判例検索β > 平成28年(ワ)第29320号
特許権侵害差止等請求事件 特許権 民事訴訟
事件番号平成28(ワ)29320
事件名特許権侵害差止等請求事件
裁判年月日平成30年3月29日
法廷名東京地方裁判所
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平成30年3月29日判決言渡

同日原本交付

平成28年(ワ)第29320号
口頭弁論終結日

裁判所書記官

特許権侵害差止等請求事件

平成30年1月18日
判決原告
株式会社エフピコ

同訴訟代理人弁護士

三崎賢治藤正篤面告一近被量東村山結
シーピー化成株式会社


同訴訟代理人弁護士

坂野さやか根みず奈方延泰野毅一髙梨義幸神原宏尚深澤拓司栗原竹之飯同補佐人弁理士

博緒﨑関
同訴訟代理人弁理士

平上
同訴訟復代理人弁護士

秀長月森内省弘三郎主1文
被告は,別紙被告製品目録記載1から7までの各品番欄
の包装用容器並びに同目録記載1から4まで及び6の各蓋
名欄の包装用容器の蓋を製造し,販売し,又は販売の申出
をしてはならない。

2
被告は,原告に対し,1864万4217円及びこれに
対する平成28年9月21日から支払済みまで年5分の割
合による金員を支払え。

34
原告のその余の請求をいずれも棄却する。
訴訟費用はこれを50分し,その9を原告の負担とし,
その余を被告の負担とする。

5
この判決は,第1項及び第2項に限り,仮に執行するこ
とができる。

第1

実及び理由
請求

1
主文第1項と同旨

2
被告は,その占有する別紙被告製品目録記載1から7までの各品番欄の包装用容器並びに同目録記載1から4まで及び6の各蓋名欄の包装用容器の蓋,並びに,それらの製造用金型を廃棄せよ。

3
被告は,原告に対し,7億5900万円及びこれに対する平成28年9月21日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

第2

事案の概要

1
事案の要旨
本件は,発明の名称を「容器」とする特許権を有する原告が,被告による別
紙被告製品目録記載の製品(包装用容器及び包装用容器の蓋。以下「被告製品」と総称し,同目録1~7の各製品群を同目録記載の番号に従い「被告製品1」などという。
)の製造販売が上記特許権の侵害に当たると主張して,被告に対
し,①特許法100条1項,2項に基づき被告製品の製造等の差止め及び廃棄を,②民法709条,特許法102条3項に基づき損害賠償金7億5900万円及びこれに対する不法行為の日の後(訴状送達の日の翌日)である平成28年9月21日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支
払を求める事案である。なお,原告は,訴訟提起時においては特許法102条2項に基づき損害額を6億9000万円と主張していたが(他に弁護士費用を請求)
,後に同項に基づく損害の主張を撤回し,同条3項に基づき損害額を●(省略)●円と主張した。
2
前提事実(根拠を括弧内に示す。



当事者
原告は,●(省略)●を本店の所在場所とし,合成樹脂製簡易食品容器の製造及び販売等を目的とする株式会社である。被告は,●(省略)●を本店の所在場所とし,プラスチック製簡易食品容器の製造及び販売等を目的とする株式会社である。
(争いのない事実)



本件特許権

原告は,次の特許(以下「本件特許」という。
)に係る特許権(以下,
「本件特許権」といい,その特許出願の願書に添付された明細書及び図面を「本件明細書」という。
)を有している(争いのない事実)

特許番号

第5305693号

発明の名称

容器

出願日

平成20年3月3日(特願2008-52392。以下
「本件出願日」という。


登録日

平成25年7月5日

本件特許権に係る特許請求の範囲の請求項1(以下,この発明を「本件発明1」という。
)の記載は後記
のとおりであり,請求項2(以下,こ

の発明を「本件発明2」という。
)の記載は後記

のとおりである(争い

のない事実)

請求項1(本件発明1)
「熱可塑性樹脂発泡シートの片面に熱可塑性樹脂フィルムが積層された発泡積層シートが用いられ,前記熱可塑性樹脂フィルムが内表面側とな
るように前記発泡積層シートが成形加工されて,被収容物が収容される収容凹部と,該収容凹部の開口縁から外側に向けて張り出した突出部とが形成された容器本体部を有する容器であって,
前記突出部の端縁部の上面が収容凹部の開口縁近傍の突出部の上面に比して下位となるように,突出部の端縁部において前記熱可塑性樹脂発
泡シートが圧縮されて厚みが薄くなっており,しかも,該突出部の少なくとも端縁部の上面側には,凸形状の高さが0.1~1mmとなり隣り合う凸形状の間隔が0.5~5mmとなるように凹凸形状が形成され,且つ該端縁部の下面側が平坦に形成されていることを特徴とする容器。」
請求項2(本件発明2)

「前記突出部の端縁部に係合される突起部が設けられ,該突起部を前記端縁部に係合させて前記容器本体部に外嵌される蓋体が備えられている蓋付容器である請求項1記載の容器。


本件発明1及び2は,それぞれ次の構成要件(以下,個別の構成要件をそれぞれの符号に従い「構成要件A1」などという。
)に分説される(争
いのない事実)

本件発明1
A1

熱可塑性樹脂発泡シートの片面に熱可塑性樹脂フィルムが積層さ

れた発泡積層シートが用いられ,
A2

前記熱可塑性樹脂フィルムが内表面側となるように前記発泡積層

シートが成形加工されて,
A3

被収容物が収容される収容凹部と,

B
該収容凹部の開口縁から外側に向けて張り出した突出部とが形成
された容器本体部を有する容器であって,

C
前記突出部の端縁部の上面が収容凹部の開口縁近傍の突出部の上
面に比して下位となるように,突出部の端縁部において前記熱可塑性
樹脂発泡シートが圧縮されて厚みが薄くなっており,
D
しかも,該突出部の少なくとも端縁部の上面側には,凸形状の高
さが0.1~1mmとなり

E
隣り合う凸形状の間隔が0.5~5mmとなるように凹凸形状が
形成され,

F
且つ該端縁部の下面側が平坦に形成されていること

G
を特徴とする容器。
本件発明2

HI
前記突出部の端縁部に係合される突起部が設けられ,
該突起部を前記端縁部に係合させて前記容器本体部に外嵌される
蓋体が備えられている蓋付容器である

J


請求項1記載の容器。

被告の行為
被告は,少なくとも平成28年6月17日まで,東京都その他の日本各地において被告製品を販売していた(争いのない事実,甲4,5,弁論の全趣
旨。なお,同日から後も販売していたかについては争いがある。。)


仮処分命令の申立て及びその後の経緯
原告は,平成27年11月,東京地方裁判所に対し,被告に対する被告製品の製造販売等の差止めなどを求める仮処分命令を申し立て(同裁判所平成
27年(ヨ)第22095号)
,同裁判所は,平成28年6月6日,この申
立てを認容して仮処分命令(以下「本件仮処分命令」という。
)を発した。
これに対して同裁判所が,被告が金型を変更したことから保全の必要性がなくなったとして被告による保全異議の申立て(当庁平成28年(モ)第40026号)を認容して本件仮処分命令を取り消したことから,原告は,知的財産高等裁判所に対し,保全抗告(同裁判所平成28年(ラ)第10014号)をした。原告及び被告は,平成29年1月17日の上記保全抗告に係る
審尋期日において,原告が上記仮処分命令の申立てを取り下げること,本件訴訟に係る判決言渡しの日又は訴訟の完結のいずれか早い日まで被告製品(包装用容器については,端縁部の上面側に凹凸形状が形成されているものに限る。
)の製造,販売及び販売の申出を差し控えることなどを内容とする裁判上の和解(以下「本件和解」という。
)をした。
(甲20,22,乙1,

弁論の全趣旨)
3
争点


被告製品の本件発明1及び2の構成要件充足性
なお,被告は,後記ア~オ以外の構成要件の充足性について争っていない。ア
構成要件B「開口縁」及び「突出部」の充足性(被告製品1,2,4,7)


構成要件C「端縁部の上面が…突出部の上面に比して下位」の充足性(被告製品2,5)


構成要件C「端縁部の上面が…下位となるように…圧縮されて厚みが薄くなって」の充足性


構成要件D及びE「凸形状の高さが0.1~1mm」の充足性


構成要件D及びE「凸形状」の充足性



本件特許の無効理由の有無

乙19文献(特開2006-69634号公報をいう。以下同じ。)に
記載の発明に基づく進歩性欠如


乙20文献(実登3012092号公報をいう。以下同じ。
)記載の発
明に基づく進歩性欠如

明確性要件違反の有無


サポート要件違反の有無


実施可能要件違反の有無



差止めの必要性



損害額

4
争点についての当事者の主張


争点⑴(被告製品の本件発明1及び2の構成要件充足性)についてア
構成要件B「開口縁」及び「突出部」の充足性(被告製品1,2,4,7)
(原告の主張)
本件発明1及び2は,
「容器」の「容器本体部」を「収容凹部」と「突
出部」に分けている。
「収容凹部」は底部と側周壁部から形成され,側周
壁部の上端縁が「開口縁」であり,開口縁から外側に向けて張り出した部
分が「突出部」である。このことは,収容凹部上部における平面領域の有無によっては異ならない。以上によれば,被告製品1,2,4及び7は,これらを充足する。
被告は,本件発明1及び2においては容器の突出部が水平で平坦である必要があると主張するが,原告が指摘する審判請求書(乙12)において
も,突出部の形状についての言及はない。容器の突出部の形状は金型のうち突出部を形成する部分の形状によって決まるものであり,突出部が水平で平坦であるかどうかとシートが圧縮されて薄肉とされることにより常に突出部の端縁部の上面が収容凹部の開口縁近傍の突出部の上面に比して下位となることとは何らの関係もなく,これらが関係するとする被告の主張
は誤りである。
(被告の主張)
本件発明1及び2の「突出部」は,水平で平坦なものである。
すなわち,本件発明1及び2は,拒絶理由通知及び拒絶査定に対して2回の補正を経て特許査定を受けたものであり,原告は,平成25年1月11日起案の拒絶査定に対する同年3月25日付け手続補正書(乙13)により構成要件Cのとおり補正することにつき,同日付け審判請求書(乙1
2)において,突出部の端縁部において熱可塑性樹脂発泡シートが圧縮されて薄肉とされたものであることを明確にした旨の記載をしている。そして,シートが圧縮されて薄肉とされることにより常に突出部の端縁部の上面が収容凹部の開口縁近傍の突出部の上面に比して下位となるのは,突出部が水平で平坦である場合のみであるし,原告が補正の根拠として本件明
細書の記載(段落【0019】【図3】

)が示すのも上記の場合のもので
ある。こうした補正の経緯に照らし,本件発明1及び2は突出部が水平で平坦である容器に関する発明である。
被告製品1,2,4及び7は,容器のフランジ部及びその周辺領域において,平坦な平面領域を有しておらず,フランジ部は,なだらかに湾曲し
た又は山形の曲面状に形成されている。したがって,構成要件Bの「開口縁」及び「突出部」がなく,これらを充足しない。

構成要件C「端縁部の上面が…突出部の上面に比して下位」の充足性(被告製品2,5)

(原告の主張)
構成要件Cの「収容凹部」は,本件発明1の特許請求の範囲の記載上,「被収容物が収容される収容凹部」と「突出部」が形成された「容器」とされ,
「収容凹部」は底部と側周壁部から形成されており,被収容物が収容される部分について蓋体の有無やその形状,側周壁部の形状を始め何ら
の限定も付されていない。そして,被収容物を収容することが想定されている部分は,容器に設けられた凹部によって形成された空間全体を指すと解するのが一般常識に沿う。本件明細書上,本件発明1及び2の包装用容器を包装する方法としてラップフィルムで収容凹部の開口部を覆うことによって収容凹部を密封する方法も想定されており,ラップフィルムで覆われる収容凹部の開口部は側周壁部の上端縁の高さである。したがって,「収容凹部」は,容器に設けられた凹部によって形成された空間全体の開口部を側周壁部の上端縁とするものである。
被告製品2及び5の各包装用容器は蓋体を含んでいないから,
「収容凹
部」の大きさは蓋体との嵌合状況によって左右されない。
(被告の主張)

構成要件Cの「収容凹部」は,被収容物が収容されることが想定されている部分であって,その底を形成する底部と,底部の外周縁からやや外向きに傾斜された状態に立設された側周壁部とにより凹状に形成された構成を意味する。
「収容凹部の開口縁」は,上記の意味での側周壁部の上端縁
であり,被収容物が収容されることが想定されている部分のうちの側周壁
部の上限部である。この点に関する原告の主張は,収容凹部があくまで「被収容物が収容される」構成であり,被収容物が収容されることが想定されている部分は容器によって異なることを無視する点で誤りである。また,
「端縁部の上面が…突出部の上面に比して下位」は,容器の全周
について当てはまることが必要である。このことは,本件明細書において
突出部の構成が全周にわたって略均一な構造であることが想定される旨の記載があること(段落【0017】,突出部の端縁部の強度を向上させる)
ことで当該端縁部に蓋体を強固に止着させるという本件発明1及び2の課題を解決する効果(段落【0009】【0012】

