判例検索β > 平成29年(行ケ)第10180号
審決取消請求事件 特許権 行政訴訟
事件番号平成29(行ケ)10180
事件名審決取消請求事件
裁判年月日平成30年3月28日
法廷名知的財産高等裁判所
裁判要旨判決年月日 平成30年3月28日 担
当 知的財産高等裁判所 第2部
平成29年(行ケ)第10180号 部
事 件 番 号
○ 審決の相違点の判断に誤りがあったとした 事例。
(関連条文)特許法29条2項
(関連する権利番号等)特許第6035579号,無効2017-800009号
判 決 要 旨
1 被告は,名称を「登記識別情報保護シール」とする発明についての特許(特許第60
35579号)の特許権者である。原告は,本件特許の無効審判請求をしたところ(無効
2017-800009号),特許庁は,「本件審判の請求は,成り立たない。」との審
決をした。
2 登記識別情報保護シールを登記識別情報通知書に何度も貼り付け,剥離することを繰
り返すと,粘着剤層が多数積層して,登記識別情報を読み取りにくくなるという登記識別
情報保護シールにおける本件課題は,登記識別情報保護シールを登記識別情報通知書に何
度も貼り付け,剥離することを繰り返すと必然的に生じるものであって,登記識別情報保
護シールの需要者には当然に認識されていたと考えられる。現に,本件原出願日の5年以
上前である平成21年9月30日には,登記識別情報保護シールの需要者である司法書士
に認識されていたものと認められる。そして,登記識別情報保護シールの製造・販売業者
は,需要者の要求に応じた製品を開発しようとするから,本件課題は,本件原出願日前に,
当業者において周知の課題であったといえる。
そうすると,本件課題に直面した登記識別情報保護シールの技術分野における当業者は,
粘着剤層の下の文字(登記識別情報)が見えにくくならないようにするために,粘着剤層
が登記識別情報の上に付着することがないように工夫するものと認められる。甲3発明は,
秘密情報に対応する部分には実質的に粘着剤が設けられていないものであり,甲3発明と
甲1発明は,秘密情報保護シールであるという技術分野が共通し,一度剥がすと再度貼る
ことはできないようにして,秘密情報の漏洩があったことを感知するという点でも共通す
る。したがって,甲1発明に甲3発明を適用する動機付けがあるといえる。
甲1発明に甲3発明を適用すると,粘着剤層が登記識別情報の上に付着することがなく
なり,本件課題が解決される。したがって,甲1発明において,甲3発明を適用し,相違
点に係る構成とすることは,当業者が容易に想到するものと認められる。
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平成30年3月28日判決言渡
平成29年(行ケ)第10180号
口頭弁論終結日

審決取消請求事件

平成30年3月14日
判原決告
有限会社法令書式センター

同訴訟代理人弁護士

永井告真山敦福被上秋
同訴訟代理人弁理士

島士山
同訴訟代理人弁理士

林1智也恵子
日本情報開発株式会社

同訴訟代理人弁護士

主賢﨑順一實文
特許庁が無効2017-800009号事件について平成29年
8月21日にした審決を取り消す。

2
訴訟費用は被告の負担とする。
事実及び理由

第1

請求の趣旨

主文同旨
第2

事案の概要

本件は,原告が請求した特許無効審判の不成立審決に対する取消訴訟である。争点は,進歩性の有無についての判断の当否である。

1
手続の経緯

被告は,平成27年3月20日(以下,
「本件原出願日」という。
)に出願された
実用新案登録第3198127号に基づいて,
平成28年1月21日に出願され
(特
願2016-21270号)
,同年11月11日に設定登録がなされた特許(以下,
「本件特許」という。特許第6035579号。発明の名称「登記識別情報保護シール」
)の特許権者である(甲19)

原告は,平成29年1月27日,本件特許の無効審判請求をしたところ(無効2017-800009号。甲20)
,特許庁は,平成29年8月21日,
「本件審判
の請求は,成り立たない。
」との審決をし,同審決謄本は,同月31日に原告に送達
された。
2
本件発明の要旨

本件特許の請求項1~4に係る発明(以下,それぞれ「本件発明1」~「本件発明4」といい,まとめて「本件発明」という。
)は,次のとおりである。
(本件発明1)
登記識別情報通知書の登記識別情報が記載されている部分に貼り付けて登記識別情報を隠蔽・保護するための,一度剥がすと再度貼り直しできない登記識別情報保護シールであって,前記登記識別情報保護シールを構成する粘着剤層の少なくとも前記登記識別情報に接触する部分には前記登記識別情報通知書に粘着しない非粘着領域を有することを特徴とする登記識別情報保護シール。
(本件発明2)
前記非粘着領域は,前記登記識別情報が記載されている部分を囲む矩形領域であることを特徴とする請求項1記載の登記識別情報保護シール。
(本件発明3)
前記非粘着領域は,前記登記識別情報が記載されている部分を囲む任意の多角形領域であることを特徴とする請求項1記載の登記識別情報保護シール。(本件発明4)

前記非粘着領域は,コーナー部にR面取りなどの面取りがされていることを特徴とする請求項2乃至3いずれか1項記載の登記識別情報保護シール。3
審決の理由の要旨
(1)

原告が主張した無効理由

本件発明1~4は,甲1~4(必要な場合には甲5~8)に記載された発明に基づいて,本件原出願日前に,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものであり,その特許は同法123条1項2号の規定に該当し,無効とすべきものである(2)

無効理由についての判断
引用発明の認定
(ア)

特開2007-52379号公報
(甲1。
以下,
「甲1文献」
という。


記載の発明(以下,「甲1発明」という。)
「登記識別情報通知書が法務局から下付された際に登記識別情報を秘匿していた目隠しシールを前記登記識別情報通知書から剥がした後に前記登記識別情報を秘匿するための一度剥がすと貼りなおしが出来ない登記識別情報保護シール。」(イ)

特開2008-40797号公報
(甲2。
以下,
「甲2文献」
という。


記載の発明(以下,「甲2発明」という。)
「目隠しシール10は,名称部11等を表面に印刷する表面基材層21と,目隠しシール10を擬似的に接着させる疑似層22と,目隠しシール10を登記識別情報通知40等に接着するための粘着剤層23と,剥離材層24と,目隠しシール10を履歴管理シート30に接着するための粘着剤層25と,剥離材層26と,で構成されており,
剥離剤層26を剥がして履歴管理シート30の所定の位置(貼着台紙部31の位置)に貼付けて使用され,必要に応じて,剥離剤層24を剥がして目隠しシール10を登記識別情報通知40等に接着し,登記識別情報通知40等に接着された目隠しシール10は,登記識別情報通知40等から剥がそうとすると,疑似層22から
はがれるため,再度目隠しシール10を登記識別情報通知40等に貼付けることができなくなる目隠しシール10。」
(ウ)

