判例検索β > 平成25年(行ウ)第16号
行政処分取消等請求事件
事件番号平成25(行ウ)16
事件名行政処分取消等請求事件
裁判年月日平成30年3月14日
法廷名岡山地方裁判所
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主1文
岡山市長が平成25年2月12日付けで原告に対してした介護給付費不支給決定のうち,同年5月10日付けで取り消された部分及び同年7月2日付けで変更された部分を除いた部分を取り消す。

2
岡山市長は,原告に対し,原告が平成24年11月29日付けで岡山市長に対してした障害者自立支援法(平成17年法律第123号。平成24年法律第51号による改正前のもの。)20条1項に基づく介護給付費の支給等の申請に対して,重度訪問介護の1か月当たりの支給量を96時間とする介護給付費支給決定をせよ。

3
被告は,原告に対し,107万5000円及びこれに対する平成25年2月12日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

4
原告のその余の請求をいずれも棄却する。

5
訴訟費用はこれを10分し,その3を原告の負担とし,その余を被告の負担とする。
事実及び理由

第1

請求

1
主文1と同旨。

2
岡山市長は,原告に対し,原告が平成24年11月29日付けで岡山市長に対してした障害者自立支援法(平成17年法律第123号。平成24年法律第51号による改正前のもの。以下「自立支援法」という。)20条1項に基づく介護給付費の支給等の申請(以下「本件申請」という。)に対して,重度訪問介護の1か月当たりの支給量を249時間とする介護給付費支給決定をせよ。
3
被告は,原告に対し,209万4037円及びこれに対する平成25年2月12日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

第2

事案の概要
本件は,平成24年11月29日付けで岡山市長に対し本件申請をした原告が,岡山市長から,本件申請に対し,平成25年2月12日付けで介護給付費不支給決定(以下「本件処分」という。)を受けたことに関し,本件処分は違法であると主張して,①本件処分のうち,同年5月10日付けで取り消された部分及び同年7月2日付けで変更された部分を除いた部分(以下「取消対象部分」という。)の取消しを,②岡山市長に対する,本件申請に対する重度訪問介護の1か月当たりの支給量を249時間とする介護給付費支給決定の義務付けを,③被告に対し,国家賠償法1条1項に基づき,本件処分により被った損害賠償金合計209万4037円及びこれに対する不法行為日(本件処分がなされた日)である平成25年2月12日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を,それぞれ求めた事案である(以下,原告の各請求を「請求①」などと特定する。)。
1
関係法令等の定め
自立支援法

1条
この法律は,障害者基本法の基本的な理念にのっとり,身体障害者福祉法,知的障害者福祉法,精神保健及び精神障害者福祉に関する法律,児童福祉法その他障害者及び障害児の福祉に関する法律と相まって,障害者及び障害児が自立した日常生活又は社会生活を営むことができるよう,必要な障害福祉サービスに係る給付その他の支援を行い,もって障害者及び障害児の福祉の増進を図るとともに,障害の有無にかかわらず国民が相互に人格と個性を尊重し安心して暮らすことのできる地域社会の実現に寄与することを目的とする。


4条
1項ないし3項〔省略〕
4項
この法律において「障害程度区分」とは,障害者等に対する障害福祉サービスの必要性を明らかにするため当該障害者等の心身の状態を総合的に示すものとして厚生労働省令で定める区分をいう。

5条
1項
この法律において,「障害福祉サービス」とは,居宅介護,重度訪問介護,同行援護,行動援護,療養介護,生活介護,短期入所,重度障害者等包括支援,共同生活介護,施設入所支援,自立訓練,就労移行支援,就労継続支援及び共同生活援助をいい,
「障害福祉サービス事業」
とは,
障害福祉サービス(障害者支援施設,独立行政法人国立重度知的障害者総合施設のぞみの園法11条1号の規定により独立行政法人国立重度知的障害者総合施設のぞみの園が設置する施設(以下「のぞみの園」という。)その他厚生労働省令で定める施設において行われる施設障害福祉サービス(施設入所支援及び厚生労働省令で定める障害福祉サービスをいう。以下同じ。)を除く。)を行う事業をいう。
2項〔省略〕
3項
この法律において,「重度訪問介護」とは,重度の肢体不自由者であって常時介護を要する障害者につき,居宅における入浴,排せつ又は食事の介護その他の厚生労働省令で定める便宜及び外出時における移動中の介護を総合的に供与することをいう。
4項ないし27項〔省略〕


6条
自立支援給付は,介護給付費,特例介護給付費,訓練等給付費,特例訓練等給付費,特定障害者特別給付費,特例特定障害者特別給付費,地域相談支援給付費,特例地域相談支援給付費,計画相談支援給付費,特例計画相談支援給付費,自立支援医療費,療養介護医療費,基準該当療養介護医療費,補装具費及び高額障害福祉サービス等給付費の支給とする。オ
7条
自立支援給付は,当該障害の状態につき,介護保険法の規定による介護給付,健康保険法の規定による療養の給付その他の法令に基づく給付であって政令で定めるもののうち自立支援給付に相当するものを受けることができるときは政令で定める限度において,当該政令で定める給付以外の給付であって国又は地方公共団体の負担において自立支援給付に相当するものが行われたときはその限度において,行わない。


19条
1項
介護給付費,
特例介護給付費,
訓練等給付費又は特例訓練等給付費
(以
下「介護給付費等」という。)の支給を受けようとする障害者又は障害児の保護者は,市町村の介護給付費等を支給する旨の決定(以下「支給決定」という。)を受けなければならない。
2項
支給決定は,障害者又は障害児の保護者の居住地の市町村が行うものとする。ただし,障害者又は障害児の保護者が居住地を有しないとき,又は明らかでないときは,その障害者又は障害児の保護者の現在地の市町村が行うものとする。
3項ないし5項〔省略〕


20条
1項
支給決定を受けようとする障害者又は障害児の保護者は,厚生労働省令で定めるところにより,市町村に申請をしなければならない。
2項ないし6項〔省略〕


21条
1項
市町村は,前条1項の申請があったときは,政令で定めるところにより,市町村審査会が行う当該申請に係る障害者等の障害程度区分に関する審査及び判定の結果に基づき,
障害程度区分の認定を行うものとする。
2項〔省略〕

22条
1項
市町村は,20条1項の申請に係る障害者等の障害程度区分,当該障害者等の介護を行う者の状況,当該障害者等の置かれている環境,当該申請に係る障害者等又は障害児の保護者の障害福祉サービスの利用に関する意向その他の厚生労働省令で定める事項を勘案して介護給付費等の支給の要否を決定(以下この条及び27条において「支給要否決定」という。)を行うものとする。
2項ないし6項〔省略〕
7項
市町村は,支給決定を行う場合には,障害福祉サービスの種類ごとに月を単位として厚生労働省令で定める期間において介護給付費等を支給する障害福祉サービスの量(以下「支給量」という。)を定めなければならない。
8項〔省略〕


