判例検索β > 平成27年(ワ)第6555号等
不正競争行為差止等請求事件 不正競争 民事訴訟
事件番号平成27(ワ)6555等
事件名不正競争行為差止等請求事件
裁判年月日平成30年3月15日
法廷名大阪地方裁判所
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平成30年3月15日判決言渡

同日原本受領

平成27年(ワ)第6555号

不正競争行為差止等請求事件,平成27年(ワ)

第6557号

不正競争行為差止等請求事件,平成27年(ワ)第6781号

害賠償請求事件,平成27年(ワ)第8600号
年(ワ)第8602号
1号

不正競争行為差止等請求事件,平成28年(ワ)第550

平成29年11月30日
判原決告
日本クリーンシステム株式会社

同訴訟代理人弁護士

佐野喜洋同松村信夫同藤原正樹同永田貴久同塩田
千恵子

田健被告
P1

同訴訟代理人弁護士

吉被
太陽工業有限会社

告祐
(以下「被告太陽工業」という。)


損害賠償等請求事件,平成27

不正競争行為差止等請求事件

口頭弁論終結日

裁判所書記官

同訴訟代理人弁護士

半澤一成被告
銀座吉田株式会社
(以下「被告銀座吉田」という。)

同訴訟代理人弁護士

内徳行同鹿宮田義晃被告
株式会社サン・ブリッド
(以下「被告サン・ブリッド」という。


被告
P2

上記2名訴訟代理人弁護士
主堀
訴訟費用は原告の負担とする。
事1子
原告の請求をいずれも棄却する。

2
第1

咲文1岡実及び理由
請求
被告太陽工業,被告銀座吉田,被告サン・ブリッド,P2は,別紙営業秘密
目録記載の技術情報を使用してゴミ貯溜機の製造を行ってはならない。2
被告太陽工業,被告銀座吉田,被告サン・ブリッド,P2は,別紙営業秘密
目録記載の技術情報を使用して製造したゴミ貯溜機を廃棄せよ。
3
P1は,別紙営業秘密目録記載の技術情報を使用し,第三者に開示及び提供
してはならない。
4
被告らは,原告に対し,連帯して4442万3698円及びこれに対するP
1については平成27年8月13日から,被告太陽工業については平成27年8月
13日から,被告銀座吉田については平成27年9月16日から,被告サン・ブリッド及びP2については平成28年6月12日から,それぞれ支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
5
P1は,原告に対し,1400万円及びこれに対する平成27年8月13日
から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
6
被告銀座吉田は,ゴミ貯溜機に別紙被告標章目録記載の標章を付し,又は同
標章を付したゴミ貯溜機を譲渡し,
引渡し,
譲渡若しくは引き渡しのために展示し,
輸出してはならない。
7
被告銀座吉田は,原告に対し,1000万円及びこれに対する平成27年9
月16日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2

事案の概要

本件は,
原告が,
ゴミ貯溜機に関する別紙営業秘密目録記載の技術情報
(以下
「本
件技術情報」という。)が不正競争防止法(以下「不競法」という。)上の営業秘密である旨主張して,P1を除く被告らに対し,同法に基づき,ゴミ貯溜機の製造販売等の差止め及び廃棄(請求の趣旨1項,2項),P1に対し,同法及び秘密保持契約違反に基づき,ゴミ貯溜機に関する本件技術情報の使用開示等の差止め(請求の趣旨3項),被告ら全部に対し,同法違反の不法行為に基づく損害賠償(請求の趣旨4項),P1に対し,上記契約違反に基づく約定損害金の支払(請求の趣旨5項)を求め,また,ゴミ貯溜機の商品表示が周知商品等表示であることを前提と
する不競法に基づき,又は同商品表示の商標権に基づき,被告銀座吉田に対し,その類似標章の使用差止め(請求の趣旨6項)及び商標権侵害の不法行為に基づき損害賠償(請求の趣旨7項)を求めた事案である。
1
前提事実(当事者間に争いのない事実又は後掲の各証拠及び弁論の全趣旨に
より容易に認められる事実。なお,甲号証の書証番号は,併合前に提出されたものは平成27年(ワ)第6555事件で提出された番号を指す。)
(1)当事者及び関係者


原告は,ごみの収集機器の製造及び販売等を業とする株式会社である。原告
は,従業員が40名余りの会社であり,肩書地に本社を置くほか,東京支店と福島工場があり,現在,シンガポールと香港に現地法人がある(甲21)。イ
P1は原告に平成3年2月15日に就職し,平成9年7月1日から平成26
年9月30日まで取締役であり,同日,退職した者である。原告在職中,原告と被告銀座吉田との取引を担当していた(甲21)。

被告太陽工業は,肩書地に本社を置くほか福島県伊達市に工場(以下「伊達
工場」という。)を持ち,溶接加工・機械製造加工を行っている。なお,伊達工場は,
平成26年1月頃,
1億5000万円の借入れで新たに購入した工場である
(甲
21)。

被告銀座吉田は,工業製品の輸出入等を業として行う株式会社である。被告
銀座吉田は,平成6年頃から,中華人民共和国香港特別行政区(以下「香港」という。),シンガポール,中華人民共和国(以下「中国」という。)において,原告の唯一の代理店として,原告製造に係るゴミ貯溜機等の販売のほか,周辺機材及びメンテナンスサービスの提供,機械修理を行っていたが,後記(2)の経緯で,現在,原告との取引関係はない(甲10の1,2,甲21)。

被告サン・ブリッドは,被告太陽工業と同住所に本店を置く電気機器用部品
の製造販売等を行う株式会社であり,代表者も被告太陽工業の代表取締役と同一である(以下,被告サン・ブリッドと被告太陽工業を併せて「被告太陽工業ら」ということもある。)。被告サン・ブリッドは,原告製ゴミ貯溜機の部品の一部を原告に供給していたことがある(甲21)。

P2は,被告太陽工業及び被告サン・ブリッドの代表取締役であるP3の弟
であり,被告太陽工業の元従業員である。

有限会社サキダス(以下「サキダス」という。)は,平成9年8月1日に設
立され,
平成17年7月1日からP1が代表取締役を務める特例有限会社である(甲
59)。


JCSWASTEMANAGEMENTCO.,LTD(以下「JCS」という。)は,原告と被告
銀座吉田の取引継続中,香港で原告の代理店となるため,被告銀座吉田の代表者が出資して香港に設立した会社である。原告も,そのパンフレット中に原告の現地法人と記載していた(甲7,甲37)。

JCSWASTEMANAGEMENTBEIJINGCO.,LTD.(以下「JCS北京」という。)
は,被告銀座吉田の代表者が出資し,「ExecutiveDirector(執行役員)」を務める会社である(甲74)。
(2)本件紛争の経緯等

原告は,平成6年頃から,被告銀座吉田と提携して「ゴミック」を商品名と
する原告製造に係るゴミ貯溜機(以下「原告製品」という。)の香港,シンガポール,中国への輸出を開始し,平成26年頃までに合計輸出台数が100台を超えるまでになっていた(甲21)。

原告の取締役として被告銀座吉田との取引を担当していたP1は,平成26
年8月29日付で,秘密保持義務及び競業避止義務を定めるほか,違反した場合には退職金を返還するとともに同額の違約金支払義務を定めた本判決に添付した「退職の誓約に関する確認書」と題する書面(甲4。以下「本件確認書」という。)に署名押印して原告に差し入れた。そして,同年9月30日,原告を退職し,退職金として700万円の支給を受けた(甲5の1)。

被告銀座吉田は,中国の取引先との間で進めていた中国成都のショッピング
センター及びホテルに原告製品を納品する商談につき,平成26年10月20日には,その注文が確定したとして原告に連絡した(甲58)。

