判例検索β > 平成26年(ワ)第5967号
地位確認等請求事件
事件番号平成26(ワ)5967
事件名地位確認等請求事件
裁判年月日平成30年2月21日
法廷名大阪地方裁判所
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主1文
本件各訴えのうち,原告らが被告に対し,平成26年4月1日から平成29年9月26日(本件口頭弁論終結日の前日)までの間において被告社員給与規程及び被告社員就業規則の各規定が適用される労働契約上の地位を有することの確認を求める部分をいずれも却下する。

2
被告は,原告Aに対し,8万1000円及び別紙2-1「原告A」欄記載の各金員に対する「支払日」欄記載の各日の翌日から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

3
被告は,原告Bに対し,7万1000円及び別紙2-1「原告B」欄記載の各金員に対する「支払日」欄記載の各日の翌日から各支払済みまで年5分の割
合による金員を支払え。
4
被告は,原告Cに対し,3万円及び別紙2-2「原告C」欄記載の各金員に対する「支払日」欄記載の各日の翌日から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

5
被告は,原告Eに対し,4万9000円及び別紙2-1「原告E」欄記載の各金員に対する「支払日」欄記載の各日の翌日から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

6
被告は,原告Fに対し,26万1000円及び別紙2-2「原告F」欄の各「勤務年月」に対応する「合計」欄記載の各金員に対する「支払日」欄記載の各日の翌日から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
7
被告は,原告Gに対し,18万6800円及び別紙2-2「原告G」欄の各「勤務年月」に対応する「合計」欄記載の各金員に対する「支払日」欄記載の各日の翌日から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
8
被告は,原告Hに対し,36万7000円及び別紙2-1「原告H」欄の各「勤務年月」に対応する「合計」欄記載の各金員に対する「支払日」欄記載の各日の翌日から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。9
被告は,原告Iに対し,199万9600円及び別紙2-3「原告I」欄の各「勤務年月」に対応する「合計」欄記載の各金員に対する「支払日」欄記載の各日の翌日から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
10
原告らのその余の請求をいずれも棄却する。

11

訴訟費用は,これを10分し,その1を被告の負担とし,その余を原告らの負担とする。

12

この判決は,第2項ないし第9項に限り,仮に執行することができる。事実及び理由

第1

請求
別紙3「請求の表示」記載のとおり

第2
1
事案の概要等
本件事案の概要
(1)

原告らは,いずれも被告との間で期間の定めのある労働契約(以下「有
期労働契約」という。)を締結し,被告の業務に従事しているところ,被告においては,有期労働契約を締結している従業員(以下「期間雇用社員」という。)と期間の定めのない労働契約(以下「無期労働契約」という。)を締結している従業員(以下「正社員」という。)との間で,労働契約に期間の定めがあることに関連して,手当等の支給について労働条件の相違が存在する。

(2)

本件は,原告らが,被告に対し,上記労働条件の相違が,労働契約法
(以下「労契法」という。)20条に違反するものである,また,同条施行前は同一労働同一賃金の原則に反するもので,公序良俗に反すると主張して,①被告が社員給与規程を改訂した平成26年4月1日以降,別紙3「請求の表示」1ないし8に掲記の正社員に適用される被告社員給与規程及び被告社員就業規則の各規定(以下「本件各規定」という。)が期間雇用社員である原告らにも適用される労働契約上の地位を有することの確認を求める(別紙3「請求の表示」1項ないし8項)とともに,②労契法20条施行前の平成24年4月ないし平成25年3月に支給される手当等については不法行為に基づく損害賠償請求として,同条施行後の同年4月ないし平成28年3月に支給される手当等については,主位的に,同条の効力により原告らに正社員の労働条件が適用されることを前提とした労働契約に基づく賃金請求として,
予備的に,不法行為に基づく損害賠償請求として,別紙4-1ないし4-8の各「請求債権目録」記載のとおり,正社員の諸手当との差額及び各月の差額合計額に対する各給与支払日の翌日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払(別紙3「請求の表示」9項ないし16項)を求める事案である。

2
前提事実(争いがない事実並びに後掲各証拠及び弁論の全趣旨により容易に認定できる事実)
(1)

被告
被告は,郵政民営化法5条2項に基づき平成19年10月1日に設立され
た郵便事業株式会社と郵便局株式会社が,平成24年10月1日,同法6条の2,176条の2,176条の3に基づき合併して成立した株式会社であり(以下,郵政民営化又は合併の前後を問わず「被告」と総称することがある。),同法及び日本郵便株式会社法の規定に基づき,日本郵政公社(同社の設立前は国〔郵政省及び郵便事業庁〕)が行っていた郵便事業を承継し,
郵便局を設置して,郵便業務,銀行窓口業務及び保険窓口業務等を主たる業務内容としている。
(2)

原告ら
原告らは,下記アないしクのとおり,いずれも被告との間で有期労働契約
を締結し(原告Eを除き,郵政省,郵便事業庁又は日本郵政公社に有期任用公務員として任用され,郵政民営化に伴い,平成19年10月1日,被告の前身である郵便事業株式会社との間で有期労働契約を締結した。),その後,更新を繰り返し,郵便物の集配又は荷物(ゆうパック等)の集荷等の郵便外務業務に従事し又は従事していた者であり,後記(3)のとおり,いずれも期間雇用社員に関する就業規則及び賃金規程が適用される者である。また,原告Iを除く原告らは,いずれも時給により賃金が支給される時給制契約社員であり(ただし,原告Cは既に被告を退職した。),原告Iは,平成24年8月1日に時給制契約社員から月給により賃金が支給される月給制契約社員になった。なお,下記アないしクにおいて,勤務時間について特に明記しない場合は,被告との労働契約上,正規の勤務時間を4週間について1週平均40時間である。


原告A
原告Aは,平成9年12月頃,a郵便局における集配業務の短期アルバイトとして任用され,その後も有期任用を更新し,郵政民営化後は,被告との間で契約期間を6か月とする有期労働契約の更新を繰り返し,同郵便局において集配業務等に従事している時給制契約社員である(甲A1の①ないし④,甲A6,原告A)。


原告B
原告Bは,平成18年2月,有期任用公務員として任用され,その後も有期任用を更新し,郵政民営化後は,被告との間で契約期間を6か月とする有期労働契約の更新を繰り返し,b郵便局において集配業務等に従事している時給制契約社員である(甲B1の①ないし⑤,甲B5,原告B)。

原告C
原告Cは,平成15年9月,有期任用公務員として任用され,その後も有期任用を更新し,郵政民営化後は,被告との間で契約期間を6か月とする有期労働契約の更新を繰り返し,b郵便局において集荷業務等に従事し
ていた時給制契約社員であったが,平成28年3月31日,被告を退職した(甲C1の①ないし⑤,甲C8,原告C)。エ
原告E
原告Eは,平成22年,被告(郵便事業株式会社)に採用されてc郵便局に勤務し,いったん退職した後,同年10月ないし11月頃,被告との間で契約期間を平成23年3月31日までとする有期労働契約を締結してd郵便局に勤務するようになり,同年4月1日以降,契約期間を6か月と
する有期労働契約の更新を繰り返し,同郵便局において集荷及び集配業務等に従事している時給制契約社員である(甲E1の①ないし⑤,甲E7,9,原告E)。

原告F
原告Fは,平成18年1月ないし2月頃,勤務時間を4時間とする短時
間職員として有期任用され,その後も有期任用を更新し,郵政民営化後は,被告との間で勤務時間を4時間とする有期労働契約の更新を繰り返していたが,平成22年4月1日,勤務時間を8時間(4週間について1週平均40時間),契約期間を6か月とする有期労働契約を締結し,その後は,同契約での更新を繰り返し,e郵便局において集配業務等に従事している
時給制契約社員である(甲F1,8,原告F)。

原告G
原告Gは,平成13年8月,有期任用公務員として任用され,その後も有期任用を更新し,郵政民営化後は,被告との間で契約期間を6か月とする有期労働契約の更新を繰り返し,f郵便局において集配業務等に従事し
ている時給制契約社員である(甲G1の①ないし⑤,甲G12,原告G)。キ
原告H
原告Hは,平成11年7月,f郵便局における非常勤職員(有期任用公務員)として任用され,平成13年10月1日からは同郵便局に短時間職
員(勤務時間は4時間)として勤務し,その後も有期任用を更新し,郵政民営化後は,被告との間で勤務時間を4時間とする有期労働契約を締結して更新を繰り返し,平成20年5月頃及び同年7月頃に,いずれもいったん被告を退職した上で新たな有期労働契約(勤務時間は1日8時間)を締結し,それぞれg郵便局及びh郵便局に勤務していたが,平成22年3月31日,被告を退職した。原告Hは,同年6月21日,再度,被告との間で時給制契約社員として有期労働契約を締結し,f郵便局において集配業
務等に従事することとなり(当初は,勤務時間を6時間として集荷業務等に従事していた。),その後も契約期間を6か月として更新を繰り返している。
(甲H1の①ないし⑤,甲H12,19の①②,原告H)ク
原告I
原告Iは,平成19年4月,有期任用公務員として任用され,その後も有期任用を更新し,郵政民営化後は,被告との間で契約期間を6か月とする時給制契約社員として有期労働契約の更新を繰り返していたが,平成24年8月1日からは月給制契約社員となり,平成25年4月1日以降,契約期間を1年とする有期労働契約の更新を繰り返し,上記各期間を通じて
d郵便局において集配業務等に従事している(甲I1の①ないし⑤,甲I8,原告I)。
(3)

被告における雇用形態
被告に雇用される従業員は,無期労働契約を締結している正社員と,有期労働契約を締結している期間雇用社員とに分けられ,それぞれ適用される就業規則及び賃金規程が異なっている(なお,これらのほか,高齢再雇用社員及び短時間社員も存在する。乙1)。
すなわち,正社員には,採用区分及び職種を問わず,「社員就業規則」(甲1)及び「社員給与規程」(甲2,5。以下,これらを総称して「社
員就業規則等」という。)が適用され,期間雇用社員には,時給制契約社員及び月給制契約社員(以下,両者を合わせて「本件契約社員」という。)のいずれに対しても,「期間雇用社員就業規則」(甲3)及び「期間雇用社員給与規程」(甲4。以下,これらを総称して「期間雇用社員就業規則等」という。)が適用される。

正社員
(ア)

正社員に係る人事制度等
正社員は,社員就業規則所定の採用手続により,雇用期間を定めずに
採用された者をいい,後述のとおり,平成26年3月31日までの人事制度(以下「旧人事制度」という。)と同年4月1日以降の人事制度(以下「新人事制度」という。)とで,採用区分等が異なっている。正社員の定年は60歳であり,定年に達した日以後における最初の3
月31日に退職する。
また,正社員の勤務時間は,1日について原則として8時間,4週間について1週平均40時間とされている。
(甲1・2条,15条,45条)
(イ)

平成26年3月31日まで
正社員は,旧人事制度において,「総合職」と「一般職」とに区分し
て採用されていた(以下,旧人事制度において総合職及び一般職として採用された被告の職員群を,それぞれ「旧総合職」及び「旧一般職」という。)。
もっとも,郵便業務を担当する組織に属する正社員(「管理者」と呼ばれる管理職層を除く。)は,上記採用区分とは必ずしも連動せず,その担当する職務内容に応じて,企画職群,一般職群及び技能職群に分類され,それぞれに対応する基本給表が適用されていた。このうち,郵便局における郵便業務を担当していたのは,一般職群の一般職(上記のと
おり当時の採用区分における「旧一般職」とは異なり,その担当職種としての呼称であり,以下「一般職(職種)」という。)であり,担当者(1級),主任(2級),課長代理(3級),課長及び総括課長(いずれも4級)の職位及び等級が設けられていた(このうち,主任以上の者,又は課長代理以上の者を「役職者」ということがある。また,各郵便局には,「管理者」として,部長以上の職位の者も配置されている。)。(甲1,2,36,乙24,31,35,証人J)

(ウ)

平成26年4月1日以降
一方,平成26年4月1日以降に導入された新人事制度においては,
社員の職務や期待する役割に着目して区分するコース制が導入され,総合職,地域基幹職及び一般職の各コースが設けられた(以下,新人事制度における総合職,地域基幹職及び一般職の各職員群を,それぞれ「新
総合職」,「地域基幹職」及び「新一般職」という。)。各社員のコースは,採用時に決定され,原則として不変である。
新人事制度において,原則として旧総合職は新総合職,旧一般職は地域基幹職に位置づけられた(一部の者は,その希望により旧一般職から新一般職に移行した。)が,新一般職は,新人事制度において新たに設
けられた正社員の区分であり,役職層には登用されず,原則として転居を伴う転勤がないものとされている。
また,郵便局に勤務する地域基幹職の職位及び等級は,上記(イ)記載の一般職(職種)のものと同様である。
(甲32,36,37,乙24,31,35,証人J)


期間雇用社員
(ア)

期間雇用社員の種類
期間雇用社員は,期間雇用社員就業規則所定の採用手続により期間を
定めて採用された者をいい,スペシャリスト契約社員,エキスパート契約社員,本件契約社員(月給制契約社員,時給制契約社員)及びアルバイトに区分される(甲3・2条)。
(イ)

時給制契約社員
時給制契約社員は,郵便局等での一般的業務に従事し,時給制で給与
が支給されるものとして採用された者である。
時給制契約社員の契約期間は6か月以内であり,正規の勤務時間は,1日について8時間以内,4週間について1週平均40時間以内である。
契約期間が満了した場合において,被告がその雇用契約を更新することが必要と認めるときは,本人の希望を踏まえ,その雇用契約を更新することができるが,原則として満65歳に達した日以降の新たな更新は行わないものとされている。
(甲3・2条,11条,12条,21条)

(ウ)