23条
支給決定は,厚生労働省令で定める期間(以下「支給決定の有効期間」という。)内に限り,その効力を有する。


28条
1項
介護給付費及び特例介護給付費の支給は,次に掲げる障害福祉サービスに関して次条及び30条の規定により支給する給付とする。
a
1号〔省略〕

b
2号
重度訪問介護

c
3号ないし10号〔省略〕
2項〔省略〕


29条
1項
市町村は,支給決定障害者等が,支給決定の有効期間内において,都道府県知事が指定する障害福祉サービス事業を行う者(以下「指定障害福祉サービス事業者」という。)若しくは障害者支援施設(以下「指定障害者支援施設」という。)から当該指定に係る障害福祉サービス(以下「指定障害福祉サービス」という。)を受けたとき,又はのぞみの園から施設障害福祉サービスを受けたときは,厚生労働省令で定めるところにより,当該支給決定障害者等に対し,当該指定障害福祉サービス又は施設障害福祉サービス(支給量の範囲内のものに限る。以下「指定障害福祉サービス等」という。)に要した費用(食事の提供に要する費用,居住若しくは滞在に要する費用その他の日常生活に要する費用又は創作的活動若しくは生産活動に要する費用のうち厚生労働省令で定める費用(以下「特定費用」という。)を除く。)について,介護給付費又は訓練等給付費を支給する。
2項
指定障害福祉サービス等を受けようとする支給決定障害者等は,厚生労働省令で定めるところにより,指定障害福祉サービス事業者,指定障害者支援施設又はのぞみの園(以下「指定障害福祉サービス事業者等」という。)に受給者証を提示して当該指定障害福祉サービス等を受けるものとする。ただし,緊急の場合その他やむを得ない事由のある場合については,この限りでない。
3項
介護給付費又は訓練等給付費の額は,1月につき,1号に掲げる額から2号に掲げる額を控除して得た額とする。
a
1号
同一の月に受けた指定障害福祉サービス等について,障害福祉サービスの種類ごとに指定障害福祉サービス等に通常要する費用(特定費用を除く。)につき,厚生労働大臣が定める基準により算定した費用の額(その額が現に当該指定障害福祉サービス等に要した費用(特定費用を除く。)の額を超えるときは,当該現に指定障害福祉サービス等に要した費用の額)を合計した額

b
2号
当該支給決定障害者等の家計の負担能力その他の事情をしん酌して政令で定める額〔かっこ内省略〕
4項
支給決定障害者等が指定障害福祉サービス事業者等から指定障害福祉
サービス等を受けたときは,市町村は,当該支給決定障害者等が当該指定障害福祉サービス事業者等に支払うべき当該指定障害福祉サービス等に要した費用(特定費用を除く。)について,介護給付費又は訓練等給付費として当該支給決定障害者等に支給すべき額の限度において,当該支給決定障害者等に代わり,当該指定障害福祉サービス事業者等に支払うことができる。
5項
前項の規定による支払があったときは,支給決定障害者等に対し介護給付費又は訓練等給付費の支給があったものとみなす。
6項ないし8項〔省略〕
障害者自立支援法施行規則(平成18年厚生労働省令第19号。平成25年厚生労働省令第4号による改正前のもの。以下「自立支援法施行規則」という。)15条1項
自立支援法23条に規定する厚生労働省令で定める期間は,支給決定を行った日から当該日が属する月の末日までの期間と次の各号に掲げる障害福祉サービスの種類の区分に応じ,当該各号に規定する期間を合算して得た期間とする。

1号
居宅介護,重度訪問介護,同行援護,行動援護,短期入所,重度障害者等包括支援,自立訓練及び就労移行支援(3号に掲げるものを除く。)1月間から12月間までの範囲内で月を単位として市町村が定める期間

2号及び3号〔省略〕
障害程度区分に係る市町村審査会による審査及び判定の基準等に関する省
令(平成18年厚生労働省令第40号。以下「障害程度区分省令」という。)2条
自立支援法4条4項の厚生労働省令で定める区分は,次の各号に掲げる区分と〔途中省略〕する。

1号ないし5号〔省略〕


6号
区分6

次のイからハまでのいずれかに掲げる状態〔以下省略〕

岡山市障害者自立支援法の障害福祉サービス等の支給決定に関する基準(以下「支給基準」という。)(甲8)

支給基準は,自立支援法22条1項及び7項に規定する介護給付費等の支給要否決定等に関して必要な事項を定め,自立支援法の円滑な運営を図ることを目的とする(1条)。

障害者の1か月当たりの支給量等は,別表第1サービス種類の欄に掲げる区分ごとに同表基本単位数の欄に掲げる数に支給量等を乗じて得た数の合計が,別表第2に掲げる単位数を超えない範囲で決定する(3条1項本文)。
障害程度区分6である者であって,重度障害者等包括支援対象とならないものに係る支給量等は,3条及び4条の規定により支給量等を決定する場合において,
当該者が日常生活を営むことが困難であると認めたときは,
別表第2の4重度障害者等包括支援対象者の項に掲げる単位数を超えない範囲で決定する(6条1項)。


別表第2の4重度障害者等包括支援対象者のうち,介護保険対象者,日中活動系サービス利用者,居宅系サービス利用者及びケアホーム利用者のいずれにも該当しない者については,障害程度区分6の支給量の単位数を8万3040とする。
介護保険法(平成9年法律第123号。平成24年法律第62号による改
正前のもの。以下「保険法」という。)

1条
この法律は,加齢に伴って生じる心身の変化に起因する疾病等により要介護状態となり,入浴,排せつ,食事等の介護,機能訓練並びに看護及び療養上の管理その他の医療を要する者等について,これらの者が尊厳を保持し,その有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるよう,必要な保健医療サービス及び福祉サービスに係る給付を行うため,国民の共同連帯の理念に基づき介護保険制度を設け,その行う保険給付等に関して必要な事項を定め,もって国民の保健医療の向上及び福祉の増進を図ることを目的とする。


7条
1項
この法律において「要介護状態」とは,身体上又は精神上の障害があるために,入浴,排せつ,食事等の日常生活における基本的な動作の全部又は一部について,厚生労働省令で定める期間にわたり継続して,常時介護を要すると見込まれる状態であって,その介護の必要の程度に応じて厚生労働省令で定める区分(以下「要介護状態区分」という。)のいずれかに該当するもの
(要支援状態に該当するものを除く。をいう。

2項〔省略〕
3項
この法律において「要介護者」とは,次の各号のいずれかに該当する者をいう。
a
1号
要介護状態にある65歳以上の者

bウ
2号〔省略〕

18条
この法律による保険給付は,次に掲げる保険給付とする。
1号
被保険者の要介護状態に関する保険給付(以下「介護給付」という。)2号及び3号〔省略〕


19条
1項
介護給付を受けようとする被保険者は,要介護者に該当すること及びその該当する要介護状態区分について,市町村の認定(以下「要介護認定」という。)を受けなければならない。
2項〔省略〕


27条
1項
要介護認定を受けようとする被保険者は,厚生労働省令で定めるところにより,申請書に被保険者証を添付して市町村に申請をしなければならない。〔以下省略〕
2項ないし12項〔省略〕

41条
1項
市町村は,要介護認定を受けた被保険者(以下「要介護被保険者」という。)のうち居宅において介護を受けるもの(以下「居宅要介護被保険者」という。)が,都道府県知事が指定する者(以下「指定居宅サービス事業者」という。)から当該指定に係る居宅サービス事業を行う事業所により行われる居宅サービス(以下「指定居宅サービス」という。)を受けたときは,当該居宅要介護被保険者に対し,当該指定居宅サービスに要した費用(特定福祉用具の購入に要した費用を除き,通所介護,通所リハビリテーション,短期入所生活介護,短期入所療養介護及び特定施設入居者生活介護に要した費用については,食事の提供に要する費用,滞在に要する費用その他の日常生活に要する費用として厚生労働省令で定める費用を除く。以下この条において同じ。)について,居宅介護サービス費を支給する。ただし,当該居宅要介護被保険者が,37条1項の規定による指定を受けている場合において,当該指定に係る種類以外の居宅サービスを受けたときは,この限りでない。
2項及び3項〔省略〕
4項
居宅介護サービス費の額は,次の各号に掲げる居宅サービスの区分に応じ,当該各号に定める額とする。
a
1号
訪問介護,訪問入浴介護,訪問看護,訪問リハビリテーション,居宅療養管理指導,通所介護,通所リハビリテーション及び福祉用具貸与
これらの居宅サービスの種類ごとに,当該居宅サービスの種類に

