判例検索β > 平成28年(ワ)第1201号
国家賠償法による損害賠償等請求事件
事件番号平成28(ワ)1201
事件名国家賠償法による損害賠償等請求事件
裁判年月日平成30年2月1日
法廷名神戸地方裁判所
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平成30年2月1日判決言渡

同日原本領収

裁判所書記官

平成28年(ワ)第1201号国家賠償法による損害賠償等請求事件口頭弁論終結日平成29年10月31日
判主決文
1原告らの本件各訴えをいずれも却下する。
2訴訟費用は,原告らの負担とする。
事実及び理由
第1請求
1被告は,原告Aに対し,200万円及びこれに対する平成28年5月9日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2被告は,原告Bに対し,200万円及びこれに対する平成28年5月9日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
3被告は,原告Cに対し,200万円及びこれに対する平成28年5月9日から
支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
4被告は,原告Dに対し,200万円及びこれに対する平成28年5月9日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
5被告は,原告Eに対し,200万円及びこれに対する平成28年5月9日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

第2事案の概要
1
本件は,明石市議会において「F」という会派(以下「会派F」という。)
に属する同市議会議員である原告らが,同市議会を設置する地方公共団体である被告に対し,被告の公権力の行使に当る公務員である同市議会議長が,会派Fの代表者である原告Aを,平成28年5月9日ないし13日に開催さ
れた明石市議会代表者会(以下「代表者会」という。
)に招集しなかったこと
(以下「本件措置」という。
)が違法であり,それにより市議会議員としての
活動の機会を奪われ精神的苦痛を被ったと主張して,国家賠償法1条1項による損害賠償請求権に基づき,慰謝料各自200万及びこれに対する損害発生日である平成28年5月9日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。
2前提事実(証拠の引用がない事実は,当事者間に争いがない。



当事者等

原告らについて
原告らは,いずれも明石市議会議員であり,平成28年4月に明石市議会議長に会派届出をし,
同年5月1日付けで新会派が結成される旨が明石市議
会に周知された会派Fに所属する者である。

会派Fには,原告ら及び訴外G議員が所属し,同会派の代表者は,原告Aである。
原告Eは,会派Fに所属する以前には,
「H」という会派に所属していた
が,同会派は同年4月30日に解散した。

被告及び明石市議会議長について
被告は,明石市議会を設置する地方公共団体である。
Iは,明石市議会議員であり,本件措置当時,明石市議会議長の地位にあった者である。


「明石市議会代表者会に関する要綱」の定め(甲1)
「明石市議会代表者会に関する要綱」
(昭和57年3月23日制定,
同年4月
1日施行。以下「本件要綱」という。
)には,以下のとおりの定めがある。
(目的)
第1条

この要綱は,
明石市議会代表者会の必要な事項を定めることを目的

とする。
(会派)
第2条

議員が会派を結成したときは,その名称,所属議員の氏名及び役員の氏名を議長に届け出なければならない。これを変更したときもまた同様とする。
(代表者会)
第3条
各会派間の意見の調整,連絡及び協議等をするため代表者会を置く。
(会派交渉権)
第4条

会派交渉権は,3名以上の所属議員で構成する会派が有するものと
する。
(構成)
第5条

代表者会は,議長,副議長及び会派交渉権を有する会派の代表者を
もって構成する。

(協議事項)
第6条

代表者会の協議事項は,次のとおりとする。




議会の役員,委員の選考に関する事項



慶弔に関する事項



市当局よりの申し入れ事項



議員の身分に関する事項

その他議会運営委員会の所管に属さない事項

(会議)
第7条
代表者会は,議長が招集し,これを主催する。

(代理者の出席)
第8条

代表者に事故あるときは,その会派に所属する議員の中から代理者
を出席させることができる。
(オブザーバーの出席)
第9条
交渉権のない会派代表者のオブザーバーとしての出席については,
議長が必要と認めたとき,代表者会にはかり決定するものとする。(補則)
第10条