月給制契約社員
月給制契約社員は,高い知識・能力を発揮して郵便局等での一般的業
務に従事し,月給制で給与が支給されるものとして採用された者である。被告は,郵政民営化時に,それまでの有期任用公務員のうち特に評価が高かった者(当時,「キャリアスタッフ」と呼ばれていた。)の中から
希望者を月給制の雇用契約により採用し,その後も平成26年3月までは,時給制契約社員の中から一定の要件を満たした者を,月給制契約社員として登用していた。
月給制契約社員の契約期間は1年以内であり,正規の勤務時間は1日について6時間以上8時間以内,4週間について1週平均40時間,3
5時間又は30時間である。
雇用契約の更新については時給制契約社員と同様である。
(甲3・2条,11条,12条,21条,乙30,31,証人K)(4)
郵便業務を担当する正社員の労働条件の概要
郵便業務を担当する正社員の給与は,基本給及び諸手当で構成され,諸手
当には,扶養手当,通勤手当,住居手当,調整手当,寒冷地手当,隔遠地手当,超過勤務手当,祝日給,夜勤手当,特殊勤務手当(外務業務手当,郵便外務業務精通手当,年末年始勤務手当及び早出勤務等手当を含む。),夏期手当及び年末手当がある(平成26年4月1日以降は,これらの手当に加えて単身赴任手当及び営業関係手当が支給されている。甲2・160条,248条,甲5・3条,89条)。
本件において,原告らが,正社員と比較して不合理な労働条件の相違であると主張する手当等の概要は,次のとおりである(以下,このうち下記アないしクの各手当を総称して「本件各手当」といい,これに下記ケ及びコを加えたものを「本件各労働条件」という。)。


外務業務手当
正社員が外務業務に従事した場合に支給される手当である。その額は,外務業務に従事した日1日につき,各郵便局の取扱物数等により定められた支給区分に応じて570円から1420円(外務業務に従事した時間が4時間に満たない場合は,その半額)である。なお,同手当は,平成26年3月をもって廃止された。

(甲2・249条,証人K)

郵便外務業務精通手当
郵便業務調整額の支給を受ける正社員のうち主として外務事務に従事し,その担当する職務の精通度合い等を被告が定めるところにより評価した結
果が所定の評価段階に達した正社員(ただし,新規採用後6か月未満の者等を除く。)に対し支給される手当である。その額は,上記評価段階に応じて定められた手当額(1万6500円,1万0900円,5100円)に,各郵便局の取扱物数等に応じた調整率(100パーセント,70パーセント,30パーセント)を乗じて算出される。なお,同手当は,平成2
6年3月をもって廃止された。
(甲2・265条,264条,証人K)

年末年始勤務手当
正社員が,12月29日から翌年の1月3日までの間において,実際に勤務したときに支給される手当である。その額は,勤務した日1日につき,12月29日から同月31日までは4000円,1月1日から同月3日までは5000円(実際に勤務した時間が4時間以下の場合は,その半額)
である。
(甲2・268条,甲5・124条)

早出勤務等手当
正社員が,正規の勤務時間として,始業時刻が午前7時以前となる勤務又は終業時刻が午後9時以後となる勤務に4時間以上従事したときに支給
される手当である。その額は,始業時刻が午前5時59分以前又は終業時刻が午後10時1分以後の場合が850円,始業時刻が午前6時から午前6時30分までの場合が500円,その他の場合が350円である。(甲2・250条,甲5・117条)

祝日給
正社員が祝日において,割り振られた正規の勤務時間中に勤務することを命ぜられて勤務したとき(祝日代休が指定された場合を除く。)及び1月1日から1月3日までの各日(祝日を除く。)に勤務したときに支給されるものである。その額は,月の初日から末日までの間における祝日給の支給対象時間(休憩時間以外の時間)に次の算式により求められる額を乗
じて得た額である。
(基本給の月額+基本給及び扶養手当の月額に係る調整手当の月額+隔遠地手当の月額)×12/年間所定勤務時間数)×100分の135(甲2・238条,239条,237条1項2号,甲5・82条,83条,81条1項2号)


夏期手当及び年末手当(以下,総称して「夏期年末手当」という。)基準日(夏期手当6月1日,年末手当12月1日)に在職し,又は基準日前1か月以内に退職若しくは死亡した正社員(休職中の者等を除く。)に対して支給される手当である。その額は以下のとおりである。
(ア)

夏期手当

(A+B+C)×D×Eによって算出される額

A
基準日において受けるべき基本給の月額

B
基準日において受けるべき扶養手当の月額

C
基準日において受けるべき調整手当の月額

D
在職期間割合(6か月:100分の100,3か月以上6か月未

満:100分の60,3か月未満:100分の30)
E
(イ)

支給の都度定める割合
年末手当

a
次のa及びbの合計額

(A+B+C)×D×Eによって算出された額
AB
基準日において受けるべき扶養手当の月額

C
基準日において受けるべき調整手当の月額

D
在職期間割合(上記(ア)Dと同様)

E
基準日において受けるべき基本給の月額

支給の都度定める割合

b
(A+B)×C×Dによって算出された額
AB
基準日において受けるべき基本給の月額に係る調整手当の月額

C
在職期間割合(上記(ア)Dと同様)

D
基準日において受けるべき基本給の月額

評定区分に応じた成績率(支給の都度定める割合に,一定割合を
加算又は減算したもの)

(以上につき,甲2・273条,274条,276条,甲5・126条,128条,131条)


住居手当
次の(ア)ないし(ウ)のいずれかに該当する正社員に対して支給される手当である。その額は,家賃の額や住宅購入の際の借入額に応じて定められ,最大で月額2万7000円である。
(ア)

自ら居住するため住宅(貸間を含む。下記(ウ)において同じ。)を
借り受け,現にその住宅に居住し,月額1万2000円を超える家賃
(使用料を含む。下記(ウ)において同じ。)を支払っている正社員(イ)

正社員の所有に係る住宅のうち当該社員によって新築され,又は購
入された住宅であって,当該新築又は購入の日から起算して5年を経過していないものに居住している正社員で世帯主であるもの
(ウ)

単身赴任手当を支給されている正社員で,配偶者が居住するための
住宅を借り受け,月額1万2000円を超える家賃を支払っているもの(以上につき,甲2・219条,220条,甲5・61条,62条)ク
扶養手当
次の(ア)ないし(オ)のいずれかの扶養親族(他に生計の途がなく,主と
して当該正社員の扶養を受けている者)のある正社員に支給される手当である。その額は,(ア)の扶養親族については1万2000円,(イ)の扶養親族については1人につき3100円,(ウ)ないし(オ)の扶養親族については1人につき1500円である(ただし,配偶者を欠く場合,(イ)の扶養親族のうち1人については1万0800円が,扶養親族でない配偶者を
有する場合,(イ)又は(ウ)ないし(オ)の扶養親族のうちいずれか1人については4000円又は2500円が支給され,(イ)又は(エ)の扶養親族のうち満15歳に達する日の翌日以後の最初の4月1日以後にある者については,更に5000円が加算される。)。
(ア)

配偶者(婚姻の届出をしないが事実上婚姻関係と同様の事情にある
者を含む。)
(イ)

満22歳に達する日以後の最初の3月31日までの間にある子
(ウ)

満60歳以上の父母及び祖父母

(エ)

満22歳に達する日以後の最初の3月31日までの間にある弟妹及
び孫
(オ)

重度心身障害者
(以上につき,甲2・206条,207条,甲5・48条,49条)

夏期休暇及び冬期休暇(以下,総称して「夏期冬期休暇」という。)正社員に対し,夏期休暇は6月1日から9月30日まで,冬期休暇は10月1日から翌年3月31日までの期間において,在籍時期に応じて暦日3日ないし1日の休暇が付与され,いずれも有給である(甲1・63条1項2号,2項1号,68条1項19号,20号)。


病気休暇
正社員が,①業務上の事由若しくは通勤による傷病又は②その他の私傷病により,医師の証明等に基づき,最小限度所属長が必要と認める期間において,勤務日又は正規の勤務時間中に勤務しない場合,その勤務しない期間を病期休暇が付与される。上記①の場合は無給,上記②の場合は有給
(ただし,結核性疾患の場合は引き続き1年,結核性疾患以外の場合は引き続き90日(勤続10年以上の社員にあっては180日)を超える期間については,基本給の月額及び調整手当を半減して支給)である。(甲1・63条1項3号,2項2号,69条)
(5)

本件契約社員に係る労働条件の概要
時給制契約社員
郵便業務を担当する時給制契約社員の給与は,基本賃金及び諸手当で構成され,諸手当には,通勤費,時間外割増賃金,祝日割増賃金,深夜割増賃金,早朝・夜間割増賃金,特殊勤務手当,臨時手当及び作業能率評価手
当がある(甲4・101条)。
これらのうち,基本賃金,早朝・夜間割増賃金,祝日割増賃金及び臨時手当並びに時給制契約社員の病気休暇の概要は次のとおりである。(ア)

基本賃金
時給制契約社員の基本賃金は,時給制とし,基本給と加算給の合計額
とされる。
基本給は,募集環境を考慮して所属長により定められるが,その下限
は,当該地域の最低賃金に相当する額(10円未満の端数は切り上げ)に20円を加えた額とし,郵便外務業務に従事する時給制契約社員については上記下限額に130円又は80円が加算される。
加算給は,基礎評価給及び資格給の合計額である。
(甲4・103条,別表第7)

(イ)

早朝・夜間割増賃金
時給制契約社員が,正規の勤務時間として,始業時刻が午前5時から
7時以前となる勤務又は終業時刻が午後9時から午後10時以前となる勤務に1時間以上従事したときに支給され,その額は,勤務1回につき,始業時刻が午前5時から午前5時59分の場合,500円,始業時刻が午前6時から午前6時30分の場合,300円,その他の場合,200円である(甲4・109条,97条)。
(ウ)

祝日割増賃金
時給制契約社員が祝日に勤務することを命ぜられて勤務したときに支
給され,その額は,月の初日から末日までの期間における祝日割増賃金の支給対象時間(休憩時間以外の時間)に,基本賃金額の100分の35を乗じて得た額である(甲4・107条)。
(エ)

臨時手当(夏期賞与及び年末賞与)
基準日(夏期賞与6月1日,年末賞与12月1日)に雇用されている
時給制契約社員のうち,基準日前6か月の期間(「対象期間」)における実際勤務日数が60日以上ある者に対して支給され,その額は,いずれも次の計算式により算出される額である。
A÷6×0.3×B
A
対象期間において支給された基本賃金の合計額

B
対象期間における実際勤務日数の区分に応じた割合(80日未満:1.0,80日以上100日未満:1.1,100日以上120日未
満:1.2,120日以上:1.3。ただし,対象期間における実際勤務日数が120日以上の時給制契約社員のうち,対象期間の全期間において1日の正規の勤務時間数が8時間である者については,Bを1.8とする。)
(甲4・111条)

(オ)

病気休暇
①業務上の事由又は通勤による傷病の場合には,医師の証明等に基づ
き,最小限度所属長が必要と認める期間,②その他の私傷病の場合には,医師の証明等に基づき,1年度において10日の範囲内で社員が請求する期間,休暇を付与されるが,正社員とは異なり上記①及び②のいずれ
も無給である(甲3・42条)。

月給制契約社員
郵便業務を担当する月給制契約社員の給与は,基本賃金及び諸手当で構成され,諸手当には,通勤手当,時間外割増賃金,祝日割増賃金,深夜割
増賃金,早朝・夜間割増賃金,特殊勤務手当,臨時手当及び作業能率評価手当がある(甲4・91条)。
月給制契約社員の基本賃金,祝日割増賃金及び臨時手当の概要は次のとおりである。なお,早朝・夜間割増賃金及び月給制契約社員の病期休暇の概要については,それぞれ上記ア(イ)及び(オ)と同様である。
(ア)

基本賃金
月給制契約社員の基本賃金は,基本月額,調整額及び地域手当の合計額とされる。
基本月額は,担当する業務(内務作業又は外務作業)及び1週間の正規の勤務時間によって定められ(外務作業を担当し,1週間の正規の勤務時間が40時間の場合,22万2600円),毎年4月1日の雇用契約期間の更新時において,その前1年間に係る評価結果が良好であった
場合には,上記担当業務及び勤務時間の区分に応じた額が最大4回分まで加算される(前同様の条件の場合,1回当たり4300円が加算される。)。
(甲4・92条)
(イ)

祝日割増賃金
月給制契約社員が,祝日において割り振られた正規の勤務時間中に勤
務することを命ぜられて勤務したときに支給される(正社員とは異なり,1月1日から1月3日までの各日〔祝日を除く。〕に勤務した場合は対象に含まれない。)。その額は,月の初日から末日までの期間における祝日割増賃金の支給対象時間(休憩時間以外の時間)に次の算式により
求められる額を乗じて得た額である。
(基本賃金額×12/年間所定勤務時間数)×100分の135
(甲4・95条,94条2項3号)
(ウ)

臨時手当(夏期賞与及び年末賞与)
基準日(夏期賞与6月1日,年末賞与12月1日)に雇用されている
月給制契約社員(休職中の者等を除く。)に対して支給され,その額は,いずれも基本賃金月額×0.3×2.0により算出される額である(甲4・99条)。
第3
1
本件の争点
原告ら主張に係る本件各労働条件の相違が,労契法20条に違反するか否か
(同相違に係る不合理性の有無)(争点1)
2
仮に,原告らが主張する本件各労働条件の相違が労契法20条に違反すると
した場合の法的効果如何(争点2)
(1)
(2)
3
労契法20条に基づく金員請求の可否(補充的効力の有無)
原告らが主張する本件各労働条件の相違に係る不法行為責任の有無
原告らが主張する本件各労働条件の相違は,公序良俗(民法90条)に違
反するか否か(争点3)
4
第4
1
原告らに係る損害等の有無及びその額(争点4)
争点に対する当事者の主張
争点1(原告ら主張に係る本件各労働条件の相違が,労契法20条に違反するか否か〔同相違に係る不合理性の有無〕)について
【原告らの主張】
(1)

労契法20条違反の有無の判断枠組み等について
「不合理」の意義について
労契法20条は,有期契約労働者と無期契約労働者との労働条件の相違が「不合理と認められるものであってはならない」としているから,労働
条件の相違について合理的理由のない場合には,当該相違が「不合理」と認められ,同条に反するというべきである。

不合理性の判断方法について
有期契約労働者と無期契約労働者との待遇差が不合理であるか否かは,個々の労働条件ごとに判断しなければならない。


不合理性の判断要素について
労契法20条は,不合理性を判断するに当たり考慮すべき事情として,①労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度(以下「職務の内容」という。),②当該職務の内容及び配置の変更の範囲,③その他の事情を
掲げている(以下,上記①ないし③を総称して「職務内容等」という。)ところ,上記①及び②が中核的な労働契約内容に関するものであるのに対し,③は中核的な労働契約内容に関するものではないから,不合理性の判断過程においても上記①及び②が重視され,③は厚生労働省の通達等により明示された事情を限度として限定的に考慮されるべきである(例えば,被告が主張するような本件各労働条件設定の歴史的経緯,労使交渉の状況及び正社員登用制度の存在等は,「その他の事情」に含まれない。)。
また,上記①については,労働者が現実に従事している業務を対象として考慮すべきであり,②についても,使用者の主観によるものではなく,文書や慣行によって確立しているものなど客観的な事情によって判断されるべきである。
(2)