原告は,平成27年1月5日,シンガポールに現地法人を設立し,同月16
日,被告銀座吉田に対し,今後,被告銀座吉田からの注文を受けない旨を口頭で通知した上,同月30日,ゴミ貯溜機に関する取引終了の通知を発送し,被告銀座吉田との取引を打ち切った(甲9の1,甲10の2)。
これに対し,被告銀座吉田は,同年3月23日,原告を相手方として,原告が被
告銀座吉田との取引を打ち切ってシンガポールに代理店を設置して被告銀座吉田を排除して自ら取引をしようとしたとして,大阪地方裁判所に機械輸出禁止仮処分申立事件を申し立てた。そして,その申立てにおいて原告と被告銀座吉田間に原告製品についての独占的総代理店契約があり,原告の行為は被告銀座吉田に与えられた独占的営業・販売権を侵害するものである旨を主張した(甲10の1)。これに対し,原告は,被告銀座吉田主張に係る独占的総代理店契約を否認するとともに,原告から「ゴミックを仕入れなくても,自らもしくは第三者をしてゴミックを製造することが可能であるから,本件仮処分申立はその必要はない。」であるとか,被告銀座吉田は「香港・シンガポール・中国でゴミックの納入先をみつけて
くれば,それを製造して納入することは容易である。」旨を主張して争った(甲10の2)。

上記ウの被告銀座吉田が受注することで確定していていた中国成都の取引に
ついて,被告銀座吉田から原告へ発注がなされることはなかったが,同年5月頃,被告太陽工業の伊達工場においては,原告製品と同形状のドラム式ゴミ貯溜機が製造されていた。また同工場敷地内には,P1が代表者を務めるサキダスの従業員が稼働し,またP1が同工場を訪問することもあった(甲11の1,2,甲60の1,2,甲61,甲62)。

原告は,伊達工場でゴミ貯溜機が製造されている事実を主張して,同年7月
2日,P1及び同太陽工業に対して訴訟を提起し(P1に対して平成27年(ワ)第6555号

不正競争行為差止等請求事件。被告太陽工業に対して同第6557号
不正競争行為差止等請求事件),
さらに同月8日,
被告太陽工業に対して損害賠償請
求訴訟を提起した(平成27年(ワ)第6781号

損害賠償請求事件)。

上記ゴミ貯溜機(以下「伊達工場出荷物件」という。)は,同年7月15日
に伊達工場から搬出されたが,その設置先は,本件において被告らから明らかにされていない。

原告は,さらに同年8月28日,被告銀座吉田に対し,上記ゴミ貯溜機の製
造搬出の事実等に被告銀座吉田が関与していると主張して差止め及び損害賠償等を請求する訴訟を提起した(平成27年(ワ)第8600号
同8602号

損害賠償請求等事件,

不正競争行為差止等請求事件)。

被告銀座吉田が申し立てた上記エの仮処分申立事件は,同年8月31日,
上記権利に基づく侵害行為の差止請求権は認められないとして却下された(甲17の1)。

上記ウの取引で原告製品が納品されるはずであった中国成都のショッピング
センターとホテルには,遅くとも平成27年10月9日までに,ショッピングセンターには原告製品の型番
「GMR-20000」
と外観も内部構造もほぼ同一のゴミ貯溜機(以

「本件製品1」
という。
)が,
ショッピングセンターに隣接するホテル
「THETEMPLE
HOUSE博舎」には原告製品の型番「GMR-8000」と外観も内部構造もほぼ同一のゴミ貯溜機(以下「本件製品2」という。)が設置された。本件製品1には,型番を原告製品と同じ「GOMIC

GMR-20000」,製造年月日を「JUN16,2015」と表記する製造
者が「SUN・BRID・CO.LTD」と理解できる銘板が付されており,本件製品2にも,型番を原告製品と同じ「GOMIC

GMR-8000」とするほかは,本件製品1

と同じ表記内容の銘板が付され,うち上記ショッピングセンター内における本件製品1の設置位置は,原告が被告銀座吉田に提供した設置図面どおりであった(甲22の1ないし32,甲38ないし甲44,甲47の1ないし8)。サ
原告は,平成28年6月6日,被告サン・ブリッドに対し,中国成都に設置
されている本件製品1,2は,被告サン・ブリッドが製造したものであると主張して損害賠償等を請求する訴訟を提起した(本件平成28年(ワ)第5501号

正競争行為差止等請求事件)。
(3)ゴミ貯溜機について
ゴミ貯溜機は,
昭和48年頃から,
国内の多くのメーカーにより製造されており,
現在,新明和工業株式会社,三菱重工環境・化学エンジニアリング株式会社,富士車輌株式会社,二幸産業株式会社,菱貴産業株式会社で製造販売されているほか,
海外のメーカーでも製造販売されている。ゴミ貯溜機は,その基本的構造は,貯蔵する回転ドラムの内側に大小の羽根(フィン)を螺旋状に溶接したもので,既存の部品製品の組み合わせで構成されている装置であり,ドラムを回転させることにより投入口から投入されたゴミが内側の羽根(フィン)に沿って排出口に向かい,閉じられた排出口によって行き場を失ったゴミが圧縮され体積を減らし,さらにドラムの回転によって排出作業を行うというものである(丁1ないし丁5,丁6の1)。(4)原告の商標権

原告は,以下の商標権(以下「原告商標権」という。)を有している(甲15,
甲46)。
登録番号

第5720759号

出願日

平成26年7月22日

登録日

平成26年11月21日

登録標章

別紙原告商標目録記載のとおり

指定商品又は指定役務並びに商品及び役務の区分
第7類

廃棄物圧縮装置,廃棄物破砕装置,廃棄物貯留搬送装置


被告銀座吉田は,中国において,「ゴミック」の商標登録を受けている。
2
争点

(1)本件技術情報は不競法上の営業秘密であるか。
(2)各被告の不正競争行為の成否
(3)被告らの不正競争行為により原告の受けた損害の額
(4)P1の秘密保持義務違反の成否
(5)被告銀座吉田による商標権侵害等の成否
第3
1
当事者の主張
争点(1)(本件技術情報は不競法上の営業秘密であるか。)

(原告の主張)
(1)本件技術情報の概要

●(省略)●
(2)本件技術情報が不競法上の営業秘密に該当すること

本件技術情報が秘密として管理されていること

秘密管理性の要件は,①情報にアクセスした者に当該情報が営業秘密であることが認識できるようにされていること(認識可能性),②情報にアクセスできる者が制限されていること(アクセス制限)が重要な要素とされるが,それぞれ別個独立した要件ではなく,
アクセス制限は,認識可能性を担保する一つの手段であるから,
情報にアクセスした者が秘密であると認識可能な場合には,十分なアクセス制限がないことを根拠に秘密管理性が否定されない。また,対象となる情報の性質や侵害
の態様,情報保有者の会社の規模によっても,必要となる秘密管理性の程度は異なってくる。
本件技術情報は,いずれも原告製品を製造するための技術情報であり,これらの情報にアクセスする者は,その情報を社外に漏らしてはいけないということは容易にわかる性質の情報であるし,以下で説明する情報の保管状況や秘密保持の誓約書
を本件技術情報に携わる従業員から徴していたなど情報の人的管理状況からすると,本件技術情報は秘密管理性を充足する。
(ア)保管状況
本件技術情報は,
電子データと電子データを印刷した紙ベースで保管されている。
まず,電子データについては,原告の福島工場内のサーバーPC等に以下の構成
で保管されている。
①通常使用しているファイルサーバー

1基

②常にミラーリングされているハードディスク
③月に一回バックアップするハードディスク

1基
1基(工場の金庫に保管)

そして,同工場内のPCから,上記①のファイルサーバーに保管されている情報をコピーすることができるなどアクセスできるが,工場外部からは東京支店の設計補助のPCからのみ,その設計補助担当者に付されたIDとパスワードを入力して
VPN(VirtualPrivateNetwork)でアクセスできるようになっていた。つまり,原告のサーバーPCにアクセスできたのは,福島工場で働く従業員(役員を含む。)と東京支店で設計補助をしていた従業員P4だけである。
次に,紙ベースの情報は,同工場内の棚に保管され,原告製品を製造するに当たり都度参照されていた。なお,同工場内には,原告従業員以外の部外者は立ち入ることはできない。
本件技術情報の保管状況はこのようなものであったが,これは原告製品を製造するために都度図面や作業工程を確認する必要があったためであり,これらの情報へのアクセスを厳格にすると,
原告製品の製造効率を極端に下げてしまうからであり,

