判例検索β > 平成28年(行ケ)第10213号
審決取消請求事件 特許権 行政訴訟
事件番号平成28(行ケ)10213
事件名審決取消請求事件
裁判年月日平成30年3月8日
法廷名知的財産高等裁判所
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平成30年3月8日判決言渡
平成28年(行ケ)第10213号
口頭弁論終結日

審決取消請求事件

平成30年1月16日
判原決告
ワトロウ

エレクトリック

ファクチュアリング

訴訟代理人弁護士

マニュ

カンパニー

浅村昌弘和田研史松川直樹
訴訟復代理人弁護士

和田嵩
訴訟代理人弁理士

金井建白江被庁長則告特
指定代理人

清水稔高橋克富澤哲生板谷玲子須原宏光小林紀史主許克官文1
原告の請求を棄却する。

2
訴訟費用は原告の負担とする。

3
この判決に対する上告及び上告受理申立てのための付加期間を30日と定める。
事実及び理由
第1

請求
特許庁が不服2015-4409号事件について平成28年5月13日にした審決を取り消す。

第2
1
事案の概要
特許庁における手続の経緯等
原告は,「温度センサ・アセンブリ及びその製造方法」なる名称の発明について,平成20年6月6日を国際出願日とする特許出願(特願2010-513323号。
パリ条約による優先権主張平成19年6月22日,
米国。
以下
「本
願」という。)をし,平成23年8月9日付け,平成24年9月4日付け及び平成25年10月25日付けの各拒絶理由通知に対し,それぞれ,平成23年11月14日付け,平成25年3月7日付け及び平成26年4月30日付けの手続補正書をもって特許請求の範囲の補正をしたが,平成26年10月31日付けで拒絶査定を受けた。
原告は,平成27年3月5日,拒絶査定不服審判を請求し(不服2015-4409号),同年4月16日付けで手続補正書(方式)を提出した。特許庁は,平成28年5月13日,「本件審判の請求は,成り立たない。」との審決をし(出訴期間として90日を附加),その謄本は,同月25日,原告に送達された。
原告は,同年9月21日,審決の取消しを求めて,本件訴えを提起した。
2
特許請求の範囲の記載
本願の特許請求の範囲請求項1の記載
(ただし,
最終の補正後のもの。は,

構成要件に分説すると,
次のとおりである
(以下,
同請求項1記載の発明を
「本
願発明」といい,本願に係る明細書及び図面を併せて「本願明細書」という。なお,構成要件の分説は,便宜上,原告のそれに従う。)。
A
内部に空洞を画定するプローブ本体,前記空洞の中に位置決めされた温度センサ,及び前記空洞の中に位置決めされた少なくとも1つの導体を有する少なくとも1つの温度プローブであって,

B
前記少なくとも1つの導体は,該少なくとも1つの導体上の温度を示す温度信号を提供するように構成されている少なくとも1つの温度プローブと,
C
前記プローブ本体のまわりに回転可能に位置決めされ,前記プローブ本体を実装アセンブリに固定するように構成された実装コネクタであって,前記プローブ本体は実装コネクタを通して挿入されている実装コネクタと,
D
前記少なくとも1つの導体に対応する少なくとも1つのワイヤを有するワイヤ・セットであって,前記少なくとも1つのワイヤは第1の端部及び第2の端部を有し,前記少なくとも1つのワイヤの前記第1の端部は,結合部において前記少なくとも1つの導体に結合されるワイヤ・セットと,
E
前記少なくとも1つの導体と前記ワイヤ・セットの前記少なくとも1つのワイヤとの前記結合部を取り囲んでそれらを結合する接続構成要素であって,前記少なくとも1つの導体と前記ワイヤ・セットの前記少なくとも1つのワイヤとのクリンプ終端部を提供し,且つ前記少なくとも1つの導体と前記ワイヤ・セットの前記少なくとも1つのワイヤとに溶接されている接続構成要素と,

F
前記ワイヤ・セットの前記少なくとも1つのワイヤの前記第2の端部を受け入れるように構成された入力部,及び温度測定システムに結合して温度特性を提供するための出力部を有するハウジングであって,

G
前記温度測定システムは該ハウジングの外部にあるハウジングと,
H
前記プローブ本体の中間部分のまわりに配置されたカラーと,

I
前記ハウジングに封入される回路であって,前記温度プローブから前記温度信号を受け取り,また該受け取った温度信号に応答して前記温度特性を生成するように構成された回路とを有し,
J
前記実装コネクタおよび前記カラーは,前記温度プローブを実装面に実装するためにそれぞれ適合されている

K3
温度センサ・アセンブリ。
審決の理由の要旨

(1)審決の理由は,別紙審決書(写し)記載のとおりである。要するに,本願発明は,本願の優先日前に頒布された刊行物であるMTZ,2003年
9
月,64巻,p704~706,708,710~712(甲1・以下「引用例1」という。)に記載された発明(以下「引用発明」という。)並びに特開2004-212269号公報(甲2・以下「引用例2」という。)及び特開2002-122486号公報(甲3・以下「引用例3」という。)に記載されている技術事項(周知技術)に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない,というものである。
(2)審決が認定した引用発明,本願発明と引用発明との一致点及び相違点は,以下のとおりである。

引用発明
「熱電対と電子回路を組み合わせた排ガス温度センサーであって,先端に熱電対を収めた金属製の保護管を備え,
雄ネジが形成されたナットは,先端に熱電対を収めた金属製の保護管に取り付けられ,排ガス管の溶接ソケットに係合し,
鍔部を有するリングが,先端に熱電対を収めた金属製の保護管の中間部に取り付けられ,
先端に熱電対を収めた金属製の保護管が,雄ネジが形成されたナットを用いて排ガス管に取り付けられ,
先端に熱電対を収めた金属製の保護管に,可撓性ケーブルの一端が接続され,他端が,電子回路システムの筐体と接続され,
電子回路システムにおいて,熱電対の測定信号である熱起電力をパルス幅変調信号(PWM)に変換し,各温度がパルスのデューティ比に対応する信号を生成し,
電子回路システムにおいて生成されるPWM信号は,エンジン制御装置に伝送される,
排ガス温度センサー。」

本願発明と引用発明との一致点
「内部に空洞を画定するプローブ本体,前記空洞の中に位置決めされた温度センサ,及び前記空洞の中に位置決めされた少なくとも1つの導体を有する少なくとも1つの温度プローブであって,前記少なくとも1つの導体は,該少なくとも1つの導体上の温度を示す温度信号を提供するように構成されている少なくとも1つの温度プローブと,
前記プローブ本体を実装アセンブリに固定するように構成された実装コネクタであって,前記プローブ本体は実装コネクタを通して挿入されている実装コネクタと,
電線と,
電線を受け入れるように構成され,及び温度を表す信号を提供するためのハウジングであって,
前記プローブ本体の中間部分のまわりに配置されたカラーと,
前記ハウジングに封入される回路であって,前記温度プローブから前記温度信号を受け取り,また該受け取った温度信号に応答して前記温度を表す信号を生成するように構成された回路とを有し,
前記実装コネクタは,前記温度プローブを実装面に実装するために適合されている温度センサ・アセンブリ。」


本願発明と引用発明との相違点
(ア)本願発明は,「前記少なくとも1つの導体に対応する少なくとも1つのワイヤを有するワイヤ・セットであって,前記少なくとも1つのワイヤは第1の端部及び第2の端部を有し,前記少なくとも1つのワイヤの前記第1の端部は,結合部において前記少なくとも1つの導体に結合されるワイヤ・セット」であるのに対し,引用発明は,「電線」を有することが明らかなものの,このような構成が明確に特定されていない点。(イ)本願発明は,「前記少なくとも1つの導体と前記ワイヤ・セットの前記少なくとも1つのワイヤとの前記結合部を取り囲んでそれらを結合する接続構成要素であって,前記少なくとも1つの導体と前記ワイヤ・セットの前記少なくとも1つのワイヤとのクリンプ終端部を提供し,且つ前記少なくとも1つの導体と前記ワイヤ・セットの前記少なくとも1つのワイヤとに溶接されている接続構成要素」を有するのに対し,引用発明は,このような接続構成要素を有するか否か不明な点。
(ウ)電線を受け入れるように構成されたハウジングについて,
本願発明は,
「前記ワイヤセットの前記少なくとも1つのワイヤの前記第2の端部」・
を受け入れるように構成された「入力部を有する」のに対し,引用発明は,このような構成が明確に特定されていない点。
(エ)本願発明は,「温度測定システムに結合して温度特性を提供するための出力部を有する」ハウジングであって,「前記温度測定システムは該ハウジングの外部にあるハウジング」であるのに対し,引用発明は,このような特定がない点。
(オ)本願発明は,「該受け取った温度信号に応答して前記温度特性を生成するように構成された回路」であるのに対し,引用発明はこのような特定がない点。
(カ)本願発明は,前記プローブ本体のまわりに回転可能に位置決めされ,「

前記プローブ本体を実装アセンブリに固定するように構成された実装コネクタであるのに対し,引用発明の「雄ネジが形成されたナット」(本願発明の「実装コネクタ」に相当。)について,このような構成が明確には特定されていない点。
(キ)本願発明は,前記実装コネクタおよび「前記カラー」は,前記温度プローブを実装面に実装するためにそれぞれ
「適合されている」
のに対し,
引用発明の「鍔部を有するリング」(本願発明の「カラー」に相当。)について,このような構成が明確には特定されていない点。
(以下,それぞれ,相違点(ア)~(キ)という。)
4
原告主張の取消事由
(1)対比の認定の誤り及び相違点の看過
(2)相違点(キ)に関する容易想到性判断の誤り
(3)引用例1の主引用例としての適格性欠如
(4)理由通知義務違反

第3
1
当事者の主張
取消事由(1)(対比の認定の誤り及び相違点の看過)について

(原告の主張)
次のとおり,審決における本願発明と引用発明との対比の認定には重大な誤りがあり,本来,相違点とされるべき部分が相違点とされておらず,当該部分の容易想到性について判断されていない違法がある。
(1)構成要件Jについて