この要綱に定めるもののほか必要な事項は,議長が代表者会には

かって定める。


明石市議会基本条例(以下「本件条例」という。
)の定め(甲2)
明石市議会基本条例には,会派について,以下のとおりの定めがある。(会派)

第15条

議員は,充実した議会活動を行うため,政策を中心とした共通の

理念をもつ議員で構成した会派を結成することができる。
2
会派は,議会運営及び政策立案等に関し,必要に応じて会派間の合意形成に努めるものとする。



本件措置について

Iは,平成28年5月6日,原告Aに対し,同月9日に開催が予定されていた代表者会について,
「私が議長である間は,会派Fに対しては代表者会
への招集を行わない」旨の発言をし,同日の代表者会への招集を行わなかった。
Iは,同月10日ないし同月13日に開催された各代表者会についても,
同様に,原告Aに対する代表者会への招集を行わなかった。

上記の各代表者会においては,明石市議会の議長,副議長の選出に関する協議が行われることになっていたほか,次の事項についても協議されることになっていた。

①議会選出の監査委員の選考
②あかしまちづくり推進特別委員会設置
③特別委員会委員長,副委員長の選出
④市議会活性化推進委員会正副委員長の選出
⑤財政健全化推進協議会座長,構成員の選出

⑥議員の全員待機の日時,時間
⑦明石ケーブルテレビ「海峡のまち明石・議会版」⑧代表者会への議会三役(議長,副議長監査委員2名)候補者名提出日時⑨議会運営委員会正副委員長の選出
⑩各種付属機関構成員の氏名提出期限
⑪各委員会委員候補者の氏名提出
⑫あかしまちづくり推進特別委員会委員候補者の氏名提出

⑬市議会活性化推進員会委員候補者の氏名提出
⑭財政健全化推進協議会構成員候補者の氏名提出
⑮議会改革の提案
3争点及び争点に関する当事者の主張


代表者会の性格いかん(争点1)

【原告らの主張】
代表者会は,本件要綱制定以降,同要綱に基づいて開催され,協議が行われてきた場であり,議会運営委員会で審議される前段階において,各会派の代表者が各会派内の議員の意見を反映させながら十分な議論を尽くす場として運営されてきたものであって,市長,副市長,主要な部長(財務,総務,政策)や市議会事務局職員も多数同席するなど,単なる私的会合でないことは明らかである。
代表者会においては,
市当局からの申入れ等を含めた連絡事項の説明のほか,
各会派間の意見調整をしたり,議会の役員,委員の選考についても協議したり
することとなっているが,特に,議会の役員,委員の選考については,代表者会の協議結果が意見として各委員会や本会議に提出され,そのまま本会議で議決されるなど,代表者会は,本会議の前段階において,各会派の意見を実質上反映させる審議の場になっていた。また,
「J市長の議会対応に対し反省を求
める決議」の件,明石市監査委員候補者の市長への推薦の件及び議会活性化推
進委員会の委員選出基準(甲4)のように,代表者会において決定された事項もある。
以上のとおり,代表者会は,市議会の中で極めて重要な位置付けがなされているものである。
【被告の主張】
代表者会は,議会運営委員会に先立ち,3名以上の議員で構成される会派の代表者同士が一定事項について意見や情報を交換し調整するだけの,法律や条例等に全く根拠を持たない非公式な会合である。本件要綱についても,代表者会が自主的に定めたものであり,法律や条例等に根拠を持つものではなく,法規範性を有しない。
一定事項の議決は,
本会議で行われ
(地方自治法96条)その一定事項は,


