判例検索β > 平成30年(行ケ)第10120号等
審決取消請求事件 特許権 行政訴訟
事件番号平成30(行ケ)10120等
事件名審決取消請求事件
裁判年月日平成30年4月4日
法廷名知的財産高等裁判所
裁判要旨判決年月日 平成30年4月4日 担
当 知的財産高等裁判所 第4部
平成29 年(行ケ)10119号 部
事 件 番 号
平成29 年(行ケ)10120号
○ 発明の名称を「空気入りタイヤ」とする発明について,引用発明に基づいて容易に
発明をすることができたとした審決を,容易想到性の判断に誤りがあるとして取り消し
た事例。
(関連条文)特許法29条2項
(関連する権利番号等)特許第5435175号,無効2015-800139号
判 決 要 旨
発明の名称を「空気入りタイヤ」とする発明に係る特許について,特許無効審判請求が
されたところ,特許庁は,請求項1及び3に係る発明についての特許を無効とし,請求項
4ないし7に係る発明についての特許無効審判請求を不成立とする旨の審決をした。本件
は,特許権者が,審決のうち請求項1及び3に係る部分の,無効審判請求人が,審決のう
ち請求項4ないし7に係る部分の,各取消しを求める事案である。
審決は,請求項1及び3に係る発明は,引用例に記載された発明(引用発明)及び甲4
に記載された技術的事項に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである
として,請求項1及び3に係る発明についての特許を無効とした。
本判決は,以下のとおり,本件審決における甲4記載の技術的事項の認定には問題があ
り,本件発明1は,引用発明に基づき,当業者が容易に発明をすることができたものとい
うことはできないなどとして,審決のうち,請求項1及び3に係る部分を取り消した。な
お,請求項4ないし7に係る発明についての特許無効審判請求を不成立とした部分は維持
された。
⑴ 甲4について
甲4には,「センター領域を含めた全ての領域が溝により複数のブロックに区画された
ブロックパターンについて,①全溝面積比率を25%とし,かつ,前記領域(タイヤ踏面
の幅方向(タイヤ径方向)FF’のセンター部におけるトレッド踏面幅Tの50%以内の
領域)の全溝面積比率を残りの領域の全溝面積比率の3倍となし,②前記ストレート溝と
前記副溝とにより区画されたブロックに独立カーフをタイヤ幅方向に形成し,③前記ブロ
ックの各辺と前記カーフの各辺のタイヤ幅方向全投影長さLGとタイヤ周方向の全投影長
さCGとの比LG/CG=2.5とする。」との技術的事項,すなわち,甲4技術Aが記
載されていると認められる。
本件審決は,甲4に甲4技術が記載されていると認定した。しかし,上記①ないし③の
技術的事項は,甲4に記載された課題を解決するための構成として不可分のものであり,
これらの構成全てを備えることにより,耐摩耗性能を向上せしめるとともに,乾燥路走行
-1-
性能,湿潤路走行性能及び乗心地性能をも向上せしめた乗用車用空気入りラジアルタイヤ
を提供するという,甲4記載の発明の課題を解決したものと理解することが自然である。
したがって,甲4技術Aから,ブロックパターンを前提とした技術であることを捨象し,
さらに,溝面積比率に係る技術的事項のみを抜き出して,甲4に甲4技術が開示されてい
ると認めることはできない。
⑵ 相違点1及び2の容易想到性について
引用例には,タイヤの接地領域について,タイヤ赤道面を中心として接地幅の50%の
幅を有する領域をセンター領域として,同領域よりもタイヤ幅方向外側の接地領域と区別
することや,センター領域とその他の領域における各溝面積の比率,センター領域の溝面
積比率をその他の領域の溝面積比率より高めることにより,タイヤ全体の溝面積比率が比
較的低いことによる排水性の低下を抑制し,操縦安定性を向上させることを示す記載はな
く,これらのことを示唆する記載もない。
また,甲4には,タイヤのセンター領域の溝面積比率を残りの領域の溝面積比率の3倍
とすることなどを含む甲4技術Aが記載されているが,同技術は,乗用車用空気入りラジ
アルタイヤがブロックパターンを有することを前提とするものであって,ストレート溝と
副溝とにより区画されたブロックに独立カーフをタイヤ幅方向に形成し,ブロックの各辺
とカーフの各辺のタイヤ幅方向全投影長さLGとタイヤ周方向の全投影長さCGとの比を
「LG/CG=2.5」とするという構成を併せ備えるものである。
そうすると,当業者において,タイヤ周方向に連なる陸部を備えること,すなわちリブ
パターンであることに技術的意義を有するタイヤである引用発明において,必然的に周方
向に連なる陸部を備えないブロックパターンであることを前提とする甲4技術Aを適用す
る動機付けがあるとはいえず,むしろ,阻害要因があるというべきである。
-2-
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平成30年4月4日判決言渡
平成29年(行ケ)第10120号

審決取消請求事件(以下「甲事件」という。)

平成29年(行ケ)第10119号

審決取消請求事件(以下「乙事件」という。)

口頭弁論終結日

平成30年2月14日
判決
甲事件原告・乙事件被告

株式会社ブリヂストン

同訴訟代理人弁護士

杉村光嗣同杉村憲司塚中哲雄伊藤怜愛
弁理士

甲事件被告・乙事件原告

横浜ゴム株式会社

同訴訟代理人弁護士

萩尾保繁山口健司石神恒関口尚久伊藤隆大福地律生加藤寿人同
弁理士

主1太郎文
特許庁が無効2015-800139号事件について平成29
年4月18日にした審決のうち,特許第5435175号の請求
項1及び3に係る部分を取り消す。
2
甲事件原告・乙事件被告の甲事件請求を棄却する。

3
訴訟費用は,甲事件乙事件を通じ,甲事件原告・乙事件被告の
負担とする。
事実及び理由

第1
1
請求
甲事件

特許庁が無効2015-800139号事件について平成29年4月18日にした審決のうち,
特許第5435175号の請求項4ないし7に係る部分を取り消す。2
乙事件

主文第1項と同旨
第2

事案の概要

1
特許庁における手続の経緯等



甲事件被告・乙事件原告(以下「被告」という。)は,平成25年2月22
日,発明の名称を「空気入りタイヤ」とする特許出願をし,同年12月20日,設定の登録(特許第5435175号)を受けた(請求項の数7。乙27。以下,この特許を「本件特許」という。)。


甲事件原告・乙事件被告(以下「原告」という。)は,平成27年6月19
日,本件特許について特許無効審判請求をし,無効2015-800139号事件として係属した。


被告は,平成28年5月26日,本件特許に係る特許請求の範囲及び明細書
について,請求項2の削除を含む訂正請求をした(以下「本件訂正」という。乙22)。


特許庁は,平成29年4月18日,本件訂正を認めるとともに,請求項1及
び3に係る発明についての特許を無効とする,請求項4ないし7に係る発明についての審判請求は成り立たない旨の別紙審決書(写し)記載の審決(以下「本件審決」という。)をし,その謄本は,同月27日,原告及び被告に送達された。⑸

原告は,平成29年5月26日,本件審決中,本件特許の請求項4ないし7
に係る部分の取消しを求める本件訴訟(甲事件)を提起した。被告は,同日,本件審決中,
本件特許の請求項1及び3に係る部分の取消しを求める本件訴訟
(乙事件)
を提起した。
2
特許請求の範囲の記載