このような保管状況はやむを得ないものであった。
(イ)原告の人的管理
P1が退職した平成26年9月末当時,
原告の役員及び従業員数は42人であり,
本件技術情報にアクセスすることができた福島工場の正社員の人数は18人にすぎず,同工場内の正社員全員から秘密保持の誓約書の提出を受けていた。
また,東京支店からVPNを使用して本件技術情報にアクセスすることができた正社員のP4からも秘密保持の誓約書の提出を受けている。
さらに,原告の就業規則には,従業員の秘密保持義務を定めた条項がある。(ウ)まとめ
本件技術情報の管理状況は,福島工場の正社員であれば,本件技術情報にアクセ
スできるものであったが,
前記のとおり本件技術情報へのアクセスを厳格にすると,
原告製品の製造効率を極端に下げてしまうからである。
他方,本件技術情報は,福島工場の従業員以外はアクセスできず,また,福島工場の正社員の人数は,平成26年9月当時,18人にすぎず,工場内のいずれの正社員も,原告に秘密保持の誓約書を提出しており,本件技術情報が会社にとって重
要な技術情報であり,持ち出したり,漏洩したりしてはいけない秘密の情報であることは十分に認識していた。

したがって,本件技術情報は秘密管理性を充足する。

本件技術情報が有用な情報であること

本件技術情報は,
前記(1)で述べたとおり,
原告製品を製造するにあたって必要な
図面や製造手順に関する情報であり,この情報により,原告は原告製品をより効率的にかつ正確に製造することができるのであるから,事業活動に客観的に有用な情報である。

本件技術情報が非公知であること

本件技術情報は,原告にて秘密として管理された情報であり,不特定の者が公然と知り得る状態にない情報であり,非公知である。
(3)

被告らの主張に対する反論

被告らは,原告製造のゴミ貯溜機が公知の技術から構成されたものであると主張するが,いずれも失当である。

被告らは,昭和49年11月1日発行の雑誌の記事(丁7)を引用するが,
同記事は,ロータリードラム式ゴミ貯溜機の基本的な構造や機能を説明しているだけで,ロータリードラム式のゴミ貯溜機が,「貯蔵する回転ドラムの内側に大小の羽根を螺旋状に溶接したもので,既存の部品製品の組み合わせで構成され」ることまでの説明はない。また昭和57年5月1日発行の雑誌に掲載された記事(丁8)を引用して,ロータリードラム式のゴミ貯溜機システムが昭和57年頃,既に一般化していたと主張するが,原告はロータリードラム式のゴミ貯溜機システム自体が
営業秘密であると主張しているわけではない。
また被告らは,多数の海外のメーカーが原告製品と同種機械を製造販売していることを主張するが,ドラム式ゴミ貯溜機といっても,各製造メーカーにより内部の構造やサイズ,材料,製造コストも異なるものである。海外のメーカーが原告製品と同種の機械を製造販売しているだけで,何故,原告には特段保護に値するような
営業秘密がないことになるのか全く不明である。
さらに被告らは,廃棄物保管場所等の設置等に関する自治体の要領等で,自動貯
溜機による方式の中でドラム方式が示されて,ごみの流れが図解され説明されており,ドラム方式の仕組みなどが一般的であるから,他社が容易に製造できない機械であるとはいえないなどと主張するが,このような説明がなされているからといって,他社が原告製品と同じ製品を容易に製造できるわけではない。イ
八角部分,シール部分,羽根部分及び排出蓋部分に関する主張について
(ア)八角部分に関する主張について
原告の八角の形態は,投入したゴミの逆流を防止するとともに,たくさんゴミをいれることによりゴミを圧縮させるという一般的な機能だけでなく,ゴミ袋を裁断するとともに,ゴミをよりドラムの奥に落とすために原告独自の形態を採用しており,一般的な形態ではない。被告らは,台湾メーカーで採用されている八角の形態も原告の八角の形態と同一であるとして一般的な構造であると主張しているようであるが,そもそも台湾メーカーの八角の形態は,被告らが引用する写真(丁10の7)からは明らかでない。
(イ)シール部分に関する主張について

●(省略)●
(ウ)羽根に関する主張について
●(省略)●
(エ)排出蓋に関する主張について
被告らは,台湾のメーカー製のドラム式回転式貯溜槽の排出蓋についても写真を
撮ることができる点を主張するが,原告が排出蓋に関し,営業秘密として主張しているのは,排出蓋のジョイント部分の構造であり,同部分の構造はジョイント部分を分解して初めて明らかになるものであり,非公知の情報である。(被告らの主張)
(1)原告主張に係る本件技術情報が営業秘密であることは否認する。
そもそもロータリードラム式のゴミ貯溜機は,貯蔵する回転ドラムの内側に大小の羽根を螺旋状に溶接したもので,既存の部品製品の組み合わせで構成され,ドラ
ムを回転させることにより投入口から投入されたゴミが内側の羽根に沿って排出口に向かい,
閉じられた排出口によって行き場を失ったゴミが圧縮され体積を減らし,さらにドラムの回転によって排出作業を行う装置であるが,その構成自体は昭和49年11月1日発行の雑誌の記事(丁7)から既に公知になっており,昭和57年5月1日発行の雑誌に掲載された記事(丁8)からは,同年頃,既に一般化していたことが明らかである。
現在,多数の海外のメーカーが原告製品と同種機械を製造販売しており(丁11ないし丁16(なお丁6と丁13は同じメーカーのものである。)),ゴミ貯溜機が容易に製造販売できる製品であることが明らかである上,しかもこれら海外のメ
ーカーの製造する同種機械は,内部構造だけでなく形態についても原告製品と同様なのであって,形態の点でも特に保護すべきものとはいえない。
したがって,ゴミ貯溜機について原告には特段保護に値するような営業秘密もノウハウもなく,その形態についても保護すべきものでないことが明らかである。さらに,廃棄物保管場所等の設置等に関する自治体の要領等で,自動貯溜機によ
る方式の中でドラム方式が示されて,ごみの流れが図解され説明されていることからも(丁17,丁18),このようなドラム方式の仕組みなどが一般的であることは明らかであって,原告の主張するような他社が容易に製造できない機械であるとはいえない。
(2)原告は,八角部分,シール部分,羽根部分及び排出蓋部分に関する技術情報
に関して営業秘密性を主張するがいずれも失当である。

八角部分について

八角とは投入口から投入されたごみを一時的に受け,ドラム内に貯溜されたゴミと隔絶するための空間で,ドラム式貯溜槽では一般的な構造である。台湾メーカー(康蒲環保企業(股)公司)のドラム式回転式貯溜槽の製造ラインで,投入口から見た八角も,そのように一般的な構造であるということができるのであり,またその写真を撮影することができるのであって,
営業秘密を有しているとはいえない
(丁

10の7)。

シール部分について

●(省略)●

羽根部分について

羽根とは,投入口からドラム貯溜槽に投入されたゴミをドラムの回転により排出蓋方面に移動させるための羽根であり,ドラム式回転式貯溜槽ではごく一般的であり何ら秘密性はない。台湾のメーカー(康蒲環保企業(股)公司)のドラム式回転式貯溜槽の製造ラインでも既に同様の羽根がドラム内に溶接されており,その写真を撮ることができることからも営業秘密であるとはいえない(丁10の1ないし
3)。

排出蓋部分について

排出蓋は,ドラムの回転と共に回転をするよう中心部で回転する構造となっている。排出蓋の密着性を増すために回転中心をユニバーサルジョイントとする場合もある。台湾のメーカー(康蒲環保企業(股)公司および伯登有限公司)製のドラム式回転式貯溜槽の排出蓋についても写真を撮ることができるのであり(丁10の4ないし6),原告の排出蓋が特に営業秘密とはいえない。
(被告銀座吉田の付加主張)
原告は,何ら秘密保持義務を負わせることなく,原告製品の図面や仕様表等を共同で製造・販売・輸出等を行っていた被告銀座吉田やJCS北京はもちろんのこと,
取引先,製造下請業者,メンテナンスを担当する業者にも交付していた。原告は,被告銀座吉田が原告製品の図面情報などの原告の営業秘密に関わる情報を有していることは明らかであるとするが,ゴミックの図面は何ら営業秘密ではなく,
被告銀座吉田が過去販売した図面等を保有していることは何ら違法ではないし,P1が開示する以外にも第三者がゴミックの図面を入手する方法はいくらでもあ
る。
(P1の付加主張)