本願発明における構成要件Jの構成
本願発明における「前記実装コネクタおよび前記カラーは,前記温度プローブを実装面に実装するためにそれぞれ適合されている」とは,次の図(甲31記載の図。以下「甲31の図」という。)に示すとおり,二つの独立した実装面
(図中の
「MountingSurface#1」「MountingSurface#2」及び
と記載されている面)をシールするための面として備えていることを表している。
このことは,本願明細書の【0036】の記載並びに図4A及び図4Bの記載から明らかである。
すなわち,本願明細書の【0036】には,実装コネクタをねじ山付きの孔にねじ込むことにより,カラーと実装コネクタとで実装面に対してシール(密閉)すること,さらに,実装コネクタが(実装アセンブリの)ねじ山付の孔に接続される構成,すなわち,「プローブ本体を実装アセンブリに固定するように構成」(構成要件C)が開示されている。
また,本願明細書の図4A及び図4Bには,カラー(図4A及び図4Bにおける84)が実装コネクタ(図4A及び図4Bにおける82)(の内側)にねじ込まれる構成が記載されている。
以上から,本願発明は,温度センサを,甲31の図に示すように,「実装アセンブリ」
(甲31の図中では
「MountingPort」
と表現されている。,

「実装コネクタ」及び「カラー」によって,温度測定環境に実装されるものであるところ,これらの構成から,実装コネクタと実装アセンブリとの間に形成される第1のシール面(MountingSurface#1),カラーと実装アセンブリとの間に形成される第2のシール面(MountingSurface#2)が理解される。そして,構成要件Jにおける「実装面に実装するようにそれぞれ適合されている」とは,これら二つのシール面が存在することを表している。

引用発明との対比
引用発明の構成は,次の図(引用例1の図3及び図4)のとおり理解されるところ
(判決注:図中の赤字部分は原告が書き加えたものであり,
「締
め付け部」は審決の「雄ネジが形成されたナット」に,「圧入されたシールリング」は審決の「ソケット」に,「ストップリング」は審決の「鍔部を有するリング」に,それぞれ該当する。),審決は,本願発明と引用発明とが「前記実装コネクタは,前記温度プローブを実装面に実装するために適合されている」点で一致すると認定した。

しかし,本願発明における「前記実装コネクタは,前記温度プローブを実装面に実装するために適合されている」の意味は,前記アのとおり,第1のシール面(MountingSurface#1)が存在していることをいうところ,引用発明における「圧入されたシールリング」は,引用例1の図4に示されるとおり,
温度測定環境である
「排ガス管」
内部に部分的に挿入
(圧入)
して使用されるものであるから,
本願発明にいう第1のシール面
(Mounting
Surface#1)
に該当する面においてシールする機能を担っていないことが明
らかである。
また,本願発明の実装アセンブリについても,甲31の図のとおり,排ガス管等の内部に部分的に挿入されることはなく,排ガス管表面上に置かれるものである点で,
引用発明の
「圧入されたシールリング」
とは異なる。
したがって,審決の上記認定は誤っている。
(2)構成要件Hについて
審決は,本願発明と引用発明とが「前記プローブ本体の中間部のまわりに配置されたカラー」との点で一致すると認定した。
しかし,引用発明の「鍔部を有するリング」は,排ガス管の実装面に適合して使用されるものではなく,温度センサが排ガス管に挿入される深さを規定するためのものであるから,本願発明の「カラー」と構成及び機能が異なる。
したがって,引用発明の「鍔部を有するリング」は,本願発明の「カラー」に対応しないものであるにもかかわらず,対応するものと扱っている点で,審決の上記認定は誤っている。
(3)構成要件Aについて
審決は,本願発明と引用発明とが「前記空洞の中に位置決めされた温度センサ,及び前記空洞の中に位置決めされた少なくとも一つの導体を有する」点で一致すると認定した。
しかし,引用例1の図3には内部構造が示されておらず,本文中にこの点に関する記載もないことからすると,引用例1の熱電対が保護管の空洞の中に位置決めされているか,それとも,遊びのある状態で封入されているかは定かでない。また,「熱電対を支持体に固定して動かないようにすることは常套手段である」との認定は憶測にすぎない。
したがって,審決における,引用発明の「金属製の保護管」に収められた「熱電対」が保護管の「空洞の中に位置決めされた温度センサ」に相当するとの認定,及び,熱電対をなす導体が本願発明の「空洞の中に位置決めされた少なくとも1つの導体」に相当するとの認定は,いずれも,上記憶測に基づく判断であって誤っている。
(4)構成要件D,E及びFについて
審決は,引用発明の「可撓性ケーブル」に設けられる電線と,本願発明の「ワイヤ・セット」とは,電線である点で共通すると認定したが,誤っている。
すなわち,審決の認定は,引用発明の可撓性ケーブル内に熱電対(熱伝導線)とは異なる「電線」が設けられていることを前提とするものであるが,これは,本願発明の図5の構造(温度プローブの導体すなわち熱伝導線90と,リード・ワイヤすなわち電線54が異なる)等を元にした後知恵的評価である。審決が引用する引用例1にそのような記載はなく,むしろ,引用発明の可撓性ケーブル内は熱電対(熱伝導線)が設けられている可能性の方が高い。
したがって,この点を一致点と認定したことも誤っている。
(被告の主張)
争う。次のとおり,審決には,原告が指摘するような誤りはない。(1)構成要件Jについて

「前記実装コネクタおよび前記カラーは,前記温度プローブを実装面に実装するためにそれぞれ適合されている」との記載の技術的意義
「適合する」とは,通常「当てはまる」という意味であり,さらに,本願の請求項1には,「温度プローブを実装面に実装するために」と記載されているのであるから,当該請求項1の「前記実装コネクタおよび前記カラーは,前記温度プローブを実装面に実装するためにそれぞれ適合されている」との記載の技術的意義は,「実装コネクタおよびカラーは,いずれも,温度プローブを実装面に実装するという目的に当てはまるようにされている」というものであると解される。
また,本願明細書において,請求項1の記載がこれと異なる意味であるとする記載は,見当たらない(本願明細書の【0036】は,請求項1の記載と同趣旨である「温度プローブ12/52を実装面に実装するように適合される」ことについて,①「実装コネクタ18/82をねじ山付きの孔にねじ込みカラー20/84を密閉すること」,及び②「実装コネクタ18/82を実装面に押し付けて実装すること」という二つの例を示すものと理解されるが,だからといって,請求項1の記載の技術的意義が上記のいずれかに例示のもの,すなわち,①ねじ山付きの孔にねじ込み,密閉すること,②実装面に押し付けて実装することに限定されていると理解することはできない。)。

一致点の認定について
引用発明においては,
「先端に熱電対を収めた金属製の保護管」が,
「雄
ネジが形成されたナット」を用いて「排ガス管」に取り付けられているものとみることができる(すなわち,引用例1の図4からは,「先端に熱電対を収めた金属製の保護管」に取り付けられた「雄ネジが形成されたナット」が,「排ガス管」に取り付けられたシールリングに係合し,これにより「先端に熱電対を収めた金属製の保護管」が「排ガス管」に取り付けられることが実際に見て取れる。そして,「先端に熱電対を収めた金属製の保護管」
に取り付けられた「雄ネジが形成されたナット」がなければ,
「当
該先端に熱電対を収めた金属製の保護管」を「排ガス管」に取り付けることができないのは明らかであるから,「先端に熱電対を収めた金属製の保護管」が,「雄ネジが形成されたナット」を用いて「排ガス管」に取り付けられているものとみることに誤りはない。)から,「雄ネジが形成されたナット」は,
「先端に熱電対を収めた金属製の保護管」を,
「排ガス管」
の実装面に実装するという目的に当てはまるようにされている,
すなわち,
実装面に実装するために適合されているといえる。
したがって,審決が,本願発明と引用発明とが「前記実装コネクタは,前記温度プローブを実装面に実装するために適合されている」点で一致していると認定した点に誤りはない。

原告の主張について
原告は,本願明細書の【0036】から,本願発明は,温度センサを,甲31の図に示すように,
「実装アセンブリ」,
「実装コネクタ」及び「カ
ラー」によって温度測定環境に実装されるものであって,これらの構成から,実装コネクタと実装アセンブリとの間に形成される第1のシール面(MountingSurface#1),カラーと実装アセンブリとの間に形成される第2のシール面(MountingSurface#2)が理解され,そして,構成要件Jにおける「実装面に実装するようにそれぞれ適合されている」とは,これら二つのシール面が存在することを表していると主張する。
しかしながら,そもそも,甲31の図は本願明細書に示されておらず,特に「MountingPort」に相当するものについての記載や示唆は,本願明細書には全く見当たらない。
また,本願明細書の【0036】における「密閉する」との記載(前記①の例示)
が実装面をシールするための面の存在を示唆するとしても,
「二
つのシール面」の存在を示唆しているとまではいえないし,まして,請求項1の記載から,「二つのシール面」の存在や,「適合」の技術的意義が上記①の例示に係る「実装面をシールする」という観点を含むものに限定されているということを理解することはできない。
したがって,原告の主張は,特許請求の範囲の記載や本願明細書の記載に基づいておらず,その前提において失当である。

