること,③4年後に次の国勢調査があり,定数配分の見直しが重なることから,調査会の答申の求める選挙制度の安定性を害すること,④平成22年の国勢調査の結果を用いて新たに議席を配分した場合,それにより従前と異なる議席を配分された都道府県の選挙人を中心に,平成24年選挙及び平成26年選挙の正当性や選挙された議員の地位に対し疑念を抱かせることになるという問題があること等,種々の難点があった。このような平成28年改正法成立時の状況,経過措置や将来的な較差是正措置を含む平成28年改正法の内容及び地方公共団体の意見等に照らすと,投票価値の較差を是正するとともに選挙制度の安定性等も勘案し,平成28年改正法においてアダムズ方式の全面的な導入を平成32年の国勢調査以降としつつ,アダムズ方式の一部導入や人口の将来推計等,選挙区間の最大較差を2倍未満に縮小するために必要な経過措置を設けるとともに,平成29年改正法において選挙区間の較差が2倍未満となる本件区割規定を定めたことは,十分な合理性を有するものというべきである。
なお,現行の小選挙区選出議員の定数が各都道府県の人口に比例して配分することができる定数となっていないことから,どのような配分方式を採用したとしても,議席を各都道府県の人口に比例して配分することは不可能であり,各都道府県別の議席配分段階で相当程度の較差が生じることは避けられない上,各都道府県への議席配分段階後に個々の選挙区割りの決定段階において市町村の一体性をどこまで確保するかという問題等も大きい。平成24年改正法及び平成25年改正法において,1人別枠方式が廃止されるとともに各都道府県の区域内の選挙区の数を0増5減することを前提とする改正がされたことにより,2倍以上の較差の選挙区を出現等させていた主たる要因は解消されたものであるが,平成28年改正法及び平成29年改正法において,更に各都道府県の区域内の選挙区の数を0増6減することを前提とする改正がされたことにより,本件各大法廷判決が指摘したような1人別枠方式の構造的問題は解決されたのであり,原告らが主張するような1人別枠方式の影響が残存しているということはできない。
以上のとおり,平成28年改正法及び平成29年改正法による各改正は,本件各大法廷判決の趣旨を踏まえ,投票価値の平等の要請を国会が正当に考慮することのできる政策的要素との関連において調和的に実現したものであって,十分な合理性を有するものであるから,本件選挙時において,本件区割規定の定める本件選挙区割りは,憲法の投票価値の平等の要求に反する状態にあったとはいえない。
憲法秩序の下における司法権と立法権との関係に照らすと,憲法上要求される合理的期間内における是正がされなかった場合に,初めて定数配分又は選挙区割りが憲法に違反すると判断されることになる。
これを本件について見ると,本件各改正は,本件各大法廷判決の趣旨に沿って,1人別枠方式を廃止するとともに,将来的にも選挙区間の最大較差を2倍未満とするための所要の改正を行い,選挙区間の議員1人当たりの人口の最大較差を1.956倍(本件選挙当時は1.979倍)と2倍未満にまで縮小させたものである。そして,本件選挙は,平成29年改正法により新たに定められた本件区割規定の定める本件選挙区割りの下での初めての選挙であり,本件選挙における選挙区間の最大較差は,衆議院議員の小選挙区選挙史上,過去最少の数値であるのみならず,小選挙区選挙に関する累次の最高裁判所の判決において合憲とされた最大較差をも相当程度下回るものであった。しかも,そのような選挙区間の最大較差は,平成23年大法廷判決が投票価値の平等に配慮した合理的な基準であると評価した旧々区画審設置法3条1項の求める2倍未満の較差を正に実現したものであったのである。そうすると,本件各改正は,投票価値の較差のためにとるべき措置の内容,そのために検討を要する事項,実際に必要となる手続や作業等の諸般の事情に照らし,本件各大法廷判決の趣旨を踏まえた立法裁量権の行使として十分に相当なものであって,国会においても,本件選挙までに本件区割規定の定める本件選挙区割りが憲法の投票価値の平等の要求に反する状態にあるなどということは全く認識できない状況にあったものである。
したがって,本件区割規定の定める本件選挙区割りについて憲法上要求される合理的期間内における是正がされなかったとはいえない。
第3当裁判所の判断
1憲法は,選挙権の内容の平等,換言すれば投票価値の平等を要求しているものと解される。他方,投票価値の平等は,選挙制度の仕組みを決定する絶対の基準ではなく,国会が正当に考慮することのできる他の政策的目的ないし理由との関連において調和的に実現されるべきものであるところ,国会の両議院の議員の選挙については,憲法上,議員の定数,選挙区,投票の方法その他選挙に関する事項は法律で定めるべきものとされ(43条2項,47条),選挙制度の仕組みの決定について国会に広範な裁量が認められている。
