判例検索β > 平成29年(う)第147号
廃棄物の処理及び清掃に関する法律違反被告事件
事件番号平成29(う)147
事件名廃棄物の処理及び清掃に関する法律違反被告事件
裁判年月日平成30年3月22日
法廷名広島高等裁判所
結果棄却
原審裁判所名山口地方裁判所  萩支部
原審事件番号平成28(わ)6
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平成30年3月22日宣告

広島高等裁判所判決

平成29年(う)第147号

廃棄物の処理及び清掃に関する法律違反被告事件

原審

山口地方裁判所萩支部

平成28年(わ)第6号
主文
本件控訴を棄却する
理1由
控訴の趣意
本件控訴の趣意は,弁護人末永久大作成の控訴趣意書に記載されているとおりで
あるから,これを引用する。
原判決は,山口県長門市のA湾に面する造船所を経営していた被告人が,廃業して造船所施設を解体するに当たり,平成27年1月頃,造船所跡地東側の海域(以下「本件海域」という。)に残存していた施設関連物(廃棄物)であるコンクリート塊(枕木51本及び方塊13個)合計約71t(以下「本件コンクリート塊」という。)を放置してみだりに捨てた旨認定している。
これに対し,論旨は,原判決には,①本件コンクリート塊が廃棄物に該当するとした点,②被告人が本件コンクリート塊を残置した行為が「みだりに捨てた」ことに当たるとした点で,判決に影響を及ぼすことが明らかな事実の誤認があるというものと解される。
2
原判断の要旨
原判決の(事実認定の補足説明)の項における説示は,要旨,おおむね次のとお
りである。
(1)

前提となる事実関係

本件コンクリート塊は,造船所施設の土台として利用されていた方塊や船台増設時に余った枕木等であり,被告人の父が死亡した後は,その造船所の経営を引き継いだ被告人が本件海域内で管理していた。造船所の廃業を決意した被告人は,平成26年11月,解体業者に造船所施設の解体工事を依頼した。被告人は,造船所の
敷地南側の海面上(本件海域外)に設置された船台につき,水産事務所長から公有水面占用許可を得ていたが,水面の占用等を平成26年12月末日に廃止したとして,平成27年2月20日付けで行為完了等届を提出した。
解体工事中の平成27年1月頃,解体業者の代表者は,被告人に対し,海中に残置される状態となった本件コンクリート塊を撤去するかどうかを確認したが,被告人が,大型方塊については波よけになるとの理由で,枕木や小型方塊については護岸が崩れたらいけないとの理由で,
いずれもそのままにしておくよう指示したため,
解体業者は本件コンクリート塊を撤去せずに解体工事を終了した。以後,
被告人は,
平成28年7月に海上保安部の捜査を受けるまで,本件コンクリート塊をそのまま海水に浸かった状態で放置し,摘発を受けると直ちに同じ解体業者に依頼して本件コンクリート塊を撤去した。
解体工事終了後の平成27年4月28日頃,水産事務所の担当職員が,造船所の廃業に伴う占用部分の原状回復状況の確認のため現地を訪れた際,本件海域に本件コンクリート塊があるのを発見し,被告人に対し,被告人の物であれば一緒にどけてもらわないといけない旨指摘すると,被告人は,造船所とは無関係で自分の物ではない旨の虚偽説明をした。
(2)

廃棄物該当性について

本件コンクリート塊の形状やそれが本件海域に無造作に散乱している残置状況,本件コンクリート塊が本件海域に持ち込まれた経緯や従前の利用状況,被告人が1年以上本件コンクリート塊を放置し,摘発後直ちに撤去していること,被告人の捜査段階の供述等からすると,本件コンクリート塊は,造船所施設が解体された平成27年1月頃には,管理占有する被告人が自ら利用し又は他人に有償で譲渡することができないために不要になった物,すなわち「廃棄物」になったと認められる。(3)

不法投棄該当性について

被告人は,遅くとも管理していた造船所施設を解体した平成27年1月頃には,自己所有地以外の本件海域に残存している施設関連物である本件コンクリート塊を
撤去すべき義務を負っていたと認められる。1年以上にわたり極めて大量のコンクリート塊を何らの保全措置を講じることなく権限の及ばない海域に乱雑に放置していたことなどに照らせば,被告人は本件コンクリート塊の管理を放棄したもので,生活環境の保全及び公衆衛生の向上を図るという廃棄物処理法の趣旨に照らし,これが社会的に許容されない行為であることは明らかである。被告人が,平成27年1月頃の時点で,条理上当然の撤去義務を認識していなかったとは想定し難く,法令違反の認識も有していたと認められる。
(4)