(2)構成要件Hについて
引用例1の図3及び図4のいずれからも,「先端に熱電対を収めた金属製の保護管」に対する「鍔部を有するリング」(ストップリング)及び「雄ネジが形成されたナット」(締め付け部)の位置関係が把握できるところ,図3の,金属製の保護管の先端と見受けられる位置に,熱電対を指すと解される「Sensor」との文字と共に丸で囲まれた領域が示されており,しかも,「雄
ネジが形成されたナット」を越えて上記領域から遠い位置においても,管状の部材が上記先端と同様の外観を呈するものとして示されていることから,「先端に熱電対を収めた金属製の保護管」の範囲は,少なくとも,上記先端から,同図の「雄ネジが形成されたナット」が示されている位置よりも上記先端と反対側の位置にまで及んでいることが明らかである。
したがって,図3において,「鍔部を有するリング」の位置は,「先端に熱電対を収めた金属製の保護管」の全体における中間部であるといえる。原告は,引用発明の「鍔部を有するリング」は,排ガス管の実装面に適合して使用されるものではなく,温度センサが排ガス管に挿入される深さを規定するためのものであり,本願発明の「カラー」と構成及び機能が異なるから,引用発明の「鍔部を有するリング」は本願発明の「カラー」に対応しない旨主張する。
しかしながら,審決は,相違点(キ)として,本願発明は「前記カラー」が前記温度プローブを実装面に実装するために「適合されている」のに対し,引用発明の「鍔部を有するリング」についてこのような構成が明確には特定されていない点を挙げているところ,当該相違点や,「鍔部を有するリング」が,温度センサが排ガス管に挿入される深さを規定するためのものであることは,上記認定を左右するものではない。
したがって,原告の主張は,審決の一致点の認定誤りの根拠となるものではなく,失当である。
(3)構成要件Aについて
排ガス温度センサに用いる熱電対を保護管の空洞の中に位置決めするに当たり,熱電対を支持体に固定して動かないようにすることは,例えば,実願昭55-73717号(実開昭56-174032号)のマイクロフィルム(乙1)や特公平3-64810号公報(乙2)に示されているように,当業者にとってごく普通に用いられている手段である。したがって,「熱電対を支持体に固定して動かないようにすることは常套手段である」との認定が憶測にすぎないとの指摘は当たらない。
また,引用例1の「排ガス温度センサー」は,「自動車における熱電対」(審決11頁1~3行)であるが,自動車のように常に振動が発生する環境下で使用される温度センサにおいて,これに用いる熱電対が,保護管の空洞の中に位置決めされることなく,
遊びのある状態で封入されているとすると,
振動により,熱電対が保護管の空洞の内壁に衝突して熱電対に損傷を与えることになり,著しく耐久性が落ちることになるから,排温度ガスセンサに用いる熱電対を保護管の空洞の中に位置決めすることは,当業者がごく普通に採用する手段である。
以上によれば,引用例1に接した当業者は,「熱電対」が「金属製の保護管」の空洞の中に位置決めされた状態で固定されているものと認識することは明らかであるから,審決が,引用発明の「金属製の保護管」に収められた「熱電対」は,保護管の「空洞の中に位置決めされた温度センサ」に相当すると認定した点に誤りはない。仮に,引用例1において,「熱電対」が「位置決めされ」ていることが明らかでないとしても,そのようにすることは当業者にとって容易なことといえる。
したがって,本願発明と引用発明とが「前記空洞の中に位置決めされた温度センサ,及び前記空洞の中に位置決めされた少なくとも一つの導体を有する」点で一致しているとの認定に誤りはない。
(4)構成要件D,E及びFについて
引用例1には,「熱電対は高温で安定な鋼,2.4851製の保護管に収められる」ものであり,「高温の測定部と,低温の解析用電子回路部は,シールドケーブルでしっかりと結合されている」ものであることが記載されている。また,
引用例1の図3には,
「先端に熱電対を収めた金属製の保護管」
に,
可撓性ケーブルの一端が接続されること,及び,可撓性ケーブルの他端が,電子回路システムの筐体と接続されることが見て取れるところ,引用例1に記載の「シールドケーブル」は,当該可撓性ケーブルを指していることが明らかである。
そうすると,「可撓性ケーブル」は,熱電対と電子回路システムとを電気的に接続するものであると理解するのが自然であり,そうである以上,「可撓性ケーブル」は電線としての機能を果たすものと評価できる。
したがって,引用発明の「可撓性ケーブル」に設けられる電線と,本願発明の「ワイヤ・セット」とは,電線である点で共通するとした審決の認定に誤りはなく,この点を一致点と認定したことについても誤りはない。原告は,審決の認定は本願発明の図5の構造等を元にした後知恵的評価であり,むしろ,引用発明の可撓性ケーブル内は熱電対(熱伝導線)が設けられている可能性の方が高い旨主張するが,前記のとおり,引用例1の記載によれば,
可撓性ケーブルは電線としての機能を果たすものと評価できるから,後知恵的評価との指摘は当たらないし,当該可撓性ケーブル内に熱電対(熱伝導線)が設けられている可能性が高いとみることに根拠はないから,原告の主張は失当である。
2
取消事由(2)(相違点(キ)に関する容易想到性判断の誤り)について
(原告の主張)
次のとおり,
相違点(キ)の容易想到性に関する審決の判断には,
看過し難い重
大な誤りが複数ある。
(1)機能・用途の相違
審決は,引用発明について,「鍔部を有するリングが,先端に熱電対を収めた金属製の保護管の中間部に取り付けられ」るものであると認定した上,引用発明の「鍔部を有するリング」と,引用例2の「フランジ13」及び引用例3の「リブ105」とを対応付けて,引用例2及び引用例3から認定される周知技術を引用発明に適用して,
「保護管の中間部に取り付けられ」
た,
突起状の部材である「鍔部を有するリング」
(本願発明の「カラー」に相当)
を,保護管を排ガス管に取り付けるために適合させるようにすることは,当業者が適宜なし得る事項であると判断した。
しかしながら,引用発明の「鍔部を有するリング」は,ストップリングの位置(厚み)をシールリングの深さの範囲内で変更して,締め付け部がシールリングに圧入される範囲を調整することにより,温度センサが排ガス管に挿入される深さを規定するためのものであるのに対し,引用例2の「フランジ13」は,「温度が検知される流体の漏れを防止する」(引用例2・【0020】)ためのものであるし,引用例3の「リブ105」は,「ボス部201に接触して排気が温度センサ100の取付部から外部に漏れることを防止する」(引用例3・【0003】)ためのものであって,機能・用途が異なっていることから対応付けられるものではない。
したがって,引用発明の「鍔部を有するリング」(ストップリング)と,引用例2の「フランジ」及び引用例3の「リブ」とは機能・用途が異なっているから,これら機能・用途が異なるものを組み合わせることはできない。(2)阻害要因の存在
引用例3のニップルナット106は,ボス部201に対して皿部分が接触するまで入り込まないようになっており,
本願発明にいうところの
「Mounting
Surface#1」が形成されることはない(引用例3・図2)。また,「105はボス部201に接触して排気が温度センサ100の取付部から外部に漏れることを防止するリブであり」(【0003】)と記載されていることからすると,引用例3におけるシール面は,リブ105とボス部201の間にのみ存在し,ニップルナット106の皿部とボス部201の間にあるとは開示されていない。
同様に引用例2においても,「ナット部3は,温度が検知される流体の漏れを防止するフランジ13と,温度センサを排気通路等に固定するナット14とからなる」(【0020】)と記載されていることからすると,シール面は,フランジ13と排気通路等との間に形成されているのみであり,他の部分に形成されているとは記載されていない。
一方,引用発明に関しては,そもそも,どの面において流体のシールが形成されているのかを示す具体的な記載がなく,引用例1の図4においても,ストップリング,シールリング,締め付け部等の各部材がある中でどのように各部材が設置され,どの部分でシールが行われているのかを認定することができない。
したがって,これらシール面について思想も開示内容も異なるものを組み合わせて本願発明の構成要件Jに至るとする被告の論理付けは後知恵である。(3)引用発明の内容中の示唆及び課題の共通性の不存在
本願発明は,
接続コネクタとカラーの
「それぞれ」
を実装面に適合させて,
不利な環境又は密閉された環境(例えば,エンジンのように常時振動していて,内部の気化又は液化した燃料を内部に密閉する必要のある環境)に,温度プローブを確実に,そして,コスト効率的に固定するものである(本願明細書・【0018】)。
これに対し,引用発明は,前記のとおり,温度プローブを「圧入されたシールリング」
という一つの部品を排ガス管に圧入して適合させ
(シールさせ),
同時に,「圧入されたシールリング」の内側に「挿入深さを規定する」ストップリングを設けることにより,排ガス管に挿入される温度センサの深さを規定するという機能を実現する発明である。
したがって,引用発明は,測定環境をシールするという点についてはシールリングを圧入することによって自己完結しており,引用例1には,本願発明のように二つの部品で実装面に適合させること,すなわち,二つの独立した実装面(「MountingSurface#1」及び「MountingSurface#2」)をシールするための面として備えていることは示唆されていないし,当該二つの独立した面が要求される課題があるとも記載されていない。
それにもかかわらず,引用発明にシールリング以外のシールのための部品を追加するために,引用例2及び引用例3から導かれる周知技術を組み合わせようとすることは,本願発明の「それぞれ」という文言を前提にした後知恵であって許されない。
(被告の主張)
(1)審決の判断に誤りがないこと
引用例1の図3において,「鍔部を有するリング」の位置は「先端に熱電対を収めた金属製の保護管」の全体における中間部であるといえるから,引用発明は「鍔部を有するリングが,先端に熱電対を収めた金属製の保護管の中間部に取り付けられ」るものであると審決が認定した点に誤りはない。また,引用例2の【0020】からは,温度センサの排気通路等への取り付けにおいて,第1ハウジング2及び第2ハウジング4にフランジ13を固定して取り付け,ナット14とともに,温度センサを排気通路等に取り付けることが記載されているといえ,引用例3の【0002】からは,温度センサ100の排気管200への取り付けにおいて,シースピン104にリブ105を接合することにより固定して取り付け,ニップルナット106とともに,排気管200に取り付けることが記載されているといえ,これらの記載を総合すれば,審決が認定した周知技術の内容,すなわち,温度センサの排ガス管への取り付けにおいて,プローブに突起状の部材(引用発明の「鍔部を有するリング」に対応。)を固定して取り付け,プローブに設けられたナットとともに,排ガス管に取り付けることは,周知技術であるとした点に誤りはない。
そして,審決が認定した上記周知技術は,換言すれば,温度センサの排ガス管への取り付けにおいて,プローブに突起状の部材(引用発明の「鍔部を有するリング」に対応。)を固定して取り付けるという,突起状の部材が,温度センサを排ガス管に実装するために「適合されている」構造をいうものである(ここで,「適合されている」とは,前記のとおり,「当てはまるようにされている」ことを意味する。)。
そして,前記のとおり,引用発明における「先端に熱電対を収めた金属製の保護管」は,「雄ネジが形成されたナット」を用いて,「排ガス管」に取り付けられるものであるところ,引用例1の図4では取り付けにおける「鍔部を有するリング」の機能や特性が直ちには明らかでないことから,取り付けの具体的な態様として,当該「鍔部を有するリング」について,引用発明と温度センサの排ガス管への取り付けという機能において共通する,周知技術に係る「適合されている」構造を適用して,それが「先端に熱電対を収めた金属製の保護管」に対して固定されているという,温度センサを排ガス管に実装するために「適合されている」構造を有するものとすることは,当業者が適宜なし得る事項であるといえる。
したがって,相違点(キ)に係る審決の判断に誤りはない。
(2)原告の主張について