本件訂正後の本件特許の特許請求の範囲請求項1及び3ないし7の記載は,次のとおりである(乙22)。以下,本件訂正後の請求項1及び3ないし7に係る発明を「本件発明1」などといい,併せて「本件各発明」という。また,本件訂正後の明細書(乙22)を,本件特許の図面(乙27)を含めて「本件明細書」という。なお,「\」は,原文の改行部分を示す(以下同じ。)。
【請求項1】トレッド部に溝が設けられている空気入りタイヤであって,\前記空気入りタイヤの総幅SWと外径ODとの比であるSW/ODが,\SW/OD≦0.3\を満たし,\ISO4000-1:2001に準拠する規定リム幅と前記空気入りタイヤの内径に適合したリム径とを有するリムに前記空気入りタイヤをリム組みし,230kPaで内圧を充填し,かつ前記空気入りタイヤの負荷能力の80%に相当する荷重をかけて平面に接地させたときの接地面の領域を接地領域とした場合,\前記トレッド部の接地領域において,接地面積に対する溝面積比率をGRとし,接地幅をWとし,タイヤ赤道面を中心として接地幅Wの50%の幅を有する領域をセンター領域ACとし,前記センター領域ACでの溝面積比率をGCRとし,前記センター領域ACよりもタイヤ幅方向外側の接地領域をショルダー領域ASとし,前記ショルダー領域ASでの溝面積比率をGSRとした場合に,\前記トレッド部の接地領域は,\10[%]≦GR≦25[%]\0<GSR/GCR≦0.6\を満たして形成されており,\前記センター領域ACにおいてタイヤ周方向に延びる周方向溝を少なくとも2本備えるとともに,前記周方向溝に挟まれタイヤ周方向に連なる陸部を少なくとも1つ備えることを特徴とする,\空気入りタイヤ。
【請求項3】前記ショルダー領域に位置する接地幅端部からタイヤ赤道線へ向かって延びる横溝が,前記トレッド部の接地領域内に少なくとも2本設けられ,\前記横溝同士の間隔Aは,接地長Lとの比で,\0.2<A/L≦0.5\であることを特徴とする,\請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項4】前記ショルダー領域ASにおいてタイヤ周方向に延びる周方向溝を各ショルダー領域ASに1本備え,\前記横溝はその周方向溝に連通していないことを特徴とする,\請求項3に記載の空気入りタイヤ。
【請求項5】前記横溝の深さは,各ショルダー領域ASに配設された前記周方向溝の深さよりも浅いことを特徴とする,\請求項4に記載の空気入りタイヤ。【請求項6】前記ショルダー領域ASにおいてタイヤ周方向に延びる周方向溝を各ショルダー領域ASに1本備え,\前記ショルダー領域に位置する接地幅端部からタイヤ赤道線へ向かって延びる横溝が設けられており,\前記横溝はその周方向溝に連通していないことを特徴とする,\請求項1に記載の空気入りタイヤ。【請求項7】前記横溝の深さは,各ショルダー領域ASに配設された前記周方向溝の深さよりも浅いことを特徴とする,\請求項6に記載の空気入りタイヤ。3
本件審決の理由の要旨



本件審決の理由は,別紙審決書(写し)のとおりである。要するに,本件訂
正を認めた上,①本件発明1及び3は,下記の引用例に記載された発明(以下「引用発明」という。)及び甲4に記載された技術的事項に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである,
②本件発明4ないし7は,
引用発明に基づき,
当業者が容易に発明をすることができたものではない,などというものである。引用例:特開2011-207283号公報(甲1)
甲4:特開昭62-152906号公報


本件各発明と引用発明の対比

本件審決は,引用発明及び本件各発明との一致点・相違点並びに甲4記載の技術的事項を,以下のとおり認定した。

引用発明

トレッド10にタイヤ周方向tcに連続して形成された周方向溝部と,トレッド幅方向に延びる横溝部とが形成された空気入りタイヤ1であって,\前記空気入りタイヤ1の幅SW,前記空気入りタイヤの外径ODとが,\SW≦175mmつか
OD/SW≧3.6\を満たし,\前記空気入りタイヤの接地面積に対する前
記周方向溝部と前記横溝部とを含む溝面積の比率である溝面積比率が25%以下であり\タイヤ周方向tcに連続する周方向溝10A,10B,10Cを3本備えるとともに,周方向溝10Aと周方向溝10Bとによって区画された周方向陸部20Aはタイヤ周方向に連なる陸部を備え,周方向溝10Bと周方向溝10Cとによって区画された周方向陸部20Bもタイヤ周方向に連なる陸部を備える,空気入りタイヤ1。

(ア)

本件発明1と引用発明との一致点及び相違点
一致点

「トレッド部に溝が設けられている空気入りタイヤであって,\前記空気入りタイヤの総幅SWと外径ODとの比であるSW/ODが,\SW/OD≦0.3\を満たし,\タイヤ周方向に延びる周方向溝を少なくとも2本備えるとともに,前記周方向溝に挟まれタイヤ周方向に連なる陸部を少なくとも1つ備える,空気入りタイヤ。」である点。
(イ)
a
相違点
相違点1

本件発明1において,「ISO4000-1:2001に準拠する規定リム幅と前記空気入りタイヤの内径に適合したリム径とを有するリムに前記空気入りタイヤをリム組みし,230kPaで内圧を充填し,かつ前記空気入りタイヤの負荷能力の80%に相当する荷重をかけて平面に接地させたときの接地面の領域を接地領域とした場合,\前記トレッド部の接地領域において,接地面積に対する溝面積比率をGRとし,接地幅をWとし,タイヤ赤道面を中心として接地幅Wの50%の幅を有する領域をセンター領域ACとし,前記センター領域ACでの溝面積比率をGCRとし,前記センター領域ACよりもタイヤ幅方向外側の接地領域をショルダー領域ASとし,前記ショルダー領域ASでの溝面積比率をGSRとした場合に,\前記トレッド部の接地領域は,\10[%]≦GR≦25[%]\0<GSR/GCR≦0.6\を満たして形成されている」のに対し,引用発明においてはそのような特定がなされていない点。
b
相違点2

「タイヤ周方向に延びる周方向溝を少なくとも2本備える」箇所に関し,本件発明1において,「前記センター領域ACにおいて」というものであるのに対し,引用発明においてはそのような特定がなされていない点。

(ア)

本件発明3と引用発明との一致点及び相違点
一致点

前記イ(ア)と同じ。
(イ)

相違点

相違点1及び2のほか,本件発明3においては「前記ショルダー領域に位置する接地幅端部からタイヤ赤道線へ向かって延びる横溝が,前記トレッド部の接地領域内に少なくとも2本設けられ,\前記横溝同士の間隔Aは,接地長Lとの比で,\0.2<A/L≦

0.5\である」のに対し,引用発明においてはそのような特

定がなされていない点(相違点3)。

(ア)

本件発明4と引用発明との一致点及び相違点
一致点

本件審決は,本件発明4と引用発明との一致点について,具体的に記載していないが,前記イ(ア)と同じであると認定したものと解される。
(イ)