衆議院議員の選挙につき全国を多数の選挙区に分けて実施する制度が採用される場合には,選挙制度の仕組みのうち定数配分及び選挙区割りを決定するに際して,憲法上,議員1人当たりの選挙人数ないし人口ができる限り平等に保たれることを最も重要かつ基本的な基準とすることが求められているというべきであるが,それ以外の要素も合理性を有する限り国会において考慮することが許容されているものと解されるのであって,具体的な選挙区を定めるに当たっては,都道府県を細分化した市町村その他の行政区画などを基本的な単位として,地域の面積,人口密度,住民構成,交通事情,地理的状況などの諸要素を考慮しつつ,国政遂行のための民意の的確な反映を実現するとともに,投票価値の平等を確保するという要請との調和を図ることが求められているところである。
したがって,このような選挙制度の合憲性は,これらの諸事情を総合的に考慮した上でなお,国会に与えられた裁量権の行使として合理性を有するといえるか否かによって判断されることになり,国会がかかる選挙制度の仕組みについて具体的に定めたところが,上記のような憲法上の要請に反するため,上記の裁量権を考慮してもなおその限界を超えており,これを是認することができない場合に,初めてこれが憲法に違反することになるものと解すべきである(本件各大法廷判決参照)。
2前提事実等によれば,本件各改正を含む本件選挙に至るまでの経緯の概要は,次のとおりである。
衆議院議員の選挙制度については,平成6年の公職選挙法の改正以降,小選挙区比例代表並立制が採用され,小選挙区選挙の選挙区の画定については,都道府県を単位として小選挙区選出議員の定数を配分した上,都道府県の区域内における選挙区割りを行うという方式が採られてきた。そして,都道府県の区域内における選挙区割りの基準については,平成24年改正法による改正前の区画審設置法(旧々区画審設置法)3条1項は,選挙区の改定案の作成に当たり,各選挙区の人口の均衡を図り,各選挙区の人口のうち,その最も多いものを最も少ないもので除して得た数が2以上とならないようにすることを基本とし,行政区画,地勢,交通等の事情を総合的に考慮して合理的に行わなければならないと規定していた。他方で,都道府県を単位として小選挙区選挙の定数(選挙区数)を配分するいわゆる都道府県への定数の配分については,旧々区画審設置法3条2項は,各都道府県の区域内の選挙区の数は,各都道府県にあらかじめ1を配当することとし(1人別枠方式),この1に,小選挙区選出議員の定数に相当する数から都道府県の数を控除した数を人口に比例して各都道府県に配当した数を加えた数とすると定めていた。
そうであるところ,平成21年選挙当時,選挙区間における議員1人当たりの選挙人数の最大較差が1対2.304に達し,選挙人数が最も少ない選挙区と比べて較差が2倍以上となっている選挙区が45選挙区存在していたという状況の下において,平成23年大法廷判決は,旧々区画審設置法3条1項の定めは,投票価値の平等の要請に配慮した合理的な基準を定めたものであると評価する一方,平成21年選挙当時において,選挙区間の投票価値の較差が上記のとおり拡大していたのは,同条2項の1人別枠方式がその主要な要因となっていたことが明らかであり,かつ,人口の少ない地方における定数の急激な減少への配慮等の視点から導入された1人別枠方式は既に立法時の合理性が失われていたものというべきであるから,旧々区割基準のうち1人別枠方式に係る部分及び旧々区割基準に従って改定された区割規定の定める選挙区割りは憲法の投票価値の平等の要求に反する状態に至っていたと判示した。
平成23年大法廷判決後,平成24年改正法において,旧々区画審設置法3条2項は削除されたが,都道府県への定数の配分の見直しについては,各都道府県の選挙区数を増やすことなく議員1人当たりの人口の少ない5県の各選挙区数をそれぞれ1減ずる(いわゆる0増5減)ものとされ,平成25年改正法において,上記0増5減を踏まえた選挙区割りの改定が行われた。