特開2009-244476号公報(甲3。以下,「甲3文献」とい
う。)記載の発明(以下,「甲3発明」という。)
「脆質層の一側面に支持層を剥離不可能に貼着し,前記脆質層の他側面に粘着剤を介して剥離紙を剥離可能に貼着した封緘シールにおいて,前記剥離紙には,封緘シールの貼り付け時にラベルの記録面を読み取り不能に覆い隠し,かつ,封緘シールを剥離したとき脆質層の一部がラベルの記録面に付着しないように,前記剥離紙を貫通する切り込みを形成し,
封緘シールの剥離紙を切り込みの外側から剥し,支持層の粘着剤が塗布されている面を被貼り付け面側にして,封緘シールを容器上のラベルに跨がる状態で貼り付け,このとき,中央側の剥離紙は切り込みにより粘着剤上に残り,ラベルを覆うことにより,封緘シールの剥離時に脆質層に損傷を与えるのを防止でき,次に,ラベルを読み取る際には,剥離紙を剥し取って対象物に貼り付けた状態から剥し取ると,欠損した脆質層は支持層と被貼付面の双方に,元に戻せない状態で付着する封緘シール。」
(エ)

特開2002-55618号公報
(甲4。
以下,
「甲4文献」
という。


記載の発明(以下,「甲4発明」という。)
「隠蔽ラベルは,被着体に形成された情報を隠蔽するようにして接着剤を介して被着体に貼り合わされており,
被着体の情報は,数字や文字などであり,一方,隠蔽ラベルは,基材の内面側に脆質層を有しており,被着体の情報に対応する部分に非接着層が形成されるとともに,
その非接着層の両側に間隔を置いてミシン目からなる破断線が平行に形成され,隠蔽ラベルを剥離すると,情報の部分は非接着層で保護されているため,正確な情報が判読でき,一方,接着部分では被着体に脆質層が部分的に残るので,一度剥離が行われたことが明確に分かる隠蔽ラベル。」

(オ)

実願平1―72721号
(実開平3-12279号)
のマイクロフィ

ルム(甲5。以下,「甲5文献」という。)記載の発明(以下,「甲5発明」という。)
「隠蔽性のある不透明シートと,
該不透明シートの裏面に塗布された,
非粘着性,
被再熱シール性で易剥離性または弱凝集性のコート剤と,該コート剤に塗布又は印刷されたヒートシール性接着剤とを有し,
ヒートシール性接着剤は,ラベル本体の裏面の周縁部のみを熱圧着する方式であってもよいし,グラビア印刷機やフレキソ印刷機等の印刷機を用いて,ラベル本体の周縁部に連続線状に印刷した,所謂パートコートされた物を熱圧着する方式でもよいものであり,
不透明シートとコート剤との界面又はコート剤の内部から容易に剥離でき,葉書面から剥がれることは無く,葉書に記載された情報を誤って傷付けることがないものである。また,一旦剥離すると,ヒートシール性接着剤の上に非粘着性で被再熱シール性のコート剤が残っているので,再びラベルを葉書に接合することはできない秘密保持ラベル。」
(カ)

実願昭61-189006号
(実開昭63-92774号)
のマイク

ロフィルム(甲6。以下,「甲6文献」という。)記載の発明(以下,「甲6発明」という。)
「被着体の情報表示部を視認不能に覆う不透明部を備えたシート体から成り,前記情報表示部の周部に位置して前記シート体に剥離可能な印刷層を形成すると共に,該印刷層上に該シート体を被着体に接着するための感圧性接着剤層を積層して成り,
シート体を被着体より剥離すると,印刷層はシート体に対して剥離可能である一方,感圧性接着剤層に接着されているから,引き剥がされるシート体に追従することなく,該印刷層の少なくとも一部は接着剤層上に転移して,シート体を被着体に再度接着させようとしても,シート体は前記剥離された印刷層上には接着せず分離
状態にあり,元の状態には復帰しない秘密保持シート。」
(キ)

特開2009-69393号公報
(甲7。
以下,
「甲7文献」
という。


記載の発明(以下,「甲7発明」という。)
「シート本体の裏面に粘着剤層を備え,その粘着剤層を介して前記シート本体を隠蔽すべき情報が表示された情報部に貼り付けるようにしたものであって,前記粘着剤層は,前記シート本体の外周縁部に位置する強粘着性部とその強粘着性部に囲まれた領域に形成されて前記強粘着性部よりも粘着性が低い弱粘着性部とからなると共に,前記シート本体には前記弱粘着性部と前記強粘着性部との境界に沿って切断可能部が形成され,その切断可能部を切断することにより前記シート本体のうち前記強粘着性部に対応する領域を前記情報部に粘着させたまま前記弱粘着性部に対応する領域を前記情報部から剥離可能にしたものにおいて,前記切断可能部は,前記強粘着性部と前記弱粘着性部との境界線に対して傾斜しつつ隣接して並ぶ多数のスリット群によって形成されている情報保護シール。」
(ク)

実願昭57-17613号
(実開昭58-120077号)
のマイク

ロフィルム(甲8。以下,「甲8文献」という。)記載の発明(以下,「甲8発明」という。)
「脆弱層と接着剤層より構成される脆性シールの該接着剤層上の一部に,接着性のない隠蔽材層を少なくとも設けた隠蔽シールであって,
この隠蔽材層(3)の下に画像形成体(6)の表面に位置する画像(4)が位置する隠蔽シール。」

本件発明1について
(ア)
a
甲1発明を主引用発明とした場合
対比

(一致点)
「登記識別情報通知書の登記識別情報が記載されている部分に貼り付けて登記識別情報を隠蔽・保護するための,一度剥がすと再度貼り直しできない登記識別情報
保護シールであって,前記登記識別情報保護シールを構成する粘着剤層を有する登記識別情報保護シール。」
(相違点1)
本件発明1は,「粘着剤層の少なくとも登記識別情報に接触する部分には登記識別情報通知書に粘着しない非粘着領域を有する」のに対し,甲1発明は,そのようなものではない点。
b
相違点1の判断
(a)

登記識別情報保護シールにおいて,
登記識別情報保護シールを登

記識別情報通知書に何度も貼り付け,剥離することを繰り返すと,粘着剤層が多数積層して,登記識別情報が読み取れにくくなるという課題(以下,「本件課題」という。)は,周知の課題であるから,甲1発明において内在する自明の課題といえるが,甲1発明には,本件課題を解決するための手段は示されていない。(b)

甲3発明には,
「(秘密)情報通知書に貼り付けるために外側の

部位を剥して粘着剤を露出させ,(秘密)情報通知書の記録面に記載された秘密情報情報(秘密情報)に対応する部分(領域)には,実質的に粘着剤を設けていない秘密情報保護シール」が示されているといえる。
甲3文献には,本件課題は記載も示唆もされていない。また,甲3発明は,例えば,採血,検尿等に使用される検体用容器等に使用するもので,ラベルに貼着された封緘シールを剥離除去して,ラベルの記録面に記載された秘密情報を読み取るものであって,再度,当該ラベルに新たな封緘シールを貼着して使用することは想定していない。したがって,甲3発明において,封緘シールをラベルに何度も貼り付け,剥離することを繰り返すと,粘着剤の層が多数積層して,ラベルの記録面に記載された秘密情報が読み取れにくくなるといった課題が,
自明であるとはいえない。
また,甲1発明は,登記識別情報保護シールを登記識別情報通知書に何度も貼り付け,剥離することを繰り返しても,登記識別情報が解読不能とならないようにするための機能,作用を有するものではない。

したがって,甲1発明に甲3発明を適用する動機付けはない。また,相違点1に係る本件発明1の発明特定事項が,当業者にとって設計事項であるとする根拠もない。そして,甲1発明において,他に相違点1に係る本件発明1の発明特定事項を備えるものとすることを,
当業者が容易に想到し得たといえる根拠も見当たらない。
よって,甲1発明において,甲3発明を適用することにより,相違点1に係る本件発明1の発明特定事項とすることは,当業者が容易に想到し得るものではない。(c)