原告では,納品先に対して,機械レイアウト図,電気図面,全体の構成パー
ツ図,5年間の補用部品リストといった,製品に関わる情報を提供していた。提供に際しては,納品先に守秘義務を課しておらず,後日の返還も求めていなかった。イ
また原告では,原告製品の部品を外注する際に,当該部品の設計図を提供し
ていた。場合によっては,下請けに対して部品のイメージを伝えるため,部品を一定数組み立てて作成した,より大きな部品の図面を提供していたこともあった。提供に際しては,
下請けに守秘義務を課しておらず,後日の返還も求めていなかった。ウ
原告製品の図面は,P1以外の原告従業員がアクセスすることが可能であっ
たし,上記のとおり,原告製品の製造に関わる情報は,様々な場所に散在し,そこから第三者が情報を取得することも可能であった。
2
争点(2)(各被告の不正競争行為の成否)

(原告の主張)
(1)事実関係

原告と被告銀座吉田は,中国成都のショッピングセンターとホテルにゴミ貯
溜機を納品する商談を進め,平成26年10月20日には受注が確定していたものの原告に発注されることはなかったが,遅くとも平成27年10月9日までに,中国成都のショッピングセンターとホテルには,原告に発注されるはずであった原告製品と同じ型番を付されたゴミ貯溜機である本件製品1,2が設置されている。他方,
それ以前である平成27年5月頃には,
被告太陽工業の伊達工場において,

原告製品と同形状のドラム式ゴミ貯溜機がサキダスの従業員と伊達工場の作業員とによって製造され,同ゴミ貯溜機は,同年7月15日に伊達工場から搬出されていることが確認されている。

これら事実関係からすると,伊達工場で製造されていたゴミ貯溜機(伊達工
場出荷物件)が,被告銀座吉田あるいはその関連会社を通じて納品され,本件製品1,2として設置されたとしか考えられない。
そして被告銀座吉田は,成都案件について受注していたのであるから,契約どお
りにゴミ貯溜機を設置する必要があった。また,P1は,原告在職当時,被告銀座吉田との取引担当者であり,かつ,原告退職後も被告銀座吉田から依頼を受け海外まで赴きメンテナンス作業をするなど被告銀座吉田と深い関係にあるし,原告在籍当時,容易に本件技術情報をコピーし,社外に持ち出せる状況にあったが,原告に不満をもって退職したものである。そして伊達工場にて,被告太陽工業ないしその実質的に同一の被告サン・ブリッド,あるいはP1が代表者と務めるサキダスによって本件製品1,2の製造行為がなされている。
したがって,少なくとも,被告銀座吉田主導の下,P1,被告太陽工業らが,本件製品1,2を製造したことは明らかである。


なお,被告らが上記行為をしたことは,被告銀座吉田及びP1が,本件製品
1のメンテナンスに関与し,その交渉時のメールには,原告製品の図面番号と同じ番号の交換部品のエクセルファイルが添付されていたことなどからも裏付けられている。
さらに,それだけでなく,被告銀座吉田及びP1は,サキダスが製造して中国の三里屯のショッピングセンターあるいは王府井のショッピングセンターに納品された原告製品の模倣品の製造販売に関与し,さらにシンガポールNUH向けに原告製品の模倣品の商談を進めているが,これらのことも同人らのメールのやりとりで裏付けられている。
(2)本件製品1,2が,原告主張の営業秘密を使用して製造されたこと

本件製品1について

本件製品1は,伊達工場出荷物件のうちの1台であるが,原告の営業秘密である本件技術情報を使用して製造されたことは明らかである。
(ア)PLC制御プログラムについて
PLC制御プログラムは,原告製品では,ドラム回転ボタンを押すとその信号をドラムを回転させる機器に渡すという指示などが記載されているものであり,他社で製造された機器の制御プログラムが原告製品のものと偶然に一致することなどあ
り得ないが,本件製品1のそれは原告製のものと同じである。
(イ)ドラム内に設置された羽根の形状について
本件製品1のドラム内に設置された羽根の形状は,別紙1-1ないし5で主張するとおり,別紙機械図面目録記載4の図面(甲26の1ないし5)と全く同じであり,このような羽根の形状が偶然に一致することなどあり得ない。(ウ)ドラム内に設置された隔壁板の形状について
本件製品1のドラム内に設置された隔壁板(通称「八角」)の形状は,別紙2-1,2で主張するとおり,別紙機械図面目録記載2の図面(甲24の1ないし3)やその詳細図面(甲55の1,甲56の1)と全く同じあり,このような隔壁板の部
品形状が偶然に一致することなどあり得ない。
(エ)シール構造について
●(省略)●

本件製品2について

本件製品2は,伊達工場出荷物件のうちの1台であるが,原告の営業秘密である本件技術情報を使用して製造されたことは明らかである。
(ア)排出蓋のジョイント
原告製品の排出蓋のジョイントと本件製品2の排出蓋のジョイント部分の外部形状が同じであることからすると,ジョイント内部の構造(甲20の18)も同じと思われる。

したがって,被告太陽工業らは,原告製品の別紙機械図面目録記載5の蓋ジョイント部分の図面情報を使用している。
(イ)その他の外観もほぼ同じであること
原告製品と本件製品2は,上記排出蓋のジョイント部分の外観が同じであり,その内部構成も同じである可能性が高いことのほか,本件製品2の排出コンベヤ,制御盤
(盤面)のライトとボタンの配置,消臭噴霧装置,冷却装置の形態,反転装置の形態,ゴミ投入部側面のボルト位置,ゴミ投入操作部のライト及びボタンなどの外観に現れ
ている部品の形態や設置箇所という,自由設計できる部分においても共通する部分が多数あることに加え,ドラム式ゴミ貯溜機の製造実績のない被告太陽工業らが本件製品2を短期間で製造していることや,被告太陽工業らは,原告から本件技術情報を容易に入手できたP1と関係が深く,本件技術情報を同人から入手したと考えるのが自然であること,本件製品2に原告製品名・型番と同じ「GOMICGMR-8000」という表記がなされていることからすると,被告太陽工業らが,本件技術情報を取得し,本件製品2を製造するに当たり本件技術情報を使用したことは明らかである。(3)

各被告らの不正競争行為

各被告らの不正競争行為を整理すると以下のとおりである。

被告銀座吉田の不正競争行為

(ア)不競法2条1項4号該当の不正競争行為
被告銀座吉田は,他の被告らと共謀し,P1に原告の本件技術情報を不正に取得させ,その情報を被告太陽工業らに開示して,本件製品1,2を製造させており,かかる行為は不競法2条1項4号の不正競争行為に該当する。
(イ)不競法2条1項5号該当の不正競争行為
仮に本件技術情報の不正取得についてP1との共謀がなかったとしても,P1が原告の本件技術情報を不正取得した後に,被告銀座吉田が,他の被告らと,本件技術情報を使用してゴミ貯溜機を製造する旨の共謀をし,P1の不正取得行為について悪意で本件技術情報を取得し,本件製品1,2を被告太陽工業らをして製造させ
た場合は,かかる製造行為は不競法2条1項5号の不正競争行為に該当する。(ウ)不競法2条1項6号該当の不正競争行為
さらに,仮に本件技術情報をP1から取得した当時,不正取得が介在したことについて善意であったとしても,遅くとも原告から本件事件(平成27年(ワ)第8600号,
8602号)の訴状が被告銀座吉田に送達された時点において,被告銀座吉
田は本件技術情報につき不正取得行為が介在したことを知ったのであるから,それ以後にP1及び被告太陽工業らと本件製品1,2の製造を継続する旨の共謀をし,
本件技術情報を使用して本件製品1,2を製造した行為は,不競法2条1項6号の不正競争行為に該当する。
(エ)不競法2条1項8号該当の不正競争行為
仮にP1が本件技術情報を保有者である原告から開示されていた場合であっても,他の被告らと共謀し,P1から不正に開示された本件技術情報を使用し,被告太陽工業らに本件製品1,2の製造を行わせた被告銀座吉田の行為は,不競法2条1項8号の不正競争行為に該当する。
(オ)不競法2条1項9号該当の不正競争行為
加えてさらに,仮に本件技術情報をP1から取得した当時,不正開示行為が介在
したことについて善意であったとしても,遅くとも原告から本件事件(平成27年(ワ)第8600号,8602号)の訴状が被告銀座吉田に送達された時点において,被告銀座吉田は本件技術情報につき不正開示行為が介在したことを知ったのであるから,それ以後にP1及び被告太陽工業らと本件製品1,2の製造を継続する旨の共謀をし,本件技術情報を使用して本件製品1,2を製造した行為は,不競法
2条1項9号の不正競争行為に該当する。

