判例検索β > 平成29年(ネ)第10079号
職務発明対価不足額請求控訴事件 特許権 民事訴訟
事件番号平成29(ネ)10079
事件名職務発明対価不足額請求控訴事件
裁判年月日平成30年3月19日
法廷名知的財産高等裁判所
原審裁判所名東京地方裁判所
原審事件番号平成25(ワ)25017
裁判要旨判決年月日 平成30 年3月19日 担
当 知的財産高等裁判所 第4部

事 件 番 号 平成29年(ネ)10079号
○ 自己実施の場合における職務発明の対価は,当該発明の実施品の期間売上高に,
超過売上率及び仮想実施料率を乗じて,使用者等が受けるべき利益の額を求め,これに
より求められる利益の額から,使用者等が貢献した程度に応じた額を控除して,発明者
に支払われるべき相当の対価の額を求めるべきであり,当該実施品に複数の特許が使用
されているときは,さらに,当該特許の寄与率を乗じて求めることとなる。
(関連条文)平成16年法第79号による改正前の特許法35条
(関連する権利番号等)特許第3875247号,第4357508号等
判 決 要 旨
本件は,一審 被告の従業員であった 一審原告が,発明AないしHの発明者又は共同発明
者の一人であり,各発明に係る特許を受ける権利を被告に承継させたとして,各特許を保
有する一審被告に対し,平成16年法第79号による改正前の 特許法35条3項に基づく
相当の対価を求めた事案である。
原判決は,本件発明Aに係る相当の対価につき,認定した独占の利益の額,被告の貢献
度,共同発明者間における原告の貢献度等により算出した不足額の限度で 認めて,一審原
告の請求を一部認容したところ,双方がこれを不服として控訴した。
本判決は,概要以下のとおり判示して, 一審被告の控訴に基づき原判決を変更し ,一審
原告の控訴は棄却した。
1 特許を受ける権利の承継の対価の算定に当たって考慮すべき 35条4項所定の「そ
の発明により使用者等が受けるべき利益」とは,使用者等が,従業者等から特許を受ける
権利を承継して特許を受けた場合に特許発明の実施を排他的に独占することによって得ら
れる利益である。
従業者が,職務発明について使用者に特許を受ける権利を承継させ,使用者において,
当該特許を自己実施して第三者に実施許諾をしていない場合,「その発明により使用者等
が受けるべき利益」とは,当該発明の実施品の売上高のうち,同発明につき第三者の実施
を排除して独占的に実施することにより得られたと認められる利益の額であり,法定の通
常実施権に基づく実施を超える部分(超過実施分)について,第三者に発明の実施を許諾
した場合に得られる実施料率(仮想実施料率)を乗じて算定するのが相当である。超過実
施分については,現に使用者等が受け た利益の額を参考にして,将来受けるであろう利益
の額を予測することも許され,発明の実施品の売上高に超過売上率を乗じることにより求
められる。当該実施品に複数の特許が使用されているときは,さらに,当該特許の寄与率
を乗じて求めることとなる。
同条4項によって 考慮されるべき「使用者等が貢献した程度」には,「その発明がされ
るについて」貢献した程度のほか,使用者等がその発明により利益を受けるについて貢献
-1-
した程度も含まれ ,その発明がされるについての貢献度のほか,その発明を出願し権利化
し,さらに特許を維持するについての貢献度 ,実施品の売上げを得る原因となった販売体
制についての貢献度,発明者への処遇その他諸般の事情が含まれる。
以上のとおり,自己実施の場合における職務発明の対価は,当該発明の実施品の期間売
上高に,超過売上率及び仮想実施料率を乗じて,使用者等が受けるべき利益の額を求め,
これにより求められる利益の額から,使用者等が貢献した程度に応じた額 を控除して,発
明者に支払われるべき相当の対価の額を求める。 当該実施品に複数の特許が使用されてい
るときは,さらに,当該特許の寄与率を乗じて求めることとなる。また,当該発明が共同
発明の場合は,上記により求められる額に,共同発明者間における原告の貢献度を乗じて,
原告に支払われるべき相当の対価の額を求める。
2 本件発明Aについて
一審原告は,「LE-Cap」は全てA実施品であると主張するが,被告開示品はA実
施品であるとは認められない。したがって,一審被告がA実施品の売上げであると認める
限度,すなわち,当事者間に争いのない限度でのみ,A実施品の売上げを認定せざるを得
ない。
また,A非実施品は,本件発明Aの特徴的部分を備えているといえない以上,同発明と
の関係では代替技術と位置付けるのが相当であり,これについて,本件特許Aによる独占
の効果が事実上及んでいるとみることはできない。
A実施品の期間売上高のうち,控訴審における口頭弁論終結時までの分は証拠上明らか
である。平成29年12月から平成30年3月までの期間の1か月当たりのA実施品の売
上高については,平成29年4月から同年11月までの期間の1か月当たりのA実施品の
売上高と同程度と推認される。平成30年度以降のA実施品の売上高については,平成2
9年4月から同年11月までの期間の売上高を前提に,同年度の売上高を見積もると,原
判決での見積額を大きく下回ること等の事情を考慮してこれを算定するのが相当である。
これに,超過売上率(①開発された当初から量産化が進んだ第Ⅰ期は40%,②A非実
施品が販売され,A実施品と併用された第Ⅱ期は20%,③技術の陳腐化に加え,LED
光源そのものの向上,光拡散レンズの性能向上などにより光拡散レンズ数の使用数が必然
的に減少する第Ⅲ期は10%),仮想実施料率(第Ⅰ期は3%,第Ⅱ期は1.5%,第Ⅲ
期は0.5%),共同発明者の貢献度(5%),共同発明者間における一審原告の貢献度
(70%)を乗じて算定される本件発明Aに係る相当の対価(不足額)は,合計1202
万6841円である。
-2-
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平成30年3月19日判決言渡
平成29年(ネ)第10079号

