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雇用関係存在確認等請求事件
事件番号平成28(ワ)130
事件名雇用関係存在確認等請求事件
裁判年月日平成30年3月6日
法廷名高知地方裁判所
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平成30年3月6日判決言渡

同日原本領収

平成28年(ワ)第130号

雇用関係存在確認等請求事件

口頭弁論終結日

裁判所書記官

平成29年11月28日
判主決文1
原告の請求をいずれも棄却する。

2
訴訟費用は,原告の負担とする。
事実及び理由

第1

請求

1
原告が,被告に対し,雇用契約上の権利を有する地位にあることを確認する。
2
被告は,原告に対し,23万0410円及びこれに対する平成28年5月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

3
被告は,原告に対し,平成28年5月1日以降本判決確定の日まで,毎月末日限り月額23万0410円の割合による金員及びこれらに対するそれぞれ支払期日の翌日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2

事案の概要
本件は,被告との間で平成25年7月1日に雇用期間を平成26年3月31日までとする雇用契約を締結し,その後,2回にわたり契約(雇用期間は各1年)を更新された原告が,被告が平成28年4月1日以降は契約を更新しなかったこと(以下「本件雇止め」という。)について,労働契約法19条に基づ
き,契約が更新されたと主張して,被告に対し,原告が雇用契約上の権利を有する地位にあることの確認を求めるとともに,平成28年4月分以降本判決確定日までの給与及びこれに対する各支払期日の翌日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。
1
前提事実(掲記の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認定できる事実)当事者等

被告は,高知県立大学内に事務所を置き,同大学の教育方針に協力し,その健全な発展のため,学生の勉学及び課外活動等の援助を行うとともに,会員相互の連帯感を強め,大学の発展に寄与することを目的とする権利能力なき社団である。後記のとおり,高知県立女子大学が平成23年4月1日に高知県立大学へと名称を変更したことに伴って,高知県立女子大学後
援会から高知県立大学後援会(被告の名称)となったものであり,実質的には高知県立女子大学後援会と同一の団体である。なお,高知工科大学後援会とは別個の団体である。

原告は,下記⑵のとおり,被告との間で,期間の定めのある雇用契約を締結し,就職相談や履歴書の添削,模擬面接等を含む高知県立大学の学生
の就職支援及び被告の経理に関する事務に従事してきた労働者である(甲2ないし7,9(枝番を全て含む。以下同じ))。

高知県公立大学法人(以下「法人」という。)は,平成23年4月1日の高知県立大学の発足(高知県立女子大学が男女共学化により高知県立大学となったものである。)に伴い,同日に高知県が設立した公立大学法人
であり,当初は,高知県立大学及び高知短期大学の2大学の設置者として,両大学の運営を開始し,平成27年4月1日に公立大学法人高知工科大学を統合し,同日以降,高知県立大学,高知工科大学及び高知短期大学の3大学を運営している。


原告と被告間の雇用契約の成立等

被告は,平成25年7月1日,原告との間で,下記の内容を含む期間の定めのある雇用契約を締結した(甲2,3)。

雇用期間:平成25年7月1日から平成26年3月31日まで

勤務内容:就職支援事業関係業務及び後援会事務など
休日等:①日曜日及び土曜日は週休日(勤務を割り振らない日)とする。②国民の祝日
③休日等に勤務の振替の必要がある場合は,休日等を他の日と振り替えることがある。
勤務時間:午前9時15分から午後6時まで(うち休憩時間60分)給与:19万5000円(賞与なし)

給与支払日:毎月月末

被告は,平成26年4月1日,原告との間で雇用契約を締結し,原告との契約を更新したところ,更新後の契約内容は,雇用期間及び給与が下記のとおりとされたほかは,更新前と概ね同様である(甲4,5)(以下,被告又は法人と原告を含む労働者との間で締結される雇用期間が1年間の
雇用契約(休日等又は勤務時間について,上記アの雇用契約よりも限定が付されているものを除く。)を「有期雇用契約」といい,有期雇用契約を締結した労働者を「契約職員」という。)。