)は,構成要件Cをほ
ぼ全周にわたって備えなければ奏しないことになること,原告自身が,構
成要件Cの構成が局所的にあるのみの発明は本件発明1及び2の効果を奏さない点で本件発明1及び2と相違すると主張し,その結果特許査定を受けた経緯があることから明らかである。
被告製品2は,別紙写真目録記載1の写真の緑色の部分が「収容凹部」の側周壁部に当たり,その上限部であるピンク色の丸で示した部分が「開口縁」に当たる。仮に「突出部」が特定できたとしても,それは上記写真のオレンジ色の部分である。被告製品2の包装用容器における各辺の半分
近くの部分は平坦な段差があり,この部分は「突出部の端縁部の上面」は「収容凹部の開口縁近傍の突出部の上面」に比して下位になっていない。被告製品5の包装用容器は,対応する蓋が容器に内嵌される包装用容器であり,蓋の位置に照らすと,上記目録記載2の写真の緑色の部分が「収容凹部」の側周壁部に当たり,その上限部であるピンク色の丸で示した部
分が「開口縁」に当たり,オレンジ色の部分が「突出部」に当たる。被告製品2及び5の包装用容器は,
「突出部の端縁部の上面」は「収容凹部の
開口縁近傍の突出部の上面」に比して下位になっていない。
したがって,被告製品2及び5は,
「端縁部の上面」の全周が「突出部
の上面」に比して下位になっていないから,構成要件Cを充足しない。

構成要件C「端縁部の上面が…下位となるように…圧縮されて厚みが薄くなって」の充足性
(原告の主張)
構成要件Cの「端縁部の上面が…下位となるように…圧縮されて厚みが
薄くなって」は,本件発明1及び2が物の発明であって方法の発明でないことからすれば,容器の状態を示すことによりその構造を特定するものである。また,
「ように」は「よう」と「に」が結合した言葉であり,
「よう」
は「その状態にあること。また,その状態にあると思われること。」とい
う意味である。すなわち,突出部の端縁部において熱可塑性樹脂発泡シー
トの厚みが薄くなる構成としては①「前記突出部の端縁部の上面が収容凹部の開口縁近傍の突出部の上面に比して下位となる」状態の構成と②「前記突出部の端縁部の下面が収容凹部の開口縁近傍の突出部の下面に比して上位となる」状態の構成があり得るところ,構成要件Cは上記①の状態の構成であることを明示したものである。さらに,
「ように」の直後に読点
があり,
「圧縮されて」の直後に読点がないことから,
「ように」は「圧縮
されて」を修飾しておらず,
「前記突出部の端縁部の上面が収容凹部の開
口縁近傍の突出部の上面に比して下位となる」状態と「厚みが薄くなっている」という状態とを単に接続しているにすぎない。すなわち,
「厚みが
薄くなっている」の一態様として「前記突出部の端縁部の上面が収容凹部の開口縁近傍の突出部の上面に比して下位となる」という状態であること
を表している。
被告製品の包装用容器は,突出部の端縁部の上面が収容凹部の開口縁近傍の突出部の上面に比して下位であるから,構成要件Cの「端縁部の上面が…下位となるように…圧縮されて厚みが薄くなって」を充足する。被告は,出願経過や本件明細書の記載(段落【0019】【図3】の,

b)
)を根拠に本件発明1及び2の容器の突出部は上面及び下面が平行で収容凹部の開口縁から水平に突出しているものに限定されると主張するが,上記記載は実施例であり,手続補正書,審判請求書及び本件明細書のいずれにも本件発明1及び2の技術的範囲が実施例に限定される旨の記載がないから,上記主張は誤りである。

(被告の主張)
構成要件Cの「下位となるように…圧縮されて厚みが薄くなって」は,容器の突出部の端縁部を圧縮薄肉化することに起因し,その結果として端縁部の上面が開口縁近傍の突出部の上面に比べて下位となることを意味する。このことは,特許請求の範囲の記載に助動詞「ようだ」の連用形であ
る「ように」が使われ,この語がある行動の目標,目的などを表す意味で使われること,本件明細書においても容器の突出部の端縁部を圧縮することで端縁部の上面が突出部の上面に比べて下位となるもののみが記載されていること(段落【0019】
)から明らかであるし,構成要件Cは平成
25年3月25日付け手続補正書(乙13)により加えられた要件であり,この補正が許される根拠として,同日付け審判請求書(乙12)において本件明細書の「例えば段落0019や図3(b)に記載されている」と主
張したという出願経過に照らしても明らかである。原告は,突出部の端縁部において熱可塑性樹脂発泡シートの厚みが薄くなる構成として前記①及び②があり得ると指摘するが,水平で平坦な突出部を前提にしなければこの二つの場合に限られないから,原告の主張はまさにこの前提に基づくものといえ,被告の主張を裏付けている。

被告製品の包装用容器において,フランジ部の端縁部の上面が開口縁近傍のフランジ部の上面に比べて下位となるのは,端縁部を圧縮したからではなく下位になるような形状に形成したことによるから,構成要件Cの「下位となるように…圧縮されて厚みが薄くなって」を充足しない。エ
構成要件D及びE「凸形状の高さが0.1~1mm」の充足性
(原告の主張)
「凸形状の高さ」は,凸形状の頂部から凸形状の底部までの距離を意味する。このことは,
「凸」は「物の表面が部分的に出ばっている」という
物の表面の状態を表し,また,構成要件D~Fの記載によれば,端縁部の
上面の特徴として「凸形状の高さ」及び「凸形状の間隔」が数値で特定された凹凸形状が形成され端縁部の下面の特徴として平坦であることが示され,
「凸形状」は端縁部の上面に形成されている形状の一部を指していると解されることから,明らかである。このように,
「凸形状の高さ」の意
義は特許請求の範囲の記載から一義的に明らかであるが,仮に本件明細書
の記載を参酌するとしても,容器本体の突出部の下面側にも凹凸形状が掲載される例が背景技術として挙げられ(段落【0007】,上面の凹凸形)
状と下面の凹凸形状とが分けて理解され,
「凹凸形状」が端縁部の上面,
下面という面単位で捉えられていることや,波形の突起が複数列設されて形成される形状を意味する語として「凹凸形状」の語が用いられていること(段落【0017】【0019】

)からすれば,
「凸形状」は端縁部の上
面や下面という面を基準や基底として設けられた突起すなわち突き出た状
態を意味するものとして用いられている。
(被告の主張)
「凸形状の高さ」は,平坦に形成された端縁部の下面側から波の山部の頂上までの高さである。このことは,本件明細書において,
「突出部14
の端縁部15の上面側15uには,断面形状が波形となる突起15aが突
出部14の端縁に沿って複数列設されて前記凹凸形状が形成されている」ところ,
「前記波形の突起15aの高さ(図2,図3の“h1”)が0.1~1mmとなり,隣り合う突起15aの間隔が0.5~5mmとなるように形成されていることが怪我防止の観点から好ましい。
」とされており
(段落【0017】【0019】,当該【図2】及び【図3】において,


“h1”とされているのが上記に示した高さであることから明らかである。被告製品の包装用容器は,測定したものに限定しても底面から凸状部頂点までの長さが1mmを超えているから,構成要件D及びEの「凸形状の高さが0.1~1mm」を充足しない。

構成要件D及びE「凸形状」の充足性
(原告の主張)
「凸形状」は特許請求の範囲に記載された形状を示すものであり,突出部の端縁部全体を一度圧縮した上で更にその上面に形成された凸形状を意味しない。このことは,本件発明1及び2が物の発明であり,
「凸形状」

についても製造方法を示すものでないし,特許請求の範囲の記載上もその製造方法に関する記載がないことから明らかである。被告が指摘する審判請求書(乙12)においても,端縁部を圧縮することによる強度向上と凹凸形状の形成による強度向上があることを述べているにすぎず,圧縮,形成の時間的先後関係を述べてはいない。
(被告の主張)
原告は,本件発明1及び2の特許出願についての拒絶査定に対する審判
請求書(乙12)において,突出部の端縁部の圧縮薄肉化によって第1の強度向上が図られ,更に,その上面に凹凸形状が形成されることによって第2の強度向上が図られたのが本件発明1及び2であると説明しているのであるから,本件発明1及び2の「凸形状」は,圧縮して形成された端縁部の上に更に凹凸形状を設けているものでなければならない。

被告製品の包装用容器は,一定の厚さの原料シートを雌金型と雄金型で一度プレスすることのみによって形成されるのであって,端縁部を圧縮した後に凹凸形状を形成するものでないから,構成要件D及びEの「凸形状」を充足しない。


争点⑵(本件特許の無効理由の有無)について

乙19文献記載の発明に基づく進歩性欠如
(被告の主張)
本件出願日前の平成18年3月16日に頒布された刊行物である乙19文献には,①樹脂フィルムが用いられ,樹脂フィルムが成形加工され
て,惣菜等(被収容物)が収容される収容凹部と,②該収容凹部の開口縁から外側に向けて張り出した屈曲部R(突出部)とが形成された身2(容器本体部)を有する容器1(容器)であって(構成要件Bに相当),
③屈曲部R(突出部)の終端折り曲げ面2h(端縁部の上面)が収容凹部の開口縁近傍の屈曲部R(突出部)の上面に比して下位となっており,
④しかも,屈曲部R(突出部)の少なくとも終端折り曲げ面2h(端縁部の上面)側には,波高(凸形状の高さ)が隣り合う凸形状のピッチの30~60%となり(構成要件Dに相当)
,⑤隣り合う凸形状のピッチ
(間隔)が1~5mmとなるように全周にわたり波状外縁線2e(凹凸形状)が形成され(構成要件Eに相当)
,⑥かつ終端折り曲げ面2hの
部位(端縁部)の下面側が平坦に形成されていること(構成要件Fに相当)
,⑦を特徴とする容器1(容器)
(構成要件Gに相当)
,という発明
(以下「乙19発明の1」という。
)が記載されているし,⑧屈曲部R
(突出部)の終端折り曲げ面2hの部位(端縁部)に係合される終端折り曲げ面3dの部位(突起部)が設けられ(構成要件Hに相当)
,⑨終
端折り曲げ面3dの部位(突起部)を屈曲部R(突出部)の終端折り曲
げ面2hの部位(端縁部)に契合されて身2(容器本体部)に外嵌される蓋3(蓋体)が備えられている蓋付容器である(構成要件Iに相当),
⑩上記の容器1(容器)
(構成要件Jに相当)
,という発明(以下,この
発明と乙19発明の1を併せて「乙19発明」という。
)が記載されて
いる。

以上によれば,本件発明1及び2と乙19発明とは,㋐乙19発明の容器1が熱可塑性樹脂発泡シートの片面(容器の内表面側)に熱可塑性樹脂フィルムが積層された発泡積層シートで成形加工されているか否かが不明である点(相違点1。構成要件A1関係)及び㋑乙19発明の容器1が屈曲部Rの端縁部の厚みが圧縮されて薄くなっているか不明であ
る点(相違点2。構成要件C関係)が相違する。原告は,後記の相違点4及び5があると主張するが,相違点4は乙19文献の記載(段落【0024】【図8】

