判例検索β > 平成29年(わ)第45号
収賄被告事件
事件番号平成29(わ)45
事件名収賄被告事件
裁判年月日平成30年2月1日
法廷名奈良地方裁判所  葛城支部
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主文
被告人を懲役1年6月に処する
この裁判が確定した日から3年間その刑の執行を猶予する。
被告人から95万6000円を追徴する。
理由
(罪となるべき事実)
被告人は,平成23年4月から奈良県磯城郡A町(以下「A町」という。)の副町
長として,同町の町長を補佐し,同町長の命を受け政策及び企画をつかさどり,保育所に対する補助金交付の前提となる予算編成業務並びに要綱の改正及び制定等の業務を指揮監督する等の職務に従事していたものであるが
第1

A町内でB保育園等の3園の保育所を運営する社会福祉法人C(以下「C」という。
)の理事長であったDから,B保育園の増改築事業に関し,平成24年4月1日付けで施行されたA町保育所運営費補助金交付要綱を改正し,平成25年4月1日付けで施行されたB保育園増改築補助金交付要綱を制定するなどして,前記法人に交付する補助金額を増額させるなど,有利かつ便宜な取り計らいを受けたことに対する謝礼及び今後も同様の取り計らいを受けたいとの趣旨の下に供与されるものであることを知りながら,同年5月13日頃,同町大字ab番地所在のB保育園において,軽四輪乗用自動車1台(時価55万6000円相当)の引き渡しを受け,その代金として,前記Dに対し,その頃,同所において,1万円を,同年6月17日頃,同町c番地dA町役場2階副町長室において,1万円を各支払って,前記Dから前記軽四輪乗用自動車を代金2万円で譲り受け,その差額である53万6000円相当の財産上の利益の供与を受け

第2

前記Dから,平成27年度に実施予定の特別支援保育事業及び2歳未満児保育事業に関する補助金の予算編成等に関し,前記法人に交付する補助金額を前年度よりも増額させるなど,有利かつ便宜な取り計らいを受けたことに対する謝礼及び今後も同様の取り計らいを受けたいとの趣旨の下に供与されるものであることを知りながら,平成27年5月11日頃,前記A町役場2階副町長室において,平成26年6月5日頃に借り受けていた現金120万円のうち42万円の債務免除を受けて同金額相当の財産上の利益を受け
もって,それぞれ自己の職務に関して賄賂を収受したものである。(事実認定の補足説明)
第1

弁護人の主張

1
判示第1及び第2の事実について,被告人がDが理事長を務めていたCへ有利かつ便宜な取り計らいをした事実は存しないし,そのような内心の意思を有していたこともないから,被告人には収賄罪が成立しない。

2
判示第1で譲り受けた軽四輪自動車の価格が判示のような高額で市場に流通するとは考えられず,
この価格をもって追徴額を決めるのは法の趣旨に反する。

第2

当裁判所の判断

1
判示第1の事実について
関係証拠によれば,次の事実が認められる。



A町は,かねてCから,町立保育園でCに運営を委託していたB保育園の増
改築を要望されていたところ,その費用負担の軽減を図るため,同保育園をCに移管して民営化を図り,国の保育所緊急整備事業に基づく奈良県安心こども基金特別対策事業補助金の制度を利用しようとした。


前記補助金の制度は,平成25年4月頃に補助金の負担率が変更されるまで
は,上限を3億円とし,国および県がその2分の1,市町村が4分の1,保育所を運営する社会福祉法人が4分の1の負担割合であったところ,A町では,被告人が副町長に就任した平成23年4月頃から,E住民福祉部長やF健康福祉課長らがCのG事務長と費用負担の交渉をしていたが,G事務長がDの意向を受けて増改築費用の半額をA町が負担するよう強く要求していたため,折り合いがつかなかった。


平成23年11月4日頃,CがB保育園の増改築費用を5億円に抑えること
は納得したものの,依然として増改築費用の半額の2億5000万円をA町が負担するよう要求したことから,E部長やF課長は,被告人と相談しその了承を得て,総事業費の5億円から,前記制度に基づく国・県やA町の補助金額を差し引いた2億7500万円をA町とCが折半し,A町が補助金額の7500万円と折半した1億3750万円の合計2億1250万円を負担することを決め,Cに提案したが,Cはこの提案も拒否した。