雇用期間:平成26年4月1日から平成27年3月31日まで

給与:19万7000円

被告は,平成27年4月1日,原告との間で雇用契約を締結し,原告との契約を更新したところ,更新後の契約内容は,雇用期間が同日から平成28年3月31日までとされたほかは,更新前と概ね同様である(甲6,7)。



雇用期間に関する被告の就業規則
被告が雇用する従業員は,契約職員2名であったため,独自の就業規則を有さず,法人の契約職員に関する就業規則に準拠することとしてきた。法人の就業規則8条には,「契約職員の雇用期間は,1会計年度内とする。
ただし,3年を超えない範囲内において更新することができる。」と規定されている(乙2の1)。


3年の雇用期間を超過した契約職員
被告が雇用した契約職員には,3年以上継続して雇用された者はいない。法人が雇用した契約職員については,一部の例外を除き3年の契約期間を満了した時点で契約の更新はなされないが,法人による公募に応募した上,選考手続を経て再雇用されることはあった。



本件雇止めに至る経緯

平成28年2月5日,当時の原告の直属の上司であるA学生支援部長兼被告事務局長は,原告に対し,被告が原告との雇用契約を同年3月31日の雇用期間満了時に終了させ,契約を更新しない意向である旨を説明した。

原告と高知県立大学教職員労働組合は,平成28年3月15日に開かれた団体交渉において,出席した被告側の担当者らに対し,原告との雇用契約を更新するよう求めた。


しかし,被告は,原告との雇用契約を更新しなかった(本件雇止め)。そのため,原告は,同年4月1日以降,被告に対し,労務を提供していない。


原告は,平成28年4月1日及び平成29年4月1日にいずれも,労働契約法19条により,それぞれ1年間の雇用契約が更新され,雇用契約上の権利を有する地位にあると主張している。



被告による給与の支給状況
平成27年度に被告から原告に支給された給与は,時間外勤務手当を含め,
合計276万4926円であり,平均すると1か月当たり23万0410円であった(甲8)。
2
争点及びこれに対する当事者の主張


争点
本件の主たる争点は,本件雇止めが労働契約法19条に反するかであり,
具体的には,①同条1号の無期雇用との同視可能性(実質無期契約型),②同条2号の合理的な理由のある期待(期待保護型),③同条柱書の客観的合理性・社会通念上の相当性の各要件を充たすかである。


争点に対する当事者の主張

争点①及び争点②について

(原告の主張)
労働契約法19条1号及び2号の該当性は,①職務内容,②更新の回数,③雇用の通算期間,④契約期間管理の状況,⑤雇用継続の期待を持たせる言動・制度の有無など諸般の事情を総合的に考慮して判断すべきである。原告の職務内容は,就職支援事業関係業務及び後援会事務であるが,そ
の具体的内容は,学生の就職支援や経理事務であって,臨時的・補助的な仕事ではなく,恒常的に必要不可欠なもので,高い専門性や経験が求められるものである。
原告は,採用以降,雇用契約を2回更新され,雇用期間は2年9か月の長期間に及んでいる。被告が有期雇用契約を更新するに際しては,上司が
契約職員に契約更新に関する意思を確認する程度のごく簡単な意向確認が行われていたにとどまり,厳格な試験や審査等の手続はなかった。被告と法人は別組織であるとはいえ,被告において法人の就業規則に準ずることとされ,被告の契約職員の処遇は法人の契約職員の処遇と同様となることが当然の前提となっていた。法人においては,通算雇用期間が3
年に達した契約職員は,公募を通じるものの,優先的に採用され再雇用される実情があり,法人の契約職員はもとより,被告の契約職員にとっても,自らが契約の更新を希望しているにもかかわらず雇用が打ち切られることはないとの期待を抱いて然るべき状況にあった。法人の契約職員に関して,平成27年度までは公募により再雇用を希望する契約職員の全員が採用さ
れていたが,法人では,平成24年法律第56号による改正後の労働契約法18条(以下,単に「労働契約法18条」という。)の施行を意識して,平成28年度に公募による契約職員の再雇用を取りやめるという方針変更が行われた。この方針変更は,同条を潜脱するために急きょ決定されたものであり,従前同様に期待が保護されるべきである。
さらに,A部長やB課長は,平成27年度に,原告に対し,3年の雇用期間が区切りではあるが,原告が希望すればあと2年は働ける旨の説明をした。
以上によれば,本件雇止めは労働契約法19条1号又は2号に該当する。(被告の主張)
本件雇止めが労働契約法19条1号又は2号に該当する旨の原告の主張
は,争う。
被告は,原告を契約職員として採用する際に示した契約職員募集案内(乙1の1)や,ハローワークに提出した求人票(乙1の2)に,雇用期間が最長で平成28年3月31日までである旨を明記していた。また,被告が準拠する法人の就業規則で通算雇用期間の上限を3年と定めており,
被告は,契約職員採用時に,通算雇用期間の上限について常に説明しており,原告にも説明をした。その上で,被告は,通算雇用期間内で有期雇用契約を更新する場合,事前に個々の契約業務の更新の必要性・相当性を判断し,事務局長が起案し,副会長(学生部長)の決裁を経た上で,当該契約職員と面談して更新の有無を伝え,更新が必要な契約職員にはその意向
を確認するという手続をとってきた。
さらに,原告が従事していた就職支援事業関係業務は,法人が実施していた業務の補助業務にすぎず,被告にとって,恒常的で必要不可欠な業務であるとはいえない上,就職支援事業関係業務及び経理事務のいずれも高度の専門性が認められる業務ではない。