P1の不正競争行為

被告太陽工業らは,本件技術情報を取得し,これを使用して本件製品1,2を製造している。
そして,
本件技術情報は,
原告から不正に取得又は原告から開示を受けたP1が,
被告太陽工業らや被告銀座吉田に不正に開示したものである。
このようにP1は,原告の本件技術情報を不正に取得してこれを他の被告らに不正に開示し,
又は原告から開示を受けた本件技術情報を他の被告らに不正に開示し,被告太陽工業らに本件製品1,2を製造させており,かかる行為は不競法2条1項4号又は7号の不正競争行為に該当する。


被告太陽工業及び被告サン・ブリッド(被告太陽工業ら)の不正競争行為
(ア)不競法2条1項4号該当の不正競争行為

被告太陽工業らは,他の被告らと共謀し,P1が原告の本件技術情報を不正に取得し,被告太陽工業らがその開示を受け,本件製品1,2を製造しており,かかる行為は不競法2条1項4号の不正競争行為に該当する。
(イ)不競法2条1項5号該当の不正競争行為
仮にP1が原告の本件技術情報を不正取得した後に,被告太陽工業らが,他の被告らと共謀し,P1の不正取得行為について悪意で本件技術情報を取得し,本件製品1,2を製造していた場合は,かかる製造行為は不競法2条1項5号の不正競争行為に該当する。
(ウ)不競法2条1項6号該当の不正競争行為

さらに,仮に本件技術情報を取得した当時,不正取得が介在したことについて善意であったとしても,遅くとも原告から本件事件(平成27年(ワ)第6557号,6781号)の訴状が被告太陽工業に送達された時点において,被告太陽工業らは本件技術情報につき不正取得行為が介在したことを知ったのであるから,それ以後に他の被告らと本件製品1,2の製造を継続する旨の共謀をし,本件技術情報を使
用して本件製品1,2を製造した行為は,不競法2条1項6号の不正競争行為に該当する。
(エ)不競法2条1項8号該当の不正競争行為
仮にP1が本件技術情報を原告から開示されていた場合であっても,他の被告らと共謀して,P1から本件技術情報を不正な開示を受け,本件製品1,2を製造し
た行為は,不競法2条1項8号の不正競争行為に該当する。
さらに,仮に被告太陽工業らが上記の共謀に関わっていなかったとしても,本件技術情報について不正取得行為又は不正開示行為が介在したことについて,悪意又は重過失で知らないで,本件技術情報を取得し,これを使用して本件製品1,2を製造しており,かかる行為は不競法2条1項5号又は8号の不正競争行為に該当す
る。
(オ)不競法2条1項9号該当の不正競争行為

仮に,本件技術情報取得時に,不正取得行為又は不正開示行為が介在したことについて善意・無重過失であっても,その後,不正取得行為又は不正開示行為が介在したことを知って,本件製品1,2を製造したことから,かかる行為は不競法2条1項6号又は9号の不正競争行為に該当する。

P2の不正競争行為

(ア)不競法2条1項4号該当の不正競争行為
P2はP1が原告を退職するに当たり,その余の被告らと共謀し,本件技術情報を不正に取得し,その取得した本件技術密情報を用いて本件製品1,2の製造を行っているから,P2の行為は,不競法2条1項4号の不正競争行為に該当する。(イ)不競法2条1項5号該当の不正競争行為
仮にP2と他の被告らとの間で本件技術情報の不正取得につき共謀が認められないとしても,P2はP1が原告の工場長であったことを知っており,P1が原告を退職した後に被告らに本件秘密情報を開示することはP1の不正取得行為が介するものであることを知っていたか,少なくとも知らなかったことに重大な過失があっ
たといえる。
そして,P2はP1から本件技術情報を取得し,使用して本件製品1,2の製造を行っているため,P2の行為は不競法2条1項5号の不正競争行為に該当する。(ウ)不競法2条1項8号該当の不正競争行為
また仮に,P1が本件技術情報を保有者である原告から開示されていたとして不
正取得が認められない場合であっても,P1が退職後にP2を含む被告らに本件技術情報を開示してゴミ貯溜機の製造を行わせしめた行為は,保有者である原告に損害を加える目的があったか又はP2が不正の利益を得る目的があったことは明らかであり,このP1の不正開示行為につきP2は知っていたか少なくとも重大な過失により知らなかったといえるから,P1から本件技術情報を取得し,この取得した
本件技術情報を用いて本件製品1,2の製造をした被告らの行為は不競法2条1項8号の不正競争行為に該当する。

(被告太陽工業の主張)
原告の主張はすべて否認ないし争う。
被告太陽工業は,
原告主張に係る伊達工場出荷物件の製造に関与していないから,
本件に関係しない。
(被告サン・ブリッド及びP2の主張)
原告の主張はすべて否認ないし争う。
被告サン・ブリッドは,伊達工場において回転式タンクを製造したことがあり,それが原告主張に係る伊達工場で製造されていたゴミ貯溜機の可能性があるが,同一であるかは不知である。また,そのゴミ貯溜機が中国成都に設置されたという本
件製品1,2と同一であるかは確認できない。
なお,被告サン・ブリッドは,その製造する回転式タンクに「SUN・BRID」との銘板を付していないから,中国成都に設置されたという本件製品1,2にその銘板があったことは,同製品と被告サン・ブリッドの製造物が同一であるということにならない。

(P1の主張)

原告の主張はすべて否認ないし争う。

P1は原告主張に係るゴミ貯溜機の製造に関与していない。そもそも原告主張に係る伊達工場で製造されていたゴミ貯溜機と中国成都に設置された本件製品1,2の同一性も不明である。

原告が入手したメールに基づいてする主張については以下のとおりである。
(ア)ゴミ貯溜機のメンテナンスに関するメールについて
原告が本件製品1のメンテナンスに関与したと主張する点については,メンテナンスの対象とする機械と原告が本件製品1とするものとの同一性は不明であるが,P1がその機械の製造に関与したことはない。なお,P1が個人として関与しないものの,サキダスにおいて成都の太古里に設置されたゴミ貯溜機のメンテナンスに関与していることは認める。

問題とするメールは,サキダスが,平成29年,成都の太古里に設置されているというゴミ貯溜機について,JCS北京の担当者であったP5から,メンテナンスに関する依頼を受けたものである。メール中,「銀座吉田御中」とあるのはこれまでの慣例で記載したものであり,サキダスとして,被告銀座吉田から依頼を受けたという認識はない。
(イ)三厘屯及び王府井の機械について
サキダスが三厘屯のゴミ貯溜機の据え付けと王府井のゴミ貯溜機の製造を請け負ったことは認めるが,P1が個人として関与していることは否認する。三厘屯及び王府井のゴミ貯溜機は,原告製品の模倣品ではない。