係る指定居宅サービスの内容,当該指定居宅サービスの事業を行う事業所の所在する地域等を勘案して算定される当該指定居宅サービスに要する平均的な費用(通所介護及び通所リハビリテーションに要する費用については,食事の提供に要する費用その他の日常生活に要する費用として厚生労働省令で定める費用を除く。)の額を勘案して厚生労働大臣が定める基準により算定した費用の額(その額が現に当該指定居宅サービスに要した費用の額を超えるときは,当該現に指定居宅サービスに要した費用の額とする。)の100分の90に相当する額b
2号〔省略〕
5項〔省略〕
6項
居宅要介護被保険者が指定居宅サービス事業者から指定居宅サービス
を受けたとき〔かっこ内省略〕は,市町村は,当該居宅要介護被保険者が当該指定居宅サービス事業者に支払うべき当該指定居宅サービスに要した費用について,居宅介護サービス費として当該居宅要介護被保険者に対し支給すべき額の限度において,
当該居宅要介護被保険者に代わり,
当該指定居宅サービス事業者に支払うことができる。
7項
前項の規定による支払があったときは,居宅要介護被保険者に対し居宅介護サービス費の支給があったものとみなす。
要介護認定等に係る介護認定審査会による審査及び判定の基準等に関する省令(平成11年厚生労働省令第58号。以下「要介護状態区分省令」という。)1条
保険法7条1項の厚生労働省令で定める区分は,次の各号に掲げる区分と〔途中省略〕する。

1号ないし4号〔省略〕


5号
要介護5

要介護認定等基準時間が110分以上である状態(当該状態

に相当すると認められないものを除く。)又はこれに相当すると認められる状態
障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(平成17年法律第123号。平成24年法律第51号による改正後のもの。以下「総合支援法」という。)24条

1項
支給決定障害者等は,現に受けている支給決定に係る障害福祉サービスの種類,支給量その他の厚生労働省令で定める事項を変更する必要があるときは,厚生労働省令で定めるところにより,市町村に対し,当該支給決定の変更の申請をすることができる。


2項
市町村は,前項の申請又は職権により,22条1項の厚生労働省令で定める事項を勘案し,
支給決定障害者等につき,
必要があると認めるときは,
支給決定の変更の決定を行うことができる。〔以下省略〕

ウ2
3項ないし6項〔省略〕

前提となる事実(争いのない事実並びに証拠及び弁論の全趣旨により認定できる事実)等
自立支援法における利用者自己負担制度の変遷の経緯

自立支援法は,平成18年4月1日に施行されたところ,当時,同法(平成22年法律第71号による改正前のもの。)29条4項により,自立支援法に係るサービスを受けた利用者は,一律に,当該サービスに要した費用の1割を自己負担することとされていた。

その後,自立支援法に係る利用者の負担軽減のため,平成19年4月及び平成20年7月に,生活保護利用者の自己負担の全部や低所得者の自己負担の一部の軽減措置がとられたところ,これらの軽減措置によっても,地方税法上の非課税世帯は,なお,サービスに要した費用の一部を自己負担することとされていた。


こうした状況の中,平成20年10月31日以降,合計71名の者が原告となって,14の地方裁判所において,自立支援法における利用者の自己負担に係る違憲訴訟が提起されたところ,これらの訴訟に関し,原告団及び弁護団と国との間で,平成22年1月7日付けで,少なくとも地方税法上の非課税世帯に自己負担を生じさせないことや,
介護保険優先原則
(自
立支援法7条)
の廃止を検討すること等を内容とした基本合意文書
(甲6。
以下「本件合意文書」という。)が作成された。


そして,平成22年4月1日,障害者自立支援法施行令(平成18年政令第10号。平成22年政令第106号による改正後のもの。)が施行され,自立支援法29条3項2号,同施行令17条4号により,自立支援法における地方税法上の非課税世帯の自己負担額は0円となった。
平成19年3月28日厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部企画課長・
同障害福祉課長通知「障害者自立支援法に基づく自立支援給付と介護保険制度との適用関係等について」(障企発第0328002号・障障発第0328002号。甲7。以下「本件通達」という。)
厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部企画課長・同障害福祉課長は,平成19年3月28日付けで,
各都道府県障害保健福祉主管部
(局)
長に対し,
自立支援法7条に関し,自立支援法6条所定の自立支援給付(以下,単に「自立支援給付」という。)と保険法18条1号の介護給付(以下「介護保険給付」という。)の適用関係等について,要旨以下の内容の本件通達を発した。ア
保険法の規定によるサービス(以下「介護保険サービス」という。)優先の捉え方
サービス内容や機能から,自立支援法5条1項所定の障害福祉サービス(以下,単に「障害福祉サービス」という。)に相当する介護保険サービスがある場合には,基本的には,自立支援法7条により,この介護保険サービスに係る介護保険給付を優先して受けることとなる。しかしながら,障害者が同様のサービスを希望する場合でも,その心身の状況やサービス利用を必要とする理由は多様であり,介護保険サービスを一律に優先させ,これにより必要な支援を受けることができるか否かを一概に判断することは困難であることから,障害福祉サービスの種類や利用者の状況に応じて当該サービスに相当する介護保険サービスを特定し,一律に当該介護保険サービスを優先的に利用するものとはしないこととする。
したがって,市町村において,申請に係る障害福祉サービスの利用に関する具体的な内容(利用意向)を聞き取りにより把握した上で,申請者が必要としている支援内容を介護保険サービスにより受けることが可能か否かを適切に判断すること。
サービス内容や機能から,介護保険サービスには相当するものがない障害福祉サービス固有のものと認められるもの
(行動援護,
自立訓練
(生
活訓練)等)については,当該障害福祉サービスに係る介護給付費等を支給する。

介護保険サービスが利用可能な障害者が,介護保険法に基づく要介護認定等を申請していない場合は,介護保険サービスの利用が優先される旨を説明し,申請を行うよう,周知徹底を図られたい。
各自治体の取扱い(甲44)
厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部障害福祉課は,平成26年8月,
自立支援給付(なお,当時,自立支援法は総合支援法に改正されている。)と介護保険給付との適用関係について,運用等実態調査(以下「本件実態調査」という。)を行った。

これによれば,
各都道府県から調査対象として抽出された自治体のうち,
調査への回答があった259の自治体の中で,225の自治体(86.9%)が,障害福祉サービスを受けていた者が65歳に達した場合,介護保険給付への移行の案内を行っているものの,94の自治体(36.3%)において,要介護認定等の申請勧奨に応じず,申請をしていないケースがあるとのことであった。


また,上記94の自治体における,要介護認定等の申請勧奨に応じないまま,65歳到達後も継続して障害福祉サービスの利用申請があった場合の対応については,以下のとおりであった。
障害福祉サービスの支給決定を行い,引き続き申請勧奨を行う自治体数
63(67%)
障害福祉サービスの支給決定期限を通常より短くして決定し,引き続き申請勧奨を行う自治体数
15(16パーセント)
障害福祉サービスの利用申請を却下する自治体数
6(6.4%)
申請勧奨には応じず障害福祉サービスの利用申請を行うまでに至ったケースはない自治体数
5(5.3%)
その他の自治体数
5(5.3%)
原告に対する従前の支給(乙5)


原告は,昭和23年2月16日生まれの男性であり,岡山市に住居を有する者であり,上下肢重度麻痺により身体障害者福祉法施行規則別表第5号(身体障害者障害程度等級表)の等級1級に該当するとして,身体障害者手帳の交付を受けている。
また,原告は,地方税法上の非課税世帯である。

