判例検索β > 平成29年(わ)第354号
金融商品取引法違反、詐欺被告事件
事件番号平成29(わ)354
事件名金融商品取引法違反,詐欺被告事件
裁判年月日平成30年3月23日
法廷名千葉地方裁判所
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金融商品取引法違反,詐欺被告事件
平成30年3月23日千葉地方裁判所刑事第2部判決

主文
被告人を懲役4年に処する
理由
(罪となるべき事実)
被告人は,私募債である診療報酬債権等流動化債券の発行を業とする特定目的会社であるD社,株式会社E及びF社を実質的に運営・管理する株式会社Cの代表取締役として同社の業務を統括していたものであるが,株式会社Cが実質的に運営・管理するD社等の特定目的会社の発行する前記債券の販売及び他の証券会社が同債券の販売を行うに当たっての助言・指導等を主たる業務とするG証券株式会社の代表取締役として同社の業務を統括していた分離前相被告人A及びG証券の取締役として同人の業務を補佐していたBと共謀の上,D社が「H」と称する診療報酬債権等流動化債券を,株式会社Eが「I」と称する診療報酬債権等流動化債券を,F社が「J」と称する診療報酬債権等流動化債券を,それぞれ販売するに当たり,実際には,前記各債券の裏付資産である診療報酬債権等買取残高が前記各債券の発行済残高に比して過少で,かつ,投資家から得る販売代金の大半を既発行債券の元本償還及び利払いに充てざるを得ず,診療報酬債権等の買取りに充てることができない状態であったのに,その情を秘し,前記各債券の売買代金名目で現金をだまし取ろうと企て,
第1(訴因変更後の平成29年3月7日付け公訴事実)
別紙1(省略)記載のとおり,平成26年12月上旬頃から平成27年9月上旬頃までの間,19回にわたり,東京都品川区(以下省略)株式会社C事務所(当時)において,同社従業員らに,K証券株式会社ほか2社に対し,前記「H」と称する診療報酬債権等流動化債券の裏付資産である診療報酬債権等買取残高を実際よりも過大に計上した内容虚偽の運用実績報告書を郵送の方法で交付させるなどしてその旨虚偽の説明をさせた上,同年1月6日から同年10月頃までの間,28回にわたり,京都府(以下省略)L方ほか179か所において,情を知らないK証券ほか3社の従業員らに,前記Lほか214名に対し,「Hは,日本国内の保険医療機関等から真正譲渡により,発行体(D社)が診療報酬債権等を取得し,それらを裏付資産として発行される債券です」「魅力

安全性の高い商品・デフォルトリスクを低

減」などと記載され,同債券が公的機関を債務者とする診療報酬債権等を裏付資産とする安全性の高い金融商品である旨内容とする「診療報酬債権等流動化債券の提案書兼契約締結前交付書面兼転売制限等告知書」を交付させるとともに,その旨虚偽の説明をさせて,前記Lらにその旨誤信させ,よって,同年1月23日から同年10月28日までの間,343回にわたり,D社との間で販売代理契約を締結しているK証券ほか3社の顧客勘定口座から受入金勘定口座に振替入金させる方法により,前記Lほか214名から診療報酬債権等流動化債券購入代金として合計27億2400万円の交付を受け,
第2(訴因変更後の平成29年3月28日付け公訴事実第1)
別紙2(省略)記載のとおり,平成26年12月上旬頃から平成27年8月上旬頃までの間,11回にわたり,前記株式会社C事務所において,同社従業員らに,M証券株式会社ほか2社に対し,前記「H」と称する診療報酬債権等流動化債券の裏付資産である診療報酬債権等買取残高を実際よりも過大に計上した内容虚偽の運用実績報告書を郵送の方法で交付させるなどしてその旨虚偽の説明をさせた上,平成26年12月16日から平成27年9月16日までの間,12回にわたり,愛知県豊川市f町g番地M証券N営業所ほか100か所において,情を知らないM証券ほか3社の従業員らに,Oほか124名に対し,「Hは,日本国内の保険医療機関等から真正譲渡により,発行体(D社)が診療報酬債権等を取得し,それらを裏付資産として発行される債券です」「魅力

安全性の高い商品・デフォルトリスクを

低減」などと記載され,同債券が公的機関を債務者とする診療報酬債権等を裏付資産とする安全性の高い金融商品である旨内容とする「診療報酬債権等流動化債券の提案書兼契約締結前交付書面兼転売制限等告知書」を交付させるとともに,その旨虚偽の説明をさせて,前記Oらにその旨誤信させ,よって,同年1月15日から同年9月25日までの間,205回にわたり,D社との間で販売代理契約を締結しているM証券ほか3社の顧客勘定口座から受入金勘定口座に振替入金させる方法により,前記Oほか124名から診療報酬債権等流動化債券購入代金として合計9億4000万円の交付を受け,
第3(訴因変更後の平成29年3月28日付け公訴事実第2)
別紙3(省略)記載のとおり,平成26年12月上旬頃から平成27年9月上旬頃までの間,27回にわたり,前記株式会社C事務所において,同社従業員らに,P証券株式会社ほか2社に対し,前記「I」と称する診療報酬債権等流動化債券の裏付資産である診療報酬債権等買取残高を実際よりも過大に計上した内容虚偽の運用実績報告書を郵送の方法で交付させるなどしてその旨虚偽の説明をさせた上,同年1月5日から同年10月27日までの間,27回にわたり,那覇市(以下省略)P証券本店ほか73か所において,情を知らないP証券ほか2社の従業員らに,Qほか89名に対し,「Iは,日本国内の保険医療機関から真正譲渡により,発行体(株式会社E)が診療報酬債権等を取得し,それらを裏付資産として発行される債券です」「魅力