平成26年選挙は,平成25年改正法による改正後の平成24年改正法により改正された区割規定(旧区割規定)に基づいて実施されたが,選挙当時,議員1人当たりの選挙人数の最大較差が1対2.129に達し,選挙人数が最も少ない選挙区と比べて較差が2倍以上となっている選挙区が13選挙区存在していたという状況の下において,平成27年大法廷判決は,平成25年改正法による改正後の平成24年改正法により改定された選挙区割りにおいては,上記0増5減の措置における定数削減の対象とされた県以外の都道府県について旧々区割基準に基づいて配分された定数の見直しを経ておらず,1人別枠方式を定めた旧々区画審設置法3条2項が削除された後の旧区画審設置法3条の定める区割基準(旧区割基準)に基づいた定数の再配分が行われていないことから,いまだ多くの都道府県において,そのような再配分が行われた場合に配分されるべき定数とは異なる定数が配分されているということができ,上記のような投票価値の較差が生じた主な要因は,いまだ多くの都道府県において,旧区割基準に基づいて定数の再配分が行われた場合とは異なる定数が配分されていることにあるというべきであり,このような平成26年選挙時における投票価値の較差の状況やその要因となっていた事情などを総合考慮すると,平成25年改正法による改正後の平成24年改正法による選挙区割りの改定の後も,平成26年選挙時に至るまで,上記選挙区割りはなお憲法の投票価値の平等の要求に反する状態にあったものといわざるを得ないと判示した。
本件各大法廷判決及び調査会の答申を踏まえ,平成28年改正法は,小選挙区選挙の選挙区の画定について,都道府県を単位として小選挙区選出議員の定数を配分した上,都道府県の区域内における選挙区割りを行うという枠組み自体を維持した上で,都道府県の区域内における選挙区割りの基準について,区画審が改定案を勧告するに当たっては,各選挙区の人口(最近の国勢調査の結果による日本国民の人口をいう。)の均衡を図り,各選挙区の人口のうち,その最も多いものを最も少ないもので除して得た数が2以上とならないようにすることとし,行政区画,地勢,交通等の事情を総合的に考慮して合理的に行わなければならないとすること(現区画審設置法3条1項),都道府県への定数の配分については,各都道府県の区域内の選挙区の数は,各都道府県の人口を小選挙区基準除数(その除数で各都道府県の人口を除して得た数(1未満の端数が生じたときは,これを1に切り上げるものとする。)の合計数が小選挙区選出議員の定数に相当する数と合致することとなる除数をいう。)で除して得た数(1未満の端数が生じたときは,これを1に切り上げるものとする。)とすること(アダムズ方式による定数配分)(同条2項),選挙区の改定案の勧告は,国勢調査(統計法5条2項本文の規定により10年ごとに行われる国勢調査)の結果による人口が最初に官報で公示された日から1年以内に行うものとしつつ(現区画審設置法4条1項),区画審は,各選挙区の簡易国勢調査(統計法5条2項ただし書の規定により同項本文の国勢調査が行われた年から5年目に当たる年に行われる国勢調査)の結果による日本国民の人口のうち,その最も多いものを最も少ないもので除して得た数が2以上となったときは,当該簡易国勢調査の結果による人口が最初に官報で公示された日から1年以内に,改定案の勧告を行うものとするものの(現区画審設置法4条2項),当該勧告案の作成に当たっては,各都道府県の区域内の選挙区の数は変更しないものとすること(同法3条3項),以上をいわゆる本則として定めた。
そして,平成28年改正法は,その附則において,区画審は,平成28年改正法による改正後の区画審設置法(現区画審設置法)4条の規定にかかわらず,平成27年の簡易国勢調査の結果に基づく改定案の作成及び勧告を行うものとし,上記改定案の作成に当たっては,都道府県への定数の配分については,上記簡易国勢調査を現区画審設置法4条1項の国勢調査とみなして同法3条2項の規定の例(アダムズ方式による定数配分)により得られる小選挙区の数(新方式小選挙区定数)が,平成28年改正法による改正前の公職選挙法別表第一における都道府県の区域内の小選挙区の数(改正前小選挙区定数)より少ない都道府県のうち,当該都道府県の上記簡易国勢調査人口を新方式小選挙区定数で除して得た数が最も少ない都道府県から順次その順位を付した場合における第1順位から第6順位までに該当する都道府県は,新方式小選挙区定数とし,その余の都道府県は,改正前小選挙区定数とし(いわゆる0増6減),選挙区割りについては,各小選挙区の上記簡易国勢調査人口が,同人口の最も少ない都道府県の区域内における同人口の最も少ない小選挙区の同人口以上であって,かつ,同人口の2倍未満であること,さらに,各小選挙区の平成32年見込人口(平成27年簡易国勢調査人口に平成27年簡易国勢調査人口を平成22年国勢調査人口で除して得た数を乗じて得た数)が,同見込人口の最も少ない都道府県の区域内における同見込人口の最も少ない小選挙区の同見込人口以上であって,かつ,同見込人口の2倍未満であることを基本とすることを基準として行うものとした。