そこで,被告人は,平成23年11月11日頃,Dと直接会って交渉し,C
がA町に負担を求める2億5000万円とA町が提案した負担額2億1250万円との差額の3750万円のうち,その半額の2000万円程度をA町でさらに負担するようDから求められた。そこで,被告人は,この要求をE部長やF課長に伝え,これを踏まえてCと交渉するよう指示したところ,E部長やF課長は,同月15日頃,CのG事務長と協議し,B保育園の増改築費用について,すでに提案している2億1500万円に前記差額3750万円の半額に相当する1875万円を上乗せした2億3125万円をA町が負担することを最終的に合意した。


しかし,前記2億3125万円全額を建設時の補助金としてCに交付するこ
とにすると,B保育園の増改築費に関し,Cの負担よりもA町の負担の方がかなり多くなっていることが明らかになってしまい,議会の承認を得ることが難しいと考えられたことから,被告人は,H町長,E部長やF課長らと協議し,被告人がかねて考えて事務方に示していた手法に沿い,議会に対しては,国や県が1億5000万円,A町及びCが同額の1億7500万円ずつ負担すると説明した上で,
Cと約束した残りの5625万円については,
数年間に分けて,
保育所運営費補助金の中に新たな項目を設けて補助していくこととした。そして,
被告人は,
平成24年になり,
B保育園の増改築費の前記差額分について,
B保育園のほか,CがA町内で運営するI保育園やJ保育園にも床面積当たり1000円の維持管理費を保育所運営費補助金として出すことなどをF課長らに指示し,その後,その単価を1500円に増額して平成33年まで支払い,その後はその支払を止めるよう健康福祉課長が後任者に引き継ぐことなどの手法を考え,この手法がA町の方針として決定された。


そして,
前記補助金交付の根拠となる要綱が必要であったことから,
A町は,

被告人の決裁等を経て,保育所運営費補助金交付要綱に延べ床面積に1500円を乗じた金額を維持管理費として交付することを加えるなどの改正を行い,B保育園が民営化された平成24年4月1日からこの要綱を施行した。他方,A町は,B保育園の増改築に伴う補助金を交付するため,前同様の決裁を経てB保育園増改築補助金交付要綱を制定し,平成25年4月1日から施行し,同月12日にCに上記補助金の内示をしたところ,Cから国の基金を利用した補助金額及びA町が表向き負担する金額の合計に相当する3億2500万円余りの交付申請がなされ,同年8月8日,Cに対し,申請どおり交付する旨の決定を通知した。


ところが,前記B保育園増改築補助金交付要綱の施行直後,奈良県安心こど
も基金特別対策事業補助金制度の国・県の負担割合が3分の2,市町村が12分の1に変更されたため,A町は,この制度を利用することとし,その交付する補助金額を5000万円ほど減額できることとなった。しかし,これを聞きつけたCのG事務長は,A町の負担が減った分を別の補助金にしてCに交付するよう要求し,E部長らは,これを断ったものの,被告人から検討するよう指示されて話し合った結果,平成25年10月頃,前記維持管理補助金の交付を平成35年まで2年間延長することとなった。


被告人は,平成24年末頃から,娘が使用するための軽四輪自動車を探して
いたが,平成25年5月頃,Dに対して手ごろな軽四輪自動車がないか相談したところ,Dから交通事故を起こして修理中の同人所有の軽四輪自動車を譲渡する旨持ち掛けられてこれを承諾し,同年5月13日頃,前記B保育園で同車の引渡しを受けて代金として1万円を支払った。そして,被告人は,前記軽四輪自動車の代金として10万円程度支払おうと考え,同年6月17日頃,判示のA町役場の副町長室において,Dに対し,その旨告げたところ,Dから「1万円でいい。といわれたことから,