機能・用途の相違について
原告は,引用発明の「鍔部を有するリング」は,ストップリングの位置(厚み)をシールリングの深さの範囲内で変更して,締め付け部がシールリングに圧入される範囲を調整することにより,温度センサが排ガス管に挿入される深さを規定するためのものであるのに対し,引用例2の「フランジ13」は「温度が検知される流体の漏れを防止する」
(引用例2・
【0
020】)ためのものであるし,引用例3の「リブ105」は「ボス部201に接触して排気が温度センサ100の取付部から外部に漏れることを防止する」(引用例3・【0003】)ためのものであって,機能・用途が異なるものであるから,引用発明の「鍔部を有するリング(ストップリング)」と,引用例2の「フランジ」及び引用例3の「リブ」とを組み合わせることはできない旨主張する。
しかしながら,シールリングの深さの範囲内でストップリングの厚みを変更したとしても,先端に熱電対を収めた金属製の保護管の先端側における,ストップリングから突出した部分の長さを変化させない限り,排ガス管に挿入される深さを変更することはできないから,まず,この点において原告の主張は当を得ない。
さらに,前記のとおり,引用例2及び引用例3から審決が認定した上記周知技術を導くことができ,また,引用発明と当該周知技術とは温度センサの排ガス管への取り付けという機能において共通する上,例えば,引用例3の【0002】~【0004】の記載によれば,リブ105が接合される位置は,シースピン104の挿入深さを規定するものであることから明らかなように,上記周知技術は,この点においても更に引用発明と同様の機能・用途を備えるものであるといえる。
したがって,原告の上記主張は,失当である。

阻害要因の存在について
原告は,引用例3におけるシール面は,リブ105とボス部201の間にのみ存在し,ニップルナット106の皿部とボス部201の間にシール面があるとは開示されておらず,同様に,引用例2にも,シール面はフランジ13と排気通路等との間に形成されているのみであり,他の部分に形成されているとは記載されていないとした上で,引用発明については,そもそも,どの面において流体のシールが形成されているのかを示す具体的な記載がないから,これらシールする面について思想も開示内容も異なるものを組み合わせて本願発明の構成要件Jに至るとする被告の論理付けは後知恵である旨主張する。
しかしながら,
前記のとおり,
「先端に熱電対を収めた金属製の保護管」

「排ガス管」
に取り付ける具体的な態様として,
「鍔部を有するリング」
について,周知技術に係る「適合されている」構造を適用することは,当業者が適宜なし得る事項であるから,後知恵との指摘は当たらない。また,そもそも,請求項1の記載は「シールする」という観点を含むものに限定されていると理解することができないものであるから,「シールする」ことについて云々する原告の主張は請求項1の記載に基づいたものではない。本願明細書の【0036】における「カラー20/84を密閉する」との例示は,甲31の図における「MountingSurface#2」に相当する部位においてシールする趣旨と解されるが,仮に,請求項1の記載において,当該例示のものによる限定がなされているとしても,引用例2及び引用例3の各記載から明らかなように,カラーを密閉することで実装面をシールすることも周知技術であるといえ,引用発明に当該周知技術を適用することは,当業者が適宜なし得る事項であるといえる。
したがって,原告の上記主張は失当である。

引用発明の内容中の示唆及び課題の共通性の不存在について
原告は,引用発明は,測定環境をシールするという点についてはシールリングにより圧入することで自己完結しており,本願発明のように二つの部品で実装面に適合させること,すなわち,二つの独立した実装面(「MountingSurface#1」及び「MountingSurface#2」)をシールするための面として備えていることは示唆されていないし,当該二つの独立した面が要求される課題があるとも記載されていないにもかかわらず,引用発明にシールリング以外のシールのための部品を追加するために,引用例2及び引用例3から導かれる周知技術を組み合わせようとすることは,本願発明の「それぞれ」という文言を前提にした後知恵である旨主張するが,前記イと同様の理由により,失当である。
3
取消事由(3)(引用例1の主引用例としての適格性欠如)について
(原告の主張)
引用例1は,発明が進歩性を欠如しているか否かを判断するための主引用例として不適切であり,このような不適切な引用例と本願発明とを対比して一致点・相違点を認定の上,本願発明が進歩性を欠如しているとの結論を下すことは許されない。
すなわち,引用発明自体は特許されるものではないが,特許された発明の有効性を左右するものであるから,それに相応しい信頼性が担保されるべきであり,引用発明が単なる空想の産物ではなく,現実に利用可能であったことを第三者が確認できる程度の水準を備えている必要がある。したがって,引用発明が記載されたとされる文献は,特許出願時の技術水準を基礎として,その刊行物に接した当業者がその発明の存在や性質を確認できる程度に,発明の内容が具体的に開示されていることが必要である(物の発明の進歩性を判断する際には,「刊行物の記載及び本願の出願時の技術常識に基づいて,当業者がその物を作れることが明らかでない場合」その発明を「引用発明」とすることができないのは当然である。)。
ここで,引用例1を検討すると,たしかに,ABB

Automation

Products社が熱電対と電子回路を組み合わせた排ガスセンサを開発したことが記載されている。
しかしながら,引用例1は,上記ABB社が当該排ガスセンサを開発した旨を説明する雑誌の記事又は販売促進資料であって,当該センサの性能や機能が示されているものの,その内部構造については,簡略的な記載と概念図しかなく,当該センサの内部構造を完全に把握することはできない。
特に,審決が本願発明と引用発明との対比において一致点と認定した,①引用発明の「金属製の保護管」に収められた「熱電対」が保護管の「空洞の中に位置決めされた温度センサ」に相当するとの点(対比の(3)),②熱電対をなす導体が本願発明の「空洞の中に位置決めされた少なくとも一つの導体」に相当するとの点(対比の(4)),③引用発明の「可撓性ケーブル」に電線(熱電対とは異なるもの)が設けられているとの点(対比の(7))については,いずれも引用例1に記載されていると評価することはできない。
したがって,審決には,引用例としての適格に欠ける引用例1を主引用例とした点で重大な瑕疵があり,取り消されるべき違法がある。
(被告の主張)
引用例1には,当該センサの性能や機能が示されており,その内部構造についても説明や図(特に第3図及び第4図)が記載されている。
そして,前記のとおり,審決が引用例1の記載や図示に基づいて行った引用発明の認定や,本願発明と引用発明との対比に誤りはなく,当該認定や対比を適切に行うことができるのであるから,引用例1が引用例としての適格に欠けることはない。
4
取消事由(4)(理由通知義務違反)について

(原告の主張)
(1)被告は,引用発明の「排ガス管の溶接ソケット」(圧入されたシールリング)
に本願発明の
「実装面」
があると主張するが
(被告第2準備書面7頁
「イ」
で始まる段落),このような被告の主張は,次のとおり,拒絶理由の通知義務(特許法50条)及び審決に対する理由付記義務(特許法157条2項4号)に違反する。
(2)特許法50条及び157条2項4号の趣旨,及び適法な理由記載の程度審査時において,特許法50条が拒絶の理由を通知すべきものと定めている趣旨は,通知後に特許出願人に意見書提出の機会を保障していることをも併せ鑑みると,拒絶理由を明確化するとともに,これに対する特許出願人の意見を聴取して拒絶理由の当否を再検証することにより判断の慎重と客観性の確保を図ることにあると解するのが相当であり,このような趣旨からすると,拒絶理由に通知すべき理由は,原則として,特許出願人において,出願に係る発明に即して,拒絶の理由を具体的に認識することができる程度に記載することが必要というべきである(知財高裁平成19年(行ケ)第10244号同20年6月16日判決)。なお,被告自身,特許法50条が審査時に「審査官は,拒絶をすべき旨の査定をしようとするときは,特許出願人に対し,拒絶の理由を通知」しなければならないと定めている趣旨は,「審査官も全く過誤なきことは保証し得ないので,特許出願人に意見書を提出する機会を与え,かつ,その意見書を基にして審査官が再審査をする機会ともしようとする」(甲30)としているところである。
さらに,特許法157条2項4号が「審決をする場合には審決書に理由を記載すべき旨定めている趣旨は,審判官の判断の慎重,合理性を担保しその恣意を抑制して審決の公正を保障すること,当事者が審決に対する取消訴訟を提起するかどうかを考慮するのに便宜を与えること及び審決の適否に関する裁判所の審査の対象を明確にすることにあるというべきであり,したがつて,審決書に記載すべき理由としては,当該発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者の技術上の常識又は技術水準とされる事実などこれらの者にとつて顕著な事実について判断を示す場合であるなど特段の事由かない限り,…審判における最終的な判断として,その判断の根拠を証拠による認定事実に基づき具体的に明示することを要するものと解するのが相当である」(最高裁昭和54年(行ツ)第134号同59年3月13日第三小法廷判決・裁判集民事141号339頁)。
以上から,本願発明が特許を受けることが出来ない根拠は特許法29条2項の規定であることを考慮すると,本願発明に関する審決書及び拒絶理由通知書に記載すべき理由の程度としては,
最低限,
本願発明と引用発明の内容,
両発明の対比判断の結果である一致点及び相違点,相違点に係る本願発明の構成が容易に想到し得るとする根拠について証拠に基づき具体的に記載することが要請されているものと解される。
(3)本件について
被告の主張を前提にすれば,構成要件Jに関する本願発明と引用発明との対比について,被告は本願発明の「実装面」が引用発明の「圧入されたシールリング」にあると判断していたようである。
しかしながら,審決には一切,そのような内容が記載されていない。同様に,
原告が本願発明に対して構成要件Jを追加する補正を行った後
(甲10)