また,三厘屯のゴミ貯溜機の据え付けは製造に当たらないし,ゴミ貯溜機は公知の技術に基づいて製造できるものであるから,サキダスによる王府井のゴミ貯溜機の製造についても,原告の権利を侵害するものではない。
(ウ)シンガポールの商談について
原告が指摘するゴミ貯溜機は,原告製品の模造品でないし,公知の技術に基づい
て製造できるものであって原告の権利を侵害するものではない。
(被告銀座吉田の主張)

原告の主張はすべて否認ないし争う。

原告主張に係る中国成都の案件についての商談は破談となっており,被告銀座吉田は原告主張に係るゴミ貯溜機の製造に関与していないし,中国成都に設置されている本件製品1,2についても関与していない。そもそも原告主張に係る伊達工場で製造されていたゴミ貯溜機と中国成都に設置された本件製品1,2の同一性も不明である。

原告が入手した成都「太古里」に設置されているというゴミ貯溜機のメンテ
ナンスに関するメール(乙73)に基づいてする主張については以下のとおりである。
(ア)ゴミ貯溜機のメンテナンスに関するメールについて

平成29年に入り,「太古里」
成都
に設置されているというゴミ貯溜機について,
設置先から原告の現地法人であるJCS北京あてにメンテナンスに関する依頼があった。JCS北京は,既に原告と紛争中であったことから,原告には連絡せずゴミ貯溜機のメンテナンスについてノウハウを有しているサキダスに依頼して進めることにした。
サキダス代表者であるP1は,従前の経緯から「銀座吉田御中」と記載したかもしれないが,その内容からすれば,被告銀座吉田が関わっているわけではない。すなわち,JCS北京は,以前は中国におけるゴミックの販売窓口であり,その実績があることをもって「マニュファクチャ」と表現したにすぎない。JCS北京
が当該機会に製造・販売者であれば,メール文中にあるように入札に参加するということにならず,このことが,JCS北京が当該機械の製造等に関与していないことの証左である。
なお,JCS北京は,現在は被告銀座吉田の代表者が株主ではないし,執行役員でもなく,被告銀座吉田と実態として同一の関係にはない。

また,メール添付のエクセルファイルに記載されている交換部品の番号が,原告製品で使用されている部品の図面番号と同一であること等を指摘しているが,原告は,何ら秘密保持義務を負わせることなく,ゴミックの図面や仕様表等を共同で製造・販売・輸出等を行っていた被告銀座吉田やJCS北京はもちろんのこと,取引先やメンテナンスを担当する業者にも交付していたのであるから,ゴミ貯溜機のメ
ンテナンスに当たり,過去の交換部品表を用いること等は何ら妨げられるものではない。
(イ)三厘屯の機械について
原告は,中国三厘屯のゴミ処分場に「原告製品の模倣品」が設置されており,これも被告銀座吉田の依頼によりサキダスが設置したものであると主張するが,何ら

根拠のない憶測に基づくものであり,被告銀座吉田はその機械の設置・販売には関与していない。

(ウ)王府井の機械について
原告の指摘するメール(甲77,甲78)は,株式会社エド(以下「エド」という。)とサキダスとの間のやり取りであることは客観的に明らかである。被告銀座吉田とエドはそれぞれ別個の法人であり,実態として同一ではない。したがって,王府井の機械に関わる上記メールのやり取り及びその内容に関して被告銀座吉田は関与していない。
(エ)シンガポールの商談について
原告が指摘するシンガポールの商談についても,
被告銀座吉田は関与していない。
3
争点(3)(被告らの不正競争行為により原告の受けた損害の額)
(原告の主張)
被告らは,共同して本件技術情報を用いて,被告製品1,2を製造して販売し利益を受けたが,その利益の額は,同種のゴミ貯溜機の取引実績から推定して被告製品1につき3173万1213円,被告製品2につき1269万2485円の合計4442万3698円である。

したがって,
不競法5条2項により,
同額が原告の受けた損害の額と推定される。
(被告らの主張)
争う。
4
争点(4)(P1の秘密保持義務違反の成否)

(原告の主張)
(1)P1は,平成26年9月30日まで原告の取締役として福島工場の工場長の職にあった者であるが,同日,原告を退職し,退職金700万円を支給された。(2)P1は原告との間で,原告退職時に,本件確認書に基づく合意をした。この確認書においては,第1条において秘密情報に関する資料・データ等一切につき原本・コピー・関係資料を原告に返還しP1は保有しないこと,第2条においてP1
の退職後においても秘密情報の開示・漏洩・使用をしないこと,第3条で退職後5年間は競業避止義務を遵守すること,第6条で上記条項に違反したときは退職金7
00万円を返金するとともに,同額の違約金700万円の合計1400万円を支払うことを合意した。
(3)しかし,P1は,本件技術情報に係るデータを保有し,被告太陽工業及び被告銀座吉田に開示して使用させ,また平成27年3月21日頃から同月22日頃にかけて,原告の製造するゴミ貯溜機を導入している香港企業に対して,原告と競業関係にある被告銀座吉田に協力してその関係者と共に訪問し,原告に関する虚偽の情報を告げ,今後のゴミ貯溜機の販売及びメンテナンスは被告銀座吉田が行う旨申し入れるなど,上記合意に違反した。
(4)したがって,P1が原告に対し,本件確認書に基づく合意違反を理由として
約定損害賠償金1400万円の支払義務を負う。
(P1の主張)
(1)P1が平成26年9月30日まで原告会社の取締役であったこと,退職時に700万円の支給を受けたことは認めるが,退職時は開発部長となっており,福島工場の工場長ではなかった。

(2)原告の主張(2)は認める。ただし,合意内容の有効性は争う。(3)原告の主張(3)はいずれも否認する。
P1は,原告の香港における拠点企業であるJCSから,香港に設置されている機械の修理の必要性について確認してほしい旨の依頼を受け,平成27年3月22日に点検を行った。P1は,この機械が,従前これを製造した原告から被告銀座吉
田が仕入れて,香港の納入先に設置した機械であることは認識しているが,上記点検については何ら問題がないと認識していた。
なお,P1は上記機械の納入先企業の所在地は訪れておらず,機械が設置されている現場を訪問したにとどまる。また,P1は,被告銀座吉田のゴミ貯溜機の販売及びメンテナンスについて申入れをする立場にもない。

したがって,「原告に関する虚偽の情報を告げ,今後のゴミ貯溜機のメンテナンスは訴外会社が行う旨申し入れ」ていない。原告が,何をもってそのような主張を
するのか全く不明である。
5
争点(5)(被告銀座吉田による商標権侵害等の成否)

(原告の主張)
(1)原告は,35年以上もの間,継続してゴミ貯溜機について「GOMIC」という商標を使用している。そして,原告のこの「GOMIC」の商標を付したゴミ貯溜機は日本国内で約1400台販売されている。
このように長期間に渡り使用が継続され,またゴミ貯溜機という特殊な機械について1400台の販売実績があることから,「GOMIC」は原告の周知商品等表示に該当する。

そして,少なくとも被告銀座吉田は別紙被告標章目録記載の「GOMIC」の標章を付したゴミ貯溜機を中国に向けて輸出し,その結果,原告の商品と混同を生じさせているが,この行為は,不競法2条1項1号の不正競争行為に該当する。(2)また原告は,原告商標権の商標権者であり,その登録商標は,別紙原告商標目録記載のとおりである。

