判例検索β > 平成29年(行ケ)第10124号
審決取消請求事件 特許権 行政訴訟
事件番号平成29(行ケ)10124
事件名審決取消請求事件
裁判年月日平成30年3月28日
法廷名知的財産高等裁判所
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平成30年3月28日判決言渡
平成29年(行ケ)第10124号
口頭弁論終結日

審決取消請求事件

平成30年3月14日
判決原告
グワーンウエイ
エナジー

ホァトゥオン

テクノロジー(ペキン)

カンパニー

リミテッド

同訴訟代理人弁理士

福被告特人荘司英史田村嘉章紀本孝長馬望板谷同指定代理主森許久庁長玲夫官子文1原告の請求を棄却する。

2
訴訟費用は原告の負担とする。

3
この判決に対する上告及び上告受理申立てのための付加期間を30日と定める。
事実及び理由

第1

請求

特許庁が不服2015-1017号事件について平成29年1月25日にした審決を取り消す。
第2

事案の概要

本件は,特許出願拒絶査定に対する不服審判請求を不成立とした審決の取消訴訟である。争点は,進歩性の有無である。
1
特許庁における手続の経緯

Aは,名称を「微細管配列を有するマイクロヒートパイプアレイ及びその作製方法並びに熱交換システム」とする発明につき,平成21年(2009年)11月3日を国際出願日として特許出願(請求項の数28)をした(パリ条約による優先権主張

平成20年(2008年)11月3日,同月10日,平成21年(2009
年)2月27日,同年3月10日,同月24日,同日,同年6月19日・中華人民共和国,
国際公開番号WO2010/060342)ナンキン
が,
ナジー

テクノロジー

カンパニー

エコウェイ


リミテッド(以下「ナンキン社」という。
)に

対し,
上記発明の特許を受ける権利を譲渡し,
ナンキン社は,
平成23年5月2日,
特許庁長官に対し,その旨を届け出た(甲17,27,28)

ナンキン社は,
平成26年4月9日,
手続補正をした
(請求項の数26。
甲19)
が,A及びBに対し,上記発明の特許を受ける権利を譲渡し,A及びBは,同年5月14日,特許庁長官に対し,その旨を届け出た(甲29,30)。
A及びBは,平成26年9月11日付けで拒絶査定を受けた(甲20)ので,平成27年1月19日,手続補正をし(請求項の数26。甲23)
,拒絶査定不服審判
請求をした(不服2015-1017号。甲21)が,原告に対し,上記発明の特許を受ける権利を譲渡し,原告は,平成28年2月23日,特許庁長官に対し,その旨を届け出た(甲31,32)

原告は,平成28年12月8日,手続補正をした(請求項の数24。甲26)が,特許庁は,平成29年1月25日,
「本件審判の請求は,成り立たない。
」との審決
をし,その謄本は,同年2月8日,原告に送達された。

2
本願発明の要旨

平成28年12月8日付けの補正後の本願の特許請求の範囲の請求項1~24に係る発明(以下,請求項の番号を用いて「本願発明1」~「本願発明24」といい,これらを総称して「本願発明」という。
)は,以下のとおりのものである(甲26)

【請求項1】
一つの中実であるプレート状或いは帯状の熱伝導体を備え,
前記熱伝導体は二つ以上の平行配列された微細管を備え,
各前記微細管が全て独立のヒートパイプ構造を有しており,
前記微細管内に空気を含まない相変化伝熱効果を有する作動液を有し,前記熱伝導体の前記微細管の両端が密閉され,
かつ少なくても一端は,密閉口に向かい徐々に収束した帯状密閉口を備え,前記熱伝導体の総厚さが3mm又は3mmより小さい場合,徐々に収束した前記帯状密閉口の延在する長さと前記熱伝導体の総厚さとの比が0.75乃至1.5の間となり,前記熱伝導体の総厚さが3mm乃至5mmである場合,徐々に収束した前記帯状密閉口の延在する長さと前記熱伝導体の総厚さとの比が0.5乃至1.5の間となることを特徴とする微細管配列を有するマイクロヒートパイプアレイ。【請求項2】
少なくても二つ以上の前記微細管の片断面は前記帯状密閉口の外側の辺において,前記微細管の縦方向に沿って徐々に一点に収束し,かつ前記帯状密閉口の外側の辺が相対的な凹型の二本の弧であることを特徴とする請求項1に記載の微細管配列を有するマイクロヒートパイプアレイ。
【請求項3】
少なくても二つ以上の前記微細管の片断面は前記帯状密閉口の内側の辺において,前記微細管の縦方向に沿って徐々に一点に収束し,かつ前記帯状密閉口の内側の辺が相対的な凹型の二本の弧であることを特徴とする請求項2に記載の微細管配列を有するマイクロヒートパイプアレイ。

【請求項4】
前記熱伝導体の帯状密閉口を有する端が溶接或いは高周波溶接で作製された増強溶接口であることを特徴とする請求項3に記載の微細管配列を有するマイクロヒートパイプアレイ。
【請求項5】
前記熱伝導体の帯状密閉口を有する端の外側に保護ケースが設けられたことを特徴とする請求項3又は4記載の微細管配列を有するマイクロヒートパイプアレイ。【請求項6】
前記熱伝導体が部品の冷却面に装着されており,前記微細管が前記部品の冷却面と平行配列されることにより,装着面上に微細管層を形成することを特徴とする請求項5に記載の微細管配列を有するマイクロヒートパイプアレイ。
【請求項7】
前記微細管の通路の横断面の長さと幅の比が2/3乃至1.5の間であり,前記マイクロヒートパイプアレイの壁面の最小厚さと前記各微細管の等価直径との比が0.2又は0.2より大きいことを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1項に記載の微細管配列を有するマイクロヒートパイプアレイ。
【請求項8】
前記微細管が二層或いは二層以上に配列されたことを特徴とする請求項1ないし7のいずれか1項記載の微細管配列を有するマイクロヒートパイプアレイ。【請求項9】
前記微細管の等価直径又は水力直径が0.
1mm乃至8mmであり,
隣接した微細管間
の距離或いは壁面の厚さは0.1乃至1.0mmであることを特徴とする請求項1ないし8のいずれか1項記載の微細管配列を有するマイクロヒートパイプアレイ。【請求項10】
前記熱伝導体内において,一本或いは一本以上の前記微細管の縦方向に沿った中実帯状体を有し,前記中実帯状体に実装固定用取り付け穴が設けられていることを特
徴とする請求項1ないし9のいずれか1項記載の微細管配列を有するマイクロヒートパイプアレイ。
【請求項11】
前記微細管の通路の横断面の形状が多角形,円形又はだ円形であり,前記多角形の頂角は応力集中を防ぐ為に平滑な丸角であることを特徴とする請求項1ないし10のいずれか1項に記載の微細管配列を有するマイクロヒートパイプアレイ。【請求項12】
前記微細管の通路の内壁に伝熱促進効果を有するマイクロフィン或いは微細管の軸方向に沿ったマイクログルーブが設置され,
前記マイクロフィンの大きさ及び構造が前記微細管の通路の内壁に,微細管の軸方向に沿った毛細管効果を有するマイクログルーブを形成し,前記マイクロフィンと微細管の内壁との頂角及び凹型マイクログルーブと微細管の内壁との頂角は全て平滑な丸角であることを特徴とする請求項1ないし11のいずれか1項記載の微細管配列を有するマイクロヒートパイプアレイ。
【請求項13】
請求項1乃至12のいずれか1項に記載の微細管配列を有するマイクロヒートパイプアレイを用いた熱交換システム。
【請求項14】
前記マイクロヒートパイプアレイの蒸発面が部品の冷却面と接触し,前記マイクロヒートパイプアレイの蒸発面以外の部分が凝縮面となることを特徴とする請求項13記載の熱交換システム。
【請求項15】
前記マイクロヒートパイプアレイの一端が熱源の中に配置されることにより,前記マイクロヒートパイプアレイの一端において吸熱蒸発を行い,前記マイクロヒートパイプアレイのもう一方の端に空気或いは液体が設置され,前記空気或いは液体によって冷却されることにより,マイクロヒートパイプアレイ内部の蒸気が凝縮放熱
を行うことを特徴とする請求項13に記載の熱交換システム。
【請求項16】
前記熱交換システムがソーラー温水器の集熱器として利用される場合,各前記微細管の一端が太陽光の放射エネルギーを吸収し蒸発させ,もう一方の端において熱交換器まで凝縮放熱を行うことで温水を作り,前記マイクロヒートパイプアレイの凝縮面が,水タンク内の水或いは熱交換器となる水タンクのインナーキャビティの外壁に直接接触することを特徴とする請求項13記載の熱交換システム。【請求項17】
前記熱交換システムがソーラーパネルの散熱システム或いは電力と熱の併給システムとして利用される場合,前記マイクロヒートパイプアレイの蒸発面がソーラーパネルの裏面と接触されることで,ソーラーパネルの発熱を吸収して蒸発させ,マイクロヒートパイプアレイの凝縮面が熱交換器で凝縮放熱を行うことにより,温水を作ることを特徴とする請求項13記載の熱交換システム。
【請求項18】
請求項1乃至12に記載のマイクロヒートパイプアレイの作製方法において,その作製方法は以下のような手順によって作製される。
A
押し出し技術又は圧締技術を用いて,前記熱伝導体内部に二つ或いは二つ以
上の平行配列で貫通された微細管を有する熱伝導体を作製する。
B
前記熱伝導体の一端を密閉する。

C
前記微細管内の空気を排出し,微細管内に作動液を注入する。

D
常温圧接技術を用いて,前記熱伝導体のもう一方の端を密閉する。前記常温
圧接技術は熱伝導体の端をカッターで与圧することによって変形させ,さらに密閉,
切断を行うこと,
を特徴とするマイクロヒートパイプアレイの作製方法。
【請求項19】
手順Bの前記熱伝導体の一端を密閉する方法は,前記常温圧接技術であることを特
徴とする請求項18記載のマイクロヒートパイプアレイの作製方法。【請求項20】
手順Bの前記熱伝導体の一端を密閉する方法は,
前記熱伝導体の一端を押しつぶし,
曲げた後に,溶接或いは高周波溶接で密閉口を強固にすること,或いは前記一端に接続スリーブを設けて密閉することを特徴とする請求項18記載のマイクロヒートパイプアレイの作製方法。
【請求項21】
手順Dの後に,前記熱伝導体の両端に保護ケースを実装する手順Eを有することを特徴とする請求項18乃至20のいずれか1項記載のマイクロヒートパイプアレイの作製方法。
【請求項22】
手順Aの前記熱伝導体の材質は金属或いは合金であり,前記金属或いは前記合金材料を軟化温度まで加熱した後に,押し出し金型或いは圧締金型に平行配列された二つ或いは二つ以上の凸柱用い,前記熱伝導体が押し出し或いは圧締後に常温まで冷却する手順であることを特徴とする請求項21記載のマイクロヒートパイプアレイの作製方法。
【請求項23】
前記熱伝導体の形状は帯状或いはプレート状であり,前記平行配列された前記微細管が帯状或いはプレート状の熱伝導体の長手方向と平行であることを特徴とする請求項22記載のマイクロヒートパイプアレイの作製方法。
【請求項24】
前記手順Aの押し出し金型或いは圧締金型の凸柱に複数の凹型の溝或いは外フィンが設置され,前記微細管の内壁に押し出し成型或いは圧締成型により熱輸送性能を強化させる作用を有するマイクログルーブ或いはマイクロフィンを成型することを特徴とする請求項22記載のマイクロヒートパイプアレイの作製方法。3
審決の理由の要点