被告が原告に通知した拒絶理由通知書(甲11)にも記載されていない。さらに,温度センサ技術分野における通常の知識を有する者にとって,本願発明の構成要件Jの「実装面」と引用発明の「圧入されたシールリング」との間に何らかの関連性を見出すことができるような技術常識等がないことは明らかであって,前記最高裁判決のいう特段の事由も見出せない。したがって,被告が審査時及び審判時に,引用発明の「圧入されたシールリング」(排ガス管の溶接ソケット)に本願発明の「実装面」があると考えていたにもかかわらず,審決及び拒絶理由書に当該内容を記載しなかったことは,構成要件Jに関して,両発明の対比判断の結果である一致点及び相違点,並びに構成要件Jに含まれる相違点に係る本願発明の構成が容易に想到し得るとする根拠につき具体的な理由を示すという被告に課せられた義務の懈怠である。
よって,審決及びその元となった被告による審査は,特許法50条及び157条2項4号に違反しており,その結果,原告に出願人として当然に認められる手続保障が十分になされなかった。そして,被告が審判時及び審査時に示さなかった理由の内容は,本件審決取消訴訟において主要な争点となっていることからも明らかなように,本願発明を特徴付ける重要な構成要件Jに関する事項であるから,当該法令違反は重大な瑕疵であり,審決を取消すべき違法があることは明らかである。
(被告の主張)
本願発明は「前記実装コネクタおよび前記カラーは,前記温度プローブを実装面に実装するためにそれぞれ適合されている」と特定されるものであるが,「実装面」がどのような構成であるかについては特定されておらず,また,本願明細書に具体的な記載も図示もないから,引用発明との対比において,引用発明の「実装面」が具体的にどのように設けられているかについて記載する必要はない。
そして,引用発明は,「先端に熱電対を収めた金属製の保護管が,雄ネジが形成されたナットを用いて排ガス管に取り付けられ,との構成を有しており,」
「排ガス管に取り付けられ」るのは実装面を有していなければ不可能であるから,実装面が存在することは自明である。
したがって,審決(審査)において,引用発明における何が「実装面」である点で本願発明と共通するのかについて明示することなく,
一致点に
「実装面」
が含まれるものとしたことに不備はない。
第4
1
当裁判所の判断
本願発明について
(1)本願明細書には,次の記載がある(甲4,29)。

技術分野に関し
【0001】
本開示はセンサに関し,より具体的には,1つ又は複数の温度センサを有する温度センサ・アセンブリ,及びそのような温度センサ・アセンブリの製造方法に関する。


背景技術に関し
【0003】
センサは,様々な動作環境において動作特性及び環境特性を監視するために用いられる。こうしたセンサは,例として温度,圧力,速度,位置,運動,電流,電圧及びインピーダンスのセンサを含むことができる。センサは,監視する動作環境に配置されるか,監視する動作環境と関連付けられ,そして監視する動作特性若しくは環境特性が変化したときに電気信号を発生させるように,又は値の変化に応答して変動するインピーダンス,電圧若しくは電流などの電気特性を有するように設計される。
【0004】
温度検知プローブは特に,例えば温度検知素子,様々な配線,抵抗器,ダイオード及びスイッチなどの多数の構成要素を含む。一般に温度検知プローブは,温度検知プローブの構成要素が容易に損傷を受ける恐れがある苛酷な環境に曝される。さらに温度検知プローブは,まわりの機械類からの振動によって機械的応力を受ける。環境応力及び機械的応力によってプローブを損傷する可能性を低減するために,様々な実装方式を実施してプローブの測定回路を保護してきた。しかし,製造に用いられるそうした実装方式及び方法は,温度検知プローブの早期故障又は性能低下をまねくことがしばしばある。

発明の概要に関し
【0005】
本開示は一般に,温度センサ・アセンブリと,苛酷な温度検知環境における性能を改善することが可能であり,且つ製造のコスト効率の高い温度センサ・アセンブリの製造方法とを含む。
【0006】
一観点によれば,温度センサ・アセンブリは,温度プローブ,実装コネクタ(取付コネクタ),ワイヤ・セット,遷移構成要素(transition

component),ハウジング及び回路を含み,温度プロー

ブは,プローブ本体,温度センサ,及び少なくとも1つの導体を含み,その少なくとも1つの導体は,該少なくとも1つの導体に影響する温度を示す温度信号を提供するように構成され,実装コネクタは,プローブ本体を実装アセンブリに固定するように適合され,ワイヤ・セットは,少なくとも1つの導体のそれぞれに対応する少なくとも1つのワイヤを有し,そのそれぞれのワイヤは第1の端部及び第2の端部を備え,遷移構成要素は,少なくとも1つの導体のそれぞれを,ワイヤ・セットの少なくとも1つのワイヤの第1の端部に結合するように適合され,ハウジングは,ワイヤ・セットのワイヤの第2の端部を受け入れるための入力部,及び温度測定システムに結合し,温度特性を提供するための出力部を有し,回路はハウジングに封入され,温度プローブから温度信号を受け取り,受け取った温度信号に応答して温度特性を生成するように構成される。

発明を実施するための形態に関し
【0014】
以下の説明は実際に例示的なものに過ぎず,本開示,又は本開示の利用又は使用を限定するものではない。
【0015】
図1を参照すると,本開示による温度センサ・アセンブリが図示され,全体として参照番号10で示してある。温度センサ・アセンブリ10は一般に,プローブ本体16(好ましくは無機絶縁(MI)ケーブル)の一端に先端キャップ14
(好ましくは合金)
を備えた温度プローブ12を含む。
プローブ本体16には実装コネクタ18が固定され,先端キャップ14と実装コネクタ18の間にカラー20が位置決めされる。遷移構成要素22がプローブ本体16のもう一方の端部24を覆っており,またグロメット23(図1には示さず,図5参照)を取り囲む遷移体27を有している。グロメットは,温度プローブ12の導体をリード・ワイヤ26に終結させるコネクタを取り囲む2つのチャンネルを有する。
以下では,
グロメット,
そのチャンネル,コネクタ及び導体の具体的な細部についてさらに詳しく図示し説明する。
【0016】
ハウジング28はリード・ワイヤ26を受け入れ,温度測定システムに結合して温度特性を提供するための出力部30を含む。
回路アセンブリ
(図
示せず)はハウジング28に封入され,温度プローブ12から温度信号を受け取り,受け取った温度信号に応答して温度特性を生成するように構成される。
【0017】
温度プローブ12は,内部に収容された1つ又は複数の導体を有する無機絶縁(MI)ケーブル16を含むこと,或いは圧縮パウダなどの導体によって囲まれた導体とすることができる。MIケーブルは,例として銅又はアロイ825ステンレス鋼の被覆で覆われ,高度に圧縮された酸化マグネシウムに埋め込まれた1つ又は2つの抵抗加熱素子又は導体を含むことができる。MIケーブル16の仕様は,少なくとも部分的に,用途による要求,関連する導電性,抵抗及び被覆材料に基づく。
【0018】
実装コネクタ18は,動作環境において温度プローブ12を実装アセンブリに固定するように適合されている。そうした配置は,ハンガのように単純なものでもよく,又はナット,フランジ,回転コネクタ若しくは他の装置を含むことができる。例えばいくつかの実施例では,実装コネクタ18は,温度センサを温度検知環境の中に配置するためのシール・リング又はカラー20を含み,配置後,温度検知環境は実装コネクタ18によって密閉される。一実施例では,実装コネクタ18は,(六角ナット又は他の形状の)粉末金属の高強度ナットとすることができる。そうした実施例では,粉末金属のナットによって,例としてエンジン,発電装置,流体の流れ又は化学工程などの不利な環境又は密閉された環境で,温度プローブ12をコスト効率よく固定することができる。
【0036】
図7Jは,
この実施例ではチューブ94であるプローブ本体のまわりに
回転可能に位置決めされた実装コネクタ18/82を示し,図7Kは,プローブの検知端部21と実装コネクタ18/82の間に位置決めされたカラー20/84を示している。カラー20/84は,溶接又は他の手段などによってプローブ本体(チューブ94)に取り付けられる。いくつかの実施例では,カラー20/84をプローブ本体,即ちチューブ94の表面に取り付け,気密シールを形成することが好ましい。実装コネクタ18/82及びカラー20/84はそれぞれ,例として,実装コネクタ18/82をねじ山付きの孔にねじ込みカラー20/84を密閉すること,及び実装コネクタ18/82を実装面に押し付けて実装することなどによって,温度プローブ12/52を実装面に実装するように適合される。
【0043】
工程3100はさらに,
導体290をワイヤ254の露出させたワイヤ

リード255に取り付けるステップ3114を含む。導体290は,ワイヤ254のリード255に直接接続することができ,或いはそれらを,クリンプ,溶接,はんだ付け,他の機械的結合,又は当業者に周知の他の任意の結合によって取り付けることができる。このステップ3114は,各導体290の端部をクリンプできるように形成することを含むことが可能であり,前述のように,これは導体290の端部を剥ぎ取って導電部を露出させること,
導電部を所望の位置若しくは形に曲げる又は成形すること,
並びに他の方法で導電部を圧縮及び/又は溶接,はんだ付け,又は当業者に周知の結合を行うように準備することを含むことができる。いくつかの実施例では,コネクタ292を導体290の1つの端部に溶接すること,はんだ付けすること又は他の方法で結合することができる。図10G~10Hを参照すると,導体290はコネクタ292に機械的にクリンプされている。図10I~Jを参照すると,リード・ワイヤ254のリード端部255も,コネクタ292に機械的にクリンプされている。いくつかの実施例では,機械的な結合部をクリンプすれば十分な場合もあるが,他の実施例では,導体290,ワイヤ254及びコネクタ292の間のクリンプされた結合部を,溶接又ははんだ付けすることができる。例えば図10K~10Lを参照すると,コネクタ292のある部分295,又はコネクタ292の他の任意の適切な部分に,溶接又ははんだ付け材料を加えることができる。本明細書に記載される溶接は,任意のタイプの,又は当分野で知られている若しくは開発された溶接方法を含むことができる。こうした実施例では,導体290及び/又はワイヤ254に対するクリンプされたコネクタ292による機械的な結合と,コネクタ292の溶接とを組み合わせることによって利益をもたらすことができる。例えば組み合わせることによって,導電性を改善すること,結合を強化すること,並びにこの取り付け部及び結合部の故障を低減することが可能になる。
【0047】
本開示に全般的に記載された温度センサ・アセンブリ,及びそうした温度センサ・アセンブリの製造方法の1つ又は複数の実施例によって,様々な利益がもたらされる。こうした実施例の1つ又は複数によって,きわめてコンパクト化された構造,振動及び衝撃に対する耐性が高い,したがって耐用年数の長いアセンブリを実現することができる。本明細書に記載される温度センサ・アセンブリは,炎の温度及びセ氏900度を超える温度を含む様々な温度の用途に使用することが可能であり,構造中にアロイ600を使用することによって,セ氏1200度の温度まで適切に作動することが示されている。構造の設計及び方法によって,中程度の負荷のリード・ワイヤ,又は温度センサ・アセンブリにとって多くの欠陥及び故障の原因となる高負荷のリード・ワイヤまで利用することが可能になる。同様に,本開示のアセンブリは,冷却液,ブレーキ液,吸気,海水及びオイルの温度などの低温の用途を含む,様々な温度検知の用途に利用することができる。
【0049】
一実施例では,温度プローブ12は,導体を有する無機絶縁ケーブル,金属体及び絶縁材料から組み立てられる。他の実施例では,温度プローブ12は,導体90及び本体16を含むように製造することができる。いくつかの実施例では,プローブ本体16の外面のまわりにカラー20が位置決めされ,取り付け部品を係合して温度プローブ12を実装アセンブリ18に固定するように適合される。カラー20は,溶接などによってプローブ本体16の外面に取り付けられる。
カラー20は,
例としてレーザ溶接,
スピン溶接,電子ビーム溶接,抵抗溶接及び超音波溶接を含む周知の又は将来性的な任意の方法によって,プローブ本体16の外面に取り付けることができる。
【0056】
いくつかの実施例では,センサ・プローブ12/52/212はそれぞれ,プローブ本体16/80/94/294の外部に取り付けられたカラー20/84/220,及びカラー20/84/220を係合し,動作環境の中で温度プローブ12/52/212を第1の実装アセンブリに固定するように構成されたプローブ本体16/80/94/294に回転可能に結合されたコネクタ18/82/218を含むことができる。