職務発明対価不足額請求控訴事件

(原審・東京地方裁判所平成25年(ワ)第25017号)
口頭弁論終結日

平成29年12月19日
判決
控訴人兼被控訴人

X
(以下「一審原告」という。)

同訴訟代理人弁護士

子晃島津守梅津有栗田祐福
被控訴人兼控訴人

金田恵紀太郎太
株式会社エンプラス
(以下「一審被告」という。)

同訴訟代理人弁護士

永島孝明安國忠彦朝吹英太長主谷川靖文1
一審被告の本件控訴に基づき,原判決を次のとおり変更する。

(1)

一審被告は,
一審原告に対し,
1202万6841円及びこれ

に対する平成21年8月8日から支払済みまで年5分の割合によ
る金員を支払え。

(2)

一審原告のその余の請求を棄却する。

2
一審原告の控訴を棄却する。

3
訴訟費用は,第1,2審を通じてこれを10分し,その1を一
審被告の負担とし,その余を一審原告の負担とする。

4
この判決は,第1項(1)に限り,仮に執行することができる。
事実及び理由

第1
1
控訴の趣旨
一審原告の控訴の趣旨

(1)

原判決を次のとおり変更する。

(2)

一審被告は,
一審原告に対し,
1億円及びこれに対する平成21年8月8日

から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
(3)
2
訴訟費用は,第1,2審を通じて一審被告の負担とする。
一審被告の控訴の趣旨

(1)

原判決中,一審被告敗訴部分を取り消す。

(2)

一審原告の請求を棄却する。

(3)

訴訟費用は,第1,2審を通じて一審原告の負担とする。

第2
1
事案の概要(略称は,原判決に従う。

本件は,一審被告の従業員であった一審原告が,本件各特許に関し,一審原
告は,本件各発明の発明者(又は共同発明者の一人)であり,本件各発明に係る特許を受ける権利(又は特許を受ける権利の一審原告持分)を一審被告に承継させたとして,一審被告に対し,相当の対価合計1億9807万8808円及びこれに対する平成21年8月8日(請求の日の翌日)から支払済みまで民法所定年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。
2
原判決は,本件発明Aに係る相当の対価(不足額)合計1251万2259
円及びこれに対する平成21年8月8日から支払済みまで民法所定年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で認容し,その余は棄却した。
そこで,一審原告及び一審被告が,それぞれ原判決中の敗訴部分を不服として控訴した。なお,一審原告は,当審において,1億円及びこれに対する平成21年8月8日から支払済みまで年5分の割合による金員を請求している。3
前提事実は,下記のとおり,原判決を訂正するほかは,原判決「事実及び理
由」の第2の2に記載のとおりであるから,これを引用する。
(1)

原判決9頁13行目冒頭から「7月まで」までを,
「(イ)

平成21年度から

平成29年度(平成29年度は4月から11月まで」と訂正する。(2)

原判決9頁15行目「別紙5-1」を,
「別紙(3)」と訂正する。

4
争点は,下記のとおり,原判決を訂正するほかは,原判決「事実及び理由」
の第2の3に記載のとおりであるから,これを引用する。
(1)

原判決12頁10行目の
「平成27年8月以降」「平成29年12月以降」
を,

と訂正する。
(2)

原判決12頁25行目及び26行目を削除する。

(3)

原判決13頁6行目から11行目を削除し,
12行目冒頭の
「(ウ)」「(イ)」

と訂正する。
第3

当事者の主張

争点に関する当事者の主張は,下記1のとおり,原判決を訂正し,下記2のとおり,当審における当事者の主張を付加するほかは,原判決の「事実及び理由」の第3に記載のとおりであるから,これを引用する。
1
(1)

原判決の訂正
原判決14頁4行目「1億8042万5110円」を,
「1億円」と訂正す

る。
(2)

原判決14頁6行目及び7行目を削除する。

(3)

