判例検索β > 平成29年(行コ)第60号
補助金不交付処分取消等請求控訴事件
事件番号平成29(行コ)60
事件名補助金不交付処分取消等請求控訴事件
裁判年月日平成30年3月20日
法廷名大阪高等裁判所
結果棄却
原審裁判所名大阪地方裁判所
原審事件番号平成24(行ウ)197
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平成29年(行コ)第60号

補助金不交付処分取消等請求控訴事件

(原審・大阪地方裁判所平成24年(行ウ)第197号,平成26年(行ウ)第163号)
口頭弁論終結日

平成29年12月6日
判主1決文
本件控訴をいずれも棄却する

2控訴費用は控訴人の負担とする。
事実及び理由
第1控訴の趣旨
1原判決を取り消す。
2
大阪府知事が控訴人に対して平成24年3月29日付けでした控訴人の平成
23年度大阪府私立外国人学校振興補助金の交付申請を不交付とする旨の決定を取り消す。
3
大阪府知事は,控訴人に対し,上記交付申請に係る平成23年度大阪府私立
外国人学校振興補助金を交付する旨の決定をせよ。
4
被控訴人大阪府は,控訴人が平成24年3月9日付けでした平成23年度大
阪府私立外国人学校振興補助金の交付の申込みを承諾せよ。
5
控訴人と被控訴人大阪府の間において,控訴人が,大阪府私立外国人学校振
興補助金交付要綱に基づき平成23年度私立外国人学校振興補助金8080万円の交付を受けられる地位にあることを確認する。
6
被控訴人大阪府は,控訴人に対し,330万円及び8080万円に対する平
成24年3月29日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。7
被控訴人大阪府は,控訴人に対し,8410万円及びこれに対する平成24
年3月29日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。8
大阪市長が控訴人に対して平成24年3月30日付けでした控訴人の平成23年度大阪市義務教育に準ずる教育を実施する各種学校を設置する学校法人に対する補助金の交付申請を不交付とする決定を取り消す。
9
大阪市長は,控訴人に対し,上記交付申請に係る平成23年度大阪市義務教
育に準ずる教育を実施する各種学校を設置する学校法人に対する補助金を交付する旨の決定をせよ。
被控訴人大阪市は,控訴人が平成23年9月9日付けでした平成23年度大阪市義務教育に準ずる教育を実施する各種学校を設置する学校法人に対する補助金の交付の申込みを承諾せよ。

控訴人と被控訴人大阪市との間において,控訴人が,大阪市義務教育に準ずる教育を実施する各種学校を設置する学校法人に対する補助金交付要綱に基づき平成23年度大阪市義務教育に準ずる教育を実施する各種学校を設置する学校法人に対する補助金2650万円の交付を受けられる地位にあることを確認する。

被控訴人大阪市は,控訴人に対し,330万円及び2650万円に対する平成24年3月30日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
被控訴人大阪市は,控訴人に対し,2980万円及びこれに対する平成24
年3月30日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。第2事案の概要
本判決で用いる略語は原判決の例による。ただし,大阪府取消等請求及び大阪市取消等請求を併せて「本件各取消等請求」といい,平成24年3月7日付け改正後の大阪府要綱を,単に「改正後の大阪府要綱」という。
1
控訴人は,学校教育法134条1項に定める外国人を対象とした各種学校を
設置運営する準学校法人であるが,被控訴人大阪府に対して,大阪府要綱に基づく本件23年度大阪府補助金8080万円の交付申請(本件大阪府交付申請)をし,また,被控訴人大阪市に対して,大阪市要綱に基づく本件23年度大阪市補助金2650万円の交付申請(本件大阪市交付申請)をしたところ,大阪府知事及び大阪市長によりいずれも不交付とする旨の決定(本件各不交付)を受けた。
本件は,控訴人が,本件各不交付がいずれも違法であるなどとして,被控訴人大阪府に対し,1次的に本件大阪府不交付の取消し(控訴の趣旨2)及び本件23年度大阪府補助金の交付決定の義務付け(同3)を求め(本件大阪府取消等請求),2次的に控訴人の本件大阪府申請に対する被控訴人大阪府による承諾の意思表示を求め(同4。本件大阪府承諾請求),3次的に大阪府要綱に基づき控訴人が本件23年度大阪府補助金の交付を受けられる地位にあることの確認を求め(同5。本件大阪府確認請求),4次的に本件大阪府不交付により控訴人に本件23年度大阪府補助金相当額8080万円の損害が生じたとして国家賠償法1条1項に基づく損害賠償請求として同額及び遅延損害金の支払を求める(同7のうち8080万円に係る部分。本件大阪府補助金国賠請求)とともに,その余の国家賠償請求として,風評被害等の損害330万円(弁護士費用30万円を含む。)及びこれに対する遅延損害金(同6,7のうち330万円に係る部分。)並びに本件23年度大阪府補助金8080万円の支払の遅延により生じた損害金(同6の8080万円に対する遅延損害金に係る部分。)の支払を求め(本件大阪府風評等国賠請求),また,被控訴人大阪市に対し,1次的に本件大阪市不交付の取消し(控訴の趣旨8)及び本件23年度大阪市補助金の交付決定の義務付け(同9)を求め(本件大阪市取消等請求),2次的に控訴人の本件大阪市申請に対する被控訴人大阪市による承諾の意思表示を求め(同10。本件大阪市承諾請求),3次的に大阪市要綱に基づき控訴人が本件23年度大阪市補助金の交付を受けられる地位にあることの確認を求め(同11。本件大阪市確認請求),4次的に本件大阪市不交付により控訴人に本件23年度大阪市補助金相当額2650万円の損害が生じたとして国家賠償法1条1項に基づく損害賠償請求として同額及び遅延損害金の支払を求める(同13のうち2650万円に係る部分。本件大阪市補助金国賠請求)とともに,その余の国家賠償請求として,風評被害等の損害330万円(弁護士費用30万円を含む。)及びこれに対する遅延損害金(同12,13のうち330万円に係る部分。)並びに本件23年度大阪市補助金2650万円の支払の遅延により生じた損害金(同12のうち2650万円に係る部分。)の支払を求める(本件大阪市風評等国賠請求)事案である。
なお,本件各風評等国賠請求は,本件各承諾請求や本件各確認請求等と単純併合の関係にある。また,本件各確認請求は,本件各承諾請求が認容されない場合の予備的請求(3次的請求)である。
原判決は,本件各取消等請求に係る訴えにつき,本件各不交付及び本件各補助金の交付決定はいずれも抗告訴訟の対象となる処分に該当しないから不適法であるとしていずれも却下し,控訴人のその余の請求をいずれも理由がないとして棄却したところ,控訴人は,これを不服として本件控訴をした。2
本件の関係法令等の定め,前提事実,争点及び当事者の主張は,次のとおり
補正し,3で当審における当事者の主張を付加するほかは,原判決の「事実及び理由」中の「第2

事案の概要」の1ないし4,略語一覧(別紙2)及び関

係法令等の定め(別紙3)(原判決5頁4行目から38頁25行目まで及び80頁から94頁まで)に記載のとおりであるから,これを引用する。原判決7頁16行目の「なお,原告は」から17行目「掲げていたが」までを「控訴人は,当初,本件各取消請求のみを請求の趣旨に掲げていたが」と改める。
同9頁24行目末尾に「大阪府要綱や大阪府補助金交付規則には行政庁に一方的に強制権限を付与する規定があり,本件大阪府補助金の交付決定は行政庁の処分に当たる。」を加える。
同11頁1行目の末尾に「また,大阪市補助金交付規則や大阪市要綱には,申請書の提出,各種調査や事業実績報告書の提出を義務付ける規定や交付決定の取消等の被控訴人大阪市の優越的地位に基づく権力的な公権力行使を示す規定がある。」を加える。
同14頁5行目の「明らかであって,」の次に「少なくとも単なる贈与とはいえないのであり,」を加える。
同17頁1行目の「後退的措置の禁止」の次に「(社会権規約2条1項)」を,11行目の末尾に「後退的措置禁止原則は,政治的義務に止まらない法的義務である。」を加える。
同19頁15行目の「ないはずである。」を「ないはずであり,私立学校の自主性の尊重を定める同法2条柱書,8条の規定も考慮すれば,政治的中立性を要件とするのは許されない。」と改め,同行の「助成は,」の次に「地方自治法232条2,」を,16行目の「8条,」の次に「16条4項,」をそれぞれ加え,21行目の末尾に改行して次のとおり加える。「e

大阪府要綱は,1条校に準じた教育活動が行われている外国人学校に対
する助成を行うために定められたものではなく,同要綱のもともとの趣旨は,1条校に準じるかどうかを問わず,外国人学校一般に対し助成を行うところにあった。その改正は,本件大阪府補助金の経緯を明確にしたものではなく,新たな要件の付加である。その理由は次のとおりである。平成3年及び平成5年の大阪府要綱制定等に係る伺い文書(乙31,32)からは,本件大阪府補助金が1条校に準じるものについての補助であることは窺われず,平成2年の文書(乙30)の「新規」の「1

経常費

助成制度の創設」の「概要」欄には,カリキュラムの内容が1条校とほぼ同様であるから1条校と同内容の助成措置を講じる旨の記載はあるが,上記各伺い文書からして,1条校と同水準との検討内容は受け継がれなかったものというべきである。また,大阪府要綱制定当時や平成8年の大阪府要綱改正時の大阪府私学課長は,本件大阪府補助金が1条校に準じた学校を助成する趣旨のものではない旨述べている(A鑑定書甲156(A鑑定書),158(朝鮮新報))。
f
大阪府要綱の改正及び本件大阪府不交付は私立学校の自主性の点でも違
法である(B意見書。甲166)。
私立学校の公共性は自主性を前提とするものであり,朝鮮学校も私立学校法に服している点において公の支配に服しており,公費による補助の対象となる。法が設備・授業に係る行政の権限を制限していることに照らせば(私立学校法5条による学校教育法14条(設備・授業等の変更命令)の適用を除外。),4要件は自主性の領域を侵すものである。そして,朝鮮学校における公共性とは民族特有の教育を担うことである。私立の各種学校には学校教育法33条(教育課程)等は準用されていないのであるから(同法134条2項),改正後の大阪府要綱2条5号(学習指導要領の準用)においても学習指導要領の準用を求めるべきではない。また,本件大阪府補助金の交付について被控訴人大阪府に裁量があるとしても,そこには自ずから限界がある。
私立学校振興助成法5条が補助金の減額給付ができる場合として教育課程に係る事項を挙げていないことからすれば,補助金の交付対象を日本の学習指導要領に準じた教育活動を行うものに制限する改正後の大阪府要綱2条5号は現行の教育関係法規の枠組みを逸脱するものである。朝鮮学校には教育基本法14条2項の適用はなく,その趣旨に一定程度規制されるとしても,1条校に対する場合よりも限定的に解釈されるべきである。朝鮮総聯は政党ではないし,控訴人とは在日朝鮮人の民族教育の適正な維持発展を目的とした協力関係にある。したがって,特定の政治団体との人的・経済的繋がりのある外国人学校を補助金の交付対象から排除する改正後の大阪府要綱2条6号ないし8号は,行政権力による教育への過度の介入に当たる(教育基本法16条1項参照)。g
本件大阪府不交付が裁量を逸脱しているかどうかの判断に当たっては,長期間にわたり本件大阪府補助金が交付され続け,控訴人もその交付を前提に教育環境を整備してきたこと,