用意していた9万円の中から1万円を取り
出してDに支払った。
前記認定のとおり,民営化されるB保育園の増改築費用に係るA町の補助金の負担額は,理事長であったDの意向を受けたCの要求を概ね受け入れたもので,国の保育所緊急整備事業に基づく奈良県安心こども基金特別対策事業補助金の制度による負担割合を大幅に超過するばかりか,Cよりも負担額が多くなっているのであって,A町が前記補助金を負担することは,客観的にみてCに対する有利かつ便宜な取り計らいであったことは明らかである。
そして,判示のとおり,被告人がA町の副町長として町長を補佐し,同町長の命を受けて政策及び企画をつかさどり,保育所に関する補助金交付の前提となる要綱の改正及び制定等の業務を指揮監督する等の職務権限を有していたことは,関係証拠上争いなく認められるところ,前記認定事実によれば,本件で問題となるB保育園の増改築に係る補助金についても,Dと折衝するなどしてA町が負担する補助金の額の決定に大きな影響を与え,その交付方法についても,表向きはA町及びCが同額を負担するように見せかけて,不足分を運営補助費で補助するなどの具体的な手法を考案し,被告人の考案した手法どおりにA町の方針が決定されて,B保育園の増改築に係る補助金交付の根拠となるA町保育所運営費補助金交付要綱の改正やB保育園増改築補助金交付要綱の制定がなされているのである。これらの事情に照らせば,前記のCに対する有利かつ便宜な取り計らいは,被告人の要綱の改正及び制定等の職務権限に基づく行為やこれに密接に関連する補助金の増額等に係る行為によりなされたとみるのが相当である。
そして,前記認定事実によれば,被告人は,B保育園の増改築に係るA町の負担分に関する方針が決定し,
補助金交付の根拠となる前記要綱が施行されて,
Cがほぼ要求どおりの補助金を受けられることになった間もない時期に,被告人の想定を前提にしてもかなり安い金額で判示の軽四輪自動車を譲り受けているところ,平成19年4月にA町の職員として勤務するようになってからDと職務上の関係が生じたもので,
個人的な付き合いを全くしていなかったことは,
被告人も認めるところであって,このような事情や前記認定のCのA町に対するその後の補助金の要望状況等をも考え併せると,Dによる前記軽四輪自動車の安価な金額での譲渡は,前記被告人の職務権限に基づく行為やこれと密接に関連する行為によってなされたB保育園の増改築に関する有利かつ便宜な取り計らいに対する謝礼及び今後も同様の取り計らいを受けたいとの趣旨でなされたものとみるほかなく,そのような謝礼等の趣旨であることは,被告人と同じように前記認定の事情を認識している一般通常人であれば容易に理解することができたというべきである。被告人には,判示第1の事実について,収賄の故意があったと推認するのが相当である。被告人は,公判廷などにおいて,前記軽四輪自動車を安価で譲り受けた当時は,その趣旨について深く考えていなかったなどとし,上記のように理解していなかった旨供述するが,前記事情に照らして不自然で信用できない。
なお,被告人が譲り受けた当時の軽四輪自動車の価格については,Kが警察官調書において55万6000円であったと供述しているところ,その金額は,
一般財団法人日本自動車査定協会奈良県支所に勤務し,事務長,検査長及び査定長を務め,
これまでに数多くの自動車の査定をしてきた同人の豊富な経験と,同協会が定める客観的な基準に基づき,具体的な根拠を示しながら算出されたもので,その算出過程に不自然,不合理な点はうかがえない。弁護人は,前記軽四輪自動車が人の所有を経た中古車で,50万円余りも修理費を要した事故車であることを根拠に,前記価格の妥当性を争うが,Kは,日本査定協会の基準をもとに,本件軽四輪自動車の購入時期等を参考に推定評価額を70万5000円とした上,本件軽四輪自動車の修理状態を実際に見て損傷の度合いを判定し,その分を14万9000円減額して小売相当額として55万6000円と算出しているのであって,
弁護人の指摘する点を踏まえた金額となっており,
弁護人の前記主張は前記算定価格の妥当性に疑念を抱かせるものではない。のみならず,保険会社の事故調査員をしているLも,警察官調書において,平成25年4月20日に交通事故を起こす前の本件軽四輪自動車の価格について67万円と算定した,前記交通事故による損傷個所を修理した後の価格についても最低57万円程度であると思うなどと供述するところ,この供述も,自動車の査定の専門家が客観的な資料と経験に基づき,前記軽四輪自動車の損傷状況も顧慮しながら述べたもので,特に不合理な点は見受けられないところ,前記K供述とほぼ同様の内容になっていて,同供述を裏付けているといえる。前記K供述は十分信用できるというべきである。
この信用できるK供述等の関係証拠を総合すれば,被告人がDから譲り受けた当時の前記軽四輪自動車の価格は55万6000円と認められ,被告人が代金として支払った2万円を除いた53万6000円が判示第1の犯行により被告人が得た経済的利益と認めるのが相当である。
2
判示第2の事実について
関係証拠によれば,次の事実が認められる。



A町は,その後もCから電気代に関する補助金の増額を要望され,要望を受
けたM住民福祉部健康福祉課長が被告人に報告したところ,被告人から増額を前提に検討を指示されて,平成27年度の予算編成において検討が予定されていた上記補助金の増額が,平成26年度の途中で認められるということがあったところ,M課長は,平成26年12月24日頃にも,Cから,保育士の処遇改善のための補助金の増額や気になる子に対する補助金(特別支援保育事業補助)の増額を要望された。