議決に先立ち,各委員会で審議・討論される(同法109条2項から4項)ところ,代表者会は,これらに先立って,意見や情報を交換し,調整するだけの会合であり,議決や決定は行わない。各会派の代表者は,代表者会で他の会派の代表者から出された意見や情報を持ち帰り,その意見や情報を基に,各会派において,審議・討論し,各委員会や本会議の準備をすることになる。代表者
会に出席できない会派に対しては,
議長又は市議会事務局が,
代表者会の後に,
交換された意見や情報を報告しているし,必要に応じて,代表者会の前に,出席しない各会派の意見や情報を得て,その意見や情報を代表者会に反映させている。
原告らは,代表者会が実質的な審議の場であるなどと主張するが,代表者会
では,多数決を前提とした一定の決議や決定を行うことはなく,意見や情報を交換し,調整する場であり,代表者会で取り上げた事項についても,各議員が本会議や議会運営委員会において自由に審議・討論し,自らの政治的主張に従って議決権を行使することは保障されている。また,原告らの主張する「J市長の議会対応に対し反省を求める決議」の件及び明石市監査委員候補者の市長
への推薦の件については,議会運営委員会及び本会議で,議会活性化推進委員会の委員選出基準(甲4)については,議会活性化推進委員会で,最終的な決定がされており,
原告らの主張するように代表者会で最終的な決定をした事実
は存在しない。


本案前の抗弁(争点2)

【被告の主張】
原告らの各請求は,法形式上は,損害賠償請求権が訴訟物となっているが,その請求の当否を判断するに当たっては,本件要綱に基づくIの本件措置の当否の判断が必要不可欠となるところ,上記⑴で主張したとおりの代表者会の性格からすれば,本件措置は,最高裁判所昭和34年(オ)第10号同35年10月19日大法廷判決・民集14巻12号2633頁(以下「昭和35年大法
廷判決」
という。のいう

「出席停止の如く議員の権利行使の一時的制限に過ぎ
ないもの」と同質か,そのような制限にすら該当しないものである。したがって,本件要綱に基づくIの本件措置の当否については,司法審査の対象外とし,
明石市議会の自律的判断あるいは自治的措置に委ねるのを適当と
するものであって,原告らの請求は裁判所法3条1項にいう「法律上の争訟」
に当たらず,原告らの各訴えは,いずれも却下されるべきである。原告らは,名古屋高等裁判所平成22年(ネ)第1281号同24年5月11日判決及びその原審である岐阜地方裁判所平成18年(ワ)第892号同22年9月22日判決
(以下,
各裁判例を併せて
「名古屋高裁平成24年判決等」
という。を引用し,

本件事案が司法審査の対象になると主張するが,
上記各裁

判例は,その背景に,身体的な障害あるいは疾患を有する地方議会議員の表現の自由や議員としての権利行使の保障という問題を有しており,司法審査に馴染む一般市民法秩序に関わる紛争であって,本件事案とは著しく事案を異にするものであるから,原告らの主張は,失当である。
【原告らの主張】

名古屋高裁平成24年判決等は,地方議会における議員の発言方法の制約が,議員の議会等での発言の自由(憲法21条1項)を侵害していると認められるような場合には,一般市民法秩序に関わる紛争として,裁判所法3条1項にいう「法律上の争訟」に当たると判示している。本件は,議長であるIが,議会による懲罰などの一定の手続によらずに,原告らの議員として議会へ参加する権利を恣意的かつ一方的に制限した事案であり,議会の内部規律の問題にとどまるものとはいえず,
その当否について司法判断が及ぶものでなければならな

い。
被告は,
本件事案が名古屋高裁平成24年判決等と事案を異にするなどと主張するが,Iの本件措置は,同人と会派についての考え方が異なるという原告らの思想・信条を理由として,原告ら所属の会派Fの意見を代表者会に反映させる機会を奪うものであるから,憲法に反する差別的理由によって原告らの議
会へ参加する権利及び明石市議会基本条例で保障された会派結成の権利を阻害するものであって,
名古屋高裁平成24年判決等と全く同次元の事案であり,
本件事案は,
「法律上の争訟」に当たるというべきである。

本件措置が国家賠償法上違法といえるか(争点3)