図面
別紙本願明細書の図記載のとおり。

(2)本願発明の特徴
以上によれば,本願発明は次の特徴を有するものと認められる。

本願発明は,温度センサを有する温度センサ・アセンブリに関するものである(【0001】)。


温度検知プローブは,多数の構成要素を含み,容易に損傷を受ける苛酷な環境に曝され,まわりの機械類からの振動によって機械的応力を受けるため,これまでの実装方式によるプローブの測定回路の保護では,温度検知プローブの早期故障又は性能低下をまねくことがしばしばある(【0004】)。


上記課題に対し,本願発明は,苛酷な温度検知環境における性能を改善することが可能であり,且つ製造のコスト効率の高い温度センサ・アセンブリを提供することを目的とし(【0005】),本願発明の構成を採用することにより,導電性を改善すること,結合を強化すること,並びにこの取り付け部及び結合部の故障を低減することが可能になり【0046】,(

きわめてコンパクト化された構造,振動及び衝撃に対する耐性が高い,耐用年数の長いアセンブリを実現することができるという作用効果を奏するものである(【0047】)。

2
引用例1ないし3の記載事項
(1)引用例1(甲1)には,次の記載がある(ただし,翻訳は原告提出の訳文による。)。
ア「3

排ガス温度センサ

ABB

-

自動車における熱電素子

Automation

Products社は,熱電素子と組

み入れられた評価用電子回路とをベースにした排ガス温度センサ(略してDTS-Pと呼ばれる)
を開発した。
メーカーは,
900℃から1110℃
の測定領域において±5Kの正確性を主張する。これは,大量生産車のための排ガス温度センサが現在のところ達成している最高の測定精度である。比較すると,
NTC
(負温度係数)
をベースにした温度センサは,
900℃
を超える領域では信号の振幅がわずかなので,
有効な使用は不可能である。
白金温度センサはここでは,DTS-Pと比べて6倍高い測定公差を備える。自動車内の抵抗温度計は,信号がマルチプレクサを介してA/D変換器に供給される前に,温度に依存しておりかつ交差を有して製造される直列レジスタをベースにした分圧器回路と共に作動する。これらの構成部材の品質に応じて,
この側鎖での欠陥が付加的な3Kから15Kに累積する。
その上抵抗温度センサは,構造と使用領域とに応じて,著しい寿命ドリフトの傾向がある。こうした不具合を回避することが,ABB
ation

Autom

Products社にとっての明確な開発目的であった。

排ガス温度センサDTS-Pの仕様書の概略は,明確には以下の通りである。
・利用可能なすべての大量生産の排ガス温度センサは,-40℃から1110℃の極めて大きな動作温度範囲を有する。
・たとえば曲げ破断試験でシミュレートされるような,温度衝撃の変化に対するきわめて高い耐性を有する。
・老朽化プロセスが非常に有利である。すなわち検出可能な信号ドリフトまたはヒステリシスがない。また中毒症状がない。
・反応所要時間が非常に短い。
これらのあらかじめ設定された基準に基づいて,開発チームにすぐに明白となったのは,これらの特性は高価値の熱電素子によってのみ満たされ得るということであった。(705頁中欄18行~706頁左欄12行)」
イ「熱電対は,高温で安定な鋼2.4851の保護管に組み込まれる。この材料は,主にInconel

601に相当し,極度の温度応力下での温

度変化による腐食にも耐性を示す。このように,DTS-Pは,大部分のPtセンサにおいて定義できないドリフトを生じさせる最も過酷なテストにも耐える。熱電対は,高純度の酸化マグネシウム粉末からなる複合物に組み込まれる。材料は高い吸湿挙動を有するので,様々な製造ステップにおいて,わずかな残余の水分も慎重かつ確実に除去される。センサは,長い被覆ケーブルから製造され,被覆ケーブルは,熱電対線が供給され,粉末が充填された後,いくつかの引っ張り加工及び1400℃までの熱処理が施され,適当な長さに切断される。測定点は,2つの熱電対線を溶接ビードに接続することによって製造される(図3)。「高温」側は,被覆材料のプラグでシールされ,低温側は,220℃までの温度に短時間耐えられる特殊なエポキシ樹脂でシールされる。この設計により,優れた電気絶縁性が高温でも達成される。
センサは,溶接したスリーブを排ガス管内にシールするシールリングによって,排気システム内の任意の位置に取り付けられる(図4)。ストップリングの位置は,挿入深さを規定する。ストップリングの位置は,特定の用途に従って変えられる。圧力ネジはシール点で必要な接触圧力を確実にする。
『高温』の測定点及び比較的『低温の』電子評価システムは,金属素材で被覆されたケーブルによって取り外せないように互いに接続されている。この接続は,エンジンルーム内の極端な温度変動に耐え,同時に振動にも耐える。」(706頁右欄30行~708頁左欄46行)
ウ「6

電子システム

測定信号は,測定連鎖内のすべての誤差の合計と同程度にしか正確にはなり得ない。これらの影響の可能性を最初から低減するために,熱電対のシステムに関連する利点を,高品質の信号変換器を用いて強化することができる。組み込まれた冷点補償は,高品質の測定素子に基づく。熱起電力は,パルス幅変調信号(PWM)に変換される(図5)。この信号は,10Hzの一定周波数及び可変のパルス占有率を有する方形波信号に基づく。このパルス占有率は,パーセンテージとして定義される。有効な範囲は,パルス占有率が各温度に割り当てられる4%と98%との間にある。ABBAutomationProductsのDTS-Pを使用するとき,評価ユニットは-40℃から+1110℃の排ガス温度に最適化された(図
6)。この電子評価システムにより,排ガス温度センサは,最高温度領域内で,±5Kの精度を達成する。これは,従来,量産品では達成できないと考えられていた。
PWM信号は,エンジン制御ユニットに直接利用でき,そこで評価される。類似の出力信号を有する変形態様のDTS-Vは,上述した評価ユニットに代わるものとして提供される。電子システムは,エンジンルームに設置され,そこで発生している負荷,例えば,125℃までの加熱,湿度及び振動に問題なく耐える。電子部品は,FR-5の回路基板に無鉛はんだを用いて配置される。チップは,PA-66のプラスチックハウジングによって保護されている。3ピンプラグ用のコネクタホルダは,ハウジングに差し込まれる。電圧供給は,端子15を介して,12VDCのバッテリ電圧によって行われる(点火)。すべてのEMC要件を満たすために,電子システムには有効なフィルタが設けられ,部品は賢く配置された。」(708頁左欄47行~同頁右欄7行)

図面
別紙引用例1の図記載のとおり。

(2)引用例2(甲2)には,次の記載がある。

発明の属する分野に関し
【0001】
本発明は温度センサに関する。本発明の温度センサは,車両の排気ガス等の温度を検知する場合に用いて好適である。


発明の実施の形態に関し
【0017】
図1に本実施形態の温度センサの断面図を示す。この温度センサは,図示しない車両の排気通路に設けられ,排気ガスの温度を広範囲にわたって検出するために用いられる。この温度センサは,ハウジング1と,ハウジング1内に収納され,温度により変化する電気的特性を電気信号として出力可能な感温素子としてのサーミスタ5と,サーミスタ5からの電気信号をハウジング1外に取り出すための一対のリード線6とを備えている。【0018】
より詳細には,ハウジング1は第1ハウジング2とナット部3と第2ハウジング4とから構成されている。第1ハウジング2は先端が閉じられた円筒状をなし,その先端側には温度により変化する抵抗値を電気信号として一対の電極5aに出力するサーミスタ5が配置されている。一対の電極5aは,一対の芯線11の一端11aに接続されている。両芯線11はシース12により被覆され,第1ハウジング2の基端から突出している。【0019】
第2ハウジング4は第1ハウジング2より大径の円筒状をなしている。そして,第2ハウジング4の先端側と第1ハウジング2の基端側とが重ね合わせられて同軸に配置され,フランジ13の後端にて結合されている。【0020】
また,ナット部3は,温度が検知される流体の漏れを防止するフランジ13と,温度センサを排気通路等に固定するナット14とからなる。フランジ13は,第1ハウジング2の基端側に固定され,フランジ13の後端に第2ハウジング4の先端が固定されている。また,フランジ13の第2ハウジング4側には,ナット14が回動可能に設けられている。
【0021】
第1ハウジング2の基端から突出した一対の芯線11の他端11bは,第2ハウジング4内において,一対のリード線6の一端6aとかしめ端子16によりかしめられている。また,芯線11の他端11bとリード線6の一端6aには,かしめ端子16とともに絶縁チューブ17が被せられている。
【0022】
また,第2ハウジング4の基端側には,耐熱ゴム製のグロメット18がかしめ固定されている。一対のリード線6はグロメット18を貫通して,第2ハウジング4の基端より突出している。リード線6には保護チューブ20が被せられ,リード線6の他端6bにはコネクタ19が接続されている。