(1)

甲1
(特開2006-313038号公報)
に記載された発明
(甲1発明)

「複数の独立した作働流体流路24が形成されたヒートパイプ部11において,ヒートパイプ部11となるヒートパイプ用部材21は,高さ約2mm,長さ約600mmの大きさのアルミニウム板211で構成され,
アルミニウム板211は,押し出し成形で設けられた長手方向平行に配列された複数のチャンネル212を内部に備え,
それぞれの複数のチャンネル212は,両端に開口を有した直径約0.5~1.5mmの断面円形状の貫通孔で構成され,
複数のチャンネル212には,一定量の作働流体25が注入され,アルミニウム板211のチャンネル212の両端の開口は,かしめられて封止,密閉されることで,複数の独立した作働流体流路24が形成され,
作働流体流路24内での作働流体25と空気26の割合は,作働流体25が約30%,空気26が約70%であり,
作働流体25は,熱でヒートパイプ部11の各々の作働流体流路24で気化し,熱源の無い方へ移動して冷却され作働流体25に変り,熱源部分へ戻ることを繰り返し,熱源部分の熱を吸収する,
複数の独立した作働流体流路24を形成したヒートパイプ部11。」
(2)

本願発明1と甲1発明との対比

【一致点】
「一つの中実であるプレート状或いは帯状の熱伝導体を備え,
前記熱伝導体は二つ以上の平行配列された微細管を備え,
各前記微細管が全て独立のヒートパイプ構造を有しており,
前記微細管内に相変化伝熱効果を有する作動液を有し,
前記熱伝導体の前記微細管の両端が密閉された,
微細管配列を有するマイクロヒートパイプアレイ。

【相違点】

(相違点1)
本願発明1は,微細管内に空気を含まない」

ものであるのに対して,
甲1発明は,
「作働流体流路24内での作働流体25と空気26の割合は,作働流体25が約30%,空気26が約70%」である点。
(相違点2)
本願発明1は,
「熱伝導体の前記微細管」の「密閉」された「両端」の「少なくても一端は,密閉口に向かい徐々に収束した帯状密閉口を備え」「前記熱伝導体の総,
厚さが3mm又は3mmより小さい場合,徐々に収束した前記帯状密閉口の延在する長さと前記熱伝導体の総厚さとの比が0.75乃至1.5の間となり,前記熱伝導体の総厚さが3mm乃至5mmである場合,徐々に収束した前記帯状密閉口の延在する長さと前記熱伝導体の総厚さとの比が0.5乃至1.5の間となる」ものであるのに対して,甲1発明は,
「高さ約2mm,長さ約600mmの大きさ」の「ア
ルミニウム板211のチャンネル212」の「かしめられて封止,密閉」された「両端」の少なくても一端について,そのような形状であるか明らかでない点。(3)

相違点の判断
相違点1について

ヒートパイプの技術分野において,ヒートパイプ内に作動流体以外の空気がないようにすることは,
ヒートパイプの構造として本願優先日前に周知の技術である
(甲
2~5)
。また,ヒートパイプ内に作動流体以外の空気がないようにすることで,ヒートパイプ内での作動流体の気化量を多くでき,気化した流体の移動速度も高まることで,ヒートパイプの熱伝達効率が高まることも,当業者の技術常識である。甲1発明のヒートパイプ部11について,熱伝達効率を向上させることは当然求められる課題であるといえるから,上記周知の技術を適用して,甲1発明を相違点1についての本願発明1の構成にすることは,
当業者が容易になし得ることである。

相違点2について

ヒートパイプの開口端部をかしめる(圧着する)ことにより封止,密閉すること
は,本願優先日前に周知の技術であり(甲1,甲2〔特開昭57-67794号公報〕
,甲3〔特開平11-173776号公報〕
,甲4〔特開2008-19678
7号公報〕
,甲5〔特開平7-305977号公報〕,そのようにして封止,密閉さ)
れた端部の形状が,一般に,密閉口に向かい徐々に収束した形状となることも,本願優先日前に周知の事項である(甲3~5)

甲1発明の複数のチャンネル212について,
かしめられて封止,
密閉された端
部の形状は,上記周知の密閉口に向かい徐々に収束した一般的な形状となる蓋然性が高い。甲1発明の複数のチャンネル212の端部をかしめる際に,アルミニウム板212の端部を一括してかしめるようにする程度のことは,格段の困難なく当業者が適宜になし得る設計的事項であるところ,そうして封止,密閉された端部の形状は,密閉口に向かい徐々に収束した帯状密閉口となることも,当業者であれば十分に理解し得ることである。
甲1発明のヒートパイプ部11は,その上面に設けられた導電回路部13との接触面が放熱面として使用されるものであって,当該放熱面の放熱表面積を大きく設けることが特徴であり,放熱面とはならないヒートパイプ部11の端部のかしめ形状について,密閉口に向かい徐々に収束する長さを必要以上に長く形成することはせず,反対に,かしめ加工を行う際,急角度の曲げ加工により金属に亀裂や歪みが生じないようにすることも設計上当然求められることであるところ,密閉口に向かい徐々に収束する長さを極端に短く形成することもないから,アルミニウム板212の高さに対する密閉口に向かい徐々に収束する長さの比の範囲は,自ずと一定の範囲に収まるものとなる。甲1発明の高さ2mmのアルミニウム板212の端部のかしめ加工により,密閉口に向かい徐々に収束する長さが1.5~3mm(アルミニウム板212の高さに対する密閉口に向かい徐々に収束する長さの比が0.75~1.5の間)とする程度の寸法,すなわち,相違点2における本願発明1の構成にすることは,上記自ずと一定の範囲に収めたものに相当する寸法といい得るものであって,当業者が実施に際して容易に採用し得た設計的事項というべきものである。

効果について

かしめ加工による一般的な形状である,密閉口に向かい徐々に収束する端部形状が,ヒートパイプの作動範囲での耐圧強度を有していることは明らかであり,徐々に収束した密閉口の延在する長さと熱伝導体の厚さとの比の範囲についても,ヒートパイプの通常の機能が発揮されるように設計上求められる範囲のものでしかないといえるから,本願発明1の効果は,甲1発明及び周知の技術又は周知の事項(甲2~5)から当業者が予測し得る範囲のものである。
(4)

結論

本願発明1は,甲1発明,周知の技術又は周知の事項(甲2~5)に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
したがって,他の請求項に係る発明を検討するまでもなく,本願は拒絶されるべきものである。
第3
1
原告主張の審決取消事由
相違点1の判断の誤り

ヒートパイプ内に作動流体以外の空気がないようにすることで,ヒートパイプ内での作動流体の気化量を多くでき,気化した流体の移動速度も高まることで,ヒートパイプの熱伝達効率が高まることは,当業者の技術常識である。甲1においては,空気を含む構成(しかも空気の割合が70%という極めて高い割合)とされているが,管内に多くの空気と作動液体を一緒に封入した場合,ヒートパイプの伝熱効果はなく,もはやヒートパイプとしては機能しない。管内に多くの空気と作動液体を一緒に封入した場合,耐圧性と気密性(毛細管力により小さい穴から漏れにくくなる)の要求が低くなる。複数の独立した流路とした場合,個々の流路の独立性を確保して封止することは困難であるためである。それは,複数の流路を内部に含む場合,流路間を隔てる壁がかしめ時に圧潰されてしまうことに基づく。その防止方法がないため,甲1発明では,内部圧力を少なくするために空気を大量に含ませている。上記理由により,単一の管流路で空気を含まないヒートパイプがあったとしても,それを直ちに甲1発明に適用することはできない。
甲2,4,5は,単一の流路であり,甲3は,流路は複数であるが,端部において連通しており,独立した流路となっていないから,甲2~5は,いずれも複数の流路が独立したものではない。
甲2~5の作動流体をそのまま甲1発明に適用しても,リークの問題が発生するから,相違点1についての本願発明の構成を得ることは,当業者が容易になし得ることではない。
2
相違点2の判断の誤り

(1)「かしめることにより封止,密閉された端部の形状が,一般に,密閉口に向かい徐々に収束した形状となること」が周知の事項である旨の審決の判断は,誤りである。
一般には,端部を平たくして固く止めることがされる(乙3)のであって,「収束」
しているとはいえない。
甲3は,上下の板を折り曲げて溶接したものであり,密閉口に向かい徐々に収束した形状ではあるが,上側の出っ張りと下側の出っ張りを中央まで持ってきて,端面同士を溶接したものであり,
「収束」しているのはチャネルの密閉口ではなく,チャネル
出口よりも出っ張った上下の出っ張りである。また,各チャネルは連通状態にあり,穴自体は密閉されていないから,開口部を「かしめ」て「密閉」した端部の形状ではない。
甲4の図1(a)には,
「密閉口に向かい徐々に収束」した形状が示されているが,
同図は中心を通る縦断面図であり,
中心を通らない縦断面においてそうとは限らない。
甲4は,単一の管の場合を示しているところ,単一の管を上下方向に加圧すると,上下方向に変形するだけではなく左右方向に広がりを見せる。特に,管の外形より大きくなった部分は,
「密閉口に向かい徐々に収束」した形状かどうか不明である。
甲5も,単一の管の場合であるので,甲4と同様である。
甲2の図3(イ)には,中空の単一の管につき,開口に向かい徐々に収束した形状が示されているが,これはスエージングにより行われるもので,切断及び端部圧着の後,
圧着を受けた部分はストレートであり
(図3
(ニ),

「密閉口に向かい徐々に収束」
した形状ではない。
(2)

甲1発明の複数のチャンネルについても,
「かしめられて封止,密閉された

端部の形状」「上記周知の密閉口に向かい徐々に収束した一般的な形状となる蓋然は,
性が高い。
」旨の審決の判断も,誤りである。
甲1の図1は,かしめを行った実施例を示すものである(
【0037】
)が,この図
においては収束構造とはなっていない。
圧着した場合,
「密閉口に向かい徐々に収束した」形状になる部分もあるが,一般に密閉口に向かい徐々に収束した形状になるわけではない。
(3)ア

本願発明1は,新たなヒートパイプの構造,すなわち,長方形内部に多数
のマイクロ管があり,一つの手順で,多数の長方形の管であるヒートパイプの口を閉める新たな閉め方により,素管本体構造を改造する(例えば,細く絞る又は細く管を外付ける)必要がなく,また,閉めた後,ヒートパイプを補強しないことが重要な特徴である。
しかし,以下のとおり,甲1及び2には,そのような開示はない。(ア)

甲1には,多数管の構造が開示されているが,前記1のとおり,甲1に
示されたものは,ヒートパイプではない。
(イ)

甲2は,単円形素管を細く絞った後,真空ポンプにより空気を排出し,
作動液体を注入した後,口を閉めて,ハンダづけ又は溶接により,閉めた口を補強することを開示している。
円形以外の管を真空にすることは,工程上不可能であるから,従来の全てのヒートパイプの密閉の素管構造は,
全て円形の密閉口であり
(甲2)他の形状はないことが,

常識である。単円形管が閉められるとき,管壁の変形は外側に変形するので,ほとんど仮閉めであり,ハンダづけ又は溶接による補強をする。すなわち,従来の全てのヒートパイプの密閉手順は,①細い管をヒートパイプ素管の脱気端に溶接する,又は,素管端部を絞って細くする,②脱気後細い管を閉める,③閉めた口を溶接して補強する,という三段階を要する。
イ(ア)