相違点

相違点1ないし3のほか,本件発明4においては「前記ショルダー領域ASにおいてタイヤ周方向に延びる周方向溝を各ショルダー領域ASに1本備え,前記横溝はその周方向溝に連通していない」のに対し,引用発明においては当該事項を特定していない点(相違点4)。

本件発明5と引用発明との一致点及び相違点

本件審決は,本件発明5と引用発明との一致点及び相違点について,具体的に記載していないが,以下のとおり認定したものと解される。
(ア)

一致点

前記イ(ア)と同じ。
(イ)

相違点

相違点1ないし4のほか,本件発明5においては「前記横溝の深さは,各ショルダー領域ASに配設された前記周方向溝の深さよりも浅いことを特徴とする」のに対し,引用発明においては当該事項を特定していない点(相違点A)。カ
(ア)

本件発明6と引用発明との一致点及び相違点
一致点

前記イ(ア)と同じ。
(イ)

相違点

相違点1及び2のほか,本件発明6においては「前記ショルダー領域ASにおいてタイヤ周方向に延びる周方向溝を各ショルダー領域ASに1本備え,前記ショルダー領域に位置する接地幅端部からタイヤ赤道線へ向かって延びる横溝が設けられており,その横溝は前記周方向溝に連通していない」のに対し,引用発明においては当該事項を特定していない点(相違点5)。

本件発明7と引用発明との一致点及び相違点

本件審決は,本件発明7と引用発明との一致点及び相違点について,具体的に記載していないが,以下のとおり認定したものと解される。
(ア)

一致点

前記イ(ア)と同じ。
(イ)

相違点
相違点1,2,5及びAと同じ。

甲4記載の技術的事項

タイヤ踏面の幅方向(タイヤ径方向)FF’のセンター部に(おける)トレッド踏面幅Tの50%以内の領域Wの全溝面積比率を「センター部の溝面積比率」,残りの領域の全溝面積比率を
「残りの領域の溝面積比率」とすると,\0.25≦(残
りの領域の溝面積比率)/(センター部の溝面積比率)≦0.50(以下「甲4技術」という。)。
4
被告主張の取消事由



本件発明1の進歩性に係る判断の誤り(取消事由1)



本件発明3の進歩性に係る判断の誤り(取消事由2)

5
原告主張の取消事由



本件発明4の進歩性に係る判断の誤り(取消事由3)



本件発明5ないし7の進歩性に係る判断の誤り(取消事由4)

第3
1
当事者の主張
取消事由1(本件発明1の進歩性に係る判断の誤り)

〔被告の主張〕
以下のとおり,本件審決は,甲4記載の技術的事項を誤認した結果,相違点1及び2の容易想到性について,誤った判断に至ったものである。


甲4記載の技術的事項

甲4に依拠して理解すれば,甲4には,「センター領域を含めた全ての領域が溝により複数のブロックに区画されたブロックパターンについて,①全溝面積比率を25%とし,かつ,前記領域(タイヤ踏面の幅方向(タイヤ径方向)FF’のセンター部におけるトレッド踏面幅Tの50%以内の領域)の全溝面積比率を残りの領域の全溝面積比率の3倍となし,②前記ストレート溝と前記副溝とにより区画されたブロックに独立カーフをタイヤ幅方向に形成し,③前記ブロックの各辺と前記カーフの各辺のタイヤ幅方向全投影長さLGとタイヤ周方向の全投影長さCGとの比LG/CG=2.5とする。」との技術的事項(以下「甲4技術A」という。)が記載されていると認定するべきである。
本件審決は,甲4記載の技術的事項がブロックパターンを前提とするものであることを捨象し,単に溝面積比率のみを抽出し,上位概念化して甲4技術を認定したものであり,
本件発明1を認識しているからなし得る後知恵であって,
誤りである。


引用発明に対する甲4技術Aの適用


甲4技術Aを適用しても本件発明1に至らないこと

引用発明は,周方向陸部20A及び周方向陸部20Bがブロックパターンではない構成を有するものであるが,仮に,引用発明に,ブロックパターンである甲4技術Aを適用した場合,引用発明はブロックパターンとなり,「前記周方向溝に挟まれタイヤ周方向に連なる陸部を少なくとも1つ備える」という本件発明1の構成に至らない。

甲4技術Aは「0<GSR/GCR≦0.6」に相当しないこと

本件審決は,一般的測定条件で測定される場合には,「GSR/GCR」の変動幅は大きくないと認定できることを前提に,甲4技術が,相違点1に係る本件発明1の構成である「0<GSR/GCR≦0.6」に相当すると判断したものと解される。
しかし,一般測定条件の範囲内で内圧や荷重が変化した場合であっても,「GSR/GCR」の変動幅は極めて大きく,場合によっては,GSRとGCRの大小関係の反転現象さえ生じる。したがって,接地領域の測定条件が記載されていない甲4に記載された甲4技術Aが,上記「0<GSR/GCR≦0.6」に相当するかどうかは不明である。
また,引用例には,「GSR/GCR」を調整することについては記載も示唆もなく,甲4においても,全溝面積比率を25%とし,かつ,領域Wの全溝面積比率を残りの領域の全溝面積比率の3倍とすることについて記載はあるものの,かかる数値をさらに調整することについては,記載も示唆もない。したがって,甲4技術Aを引用発明に適用した後に,さらに「0<GSR/GCR≦0.6」に変更することは,当業者にとって容易に想到し得たものではない。

(ア)

阻害要因
引用発明は,リブパターン(トレッド溝がタイヤの円周方向に配列された
トレッドパターン)のタイヤに関するものであり,転がり抵抗の低減及び操縦安定性の確保を課題及び効果とする発明である。かかる引用発明に対し,リブパターンタイヤに比較して,転がり抵抗が大きくなる性質及び操縦安定性を低下させる性質を有するブロックパターン(溝により複数のブロックに区画されたトレッドパターン)のタイヤに関する甲4技術Aを適用すると,引用発明の上記課題及び効果に反することとなる。したがって,引用発明に甲4技術Aを適用することは,通常は想定し得ず,むしろ阻害要因がある。
また,本件発明1は,転がり抵抗の低減及び操縦安定性の向上を前提又は課題とする発明であるところ,リブパターンタイヤに比較して,転がり抵抗が大きくなる性質及び操縦安定性を低下させる性質を有するブロックパターンタイヤである甲4技術Aは,本件発明1の上記課題に反する。したがって,当業者は,引用発明に甲4技術Aを適用して本件発明1に至る動機付けを欠く。
(イ)

一般的に,タイヤに独立カーフを入れると,タイヤトレッドのゴムブロッ
クの剛性が低くなり,また,多く入れ過ぎると,車両の直進安定性を悪化させることが知られている。そのため,甲4技術Aの独立カーフを,タイヤの外径が大きくタイヤの幅SWが狭いタイヤである引用発明に採用すると,剛性が低くなり過ぎるため,横力が小さくなり過ぎて操縦安定性が悪化するという問題が生じ,引用発明の意図した操縦安定性の確保を妨げることとなる。さらに,剛性が低くなり過ぎるため,摩耗悪化の懸念もある。
したがって,引用発明に,引用発明が解決し実現しようとする課題及び効果を減ずる方向の性質を有する甲4技術Aを適用することは,通常は想定し得ず,むしろ阻害要因がある。