【原告らの主張】
Iは,原告Eが平成28年2月上旬に発行した広報紙「K」
(乙3)の中で行
われた意見表明が,会派を否定するものであるかのように決めつけ,このことを理由に原告Aの招集を行わなかったところ,
原告Eは,
上記広報紙において,
会派に所属する議員が常にいかなる場合であっても,自己の政治的意見と相違
してでも会派内の他の議員と同一の行動を義務付けられるものではないことを意見として表明しているにすぎず,会派制度を否定しているものではない上,原告Eが上記広報紙を発行したのは,同人が既に解散した会派「会派H」に所属していたときのことであって,同人が会派Fに所属するという理由だけで,会派Fの代表者である原告Aを代表者会へ招集しないことに,何らの合理的根
拠はない。Iの本件措置は,原告らが代表者会を混乱させているなどと理由をつけて,
自身と異なる意見を有する議員を排除するために行われたものであって,議長の裁量権を逸脱した違法なものである。
原告らは,このようなIの裁量権を逸脱する違法な本件措置によって,上記⑴で主張したように明石市議会において重要な位置付けにある代表者会への参加を阻害され,原告らの意見を代表者会に反映させる機会を奪われており,議会へ参加する権利が侵害されている。さらに,上記⑴で主張したような性格を有する代表者会へ参加することは,会派活動における重要な利点であり,原告らは,本件措置によって,明石市議会基本条例で保障された会派結成の権利(15条)という議員としての重大な権能をも侵害されている。
【被告の主張】

原告らと原告ら以外の議員とは,
原告Eが
「会派H」
に所属していた頃から,
「地方の民主政治における議会内会派の是非及びそのあり方」という政治的思想の点で対立しており,その対立が解消されないままに,新たに「会派H」と同様の政治的思想を有する議員で構成された会派Fが結成された。Iは,民主主義のルールに則り,
「会派について」の確認事項(乙5)を守らない会派Fの

代表者である原告Aを代表者会に招集しても,会派間の意見調整や合意形成を図れず,代表者会が機能しないので,原告Aを招集すべきではないという原告ら(会派F)以外の会派の多数意見を尊重し,原告Aを代表者会に招集しなかったのであり,そこには思想・信条の差別など一切なく,本件措置に違法性はない。

また,原告らは,本件措置によって,議員として議会へ参加する権利を侵害
原告らが議員としての権利行使の機会を奪われた事実は一切存在しない。また,原告らは,会派結成の権利を侵害されたとも主張するが,上記⑴で主張したとおり,代表者会に出席しない会派についても,事前に意見を聴取したり,事後に結果を報告したりするなどしており,その他代表者会に参加していないからといって会派活動が妨げられているということはない。原告らの主張によれば,代表者会に参加していない2名以下の会派(
「会派L」及び「会派M」
)におけ
る会派活動をも侵害しているということになるのであって,原告らの主張が失当であることは明白である。

原告らの被った損害いかん(争点4)

【原告らの主張】
原告ら市議会議員は,明石市民の市議会議員選挙によって選出され,明石市民を代表して市議会議員として活動する職務を遂行しているため,単に市議会における議事のみならず,各委員会のいずれかに所属するほか,市議会運営のための協議にも参画してその職務を遂行する地位にあるものであるところ,Iが,原告Aに対し,代表者会への招集を敢えて行わなかったことによって,市
議会議員としての活動の機会を奪われたことに対する原告らの精神的損害は,各200万円を下ることはない。
【被告の主張】
原告らの主張は,否認ないし争う。
第3争点に対する判断
1争点1(代表者会の性格いかん)について


前記前提事実,証拠(後掲の各証拠のほか,甲3,乙4,6,原告E,証人N,証人I。ただし,原告Eの陳述書及び供述のうち,下記認定に反する部分を除く。
)及び弁論の全趣旨によれば,以下のとおりの事実が認められる。

代表者会は,法律および条例等に法的根拠を有しない,明石市議会の各会派の意見調整,
連絡及び協議等を行うための会合である
(証人N
〔速記録
【以
下同じ。
】3頁7行目から5頁4行目まで,6頁14行目から7頁4行目まで〕。代表者会の在り方については,昭和57年3月23日実施の会合にお)
いて,
本件要綱
(甲1)
の内容のとおりであると確認された
(乙2
〔案件2〕。


なお,本件要綱については,上記代表者会に出席した各会派代表者の合意のみによって定められたものであって,本会議及び地方自治法等に根拠を有する委員会(以下,法的根拠を有しない委員会と区別して「法定の委員会」という。
)において,その内容を審議の上,議決したということはない(証人N〔7頁5行目から14行目まで〕。