そして,被告と法人は別団体であるから,本件雇止めの判断に法人の雇用状況等を考慮すべきではない。被告の雇用状況は,高知県立女子大学の時代に通算雇用期間の上限である3年に達した非常勤職員が一人存在したのみであり,当該職員は契約期間満了により退職している。その他に,通算雇用期間が3年に達した契約職員はいない。
たとえ法人の雇用状況等を考慮に入れるとしても,原告の主張には理由がない。すなわち,法人においても,通算雇用期間の上限である3年に達した契約職員は,後記のとおり後任の保健師を確保できなかったため特例的に通算雇用期間の上限を超えて更新する取扱いとされた保健師1名を除き,雇止めされている。確かに,法人は,翌年度の人員体制,業務量からみて契約職員の雇用が必要な場合には,ハローワークを通じて契約職員を
公募し,通算雇用期間が3年に達した契約職員からの申込みを受けて,再雇用した場合があるが,その選考に当たって,一般の応募者との公平性に配慮しており,契約職員を優先的に採用する取扱はしていない。そもそも,原告は,被告による契約職員の公募がなされたにもかかわらず,これに応募しなかったのであって,公募による選考手続を理由に再雇用への期待を
主張する前提を欠く。
また,法人の人事制度に触れれば,法人は,無期雇用の正職員等の増員を図るなどして,法人固有の業務に精通した職員の養成を企図しており,平成25年度に雇用期間の定めのない準職員という雇用形態を設け,優秀な契約職員に採用試験を受けさせて,準職員に登用し,契約職員数を抑制
する方針に従った取組みを行ってきた(以下,正職員及び準職員を併せて「プロパー職員」ということがある。)。このプロパー職員増員への取組みによって,法人の業務全体の中で,契約職員が担当する業務の範囲は,縮小している。法人の契約職員は,準職員の内部登用試験実施についての通知や説明内容等を通じて,契約職員の担当する職務の範囲が縮小し,契
約職員が漸減していくことを認識している。原告も,平成25年度には法人が実施した人事制度説明会に出席し,平成26年度には前年度と同様の準職員制度に関する説明資料の配布を受け,平成27年度には準職員の内部登用試験を受験しており,契約職員の担当する職務の範囲が縮小し,契約職員の公募の機会も漸減していくことを認識していた。

争点③について

(原告の主張)

原告の従前の勤務成績に鑑みれば,本件雇止めには,合理的な理由も社会的相当性も認められない。
(被告の主張)
被告と密接な関係にある法人が,その職員構成の改善を迫られ,契約職員とその他の職員の業務分担の見直しが行われていたという客観的状況に照ら
せば,本件雇止めが,労働契約法19条柱書にいう「客観的に合理的な理由を欠き,社会通念上相当であると認められないとき」に該当しないことは明白である。
第3
当裁判所の判断