被告銀座吉田は,香港,シンガポール,中国にて「GOMIC」の文字からなる商標につきゴミ貯溜機等を指定商品として商標登録を受けている(なお,この商標登録は原告の商標につき剽窃的に被告が出願を行ったものである。)。そのほか,被告銀座吉田はゴミ貯溜機2台(本件製品1,2)について別紙被告標章目録記載の「GOMIC」の標章を付して海外(中国成都)に輸出したが,ゴミ
貯溜機は,原告商標権の指定商品である廃棄物貯溜搬送装置,廃棄物圧縮装置と同一ないし類似の商品であり,被告の行為は,原告商標権を侵害するものである。(3)被告銀座吉田の上記不正競争行為により原告の受けた経済的損害は1000万円を下らないから,同額の損害賠償を請求する。
また被告銀座吉田が海外に登録商標を保有していること,現在も被告太陽工業と
共同してゴミ貯溜機の製造を行っていて今後もゴミ貯溜機を製造し,譲渡及び輸出に当たり「GOMIC」の標章を使用する可能性が高いことから,不競法3条1項
又は原告商標権に基づき,その使用の差止めを求める。
(被告銀座吉田の主張)
(1)原告の主張(1)は争う。
(2)原告の主張(2)のうち,被告銀座吉田が中国にて「GOMIC」の文字からなる商標につき商標登録を受けている事実は認めるが,これは原告の先代社長の了解を得て取得したものである。
(3)原告の主張(3)は否認ないし争う。
第4
1
当裁判所の判断
争点(1)(本件技術情報は不競法上の営業秘密であるか。)について
(1)原告は,本件技術情報が,不競法上の営業秘密である旨主張するところ,不競法上の「営業秘密」といえるためには,秘密として管理されている(秘密管理性)生産方法,
販売方法その他の事業活動に有用な技術上又は営業上の情報であって(有
用性),公然と知られていない(非公知性)ことが必要である(同法2条6項)。(2)原告は,上記のうち秘密管理性の点につき,本件技術情報は,電子データと
電子データを印刷した紙ベースで保管され,それらの情報にアクセスできる者を福島工場の従業員18人と役員ほかの限られた原告の従業員に限り,また就業規則に従業員の秘密保持義務を定めるほか,秘密保持の誓約書の提出を受けていた旨主張するとともに,それらの従業員は,それらの本件技術情報が原告にとって重要な技術情報であり,持ち出したり,漏洩したりしてはいけない秘密の情報であることは
十分に認識できていたから,営業秘密として管理されていたと主張する。この点,証拠(甲31の1ないし18,甲32,甲33,甲36)によれば,原告主張の情報の管理状況や,就業規則の定めや,従業員から誓約書を徴求している事実が認められ,またその対象の情報が,原告において重要な技術情報であると認識できるとの点も,そのとおりということができる。

(3)しかしながら,原告の取締役であったP1及び原告の代理店としてその販売のみならず海外でのメンテナンスを担当していた被告銀座吉田は,原告が,何ら秘
密保持義務を負わせることなく,また後日の返還を求めることもなく,原告製品の図面等,製品に関わる情報を,取引先,製造下請業者,メンテナンスを担当する業者にも交付していたことを主張しているところ,ゴミ貯溜機の設計図面等の管理に関して以下のような事実が認められる。

原告が営業秘密と主張する図面の中には,発行者を「日本クリーンシステム
(株)福島工場」として,日付け入りの「発行」とするスタンプと「製作用」とのスタンプが押されているもの(別紙営業秘密目録記載1の機械図面中,2の八角部分の図面に含まれる甲24の2,4のドラム内の分割羽根部分の図面に含まれる甲26の1ないし11,甲27の2ないし4,5の蓋ジョイント部分の図面に含まれる甲28の3,4,5,7)が存し,これら図面が部品を製造する業者に交付されていたことがうかがわれる。

被告らが本件製品1の製造に関わっていたことを示すものとして原告が証拠
として提出したメール(甲73)の記載内容によれば,原告製品のメンテナンスのためには,メンテナンス業者において,必要な部品を図面で第三者に請け負わせて作成させる場合もあることが認められる。そうすると原告は,過去に被告銀座吉田に対して海外での原告製品の設置やメンテナンスをさせていたというのであるから,メンテナンスを担当していた被告銀座吉田に対し,それらの作業に必要な図面等を交付していたはずと考えられる(なお,被告銀座吉田は,第11回弁論準備手続期日において陳述した被告銀座吉田準備書面(8)において,本件製品1,2の
製造に関与したことを推認させる事情となり得る過去販売した原告製品の図面等を保有していることを自認している。)。
また,同メールによれば,中国成都におけるゴミ貯溜機の購入設置者は,メンテナンス業者を競争入札により選ぼうとしていることがうかがえるが,このことからは,ゴミ貯溜機を購入した者は,業者を任意に選んで,上記内容のメンテナンスを
実施することが可能であるということ,すなわち,ゴミ貯溜機を購入した者は,メンテナンスに必要な図面類等を原告から交付されていたことを推認することができ
る。

原告は,過去に被告サン・ブリッドに対して原告製品の部品の一部を供給さ
せていた(甲21)というのであるから,それに伴い被告サン・ブリッドに対し,少なくとも当該部品を製造するに必要な設計図を交付していたことが認められる。(4)このように,原告が本件において営業秘密として主張する本件技術情報と同種の技術情報であると考えられる原告製品の図面等が被告銀座吉田はもとより,原告製品購入者,あるいは部品製造委託先に交付されていた事実が認められることに加え,そもそも原告は,P1及び被告銀座吉田による秘密管理性を否定する事実関係の主張について全く沈黙しており,その指摘に係る図面等の技術情報の外部提供
について,営業秘密の管理上,いかなる配慮をしていたか一切明らかにしていないことも併せ考慮すると,
原告のゴミ貯溜機を製造するに必要な設計図面等の多くは,
P1及び被告銀座吉田が主張するように,特段の留保もなく購入者はもとより取引関係者に交付されていたことを認めるのが相当である。
そうすると,別紙営業秘密目録記載1,3の技術情報そのものが,上記図面等に
含まれていると的確に認めるに足りる証拠はないものの,かといって,これら技術情報についてのみ他の同種技術情報と異なる特別の管理がされていたと認めるに足りる証拠もない以上,同様の管理状況であったと推認するほかなく,したがって,これでは,上記技術情報が不競法にいう「秘密として管理されていた」ということはできないということになる。

(5)なお,原告は,営業秘密の管理の程度が会社の規模による点や,管理されていることの認識可能性で足りるように主張しているので,その点についても検討するが,確かに一般論としては原告の指摘は当を得ているものということができる。そして,
本件においては,ゴミ貯溜機の設計図等は第三者に交付されたとしても,これらの者は,原告と一定の契約関係にある者に限られているということが考慮さ
れる必要がある。
しかし,図面等の交付を受ける者がその交付を受ける際に秘密保持義務は課され
ていた事実は認められないし,また,証拠(丁1ないし丁18(枝番号があるものは枝番号を含む。))によれば,ゴミ貯溜機の基本構造自体は公知の技術であると認められるほか,原告が原告製品の営業秘密の対象とする原告製品のドラム部分,八角部分,シール部分,ドラム内の分割羽根部分,蓋ジョイント部分も,その詳細な設計情報が原告製品固有の情報であるといえるとしても,技術的側面においては公知の技術といえるものばかりであると認められることからすると,特段の留保なく図面等の交付を受けた者は,それが当該製品の製造のために必要な図面であると認識できたとしても,当該図面等が原告において不競法にいう営業秘密として管理されているものと認識可能であったとはおよそ認められない。