原告ら及び正社員の職務内容等について
原告らと比較すべき正社員について
本件において,労働条件相違の不合理性を判断するに当たり,本件契約社員である原告らと比較すべき正社員は,原告らと職務内容等が同一又は近似する正社員の職員群とすべきであり,旧人事制度においては,一般職(職種)のうち郵便外務職の担当者(1級)及び主任(2級),新人事制
度においては,新一般職とすることが適当である。

職務内容等の相違の有無及び程度について
原告らは,各郵便局において,上記アの正社員と同様の郵便外務業務に従事し,業務上与えられている権限や,業務の成果について求められる役割,更にはトラブル発生時等に求められる対応及びノルマ等の成果への期
待の程度についても上記正社員と相違はない。したがって,原告らと正社員との間で,職務の内容について有意な差異はないというべきである。正社員と本件契約社員との職務内容等の相違点として,被告が主張する各事情に対する原告らの主張は,別紙5「正社員と期間雇用社員との間の制度上の相違に関する整理表」の「原告主張」欄記載のとおりである。
(3)

本件各労働条件に関する相違の不合理性について

前記前提事実(4),(5)のとおり,正社員には本件各労働条件が適用さ
れるのに対し,本件契約社員には本件各手当及び休暇が全く付与されないか,付与される内容に相違がある。これらの労働条件の相違は,上記(2)のとおり原告らと正社員との職務の内容について有意な差異がないことに照らすと,いずれも労契法20条に違反する不合理なものというべきであ
る。

本件各労働条件に関する相違の不合理性についての原告らの個別の主張は,別紙6「労働条件整理表」の「原告らの反論」欄記載のとおりである。
【被告の主張】
(1)

労契法20条違反の有無の判断枠組み等について
「不合理」の意義について
労契法20条の「不合理と認められるもの」とは,規範的要件であり,不合理性の評価根拠事実を有期契約労働者側が,不合理性の評価障害事実を使用者側が立証すべきことになる。そして,同条の上記文言及び立証責任の所在等を踏まえると,同条の「不合理」とは,労働条件の相違が単に
合理的理由を欠くというだけでなく,有期契約労働者の労働条件が無期契約労働者の労働条件に比して,同条の趣旨に照らして法的に否認すべき内容ないし程度で不公正に低いものであることを意味すると解すべきである。イ
不合理性の判断方法について
被告においては,原告らが主張する本件各労働条件も含めて,正社員と
期間雇用社員との本質的な相違を踏まえた総合的な判断により,各人事制度及び給与制度等を構築しているから,その一部のみを個別に取り上げて不合理性を論じることは不適切である。

不合理性の判断要素について
労契法20条における不合理性の判断要素は,①職務の内容,②当該職務の内容及び配置の変更の範囲及び③その他の事情であるが,上記③には,本件各労働条件が設定された歴史的経緯,労使交渉の状況並びに正社員登用制度の存在及び運用状況等も含め,労働条件設定全般に関わる様々な事情が含まれるというべきである。
(2)

原告ら及び正社員の職務内容等について


原告らと比較すべき正社員について
被告の正社員は,キャリア形成の過程で昇任・昇格し,多様な業務に従事する存在であり,当該過程の途中の役職のみを取り出して比較することは不当である。したがって,原告らと比較すべき正社員は,旧一般職及び地域基幹職全体とすべきである。


職務内容等の相違の有無及び程度について
原告らと正社員とでは,別紙5「正社員と期間雇用社員との間の制度上の相違に関する整理表」の「被告主張」欄記載のとおり,採用過程,想定される業務の内容及び業務に伴う責任の程度,配転の有無,昇任・昇格,人事評価制度,人材育成・研修制度,営業活動の人事評価・処遇への反映,その他の点で相違が存在しており,これらを踏まえると,職務内容等が大
きく相違するということができる。
(3)

本件各労働条件に関する相違の不合理性の点について


本件各労働条件に関する正社員と本件契約社員との間の相違は,上記
(2)のとおり両者の職務内容等に大きな相違があることに照らすと,いずれも不合理なものではない。


本件各労働条件に関する相違の合理性についての被告の個別の主張は,別紙6「労働条件整理表」の「被告の主張」欄記載のとおりである。
2
争点2(仮に,原告らが主張する本件各労働条件の相違が労契法20条に違反するとした場合の法的効果如何)について

【原告らの主張】
(1)

労契法20条に違反する有期契約労働者の労働条件は無効となる上,同条違反について少なくとも使用者の過失は免れず,使用者に不法行為責任が生じる。
(2)

また,①労契法の施行に係る厚生労働省の通達が,「法第20条により,
無効とされた労働条件については,基本的には,無期契約労働者と同じ労働条件が認められると解されるものであること。」と定めていること,②労働条件の設定を労使間の交渉に委ねた結果として有期契約労働者と無期契約労働者との労働条件の格差が生じ,その格差が不公正な水準にまで達した場合にこれを是正するために労契法20条が明文化されたことに照らすと,同条の民事的効力により,これに反する労働条件の相違が無効とされた場合には,
有期契約労働者に対して,無期契約労働者の当該労働条件が労働契約の内容として適用される(すなわち,労契法20条が補充的効力を有する。)と解すべきである。
(3)

仮に,上記のような補充的効力が一般的には否定されるとしても,関係
する就業規則,労働協約,労働契約等の規定を合理的に解釈し,可能な限り有期契約労働者に対して無期契約労働者の労働条件を適用すべきである。【被告の主張】
(1)ア

労契法20条は,補充的効力を文言上規定していない上,労使自治の
原則に照らすと,同条により無効と判断された有期契約労働者の労働条件の設定は,「不合理と認められるもの」ではない範囲で,会社の人事制度全体との整合性,無期契約労働者と有期契約労働者の人材活用の仕組み及び運用の違い,従前の労使交渉の経過等を踏まえた上での,労使間の再度の利益調整に委ねられるべきであるから,同条に補充的効力は認められない。

被告においては,社員就業規則等と期間雇用社員就業規則等とがそれぞ
れ独立に存在し,正社員と期間雇用社員の人事制度及び賃金体系等もそれぞれ別個独立のものとして設計されていることから,社員就業規則等の合理的解釈によっても,期間雇用社員に正社員の労働条件が適用されることはない。

以上によれば,原告らの労契法20条に基づく主位的請求(正社員就業
規則等の条項が適用される地位にあることの確認及びこれを前提とする差額賃金請求)は,主張自体失当である。

(2)
3
原告らが主張する不法行為責任の点については,否認ないし争う。
争点3(原告らが主張する本件各労働条件の相違は,公序良俗〔民法90条〕に違反するか否か)について
【原告らの主張】

(1)

「およそ人はその労働に対して等しく報われなければならない」という
理念,すなわち同一労働同一賃金の原則は,我が国が批准した国際労働憲章,ILO100号条約,国際人権規約A規約7条等の国際条約において確立した労働基準となっている。また,裁判例(丸子警報器事件・長野地方裁判所上田支部平成8年3月15日判決・労働判例690号32頁)においても,「同一(価値)労働同一賃金の原則の基礎にある均等待遇の理念は,賃金格差の違法性判断において,ひとつの重要な判断要素として考慮されるべきものであって,その理念に反する賃金格差は,使用者に許された裁量の範囲を逸脱したものとして,公序良俗違反を招来する場合があ」り,許容される賃金格差の範囲を明らかに超えた場合には,使用者に許された裁量権の範囲を
逸脱して違法となるとしている。この判断は,一定の許容された裁量権を逸脱した場合には賃金の格差が公序良俗に違反することを示している。(2)

本件の場合には,正社員と原告らの労働の同一性が顕著であるから,労
契法20条の施行前においても,各労働条件の相違は,いずれも公序良俗違反として違法というべきである。
【被告の主張】
(1)

同一労働同一賃金の原則は,公序,法規範を構成しておらず,同一労働同一賃金の原則の違反は公序良俗違反とはならない。
また,原告らが引用する裁判例は,「同一(価値)労働同一賃金の原則が,労働関係を規律する一般的な法規範として存在していると認めることはできない」とし,「これに反する賃金格差が直ちに違法となるという意味での公序とみなすことはできない」とした上で,その基礎にある均等待遇の理念に
反する賃金格差が,「使用者に許された裁量の範囲を逸脱した」という極めて限定的な要件の下で,不法行為の成立を肯定したものにすぎない。(2)

本件における原告らと正社員との労働条件の相違について,均等待遇の
理念に反する賃金格差は存在しないし,使用者に許された裁量の範囲を逸脱したものでもないから,公序良俗違反が成立する余地はない。

4
争点4(原告らに係る損害等の有無及びその額)について
【原告らの主張】
(1)

労働契約に基づく差額賃金(平成25年4月以降の主位的請求)
原告らは,平成25年4月以降,労契法20条に基づき本件各規定が適用
され,被告に対し,正社員と同様に本件各手当の支給を受ける権利を有する。上記期間における原告らの基本賃金,勤務状況並びに住居及び扶養親族の状況等に照らすと,原告らに対して支給されるべき本件各手当の額(ただし,早出勤務等手当,祝日給及び夏期年末手当については,それぞれ原告らに支給された早朝・夜間割増賃金,祝日割増賃金及び臨時手当との差額である。)
は,別紙4-1ないし4-8各「請求債権目録」(ただし,平成25年4月以降の部分に限る。)記載のとおりである。
(2)

不法行為に基づく損害(平成25年3月以前の請求及び同年4月以降の
予備的請求)
原告らと正社員との間の,本件各手当の支給の有無に関する相違は,平成25年3月以前は公序良俗に反し,同年4月以降は労契法20条に反し,いずれも違法であるところ,仮に上記相違が存在せず,原告らにも正社員と同様の基準により本件各手当が支給されていたとすれば,別紙4-1ないし4-8各「請求債権目録」記載の額が支給されていたはずであるから,被告による公序良俗違反及び労契法20条違反の各不法行為により,原告らに同額に相当する損害が生じたといえる。
【被告の主張】

原告らの主張は,いずれも否認ないし争う。
第5
1
当裁判所の判断
認定事実
前記前提事実並びに後掲各証拠及び弁論の全趣旨によれば,以下の各事実が
認められる。
(1)

被告における各職員群の採用及び想定される雇用形態等
正社員
(ア)

旧人事制度において,旧総合職は,被告の本社において採用され,
将来の経営幹部や本社等の管理職の候補者となることが想定されており,全国的な転勤が予定されている。一方,旧一般職は,全国に13ある支社ごとに採用され,各支社エリア内での勤務が予定されており,各支社エリア内の郵便局に勤務し,役職者及び管理者に登用される可能性があるほか,支社又は監査室等において事務職や企画職に従事する者もいる。(イ)

新人事制度においても,新総合職は,将来の経営幹部,本社等の管
理職の候補者として,被告のビジネスに関わる幅広い業務に従事することを期待され,勤務地は特に限定されていない。一方,地域基幹職は,将来の支社又は郵便局等の管理職候補者として,被告のビジネスに関わる幅広い業務に従事することを期待され,原則として支社エリア内で勤務するものとされている。

(ウ)

これに対し,新一般職(郵便コース)は,将来の郵便内務,外務業
務や標準的業務の主力社員候補として,主として標準的な業務に従事することを期待されるが,役職者(主任以上)に登用されることはなく,勤務地は原則として転居を伴う転勤がない範囲とされている。
(エ)

いずれの時期においても,正社員は原則として年1回,新卒者を対
象として所定の時期に募集され,適性検査,集団討論,複数回の個人面接などの採用過程を経て,毎年4月1日付けで採用される。平成25年
4月頃から平成28年10月頃まで,正社員の総数はおおむね20万人強で推移している。
(以上につき,前記前提事実(3)イ,甲34の①,36,37,乙24,31,40,証人J)

本件契約社員
(ア)

時給制契約社員は,各郵便局の判断により,随時,募集及び採用が
行われており,原則として応募書類による書面審査と1回の面接により選考され,当該郵便局における郵便業務に従事しており,配転及び役職者・管理者への登用はない。
(イ)

月給制契約社員は,時給制契約社員の中からレポート及び面接によ
る簡易な選考を経て,登用され(ただし,平成26年3月まで),時給制契約社員と同様に,当初採用された郵便局における郵便業務に従事し,配転及び役職者・管理者への登用はない。
(ウ)

本件契約社員を含む期間雇用社員の総数は,平成25年4月頃から
平成28年10月頃まで,おおむね18万人から19万人までの間で推
移している。
(以上につき,甲34の①,乙31,35,証人J)(2)

担当する業務内容,管理職への昇進等
各郵便局における郵便外務業務の体制
(ア)

原告らが勤務する各郵便局において,郵便外務業務(郵便物や荷物
の集配及び集荷等)を行う者は,配達エリアや取扱物等により複数の部(又は課。以下同じ。)及び班等に分けられている(ただし,詳細な区分は各郵便局により異なり,同じ郵便局内においても体制や名称が変更されることがある。)。
(イ)

各班には,班長及び副班長(いずれも課長代理以上の正社員)のほ
か,正社員(担当者及び主任)並びに本件契約社員が配置され(なお,
集荷業務を行う班の中には,班長等以外は期間雇用社員のみで構成されるものもある。),各部の班を課長以上の正社員が統括している。(以上につき,甲33,証人L,同M,同N,同O,同P,同Q,同R,各原告)

正社員の業務内容等
(ア)

一般職(職種)及び郵便業務に従事する地域基幹職の中でも,担当
者及び主任が現に行う集配業務等の具体的内容は,本件契約社員とさほど大きな相違はない。
ただし,上記アのとおり集荷業務を行う班については,正社員(担当者及び主任)が配置されないこともある。
(イ)

もっとも,旧一般職や地域基幹職は,労働契約上,特定の業務にの
み従事することとはされておらず,郵便外務業務のほか,郵便内務業務等にも従事することが想定されており,異なる郵便局への異動や,同一郵便局内における配置転換も予定され,実際にそのような異動や配置転換が実施されている。
また,課長代理や課長等に昇任し,班長や副班長になると,各班の業務計画の作成やシフトの管理等を行い,企画立案や労務管理などの管理業務に関する役割を担うようになる上,主任以上の役職者の中には,本件契約社員の人事に関する一次評価を行う者もいる。

さらに,上記(1)アのとおり,旧一般職及び地域基幹職は,支社や監査室等の社員に登用されて事務職や企画職に従事することがあり,将来的に役職者,管理者として郵便局や部の運営管理業務を担当することが想定されている。
(ウ)