複数のチャネルを内部に含むヒートパイプにおいては,
各チャネルは隔

壁により隔てられており,その端部に圧力を加えて変形させると,チャネル同士を隔てる壁が圧潰されるので,圧潰により,チャネル同士が連通してしまわないようにするという特有の課題がある。
単一管から構成されるヒートパイプ(甲4,5)
,複数のチャネルを有していてもこ
れらのチャネルは独立しておらず,側壁の圧潰を伴わないヒートパイプ(甲3)においては,チャネルを隔てる側壁の圧潰という現象は起こりようがない。したがって,甲1発明に甲3~5のかしめ技術を適用することはできない。(イ)a

本願発明は,
内部に複数の独立した並行配列された微細管を備え,

接を有することなく,2.0MPa以上の耐圧性を有するマイクロヒートパイプアレイである。
これに対し,乙3(特開平9-49692号公報)
,乙4(特開平9-33181号
公報)に記載の技術は,隔壁の一部を切除して隔壁切除部とし,隔壁切除部を残して圧潰しており,隔壁切除部は中空となっている。
中空管の場合,板,ダイスなどの部材を管表面にあてて上下から与圧すると,管の部材に当たっている部分は部材の外形に沿って変形し,当たっていない部分は,当たっている部分の変形に引きずられて収束状に変形し,端部は,上壁と下壁とが面で接合するところ,収束形状は,部材が当たっていない部分で形成された意図的形状を持たないものである。
この場合,上壁と下壁は,圧縮力により押さえつけられているだけなので,その界面には接合力が極めて弱い圧縮力が働いているだけの仮接合状態であり,必ず,溶接又はろう付けが必要となる(乙3,4)

これに対し,内部に隔壁が存在する非中空管の場合には,板,ダイスなどの部材を管表面にあてて上下から与圧すると,管の部材に当たっている部分は部材の外形に沿って変形し,当たっていない部分は,隔壁が変形抵抗となるので,長手方向,上下方向ともに変形しないままとなるため,非中空の平板形管の場合,外径が所定の形状を有するカッター又はダイスで中実部を圧縮する必要があり,収束形状は,部材が当たっている部分に意図的形状をもって形成されたものである。また,非中空の場合,上壁と下壁の間には肉(アルミ等の材料)が存在しないので,圧潰により,上壁,下壁,隔壁の肉は,各微細管の開口を防ぐように流れる。したがって,圧潰後,切断を施せば,溶接部を有することなく高い耐圧性を有するマイクロヒートパイプアレイが実現される。
b
乙5(特開2000-130972号公報)は,孔12内にワイヤウ
イック部材11が挿入されており,端部を圧潰したとしてもワイヤウイックの厚さ以上は圧潰されないので,密閉口に向かい徐々に収束した帯状密閉口は実現できない。密閉口という最外端の点まで徐々に減少し続けることが気化した圧力を分散し,耐圧力性を持たせる上で重要となる。
c
被告が収束形状であるとして示した文献はいずれも中空管のものであ
り,収束形状の形成場所,形成手段が本願発明と全く異なる。当業者は,耐圧性が悪く溶接が必須となる技術を用いようとはしないはずである。
d
乙3~6は,審決時における引用文献に記載のない発明特定事項を周
知技術として示す文献として,進歩性否定の基礎資料とするために提出されたものであり,訴訟において提出することは許されない。
(4)

熱伝導体の総厚さと帯状密閉口の延在長さの比についての審決の判断は,誤
りである。
ア(ア)

審決は,
「急角度の曲げ加工により金属に亀裂や歪みが生じないように

することも設計上当然求められることである」旨判断したが,亀裂や歪は,材料の強度,厚み,加工率をパラメータとする材料自体(材料母体)に生じる問題であり,帯状密閉口の延在長さとは関係のない事項である。
急角度の曲げにより材料自体(材料母体)に損傷が生じるのは,本願発明1の値よりはるかにはずれたところであって,靭性,強度のある材料を使用すれば済む問題であり,微細管の内部圧力の向上という観点とは異なる。はるか昔の不純物の多い時代のアルミや銅ならいざしらず,現在においては,極端な場合を除き,亀裂や歪みの配慮をすることはない。
また,甲3又は単一の丸管の場合に曲げ加工の概念が適用される可能性がないとはいえないが,複数の微細管を含む場合には,微細管同士の間に壁が存在しており,全体が帯状であるので,微細管開口を密閉する圧潰は圧縮加工に相当する。一般に,材料は,曲げ加工に対する場合に比べて圧縮加工に対する場合の方がはるかに大きな耐圧性を有しているので,よほど規格外の脆弱な材料を使用する等の特殊なケースを除き,角度を考慮に入れることはない。
(イ)

乙6(特開平7-144286号公報)と本願発明は,三次元的に見れ
ば全く異なる。
単一管の場合,長手方向最先端かつ水平方向最先端である外側の端のところでは,収束した密閉口の延在する長さはゼロに近くなる。そこは極めて弱いところであり,必ずハンダづけをしなければ信頼性は全くない(甲34)

本願発明の平板型ヒートパイプの場合,破壊温度まで継続的に加熱して破裂が生じたのは,すべてHP胴体部であり,両端の封止部の破裂は見られなかった。このように,単一管と平板型複数管とは全く事情が異なっており,本願発明は,単一管ではできなくとも平板型複数管ならば高耐圧性が実現可能であることを見いだしたものである。

審決は,甲1発明につき,具体的な厚みを挙げ,収束長さを算出して,「自

ずと一定の範囲に収まる」と結論付けているが,これは単に,甲1発明を本願発明1の所定の範囲に合わせたにすぎない。
(ア)

甲1は,そもそも,収束や比を示しておらず,収束を前提とした上記結
論は,誤りである。
(イ)

複数のチャネルを内部に含むヒートパイプは,
隔壁の圧潰という特有の

課題を有しており,その課題を解決するために,熱伝導体の総厚さと密閉口の延在長さとの比というパラメータに着目しているのであって,上記パラメータが意味を持つこと,しかも厚さによってその比が異なること,複数のチャネルを内部に含みその独立性を確保する必要がある場合は,上記パラメータが必要であることは,引用文献のいずれにも記載されておらず,周知事項とはいえない(なお,仮に周知事項である場合は,その通知を行うべきである。。また,それが設計事項であるというならば,そ)
の根拠を示すべきである。
3
効果の判断の誤り

本願発明は,相互に独立した複数の微細チャネルを内部に含む帯状のマイクロヒートパイプアレイを対象とし,各チャネルの一端を独立を維持して閉塞し,徐々に収束した前記帯状密閉口の延在する長さと前記熱伝導体の総厚さとの比を,総厚さの場合に応じて所定の値とすることを一つの特徴としている。すなわち,チャネルの口の閉塞後も,相互に独立した複数の微細チャネルを含むこと,帯状密閉口の延在する長さと前記熱伝導体の総厚さとの比をパラメータとすること,そのパラメータも熱伝導体の総厚さにより場合分けされていることを特徴とする。
これにより,密閉口の耐圧強度を高め,信頼性が高く,散熱効率が高いマイクロヒートパイプアレイを得ることができるという顕著な効果を達成する。特に,前記の二つ或いは二つ以上の平行配列された微細管が押し出し成型技術或い「
は圧締成型で形成される一体構造であり,各前記微細管が全て独立のヒートパイプ構造を有して」
いることに特徴を有しており,
このような構成を採用することによって,
密封性,信頼性の高いマイクロヒートパイプアレイを提供できるという顕著な効果を有する。
第4

被告の主張
1
相違点1について
(1)

内部に作動液以外に空気を内蔵したヒートパイプは,空気を内蔵しない
ヒートパイプに比べて熱伝達の効率は下がることがあるかもしれないが,ヒートパイプ内の空気を排出しないでも伝熱装置として用いられることは,周知であり(甲1,乙1)
,パイプ内に空気が存在することと,このパイプをヒートパイプとして用いることとは関係がない。
(2)

ヒートパイプの内部を真空にするか否かについて,真空にすると熱伝達
の効率は上がるが,耐真空にする必要があるというトレードオフの関係であることは,ヒートパイプの技術分野では周知の事項であって(乙2)
,ヒートパイプ内を真
空とするか,空気を含むようにするかは,ヒートパイプに求められる性能や製造コスト等を考慮して当業者が適宜選択し得る設計事項である。
2
相違点2について
(1)ア

「かしめる」とは,
「金属の接合部分を打ったり締めたりして固くとめ

る。
」ことをいう(乙7)

甲3においては,
内部にチャネルを有する板材の両端を封止,
密閉するためには,
板材を厚さ方向に変形させて(事実上かしめることにより)
,チャネルを封止,密閉
しているし,甲4,5においても,パイプ開口部分の上下方向を変形させて,かしめることによりパイプ開口部分を封止,密閉している。
そして,このようなチャネルあるいは開口部分をかしめることにより封止,密閉する際に,かしめる方向においては,
「密閉口に向かい徐々に収束した」形状となる
ことも甲3~5に示されている。
甲2に示された発明のようにヒートパイプ端部を細く絞った後溶接をしているとしても,甲1発明においては,
「密閉口に向かい徐々に収束した」形状となることに
変わりはない。

チャネルの数の違いの結果,甲1発明におけるチャンネルの両端の形状

「密閉口に向かい徐々に収束した」
形状とは異なる形状になるとは考えられない。
(2)

甲1発明においては,チャンネルはアルミニウム板に設けられたもので
あり,このアルミニウム板は,高さ約2mm,長さ約600mmの板である。甲1には,チャンネルの両端における金属の接合部分について明記されていないが,かしめられることによりチャンネルの内部に作動流体が封止,密閉されることを考慮すれば,甲1発明において,チャンネルの端部付近のアルミニウム同士が互いに接合することにより,チャンネルの両端が封止,密閉されていることは技術的に自明である。チャンネルの端部付近のアルミニウム同士を互いに接合するためには,当該部分のアルミニウムを変形させる必要があり,この変形は「かしめる」ことが「打ったり締めたりして固くとめる」ものであることを鑑みると,アルミニウム板を変形させるのが容易な板の厚さ方向を「打ったり締めたりして固くとめる」ようにすることが,甲1に接した当業者の理解として自然である。そして,
チャンネルの両端を固くとめるために,
アルミニウム板の厚さ方向を
「打
ったり締めたり」した場合に,普通,アルミニウム板は連続的に滑らかに変形するから,
「密閉口に向かい徐々に収束した」
形状となることも当業者にとって甲1の記
載から容易に理解できるものである。
特許公報における図面は,その特許発明を理解するために記載されたものであって,簡略的に示されており,端部の形状が必ずしも正確性をもって示されているとはいえないから,図1を根拠とする原告の主張は失当である。
(3)

単一の管であっても,複数のチャンネルが並列に並んだものであっても,
ヒートパイプから作動流体が流れ出るような亀裂又は孔などが生じないように端部を変形させることが必要であることに変わりはなく,逆にこのような亀裂や孔が生じなければ,密閉,封止される端部において,側壁が圧潰されても,又は,パイプ端部が変形していたとしても,
かしめられた甲1発明のチャンネルの端部は,
「密閉
口に向かい徐々に収束した」形状となることで,作動流体を密閉・封止するのであるから,単一の管と独立した複数のチャンネルとの違いは上記判断に影響するものではない。
また,端部に複数のヒートパイプを有する板材の端部を変形させて圧潰していても「密閉口に向かい徐々に収束した」形状となることは,当業者にとって明らかである(乙3~5)