技術的思想の相違

引用発明は,
車両のイン側の溝面積比率をアウト側の溝面積比率よりも大きくし,イン側のトレッド幅方向への排水性を高めるものである。他方,甲4技術Aは,領域Wの全溝面積比率を残りの領域の全溝面積比率の3倍とすることで,良好な耐摩耗性能を享受するものである。このように,両者の技術的思想及び効果は異なるため,当業者において,引用発明に甲4技術Aをあえて適用する動機付けはない。⑶

原告の予備的主張に対する反論

原告の予備的主張(後記〔原告の主張〕⑶)は,引用例の実施形態として開示されたタイヤのパターンと,甲4のようなブロックパターンとは,構成及び性能においてさほどの差はないとの主張を前提とするものであるが,証拠による裏付けを欠くものであり,失当である。ある特定の種類・形状のトレッドパターンを前提に採用されている溝面積比率の値や溝の配置・本数等を,他の種類・形状のトレッドパターンの設計にそのまま採用することは,当業者の技術常識からしてあり得ないことに照らせば,タイヤ性能に相当な相違があることは明らかである。〔原告の主張〕


甲4記載の技術的事項

排水性の向上のための溝面積比率に関する技術,
特に,
排水性の向上のために
「G
CR>GSR」とする技術的事項は,多くの場合,特定の種類のトレッドパターンのタイヤに固有なものではなく,トレッドパターンの種類にかかわらず有効なものであることは,本件出願日当時の技術常識であった(甲66~72)。甲4記載の技術的事項は,
排水性の向上のための溝面積比率に関するものであり,
排水性の向上のために「GCR>GSR」とする技術的事項である。そして,これらの技術的事項は,ブロックパターンであることと関連付けて説明されていない。したがって,甲4に接した当業者であれば,上記技術常識に鑑みて,甲4に記載された「全溝面積比率を25%とし,踏面幅Tの50%以内の領域Wの全溝面積比率を,残りの領域の全溝面積比率の好ましくは3倍,あるいは少なくとも2倍以上かつ4倍以下とすること」が,ブロックパターンのタイヤに限定されず,他の種類のトレッドパターンのタイヤに適用したときにも,排水性の向上が奏されることを導き出すことができることは,当然である。
また,甲4において,独立カーフは,あくまで,コーナリング等の限界付近での挙動が急激で危険であるという問題を解決するための手段にすぎず,湿潤路走行性能,
コーナリングパワーの観点から,
全溝面積比率を25%とし,
踏面幅Tの50%
以内の領域Wの全溝面積比率を,残りの領域の全溝面積比率の好ましくは3倍,あるいは少なくとも2倍以上かつ4倍以下とすることとは,解決しようとする課題が全く別である。
湿潤路走行性能,
コーナリングパワーの課題を解決する手段として,
甲4技術を引用発明に適用しようとする際に,コーナリング等の限界付近での挙動が急激で危険であるという問題を解決するための独立カーフは,必須ではない。甲4には,
ブロックパターンに特有の課題及び作用効果と解釈すべき記載はなく,後知恵には当たらない。


引用発明に対する甲4技術の適用


甲4技術は「0<GSR/GCR≦0.6」に相当すること

甲11には,異なる製造者による異なるサイズの数多くのタイヤにおいて,一般測定条件の範囲内で内圧や荷重が変化しても,接地幅の変動幅が極めて小さいことが示されている。そして,接地幅の変動幅が極めて小さければ,
「GSR/GCR」
の変動幅も極めて小さくなることは,容易に理解できる。
したがって,甲11に基づいて,甲4の「(残りの領域の溝面積比率)/(センター部の溝面積比率)」の変動幅も極めて小さいと認定することができ,甲4技術の「0.25≦(残りの領域の溝面積比率)/(センター部の溝面積比率)≦0.50」は,相違点1に係る本件発明1の構成である「0<GSR/GCR≦0.6」に相当する。
また,引用発明に甲4技術を適用した際に,「GSR/GCR」の値が,相違点1に係る本件発明1の構成である「0<GSR/GCR≦0.6」と重複してさえいれば,これを充足することになるものであり,「0<GSR/GCR≦0.6」に変更する必要はない。

(ア)

阻害要因の有無
本件審決は,甲4から甲4技術を認定し,引用発明において,甲4技術に
係る「GSR/GCR」の数値を適用することが,当業者にとって格別困難ではないと判断するものであり,引用発明におけるリブパターンをブロックパターンに代えることが,当業者にとって格別困難でないというものではない。したがって,仮に,一般的に,ブロックパターンタイヤの方が,リブパターンタイヤに比べて,転がり抵抗が大きく,操縦安定性に劣る傾向があるとしても,このことは,審決の上記判断に影響するものではない。
甲4技術は,耐摩耗性能を向上せしめるとともに乾燥路走行性能,湿潤路走行性能及び乗心地性能をも向上せしめた乗用車用空気入りラジアルタイヤを提供することを目的とするものであり,溝面積比率を「0.25≦GSR/GCR≦0.50」とすることにより,上記目的に適合しつつ,踏面の排水性を優れるものとすることができる。そこで,操縦安定性を改善しつつ排水性にも配慮するという引用発明の課題を解決するために,上記溝面積比率を引用発明に適用することは,当業者が容易になし得たことである。
(イ)

引用発明のように,タイヤの外径が大きく,タイヤの幅SWが狭いタイヤ
に独立カーフを適用した場合,剛性の低下や操縦安定性の悪化がどの程度生じるかは,独立カーフの数や間隔等によって決まるものであり,独立カーフを適用したからといって,引用発明の意図した剛性や操縦安定性等が得られなくなるわけではない。そもそも,引用例には,独立カーフを適用すべきでない旨の記載はなく,引用発明においても,独立カーフを当然に適用できる。

技術的思想の相違の有無

引用例における「イン側」「アウト側」と,「センター領域」「ショルダー領域」とは,接地領域の分け方が全く異なる。「イン側」の溝面積比率と「アウト側」の溝面積比率との大小関係は,「センター領域」の溝面積比率と「ショルダー領域」の溝面積比率との大小関係に何ら依存するものではなく,両者は互いに独立して設定可能なものである。
そして,引用例においては,図3から「GCR=31.0%」,
「GSR=18.
0%」という数値が読み取れる点,また,図1及び図3に示された例において,溝面積比率の増大に大きく寄与する周方向溝が3本もセンター領域に含まれている点を考慮すれば,引用例において,少なくとも,センター領域での溝面積比率をショルダー領域での溝面積比率よりも大きくする(「GCR>GSR」とする)という技術思想は,十分に読み取ることができる。
このように,引用例と甲4は,いずれも「GCR>GSR」とする共通の技術的思想を有しており,引用発明に甲4技術を組み合わせる動機付けは十分にある。⑶