本件大阪府補助金は,外国人学校

一般に対する補助金制度として制度設計されているが,控訴人に対する補助金がその大半を占めていたことからすると,事実上控訴人に対する補助金として機能していること,

不交付がやむを得ないような事情のないこ

とも考慮されるべきである。」
同29頁4行目の「明らかである。」を「明らかであり,少なくとも単なる贈与ではない。」と改め,13行目の末尾に「なお,大阪市要綱は,単なる内部細則ではなく,申請者の権利義務に関するものであるから,本件大阪市申請後に改正された大阪市要綱を適用して不交付決定をすることは許されない。」を,22行目の「ものである。」の次に「実際にも,対象とする学校(大阪府要綱1条,大阪市要綱1項)や補助金の額の算定方法が本件大阪市補助金と本件大阪府補助金では異なるし,平成21年度及び平成22年度は本件大阪市補助金の交付決定が本件大阪府補助金の交付決定より先にされている。また,被控訴人大阪市の担当者が,平成24年3月8日,控訴人に交付した本件メモには,本件大阪府補助金の交付要件と異なる要件が記載されており,当時,被控訴人大阪市は,同大阪府とは別個に補助金の交付要件を検討していた。」をそれぞれ加える。
同30頁12行目の末尾に改行して次のとおり加える。


本件大阪市不交付の裁量逸脱の有無については,

長期間にわたり本件

大阪市補助金が交付され続けており,控訴人もその交付を前提に教育環境の整備を行っていたこと,

本件大阪市補助金は,外国人学校一般に対す

る補助金制度として制度設計されているが,控訴人に対する補助金がその大半を占めていたことからすると,事実上控訴人に対する補助金として機能していること,

不交付がやむを得ないような事情のないことも考慮さ

れるべきである。」
同30頁16行目の末尾に「控訴人は,平成17年以降当該年度の5月末日までに交付申請書を提出したことはなかったし,実績報告書も期限どおりに提出していたわけではなかったのに(大阪市要綱5項,14項),被控訴人大阪市はこれを容認していた。大阪市要綱の申請書等の提出期限は死文化していたのであって,その後,大阪市要綱が改正されたからといって,本件大阪市申請の遅れをもって,控訴人に不利益を生じさせてはならない。」を加える。
同31頁12行目の末尾に「本件大阪市補助金と本件大阪府補助金の交付対象や交付額の算定方法が異なるとしても,直ちに本件大阪府補助金を補完するものであることが否定されるものではない。また,本件大阪市補助金は,人件費や教育研究費を中心とする本件大阪府補助金が交付対象としていない経費の助成を目的とすることにより,これを補完しているのである。」を加える。
同34頁18行目の末尾に改行して次のとおり加える。


控訴人の交付申請が5月末日までにされていなかった事実はある。しかし,被控訴人大阪市としては,期限までに申請がないことを理由に直ちに申請を受理しないことは控訴人に酷であると考えてこれを許容していたに過ぎず,適切でない事務処理であったことに変わりはない。」原判決35頁13行目の「大阪市要綱」から14行目までを「この点にお
いても手続上違法である。」と改める。
同38頁3行目の「本件23年度大阪府補助金」を「本件23年度大阪市補助金」と訂正する。
同81頁12行目の冒頭の「北朝鮮」を「朝鮮」と,25行目の「国際条約」を「国際規約」とそれぞれ訂正する。
同82頁10行目を削除する。
同83頁2行目の末尾に改行して次のとおり加える。
→朝鮮学校」

「控訴人の運営する各種学校
3当審における当事者の主張
憲法,国際人権法違反

控訴人の主張
憲法13条,26条違反
本件大阪府補助金は,外国人学校の教育条件の維持向上や生徒の経済的負担の軽減等を目的とし,本件大阪市補助金は,外国人学校の健全な発展等に資することを目的としている。これら補助金制度は,憲法13条,憲法26条に基づく民族教育を受ける権利が国家により妨害されない権利及び公費助成を受ける権利の保障に寄与するものである。このような補助金制度が一旦成立し,継続して交付がされてきた以上,当該制度を後退させることは憲法上許されない(後退的措置の禁止)。
したがって,本件各不交付は,控訴人が設置運営する学校の生徒の学習権及び民族教育を受ける権利を侵害し,憲法13条,26条に違反する違法なものである。
憲法23条違反
憲法23条は,教師の教授の自由を一定範囲で保障しているが,私立の外国人学校の教師は,公立学校の教師よりも広い範囲で教授の自由が認められるべきであって,教師が,民族教育上有益であると判断した行事に生徒を参加させることも教授の自由として保障される。
改正後の大阪府要綱2条8号は,特定の政治団体が主催する行事に,学校の教育活動として生徒を参加させないことを補助金交付の要件としているが,これは憲法23条に違反する。したがって,改正後の大阪府要綱に基づく本件各不交付はいずれも違法なものである。
憲法14条違反
本件各不交付は,朝鮮学校の設置運営者や通学する生徒,保護者という社会的身分に基づき別異の取扱いをするものである。本件各不交付により,前記第2,4

dのとおり(原判決16頁参照),控訴人と他の

私立高等学校や各種学校との間には補助金について著しい格差が生じている。
このような別異の取扱いを正当化する事由の判断は,教育を受ける権利の重要性に鑑み,厳格でなければならない。ところが,改正後の大阪府要綱に追加された4要件は,外交的・政治的理由によるもので,別異の取扱いを正当化するものではではないし,目的と手段の均衡も欠いている。したがって,本件各不交付は,憲法14条に違反する。
国際人権法違反
a
社会権規約は,日本において効力を生じた昭和54年9月21日,
法的拘束力を有するものとなり,その効力順位は法律より上位であるから,社会権規約に抵触する法律は無効であり,法律は社会権規約に適合するように解釈されなければならない。また,社会権規約2条1項から導かれる後退措置禁止原則や同条2項,自由権規約26条に規定される差別禁止原則には,裁判規範性を認めることができる。本件各不交付は,次のとおり,いずれも上記規約に違反する違法なものである。
b
社会権規約13条1項は外国人を含むすべての者に対する教育についての権利を認め,同条2項は財政的措置を含めて,すべての者に教育を受ける機会が与えられ,それを利用できるようにすることを求めている。
このように,在日朝鮮人の民族教育を受ける権利は,国際人権法上保障されており,在日朝鮮人も租税を負担しているから,在日朝鮮人にのみ公共サービスを提供しないことは許されない。そして,憲法上義務教育は無償とされており,国際人権法上中等教育も漸進的に無償化されるべきである。本件各不交付はこれらの権利保障に違反する(C意見書。甲164)。
c
本件各不交付は,社会権規約2条1項から導かれる法的義務である後退的措置禁止原則に違反する。また,本件各不交付は正当な理由のない別異の取扱いであり,即時の実施義務である社会権規約2条2項,自由権規約26条に基づく無差別原則に違反する。さらに,本件各不交付は,民族の違い,集団性,文化的理由に基づくもので人種差別撤廃条約に違反し,子どもの権利条約3条にも違反する違法なものである。


被控訴人大阪府の主張
憲法26条,13条,社会権規約等の国際人権基準は具体的な権利を基礎付けるものとはいえず,後退的措置の禁止も法的義務とはならないから,控訴人の主張は失当である。
憲法13条,26条違反
地方自治法232条の2及び私立学校振興助成法10条を含め,地方公共団体が私立学校や各種学校に対する補助金の交付を義務付ける法律は存在しないから,本件大阪府不交付決定が直ちに控訴人の法律上の利益を侵害することにはならない。
憲法23条違反
憲法23条による教授の自由も,無制限に認められるものではない。改正後の大阪府要綱2条8号は政治的中立性の観点による合理的な制限であるから憲法23条に違反しない。
憲法14条違反
本件大阪府不交付は,大阪府要綱の交付対象基準に該当しないことを理由とするものであり,社会的身分による別異の取扱いではなく,不合理な差別的取扱いにも当たらないから,憲法14条に違反しない。国際人権法違反
控訴人指摘の条約の各条項は,自動執行力を肯定することができず,裁判規範性を有しないし,社会権規約13条1項は当然に国内法的効力を持たず,そのことは同規約2条1項が立法措置その他の方法により権利の完全な実現を漸進的に達成するとの文言から明らかである。

被控訴人大阪市の主張
本件大阪市不交付に憲法違反,国際人権法違反があるとの主張は争う。教育関係法規違反


控訴人の主張
教育基本法16条1項違反
大阪府知事による大阪府要綱2条の改正及び改正後の大阪府要綱2条8号に基づく本件大阪府不交付及びこれを前提とする大阪市不交付は,朝鮮学校の教育の自主性において不可欠の要素である朝鮮総聯との協力関係を維持することを放棄するか,補助金の交付を受けるかの二者択一を迫るものであり,教育基本法16条1項に定める不当な支配に該当し,違法なものである。
私立学校法1条違反
外国人学校において,国家指導者の肖像画を掲げること,当該国家を支持する在日団体と協力関係を維持することは私立学校の自主性(私立学校法1条)に含まれるものであるから,大阪府知事による大阪府要綱2条の改正及び同要綱2条8号に基づく本件大阪府不交付及び同じ要件に基づく大阪市不交付は,私立学校法1条の定める私立学校の自主性を重んじる義務に違反する違法なものである。
教育基本法14条2項違反
教育基本法14条2項(政治教育の制限)は各種学校に適用がないし,選挙権も被選挙権も持たない者が主に所属する朝鮮総聯は,同条項の「特定の政党」には該当せず,規制の対象外である(B意見書。甲166)から,朝鮮総聯と関係があるからといって,補助金交付の対象から除外することは許されない。改正後の大阪府要綱2条6号ないし8号は,政治的中立性を理由にしながら規制対象となる政治団体から政党を除外しており,このような要件設定は,結果的に政党と関係のある学校を優遇することにより,逆に政治的中立性の要請に反する結果となる。したがって,大阪府要綱2項6号ないし8号は教育基本法14条2項に違反し,これに基づく本件大阪府不交付及び同様の要件による本件大阪市不交付はいずれも違法である。

被控訴人大阪府の主張
教育基本法16条1項違反
4要件は本件大阪府補助金の交付要件であって,控訴人における教育内容を直接規律するものではない。本件大阪府補助金の交付を受けない外国人学校は,4要件に拘束されることなく自由に教育をすることができるから,教育に不当に介入するものではなく,教育基本法16条1項に違反しない。
私立学校法1条違反
私立学校法1条により自主性が尊重される私立学校であっても,教育の政治的中立性は求められる。改正後の大阪府要綱は,これを確保する観点から4要件を明文化したのであるから,私立学校法1条に違反しない。
教育基本法14条2項違反
改正後の大阪府要綱において,政治団体から政党を除外したのは,議会制民主主義における政党の重要な役割に鑑みてのことであるから,同要綱2条6号ないし8号は教育基本法14条2項に違反しない。