代表者会に出席するのは,議長,副議長,3名以上の所属議員を擁する各会派の代表者で構成される(本件要綱4条,5条)
。また,市議会事務局の職

員も同席し,資料作成等に従事している(乙6)


代表者会は,
非公開の会合である
(証人N
〔8頁4行目から8行目まで〕。



代表者会は,議長が開催の必要があると判断した場合に開催され,閉会中であっても開催されることがある。
議長は,開催日時・場所及び会議内容を定めた上,市議会事務局を通じて
招集通知を各代表者に送付して招集する。
(証人N〔5頁19行目から23行目まで,8頁9行目から13行目まで〕)

代表者会に出席していない所属議員2名以下の会派に対しては,必要がある場合には,市議会事務局が事前に各会派の意見等を聴取した上,代表者会で報告し,また,代表者会が実施された後には,市議会事務局が各会派の代
表者に対し,代表者会で交換された意見や情報を報告している(証人N〔11頁2行目から18行目まで〕。


代表者会では,次のようなことが行われている。
明石市議会の本会議(地方自治法89条)及び議会運営委員会(同法1
09条1項,明石市議会委員会条例〔明石市Webサイトの公表情報により,当裁判所に顕著である。
〕2条の3第1項)に先立ち,一定の議案につ
いて,各代表者が情報や意見を交換し合い,それを各会派に持ち帰って会派内で議論し,
再度代表者会で意見等の交換を行うという過程を繰り返す
中で,各会派の意見を調整する(証人N〔5頁5行目から18行目まで,
16頁3行目から18頁7行目まで〕。

代表者会に参加する各会派の意見が一致すれば,議員提出議案については,議会運営委員会等の法定の委員会及び本会議に対して,市長提出に係る議案については,市長に対して,意見として伝えられることもあるが,同内容は,
議会運営委員会等の法定の委員会及び本会議において審議され,
最終的に議決されることになる(証人N〔9頁3行目から10頁3行目まで〕。

議会内での取組みに関する事項など,常任委員会,特別委員会,議会運営委員会等の法定の委員会での審理を経て本会議に上程され,議決を行うことを要しない事項については,代表者会で決定をすることもある(証人N〔3頁25行目から4頁13行目まで,23頁14行目から24頁8行
目まで,26頁17行目から27頁5行目まで〕。

その他,議長から各会派への連絡事項の報告等を行う(証人N〔5頁24行目から6頁1行目まで〕。

これに対し,原告らは,本件措置に係る代表者会においても協議された議会の役員,委員の選考等については,代表者会の協議結果がそのまま本会議
で議決されるなど,代表者会は,本会議の前段階において,各会派の意見を実質上反映させる審議の場になっていると主張する。
しかしながら,原告らは,本会議及び法定の各委員会の場においては,自由な意思に基づき,審議,議決をしているというのである(原告E〔12頁18行目から13頁1行目まで〕。また,代表者会の協議結果について市議)

会事務局から事後に報告を受けており(同〔5頁1行目から4行目まで〕,)
その内容を踏まえて,原告らが議案を議長に対し提出することもできる(明石市議会会議規則〔明石市Webサイトの公表情報により,当裁判所に顕著である。
〕13条1項)
。そうすると,代表者会の協議結果が,市長提出に係
る議案については市長(原告らの主張のうち,明石市監査委員候補者の推薦
の件は,これに当たる〔証人N【9頁19行目から10頁3行目まで】。,〕)
議員及び各委員会提出に係る議案(原告らの主張のうち,
「J市長の議会対
応に対し反省を求める決議」の件は,これに当たる〔同【9頁3行目から18行目まで】。
〕)については本会議及び法定の各委員会に対して,それぞれ
報告された場合において,本会議及び法定の各委員会における審議,議決が形骸化しているとは認め難く,原告らの主張する議会の役員,委員の選考に関する事項等について,代表者会において,本会議及び法定の各委員会の前
段階で,一定の意見集約を行うということを超えて,同事項等が最終的に決定されたということはできない。
したがって,原告らの上記主張は,採用できない。