)からすれば存在するといえないし,相違点5はその
数値範囲が本件発明1における数値範囲に包含されるから相違点でない。上記相違点1について,熱可塑性樹脂発泡シートの片面(容器の内表
面側)に熱可塑性樹脂フィルムが積層された発泡積層シートで容器を成形加工することは,乙20文献,特開2004-42954号公報(乙21)
,特開平11-236024号公報(乙22)
,特開2006-7
6643号公報(乙23)
,特開2006-103757号公報(乙2
4)
,特開平7-100914号公報(乙25)及び実公昭59-25639号公報(乙26)からすれば,出願日前の周知慣用技術であったから,この点について本件発明1及び2の構成を採用することは設計事項にすぎない。また,上記の周知慣用技術において熱可塑性樹脂フィルムの端縁部において利用者に怪我が生じることは,本件明細書に記載されていること(段落【0005】~【0007】
)から明らかなように,
当然に予測されるものであるから,これを防止することは公知の課題で
あり,これを解決する動機付けがあった。加えて,乙19発明と上記周知慣用技術の組合せは,技術分野及び作用や機能が共通するものであることなどからすれば阻害事由がないし,容器の材料を単層シートから発泡積層シートに変更することが当業者に公知であることからすれば当業者が通常の創作能力を発揮して予期し得る。本件発明1及び2が上記相
違点1に係る構成によって奏する作用効果は断熱性,優れた外観,耐熱性,熱加工性及び食品の熱湯調理性,適度の剛性及び成形性といったことが付与されるか改善される程度にすぎず,当業者が当然に予期し得る。したがって,上記相違点1につき乙19発明に上記周知慣用技術を組み合わせて本件発明1及び2の構成とすることは,当業者が容易に想到で
きた。
上記相違点2について,容器の突出部の端縁部において熱可塑性樹脂発砲シートが圧縮されて厚みが薄くなっていることは,本件出願日前に頒布され,一部のものは本件出願日前に公開された多数の文献(乙20~25)に記載された周知慣用技術であり,この点について本件発明1
及び2の構成を採用することは設計事項にすぎない。また,容器の材料として発泡積層シートを用いた場合に容器の端縁部の強度を向上することは,上記の文献(乙20~24)から明らかなとおり,公知の課題であり,これを解決する動機付けがあった。加えて,乙19発明と上記周知慣用技術の組合せは,乙19発明の目的達成を阻害しないことや技術分野,作用及び機能が共通することからすれば阻害事由がないし,容器のフランジ部を圧縮成形してリブを設けることが当業者に公知であることからすれば当業者が通常の創作能力を発揮して予期し得る。本件発明1及び2が上記相違点2に係る構成によって奏する作用効果は容器の耐熱変形性の向上,容器の寸法変化や変形の防止,フランジ部の切断面の強化といった程度で,当業者が当然に予期し得る。したがって,上記相
違点2につき乙19発明に上記周知慣用技術を組み合わせて本件発明1及び2の構成とすることは,当業者が容易に想到できた。
上記相違点1及び2については,上記各周知慣用技術のほか,多数の文献(乙20~26)に記載された各発明のいずれかに基づいても当業者が容易に想到できた。

また,仮に後記の相違点4があったとしても,後記の乙19原告主張発明の樹脂フィルムに周知慣用技術の発泡積層シート又は発泡シートを積層することについて動機付けがあるところ,端縁部の上下両面に凹凸形状が形成された乙19原告主張発明の樹脂フィルムと端縁部の上下両面が平坦に形成された発泡積層シート等を積層したシートを用いれば当
然に上面は凹凸形状で下面は平坦となるし,指を切るおそれがあるのは樹脂フィルムのみであるから,この層のみを凹凸形状として発泡積層シート等の部分は平坦に形成することとなり,本件発明1及び2の構成とすることは当業者が容易に想到できた。後記の相違点5についても,当業者において,後記の乙19原告主張発明における凹凸形状の数値範囲
は適宜変更してよい旨が乙19文献に記載されている(段落【0025】
)から,数値を変更して本件発明1及び2の構成とすることは容易に想到できた。
したがって,本件発明1及び2は,乙19発明に基づいて容易に発明することができたもの(特許法29条2項)である。
(原告の主張)
乙19文献に記載されている発明は,前記(被告の主張)

①~⑩の

とおりのものではなく,④を「しかも,屈曲部R(突出部)の少なくとも終端折り曲げ面2hには,波高(凸形状の高さ)が隣り合う凸形状のピッチの30~60%となり」と,⑥を「且つ当該凹凸形状は,凹凸形状を厚み方向に平行移動させた形で終端折り曲げ面2hの部位(端縁部)の上面と下面との両方に形成されていること」と改めたもの(下線部は異なる部分を示す。上記のとおり改めた後の発明を「乙19原告主張発明」という。
)である。
以上によれば,被告の主張する相違点1及び2は誤りであり,本件発明1及び2は,容器が,熱可塑性樹脂発泡シートの片面(容器の内表面
側)に熱可塑性樹脂フィルムが積層された発泡積層シートで成形加工されているのに対し,乙19原告主張発明は,容器1が非発泡樹脂フィルムで成形加工されている点(相違点1b)
,本件発明1及び2は容器の
突出部の端縁部において熱可塑性樹脂発泡シートが圧縮されて厚みが薄くなっているのに対し,乙19原告主張発明は,非発泡樹脂フィルムが
用いられており,また,容器全体が一定の厚みとなるように形成されている点(相違点2b)で相違する。以上に加えて,本件発明1は,容器の突出部の端縁部の上面側に,凹凸形状が形成され,当該端縁部の下面側が平坦に形成されているのに対し,乙19原告主張発明は,容器の突出部の端縁部の凹凸形状が,凹凸形状を厚み方向に平行移動させた形で
容器の端縁部の上面と下面との両方に形成されている点(相違点4),
本件発明1は,容器の突出部の端縁部に,凸形状の高さが0.1~1mmとなり,かつ,隣り合う凸形状の間隔が0.5~5mmとなるように凹凸形状が形成されているのに対し,乙19原告主張発明は,容器の突出部の端縁部に,凸形状の高さが隣り合う凸形状の間隔の30~60%であり,かつ,隣り合う凸形状の間隔が1~5mmとなるように形成されている点(相違点5)で相違する。
乙19文献に記載されているのは非発泡樹脂を用いた容器であり,被告が周知慣用技術と主張するもの及び文献(乙20~26)に記載されているものは発泡積層シートを用いた容器である。非発泡樹脂フィルムによって成形された容器は透明性が高いが断熱性に乏しく,フィルムが
薄く鋭利であるために指先を切りやすい。これに対し,発泡積層シートを用いた容器は,柔らかい発泡層を有していて指先を切ることがなく,発泡層に貼り付けられた非発泡の熱可塑性樹脂フィルムによって指先を切るおそれがあるにとどまる。このように,容器の端部において切創事故を引き起こす要因が異なるなど,技術分野が明らかに異なるから,乙
19発明や乙19原告主張発明を出発点としてその非発泡樹脂フィルムを発泡積層シートに置き換えることはあり得ない。その置き換えが設計事項や通常の創作能力の発揮程度の事項であるともいえないし,本件発明1及び2の前記相違点1及び1b,同2及び2bに係る効果を当業者が当然に予期し得るともいえない。

被告は,乙19発明から当業者が把握可能な課題の解決のために周知慣用技術の適用が容易に想到し得ることを主張していない。そして,乙19原告主張発明の課題は非発泡樹脂フィルムの端縁部における利用者の怪我の発生を防止することにあり,蓋取り外し時に指先を傷つけずに環状屈曲部の強度を高め,蓋を閉じたときの密閉力を高めた容器を提供
することを目的とする(段落【0006】【0007】。しかし,被告,

が主張する周知慣用技術は技術分野の異なる発泡積層シートに関する技術であって技術分野が異なり,根拠となる文献(乙20~26)の記載から上記課題の解決方法を把握することができないから,上記課題の解決のために上記周知慣用技術の適用を試みることはないし,阻害事由が存在しないともいえない。
前記相違点4及び5についても,前記のとおり他の文献(乙20~2
6)の記載は,乙19文献の記載と技術分野が異なり,乙19発明や乙19原告主張発明の課題を解決するものでないから,これらの発明に上記の文献記載の発明を組み合わせる動機付けがない。仮にそうした組合せを当業者が思い至るとしても,前記相違点4については,上記文献記載の発明は突出部の上下の面がいずれも平坦に形成するものであるから,
端縁部の上面及び下面側の両面に一体的に凹凸形状を形成する容器を想到することとなる。前記相違点5については,乙19原告主張発明の凸形状の高さが隣り合う凸形状の間隔の30~60%,隣り合う凸形状の間隔が1~5mmであり,この数値範囲を相互に組み合わせる発明として完結しているから,その数値範囲で組み合わせた高さ及び間隔の凹凸
形状を形成した容器を想到することとなる。そうすると,前記相違点4及び5のいずれについても,本件発明1及び2の構成を想到することはできない。
したがって,本件発明1及び2は乙19発明や乙19原告主張発明に基づいて容易に発明することができたもの(特許法29条2項)でない。

乙20文献記載の発明に基づく進歩性欠如
(被告の主張)
本件出願日前である平成7年6月6日に頒布された刊行物である乙20文献には,①発泡スチロール製の外皮15のシート(熱可塑性樹脂発
泡シート)の片面にハイインパクトポリスチレン製の内皮16(熱可塑性樹脂フィルム)が積層されたシート17(発泡積層シート)が用いられ,ハイインパクトポリスチレン製の内皮16(熱可塑性樹脂フィルム)が内表面側となるようにシート17(発泡積層シート)が成形加工されて,インスタント食品類や冷凍加工食品類(被収容物)が収容される収容凹部と(構成要件A1~A3に相当)
,②該収容凹部の開口縁から外
側に向けて張り出したフランジ部12(突出部)とが形成された容器1(容器本体部及び容器)であって(構成要件Bに相当)
,③フランジ部
12(突出部)のリブ13(端縁部)の上面が収容凹部の開口縁近傍のフランジ部12(突出部)の上面に比して下位となるように,フランジ部12(突出部)のリブ13(端縁部)において発泡スチロール製の外
皮15のシート(熱可塑性樹脂発泡シート)が圧縮されて厚みが薄くなっており(構成要件Cに相当)
,④且つリブ13(端縁部)の下面側が
平坦に形成されていること(構成要件Fに相当)
,⑤を特徴とする容器
1(容器)
(構成要件Gに相当)
,という発明(以下「乙20の1発明」
という。
)が記載されているし,⑥フランジ部12(突出部)のリブ1
3(端縁部)の外周部113に係止される部位(突起部)が設けられ(構成要件Hに相当)
,⑦その係止される部位(突起部)をフランジ部
12(突出部)のリブ13(端縁部)の外周部113に係止させて容器1(容器本体部)に外嵌される蓋(蓋体)が備えられている蓋付容器である(構成要件Iに相当)
,⑧上記の容器1(容器)
(構成要件Jに相

当)
,という発明(以下,この発明と乙20発明の1を併せて「乙20発明」という。
)が記載されている。
以上によれば,本件発明1及び2と乙20発明とは,乙20発明の容器1のフランジ部12のリブ13の上面側に凸形状の高さが0.1~1mmの範囲内の値となり,かつ,隣り合う凸形状の間隔が0.5~5m
mの範囲内の値となるような凹凸形状が形成されている(構成要件C及びDに相当する構成が採用されている)のか否か不明である点(相違点3)において相違する。
上記相違点3について,上記の凹凸形状を形成することは,乙19文献,実登3044932号公報(乙27)
,特開2004-67122
号公報(乙28)
,実開昭54-168205号公報(乙29)の記載
によれば,本件特許の出願前における周知慣用技術であるから,設計事項にすぎない。また,端縁部における利用者の怪我の発生を防止することは,乙19文献及び上記各公報(乙27~29)から明らかなとおり,公知の課題であり,これを解決する動機付けがあった。加えて,乙20発明と上記周知慣用技術の組合せは,乙20発明の目的達成を阻害しな
いことや技術分野,作用及び機能が共通することから阻害事由がなく,容器の突出部の少なくとも端縁部の上面側に凹凸形状を形成する際にその形状として種々の形状,寸法のものを選定し,組み合わせて適宜採用することは,当業者が通常の創作能力を発揮して行い得る。本件発明1及び2が上記相違点3に係る構成によって奏する作用効果は端縁部にお
ける利用者の怪我の発生を防止するといった程度で,凸形状の高さ及び間隔の寸法に関する数値は技術的に無意味な要件であることからして,当業者が当然に予期し得る。したがって,上記相違点3につき乙20発明に上記周知慣用技術を組み合わせて本件発明1及び2の構成とすることは,当業者が容易に想到できた。

上記相違点3については,上記各周知慣用技術のほか,多数の文献(乙19,27,28)に記載された各発明のいずれかに基づいても当業者が容易に想到できた。
したがって,本件発明1及び2は,乙20発明に基づいて容易に発明することができたもの(特許法29条2項)である。

(原告の主張)
乙20文献に記載されている発明は,前記(被告の主張)
①~⑧の

とおりではなく,④を「且つリブ13(端縁部)の上下の面のいずれも平坦に形成されていること」に改め,⑥及び⑦を削るよう改めたものである(以下,上記のとおり改めた後のものを「乙20原告主張発明」という。。