これに対して,新一般職は,窓口営業,郵便内務,郵便外務又は各
種事務等の標準的な業務に従事することとされているが,役職層等が担当する管理業務を行うことは予定されていない。

ただし,新一般職についても,長期雇用を前提として,業務の熟練により役職層を補佐する役割が期待されていること,転居を伴わない範囲ではあるものの,郵便局間の異動や,同一郵便局内での配置転換を予定されていること,勤務シフトについても特に限定されていないこと等の点においては,本件契約社員とは異なっている。

(以上につき,甲32,37,乙17,24,32,39,証人J,同L,同M,同P)

本件契約社員の業務内容等
(ア)

本件契約社員である原告らは,被告との雇用契約において明示され
た業務内容に基づき,特定の郵便局における特定の部に配置され,郵便外務業務及びこれに付随する営業業務等にのみ従事している。
具体的には,通常の郵便物等の集配や集荷を行うほか,年賀状や関連商品等の営業販売を行っている。なお,営業販売について,各社員に販売目標が設定されることがあるところ,目標設定の方法は各郵便局によ
って異なるものの,正社員と本件契約社員との間で目標数に大きな差異があることもある。
また,本件契約社員は,業務上の必要があれば残業等を行い,誤配達等のミスがあれば関係先へ謝罪に行くことがあり,新たに転入してきた班員らに,集配エリア(通区)の指導を行うこともある。

(イ)

本件契約社員の中には,原告らとは異なり,郵便内務業務に従事す
る者もいるが,担当業務については上記と同様に雇用契約により特定されており,特定された業務以外の業務に従事することは予定されていない。そのため,本件契約社員については,原則として,担当する業務や所属部署の変更も予定されておらず,業務上の必要によりこれらを変更する場合には,本人の了解を得た上で行われている。
(ウ)

本件契約社員が勤務する時間帯については,募集時及び採用時にお
いて明示されており,勤務シフトを作成する際には,同明示された時間帯が指示され,本人の同意を得ない限りは,異なる時間帯には割り当てないよう配慮されている。また,本件契約社員の中には,勤務時間を短時間に限定された者もいる。
(エ)

本件契約社員は,上記アのとおり正社員が担当する班長や副班長に
就任することはなく,班長及び副班長が不在のときにミーティング等に代理で出席することはあるものの,上記イ(イ)のような業務シフトの管理業務や人事評価等に関与することはない。
(以上につき,甲AないしC及びEないしIの各1〔各枝番を含む。〕,甲A8,9,甲B7の①②,8の①ないし④,甲G19,甲H17の①
②,19の①②,乙27,32,証人J,同M,同L,各原告)(3)

人事評価制度における相違点
正社員の人事評価制度
(ア)

正社員の人事評価は,前年の4月1日からその年の3月31日まで
の期間を評価期間とし,4月1日に実施される(乙1・5条)。
(イ)
a
正社員の人事評価は,業績評価及び職務行動評価から構成される。業績評価は,短期業績及び中長期業績を評価するものであるところ,管理職を除く郵便局に勤務する正社員(新一般職も含む。)の業績評価においては,評価項目が,①営業・業務実績,②お客さまサービス,
③業務プロセス及び④人材開発に分類された上,各評価項目に複数の観察ポイントが設けられている。具体的には,一定時間当たりの仕事処理量,販売実績向上のための販売支援・貢献状況,同僚等への手助け頻度(①),お客さまサービスに当たってのコンプライアンスの徹底,日常の仕事の正確・的確度(②),業務品質の向上等のための方法の開発,事故防止や犯罪防止のためのチェック,事務処理上のミスや支障の発生頻度(③),担当可能担務の拡大,部下育成指導状況
(④)等が評価対象となる。また,年間を通じて,自らの役割にとどまらず,他組織等(他の郵便局はもとより,所属する郵便局の他の部署等を含む。)へ貢献し実績があった場合には,組織貢献加点評価が行われる。
b
職務行動評価は,社員に求められる役割を発揮した行動として事実を評価するものである。郵便局に勤務する地域基幹職及び新一般職については,①顧客志向,②コンプライアンス,③チームワーク・関係構築,④自己研鑽・指導育成,⑤状況把握,⑥論理的思考,⑦正確・迅速,⑧責任感,⑨業務品質向上及び⑩チャレンジ志向が評価項目とされ,等級ごとに上記各評価項目の観察ポイントが定められている。
(以上につき,乙1・7条,乙2ないし4,35,41,証人J)イ
本件契約社員の人事評価制度
(ア)a

時給制契約社員の人事評価(定期評価)は,4月1日から9月3

0日まで及び10月1日から翌年3月31日までを評価期間とし,それぞれ8月1日及び2月1日に実施される(乙1・15条)。

b
時給制契約社員の人事評価は,基礎評価及びスキル評価から構成される。
このうち基礎評価は,時給制契約社員として求められる基本的事項,具体的には,服装等の身だしなみ,時間の厳守,上司の指示や職場内
のルールの遵守等の項目を対象として行われる。
また,スキル評価は,被評価者の事務及びランクに応じて,職務の広さとその習熟度を定めたスキル基準の評価項目(郵便外務業務では,複数区の通区ができるか否か,苦情・申告の対応ができるか否か,他の時給制契約社員等に対して指示・指導ができるか否か等)が対象とされる。
正社員とは異なり,組織貢献加点評価のような制度は存在しない。
(乙1・16条,乙2,5,31,35,証人J)
(イ)a

月給制契約社員の人事評価は,4月1日から翌年3月31日まで

を評価期間とし,2月1日に実施される(乙1・15条)。
b
月給制契約社員の人事評価は,正社員と同様に業績評価及び職務行動評価から構成されるが,具体的内容は正社員と異なっている。

業績評価において,評価項目の区分は存在せず,①作業能率が100%以上発揮されていたか否か,②郵便事業全般の業務知識を有し,窓口又は電話でお客様の質問への対応がおおむね正確かつ迅速に行われていたか否か,③お客様サービスや業務遂行に当たってのコンプライアンスの徹底が行われていたか否か,④定められたチェックや検査
により事故等がなかったか否か,⑤本人の責めによることが明白な事務処理上のミスがなかったか否か,⑥多数の担務数又は配区数を精通することができたか否か,⑦他社員とのコミュニケーションが図られていたか否か,という各点が観察ポイントとされ,組織貢献加点評価のような制度は存在しない。

また,職務行動評価についても,①接遇・マナー,②上司の指示の理解,③上司への伝達等の基本的な事項や,④チームへの溶け込み,⑤日常の繰り返し的な業務の正確性,⑥他の期間雇用社員への助言等が観察ポイントとされている。
(以上につき,乙1・16条,乙2,6,31,証人J)

(4)

職務の内容及び配置の変更の範囲

正社員
(ア)

正社員については,就業規則上,「業務上の都合又は緊急的な業務
応援により,出向,転籍又は就業の場所若しくは担当する職務の変更(以下「人事異動等」という。)を命じられることがある。」旨規定されている。

(イ)

上記(1)アのとおり,旧一般職及び地域基幹職は,支社エリア内で
の局間異動や支社・監査室等への勤務が命じられる可能性がある。旧一般職及び地域基幹職の中には,10年以上にわたり同一の郵便局に勤務する者も一定数いるが,実際に,平成22年度から平成27年度までの間に延べ5万人(少なくとも3万5000人以上)が郵便局を異にする
転勤をしている上,同一局内や支社内での配置転換も相当数存在している。
(ウ)

新一般職についても,転居を伴わない範囲において人事異動等を命
じられる可能性があり,実際に郵便局間で異動した例が存在する。(以上につき,甲1・11条1項,乙31,証人J,同M)


本件契約社員
(ア)

本件契約社員については,上記(2)ウ(イ)のとおり,雇用契約により
勤務地及び業務内容が定められているため,業務命令によりこれらが変更されることはない。
(イ)

本件契約社員が勤務する郵便局を変更する場合には,いったん雇用
契約を終了させた上で,再度,労働契約を締結し直しており,所属する部や班が変更される場合には,本人の同意を得て行われている。
(以上につき,証人J,同L,同M,原告H)
(5)

昇任・昇格
正社員
(ア)

旧一般職及び地域基幹職は,一定の勤続年数の要件を満たすと昇任選考の受験が可能となり,郵便局の主任,課長代理,課長や,部長等の管理者へと昇任・昇格していくことが想定されている。
(イ)

被告は,地域基幹職(郵便コース)について,入社から3年間は外
務業務に従事し,5年目頃に主任,8年目頃以降,課長代理以上へと昇任していくキャリアパスのモデル(乙24)を作成し,これを正社員に
対して周知している。実際に,旧一般職や地域基幹職の中には主任以上への昇任を希望しない者も一定数いるものの,入社から5年目以降はその多くが主任に昇任し,年次が進むにつれて,課長代理,課長・総括課長及び管理者の割合が増加している。
(ウ)

他方,新一般職については,昇任・昇格は予定されていないが,本
人が希望すれば,一定の条件の下で正社員地域基幹職へのコース転換が可能であり,コース転換することにより,地域基幹職と同様に昇任・昇格する可能性がある。
(以上につき,甲31,37,乙24,29,証人J,同L,同M,同O,同R)


本件契約社員
本件契約社員については,そもそも職位が付されておらず,昇任・昇格の制度は存在しない(証人J)。

(6)

正社員等への登用制度
被告においては,本件契約社員から正社員へ登用する正社員登用制度が存在するほか,平成26年3月までは,時給制契約社員から月給制契約社員への登用が行われていた。


正社員への登用は,人事評価や勤続年数等に関して,年度ごとに応募要件が定められ,応募要件を満たせば応募が可能であり,適性試験や面接等
により選考される。新人事制度においては,正社員に登用されると,新一般職として扱われることとなる。

平成20年度,平成21年度,平成24年度及び平成25年度は,月給制契約社員からのみ正社員への登用が行われたが,平成22年度,平成23年度及び平成26年度以降は,時給制契約社員からも直接正社員への登用が行われた。平成20年度から平成28年度までの応募者数及び合格者数は,次表のとおりである(応募者数については平成22年度からを示す。
平成23年度までは,郵便事業株式会社と郵便局株式会社,平成24年度以降は,窓口業務及び郵便業務の各合計数である。なお,平成23年度は,2回にわたり募集された。)。
月給制契約社員
応募者数

時給制契約社員

合格者数

平成20年度

合格者数

1716人

平成21年度

応募者数

2158人

平成22年度

6281人

2425人

平成23年度

3596人

1025人

3503人

804人

平成24年度

3333人

907人

平成25年度

5846人

4547人

平成26年度

1037人

平成27年度
平成28年度
合計合格者数

2万6746人

5793人

1万7497人

145人

501人

8521人

2377人

620人

228人

9042人

2669人

408人

94人

1万0152人

2942人

1万4405人

1万3926人

(以上につき,甲34の⑤⑦,甲35,乙31,証人J)(7)

その他
被告において,新一般職を含む正社員と本件契約社員とでは,上記(1),(2)のとおり担当する業務の範囲及び期待される役割等が異なることから,それぞれ別個の研修制度が設けられている(乙7ないし9,25の①②,乙26,証人J)。
イ(ア)

被告においては,企業内労働組合として,多数組合であるS労働組
合及び少数組合であるTユニオン等が存在する。後者は,U労働組合及びVユニオンが平成24年7月1日に組織統一して結成されたものであり,原告らは,いずれも同労働組合に加入している。

(イ)

被告は,本件各労働条件を含む正社員及び期間雇用社員の労働条件
の設定において,S労働組合のみならず,U労働組合及びVユニオンとも協議を行い,Vユニオンとの間では,各労働条件と同内容の労働協約を締結していた。もっとも,上記の組織統一の際に,Vユニオンと被告との間の労働協約は失効し,新たに結成されたTユニオンと被告との間
では,各労働条件に関する労働協約は締結されていない。
(以上につき,乙10ないし16〔各枝番を含む。〕,34,証人K,弁論の全趣旨)
2
労契法20条違反の有無に係る判断枠組み
(1)

労契法20条は,有期契約労働者と無期契約労働者との間の労働条件の
相違について,職務内容等を考慮して,「不合理と認められるものであってはならない」と規定し,「合理的でなければならない」との文言を用いていないことに照らせば,同条は,飽くまで問題とされている労働条件の相違が不合理と評価されるかどうかを問題としているというべきであり,同相違について,合理的な理由があることまで要求する趣旨ではないと解される。そして,上記規定の文言及び構造に照らすと,労働者は,相違のある個々の労働条件ごとに,当該労働条件が期間の定めを理由とする不合理なものであることを基礎付ける具体的事実(評価根拠事実)についての主張立証責任を負い,使用者は,当該労働条件が不合理なものであるとの評価を妨げる具
体的事実(評価障害事実)についての主張立証責任を負うものと解するのが相当である。
(2)

また,労契法20条は,有期契約労働者と無期契約労働者の間の労働条
件の相違が不合理と認められるか否かの考慮要素として,①職務の内容,②当該職務の内容及び配置の変更の範囲のほか,③その他の事情を掲げているところ,その他の事情として考慮すべき具体的な内容について,上記①及び②を例示するほかに特段の制限を設けていないことからすると,労働条件の
相違が不合理であるか否かについては,上記①及び②に関連する諸事情を幅広く総合的に考慮して判断すべきものと解される。
(3)

なお,被告は,被告においては本件各労働条件を含めて全体として一つ
の人事制度及び賃金体系を構築していることから,個別の労働条件ごとに不合理性を論じることは不適切である旨主張する。

確かに,一般に労使交渉や個々の労働契約締結の際に,個別の労働条件を設定する場合においては,当該労働条件と密接に関連する労働条件の存否及び内容等,労働条件全体との整合性を踏まえて検討されるのが通例であるし,手当や待遇の中には共通の趣旨を含むものがあることもままみられるものである。しかしながら,労契法20条の文言及び立法趣旨に加えて,被告が主
張する上記事情については,不合理性に係る判断要素である「その他の事情」において勘案して判断することが可能であることをも併せ鑑みれば,労契法20条違反の有無に係る判断に当たっては,個別の労働条件ごとに当該相違の不合理性を判断するのが相当というべきである。したがって,被告の上記主張は採用することができない。

3
原告らと正社員との職務内容等の相違
(1)