原判決14頁10行目冒頭から12行目末尾までを,
「(ア)

A実施品の期

間売上高は,別紙(1)『本件発明Aに係る一審原告の主張要旨』の『①A実施品の期間売上高』欄記載のとおりである。
」と訂正する。

(4)

原判決15頁6行目冒頭から7行目の「すべきである」までを,
「(ア)

A
実施品についての超過売上率は,別紙(1)『本件発明Aに係る一審原告の主張要旨』の『②超過売上率』欄記載のとおりとすべきである」と訂正する。(5)

原判決16頁5行目冒頭から6行目の「すべきである」までを,
「(ア)

A
実施品についての仮想実施料率は,
別紙(1)本件発明Aに係る一審原告の主張要旨』

の『③仮想実施料率』欄記載のとおりとすべきである」と訂正する。(6)

原判決16頁15行目冒頭から16行目の
「すべきである」
までを,
「ア

A
実施品についての被告の貢献度は,
別紙(1)本件発明Aに係る一審原告の主張要旨』

の『④共同発明者の貢献度(1-被告の貢献度)
』欄記載のとおりとすべきである」
と訂正する。
(7)

原判決17頁23行目を,別紙(1)本件発明Aに係る一審原告の主張要旨』「


の『⑤共同発明者間における原告の貢献度』欄」と訂正する。(8)

原判決22頁5行目冒頭から7行目末尾までを,
「(ア)

期間売上高に関す

る原告主張のうち,被告の主張に係るA実施品の売上高(別紙(3)『LE-Cap』売上高一覧表の『A実施品売上高』欄記載のとおりである。
)を超える部分は,否認
する。
」と訂正する。
(9)

原判決27頁4行目の「超過売上率及び仮想実施料率」を,
「超過売上率,

仮想実施料率及び特許寄与率」
と訂正し,
12行目冒頭から15行目末尾までを
「別
紙(2)『本件発明BないしHに係る一審原告の主張要旨』のとおり,本件発明Bにつき46万8787円,本件発明Cにつき54万0141円,本件発明Dにつき32万0279円,本件発明Eにつき28万3108円,本件発明Fにつき20万8889円,本件発明Gにつき48万1287円,本件発明Hにつき172万4949円と算定される。
」と訂正する。
(10)

原判決28頁1行目の「別紙7」から「
『2

超過売上率』欄」までを,
「別

紙(2)『本件発明BないしHに係る一審原告の主張要旨』の『②超過売上率』欄」と訂正する。

(11)

原判決30頁10行目冒頭から11行目の「すべきである」までを,「(ア)

B~H実施品についての仮想実施料率は,
別紙(2)
『本件発明BないしHに係る一審
原告の主張要旨』の『③仮想実施料率』欄記載のとおりとすべきである」と訂正する。
(12)

原判決30頁17行目冒頭から18行目の「すべきである」までを,「ア

本件発明BないしHについての被告の貢献度は,
別紙(2)
『本件発明BないしHに係
る一審原告の主張要旨』の『④発明者・共同発明者の貢献度(1-被告の貢献度)』
欄記載のとおりとすべきである」と訂正する。
(13)

原判決32頁1行目冒頭から3行目の「すべきである」までを,
「ア

本件

発明D,同E及び同Fについての共同発明者間における原告の貢献度(寄与割合)は,別紙(2)『本件発明BないしHに係る一審原告の主張要旨』の『⑤共同発明者間における原告の貢献度』欄記載のとおりとすべきである」と訂正する。(14)

原判決33頁6行目の次に,改行して「(5)

特許寄与率」を付加し,さら

に改行して,
「本件特許BないしHの各特許の寄与率は,別紙(2)『本件発明BないしHに係る一審原告の主張要旨』の『⑥特許寄与率』欄記載のとおりである。」を付
加する。
(15)

原判決33頁13行目から19行目の「理解するようであるが,
」まで,2

2行目冒頭から34頁1行目までを,いずれも削除する。
(16)

原判決別紙5-1を別紙(3)に,
原判決別紙7を別紙(1)及び(2)に,
それぞ

れ改める。
2
(1)

当審における当事者の主張
争点1(本件発明Aに係る相当の対価の額)について

〔一審原告の主張〕

(ア)

A実施品の期間売上高について
A実施品の期間売上高は,
別紙(1)本件発明Aに係る一審原告の主張要旨」


の「①A実施品の期間売上高」欄記載のとおりである。
(イ)