1
認定事実
前提事実のほか,証拠(甲18,20,乙13,14,18,A証人,原告本人,文中掲記の証拠)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認定できる。⑴

被告について
被告は,高知県立大学の教育方針に協力し,その健全な発展のため,学生
の勉学及び課外活動等の援助を行うとともに会員相互の連帯感を強め,大学の発展に寄与することを目的とし,高知県立女子大学後援会を前身として,平成23年4月1日に高知県立大学の後援会となった権利能力なき社団である。
被告は,高知県立大学の学生の保護者及び有志をもって組織され,この会
の経費は,会費,寄付金等をもって支弁される。
被告の従業員は,初期には非常勤職員のみであったが,平成23年11月以降の採用は契約職員のみであり,契約職員2名体制で運営されてきた。これは,被告の本来業務について,繁忙期に当たる決算時期には職員1名の体制では円滑に業務を処理することに困難が生じると想定される一方,職員を2名体制とすれば,それによって生じる余力をもって高知県立大学の人員不足を補うことができると見込まれたためである。

高知県立大学の就職支援事業は同大学の重要な業務であり,教職員等が学生の指導にあたっていたほか,常設の相談窓口として「ワクワクWork!!」の名称で就職相談コーナーが2か所のキャンパスに置かれていた。そのうちの1つである池キャンパスにある「学生・就職支援課」に設置された「ワクワクWork!!」に,被告の契約職員2名と法人の正職員1名が
配置されていた。
上記のとおり,被告は,その会費による物的資源や従業員という人的資源によって,高知県立大学の就職支援事業の一部を担い,補完する組織であり,法人とは別個の組織であった。(甲1,乙7,8)


法人の設立
法人は,平成23年4月1日に設立され,高知県立大学及び高知短期大学の2大学を運営するようになったが,法人化前の組織が行っていた業務に加え,①理事会等の運営業務,②予算・決算業務,③中期計画,年度計画,実績報告書作成業務,④職員採用・育成業務などの業務が加わり,法人の業務量は格段に増加した。



法人の事務職員数及び構成

法人の事務職員数及び構成は,設立された平成23年度から平成28年度まで,別紙1のとおりで推移した。但し,法人が平成27年4月1日に公立大学法人高知工科大学を統合したことに伴う機構改革によって法人本
部が設けられたところ,統合前の両法人で採用された職員及び高知県から派遣された職員(以下「県派遣職員」という。)で法人本部で勤務することになった職員も存するが,別紙1では法人本部で勤務することになった人数は除外されている。

法人が平成23年4月1日に法人化された当初,事務職員の多数を県派遣職員が占めていた。当時,法人の設置者である高知県は,職員の定員について,法人化前の定数管理条例における職員定数の制限と同様の「高知
県立大学及び高知短期大学の2大学で県派遣職員・正職員合計40名」との制限の下に運営する方針を示していた。
しかしながら,上記⑵のとおり,法人の業務量が格段に増加し,上記定員では対応できなかったため,当時の非常勤職員等の中から公募により契約職員を採用して,人員を確保した。

また,高知県は,法人に派遣する職員を漸減する旨の方針をとったため,法人の県派遣職員数が年々減少し,法人は,平成26年度までは,県派遣職員の減少分に見合う数の正職員を採用し,それ以外に契約職員を採用して対応した。
法人における正職員の採用は,平成23年度から中途採用(新卒者以外)
を毎年行い,平成27年度からは新卒者の採用を開始した。平成27年度までの中途採用者は,全国公募による応募者(年129人ないし349人)から書類選考した約100人に知的能力試験や適性検査を行って20名程度に絞り込んだ上で,事務局次長以下の職員による1次面接,理事長以下による2次面接(平成25年度までは事務局長以下による面接)を行い,
年3ないし6名を採用した。

法人においては,県派遣職員の派遣期間は原則として3年であり,また,契約職員についても就業規則で雇用期間は3年を超えない範囲での更新と制限されていたため,長期間勤務する職員が少なく,職員の間で業務の知
識・経験が蓄積されないという問題が顕在化していた。また,複数の業務を経験して法人の業務全体についての知識・理解を持つ職員を育成する必要があった。