図面
別紙引用例2の図記載のとおり。

(3)引用例3(甲3)には,次の記載がある。

発明の属する分野に関し
【0001】
本発明は,チューブ内を流れる流体の温度を検出する温度センサの取付構造に関するもので,エンジン(内燃機関)等の熱機関から排出される排気の温度を検出する排気温センサの取付構造に適用して有効である。

従来の技術に関し
【0002】
図2(a)は温度センサ(排気温センサ)100の取付構造を示す模式図であり,図2(b)は図2(a)のA部拡大図であり,温度センサ100は排気管200に溶接されたボス部201にネジ固定されている。【0003】
ここで,図2中,103はサーミスタ等のセンサ本体を保護するカバーであり,104はセンサ本体に電気的に接合されたシースピン芯線を保護す(判決注:「保護する」の誤記と認める。)シースピンである。また,105はボス部201に接触して排気が温度センサ100の取付部から外部に漏れることを防止するリブであり,このリブ105は,シースピン104に接合されている。
【0004】
そして,雄ねじが形成されたニップルナット106をボス部201の雌ねじ部に締め付けることにより,リブ105をボス部201に押圧してリブ105とボス部201とを密着させるとともに,温度センサ100をボス部201(排気管200)に取付固定している。
【0005】
このとき,従来は,ボス部201より大きい線膨張係数αを有する材料にてニップルナット106を構成することにより,熱膨張によりニップルナット106とボス201部との締結力(締付力)が低下することを防止していた。

発明の実施の形態に関し
【0030】
一方,排気温センサ100のうちシースピン104には,図1に示すように,貫通穴(下穴)203のテーパ部203a(図3参照)に接触して,排気温センサ100が挿入された貫通穴203から排気が外部に漏れ出すことを防止する円錐状のテーパ面105aが形成されたリブ(封止部材)105がろう付け又は溶接により接合されている。
【0031】
また,106はボス部201の雌ねじ部202とネジ結合する雄ねじ部106aが形成されたニップルナット(固定部材)であり,このニップルナット106には,シースピン104を覆う円筒状のプロテクションチューブ(保護チューブ)107が挿入される挿入穴106bが設けられている。
【0032】
なお,プロテクションチューブ107は,リブ105にろう付け又は溶接により接合されており,ニップルナット106は,プロテクションチューブ107に対してその長手方向に摺動することができる。
【0033】
そして,排気温センサ100をボス部201(排気管200)に取り付ける際には,リブ105のテーパ部105aを貫通穴(下穴)203のテーパ部203aに接触させた状態で,ニップルナット106をボス部201にねじ込み(締め込み),その締結力(締付力)によりテーパ部105aをテーパ部203aに押圧しながら排気温センサ100をボス部201(排気管200)に固定する。

図面
別紙引用例3の図記載のとおり。

3
取消事由(3)(引用例1の主引用例としての適格性欠如)についてまず,取消事由(3)について判断するに,原告は,引用例1は,発明が進歩性を欠如しているか否かを判断するための主引用例として不適切であり,このような不適切な引用例と本願発明とを対比して一致点・相違点を認定の上,本願発明が進歩性を欠如しているとの結論を下すことは許されないとして,その理由について縷々主張する。
原告の主張は,要するに,引用例1が雑誌の記事であり,記載内容が十分でないので,その刊行物に接した当業者がその発明を実施することができる程度に発明の内容が開示されているとはいえず,したがって,「特許出願前に頒布された刊行物に記載された発明」
としての引用発明を認定することができない,
というものであると解されるところ,引用発明の外部構造については,引用例1の記載内容や添付された図面により十分にこれを認定することが可能である。これに対し,保護管の内部等の内部構造には,必ずしも明らかではないところがあることは否定できないものの,
引用文献に具体的な記載がない内部構造
(温
度センサのような機械的な構造)については,技術常識を参酌することで実施できることが一般的であり,
本件においても,
現に,
原告が主張するところの,
熱電対ないし熱電対をなす導体が保護管の空洞の中に位置決めされているか否かといった点や,可撓性ケーブルに電線が設けられている(同ケーブルが電線としての機能を果たす)ものと評価できるか否かといった点については,後記のとおり,引用例1の記載内容や技術常識を参酌してこれを適切に認定することができているのであって,引用発明の認定や本願発明との対比についても特に支障をきたしていないのであるから,原告の主張は当たらない。したがって,原告主張の取消事由(3)は理由がない。
4
取消事由(1)(対比の認定の誤り及び相違点の看過)について
(1)構成要件Jに関し

原告は,審決が,本願発明と引用発明とが「前記実装コネクタは,前記温度プローブを実装面に実装するために適合されている」点で一致すると認定したのが誤っていると主張する。
よって検討するに,「適合する」の意味は,一般的には,「うまくあてはまること。よくかなうこと。」(甲27・広辞苑)であり,本願発明においては,「温度プローブを実装面に実装するために」と特定されているのであるから,「前記実装コネクタおよび前記カラーは,前記温度プローブを実装面に実装するためにそれぞれ適合されている」との記載の技術的意義は,「実装コネクタおよびカラーは,いずれも,温度プローブを実装面に実装するという目的に当てはまるようにされている」というものであると解するのが相当である。
他方,
引用発明は,
①雄ネジが形成されたナット
(引用例1における
「圧
力ネジ」に相当)を用いてセンサをソケット(引用例1における「シールリング」に相当)に取り付けるものであり,②ソケットには雄ネジが形成されたナットに螺合するような雌ネジが形成されているものと解され,③かかる雄ネジが形成されたナットとソケットとが螺合することによって,センサは排気システム内に取り付けられるものと解されることからすると,引用発明において,ソケットは,センサを実装面に取り付けるための雄ネジが形成されたナットと螺合する構成を有している,すなわち,センサを実装面に実装するために適合しているといえる。
そうすると,審決が,本願発明と引用発明との対比において,引用発明は
「先端に熱電対を収めた金属製の保護管」
(本願発明の
「プローブ本体」
に相当)が,「雄ネジが形成されたナットを用いて」「排ガス管」に取り付けられるものであるから,「雄ネジが形成されたナット」は,「排ガス管」の取り付けに適合しているということができ,したがって,引用発明の「雄ネジが形成されたナット」が「排ガス管」の取り付けに適合していることと,本願発明の「前記実装コネクタおよび前記カラーは,前記温度プローブを実装面に実装するためにそれぞれ適合されている」こととは,「前記実装コネクタは,前記温度プローブを実装面に実装するために適合されている」点で共通するとして,上記のとおり一致点を認定したのは相当であって,この点に誤りがあるとはいえない。

原告の主張について
これに対し,原告は,「本願発明の構成図」なる図面(甲31の図)を提出した上,①本願発明は,温度センサを,甲31の図に示すように,「実
装アセンブリ」
(甲31の図中では
「MountingPort」
と表現されている。,

「実装コネクタ」及び「カラー」によって,温度測定環境に実装されるものであるところ,これらの構成から,実装コネクタと実装アセンブリとの間に形成される第1のシール面(MountingSurface#1),カラーと実装アセンブリとの間に形成される第2のシール面(MountingSurface#2)が理解されるから,構成要件Jにおける「実装面に実装するようにそれぞれ適合されている」
とは,
これら二つのシール面が存在することを表している,
②引用発明における「圧入されたシールリング」は,引用例1の図4に示されるとおり,温度測定環境である「排ガス管」内部に部分的に挿入(圧入)して使用されるものであるから,本願発明にいう第1のシール面(MountingSurface#1)に該当する面においてシールする機能を担っていないことが明らかである,③本願発明の実装アセンブリは,甲31の図のとおり,排ガス管等の内部に部分的に挿入されることはなく,排ガス管表面上に置かれるものである点で,引用発明の「圧入されたシールリング」とは異なる,などと主張する。
しかしながら,原告の主張によれば,「実装面」(MountingSurface)とは,「実装コネクタ」及び「カラー」と,排ガス管の表面上に設置された
「実装アセンブリ」
(MountingPort)
とが各接する面を指すと認められ,
そうすると,原告の構成要件Jの解釈は,「実装面」が二つ存在し,そのいずれもが,排ガス管ではなく「実装アセンブリ」上にあることを前提としていると解されるところ,そのような事項は,特許請求の範囲(請求項1)はもちろん,本願明細書のどこにも記載されておらず,その示唆があるともいえない(そもそも,甲31の図は,本件訴訟において初めて提出された図面であって,本願の願書に添付された図面ではない。また,上記事項と同様の構成を示す図面は,
本願の願書に全く添付されていない。。

同様に,上記の各実装面がいずれもシール機能(密閉機能)を有するシール面であることについても,特許請求の範囲(請求項1)はもちろん,本願明細書のどこにも記載されておらず,
その示唆があるともいえない
(本
願明細書の【0036】には,実装コネクタをねじ山付きの孔にねじ込みカラーを密閉することについての記載があるが,
原告が主張するような
「実
装アセンブリ」の存在や,同実装アセンブリ上に二つの「シール面」が存在することについては,
何ら記載がなく,
図示されているともいえない。。