一審被告は,●●●●●●●●以降はA非実施品が市場に存在する旨主張
する。
しかし,一審被告は,当初は,
「LE-Cap」は全て本件発明Aの実施品である
ことを自認していたにもかかわらず,平成27年12月25日付け準備書面で,●●●●●●●●以降はA非実施品が出現し,A実施品とA非実施品が共存するようになったと主張するようになったもので,その主張は変遷しているから,信用できない。かえって,富士キメラ総研作成の市場調査資料によれば,平成25年10月以降も,光拡散レンズ「LE-Cap」は本件特許AによりLED用拡散レンズ市場の95%以上のシェアを有していることが認められる。
また,
一審原告は,
平成25年11月以降発売されている直径19mmの製品
(型
番#9989)の分解実験を行ったところ,同製品はA実施品であった。他方,被告開示品については,2頁ある図面のうち1頁しか開示されず,書式も量産図面とは異なっており,また,被告開示品には開発用と解釈できる刻印があることからすると,市場において流通する製品とは考えられない。
本件発明Aの●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●であり,LEDと光束制御部材の両者の関係を考慮して初めて判断できるものである。●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●が存在するから,被告開示品は,A実施品である。
A実施品であることにつき争いのない製品相互間にも,形状に一定の差があるから,被告開示品とA実施品に争いのない製品の形状に差異があったとしても,被告開示品がA非実施品であることを意味するものではない。
(ウ)

仮にA非実施品が存在するとしても,
「LE-Cap」
は本件特許Aにより

LED用拡散レンズ市場の95%以上のシェアを有している。特許権は排他権であるから,対象製品は必ずしも当該特許された職務発明の技術的範囲に含まれるものでなくてもよく,競業他社の実施を禁止することで,その代替製品の売上げに貢献
があれば,それは当該職務発明による使用者の受けるべき利益に値するのであるから,本件特許Aによる独占の効果は及ぶ。

(ア)

超過売上率及び仮想実施料率について
超過売上率

LED向け光拡散レンズ市場における「LE-Cap」のシェアは,平成23年度から平成28年度を通じて,一貫して100%近い。したがって,本件特許Aによる超過売上率が60%を下回ることは考えられないが,控えめな数値として,別紙(1)
「本件発明Aに係る一審原告の主張要旨」「②超過売上率」の
欄記載のとおり,
平成21年度から平成28年度を通じて,本件特許Aによる超過売上率が40%であることを主張する。
(イ)

仮想実施料率

一審被告においては,液晶テレビ用光拡散レンズの量産を開始したことにより,「LE-Cap」の売上げが大半を占めるオプト事業部の営業利益率が最高で54%(平成25年度)に上っている。光拡散レンズ(プラスチック製品)と同じ産業分類(プラスチック)における営業利益率の平均が6.5%で,平均のロイヤリティ料率がその51%に相当する3.
4%であることに鑑みれば,
仮想実施料率は,
控えめな数値としても別紙(1)「本件発明Aに係る一審原告の主張要旨」の「③仮想実施料率」欄記載のとおりである。
(ウ)

特許Aについては,2回にわたり無効審判請求がされているところ,これ
は,特許Aの排他力が高く,代替技術の開発が困難であるが故であると解される。このことからも,超過売上高の比率は高まるし,そのような特許権についてライセンスされる場合の実施料率は,最高額になる。

一審被告の貢献度について

原判決は,一審原告が研究に従事する以前から,一審被告が「LE-Cap」の開発研究をテーマとしていたと認定しているが,一審被告が検討していたのは,キャップ状のレンズではなく●●●●●●●●●であったから,誤りである。●●●
●●●●●●による光分散方式は,当時公知技術であったし,●●●●●●●●●の試作品の輝度ムラは劣悪な結果であった。
また,原判決は,本件特許Aの出願後も,甲Ⅰを中心として研究が続けられていたと認定し,LED封止形状に係る特許出願(特願2004-278888)や,A関連特許②の出願が行われたことを摘示するが,A関連特許②の出願は本件特許Aの出願より前であるし,特願2004-278888は特許Aの出願番号であるから,これらの事実は,本件特許Aの出願後における一審被告の貢献を意味するものではない。
このほか,原判決は,光拡散レンズの製品化や量産化,出荷コストの大幅な低減の実現,液晶TVメーカーが検査を容易にできるようにしたことを,一審被告の貢献として指摘する。
しかし,光拡散レンズの製品化や量産化は,多数の競合会社において実現可能であることを一審被告も自認している。
出荷コストの大幅な低減のための手段のうち,
「LE-Cap」の基板実装は,一
審被告独自の考案によるものではないこと,レンズ納品(袋詰め梱包)は,単にビニール袋にレンズを複数個入れたのちに,段ボール箱に下方から順に詰めるという一般的な梱包方法であることから,一審被告の貢献と評価できるものではない。液晶TVメーカーが検査を容易に実施できるようにしたことも,既に他社から発売されている計測器・分析ソフトが存在していたから,一審被告の特段の貢献とはいえない。
さらに,前記のとおり,特許Aの無効審判請求がされた事実は,本件特許Aさえなければ,競業他社が関係市場に参入することができ,一審被告の営業力等の要因は市場参入を妨げない旨予測していることを示すから,一審被告の貢献度が低いことを示している。
以上によれば,本件発明Aについての一審被告の貢献度は,少なくとも平成28年度までについては,90%を上回ることはない。