原告は,平成24年2月22日付けで,被告に対し,自立支援法20条1項に基づき,介護給付費の支給等の申請を行った。
これに対し,被告(岡山市長)は,同月27日付けで,自立支援法21条1項に基づき,原告の障害程度区分を,障害程度区分省令2条6号の区分6に当たると認定した上で,支給基準6条1項の要件を満たすものと扱い,自立支援法19条1項,22条7項に基づき,重度訪問介護の支給量を8万3040単位(1か月当たり249時間に相当し,うち移動介護26時間を含む。),支給期間を平成24年3月1日から平成25年2月14日までと定めた上で,
介護給付費支給決定をした
(以下
「従前支給決定」
という。)。


この当時,原告は,地方税法上の非課税世帯であり,関係法令の規定により,自己負担額は生じていなかった(前記

エ参照。)。

本件処分(甲1)

原告は,平成24年11月29日付けで,被告に対し,自立支援法20条1項に基づき,介護給付費の支給等の申請(本件申請)を行った。

これに対し,被告(岡山市長)は,平成25年2月12日付けで,介護給付費不支給決定(本件処分)を行った。
本件処分に係る「岡山市介護給付費等不支給(却下)決定通知書」(甲1。以下「本件処分書」という。)には,支給しない理由として,下記のとおりの記載がある。

要介護認定がされておらず,重度訪問介護非定型の支給の要件に該当しないため(重度訪問介護非定型の支給には障害程度区分6かつ要介護5が必要です)
保険法による介護給付費の支給並びに本件処分の一部取消し及び変更決定等ア
被告(岡山市長)は,平成25年2月13日付けで,自立支援法21条1項に基づき,原告の障害程度区分を,障害程度区分省令2条6号の区分6に当たると認定するとともに(甲10),本件処分についての再検討を行った結果,同年4月8日付けで,移動介護部分については,介護保険給付にはないサービスであり,介護保険給付の認定がなくとも支給の有無の判断が可能であったとして,本件処分の一部を取り消し,原告に対し,1か月当たり26時間の移動介護に係る介護給付費支給決定をした(甲2。以下「第1回一部取消処分」という。)。


原告は,同年3月19日,被告に対し,保険法27条1項に基づき,要介護認定の申請をしたところ,被告(岡山市長)は,同年4月18日付けで,原告について,要介護状態区分省令1条5号の要介護5とする要介護認定を行い,平成25年3月から平成26年3月までの間,原告に対し,支給量1か月当たり約105時間の介護保険給付をする旨の決定(以下,
「本件介護保険給付決定」という。)をした(甲12,乙2)。
本件介護保険給付決定に係る原告の自己負担額は,関係法令の規定に従うと,1か月当たり1万5000円となる。
被告(岡山市長)は,これを受け,同年5月10日付けで,本件処分の一部及び第1回一部取消処分を取り消し,原告に対し,1か月当たり143時間(うち移動介護16時間)の重度訪問介護に係る介護給付費支給決定をした(甲3。以下「第2回一部取消処分」という。)。

原告は,同年6月28日,被告に対し,総合支援法24条1項に基づき,
第2回一部取消処分に係る支給決定の変更の申請を行った
(甲4)

被告(岡山市長)は,これを受けて,同条2項に基づき,同年7月2日付けで,第2回一部取消処分に係る支給決定について,支給量を1か月当たり153時間(うち移動介護26時間)に変更する処分(以下「本件変更処分」という。)をした(甲4)。
本件処分に係る裁決(甲5)
原告は,平成25年3月27日付けで,岡山県知事に対し,本件処分に対する審査請求を行った。
岡山県知事は,同年7月3日付けで,原告の上記審査請求を棄却する旨の裁決をした。
本件訴えの提起
原告は,平成25年9月19日,本件訴えを提起した。
3
争点及び当事者の主張
請求①に係る取消しを求める訴えの利益及び請求②に係る義務付けを求める訴えの利益について
【原告の主張】
自立支援法20条1項に基づく支給申請に対する不支給決定については,仮に当該申請に係る支給期間が既に徒過している場合であっても,当該不支給決定を取り消し,また,当該申請に対する支給決定をするよう義務付けることで,当該不支給決定により受けていなかった介護給付費等の支給を受けることができる可能性があり,この点において,当該不支給決定の取消しを求める訴えの利益及び当該申請に対する自立支援給付決定の義務付けを求める訴えの利益がある。
被告は,第2回一部取消処分及び本件介護保険給付決定を根拠として,本件処分の取消しを求める訴えの利益及び本件申請に対する自立支援給付決定の義務付けを求める訴えの利益はなくなっている旨主張するが,本件介護保険給付決定に係る原告の自己負担額は,1か月当たり1万5000円であるところ,本件申請に対する支給決定がされた場合は原告の自己負担は生じないのであるから,第2回一部取消処分及び本件介護保険給付決定をもって,本件処分の取消しを求める訴えの利益及び本件申請に対する自立支援給付決定の義務付けを求める訴えの利益がなくなることにはならない。
【被告の主張】
自立支援法20条1項に基づく支給申請に対する不支給決定に係る取消しを求める訴えの利益及び当該申請に対する自立支援給付決定の義務付けを求める訴えの利益があることについては,一般論としては争わない。もっとも,本件処分においては,第2回一部取消処分及び本件介護保険給付決定により,原告は,従前と同程度の介護給付を受けているのであり,本件処分の取消しを求める訴えの利益及び本件申請に対する自立支援給付決定の義務付けを求める訴えの利益はなくなっているといえる。
したがって,請求①に係る取消しを求める訴えの利益及び請求②に係る義務付けを求める訴えの利益はなく,
請求①及び②に係る訴えは不適法である。本件処分の違法性について

自立支援法7条の法令違憲性について

【原告の主張】
自立支援法と保険法は,その制度趣旨,目的理念等において根本的に異なり,必然的に,見守りサービスの有無,給付の柔軟性等根幹における具体的給付の上でも質的な差異が生じるものであって,自立支援給付と介護保険給付は質的に全く異なるものである。
それにもかかわらず,自立支援法7条は,介護保険給付で自立支援給付に相当するものを受けることができるときは,自立支援給付を行わない旨を定めているところ,同条は,65歳に達した障害者の自立支援給付を受ける権利を侵害し,健康で文化的な最低限度の生活をする権利を奪うものであると同時に,65歳に達した障害者を合理的理由なく差別するものであるから,憲法25条,14条1項に違反して無効である。したがって,自立支援法7条により介護給付費等を不支給とした本件処分は違法である。
仮に,自立支援給付と介護保険給付との間に質的に重なり合う部分があったとしても,自立支援給付においては,一定の要件を満たす場合には受給者に自己負担が生じないのに対し,介護保険給付においては,原則として受給者に1割の自己負担が生じる結果となる。
それにもかかわらず,自立支援法7条は,介護保険給付で自立支援給付に相当するものを受けることができるときは,自立支援給付を行わないとして介護保険給付の優先を定めているところ,同条は,65歳に達した障害者に一律に1割の自己負担を課し,その健康で文化的な最低限度の生活をする権利を奪うものであると同時に,65歳に達した障害者を65歳未満の障害者と比較して合理的な理由なく差別するものであるから,憲法25条,14条1項に違反して無効である。
したがって,自立支援法7条により介護給付費等を不支給とした本件処分は違法である。
【被告の主張】
自立支援法と保険法は,その基本理念に異なる面はあるものの,自立支援給付と介護保険給付は,介護が必要な者に対して介護を提供するという点では重なっており,両者はいずれもサービスの提供を受ける者が自立した日常生活を行うために総合的な支援を行うという点で共通している。
したがって,自立支援給付と介護保険給付とが質的に全く異なるものとはいえないから,介護保険給付で自立支援給付に相当するものを受けることができるときに自立支援給付を行わない旨を定めている自立支援法7条は,合理性を有する規定であって,憲法25条,14条1項に違反するものではない。
自立支援法7条は,現在の社会保障制度の原則である保険優先の考え方の下,障害福祉サービスと介護保険サービスの適用関係について,まずは介護保険サービスを利用するものとしている。その結果,自立支援給付を受けていた障害者が65歳に達して介護保険給付を受けるようになったために,一定の自己負担が生じることになったとしても,障害者である要介護者と障害者でない要介護者との公平性を維持する必要性からして,同条は,65歳に達した障害者を合理的な理由なく差別したものとはいえず,また,65歳に達した障害者の健康で文化的な最低限度の生活をする権利を奪うものであるともいえない。
したがって,自立支援法7条は,憲法25条,14条1項に違反するものとはいえない。