以上によれば,相違点についての被告の主張は誤りであり,本件発明1及び2は,容器の突出部の少なくとも端縁部の上面側に,凸形状の高さが0.1~1mmとなり,かつ,隣り合う凸形状の間隔が0.5~5mmとなるように凹凸形状が形成され,且つ該端縁部の下面側が平坦に形成されているのに対し,乙20原告主張発明は,容器の端縁部の上下
の面のいずれも平坦に形成されている点(相違点3b)
,本件発明2は,
容器本体の突出部の端縁部に係止される突起部が設けられ,該突起部を前記端縁部に係合させて外嵌される蓋体が備え付けられている蓋付容器であるのに対し,乙20原告主張発明は,容器本体に外嵌される蓋体に,容器本体の突出部の端縁部に係止される突起部が設けられていない点
(相違点6)で相違する。
乙20文献に記載の容器は発泡樹脂によって成形加工されたものであるのに対して,乙19文献及び被告の指摘する文献(乙27~29)に記載の容器はいずれも非発泡樹脂によって成形加工されたものである。発泡樹脂を用いた容器と非発泡樹脂を用いた容器とは技術分野が根本的
に異なるため,容器の端部における切創事故の要因も解決方法も異なり,乙20原告主張発明を出発点として,発泡積層シートを用いた容器に対して非発泡樹脂を用いた容器における切創防止のための端縁部の構造を組み合わせることはあり得ない。
また,乙20原告主張発明は発泡樹脂によって作製された容器を高温
に加熱した場合や外気温が高い場合に熱収縮などにより容器が変形し,容器と蓋との間に隙間が生じて熱湯が漏れる,蓋と容器との嵌合が正しく行われなくなるといった課題を解決することを目的としており,端縁部における怪我防止は課題とされていない。
そうすると,当業者が乙20発明や乙20原告主張発明を出発点として端縁部での怪我を防止するために被告の主張する周知慣用技術を組み合わせて構成要件Cの構成を採用する動機付けは全くなく,これが設計事項や通常の創作能力の発揮程度の事項であるとはいえない。
仮に上記周知慣用技術の組合せを当業者が思い至ることができたとしても,その構成は端縁部の上面側及び下面側の両面に一体的に凹凸形状を形成するものであるから,構成要件Cのように端縁部の上面に凹凸形
状を形成し,下面を平坦に形成する構成に到達することはできない。また,乙19原告主張発明は凸形状の高さが隣り合う凸形状の間隔の30~60%,隣り合う凸形状の間隔が1~5mmと特定され,被告が指摘する文献(乙27,28)に記載の発明も凸形状の高さ及び隣り合う凸形状の間隔の数値範囲がそれぞれ特定されており,これらの各数値範囲
を相互に組み合わせる発明として完結しているから,上記周知慣用技術を組み合わせても,その数値範囲で組み合わせた高さ及び間隔の凹凸形状を形成した容器を想到することとなる。
被告は,乙20発明から当業者が把握可能な課題の解決のために周知慣用技術の適用が容易に想到し得ると主張していない。そして,乙20
原告主張発明は発泡積層シートによって成形加工された容器の発明であり,熱湯の注入,電子レンジによる加熱,倉庫などにおける保管中及び運送中などの耐熱変形性を向上させた発泡性樹脂製容器を提供することを目的とする(段落【0007】
)のに対し,被告が指摘する乙19文
献及び他の文献(乙27~29)はこうしたことを目的としていないか
ら,乙20原告主張発明に対して周知慣用技術や上記各文献記載の発明を組み合わせる動機付けはないし,阻害事由がないともいえない。以上によれば,上記相違点3b及び6につき,本件発明1及び2の構成を容易に想到し得ないことは明らかである。
したがって,本件発明1及び2は乙20発明や乙20原告主張発明に基づいて容易に発明することができたもの(特許法29条2項)でない。ウ
明確性要件違反の有無
(被告の主張)
構成要件Dは,本件発明1及び2の技術的特徴の一部を構成する要件であるところ,その「凸形状の高さ」は,本件明細書の記載(段落【0019】【図2】【図3】


)によれば,端縁部15の下面側15dの底辺から
突起15aの頂部の最高点までの距離であると明確に定義されている。こ
れに対し,原告は,凸形状の頂部から凸形状の底部までの距離をいうと主張している。仮にこの主張が正しいとするならば,上記のとおり本件明細書において明確に定義されたものが誤りとなるが,そのように二重に解釈され得る「凸形状の高さ」を要素として含む構成要件Dは不明確であり,こうした不明確な構成要件を含む本件発明1及び2も不明確であり,発明
が明確である(特許法36条6項2号)とはいえない。
(原告の主張)
前記⑴エ(原告の主張)のとおり,
「凸形状の高さ」の意味は一義的に
明確であり,被告が主張するように二重に解釈され得ない。

サポート要件違反の有無
(被告の主張)
原告は,本件発明1及び2の特許出願についての拒絶査定に対する審判請求書(乙12)において,突出部の端縁部の圧縮薄肉化によって第1の強度向上が図られ,更に,その上面に凹凸形状が形成されることによって
第2の強度向上が図られたのが本件発明1及び2であると説明し,これによって特許査定を受けた。したがって,本件発明1及び2は,構成要件D及びEにより,第1の強度向上を図って圧縮薄肉化された突出部の端縁部の更にその正面に凹凸形状を形成することによって第2の強度向上を図ることを実質的に発明特定事項とするものと解される。
しかし,本件明細書において,上記の発明特定事項は明示的に記載されていないし,突出部の端縁部の凹凸形状(波形の突起15aの形状)はそ
の逆形状となる凹凸形状が形成されている雄形100の凹凸形成部102によって一時に圧縮成形される旨を説明しており(段落【0033】~【0035】【0040】【0041】,突起15aの凸部はその凹部よ,


りも圧縮の度合いを弱めて形成することしか説明していない。この説明に基づけば,突出部の端縁部における強度向上の程度が低下し,原告の主張
する第1の強度向上も第2の強度向上も実現しない。また,上記の出願経過によれば,原告が主張した2段階の強度向上は,本件特許の出願時の技術常識を越える顕著な作用効果を奏するものであったはずであるから,上記出願時の技術常識を勘案しても,上記の発明特定事項が本件明細書によって説明されたということはできない。

したがって,本件特許は,本件発明1及び2が発明の詳細な説明に記載されたもの(特許法36条6項1号)でない。
(原告の主張)
本件発明1及び2に係る特許請求の範囲の文言上,被告が主張する発明特定事項はなく,存在しない発明特定事項について本件明細書の発明の詳
細な説明に記載がないのは当然である。被告の主張は失当である。オ
実施可能要件違反の有無
(被告の主張)
前記エ(被告の主張)の発明特定事項は,本件明細書の発明の詳細な説
明に記載されておらず,記載された容器の成型方法から実現することができず,本件特許の出願時の技術常識に照らしても発明の詳細な説明に記載されたものということはできないから,本件発明1及び2に係る発明の詳細な説明の記載は,上記発明特定事項について,その実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したもの(特許法36条4項1号)でない。(原告の主張)
前記エ(原告の主張)のとおり,被告の主張する発明特定事項はないか
ら,本件明細書においてそのような発明特定事項を実現することができないのは当然である。被告の主張は失当である。


争点⑶(差止めの必要性)について
(原告の主張)

被告は,遅くとも平成27年8月以降,突出部に凹凸形状が形成された被告製品(包装用容器)は製造しておらず,在庫も廃棄したと主張するが,前記前提事実⑷に係る仮処分命令申立事件において被告製品の金型を変更したことを直接疎明する資料を提出せず,提出された写真撮影報告書その他の疎明資料は信用できないし,製品の形状を変更したと主張しながら品番や製品
名の変更を行っておらず,また,在庫を廃棄したという主張についても,これを完了したことを確実に証明する資料を取得,提出していないことから,疑問がある。また,被告は,本件仮処分命令に加え,上記仮処分命令申立事件と当事者が同一であり事案が類似する別件の仮処分命令申立事件についての仮処分命令の発令を受けて被告製品の製造販売を終了する旨のプレスリリ
ースを行う一方で,上記別件の仮処分命令の対象製品の販売を行ったことを自認しており,被告が被告製品の製造販売を行う可能性が高い。さらに,本件和解は本件訴訟の第1審終了まで被告製品(容器については端縁部の上面側に凹凸形状があるものに限る。
)の製造販売を差し控えるものにすぎず,
上記第1審終了後に被告製品の製造販売を再開する可能性を否定できない。
したがって,被告が被告製品の製造販売を行い,本件特許権を侵害するおそれは現時点においても存在しており,差止めの必要性がある。
(被告の主張)
被告は,平成27年7月までにフランジの端縁に旧金型(凹凸形状が形成されている被告容器を製造するために用いていた金型)の凸状部分を削り取って平坦にしており,遅くとも同年8月以降,突出部に凹凸形状が形成された被告製品(包装用容器)は製造していない。平成28年4~5月頃からは
旧金型により製造された被告製品(包装用容器)を出荷しないようにした上で順次廃棄し,これを同年6月17日に完了したが,本件仮処分命令を受けて,被告製品の製品名(品番)を変更することとし,カタログの情報提供の中止,受注ができないようにする措置,製造販売終了の告知その他の対応をした。このように,被告は,フランジの端縁に凹凸形状がある被告製品の製
造販売は行っておらず,顧客から要望がない以上,再び行う可能性もないから,被告製品の製造販売等を差し止める必要性はない。


争点⑷(損害額)について
(原告の主張)


特許法102条3項に基づく損害額
平成25年7月から平成29年2月までの3年8か月間における被告製品の総売上高は●(省略)●円である。この額は,被告が,被告製品を構成する製品の品番のうち凹凸形状のあるものとないものを合計したものとして主張するものであるが,前記⑶(原告の主張)のとおり,凹凸形状の
ないものに被告製品の形状を変更したという被告の主張は信用できないから,この額が被告製品の売上高である。
また,原告は第三者に対して本件発明1及び2の実施許諾をしていないが,本件発明1及び2と同一の分野における実施料率は3.0~3.9%である。本件発明1及び2は,断熱性に優れた発泡積層シートを成形した
容器において端縁部での怪我の防止と蓋体の強固な止着の料率という従来困難であった課題を解決した画期的発明であり,技術的価値が大きいもので,原告は,端縁部の凹凸形状を「セーフティエッジ」と称して宣伝,広告を行っているものであり,しかも,原告が販売する製品のほかに代替品がない。
以上のことに加え,特許発明を無断実施した者も特許権者と実施許諾契約を締結した者と同様に通常の実施料率を支払えば足りるとすれば権利侵
害を助長することになりかねないという特許法102条3項の趣旨に照らせば,同項に関する実施料率は10%を下回らない。
以上によれば,特許法102条3項に基づく損害額は,●(省略)●円を下回らない。

弁護士費用
原告は,被告による本件特許権の侵害行為により本件訴訟を提起せざるを得なくなり,弁護士費用の支出を余儀なくされた。本件特許権の侵害に対応する弁護士費用は,上記損害額の10%を下回らない。

(被告の主張)

特許法102条3項に基づく損害
被告製品の包装用容器は,平成27年7月までに金型全てを端縁部に凹凸形状がないものに変更しており,凹凸形状がないものは本件特許権を侵害しない。凹凸形状のない包装用容器を除いた被告製品の総売上高は,●(省略)●円である。

原告の主張する実施料率は誤っている。本件発明1及び2は,発泡積層シートからなる容器の収容凹部の開口縁から外側に向けて張り出した突出部の端縁部の上面側に特定の寸法の凹凸形状を設けた点に特徴があり,それ以外の点は従来技術であって,特徴のある部分が容器全体に対して占める面積は1%に満たないし,食品容器用の発泡積層シートにおいて積層シ
ートの薄くて柔らかい熱可塑性樹脂フィルムによって指等に裂傷を生じることはそもそも起こらないのであって,その技術的価値は極めて低い。原告の主張する「セーフティエッジ」は本件発明1及び2の実施品を対象としたものでないばかりか顧客の購入動機となっていない。
以上によれば,本件発明1及び2の実施料率は0%というべきであるが,仮にそうでないとしても,通常の実施料率2%の100分の1である0.02%を上回らない。したがって,特許法102条3項に基づく損害額は,
●(省略)●円を上回ることは決してない。

弁護士費用
争う。

第3
当裁判所の判断

1
本件発明1及び2の技術的意義


特許請求の範囲及び本件明細書の記載

(甲3の2)の発明の詳細な説明には次の記
載がある。

技術分野
「本発明は,例えば,食品容器等として使用される,熱可塑性樹脂発泡シートの片面に熱可塑性樹脂フィルムが積層された発泡積層シートが用いられてなる容器,詳しくは,該発泡積層シートを用いて成形することにより,収容凹部と該収容凹部から外側に向けて張り出した突出部とが形成されてなる容器に関する。(段落【0001】




背景技術
「従来,熱可塑性樹脂発泡シートに,非発泡の熱可塑性樹脂フィルムを積層した発泡積層シートを用いて成形された容器は,優れた断熱性及び軽量性を備え且つ低価格であるといった熱可塑性樹脂発泡シート製容器(例え
ば,スチレン系樹脂発泡シート製容器)の特性の他,熱可塑性樹脂フィルムが積層されていることにより,容器強度が向上し,表面が平滑となり,かつ各種の印刷を施すことが可能となる等の特徴が加味され,弁当,惣菜等の食品容器等に使用されている。