安全性の高い商品・デフォルトリスクを低減」などと記載され,

同債券が公的機関を債務者とする診療報酬債権等を裏付資産とする安全性の高い金融商品である旨内容とする「診療報酬債権等流動化債券の提案書兼契約締結前交付書面兼転売制限等告知書」を交付させるとともに,その旨虚偽の説明をさせて,前記Qらにその旨誤信させ,よって,同年1月9日から同年10月29日までの間,147回にわたり,株式会社Eとの間で販売代理契約を締結しているP証券ほか2社の顧客勘定口座から受入金勘定口座に振替入金させる方法により,前記Qほか89名から診療報酬債権等流動化債券購入代金として合計9億4800万円の交付を受け,
第4(訴因変更後の平成29年3月28日付け公訴事実第3)
別紙4(省略)記載のとおり,平成26年12月上旬頃から平成27年9月上旬頃までの間,30回にわたり,前記株式会社C事務所において,同社従業員らに,M証券ほか2社に対し,前記「J」と称する診療報酬債権等流動化債券の裏付資産である診療報酬債権等買取残高を実際よりも過大に計上した内容虚偽の運用実績報告書を郵送の方法で交付させるなどしてその旨虚偽の説明をさせた上,平成26年12月8日から平成27年10月頃までの間,40回にわたり,愛知県田原市(以下省略)
R方ほか125か所において,
情を知らないM証券ほか3社の従業員らに,
前記Rほか147名に対し,「Jは,保険医療機関及び介護事業者から真正譲渡により,発行体(F社)が診療報酬債権等を取得し,それらを裏付資産として発行される債券です」「魅力

安全性の高い商品・デフォルトリスクを低減」などと記載

され,同債券が公的機関を債務者とする診療報酬債権等を裏付資産とする安全性の高い金融商品である旨内容とする「診療報酬債権等流動化債券の提案書兼契約締結前交付書面兼転売制限等告知書」を交付させるとともに,その旨虚偽の説明をさせて,前記Rらにその旨誤信させ,よって,同年1月5日から同年10月29日までの間,229回にわたり,F社との間で販売代理契約を締結しているM証券ほか3社の顧客勘定口座から受入金勘定口座に振替入金させる方法により,前記Rほか147名から診療報酬債権等流動化債券購入代金として合計10億9400万円の交付を受け,
もって有価証券の取引のため,偽計を用いるとともに,人を欺いて財物を交付させたものである。
(量刑の理由)
本件各犯行の態様は,
判示のとおり,
複数の診療報酬債権等流動化債券
(以下
「レ
セプト債」という。
)の発行体を実質的に運営・管理する株式会社Cの代表者であっ
た被告人が,その販売に関する助言・指導等を行っていた証券会社の関係者であった共犯者と共謀の上,各レセプト債の発行残高に比して,その裏付資産である診療報酬債権等買取残高が過少であるにもかかわらず,これを過大に計上した内容虚偽の運用実績報告書を複数の販売代理証券会社に交付するなどした上,その従業員を介して,顧客に対し,各レセプト債が安全性の高い商品であるかのような内容虚偽の説明をすることにより,有価証券の取引のため偽計を用いるとともに,これらの顧客を欺いて各レセプト債を購入させ,その代金をだまし取るという,職業的で悪質なものである。被告人らが,このような犯行を約9か月間にわたって繰り返した結果,詐欺の被害者は440人余り,被害額は合計57億円余りと莫大な数に上っており,結果も極めて重大である。被告人は,平成25年3月,亡父の跡を継いで株式会社Cの代表取締役に就任した後,遅くとも同年6月までには,未償還のレセプト債の発行済残高と診療報酬債権等買取残高の間に大幅なかい離があることや,運用実績報告書に虚偽の記載がなされていることを認識したにもかかわらず,共犯者の助言を受けるなどして,投資家をだましてレセプト債の発行を継続することを決断し,その後,更に増額発行まで決断して本件各犯行に至ったものであり,本件において中心的な役割を果たしたと評価できる。もっとも,前記のとおり,被告人が亡父の跡を継いだ時点において,既にレセプト債の裏付資産は相当程度毀損されており,被告人は,自身や株式会社Cの利益を図るというよりは,むしろ少しでも多くの償還を可能とし,投資家の損害を極力減らそうとして本件各犯行を行った側面があると評価できる。そうすると,被告人が本件各犯行に至った経緯や動機には一定程度酌むべき点があり,このことは被告人に対する非難の程度を一定程度減ずる事情といえる。
さらに,株式会社Cやその関連会社に加えて,被告人やその親族も破産手続開始決定を受けたことにより,今後被害者に対しては配当という形で一定の被害回復が見込まれること,被告人が,捜査段階から一貫して本件各犯行を認め,捜査に協力するなど深い反省の態度を示していること,当公判廷において,元同僚が被告人の指導監督を誓約し,元同級生が,他の友人らと共に被告人を指導監督する旨誓約した上,被告人を含む友人らで飲食店を共同経営する予定である旨述べるなど,社会復帰に向けた環境が整えられていること,前科前歴がないことなど,被告人にとって有利な一般情状も認められる。
そこで,以上を総合して検討するに,前記のような本件各犯行の態様の悪質性やその結果の重大性,共犯者間における被告人の立場からすれば,被告人の刑事責任は誠に重大であり,実刑は免れないというほかないが,その刑期を定めるに当たっては,前記のような酌むべき事情を十分に考慮し,被告人を主文の刑に処するのを相当と判断した。
よって,主文のとおり判決する。
(求刑

懲役7年)

(裁判長裁判官

松本圭史

裁判官


寛子

裁判官

西
愛礼)

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