被控訴人大阪市の主張
本件大阪市不交付が違法であるとの主張は争う。
大阪府行政手続条例(甲168)違反

控訴人の主張
本件大阪府不交付は行政処分であるから,次の大阪府行政手続条例違反により違法となる。
大阪府要綱2条8号は,法規範が具備すべき一般性を有しないこと,「特定の政治団体」「主催する行事」「学校の教育活動」という不確定概念を要件としていること,消極的事実の証明という不可能を申請者に求めていることから,できる限り具体的な審査基準を定め,これを公にするという大阪府行政手続条例5条の定めに反し無効である。また,大阪府不交付決定に付された理由は「大阪府要綱2条8号に該当しているとの確証が得られず」というものであり,同条例8条の定める処分理由の開示がされたとはいえず,同条にも違反する。
本件大阪府不交付に処分性が認められないとしても,上記不交付及びその一連の経緯は行政指導に該当する(大阪府行政手続条例2条7号)。すなわち,被控訴人大阪府の担当職員は,朝鮮学校の生徒が迎春公演に参加したことが改正後の大阪府要綱2条8号に該当するかどうかの確認を行う際,参加事業の主催者が問題であることを説明しなかった(前記第3,5

のア,イ。引用の原判決58,59頁)。そのため,D校

長は迎春行事の主催者が北朝鮮であり「特定の政治団体」に該当しないことは明らかであると考えて,参加事業に関する資料を提出しなかった。その結果,本件大阪府不交付に至ったのであるから,上記一連の経緯(行政指導)は,大阪府行政手続条例30条1,2項に違反し,本件大阪府不交付の違法事由ともなる。

被控訴人大阪府の主張
本件大阪府不交付は行政処分ではないから,大阪府行政手続条例は適用されない。
大阪市行政手続条例(甲169)違反

控訴人の主張
本件大阪市不交付は行政処分であるから,次の大阪市行政手続条例違反により違法となる。
大阪市要綱が改正されたのは平成24年3月27日であり,本件大阪市申請がされた平成23年9月12日や理由の付されていない不交付決定がされた平成24年3月21日よりも後のことである。したがって,本件大阪市不交付の当時,具体的な審査基準は定められておらず,予め公にされてもいなかった。したがって,本件大阪市不交付は,大阪市行政手続条例5条及び許認可等を拒否する処分に理由を提示することを定める同条例8条に違反する。
本件大阪市不交付に処分性が認められないとしても,被控訴人大阪市は,本件大阪市申請後,適切な情報提供をするなどの行政指導をすべきであったのにこれを怠り,本件大阪市補助金の交付要件の改正を予定していることを伝えず,その交付要件に本件大阪府補助金が交付されていることが加わるのに,改正後の大阪府要綱の交付対象の定めと異なる内容の本件メモを交付するなど誤った情報提供を行った。このことは,大阪市行政手続条例30条に違反し,違法な行政指導の下に行われた本件大阪市不交付は違法である。
本件大阪市不交付が同条例2条5号(不利益処分)に直接該当しないとしても,それは侵害行政的なものであるから同条例の不利益処分に係る手続に準じた手続が必要であった。そして,本件大阪市不交付は,大阪市要綱改正前に行われているから,不利益処分の基準の公表を定めた同条例12条3項,不利益処分の理由の提示を定めた同条例14条,意見陳述の機会の付与を定めた同条例13条に違反し,違法である。

被控訴人大阪市の主張
本件大阪市不交付は,行政処分ではないから大阪市行政手続条例の適用はない。控訴人の主張は前提を欠くもので失当である。
被控訴人大阪市は,平成24年3月8日,控訴人担当者に,本件大阪市補助金の交付要件を本件大阪府補助金の交付要件に合わせる旨伝えており,誤った情報を伝えた事実はない。また,本件大阪府補助金を受給する権利は法的に保障されてはいないから,控訴人の権利を侵害する侵害行政と評価することはできない。
大阪府要綱の改正に係る裁量の逸脱・濫用

控訴人の主張
大阪府要綱の改正には,次のとおり,裁量の逸脱・濫用がある。これは本件大阪府不交付のみならず,これに倣って行われた本件大阪市不交付の違法性をも基礎付けるものである。
大阪府要綱の改正は,同要綱や本件大阪府補助金の根拠となる私立学校振興助成法の趣旨・目的に反する。
本件大阪府補助金は,私立学校振興助成法10条を根拠とし,(外国人学校の)教育条件の維持向上及び生徒に係る修学上の経済的負担の軽減を目的とするものであって(同法1条,大阪府要綱1条),1条校に準じて行うべき補助ではない。そして,大阪府要綱の改正は,学校と特定の政治団体との関係を理由に支給要件を厳格化するものであるが,同法16条により準学校法人に準用される12条,12条の2,13条の定めに比べて過度の規制となっている。
また,大阪府知事が平成22年3月にした報道機関に対する発言(甲32)や,大阪府要綱の改正が大阪府議会において本件大阪府補助金について平成23年12月12日付けで4要件の厳正な対応を求める旨の附帯決議案を受けて行われたこと(乙27),さらに,大阪朝鮮高級学校の教育活動の確認ワーキング(WG)では朝鮮学校の教育内容が肯定的に評価されていることから明らかなように,改正の動機は,北朝鮮の拉致問題に対する報復制裁という不正な動機によることは明らかである。準学校法人についても自主性が尊重され(私立学校法64条1,5項により,5条,6条,8条,25条ないし63条),上記のとおり私立学校振興助成法12条,12条の2,13条が準用されている。したがって,これを超えた過度の規制を課すことは許されない。
大阪府要綱の改正は,控訴人に対する補助金支給を停止するために控訴人だけに課した特別の要件であって,法律の規制を超えて控訴人の教育への自由,生徒等の学習権等を侵害するものである(甲109,110)。補助金の減額交付,不交付場合を定める私立学校振興助成法5条,6条は地方公共団体に適用されないが,大阪府要綱の改正が過度の規制かどうかの判断には,上記法条の趣旨を考慮すべきである。
大阪府要綱,大阪市要綱は,先例として確立した裁量基準であり,控訴人らは約18年間にわたりこれを遵守してきた。それにもかかわらず,経過措置等を設けることもなく,控訴人に不利益を課する改正をしたのであるから,上記各要綱の改正は信義則に反するものである。
各種学校と専修学校は,いずれも政治的中立性に関する教育基本法14条2項の規定の適用がない点では共通している。それにもかかわらず,大阪府要綱の改正によって特定の政治団体との関係に関する規定が設けられたのであって,大阪府私立専修学校高等課程経常費補助金交付要綱(甲165)にはそのような規定がない。このような大阪府要綱の改正は平等原則に反する。
改正後の大阪府要綱2条6ないし9号は,教育機関として欠くべからざる要件を定めるものとはいえない。これを要件を満たさないからといって補助金が全く交付されないというのは比例原則に違反する。
大阪府要綱の改正における判断過程は合理性を欠く。
改正後の大阪府要綱2条6号は,特定の政治団体を,公安調査庁の調査による直近の「内外情勢の回顧と展望」において調査の対象となっている団体(政党を除く)としている。これは調査結果の目的外使用として破壊活動防止法3条1項(1条,2条)に違反し,教育基本法14条2項が党派的な政治教育を禁止していることとも矛盾している。
また,調査の対象は公安調査庁の判断により一方的に決定されるばかりか,公安調査庁の調査自体が破壊活動防止法1条,27条に違反する。実際にも,公安調査庁の調査対象とされることは当該対象の悪質性を意味しないし,「内外情勢の回顧と展望」の記載自体信頼性に乏しい。イ
被控訴人大阪府の主張
大阪府要綱の改正は,北朝鮮の拉致問題に対する報復制裁という不正な動機によって控訴人を狙い撃ちにしたものではない。4要件は本件大阪府補助金の交付対象校全体にかかるものであり,控訴人指摘の附帯決議は,議会における議論が朝鮮学校に関するものであったため,朝鮮学校に限定した表現になったに過ぎない。
本件大阪府補助金及び私学助成制度は,学校の教育条件の維持向上を目的としており,直接教育を受ける権利等を保障するものではない。また,私立学校法1条で自主性が重んじられる私立学校であっても,1条校については教育の政治的中立性を規定する教育基本法14条2項が適用される。4要件は学校の管理運営機能の強化,学校運営の透明性や政治的中立性の確保等の観点から明文化されたものであって,大阪府要綱の改正は各種学校の権利を侵害するものではない。
大阪府要綱の改正は信義則に反しない。被控訴人大阪府は,平成22年3月12日,控訴人に対し,学校法人として朝鮮総聯と一線を画すことなど4項目の遵守を要請し,要請を満たす方策が示されない限り本件大阪府補助金の執行を留保することを伝えた上(第3,5
イ。原判決

48,49頁参照),控訴人からの報告を求め,報告までに時間がかかることを慮り,平成21年度の補助金を控訴人に交付している。被控訴人大阪府は,平成22年度については,控訴人提出の報告書を受けて,上記4項目を満たした初級・中級学校には補助金を交付し(第3,5コ。原判決52頁参照),その後平成24年3月,本件大阪府補助金の交付対象要件を明確化するために上記4項目を具体的要件として明文化した大阪府要綱の改正を行った。
大阪府私立専修学校高等課程経常費補助金交付要綱(甲165)8条8号は,教育条件又は管理運営が著しく適性を欠く場合に補助金を不交付とすることができるとしている。専修学校においても政治的中立性が保たれていなければ補助金は交付されないから,専修学校と各種学校の間で平等原則違反はない。
各種学校についても,私立学校としてその健全な発達を図るため公共性が求められており,私立学校にも一定の政治的中立性が求められている。本件大阪府補助金は,1条校に準じた教育活動が行われていることを実質的要件とするものであり,そのような要件を充たすというためには,教育の一定程度の中立性が確保されていることが必要である。そして改正後の大阪府要綱2条6号ないし8号の改正は,学校法人の運営に関する権限と責任を有する理事会が政治的中立性を確保し,最終的な意思決定機関としての役割を果たす必要があることを明文化したものであり,教育機関として欠くべからざる要件である。
大阪府要綱の改正における判断過程に合理性を欠く点はない。
学校法人は,その公共性や政治的中立性の観点から,国(公安調査庁)が公共の安全の確保を図るために調査の必要があると認識している団体とは特に一線を画すべきである。また,公安調査庁は法によって設置された国家機関であり,一定の調査,分析能力を備えた組織と考えられるから,その調査に一定の信を置くことは不合理とはいえない。ウ
被控訴人大阪市の主張
本件大阪市不交付が違法であるとの主張は争う。

改正後の大阪府要綱2条8号の要件(特定の政治団体が主催する行事への不参加)がないことを理由とする本件大阪府不交付及び本件大阪市不交付の誤り(適用違法)