「上記の如き容器に於いては,フランジ状の突出部の外側に蓋体が外嵌装着されたり,この突出部の外側端部を覆い隠すようにラップフィルムが被せられて使用されたりしており,「
」(文献には,
)…内側に突出する突起部
を蓋体に設けて,該突起部をフランジ状の突出部に係合させて蓋体を容器本体部に外嵌させることが」記載されている。
「斯かる容器は,トリミング刃等で打ち抜いて製造されるため,熱可塑性樹脂発泡シートと熱可塑性樹脂フィルムとの硬さの差により,切断面(外
側端面)に於いて硬い熱可塑性樹脂フィルムが柔らかい熱可塑性樹脂発泡シートよりも外側に突き出た状態となり,且つ熱可塑性樹脂フィルムの切断面の形状が鋭利になりやすく,容器に触れた際に,硬いフィルムで指等を裂傷する虞がある。

「フィルム端縁で指等を裂傷するという課題を解決するために,突出部の
端縁部を熱盤と接触させて又は熱線に曝して熱収縮させ,該突出部の外側端面(切断面)上下の角を丸く処理することが開示されている。
しかしながら,このように熱収縮される処理が施された容器は,熱による収縮量の調整が困難であることから,寸法精度の良好なものとは言い難いものである。

更に,熱盤と接触させたものに於いては,熱盤に樹脂カスが付着し易く,これら樹脂カスが外側端面部に付着することもあり,かえって硬い樹脂カスが裂傷などを引き起こすという問題も有している。


(文献には)フィルム端縁で指等を裂傷するという課題を解決するために,突出部の上下面にジグザクとなる凹凸を形成させることが記載されて
いる。
しかし,このように突出部の上下面にジグザグとなる凹凸を形成すると,蓋体を外嵌させる際に突起部が係合される突出部の下面側にも凹凸形状が形成されることとなる。
特に,熱可塑性樹脂フィルムが内表面となるように発泡積層シートを成形した容器本体部の突出部の下面側に凹凸形状を形成させると,蓋体の突起部が,突出部の下面側の発泡シート表面に形成された凸部先端と接触す
ることとなるため,凸部が潰れやすく,強固な係合状態を形成させることが困難となる。
すなわち,従来の容器構成では,発泡積層シートを成形した容器において,端縁部での怪我を防止しつつ蓋体などを強固に止着させることが困難であるという問題を有している。

また,従来の容器製造方法は,端縁部での怪我が抑制され,蓋体などが強固に止着され得る容器を簡便なる方法で製造することが困難であるという問題を有している。(段落【0002】~【0008】



発明が解決しようとする課題
「本発明は,断熱性に優れた発泡積層シートを成形してなる容器において,
端縁部での怪我を防止しつつ蓋体を強固に止着させうる容器の提供を課題としている。(段落【0009】



課題を解決するための手段
「前記課題を解決するための容器にかかる本発明は,
」本件発明1の構成
を特徴としている。
(段落【0010】



発明の効果
「本発明の容器は,熱可塑性樹脂発泡シートの片面に熱可塑性樹脂フィルムが積層された発泡積層シートが用いられて形成されており,断熱性に優れた容器である。また,前記熱可塑性樹脂フィルムが内表面側となるよう
に前記発泡積層シートが成形加工されて形成されている。
そして,本発明の容器は,前記発泡積層シートが成形加工されて,被収容物が収容される収容凹部と,該収容凹部の開口縁から外側に向けて張り出した突出部とが形成された容器本体部を有している。
さらに,突出部の上面側には前記熱可塑性樹脂フィルムが配され,下面側には熱可塑性樹脂発泡シートが配され,熱可塑性樹脂フィルムが配される端縁部の上面側に凹凸形状を形成させ且つ熱可塑性樹脂発泡シートの配
される下面側を平坦に形成させている。
したがって,断熱性に優れ,上面側に凹凸形状を形成させて熱可塑性樹脂フィルムの端縁を上下にジグザグとなるように形成させることにより利用者の怪我などを抑制させ,下面側が平坦に形成されていることから蓋体を外嵌させる際に強固な係合状態を形成できる。

すなわち,本発明の容器は,端縁部での怪我を防止しつつ蓋体などを強固に止着させうる。(段落【0012】




手続補正書及び審判請求書の記載
証拠(乙12〔2〕
,13,15。掲げた証拠の直後の〔〕内の記載はそ

の関係ページ番号又は関係部分である。以下同じ。
)及び弁論の全趣旨によ
れば,出願人である原告は,平成25年3月25日付け手続補正書(乙13)により,本件発明1及び2に係る特許請求の範囲中「前記突出部の少なくとも端縁部は,上面側に凹凸形状が形成され,外凹凸形状の凸形状の高さが0.1~1mmとなり,隣り合う凸形状の間隔が0.5~5mmとなるように形
成されており,且つ下面側が」を「前記突出部の端縁部の上面が収容凹部の開口縁近傍の突出部の上面に比して下位となるように,突出部の端縁部において前記熱可塑性樹脂発泡シートが圧縮されて厚みが薄くなっており,しかも,該突出部の少なくとも端縁部の上面側には,凸形状の高さが0.1~1mmとなり隣り合う凸形状の間隔が0.5~5mmとなるように凹凸形状が
形成され,且つ該端縁部の下面側が」と補正した(下線部は補正により変更された部分である。。そして,原告は,同日付け審判請求書において,本件)
発明1が上記端縁部の構成に主たる特徴を有するもので,端縁部が突出部の他の部分に比して圧縮薄肉化されることにより,突出部の端縁部の強度が向上することになり,突出部の端縁部に蓋体を強固に止着されることができ,しかも,圧縮により薄肉化された端縁部において,その上面に形成された所定の寸法関係を有する凹凸形状によって更に端縁部の強度が向上して蓋体を
強固に止着させることができ,端縁部の下面は平坦に形成されているので端縁部の下面が凹凸形状となっているものに比してより一層強固確実に蓋体を止着させることができる旨を記載した。

本件発明1及び2の技術的意義
上記⑴の記載によれば,本件発明1及び2は,熱可塑性樹脂発泡シートに非発泡の熱可塑性樹脂フィルムを積層した発泡積層シートを成形してなる容器について,熱可塑性樹脂発泡シートと熱可塑性樹脂フィルムとの硬さの差により,容器に触れた際に,硬いフィルムで指等を裂傷するおそれがあるが,突出部の上下面に凹凸を形成すると,蓋体を外嵌させる際に突起部が係合さ
れる突出部の下面側にも凹凸形状が形成されることとなって強固な係合状態を形成させることが困難となり,端縁部での怪我を防止しつつ蓋体などを強固に止着させることが困難であるという課題を,本件発明1の構成,特に上記端縁部の上面に凹凸形状を形成する一方で下面は平坦とする形状とすることによって解決することとしたものということができる。

また,上記⑵の記載を参酌すると,本件発明1及び2は,上記端縁部を,厚みが圧縮されて薄肉化されたもので,かつ,上面に凹凸形状が存在するものとすることにより,その強度を強め,これによって蓋体を強固に止着させるという課題を解決するものということができる。
以上によれば,本件発明1及び2は,容器の突出部の端縁部の形状につい
て,上面に他の部分との厚みの差を付けて凹凸形状を形成するという形状とすることで端縁部での怪我を防止するとの課題を解決し,端縁部につき上記の端縁部の形状とすることに加えて下面を平坦にすることで,蓋の強固な止着を実現するという課題を解決し,これによって上記各課題の双方を解決することを技術的意義とする発明である。
2
争点⑴(被告製品の本件発明1及び2の構成要件充足性)について⑴

争点⑴ア(構成要件B「開口縁」及び「突出部」の充足性(被告製品1,2,4,7)
)について

本件発明1及び2に係る特許請求の範囲によれば,
「容器」は「被収容
物が収容される収容凹部」と「該収容凹部の開口縁から外側に向けて張り出した突出部」が形成された「容器本体部」を有するものである。「開口」
は「外に向かって穴が開くこと。また,その穴」という意味を一般に有し,
「縁」は「もののはし・へり。特に,まわりの枠」「突出部」は「高く鋭,
く突き出た部分」という意味を一般に有する(広辞苑〔第六版〕参照)。
そうすると,
「開口縁」は,被収容物が収容される部分から外に向かっ
て開いた穴のへりという意味であり,
「突出部」は上記開口縁から外側に
向けて張り出し,突き出た部分という意味であると解される。


本件明細書(甲3の2)の発明の詳細な説明欄には,前記1⑴ア~オの記載があるほか,
「本発明の好ましい実施の形態」として,
【図2】及び
【図3】で示した容器であって,
「容器本体部10は,底部11と,該底
部11から立設された側周壁部12と,該側周壁部の上端縁13から外側
に向けて張り出した突出部14とを有し…前記側周壁部12の上端縁13がこの収容凹部の開口縁となるように形成され…突出部14は,この側周壁部12の上端縁13(以下「開口縁13」ともいう)から外側に張り出して形成されており,該突出部14は,開口縁13からの突出長さが開口縁13全周において略均一となるように形成されており,その外周縁の形
状が角部が丸められた正方形となるとなるように形成されている。」との
記載があり,
【図2】【図3】では,開口縁から外側に平坦な突出部が張

り出していることが示されているが,発明の詳細な説明欄には,突出部の端縁部の形状についての説明はあるものの,上記平坦な突出部についての説明はない(発明を実施するための最良の形態。段落【0014】~【0020】【図2】【図3】。



以上によれば,本件明細書においても,発明の構成につき特許請求の範
囲の記載と同様の記載がされ,その実施例においても,側周壁部の上端縁であり,被収容物が収容される収容凹部のへりといえる開口縁から外側に張り出して形成されているものが突出部とされている。実施例を示す図面には突出部が水平で平坦な容器が示されているが,発明の詳細な説明欄には,突出部が平坦であることについての説明はなく,本件発明1及び2の
突出部を突出部が平坦なものに限る趣旨の記載は見当たらない。これらによれば,
「開口縁」及び「突出部」については,上記アのように解するの
が相当であり,
「突出部」は水平で平坦なものには限られない。

これに対して,被告は,出願経過に照らし,本件発明1及び2は突出部が水平で平坦である容器に関する発明であると主張する。
原告は,前記1⑵のとおり,
「前記突出部の端縁部の…且つ該端縁部の」
と補正をしたものであるところ,証拠(乙12〔2〕
)によれば,審判請
求書において,上記補正の根拠として,突出部の端縁部において熱可塑性樹脂発泡シートが圧縮されて薄肉とされたものであることを明確にしたも
のであり,この点が本件明細書の例えば段落【0019】や【図3】b)に記載されているもので,願書に添付した明細書及び図面に記載された事項の範囲内のものである旨記載したことが認められる。
上記認定事実によれば,補正の前後に係る特許請求の範囲をみても,補正された部分は「端縁部の上面」と「収容凹部の開口縁近傍の突出部の上
面」の位置関係と端縁部における形状についてであって,突出部の形状が水平で平坦である旨の明示的な記載も示唆も見当たらないし,原告が主張したのは本件明細書において発明の実施の形態として記載(段落【0019】や【図3】b)
)があることから補正の要件を満たすということであ
るから,突出部の形状が水平で平坦なものに限定する趣旨を読み取ることができない。したがって,本件発明1及び2の容器の突出部が水平で平坦であると解することはできず,被告の主張は採用できない。


被告製品1,2,4及び7の包装用容器は,証拠(甲5)によれば,容器の縁に比べて中央がへこんでおり,その上部が閉じられずに穴となっていると認められる。そして,中央方向のへこんだ部分の上部が穴となっており,その穴の縁が「開口縁」に当たる。また,上記の穴の縁から外側に向けて張り出した部分があると認められるから,この部分が「突出部」に
当たる。したがって,構成要件Bの「開口縁」及び「突出部」を充足する。⑵