他方で,被告は,上記認定に反し,議会活性化推進委員会の選出基準及び設置規定の変更案(甲4)を最終的に決定したのは,平成29年9月19日
に開催された議会活性化推進委員会であって,代表者会が決定をすることはない旨主張する(被告の平成29年10月18日付け最終準備書面7頁12行目から18行目まで)

しかしながら,
同変更案が平成29年7月12日の代表者会で決定された
ことは,市議会に関する一切の事務を処理する市議会事務局長であり,政治
的に中立な立場である証人Nが明確に供述するところである(証人N〔12頁5行目から20行目まで,
27頁14行目から29頁6行目まで〕。
)また,
上記変更案(甲4)が最終的に決定されたと主張する議会活性化推進委員会が開催されたのは,第2回口頭弁論期日(平成29年8月1日)後の出来事であることからすれば,上記期日における指摘を踏まえて,議会活性化推進
委員会における確認手続を経た可能性も否定できない。
したがって,被告の上記主張は,採用できない。
2争点2(本案前の抗弁)について

裁判所は,
憲法に特別の定めのある場合を除いて一切の法律上の争訟を裁判
する権限を有するものであるが(裁判所法3条1項)
,ここにいう法律上の争
訟とは,あらゆる法律上の係争を意味するものではなく,自律的な法規範をもつ社会ないしは団体における法律上の係争については,原則として自律的な解決に委ねるのを相当とし,一般市民法秩序と直接の関係を有しない内部的な問題にとどまる限り,裁判所の審判権は及ばないというべきである(昭和35年大法廷判決,最高裁判所昭和60年(オ)第4号同63年12月20日第3小法廷判決・集民155号405頁)




ところで,憲法は,地方自治を制度として保障し(憲法第8章)
,地方公共団
体の組織及び運営に関する事項は,地方自治の本旨に基いて,法律で定めることとし
(憲法92条)地方公共団体の議事機関として地方議会を置き

(同法9
3条1項)
,地方公共団体の長及び地方議会の議員は,住民が直接これを選挙
する(同条2項)旨の規定を置いている。そして,地方議会は,憲法92条の委任を受けて制定された地方自治法(地方自治法1条参照)に基づき,地方公共団体の重要事項(議決事項)等について議決権を有するとともに(地方自治法96条1項,2項)
,執行機関に対する検閲・検査・監査請求権(同法98
条)
,国会又は関係行政庁に対する意見書提出権(同法99条)
,普通地方公共

団体の事務に関する調査権(同法100条)等の権能も有している。これらの規定からすれば,地方議会は,国家機関から独立し,地方公共団体の長及び執行機関とは相互に牽制をすべき関係に立つ意思決定機関であり,憲法上の規定に基づき,上記のような職責を全うするため,その組織及び運営に関して自律的に決定し,活動する権能及び同権能に基づく裁量を付与されてい
るものと解するのが相当であり,地方自治法において,議長及び副議長の選任権(同法103条1項)
,会議規則の制定権(同法120条)
,紀律権(同法1
29条ないし133条)及び懲罰権(同法134条ないし137条)等を定めているのも,地方議会に対して上記の趣旨に基づく強力な権能や広範な裁量を付与する趣旨に出たものと解するのが相当である。

したがって,地方議会の自律権の範囲内に属する事項については,一般市民法秩序と直接の関係を有しない内部的な問題にとどまる限り,裁判所法3条1項の「法律上の争訟」には該当しないというべきである。


そこで,まず,本件措置が明石市議会の自律権の範囲内に属する事項に関する措置といえるか検討するに,地方議会においては,本会議及び法定の委員会以外にも,会議規則の定めるところにより,議案の審査又は議会の運営に関し
協議又は調整を行うための場を設けることができ(地方自治法100条12項)
,同規定は会議規則によらずにそのような場を事実上設けることを妨げるものではないと解されるところ,上記1で認定,説示した代表者会の性格に鑑みると,代表者会は,上記の「協議又は調整を行うための場」といえるのであって,その設置並びに組織及び運営については,明石市議会の内部規律の問題
として,明石市議会の広範な裁量に委ねられる事項と解される。そうすると,代表者会をどのような構成にし,誰を招集するかについても,明石市議会自らが内部規律の問題として最終的に判断すべき事項といえるのであって,本件措置は,
明石市議会の自律権の範囲内に属する事項に関してなされた措置と評価せざるを得ない。