こうした事情から,法人では,プロパー職員の比率を増加させる必要が生じていた。その対策の一環として,平成25年度に,理事会及び経営審議会での議論を経て,優秀な契約職員を選考試験の実施によって雇用期間の定めのない準職員として内部登用する制度を導入することを決定し,以
後,準職員採用試験を実施してきた。準職員の採用試験の結果は,平成26年2月に応募者10名に対して合格者3名,平成27年1月に応募者5名,合格者3名,平成28年1月に応募者17名,合格者4名であった。オ
法人の職員数については,上記イのとおり,「高知県立大学及び高知短期大学の2大学で県派遣職員・正職員合計40名」との制限が設けられて
おり,平成27年の統合に伴う法人本部の設置を受け,同年当初は,県派遣職員24名,正職員12名の合計36名であったが,同年度中の法人と高知県の協議により,上記制限を撤廃することになり,平成28年には県派遣職員20名,正職員20名,準職員10名となるなど,大幅にプロパー職員が増加することとなった。


上記の事情により,プロパー職員数は平成23年度の0名から漸増して平成28年度に30名となり,これに対して,県派遣職員は平成23年度の36名から平成28年度の20名に漸減し,契約職員についても,平成26年度の29名をピークに平成28年度の23名と減少に転じていった(別紙1)。



法人の契約職員の退職等の状況

法人の契約職員は,就業規則により雇用期間の上限が3年とされているところ(乙2の1),平成23年の法人設立後,平成28年度までに雇用された契約職員の退職等の状況は別紙2のとおりであり,合計34名であ
る。但し,同年度現在で契約職員として雇用されており,かつ,通算雇用期間が3年未満の者は除外されている。

法人において,契約職員の雇用は,1会計年度ごとに更新がなされるが,その際に,少なくとも管理職による契約更新に関する意向確認が行われていた。そして,実際に,通算雇用期間の上限の3年に達するまでの間に他の採用形態に変更したり,離職したりした者が22名いた(そのうち10名が離職し,他の12名はプロパー職員等に採用されるなどした。)。離
職した10名には,当該契約職員の能力,適性が考慮された上で,離職に至った者も含まれており,無条件に雇用期間を全うできるわけではなく,形式的に更新がなされていたわけではない。
離職者10名の具体的な内訳は別紙3のとおりであり,1会計年度の雇用期間満了時に更新がなく退職した者が5名,同雇用期間中に職場不適応
により辞職した者が4名,自己都合(他の企業に就職)のために辞職した者が1名であった。
更新がなく退職した5名の内訳は,契約業務の終了による退職が1名,勤務実績が不良であるために被告の判断で契約を更新しなかった者が1名,契約職員側に更新の意思がなかったために退職となった者が3名であった。
職場不適応のため退職した者4名の内訳は,勤務実績の不良に対する指導の過程で辞職願が提出されて退職に至った者が1名,非違行為に対する指導の過程で辞職願が提出されて退職に至った者が1名,職場の人間関係を理由に辞職願が提出されて退職に至った者が2名であった。

法人において,通算雇用期間の3年の上限に達した契約職員は,34名中,12名であった。このうち1名は,法人の契約時の過誤により通算3年2か月間勤務となった者である。同人はその後,準職員として採用された。また,他の2名は準職員として,採用された。そして,保健師1名は,公募をしたが採用できず,学生の健康相談への対応に不可欠であったため,
例外を認めて3年を超えて更新された。
残りの8名のうち7名は,公募により平成27年度(公募の時期は平成26年度)までに契約職員として再雇用された。平成28年度(公募の時期は平成27年度)からの契約職員については,公募がなされなかったので,残る1名は契約職員として再雇用されなかった。


法人の契約職員の公募

法人においては,上記⑶のとおりの方針で人員の確保を行ってきており,上記⑷のとおりに契約職員が処遇されているが,基本的に,契約職員は,通算雇用期間の3年の上限に達するまでにプロパー職員等に採用されなければ,そのまま更新されることはなく,被告による公募に対して申込みをして採用され,平成27年度(公募の時期は平成26年度)までに7名が採用されたが,平成28年度(公募の時期は平成27年度)には,公募に
よる採用がなかった。