平成28年改正法の本則の趣旨については,本件各大法廷判決の判示する違憲状態の解消に向けた較差是正措置を講ずることが喫緊の課題であるとの認識の下に,各都道府県への定数の配分につき,人口に比例して行う方式の一つであるアダムズ方式によるものとすることを明記するとともに,制度の安定性を勘案して,その見直しは10年ごとに行われる国勢調査の結果による人口に基づき行うこととし,選挙区割りについては,上記国勢調査の結果に基づき選挙区間における投票価値の較差(議員1人当たりの人口の較差)が2倍未満となるように行うものとするのみならず,国勢調査に基づく選挙区の改定から次の国勢調査に基づく選挙区の改定までの間においても,選挙区間における上記の較差2倍未満が維持されるよう,国勢調査の中間年に実施される簡易国勢調査の結果,上記較差が2倍以上となる選挙区が生じたときは,区画審に2倍以上の較差の解消のための選挙区割りの改定案の作成を義務付けたものであると説明されている。
また,平成28年改正法附則の趣旨については,各都道府県への定数の配分におけるアダムズ方式の導入は,次回の直近の国勢調査が平成32年に予定されており,同国勢調査以降とするのが自然であること,既に平成27年の簡易国勢調査の結果が出ているのにあえてそれ以前の国勢調査の結果を用いる合理性に欠けること,仮に平成22年の国勢調査結果に基づいてアダムズ方式を即時に導入したとしても,4年後に次の国勢調査が控えていることから,立て続けに定数配分の見直しを行うこととなって,制度の安定性に欠ける結果を招くことなどから,平成32年の国勢調査以降に行うこととした上で,同国勢調査の結果に基づく選挙区の改定までの経過措置として,同改定に先行して議員定数を削減することにも鑑み,激変緩和のために,小選挙区の定数の削減による影響を受ける都道府県を極力減らす観点から,各都道府県への定数の配分につき,6の都道府県について定数を各1ずつ減ずる0増6減を行うものとし,定数削減の対象となる都道府県については,本則の定めるアダムズ方式の考え方と基本的な方向性を同じくし,これと整合性のある方式によることが合理的であるとして,削減後の小選挙区定数を平成27年の簡易国勢調査の結果に基づいてアダムズ方式により都道府県に配分した場合に改正前小選挙区定数よりも減員となる都道府県のうち議員1人当たりの人口の少ないところから順に6都道府県を選ぶものとし,選挙区割りについては,平成27年の簡易国勢調査の結果による人口に基づく選挙区間の議員1人当たりの人口の較差が2倍未満となるようにし,かつ,平成32年の国勢調査の結果に基づく選挙区の改定までの期間を通じて上記の較差が2倍未満となるように,平成32年見込人口に基づく上記の較差が2倍未満となることを基本として行うこととしたものと説明されている(乙10,11の1,2,12の1ないし7)。
平成29年改正法は,経過措置を定めた平成28年改正法附則に基づいて各都道府県への定数の配分及び選挙区割りを定めたものであり,その結果,平成29年改正法による改正後の平成28年改正法による改正後の区割規定(本件区割規定)の下において,平成27年の簡易国勢調査の結果に基づく都道府県間の議員1人当たりの人口の最大較差は1.844倍,平成32年見込人口に基づく最大較差は1.937倍となるものとされ,平成27年の簡易国勢調査の結果に基づく選挙区間の議員1人当たりの人口の最大較差は1.956倍,平成32年見込人口に基づく最大較差は1.999倍となった。
本件選挙は,本件区割規定の下で施行されたものであり,本件選挙当日における選挙区間における議員1人当たりの選挙人数の最大較差は1対1.979であり,選挙人数が最も少ない選挙区と比べて較差が2倍以上となっている選挙区は存在しなかった。
3上記のとおり,本件選挙は平成28年改正法附則に基づく経過措置として定められた本件区割規定の下で施行されたものであることに鑑み,本件選挙時の本件区割規定及びこれに基づく本件選挙区割りの合憲性について検討する前提として,平成28年改正法の本則の定める小選挙区選挙の選挙区の画定に関する定めの合憲性について検討する。
平成28年改正法の本則による小選挙区選挙の選挙区の画定に関する定めは,上記のとおり,都道府県を単位として小選挙区選出議員の定数を配分した上,都道府県の区域内における選挙区割りを行うという枠組み自体を維持した上で,都道府県への定数の配分につき,人口に比例して行う方式の一つであるアダムズ方式によるものとすることを明記するとともに,制度の安定性を勘案して,その見直しは10年ごとに行われる国勢調査の結果による人口に基づき行うこととし,選挙区割りについては,上記国勢調査の結果に基づき選挙区間における議員1人当たりの人口の較差が2倍未満となるように行うものとするのみならず,国勢調査に基づく選挙区の改定から次の国勢調査に基づく選挙区の改定までの間においても,選挙区間における上記の較差2倍未満が維持されるよう,国勢調査の中間年に実施される簡易国勢調査の結果,上記較差が2倍以上となる選挙区が生じたときは,区画審に2倍以上の較差の解消のための選挙区割りの改定案の作成を義務付けたものである。