自立支援法7条の運用違憲性について

【原告の主張】
自立支援法7条の運用に当たっては,障害者の実情に照らした柔軟で実態に即した運用が要請されている。具体的には,65歳に達した障害者が未だ介護保険給付の申請をしていない場合には,同人に対し,介護保険給付の申請の必要性等を十分に説明する必要があり,その間は従前のとおりの自立支援給付を継続するなどの柔軟な運用を採ることが要請されている。
それにもかかわらず,被告においては,自立支援法7条の運用について,未だ介護保険給付の申請手続がなされていない段階においても,申請をすれば介護保険給付が受け得たことを前提として,直ちに自立支援給付を打ち切るという硬直的な運用をしている。このような運用は,65歳に達した障害者が健康で文化的な最低限度の生活をする権利を奪うものであると同時に,65歳に達した障害者を合理的理由なく差別するものであるから,憲法25条,14条1項に違反するものである。したがって,
このような運用のもとに行われた本件処分は違法である。
被告は,本件処分は羈束処分である旨主張するが,本件処分は羈束処分ではない。そのことは,①自立支援法22条1項が種々の事情を考慮して支給要否決定をするとしている趣旨,②柔軟かつ適正な自立支援法7条の運用をせよとの本件通達,③65歳に達した障害者が介護保険給付の申請を行わない場合に,引き続き自立支援給付を支給する例が全国の自治体において圧倒的に多数であり,厚生労働省もその取り扱いを容認していること等に鑑み明らかである。
なお,自立支援法7条につき,被告主張のような解釈をし,本件処分が羈束処分であるとすれば,まさに,自立支援法7条は,65歳に達した障害者が健康で文化的な最低限度の生活をする権利を奪うものであると同時に,65歳に達した障害者を合理的理由なく差別するものであって,憲法25条,14条1項に違反することになる。
【被告の主張】
自立支援法7条は,いわゆる併給調整について規定し,重度訪問介護の本体部分の給付に相当する介護保険給付の優先を規定している。したがって,介護保険給付の支給量が,自立支援法に基づく重度訪問介護の本体部分に関して市町村が適当と認められる支給量に不足する場合に限り,その不足する支給量を自立支援給付として支給されることとなるから,介護保険給付の支給量が決まらない限り,不足する支給量の有無及び内容が判断できないから,
自立支援給付の決定をすることができない。
また,自立支援法7条に基づく決定は羈束処分であり,市町村に自由裁量を認めた規定ではないから,65歳に達した障害者が介護保険の申請をしない場合には,自立支援給付の決定をすることはできない。自立支援法22条1項が市町村の裁量を認めているのは,介護給付費等の支給の有無ないし支給量自体であるのに対し,自立支援法7条はそれらの事情を勘案して決定された支給量について,介護保険給付を受けることができるときに,受けることができる限度において支給しないことを定めた併給調整についての規定であり,両者は全く別のことを規定しているのであるから,自立支援法22条1項の規定を根拠に自立支援法7条の規定が市町村に自由裁量を認めたと解することはできない。また,自立支援法7条の規定の委任を受けた障害者自立支援法施行令2条が,自立支援法7条の限度額を「受けることができる給付」と明確に定めていることからも,自立支援法7条の規定が市町村に自由裁量を認めた規定であると解する余地はない。
したがって,原告の主張するような運用は法律上要請されていないから,被告の運用は,憲法25条,14条1項に違反するものとはいえない。

自立支援法7条の解釈・適用の誤りについて

【原告の主張】
自立支援法7条は,自立支援給付に匹敵する質及び量の給付と評価しうる介護保険給付がなされるような特段の事情がある場合に限り,介護保険給付を優先する旨を定めた規定と解すべきである。すなわち,そもそも自立支援給付と介護保険給付とは質的に異なるものであるから,障害者の有する障害の程度等が加齢による要介護等と同等の水準にあり,介護保険給付による支援においても日常生活等を問題なく過ごせるなどの特段の事情がある場合にのみ,自立支援給付に介護保険給付が優先されることになるというべきである。
本件においては,上記特段の事情は認められないため,自立支援給付を継続支給すべきであったにもかかわらず,
被告は,
この点を考慮せず,
原告に対する本件処分において,自立支援給付を全額支給しない旨の決定をしており,これは自立支援法7条の解釈・適用を誤ったものとして違法である。
自立支援法7条は,実際に介護保険給付を支給する旨の決定がされ,対象者が自立支援給付に相当する介護保険給付を受けた場合には,自立支援給付を行わない旨を定めた規定と解すべきである。
しかるに,被告は,原告が自立支援給付に相当する介護保険給付を受けていないのに,原告に対する本件処分において,自立支援給付を全額支給しない旨の決定をしており,これは自立支援法7条の解釈・適用を誤ったものとして違法である。
従前から自立支援給付を受けて生活してきた障害者である原告に対し,その生活が危殆に瀕することは明らかであるのに,自立支援給付を全く支給しなかったことは,裁量権の逸脱として許されないというべきである。
このことは,本件基本合意や本件通達をまつまでもなく,自立支援法の趣意に照らし明らかである。
したがって,本件処分には裁量権の逸脱が認められ,違法である。本件処分は羈束処分ではないことについては,
前述したとおりである。
従前自立支援給付を受けてきた障害者が,65歳になって介護保険給付の申請をしない場合でも,自立支援給付に相当する介護保険給付の最大量を推計しうるから,最小限の上乗せ支給量を推計しうる。
しかるに,被告は,本件処分において,最小限の自立支援給付もなさなかったのであるから,違法であることは明らかである。
本件介護保険給付決定においては原告に1か月当たり1万5000円の自己負担が生じているところ,この自己負担部分については,介護保険給付として給付を受けていないのであるから,自立支援法7条の「介護保険法の規定による介護給付〔途中省略〕であって政令で定めるもののうち自立支援給付に相当するもの」といえない。
そうすると,少なくとも,本件処分のうち,上記自己負担部分を支給しないとした部分は違法である。
【被告の主張】
原告の主張

について

自立支援給付と介護保険給付とは,介護が必要な者に対し必要な介護を提供するという点等において共通しており,両者が質的に異なるものとはいえない。
このことは,
両者が異質であるとの原告の見解に従えば,
従前自立支援給付を受けていた障害者が介護保険の受給資格を取得した場合は,自立支援給付と介護保険給付の両方を受給できることになるのが論理必然的であるが,そのような併給が認められることがあり得ないことからも,原告の見解は破綻している。また,自立支援法7条の文言自体からも,このような限定解釈をすることはできない。
原告の主張