共同発明者間における一審原告の貢献度について

一審原告は,特許Aの出願前に,拡散レンズの形状として,キャップ状レンズを含む4つの形状を単独で着想した。一審原告は,先行する一審原告による単独発明であるA関連特許②があったことから,本件特許Aの出願前にシミュレーションのみ行い,試作は,出願後に行った。
A関連特許②は,平板上レンズによる照明光の均一化に関する発明であり,特許Aの出願の2か月前に出願された。
両者の請求項1を比較すると,
発明Aの構成は,
A関連特許②に現れているから,一審原告が単独で着想したものである。他方,原判決は,特許Aの明細書等の【0036】の計算式は,甲Ⅰの作成した図4に規定されているδを利用して説明されているとしたが,図4は,発明Aの構成要件を満たしておらず,特許A出願時に甲Ⅰが発明Aの内容を真に理解していたとはいえない。甲Ⅰは,公知形状である出射面の中央が窪んだ(キャップ状)レンズの研究をしていたにすぎず,厳密に言えば,本件発明Aの(共同)発明者ではない。
したがって,共同発明者間における一審原告の貢献度は,少なくとも80%である。

以上によれば,一審原告は,本件発明Aに係る相当の対価の額は,3億12
21万4045円と主張する。
〔一審被告の主張〕

(ア)

A実施品の期間売上高について
一審原告は,A非実施品が存在しないことについて縷々主張する。
しかし,一審被告は,
「LE-Cap」は,一審被告が製造する光拡散レンズを含
む照明用レンズ製品群の総称であって,光拡散レンズ以外の製品も含まれ,また,光拡散レンズという分類に着目しても,本件発明Aの実施品に限られるものではないこと,ある時期までは一審被告が製造する光拡散レンズの全てが本件発明Aの実施品であったが,その後,本件特許Aの構成要件の一部を満たさない光拡散レンズ
が出現し,その約1年経過後には,A非実施品の売上げが本件発明Aの実施品のそれを上回る結果となったことを主張しており,何ら変遷はない。また,一審被告のLED用拡散レンズ市場のシェアが依然として95%以上であるとの主張も誤りであり,被告開示品が非流通品であるとの主張も論拠不明である。
本件発明Aの●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●であることは,特許請求の範囲において定義されたものではない。
本件において,本件特許Aの構成要件の一部を満たさない光拡散レンズは,本件発明Aの特徴的部分を備えておらず,本件発明Aとの関係では代替技術として位置付けられるから,これに対して本件特許Aの独占の効果が及ぶとは認められない。(イ)

一審被告におけるA実施品の売上高

A実施品の売上高は,別紙(3)「
『LE-Cap』売上高一覧表」の「A実施品売
上高」欄記載のとおりである。

超過売上率及び仮想実施料率について

原判決は,同じLED光源の液晶バックライトであったとしても,導光式と直射式では構造が異なり,互いに代替技術ととらえることは相当でないと認定したが,かかる認定判断は,液晶バックライトの技術分野について,その技術内容を含めた市場の画定,技術内容の分析,整理を誤るものである。
その上で,原判決は,LED直射式という限定された市場をみる限り,本件発明Aの代替技術といえるようなものはほとんどなかったと認定するが,その認定は,客観的な証拠に基づくものではない。
少なくとも平成26年時点における本件発明Aの実施製品である光拡散レンズ「LE-Cap」の主たる市場であるLEDバックライトを使用した液晶テレビ市場において,代替技術は多岐に存在し,むしろ,導光式(エッジライト型)バックライトが優位を占めており,
「LE-Cap」
が技術的に属する光拡散レンズの技術
のみならず,LEDバックライト自体の基本構成も多岐にわたり,本件発明Aの代替技術が存在する。
各メーカーは,
LEDバックライトの目的,
用途,
製造コスト,
取引条件,さらには,その要求に応える生産能力等を総合的に考慮し,いずれかの技術タイプを選定しており,
「LE-Cap」
がLEDバックライトにおける技術的
優位性を有するということではなく,これらの代替技術に応じて,多種多様な製品が製造されている。
超過売上率は,原判決摘示の第Ⅰ期については,ゼロか,せいぜい10~20%であり,同第Ⅱ期については,これを第Ⅰ期の半分であるとしてもゼロか,せいぜい5~10%であり,同第Ⅲ期に至っては,既に本件発明Aの非実施品がその大半を占める状況に至っていることのみならず,技術の陳腐化に加え,LED光源そのものの性能の向上,光拡散レンズの性能向上などにより光拡散レンズ数の使用数が必然的に減少することが予測される時期であるから,超過売上率を観念することはできない。
また,仮想実施料率についても,
「LE-Cap」が大量生産品であることに鑑み
れば,前記第Ⅰ期についてせいぜい1%,同第Ⅱ期及び第Ⅲ期については,それぞれ第Ⅰ期の3分の1及び第Ⅱ期の半分程度として認定されるべきである。ウ
一審被告の貢献度について

