判例検索β > 平成30年(わ)第35号
恐喝被告事件
事件番号平成30(わ)35
事件名恐喝被告事件
裁判年月日平成30年3月22日
法廷名福岡地方裁判所  小倉支部
戻る / PDF版
平成30年(わ)第35号

恐喝被告事件
主文
被告人Aを懲役3年に,被告人Bを懲役2年6月にそれぞれ処する。被告人両名に対し,
この裁判が確定した日から5年間それぞれその刑の執行
を猶予する。
理由
(罪となるべき事実)
被告人Aは,建築資材及び建設機械の販売等を業とする株式会社Cの代表取締役,被告人Bは,建築,土木の管理,施工等を業とするD株式会社の代表取締役である。Dは,株式会社Eほか1社が発注した太陽光発電所建設工事(以下「本件工事」という。
)において二次下請けとしてその施工に関わり,
本件工事で使用する生コンクリー
トをCから購入してEに販売していたものであるが,Cに対して生コンクリート代金を支払う資力を欠くに至った。被告人両名は,生コンクリート代金名目で,E代表取締役であるFから現金を脅し取ろうと企て,共謀の上,平成28年6月1日午前9時21分頃,被告人Aが,C従業員を介し,福岡県中間市内の同社事務所において,合計669万9308円の生コンクリート代金の請求書を添付した「お世話になっております。D様より請求書をメールで送って下さいと依頼がありましたので,送信させて頂きます。宜しくお願い致します。
」旨の電子メールをE宛てに送信し,その頃,こ
れを広島市中区内の当時のE本社にいたF(当時49歳)に閲読させ,同人に対し,CがDに販売した生コンクリート代金669万9308円の支払を要求した上,同月2日午後4時21分頃,福岡県内又はその周辺において,被告人Aが,前記要求に難色を示したFに対し,電話で,
「Cに9日もしくは10日の朝一に振り込んでもらわ
ないと困るんですよ。いずれにしても,トラブルが発生しているので,広島の会を通じて話をすることになりますよ。広島の方にも仁義をきっとかないといかんからね。」
などと言い,前記要求に応じなければ,広島県内に本拠を置く指定暴力団Gを利用してFやE従業員等の生命,身体,同社の営業等に危害を加えかねない気勢を示して脅
迫し,その旨Fを畏怖させ,また,同月3日午後1時20分頃,被告人Aが,C従業員を介し,前記同社事務所において,959万8543円の生コンクリート代金の請求書を添付した「お世話になっております。D様より本日,5月分の請求書もメールしておいて下さいとの依頼がありましたので,送信させて頂きます。宜しくお願い致します。旨の電子メールをE宛てに送信し,

その頃,
これを前記E本社にいたFに閲
読させ,同人に対し,CがDに販売した生コンクリート代金959万8543円の支払を要求した上,同月8日午前10時19分頃,愛知県内又はその周辺において,被告人Bが,
E本社付近にいた同社常務取締役Hに対し,
電話で,
「Aが道路を封鎖する
みたいなことを言っていた。
」などと言い,その頃,Hを介してFに,被告人Aの前記
要求どおりに生コンクリート代金を支払わなければ,被告人Aが本件工事現場周辺の道路を封鎖して本件工事を妨害する意向である旨覚知させて脅迫し,その旨Fを畏怖させ,さらに,同月9日午後2時46分頃,福岡県内又はその周辺において,被告人Aが,Cに対し,電話で,
「別のシマの人に頼むとかそういうんじゃないんですよ。私
は頼みませんよ,
そんなんやったら。
もう私そんなんやったら,
今,
あのう,
重機持っ
て行って全部剥いでしまいますから。生コン代だけ払って下さい。そうしないと,私は金をもらわなんでどうのこうのって社長達がスムーズにいってないと,私の気持ちとしてはですね,今までずうっと,いろいろこう地元の人たちも動いてあれしよったですけど,あたしはもう全部あそこ,あのう,本当止めますよ。
」などと言い,前記生
コンクリート代金合計1629万7851円の支払に応じなければ,本件工事関連設備を破壊するなどして本件工事を妨害する旨告知して脅迫し,その旨Fを畏怖させ,よって,同月10日,Fをして,E従業員に指示させて,広島市中区内のI銀行J支店に開設されたE名義の普通預金口座から,福岡県中間市内のK銀行L支店に開設されたC名義の普通預金口座に,現金299万9136円を振込送金させ,これを喝取したものである。
(証拠の標目)略
(法令の適用)略

(量刑の理由)
本件は,被告人両名が共謀し,本来の契約関係を逸脱して経済的利益を得るために,被害者に対し,反社会的勢力の介入,強硬手段による工事の妨害などを告げて現金を脅し取ったという事案であるところ,その手段は悪質で,被害者や被害会社の関係者に与えた不安や恐怖は多大であるし,被害額も多い。被害者の処罰感情が厳しいことも当然である。
主たる実行行為を担った被告人Aはもちろん,被告人Aの経歴等を利用して本件犯行のきっかけを作った被告人Bも,その刑事責任は重大である。被告人両名は会社経営者であり,被告人Aにおいては本件犯行当時市議会議員という,いずれも社会経済を平穏,
公正,
健全なものに保つ責任を負う立場にあったことにも鑑みれば,
本件犯行については強く非難されるべきである。
ところで,被告人らは,Dに対して生コンクリート代金を支払わなかった被害者側にも落ち度があるかのように言うが,被害会社は,Dが被害会社やその関係会社に対して負っていた債務との相殺による支払等を提案していたものであり,不当に生コンクリート代金の支払を怠っていたというようなものではなく,被害者側に特段の落ち度があるということはできない。
被告人らはいずれも事実を認めて,反省や謝罪の言葉を述べており,また,高齢であること,被告人Aは,被害会社に対して300万円を弁償したほか,近時の前科がなく,
市議会議員を辞職するなどしたこと,
被告人Bには故意犯の前科がなく,
その妻が監督を誓約したことなど有利な情状もそれぞれ存する。
以上の事情を考慮し,主文のとおり量刑する。
(求刑被告人Aにつき懲役3年,被告人Bにつき懲役2年6月)
平成30年3月22日

福岡地方裁判所小倉支部第1刑事部
裁判官

久次
良奈子

トップに戻る

saiban.in