原告らと比較対照すべき正社員について
原告らは,旧人事制度においては一般職(職種)のうちの担当者及び主任,新人事制度においては新一般職と原告ら本件契約社員とを比較対照す
べきであると主張し,被告は,いずれにおいても旧一般職及び地域基幹職全体と本件契約社員とを比較対照すべき旨主張する(旧人事制度において,採用区分としての旧一般職と職種としての一般職(職種)とがあることは前記前提事実(3)イ記載のとおりであるところ,原告ら及び被告は,それぞれ同一の「一般職」との表現を用いているが,その主張する趣旨からすれば,上記のとおりと解される。)。

この点,労契法20条が,有期契約労働者と無期契約労働者との間の労働条件の相違が,職務の内容等に照らして不合理であってはならないとしていることに照らすと,同一の使用者に雇用される無期契約労働者の中に,職務の内容等が異なる複数の職員群が存在する場合において,有期契約労働者と無期契約労働者の中のある職員群との間で労働条件の相違が不合理
ではないときであったとしても,別の無期契約労働者の中の職員群との間で期間の定めがあることによる労働条件の相違が不合理であるならば,当該労働条件の相違は同条に反することになると解される。したがって,有期契約労働者の側において,必ずしも同一の使用者に雇用される無期契約労働者全体ではなく,そのうちの特定の職員群との間で労働条件に不合理
な相違があるか否かを検討することも可能である。
もっとも,労契法20条は,不合理性の判断における考慮要素の一つとして「職務の内容及び配置の変更の範囲」を挙げているところ,職務の内容や配置の変更があり得る労働者の労働条件については,必ずしも現在従事している職務のみに基づいて設定されているのではなく,雇用関係が長
期間継続することを前提として,将来従事する可能性があるであろう様々な職務や地位の内容等を踏まえて設定されている場合が多いと考えられるから,そのような場合に,単に現在従事している職務のみに基づいて比較対象者を限定することは妥当でなく,労働者が従事し得る部署や職務等の範囲が共通する一定の職員群を比較対照しなければならないものと解され
る。
ウ(ア)

以上の点を踏まえて,本件についてみると,被告の正社員は,旧人事制度においては,旧総合職と旧一般職とに区分して採用され,新人事制度においては,入社時に新総合職,地域基幹職及び新一般職の各コースに区分されており,いずれの制度においても,上記採用区分及びコースごとに,それぞれ原則的な昇任・昇格及び人事異動の範囲が異なっている上,原則として上記区分は変更されないことが認められる(前記前提事実(3)イ,上記認定事実(1)ア)。以上のとおり,被告においては,上記採用区分又はコースによって,職務の内容及び配置の変更の範囲が決定されているという実情があることに照らすと,本件における原告らとの比較対照は,上記の採用区分又はコースによって画定することが適
当というべきである。
(イ)

この点,原告らは,旧人事制度においては,職種としての一般職

(職種)の一部(担当者及び主任)を比較対象者とすべき旨主張する。しかしながら,旧人事制度においては,採用区分と職種とが必ずしも連動しておらず,旧一般職は,一般職(職種)のほか支社又は監査室等における企画職や事務職に従事する可能性がある一方,一般職(職種)の中には旧総合職も含まれているのであるから,一般職(職種)の中には,職務の内容及び配置の変更の範囲が異なる複数の職員群が存在する。また,一般職(職種)の中にも担当者(1級)から総括課長・課長(4級)までの職位が存在し,旧一般職はこれらの職位に加えて管理職層までの
昇格・昇任の可能性がある(前記前提事実(3)イ(イ),上記認定事実(1)ア,(5)ア)のに対し,旧一般職の中で昇任・昇格や人事異動の範囲が制限されている職員群があることを認めるに足りる証拠は認められない。これらの点に照らすと,原告らが主張するように,旧人事制度において,一般職(職種)のうちの一部(担当者及び主任)に限定して比較対照す
ることは相当とは認め難い。したがって,この点に関する原告らの主張は採用できない。
(ウ)

以上説示したところによれば,本件においては,原告らと,旧人事
制度においては旧一般職全体,新人事制度においては新一般職とを比較対照するのが相当というべきある。
(2)

原告らと正社員(旧一般職,新一般職)との職務内容等の相違
以上を前提に,前記前提事実及び上記認定事実を踏まえて,原告ら(本件
契約社員)と正社員(旧一般職,新一般職)との間の職務内容等の相違について検討する。

職務の内容(業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度)について(ア)

旧一般職は,郵便局において,外務業務のほか内務業務等に幅広く
従事する上,郵便局外の支社等へも勤務することが想定され,役職者や管理者への昇任・昇格によりその役割や責任なども大きく変動すると認められる(上記認定事実(1)ア,(5)ア)。これに対して,本件契約社員は,飽くまで雇用契約で定められた特定の業務にのみ従事し,役職者や管理者への登用が予定されていない。そうすると,本件契約社員と旧
一般職全体との間においては,業務の内容が大きく相違していると認められる。
また,①旧一般職については,上記のように幅広い業務に従事することを期待されていることを前提に,特定の業務のみに従事する本件契約社員とは異なる研修制度が設けられていること(上記認定事実(7)ア),
②旧一般職の人事評価制度において,中長期的視点からの業績評価や組織全体への貢献の評価が行われること(上記認定事実(3)ア)からすれば,旧一般職について現在の担当業務に留まらず,長期的な視野に立った上で,組織運営や組織への貢献度など幅広い役割や活躍が期待されているのに対し,本件契約社員の評価項目は一般的な接遇や当該担当業務
に関連するものが中心であること(上記認定事実(3)イ),以上の点が認められ,これらの点を踏まえると,旧一般職と本件契約社員との間において,業務に伴う責任の程度についても大きく相違していると認められる。
(イ)

他方,新一般職については,昇任・昇格が予定されないこと,旧一
般職と比較して担当する業務が限定的であることなど,本件契約社員と共通する点が認められる。もっとも,新一般職についても,本件契約社
員とは異なり勤務シフトが限定されていないこと(上記認定事実(2)イ(ウ))等に照らすと,本件契約社員との間で業務の内容について相違が存在する点も認められる。
また,新一般職は,業務が熟練すれば役職層を補佐することも期待されていること(上記認定事実(2)イ(ウ)),上記旧一般職と同様に研修
制度や人事評価の内容が相違すること等に照らすと,新一般職と本件契約社員との間には業務に伴う責任の程度についても相違が存在すると認められる。
(ウ)

この点,原告らは,原告らと正社員との間には,職務の内容につい
ての相違はない旨主張する。確かに,原告らが具体的に従事している郵
便外務業務等,すなわち個別の集配業務や付随する営業販売等に限れば,正社員と本件契約社員との間で顕著な相違があるとはいえない(上記認定事実(2)イ(ア),ウ(ア))。しかしながら,上記(1)で認定説示したとおり,そもそも様々な業務に従事することが想定される被告の正社員について,現に郵便外務業務等に従事する者に限って比較対照すべきでな
いことからすると,原告らの上記主張は採用できない。

当該職務の内容及び配置の変更の範囲について
(ア)

正社員は,就業規則上,配置転換が予定されており,旧一般職は,
支社エリア内での局間異動や支社への異動等が想定され,実際にも,平成22年度から同27年度までの間において,全国で延べ約5万人が郵便局を異にする異動をしており(上記認定事実(4)ア),同異動に伴って職務の内容や配置が変更されることとなると認められる。また,新一般職は,転居を伴わない範囲において人事異動等が命じられる可能性があり,実際にも異動が行われた例があった(上記認定事実(4)ア)。(イ)

これに対し,本件契約社員については,職務地及び職務内容がいず
れも限定されて採用されており,正社員のような人事異動は行われない。
また,勤務する郵便局から別の郵便局へ移る場合でも,本人の同意を得て,正社員のような人事異動という形式ではなく,従前の郵便局における雇用契約を一旦終了させた上で,新規に別の郵便局における勤務に関して雇用契約を締結し直すという形式でなされている(上記認定事実(2)ウ,(4)イ)。

(ウ)

したがって,旧一般職及び新一般職と本件契約社員との間には,程
度の差はあるものの,当該職務の内容及び配置の変更の範囲について相違が存在すると認められる。

その他の事情について
(ア)

被告においては,正社員登用制度が存在し,毎年,一定数の本件契
約社員が正社員に登用されている(上記認定事実(6))。
この点,原告らは,正社員登用制度の存在は,そもそも不合理性判断において考慮すべき「その他の事情」に該当せず,仮に該当するとしても,被告における正社員登用制度は,正社員に登用される可能性が極めて低い不十分な制度である旨主張する。しかしながら,平成20年度から平成28年度までの9年間で,本件契約社員のうち合計2万8000人以上が正社員に登用されており,これは,被告の期間雇用社員全体(おおむね18万人から19万人)からみても一定の割合に達するものである(上記認定事実(1)イ(ウ),(6))。したがって,同制度の存在に
より,正社員と期間雇用社員との地位が必ずしも固定的なものでないことは,労契法20条の不合理性の判断においても考慮すべき事情であるというべきである。
(イ)

また,本件各労働条件については,それぞれ導入された趣旨及び歴
史的経緯,導入に当たっての労使交渉等が存在することに加えて,被告は日本郵政公社が担っていた郵便事業を引き継いだものであり(前記前提事実(1)),同事業は極めて長期間に亘り継続しており,その間,労
使間において労働条件に関する協議等が行われ,その中で本件各労働条件についても決定等されたとうかがわれる。そうすると,本件各労働条件に関する相違の不合理性を判断するに当たっては,以上のような事情も考慮するのが相当というべきである。
4
争点1(原告ら主張に係る本件各労働条件の相違が,労契法20条に違反するか否か〔同相違に係る不合理性の有無〕)について
(1)

はじめに
本件各労働条件については,原告らと正社員との間に,期間の定めの有無
に関連して相違が認められる(この点については,当事者間に争いがない。)。上記3で認定説示したとおり,原告ら本件契約社員と旧一般職及び新一般職との間においては,程度の差はあるものの,職務の内容並びに当該職務の内容及び配置の変更の範囲の各要素において相違があると認められ,以下においては,前記前提事実及び上記1ないし3で認定説示した点を踏まえ,本件各労働条件のうち,本件各手当における相違が労契法20条に係る
不合理性であるといえるか否かについて検討する。
(2)

外務業務手当
外務業務手当は,平成26年3月までは,正社員が外務業務に従事した場合に,1日当たり570円から1420円の範囲(外務業務に従事した時間が4時間に満たない場合は,その半額)で支給されていたのに対して,本件契約社員に対しては支給されていない(前記前提事実(4)ア,(5))。

前記前提事実並びに後掲各証拠及び弁論の全趣旨によれば,以下の各事実が認められる。
(ア)

平成19年4月以前において,郵便局に勤務する常勤職員(郵政民
営化後の正社員に当たる。)は,採用時の試験区分によって内務職と外務職に分類され,それぞれその職務内容に応じて内務調整額(郵内調整額)及び外務調整額(郵外調整額)が基本給に加算されて支給されていたが,外務職と内務職の業務内容等に鑑み,外務調整額の方が内務調整額よりも高額に設定されていた。
被告は,平成19年4月,郵政民営化後に柔軟な職員配置を可能とすること等を見据えて,内務職と外務職を統合したところ,同統合に伴っ
て内務調整額及び外務調整額についても統合され,従前の内務調整額と同額の郵便業務調整額(甲2・195条。郵便局の区分に応じ,1万5100円又は1万2000円)に一本化された。その際,従前より高額の外務調整額を支給されていた外務職の処遇低下を防ぐために新設されたのが,外務業務手当である。

被告は,より柔軟な職員配置を可能とするため,外務業務手当の支給方法について,従前の調整額として基本給月額に加算するという方法ではなく,外務業務に従事した日数に応じ1日当たりの金額で設定された手当を支給する方法を採ることとした。また,外務業務手当の具体的な金額は,労使協議の結果も踏まえ,最終的に,「(統合前の外務調整額
-統合前の内務調整額)÷1か月当たりの出勤日数(18日)×跳ね返り率(1.9)」の計算式によることとされた。ここで跳ね返り率を乗じている理由は,上記の職種統合前は基本給の一部であった調整額の手当化により,賞与や退職手当等の算定の基礎となる基本給月額が減少するところ,外務業務に従事する者に対する賞与や退職手当等の総額を統
合前後で均衡させるという観点から,当該減少分を外務業務手当支給額で補うという点にある。その結果,基本給月額の減少分も実質的に勘案すると,支給総額は統合前後でおおむね均衡している。
(乙19,30,証人K)
(イ)

一方,郵便外務業務に従事する時給制契約社員については,基本賃
金のうち基本給の下限額に130円又は80円が加算される(前記前提事実(5)ア(ア))ため,郵便外務業務に従事する時給制契約社員の基本賃金は,内務業務に従事する時給制契約社員の基本賃金よりも高額となっている(以下,上記加算額を「外務加算額」という。)。
月給制契約社員である原告Iを除く原告らについて,平成24年4月から平成26年3月までの外務業務の勤務日数を前提に,上記期間内の
各月ごとに,上記原告らに支払われた外務加算額の金額,及び仮に正社員と同様に外務業務手当を支給した場合に支払われる金額をそれぞれ算出して比較すると,別紙7「月額シミュレーション(外務業務手当と外務加算額)」のとおりであり,その差額は1か月当たり1000円ないし1万円程度にとどまるものである(乙20)。

(ウ)

月給制契約社員については,基本月額及び契約更新時に加算される
額(以下「加算額」という。)が,担当業務及び正規の勤務時間によって定められている(前記前提事実(5)イ(ア))。
原告Iと同じく1週間の正規の勤務時間が40時間である場合を想定すると,外務作業を担当する者については基本月額が22万2600円(加算額は4300円)であるのに対し,内務作業を担当する者は基本月額が14万3400円(加算額は2700円)であり,外務作業担当者の基本月額の方が7万9200円(加算額は1600円)高額に設定されている。上記基本月額の差額は,外務業務に従事した正社員に支給される外務業務手当(1日当たり最大で1420円であるから,月に2
0日勤務しても2万8400円)と比較しても,相当に高額なものである。
(甲4・92条)