⑷ア

次に,本件措置が,実質的に一般市民法秩序と直接の関係を有しない内部的な問題にとどまらないものといえるかについて更に検討するに,原告らは,本件措置がIと会派についての考え方が異なるという原告らの思想・信条を理由として行われたもので,仮に,議長に裁量権があるとしても,それを逸脱する行為であって,
原告らの議会へ参加する権利及び明石市議会基本条例

で保障された会派結成の権利を侵害するものであるから,内部的な問題にとどまらない性格の措置であった旨主張する。
しかしながら,上記1で認定,説示したとおり,代表者会は,法律及び条例等に根拠を有するものではなく,その設置及び代表者会への出席権を定めた本件要綱も,本会議及び法定の各委員会での議決を経ておらず,当時の代
表者会に参加した各会派の代表者で確認したものであることに加え(前記1⑴ア)
,本会議及び法定の各委員会での決議事項については,各会派間の協議決が実質上代表者会で行われているとは認め難いこと,代表者会において決定がされることがあるのは,地方議会の内部規律にとどまる事項にすぎな原告らの主張する
権利は,議会内部において有する権利利益にとどまり,会派の代表者が代表
者会に出席できないことによって,一般市民法秩序において保障される権利利益が損なわれることになるとはいえないし,議会そのものに参加する権利が損なわれるものになるともいえない(なお,議会活性化推進委員会は,地方自治法及び明石市議会委員会条例等に法的根拠を有しない委員会で,明石市議会が,自ら,議会活動の活性化のために,自主的,自律的に設置する委
員会であるから,その設置に関する定めや委員の選出基準に関する定めは,まさに明石市議会固有の内部規律を定めたものということができる。したがって,同委員会の選出基準等について代表者会で決定がされたこと〔前記1⑵イ〕の一事をもって,代表者会が地方議会の内部規律にとどまらない事項について決定をしていたとは認められない。。


また,原告らが侵害されたと主張する会派結成等の権利は,あくまでも明石市議会における会派結成や会派の活動に関係する利益にすぎないものであり,
一般の国民が人であるがゆえに憲法上の保障がされているような基本的人権とは異なる性格のものであって,一般市民法秩序の下において法的に保護に値する利益であるとまでは評価し難い。


加えて,原告らは,本件措置が原告らの思想・信条を理由とする差別的な理由に基づく措置であるから,内部的な問題にとどまらないとも主張する。しかしながら,原告らの主張する思想・信条とは,原告Eの発行した広報紙
「K」
(乙3)
に記載されているような原告らの明石市議会における会派に

ついての考え方をいうのであり,その差別的な理由に基づく措置というのも,議会内部における議会運営の在り方に関わる政治的思想の対立の問題をいうにすぎないのであって,まさに議会内部において解決がされるべきものにすぎない。

したがって,本件措置が,一般市民法秩序と直接の関係を有する措置であるとはいえない。



以上の検討によれば,原告らの本件各訴えは,地方議会の自律権の範囲内に属し,
一般市民法秩序と直接の関係を有しない内部的な事項に関する市議会議長の判断の適否について司法審査を求める実質を有するものであって,裁判所法3条1項の「法律上の争訟」には該当しない。

3
以上の次第で,原告らの本件各訴えは,不適法であり,いずれも却下を免れない。

第4結論
よって,
原告らの本件各訴えは,
その余の争点について判断するまでもなく,
不適法であるから,いずれもこれを却下することとして,訴訟費用の負担につき,民事訴訟法61条を適用して,主文のとおり判決する。
神戸地方裁判所第4民事部

裁判長裁判官


裁判官

石久田斉原和孝
裁判官

堀優夏
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