について

介護保険の受給資格が生じており,申請すれば介護保険給付が支給されるにもかかわらず,
その申請をしないでこれを受給していない場合も,
自立支援法7条に定める「自立支援給付に相当するものを受けることができるとき」に該当する。
自立支援法7条は,「自立支援給付に相当するものを受けることができるとき」と規定しており,自立支援給付に相当するものを受けたときとは規定しておらず,原告の主張は自立支援法7条の文言に明らかに反する。また,原告の上記主張を採用すると,介護保険給付の受給資格が生じたが,その申請をしない者はすべて自立支援給付の支給を受けることができることとなり,自立支援法7条が併給調整規定を設けた趣旨を没却することとなる。
原告の主張

について
自立支援法7条に基づく決定は羈束処分であることは前述したとおりである。そうすると,同条は市町村に自由裁量を認めた規定ではないから,65歳に達した障害者が介護保険の申請をしない場合には,処分行政庁は,自立支援給付の決定をすることはできない。よって処分行政庁に裁量権はないので,その行使の逸脱もありえない。
また,原告が当初に自立支援給付を受けられなかった理由は,原告自身が介護保険の申請を容易に行うことができたにもかかわらず,これを行わなかったためである。
なお,本件基本合意は,自立支援給付の利用者負担のあり方等を検討することを合意したに過ぎない。また,本件通達は,申請者が必要としている支援内容を介護保険サービスにより受けられるか否かについて適切に判断することとし,必要な支援内容を受けることが可能と判断される場合には自立支援給付を支給することはできないとしているに過ぎない。
原告の主張

について

自立支援給付の上乗せ部分の決定にあたっては,介護保険の利用計画を前提として,足らないところを埋める方法で障害福祉のサービス等利用計画を立て,当該利用計画を前提として障害福祉サービスの支給量を計算するものであるから,介護保険の居宅サービス計画がないと,障害福祉サービス等利用計画を作成することができないから,不足部分を自立支援給付の上乗せとして給付すべきか否かを判断できない。
すなわち,
原告が主張するとおり,介護保険の訪問介護を利用すると仮定し,介護保険から支給される最大限度の時間数が計算できたとしても,上記の具体的な利用計画を伴っていない以上,個々の障害福祉サービスの時間の必要性を判断することができないので,原告が64歳まで支給を受けていた時間数からその時間数を差し引いた形式的な時間数を自立支援給付の上乗せ部分として決定することはできない。
また,介護保険サービスの中には,1か月当たりの単位数が定められるのみで,利用時間数に応じて単位数が変動しないため,最大限利用できる時間数が定まらないものがあり,従って,介護保険の居宅サービス計画がない段階では,上乗せ部分が発生しない可能性が否定できない。原告の主張

について

自立支援給付及び介護保険給付は,ともに,時間を単位とした支給量を前提として支給されているところ,自立支援法7条の「介護保険法の規定による介護給付〔途中省略〕であって政令で定めるもののうち自立支援給付に相当するもの」とは,支給量を前提とした介護保険給付をいうのであり,介護保険法上の自己負担部分を含まないと解することはできない。
争点

(義務付けの可否)について

【原告の主張】
前記

のとおり,本件申請に対して,自立支援給付をしないこととした本
件処分は違法であり,被告は,本件申請に対して,自立支援給付決定をすべきであった。
そして,被告は,従前,原告に対し,1か月当たり249時間(うち移動介護26時間)に相当する自立支援給付を行っていたところ,これは,被告自身が,この程度の自立支援給付を行うことが原告に必要であったと判断していたことを意味する。
また,本件介護保険給付決定により原告に介護保険給付が支給されているが,これは自己負担が生じているのであるから,自立支援給付に代替するものではない。
以上から,被告(岡山市長)が,本件申請に対し,1か月当たり249時間(うち移動介護26時間)に相当する自立支援給付決定をすべきことは,関係法令の規定から明らかであるといえ,また,少なくとも,同決定をしないことがその裁量権の範囲を超え又はその濫用となるといえる。
【被告の主張】
前記

のとおり,本件申請に対して,自立支援給付をしないこととした本
件処分は適法であるから,被告(岡山市長)が,本件申請に対し,1か月当たり249時間(うち移動介護26時間)に相当する自立支援給付決定をすべきことは,関係法令の規定から明らかとはいえず,また,同決定をしないことがその裁量権の範囲を超え又はその濫用となるともいえない。争点

(被告の国家賠償責任)について

【原告の主張】
被告(岡山市長)は,自立支援法に基づく支援事業の主体であるから,同事業を執行するにあたり,憲法・法令の意義を十分に認識し,これらに基づいて同事業を執行すべき職務上の注意義務を負っていたにも関わらず,これを怠り,前記

のとおり,違法な本件処分を行い,これによって,原告は,

以下の損害を被ったものであるから,被告は,原告に対し,国家賠償法1条1項に基づき以下の損害を賠償する責任がある。

介護保険法上の自己負担額合計7万5000円
原告は,平成24年4月から同年8月までの間,本件処分により,自立支援給付を受けることができず,本件介護保険給付決定による介護保険給付を受けることにより,1か月当たり1万5000円の自己負担をしなければならなかった。


治療費1万9037円
原告は,本件処分により,十分な介護を受けることができなくなり,その結果,尿路感染症に罹患し,入院治療費1万9037円の支出を余儀なくされた。


慰謝料200万円
原告は,本件処分により,十分な介護を受けることができなくなり,甚大な精神的苦痛を受けたのであり,これを慰謝すべき慰謝料は200万円を下らない。

合計209万4037円

【被告の主張】
前記

のとおり,本件処分は適法であり,被告に原告に対する国家賠償責
任はない。
原告が主張する損害についてはいずれも否認ないし争う。
第3
1
当裁判所の判断
前記第2の2前提となる事実のほか,証拠(甲1,46,47,52,53,59,61,68,69,乙20,証人A,証人B)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。
本件処分に至る経緯

平成24年11月2日,障害者の生活と権利を守る岡山県連絡協議会のメンバーであるAから,被告に対し,原告が65歳になっても介護保険給付に係る申請をせず,今までどおり自立支援給付を受け続けたい旨などの要望が出された。


同月27日,原告とAは被告甲区福祉事務所を訪れ,同事務所において被告職員と協議を行った。
その際,仮に原告が介護保険給付を受けることとなった場合の自己負担額についての協議が行われたほか,同職員から,原告及びAに対し,介護保険給付に係る申請勧奨が行われたが,原告は,自立支援法に係る障害福祉サービスの利用継続を考えているとして,上記申請は行わない意向であった。


その後も,被告職員から,原告に対する介護保険給付に係る申請勧奨が行われたが,
後記

のとおり,
平成25年3月19日に至るまで,
原告は,
介護保険給付に係る申請を行わなかった。

被告障害福祉課の職員は,平成24年11月29日,厚生労働省の職員へ質問を行い,要旨以下の確認を行った。
本件通達において,「障害福祉サービスの種類や利用者の状況に応じて当該サービスに相当する介護保険サービスを特定し,一律に当該介護保険サービスを優先的に利用するものとはしないこととする。」とされているところ,ここにいう「利用者の状況」に,介護保険給付に係る自己負担が生活費を圧迫するという場合は含まれない。
本件通達における「一律に当該介護保険サービスを優先的に利用するものとはしないこととする。」との点に関し,国として明確な基準を示すことはできない。


当時,
被告においては,
要介護5の要介護認定を受けた利用者でないと,
介護保険給付に上乗せして自立支援給付を行わない旨の内規(以下「本件内規」という。)が存在した。


被告乙区中央福祉事務所所長Bは,前記エの厚生労働省への確認内容及び本件内規を踏まえ,原告においては自立支援給付に介護保険給付が優先するところ,原告が介護保険給付に係る申請を行わず,原告が要介護5の要介護認定を受けていないため,介護保険給付に自立支援給付を上乗せして支給することもできないと判断し,平成25年2月11日,本件処分を行う旨の内部決裁を行った。