争点⑴イ(構成要件C「端縁部の上面が…突出部の上面に比して下位」の充足性(被告製品2,5)
)について

構成要件Cにおいては,
「端縁部の上面」が「収容凹部の開口縁近傍の
突出部の上面」に比して下位であることが記載されているところ,本件発明1に係る特許請求の範囲によれば「収容凹部」は「被収容物が収容される」ものであり,また,一般に「収容」が物を一定の場所におさめ入れることを意味し,
「凹部」が物の表面が部分的にくぼんでいる部分,くぼみ
の部分を意味する(広辞苑〔第六版〕参照)ことからすれば,物が納めら
れるくぼんだ部分を意味すると解される。
本件明細書の発明の詳細な説明欄をみると,前記1⑴ア~オの記載に加え,実施例として,底部が容器本体部に被収容物を収容させるべく設けられた収容凹部の底を形成すべく設けられており,角部が丸められた(Rが設けられた)正方形に形成され,側周壁部が前記底部の外周縁からやや外
向きに傾斜された状態に立設されており,容器本体部10において,前記側周壁部の上端縁がこの収容凹部の開口縁となるように形成されている例が記載されている(発明を実施するための最良の形態。段落【0016】,
【図1】~【図3】。そうすると,本件発明1の構成として特許請求の範)
囲の記載と同じ記載があり,その実施例もその記載が通常意味するところに符合する。
以上に加えて「開口縁」及び「突出部」が前記⑴アのとおり解されるこ
とを踏まえると,
「収容凹部の開口縁近傍の突出部の上面」は,物が納め
られるくぼんだ部分から外に向かって開いた穴のへりを起点として,当該起点から外側に向けて張り出し,突き出た部分の上面を意味すると解される。

被告は,被告製品2及び5の構成要件Cの充足性を争うところ,被告製品2の包装用容器において,上記「収容凹部の開口縁近傍の突出部の上面」は,別紙写真目録記載1の写真の「突出部」で示された橙色の部分のうち,外に向かって開いた穴の縁を起点として,当該起点から外側に向けて張り出し,突き出た部分の上面を意味し,
「端縁部の上面」は,上記突出部の
端縁部の上面である。そうすると,後者の高さが前者の高さより下にある
といえる。
被告製品5の包装用容器において,上記「収容凹部の開口縁近傍の突出部の上面」は,別紙写真目録記載2の写真中「突出部」で示された橙色部分の垂直な部位と水平な部位との境界であり,
「端縁部の上面」は当該部
分より右の部分の右端の上面である。そうすると,後者の高さが前者の高
さより下にあるといえる。

これに対し,被告は,
「収容凹部の開口縁近傍」に当たるのは,被告製
品2の包装用容器については,収容凹部の開口縁近傍の高さに高低があるから,最も低い部位の開口縁近傍であり,被告製品5の包装用容器につい
ては,内嵌される蓋があるから,当該蓋の最下部と同じ高さであると主張し,別紙写真目録記載の「収容凹部の開口縁近傍の突出部の上面の高さ」で示された部分であると主張する。
しかし,被告製品2については,段差があるから最も低い部位までしか物が入らないとはいえないし,被告製品5については,本件発明1において蓋の存在が構成要件の一部とならないことからすれば,蓋の存在を前提とすることは相当でない。また,証拠(甲5〔108,159〕
)によれ

ば,被告製品2及び5において,段差の最も低い部位や蓋の最下部よりも高い位置まで食品が収容されており,被告においてもこうした収容の態様を予定していることが認められる。
そうすると,被告製品2及び5の「収容凹部の開口縁近傍」に関する被告の主張は採用することができない。


したがって,被告製品2及び5はいずれも構成要件Cの「端縁部の上面が…突出部の上面に比して下位」を充足する。



争点⑴ウ(構成要件C「端縁部の上面が…下位となるように…圧縮されて厚みが薄くなって」の充足性)について


本件発明1及び2に係る特許請求の範囲の記載は,①「前記突出部の端縁部の上面が収容凹部の開口縁近傍の突出部の上面に比して下位となる」という構成と,②「突出部の端縁部において前記熱可塑性樹脂発泡シートが圧縮されて厚みが薄くなっており」という構成であり,かつ,これらの構成が「ように」で結ばれている。
「ように」を助動詞「ようだ」の連用

形又は名詞「よう」に助詞「に」を組み合わせたものとし,
「ように」の
後の部分がその前の部分を目的とする行動等を示す意味を有するとするとし(甲12,13,乙14)
,その行動等を②の「圧縮」と解すると,端
縁部において上記シートを圧縮して厚みを薄くする工程(上記②)を行い,その結果として端縁部の上面が上記のとおり下位となること(上記①)を
示していると解する余地があるが,本件発明1及び2は物の発明であって方法の発明ではないのであるから,直ちにこのような関係にあるとは限られない。この部分を物の態様を示すものとしてみると,上記①及び②の各構成が両立することは必要であるが,更に進んで上記②の圧縮に基づかずに上記①となる形状の容器が本件発明1及び2の技術的範囲に属しない趣旨を含むのか否かは明らかでない。

本件明細書の発明の詳細な説明欄をみると,前記1⑴ア~オの記載に加え,
「前記容器本体部10は,前記突出部14の端縁部15において,前記熱可塑性樹脂発泡シートが圧縮された状態となっており,前記波形の突起15aの高さ(図2,図3の“h1”)が0.1~1mmとなり,隣り合う突起15aの間隔が0.5~5mmとなるように形成されていることが
怪我防止の観点から好ましい。/そして,前記端縁部15の上面は,収容凹部の開口縁13近傍の突出部14の上面に比べて下位となるように端縁部15が圧縮された状態となっている。/すなわち,前記突出部14は,開口縁13近傍から端縁部15にかけて厚みが減少されており,この厚みが減少している領域において丸みを帯びた形状が形成されている。「この」

ように,突出部14の上面側に前記熱可塑性樹脂フィルムが配され,下面側には熱可塑性樹脂発泡シートが配され,しかも,端縁部15の上面側15uに凹凸形状が形成され且つ下面側15dが平坦に形成されていることから前記蓋体20を外嵌させる際にこの平坦に形成された端縁部15の下面側15dに強固な係合状態を形成させることができる。/しかも,熱可
塑性樹脂フィルムの端縁を上下にジグザグとなるように形成させることにより利用者の怪我などを防止できる。(発明を実施するための最良の形態。」
段落【0019】【0020】「/」は改行を示す。


)との記載がある。
上記記載によれば,本件発明1及び2は前記1⑶のとおりの技術的意義を持つもので,端縁部の下面が平坦であることとその厚みが薄いことの双
方が備わることで,それぞれの効果が生じ,蓋の強固な止着が実現するのであって,端縁部が圧縮されて薄くなっていることと上面の位置との関係に何らかの技術的意義があるものでないし,実施例においても何らの効果も示されていない。そうすると,物の態様として「ように」の語が特段の意味を有すると解することはできず,前記ア①及び②の各構成が両立していれば足りると解するのが相当である。

これに対し,被告は,
「突出部の端縁部において…薄くなっており」と
いう構成によってのみ「前記突出部の…下位となる」構成が実現しなければならないと解釈すべき旨を主張し,その根拠として本件明細書の記載(段落【0019】,審判請求書(乙12)において上記部分に係る補正)
の根拠を本件明細書の「例えば段落0019や図3(b)
」と主張したと
いう出願経過を挙げる。

しかし,上記の本件明細書の記載(段落【0019】
)は実施例の記載
であり,こうした実施例があることから上記のとおり解釈することは相当でないし,当該記載が引用する【図3】b)によれば端縁部の下面も端縁部以外の突出部の下面に比して下位となっており,端縁部を圧縮して薄くしなくても端縁部の上面が端縁部以外の突出部の上面に比して下位となっ
ているとみる余地がある。補正の根拠に関する主張は,補正に係る部分が本件明細書の記載の範囲内であることを指摘したものであって,説明した部分に補正に係る部分の解釈を限定する趣旨を読み取ることはできない。被告の主張は採用できない。

証拠(甲5)及び弁論の全趣旨によれば,被告製品(包装用容器)は,端縁部の上面の高さが開口縁近傍の突出部の高さよりも低いことが認められる。
また,後掲の証拠及び弁論の全趣旨によれば,①別紙被告製品目録記載2⑵,⑺~⑼,⑾及び⒀,同記載3⑵及び⑻,同記載5⑴及び⑶,同記載
6⑵並びに同記載7⑴及び⑶の各包装用容器を除く被告製品(包装用容器)について,端縁部の厚さが開口縁近傍の突出部の厚さよりも薄いこと(甲6~9)
,②被告製品1~7のそれぞれに属する包装用容器について,外寸が異なるほかに相違点がうかがわれないこと(甲5)が認められる。そうすると,被告製品(包装用容器)全部について,上記①のとおり推認するのが相当である。
したがって,被告製品(包装用容器)は,構成要件Cの「下位となるよ
うに…圧縮されて厚みが薄くなって」を充足する。


争点⑴エ(構成要件D及びE「凸形状の高さが0.1~1mm」の充足性)について

本件発明1及び2に係る特許請求の範囲の記載は,
「容器」の「収容凹
部の開口縁から外側に向けて張り出した突出部」について,
「端縁部の上
面が…形成され」との記載(構成要件C~E)と,
「該端縁部の下面側が
…形成され」との記載(構成要件F)が,
「且つ」で結ばれている。そし
て,その「端縁部の上面」について,
「収容凹部の開口縁近傍の…下位と
なるように,端縁部において前記熱可塑性樹脂発泡シートが圧縮されて厚
みが薄くなっており」
(構成要件C)「該突出部の少なくとも端縁部の上

面側には,凸形状の高さが0.1~1mmとなり…凹凸形状が形成され」(構成要件D,E)とされている。
そうすると,
「凸形状の高さが0.1~1mm」である「凹凸形状」は,
端縁部の上面の特徴を示していると解される。また,上記「凹凸形状」は,
「端縁部の上面側」に「凸形状の高さが0.1~1mm」となることが定められているところ,
「側」は相対するものの一方の面を一般的に意味す
ることに照らせば,この凸形状の高さとは,端縁部の上面において形成されている凸形状の高さをいうと解される。
以上を踏まえると,
「凸形状の高さ」は,端縁部の上面における凸形状

の高さであり,具体的には,端縁部の上面側における凸型状の底部と凸形状の頂部との距離をいうと解するのが相当である。

本件明細書(甲3の2)の発明の詳細な説明には,前記1⑴ア~オの記載があるほか,
「本発明の好ましい実施の形態」として,
【図2】及び【図
3】で示した容器であって,
「前記突出部14の端縁部15において,前
記熱可塑性樹脂発泡シートが圧縮された状態となっており,前記波形の突起15aの高さ(図2,図3の“h1”)が0.1~1mmとなり,隣り合
う突起15aの間隔が0.5~5mmとなるように形成されていることが怪我防止の観点から好ましい。そして,前記端縁部15の上面は,収容凹部の開口縁13近傍の突出部14の上面に比べて下位となるように端縁部15が圧縮された状態となっている。すなわち,前記突出部14は,開口縁13近傍から端縁部15にかけて厚みが減少されており,この厚みが減
少している領域において丸みを帯びた形状が形成されている」ものが記載されている(段落【0019】。そして,

【図2】及び【図3】において,
端縁部の下面と突起の頂部との距離を波形の突起の高さ(h1)としている。
上記記載によれば,発明の詳細な説明には,特許請求の範囲の記載と同
旨の記載がされている一方,実施例として記載されているものについて,【図2】及び【図3】において,端縁部の下面と突起の頂部との距離を波形の突起の高さ(h1)としている。もっとも,上記は,実施例において波形の突起の高さを記載したものであって,前記のとおり,特許請求の範囲の記載から「凸形状の高さ」の意味が判明することからすれば,こうし
た実施例の記載を根拠として,特許請求の範囲の「凸形状の高さ」の文言の意味を解するのは相当でない。
以上によれば,
「凸形状の高さ」は,端縁部の上面側における凸形状の
底部と凸形状の頂部との距離を意味すると解するのが相当である。ウ
被告製品は,後掲の証拠によれば,別紙被告製品目録記載2⑵,⑺~⑼,⑾及び⒀,同記載3⑵及び⑻,同記載5⑴及び⑶,同記載6⑵並びに同記載7⑴及び⑶の各包装用容器を除く被告製品(包装用容器)について,端縁部の上面側における凸形状の底部と凸形状の頂部との距離が0.1~1mmであること(甲6~9)
,被告製品1~7のそれぞれに属する包装用
容器について,外寸が異なるほかに相違点がうかがわれないこと(甲5)が認められる。そうすると,被告製品(包装用容器)全部について,端縁
部の上面側における凸形状の底部と凸形状の頂部の距離が0.1~1mmであると推認するのが相当である。したがって,被告製品(包装用容器)は,構成要件D及びEの「凸形状の高さが0.1~1mm」を充足する。⑸
争点⑴オ(構成要件D及びE「凸形状」の充足性)についてア
被告は,本件発明1及び2の特許出願についての拒絶査定に対する審判請求書(乙12)における原告の説明を根拠に,
「凸形状」は圧縮して形
成された端縁部の上に更に凹凸形状を設けているものでなければならないと主張する。