甲4発明には,「(秘密)情報通知書に貼り付けるために,接着

剤の層を設け,(秘密)情報通知書に形成された情報(秘密情報)に対応する部分(領域)には,非接着層が形成されている秘密情報保護シール」が示されているといえる。
ところで,甲4文献には,本件課題は記載も示唆もされていない。また,甲4発明は,例えば,国際電話カード,インターネット接続カード,ネット小額決済カード,宝くじ等に使用し,被着体に接着された隠蔽ラベルを剥離して,被着体に形成された情報を判読するもので,再度,当該被着体に新たな隠蔽ラベルを接着して使用することは想定していない。そうすると,甲4発明において,隠蔽ラベルを被着体に何度も貼り付け,剥離することを繰り返すと,接着剤の層が多数積層して,閲覧する秘密情報が読み取れにくくなるといった課題が,自明であるとはいえない。また,甲1発明は,登記識別情報保護シールを登記識別情報通知書に何度も貼り付け,剥離することを繰り返しても,登記識別情報が解読不能とならないようにするための機能,作用を有するものではない。
したがって,甲1発明に甲4発明を適用する動機付けはない。また,相違点1に係る本件発明1の発明特定事項が,当業者にとって設計事項であるとする根拠もない。甲1発明において,他に相違点1に係る本件発明1の発明特定事項を備えるものとすることを,当業者が容易に想到し得たといえる根拠も見当たらない。よって,甲1発明において,甲4発明を適用することにより,相違点1に係る本件発明1の発明特定事項とすることは,当業者が容易に想到し得るものではない。
(d)

甲5発明及び甲6発明には,
「(秘密)情報通知書に貼り付ける

ために外側の部位を剥して粘着剤を露出させ,(秘密)情報通知書の記録面に記載された秘密情報情報(秘密情報)に対応する部分(領域)には,実質的に粘着剤を設けていない秘密情報保護シール」が示され,甲8発明には,「(秘密)情報通知書に貼り付けるために,接着剤の層を設け,(秘密)情報通知書に形成された情報(秘密情報)に対応する部分(領域)には,非接着層が形成されている秘密情報保護シール」が示されている。また,甲7発明は,(秘密)情報通知書に形成された情報(秘密情報)に対応する部分(領域)には,弱粘着性部が形成されている秘密情報保護シールであって,上記のような非接着層を形成したものではない。ところで,甲5~8文献には,本件課題は記載も示唆もされていない。また,甲5~8発明は,例えば,葉書や書類,印刷物に使用し,被着体に接着された隠蔽ラベルを剥離して,被着体に形成された情報を判読するもので,再度,当該被着体に新たな隠蔽ラベルを接着して使用することは想定していない。
そうすると,甲5~8発明において,隠蔽ラベルを被着体に何度も貼り付け,剥離することを繰り返すと,接着剤の層が多数積層して,閲覧する秘密情報が読み取れにくくなるといった課題が,自明であるとはいえない。
また,甲1発明は,登記識別情報保護シールを登記識別情報通知書に何度も貼り付け,剥離することを繰り返しても,登記識別情報が解読不能とならないようにするための機能,作用を有するものではない。
したがって,甲1発明に甲5~8発明を適用する動機付けはない。また,相違点1に係る本件発明1の発明特定事項が,当業者にとって設計事項であるとする根拠もない。そして,甲1発明において,他に相違点1に係る本件発明1の発明特定事項を備えるものとすることを,当業者が容易に想到し得たといえる根拠も見当たらない。
よって,甲1発明において,甲5~8発明を適用することにより,相違点1に係る本件発明1の発明特定事項とすることは,当業者が容易に想到し得るものではな
い。
(イ)

甲2発明を主引用発明とした場合

a
対比

(一致点)
「登記識別情報通知書の登記識別情報が記載されている部分に貼り付けて登記識別情報を隠蔽・保護するための,一度剥がすと再度貼り直しできない登記識別情報保護シールであって,前記登記識別情報保護シールを構成する粘着剤層を有する登記識別情報保護シール。」
(相違点2)
本件発明1は,「粘着剤層の少なくとも登記識別情報に接触する部分には登記識別情報通知書に粘着しない非粘着領域を有する」のに対し,甲2発明は,そのようなものではない点。
b
相違点2の判断

相違点2に係る本件発明1の発明特定事項と相違点1に係る本件発明1の発明特定事項とは,差異はない。
したがって,前記(ア)bのとおり,甲1発明において,甲3~8発明を適用することにより,相違点2に係る本件発明1の発明特定事項とすることは,当業者が容易に想到し得るものではない。

本件発明2~4について

本件発明2~4は,本件発明1の発明特定事項をその発明特定事項の一部とするものであって,本件発明1が,当業者にとって容易に発明することができたものとはいえないのであるから,同様に本件発明2~4は,当業者が容易に発明することができたものとはいえない。
第3
1
原告主張の審決取消事由
取消事由1(甲1発明及び甲4発明に基づく相違点の判断の誤り)(1)

甲1発明と甲4発明は,
いずれも情報を隠蔽することと,
隠蔽箇所が誰か
に剥離されたという事実が明らかになることによって隠蔽された情報の漏洩又はその情報が有する識別力を保護しようとする技術であるから,技術分野の関連性は強い。したがって,甲4発明を登記識別情報の隠蔽及び保護という需要への流用可能性に想到することは当業者にとって容易である。
(2)

甲4文献の【0003】【0006】【0007】に,情報を覆う部分を,


接着しない状態にすることによって情報部分に脆質着色層が残らないようにすることで,情報の確認をしやすく誤認しにくくしようとしたことが,開示されている。従来の目隠しシールでは,登記識別情報を覆っているシールを剥がすと,本件特許の明細書(以下,図面と併せて「本件明細書」という。【0005】の記載のと)
おり,粘着剤層920が登記識別情報通知書に残留する。本件発明は,登記識別情報を覆う部分を非粘着にすることによって粘着剤層920が通知書に残らないようにして,読み取り不能になることのないよう,すなわち,情報の確認をしやすく,誤認しにくくしているものである。したがって,本件課題は,甲4文献に開示される課題と共通している。
甲4文献では,たとえ一層だけであったとしても,剥がした後に情報部分に脆質着色層が残り確認がしにくく誤認するおそれがあることを課題としているのであるから,それがさらに積み重なって多層化してさらに視認しづらくなるという課題も包含している。残留した層が一層であった場合,これを解決する本件発明1には進歩性がないが,ユーザーの使用態様によって残留した層が二層以上になる場合には進歩性を有するというのは不合理である。
(3)

甲1発明と甲4発明は,
いずれも保護すべき情報を隠す箇所を非粘着
(接

着)とすることによって,脆質層(粘着剤層)が残留する可能性をなくし,情報の視認性を確保して,情報の確認をしやすくし,誤認のおそれを防いでいるから,その作用や機能は共通する。甲1発明と甲4発明を組み合わせた場合の効果は,情報部分への残留層が一層もなくなることにとどまるから,予測された範囲内である。(4)

登記識別情報の情報保護シールに非接着部分を組み合わせることを阻害する要因は全くない。
(5)

以上より,
甲1発明に甲4発明を組み合わせる動機付けがあるから,
甲1

発明に相違点1に係る本件発明1の構成を採用し,本件発明1とすることは,当業者が容易に想到し得たことである。
2
取消事由2(甲1発明及び甲3発明に基づく相違点の判断の誤り)(1)