予備的主張

仮に,
甲4技術が,
ブロックパターンであるタイヤに関するものであるとしても,
以下のとおり,
かかる技術をブロックパターンではない引用発明に適用することは,容易である。
排水性の向上のための溝面積比率に関する技術,
特に,
排水性の向上のために
「G
CR>GSR」とする技術的事項は,多くの場合,トレッドパターンの種類にかかわらず有効な技術的事項であることは,本件出願日当時の技術常識であった。また,一般的に,トレッドパターンは,必ずしも「リブ」,「ラグ」,「リブラグ」,「ブロック」のいずれかに明確に分類できるものではなく,これらの組合せからなるトレッドパターンが多い。リブとブロックを兼ね備え,構成及び性能において両パターンの中間に当たる「リブブロックパターン」のタイヤも,数多く存在する。さらに,両パターンを対象としたトレッドパターンの発明に関する先行文献も,多数存在する。これは,ブロックパターンとリブブロックパターンが,構成及び性能において互いに近いために,タイヤの研究者・開発者らが,両パターンに共通の課題があること,また,その共通の課題を解決するために,共通の発明を適用することが有効であることを,従前から認識していたからである。そして,これらの技術常識を参酌すれば,甲4技術がブロックパターンのタイヤに限定されないこと,特に,ブロックパターンと構成及び性能において近いリブブロックパターンのタイヤに適用したときに,排水性の向上が期待されることを容易に理解できる。
一方,引用発明は,転がり抵抗を低減できるタイヤの提供を目的とするものであるが,操縦安定性を改善しつつ排水性にも配慮するとの課題を有するリブブロックパターンのタイヤを含むものである。
したがって,耐摩耗性能を向上せしめるとともに乾燥路走行性能,湿潤路走行性能及び乗心地性能をも向上せしめた乗用車用空気入りラジアルタイヤを提供するという,甲4に記載された発明の目的に適合しつつ,踏面の排水性を優れるものとすることができる「0.25≦GSR/GCR≦0.50」との溝面積比率を引用発明に適用することは,当業者が容易になし得たことである。
2
取消事由2(本件発明3の進歩性に係る判断の誤り)

〔被告の主張〕


本件発明3は,本件発明1に従属するところ,前記1〔被告の主張〕のとお
り,本件発明1に進歩性が認められるため,本件発明3にも進歩性が認められる。⑵

また,本件審決は,引用発明において,甲5ないし8から認定できる技術的
事項に基づいて,相違点3に係る構成とすることは,当業者であれば容易になし得たと判断したが,誤りである。
すなわち,甲5ないし8からは,空気入りタイヤにおいて,剛性(ひいては操縦安定性)と排水性とのバランスを良好にするために,接地領域内に横溝を2ないし5本設けるという技術的事項を認定することはできない。
また,
甲5及び6からは,
剛性(ひいては操縦安定性)と排水性とのバランスを良好にすることが周知の課題であると認定することはできないため,引用発明において上記課題が内在するとはいえない。したがって,当業者には,引用発明に上記各技術的事項を適用する動機付けはない。
〔原告の主張〕
甲5ないし8から,「空気入りタイヤにおいて,剛性(ひいては操縦安定性)と排水性とのバランスを良好にするために,接地領域内に横溝を2ないし5本設けること」という技術的事項を認定することができる。接地領域内に横溝を2ないし5本設けることは,世の中に存在する大部分の空気入りタイヤが満たす構成である。また,甲5及び6からは,「剛性(ひいては操縦安定性)と排水性とのバランスを良好にする」という課題を読み取ることができるところ,かかる課題は,空気入りタイヤにおいて当然かつ周知の課題であり,引用発明においても,かかる課題は当然内在する。
さらに,引用例には,接地長が明記されておらず,接地領域内の横溝の本数が不明であるが,引用例のタイヤも,「接地領域内に横溝を2ないし5本設ける」という構成を満たしている可能性が高い(図3の横溝41A,42B)。したがって,当業者であれば,引用発明において,「接地領域内に横溝を2ないし5本設ける」という構成とすることは,極めて自然であり,たとえ「剛性(ひいては操縦安定性)と排水性とのバランスを良好にする」という課題や動機付けがないとしても,当該構成とすることは,容易になし得たことである。3
取消事由3(本件発明4の進歩性に係る判断の誤り)

〔原告の主張〕
空気入りタイヤにおいて,「各ショルダー領域に周方向溝を1本設ける」という技術的事項を採用することにより,排水性能,騒音性能,操縦安定性能,耐摩耗性能等を向上できることは,本件特許の出願時において技術常識であった(甲62~66)。また,引用発明には,排水性能,騒音性能,操縦安定性能,耐摩耗性能等の向上という課題は,当然に内在する。したがって,引用発明において,上記技術常識に鑑み,
排水性能,
騒音性能,
操縦安定性能,
耐摩耗性能等を向上するために,
各ショルダー領域に周方向溝を追加することは,当業者が容易に想到し得たことである。
そして,引用発明は,3本の周方向溝の溝幅や横溝部の構成(本数,長さ及び溝幅等)について何ら特定していない。また,当業者は,トレッドパターンを設計する際,
溝面積比率が所望の値となるように,
トレッドパターンの各溝の構成
(本数,
長さ及び溝幅等)を適宜調整するのが通常である。
よって,当業者であれば,引用発明に甲4技術を適用して,「GRを小さな値とし,かつ,GCR>GSR」としたタイヤにおいて,「各ショルダー領域に周方向溝を1本設ける」際に,引用発明及び甲4技術が解決しようとする課題を解決するために,当該課題の解決手段である「GRを小さな値とし,かつ,GCR>GSR」とした構成を得つつ,
相違点4に係る
「各ショルダー領域に周方向溝を1本設ける」
構成が得られるよう,トレッドパターン構成(周方向溝10A,10B,10Cの溝幅や横溝部の本数,長さ及び溝幅等)を調整することは,当業者が適宜行う範囲のことである。
〔被告の主張〕


前記1〔被告の主張〕のとおり,本件発明1及び3は,当業者が容易に発明
することができたものではないので,これらの発明に限定を加えた本件発明4も,当業者が容易に発明できたものではない。


また,以下のとおり,本件発明4は,容易に発明することができたものでは
ない。
引用発明に甲4技術を適用したものにおいて,各ショルダー領域に周方向溝を1本設けることにつき,動機付けはない。原告の主張は,引用発明に甲4技術を適用したものにおいて,各ショルダー領域に周方向溝を1本設けることを,当業者が既に着想していることを前提とするが,そもそも,各ショルダー領域に周方向溝を1本設けることについて動機付けがあることを,原告は何ら主張立証していない。仮に,溝面積比率を同一に維持したままトレッドパターンの形状を変化させることで,各ショルダー領域に周方向溝を1本設けることが可能であったとしても,周方向の溝をより増加させたトレッドパターンの方が,周方向溝が少ないトレッドパターンよりも,横力が低下して操縦安定性が悪化し,かつ,耐摩耗性も悪化し,乾燥路走行性能,湿潤路走行性能及び乗心地性能も悪化する。そのため,転がり抵抗を低減するために幅狭にしたことによる横力の弱さを補い,操縦安定性を確保するという引用発明の目的にも,耐摩耗性能,乾燥路走行性能,湿潤路走行性能及び乗心地性能の向上という甲4技術の目的にも,反する結果となる。したがって,既に3本の周方向溝を有する引用発明に甲4技術を適用したものについて,更に各ショルダー領域に周方向溝を1本設けることには,阻害要因がある。
4
取消事由4(本件発明5ないし7の進歩性に係る判断の誤り)