このように,平成28年改正法の本則は,人口の異動は絶えず生ずるものであることを踏まえ,制度の安定性の要請をも考慮しつつ,小選挙区選挙における選挙区の画定に関する上記の枠組みの下において,都道府県への定数の配分につき人口に比例して行う方式の一つであるアダムズ方式を導入し,選挙区割りについては10年ごとに行われる国勢調査の結果に基づく改定にとどまらず,その中間に行われる簡易国勢調査の結果に基づく改定をも行うものとして,全期間を通じて選挙区間における投票価値の較差(議員1人当たりの人口の較差)が2倍未満となるよう,可能な限りの制度的手当を施したものということができる。
ところで,都道府県を単位として小選挙区選出議員の定数を配分した上,都道府県の区域内における選挙区割りを行うという枠組みの下においては,都道府県への定数の配分の段階で,アダムズ方式を始めとする人口に比例して行う方式によったとしても,小選挙区選出議員の総定数との関係から,必然的に議員1人当たりの選挙人数ないし人口の較差が生じることは避けられない。また,各都道府県内における選挙区割りの段階でも,人口の均衡を図る上で様々な技術上の制約がある。
しかしながら,前記のとおり,憲法上,衆議院議員の選挙制度における定数配分及び選挙区割りの決定において,議員1人当たりの選挙人数ないし人口ができる限り平等に保たれることを最も重要な基準とすることが求められているものの,それ以外の要素も合理性を有する限り国会において考慮することが許容されているのであり,具体的な選挙区を定めるに当たっては,都道府県を細分化した市町村その他の行政区画などを基本的な単位として,地域の面積,人口密度,住民構成,交通事情,地理的状況などの諸要素を考慮しつつ,国政遂行のための民意の的確な反映を実現するとともに,投票価値の平等を確保するという要請との調和を図ることが求められているのである。そして,都道府県は,これまで我が国の政治及び行政の実際において相当の役割を果たしてきたことや,国民生活及び国民感情においてかなりの比重を占めていることなどに鑑みれば,選挙区割りをするに際して無視することのできない基本的な要素の一つというべきである。当該選挙制度によって選出される議員が,いずれの地域の選挙区から選出されたかを問わず,全国民を代表して国政に関与することが要請されているとしても,都道府県が選挙区割りをするに際して無視することができない基本的な要素の一つであることに変わりはなく,選挙区割りの決定において都道府県を小選挙区選出議員の定数配分の単位とすることは,国会において正当に考慮することができる要素というべきである。また,都道府県の区域内における選挙区割りに当たっても,従来の選挙の実績,選挙区としてのまとまり具合,市町村その他の行政区画,面積の大小,人口密度,住民構成,交通事情,地理的状況等は,国会が正当に考慮することができる要素というべきである。他方で,不断に生じる人口の異動を選挙区割りや議員定数の配分にどのように反映させるかという点も,国会が政策的観点から考慮することができる要素の一つというべきであり,とりわけ,人口の異動は絶えず生ずるものであるのに対し,国会が議員定数配分規定を頻繁に改正することは,政治における安定の要請から考えて,実際的でも相当でもないことを考慮すれば,選挙区割りの改定に当たり制度の安定性に配慮することも,国会が正当に考慮することができる要素の一つというべきである。
以上の観点からすれば,平成28年改正法の本則による小選挙区選挙の選挙区の画定に関する定めは,本件各大法廷判決を踏まえ,国会が正当に考慮することができる諸要素を斟酌した上で,憲法の投票価値の平等の要求に適合させるべく,可能な限りの制度的手当を施したものということができ,平成28年改正法により国会は選挙区間における投票価値の較差の縮小に向けて抜本的な改正を行ったものと評価することができるのであって,国会に与えられた裁量権の行使として十分な合理性を有するものというべきである。
4そこで,本件区割規定の合憲性について検討する。