(4)ア(ア)

審決における
「かしめ加工を行う際」「急角度の曲げ加工」

とは,

ヒートパイプ用部材21のチャネル212の両端の開口を封止するために,板材の端部付近に厚さ方向の変形を加えて板材の上下面を曲げて加工することを意味しているところ,上下の板材を曲げて動かす「かしめ加工」を行う際,急角度の変形により金属に亀裂や歪みが生じないようにすることも設計上当然求められることであって,熱伝導体の総厚さと帯状密閉口の延在長さの比はこれらの条件を考慮して定めるべき設計事項である。
(イ)

甲1発明においては,
板材の端部を厚さ方向にかしめ
(打ったり締め

たりして固くとめ)ており,このとき,板材端部を密閉口の延在長さが極端に短くなるように大きく変形させる加工を行うと板材に歪みや亀裂が生じるため,一定程度の長さが必要とされる(乙6)

そして,放熱面とはならない甲1発明のヒートパイプ部11の端部のかしめ形状については,
「密閉口に向かい徐々に収束する長さを必要以上に長く形成することはせず,反対に,かしめ加工を行う際,急角度の曲げ加工により金属に亀裂や歪みが生じないようにすることも設計上当然求められることであるところ,密閉口に向かい徐々に収束する長さを極端に短く形成することもないから,アルミニウム板212の高さに対する密閉口に向かい徐々に収束する長さの比の範囲は,自ずと一定の範囲に収まるもの」であり,ヒートパイプの材料による特性やヒートパイプの厚さ,かしめ加工における圧力のかけ方等によって当業者が適宜選択し得る設計事項にすぎない。
(ウ)

したがって,本願発明や甲1発明の場合には微細管同士の間には壁
が存在しているため,特殊なケースを除き角度を考慮することはないとする原告の主張は失当である。

本願発明においては,熱伝導体の総厚さが厚い場合には,延在長さが総
厚さに対する比として若干小さい範囲が加わっているにすぎないから,厚さによって熱伝導体の総厚さと密閉口の延在長さとの比が異なってくるという原告の主張は失当である。
3
効果について

本願の明細書をみても帯状密閉口の延在する長さと熱伝導体の総厚さとの比のパラメータを所定範囲とすることにより,密閉口の耐圧強度を高め,信頼性が高く,さらに散熱効率が高いマイクロヒ―トパイプアレイを得ることができるという技術的意義が得られる客観的な根拠や事実などは示されておらず,またこのような技術的意義が得られる技術常識もないことから,上記比を所定の範囲とすることに設計事項以上の特段の技術的意義はなく,原告の主張は失当である。
第5
1
当裁判所の判断
本願発明について
(1)

本願発明は,
前記第2の2記載のとおりであるところ,
平成28年12月

8日付け手続補正後の本願発明に係る明細書及び図面(甲17,26。以下併せて「本件明細書」という。
)には,本願発明について,次のとおりの記載がある。
「【技術分野】
【0001】
本発明は熱交換技術,
特に新型マイクロヒートパイプアレイ及びその作製方
法と,
前記新型マイクロヒートパイプアレイが利用された新型熱交換システムに関わる。
【背景技術】
【0002】
自然対流及び強制対流の熱交換方式に比べ,相変化伝熱の伝熱効率は高いため,相変化伝熱技術を利用した熱交換機器が工業分野で幅広く利用されている。また,ヒートパイプ熱交換技術は相変化伝熱技術の中で最も典型的である。ヒートパイプの主な伝熱方法は作動液の蒸発と凝縮である。ヒートパイプ技術の中では,自励振動型ヒートパイプの伝熱効率が比較的に高い。しかし,動作するのに起動温度差が必要となるため,利用される範囲が制限されてしまう。また従来のマイクロヒートパイプは一定である直径をもつ円形パイプを使用されるため,冷却される部品との接触面積が小さいため,等価熱抵抗が大きくなる。プレート型の伝熱面に対してヒートパイプの利点を尽くすため,従来技術としていくつかのヒートパイプが並置され,金属板に挿し込む方法や,押しつぶしてプレート状にする方法がある。このような方法では,接触抵抗が存在するため,比較的に大きい熱抵抗が生じてしまい,伝熱効率が低下させてしまう。
さらに,
内部の耐圧性能が劣るため,
変形しやすい。
近年,いくつかの並列パイプの端部に接続スリーブを利用して,溶接により連通して,単一のヒートパイプを造る方式もある。しかし,このような溶接方法は生産効率が低いため,
量産時の生産量が低下させてしまう。
また,
密閉技術が複雑であり,
さらに密閉性能と信頼性が低い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来のヒートパイプは利用される範囲が制限され,熱交換効率が低く,耐圧性が低いなどの欠点が存在していた。従来のヒートパイプの欠点に対し,本発明では利用範囲が広く,伝熱性能が高く,耐圧性が高い新型マイクロヒートパイプアレイを提供する。また,本発明では新型マイクロヒートパイプアレイの作製方法,及び新型マイクロヒートパイプアレイを利用した新型熱交換システムも提供する。【課題を解決するための手段】
・・・
【0005】
新型マイクロヒートパイプアレイの特徴は,
一つの中実であるプレート状或いは帯状の熱伝導体を備え,
前記熱伝導体は二つ以上の平行配列された微細管を備え,
各前記微細管が全て独立のヒートパイプ構造を有しており,
前記微細管内に空気を含まない相変化伝熱効果を有する作動液を有し,前記熱伝導体の両端が密閉され,
かつ少なくても一端は徐々に収束した帯状密閉口を備え,
前記熱伝導体の総厚さが3mm又は3mmより小さい場合,徐々に収束した前記帯状密閉口の延在する長さと前記熱伝導体の総厚さとの比が0.75乃至1.5の間となり,前記熱伝導体の総厚さが3mm乃至5mmである場合,徐々に収束した前記帯状密閉口の延在する長さと前記熱伝導体の総厚さとの比が0.5乃至1.5の間となることである。
・・・
【0025】
マイクロヒートパイプアレイの作製方法において,その作製方法は以下のような手順によって作製される。
A
押し出し技術又は圧締技術を用いて,前記熱伝導体内部に二つ或いは二つ以
上の平行配列で貫通された微細管を有する熱伝導体を作製する。
B
前記熱伝導体の一端を密閉する。

C
前記微細管内の空気を排出し,微細管内に作動液を注入する。

D
常温圧接技術を用いて,前記熱伝導体のもう一方の端を密閉する。前記常温
圧接技術は熱伝導体の端をカッターで与圧することによって変形させ,さらに密閉,
切断を行うこと,
手順Bの前記熱伝導体の一端を密閉する方法は,前記常温圧接技術であること。手順Bの前記熱伝導体の一端を密閉する方法は,前記熱伝導体の一端を押しつぶし,曲げた後に,溶接或いは高周波溶接で密閉口を強固にすること,或いは前記一端に接続スリーブを設けて密閉すること。
手順Dの後に,
前記熱伝導体の両端に保護ケースを実装する手順Eを有すること。E
熱伝導体の両端に保護ケースを実装する。

