判例検索β > 平成29年(わ)第408号
窃盗、住居侵入、強盗致死被告事件
事件番号平成29(わ)408
事件名窃盗,住居侵入,強盗致死被告事件
裁判年月日平成30年3月6日
法廷名札幌地方裁判所
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平成30年3月6日宣告
号,第478号,第545号
判決主文
被告人を懲役28年に処する
未決勾留日数中150日をその刑に算入する。
理由
(罪となるべき事実)
第1

被告人は,B(以下「B」という。)と共謀の上,北海道滝川市b
町・・・・・C(以下「被害者」という。)方に侵入してキャッシュカード等を強取しようと考え,平成29年5月14日午前1時20分頃,被告人が,同人方に,玄関ドアを合い鍵で解錠して侵入し,同所において,被害者(当時83歳)に対し,馬乗りになって同人を押さえ付け,その顔面及び胸部等を手拳で多数回殴打し,その頸部を両手で絞めるなどしたのち,被告人からの連絡を受けて前記被害者方に侵入したBとともに,同日午前3時30分頃までの間,被害者の両手首及び両足首を粘着テープ及びロープで緊縛し,さらに,Bが,後ろ手に緊縛した被害者の両腕を頭部方向へ無理矢理押し上げるなどの暴行を加えてその反抗を抑圧した。そして,被告人らは,その頃から同月16日までの間,同所において,被害者所有又は管理に係るD信用金庫発行の同人名義のキャッシュカード等3点を強取し,前記一連の暴行により,同月14日,同所において,同人を頭部及び顔面の皮下出血,外傷性くも膜下出血,頸部筋肉内出血,前胸部の皮下出血及び筋肉内出血,胸骨骨折,多発肋骨骨折,右肘関節脱臼並びに左肩甲骨烏口突起骨折等による外傷性ショックにより死亡させた。
第2

被告人は,被害者名義の前記キャッシュカードを使用して現金を窃取しようと考え,B及びEと共謀の上,別表記載のとおり,同月16日午後5時11分頃から同月22日午後3時6分頃までの間,6回にわたり,同市c町・・・・・F店において,前記Eが,同所に設置された現金自動預払機に同キャッシュカードを挿入して同機を作動させ,株式会社G銀行お客さまサービス部長H管理の現金合計300万円を引き出して窃取した。(法令の適用)


判示第1の所為のうち
住居侵入の点

刑法60条,130条前段

強盗致死の点

刑法60条,240条後段

判示第2の別表番号1ないし6の各所為
それぞれ刑法60条,235条
科刑上一罪の処理

刑法54条1項後段,10条(判示第1の罪に
つき,住居侵入と強盗致死との間には手段結果の関
係があるので,一罪として重い強盗致死罪の刑で処
断)