〔原告の主張〕
本件発明5ないし7は,本件発明4に限定を加えたものである。前記3〔原告の主張〕
と同様,
本件発明5ないし7の容易想到性に関する審決の判断も誤りである。〔被告の主張〕
前記3〔被告の主張〕のとおり,本件審決の判断に誤りはない。
第4
1
当裁判所の判断
本件各発明について

本件各発明に係る特許請求の範囲は,前記第2の2のとおりであるところ,本件明細書の記載によれば,本件各発明の特徴は,以下のとおりである。また,本件明細書には,別紙本件明細書図表目録の図2のとおり,本件各発明の実施形態に係る空気入りタイヤのトレッド部の図が記載されている。


技術分野

本件各発明は,
乗用車用の省燃費性を向上させた空気入りタイヤに関する。【0

001】)


背景技術

従来,自動車の低燃費性に貢献するために,転がり抵抗を低減する空気入りタイヤが提案されてきた。近年はさらに,環境への配慮が高まるにつれ,自動車の低燃費化に対する貢献度がより高い空気入りタイヤが求められている。空気入りタイヤの転がり抵抗を低減する手法としては,空気入りタイヤの総幅(SW)を狭くしてその前方投影面積を小さくすることによって,タイヤ周辺の空気抵抗を低減させることが知られている。(【0002】【0003】)


発明が解決しようとする課題

前記⑵の手法では,空気入りタイヤの総幅が狭くなることに伴って接地幅も狭くなることから,一定の負荷能力を維持するために外径(OD)を大きくすることが必要となるため,空気入りタイヤの接地長が比較的長くなる。そして,空気入りタイヤの接地長が長くなると,排水性が大きく向上する。一方,接地幅が狭くなることにより,コーナリングフォースが低下し,操縦安定性が低下するおそれがある。本件各発明の目的は,転がり抵抗を低減しつつ,それにより悪化した操縦安定性能を改善することができる空気入りタイヤを提供することにある。(【0005】~【0007】)


発明の効果

本件各発明の空気入りタイヤによれば,転がり抵抗を低減しつつ,それにより悪化した操縦安定性能を改善することができる。(【0009】)
本件発明1の具体的な作用効果は,以下のとおりである。

本件発明1の空気入りタイヤは,SWとODとの比が,「SW/OD≦0.
3」(以下「式①」という。)となるように形成されている。それにより,一般的なサイズの空気入りタイヤと比較すると,ODに対してSWが小さくなる結果,空気入りタイヤの前方投影面積が小さく,タイヤ周辺の空気抵抗が低減され,空気入りタイヤの転がり抵抗を低減することができる。また,単にSWを狭くすると空気入りタイヤの負荷能力が低下するが,式①を満たすことによりODがSWに対して相対的に大きいので,負荷能力の低下を抑制することができる。さらに,自動車の省スペース化,意匠性の向上,接地長が長くなることによる排水性,特に耐ハイドロプレーニング性能の向上などを見込むことができる。【0027】(
【0030】


本件発明1の空気入りタイヤは,GRが,「10%≦GR≦25%」…とな
るように形成されている。このGRの範囲は,一般的な空気入りタイヤと比較して低く設定されており,陸部が接地する面積が増大することよってトレッド部の剛性が高くなり,操縦安定性を向上させる。(【0028】)

本件発明1の空気入りタイヤは,センター領域ACでの溝面積比率GCRと
ショルダー領域ASでの溝面積比率GSRとが,「GCR>GSR」…となるように形成されている。これにより,ACよりもASに設けられる溝が少なくなり,GRが比較的低いことによる排水性の低下を抑制することができる。さらに,ASに位置する陸部14が接地する面積が,ACに比べて増大することにより,ASにおけるトレッド部10の剛性が高くなる。それにより,十分なコーナリングフォースを得ることができ,ひいては操縦安定性を向上させることができる。また,トレッド部10の接地領域Gにおいて,GCRとGSRとの比が,「0<GSR/GCR≦0.6」…となるように形成されることで,ASにおいて陸部が接地する面積が増大するため,ASにおいてトレッド部の剛性が高くなり,さらに操縦安定性を向上させる。加えて,ACにおける溝面積が増大するため,排水性を向上させることができる。(【0029】【0032】)

本件発明1の空気入りタイヤは,センター領域ACに,タイヤ周方向に延び
る少なくとも1本の周方向溝が設けられることで,ACの溝面積を十分に確保し,溝面積比GRを減少させたことによる排水性の悪化を抑制することができる。【0(
033】)


産業上の利用可能性

本件各発明の空気入りタイヤは,乗用車用の省燃費性を向上させた空気入りタイヤとして好適に利用することができる。(【0083】)
2
引用発明



引用例(甲1)には,引用発明に関し,以下の記載がある。また,引用例に
は,別紙引用例等図表目録の引用例【図1】のとおり,引用発明の実施形態に係る空気入りタイヤのトレッド部の図が記載されている。
【0005】…本発明は,…転がり抵抗の低いゴムを用いる方法や,トレッド幅方向断面の形状を特徴的な形状とする方法以外の方法によって転がり抵抗を低減できるタイヤの提供を目的とする。
【0009】
…タイヤの幅SWが狭くなるほど,
横力が弱くなる。
これに対して,
本発明によれば,溝面積比率が25%以下とすることにより,横力に対する変形を抑制できる。従って,タイヤの幅SWを狭くしたことによる横力の弱さを補い,操縦安定性を確保できる。
【0042】空気入りタイヤ1は,外径ODが大きいほど,トレッドの路面への入射角度が緩やかになるため,同じ荷重がかかったときの変形量が少なくなる。そのため,空気入りタイヤ1によれば,…転がり抵抗を低下させることができる。また,外径ODが大きいほど,接地面の形状は,回転方向に縦長になる。同じ接地面積であれば,空気入りタイヤ1の幅SWが狭い方が転がり抵抗は小さくなる。従って,空気入りタイヤ1によれば,転がり抵抗を低減させることができる。【0043】一般的に,タイヤの幅SWが狭くなるほど横力が弱くなると言われている。これに対して,空気入りタイヤ1では,溝面積比率が25%以下であることにより,接地面積を増やすことにより,トレッドの剛性を高め,横力を高めている。これにより,トレッドの変形を抑制できる。このように,空気入りタイヤ1では,幅SWを狭くしたことによる横力の弱さを補っている。これにより,操縦安定性を確保することができる。
【0047】また,空気入りタイヤ1では,横溝41A,横溝41B,副横溝42B,横溝60の各横溝の一方の端部は,周方向陸部20A,20B,ショルダー陸部30A,30Bの内部で終端されており,周方向陸部20A,20B,ショルダー陸部30A,30Bを分断しない。これにより,空気入りタイヤ1のトレッドへの前後入力に対する剛性が高められ,駆動力及び制動力を向上させることができる。


引用例に,前記第2の3⑵アのとおり引用発明が記載されていることは,当
事者間に争いがない。
3
取消事由1(本件発明1の進歩性に係る判断の誤り)について



本件発明1と引用発明との対比

本件発明1と引用発明との相違点は,前記第2の3⑵イ(イ)のとおりであることは,当事者間に争いがない。


甲4について


甲4には,おおむね,以下の事項が記載されている。また,甲4には,別紙
引用例等図表目録の甲4第1図のとおり,図が記載されている。
(ア)