手順Aの前記熱伝導体の材質は金属或いは合金であり,前記金属或いは前記合金材料を軟化温度まで加熱した後に,押し出し金型或いは圧締金型に平行配列された二つ或いは二つ以上の凸柱用い,前記熱伝導体が押し出し或いは圧締後に常温まで冷却する手順であること。
・・・
【発明の効果】
【0028】
本発明の技術の効果は以下である。
本発明は微細管をもつ新型マイクロヒートパイプアレイを提案した。新型マイクロヒートパイプアレイは並行して配列される微細管をもつ熱伝導体を含める。その熱伝導体が密閉され,さらにその熱伝導体内に相変化伝熱効果をもつ作動液が注入されている。所謂微細管の中に作動液が注入されることにより,微細管はマイクロヒートパイプになる。またマイクロヒートパイプは相変化伝熱方式で熱輸送を行うことにより,ヒートパイプ効果をもつようになる。並列に配置された微細管はグループになった微細管の束で構成された微細管群構造とも言える。各微細管が一つ或いは多数のマイクロヒートパイプに形成されることができる。一体構造に多数のマイクロヒートパイプが配置されることができるため,押し出しあるいは圧締技術で簡単に製作されることができる。以上のことにより本発明技術が幅広い分野で利用されることができる。また微細管は熱伝導体内部に形成される空洞であり,溶接技術ではなく,また外付け金属の熱伝導体で作られることではない。そのため,微細管と微細管の間の壁が熱伝導体として補強リブになる。本発明の新型マイクロヒートパイプアレイ技術を用いた場合,従来のヒートパイプがもつ多くの問題点,例えば,伝熱面から対向面まで大きい熱抵抗があり,等価熱伝導率が低下し,また内部耐圧性能が低下し変形しやすい,溶接効率が低いなどが解決されることができる。新型マイクロヒートパイプアレイは,全体で熱伝導しやすく,伝熱効率を大幅に向上させ,熱抵抗が低く,さらに耐圧性能,安全性,信頼性も向上させることができる。新型マイクロヒートパイプアレイの熱伝導体本体の両端が直接密閉され,かつ少なくとも一端では常温圧接技術で形成した徐々に収束した帯状密閉口をもっている。つまり,新型マイクロヒートパイプアレイの独特な構造が常温圧接技術を用いて作られている。しかしながら,従来の密閉方法は通常溶接で両端に接続スリーブを接合し,微細管群をもつ熱伝導体が全体ごとに封筒状カバーに入れ,全体単一のヒートパイプにすることであり,その方法は非常に複雑である。本発明で採用された独自の常温圧接技術は一回で密閉することができ,徐々に収束した密閉口を有する新型マイクロヒートパイプアレイを作ることができる。
・・・
【0030】
帯状及びプレート状の物体を熱伝導体として採用される場合,本発明の技術であるプレート状マイクロヒートパイプに対応する。従来のヒートパイプ及び自励振動型ヒートパイプは部品の冷却面との接触面積が小さいため,等価熱抵抗が大きいという欠点があり,また,自励振動型ヒートパイプが起動するためには起動温度差が必要となる欠点も存在している。本発明の新型マイクロヒートパイプアレイはプレート型の伝熱面をもっているため,吸収熱性能が高い。またマイクロヒートパイプの内部構造より熱輸送性能も高いという特徴を有するので,従来のヒートパイプ及び自励振動型ヒートパイプの欠点を克服することができる。また,従来のプレート型ヒートパイプでは単一的なヒートパイプ構造が採用されるため,その内部の耐圧性能,信頼性,及び局部的限界熱流束が制限されてしまう。本発明の新型マイクロヒートパイプアレイは以上の問題点を克服することができ,応用される分野が広くなり,かつ内部構造が簡単であり,信頼性が高い。さらに散熱効率が高いという特徴も有する。
【0031】
微細管の熱伝導体が伝熱部品の発熱面に沿って平行に配置され,密着した熱交換面を形成することができる。伝熱部品の冷却面は曲面である場合でも,熱伝導体が部品冷却面との密着面積を最大化することができる。その密着面は熱交換面になるため,等価熱抵抗は非常に小さい。さらにその熱交換面で一層の層状並置された微細管があるため,熱交換効率を向上させることができる。
・・・
【0034】
各微細管の両端が密閉される場合,各微細管は独立であるため,マイクロヒートパイプアレイの信頼性がさらにアップさせることができる。万が一,ある微細管が破損される場合でも,他の微細管に影響を及ぼすことがない。また各微細管の一端がお互いに繋がられ,もう一つの端が密閉される場合,各微細管が半独立ヒートパイプに形成するため,マイクロヒートパイプアレイは真空度への要求がある程度低下させることができる。
・・・
【0037】
本発明の新型マイクロヒートパイプアレイの作製方法では,微細管が押し出し或いは圧締技術で作られた一体構造である。まず,熱伝導体を用いて全体押し出し或いは圧締技術で二つ或いは二つ以上の並列に配置された微細管が作られ,そして微細管内部の空気が排出され,作動液が微細管の内部に注入される。以上のことにより,
ヒートパイプ効果をもつマイクロヒートパイプアレイが作られることができる。以上の加工過程の中に,押し出し或いは圧締技術が用いられるため簡単に実現できる。また以上の加工技術を用いる場合,従来のマイクロヒートパイプを作成時のマイクロウィック材料の作成及びメンテナンスなどの過程がなくなる。また,本発明の加工技術では,全体成型を行うため,ろう付技術などが不要となる。本発明の新型マイクロヒートパイプアレイは各微細管が相互的にサポートされるため,各微細管の強度を向上させることができる。従って,新型マイクロヒートパイプアレイの壁面の厚みを0.2-0.4mmくらいまでに減らすことができる。このような薄い壁面に対し,
現存の技術を用いて密閉を行う場合,
作動液の漏れが発生しやすく,
また端に対し,溶融ろう付技術で密閉を行う場合,その端が破断しやすくなる。本発明の新型ヒートパイプアレイの端を密閉する際,常温圧接技術を用いる。その技術ではカッター与圧技術で熱伝導体の端を変形させ,密閉及び切断を行う。以上のことにより,その端が徐々に収縮する密閉口になる。その技術を用いた場合,一回で密閉,実装を完成することができる。この技術は簡単であり,密閉性能も良い,さらに作動液が漏れることもないため,
安全性,
信頼性を向上させることができる。
本発明の新型マイクロヒートパイプアレイの加工技術は量産に適する。・・・
【実施例】
【0040】
図2は本発明の新型マイクロヒートパイプアレイの第一種実施例の構造イメージ図である。この実施例では一つの中実の熱伝導体1を含め,その熱伝導体の材質は金属,或いは合金である。実施例での熱伝導体1の形状はプレート型であり,その内部には二つ或いは二つ以上の並列に配置された微細管2がある。並列に配置された微細管2は熱伝導体の表面の縦方向と平行する。また微細管の通路の断面は円形である。微細管2が熱伝導体1の中に密閉され,また微細管の中では作動液が注入されているため,その微細管がマイクロヒートパイプになる。さらに微細管2は相変化伝熱方式で伝熱を行うため,自然にマイクロヒートパイプ効果をもつようになる。この実施例の新型マイクロヒートパイプアレイは,押し出し或いは圧締成型技術で二つ或いは二つ以上並列に配置された微細管配列をもつプレート構造である。新型マイクロヒートパイプアレイの伝熱性能をさらに良くさせるため,微細管2の等価直径或いは水力直径の選択範囲を0.1mm-8mmとし,また好ましい選択範囲を0.2mm-5mmとする。隣接同士の微細管の距離の選択範囲は0.1mm-1.0mmである。また微細管通路の断面の長さと広さの比の好ましい選択範囲は2/3から1.5までである。新型マイクロヒートパイプアレイの壁面の厚さの最小値と各微細管の等価直径の比は0.2,又は0.2より大きい。
【0041】
熱伝導体1の両端が密閉され,かつ両端は常温圧接技術で形成した徐々に収束した帯状密閉口をもつ。各微細管2の両端が密閉され,かつ少なくても各微細管の一つの縦断面は帯状密閉口の外側と内側の辺で,その微細管の縦方向に沿って徐々に一点まで収束する。以上で述べた外側と内側の辺の両方とも相対的に反曲の二本の弧である。本発明の新型マイクロヒートパイプアレイの縦断面図は図1のように示す。図1では,熱伝導体1の帯状密閉口をもつ端で溶接,或いは高周波溶接,或いはその他の溶接方法で作られた,曲がっている補強溶接口9がある。その補強溶接口9では外付け保護スリーブが設置されている。もし徐々に収束した密閉口の延在長さと熱伝導体の総長さの比をδとし,熱伝導体の総厚さが3mm,又は3mmより小さい場合,δの範囲は0.75≦δ≦1.5となり,また熱伝導体の総厚さが3mm-5mmの間である場合,δの範囲は0.6≦δ≦1.5となる。さらに熱伝導体の総厚さが5mmより大きい場合,δの範囲は0.5≦δ≦1.5となる。新型マイクロヒートパイプアレイが各種の環境(異なる作動液,異なる環境温度)でうまく作動を行うため,熱伝導体の総厚さと徐々に収束した密閉口の延在長さの関係の設定により,微細管の内部耐圧力を2.0MPaより大きくさせなければならない。例:熱伝導体の総厚さは3mmである場合,徐々に収束した密閉口の延在長さを2.5mm,或いは3mmなどに設定し,また熱伝導体の総厚さは4mmの場合,徐々に収束した密閉口の延在長さを2.8mm,或いは3mmなどに設定する。
【0042】
各微細管2の構造は独立ヒートパイプ構造,或いは半独立ヒートパイプ構造である。例えば,微細管2の両端とも密閉される場合,各微細管2は独立ヒートパイプ構造であり,マイクロヒートパイプの配列になる。各微細管2が繋がらなく,独立的に作動できるため,マイクロヒートパイプの信頼性を向上させることができ,また安全的にメンテナンスを行うことができる。万が一ある微細管が破損された場合(例えば,作動液の漏れなど)でも,他の微細管には影響を及ぼすことがない。各微細管2の一端が熱伝導体の内部に開放され,所謂微細管2はお互いに繋がっていることである。開放方式とは,熱伝導体1の一端に中空スリーブをつけることによって熱伝導体のその端が密閉されるが,各微細管2が熱伝導体のその端でお互いに連通している。所謂各微細管2は半独立ヒートパイプ構造になる。その半独立ヒートパイプ構造はマイクロパイプアレイをもつ単一なヒートパイプである。微細管2の片方の端がそれぞれ密閉されないため,中空スリーブと溶接を行う必要となる。その溶接技術はアルビン接合,高周波溶接或いは鑞付などである。また各微細管は半独立マイクロヒートパイプであるため,各微細管がお互いに繋がっていて,実際に単一なヒートパイプ構造である。一旦,ある微細管が破損される場合,他の微細管にも影響を及ぼすことになり,そのヒートパイプの全体的な効果がなくなる恐れが存在するため,信頼性をある程度低下させてしまう。
・・・
【0048】
本発明は一種新型伝熱システムに関わる。この新型伝熱システムは,新型マイクロヒートパイプアレイを含める。この新型熱交換システムが電子機器の散熱器,ヒートパイプを用いた新型熱交換器,及びソーラー集熱器として利用される。・・・
【0057】
図11は本発明の新型マイクロヒートパイプアレイの好ましい加工技術のフローチャートである。その加工技術の手順は以下のように示す。
A.押し出し或いは圧締技術を用いて,二つ或いは二つ以上平行配列,かつ貫通した微細管をもつ熱伝導体を作成する。この熱伝導体は金属材料でもあり,金属材料を軟化温度まで加熱した後,押し出し金型に注入し,押し出しを行う。A’.金属材料が押し出しされたあと,常温まで冷却し,その金属材料の構造が二つ或いは二つ以上並列配列された微細管配列をもつプレート構造になる。また微細管の内壁に幾つかの押し出し成型した,
伝熱促進作用をもつマイクロフィンがある。
B.熱伝導体の一端を密閉する。具体的な方法は以下の三つである。第一種の方法は圧着技術を用いて密閉することである。図12で示した本発明の新型マイクロヒートパイプアレイの加工技術での熱伝導体の端を密閉技術のフローチャートで,この圧着技術が用いたのは上下設置されたカッター10,カッター10で熱伝導体1の端を与圧することにより変形させ,
さらに密閉,
切断を行う。
第二種の方法では,
熱伝導体の端を押しつぶした後,溶接或いは高周波溶接技術を用いて密閉,補強を行う。第三種の方法では,熱伝導体の端に接続スリーブをつけ,密閉する。C.微細管中の作動液の注入と空気の排出を行う。
D.熱伝導体のもう一つの端を,圧着技術を用いて密閉する。図12で示したように,この圧着技術は,熱伝導体の端の上下にカッター10を設置し,カッター10を用いて熱伝導体1を押し出しにより変形させ,さらに密閉,切断を行う。また細いアルミ棒を微細管2に挿入させた後,圧着技術で熱伝導体の端を密閉する。E.熱伝導体の両端に保護ケースをつける。その保護ケースが接続スリーブを用いることにより熱伝導体の端を密閉するための強固溶接が実現できる。
【図1】

【図2】
【図11】

【図12】


(2)

前記2の2の認定事実及び前記(1)の本件明細書の記載によると,本願発
明について,次のとおり認められる。
本願発明は,熱交換技術,特に新型マイクロヒートパイプアレイ及びその作製方法と,前記新型マイクロヒートパイプアレイが利用された新型熱交換システムに関するものである(【0001】)。
従来のヒートパイプは,利用される範囲が制限され,熱交換効率が低く,耐圧性が低いなどの欠点が存在していた(【0003】)。
本願発明は,利用範囲が広く,伝熱性能が高く,耐圧性が高い新型マイクロヒートパイプアレイを提供することを目的とし(【0003】),一つの中実であるプレート状又は帯状の熱伝導体を備え,前記熱伝導体は二つ以上の平行配列された微細管を備え,各前記微細管が全て独立のヒートパイプ構造を有しており,前記微細管内に空気を含まない相変化伝熱効果を有する作動液を有し,前記熱伝導体の両端が密閉され,かつ少なくても一端は徐々に収束した帯状密閉口を備え,前記熱伝導体の総厚さが3mm又は3mmより小さい場合,徐々に収束した前記帯状密閉口の延在する長さと前記熱伝導体の総厚さとの比が0.75~1.5となり,前記熱伝導体の総厚さが3mm~5mmである場合,徐々に収束した前記帯状密閉口の延在する長さと前記熱伝導体の総厚さとの比が0.5~1.5となる構成としたものである(【0005】)。
そのように構成したことで,一体構造に多数のマイクロヒートパイプを配置することができるため,
押し出しあるいは圧締技術で簡単に製作することができ,
また,
微細管は,熱伝導体内部に形成される空洞であり,溶接技術ではなく,外付け金属の熱伝導体で作られないため,微細管と微細管の間の壁が熱伝導体として補強リブになる。
さらに,
微細管の熱伝導体が,
伝熱部品の発熱面に沿って平行に配置され,
密着した熱交換面を形成することができ,その熱交換面で一層の層状並置された微細管があるため,熱交換効率を向上させることができる。(【0028】,【0031】)。
2
相違点の判断について
(1)

甲1発明について
甲1の記載内容

甲1(特開2006-313038号公報)には,次の記載がある。(ア)