原判決は,量産化の技術や大手液晶メーカーへの営業,一審被告独自の販売戦略などの点における一審被告の貢献が大きく寄与していると認定したにもかかわらず,共同発明者の貢献度を5%と認めており,均衡を失し,不合理である。一審被告が,顧客に製品を納入した後においても,当該顧客における製品使用方法にまで手厚いサポートを行い,
「LE-Cap」の採用を働きかけ続けたこと,大
量の数量を安定して客先に供給するための生産体制を構築したこと,出荷検査及び受入検査の体制を構築したこと等を含め,
「LE-Cap」
の量産化に至る一審被告
の貢献は甚大であり,その貢献度は少なくとも97~98%である。エ
共同発明者間における一審原告の貢献度について
原判決は,
共同発明者間における一審原告の貢献度を70%と認定した。
しかし,
本件発明Aの共同発明者である甲Ⅰは,板状レンズではないキャップ形状のレンズ設計を担当し,
「出射面の中央が凹んでいる面形状」のLED用光拡散レンズ(マッシュルーム型レンズ)を開発し,
「LE-Cap」の原型を完成させたのであって,
同人による技術思想の着想及びその具体化なくして,本件発明Aは成り立たないのであるから,その貢献は一審原告に劣後するものではない。
発明Aの構成①は,甲Ⅰが開発を担当していた「出射面の中央が凹んでいる面形状」のLED用光拡散レンズ(マッシュルーム型レンズ)を採用したことにほかならない。
また,発明Aの構成②についても,甲Ⅰが開発を担当していた「出射面の中央が凹んでいる面形状」のLED用光拡散レンズ(マッシュルーム型レンズ)の設計事項であり,
「板状透明部材の下面(LED側の面)を凹面とする光学部材」
(板状レ
ンズ)からは導かれない条件である。
発明Aの構成③が示す光束制御条件に一審原告が関与していることは否定しないが,かかる構成は,発明Aの構成①を前提とし,発明Aの構成②と不可分の関係であるから,一審原告が単独で着想及び具体化を行えるものではない。甲Ⅰは,発明Aの具体化に直接関与し,特許Aが出願される直前に行われた社内説明会において,直下型面発光均一化の手法,広角配光部材の開発について報告を行い,マッシュルーム型の配光制御部材の採用を報告するなどし,特許A出願後も甲Ⅰを担当者として開発が継続されたこと等も併せると,甲Ⅰが特許Aの成立に貢献した度合いは,一審原告に優ることはあれ,劣ることはない。
(2)

争点2(本件発明BないしHに係る相当の対価の額)について

〔一審原告の主張〕

超過売上率

原判決は,本件発明BないしHの総体に基づくB~H実施品の超過売上率を10%と認定したが,本件発明BないしH実施品のVカット導光板市場の中でのシェアは平成17年9月時点で60%前後の圧倒的シェアを占めていたことが認められる以上,超過売上率が30%以下と考えるべき合理的理由は見当たらない。したがって,
別紙(2)
「本件発明BないしHに係る一審原告の主張要旨」「②超過売上率」の
欄のとおり,超過売上率は30%である。
「PSP-LGP」の基本特許である本件特許Hの米国特許出願については,「P
SP-LGP」の生産が拡大する以前に特許されており,また,一審被告は,本件特許BないしHの公開後は補償金請求権を行使し得たのであるから,本件発明BないしHの登録前の期間に係る部分が含まれることを総合考慮した原判決の認定には誤りがある。

仮想実施料率

原判決が,本件発明BないしHの登録前の期間に係る部分が含まれることを総合考慮したことに誤りであるのは上記のとおりであり,また累積ロイヤリティを考慮していない点にも誤りがある。よって,本件発明BないしHの仮想実施料率が5%を下回ることはない。したがって,別紙(2)「本件発明BないしHに係る一審原告の主張要旨」の「③仮想実施料率」欄のとおり,仮想実施料率は5%である。ウ
よって,本件発明BないしHに係る相当の対価の額として,402万744
0円を主張する。
〔一審被告の主張〕
否認ないし争う。
第4

当裁判所の判断

当裁判所は,
一審原告の請求は,
本件発明Aに係る相当の対価
(不足額)
として,
一審被告に対し,合計1202万6841円及びこれに対する平成21年8月8日から支払済みまで年5分の割合による金員の支払を求める限度で理由があるものの,その余は理由がないと判断する。その理由は,以下のとおりである。1
(1)

