判例検索β > 平成29年(わ)第1638号
道路交通法違反、銃砲刀剣類所持等取締法違反、詐欺、公務執行妨害、器物損壊、覚せい剤取締法違反(変更後の訴因 覚せい剤取締法違反、大麻取締法違反)、脅迫
事件番号平成29(わ)1638
事件名道路交通法違反,銃砲刀剣類所持等取締法違反,詐欺,公務執行妨害,器物損壊,覚せい剤取締法違反(変更後の訴因 覚せい剤取締法違反,大麻取締法違反),脅迫
裁判年月日平成30年2月27日
法廷名名古屋地方裁判所
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主文
被告人を懲役8年に処する
未決勾留日数中180日をその刑に算入する。
名古屋地方検察庁で保管中の覚せい剤7袋(同庁平成29年領第3293号符号1ないし5,8の1,11)及び大麻草4袋(同庁平成29年領第3293号符号19ないし21,25)を没収する。
理由
(罪となるべき事実)
第1

被告人は,当時の暴力団甲組員であるが,金融機関から被告人名義の普通預金口座通帳及びキャッシュカードをだまし取ろうと企て,平成27年8月21日,津市a町bc番地d所在の株式会社乙銀行丙支店において,同行行員Aに対し,真実は,被告人が暴力団員であるのにそれを秘し,被告人が暴力団員等の反社会的勢力ではないものと装い,普通預金・貯蓄預金・納税準備預金印鑑届の「反社会的勢力ではないことの表明・確約に関する同意」欄に同意するなどして前記印鑑届等を提出し,被告人名義の普通預金口座の開設並びに普通預金口座通帳及びキャッシュカードの交付を申し込み,前記Aらをして,被告人が暴力団等反社会的勢力ではないものと誤信させ,よって,その頃,同所において,前記Aらから被告人名義の普通預金口座通帳1通の交付を受けるとともに,同月25日頃から同年9月1日頃までの間に,同市e町f番地ghマンションi号所在の当時の被告人方において,被告人名義のキャッシュカード1枚の送付を受け,もって人を欺いて財物を交付させた。

第2

被告人は,B及びCと共謀の上,携帯電話機販売店から電磁的情報が記録されたUSIMカードを装着したプリペイド式携帯電話機をだまし取ろうと企て,平成28年11月12日,大阪府豊中市j町k丁目l番m株式会社丁2階戊において,前記Cが,同店従業員Dに対し,真実は,購入するプリペイド式携帯電話機を前記Cが使用せず,被告人に譲渡する意図であるのにそれを秘し,購入するプリペイド式携帯電話機を前記Cが使用するかのように装い,プリペイド式携帯電話機2台の購入を申し込み,前記Dらをその旨誤信させ,よって,その頃,同所において,前記Dから電磁的情報が記録されたUSIMカードを装着したプリペイド式携帯電話機2台(販売価格合計8000円)の交付を受け,もって人を欺いて財物を交付させた。
第3

被告人は,Bと共謀の上,同年12月6日午後9時22分頃,名古屋市n区o町p番q号己西側歩道上において,E(当時45歳)に対し,けん銃様のものを真正けん銃であるように装って,その銃口を向けた上,引き金を数回引いて発射音を聞かせるなどし,もって同人の生命,身体等に危害を加えかねない気勢を示して脅迫した。

第4

被告人は,法定の除外事由がないのに,平成29年5月8日頃,愛知県小牧市r町s番地t2階u号室において,覚せい剤であるフェニルメチルアミノプロパンの塩類若干量を含有する水溶液を自己の身体に注射し,もって覚せい剤を使用した。

第5

被告人は,法定の除外事由がないのに,同年5月8日,愛知県弥富市v町wx番地y南側路上に停車中の軽四貨物自動車内において,回転弾倉式けん銃1丁を,それに適合する実包5個と共に携帯して所持した。

第6

被告人は,みだりに,同日,

1
前記第5の路上に停車中の前記自動車内において,覚せい剤であるフェニルメチルアミノプロパンを含有する結晶約0.21グラム(名古屋地方検察庁平成29年領第3293号符号8の1,11はその鑑定残量)及び大麻である大麻草約3.117グラム(同符号19ないし21及び符号25はその鑑定残量)を所持した。

2
前記路上において,覚せい剤であるフェニルメチルアミノプロパン塩酸塩を含有する結晶約3.862グラム(名古屋地方検察庁平成29年領第3293号符号1,2,4,5はその鑑定残量)及び覚せい剤であるフェニルメチルアミノプロパンを含有する結晶約0.971グラム(同符号3はその鑑定残量)を所持した。
第7