公募の手続に関しては,法人は,翌年度の人員体制,業務量からみて契約職員の雇用が必要な場合は,ハローワークを通じて契約職員の公募を行い,申込みをしてきた者の中から書類選考で複数名の候補者に絞った上で,事務局次長,担当部署の長などによる面接を行い,人事委員会で採用候補
者を決定し,学長(平成26年度までは理事長)の決裁を受けて契約職員の採用を行ってきた。


本件雇止めに至る経緯

被告と契約職員との関係は,法人の契約職員就業規則(乙2の1)の定
めに準拠することになっているところ,法人は,同就業規則で通算雇用期間の上限を3年と定めている。そして,被告は,原告に対し,採用直後の平成25年7月頃に,同就業規則の写しを交付した。
被告は,通算雇用期間が上限の3年に達しない契約職員との有期雇用契約を更新するに当たっては,上司が当該契約職員に接触し,契約の更新に
関する意向確認を行ってきた。なお,被告においては,勤務日又は勤務時間を限定した非常勤職員については,平成23年4月1日の前後を通じて通算3年間雇用された職員がいるものの,契約職員については,同日以降,全員が通算雇用期間の上限に達するまでに退職している。

A部長は,平成27年2月に原告に対して次年度の契約更新の意思を確認した際,原告から,更新後の契約に係る雇用期間が平成28年3月31日に満了した後の原告の雇用契約上の地位について質問を受けたのに対し,
被告による契約職員の公募に申込みをすれば,選考の対象にはなるという趣旨の説明をした。

原告は,法人が平成28年1月に実施した準職員採用試験を受験する際,「3月末日契約期限満了につき退職予定」と記載した履歴書(乙5の1)のほか,「3月末日,契約期限満了に伴い,退職予定」と記載した職務経
歴書(乙5の2)を提出した。原告は,法人の準職員採用試験の1次選考で不合格となった。当該年度の結果は,応募者17名のところ,1次選考合格者6名,2次選考合格者4名であった。

A部長は,平成28年2月5日,原告に対し,被告が原告との雇用契約を同年3月31日の雇用期間満了時に終了させ,契約を更新しない意向で
ある旨を説明した。A部長は,原告に対し公募により再雇用の可能性があることは説明しなかった。A部長は,原告が新たな公募に対して応募できないとか,応募しても採用されないとは言わなかったが,原告は,A部長が,原告の後任について話題を出すなどしたことから,公募による再雇用の余地はないと受け止めた。原告は,その場でA部長に,その点について
質問をして再確認したり,抗議したりはしなかった。

被告は,平成28年2月24日に契約職員採用に関する高知ハローワークへ求人申込書を提出し,同月25日に求人等登録者向け求人票が掲示され,公募をしたところ,2名の応募があったが,原告は応募しなかった。
2
争点に対する判断


争点①についての判断

被告が準拠する法人の契約職員就業規則には,通算雇用期間の上限が3年であることが明記されている(乙2の1)。そして,被告は,原告との契約更新時に,その都度,契約期間を明記した辞令書及び労働条件通知書を交付していた(甲4ないし7)ほか,上記認定のとおり,少なくとも上司が原告と面談して契約の更新に関する意向確認を実施していた。さらに,
被告においては,平成23年4月1日以降,通算雇用期間の上限の3年を超えて雇用された契約職員は存在しなかった。これらの事情からすれば,被告において,契約職員の通算雇用期間の上限が3年であると明確に示され,これを超える雇用の継続はしないという厳格な運用がされており,通算雇用期間内の契約更新時にも,漫然と更新するのではなく,契約の更新
に関する意向確認を行った上で,契約期間を定めた新たな雇用契約を締結し,採用の辞令を発するといった手続を履践していたものと認められる。そうすると,被告による契約職員との契約更新の手続が形式的なものであるとか,形骸化していたなどとはいえず,本件雇止めが期間の定めのない労働契約を締結している労働者に対する解雇と社会通念上同視できると
は認められない。