相当の対価の算定方法について
適用法について
本件特許AないしHに係る発明の特許を受ける権利の承継は,平成17年4月1日より前に行われているから,その職務発明に係る対価請求については,平成16年法律第79号による改正前の特許法35条が適用される。
同法35条によれば,従業者等は,契約,勤務規則その他の定めにより,職務発明について使用者等に特許を受ける権利又は特許権を承継させたときは,相当の対価の支払を受ける権利を有する(同法35条3項)
。そして,上記対価の額は,その
発明により使用者等が受けるべき利益の額及びその発明がされるについて使用者等が貢献した程度を考慮して定めなければならない(同条4項)

(2)

その発明により使用者等が受けるべき利益

同法35条1項によれば,従業者等の職務発明について使用者等は無償の通常実施権を取得するのであるから,特許を受ける権利の承継の対価の算定に当たって考慮すべき「その発明により使用者等が受けるべき利益」とは,使用者等が,従業者等から特許を受ける権利を承継して特許を受けた場合に特許発明の実施を排他的に独占することによって得られる利益をいうものである。使用者は,特許を受ける権利を承継しない場合であっても通常実施権を有することとの対比からすれば,使用者が特許を受ける権利を承継して特許を受け特許発明を自ら実施している場合は,これにより上げた利益のうち,当該特許の排他的効力により第三者の実施を排除して独占的に実施することにより得られたと認められる利益の額をもって「その発明により使用者等が受けるべき利益」というべきである。
本件のように,従業者が,職務発明について使用者に特許を受ける権利を承継させ,
使用者において,
当該特許を自己実施して第三者に実施許諾をしていない場合,
「その発明により使用者等が受けるべき利益」とは,当該発明の実施品の売上高のうち,同発明につき第三者の実施を排除して独占的に実施することにより得られたと認められる利益の額であり,法定の通常実施権に基づく実施を超える部分(以下「超過実施分」という。
)について,第三者に発明の実施を許諾した場合に得られる
実施料率(仮想実施料率)を乗じて算定するのが相当である。超過実施分については,現に使用者等が受けた利益の額を参考にして,将来受けるであろう利益の額を予測することも許され,発明の実施品の売上高に超過売上率を乗じることにより求められる。なお,当該実施品に複数の特許が使用されているときは,さらに,当該特許の寄与率を乗じて求めることとなる。
(3)

その発明がされるについて使用者等が貢献した程度

同法35条4項には「その発明がされるについて使用者等が貢献した程度」を考慮すべきである旨規定されているところ,
前記(2)のとおり,
特許を受ける権利の承
継後に使用者が現実に得た利益をもって「その発明により使用者等が受けるべき利益の額」として「相当の対価」を算定する場合においては,考慮されるべき「使用者等が貢献した程度」には,
「その発明がされるについて」貢献した程度のほか,使
用者等がその発明により利益を受けるについて貢献した程度も含まれるものと解するのが相当である。したがって,
「使用者等が貢献した程度」として,具体的には,
その発明がされるについての貢献度のほか,その発明を出願し権利化し,さらに特許を維持するについての貢献度,実施品の売上げを得る原因となった販売体制についての貢献度,発明者への処遇その他諸般の事情が含まれるものと解するのが相当である。
(4)

相当の対価の算定

以上のとおり,自己実施の場合における職務発明の対価は,当該発明の実施品の期間売上高に,超過売上率及び仮想実施料率を乗じて,使用者等が受けるべき利益の額を求め,これにより求められる利益の額から,使用者等が貢献した程度に応じた額を控除して,発明者に支払われるべき相当の対価の額を求める。なお,当該実施品に複数の特許が使用されているときは,さらに,当該特許の寄与率を乗じて求めることとなる。
また,当該発明が共同発明の場合は,上記により求められる額に,共同発明者間における一審原告の貢献度を乗じて,一審原告に支払われるべき相当の対価の額を求める。
以下,以上の観点から,本件における相当の対価を算定する。
2
(1)

争点1(本件発明Aに係る相当の対価の額)について
争点1に対する判断は,
以下のとおり,
原判決を訂正し,
下記(2)のとおり,

当審における当事者の主張に対する判断を付加するほかは,原判決の「事実及び理由」の第4の2に記載のとおりであるから,これを引用する。

原判決47頁15行目の
「LED直射式は」
から17行目
「有する」
までを,

「LED直射式は,大型の液晶画面にも対応することができるメリットを有する」と訂正する。

原判決48頁6行目の「用いるもの」を,
「用いるものに」と訂正する。


原判決55頁15行目の
「特徴的部分」「特徴的部分の一部」
を,
と訂正する。


原判決55頁最終行の「有してして」を,
「有して」と訂正する。


原判決56頁8行目の「平成26年度」を「平成28年度」と,同9行目の
「別紙5-1」を「別紙(3)」と,同10行目の「平成27年4月から同年7月」を「平成29年4月から同年11月」同11行目の
と,
「平成27年度
(4月~7月)

を「平成29年度(4月~11月)
」と,それぞれ訂正する。

原判決56頁13行目の冒頭から「3月まで」までを,
「平成29年度の残り

である同年12月から平成30年3月まで」と,同14行目の「平成27年4月から同年7月」を「平成29年4月から同年11月」と,同16行目の「平成27年度」を「平成29年度」と,同16行目の「●●●●●●●●●」を「●●●●●●●●●」と,それぞれ訂正する。