請求の範囲

【請求項2】
複数の有底状の孔よりなるチャンネルよりなる金属製ヒートパイプ用部材を準備する工程と;
このヒートパイプ用部材に,絶縁層を形成する工程と;
この絶縁層に,導電回路部を形成する工程と;
このヒートパイプ用部材の複数のチャンネルに,有底孔の一端の開口から作働流体を注入する工程と;
この作働流体を注入したヒートパイプ用部材に設けた有底孔の一端の開口を密閉する工程と;
複数の独立した作働流体流路を内蔵するヒートパイプを作成する工程と;からなるヒートパイプ回路基板の製造方法。
【請求項3】
上記ヒートパイプ用部材は,アルミニウム,アルミニウム合金,銅,銅合金,亜鉛鋼鈑,シリコン鋼鈑の少なくとも一つから選択された金属から作成され,上記ヒートパイプの上記作働流体流路の内部には,水,アルコール類から選択された作働流体と,空気,不活性ガスから選択された流体とが封入されていることを特徴とする請求項2に記載のヒートパイプ回路基板の製造方法。

【請求項12】
複数の独立した作働流体流路を有する金属製ヒートパイプと;
このヒートパイプに,形成された絶縁層と;
この絶縁層に,形成された導電回路部と;
からなるヒートパイプ回路基板。
【請求項13】
上記ヒートパイプ用部材は,アルミニウム,アルミニウム合金,銅,銅合金,亜鉛鋼鈑,シリコン鋼鈑の少なくとも一つから選択された金属から作成され,上記ヒートパイプの上記作働流体流路の内部には,水,アルコール類から選択された作働流体と,空気,不活性ガスから選択された流体とが封入されていることを特徴とする請求項12に記載のヒートパイプ回路基板。
(イ)

明細書

【技術分野】
【0001】
本発明は,ヒートパイプ回路基板の製造方法とヒートパイプ回路基板に関し,特に電子部品から発せられる熱の放熱性能を高めるため,回路基板自身が冷却機能を有するヒートパイプ回路基板の製造方法とヒートパイプ回路基板に関する。【背景技術】
・・・
【0003】
現在,電子部品を搭載した回路基板からの放熱を行うために,ヒートシンクと呼ばれるアルミニウム製のブロックに多数のフィンを加工している。このフィン付きブロックに電子部品をビス止めして回路基板に搭載している。しかしながら,この回路基板は,高放熱性を確保するために,ブロックに設ける多数のフィンを細くしなければならず,この細い形状のフィンの加工が困難であった。
【0004】
一方,ヒートパイプを用いて,電子回路基板自身が冷却機能を有するヒートパイプ回路基板が開発されている。このヒートパイプ回路基板は,ヒートパイプと,このヒートパイプに形成される絶縁層と,表面または内部に回路パターンを有する導電回路部と,この絶縁層を介してヒートパイプに搭載され,導電回路部に電気的に接続された電子部品から構成されている。このヒートパイプは,電子部品が搭載された回路基板に接合している。回路基板に電子部品を搭載した後で,ヒートパイプと電子部品が搭載された回路基板とを接合するので,接着剤等の圧着では押し付けができなく,また熱をかけることもできないので,ヒートパイプと回路基板との密着性が十分ではなかった。
・・・
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は,優れた放熱性を有するヒートパイプ回路基板の製造方法とヒートパイプ回路基板とを提供することにある。
【0007】
本発明が解決しようとする課題は,大きな伝熱表面積を有する放熱部を有するヒートパイプ回路基板の製造方法とヒートパイプ回路基板とを提供することにある。【0008】
本発明が解決しようとする課題は,小型化された放熱部を有するヒートパイプ回路基板の製造方法とヒートパイプ回路基板とを提供することにある。【課題を解決するための手段】
・・・
【0010】
本発明の上記課題を解決するための手段は,複数の貫通孔よりなるチャンネルを備えた金属製ヒートパイプ用部材を準備する工程と;このヒートパイプ用部材に,絶縁層を形成する工程と;この絶縁層に,導電回路部を形成する工程と;このヒートパイプ用部材の複数のチャンネルに,貫通孔の一端の開口から作働流体を注入する工程と;この作働流体を注入したヒートパイプ用部材の貫通孔の両端に設けた開口を密閉する工程と;複数の独立した作働流体流路を内蔵するヒートパイプを作成する工程と;からなるヒートパイプ回路基板の製造方法にある。
【0011】
本発明の上記課題を解決するための手段は,複数の貫通孔よりなるチャンネルを備えた金属製ヒートパイプ用部材を準備する工程と;このヒートパイプ用部材に,絶縁層を形成する工程と;この絶縁層に,導電回路部を形成する工程と;このヒートパイプ用部材の貫通孔の一端に設けた開口を密閉する工程と;このヒートパイプ用部材の複数のチャンネルに,貫通孔の他端の開口から作働流体を注入する工程と;この作働流体を注入したヒートパイプ用部材の貫通孔の他端に設けた開口を密閉する工程と;複数の独立した作働流体流路を内蔵するヒートパイプを作成する工程と;からなるヒートパイプ回路基板の製造方法にある。
【0012】
本発明の上記課題を解決するための手段は,複数の有底状の孔よりなるチャンネルよりなる金属製ヒートパイプ用部材を準備する工程と;このヒートパイプ用部材に,絶縁層を形成する工程と;この絶縁層に,導電回路部を形成する工程と;このヒートパイプ用部材の複数のチャンネルに,有底孔の一端の開口から作働流体を注入する工程と;この作働流体を注入したヒートパイプ用部材に設けた有底孔の一端の開口を密閉する工程と;複数の独立した作働流体流路を内蔵するヒートパイプを作成する工程と;からなるヒートパイプ回路基板の製造方法にある。・・・
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば,内部に複数の作働流体流路または内部に単一の蛇腹状作働流体流路を有するヒートパイプを形成するヒートパイプ回路基板の製造方法により,優れた放熱性を有するヒートパイプ回路基板の製造方法が得られた。【0020】
本発明によれば,内部に複数の作働流体流路または内部に単一の蛇腹状作働流体流路を有するヒートパイプを形成するヒートパイプ回路基板の製造方法により,大きな伝熱表面積を有する放熱部を有するヒートパイプ回路基板の製造方法が得られた。
・・・
【0022】
図1Aは,本発明のヒートパイプ回路基板の一実施例を示す斜視図である。ヒートパイプ回路基板1は,主としてヒートパイプ部11,このヒートパイプ部11の上部に形成された絶縁層部12,およびこの絶縁層部12の上部に形成された導電回路部13により構成されている。場合により,ヒートパイプ回路基板1は,導電回路部13部に電気的に接続されて設けられた電子回路部14を含んで構成される。図1Bに示すように,ヒートパイプ部11には,複数の独立した作働流体流路24が形成されている。
【0023】
本発明によるヒートパイプ回路基板の作成フローの一実施例を図2により説明する。
【0024】
図2の(a)は,ヒートパイプ回路基板のヒートパイプ部の作成工程を示している。ヒートパイプ用部材21は,アルミニウム製の板211で構成されており,例えば高さ約2mm,長さ約10-600mmの大きさである。このアルミニウム板211は,その内部に長手方向に任意の数のチャンネル212を任意の位置に設けている。この複数のチャンネル212は,アルミニウム板211を押し出し成形して設けられる。それぞれのチャンネル212は,両端に開口(入口と出口)を有した断面円形状の貫通孔で構成されている。この貫通孔の大きさは,直径約0.5-1.5mmmである。
・・・
【0029】
このヒートパイプ用部材21のそれぞれのチャンネル212には,冷媒となる作働流体25,例えば,エタノールを注入する。例えば,チャンネル212の他方の開口に真空ポンプを準備の上,真空ポンプを動作させて,チャンネル212の入口(一方の開口)から一定量の作働流体25を注入する。なお,チャンネル212内への作働流体25を注入する他の方法として,別途準備した作働流体25を貯蔵した作働流体溜めに,ヒートパイプ用部材21に設けたチャンネル212の一方の端面に設けたそれぞれの入口(一方の開口)を挿入して作働流体25に漬ける。そして,作働流体溜めから作働流体25を,毛管現象を利用してチャンネル212内部に上昇させて,一定量の作働流体25をチャンネル212の内部に注入してもよい。【0030】
ヒートパイプ用部材21のチャンネル212の入口(一方の開口)と出口(他方の開口)の両出入口,いいかえればヒートパイプ用部材21の両端をかしめて作働流体25をチャンネルに密閉する。このようにして,ヒートパイプ用部材21のチャンネル212である貫通孔の両端の開口を封止,密閉する。したがって,ヒートパイプ用部材21を用いて,複数の独立した作働流体流路24を有するヒートパイプ部11が作成される。この一実施例では,図1Bに示すように,複数の独立した作働流体流路24は,作働流体25と空気26が封入,密閉されている。作働流体流路24内での作働流体25と空気26の割合は,作働流体25(エタノール)が約30%,空気26が約70%を占めている。
【0031】
本発明では,上記したように複数の独立した作働流体流路24を有するヒートパイプ部11,絶縁層部12と導電回路部13とで,ヒートパイプ回路基板1を構成している。
【0032】
本発明では,第1図に示すように,複数の独立した作働流体流路24を設けたヒートパイプ部11を有するヒートパイプ回路基板1において,導電回路部13に取り付けられた電子回路部14(発熱体)で発生した熱は,絶縁層部12を介してヒートパイプ部11に伝わり,ヒートパイプ部11の封入された冷却冷媒作働流体に伝わる。冷却冷媒作働流体25は,熱でヒートパイプ部11の各々の作働流体流路24で気化し,熱源の無い方へ移動する。熱源の無い部分で気化した冷却冷媒は冷却され作働流体25に変り,熱源部分(電子部品)へ戻る。これが繰り返され熱源部分(電子部品)の熱を吸収(吸熱)する。
【0033】
このように本発明のヒートパイプ回路基板1は,まずヒートパイプ用部材21を用い,複数の貫通孔であるチャンネルの両端を封止,密封する。この結果,ヒートパイプ部11として,複数の作働流体流路24を独立して設け,その独立した複数の作働流体流路24内にそれぞれ作働流体を収容したので,冷却冷媒である作働流体25の放熱表面積を大きく設けることができ,ヒートパイプ回路基板1のヒートパイプ部11の放熱性を大幅に向上できた。
【0034】
ヒートパイプ用部材21の金属として,上記実施例では,アルミニウムを選択したが,アルミニウム合金,銅,銅合金,亜鉛鋼鈑,シリコン鋼鈑等を用いてもよい。また,
ヒートパイプ用部材21の貫通孔として,
円形断面形状としたが,
楕円形状,
四角形形状,または台形形状の断面形状のものを用いてもよい。ヒートパイプ用部材21の貫通孔は,例えば押し出し成形,レーザ加工等で形成する。【0035】
また,冷媒となる作働流体25としては,例えば,水,アルコール類(エタノール,ブタン等)等を採用する。作働流体流路24内には,冷媒となる作働流体25(水,アルコール類等)と空気,不活性ガス(例えば,窒素(N2),ヘリウム(H
e)等)等の流体を封入する。
・・・
【0037】
また,上記実施例では,作働流体25をヒートパイプ用部材21のチャンネル212の開口から注入した後に,ヒートパイプ用部材21のチャンネル212の両開口(ヒートパイプ用部材21の両端)をかしめて作働流体25をチャンネルに密閉する。しかしながら,まずヒートパイプ用部材21に設けたチャンネル212の一方の開口(ヒートパイプ用部材21の一端)をかしめた後,作働流体25をチャンネル内に注入し,作働流体25が注入されたチャンネル212の他方の開口(ヒートパイプ用部材21の他端)をかしめてもよい。このようにして,ヒートパイプ用部材21の内部に,多数の独立した複数の作働流体流路24を形成してもよい。【0038】
なお,上記実施例では,両端が開口した貫通孔を有するチャンネル用奉材21を準備したが,一端のみが開口した複数の有底状の孔よりなるチャンネルよりなるヒートパイプ用部材を準備してもよい。この場合,このヒートパイプ用部材に,絶縁層を形成し,この絶縁層に,導電回路部を形成する。このヒートパイプ用部材の複数のチャンネルに,有底孔の一端の開口から作働流体を注入し,さらに,この作働流体を注入したヒートパイプ用部材の有底孔の一端の開口を密閉する。そして,複数の独立した作働流体流路を内蔵するヒートパイプを作成する。以上の工程からなるヒートパイプ回路基板の製造方法を採用してもよい。
【図1】