上記イで認定した事実によれば,①外務業務手当は,その制定経緯に照らすと,平成19年4月の正社員の職種統合によって外務職に従事していた被告従業員の賃金額の激変を緩和するために,正社員の基本給の一部を手当化したものであって,同手当の支給は,外務職の従前の給与水準を維
持するという目的を有するものであり,正社員と本件契約社員の雇用期間の差異とは無関係なものであって,本件契約社員を含む期間雇用社員は上記の激変緩和措置の対象となる従業員とはいえないこと,②その具体的な支給金額も,労使協議の結果を踏まえた上で,統合前後で賞与や退職金支給額を含めた処遇をおおむね均衡させる観点から算出されたものであるこ
と(上記イ(ア)),③郵便外務業務に従事する者のうち,時給制契約社員に対しては外務加算額によって,月給制契約社員に対しては基本月額等によって,いずれも外務業務に従事することが各賃金体系において反映されており,その金額も正社員の外務業務手当と比較して均衡を失するものであるとはいえないこと(同(イ),(ウ)),以上の事情が認められ,これら
の諸事情を総合考慮すれば,正社員に外務業務手当を支給し,本件契約社員に同手当を支給しないという相違は,不合理なものであるとまで認めることはできない。

この点,原告らは,正社員には,上記職種統合前の外務調整額に相当する額,すなわち郵便業務調整額と外務業務手当との合計額が,郵便外務業務の特殊性等を踏まえて支給されていたのであるから,上記の合計額と本件契約社員に支給される外務加算額等とを比較すべきである旨主張する。確かに,上記職種統合前の外務調整額は,被告の業務のうち郵便外務業務に伴う一定の業務上の困難さなどに応じて支給されていたという面も否
定できない。しかしながら,上記した外務業務手当が支給されるようになった経緯からしても,郵便業務調整額は,内務職と外務職の職種統合に伴い,内務調整額と外務調整額を一本化した調整額であり,それは基本給の一部であるといえる。また,その支給対象となる従業員も外務事務に従事する社員だけでなく,内務事務に従事する社員も含まれており,担当する職務によって支給されているものとはいえない。以上の点からすると,郵便業務調整額は,原告らの主張の前提となる郵便外務業務の特殊性等を踏
まえて支給されたものであるとまでは評価することはできず,原告らの上記主張は採用することができない。
(3)

郵便外務業務精通手当
郵便外務業務精通手当は,平成26年3月まで,主として外務事務に従事する正社員に対して,一定の評価段階に達した場合に,5100円ない
し1万6500円に調整率を乗じた額が支給されていたものであるが,本件契約社員に対しては支給されていない(前記前提事実(4)イ,(5))。イ
前記前提事実並びに後掲各証拠及び弁論の全趣旨によれば,以下の各事実が認められる。

(ア)

被告は,平成16年4月に実施した給与制度改革において,常勤職
員の意欲向上を図るため,それまで基本給に加算されていた各種の郵便関係調整額を圧縮し,より能力と実績を反映した支給を行うこととし,労使協議を経て,担当職務の精通度合いに基づいて支給する手当として郵便外務業務精通手当その他の手当を新設した。その際,縮小廃止する郵便関係調整額等の支給額の総合計額と,新設拡充する各手当の支給額の総合計額が均衡することを前提に各手当の具体的な金額が定められた。(乙30,証人K)
(イ)

時給制契約社員の基本賃金は,基本給及び加算給により構成され,
加算給は基礎評価給及び資格給の合計額であるとされている(前記前提事実(5)ア(ア))ところ,時給制契約社員の担当業務の精通度合いについては,スキル評価(上記認定事実(3)イ)の結果に応じて,上記資格給に反映されている(甲4・103条4項2号)。
原告Iを除く原告らについて,平成24年4月から平成26年3月までにおけるスキル評価及び勤務日数を前提に,上記期間内の各月ごとに,上記原告らに支払われた資格給の金額,及び仮に正社員と同様に郵便外務業務精通手当を支給した場合に支払われる金額をそれぞれ算出して比
較すると,別紙8「月額シミュレーション(郵便外務業務精通手当と資格給)」のとおりであり,原告Hに係る一部の期間を除き,資格給の支給額の方が郵便外務業務精通手当よりも相当に高額である(乙21)。(ウ)

月給制契約社員については,同制度導入時に,郵政民営化前の有期
任用公務員の中で特に時給が高かったキャリアスタッフの給与水準を原
則として維持する形で基本月額が設定された(前記前提事実(5)イ(ア),乙30,証人K)。

上記イで認定した事実によれば,①郵便外務業務精通手当は,正社員の意欲向上を図るため,基本給の調整額等の一部を原資に,より能力及び実
績を反映するために担当職務の精通度合いに応じた手当として組み替えたものであり(上記イ(ア)),新規採用後6か月未満の者等については支給されていないこと(前記前提事実(4)イ)等に照らして,同手当は,郵便外務業務への習熟度及び成果等個々の従業員の職務能力の程度に応じて支給されるものといえること,②郵便外務業務精通手当は,労使協議も経た
上で新設されたものであること(上記イ(ア)),③時給制契約社員については,資格給の加算によって郵便外務業務への精通度合い(職務能力)がそもそも基本賃金に反映されており(上記イ(イ)),月給制契約社員についても,そのように評価された時給制契約社員の給与と比較して高額な基本月額が設定されていること(同(ウ))等に照らすと,本件契約社員にお
いては職務能力に応じた基本給等の設定がされており,職務能力に応じた給与の差異が設けられているといえること,以上の事情が認められ,これらの諸事情を総合考慮すれば,正社員に対して郵便外務業務精通手当を支給し,本件契約社員に同手当を支給しないという相違は,不合理なものであるとまで認めることはできない。

この点,原告らは,正社員については,外務業務の精通度合いを評価した結果が,基本給に係る加算昇給及び職能調整額,年末手当等にも反映されており,それに加えて郵便外務業務精通手当が支給されているのに対し,本件契約社員については基本賃金に反映されるのみであり,手当としては支給されていないことから,郵便外務業務の精通度合いが本件契約社員の基本賃金に反映されていることをもって,郵便外務業務精通手当を支給し
ない合理的な理由とすることはできない旨主張する。しかしながら,正社員の加算昇給は,「勤務成績が特に良好な社員」のうち一定の枠内で選考された者のみを対象として行われ(甲2・184条),職能調整額は,一般職(職種)等のうち,「職務の級における熟練度,職務遂行能力等が高いと認められる社員」に対して支給される(甲2・194条)ところ,証
拠(甲12)によれば,上記の勤務成績や熟練度等の評価は,原則として正社員の人事評価の結果に基づいて判断されていることが認められる。すなわち,加算昇給及び職能調整額のいずれについても,正社員に係る人事評価である,業績評価(短期業績及び中長期業績に基づく評価)及び職務行動評価(社員に求められる役割を発揮した行動としての事実の評価)の
評価項目ごとに点数化されて判断されている(上記認定事実(3)ア(イ),甲12・別表第3-5及び別表第5参照)。したがって,加算昇給や職能調整額は,単純な通区数や作業能率,業務知識に基づく郵便外務業務の精通度だけではなく,中長期的視点での業績や会社組織への貢献等も含めた正社員としての職責の履行を評価するものであって,郵便外務業務の精通
度に特化して評価対象とする郵便外務業務精通手当とはその性質を大きく異にするものといわざるを得ない。また,正社員の年末手当についてみても,これらと同様に,正社員に期待される役割・職責という観点からの評価が反映されており(甲12・102条,別表第8-1参照),郵便外務業務精通手当とは趣を異にしている。これに対して,時給制契約社員の資格給において評価されるのは,まさに当該職務についての精通度合いであり,その点で,上記郵便外務業務精通手当の趣旨と共通するといえる。以
上によれば,原告らの上記主張をもって,上記ウの認定説示した点が左右されるとはいえず,同主張は採用することができない。
(4)

年末年始勤務手当
年末年始勤務手当は,正社員について,12月29日から同月31日までの間に勤務した場合は1日当たり4000円の,1月1日から同月3日
までの間に勤務した場合は1日5000円が支給されるのに対し,本件契約社員に対しては支給されていない(前記前提事実(4)ウ及び(5))。イ
この点,被告は,年末年始勤務手当は,年末年始が最繁忙期になるという郵便事業の特殊性を踏まえ,正社員は定年までの長期間にわたり年末年
始を家族等と過ごすことができないことから,その労苦に報いると共に,正社員に長期的雇用のインセンティブを付与することにより,有為な人材の長期的確保を図る趣旨で支給されるものであって,単純な業務負担の対価として支給されるものではないところ,短期雇用を前提とする本件契約社員には上記趣旨が当てはまらないこと等から,これを正社員のみに支給
することも不合理とはいえない旨主張する。
(ア)

証拠(乙30,34,証人K)及び弁論の全趣旨によれば,①年末
年始勤務手当は,年末年始に年賀状の配達等によって平常時の数倍の業務量が集中するという郵便事業の特殊性に鑑みて,昭和32年に導入された年末年始特別繁忙手当に由来するものであり,平成17年10月1日に上記年末年始特別繁忙手当が廃止されたのに伴い,その原資の一部によって新設されたものであること(もっとも,年末年始勤務手当の支給条件を踏まえても,同手当の新設に当たって,年末年始特別繁忙手当の性格が大きく変更されたとは見受けられない。),②その具体的金額は,民間企業の同種手当との均衡も考慮した上で,労使協議を経て決定されたものであること,③我が国では,官公庁において12月29日から翌年1月3日までの日が休日とされ(行政機関の休日に関する法律1条1項3号),多くの民間企業においてもこれに準じる取扱いがされているのに対し,被告において,年末年始は,年賀状の準備及び配達等の業務が存在するため,一年を通して最も繁忙な時期に該当すること(いずれも公知の事実である。),④年末年始勤務手当は,12月29日か
ら翌年1月3日までの期間に勤務した場合に,勤務内容にかかわらず一律の金額(4時間以下の場合には半額)が支給されるものであること(前記前提事実(4)ウ),以上の事実が認められる。
(イ)

また,⑤年末年始勤務手当は,上記期間に実際に勤務した正社員に
対して,多くの労働者が休日として過ごしている時期に繁忙業務に従事したこと,すなわち特定の繁忙期である年末年始に業務に従事したことに着目して支給される性質を有しており,これが同手当の本質的な性質であると認められること,⑥年末年始勤務手当の同性質に照らすと,かかる特定の繁忙期に業務に従事したという趣旨は同じく年末年始の時期に就労した本件契約社員にも妥当するものといえること(上記認定事実
(2)イ(ア),ウ(ア)のとおり,個別の集配業務については,正社員と本件契約社員との間で業務内容に顕著な相違があるとはいえない。),以上認定説示した諸事情に,⑦同手当の額をも併せ勘案すると,被告が主張するような正社員の待遇を手厚くすることで有為な人材の長期的確保を図るという事情にも相応の合理性があること(ただし,上記のような年
末年始勤務手当の性質に照らすと,このような事情は,年末年始勤務手当の支給の趣旨目的の中では飽くまで補助的なものに止まるものといえる。)や,被告における各労働条件が労使協議を経て設定されたという事情を踏まえたとしても,正社員に対してのみ年末年始勤務手当を支給し,本件契約社員に対してこれを支給しないという相違は,不合理なものであるといわざるを得ない。

以上のとおり,年末年始勤務手当に関する正社員と本件契約社員との間の相違は不合理なものであると認められる。

(5)

早出勤務等手当
早出勤務等手当は,正社員が,始業時刻が午前7時以前又は終業時刻が午後9時以降の勤務に従事した場合,350円ないし850円の範囲で支給されるものであるが,本件契約社員に対しては支給されていない(前記
前提事実(4)エ,(5))。

前記前提事実及び後掲各証拠及び弁論の全趣旨によれば,以下の各事実が認められる。
(ア)

早出勤務等手当は,昭和41年に,当時の政令に規定されていた特
殊勤務手当の1つとして創設されたものであるが,正社員が勤務シフトによって早出勤務等をする場合に,早出勤務等が必要ではない業務に従事している他の正社員との間の公平を図るという趣旨で,現在まで支給されている手当であり,支給額については,その都度の労使協議を経て決定されるものである。
(乙30,34,証人K)

(イ)

本件契約社員が,始業時刻が午前7時以前又は終業時刻が午後9時
以降の勤務に従事した場合,早出勤務等手当は支給されないものの,早朝・夜間割増賃金が支給される。
なお,始業時刻及び終業時刻ごとの,正社員に対して支給される早出勤務等手当と,本件契約社員に対して支給される早朝・夜間割増賃金の各支給額は,次表のとおりである。
早出勤務等手当

早朝・夜間割増賃金

始業

5時59分以前

850円

500円

始業

6時から6時30分

500円

300円

始業

6時31分から7時

350円

200円

終業

9時から10時

350円

200円

終業

10時1分以降

850円

200円

(前記前提事実(4)エ,(5)ア(イ),イ)
(ウ)

正社員の早出勤務等手当と本件契約社員の早朝・夜間割増賃金とで
は,上記(イ)のとおり同じ時間帯であれば早出勤務等手当の方が高額であるが,早出勤務等手当は,1勤務について上記時間帯を含む4時間以上の勤務をすることが支給条件となっているのに対し,早朝・夜間割増
賃金は,上記時間帯を含めて1時間以上勤務すれば支給されるという点で支給条件が異なっている(前記前提事実(4)エ,(5)ア(イ),イ)。(エ)

なお,早出勤務等手当及び早朝・夜間割増賃金は,いずれも労働基
準法(以下「労基法」という。)37条4項所定の早朝深夜割増賃金とは異なるものである。被告においては,別途,同項所定の割増賃金が支
払われるところ,その割増率は,正社員に対しては100分の25であるのに対し,本件契約社員に対しては100分の30となっており,この点では本件契約社員に有利な労働条件が設定されているということになる。
(甲2・240条,241条,甲4・96条2項,108条2項,甲
5・84条,85条)

上記認定事実及び上記イで認定した事実によれば,①早出勤務等手当が支給される趣旨は,正社員について,業務命令により定められた勤務シフトに基づいて早朝,夜間の勤務を求められている状況下で(上記認定事実
(2)イ),正社員の中には,早朝,夜間のシフトに従事した者と,そうでない者が存在することから,両者間の公平を図るという点にあること,②他方で,本件契約社員については,募集時及び採用時に勤務する時間帯が明示され,勤務シフトを作成する際には,本人の同意のない時間帯には割り当てないよう配慮されている(上記認定事実(2)ウ)のであるから,本件契約社員に関しては,上記したような早出勤務等手当が支給される前提
を欠いているということになること,③早出勤務等手当には,通常の勤務時間以外の業務遂行への対価という側面があるとうかがわれるところ,本件契約社員に対しても,同手当とほぼ類似する支給条件で早朝・夜間割増賃金が支給されていること(上記イ(イ)),④早出勤務等手当と早朝・夜間割増賃金とではその支給金額が異なるものの,その支給条件については
正社員よりも本件契約社員の方が有利な点も存在すること(同(ウ)),以上の点が認められ,これらの諸事情を総合的に勘案すると,早出勤務等手当に関する正社員と本件契約社員との間の相違は,不合理であるとまで認めることはできない。
(6)