審決が動機付けの認定を誤ったことについて
甲1発明と甲3発明が共通する課題を有さないという審決の判断につい

本件発明が解決すべき本質的な技術的課題は「登記識別情報保護シールを何度も貼り付け,剥離を繰り返すと,粘着剤層が多数積層する」ことにあるのではなく,「情報保護シールを貼り付け,剥離すると,粘着剤層が情報記載部分に残留する」ことにある。
「何度も貼り付け,剥離することを繰り返す」点は,シールの使用方法にすぎず,シールの技術的要素を有するものではない。
本件課題は,甲1発明において,内在する自明の課題である。そうすると,多数積層することにより生じる「登記識別情報が読み取れにくくなる」という課題は,一層堆積することによっても生じる場合があることは当業者にとって自明であるから,
「情報保護シールを貼り付け,
剥離すると,
粘着剤層が情報記載部分に残留する」
という課題も,甲1発明において内在する自明の課題といえる。
甲3発明は,秘密情報を隠蔽するシールであって,情報通知書の記録面に記載された秘密情報に対応する部分には実質的に粘着剤を設けていないものであるから,シールを貼り付けて,剥離したときに,粘着剤層が秘密情報の上に残留することがない。そして,甲3発明がこのような非粘着剤領域を有する構成を採用している理由は,シールを剥離したときに,粘着剤層が秘密情報の上に残留しないようにして情報が読み取りにくくならないようにするためであるということは,甲3発明に接した当業者が理解できるものである。
甲1発明と甲3発明とは,
「情報保護シールを貼り付け,剥離すると,粘着剤層が
情報記載部分に残留する」という共通する課題を有しているため,甲1発明に甲3発明を適用する動機付けがある。
したがって,甲1発明と甲3発明が,共通する課題を有するものではないことを根拠に,甲1発明に甲3発明を適用する動機付けはないとした審決の判断は誤りである。

甲1発明と甲3発明が共通する作用・機能を有さないという審決の判断
について
審決は,甲1発明に対して「登記識別情報保護シールを登記識別情報通知書に何度も貼り付け,剥離を繰り返しても,登記識別情報が解読不能とならなくするための機能,作用」を要求しているが,これは,本件発明1と同一の発明を甲1発明に求めるものであって,進歩性の判断を誤っている。
(2)

共通する課題を有さないことのみに基づき容易想到性を否定した審決の
判断の誤りについて

動機付けについて

甲1発明と甲3発明とは,共に「秘密情報保護シール」との概念で共通し,技術分野を同じくする。
甲1発明と甲3発明とは,秘密情報を保護,隠蔽するという点,不正にシールが剥がされて情報が読まれることを防止するために,秘匿情報等を覆うシールやラベルを一度剥がすと貼り直しができないようにするという点で,共通の課題を有している。また,シールを剥離した際に情報が解読不能とならないようにすることは,自明の課題である。
甲1発明と甲3発明とは,シールを秘密情報上に貼付し,その情報を保護,隠蔽するという点,及び,そのシール自体は一度剥がすと貼り直しができないという点において,作用,機能が共通している。
したがって,甲1発明に甲3発明を適用する動機付けがある。

効果について
本件発明によると,何度も登記識別情報保護シールの剥離作業を行っても登記識「
別情報が解読不能とならない」という効果を奏する。
甲3発明は,情報記載部分に接触する部分に非接着領域を有しているため,シールを何度も貼り付け,剥離する作業を繰り返しても,情報記載部分に粘着剤層が残留せず,情報が解読不能にならないという効果を奏する。
したがって,本件発明の上記効果は,当業者が予測できたものである。ウ
阻害要因について

当業者が甲1発明に甲3発明を適用することに何ら困難性はなく,阻害要因があるとは認められない。

容易想到性について

上記ア~ウによると,当業者が甲1発明と甲3発明とを選択して対比検討することは容易であり,甲1発明に甲3発明を適用すると,相違点1に係る本件発明1の構成に到達する。たとえ,甲1発明と甲3発明を組み合わせる目的が,本件課題と同一の課題を解決するためでなかったとしても,組み合わせることによって本件課題も併せて解決されるから,組み合わせる動機付けがあり,組み合わせることによる課題解決の効果は当業者において予測可能であるから,本件発明1は,甲1発明と甲3発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。オ
以上より,本件課題が開示,示唆されていない点のみを強調し,動機付
けの判断において重視して,容易想到性を否定した審決の判断には誤りがある。(3)

組合せの論理と発明特定事項をすり替えた審決の判断の誤りについて
審決は,本件発明1の構成要件のうち,甲1文献に開示のない部分が甲3文献に開示されていると認定しながら,甲3文献には,
「何度も貼り付け,剥離することを
繰り返す」記載がないことを理由に,これを本件発明1の発明特定事項とすることは容易想到ではないと判断し,発明特定事項として,
「何度も貼り付け,剥離するこ
とを繰り返す」ことを要件として認定したが,この認定は,特許請求の範囲の記載に基づくことなく発明特定事項を認定したものであって,発明の要旨の認定を誤ったものである。
3
取消事由3(本件発明2~4についての相違点の判断の誤り)

本件発明1が容易に発明することができたものではないとする審決の判断に誤りがあるから,
この判断に基づく本件発明2~4に対する審決の判断にも誤りがある。第4
1
被告の主張
取消事由1について
(1)

技術の関連性について

甲1発明は,保護シールの表面に署名・押印する領域を設けるというものにすぎず,
シールの情報保護層,
粘着剤層等の具体的構造とは無関係な発明であり,
他方,
甲4発明は,シールの層構造に関する発明である。したがって,両発明が開示する技術の間に関連性はない。
(2)

甲1発明と甲4発明を組み合せると本件発明に至ることについて

甲1発明と甲4発明を組み合わせることに動機付けがあるかが争点であるから,甲1発明と甲4発明を組み合わせると本件発明に至ることを容易想到性の根拠として持ち出すのは筋違いである。
(3)

課題の共通性について

甲1文献には,登記識別情報保護シールを「何度も貼り付け,剥離することを繰り返す」ことに関する本件課題の示唆はなく,登記識別情報通知書における本件課題が本件原出願日以前に当業者において周知であったとの証拠はなく,甲4発明も本件課題を課題とするものでない。したがって,たとえ本件課題が甲1発明にとって「内在する自明の課題」であったとしても,甲1発明と甲4発明との間に課題の共通性はない。本件課題が当業者に周知であり内在する自明の課題であることについての立証はされていない。
本件課題は,登記識別情報通知書という,不動産所有権に関わる重要書類で登記手続において何度も繰り返し使用され,そこに記載された登記識別情報の保護シールがその度に剥離され,再貼付されるという,特殊な文書のためのものであることにより生じる特殊な課題であって,甲4発明におけるような,シールを一度だけ剥がせば目的を達成し,再度シールを貼ることは想定していない場合の情報の確認困難という課題とは全く異なるものである。したがって,不動産登記実務,とりわけ登記識別情報通知書と保護シールの取扱い実務についての通常の知識のない一般的なシール製造・販売業者が容易に認識できるような課題ではない。一層は多層を含まないから,甲4発明は,一度剥がせば再度シールを貼付することは一切想定していない発明であり,繰り返しについての課題も示唆もない。
以上より,甲1発明と甲4発明との間に課題の共通性は存在しない。(4)