控訴人の主張
控訴人は,改正後の大阪府要綱2条8号の要件を充たすものと解すべきであるから,本件大阪府補助金及び本件大阪市補助金は支給されるべきである。
改正後の大阪府要綱5条3号は,補助金交付申請において要件確認申立書B(学校法人及び学校が同要綱2条各号のすべてに該当する旨の申立書。乙2の様式第1号の3)の提出を求めている。この規定に従えば,上記文書を提出すれば,それでも要件が満たされない具体的理由が提示されない限り,要件は充足されているものと取り扱わなければならない。そうでなければ,改正後の大阪府要綱2条8号が消極的事実の証明という不可能を申請者に強いるものとなってしまうばかりか,そもそも,平成23年10月当時の大阪府知事の「補助金をストップするための要件」との発言(甲109)からしても,同号の要件については被控訴人大阪府に立証責任がある。
迎春公演は,北朝鮮が主催する行事であり,特定の政治団体が主催する行事ではない。また,北朝鮮への訪問には朝鮮総聯を経由して出入国手続をする必要があるから,生徒の北朝鮮訪問に朝鮮総聯が関与するとしても,これを特定の政治団体が主催する行事への参加と解することは現実的ではない。さらに,迎春公演への参加は生徒や保護者が任意に行ったものであるから,学校の教育活動としての参加にも該当しない。イ
被控訴人大阪府の主張
被控訴人大阪府において,平成24年3月の段階で,控訴人が運営する初級・中級学校の生徒が,朝鮮総聯主催の下で迎春公演に参加したことを疑うべき状態が生じていた。しかし,控訴人から上記疑いを解消するに足りる資料の提出はなく,案内文書等の資料を提出することができない合理的な理由もなかった。
迎春公演は,学校内で募集を行い,生徒に対するオーディションを行っていたほか,参加する生徒や同行する教員は,約1か月間北朝鮮に滞在するにもかかわらず出席,出勤扱いとされていた。そうすると,生徒や保護者が学校行事とは離れて任意で迎春公演に参加したものということはできない。


被控訴人大阪市の主張
本件大阪市補助金が控訴人に交付されるべきであるとの主張は争う。公立高等学校に係る授業料の不徴収及び高等学校等就学支援金の支給に関
する法律(平成25年法律第90号による改正前。以下「支給法」という。)との比較

控訴人の主張
公費による各種学校に対する地方自治体の助成に係る制度の改廃(行政立法の改廃を含む)や運用は,教育法体系全体の目的・趣旨の範囲内のものでなければならず,これを逸脱し裁量権を濫用した要綱を含む行政立法は違法ないし無効となる。
ところで,支給法は,国の財政的負担において,高等学校等における教育に係る経済的負担の軽減を図り,後期中等教育段階における教育の機会均等等に寄与することを目的とし,高等学校の課程に類する課程を置く各種学校を適用対象とした上,その適用対象の範囲につき,教育上の観点からの専門的・技術的検討に基づいて適用対象を定める権限を文部科学大臣に委ねたものである。したがって,同大臣による同法施行規則の改正は,上記支給法の目的や同法の委任の趣旨の範囲を逸脱すれば違法あるいは,無効となる(大阪地方裁判所平成29年7月28日判決。甲167)。
大阪府要綱や大阪市要綱についても,上記のような教育法体系全体の目的・趣旨の範囲を逸脱し,裁量権を濫用したものとして,違法ないし無効である。
仮に,大阪府要綱,大阪市要綱が内部細則であり,助成の法的性質が贈与であるとしても,これらは上記各要綱の改正や運用が裁量権を逸脱するかどうかの判断において考慮すべき事情に当たらないというべきである。

被控訴人大阪府の主張
支給法に基づく高等学校等就学支援金と本件大阪府補助金は,根拠,目的,対象に係る学校の範囲,交付対象者等が異なる全く別の制度である。

被控訴人大阪市の主張
高等学校等就学支援金は,法律によって権利として保障されているものであり(支給法12条),そうではない本件大阪市補助金とは同様に論じられない。
控訴人についても,大阪市要綱の交付要件を満たせば,本件大阪市補助金の交付を受けられたのであるから,外交的・政治的な意図により支給法施行規則を改正したことが問題とされた控訴人指摘の判決の事案とは前提が異なる。

第3当裁判所の判断
1
当裁判所は,本件訴えのうち,本件各取消等請求に係る部分は不適法である
からいずれも却下し,控訴人のその余の請求はいずれも理由がないから棄却すべきであると判断する。その理由は,次のとおり補正し,次項に当審における当事者の主張に対する判断を付加するほかは,原判決の「事実及び理由」中の「第3

当裁判所の判断」(原判決39頁1行目から76頁19行目まで)に
記載のとおりであるから,これを引用する。
原判決40頁4行目の「本件大阪府不交付」を「本件大阪府補助金の交付」と改める。
同41頁10行目の末尾に「大阪府交付規則には,知事は,補助金の交付の目的を達成するために補助金交付決定に必要な条件を付するものとし(6条2項),大阪府要綱は,これを受けて補助事業の執行状況に関する調査又は報告の求めに従わなければならない旨の規定(6条5項5号)があるほか,上記規則には,知事は,補助金交付決定の内容やこれに付された条件に従って補助事業を遂行すべきこと(11条),条件に適合させる措置をとるべきこと(14条),補助金交付決定を取り消した場合(15条)には既交付の補助金の返還を命ずることとされている(16条)(甲5,9,11)。しかし,これらの規定は,補助金に係る予算の執行の適正化を図ることを目的とする補助金交付決定の附款であって(大阪府交付規則1条),上記各規定の存在をもって,本件大阪府不交付が,一方的に行う公権力の行使によって補助事業者(補助金(等)の交付の対象となる事務又は事業を行う者。大阪府交付規則2条2号。大阪市についても同じ。大阪市交付規則2条3号)の権利義務ないし法律上の地位に直接影響を及ぼすものではない。」を加える。同42頁13行目の「本件大阪市不交付」を「本件大阪市補助金の交付」と改める。
同43頁3行目の末尾に「大阪市交付規則には,市長は,補助金交付申請があったときは,補助金の交付が法令等に違反しないか,補助事業の目的及び内容が適正かどうかを調査した上で交付決定を行うものとし(5条1項),補助事業者は,報告書により補助事業等の成果を市長に報告しなければならないとされ(14条),報告を受けた市長は,その成果が補助金等の交付決定の内容及び条件に適合するものであるかどうかを調査した上で補助金等の額を確定する(15条)旨の規定がある。また,大阪市要綱には,市職員による学校の立入り検査(10項5号)や交付決定後の事情変更により特別の必要が生じたときの市長による交付決定の全部又は一部の取消(17項)に係る規定がある(甲14,15,18)。しかし,これらの規定についても,補助金に係る予算の執行や補助金等の交付の適正化を図ることを目的とする事務執行上の手続細則ないし補助金交付決定の附款であって(大阪市補助金交付規則1条,大阪市要綱10項5号),上記各規定の存在をもって,本件大阪市不交付が,一方的に行う公権力の行使によって補助事業者の権利義務ないし法的地位に直接影響を及ぼすものであるということはできない。」を加える。
同50頁24行目の「

」を「政治団体と一線を画すこ

と,

」と改める。

同63頁11行目及び13行目の「社会権規約19条」をいずれも「社会権規約13条」と訂正し,14行目の「具体的な権利」を「本件大阪府補助金の交付を求める権利ないし法的地位」と改め,16行目の「いうべきであるし,」の次に「社会権規約2条1項が締約国において「立法措置その他のすべての適当な方法によりこの規約において認められる権利の完全な実現を漸進的に達成する」ことを求めていることに照らせば,」を加える。同64頁15行目の「いうべきである。」の次に「控訴人は,本件大阪府補助金の交付が単なる贈与ではない旨主張するが,控訴人は同補助金の交付を求める権利ないし法的地位を有していないのであるから,上記主張は上記裁量を否定し制約する理由とはなり得ない。」を加える。

同66頁14行目の末尾に改行して次のとおり加える。
「ウ

控訴人は,大阪府要綱は,1条校に準じた教育活動が行われている外国人学校に対する助成を行うために定められたものではなく,同要綱のもともとの趣旨は1条校に準じるかどうかを問わず,外国人学校一般に対し助成を行うところにあったと主張し,その根拠として,平成2年の文書(乙30)と平成3年及び平成5年の大阪府要綱の制定等の伺い文書(乙31,32)との比較対照及び大阪府要綱制定当時や平成8年の大阪府要綱改正時の大阪府私学課長の発言(甲156(A鑑定書),158)を挙げる。
そこで検討するに,掲記の証拠によれば,次の事実が認められる。a
㈻大阪朝鮮学園に対する助成の拡充とその問題点等(乙30)には,「新規」の「1

経常費助成制度の創設」の「概要」欄に「初級・中

級・高級の各学校に就学する者の年令及びカリキュラムの内容が学校教育法1条に規定する学校とほぼ同様であることから,1条校と同内容の助成措置を講じる」と,「問題点等」欄に「各種学校で認可,学習指導要領違反(民族教育),会計基準未導入」等と記載されている。b
他方,平成3年12月11日決裁の大阪府私立専修学校専門課程振興補助金交付要綱の改正について(伺い)(乙31)の「(趣旨)」欄には補助の対象に外国人学校を追加するとの記載がある。また,「(新規に対象となりえる学校)」欄には,各種学校のうちカリキュラムが大学入学資格付与の基準を満たし,大学入学資格を認められた実績を有する学校や就学生徒の年齢が義務教育の修業年限と同一の学校が新規に対象になり得る学校との記載があり,朝鮮初・中・高級学校や大阪中華学校,大阪インターナショナルスクールが例示されている。そして,「(補助要件)」欄には,学校法人会計に準拠した会計処理を行っていることや一定の生徒数が在籍していること等が挙げられている。
さらに,平成5年3月19日決裁の大阪府要綱制定に係る伺い(乙32)により,大阪府国際化推進基本指針の方向性を踏まえ,外国人学校は設置者が学校法人であり,その教育活動が我が国社会における社会構成員としての教育をも実施しているという事実に着目した上,大阪府要綱(乙1)を制定し,補助金を交付することでよいかという伺いがなされた(前記5
c
ア参照)。

この間の事情につき,平成4年4月から平成7年5月まで被控訴人大阪府の私学課長であったE(甲157)は,朝鮮学校への助成につき,非1条校で実態的には高校教育と同じ役割を担っていた専修学校高等課程との助成格差が問題となる中,朝鮮学校への助成を考えるようになり(甲156),平成4年度大阪府議会の特別会計決算特別委員会において,朝鮮学校は,我が国社会の社会構成員として必要な教育を実施しているが,朝鮮語による授業,日本の検定教科書の不使用,教師が日本の教員免許と別の基準で採用されている点で1条校の要件を満たし得ないので各種学校の位置づけとなっていると述べた(甲107)。さらに,平成5年4月から平成10年3月まで被控訴人大阪府の私学課参事又は私学課長であったF(甲157)は,平成8年度の補助金引上げの理由について,朝鮮学校の教育内容を1条校と比較し,同等部分に対し補助すべきだという意見と,教科内容云々よりも民族教育そのものを尊重すべきだという意見など色々な意見があったことを前提として,結果的に,同世代の子供たちが学んでいる点に注目し助成を行うことにしたと述べている(甲158)。
上記事実によれば,大阪府要綱制定当時,1条校ではないが実態的に
は高校教育と同じ役割を担う各種学校についても助成の話が持ち上がり,朝鮮学校について言語や教科書,教員資格,民族教育の点で1条校の要件を満たし得ないことが問題とされた。しかし,朝鮮学校については,民族教育を行っている以外は1条校とさほどの差異はないことから(甲107),大阪府国際化推進基本指針の方向性も踏まえ,1条校に準じた教育活動が行われ,1条校に準じて助成の必要のあるものについては助成するものとして大阪府要綱が制定され,本件大阪府補助金が発足したものということができる。そうであるならば,同要綱は,広く外国人学校一般に助成を行うという趣旨ではなく,飽くまでも1条校に準じることを前提として,本件大阪府補助金が創設されたとみるのが自然である。
この点に関し,