したがって,図面等の交付を受けた第三者の原告との関係等を考慮しても,やはり別紙営業秘密目録記載1,3の技術情報をもって不競法上の営業秘密であるということはできない。
(6)他方,別紙営業秘密目録記載2のPLC制御プログラムは,上記の図面関係の資料のように取引関係者に紙媒体により図面として交付されていたとは考えにく
いが,そもそも同プログラムは,証拠(甲29)及び弁論の全趣旨によれば,原告製品GMR-8000とGMR-20000のPLC(programmablelogiccontroller)を制御するため,三菱電機株式会社のシーケンサプログラミングソフトウェア「GXDeveloper」
により作成されたプログラム情報であり,原告製品の動作を制御する機能を担っているものと認められるから,ゴミ貯溜機の引渡しに伴って顧客に引き渡
されるものと認められる。
そして,これが機械の制御プログラムである以上,購入者は,不具合が生じた場合に備えて,そのバックアップをとっておくことも予定されるはずであるし,またメンテナンスを担当する業者においても,そのプログラム情報にアクセスできる必要があるものと考えられるから,これでは原告の営業秘密として管理されていると
はいえない(なお,証拠(甲65の1ないし5)により認められる本件製品1について原告がしたPLC制御プログラムの読み出し保存作業からは,原告製品であっ
ても,その読み出し保存作業は容易であると認められるし,またその作業内容自体は,購入者が,PLC制御プログラムに不具合が生じた場合に備えてバックアップをとっておく作業と何ら変わらないものと見受けられる。)。
そうすると,原告製品に類似したゴミ貯溜機を製造し,その制御プログラムとするために,上記プログラムをコピーして利用することは,他の法律構成による場合をさて置き,少なくとも不競法上の営業秘密の利用の問題は生じない。(7)したがって,本件で問題とされている本件製品1,2は,原告製品の設計図面等が用いられて製造され,またそのPLC制御プログラムは,原告製品のそれをコピーしたものと認められるものの,そもそも原告主張に係る本件技術情報が不競
法2条6項の要件を充足するに足りる秘密管理がされていたものと認められないから,原告主張に係る別紙営業秘密目録記載の本件技術情報をもって,同法上の営業秘密ということはできない(なお,本件紛争は,原告が被告銀座吉田との取引を打ち切ったことに始まっているが,原告は,本件訴訟提起前,被告銀座吉田が原告製品を機械目録により具体的に特定して,その独占的営業・販売権を有している旨主
張した仮処分申立事件の答弁書
(甲10の2)
において,
被告銀座吉田において
「ゴ
ミック」を自ら又は第三者をして製造することは可能であり,納入先を見つけて自らで納入できることも容易であると主張していた(上記第2の1(2)エ)のであるか
ら,その主張内容と本件訴訟を提起してする原告製品に関わる営業秘密についての一連の主張との間には矛盾がある。)。

2
争点(2)(各被告の不正競争行為の成否),(3)(被告らの不正競争行為によ
り原告の受けた損害の額)について
上記1で認定した原告における原告製品の図面等の管理状況に加え,上記第2の1(2)の本件の経緯からすると,本件製品1,2は,被告銀座吉田及びP1が主張するように取引関係者に交付された原告製品の図面等を利用して製造されたものであることが容易に推認でき,
また本件において,
被告らが主張事実を否認するだけで,
関係しているはずの具体的事実を一切明らかにしようとしないことも併せ考える
と,被告らが直接でなくとも,少なくとも間接的に,その製造に関与したことも認められないではないが,上記1で判示したとおり,原告主張に係る別紙営業秘密目録記載の本件技術情報をもって不競法にいう「営業秘密」とは認められないから,原告があらゆる場合を想定して多段階にわたって主張する被告らの不正競争行為はいずれも認められない。
したがって,被告らの不正競争行為を前提とする原告の被告らに対する差止請求及び廃棄請求並びに損害賠償請求はすべて理由がない。
3
争点(4)(P1の秘密保持義務違反の成否)について

(1)原告主張の本件確認書に基づく合意違反のうち,秘密保持義務違反をいう点は,P1が,原告がいうところの秘密を持ち出し開示した事実関係を認めるに足りる証拠はない。
原告は,被告らのした行為をさまざまに推測し,まず被告銀座吉田が,他の被告らと共謀し,P1に原告の本件技術情報を不正に取得させて,その技術情報を利用しているという主張をしているが,そもそもP1が原告を退職したのは,原告が被
告銀座吉田に対して取引打ち切りの意思表示をした平成27年1月30日の4か月も前であって,両者が正常に取引をしていた時期である(被告銀座吉田は,P1の原告退職後の平成26年10月20日に,原告に対して中国成都の取引について受注した連絡もしている。)。
本件の経緯が,被告銀座吉田が原告との取引を打ち切って自ら製造する計画のも
と,P1に働きかけて技術情報を持ち出させて取得したというのなら,原告のする推測も理解できるが,そもそも本件において被告銀座吉田は原告から取引を一方的に打ち切られた立場なのであり,またP1は,その時点で既に原告を退職して原告内の技術情報にアクセスできる立場ではなかったのであるから,P1が原告の技術情報を持ち出したという原告の推測に根拠がないことは,この点で明らかである。
なお,本件製品1,2は,伊達工場で製造されたものと認定するのが合理的であるし,その製造には原告主張に係る原告製品の技術情報が使用されていると考えら
れるが,原告主張に係る本件技術情報の管理状況は上記1で認定したとおりであって営業秘密とは認められないから,上記製造の事実から,P1による原告の主張する営業秘密の持ち出しないし開示は推認することはできない。
(2)また原告主張の本件確認書に基づく合意違反のうち,競業避止義務違反をいう点は,原告が競業避止義務違反と主張する事実を認めるに足りる証拠はない(なお,原告主張の根拠である本件確認書第3条1項は,具体的行為を対象とするものであるが,「前条を遵守するため」,すなわち第2条に定める秘密保持義務を遵守するための競業避止の合意として有効と解されるから,秘密保持義務違反が問題とならない本件においては,第3条1項の義務違反は問題にならない。他方,同条2
項は,行為を特定せず,直接間接を問わず,しかも地域,期間も限定せず,代償措置もないのに無限定に退職取締役に一般的な競業避止義務を負わせようとする合意であるので,公序良俗に反し無効である。)。
(3)したがって,原告のP1に対する本件確認書に基づく合意違反を理由とする請求は,その判断に及ぶまでもなく理由がない。

4
争点(5)(被告銀座吉田による商標権侵害等の成否)について

(1)原告は,商標権を有すると主張する「GOMIC」の表示を周知商品等表示とも主張するが,同表示を付した原告のゴミ貯溜機の販売期間及び販売台数を主張するだけで,それ以外の宣伝広告の状況や当該製品の市場及び需要者などの取引の実情を全く主張立証していないから,主張に係る表示が周知性を獲得していると認めることはできない。
(2)また,原告は,原告商標権の侵害も主張するが,被告銀座吉田が香港で同じ表示につき商標権を取得していることは日本における原告商標権の侵害になるわけではなく,また被告銀座吉田が製造販売に関与したと主張される中国成都に設置されている本件製品1,2の銘板中の型番部分に別紙被告標章目録記載の標章である
「GOMIC」との表示が付されていること(甲22の32,甲47の1)についても,これが被告銀座吉田によってされたことを認めるに足りる証拠はないことは
もとより,そもそも,この銘板が日本国内で付された事実を認めるに足りる証拠もない以上,このことから日本国内における原告商標権の侵害を認めることはできない。
(3)したがって,原告の被告銀座吉田に対する別紙被告標章目録記載の標章の使用に関する請求は,その余の判断に及ぶまでもなく理由がない。
5
まとめ

以上のとおり,原告の請求はいずれも理由がないから棄却することとし,訴訟費用の負担につき民事訴訟法61条を適用して主文のとおり判決する。
大阪地方裁判所第21民事部

裁判長裁判官
森崎英二野上誠一
裁判官

裁判官
大川潤子
(別紙)

営業秘密目録
原告の製造するゴミ圧縮・貯溜装置に関する以下のもの。
1
上記装置の機械図面
別紙「機械図面目録」記載の各図面

2
上記装置のPLC制御プログラム
別紙「制御プログラム目録」記載のプログラム

3
上記装置の製造手順
別紙「手順書目録」記載の手順

(別紙)
機械図面目録

1
ドラム部分の図面

(甲13の7,8,15,16,甲23の1,2)

2
八角部分(隔壁版)の図面

(甲20の20ないし22,甲24の1ないし3)
3
シール部分の図面

(甲25の1ないし5)

4
ドラム内の分割羽根部分の図面

(甲20の3,
7ないし11,
14,
甲26の1ないし11,甲27の1ないし4)

5
蓋ジョイント部分の図面

(甲20の16ないし18,甲28の1ないし7)

(別紙)
制御プログラム目録

PLC(programmablelogiccontroller)を制御するため,三菱電機株式会社のシーケンサプログラミングソフトウェア「GXDeveloper」により作成されたプログラム情報(ラダー図)

(甲29)

(別紙)
手順書目録

1
羽根取付製作手順書(甲30の1)

2
ドラム位置調整製作手順書(甲30の2)

3
サイドローラー取付手順書(甲30の3)

4
GMR立上手順書(甲30の4)

5
GMR仕上手順書(甲30の5ないし甲30の10)

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