作用,機能の共通性について

甲1文献に,
「何度も貼り付け,剥離することを繰り返す」ことに関わる課題の示唆はなく,課題解決のための作用,機能の開示も一切ない。甲4発明も,「何度も貼
り付け,剥離を繰り返す」ための機能,作用を有するものでない。したがって,両発明の作用,機能に共通性はない。
(5)

組合せの効果が予想の範囲であることについて

組合せの効果が予想の範囲内であるという点は,組合せの動機付けができた後でいうべきものであるから,筋違いである。
(6)

組合せに阻害要因がないことについて

甲1発明と甲4発明を組み合わせることを着想した後においては,それを阻害する要因があるとはいえないが,両発明に課題と機能,作用の共通性が認められない以上,両者の組合せが想到容易であるとはいえない。
2
取消事由2について
(1)

「審決の動機付けの認定の誤り」について
甲1発明と甲3発明の課題の共通性について

原告の主張は,
「粘着剤層が登記識別情報通知書の情報記載部分に残留する」
とい
う課題は1回剥がすことしか想定していないシールにも,
「何度も貼り付け,
剥離を
繰り返す」ことの課題解決に使用するシールにも共通であるから課題の共通性があるというもので,取消事由1の「多層は一層を含む」との議論の繰り返しにすぎない。甲3発明の封緘シールには,シールを何度も貼り付け,剥離することを繰り返すという課題は存在せず,その使用目的は「医療,保険衛生分野において採血,検尿等に使用される検体用容器等に付与するに好適な封緘シール」であって,これを使い回しすることは倫理上も許されることではないから,本件課題とは矛盾し,阻害要因がある。
したがって,甲1発明と甲3発明には,課題の共通性はない。

甲1発明と甲3発明の作用,機能の共通性について

審決が,甲1文献に本件課題解決のための作用,機能が記載されていないと指摘したのは,甲1発明自体が本件課題と無関係な発明であるから,当然,課題解決のための作用,機能が記載されておらず,そのため,甲3発明と共通の作用,機能を有するものでないとしたものであり,その判断に誤りはない。
(2)「共通する課題を有さないことのみに基づき容易想到性を否定した審決の判断の誤りについて」について
甲1発明には,甲3発明と組み合わせる「動機等のいわゆる論理付け」を導く課題は,本件課題であれ,他の課題であれ全く存在しない。
「他の課題によるものであ
れ,動機等のいわゆる論理付け」なくして,引用発明を組み合わせれば特許発明に至るから容易想到であるとする主張は,発明の進歩性判断において,ともすると陥りがちの誤った議論であって,認められない。
(3)

「組合せの論理と発明特定事項とのすり替えた審決の判断の誤りについ
て」について
審決における相違点1は
「本件発明1は,
『粘着剤層の少なくとも登記識別情報に
接触する部分には登記識別情報通知書に粘着しない非粘着領域を有する』のに対し,
甲1発明はそのようなものでない点」
であるから,
「相違点1に係る本件発明1の発
明特定事項とすること」とは,甲1発明を本件発明1の発明特定事項である「非粘着領域を有する」ものとすることである。
審決は,甲3発明には「秘密情報に対応する部分には実質的に粘着剤を設けていない秘密情報保護シール」が示されているといえるが,甲3文献には,「何度も貼り
付け,剥離することを繰り返す」と,粘着剤層が多数積層して,識別情報が読み取りにくくなるという課題は記載や示唆されていないから,甲1発明と甲3発明を組み合わせる動機が認められないので,相違点1に係る本件発明1の発明特定事項である「非粘着領域を有する」とすることは当業者が容易に想到し得るものではないと判断したものである。組合せの論理と発明特定事項をすり替えたものではない。3
取消事由3について

上記1及び2と同様である。
第5

当裁判所の判断

1
本件発明の概要
(1)

本件明細書(甲19)には,以下の記載がある。

【技術分野】
【0001】本発明は,登記識別情報を保護する登記識別情報保護シールに関する。
【背景技術】
【0002】
不動産の登記識別情報は,
登記済証に代えて発行される,
アラビア数字その他の符号の組み合わせからなる12桁の符号である。登記識別情報は,不動産及び登記名義人となった申請者ごとに定められ,登記名義人となった申請者のみに通知されるものである。登記識別情報は,その提供者が登記名義人本人であることを登記所に確認させるための暗証番号のようなものとされている。従って,登記識別情報の12桁の符号を示せば,不動産の所有者として登録申請を行うことができ,登記識別情報を第三者に盗み見られないよう厳重に保管・管理する必要がある。
【0003】現在,登記識別情報通知書により登記識別情報が通知される。図7は登記識別情報通知書700の見本である。登記識別情報710は登記識別情報通知書700の下部に12桁の符号720とQRコード730とで構成されている。登記識別情報通知書700は,登記識別情報710の上に目隠しシール740を貼って申請者に交付される
(以下シール方式という)この目隠しシール740

は一度剥がすと再度貼り付けることができないため,登記識別情報710の隠蔽・保護が図られる。今後,登記識別情報通知書は,シール方式を改め,図8に示す折り込み方式(登記識別情報810を記載した部分が隠れるよう,A4サイズの用紙(登記識別情報通知書800)の下部の折り込み部840を折り込んで当該登記識別情報810を被覆し,その縁をのり付けする方法)に変更される。【図7】
【図8】

【0004】登記識別情報を確認する場合,シール方式では,目隠しシール740を剥がし,登記識別情報110を読み取る。折り込み方式では,折り込んだ部分に設けたミシン目から折り込み部分840を切り剥がし,登記識別情報810を確認する。いずれの方式においても,一度でも登記識別情報を確認してしまうと登記識別情報を再度隠蔽・保護することができず,第三者に容易に盗み見られる状態になってしまう。上記状態になった登記識別情報通知書の登記識別情報記載部分に貼り付けて登記識別情報を隠蔽・保護するための登記識別情報保護シールが提案されている。当該登記識別情報保護シールも,一度剥がしてしてしまうと貼り直しができないシールである。
【0005】図9は従来の登記識別情報保護シール900を示したものである。この登記識別情報保護シール900を,例えば,図7に示す登記識別情報通知書700の目隠しシール740を剥した後の登記識別情報710記載部分に粘着剤層920を介して張り付ければ,登記識別情報710を隠蔽・保護することができる。登記識別情報保護シール900は保護シール層910と粘着剤層920とで構成される。粘着剤層920は保護シール層910に対する部分と,登記識別情報通知書700に貼り付けられる部分とでは性質が異なり,保護シール層910に対する部の粘着力は非常に弱く,登記識別情報保護シール900を剥がすと保護シール層910のみが剥離し,粘着剤層920は登記識別情報通知書700に残留する。粘着剤層920と保護シール層910との粘着力が弱いので,保護シール層910を再度貼り直すことができないようになっている。
【図9】

【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】司法書士,銀行など
では登記識別情報を何度も使用する場合がある。その都度,前記登記識別情報保護シール900を剥がして登記識別情報710を確認し,その後新しい登記識別情報保護シール900を登記識別情報通知書700の登記識別情報710記載部分に貼り付けて登記識別情報710を隠蔽・保護する作業を行う。図10は登記識別情報保護シール900を何度も貼り付け,剥離を繰り返した後の登記識別情報通知書700の登記識別情報710記載部分の断面を模式的に現したものである。図10に示すように,粘着剤層910が何層にもわたって堆積していることが分かる。粘着剤層910が着色されていたり透明度が低い場合,粘着剤層910が多数積層すると登記識別情報710が読み取れなくなる場合がある。
【図10】