Eは,1条校というのは学校総体をいい,本件大阪

府補助金の趣旨は朝鮮学校の教育活動の一部(1条校に準じた教育活動)に着目して助成しようということであった旨述べているようであり,Fは,「朝鮮学校を1条校と同じように考えるのではなく,一般的な各種学校とは違う外国人学校であるという立場から補助金を支給している」旨述べている(甲156,158)。しかし,

については,E発

言は,本件大阪府補助金の趣旨は,朝鮮学校における教育活動のうち1条校に類する部分に着目して助成しようとした点において,本件大阪府補助金が1条校に準ずることを前提とすることに符合する。

について

も,F発言は,朝鮮学校は1条校の要件を満たさない各種学校の扱いになるので本来なら補助金の対象外であるが,結果的に助成を行うこととしたという点において,一般的な各種学校とは違う外国人学校であると述べたものと考えられる。そして,その前提として,様々な意見があったことを紹介しているが,そこには,教科内容云々よりも民族教育そのものを尊重すべきだという意見のほかに,朝鮮学校の教育内容を1条校と比較し,同部分に対し助成すべきであるとの意見もあったというのである。この点において,本件大阪府補助金が1条校に準ずることを前提とすることと相容れないものではない。したがって,E発言もF発言も,上記判断を動かすものではない。同様に,A鑑定書において,大阪府要綱が,外国人学校において1条校に準じた教育活動が行われていることを前提として,1条校に準じて助成を行うために定められたものではないとの意見も,採用できない。
したがって,控訴人の上記主張は採用することができない。

控訴人は,

私立学校法5条が学校教育法14条(都道府県の教育委員

会等による設備・授業等の変更命令)の準用を除外し,その自主性を尊重していることからすれば,4要件は,私立学校の自主性を侵害する,

立の各種学校には学校教育法33条(教育課程)等が準用されていないから(同法134条2項),改正後の大阪府要綱2条5号(学習指導要領の準用)を認めるべきではない,

私立学校振興助成法5条が補助金等を減

額できる場合を列挙していることに照らせば,改正後の大阪府要綱2条5号は現行の教育法規の枠組みを崩すものである,

朝鮮学校には教育基本

法14条2項が適用されないから(学校教育法1条参照),特定の政治団体と人的・経済的関係のある外国人学校を補助金の交付対象から排除する改正後の大阪府要綱2条6号ないし8号は,行政権力による教育への過度の介入に当たると主張し,B意見書(甲166)には,これに沿うかのような部分がある。
しかし,

の主張については,大阪府要綱は,飽くまでも補助金の交付

に係る定めであって,外国人学校に4要件の遵守を一般的に求めているわけではない。そして,被控訴人大阪府が,権利性の認められない補助金の支給要件について,公共性の見地から一定の教育内容や政治的中立性等を支給要件に組み入れることには何ら不合理なところはない(朝鮮学校において民族特有の教育を施しているとしても,公共性の内容はそれに限られるものではない。)。したがって,4要件は,私立学校の自主性を侵害するものではない。

ないし

の各主張についても,同様に,大阪府要綱が

補助金の交付に係る定めであって,外国人学校に4要件の遵守を一般に求めているわけではないし,控訴人における教育内容を直接規律するものではないから,教育に不当に介入するものではない(なお,

の主張につい

ては,私立学校振興助成法5条の規定は,国の交付する補助金に関する定めであるし,準学校法人には準用されていない(同法16条)のであるから,改正後の大阪府要綱2条5号(学習指導要領の準用)が,教育法規の枠組を崩ことにはならない。)。したがって,B意見書はにわかに採用することができず,控訴人の上記各主張はいずれも採用することができない。」
同66頁15行目の「ウ」を「オ」と改める。
同67頁6行目の「いえない。」を「いえないし,学問の自由や私立学校の自主性(教育基本法2条柱書,8条)を侵害するものでもない。」と改め,13行目の末尾に改行して次のとおり加える。
「カ

控訴人は,本件大阪府不交付が裁量を逸脱しているかどうかの判断に当
たっては,

本件大阪府補助金が長期間にわたり交付され続け,控訴人も

その交付を前提に教育環境を整備してきたこと,

本件大阪府補助金は,

外国人学校一般に対する補助金制度として制度設計されているが,控訴人に対する補助金がその大半を占めていたことからすると,事実上控訴人に対する補助金として機能していること,

不交付がやむを得ないような事

情のないことも考慮されるべきであると主張する。
しかし,控訴人には同補助金について法的な権利を有するものではなく,本件大阪府補助金が長期間交付されていたとしても事実上のことであるから,交付が継続されたからといって,本件大阪府不交付の違法性を基礎付けることにはならないし(
あるともいえない

),不交付決定にやむを得ない事情が必要で

)。また,実際,各年度の本件大阪府補助金の多く

が控訴人に交付されていたようであるが,そうであるからといって,大阪府要綱の適用について控訴人に既得権益があることにはならないし,控訴人に別段の配慮をすべきものでもない(

)。控訴人の上記主張はいずれ

も採用することができない。」
同68頁10行目の「19条」を「13条」と訂正する。
同70頁19行目の末尾に「控訴人は,本件大阪市補助金の交付が単なる贈与ではない旨主張するが,上記主張が上記裁量を否定し,制約する理由とはなり得ないことは本件大阪府補助金について説示したところと同様である。」を加える。
同71頁2行目及び5行目の各「19条」をいずれも「13条」と訂正する。
同73頁6行目の「丙8,」の次に「12,」を加え,同行の末尾に改行して次のとおり加える。


控訴人は,被控訴人大阪市が平成24年3月8日に控訴人に交付した本件メモ(甲17

(原判決56頁))には,本件大阪府補助金の交

付要件とは異なる要件が記載されていたから,被控訴人大阪市は,同大阪府とは別個に補助金の交付要件を検討していた旨主張する。しかし,本件メモ
改正後の大阪府要綱2条
人の問題点に特
それぞれ符合し,被控訴人大阪府の要請
や問題意識とも一致するものであって

ないしエ,キ,サ,

シ(原判決49頁,53頁ないし54頁),本件メモの内容は,大阪府要綱の改正後の交付要件に沿ったものといえる。そうすると,本件メモの内容をもって,被控訴人大阪市が,同大阪府と別個に交付要件を検討していたということはできない。控訴人の上記主張は採用することができない。なお,本件大阪府補助金は交付対象とする外国人学校の範囲を幼稚園から高等学校に限定し,補助金の額は在籍する修学者数に応じて決定されていたが(大阪府要綱1条,甲130,137の1ないし11),本件大阪市補助金は交付対象を義務教育に準ずる教育を実施する各種学校とし,補助金の額も必要な教具・施設の整備及び学校の維持運営のために必要な経費の2分の1以下とされていた(大阪市要綱1項,4項)。しかし,本件大阪市補助金が,本件大阪府補助金の交付対象の一部のものを交付対象とし,同補助金と補助金の額の算定方法や対象とする経費が異なるとしても(証人G),本件大阪府補助金の補完としての意義が否定されるわけではない(証人G)。したがって,上記の差異をもって,本件大阪市補助金が本件大阪府補助金を補完するものであることを否定する事情であるとはいうことはできない。」同74頁4行目の末尾に改行して次のとおり加える。
「ウ

控訴人は,本件大阪市不交付が裁量を逸脱しているかどうかの判断に当
たっては,

本件大阪市補助金が長期間にわたり交付され続け,控訴人も

その交付を前提に教育環境を整備してきたこと,

本件大阪市補助金は,

外国人学校一般に対する補助金制度として制度設計されているが,控訴人に対する補助金がその大半を占めていたことからすると,事実上控訴人に対する補助金として機能していること,

不交付がやむを得ないような事

情のないことも考慮されるべきであると主張する。
しかし,控訴人の主張する事情によって,本件大阪市不交付が違法であることが根拠付けられるといえないことは,本件大阪府不交付について説示したところと同様である。控訴人の上記主張は採用することができない。」
同74頁5行目の「ウ」を「エ」と改め,17行目の「ところである。」の次に「控訴人は,大阪市要綱の申請書等の提出期限が死文化していたと主張するが,控訴人主張のように交付申請書や実績報告書の提出が遅れる傾向にあったとしても(甲130),それが本来予定された事務のあり方であるとはいえず,被控訴人大阪市は,控訴人が期限経過後に提出した申請書を控訴人の利益を慮って事実上受理する例が続いていたものといえるから,このような事情をもって,上記提出期限の定めが死文化していたなどとして,改正後の大阪市要項を適用することが信義則に反するとはいえない。」を,20行目の末尾に「なお,控訴人は,大阪市要綱が単なる内部細則ではなく,申請者の権利義務に関するものであるから,改正後の大阪市要項による不交付決定が信義則に反する旨主張するが,学校法人は,大阪市要綱に基づき本件大阪市補助金について何らかの権利を有することになるとはいえないから,改正後の大阪市要項に従った不交付決定が控訴人の権利義務に直接影響を与えるものではない。控訴人の上記主張は採用できない。」をそれぞれ加える。2当審における当事者の主張に対する判断
憲法,国際人権法違反の主張

憲法13条,26条違反
控訴人は,本件各不交付が,控訴人の設置運営する学校の生徒の学習権及び民族教育を受ける権利を侵害するもので憲法13条,26条に違反する違法なものであると主張する。しかし,本件各不交付は,本件大阪府申請及び本件大阪市申請が大阪府要綱及び大阪市要綱の定める交付要件を満たさないことから,本件大阪府補助金及び本件大阪市補助金を交付しないというにすぎず,控訴人の教育活動自体を規律し,制限を加えるものではない。
また,憲法13条は,個人の尊重と生命,自由,幸福追求権の尊重を定めているが,学校法人等の国や地方公共団体から補助金の交付を受ける権利や法的地位を具体的に基礎付けるものではない。さらに,憲法26条は教育を受ける権利を保障しているが,これは国が積極的に教育に関する諸施設を設けて国民の利用に供する責務を負うことを明らかにし,子どもに対する基礎的教育である普通教育の絶対的必要性に鑑み,親に対し,その子女に普通教育を受けさせる義務を課し,国が教育を提供するにつき有償としないことを規定したものであって,やはり学校法人等の国や地方公共団体から補助金の交付を受ける権利や法的地位を具体的に基礎付けるものではない。また,控訴人は,本件大阪府補助金及び本件大阪市補助金について,補助金の交付を受ける法的権利や補助金の交付申請権を有しないから,本件各不交付が,憲法13条や26条に基づく権利の保障を後退させるものではない。

憲法23条違反
控訴人は,改正後の大阪府要綱2条8号が,憲法23条により保障された私立学校である朝鮮学校の教師の教授の自由を侵害する旨主張する。しかし,本件各不交付が,控訴人の教育活動自体を規律し,制限を加えるものではないことは前記説示のとおりである。また,教師には,高等学校以下の普通教育の場においても,授業等の具体的内容及び方法についてある程度の裁量が認められるという意味において,教授の自由や私学教育の自由がそれぞれ限られた一定の範囲において認められるとしても,そのことが,直ちに,学校法人等の国や地方公共団体からの補助金の交付を受ける権利や法的地位を具体的に基礎付けるものではない。