本件発明1及び2に係る特許請求の範囲の記載上,
「凸形状」は「突出
部の少なくとも端縁部の上面側」に設けられ,
「高さが0.1~1mm」

「隣り合う凸形状の間隔が0.5~5mm」となるものであり,他に設けられる位置や形状を特定する旨の記載はなく,本件明細書の発明の詳細な説明欄にも,上記のほかに「凸形状」が設けられる位置や形状を特定する旨の記載はない。前記1⑵のとおり,原告は,審判請求書(乙12)において,突出部の端縁部について圧縮薄肉化されていること及び凹凸形状が
形成されていることがそれぞれ強度向上の効果を生じさせることを記載しているところ,上記の「端縁部」の圧縮薄肉化による効果と「凹凸形状」による効果はそれぞれの構成に基づくものとして記載されていると解されるものであり,圧縮して形成された端縁部の上に更に凹凸形状を設ける趣旨であるとは解されない。


したがって,
「凸形状」につき圧縮して形成された端縁部の上に更に設
けられることを要するものと解することはできないところ,被告が「凸形状」の位置及び形状について上記ア及び前記⑷のほかに争ってないことに照らせば,被告製品(包装用容器)はいずれも「凸形状」があるから,構成要件D及びE「凸形状」を充足する。
3
争点⑵(本件特許の無効理由の有無)について


争点⑵ア(乙19文献記載の発明に基づく進歩性欠如)についてア
被告は,乙19文献に乙19発明の1,すなわち①樹脂フィルムが用いられ,樹脂フィルムが成形加工されて,惣菜等(被収容物)が収容される収容凹部と,②該収容凹部の開口縁から外側に向けて張り出した屈曲部R(突出部)とが形成された身2(容器本体部)を有する容器1(容器)で
あって(構成要件Bに相当)
,③屈曲部R(突出部)の終端折り曲げ面2
h(端縁部の上面)が収容凹部の開口縁近傍の屈曲部R(突出部)の上面に比して下位となっており,④しかも,屈曲部R(突出部)の少なくとも終端折り曲げ面2h(端縁部の上面)側には,波高(凸形状の高さ)が隣り合う凸形状のピッチの30~60%となり(構成要件Dに相当),⑤隣

り合う凸形状のピッチ(間隔)が1~5mmとなるように全周にわたり波状外縁線2e(凹凸形状)が形成され(構成要件Eに相当)
,⑥かつ終端
折り曲げ面2hの部位(端縁部)の下面側が平坦に形成されていること(構成要件Fに相当)
,⑦を特徴とする容器1(容器)
(構成要件Gに相
当)
,という発明が少なくとも記載されており,本件発明1と乙19発明
の1とは,乙19発明の容器1が熱可塑性樹脂発泡シートの片面(容器の内表面側)に熱可塑性樹脂フィルムが積層された発泡積層シートで成形加工されているか否かが不明である点(相違点1。構成要件A1関係)及び乙19発明の容器1が屈曲部Rの端縁部の厚みが圧縮されて薄くなっているか不明である点(相違点2。構成要件C関係)で相違すると主張する。

乙19発明の1が前記ア①~③及び⑦の構成を有することは当事者間に争いがない。
他方,屈曲部の終端折り曲げ面についてみると,乙19文献においては,①樹脂製容器の感情屈曲部の外縁線を波状外縁線に形成する構成を有すること(特許請求の範囲の請求項1,2)
,②請求項1の発明によれば密閉
状態の容器から蓋を取り外すときに容器と蓋の切断縁が直線縁であること
から指を切りやすいので,これを波形の外縁線,例えば,波又はひだ状に形成することにより手指を切ることがなくなるのであり,波形とは正弦波,三角波,台形波等を指し,直線又は曲線で波を形成し,対称,非対称を問わないこと(発明の詳細な説明欄の課題を解決するための手段。段落【0008】,③実施例として,上記外縁線の上下方向に波を形成したものが)

あること(発明を実施するための最良の形態の実施例1。段落【0023】【図5】

)が記載されていると認められる(乙19)

上記記載に照らすと,乙19文献には,容器の外縁線において上下に山形の波形が形成される構成が開示されており,その下面側を平坦に構成したものは開示されていないものといえる。したがって,乙19発明の1と
本件発明1及び2は,端縁部の下面側を平坦に構成したものでない点が少なくとも相違する。
これに対し,被告は,乙19文献の【図8】において下面が平坦な端縁部の構成が開示されていると主張するが,上記①~③の記載を考慮すると,他の図(
【図5】
)の構成を側面視したものと理解することができるから,

【図8】において上記構成が開示されていると認めることはできない。ウ
上記相違点について,被告は,端縁部の上下両面に凹凸形状が形成された乙19の1発明の樹脂フィルムと,周知慣用技術(乙20~26)の端縁部の上下両面が平坦に形成された発泡積層シート等を積層したシートを
用いれば,当然に上面は凹凸形状,下面は平坦となる,指を切るおそれがあるのは樹脂フィルムのみであるからこの層のみを凹凸形状とし,発泡積層シート等の部分は平坦に形成することとなるから,本件発明1及び2の構成を当業者が容易に想到できると主張する。
しかし,乙19の1発明においても上記の周知慣用技術の根拠とされる文献においてもそれぞれ端縁部全体の形状が示されているから,これらを単純に重ねて上面を凹凸形状とする端縁部全体を想定することは困難であ
る。また,上記の周知慣用技術とされるシートの製造方法は発泡積層シートを熱圧プレスするもの(乙23,24)
,雄型と雌型の間に導いてこれ
らを閉じるもの(乙25)
,シートから真空成形又は押圧成形するもの
(乙26)であるとされているところ,一方の樹脂フィルム製の端縁部全体と他方の発泡樹脂製又は発泡積層シート製の端縁部全体を単純に重ね合
わせることはこうした製造方法に見合わない。そうすると,乙19の1発明に対し,上面に凹凸形状を形成し下面を平坦に形成する構成を想到することは容易でなく,乙19の1発明に周知慣用技術を組み合わせて上記相違点に係る本件発明1及び2の構成に想到することが当業者に容易であるとは認められない。


以上によれば,その余の点について判断するまでもなく,本件発明1及び2が乙19文献記載の発明に基づいて容易に発明することができたものであるとはいえない。


争点⑵イ(乙20文献記載の発明に基づく進歩性欠如)についてア
被告は,乙20文献に,少なくとも①発泡スチロール製の外皮15のシート(熱可塑性樹脂発泡シート)の片面にハイインパクトポリスチレン製の内皮16(熱可塑性樹脂フィルム)が積層されたシート17(発泡積層シート)が用いられ,ハイインパクトポリスチレン製の内皮16(熱可塑性樹脂フィルム)が内表面側となるようにシート17(発泡積層シート)
が成形加工されて,インスタント食品類や冷凍加工食品類(被収容物)が収容される収容凹部と(構成要件A1~A3に相当)
,②該収容凹部の開
口縁から外側に向けて張り出したフランジ部12(突出部)とが形成された容器1(容器本体部及び容器)であって(構成要件Bに相当)
,③フラ
ンジ部12(突出部)のリブ13(端縁部)の上面が収容凹部の開口縁近傍のフランジ部12(突出部)の上面に比して下位となるように,フランジ部12(突出部)のリブ13(端縁部)において発泡スチロール製の外
皮15のシート(熱可塑性樹脂発泡シート)が圧縮されて厚みが薄くなっており(構成要件Cに相当)
,④且つリブ13(端縁部)の下面側が平坦
に形成されていること(構成要件Fに相当)
,⑤を特徴とする容器1(容
器)
(構成要件Gに相当)という乙20の1発明が記載されており,本件発明1及び2と乙20の1発明とは,その容器1のフランジ部12のリブ
13の上面側に凸形状の高さが0.1~1mmの範囲内の値となり,かつ,隣り合う凸形状の間隔が0.5~5mmの範囲内の値となるような凹凸形状が形成されている(構成要件C及びDに相当する構成が採用されている)のか否か不明である点(相違点3)において相違すると主張する。イ
乙20発明の1が前記ア①~③及び⑤の構成を有することは当事者間に争いがない。
他方,乙20発明の1の容器のフランジ部の形状についてみると,乙20文献においては,①フランジ部の外周に沿ってリブを形成すること(実用新案登録請求の範囲の請求項1)が記載されていること,②図面には上
面及び下面とも平坦に形成されたフランジ部が描かれていること(【図1】
~【図7】【図11】

)が認められ(乙20)
,リブは平面に直角に取り付
ける補強材を一般的に意味すること(大辞林〔新装第二版〕参照)に照らすと,乙20文献は,少なくとも上面に凹凸形状がないものを開示しており,何らかの凹凸形状があるものを開示していないものと認められる。し
たがって,乙20の1発明は,少なくとも,その容器のフランジ部のリブの上面側に凹凸形状が形成されていない点で,本件発明1及び2と相違する。

上記の相違点について,被告は,文献(乙27~29)に照らして上面側に凹凸形状を設けることは周知慣用技術であり,こうした周知慣用技術を組み合わせて本件発明1及び2の構成とすることを当業者は容易に想到
できると主張する。
しかし,証拠(乙27~29)によれば,被告が指摘する文献には,切断面が側面視略波形状であること(乙27〔実用新案登録請求の範囲の請求項1〕,突出部を前後及び/又は上下にジクザグに形成して端面に対し)
て前後方向,上下方向に凹凸形状となること(乙28〔特許請求の範囲の
請求項1〕,凹凸部を設けること(乙29〔実用新案登録請求の範囲⑴〕)

が記載され,また,上下のいずれの方向にも凹凸形状となるもののみが記載されていると認められるから,端縁部について上面側に凹凸形状を形成し,下面側を平坦に形成する技術が開示されておらず,上記の周知慣用技術の存在を認めることができない。

したがって,乙20の1発明に上記の周知慣用技術を適用することはできないし,上記のとおり上下のいずれの方向にも凹凸形状となるものを組み合わせても,上面側のみに凹凸形状を形成することの示唆がない以上,本件発明1及び2の構成を想到することはできない。
この点につき,被告は,上記の本件発明1及び2の構成は設計事項であ
ると主張するが,乙20の1発明は,リブを設けて容器の剛性を増大させ,容器の熱収縮を防止して耐熱変形性を向上させるという課題を解決するものであり(考案の詳細な説明欄の段落【0007】【0012】,リブの,

形状が凹凸形状となっている構成が開示されていないことからすれば,当業者が設計する際に凹凸形状を考慮に入れるということはできない。
また,被告は,上面のみに凹凸形状を形成して下面を平坦とする構成は乙19文献に開示されていること,指摘する文献(乙27~29)において上下方向に凹凸形状を設けなければいけない趣旨の記載はなく,図面は実施例にすぎないことを主張する。しかし,前記⑴イのとおり,乙19文献に上記構成は開示されていない。また,上記の趣旨の記載がなくても凹凸形状を設ける構成が開示されているというためには,当業者においてこうした構成を端縁部において採用することを通常認識していることを要す
ると解されるが,こうしたことを認めるに足りる証拠はないから,上記構成が開示されているとみることはできない。

以上によれば,その余の点について判断するまでもなく,本件発明1及び2が乙20文献記載の発明に基づいて容易に発明することができたものであるとはいえない。



争点⑵ウ(明確性要件違反の有無)について
被告は,仮に構成要件Dの「凸形状の高さ」が凸形状の頂部から凸形状の底部までの距離をいうのであれば,端縁部15の下面側15dの底辺から突起15aの頂部の最高点までの距離という本件明細書における明確な定義と異なり,
「凸形状の高さ」が2通りに解釈され得るから,本件発明1及び2
は発明が明確であるといえないと主張する。
しかし,前記2⑷において説示したとおり,
「凸形状の高さ」は,本件明
細書を参酌しても端縁部の上面側における凸形状の底部と凸形状の頂部との距離をいうと解釈され,端縁部15の下面側15dの底辺から突起15aの頂部の最高点までの距離をいうものとは解されない。

したがって,
「凸形状の高さ」が本件明細書によって2通りに解釈され得
るとはいえず,本件発明1及び2が明確でないとはいえない。


争点⑵エ(サポート要件違反の有無)及び争点⑵オ(実施可能要件違反の有無)について

被告は,本件発明1及び2について,構成要件D及びEにより,第1の強度向上を図って圧縮薄肉化された突出部の端縁部の更にその上面に凹凸形状を形成することによって第2の強度向上を図ることを実質的に発明特定事項としたことを前提に,上記発明特定事項が本件明細書において説明されていないし,本件明細書の記載が実施することができる程度に明確かつ十分なものでないと主張する。
しかし,本件発明1及び2の特許請求の範囲には,突出部の端縁部が圧縮
されて厚みが薄くなっていること,その上面に凹凸形状が形成されていることが記載されている一方,上記端縁部が圧縮された後に凹凸形状を形成することや,これらが強度向上を図ることを目的とすることは記載されていないし,本件明細書においてもその示唆はない。
また,前記1⑵のとおり,原告は,突出部の端縁部が圧縮薄肉化されてい
ること及び凹凸形状が形成されていることがそれぞれ強度向上の効果を生じさせると審判請求書(乙12)に記載しているが,上記の圧縮薄肉化と凹凸形状の効果は個別に記載されたといえるものであるから,上記のことが発明を特定する事項であると読み取ることはできない。
したがって,これらのことが発明を特定する事項であるということはでき
ず,被告の主張は前提を欠き,本件特許は,本件発明1及び2が発明の詳細な説明に記載されたもの(特許法36条6項1号)でないということはできないし,本件発明1及び2に係る発明の詳細な説明の記載がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したもの(同条4項1号)でないということもできない。