【0007】本発明は,上記従来の不都合を改善するために案出されたものであり,登記識別情報通知書記載の登記識別情報を有効に隠蔽・保護するとともに,登記識別情報が読み取り不能になることのない登記識別情報保護シールを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】本発明の登記識別情報保護シールは,
登記識別情報通知書の登記識別情報が記載されている部分に貼り付けて登記識別情報を隠蔽・保護するための一度剥がすと再度貼り直しできない登記識別情報保護シールであって,登記識別情報保護シールを構成する粘着剤層の少なくとも登記識別情報に接触する部分には登記識別情報通知書に粘着しない非粘着領域を有することを特徴とするものである。本発明は,前記非粘着領域は,前記登記識別情報が記載されている部分を囲む矩形領域であることを特徴とするものである。本発明は,前記非粘着領域は,前記登記識別情報が記載されている部分を囲む任意の多角形領域であることを特徴とするものである。本発明は,前記非粘着領域は,コーナー部にR面取りなどの面取りがされていることを特徴とするものである。【発明の効果】
【0009】
本発明では,
第三者に盗み見られないよう厳重に保管・
管理する必要がある登記識別情報を隠蔽・保護できるとともに,何度も登記識別情報保護シールの剥離作業を行っても登記識別情報が解読不能とならない。【発明を実施するための形態】
【0011】
・・・図1に示すように,登記識別情
報保護シール100は,保護シール層110と粘着剤層120で構成する。図1下方の下面図に示すように,粘着剤層120の内部には,矩形の非粘着領域130が設けられている。本実施例では,非粘着領域130は粘着剤が存在しない領域としている。
【図1】

【0012】登記識別情報通知書200を開封し登記識別情報210を確認した後,図2に示すように登記識別情報通知書200の登記識別情報記載部の上部に,登記識別情報保護シール100を張り付けることで,登記識別情報210を再度隠蔽・保護することができる。その際,非粘着領域130の内部に登記識別情報210が位置するように,任意の位置決め手段により位置決めを行う。現在,登記識別情報210は12桁の符号220とQRコード230とで構成されているが,将来その内容・構成が変更される可能性がある。
【図2】

【0013】司法書士,銀行などでは登記識別情報210を何度も使用する場合がある。その都度,登記識別情報保護シール100を剥がして登記識別情報210を確認し,その後新しい登記識別情報保護シール100を登記識別情報通知書200の登記識別情報210記載部分に貼り付けて登記識別情報210を隠蔽・保護する作業を行う。図3は,登記識別情報通知書200から登記識別情報保護シール100を剥がした状態を示したものである。登記識別情報保護シール100の粘着剤層120は,保護シール層110側の粘着力は弱く,貼り付ける登記識別情報通知書200側の粘着力は強くされているので,登記識別情報保護シール100を剥がすと,粘着剤層120は登記識別情報通知書200に転写され,保護シール層110だけが剥ぎ取られる。転写された粘着剤層120は登記識別情報210の上に重なることはない。また,一度剥がした登記識別情報保護シール100の保護シール層110は,再度貼り直すことができないので,登記識別情報210を第三者に容易に盗み見られることを防止できる。
【図3】

【0014】登記識別情報210を何度も使用すると上記作業を繰り返すことになり,結果,図4に示すように粘着剤層120積み上がるが,登記識別情報210の上には粘着剤層120が堆積しないので,たとえ粘着剤層120が着色されていたり,透明度が低い物質で構成されていたとしても,登記識別情報210が判読不能になることがない。
【図4】

【0015】上記実施例では,非粘着領域130は粘着剤が存在しない領域としたが,非粘着領域130を非粘着物質で構成しても良い。
【0016】非粘着領域130の形状は,図5に示すような任意の多角形としても良い。また,図6に示すようにコーナー部にR面取りなどの面取りを施しても良い。
【図5】

【図6】

(2)

以上から,本件発明は,以下のとおりのものと認められる。

本件発明は,
登記識別情報を保護する登記識別情報保護シールに関する【000(
1】。

不動産の登記識別情報は,第三者に盗み見られないよう厳重に保管・管理する必要がある。登記識別情報は,従来はシール方式,今後は折り込み方式を用いて登記識別情報を隠した状態で登記識別情報通知書により申請者に交付されるが,一度でも登記識別情報を確認してしまうと,いずれの方式においても,登記識別情報を再度隠蔽・保護することができなくなる。【0002】~【0004】(

そのため,登記識別情報を確認した後に再度登記識別情報通知書の登記識別情報記載部分に貼り付けて登記識別情報を隠蔽・保護するための,一度剥がしてしまうと貼り直しができない登記識別情報保護シールが提案されている(【0004】。

従来の登記識別情報保護シールは,
保護シール層と粘着剤層とで構成されており,
粘着剤層の保護シール層に対する部分と,登記識別情報通知書に貼り付けられる部分とでは性質が異なり,保護シール層に対する部分の粘着力は弱いため,登記識別情報保護シールを剥がすと保護シール層のみが剥離し,粘着剤層は登記識別情報通知書に残留する。保護シール層を再度貼り直すことはできない。したがって,登記識別情報を何度も使用して,登記識別情報保護シールを何度も貼り付け,剥離することを繰り返すと,登記識別情報通知書の登記識別情報記載部分に粘着剤層が何層にもわたって堆積し,登記識別情報が読み取れなくなる場合がある。【0005】(

【0006】

本件発明は,登記識別情報通知書記載の登記識別情報を有効に隠蔽・保護するとともに,登記識別情報が読み取り不能になることのない登記識別情報保護シールを提供することを目的とし,登記識別情報通知書の登記識別情報が記載されている部分に貼り付けて登記識別情報を隠蔽・保護するための一度剥がすと再度貼り直しできない登記識別情報保護シールであって,登記識別情報保護シールを構成する粘着剤層の少なくとも登記識別情報に接触する部分には登記識別情報通知書に粘着しない非粘着領域を有することを特徴とする(
【0007】
【0008】。

本件発明の登記識別情報保護シールは,登記識別情報を何度も使用しても,登記識別情報の上には粘着剤層が堆積しないので,登記識別情報が判読不能になることがない。また,一度剥がした登記識別情報保護シールの保護シール層は,再度貼り直すことができないので,登記識別情報を第三者に容易に盗み見られることを防止できる。【0013】

【0014】

2
取消事由2(甲1発明及び甲3発明に基づく相違点の判断の誤り)について
事案に鑑み,取消事由2から判断する。
(1)