特許請求の範囲

タイヤ踏面の幅方向センター部に踏面幅の50%以内の領域において3本のストレート溝をタイヤ周方向に環状に設けると共にこれらのストレート溝からタイヤ幅方向に延びる複数の副溝を配置したブロックパターンにおいて,⑴全溝面積比率を25%とし,かつ,前記領域の全溝面積比率を残りの領域の全溝面積比率の3倍となし,⑵前記ストレート溝と前記副溝とにより区画されたブロックに独立カーフをタイヤ幅方向に形成し,⑶前記ブロックの各辺と前記カーフの各辺のタイヤ幅方向全投影長さLGとタイヤ周方向全投影長さCGとの比LG/CG=2.5としたことを特徴とする乗用車用空気入りラジアルタイヤ。(1頁左下欄4~18行)(イ)
a
発明の詳細な説明
発明の技術分野

本発明は,ブロックパターンの改良に関し,詳しくは耐摩耗性能,乾燥路走行性能,湿潤路走行性能,および乗心地性能を向上させた乗用車用空気入りラジアルタイヤに関する。(1頁右下欄1~4行)
b
発明の目的

本発明は,
耐摩耗性能を向上せしめると共に乾燥路走行性能,
湿潤路走行性能,お
よび乗心地性能をも向上せしめた乗用車用空気入りラジアルタイヤを提供することを目的とする。(2頁左上欄1~4行)
c
発明の構成



…乗用車用空気入りラジアルタイヤ…の踏面には,溝により複数のブロック
に区画されたトレッドパターン,すなわちブロックパターンが形成されている。…⒝

第1図は,本発明の乗用車用空気入りラジアルタイヤのブロックパターンの
一例を示す説明図である。この第1図において,タイヤ踏面の幅方向(タイヤ径方向)FF’のセンター部に踏面幅Tの50%以内の領域Wにおいて3本のストレート溝aがタイヤ周方向EE’に環状に設けられている。また,これらのストレート溝aからタイヤ幅方向FF’に延びる複数の副溝bが配置されている。本発明では,
このブロックパターンにおいて,下記①ないし③の事項を規定したものである。①

全溝面積比率を25%とし,かつ,前記領域Wの全溝面積比率を残りの領域
の全溝面積比率の3倍としたこと。
湿潤路走行性能は,踏面の排水性能に負うところが大であり,タイヤ周方向のストレート溝が排水効果に優れるのは周知の事実である。…周方向ストレート溝は,路面のどの部分に配置するのが最も良いかを本発明者らは明らかにした…。…低荷重下での接地部分,タイヤ中央部分にストレート溝を配置することによって良好な排水性能,ひいては湿潤路走行性能を享受できる…。
また,耐摩耗性については…,高速道路のような比較的平坦な道では良好な耐摩耗性を発揮するタイヤであっても,山道のような屈曲路走行にあっては両ショルダ一部がタイヤセンター部よりもはやく摩耗し,はなはだしくはベルトエッジが露出してしまうことさえ確認された…。
そこで,全溝面積比率を25%とし,しかも,踏面幅Tの50%以内の領域Wの全溝面積比率を残りの領域の全溝面積比率の3倍とすることによって,良好な耐摩耗性を享受できることが判った…。


ストレート溝aと副溝bとにより区画されたブロック1の表面に独立カーフ
cをタイヤ幅方向FF’に形成したこと。
実接地面積比率が30%以下のタイヤでは,コーナリング等の限界付近での挙動が急激で危険なため,従来は30%以下の溝面積比率のブロックパターンは不可能であった。
そこで,限界付近でのタイヤの挙動を調査した結果,溝面積比率が低下すればするほどコーナリングパワーは大きくなるものの,荷重依存性が大きくなることに着目した。
このコーナリングパワーの荷重依存性を耐摩耗性の犠牲なしに改善するため,溝ではなくカーフを,
しかも溝に通じることなく即ち独立カーフをタイヤ幅方向FF’
に配置した…。…タイヤ幅方向FF’に独立カーフを入れることにより,タイヤ周方向EE’のブロック剛性が低下し,良好な乗心地性能を享受できる…。③

ブロック1の各辺とカーフcの各辺…のタイヤ幅方向FF’全投影長さLG
とタイヤ周方向EE’全投影長さCGとの比LG/CG=2.5としたこと。溝面積比率の小さいタイヤにあっては湿潤路運動性能が重要であり,デザイン的には周方向成分と幅方向成分との比率が重要である。この比率のバランスがくずれると,
周方向又は幅方向トラクションのバランスがくずれ,
車両の姿勢を悪化させ,
湿潤路運動性能が低下してしまう。このため,本発明では,比LG/CG=2.5とした…。
(2頁左上欄5行~3頁左下欄17行)

前記アのとおり,甲4には,ブロックパターンの改良に関し,耐摩耗性能を
向上せしめるとともに,乾燥路走行性能,湿潤路走行性能及び乗心地性能をも向上せしめた乗用車用空気入りラジアルタイヤを提供することを目的とする発明が記載されている(前記ア(イ)b)。
そして,タイヤ踏面の幅方向センター部に踏面幅の50%以内の領域において3本のストレート溝をタイヤ周方向に環状に設けるとともに,これらのストレート溝からタイヤ幅方向に延びる複数の副溝を配置したブロックパターンにおいて,①全溝面積比率を25%とし,かつ,領域W(タイヤ踏面の幅方向(タイヤ径方向)FF’のセンター部における踏面幅Tの50%以内)の全溝面積比率を残りの領域の全溝面積比率の3倍とすること,②ストレート溝aと副溝bとにより区画されたブロック1の表面に独立カーフcをタイヤ幅方向FF’に形成すること,③ブロック1の各辺とカーフcの各辺のタイヤ幅方向FF’全投影長さ(LG)とタイヤ周方向EE’全投影長さ(CG)との比を「LG/CG=2.5」とすることにより,良好な耐摩耗性及び乗心地性能を享受し,かつ,湿潤路運動性能も低下しないようにしたものである(前記ア(イ)c)。
したがって,甲4には,「センター領域を含めた全ての領域が溝により複数のブロックに区画されたブロックパターンについて,①全溝面積比率を25%とし,かつ,前記領域(タイヤ踏面の幅方向(タイヤ径方向)FF’のセンター部におけるトレッド踏面幅Tの50%以内の領域)の全溝面積比率を残りの領域の全溝面積比率の3倍となし,②前記ストレート溝と前記副溝とにより区画されたブロックに独立カーフをタイヤ幅方向に形成し,③前記ブロックの各辺と前記カーフの各辺のタイヤ幅方向全投影長さLGとタイヤ周方向の全投影長さCGとの比LG/CG=2.5とする。」との技術的事項,すなわち,甲4技術Aが記載されていると認められる。