上記のとおり,平成28年改正法による改正においては,制度の安定性への配慮から,平成28年改正法の本則の定めによる選挙区割りの改定は平成32年の国勢調査以降に行うものとした上で,それまでの経過措置を平成28年改正法附則において定めたものであり,本件区割規定は,平成28年改正法附則に基づいて各都道府県への定数の配分及び選挙区割りを定めたものである。そうであるところ,平成28年改正法附則の定める小選挙区選挙の選挙区の画定に関する定めは,激変緩和のために,小選挙区の定数の削減による影響を受ける都道府県を極力減らす観点から,各都道府県への定数の配分につき,6の都道府県について定数を各1ずつ減ずる0増6減を行うものとし,定数削減の対象となる都道府県については,削減後の小選挙区定数を平成27年の簡易国勢調査の結果に基づいてアダムズ方式により都道府県に配分した場合に改正前小選挙区定数よりも減員となる都道府県のうち議員1人当たりの人口の少ないところから順に6都道府県を選ぶものとし,選挙区割りについては,上記簡易国勢調査の結果に基づく選挙区間の議員1人当たりの人口の較差が2倍未満となるようにし,かつ,平成32年の国勢調査の結果に基づく選挙区の改定までの期間を通じて上記の較差が2倍未満となるように,平成32年見込人口に基づく上記の較差が2倍未満となることを基本として行うこととしたものである。証拠(乙10)によれば,平成22年の国勢調査の結果に基づきアダムズ方式により各都道府県の小選挙区定数(平成28年改正法による削減後の定数)の配分を行った場合,旧区割規定から7増13減が必要となること(具体的には,青森県,岩手県,宮城県,新潟県,三重県,滋賀県,奈良県,広島県,愛媛県,長崎県,熊本県,鹿児島県及び沖縄県の区域内の選挙区の数をそれぞれ1減じ,埼玉県,千葉県,神奈川県及び愛知県の区域内の選挙区の数をそれぞれ1増やし,東京都の区域内の選挙区の数を3増やすことになる。)が認められ,平成29年改正法により0増6減(青森県,岩手県,三重県,奈良県,熊本県及び鹿児島県の区域内の選挙区の数をそれぞれ1減ずるものである。)の改定が実施されたものの,その余の12都県に係る7増7減の改定は行われていない。
しかし,平成28年改正法による改正が行われた時点において,最新の平成22年の国勢調査から6年が経過し,直近の平成32年の国勢調査を4年後に控え,かつ,平成27年の簡易国勢調査の結果が出されていたのであり,平成28年改正法は,このような状況に鑑み,制度の安定性への配慮から,本則の定めによる選挙区の改定を平成32年の国勢調査以降に行うものとした上で,それまでの経過措置として,上記のとおり,各都道府県への小選挙区定数の配分については,激変緩和の観点から,6の都道府県について定数を各1ずつ減ずる0増6減を行うにとどめつつも,直近の平成27年の簡易国勢調査の結果に基づき,本則の定めるアダムズ方式による配分を一部先取りする形で,上記6の都道府県を選び,他方で,選挙区割りについて,上記簡易国勢調査人口に基づく選挙区間の議員1人当たりの人口の較差が2倍未満となるようにし,かつ,平成32年の国勢調査の結果に基づく選挙区割りの改定までの期間を通じて上記の較差が2倍未満となるように,平成32年見込人口に基づく上記の較差が2倍未満となることを基本として行うこととして,本件各大法廷判決により憲法の投票価値の平等の要求に反する状態にあると指摘された選挙区間における投票価値の較差の漸次的縮小を図ったものということができる。もとより,投票価値の較差の是正に向けて選挙制度を漸次的に整備していくことも,国会の裁量に係る現実的な選択として許容されていると解されるところ,平成28年改正法は,前記のとおり,本則において,都道府県を単位として小選挙区選出議員の定数を配分した上,都道府県の区域内における選挙区割りを行うという枠組みを維持しつつ,選挙区間における投票価値の較差を縮小すべく,可能な限りの制度的手当を施した規定を設けるとともに,平成29年改正法による本件選挙区割りの基となった各都道府県への定数の配分についてのいわゆる0増6減を始めとする選挙区割りの改定に関する規定を,上記の本則に基づく選挙区割りの改定までの経過措置として附則の形で明確に位置付けている。また,当該規定の内容をみても,最新の平成27年の簡易国勢調査の結果に基づいて,選挙区間における議員1人当たりの人口の較差が2倍未満となるように選挙区割りを行うものとするにとどまらず,平成32年見込人口に基づく上記の較差が2倍未満となることを基本として行うこととすることにより,選挙区割りの改定までの期間を通じて上記の較差が2倍未満となるよう配慮しており,平成28年改正法附則に基づいてされた平成29年改正法による選挙区割り(本件選挙区割り)においては,平成27年の簡易国勢調査の結果に基づく選挙区間の議員1人当たりの人口の最大較差が1.956倍にとどまっているのみならず,平成32年見込人口に基づく最大較差も1.999倍と2倍未満に抑えられた内容のものとなっているのである。このように,平成28年改正法附則及びこれに基づく平成29年改正法による選挙区割りの改定は,選挙区間における投票価値の較差の漸次的縮小を図るための経過措置という位置付けであるとはいえ,都道府県への定数の配分において平成28年改正法の本則の定める人口比例方式(アダムズ方式)による配分を一部先取りする内容となっている上,全期間を通じて選挙区間における投票価値の較差(議員1人当たりの人口の較差)が2倍未満となるようにするという本則の趣旨をもほぼ実現する内容となっているということができる。