【図2】

甲1発明の認定

前記アによると,甲1発明は,審決の認定のとおり,
「複数の独立した作働流体流路24が形成されたヒートパイプ部11において,ヒートパイプ部11となるヒートパイプ用部材21は,高さ約2mm,長さ約600mmの大きさのアルミニウム板211で構成され,
アルミニウム板211は,押し出し成形で設けられた長手方向平行に配列された複数のチャンネル212を内部に備え,
それぞれの複数のチャンネル212は,両端に開口を有した直径約0.5~1.5mmの断面円形状の貫通孔で構成され,
複数のチャンネル212には,一定量の作働流体25が注入され,アルミニウム板211のチャンネル212の両端の開口は,かしめられて封止,密閉されることで,複数の独立した作働流体流路24が形成され,
作働流体流路24内での作働流体25と空気26の割合は,作働流体25が約30%,空気26が約70%であり,
作働流体25は,熱でヒートパイプ部11の各々の作働流体流路24で気化し,熱源の無い方へ移動して冷却され作働流体25に変り,熱源部分へ戻ることを繰り返し,熱源部分の熱を吸収する,
複数の独立した作働流体流路24を形成したヒートパイプ部11。」
であると認められる。この点について,当事者間に争いはない。
(2)

対比

本願発明1と前記(1)イ認定の甲1発明とを対比すると,次の【一致点】の点で一致し,
【相違点】の点で相違する。この点において,当事者間に争いはない。【一致点】
「一つの中実であるプレート状或いは帯状の熱伝導体を備え,
前記熱伝導体は二つ以上の平行配列された微細管を備え,
各前記微細管が全て独立のヒートパイプ構造を有しており,
前記微細管内に相変化伝熱効果を有する作動液を有し,
前記熱伝導体の前記微細管の両端が密閉された,
微細管配列を有するマイクロヒートパイプアレイ。

【相違点】
(相違点1)
本願発明1は,微細管内に空気を含まない」

ものであるのに対して,
甲1発明は,
「作働流体流路24内での作働流体25と空気26の割合は,作働流体25が約30%,空気26が約70%」である点。
(相違点2)
本願発明1は,
「熱伝導体の前記微細管」の「密閉」された「両端」の「少なくても一端は,密閉口に向かい徐々に収束した帯状密閉口を備え」「前記熱伝導体の総,
厚さが3mm又は3mmより小さい場合,徐々に収束した前記帯状密閉口の延在する長さと前記熱伝導体の総厚さとの比が0.75乃至1.5の間となり,前記熱伝導体の総厚さが3mm乃至5mmである場合,徐々に収束した前記帯状密閉口の延在する長さと前記熱伝導体の総厚さとの比が0.5乃至1.5の間となる」ものであるのに対して,甲1発明は,
「高さ約2mm,長さ約600mmの大きさ」の「ア
ルミニウム板211のチャンネル212」の「かしめられて封止,密閉」された「両端」の少なくても一端について,そのような形状であるか明らかでない点。(3)

本願発明1と甲1発明の相違点の判断


相違点1について
(ア)
a
甲2~5に記載された事項
甲2(特開昭和57-67794号公報)には,次の記載がある。
「従来,ヒートパイプを製造するには第1図に示すようにバルブ1,2を開いて真空ポンプ4を用いてパイプ5(構成については後述)を真空引きした後,バルブ1を閉じ,バルブ3を開いてヒートパイプとしての作動液6(フロン,水,アンモニアまたはアルコール)を所定量パイプ5に注入する。然る後バルブ2,3を閉じ,図示するA-Aを圧着で封じ切る。(1頁左欄11行~18行)


【第1図】
b
甲3(特開平11-173776号公報)には,次の記載がある。

【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は板型ヒートパイプとその製造方法に関する。・・・
【0023】次に図2に示すように,板型ヒートパイプ本体13の端部にキャップ部材50を接合して,合計15個ある穴40を連通させて封止する。この図2には示さないが,板型ヒートパイプ本体13の他方の端部でも同様に封止する。こうして,穴40および,キャップ部材50により形成された空洞部(密閉空間)に作動流体を収容して,板型ヒートパイプ1が得られる。細かい説明は省くが,その空洞部には,適宜洗浄や脱気等をして油分や余分な空気を除去してから,水等の作動流体を所定量封入することになる。
・・・
【0028】ところで,板型ヒートパイプ本体の端部の封止方法として,図2に示すようなキャップ部材50を接合する方法を上述したが,その他,図5に示すように,キャップ部材を用いないで封止する方法もある。この方法は次のようなものである。先ず,隔壁で区画された穴が整列する偏平多穴管101~103(この数は任意である)を用意し,両外側に位置しない偏平多穴管102については,その端部近傍の隔壁32と側壁部33を除去し,両外側に位置する偏平多穴管101,103については,外側に位置する側壁部35を除いて,隔壁32と側壁部34を除去する。次いで,偏平多穴管101~103を連結した後,複数ある穴が端部で連通するように偏平多穴管101~103の端部を潰して,更に溶接等して封止する,という方法である。


【図2】

【図5】

c
甲4
(特開2008-196787号公報)
には,
次の記載がある。


【技術分野】
【0001】
この発明は,ヒートパイプ,特に,その封止部の形成時や,ヒートパイプと受熱ブロックやフィン等とを接合する際に,封止の安定性を高めたヒートパイプに関する。
・・・
【0026】
図1は,
この発明のヒートパイプの1つの態様を示す部分拡大図である。(a)図1
は断面図,図1(b)は平面図をそれぞれ示す。図1(a)に示すように,丸型ヒートパイプ1のコンテナ2の1つの端末部(溶接部)3に金属製リング4を取り付けて,カシメている。即ち,丸型ヒートパイプのコンテナの上板部2-1と下板部2-2が合わさり,作動液の注入およびコンテナ内の圧力を減じる減圧口として機能する端末の溶接部3に,上下両方から板状の金属製リング4-1,4-2を取り付けて,端末部(溶接部)3が所定の厚さになるようにカシメた。図1(b)に示すように,丸型ヒートパイプ1の端末部3に取り付けられた板状の金属製リング4によってカシメられて幅方向に広がっている。このように端末部3が金属製リング4によってカシメられ圧接された状態で溶接等によって接合される。【0033】
吸熱部では,受熱ブロック6からヒートパイプを形成する材料中を熱が伝導されて,ヒートパイプ2の中に封入された作動流体を蒸発させ,ヒートパイプ2の内部を気化した作動流体が他方の端部の放熱部に向かって高速で移動し,放熱部で冷却されて再び液相に戻り,毛細管力および重力によって吸熱部に還流する。このような現象を生じるヒートパイプ2の吸熱部が受熱ブロック6に形成された孔部に挿着される。


【図1】

d
甲5(特開平7-305977号公報)には,次の記載がある。


【0001】
【産業上の利用分野】この発明は,任意の長さに切断して使用できるヒートパイプに関するものである。
・・・
【0008】また,この分割使用可能なヒートパイプを分割する際には,切断位置を加圧抵抗溶接することによって,切断面が融着して,気密にシールされる。したがって,切断した際に,この切断部からの非凝縮性気体の侵入が無く,所定長さで高性能なヒートパイプを作ることができる。
・・・
【0010】図1および図2に示すように,ヒートパイプ1は,一端(図示せず)を密閉した断面がほぼ一定な金属管製の長尺なコンテナ2内を,その他端の充填口2aから真空引きし,次に凝縮性の作動液3として所定量(不足によりドライアウトをを〔判決注:
「を」の誤記と認める。
〕生じない量)の水を充填口2aから充填
した後,その充填口2aをかしめて密閉して長尺に形成されている。そして,この長尺に形成されたヒートパイプ1は,フラットな渦巻状のヒートパイプ11として巻き取られるとともに,冷凍庫12内に水平に配置された状態で冷却される(図6参照)したがって,

渦巻状のヒートパイプ11の全体が同じ条件で冷却されてヒー
トパイプ作動が停止し,封入されている作動液3は全て凝縮してコンテナ2内の底部に溜まる。このとき,作動液は,コンテナ2の全長に亘ってほぼ均等に溜まり,この状態で凍結する。その結果,凍結状態の作動液3は,コンテナ2の長さ方向に対してほぼ均等に分散配置されることとなる(図1参照)

・・・
【0012】次に,上記のように構成されるこの実施例のヒートパイプ1を冷凍庫12内から取り出し,所定の長さに切断して使用する場合について説明すると,冷凍庫12内に収納されている渦巻状のヒートパイプ11は,直線状のヒートパイプ1に整形されて必要な長だけ引き出され,切断装置14によって切断される。【0013】この切断装置14によるヒートパイプ1の切断は,先ず,切断位置を両電極15a,15b間に挟んで加圧し,所定の幅で圧潰させ,この加圧状態で通電することによって,圧潰させた部分を抵抗溶接する(図7参照)。このとき,ヒー
トパイプ1の切断位置の内部に分散配置されていた凍結状態の作動液3は,両電極15a,15bにより加圧されることによって砕かれ,両管壁間から排除されるとともに,両管壁間に残留する水分も抵抗溶接の熱により蒸発するため,切断面は完全に密閉される。
【0014】次に,カッター刃16,16によって,抵抗溶接された部分のほぼ中央を切断する(図8参照)
。その結果,切断面は抵抗溶接によって予め溶接されてい
るため,気密性が保持されて,ヒートパイプ1内への空気等の侵入が防止されるとともに,所定の長さに切断されたヒートパイプ1内には,所定量の作動流体3が凍結状態で封入される。したがって,凍結状態の作動液3を融解させれば切断されたヒートパイプ1は正常に作動し,通常のヒートパイプとして使用することができる。


【図1】

【図2】

【図7】

【図8】
(イ)

判断

前記(ア)によると,
ヒートパイプの技術分野において,
ヒートパイプ内に作動流体
以外の空気がないようにすることは,ヒートパイプの構造として本願優先日前に周知の技術である(甲2〔1頁左欄11行~18行〕
,甲3【0023】
,甲5【00
10】。この点は当事者間に争いがない。