憲法14条違反
控訴人は,本件各不交付が,朝鮮学校の設置運営者や通学する生徒,保護者という社会的身分により別異の取扱いをするものであり,控訴人と他の私立学校や各種学校との間には補助金について著しい格差が生じているとして,本件各不交付が憲法14条に違反する旨主張する。
しかし,憲法14条1項は,絶対的な平等を保障したものではなく,合理的な理由のない差別を禁止する趣旨のものである。合理的と認められる種々の事実関係の差異を理由としてその取扱いに区別を設けたとしても上記規定に違反しない。本件各不交付は,改正後の大阪府要綱2条8号,改正後の大阪市要綱2項に定める交付要件に該当しないことを理由とするものであり,朝鮮学校の設置運営者や通学する生徒,保護者という社会的身分により別異の取扱いをするものではない。そして,改正後の大阪府要綱2条,とりわけ同条8号(特定の政治団体の行事への不参加)に基づく本件大阪府不交付は,教育の振興及び私立学校としての公共性の観点からの交付・不交付の判断であって,被控訴人大阪府の有する裁量の範囲内のものというべきである。なお,控訴人は,上記別異の取扱いを正当化する事由の判断については,教育を受ける権利の重要性に鑑み,厳格でなければならいと主張する。しかし,前記説示したとおり,憲法26条も生徒や保護者が選択した各種学校の設置運営の主体が国や地方公共団体から補助金の交付を受けることを具体的に保障するものではなく,本件各不交付が,生徒の教育を受ける権利を侵害するものともいえない。生徒の教育を受ける権利の重要性を考慮しても上記判断を動かすものではないというべきである。したがって,本件各不交付は憲法14条に違反しない。

国際人権法違反
控訴人は,本件各不交付が社会権規約13条1項,2項に違反する旨主張し,同条1項には「この規約の締約国は,教育についてのすべての者の権利を認める。」,同条2項には「この規約の締結国は,1項の権利の完全な実現を達成するため,次のことを認める。」として,同項aにおいて初等教育の無償,bにおいて中等教育につきすべての適当な方法によるすべての者に対する機会を付与することが規定されている。
しかし,この条項は,締約国において,すべての者に対する教育への権利が,国の社会政策により保護されるに値するものであることを確認し,締約国がこの権利の実現に向けて積極的に政策を推進すべ政治的責任を負うことを宣言したものである。学校法人等に具体的な補助金に係る具体的な権利を付与すべきことを定めたものではない(社会権規約2条1項参照)。また,憲法26条が,社会権規約13条2項aを具現化することにより控訴人の補助金の交付を受ける権利や法的地位を具体的に基礎付けるものともいうこともできない。
なお,控訴人は,参政権のない在日朝鮮人も納税していることを理由に,控訴人に大阪府補助金及び大阪市補助金を交付しないことは許されないかのような主張をする(B意見書3,4頁)。しかし,租税は国がその経費一般に充てるための財力調達の目的をもって,法の定める一般的基準により,担税力に応じて均等に賦課する金銭的給付であって,各種の目的による補助金とは制度目的を異にする。納税者のなす拠出と補助金等の給付とは対価関係に立つものではないし,本件大阪府補助金や本件大阪市補助金が,すべての納税者に一般的に提供される公共サービスの性質を有するものではない。したがって,在日朝鮮人が納税しているとの事実は,本件各不交付の適否の判断に影響を及ぼすものではない。
控訴人は,本件各不交付が,社会権規約2条1項から導かれる後退禁止原則に違反すると主張するが,上記の規定が政治的責任を負うことを宣言したものであることは既に説示したとおりである。また,控訴人は,本件各不交付は,社会権規約2条2項,自由権規約26条に違反する旨主張するが,これらの規定も合理的な理由のない差別を禁止する趣旨のものであって,前記憲法14条違反の主張について説示したとおり,本件各不交付や改正後の大阪府要綱2条の定めは,人種,皮膚の色,言語,宗教,政治的意見その他の意見,国民的若しくは社会的出身,財産,出生その他の地位等(社会権規約2条2項,自由権規約26条)によって控訴人を差別するものではなく,教育の振興及び私立学校としての公共性の観点から被控訴人大阪府の有する合理的な裁量の範囲内にあると考えられるから,本件各不交付が上記各条項に違反するものではない。
この点に関し,人種差別撤廃条約2条2項には,「締約国は,状況により正当とされる場合には,特定の人種の集団又はこれに属する個人に対し人権及び基本的自由の十分かつ平等な享有を保障するため,社会的,経済的,文化的その他の分野において,当該人種の集団又は個人の適切な発展及び保護を確保するための特別かつ具体的な措置をとる。」と規定し,5条には,「第2条の定める基本的義務に従い,締約国は,特に次の権利(教育及び訓練についての権利。


)の享有に当たり,あらゆる形態

の人種差別を禁止し及び撤廃すること並びに人種,皮膚の色又は民族的若しくは種族的出身による差別ないしに,すべての者が法律の前に平等であるという権利を保障することを約束する。」と規定する。しかし,上記2条2項の規定は,締約国が当該権利の実現に向けた積極的施策を推進すべき政治的責任を負うことを定めたものであり,この規定から,直ちに,控訴人に本件大阪府補助金や本件大阪市補助金の交付を求め得る具体的権利や法的地位を付与するものではない。
子どもの権利条約3条も,児童に関する措置をとるに当たり,児童の最善の利益が主として考慮されること(1項),締約国が父母等児童について法的に責任を有する他の者の権利義務を考慮に入れて,児童の福祉に必要な保護及び養護を確保することを約束し,このため,すべての適当な立法上及び行政上の措置をとること(2項),締約国が児童の養護及び保護のための施設,役務の提供等について権限のある当局の設定した基準に適合することを確保すること(3項)を定めたものであり,この規定から,直ちに,控訴人に本件大阪府補助金や本件大阪市補助金の交付を求め得る具体的権利や法的地位が付与されているとはいえない。

以上によれば,控訴人の憲法,国際人権法違反の主張は理由がない。教育関係法規違反


教育基本法16条1項違反
控訴人は,大阪府要綱2条の改正及びこれに基づく本件各不交付が教育基本法16条1項に定める不当な介入に該当すると主張する。しかし,控訴人は,そもそも本件大阪府補助金及び本件大阪市補助金の交付を求め得る具体的権利や法的地位を有するものではないし,改正後の大阪府要綱の定めも,補助金の交付に係る定めであって,同要綱2条の規定を一般的に遵守するよう外国人学校を運営する学校法人等に求めているわけではない。そして,大阪府要綱2条の改正に不合理的なところはなく,大阪府知事の裁量の範囲内の行為であることは原判決を補正の上引用して説示したとおりである。イ
私立学校法1条違反
控訴人は,外国人学校において,国家指導者の肖像画を掲げること,当該国家を支持する在日団体と協力関係を維持することが私立学校の自主性に含まれるから,大阪府要綱2条の改正及びこれに基づく本件各不交付が,私立学校法1条の定める私立学校の自主性を重んじる義務に違反すると主張する。しかし,改正後の大阪府要綱2条各号の定めは,補助金の交付要件にすぎず,控訴人の教育活動自体を規律し,制限を加えるものではない。ちなみに,本件大阪府補助金や本件大阪市補助金の交付を受けない外国人学校においては4要件に拘束されることなく,その教育内容を原則として自由に定めることができるのである。したがって,大阪府要綱の改正や本件各不交付が私立学校法1条に違反するものとはいえない。


教育基本法14条2項違反
控訴人は,改正後の大阪府要綱2条6号ないし8号が政治的中立性を理由としながら,政党に該当しない朝鮮総聯と関係があれば補助金交付の対象から除外し,他方で政党を規制対象から除外しており,政党と関係のある学校を優遇する結果を招いているとして,上記各号及びこれに基づく本件各不交付は教育基本法14条2項(政治活動の禁止)に違反すると主張する。しかし,改正後の大阪府要綱2条6号ないし8号の定めは,飽くまでも補助金の交付要件にすぎず,控訴人に対し,1条校と同様の政治的中立性を求めるものではない。したがって,補助金交付の対象となるべき私立学校に一定範囲で政治的中立性を要求することに不合理なところはなく,教育基本法14条2項に違反するものといえない。そして,代議制民主主義における政党の役割に鑑みれば,補助金の交付要件として,学校法人等が一線を画すべき政治団体から政党を除外することにも理由があり,大阪府知事の裁量の範囲内にあるといえる。したがって,上記の補助金交付対象の定めが教育基本法14条2項に違反し,裁量権の濫用ということはできない。

以上によれば,控訴人の教育関係法規違反の主張は理由がない。
大阪府行政手続条令違反


控訴人は,本件大阪府不交付は行政処分であるとして,これが大阪府行政
手続条例5条(審査基準)及び8条(理由の提示)に違反する旨主張する。しかし,本件大阪府不交付が行政処分に該当しないことは原判決を補正の上引用して説示したとおりである。控訴人の主張は前提を欠くものであって,失当である。

控訴人は,上記不交付及びその一連の経緯は行政指導に当たるところ,被控訴人大阪府の担当職員において,朝鮮学校の生徒が迎春公演に参加したことが改正後の大阪府要綱2条8号に該当するかどうかの確認を行う際,参加事業の主催者が問題となることを説明しなかった,そのため,D校長は迎春行事の主催者が北朝鮮であり「特定の政治団体」に該当しないことは明らかであると考えて,参加事業に関する資料を提出しなかった,本件大阪府不交付は上記一連の経緯(行政指導)の下でされたから,大阪府行政手続条例30条1,2項に違反すると主張する。
確かに,大阪府行政手続条例30条1項には,行政指導が当該機関の任務又は所掌事務の範囲を逸脱してはならず,行政指導の内容が相手方の任意の協力によって実現されるべきことを定め,同条2項には,行政指導に従わなかったことを理由に不利益な取扱いをしてはならないことを定めている。しかし,仮に控訴人主張の事務が行政指導に該当するとしても,被控訴人大阪府の担当職員が,改正後の大阪府要綱2条8号の要件充足のための資料を任意に提出するように求めたことは,上記条例30条1項に違反するものではない。また,本件大阪府不交付は,迎春公演の参加について特定の政治団体の主催する事業への参加に該当しないこと(改正後の大阪府要綱2条8号)が確認できなかったことによるものであり,控訴人が行政指導に従わなかったことを理由とするものではないから,上記条例30条2項にも違反しない。ウ
以上によれば,控訴人の大阪府行政手続条例違反の主張は理由がない。大阪市行政手続条例違反


控訴人は,本件大阪市不交付が行政処分であるとして,大阪市行政手続条
例5条(審査基準)及び8条(理由の提示)に違反する旨主張する。しかし,本件大阪市不交付は行政処分に該当しないから,申請により求められた許認可等に係る大阪市行政手続条例5条及び8条違反に係る主張が失当であることは,大阪府行政手続条例違反について説示したところと同様である。イ
控訴人は,被控訴人大阪市が本件大阪市申請後,適切な情報提供を提供するなどの行政指導をすることを怠り,本件大阪市補助金の交付要件の改正を予定していることを伝えず,あるいは,その交付要件に本件大阪府補助金が交付されていることが加わるのに,改正後の大阪府要綱の交付対象の定めと異なる内容の本件メモを交付するなど誤った情報提供を行ったとして,これらの行為が大阪市行政手続条例30条に違反すると主張する。しかし,仮に控訴人主張の事務が行政指導に該当するとしても,被控訴人大阪市は,平成24年3月8日,控訴人に対し,本件大阪市補助金の交付要件を被控訴人大阪府の交付要件に合わせることとしたこと,その際,当時被控訴人大阪市が把握していた本件大阪府補助金の交付対象要件を記載した本件メモを控訴人に交付したこと,同メモの内容が改正後の大阪府要綱の交付対象要件に沿うものであり,その交付が誤った情報提供でないことは原判決を補正の上引用して説示したとおりである。
また,控訴人は,本件大阪市不交付が侵害行政的なものであるから同条例2条5号(不利益処分)に係る手続に準じた手続が必要であったと主張する。しかし,控訴人は,本件大阪市補助金の交付を受け得る具体的権利や法的地位を有するものではないから,本件大阪市不交付は,控訴人の権利利益を侵害するものとはいえず,不利益処分(同条例2条5号)に準ずるものともいえない。