刑種の選択
各所定刑中判示第1の罪については無期懲役刑を,
判示第2の各罪については懲役刑をそれぞれ選択

併合罪の処理

刑法45条前段,46条2項本文


刑法66条,71条,68条2号,14条1項

量減軽
未決勾留日数の算入

刑法21条

訴訟費用の不負担

刑事訴訟法181条1項ただし書

(量刑の理由)
1
本件事案の概要
被告人は,金銭のやりくりに困っていたところ,平成28年10月頃,Bから,多額の資産を有する一人暮らしの老人がおり,そこを襲えば大金が手に入るなどと持ち掛けられて,これを了承し,Bから教えられた被害者方を下見するなどした。その後,被告人はさらに金銭に窮したことから,平成29年1月初め頃,Bに上記計画の実行を持ち掛け,Bが用意した催涙スプレーなどを持って,一人で被害者方に行ったが,玄関ドアに鍵がかかっていたため実行できなかった。被告人は,同年5月初め頃,Bから,被害者方の合い鍵が手に入ったこと,犯行は,被害者を縛る部隊,被害者を始末する部隊,キャッシュカードを探す部隊,現金を引き出す部隊に分かれて行われること,被告人は被害者を縛る部隊であること,被告人の報酬は800万円であることなどの説明を受け,上記犯行を実行することを了承した。
このように,Bは,被害者が自分の祖母であることを隠したまま,被告人に犯行を持ち掛ける一方,被害者を縛るための粘着テープやロープ等を準備したり,キャッシュカードの暗証番号を変更する方法や遺体を溶かすための薬品の入手方法について調べたりするなどの準備を進めた。
被告人とBは,上記犯行の実行日を同月14日の未明と決め,その後,被告人は,Bから風邪をひいたため実行日に行けなくなったとの連絡を受けたものの,予定どおり犯行計画を実行することとし,マスクと手袋を着用し,粘着テープ,ロープ及び催涙スプレーを持って,合い鍵を使用して一人で被害者方に侵入した。被告人が被害者方に侵入した後,被害者が目を覚まして強く抵抗したことから,被告人は被害者を縛るために,判示第1記載の各暴行を加えたものの,被害者を縛ることができなかった。そこで,被告人は,Bに電話で加勢を頼み,結局,Bと二人がかりで被害者を縛るなどして,判示第1の犯行に及んだ。Bは,被害者からキャッシュカードを奪った後,金融機関で暗証番号変更手続をした上で,被告人の弟のEを現金の引き出し役として誘い入れ,判示第2のとおり,現金300万円を引き出した。Bは,入手した300万円について,被告人には150万円しか手に入れることができなかった旨嘘を言って80万円のみ渡し,少なくとも190万円を自ら取得した。
2
本件犯行の悪質性
被告人らは,犯行に使う道具を準備し,奪ったキャッシュカードを用いて確実に現金を引き出す方法を調べるなど,十分な準備を整えた上で本件犯行に及んでいる。
しかも,被告人らは,この段階では被害者を縛り上げることしか考えていなかったものの,被害者から予想外の強い抵抗を受けたため,老齢で体力の劣る被害者に対し,その顔面や胸部等の身体の重要部分を多数回にわたり強く殴るなどし,被害者を縛り上げた上,その腕を折るなどしており,その態様は極めて凶暴かつ悪質である。
被害者は,最も安全な場所であるはずの自宅において就寝中に突如として上記のような激しい暴行を受け,ロープ等で緊縛されて放置され,その後ほどなくして死亡したのであり,その恐怖や無念は察するに余りある。このとおり,本件犯行により被害者の尊い命が奪われたという結果が重大であることはもちろん,その後,被告人らは,被害者から強取したキャッシュカード等を用いて,300万円もの現金を預金口座から引き出すことに成功しており,財産的被害の大きさも無視できない。
このような本件犯行の計画性,行為の悪質性及び危険性,さらに結果の重大性等からすると,本件は,被害者1名の強盗致死の事案の中でも相応に重い事案といえる。
3
被告人が本件犯行において果たした役割の重み
被告人は,多額の報酬を得る目的で,Bに犯行の実行を持ち掛けたり,被害者方の下見に行ったりしたほか,一人で被害者方に侵入するなど意欲的に本件犯行に関与し,被害者の死に直結する激しい暴行を加えている。なお,弁護人は,被告人が暴行を加えた後,被告人の見ていない場面でBが追加の暴行を加えた可能性があると主張するが,法医学を専門とするI医師の公判供述によれば,被告人の暴行が被害者死亡の結果を直接的に生じさせたことは明らかであるから,Bによる追加的暴行の可能性の有無は被告人に対する刑の重さを決める上で影響する事情とはいえない。以上によれば,被告人が本件犯行において果たした役割は大きい。
しかし,前記のとおり,本件犯行は,Bが被害者の孫という立場を利用して計画し,被害者方の合い鍵を入手し,その資産状況や部屋の間取りなど犯罪を成功させる上で重要な情報を被告人に伝える一方,被害者の遺体の処分方法や暗証番号が不明でも現金を引き出す方法を自分で調べるなどし,最終的に入手した現金の大半を取得している。他方,被告人は,Bから被害者がBの祖母であることなど犯行計画の詳細や実態を知らされないまま犯行に及んだものであり,Bより少ない報酬しか受け取っていない。これらの事情に照らすと,本件犯行においてはBが主導的な立場にあったといえ,被告人に対する非難の程度については,Bとは自ずから差があるというべきである。
そうすると,本件犯行の悪質性を踏まえても,被告人に対して無期懲役刑を科すのは重過ぎるといわざるを得ない。
4
これらの事情に加え,被告人が本件犯行を認め,被害者及びその遺族に謝罪するなどして反省の態度を示していること,被告人には前科がないこと,被告人の帰りを待つ家族がいることなどの事情も考慮すると,被告人に対しては,酌量減軽の上,懲役28年に処するのが相当であると判断した。

(求刑

無期懲役)

平成30年3月6日
札幌地方裁判所刑事第2部

裁判長裁判官

中桐圭
裁判官

結城
真一郎

裁判官

遊間洋一行
別表

番号1
犯行日時

犯行場所

管理者

窃取現金

(平成29年)
5月16日

北海道滝川市c町・・・・・

株式会社G銀行

午後5時11分頃

F店

50万円

お客さまサービス部長
H2
同月17日

同上

同上

50万円

同上

同上

50万円

同上

同上

50万円

同上

同上

50万円

同上

同上

50万円

午前7時34分頃
3
同月18日
午後5時6分頃

4
同月20日
午後5時59分頃

5
同月21日
午後3時6分頃

6
同月22日
午後3時6分頃

現金合計300万円

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