以上によれば,原告の主張は,その前提自体が特許請求の範囲(請求項1)や本願明細書の記載に基づくものではなく採用できないものといわざるを得ない。
(2)構成要件Hに関し
原告は,引用発明の「鍔部を有するリング」(引用例1における「ストップリング」に相当)は,排ガス管の実装面に適合して使用されるものではなく,温度センサが排ガス管に挿入される深さを規定するためのものであるから,本願発明の「カラー」と構成及び機能が異なるのに,両者を対応するものと扱っている点で,審決の認定は誤っていると主張する。
しかしながら,そもそも,構成要件Hは,「カラー」がプローブ本体の中間部分に配置されていることを規定するにとどまり,その機能面については何ら言及していない。そして,引用例1の図3及び図4によれば,引用発明の「鍔部を有するリング」は,センサ(保護管)の長手方向中間付近にあることが現に読み取れるから,両者を一致するものとして認定した審決の判断に誤りがあるものとは認められない。
(3)構成要件Aに関し
原告は,引用例1の熱電対が保護管の空洞の中に位置決めされているか,それとも,遊びのある状態で封入されているかは定かでなく,「熱電対を支持体に固定して動かないようにすることは常套手段である」との認定は憶測にすぎないから,審決における,引用発明の「金属製の保護管」に収められた「熱電対」が保護管の「空洞の中に位置決めされた温度センサ」に相当するとの認定,及び,熱電対をなす導体が本願発明の「空洞の中に位置決めされた少なくとも1つの導体」に相当するとの認定は,いずれも,上記憶測に基づく判断であって誤っていると主張する。
しかしながら,引用発明の「排ガス温度センサー」は,自動車の排ガス管内において,熱電対により温度を測定するものであるところ,自動車のように常に振動が発生する環境下で使用される温度センサにおいて,これに用いる熱電対が,保護管の空洞の中に位置決めされることなく,遊びのある状態で封入されているとすると,振動により,熱電対が保護管の空洞の内壁に衝突して損傷を受け,著しく耐久性が落ちることは,技術常識であるといえるから,引用発明において,熱電対が保護管の空洞の中に位置決めされていると考えることは十分合理的である。
したがって,引用例1に接した当業者が,引用例1の「熱電対」が「保護管」の空洞の中に位置決めされた状態で固定されているものと認識することは明らかといえるから,審決が,引用発明の「金属製の保護管」に収められた「熱電対」は,保護管の「空洞の中に位置決めされた温度センサ」に相当すると認定した点に誤りがあるとはいえない。
また,仮に,引用例1において,「熱電対」が位置決めされていることが明らかでないとしても,排ガス温度センサに用いる熱電対を保護管の空洞の中に位置決めして(支持体に固定して)動かないようにすることは,実願昭55-73717号
(実開昭56-174032号)
のマイクロフィルム
(乙
1)や,特公平3-64810号公報(乙2)などに示されているように当業者にとってごく普通に用いられている手段であると認められるから,引用例1において,このような手段を設けることは,当業者が容易に想到し得た事項であるといえる。
したがって,仮に,原告が主張するように,引用例1の「熱電対」及び「熱電対をなす導体」が,保護管の空洞の中に位置決めされているか,遊びのある状態で封入されているか定かでないとしても,審決の結論に影響するものとは認められない。
(4)構成要件D,E及びFに関し
原告は,審決が,引用発明の「可撓性ケーブル」に設けられる電線と,本願発明の「ワイヤ・セット」とは,電線である点で共通すると認定した点が誤っている(引用例1にそのような記載はなく,むしろ,引用発明の可撓性ケーブル内は熱電対〔熱伝導線〕が設けられている可能性の方が高い)と主張する。
しかしながら,前記認定の引用例1の記載事項によれば,引用発明において,「熱電対」は高温で安定な鋼材料の保護管に組み込まれるものであり,「高温」の測定点であるセンサ側と比較的「低温」である電子評価システム側とは,取り外せない状態で,「金属素材で被覆されたケーブル」で接続されるものである。また,引用例1の図3を参照すると,「保護管」に,可撓性のケーブルの一端が接続されること,及び,可撓性のケーブルの他端が,電子評価システムの「ハウジング」と接続されることが見て取れる。したがって,上記「金属素材で被覆されたケーブル」は,上記図3の「可撓性ケーブル」に該当することが明らかである。
そうすると,引用発明における「可撓性ケーブル」は,熱電対と電子評価システムとを電気的に接続するものであると理解するのが合理的であり,そうである以上,当該「可撓性ケーブル」は電線としての機能を果たすものと評価できるから,引用発明の「可撓性ケーブル」に設けられる電線と,本願発明の「ワイヤ・セット」とは,電線である点で共通すると認定した審決の判断に誤りがあるとは認められない。
原告は,審決の認定は,本願明細書の図5に示された構造等を元にした後知恵的評価であり,むしろ,引用発明の可撓性ケーブル内は熱電対(熱伝導線)が設けられている可能性の方が高いなどと主張するが,上記のとおり,引用例1の記載によれば,「金属素材で被覆されたケーブル」は電線としての機能を果たすと解されるから,
後知恵的評価との指摘は当たらない。
また,
そもそも,本願発明において,「ワイヤ」の材質は何ら特定されておらず,仮に,原告が主張するように,引用発明の「可撓性ケーブル」内に熱電対(熱伝導線)が設けられている可能性が高いとしても,
「熱電対」の「熱伝導線」
自体が「電線」と言い得るものであるから,原告の主張は失当である。(5)以上によれば,審決における本願発明と引用発明との対比の認定に重大な誤りがあるとか,本来,相違点とされるべき部分が相違点とされておらず,当該部分の容易想到性について判断されていない違法があるなどとはいえないことは明らかであるから,原告主張の取消事由(1)は理由がない。5
取消事由(2)(相違点(キ)に関する容易想到性判断の誤り)について(1)引用例2には,車両の排気ガス等の温度を検知する温度センサであって,「
温度が検知される流体の漏れを防止するフランジ13と,温度センサを排気通路等に固定するナット14とからなり,フランジ13は,プローブに固定され,ナット14が回動可能に設けられている,温度センサ。」が記載されており(争いがない),引用例3には,「チューブ内を流れる流体の温度を検出する温度センサの取付構造に関し,温度センサ100は排気管200に溶接されたボス部201にネジ固定されるものであって,ボス部201に接触して排気が温度センサ100の取付部から外部に漏れることを防止するリブ105が,プローブに接合され,雄ねじが形成されたニップルナット106をボス部201の雌ねじ部に締め付けることにより,リブ105をボス部201に押圧してリブ105とボス部201とを密着させるとともに,温度センサ100をボス部201
(排気管200)
に取付固定する,
温度センサ。

が記載されている(争いがない)ことからすると,フランジ,リブを密着させることにより温度センサを取付固定することは,本願優先日において周知技術であったと認められる。
そして,引用発明は,「鍔部を有するリング」,「ソケット」及び「雄ネジが形成されたナット」により,温度センサを自動車の排ガス管に取り付けるものであり,周知技術とは,温度センサの排ガス管への取り付けという機能・用途が共通するところ,温度センサを自動車の排ガス管に取り付ける際に,排ガスが外部に漏れないように気密性を保って取り付けなければならないことは技術常識であるから,上記のフランジ,リブを密着させることにより温度センサを固定する周知技術を適用して,鍔部を有するリング(本願発明の「カラー」に相当)とソケット(本願発明の「実装アセンブリ」に相当)とを,温度プローブを実装面に実装させるために適合させることは,当業者が容易に想到し得た事項である。
(2)これに対し,原告は,①引用発明の「鍔部を有するリング」と,引用例2の「フランジ13」及び引用例3の「リブ105」とは,機能・用途が異なること,②引用例2及び引用例3を引用発明に適用するには,阻害要因があること,③引用発明の内容中の示唆がなく,課題の共通性もないことを指摘して,
相違点(キ)に関して容易想到性を認めた審決の判断には重大な誤りがあると主張する。
しかしながら,前記のとおり,引用発明の「鍔部を有するリング」を含む取付構造と引用例2の「フランジ」や引用例3の「リブ」を含む取付構造とは,いずれも,機能・用途が異なるものではなく,両者は少なくとも温度センサを排ガス管に取り付けるという機能・用途においては共通しているものといえるから,原告が主張する上記①の点は理由がない。また,原告が主張する上記②及び③の点は,いずれも,構成要件Jにおける「実装面に実装するようにそれぞれ適合されている」とは,実装コネクタと実装アセンブリとの間に形成される第1のシール面
(MountingSurface#1)

カラーと実装アセンブリとの間に形成される第2のシール面(MountingSurface#2)
という,
二つのシール面が存在することを前提とする主張である
ところ,かかる前提自体が認められないことは前記のとおりであるから,原告が主張する上記②及び③の点も理由がない。したがって,原告の上記主張は採用できない。
(3)以上によれば,
審決に相違点(キ)の容易想到性に関する判断の誤りがあると
はいえないから,原告主張の取消事由(2)は理由がない。
6
取消事由(4)(理由通知義務違反)について
原告は,拒絶理由の通知義務(特許法50条)及び審決に対する理由付記義務(特許法157条2項4号)違反を主張するが,本件における拒絶理由や審決には,それぞれにおいて必要とされる程度の理由が記載されているとみることができる。
なお,原告が拒絶理由や審決に記載されていないとする被告の主張は,原告が,本訴において,①構成要件Jの「それぞれ適合されている」の解釈について,実装コネクタと実装アセンブリとの間やカラーと実装アセンブリとの間に異物を挟み込む構成が排除されている(実装コネクタあるいはカラーが直接実装アセンブリに嵌合していることを意味する)と主張し,また,②引用発明において,排ガス管の実装面に適合しているのは,「圧入されたシールリング」(ソケット)であって,「締め付け部」(雄ネジが形成されたナット)は実装面に適合していないと主張したのに対し(原告第2ないし第4準備書面),①´構成要件Jを含め,本願発明の発明特定事項には,「実装面」がいかなるものであるかについて特定がなく,本願明細書においても「実装面」についての具体的な記載や図示がないから,構成要件Jの「前記温度プローブを実装面に実装する」との記載における「実装面」とは,単に温度プローブを実装する面と解するほかない,②´そうすると,引用発明のように,「先端に熱電対を収めた金属製の保護管」を実装する面が「排ガス管の溶接ソケット」にあるとしても,本願発明の「実装面」ということができる(から対比に関する原告の主張は失当である)
と反論したものにすぎないのであるから
(被告第2準備書面)

このような内容まで拒絶の理由や審決に記載する必要がないことは明らかである。
したがって,特許庁における審査,審判の手続において,審決及び拒絶理由通知書に,
引用発明の
「排ガス管の溶接ソケット」
(圧入されたシールリング)
に本願発明の「実装面」があると記載しなかったことが,特許法50条及び157条2項4号に違反しているとする原告の上記主張は採用できない。よって,原告が主張する取消事由(4)も理由がない。
7
結論
以上によれば,原告が主張する取消事由はいずれも理由がなく,審決に取り消されるべき違法はない。
よって,原告の請求を棄却することとして,主文のとおり判決する。知的財産高等裁判所第3部

裁判長裁判官
鶴岡稔彦寺田利彦間明宏充
裁判官

裁判官

(別紙)本願明細書の図

(別紙)引用例1の図

図3

DTS-Pのセンサチップの構造

図4

位置に依存しない設置は,正確な温度測定を単純化する

(別紙)引用例2の図

(別紙)引用例3の図

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