以上によれば,控訴人の大阪市行政手続条例違反の主張は理由がない。大阪府要綱改正に係る裁量の逸脱・濫用


控訴人は,大阪府要綱の改正が,同要綱や本件大阪府補助金の根拠となる私立学校振興助成法の趣旨・目的に反すると主張し,本件大阪府補助金が1条校に準じて行うべき補助ではないこと,大阪府要綱の改正が学校と特定の政治団体との関係を理由に交付要件を厳格化するものであり,私立学校振興助成法16条により準学校法人に準用される同法12条,12条の2,13条の定めに比べて過度の規制となっていることを指摘する。しかし,本件大阪府補助金が(外国人学校の)教育条件の維持向上及び生徒に係る修学上の経済的負担の軽減を図るもの(大阪府要綱1条)であったとしても,その目的と1条校に準じた教育活動が行われている学校に対し,1条校に準じて助成の措置を行うこととは矛盾するものではない。また,控訴人指摘の私立学校振興助成法12条(助成を受ける学校法人に対する質問・検査等,収容定員を超える入学者についての是正命令,不適当な予算についての変更の勧告,役員解職の勧告),12条の2(上記是正命令についての手続),13条(上記勧告についての手続)は,特定の不適切な事態に対する所轄庁の権限を定めたものであり,これらの規定は,学校法人等が交付を求める具体的権利や法的地位を有さない補助金の交付要件を定める合理的な裁量権の行使を制限し,禁止するものではない。控訴人は,大阪府要綱の改正が北朝鮮の拉致問題に対する報復制裁という不正な動機によるものであると主張する。
そこで検討するに,認定事実(引用の原判決第3,5

及び証拠(甲

20,32(枝番を含む),乙27)によれば,次の事実が認められる。a
大阪府知事(当時)Hは,平成22年3月3日から同月23日にかけて,報道番組において「北朝鮮という国と暴力団というのは基本的には一緒だという風に思っていますから。」「暴力団が経営している学校に関して,助成とか打ってたら府民の皆さん文句言わないですかね。」「不法な事をやっている北朝鮮という国家と学校が,どういう関係を有しているかについてはきちんと詳細に確認します。」「もうだから拉致被害者返してくれと‥。」「朝鮮学校の子どもたちを泣かせたくないのであれば,もうちょっと朝鮮本国もね,北朝鮮本国もしっかりしてくれと‥。」等と発言した。

b
被控訴人大阪府の設置したWGは,控訴人の運営する学校の教育活動を調査し,平成22年9月22日,調査結果として提言をとりまとめた。WGの確認及び提言は,学習指導要領との対比として「学習指導要領に示された教科,特別活動を概ね実施」「必履修教科である家庭科が開設されていない」「総合的な学習の時間が開設されていない」「ホームルーム活動が実施されていない」「学習指導要領上の最低必要要件である「74単位」を上回る「90単位」を設定」「日本語版の年間授業計画(シラバス)が作成されていない」とされ,専修学校設置基準との対比として「文部科学省の専門家会議が判断基準とした専修学校の設置基準を満たしている」とされ,語学教育及び民族教育について「日本の教育でも,参考にできる点がある」などとされ,民族教育については「民族教育を通じて,大阪とアジアの架け橋となりうる,グローバルな人材の育成が期待できる」等というものであった。
c
大阪府議会は,平成23年12月21日,本件大阪府補助金に係る補正予算案につき,朝鮮第四初級学校1校分の補助金の補正予算案を可決するとともに,引用の原判決第3,5
頁)の

から

イ(原判決48頁ないし49

までの各項目の厳正な対応を求める旨の附帯決議をした。

このような経緯を踏まえると,大阪府知事(当時)の上記aの発言は,平成22年初頭から朝鮮高級学校が就学支援金の交付対象とされること等に疑問が呈される中(前記認定事実

ア(原判決47頁ないし48頁))

でされたものであるが,翌平成23年3月25日,結果的に朝鮮高級学校を除く(控訴人が,この部分については申請しなかったことによる。)9校につき,合計8724万5000円の本件大阪府補助金が控訴人に交付されていることからすると(前記認定事実

コ(原判決52頁)),これ

が北朝鮮への報復制裁の動機を示すものであったということはできない。また,上記bの提言自体は,朝鮮学校と学習指導要領との関係や教育内容の実情を客観的に示したものであって,この内容から,本件大阪府補助金の不交付の理由が北朝鮮に対する報復制裁であると認めることもできない。さらに,cの附帯決議は,平成22年以降,朝鮮学校の政治的中立性等に疑問が抱かれるようになったため,被控訴人大阪府が上記4項目について控訴人にかねて要請していたことを踏まえ(前記認定事実

イ(原判決4

8頁ないし49頁)),本件大阪府補助金の補正予算案の可決に伴い決議されたものである。そうすると,上記の附帯決議は,補助金交付について適正化を求めるものとみることができ,上記附帯決議から,大阪府要綱の改正が,北朝鮮に対する報復制裁を動機とするものとはいうことはできない。したがって,控訴人の前記主張は採用することができない。

控訴人は,準学校法人についても自主性が尊重されるから,私立学校法64条1,5項により準用される同法5条,6条,8条,25条ないし63条や私立学校振興助成法12条,12条の2,13条を超えた過度の規制を課すことは許されない旨主張する。
しかし,私立学校法5条(学校教育法14条(設備・授業等の変更命令)の不適用),6条(所轄庁への報告書の提出),8条(設置廃止等の認可及び学校閉鎖命令の際の私立学校審議会等への諮問),25条ないし63条(学校法人に関する規定。設立,管理,解散,助成ないし監督を含む)は,本件大阪府補助金の交付,不交付とは全く別の事項の定めである。そして,既に説示したとおり,改正後の大阪府要綱2条各号の定めは,飽くまでも補助金の交付要件に過ぎず,控訴人の教育活動自体を規律し,制限を加えるものではない。私立学校法59条(助成)も本件大阪府補助金の交付を求め得る具体的権利や法的地位を基礎付けるものではないことは既に説示したとおりである。さらに,本件大阪府補助金の交付対象の定めが,私立学校振興助成法12条,12条の2,13条の規定が本件大阪府補助金の支給要件を定める合理的な裁量権の行使を制限し,禁止するものとはいえないことも既に説示したとおりである。
したがって,改正後の大阪府要綱2条の定めが,上記各条項を超える過度の規制とはいうことはできない。
控訴人は,大阪府要綱の改正が控訴人に対する補助金支給を停止するために控訴人だけに課された特別の要件であり,法律の規制を超えて控訴人の教育への自由,生徒等の学習権等を侵害するものであると主張する。そこで検討するに,証拠(甲109,110,乙27,証人I)によれば,

大阪府知事(当時)Hは,平成23年9月定例会教育常任委員会

において,朝鮮学校への補助金交付について厳しい態度をとる議員の質問に対し,4要件は「朝鮮学校にだけ特別に付加したわけですよね」「特別に朝鮮学校に付加した要件ですから,(中略),補助金支給の要件というよりも,補助金ストップの要件というのが正式なしつらえなのかな」等と述べ,

大阪府私学・大学課長Iは「拉致問題も含めましてさまざまな
議論がある中,府民の理解を得るという観点から,国や他府県にない大阪府独自の4つの要件を設けたものでございます。」等と述べていることが認められる。
しかし,上記発言は,朝鮮学校を取り巻く環境の中で外国人学校の政治的中立性が問題となる中,本件大阪府補助金の創設時の議論に立ち返り,朝鮮学校も含めた外国人学校助成のための補助金の運用について府民や議員等の理解を得られる形で設けられた4要件について説明したものであり,これを明文化したのが大阪府要綱の改正である。そして,上記大阪府知事等の府議会における発言は,4要件が朝鮮学校に特化したかのようであるが,それは,当時,大阪府議会等で現実に問題視されていたのが朝鮮学校だけであったことから,結果的に朝鮮学校に対する補助金交付の是非について焦点が当てられたものと評価できる。したがって,上記発言から,大阪府要綱の改正が控訴人だけに設定された特別の要件であるとみることはできない。
さらに,控訴人は,大阪府要綱の改正が過度の規制かどうかの判断には,私立学校振興助成法5条,6条の趣旨を考慮すべきである旨も主張する。しかし,上記各条項は,同法4条1項の規定による補助金を減額ないし不交付とできる旨の規定であるが,そこでいう補助金は国が同法施行令によって定められた経常経費の範囲や額及び補助金の額の算定方法に基づいて補助するものであって,本件大阪府補助金のように,補助に係る具体的な要件・効果について法規による定めがないものとは性質を異にする。したがって,大阪府要綱の改正が裁量権を逸脱する過度の規制かどうかの判断において同法5条,6条の規定を考慮しなければならないものではない。ウ
控訴人は,大阪府要綱,大阪市要綱は,先例として確立した裁量基準であり,控訴人らは約18年間にわたりこれを遵守してきたから,経過措置等を設けることもなく,これを控訴人に不利益に改正することは信義則に反する旨主張する。
しかし,大阪府要綱及び大阪市要綱は,いずれも内部的な手続細則である。大阪府要綱の交付対象の定めは,準拠すべき会計処理,支出すべき一定の経費,一定以上の生徒数や修学年齢に相応した教育(2条)等の,包括的な条項のほか,一般的な補助金の不交付・減額の対象が掲げられ(8条),大阪市要綱の交付対象の定めも,大阪市内に各種学校を設置する学校法人(2項)という一般的なものに止まる。そうすると,上記各要綱の内容は将来にわたり継続的に補助金を交付するための準則を確定的に示すものとはいい難く,控訴人が継続的に本件大阪府補助金及び本件大阪市補助金の交付を受けていたとしても事実上のものに止まり,控訴人と被控訴人らとの間に,先例として確立した準則に基づく関係が成立していたとはいい難い。また,被控訴人大阪府は,平成22年3月12日には,前記のとおり4要件に相当する4項目の遵守について控訴人に要請し,控訴人は,上記要請が満たされなければ本件大阪府補助金の交付が受けられないことを認識していた(引用の原判決第3,5

イ(原判決48頁ないし49頁)。なお,控訴理由書

18

頁)。被控訴人大阪府は,平成23年3月25日,平成22年度分の本件大阪府補助金8724万5000円を交付し,その後,大阪府要綱を改正したのは平成24年3月7日になってからであるから,その改正が不意打ち的にされたものということもできない。