4
争点⑶(差止めの必要性)について


以上によれば,被告による被告製品の製造販売は本件発明1又は2の実施に当たり,本件特許権を侵害するというべきところ,原告は,被告が被告製品の金型を変更したといえないこと,被告が製造販売する他の製品について
製造販売を禁止する仮処分命令発令後もこれを販売していたこと,被告は本件訴訟の第1審終了まで被告製品の製造販売を差し控えると約しているにとどまることから,被告が被告製品の製造販売によって本件特許権を侵害するおそれがあると主張する。


後掲の証拠及び弁論の全趣旨によれば,①被告は,被告製品の製造販売が本件特許権を侵害する旨の原告からの通知の受領後,平成27年6月12日
頃から同年7月9日頃までに,端縁部に凹凸形状がないものに被告製品の金型を加工したこと(乙2,3)
,②被告が管理していた被告製品の在庫を廃
棄処分したこと(乙2)
,③本件仮処分命令受領後の平成28年6月末日までに被告製品の製造及び販売を終了し,端縁部に凹凸がない製品のうち一部のものは型番を変えて販売することとし,これを被告のウェブサイトに掲載
することその他の方法により告知する(乙5~7)とともに,ウェブ上のカタログから削除した(乙8の1~16)ことが認められ,また,前記前提事実⑷のとおり,④原告及び被告は平成29年1月17日に被告が本件訴訟に係る判決言渡しの日又は訴訟の完結のいずれか早い日まで被告製品(包装用容器については,端縁部の上面側に凹凸形状が形成されているものに限る。)

の製造,販売及び販売の申出を差し控えることなどを内容とする本件和解をした。
上記事実関係によれば,被告は,現在において被告製品の製造販売を行うことができず,直ちに再開することもできない(上記①~③)一方で,被告製品の製造販売が本件特許権を侵害するか否かを判断すべき本件訴訟の第1
審判決又は他の方法による完結の日まで被告製品を製造販売しないことを約したにとどまり,将来にわたって被告製品を製造販売しないことを約していない(上記④)し,再開に当たっては少なくとも金型の加工が必要であるが,これに要する期間は相当の長期にわたるとはいえない(上記①)ということができる。そうすると,本件訴訟がこれまでに判決以外の方法により終局し
ていないことは当裁判所に顕著であるから,被告が第1審判決後に被告製品の製造販売を再開するおそれがあるといわざるを得ない。


したがって,被告は,被告製品の製造等により本件特許権を侵害するおそれがあり,その差止めを求める請求は理由がある。
なお,上記のとおり,被告製品には,平成27年7月頃から平成28年6月頃まで,端縁部に凹凸形状があるものとないものが混在しており,また,凹凸形状がないものは構成要件Eの「凹凸形状」がないことから本件発明1
及び2の技術的範囲に属しないが,凹凸形状がない製品については型番を変えて販売するなどしていることに照らすと,被告製品(包装用容器)は上記の凹凸形状のあるものに限られると解するのが相当である。


その一方で,上記⑵のとおり,被告製品は廃棄され,その製造用金型は加工されて変更されたから,被告は,廃棄すべき被告製品及びその製造用金型
を占有していないと認められる。したがって,これらの廃棄を求める請求は理由がない。
5
争点⑷(損害額)について
以上によれば,被告による被告製品の製造販売は本件特許権を侵害するとい
うべきであるから,上記侵害による損害について判断する。


特許法102条3項に基づく損害額

売上高
原告は,平成25年7月から平成29年2月までの3年8か月間における被告製品の総売上高は,被告において端縁部に凹凸のあるものとないも
の売上高であると主張する●(省略)●円であると主張する。
前記4⑵の事実関係によれば,平成25年7月から平成27年7月頃までは端縁部に凹凸のあるもののみが販売され,同月頃からは凹凸のあるものとないものの双方が販売され得たと認められる。もっとも,凹凸のあるものとないものの各生産数量及び販売数量を被告が明らかにしないことに
加え,これらの販売割合その他凹凸のあるものとないものの販売数量を区別することを可能とする証拠もないことに照らせば,上記額をもって被告製品の売上高であると認めるほかない。
これに対し,被告は,被告製品のうち端縁部に凹凸形状がないものを除いたものの売上高は●(省略)●円であると主張する。しかし,証拠(乙52〔8,9〕
)によれば,上記の額は,①端縁部に凹凸形状があるものの生産数と②被告製品の品番の販売数とを比較し,上記①が②を上回ると
きは上記②の数を販売数とし,そうでないときは上記①の数を販売数として算出したものとされているところ,上記①の数を認めるに足りる証拠やその信用性を裏付ける証拠は見当たらないから,上記①の数を前提とする上記額が適正なものと認めることはできない。被告の主張は採用できない。イ
実施料率
前記1⑶のとおり,本件発明1及び2は,端縁部の形状について,上面に他の部分との厚みの差を付けて凹凸形状を形成するという形状とすることで端縁部での怪我を防止するとの課題を解決し,端縁部につき上記の端縁部の形状とすることに加えて下面を平坦にすることで,蓋の強
固な止着を実現するという課題を解決し,これによって上記各課題の双方を解決することを技術的意義とする発明である。なお,被告は,従来技術において怪我防止効果を必要とする問題点があったとすること自体疑わしい趣旨の主張をするが,後記

のとおり被告製品を含む製品のカ

タログにおいて端縁部における手指の切創について注意喚起していることに照らし,採用し難い。
また,後掲の証拠及び弁論の全趣旨によれば,①一般に,プラスチック製品の実施料率の平均値が平成4年度~平成10年度において3.0%(イニシャルペイメントあり)及び3.9%(同なし)であり(甲27)
,技術分野を運輸,対象となる製品例を「車輌一般」「鉄道」



「運搬;包装;貯蔵;薄板状または線条材料の取扱い」等とする特許権についてのロイヤリティ率の平均は,独占的なライセンスの場合で2.0%,代替技術が存在しない場合で2.1%である(甲28)こと,②被告製品を含む製品のカタログには,容器の縁で指先等を怪我する場合があるので注意すべき旨の記載があるほか,ボリューム感がアップしたこと,立体的な盛付けとなること,安定した積み重ねが可能であることなどの特徴の記載があるが,容器の端縁部に凹凸形状を設けた旨の記載がないこと(甲5,40,41,乙54〔別紙〕
,68~70)
,③原告
が,遅くとも平成15年頃までに容器の蓋の端縁部の1~1.5mmの波状に成形する加工を開発し,これを「セーフティエッジ」と称して販売していたこと,上記加工を施した製品として,蓋の端縁部の写真を掲
載したカタログや記事があるが,少なくとも平成27年版及び平成29年版のカタログにおいては上記加工についての記載がないこと(甲29~39,乙61~63)が認められる。
上記

①によれば,プラスチック製品や容器についての一般的な実施
料率は2~4%程度ということができる。また,上記
及び

によれば,

本件発明1及び2の技術的意義が現れているのは容器の一部である端縁部の形状に限定されるところ,一般的には端縁部における手指の切創を防止することは顧客吸引力を持ち得るといえるものの,原告の製品において行われている上記「セーフティエッジ」加工は,蓋の端縁部の加工であって本件発明1及び2の包装用容器に係る加工であるとは認め難く,
原告においても平成27年以降はこの加工の存在をカタログ等において顧客に告知していない。被告においても,端縁部において手指の怪我が生じ得るという課題を認識して顧客に告知する一方で,その部分の怪我防止の措置について顧客に告知をしていない。そうすると,本件発明1及び2の技術的意義が容器の売上げに寄与する程度は相当程度小さいも
のとならざるを得ないから,上記の一般的な実施料率よりも相当程度低くすべきである。
以上によれば,本件発明1及び2の実施によって受けるべき相当な実施料率は●(省略)●と認めるのが相当である。

損害の額
上記ア及びイによれば,本件発明1及び2の実施に対し受けるべき金銭の額に相当するのは,1694万4217円であると認められる。


弁護士費用
本件特許権侵害によって通常生ずべき弁護士費用額は170万円と認められる。

6
結論
よって,原告の請求は,①特許法100条1項に基づき被告製品の製造等の差止め,②民法709条,特許法102条3項に基づき損害賠償金1864万4217円及びこれに対する遅延損害金の支払を求める限度で理由があるからその限度でこれを認容し,その余はいずれも理由がないからこれを棄却することとして,主文のとおり判決する。

東京地方裁判所民事第46部

裁判長裁判官

柴田義明
裁判官

萩原孝基
裁判官

大下良

(別紙)
被告製品目
次の包装用容器及び包装用容器の蓋
1
製品名

TN海波膳


(1)TN海波膳5


(2)TN海波膳6
(3)TN海波膳8
(4)TN海波膳9
(5)TN海波膳9-1

(6)TN海波膳11
(7)TN海波膳12
蓋名
(8)TN海波膳5嵌合蓋
(9)TN海波膳6嵌合蓋
(10)TN海波膳8嵌合蓋

(11)TN海波膳9嵌合蓋
(12)TN海波膳11嵌合蓋
(13)TN海波膳12嵌合蓋
2
製品名

TN頂膳


(1)TN頂膳5-1


(2)TN頂膳7-1
(3)TN頂膳7-2
(4)TN頂膳7-3
(5)TN頂膳8-1
(6)TN頂膳8-2
(7)TN頂膳8-3

(8)TN頂膳8-4
(9)TN頂膳8-5
(10)TN頂膳8-6
(11)TN頂膳8-7
(12)TN頂膳9-1

(13)TN頂膳10-1
(14)TN頂膳11-1
(15)TN頂膳12-1
蓋名
(16)TN頂膳5嵌合蓋
(17)TN頂膳7嵌合蓋

(18)TN頂膳8嵌合蓋
(19)TN頂膳9嵌合蓋
(20)TN頂膳10嵌合蓋
(21)TN頂膳11嵌合蓋
(22)TN頂膳12嵌合蓋

3
製品名

TNみのり


(1)TNみのり1


(2)TNみのり2
(3)TNみのり3
(4)TNみのり3L
(5)TNみのり12
(6)TNみのり13
(7)TNみのり14
(8)TNみのり15

(9)TNみのり16
(10)TNみのり17
(11)TNみのり22
(12)TNみのり23
蓋名
(13)TNみのり1嵌合蓋
(14)TNみのり1S嵌合蓋
(15)TNみのり2嵌合蓋

(16)TNみのり2S嵌合蓋
(17)TNみのり3嵌合蓋
(18)TNみのり3S嵌合蓋
(19)TNみのり3L嵌合蓋
(20)TNみのり3LS嵌合蓋

(21)TNみのり12嵌合蓋
(22)TNみのり13嵌合蓋
(23)TNみのり14嵌合蓋
(24)TNみのり15嵌合蓋
(25)TNみのり15S嵌合蓋

(26)TNみのり16嵌合蓋
(27)TNみのり16S嵌合蓋
(28)TNみのり17嵌合蓋
(29)TNみのり22嵌合蓋
(30)TNみのり23嵌合蓋

4
製品名

TN丸丼


(1)TN丸丼16


(2)TN丸丼18
(3)TN丸丼19
蓋名
(4)BF丸丼16嵌合蓋
(5)BF丸丼18嵌合蓋
(6)BF丸丼19嵌合蓋
5
製品名

TN惣菜内


(1)TN惣菜内15


(2)TN惣菜内18
(3)TN惣菜内19

(4)TN惣菜内24
6
製品名

TNお好み


(1)TNお好み2


(2)TNお好み2S
(3)TNお好み19

(4)TNお好み21
蓋名
(5)TNお好み2嵌合蓋
(6)TNお好み2S嵌合蓋
(7)TNお好み19嵌合蓋
(8)TNお好み21嵌合蓋

7
製品名

SF角盛


(1)SF角盛1


(2)SF角盛2
(3)SF角盛3
(4)SF角盛4
(別紙)
写1真目
被告製品2

2
被告製品5

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