健康福祉課では,平成27年度の予算編成に向けて,既に,Cが運営する3保育園に対し,これまでどおり,1保育園あたりの気になる子の人数を8名とし,1人あたり1か月5万円(1保育園あたり年間480万円,3保育園で合計1440万円)を補助することで予算要求をしていたが,Cからの前記要望を受け,M課長は,被告人に要望の内容を伝えて相談したところ,被告人からその要望の妥当性を検討するよう指示された。


そこで,
健康福祉課では,
M課長が被告人に気になる子の実態を説明した後,

B保育園及びI保育園について気になる子の人数をそれぞれ8名から10名に増員して補助金額を240万円増額させることとし,その旨予算要求をしたところ,N総務部長による査定の段階では増額が留保されていた。しかし,被告人は,平成27年1月21日,町長とともにN総務部長から査定結果を事前に説明され,特別支援保育事業に関しては,
「理論武装をしておくこと」と注文は
付けたものの,気になる子の増員による補助金の増額については健康福祉課の予算要求を認め,同年1月28日及び同年2月2日に行われた町長査定においても,査定者として出席して前記健康福祉課の予算要求を了承した。このようにして確定した特別支援保育事業補助の増額を認めたA町の平成27年度の予算案は,同年3月の町議会において承認された。


ところで,A町では,国が策定した地域活性化・地域住民生活等緊急支援交
付金(地域創生先行型)制度を利用して交付金を受けようと考え,平成27年1月頃から,総務部総合政策課を窓口として,各課にこの交付金が支給されるような事業を提案するよう募集したが,各課からはほとんど提案がなされなかった。そこで,被告人は,上記制度に見合う事業を複数考え,健康福祉課に対しては,乳幼児保育の充実,不妊治療など複数の事業を記載したメモを渡して提案を検討するよう指示した。


健康福祉課は,被告人からの指示を受けて検討し,国の基準では1歳児6人
に対して保育士を1人つけるところを,1歳児5人に対して1人の保育士をつけることにして,増員される保育士の給料について交付金(4人分で合計1000万円)を受けることを内容とする2歳未満児保育事業を提案した。被告人は,この提案を受けて,2歳未満児保育事業を前記交付金制度の事業とすることを了承し,平成27年2月27日,その実施計画を奈良県に提出することについて決裁し,同年3月6日,上記実施計画が提出された。


そして,A町は,この2歳未満児保育事業の補助金を交付するため,平成2
6年度3月補正予算に1000万円を計上して議会の承認を得るとともに,交付決定の通知を受けて,平成27年3月30日,奈良県に対して概算払請求をした後,同年5月になって,Cにこの補助金が交付できるようA町保育所運営費補助金交付要綱を改正し,同年4月1日に遡って同要綱を施行した。なお,被告人は,同年4月1日頃,G事務長に対し,2歳未満児保育事業について,前記のとおりCに補助金を交付することを伝えていた。