被告人は,公安委員会の運転免許を受けないで,同日午後10時20分頃,愛知県弥富市v町wx番地y付近道路において,普通(軽四)貨物自動車を運転した。

第8

被告人は,前記第7の日時頃,愛知県弥富市v町wx番地y南側路上において,前記第7の自動車を運転中,愛知県警察本部刑事部捜査第四課司法警察員Fらが被告人に対して発付されていた詐欺罪の逮捕状を執行するため,同課司法警察員Gが運転する普通乗用自動車(以下「G運転車両」という。)が自車前方に停車して進路を塞がれ,同課司法警察員Hが運転する普通乗用自動車(以下「H運転車両」という。)が自車後方に停車して自車を停車させられた際,その場から逃走しようと企て,自車を後退させてH運転車両前部に自車後部を衝突させ,さらに,自車を前方に発進させてG運転車両後部に自車前部を衝突させるなどの暴行を加えて,株式会社庚辛店店長Iが管理するG運転車両(壬株式会社所有)の後部バンパー等(損害見積額合計40万3007円)及び愛知県警察本部長Jが管理するH運転車両の前部バンパー等(損害見積額合計23万7814円)をそれぞれ損壊し,もって前記Fらの職務の執行を妨害するとともに,他人の物を損壊した。

(累犯前科)
省略
(法令の適用)
罰条
判示第1の行為

刑法246条1項

判示第2の行為

刑法60条,246条1項

判示第3の行為

刑法60条,222条1項

判示第4の行為

覚せい剤取締法41条の3第1項1号,19条
判示第5の行為

銃砲刀剣類所持等取締法31条の3第2項,1項,
3条1項

判示第6の行為
1の覚せい剤所持の点

覚せい剤取締法41条の2第1項

1の大麻所持の点

大麻取締法24条の2第1項

2の覚せい剤所持の点

覚せい剤取締法41条の2第1項

判示第7の行為

道路交通法117条の2の2第1号,64条1項

判示第8の行為
公務執行妨害の点

刑法95条1項

器物損壊の点

刑法261条

科刑上一罪の処理
判示第6の行為につき

刑法54条1項前段,10条(1個の行為が3個
の罪名に触れる場合であるから,1罪として刑及
び犯情の最も重い2の覚せい剤所持の罪の刑で処
断)

判示第8の行為につき

刑法54条1項前段,10条(1個の行為が2個
の罪名に触れる場合であるから,1罪として犯情
の重い公務執行妨害罪の刑で処断)

刑種の選択
第3,第7,第8の各罪
累犯加重

いずれも懲役刑を選択
各罪につきいずれも刑法56条1項,57条(た
だし,判示第5については同法14条2項の制限
に従う。)

併合罪加重

刑法45条前段,47条本文,10条(最も重い
判示第5の罪の刑に同法14条2項の制限内で法
定の加重)
未決勾留日数の算入

刑法21条

没収
覚せい剤7袋

覚せい剤取締法41条の8第1項本文

大麻草4袋

大麻取締法24条の5第1項本文

訴訟費用の不負担

刑事訴訟法181条1項ただし書

(量刑の理由)
まず,最も重いけん銃加重所持の点についてみると,被告人は,自動車にけん銃等を積んで移動し,けん銃の使用を必要とする状況に備えていたもので,犯行の危険性は相応に大きい。また,被告人が所持していた覚せい剤の量は比較的多く,前記の累犯前科を有するのに,またしても覚せい剤及び大麻の所持,覚せい剤の使用に及んだ経緯は強く非難されるべきである。脅迫の犯行態様の反社会性,公務執行妨害・器物損壊の自己中心的な動機も看過できない。
被告人は,前記累犯前科による刑の執行終了後,半年足らずで,暴力団組員であることを秘して通帳等の詐欺に及び,それから様々な犯行に及んだのであり,このような経緯に照らし,被告人の規範意識の乏しさは顕著というほかない。そうすると,被告人の刑事責任には重いものがあり,公判廷で概ね事実を認めていること等の事情を考慮しても,被告人を主文のとおりの刑に処するのが相当である。
(検察官の求刑・懲役10年,主文掲記の没収)
平成30年3月9日
名古屋地方裁判所刑事第5部

裁判長裁判官

奥山豪
裁判官

小川貴紀
裁判官

横井千穂
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