祝日給


正社員が,祝日又は1月1日から同月3日までのうち祝日を除く日
(以下「年始期間」という。)に勤務した場合,1時間当たりの給与に100分の135を乗じた祝日給が支給される。
一方,時給制契約社員が祝日に勤務した場合には,時給の100分の35に相当する祝日割増賃金が支給され,祝日ではない年始期間である
1月2日,3日の両日については祝日割増賃金が支給されない(前記前提事実(4)オ,(5)ア(ウ),イ(イ))。また,月給制契約社員が祝日に勤務した場合には,1時間当たりの給与に100分の135を乗じた祝日割増賃金が支給されるという点では正社員と同様であるが,年始期間について祝日割増賃金が支給されないという点で正社員と相違している。

前記前提事実及び後掲各証拠及び弁論の全趣旨によれば,以下の各事実が認められる。
(ア)

祝日給は,昭和23年1月1日から適用された「政府職員の新給与
実施に関する法律」(昭和23年法律第46号)により,被告の常勤職員について祝日も勤務時間の割振りがある日とされたことに伴い,昭和24年1月1日から,祝日に勤務した常勤職員に対して,祝日に勤務しない常勤職員との公平を図る観点から支給されることとなったものである。そして,平成19年の郵政民営化の際,郵政民営化法173条に基づき,基本的に民営化前の労働条件及び処遇が踏襲されることとされ,上記祝日給も踏襲された。
なお,現在も,国家公務員が祝日に勤務した場合には,本来の給与に
加えて,1時間当たりの給与に100分の135を乗じた額が休日給として支給されている(一般職の職員の給与に関する法律(昭和25年法律第95号)17条,人事院規則9-43第3条)。
(乙30,34,証人K)
(イ)

正社員及び月給制契約社員は,現在も祝日を勤務日とされているも
のの,実際には祝日勤務を命じられる者と同勤務を命じられない者が混在しており,祝日勤務を命じられず勤務しなかったとしても月額給与が減額されるということはない(甲1・54条,甲3・28条1項2号,乙30,34,証人K)。
(ウ)

他方,時給制契約社員については,祝日勤務を命じられた者のみが
勤務し,勤務時間に応じた基本賃金に加えて上記祝日割増賃金を支給されるが,祝日勤務を命じられず勤務しなかった者に対しては,基本賃金は支給されない(甲3・28条1項1号,乙30,証人K)。
(エ)
正社員には,制度上,年始期間について年始休暇が与えられており,
かつては年始期間に勤務した場合に代替休暇が認められていたが,代替休暇の制度は現在までに廃止された。
これに対し,本件契約社員は,繁忙期である年始期間も勤務することを前提として採用されているため,年始休暇は存在せず,代替休暇の制度が適用されたことはない。
(甲1・68条1項15号,乙30)
ウ(ア)

上記イで認定したとおり,正社員については,祝日勤務の有無にか
かわらず月額給与の支給額が変わらないことから,社員間の公平を図る必要があるため,実際の労働に対する給与相当額に祝日に勤務したことへの配慮を考慮した割増額を加えた額(100分の135)として祝日給が支給されているのに対して,時給制契約社員については,実際に労働した時間数に応じて賃金が支払われるためこのような公平を図る必要がないことから,本来の労働に応じた基本賃金に加えて割増賃金(100分の35)が支給されている。以上のような正社員と時給制契約社員の状況の違いを踏まえ,祝日に勤務することに対する配慮が必要か否かという事情に基づく割増率(100分の35)に相
違がないことをも併せ鑑みると,正社員の祝日給と時給制契約社員の祝日割増賃金との相違は,不合理なものであるとまで認めることはできない。
(イ)

また,年始期間の勤務に対する祝日給又は祝日割増賃金の支給の有
無に関する相違についてみると,同相違は,上記イ(エ)で認定したとおり,正社員には年始休暇が与えられており,その取得ができなかった場合にはかつて代替休暇制度が存在し,これが廃止されたのに対して,本件契約社員にはそもそも年始休暇が存在しないことによるものであると認められる。この点,業務分担及び人員配置の必要性等に応じて長期雇用を前提とする正社員と原則として短期雇用を前提とする本件
契約社員との間で,勤務日や休暇について異なる制度や運用を採用することは,企業の人事上の施策として一定の合理性があるのであって,特に,上記したとおり,年末年始が最繁忙期であるという被告の業務の特殊性を踏まえると,正社員に対して年始休暇が与えられているとしても,原則として短期雇用を前提とする期間雇用社員の採用に当たって,年始期間も業務に従事することを当然の前提とすることには合理的理由があると認められる。そうすると,上記のような取扱いの相
違は,特定の期間についてそもそも労働義務が課されている者であるか否か,仮にそのような義務がない場合に,業務に従事した社員と従事しなかった社員との間の処遇の均衡を図る必要があるか否かによるものであって,一定の合理性を有していると認められる。

以上認定説示した諸事情を総合的に勘案すると,祝日給に関する正社員と本件契約社員との間の相違は,不合理なものであるとは認められない。
(7)

夏期年末手当
正社員に対しては,夏期年末手当が支給され,本件契約社員に対しては臨時手当(夏期賞与及び年末賞与)が支給されているが,各支給額の計算方法に相違がある(前記前提事実(4)カ,(5)ア(エ),イ(ウ))。

前記前提事実並びに後掲各証拠及び弁論の全趣旨によれば,以下の各事実が認められる。
(ア)

一般職の職員の給与に関する法律の適用を受ける国家公務員につい
ては,同法の定めるところにより,期末手当及び勤勉手当が,毎年6月30日と12月10日の2回,それぞれ6月1日及び12月1日に現に在職する職員に対して支給されている。また,郵政民営化後においても,郵政事業に携わる被告の正社員に対し,おおむね同様の要領によって夏期年末手当が支給されている。
具体的な支給額については,郵政事業に係る予算額を基礎として,労
使交渉の結果を踏まえて,毎年の支給額が決定されており,現在の計算式においても,基本給等及び在職期間に応じて決定される金額に,労使交渉による妥結率を乗じることとされ(前記前提事実(4)カ),年ごとの財政状況や会社の業績等を踏まえて行われる労使交渉の結果によって,その金額の相当部分が決定されている。
(乙30,証人K)
(イ)

一方,郵政民営化前の郵政事業の非常勤職員(有期任用公務員)に
対しては,常勤職員のように夏期年末手当について制度化はされていなかったが,毎年,その都度の財政状況に応じて臨時的に夏期年末手当を支給するものとされていたところ,実際には,ほぼ毎年支給されていた。具体的な支給額については,実際の勤務日数,調整手当支給区分,内務・外務の区分,及び1日の勤務時間に応じた,定額制とされており,その都度労使交渉の結果に基づいて決定された額が支給されていた。その後,平成16年4月に給与制度の改正が行われ,非常勤職員(有期任用公務員)の夏期年末手当についても,実績や能力をより反映させるために定額制から時給連動制に変更された。その際,労使交渉の結果を踏
まえて,対象期間における実際の勤務日数に応じて加算率(1.0ないし1.3。なお,平成19年の郵政民営化の際に,1.0ないし1.8に変更された。)を乗じることとした上,上記改正の前後で支給額を均衡させるために,定数0.3を乗じることとされた。その結果,現在の時給制契約社員の臨時手当(夏期賞与及び年末賞与)の計算式と同様に,
1か月当たりの基本賃金額に1.0ないし1.8の加算率及び定数0.3を乗じるものとなった。
また,月給制契約社員の臨時手当(夏期賞与及び年末賞与)についても,時給制契約社員と同様の計算式を採用し,加算率については一律に2.0(当初1.8であったが,平成23年頃に労使交渉の結果を踏ま
えて引き上げられた。)とした。
(前記前提事実(5)ア(エ),イ(ウ),乙30,証人K)

夏期年末手当は,その支給要件,支給内容及び上記イ(イ)で認定した支給に至る経緯からすれば,賞与としての性質を有するものであることは明らかである。ところで,賞与は,一般的に,対象期間の企業の業績等も考慮した上で,月額で支給される基本給を補完するものとして支給されるものであり,支給対象期間の賃金の一部を構成するものとして基本給と密接
に関連するものであると認められる。そして,これら賞与の性格等に照らせば,賞与支給の有無及び支給額の決定については,基本給の設定と同様に,労使間の交渉結果等を尊重すべきであるとともに,功労報償的な性質及び将来の労働への意欲向上へ向けたインセンティブとしての意味合いをも有するものであることも否定できないことも併せ考慮すると,使用者の
人事政策上の裁量の及ぶ事項であることから,使用者において,広い裁量があると認められる。
以上のような点に加えて,①上記3で説示したとおり,正社員と本件契約社員との職務の内容等には相違があり,同相違に伴って,功績の程度や内容,貢献度等にも自ずから違いが存在することは否定できないこと,②
長期雇用を前提として,将来的に枢要な職務及び責任を担うことが期待される正社員に対する夏期年末手当の支給を手厚くすることにより,優秀な人材の獲得やその定着を図ることは人事上の施策として一定の合理性があること,③正社員の夏期年末手当は,年ごとの財政状況や会社の業績等を踏まえて行われる労使交渉の結果によって,その金額の相当部分が決定さ
れ(上記イ(ア)),本件契約社員の臨時手当(夏期賞与及び年末賞与)も,その支給額の算定方法が労使交渉の結果を踏まえて決定されたものであること(同(イ))をも踏まえると,正社員の夏期年末手当と本件契約社員の臨時手当(夏期賞与及び年末賞与)に関する算定方法等の相違は,不合理であるとは認められない。


この点,原告らは,本件契約社員の臨時手当(夏期賞与及び年末賞与)の計算において,定数0.3が乗じられることについて,コストの均衡という専ら財政的理由に基づくものであり,業務の内容や責任の程度とは無関係であり,不合理である旨主張する。しかしながら,①正社員の夏期年末手当の計算式においては在職期間に応じた割合(3か月未満であれば0.3)を乗じることとされている一方,本件契約社員の臨時手当(夏期賞与
及び年末賞与)の計算式においては実際の勤務日数に応じた加算率(時給制契約社員については最大1.8,月給制契約社員については定数2.0)を乗じることとされているなど,両者の計算式自体がその係数やそれに関係する考慮要素を異にしており,正社員と比較して,一律に夏期年末手当の計算基礎賃金が3割に減じられていると評価することはできないこと,
②そもそも定数0.3という数値自体,労使交渉の結果に基づいて設定されたものであること,③上記説示したとおり,正社員と本件契約社員との間には職務の内容等に関して相違があり,同相違に伴って,功績の程度や内容,貢献度等にも自ずから違いが存在することは否定できないこと,以上の点を総合的に勘案すると,臨時手当(夏期賞与及び年末賞与)の計算
において,定数0.3が乗じられていることをもって,不合理な相違であるとまでは認められない。したがって,原告らの上記主張は採用することができない。
(8)

住居手当
正社員に対しては,住居の状況等を踏まえた一定の要件の下で住居手当(最大で月額2万7000円)が支給されるのに対し,本件契約社員に対しては支給されていない(前記前提事実(4)キ,(5))。


証拠(乙30,34,証人K)及び弁論の全趣旨によれば,住居手当は,昭和45年5月,一般職の職員の給与に関する法律により,借家,借間の
居住者である公務員に対して支給するものとして創設され,郵政省においても,同年10月から常勤職員に対して支給されることとなり,人事院勧告による改正等を経て,現在の被告における正社員に対する住居手当の制度に引き継がれたこと,その支給額は,その都度労使協議を経て決定されてきたこと,新一般職に対しても,住居手当が支給されていること(なお,住居手当の支給額については,労使間の交渉等が行われていることがうかがえるが,他方で,新一般職の制度が創設された時点において,その支給
額ではなく,その支給範囲についての労使協議等が行われたか否かについては,本件全証拠をもってしても明らかとはいえない。),以上の事実が認められる。

この点,被告は,住居手当について,①正社員は配転により勤務地が変更される可能性があること,②正社員のうち,社宅に入居できる者とできない者との公平を図る必要があること,③住居費の負担を軽減して,正社員に長期的雇用のインセンティブを付与することにより,有為な人材を確保すること等を趣旨として,正社員に対して支給されるものであり,上記趣旨が当てはまらない本件契約社員に対して支給しないことは不合理では
ない旨主張する。
(ア)

上記認定したとおり,被告の正社員のうち,旧一般職については,
転居を伴う可能性がある支社エリア内での配転が予定され,実際に郵便局を異にする転勤が相当数行われているのに対し,本件契約社員については,そもそも勤務する郵便局が固定されており,転居を伴う配転は予定されていない(上記認定事実(4))。
このような配転が予定されているか否かについての両者の相違を踏まえると,配転が予定されている旧一般職と,配転が予定されていない本件契約社員とを比較して,住宅に係る費用負担が重いことなどを考慮して,住居手当の支給の対象を旧一般職に限定することには一定の合理性
が認められ,長期雇用を前提とした配転のある正社員である旧一般職に対して住宅費の援助をすることで有為な人材の獲得,定着を図ることも人事上の施策として相応の合理性が認められることから,旧一般職と本件契約社員との間の住居手当の支給に関する相違は,不合理と認めることはできない。
(イ)
また,被告における住居手当は,正社員に対し,その業務内容にか
かわらず,その賃借ないし所有している住居の状況等に着目して一律に支給されているものであることから,職務内容に関係がない福利厚生ないし生活保障としての性質を有するものであると認められ,このような福利厚生的要素を持つ労働条件については,一般的に使用者においてどのような給付等を行うのかについて広い裁量を有しているという側面が
あることは否定できない。さらに,被告における住居手当の支給については,被告が主張する長期雇用へのインセンティブという要素や社宅に入居できる者と入居できない者との処遇の公平を図る要素などが存在することも否定できない。
しかしながら,①住居手当の支給額は,家賃の額や住宅購入の際の
借入額に応じて決定されていること(前記前提事実(4)キ)に照らすと,被告において,住居手当が支給される趣旨目的は,主として,配転に伴う住宅に係る費用負担の軽減という点にあると考えられること,②新一般職は,本件契約社員と同様に,転居を伴う配転が予定されていない(上記認定事実(1)ア(ウ))にもかかわらず,住居手当が支給されてい
ること,③住居手当の支給の有無によって,最大で月額2万7000円の差異が生じるところ,本件契約社員には,住居に係る費用負担の軽減という観点からは何らの手当等も支給されていないこと,以上の点に鑑みれば,上記のとおり住居手当には福利厚生的な要素があること等を考慮したとしても,住居手当の支給についての新一般職と本件契約社員と
の労働条件の相違は,不合理なものであるといわざるを得ない。
(ウ)