以上に加えて,前記のとおり,平成28年改正法の本則による小選挙区選挙の選挙区の画定に関する定めが国会に与えられた裁量権の行使として十分な合理性を有するものというべきであることをも併せ考えると,平成28年改正法附則の小選挙区選挙の選挙区の画定に関する定めも,国会に与えられた裁量権の行使として相応の合理性を有するものというべきであり,平成28年改正法附則に基づき平成29年改正法により本件区割規定を定めたことが,投票価値の平等との関係において国会の裁量権の範囲を逸脱するものであるということはできない。
また,本件区割規定の下において実施された本件選挙当時,選挙区間における議員1人当たりの選挙人数の最大較差は1対1.979であり,選挙人数が最も少ない選挙区と比べて較差が2倍以上となっている選挙区は存在しなかったことは,前記のとおりであるから,本件選挙時における選挙区間の投票価値の不平等が憲法の投票価値の平等の要求に反する程度に至っていたということもできない。
したがって,本件区割規定は,それが定められた当時においても,本件選挙時においても,憲法14条等の憲法の規定に違反するものということはできない。
5これに対して,原告らは,上記第2・3のとおり主張するので,以下において検討する。
原告らは,憲法前文第1文,1条,56条2項によれば,国民主権を前提とする以上,両議院の議事を決する過半数の出席議員を選出する主権者の数は必ず全出席議員を選出する主権者の数の過半数でなければならず,これを実現するための方法は人口比例選挙以外ないと主張する。
しかし,憲法前文第1文は,憲法1条の定める国民主権の原理を前提に代表民主制ないし議会制民主主義を宣明したものにすぎず,また,憲法56条2項は,両議院の表決について規律するものであって,いずれも衆議院議員の選挙制度の仕組みの決定方法ないしその仕組みについて人口比例主義を基準とすべきことを定めるものと解することはできない。上記1のとおり,投票価値の平等は,選挙制度の仕組みを決定する絶対の基準ではなく,国会が正当に考慮することができる他の政策的目的ないし理由との関係において調和的に実現されるべきものであるというべきであり,国会が合理的に選択した選挙制度の結果として生ずる投票価値の較差を一切許容しないものとは解されない。
したがって,原告らの上記主張は採用することができない。
原告らは,1人別枠方式を廃止し,平成22年の国勢調査の結果による人口に基づき,アダムズ方式により各都道府県の区域内の選挙区の数を配分すると,7増13減が必要となるところ,平成29年改正法においては6県に係る0増6減を行ったのみで,12都県に係る7増7減はいまだ実現されていないので,これらの都県の区域内の選挙区の数は1人別枠方式により決定されたものであるといわざるを得ず,全選挙区の有機的一体性により,本件選挙区割り全体が憲法の投票価値の平等の要求に反する状態にあるというべきであると主張する。
上記4において説示したとおり,本件選挙区割りにおける各都道府県への定数の配分においては,人口比例方式が貫徹されておらず,その結果,原告らの主張するとおり,平成22年の国勢調査結果による人口に基づきアダムズ方式により配分を行った場合と比べて12都県に係る7増7減が未実現の状態となっているということができる。
しかし,上記4において説示したとおり,投票価値の較差の是正に向けて選挙制度を漸次的に整備していくことも,国会の裁量に係る現実的な選択として許容されていると解されるところ,各都道府県への定数の配分において0増6減を行うにとどめたのは,激変緩和の趣旨に出たものであって,減員の対象となる6の都道府県の選定については,最新の平成27年の簡易国勢調査の結果に基づき本則の定めるアダムズ方式による定数配分を一部先取りする形で行っていることに加えて,選挙区割りについては,平成28年改正法附則により,上記簡易国勢調査の結果に基づいて,選挙区間における議員1人当たりの人口の較差が2倍未満となるように選挙区割りを行うものとするにとどまらず,平成32年見込人口に基づく上記の較差が2倍未満となることを基本として行うこととすることにより,平成29年改正法による本件選挙区割りにおいては,上記簡易国勢調査の結果に基づく選挙区間の議員1人当たりの人口の最大較差が1.956倍にとどまっているのみならず,平成32年見込人口に基づく最大較差も1.999倍と2倍未満に抑えられた内容のものとなっていって,全期間を通じて選挙区間における投票価値の較差(議員1人当たりの人口の較差)が2倍未満となるようにするという平成28年改正法の本則の趣旨をもほぼ実現する内容となっているのである。これらからすれば,経過措置としての平成28年改正法附則の小選挙区選挙の選挙区の画定に関する定めは,国会に与えられた裁量権の行使として相応の合理性を有するものというべきであり,平成29年改正法による本件選挙区割りが投票価値の平等との関係において国会の裁量権の範囲を逸脱するものであるということはできない。