以上の原判断に,論理則,経験則等に照らして不合理な点は見当たらない。
なお,
原判決は,
検察官の主張に沿い,
本件をいわゆる不真正不作為犯として捉え,
撤去義務の存在を根拠として被告人がみだりに廃棄物を「捨てた」と認定しているものと解される。犯行に至る経緯において被告人が施設解体前から本件コンクリート塊を撤去する義務を負ってきたことは,本件海域について公有水面占用許可を得ていなかった事実に照らしても明らかである。しかし,原判決も説示しているように,不要物としてその管理を放棄すれば「捨てた」といえるのであって,管理を放棄するためには必ずしも廃棄物を移置することや廃棄物から場所的に離れる必要はなく,廃棄物を放置するという不作為形態の行為もそれが管理を放棄する意思の下に行われれば「捨て」る行為に当たるというべきである。したがって,本件はいわゆる不真正不作為犯ではなく,原判決がいう撤去義務の存在は構成要件要素ではないと解される。
3
所論の検討
所論は,原判断が平成27年1月頃の時点で造船所廃業に伴う解体撤去工事が終
了したとの認定を論理的前提にしていると理解した上,その時点で同工事は未終了であり,予定されていた追加護岸工事の開始が解体業者の都合で遅滞していたにすぎず,本件コンクリート塊は当面の波よけの機能を果たしていたから,廃棄物をみだりに捨てたとはいえないと主張する(なお,所論は,護岸工事の内容,同工事の開始が遅滞した経緯等について詳細な主張を展開しているが,その大部分が原審記
録に現れていない事情を指摘するもので,不適法な主張である。)。証拠(甲10,11,14,乙3,4等)によれば,解体撤去・護岸工事の経過は次のとおりである。被告人は,平成26年11月には造船所の営業を終了して造船所施設の解体撤去工事を発注した。平成27年1月下旬には施設のほとんどが解体撤去されて更地に近い状態となっていたが,同工事が完了したのは同年4月初旬頃であった。解体業者は,同工事の過程で,被告人の指示により,造船所敷地南側の沖合にあった本件コンクリート塊以外の方塊を岸に引き寄せ,敷地と海の境に同方塊や敷地内に置かれていた方塊を並べて護岸壁を築き,内側に土を入れて整地したが,本件コンクリート塊については,被告人が波よけ又は護岸の崩壊防止になるとの理由でそのままにしておくよう指示したため,本件海域に残置されることになった。平成28年7月の海上保安部による摘発を受けて,被告人は,同じ解体業者に対し,本件コンクリート塊等の撤去を依頼するともに,新たな護岸工事を発注した。所論は,当初の解体撤去工事の際に行われた護岸壁築造の時点から摘発後に行われた護岸工事が予定されていたかのようにいうが,
証拠に基づかない主張である。
なお,原裁判所は,当事者との間で平成27年1月に解体工事が終了した事実には争いがないことを確認し,補充質問でも被告人に対し同旨の確認をしているが,原判決(6頁)の説示からしても,この「解体工事の終了」又は「本件解体工事の時点」(原判決6,9頁)というのは,大型方塊の上にあった作業場を含めた造船所施設が解体撤去され,施設関連物であった本件コンクリート塊のみが本件海域に残置された状態又はそのような状態になった平成27年1月頃の時点を指しており,予定されていた解体撤去工事の全ての工程が終了したことまでも意味するものではないと解される。
本件コンクリート塊の形状,残置の仕方,護岸の状況等からして,本件コンクリート塊が波よけ等に役立つとはいい難く,解体業者から本件コンクリート塊を撤去するかどうか確認された際,被告人に本件コンクリート塊の利用方法について具体的な計画があったとは認められない。被告人の解体業者代表者に対する波よけ等に
なる旨の発言は,
即時撤去を免れるための口実にすぎないとみるのが合理的である。所論は,解体業者も大型方塊は波よけになるので残置していても問題はないと考えていたというが,援用されている同代表者の供述調書(甲10)の記載をそのように理解することはできない。造船所施設が存在していた時点では本件コンクリート塊に利用価値があったことは否定できないとしても,施設解体後は,廃棄物処理法2条1項の「固形状の不要物」,すなわち「廃棄物」に該当するに至ったと評価するのが相当である。本件コンクリート塊の量,残置態様等に照らし,それが生活環境の保全に支障を来しており,社会的に許容されるものでなかったことも明らかである。
原判決は,被告人の解体業者代表者に対する前記発言の時点で,被告人が公有水面である本件海域に散乱する本件コンクリート塊の管理を放棄する意思が外部的に明確となっており,その時点での不法投棄罪の成立を認めることができると判断したものと解されるところ,この原判断が不合理とはいえない(仮に,その時点では未だ管理を放棄する意思を認めるまでには至らないとしても,遅くとも,その後残置し続けて平成27年4月28日頃に水産事務所の担当職員の指摘を受けて虚偽説明をした時点では,管理を放棄する意思が確定的に明らかになっており,故意のみならず違法性の意識も有していたと認められる。本件において,犯行時期の認定に誤りがあるとしても,それは判決に影響を及ぼすものではない。)。4
その他所論に鑑み検討を加えても,原判決に判決に影響を及ぼすことが明らか
な事実の誤認はなく,論旨は理由がない。よって,刑訴法396条により本件控訴を棄却することとし,主文のとおり判決する。
平成30年3月22日
広島高等裁判所第1部

裁判長裁判官

多和田隆史
裁判官

杉本正
裁判官

内藤恵則美子
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