上記認定につき,原告は,A部長が,契約更新の判断基準について,よほどのことがない限りは更新されるという趣旨の証言をした点を指摘して,被告における契約更新の際の手続が形骸化していた旨を主張する。しかし,
原告が指摘するA部長の証言部分は,A部長が,当該判断基準について,「通常の勤務状況確認,平時の勤務状況,1月までの勤務状況を確認しながら,来年度に向けて,やっていっても大丈夫かどうかといったようなところを判断して,確認しました。」と証言した上で,原告訴訟代理人の質問内容を肯定する証言をしたにすぎないものである(A証人)。原告が指
摘するようなA部長の証言の一部を捉えて,そこから直ちに,被告において,契約職員との契約更新の手続が形骸化していたなどということはできない。

さらに,原告は,被告と法人の類似性から,法人の雇用実態を踏まえて,被告における雇止めの是非について判断すべきと主張する。
被告と法人とでは沿革,目的,規模,構成人員,財政事情などを明らか
に異にするなど,別個の組織体であるから,法人の雇用事情を被告の雇用事情として直ちに援用することが適切であるとはいい難いが,被告が法人の就業規則に準拠していることや,被告と法人の業務上の補完関係などの密接性等に鑑み,法人の事情について検討をしておく。
原告は,法人において,契約職員は3年間の期中における更新手続は形
骸化していたし,3年間の上限に達した場合にも,法人による公募の手続を経て再雇用がなされており,雇用は継続されていたと主張する。しかしながら,上記認定のとおり,法人においては,通算雇用期間の上限に達していない契約職員について,契約を更新する前には管理職による意向確認が実施され,1名とはいえ,法人の判断で雇止めになった契約職
員も過去に存在したのであるから,法人による契約職員との契約更新の手続が形式的なものであるとか,形骸化していたなどとはいえない(なお,上記認定事実からすれば,法人において,雇用期間満了時に雇止めをする可能性が高かった契約職員は,その前に辞職願を提出して退職していたため,法人による雇止めが行われるには至らなかったものとみられる。そう
すると,法人の判断で雇止めをした契約職員が1名にとどまるという事情を過大視することはできず,当該事情は上記判断を左右するものではない。)。
また,3年の上限に達している場合について,原告は,平成26年4月から2年間高知県立大学の事務局長を務めていたCが,法人において,通
算雇用期間の上限に達する見込みの契約職員が上記の公募に応募してきた場合には,それまでの勤務実績や勤務態度を評価した上で採用を決していた旨供述したこと(甲20)を指摘して,公募による採用の際には他の一般応募者よりも当該契約職員を優遇していたことが明らかであると主張する。
しかしながら,当該供述は,あくまで公募による採用手続において評価が高かった特定の人物を念頭に置き,その評価が高かった理由の一つとし
て「前の働きぶり」が影響した面もあると供述するにとどまるものであることが明らかであり(甲20),原告が主張するように,公募による手続の際には一律に契約職員を他の一般応募者より優遇していたことを含意する趣旨の供述であると解することはできない。
確かに,上記認定のとおり,法人においては,ハローワークを通じた契
約職員の公募により,通算雇用期間の上限である3年に達した契約職員が7名再雇用されている。
しかしながら,そもそも,ハローワークを通じた公募は,契約の更新とは性質,内容が顕著に異なる手続であるから,通常の契約の更新と同視すべき基礎を欠いているといわざるを得ない。

したがって,法人の雇用事情を援用するのが相当とはいえない上,仮にこれを考慮に入れたとしても,有期雇用契約が通算雇用期間の上限を超えた場合には当該契約が自動的に更新され,社会通念上雇用期間の定めのない労働契約と同視し得るものとは到底いえない。
したがって,本件雇止めは労働契約法19条1号に該当しない。



争点②についての判断
原告が準職員採用試験に際して作成した履歴書の記載からすれば,原告が平成28年3月31日をもって雇止めがなされることを十分に理解していたことが強く推認される。