甲1発明の認定


甲1文献には,以下の記載がある。

【請求項1】登記識別情報通知書が法務局から下付された際に登記識別情報を秘匿していた目隠しシールを前記登記識別情報通知書から剥がした後に前記登記識別情報を秘匿するための一度剥がすと貼りなおしが出来ない登記識別情報保護シールであって,
前記登記識別情報保護シールを前記登記識別情報通知書に貼付する者が押印及び又は署名をするための第一の領域と,
前記登記識別情報保護シールを前記登記識別情報通知書から剥がす者が押印及び又は署名をするための第二の領域と
を表面に備えることを特徴とする登記識別情報保護シール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】本発明は登記識別情報を保護する
ための登記識別情報保護シール,登記識別情報保護シールの使用履歴を把握するための登記識別情報保護シール使用履歴書,登記識別情報保護シールの使用履歴を把握するための登記識別情報保護シール使用履歴書綴り,登記識別情報保護シールを印刷し,
作成履歴を把握するための登記識別情報保護シール印刷システムに関する。【背景技術】
【0002】現在,登記識別情報通知という書面(以下,登記識別情報通知書という)により登記識別情報が通知される。
・・・
【0003】ここで,登記識別情報は登記を行う際に使用するものであり,この登記識別情報が他人に知られてしまうと勝手に登記がされてしまう恐れがある。このため,
登記識別情報の管理は徹底する必要があり情報漏洩を防止する必要がある。【0004】現在,登記識別情報通知書の登記識別情報が記載された領域・・・には,いわゆる目隠しシールが貼られることにより登記識別情報が通知される。この目隠しシールにより,登記識別情報の保護が図られる。
【0005】目隠しシールとは,一度剥がすと貼りなおしが出来ないシールである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】しかし,司法書士,
銀行等においては登記識別情報を何度も用いる場合があり,登記識別情報を何度も見る場合がある。目隠しシールは上述のように一度剥がすと貼りなおしが出来ないので,登記識別情報を一度見てしまうと登記識別情報を再度隠すことが出来ず,登記識別情報の漏洩が問題となる。
また,
誰が登記識別情報を見たかの把握も難しい。
【課題を解決するための手段】
【0008】上記課題を解決するため請求項1記載
の発明は,登記識別情報通知書が法務局から下付された際に登記識別情報を秘匿していた目隠しシールを前記登記識別情報通知書から剥がした後に前記登記識別情報を秘匿するための一度剥がすと貼りなおしが出来ない登記識別情報保護シールであって,前記登記識別情報保護シールを前記登記識別情報通知書に貼付する者が押印及び又は署名をするための第一の領域と,前記登記識別情報保護シールを前記登記識別情報通知書から剥がす者が押印及び又は署名をするための第二の領域とを表面に備えることを特徴とする登記識別情報保護シールである。
【発明の効果】
【0032】請求項1記載の発明によると登記識別情報保護シールを登記識別情報通知書に貼り付けることで,登記識別情報を隠匿するので登記識別情報を保護できる。また,登記識別情報保護シールには第一の領域及び第二の領域が備わることにより,ここに押印等がされれば,登記識別情報保護シールを貼付した者,剥がした者を特定でき,また,登記識別情報保護シールは貼りなおしが出来ないとすることで登記識別情報保護シールが貼られ,押印等がされている限り登記識別情報が保護される。登記識別情報保護シールが剥がされた場合,登記識別情報保護シールに押印等がされていない場合は不正に登記識別情報が見られた可能性があるというのが分かり,これにより登記識別情報が知らぬ間に漏洩し,不正な登記がされることを防げる。さらに,登記識別情報保護シールは目隠しシール等に印刷するだけで作成でき,初期投資額,ランニングコストが廉価である。【図1】

【図2】

以上より,甲1発明は以下のとおりのものと認められる。

登記識別情報通知書に記載された登記識別情報は,他人に知られないよう管理する必要があるところ,司法書士,銀行等において何度も用いる場合があり,登記識別情報の漏えいを防止し,
誰が登記識別情報を見たのかを把握する必要がある【0

002】【0003】【0006】。そこで,登記識別情報通知書が法務局から下,


付された際に登記識別情報を秘匿していた目隠しシールを登記識別情報通知書から剥がした後に登記識別情報を秘匿するための一度剥がすと貼り直しができない登記識別情報保護シールであって,登記識別情報保護シールを登記識別情報通知書に貼付する者が押印及び署名をするための第一の領域と,登記識別情報保護シールを登記識別情報通知書から剥がす者が押印及び署名をするための第二の領域とを表面に備えることを特徴とする登記識別情報保護シールという構成を採用する(【000
8】。これによって,登記識別情報を隠匿し,登記識別情報保護シールを貼付した)
者,剥がした者を特定することができ,登記識別情報の漏洩及び不正な登記を防止するという効果がある(
【0032】。


したがって,甲1発明は,前記第2,3(2)ア(ア)のとおりのものと認め
られる。また,本件発明1と甲1発明を対比したときの一致点は,前記第2,3(2)イ(ア)aのとおりのものと認められ,相違点は,
「本件発明1は,
『粘着剤層の少なく
とも登記識別情報に接触する部分には登記識別情報通知書に粘着しない非粘着領域を有する』のに対し,甲1発明は,
『粘着剤層の形成が,シートの全面についてなの
か,その一部なのかが明らかではない』点。
」である。
(2)

相違点の判断
甲3発明の認定
(ア)

甲3文献には,以下の記載がある。

【請求項1】脆質層の一側面に支持層を剥離不可能に貼着し,前記脆質層の他側面に粘着剤を介して剥離紙を剥離可能に貼着した封緘シールにおいて,前記剥離紙には,封緘シールの貼り付け時に記録面を読み取り不能に覆い隠し,かつ,封緘シールを剥離したとき脆質層の一部が記録面に付着しないように,前記剥離紙を貫通する切り込みを形成したことを特徴とする封緘シール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】本発明は,容器に付けられるバー
コード等の識別情報を隠蔽する封緘シールであって,特に一度剥がすと元に戻せないように層間剥離してプライバシー保護を図るのに適した封緘シールに関する。【0007】
・・・検査用試料の採取時や病院などの医療機関内で個人のプライバシー保護に十分に配慮できる場所では,被検者と検査用試料との間でその試料の取り違いミスなどの誤りの発生を起こし難く且つその対応関係の保持が十分に確保できる一方で,外部検査機関への持ち出しの際には,検査用試料の匿名化を簡単且つ確実に図ることができるような方策が強く求められている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】本発明は,こうした
生体検査を行なう医療,保険衛生分野において,採血,検尿等に使用される検体用容器等に付与するに好適な封緘シールであって,倫理上の問題に十分対処可能で,プライバシー保護に対応できる封緘シールを提供することを目的とする。【課題を解決するための手段】
【0010】上記課題を達成するために,本発明が
採用する構成の特徴は,脆質層の一側面に支持層を剥離不可能に貼着し,前記脆質層の他側面に粘着剤を介して剥離紙を剥離可能に貼着した封緘シールにおいて,前記剥離紙には,
封緘シールの貼り付け時に記録面を読み取り不能に覆い隠し,
かつ,
封緘シールを剥離したとき脆質層の一部が記録面に付着しないように,前記剥離紙を貫通する切り込みを形成したことにある。
【0012】上記構成により,封緘シールを被貼り付け面から剥そうとすれば,必ず脆質層が破れたり欠損した形跡が被貼り付け面および封緘シールの双方に残るので,何らかの剥離行為のあった事実が判明し,強力な抑止力となる。【0013】ここで,剥離紙に形成した切り込み,または非粘着層は,脆質層が破壊してその一部が記録面に付着しないように,粘着剤の一部を覆うことにより,封緘シールの貼付面には剥離した形跡を残すが,記録面には脆質層の破片が付着しないので,正規の検査機関等における検査時には記録面の記録を確実に読み取ることができる。
【発明の効果】
【0014】本発明によると,生体検査を行う医療,保険衛生分野において,採血,検尿等に使用される検体用容器等に付与するのに好適で,倫理上の問題に十分対処可能で,
プライバシ-保護に対応できる封緘シールが提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】以下,図面に基づき本発明を具
体的に説明する。図1ないし図8は本発明にかかる封緘シールの第一の実施の形態を表している。封緘シール1は,支持層2,脆質層3,及び剥離紙4を積層状に貼り合わせた構造をし,さらに支持層2の脆質層3と反対側の面には記録部5が設けられている。
【図2】