そして,ヒートパイプ内に作動流体以外の空気がないようにすることで,ヒートパイプ内での作動流体の気化量を多くでき,気化した流体の移動速度も高まることで,ヒートパイプの熱伝達効率が高まることは,当業者の技術常識である。この点も当事者間に争いがない。
また,ヒートパイプにおいて熱伝達効率向上という課題は,当然の課題であると考えられ,甲1発明もそのような課題を有すると認められる。
さらに,甲1【0035】には,
「作働流体流路24内には,冷媒となる作働流体
25(水,アルコール類等)と空気,不活性ガス(例えば,窒素(N2),ヘリウム
(He)等)等の流体を封入する。
」と記載されており,作動流体とともに封入され
る流体として,空気以外の不活性ガスも挙げられている。
そうすると,甲1発明において,上記周知の技術を適用して,
「微細管内に空気を
含まない」構成とすることは,当業者が容易に想到し得たということができる。(ウ)
a
原告の主張について
原告は,甲1においては,ヒートパイプ内の空気が70%とされて
おり,ヒートパイプの管内に多くの空気と作動液体を一緒に封入した場合,もはやヒートパイプとしては機能しない旨主張する。
しかし,甲1発明がヒートパイプの発明であることは明らかであり,空気が70パーセントという割合で管内に作動液体と一緒に封入された場合,当該管が熱交換する能力を有しないことを認めるに足りる証拠はないから,原告の上記主張は,採用することができない。
b
原告は,甲1発明においては,耐圧性と機密性の要求が低くなり,
そのために,複数の独立した流路とすることができる,甲1発明は複数の流路が独立したものであるのに対し,甲2~5はそうではないから,甲2~5の作動流体を甲1発明に適用しても,リークの問題が発生する旨主張する。
しかし,作動流体のリークは,流路の構造や流路内外の圧力差に関係するものであると考えられるところ,作動流体に空気を高い割合で含ませないと,複数の流路を内部に含む場合,流路間を隔てる壁がかしめ時に圧潰されてリークが生じることを裏付けるに足りる証拠はない。
したがって,原告の上記主張は,採用することができない。

相違点2について
(ア)

密閉された端部の形状が「密閉口に向かい徐々に収束した形状にな
ること」について
a
本願明細書において,
「密閉口に向かい徐々に収束」した形状は,マ

イクロヒートパイプアレイの縦断面構造のイメージ図である図1に示される端部の様子を表現したものであると解される(
【0041】【図1】。


そして,ヒートパイプの開口端部をかしめる(金属の接合部分を打ったり締めたりして固くとめる〔乙7〕
)ことにより封止,密閉したものにおいて,密閉された端
部の形状が,上記の本願明細書に記載された「密閉口に向かい徐々に収束した」形状となることは,
本願優先日前に周知の事項であるといえる
(甲3
【0028】

【図
5】
,甲4【0026】【図1】

,甲5【0010】【0013】【0014】【図



1】【図7】【図8】。



b
甲1には,
ヒートパイプのチャンネルの両出入口について,
「ヒート

パイプ用部材21の両端をかしめて作動流体25をチャンネルに密閉する。このようにして,ヒートパイプ用部材21のチャンネル212である貫通孔の両端の開口を封止,密閉する。したがって,ヒートパイプ用部材21を用いて,複数の独立した作動流体流路24を有するヒートパイプ部11が作成される。(」【0030】
)と
の記載がある。この記載によると,甲1発明は,端部開口がかしめられることにより複数あるチャンネルそれぞれの内部に独立して作動流体が封止,密閉されたものであるから,甲1発明においては,チャンネルの端部付近で,チャンネルが押し潰され,チャンネルを構成するアルミニウム等が互いに接合することにより,チャンネルの両端が封止,密閉されているものであると認められる。そして,当業者は,チャンネルの端部付近のアルミニウム等を互いに接合する方向(チャンネルが押し潰される方向)としては,一列に並列するチャンネルの端部開口を一括してかしめることが可能な方向,すなわち,ヒートパイプ用部材のチャンネルの開口面の最短辺方向とすることが自然であると理解する(甲3【図5】参照)
。また,前記a認定
の事実によると,当業者は,上記のようにしてチャンネルの端部付近のアルミニウム等をかしめた場合,その端部付近の形状は,
「密閉口に向かい徐々に収束した」形
状となることが自然であると理解する。
そうすると,
甲1発明の密閉された端部付近の形状は,
「密閉口に向かい徐々に収
束した形状になる」ものであるといえる。
(イ)

熱伝導体の総厚さと帯状密閉口の延在長さの比について

本願発明1は,
「少なくても一端は,密閉口に向かい徐々に収束した帯状密閉口を備え,前記熱伝導体の総厚さが3mm又は3mmより小さい場合,徐々に収束した前記帯状密閉口の延在する長さと前記熱伝導体の総厚さとの比が0.75乃至1.5の間となり,前記熱伝導体の総厚さが3mm乃至5mmである場合,徐々に収束した前記帯状密閉口の延在する長さと前記熱伝導体の総厚さとの比が0.5乃至1.5の間となること」という事項により特定されている。
一方,本願明細書【0041】には,
「徐々に収束した密閉口の延在長さと熱伝導
体の総長さの比をδとし,熱伝導体の総厚さが3mm,又は3mmより小さい場合,δの範囲は0.75≦δ≦1.5となり,また熱伝導体の総厚さが3mm-5mmの間である場合,δの範囲は0.6≦δ≦1.5となる。さらに熱伝導体の総厚さが5mmより大きい場合,δの範囲は0.5≦δ≦1.5となる。新型マイクロヒートパイプアレイが各種の環境
(異なる作動液,
異なる環境温度)
でうまく作動を行うため,
熱伝導体の総厚さと徐々に収束した密閉口の延在長さの関係の設定により,微細管の内部耐圧力を2.0MPaより大きくさせなければならない。例:熱伝導体の総厚さは3mmである場合,徐々に収束した密閉口の延在長さを2.5mm,或いは3mmなどに設定し,また熱伝導体の総厚さは4mmの場合,徐々に収束した密閉口の延在長さを2.8mm,或いは3mmなどに設定する。」との記載がある。本願明細書の上記記載における熱伝導体の総厚さが3mm~5mmの間である場合の密閉口の延在長さと熱伝導体の総長さの比は,本願発明1の上記特定事項と整合しない。
また,本願明細書の上記記載によると,熱伝導体の総厚さと徐々に収束した密閉口の延在長さの関係の設定は,微細管の内部耐圧力を2.0MPaより大きくするためであると認められるものの,「徐々に収束した帯状密閉口の延在する長さと熱伝導体の総厚さとの比」を特定の範囲内にすることについて,本願明細書には,上記の記載しかなく,この点について技術常識があるとも認められないから,本願発明1の微細管の内部耐圧力との関係における臨界的意義を含む技術的意義は定かでないというほかない。熱伝導体の総厚さが3㎜未満の場合と3㎜を超える場合において比の範囲が変わる意義についても,本願明細書に特段の説明はない。そうすると,「徐々に収束した帯状密閉口の延在する長さと熱伝導体の総厚さとの比」は,熱交換に寄与する部分を確保しつつ,かしめるのに適当な長さに設定するために,当業者が適宜設定し得た事項にすぎないということができる。(ウ)

小括

以上によると,
甲1発明に前記(ア)aの周知の事項を組み合わせ,
本願発明1の相
違点2に係る構成とすることは,当業者が容易に想到し得たことである。(エ)
a
原告の主張について
原告は,一般には,ヒートパイプの端部を平たくして固く止めるこ
とがなされる(乙3)のであって,
「収束」しているとはいえず,甲3は,各チャン
ネル同士が連通状態にあり,穴自体は密閉されていないから,開口部を「かしめ」て「密閉」した端部の形状ではなく,甲4及び5は,中心を通らない縦断面において「密閉口に向かい徐々に収束した」形状かどうか不明である旨主張する。しかし,乙3の【図3】【図4】において,圧潰部である端部先端に平たい部分,
があるものの,隔壁切除部(圧潰残置部)付近から圧潰部にかけてのヒートパイプ内部に空間がある部分の端部は,内壁も外郭も,空間がある部分の先端に向かい徐々に収束した形状である。
また,甲3~5に,ヒートパイプの開口端部をかしめて密閉した端部が「密閉口に向かい徐々に収束した」
形状が記載されていることは,
前記(ア)aのとおりである。
甲3には,
「偏平多穴管101~103の端部を潰」【0028】

)し,その外郭
が端部に向かって徐々に収束した形状となった図(
【図5】
)が記載されており,甲
4(
【図1】
)及び甲5(
【図1】【図7】【図8】


)においては,縦断面において「密
閉口に向かい徐々に収束した」形状が記載されているのであって,甲3において,各チャンネル同士が連通状態にあり,甲4又は甲5において,中心を通らない縦断面において「密閉口に向かい徐々に収束した」形状かどうか不明であるとしても,上記認定を左右するものではない。
したがって,原告の上記主張は,採用することができない。
b
原告は,①甲1の【図1】は収束構造ではなく,甲1発明の複数のチ
ャンネルが
「かしめられて封止,
密閉された端部の形状」
が一般に密閉口に向かい徐々
に収束した形状になるわけではない,②複数のチャンネルを内部に含むヒートパイプにおいては,その端部に圧力を加えて変形させると,チャンネル同士を隔てる壁が圧潰されるので,圧潰により,チャンネル同士が連通してしまわないようにするという特有の課題があるところ,
甲4及び5においては,
チャンネル同士は独立しておらず,
甲3においては,隣同士のチャンネルを隔てる側壁の圧潰という現象は起こりようがないから,甲1発明に甲3~5のかしめ技術を適用することはできない旨主張する。しかし,①については,前記(ア)bのとおりであって,甲1の【図1】の記載によって,この認定が左右されることはない。
また,②については,確かに,複数のチャンネルを内部に含むヒートパイプにおいて,その端部に圧力を加えて変形させると,チャンネル同士を隔てる壁もその部分で圧潰されるが,その場合,チャンネル同士が連通することが不可避であることを裏付けるに足りる証拠はない。むしろ,複数のチャンネルを内部に含むヒートパイプの端部を,その外壁が封止されて密閉されるまでかしめた場合,その内部のチャンネル同士を隔てる壁も各チャンネルを各別に封止して密閉する形状になるとも考えられる。したがって,原告の上記主張は,採用することができない。
c
なお,原告は,甲2についても主張するが,前記イ(ア)~(ウ)は,甲1
発明と甲2に記載された事項の組合せについて判断したものではなく,甲1発明と周知の事項の組合せについて判断したものであるから,甲2についての原告の主張は,前記認定を左右するものではない。
d
原告は,甲1は,収束や比を示しておらず,複数のチャネルを内部
に含むヒートパイプは,隔壁の圧潰という特有の課題を有しており,その課題を解決するために,熱伝導体の総厚さと密閉口の延在長さとの比というパラメータに着目しているのであって,このことは,周知事項とはいえず,設計事項でもない旨主張する。
しかし,前記イ(イ)のとおり,本願明細書をみても,本願発明1において特定された「徐々に収束した帯状密閉口の延在する長さと熱伝導体の総厚さとの比」の数値を,その特定された範囲内とすることの技術的意義は定かではないのであって,熱伝導体の総厚さと密閉口の延在長さとの比というパラメータにより,隔壁の圧潰という課題が解決されることを裏付けるに足りる客観的な証拠もない。したがって,原告の上記主張は,採用することができない。

効果について

原告は,本願発明1においては,熱伝導体の総厚さと密閉口の延在長さとの比をパラメータとし,所定の値とすることにより,密閉口の耐圧強度を高め,信頼性が高く,散熱効率が高いマイクロヒートパイプアレイを得ることができるという顕著な効果を達成する旨主張するが,前記イ(イ)のとおり,本願明細書をみても,本願発明1において特定された「徐々に収束した帯状密閉口の延在する長さと熱伝導体の総厚さとの比」の数値を,その特定された範囲内とすることの技術的意義は定かでないのであって,本願発明1につき,構成の容易想到性が認められてもなお進歩性を肯定するに足りる顕著な効果は認められない。
(4)

小括

以上によると,本願発明1について,原告の主張する取消事由は,理由がない。第6

結論

よって,主文のとおり判決する。

知的財産高等裁判所第2部

裁判長裁判官
森義之
裁判官
永田早苗森岡礼子
裁判官
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