これに加えて,上記⑴のとおり,被告が準拠することとしてきた法人の契約職員就業規則において,通算雇用期間の上限が3年と明確に定められていたこと,契約職員との契約更新の手続が形骸化していたなどとはいえないこと,被告において,平成23年4月1日以降,通算雇用期間の上限の3年を超えて雇用された契約職員は存在せず,公募手続を経て再雇用された例はないこと,法人の雇用実態を直ちに適用することは相当ではない上,仮にこれを斟酌したとしても,形式的に公募手続を経て事実上雇用が継続していた実態があると見ることは適切でないことのほか,原告に関しては,契約の更新回数は2回にすぎず,通算雇用期間も2年9か月にとどまることなどの事情を総合考慮すると,原告が通算雇用期間の上限である3年を超えて被告との有期雇用契約が更新されるものと期待することにつ
いて合理的な理由があるとは認められない。
なお,上記1⑹イに認定の平成27年2月のA部長の説明は,翌年度の人員体制が未確定な状況の下,被告と密接な関係を有する法人における契約職員の公募の運用を踏まえて,一般論を述べたにすぎない(なお,A部長の上記説明を含め,原告が主張する被告側職員の発言のうち,当事者間に争いが
ないもの以外については,原告の主張に係る被告側職員の発言があったとの事実を認めるに足りる証拠はない。)。したがって,A部長から上記説明があったことをもって,原告の契約更新に対する期待に合理的な理由があるとはいえない。
また,原告は,A部長が,平成28年2月5日に,たとえ原告が被告によ
る契約職員の公募に応募したとしても採用される余地はないという趣旨の発言をしたため公募に応募しなかった旨主張するが,上記1⑹エの認定のとおり,A部長は,あくまで,原告に対して被告による同年度の契約職員の公募への応募を勧めることをしなかったにとどまり,原告が当該公募に応募したとしても採用される余地はないとの発言をしたわけではない。確かに,この
時のA部長の発言が,原告に対して公募へ申し込む意欲を減退させた可能性がないとはいえないが,この発言をもって,原告の契約更新に対する期待を高めたということはできず,原告が公募に対して応募しなかったことの重要性を弱める事情があるにすぎないというべきである。
さらに,原告は,法人において,労働契約法18条を潜脱する趣旨で,平成28年度に公募を取り止めるなど突然の方針変更をしたことに現れているように,原告の更新を拒絶する態度に出たという趣旨の主張をし,高知県立大学教職員組合執行委員長のD教授も同旨の証言をしている(甲19)。確かに,C局長が団体交渉時に同条の存在があることを強調するように聞こえる答弁を行った(甲17)ことは否定できない。
しかしながら,法人においては設立後早い段階からプロパー職員を増員す
る方向で施策を進め,非正規雇用から正規雇用を中心とした職員構成へと転換を行っており,その施策は契約職員にとっても準職員として採用される途を開いていると評価し得る面もあることを踏まえると,その結果として,契約職員の担当業務が縮小し,契約職員数の減少に至ることもやむを得ないから,平成28年度に公募をしなかったという法人の判断が直ちに同条に反し,
あるいは潜脱するものであったとはいい難い。しかも,本件においては,被告と法人はあくまで別の法主体であって,法人における公募制度の在り方について,直ちに被告の問題として考慮すべきとはいえない。法人と異なり被告においては,公募を実施しているから,公募による採用の余地がなかった法人の場合とは,やはり事情が異なるといわざるを得ない。

もともと,原告は,平成28年3月31日までの更新の可能性があるという期間が示されていた中で採用され,被告が準拠する法人の就業規則上も,更新の上限が3年以内と明確にされており,採用後に当該就業規則を交付されていたのであり,原告の採用後に一方的に就業規則が変更されたという事情もなく,被告においては3年を超えて雇用が継続していた実績もなかった
のであるから,被告が同条を濫用し,原告の同法19条2号所定の期待を裏切ったと評価することはできない。
以上の事情を総合考慮すると,原告が通算雇用期間の上限である3年を超えて被告との雇用契約が更新されるものと期待することについて,合理的な理由があったとはいえない。
したがって,本件雇止めは同法19条2号にも該当しない。
第4

結論
以上によれば,争点③について判断するまでもなく,原告の請求はいずれも理由がないから,これを棄却することとして,主文のとおり判決する。高知地方裁判所民事部

裁判長裁判官

西村
裁判官

修酒井孝之
裁判官

田中慶太
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