【0019】次に,この封緘シール1の使用方法について説明する。図3における符号12は検体が収納される採血管等の容器で,該容器12には識別情報を付与するラベル13が貼付されている。
【図3】

【0020】まず,図4のように封緘シール1の剥離紙4を切り込み11の外側から剥し,支持層2の粘着剤7が塗布されている面を被貼り付け面側にして,封緘シール1を容器12上のラベル13に跨がる状態で貼り付ける。このとき,中央側の剥離紙4は切り込み11により粘着剤7上に残り,
ラベル13を覆うことにより,
封緘シール1の剥離時に脆質層3に損傷を与えるのを防止できる(図5)。
【図4】
【図5】

【0021】次に,検査機関等で正規の手続きを経てラベル13を読み取る際には,容器12から封緘シール1を剥し取る(図6)

脆質層3は金属箔や金属蒸着フィルムなどの薄く脆弱なものであるうえに,型抜き部8がワックス層9を介して粘着剤7と接しているから,剥離紙4を剥し取って対象物に貼り付けた状態から剥し取ると,脆質層3は型抜き部8で簡単に欠損し,欠損した脆質層3は支持層2と被貼付面の双方に,元に戻せない状態で付着する(図7,図8)

【図6】

【図7】
【図8】

(イ)

以上より,甲3発明は以下のとおりのものと認められる。

個人のプライバシー保護の観点から,被検者と検査用試料との対応関係を保持しつつ,外部機関への持ち出しの際には,検査用試料の匿名化を簡単かつ確実に図る方策が求められていた(
【0007】。本発明は,採血,検尿等に使用される検体用

容器等に付与するに好適な,倫理上の問題に十分対処可能で,プライバシー保護に対応できる封緘シールを提供することを目的としている【0009】。(
)上記課題を
達成するために,本発明は,脆質層の一側面に支持層を剥離不可能に貼着し,脆質層の他側面に粘着剤を介して剥離紙を剥離可能に貼着した封緘シールにおいて,剥離紙には,封緘シールの貼り付け時に記録面を読み取り不能に覆い隠し,かつ,封緘シールを剥離したとき脆質層の一部が記録面に付着しないように,剥離紙を貫通する切り込みを形成するという構成を採用した(
【請求項1】【0010】。


(ウ)

したがって,
甲3発明は前記第2,
3(2)ア(ウ)のとおりのものと認め

られる。

甲1発明に甲3発明を適用する動機付け

登記識別情報保護シールを登記識別情報通知書に何度も貼り付け,剥離することを繰り返すと,粘着剤層が多数積層して,登記識別情報を読み取りにくくなるという登記識別情報保護シールにおける本件課題は,登記識別情報保護シールを登記識別情報通知書に何度も貼り付け,剥離することを繰り返すと必然的に生じるものであって,登記識別情報保護シールの需要者には当然に認識されていたと考えられる(甲15)。現に,本件原出願日の5年以上前である平成21年9月30日には,登記識別情報保護シールの需要者である司法書士に認識されていたものと認められる(甲26の3)。そして,登記識別情報保護シールの製造・販売業者は,需要者の要求に応じた製品を開発しようとするから,本件課題は,本件原出願日前に,当業者において周知の課題であったといえる。
そうすると,本件課題に直面した登記識別情報保護シールの技術分野における当業者は,粘着剤層の下の文字(登記識別情報)が見えにくくならないようにするために,粘着剤層が登記識別情報の上に付着することがないように工夫するものと認められる。甲3発明は,秘密情報に対応する部分には実質的に粘着剤が設けられていないものであり,甲3発明と甲1発明は,秘密情報保護シールであるという技術分野が共通し,一度剥がすと再度貼ることはできないようにして,秘密情報の漏洩があったことを感知するという点でも共通する。したがって,甲1発明に甲3発明を適用する動機付けがあるといえる。
甲1発明に甲3発明を適用すると,粘着剤層が登記識別情報の上に付着することがなくなり,本件課題が解決される。したがって,甲1発明において,甲3発明を適用し,相違点に係る構成とすることは,当業者が容易に想到するものと認められる。

被告の主張について
(ア)

被告は,甲3発明には,シールを何度も貼り付け,剥離することを繰
り返すという課題は存在せず,その使用目的から容器又はシールを使い回すことは倫理上許されないから本件課題とは矛盾し,阻害要因がある,と主張する。しかし,甲3発明のシールは何度も貼り付け,剥離することを予定されていないとしても,一度剥がした後に新たなシールを貼付することは可能である。また,甲3発明が,医療,保健衛生分野において使用される検体用容器等に使用される場合には,何度も貼り付け,剥離することはないのは,検体用容器等の用途がそのようなものであるからであって,甲3発明自体の作用,機能に基づくものではなく,甲3発明は保健,衛生分野に限って使用されるものではないから,甲1発明と組み合わせるのに阻害要因があるとはいえない。したがって,被告の主張には,理由がない。
(イ)

被告は,
本件課題が甲1発明の課題として周知であることを示す証拠

はない,と主張するが,前記イのとおり,採用できない。
(ウ)

被告は,
本件課題は,
登記識別情報保護シールにおける特殊な課題で

あって,一度剥がしただけでその目的を達成するシールの情報の確認困難という課題とは異なるから,一般的なシールの製造・販売業者が容易に認識できるものではない,と主張する。
しかし,本件発明1及び甲1発明は,いずれも登記情報保護シールであり,当業者として想定されるべきであるのは,登記情報保護シールの製造・販売業者であるところ,前記イのとおり,登記情報保護シールの製造・販売業者は,利用者である司法書士が認識し公表していた課題を認識していたといえる。したがって,被告の主張には,理由がない。
(エ)

被告は,
甲1文献には本件課題解決のための作用,
機能が記載されて

おらず,そのため,甲3発明と共通の作用,機能を有するものではない,と主張する。
しかし,甲1文献には本件課題の解決手段が示されておらず,甲3発明のシールが何度も貼り付け,剥離することを予定されていないとしても,前記イのとおり,甲1発明に甲3発明を適用する動機付けはあり,甲1発明に甲3発明を適用することによって本件課題が解決される。したがって,被告の主張には,理由がない。エ3
以上より,取消事由2には,理由がある。

取消事由3(本件発明2~4に関する相違点の判断の誤り)について
審決は,本件発明1について無効理由が認められないから,本件発明2~4について無効理由がないと判断した。しかし,前記2のとおり,本件発明1について,無効理由がないとする審決の判断には誤りがあるから,本件発明2~4についての審決の判断は,その前提を誤ったものであり,誤りがある。
したがって,取消事由3には,理由がある。
4
第6

よって,その余の点を判断するまでもなく,原告の請求には理由がある。結論

以上のとおり,原告の請求には理由があるから審決を取り消すこととして,主文のとおり判決する。

知的財産高等裁判所第2部

裁判長裁判官
森義之早苗
裁判官
永田古庄
裁判官

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