ところで,被告人は,平成19年11月から平成20年4月にかけて,Dか
ら合計800万円を無利子で借りていたが,その後もDから借金及びその返済を繰り返していたところ,平成26年6月5日にDから120万円を借り,その返済期限である同年12月25日に50万円を返済したものの,70万円の返済をすることができず,平成27年4月末日まで支払いを猶予してもらっていた。被告人は,その後,70万円を用意し,同年5月11日頃,前記A町役場の副町長室にDが訪ねてきたので,Dにこれを返済しようとしたところ,Dが70万円入りの封筒の中からその一部である28万円を取り出し,「これで
ええやないか。
」と言って,残りの金が入った封筒を被告人に返し,42万円に
ついて債務免除を受けた。
前記認定のとおり,A町がCからの特別支援保育事業補助等の増額を要望されてこれに応じ,B保育園及びI保育園について気になる子の人数をそれぞれ8名から10名に増員して補助金額を240万円増額させたことや,Cから要望されていない2歳未満児保育事業を国の地域活性化・地域住民生活等緊急支援事業として1000万円の補助金をCに交付できるようにすることは,客観的にみてDが理事長をしていたCに対する有利かつ便宜な取り計らいであったことは明らかである。
そして,判示のとおり,被告人がA町の副町長として町長を補佐し,同町長の命を受けて政策及び企画をつかさどり,保育所に関する補助金交付の前提となる予算編成業務を指揮監督する等の職務権限を有していたことは,関係証拠上争いなく認められるところ,前記認定事実によれば,特別支援保育事業補助金の増額については,平成27年度の予算編成の時期になされたCの要望に対し,被告人が要望を入れる方向で検討を指示し,その指示に沿う形で出してきた健康福祉課の予算要求に対しても,N総務部長による査定の段階で留保されていた増額を被告人が了承したため,A町の平成27年度の予算案に盛り込まれて議会の承認を得ることができたものであり,また,2歳未満児保育事業についても,被告人が考えて検討するよう指示したものが健康福祉課から提案され,被告人の了承を得て前記交付金制度の事業となり,奈良県に実施計画が提出されるとともに,平成26年度3月補正予算に計上されて議会の承認を得,A町保育所運営費補助金交付要綱が改正,施行されているのであって,これらの事情に照らせば,前記のCに対する有利かつ便宜な取り計らいは,被告人の予算編成業務を指揮監督する等の職務権限に基づく行為やこれに密接に関連する行為によりなされたとみるのが相当である。
そして,前記認定事実によれば,被告人は,特別支援保育事業補助金の増額を内容とする平成27年度の予算案や,2歳未満児保育事業の補助金交付を可能にする平成26年度3月補正予算に1000万円が議会において承認されて平成27年5月11日頃に,Dから債務免除を受けているところ,前同様,Dとは職務上の関係があったにすぎず,個人的な付き合いは全くなかったことなどの事情に照らせば,Dによる前記債務免除も,前記被告人の職務権限に基づく行為やこれと密接に関連する行為によってなされたCへの特別支援保育事業補助金の増額や2歳未満児保育事業による補助金の交付といった有利かつ便宜な取り計らいに対する謝礼および今後も同様の取り計らいを受けたいとの趣旨でなされたものとみるほかなく,そのような謝礼等の趣旨であることは,被告人と同じように前記認定の事情を認識している一般通常人であれば容易に理解することができたというべきである。被告人には,判示第2の事実についても,収賄の故意があったと推認するのが相当である。被告人は,公判廷などにおいて,前記債務免除についても,これを受けた当時はその趣旨について深く考えなかったなどとし,
上記のように理解していなかった旨供述するが,
前同様不自然で信用できない。
第3

結論
以上のとおりであり,弁護人の主張はいずれも採用できない。

(法令の適用)
被告人の判示第1及び第2の各所為はいずれも刑法197条1項前段に該当するところ,以上は刑法45条前段の併合罪であるから,同法47条本文,10条により犯情の重い判示第1の罪の刑に法定の加重をし,その刑期の範囲内で被告人を懲役1年6月に処し,同法25条1項を適用してこの裁判が確定した日から3年間その刑の執行を猶予し,被告人が判示各犯行により収受した賄賂はいずれも没収することができないので,同法197条の5後段によりその合計価額金95万6000円を被告人から追徴することとする。
(量刑の理由)
本件は,A町の副町長であった被告人が,2度にわたり,その職務に関し賄賂を収受した事案である。被告人は,奈良県での長年の行政経験を有し,行政経験のない町長を補佐し,実質的に町政を主導する立場にありながら,児童保育行政でかかわりを持つようになったCのDから,多額の金銭を貸し付けてもらい,たびたび饗応接待を受ける中,本件各犯行に及んだものである。本件は,公務員の中立性や廉直性に疑念を抱かせ,A町民の行政に対する信頼を著しく失墜させる悪質な犯行といわざるを得ず,被告人の規範意識は甚だ希薄というほかない。のみならず,被告人が本件各犯行で収受した不正の利益は95万円余りにのぼり,決して少ないとはいえない。
これらに照らすと,被告人の刑事責任を軽視することはできないが,被告人が本件の職務に関して違法な行為を行ったとまではいえず,また,その職務行為に関して自分から賄賂を要求したわけでもないこと,
被告人には前科前歴がないことなど,
被告人のために酌むことのできる事情も認められ,これらの事情に被告人の反省悔悟の状況なども考え併せると,被告人に対しては,社会内で更生の機会を与えるのが相当と思料されるので,主文のとおり刑を量定するとともに,その執行を猶予した次第である。
よって,主文のとおり判決する。
(求刑

懲役1年6月,追徴95万6000円)

平成30年2月5日
奈良地方裁判所葛城支部

裁判官奥田哲也
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