そして,被告(岡山市長)は,平成25年2月12日付けで,本件処分を行った。
本件処分前後の原告の生活状況及び原告による要介護認定の申請


原告は,本件処分当時,単身で居住していたところ,上下肢重度麻痺により,介助がなければ,食事や入浴等の日常生活を送ることが不可能な状況であり,
従前支給決定に係る自立支援給付により,
生活を維持していた。

従前支給決定に係る支給期間が経過した平成25年2月15日以降,原告は自立支援給付を受けることができなくなった。
そのため,原告は,ボランティアや知人等からの支援により生活を維持せざるを得ない状況となった。


このような状況の中,原告は,このまま生活を続けていくことは不可能であると考え,同年3月19日,保険法27条1項に基づき,要介護認定の申請をするに至った。


その後も,原告は,少なくとも本件介護保険給付決定に係る介護保険給付がなされるまでの間,生活の大部分をボランティアや知人等からの支援により維持していた。

2
争点

(請求①に係る取消しを求める訴えの利益及び請求②に係る義務付け
を求める訴えの利益)について
本件申請に対し,重度訪問介護に係る自立支援給付決定が行われたとしても,その支給決定の有効期間は,自立支援法23条,自立支援法施行規則15条1項により,長くとも約1年間であり,現時点において,本件申請において予定される有効期間は徒過している。そうすると,本件処分のうちの取消対象部分が取り消され,本件申請に対する自立支援給付決定が行われたとしても,もはや原告が各サービスを受けることはできず,本件処分のうちの取消対象部分の取消しや本件申請に対する自立支援給付決定の義務付けを求める利益の有無が問題となる。
そこで検討するに,自立支援給付は,指定障害福祉サービス又は施設障害福祉サービスに要した費用についての金銭給付を原則としているところ(自立支援法29条1項),原告は,本件申請において予定される有効期間において受けていた各サービスに要した費用について,自立支援給付としての金銭給付を受ける可能性があるのであり,この限りにおいて,本件処分のうちの取消対象部分の取消しや本件申請に対する自立支援給付決定の義務付けを求める利益があるといわざるを得ない
(この点においては,
被告も争わない。

被告は,本件処分においては,第2回一部取消処分及び本件介護保険給付決定により,原告は,従前と同程度の介護給付を受けているのであり,本件処分の取消しを求める訴えの利益及び本件申請に対する自立支援給付決定の義務付けを求める訴えの利益はなくなっているといえる旨主張する。しかし,本件介護保険給付決定に係る原告の自己負担額は,1か月当たり1万5000円であるところ(前記第2の2


),本件申請に対する自

立支援給付決定がされた場合は原告の自己負担は生じないのであるから(争いはない。),仮に本件処分のうちの取消対象部分が取り消され,係る部分につき本件申請に対する自立支援給付決定が行われた場合,自己負担のない介護給付を受けることができる可能性があるのであり,本件処分の取消しを求める訴えの利益及び本件申請に対する自立支援給付決定の義務付けを求める訴えの利益は失われないというべきである。
被告の上記主張は採用することができない。
したがって,請求①に係る取消しを求める訴えの利益及び請求②に係る義務付けを求める訴えの利益は認められるというべきである。
3
争点

(本件処分の違法性)について

本件処分のうち,原告が取消しを求める部分は,第2回一部取消処分による取消し及び本件変更処分による変更がなされた部分を除く部分である取消対象部分であるところ,この取消対象部分はあくまでも本件処分の一部であるため,その違法性の判断については,本件処分の違法性が問題となる。また,原告は,本件処分の違法性について,自立支援法7条の違憲性から主張を展開しているが,請求についての判断の場合と異なり,法令の解釈適用については,裁判所の専権であり,当事者が主張する順序に拘束されることはなく,本件においては,自立支援法7条の解釈・適用の点から,まず検討するのが相当である。

自立支援法7条の解釈・適用については,自立支援法と保険法とは,その目的及び対象者を異にしており,また,給付の内容及び財源等も異にしているものであること(前記第2の1),自立支援法における地方税法上の非課税世帯の自己負担がないこととされた経緯(前記第2の2
に本件通達の発出,その内容(前記第2の2

)並び

)及びこれを受けた各自治

体の取扱いの状況(本件実態調査の結果。前記第2の2

)も踏まえて検

討すべきところ,自立支援法の目的,本件通達が,介護保険サービスが利用可能な障害者が,介護保険法に基づく要介護認定等を申請していない場合は,
介護保険サービスの利用が優先される旨を説明し,
申請を行うよう,
周知徹底を図られたいとしつつ,介護保険サービスを一律に優先させ,これにより必要な支援を受けることができるか否かを一概に判断することは困難であることから,障害福祉サービスの種類や利用者の状況に応じて当該サービスに相当する介護保険サービスを特定し,一律に当該介護保険サービスを優先的に利用するものとはしないこととするとしていること(前記第2の2

),本件実態調査によれば,全国の各自治体において,要介

護認定等の申請勧奨に応じないまま,65歳到達後も継続して障害福祉サービスの利用申請があった場合,調査対象の83%の自治体が,その対応として,障害福祉サービスの支給決定を行い,又は障害福祉サービスの支給決定期限を通常より短くして決定した上で,引き続き申請勧奨を行っており,障害福祉サービスの利用申請を却下する自治体は6.4%に過ぎないという調査結果が得られたこと(前記第2の2
る利用者自己負担制度の変遷の経緯(前記第2の2

),自立支援法におけ
)のとおり,本件合

意書面の成立を受けて,本件申請の当時,自立支援法における地方税法上の非課税世帯の自己負担はなかったことなどからすれば,自立支援給付を受けていた者が,介護保険給付に係る申請を行わないまま,65歳到達後も継続して自立支援給付に係る申請をした場合において,当該利用者の生活状況や介護保険給付に係る申請を行わないままに自立支援給付に係る申請をするに至った経緯等を考慮し,他の利用者との公平の観点を加味してもなお自立支援給付を行わないことが不相当であるといえる場合には,自立支援法7条の「介護保険法の規定による介護給付〔途中省略〕であって政令で定めるもののうち自立支援給付に相当するものを受けることができるとき」には当たらないと解釈すべきものというべきである。
これに対し,被告は,自立支援法7条は,介護保険給付に係る申請を行えば介護保険給付を受けられる者については,自立支援給付に介護保険給付が優先する旨規定しており,このような者に対し,介護保険給付により受けることができる給付に相当する自立支援給付を行うことは,同条の文言に明らかに反するもので,併給調整規定を設けた趣旨を没却するものであるから,許されない旨主張する。
しかし,自立支援法7条はいわゆる併給調整規定であり,二重給付の回避をその目的とすると解されるところ,介護保険給付に係る申請を行っておらず,具体的な介護保険給付を受けることが決定されていない者について,仮に自立支援給付を行ったとしても,その段階において二重給付は生じないのであり,この限りにおいて,自立支援法7条の趣旨に反するものではなく,上記で述べた諸点に照らすと,被告の上記主張は採用できないというべきである。