本件審決の認定について

本件審決は,甲4に甲4技術が記載されていると認定した。
しかし,前記アのとおり,甲4には,特許請求の範囲にも,発明の詳細な説明にも,一貫して,ブロックパターンであることを前提とした課題や解決手段が記載されている。また,前記イのとおり,甲4には,前記イ①ないし③の技術的事項,すなわち,溝面積比率,独立カーフ,タイヤ幅方向全投影長さとタイヤ周方向全投影長さの比に関する甲4技術Aが記載されている。
そこで,これらの記載に鑑みると,上記イ①ないし③の技術的事項は,甲4に記載された課題を解決するための構成として不可分のものであり,これらの構成全てを備えることにより,耐摩耗性能を向上せしめるとともに,乾燥路走行性能,湿潤路走行性能及び乗心地性能をも向上せしめた乗用車用空気入りラジアルタイヤを提供するという,
甲4記載の発明の課題を解決したものと理解することが自然である。したがって,甲4技術Aから,ブロックパターンを前提とした技術であることを捨象し,さらに,溝面積比率に係る技術的事項のみを抜き出して,甲4に甲4技術が開示されていると認めることはできない。よって,本件審決における甲4記載の技術的事項の認定には,上記の点において問題がある。


相違点1及び2の容易想到性

引用例には,引用発明について,①転がり抵抗を低減できるタイヤの提供を目的とすること(【0005】),②外径ODを大きくすることにより,転がり抵抗を低下させることができること(【0042】),③溝面積比率を25%以下とすることにより,タイヤの幅SWを狭くしたことによる横力の弱さを補い,操縦安定性を確保できること(【0009】【0043】),④周方向溝10A,10B,10Cのうちトレッド幅方向の外側に形成されたものほど溝幅が大きいため,周方向への排水性が高められること(【0045】),⑤周方向陸部20A及び20Bがタイヤ周方向に連なる陸部を備えること,すなわち,リブパターンとすることにより,トレッドへの前後入力に対する剛性が高められ,駆動力及び制動力を向上させることができること(【0047】)が記載されている。
一方,引用例には,タイヤの接地領域について,タイヤ赤道面を中心として接地幅の50%の幅を有する領域をセンター領域として,同領域よりもタイヤ幅方向外側の接地領域と区別することや,センター領域とその他の領域における各溝面積の比率,センター領域の溝面積比率をその他の領域の溝面積比率より高めることにより,タイヤ全体の溝面積比率が比較的低いことによる排水性の低下を抑制し,操縦安定性を向上させることを示す記載はなく,これらのことを示唆する記載もない。また,甲4には,タイヤのセンター領域の溝面積比率を残りの領域の溝面積比率の3倍とすることなどを含む甲4技術Aが記載されているが,同技術は,乗用車用空気入りラジアルタイヤがブロックパターンを有することを前提とするものであって,ストレート溝と副溝とにより区画されたブロックに独立カーフをタイヤ幅方向に形成し,ブロックの各辺とカーフの各辺のタイヤ幅方向全投影長さLGとタイヤ周方向の全投影長さCGとの比を「LG/CG=2.5」とするという構成を併せ備えるものである。
そうすると,当業者において,タイヤ周方向に連なる陸部を備えること,すなわちリブパターンであることに技術的意義を有するタイヤである引用発明において,必然的に周方向に連なる陸部を備えないブロックパターンであることを前提とする甲4技術Aを適用する動機付けがあるとはいえず,むしろ,阻害要因があるというべきである。


原告の主張について


原告は,
①甲4に記載された
「全溝面積比率を25%とし,
踏面幅Tの50%

以内の領域Wの全溝面積比率を,残りの領域の全溝面積比率の好ましくは3倍とする」という技術的事項は,トレッドパターンの種類にかかわらないものである,②甲4において,独立カーフは,あくまでコーナリング等の限界付近での挙動が急激で危険であるという問題を解決するための手段にすぎず,
上記①の技術的事項とは,
解決しようとする課題が全く別であるなどとして,甲4には甲4技術が記載されており,同技術を引用発明に適用することは容易である旨主張する。しかし,前記⑵のとおり,甲4技術Aは,ブロックパターンを前提とする技術であり,甲4に記載された課題を解決するための構成として不可分のものであって,前記⑵イ①ないし③の技術的事項全てを備えることにより,耐摩耗性能を向上せしめるとともに,乾燥路走行性能,湿潤路走行性能及び乗心地性能をも向上せしめた乗用車用空気入りラジアルタイヤを提供するという,甲4記載の発明の課題を解決したものである。そして,このようにブロックパターンであることを前提とする甲4技術Aを,リブパターンであることに技術的意義を有する引用発明に適用する動機付けがあるとはいえず,むしろ阻害要因があることについては,前記⑶のとおりである。したがって,原告の主張は採用できない。

原告は,仮に甲4技術がブロックパターンであるタイヤに関するものである
としても,排水性の向上のために「GCR>GSR」とする技術的事項は,トレッドパターンの種類にかかわらず有効なものであり,これは本件出願当時の技術常識であったことなどから,甲4技術をブロックパターンではない引用発明に適用することは容易である旨主張する。
しかし,甲4に記載されている技術的事項は,単に,排水性の向上のためにGCRをGSRより大きくするというものではなく,ブロックパターンのタイヤにおいて,全溝面積比率が25%以下のものについて,GCRをGSRの3倍とするというものである。溝面積比率の小さいタイヤにあっては湿潤路運動性能が重要であるところ,甲4では,上記の構成とすることにより,良好な排水性能と良好な耐摩耗性とを享受できるようにしたものである。そして,上記構成とするだけでは,コーナリング等の限界付近での挙動が急激で危険であるという問題が生じるため,前記⑵イ②及び③の構成を併せ備えるようにしたものである。このように,甲4に記載されている技術的事項は,ブロックパターンを前提としたものであるところ,かかる技術的事項がトレッドパターンの種類にかかわらず有効なものであり,本件出願当時の技術常識であったことについては,これを認めるに足りる証拠はない。原告が提出する証拠は,単にタイヤの溝面積比率を大きくすることで排水性が向上すること(甲67~69),タイヤの赤道面近傍(センター領域)に溝を設けることや,その溝を幅広とすることで排水性が向上すること(甲66,71,72),タイヤのセンター領域の溝面積比率を大きくすることで,排水性と操縦安定性が向上すること(甲70)が開示されているにすぎず,甲4のように,全溝面積比率を25%と小さい値としたタイヤについて,GCRをGSRの3倍とすることにより,良好な排水性能と良好な耐摩耗性とを享受できるようにすることを開示するものではないから,これらの証拠は,上記認定を左右するものではない。したがって,原告の主張は採用できない。


小括
以上のとおり,本件発明1は,引用発明に基づき,当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。
4
取消事由2ないし4(本件発明3ないし7の進歩性に係る判断の誤り)につ
いて
本件発明3ないし7は,いずれも本件発明1の発明特定事項を全て含み,さらに限定を加えたものであるところ,本件発明1が,当業者が容易に発明をすることができたものではないことについては,前記3のとおりである。
したがって,本件発明3ないし7は,いずれも当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
5
結論

以上検討したとおり,本件審決のうち,請求項4ないし7に係る部分に誤りはなく,請求項1及び3に係る部分は誤りである。
よって,主文のとおり判決する。
知的財産高等裁判所第4部

裁判長裁判官

高部
裁判官

山門優
裁判官

片瀬亮眞規子
別紙
本件明細書図表目録

別紙
引用例等図表目録

引用例【図1】

甲4

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