控訴人は,大阪府要綱の改正によって外国人学校に特定の政治団体との関係に関する規定が設けられたのに,大阪府私立専修学校高等課程経常費補助金交付要綱(甲165)にはそのような規定がないとして,上記大阪府要綱の改正は平等原則に反する旨主張する。しかし,私立専修学校高等課程においても,政治的中立性の要請はあり,そこに改正後の大阪府要綱2条6号ないし9号所定の政治的中立に反する事態が生じれば,同要綱8条8号(教育条件又は管理運営が著しく適性を欠いているものには補助金を不交付又は減額交付とする旨の規定。)により補助金が不交付又は減額となると考えられるから,文言の有無のみから改正後の大阪府要綱2条6号ないし9号に係る改正が平等原則に反することにはならない。

控訴人は,改正後の大阪府要綱2条6ないし9号は,教育機関として欠くべからざる要件を定めるものとはいえず,これらを満たさないことを理由に補助金が不交付とされるのは比例原則に違反する旨主張する。しかし,本件大阪府補助金は,1条校に準じた教育活動が行われていることを実質的要件とするものであり,そのような要件を充たすというために,教育機関に政治的中立性を求めたとしても(教育基本法14条2項,学校教育法1条参照),不合理なところはないのは既に説示したとおりである。したがって,改正後の大阪府要綱の定めは比例原則に違反するものではない。


控訴人は,大阪府要綱の改正における判断過程は合理性を欠く旨主張し,その理由として

改正後の大阪府要綱2条6号において,特定の政治団体を,

公安調査庁が公表する直近の「内外情勢の回顧と展望」において調査等の対象となっている団体(政党を除く)と定義していることが,調査結果の目的外使用として破壊活動防止法3条1項(1条,2条)に違反し,教育基本法14条2項とも矛盾している,

調査の対象は公安調査庁の判断により一方

的に決定されるばかりか,公安調査庁の調査自体が破壊活動防止法の1条,27条に違反する,

公安調査庁の調査対象とされることは当該対象の悪質

性を意味しないし,「内外情勢の回顧と展望」の記載自体信頼性に乏しいなどと指摘する。
しかし,

については,代議制民主主義における政党の役割に鑑み,補

助金交付要件として,学校法人等が一線を画すべき政治団体から政党を除外することに不合理なところはない。また,改正後の大阪府要綱2条6号ないし8号は,公安調査庁が公表する直近の「内外情勢の回顧と展望」において調査の対象となった団体との関係を要件として採用したものであり,当該団体に対する調査結果自体を利用するものではないから,目的外使用には当たらないというべきである。
次に,

については,ある団体が公安調査庁の調査対象となることにつ

いて学校法人等に告知,聴聞の機会がないとしても,その団体との関係については意見を述べたり資料を提出することなどが可能であるし,公安調査庁は公安調査庁設置法により設置された国家機関であり(引用の原判決一定の調査・分析能力を備えた組
織であると考えられるから,その調査対象となった団体と学校法人の関係を補助金交付対象の要件として考慮することが不相当であるとはいえない。控訴人は,公安委員会の調査の公正さや信頼性を否定する証拠として書籍(甲171ないし173)を提出するが,上記判断を動かすものではない。公安調査庁の調査対象とされること自体は当該対象の悪
質性を意味しないとしても,その団体と学校法人の関係を補助金交付対象の要件として考慮することが不相当であるとはいえないことは前記説示したとおりである。また,「内外情勢の回顧と展望」の記載内容(乙4)は,調査自体の信頼性を損なうものとはいえない。

以上によれば,控訴人の大阪府要綱改正に係る裁量の逸脱・濫用の各主張はいずれも採用できない。

改正後の大阪府要綱2条8号(特定の政治団体が主催する行事への不参加)の要件がないことを理由とする本件各不交付の誤り(適用違法)ア
控訴人は,大阪府知事は,学校法人から要件確認申立書(乙2の様式第1号の3)の提出を受ければ,要件を満たさない具体的理由が提示されない限り,要件は充足されているものと取り扱わなければならず(改正後の大阪府要綱5条3号),そうでなければ,同要綱2条8号が消極的事実の証明という不可能を申請者に強いるものとなってしまうと主張し,さらに,同号の要件の立証責任が被控訴人大阪府にあることの理由として,平成23年9月期定例会教育常任委員会において,大阪府知事(当時)が「補助金ストップの要件」と発言したこと(甲109)を挙げる。
しかし,上記5条3号は,交付申請に当たり提出すべき書類を定めたものであり,同号の定める要件確認申立書B(様式第1号の3。乙2)は,改正後の大阪府要綱2条各号の規定が不動文字で記載されているだけの文書であって,その提出をもって要件が充足されたものとする趣旨のものとは認め難い。そして,同要綱2条の柱書には,「補助金の交付対象とする学校法人又はその設置する外国人学校は,次の各号のすべてに該当するものとする。」と規定している。これを受けて,同様式の柱書部分には「(要綱2条各号の)いずれかに該当しないことになった場合には,直ちにその旨を届け出ます。」「要綱2条各号のいずれかの該当の有無等に関して調査が必要となった場合には,大阪府が求める必要な情報又は資料を遅滞なく提出するとともに,その調査に協力し,調査の結果,該当しないことが判明した場合には,(大阪府補助金交付)規則第15条に基づき,補助金の交付の決定の全部又は一部を取り消されても,何ら異議の申し立てを行いません。」と明記されているのである。これによれば,改正後の大阪府要綱2条8号は,補助金の交付を申請する学校法人の側で証明すべき補助金交付のための要件であることは明らかである。なお,同号には,特定の政治団体が主催する行事に「参加していないこと。」と消極的事実が要件とされているが,学校の教育活動について多数の資料を有している学校法人において,周辺事情等を明らかにすることによって,その証明は十分可能であるから,その要件は不相当なものとはいえない。また,大阪府知事(当時)が,府議会において「補助金ストップの要件というのが正式なしつらえなのかな」と述べたとしても(甲109),議会における一連のやりとりの中での説明の一部であって,立証責任に関わる上記の判断を動かすものではない。

控訴人は,迎春公演は北朝鮮が主催する行事であって,特定の政治団体が主催する行事ではないし,北朝鮮への訪問には朝鮮総聯を経由して出入国手続をする必要があるから,生徒の北朝鮮訪問に朝鮮総聯が関与するとしても,これを特定の政治団体が主催する行事への参加と解することは現実的ではないと主張し,さらに,迎春公演への参加は生徒や保護者が任意に行ったものであるから,学校の教育活動としての参加にも該当しない旨主張する。
しかし,当時,控訴人と被控訴人大阪府の間においては,特定の政治団体との関係とは,控訴人と朝鮮総聯の関係を指すことは控訴人にとっても明らかであった。そのような中,控訴人は,被控訴人大阪府から迎春公演の主催者を確認することのできる案内文書(参加者募集のチラシ等)の資料の提出を求められたのに,これに応じなかったというのである(甲71,乙27(6頁ないし8頁)証人I,控訴人代表者)。すなわち,迎春公演自体の主催者が北朝鮮であるかどうかという説明(甲71)自体は,改正後の大阪府要綱の下で交付対象要件の該当性を判断するには,さまで重要ではない。被控訴人大阪府としては,控訴人から資料が提出されなかったために,上記要件の該当性が確認できなかったこと(甲13)が重要なのである。この点に関し,控訴人は,北朝鮮への訪問には朝鮮総聯を経由して出入国手続をする必要があると主張するが,本件大阪府不交付に当たって問題とされたのは,そのような渡航に必要な事務的な手続についてではなく,改正後の大阪府要綱2条8号の要件の該当性を判断するための資料が提出されなかったことであることは明らかであり,上記主張は失当である。
なお,控訴人は,迎春公演への参加は生徒や保護者が任意に行ったもので学校の教育活動としての参加に該当しない旨主張する。しかし,控訴人が,被控訴人大阪府に対し,迎春公演に関する具体的な事情を説明した形跡はない。実際には,学校内で迎春公演の参加者のオーディションが行われ,参加の申込みは教師を通じて行われ,約1か月にわたる北朝鮮訪問期間中,生徒は出席扱いとされ,引率する教師も出勤扱いとされたというのであるから(甲71,83,証人J,控訴人代表者),これをもって,学校の教育活動の一環としてされたことは優に推認できる。

以上によれば,本件各不交付における改正後の大阪府要綱2条8号の要件(特定の政治団体が主催する行事への不参加)がないとの判断に誤りがあるとの控訴人の主張は理由がない。
支給法との比較


控訴人は,地方自治体の各種学校に対する助成に係る制度の改廃や運用
は,教育法体系全体の目的・趣旨の範囲内のものでなくてはならず,これを逸脱し裁量権を濫用した本件大阪府要綱,大阪市要綱の改正は違法であり,このことは,支給法の目的や委任の趣旨を逸脱した文部科学大臣による同法施行規則の改正が違法・無効であること(大阪地方裁判所平成29年7月28日判決。以下「別件判決」という。)と同様である旨主張する。イ
そこで検討するに,支給法は,4条において私立高等学校等に在学する
生徒等に対し高等学校等就学支援金(以下「就学支援金」という。)を支給する旨,2条3項において私立高等学校等を公立高等学校以外の高等学校等と定義し,同条1項5号において高等学校等について,専修学校及び各種学校(以下「各種学校等」という。)のうち文部科学省令で定めるものがこれに該当する旨を規定している。そして,支給法施行令(平成25年文部科学省令第13号)1条は支給法2条1項5号に掲げる文部科学省令に定める各種学校等について同条1項1号及び2号イ,ロ及びハ(文部科学大臣が定めるところにより,同大臣が指定したもの)に掲げるものと定めていたが,平成25年文部科学省令第3号により,支給法施行令1条1項2号ハが削除された。そして,別件判決の事案は,原告である準学校法人が,上記指定を申請したが,文部科学大臣が指定しない処分をしたので,その取消等を求めた事案であり,支給法施行令1条1項2号ハの削除の違法性や原告の運営する学校が平成22年11月5日文部科学大臣決定の定める上記1条1項2号ハの指定の基準に適合するかなどが問題となったものである(甲167)。

これによれば,支給法は高等学校等に在学する生徒等に就学支援金を支
給する旨を定め,高等学校等に該当する各種学校等の定めを文部科学省令に委任し,その省令が,高等学校等に該当する各種学校等の一部について文部科学大臣が指定するという枠組みとなっている。これに対し,本件大阪府補助金や本件大阪市補助金は,そもそも学校法人等が補助金の支給を受けることにつき根拠となる法令の存在しない贈与の性質を持つものであるから,支援金とはその性質を異にすることは明らかである。したがって,文部科学省や文部科学大臣の支給法2条1項5号に係る各種学校等を定めるについての裁量と大阪府要綱や大阪市要綱による交付対象を定めるについての裁量とではその程度や範囲について同様に考えることはできない。エ
以上によれば,支給法の委任に基づく省令の改廃に係る裁量についての前記イの判断は,大阪府要綱及び大阪市要綱の改正等に係る裁量に対する判断を動かすものではない。控訴人の前記主張は失当である。
控訴人は,その他縷々主張するが,いずれも上記判断を動かすものではな
い。
3
以上によれば,本件各取消等請求に係る訴えにつき,本件各不交付及び本件
各補助金の交付決定はいずれも抗告訴訟の対象となる処分には該当せず,不適法であるからいずれも却下すべきであり,控訴人のその余の請求はいずれも理由がないから棄却すべきである。よって,原判決は相当であり,本件控訴はいずれも理由がないからこれを棄却することとし,主文のとおり判決する。大阪高等裁判所第9民事部
裁判長裁判官

松田
裁判官

檜皮高弘橋綾子
裁判官

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