これを前提として,本件について検討するに,前記1

で認定した各事

実によれば,本件申請時において,原告は介助がなければ日常生活を送ることが不可能な状況であったことが認められ,このことからして,本件申請に対して不支給決定をした場合,原告がその生活を維持することは不可能な状態に陥ることは明らかであったというべきである
(この点について,
Bは,原告に対する支援団体の支援が行われており,原告にとって必要最低限度の支援までも失われてしまうことはないと考えた旨陳述書
(乙20)
に記載し,また,その旨証言するが,不支給決定が原告に与える影響については,原告自身の身体状況から判断すべきであり,ボランティアによる支援を上記のように考慮することは誤りであったというべきである。)。また,当時,原告は地方税法上の非課税世帯であること(前記第2の2ア)から,介護保険給付に係る1か月当たり1万5000円の自己負担を負うことが経済上難しい状況であったと考えられるのであり,原告が自立支援給付の継続を希望し,本件処分に至るまでに介護保険給付に係る申請を行わなかったことには理由があるというべきである。
このような状況において,被告としては,支給決定の有効期間を通常より短くするか否かはさておき,本件申請に対する自立支援給付決定をした上で,引き続き,原告の納得が得られるよう,介護保険給付に係る申請の勧奨及び具体的な説明を行うべきであったといわざるを得ない。それにもかかわらず,自立支援給付を一切行わない旨の本件処分を行ったことは,自立支援法7条の解釈・適用を誤ったものであり,本件処分は違法というべきである(本件処分に係る裁決(甲5)においても,本件処分は,自立支援法7条の趣旨,本件通達及び自立支援法22条の趣旨等から妥当性を欠き,不当なものであった旨判断されている。)。
なお,本件処分については,その後,原告により介護保険給付に係る申請がなされていることや,第2回一部取消処分及び本件変更処分並びに本件介護保険給付決定を経て,
原告において,
従前支給決定に係る自立支援給付
(1
か月当たり約249時間。)と同程度の給付(1か月当たり合計約258時間。)を受けていることが認められるところ(前記第2の2

イ,同

),

これらの事実が,請求①との関係で,本件処分の違法性の判断に影響を与えないか,問題となり得る。しかし,請求①に係る取消しの対象は,取消対象部分であるところ,後記4で説示するとおり,取消対象部分に相当する自立支援給付決定については,現時点(口頭弁論終結時)においてもすべきであるといえ,取消対象部分はなお違法であるといえるから,上記各事実は,請求①との関係で,本件処分の違法性の判断に影響を与えるものではない。したがって,原告の請求①には理由がある。
4
争点

(義務付けの可否)について

前記3

で説示したとおり,
本件処分時において,
本件処分は違法であり,

本件申請に対して被告(岡山市長)は自立支援給付決定をすべきであったと認められる。
もっとも,義務付け訴訟における違法判断の基準時は口頭弁論終結時であると解され,行政事件訴訟法37条の3第5項の「行政庁がその処分若しくは裁決をすべきであることがその処分若しくは裁決の根拠となる法令の規定から明らかであると認められ又は行政庁がその処分若しくは裁決をしないことがその裁量権の範囲を超え若しくはその濫用となると認められるとき」に当たるか否かの判断の基準時は,口頭弁論終結時となる。
以上を前提とすると,本件処分後,原告により介護保険給付に係る申請がなされ,本件介護保険給付決定がなされている(前記第2の2
ろ,これにより,前記3


)とこ

で説示したところと異なり,口頭弁論終結時にお

いては,本件申請に対して被告(岡山市長)が自立支援給付をすべきであるとはいえないのではないかが問題となる。
しかし,これまでに認定判断したところによれば,原告による介護保険給付に係る申請は,違法というべき本件処分がなされたことから,原告としては,生活を維持するためにやむを得ず行ったものであり,原告の本意によるものではなく,納得の下に行ったものではなかったことは明らかであるというべきである。被告(岡山市長)としては,本件申請に対する自立支援給付決定をした上で,引き続き,原告の納得が得られるよう,介護保険給付に係る申請の勧奨及び具体的な説明を行うべきであったといわざるを得ない。したがって,本件においては,口頭弁論終結時においても,なお,自立支援法7条の「介護保険法の規定による介護給付〔途中省略〕であって政令で定めるもののうち自立支援給付に相当するものを受けることができるとき」には当たらず,自立支援給付決定を行うべきであるといえるというべきである。
そこで,被告(岡山市長)がすべきである自立支援給付決定の具体的な内容(支給量)について検討する。
前記第2の2

のとおり,被告(岡山市長)は,自立支援法21条1項に

基づき,原告の障害程度区分を,障害程度区分省令2条6号の区分6に当たると認定した上で,支給基準6条1項の要件を満たすものと扱い,自立支援法19条1項,22条7項に基づき,重度訪問介護の支給量を8万3040単位(1か月当たり249時間に相当し,うち移動介護26時間を含む。),とする従前支給決定を行っているところ,本件において,従前支給決定がなされた平成24年当時からの原告の身体状況等の特段の変化は認められないことや,第2回一部取消処分及び本件変更処分並びに本件介護保険給付決定を経て,原告において,1か月当たり249時間を上回る合計約258時間の支給量に係る給付を受けていること(前記第2の2

)からすれば,被告

(岡山市長)は,本件申請に対し,少なくとも重度訪問介護の1か月当たりの支給量を,従前支給決定と同様,支給基準6条1項が定める最大単位数である8万3040に相当する合計249時間とする自立支援給付決定をすべきであるといえる。
そして,本件において,第2回一部取消処分及び本件変更処分により,本件申請に関し,既に,支給量を重度訪問介護1か月当たり153時間とする自立支援給付がなされているから(前記第2の2


,同ウ

),口頭弁

論終結時において,被告(岡山市長)は,本件申請に対し,取消対象部分に相当する,重度訪問介護の1か月当たりの支給量を96時間とする自立支援給付決定をすべきであると認めるのが相当である。
したがって,被告(岡山市長)は,本件申請に対し,重度訪問介護の1か月当たりの支給量を96時間とする自立支援給付決定をしないことがその裁量権の範囲を超えているというべきであるから,原告の請求

については,

この限度で理由があると認めることができる。
5
争点

(被告の国家賠償責任)について

これまでに認定判断したところによれば,本件処分は本件処分時において違法であり,違法な本件処分を行ったことについて,被告職員には過失があったと認められるから,以下,これによって生じた原告の損害について検討する。自己負担部分について
前記第2の2


のとおり,本件介護保険給付決定に係る原告の自己負

担額は1か月当たり1万5000円であり,原告は,平成24年4月から同年8月までの間で,合計7万5000円の自己負担をしたことが認められるところ,これらの負担は,本件処分がなされなければ(本件申請に対して自立支援給付決定がなされていれば),生じなかったといえるから,これらの負担は,本件処分と相当因果関係を有する損害と認められる。
入院治療費について
証拠(甲51)によれば,平成26年12月29日に原告が尿路感染症に罹患したことが認められるところ,本件において,本件処分と原告の尿路感染症の罹患との間の相当因果関係を認めるに足りる証拠はないから,原告による尿路感染症に係る治療費1万9037円の請求は理由がない。慰謝料について
前記1

のとおり,原告は,本件処分時において,介助がなければ日常生

活を送ることが不可能な状況だったのであり,このような状況において自立支援給付を一切給付しない旨の本件処分を受けたことによる今後の生活に対する不安等の精神的苦痛は甚大であるといえるほか,その後,ボランティアや知人等からの支援により生活を維持していた間においても,なお生活状況は不安定であり,これによる精神的苦痛もまた,重大であるといえる。これら精神的苦痛に対する慰謝料は,100万円をもって相当と認める。よって,請求③は,107万5000円(及び附帯請求)の支払を求める限度で理由があると認められる。
6
結論
以上によれば,原告の請求①並びに請求②のうち重度訪問介護の1か月当たりの支給量を96時間とする自立支援給付決定(介護給付費支給決定)の義務付けを求める部分及び請求③のうち107万5000円(及び附帯請求)の支払を求める部分については理由があるからこれらを認容し,原告のその余の請求には理由がないからこれらを棄却することとして,主文のとおり判決する。岡山地方裁判所第2民事部

裁判長裁判官

横溝邦彦
裁判官

國屋昭子
裁判官

宮田裕平
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