なお,被告は,住居手当について,公務員の正規職員に支給されていたものを引き継いだものであり,制度自体を廃止・変更することは容易ではない旨主張する。確かに,郵政民営化法173条によれば,民営化前の従前の労働条件及び処遇が踏襲されることになり,その点において被告の人事労務政策上の裁量については一定の制約があったことは否定できないが,上記のとおり,郵政民営化以降に創設された新一般職と
本件契約社員の相違が問題であることからすると,被告の上記主張をもって,不合理性を否定する事情には足りない。したがって,被告の上記主張は採用できない。

以上によれば,新人事制度が導入され,新一般職が創設された平成26年4月以降,新一般職と本件契約社員との間における住居手当に関する相
違は,不合理であると認められる。
(9)

扶養手当
正社員に対しては,扶養親族の状況に応じて扶養手当が支給されるのに対し,本件契約社員に対しては支給されていない(前記前提事実(4)ク,(5))。


証拠(乙30,証人K)及び弁論の全趣旨によれば,扶養手当は,昭和15年に発生した日華事変の進展に伴う物価騰貴に対して,政府職員のうち一部の職員に対して「臨時家族手当」を支給する制度が創設されたことをきっかけとして,郵政省においても同年に導入され,その後,第二次世界大戦の終戦前後の国内経済事情のインフレの進行等の大きな変動に対処
するため,適用範囲の拡充,支給金額の引上げ等の数次にわたる改正が行われ,郵政民営化後,現在の被告における扶養手当に引き継がれたものであること,その後の支給額について,その都度労使協議を経て改正・決定されていること,以上の事実が認められる。

この点,被告は,上記歴史的経緯等に加えて,扶養手当を正社員に支給することについては,主たる生計維持者の扶養親族に係る生活費の負担を軽減し,正社員に長期的雇用へのインセンティブを付与することにより,有為な人材を確保する意味があることから,本件契約社員に対して扶養手当を支給しないことも不合理ではない旨主張する。
(ア)
①上記したような扶養手当に係る歴史的経緯,その支給要件等に照
らすと,扶養手当は,経済情勢の変動に対応して労働者及びその扶養親族の生活を保障するために,基本給を補完するものとして付与される生活保障給としての性質を有していたものであると認められること,②扶養手当は,その従事する勤務内容にかかわらず,扶養親族の有無及びその状況に着目して一定額を支給されるものであることからすると,職務
の内容等の相違によってその支給の必要性の程度が大きく左右されるものではないこと,③扶養手当については,住居手当等と異なり,支給額の上限が設けられておらず,扶養親族の状況によっては,住居手当以上の差異が生じる可能性があるところ,同趣旨の手当等は本件契約社員には全く支給されていない上,基本給においてもこのような趣旨は含まれ
ていないこと(前記前提事実(5)ア(ア),イ(ア)),④前記前提事実(2)オ,ク並びに証拠(甲F6,12,甲I8,11ないし16〔各枝番を含む。〕,原告I)及び弁論の全趣旨によれば,原告Fは,平成22年4月1日から勤務時間が1日8時間(4週間について1週平均40時間)の勤務となり,原告Iは,平成24年8月1日から月給制契約社員とな
って,4週間について1週平均40時間の勤務となっており,かつ,同原告らについては,それぞれ扶養親族がいると認められ,同扶養親族の生活が同原告らの給与に依存し,同原告らが同扶養親族の生計を維持していると推認することができることから,少なくとも同原告らについては,正社員と同様の扶養家族に対する負担が生じているといえること,
以上の点が認められ,これらの点からすると,歴史的経緯等被告が挙げる事情を考慮したとしても,正社員に対してのみ扶養手当が支給され,原告F及び原告Iに対して支給されないという相違は,不合理であるといわざるを得ない。
(10)小括
以上のとおり,原告らが労契法20条に違反すると主張する本件各手当のうち,年末年始勤務手当,住居手当及び扶養手当については,理由があるが,
その余については理由がない。
5
争点2(仮に,原告らが主張する本件各労働条件の相違が労契法20条に違反するとした場合の法的効果如何)について
(1)

はじめに
上記認定説示したとおり,本件各手当のうち,年末年始勤務手当,住居手
当及び扶養手当について,労契法20条に違反する不合理な相違であると認められるところ,原告らは,同不合理な相違については,主位的に,労契法20条に基づいて,差額賃金請求権が発生する旨主張する。そこで,以下において,同条の法的効果(補充的効力の有無)について検討する。(2)

労契法20条違反の法的効果(補充的効力の有無)
労契法20条は,その「不合理と認められるものであってはならない」との文言に照らして,労契法3条4項のような訓示規定とは解されず,労契法20条に違反する労働条件の定めは無効であると解するのが相当である。

もっとも,①労契法は,同法20条に違反した場合の効果として,同法12条や労基法13条に相当する規定を設けていないこと,②労契法20条は,無期契約労働者と有期契約労働者との労働条件の相違が「不合理と認められるものであってはならない」としているにすぎず,同条により無効と判断された有期契約労働者の労働条件を,不合理と認められない範囲
においてどのように補充するかという点については,無期契約労働者と有期契約労働者との相違を前提とした人事制度全体との整合性を考慮した上,労使間の個別的あるいは集団的な交渉に委ねられるべきものであるといえ,裁判所が,明文の規定がないまま,かかる場合に労働条件を補充することは,できる限り控えるべきであるといえること,以上の点からすると,関係する就業規則,労働協約,労働契約等の規定の合理的な解釈の結果,有期契約労働者に対して,無期契約労働者の労働条件を定めた就業規則,労
働協約,労働契約等の規定を適用し得るような場合はともかく,そうでない場合について,労契法20条から直ちに差額賃金等の請求権が発生する(補充的効力を有する)とまで解することはできず,労働者としては,同条違反の事実をもって,民法709条の規定する不法行為に基づき,使用者に対して損害賠償を請求することができる場合があり得ると解するのが
相当である。

この点,証拠(甲1ないし5)によれば,社員就業規則(甲1)は,同規則所定の手続を経て雇用期間を定めずに採用された者(正社員)に適用されると定めた(甲1・2条1項,2項)上で,これと異なる労働条件で
採用された者に適用する就業規則は別に定めるものとし(同条3項),期間雇用社員に適用される期間雇用社員就業規則(甲3・2条)が別途定められていること,社員就業規則76条及び期間雇用社員就業規則46条の規定を受けて,それぞれ正社員に適用される社員給与規程(甲2,5)及び期間雇用社員に適用される期間雇用社員給与規程(甲4)が定められて
いることが認められ,以上の点からすると,被告においては,正社員に適用される社員就業規則等と,期間雇用社員に適用される期間雇用社員就業規則等とが別個独立に存在しており,前者が被告の全従業員に適用され,後者が期間雇用社員に特例として適用されるような形式にはなっていないと認められる。以上認定した被告における就業規則等の内容を合理的に解
釈すると,期間雇用社員の労働条件の一部が労契法20条に違反する場合に,社員就業規則等で定める労働条件が適用されることになると解することはできないというべきである。
(3)

原告ら請求に係る地位確認(別紙3「請求の表示」1ないし8記載の各
地位確認請求)及び労働契約に基づく差額賃金請求(別紙3「請求の表示」9ないし16記載の各請求のうち,平成25年4月以降の期間に係る主位的な金員支払請求)の点について

社員就業規則等の本件各規定が適用される労働契約上の地位にあることの確認請求の点について
(ア)
a
地位確認請求について
原告らは,本件において,別紙3「請求の表示」1ないし8記載の各請求のとおり,平成26年4月1日以降,本件各規定を適用される
労働契約上の地位にあることの確認を求めている。
b
ところで,被告は,同確認請求のうち,平成26年4月以降本件口頭弁論終結日前日(平成29年9月26日)までの間に係る社員就業規則等の本件各規定が適用される労働契約上の地位にあることの確認
を求める請求については,確認の利益がない旨主張する。
この点,確認の訴えの補充的性質に鑑みると,確認訴訟以外の紛
争解決形態(給付訴訟等)が存在する場合については,原則として確認の利益があるとはいえない。また,確認訴訟における確認の対象となる法律関係は,原則として現在(口頭弁論終結時点)におけ
る法律関係であって,過去の法律関係の確認については,同確認が現に存する紛争の直接かつ抜本的な解決のために最も適切かつ必要と認められる場合に限って確認の利益が肯定されると解するのが相当である。
以上の点を踏まえて,本件についてみると,本件口頭弁論終結日

前(過去の法律関係)において本件各規定が適用される労働契約上の地位の確認を求める部分について,原告らの法律上の地位の不安,危険を除去するために必要かつ適切であることを基礎付ける個別具体的な事実を認めるに足りる的確な証拠は認められない。また,本件各手当の点に限ってみても,原告らは,平成26年4月1日以降本件口頭弁論終結日前日までの間について,本件各手当に係る社員給与規程が適用される労働契約上の地位を前提とした給付請求を行
っており,同給付訴訟以外に本件各手当に係る確認訴訟を提起する必要性があることを認めるに足りる事情は認められない。
以上の点からすると,被告の上記主張は理由がある。したがって,原告らの本件請求のうち,平成26年4月1日以降本件口頭弁論終結の日の前日である平成29年9月26日までの間の地位確認部分
は,確認の利益を欠くものとして不適法というべきである。
c
また,上記(2)で認定説示した労契法20条の法的効果の点からすると,その余の地位確認部分については,理由がないといわざるを得ない。

(イ)

労働契約に基づく差額賃金請求(主位的請求)
上記(2)で認定説示した労契法20条の法的効果の点からすると,原
告らが,被告に対し,労働契約に基づいて本件各手当の支払を求める主位的請求部分(別紙3「請求の表示」9ないし16記載の各請求のうち,平成25年4月以降の期間に係る主位的請求)についても理由がないといわざるを得ない。


夏期冬期休暇及び病気休暇の点について
原告らは,夏期冬期休暇及び病気休暇について,正社員と本件契約社員との間に相違があり,労契法20条に反して無効であるとして,両者について,社員就業規則等の規定が適用される労働契約上の地位にあることの
確認を求めている。しかしながら,上記(2)で認定説示した労契法20条の法的効果の点に鑑みれば,夏期冬期休暇及び病気休暇に関する労働条件の相違が労契法20条に違反するか否かについて判断するまでもなく,原告らが被告に対し,これらの労働条件に関する社員就業規則等が適用される労働契約上の地位にあることの確認を求めることはできないといわざるを得ない。したがって,この点に関する原告らの請求は,その限りで理由がない。

(4)

被告の原告らに対する不法行為責任の有無(予備的請求)
上記4で認定説示したとおり,原告らが労契法20条に違反すると主張す
る本件各手当のうち,年末年始勤務手当,住居手当及び扶養手当については,同条に違反しており,同条が施行された平成25年4月1日以降(ただし,住居手当については平成26年4月1日以降),被告が原告らについて,同
差異を設けている点は,原告らに対する不法行為に該当すると認めるのが相当である。
6
争点3(原告らが主張する本件各労働条件の相違は,公序良俗〔民法90条〕に違反するか否か)について

(1)

原告らは,平成24年4月1日から労契法20条の施行前である平成2
5年3月31日までの期間における本件各労働条件に係る正社員との相違について,同一(価値)労働同一賃金の原則に反するため,公序良俗違反により違法である旨主張する。
(2)
しかしながら,上記期間における我が国の法令上,原告らの主張する同
一(価値)労働同一賃金の原則を定めた規定と解されるものは見当たらず(なお,上記期間の後に施行された労契法20条についてみても,上記2(1)で説示したとおり有期契約労働者と無期契約労働者との間の労働条件の相違が不合理なものであることを禁止した規定であり,上記原則を定めたものと解することはできない。),原告らの主張する上記原則が,労働関係を
規律する一般的な法規範として存在していると認めることはできず,「公の秩序」として存在していると認めることもできない。そうすると,労契法20条の施行前において,有期契約労働者と無期契約労働者との間に労働条件の相違があったとしても,そのことから直ちに公序良俗に反することになるものではないと解され,その他に,本件各労働条件に関する原告らと正社員との相違について,公序良俗に違反することを基礎付けるに足りる個別具体的な事情は認められない。

(3)

したがって,労契法20条施行前の期間について,原告らと正社員との
労働条件の相違が公序良俗に違反するとはいえず,この点に関する原告らの主張は採用することができない。
7
争点4(原告らに係る損害等の有無及びその額)について
(1)ア

本件においては,原告らに対して年末年始勤務手当,住居手当及び扶
養手当又はそれらに相当する手当等が支給されておらず,これらが支給されていないこと自体が不合理であり,不法行為を構成すると認められる。イ
そして,原告らについては,上記各手当が正社員と同様の条件で支給された場合における支給額に相当する損害が生じたと認めるのが相当である。
(2)

上記期間における原告らの勤務状況並びに住居及び扶養親族の状況等に
照らすと,原告らに対して,正社員と同様の条件で上記各手当が支給された場合における,原告らに対する上記各手当の支給額及び支払日は,別紙9-1ないし9-8各「確認結果一覧表」の各「確認結果」欄記載のとおりである(この点については,当事者間の争いがない。)。
(3)

したがって,別紙9-1ないし9-8各「確認結果一覧表」の各「確
認結果」欄記載の各支払日における各金額が原告らの損害と認められるから,原告らは,被告に対し,同表の各手当の欄の「請求債権目録」欄及び「確認結果」欄記載の金額のうち少ない方の金額(遅延損害金の起算日については,「支払日」欄の「請求債権目録」欄及び「確認結果」欄記載の各日のうち遅い方の支払日の翌日から)に係る損害賠償請求権を有しているということになる。同損害賠償請求権に係る具体的金額及び遅延損害金の起算日は,別紙2-1ないし2-3記載のとおりである。
8
結論
以上の次第で,原告らの本件各請求のうち,平成26年4月1日から本件口頭弁論終結日の前日である平成29年9月26日までの間において本件各規定
が適用される労働契約上の地位を有することの確認を求める部分は,いずれも不適法であるから却下し,その余は,主文掲記の範囲で理由があるから,これらを認容し,その余についてはいずれも理由がないから棄却することとし,主文のとおり判決する。
大阪地方裁判所第5民事部

裁判長裁判官


裁判官


裁判官

池藤重裕之野真人上裕康
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