したがって,原告らの上記主張を採用することはできない。
原告らは,平成23年大法廷判決は,旧々区画審設置法3条1項の趣旨は最大較差2倍という数値を小選挙区選挙における投票価値の較差について合憲,違憲の結論を決める画一的に量的な基準とする趣旨ではないと判断していると解され,投票価値の最大較差が2倍以上でなかったからといって,憲法の投票価値の平等の要求に反しないというわけではないと主張する。しかし,平成28年改正法の本則による小選挙区選挙の選挙区の画定に関する定めは,国会に与えられた裁量権の行使として十分な合理性を有するものというべきであり,経過規定としての平成28年改正法附則の選挙区の画定に関する定めも,国会に与えられた裁量権の行使として相応の合理性を有するものというべきであって,平成28年改正法附則に基づき平成29年改正法により本件区割規定を定めたことが,投票価値の平等との関係において国会の裁量権の範囲を逸脱するものであるということはできず,本件区割規定の下において実施された本件選挙当時,選挙区間における議員1人当たりの選挙人数の最大較差は1対1.979であり,選挙人数が最も少ない選挙区と比べて較差が2倍以上となっている選挙区は存在しなかったことからすれば,本件選挙時における選挙区間の投票価値の不平等が憲法の投票価値の平等の要求に反する程度に至っていたということはできないことは,上記4において説示したとおりである。
したがって,原告らの上記主張は採用することができない。
原告らは,憲法は,各選挙区の人口は必要とあれば都道府県の境界をまたいでも均一とすることを求めていることに照らすと,アダムズ方式は,都道府県を単位として人口に基づいて議員定数の配分を決定しているので,憲法の要求する人口比例選挙を実現することができず,投票価値の平等の要求に反するというべきであると主張する。
しかし,上記1のとおり,投票価値の平等は,選挙制度の仕組みを決定する絶対の基準ではなく,国会が正当に考慮することができる他の政策的目的ないし理由との関係において調和的に実現されるべきものであるところ,衆議院議員の選挙については,憲法上,議員1人当たりの選挙人数ないし人口ができる限り平等に保たれることを最も重要かつ基本的な基準とすることが求められているものの,それ以外の要素も合理性を有する限り国会において考慮することが許容されているのであり,具体的な選挙区を定めるに当たっては,都道府県を細分化した市町村その他の行政区画などを基本的な単位として,地域の面積,人口密度,住民構成,交通事情,地理的状況などの諸要素を考慮しつつ,国政遂行のための民意の的確な反映を実現するとともに,投票価値の平等を確保するという要請との調和を図ることが求められている。そして,上記3において説示したとおり,都道府県は,これまで我が国の政治及び行政の実際において相当の役割を果たしてきたことや,国民生活及び国民感情においてかなりの比重を占めていることなどに鑑みれば,選挙区割りをするに際して無視することのできない基本的な要素の一つというべきであって,当該選挙制度によって選出される議員が,いずれの地域の選挙区から選出されたかを問わず,全国民を代表して国政に関与することが要請されているとしても,都道府県が選挙区割りをするに際して無視することができない基本的な要素の一つであることに変わりはなく,選挙区割りの決定において都道府県を小選挙区選出議員の定数配分の単位とすることは,国会において正当に考慮することができる要素というべきである。
したがって,原告らの上記主張は採用することができない。
第4結論
以上のとおり,本件区割規定が,本件選挙当時,憲法14条1項等の規定に違反するとはいえないから,本件選挙区割りの下に実施された本件選挙が違法であるとはいえない。
よって,主文のとおり判決する。

福岡高等裁判所宮崎支部

裁判長裁判官

西川知
裁判官

秋元健
裁判官

小川
(当事者の表示は省略)
一郎一暁
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