原判決56頁18行目の「平成28年度」を「平成30年度」と,同22行
目の「平成26年度から平成27年度」を「平成28年度から平成29年度」と,同23行目の「平成28年度」から同26行目末尾までを,●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●と見積もるのが相当である。と,」

れぞれ訂正する。

原判決57頁18行目から19行目の
「ないかったこと」「なかったこと」

と訂正する。

原判決57頁24行目の「平成30年度」を,
「平成29年度」と訂正する。


原判決58頁1行目の「平成31年度」を,
「平成30年度」と訂正する。


原判決62頁末尾から63頁1行目にかけての【0036】

の計算式におけ

るδは,
」を,【0036】の計算式は,

」と訂正する。

原判決64頁9行目から11行目を削除する。


原判決64頁16行目の「別紙9」を「別紙(4)」に,18行目,22行目か
ら23行目,25行目の「1251万2259円」を,いずれも「1202万6841円」と訂正する。

(2)

(ア)
a
原判決別紙9を別紙(4)に改める。
当審における当事者の主張に対する判断
A実施品の期間売上高について
A非実施品について
A非実施品の流通について

一審原告は,原審における一審被告の主張が変遷したこと,光拡散レンズ「LE-Cap」は,平成25年10月以降もLED用拡散レンズ市場の95%以上のシェアを有していること,一審原告の分解実験の結果によれば,被告開示品は非流通品であること等によれば,市場において,A非実施品は存在しないことが推認される旨主張する。
しかしながら,職務発明対価請求訴訟において,本来,A実施品の売上げを主張立証すべき責任を負うのは,一審原告であり,一審被告において,A非実施品の存在を主張立証すべきものではない。よって,一審被告が,A非実施品の存在を当初から具体的に主張していなかったことをもって,直ちにA非実施品は存在しないことが推認されるとはいえない。
また,光拡散レンズ「LE-Cap」のLED用拡散レンズ市場におけるシェアが大きいとしても,そのことが,
「LE-Cap」の全てがA実施品であることを推
認させるとはいえず,被告開示品についても,一審原告の指摘する事情をもって,非流通品であることが推認できるとはいえない。
したがって,上記の一審原告の主張は採用できない。
b
被告開示品について

一審原告は,本件発明Aの●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●であり,●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●から,被告開示品もA実施品である旨主張する。
しかしながら,
本件特許Aの特許請求の範囲の記載によれば,光制御出射面」

は,
「球の一部を切り取ったような凹み形状の第1の出射面」「この第1の出射面のと,
周囲に連続して形成される第2の出射面」を有しており,●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●である。よって,●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●を指していると解するのが自然である。
また,
本件特許Aの明細書等には,
「第1の出射面と第2の出射面との接続部分が
変曲点となっており」

【0013】

【0019】

【0025】との記載があるほか,

「第1の出射面6aは,図4(b)の断面形状に示すように,下に凸の滑らかな曲面形状であり,球の一部を切り取ったような凹み形状になっている。また,第2の出射面6bは,図4(b)の断面形状に示すように,第1の出射面6aに連続して形成される上に凸の滑らかな曲線形状であり,その平面形状が第1の出射面6aを取り囲む略中空円板形状に形成されている。そして,これら第1の出射面6aと第2の出射面6bが滑らかに接続され,その両出射面6a,6bの接続部分が変曲点Poになっている」【0032】

)との記載があり,●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●であるとされている。そうすると●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●を意味するものと解される。広辞苑第7版では,●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●とされているところ,上記明細書等の記載は,かかる辞書的意味とも整合する。
図6には,θ1とθ3との関係が曲線16で示され,θ3の最小値がPoであることが開示されている。そして,Poにおいては,θ3が最小値である以上,Δθ3/Δθ1は0になるといえる。しかし,本件特許Aの明細書等には,●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●によって規定されると解釈することはできない。
以上によれば●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●との解釈を採用することはできない。
なお,本件特許Aの明細書等では,光拡散レンズの光軸の中心を含む断面図(【0
028】
,図2~4)が開示されているところ,θ3とθ1の関係の分析(【003
6】
,図6)も,光束制御部材の中心に光軸があることを前提に行っているものと解され,光軸の中心をずらして測定を行うことについての記載や示唆はない。したがって,一審原告が主張する,光軸の中心を除外した3点を測定箇所として,θ3とθ1の関係を分析するという手法を採用することに合理性があるとはいえず,一審原告の測定方法を前提として,●●●を充足すると認定することはできない。他方,一審被告が採用した手法(レンズの出射面の形状から「Δz/Δxの値」を計測し,●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●の有無を検討するもの)が,本件発明Aに係る特許請求の範囲を含む本件特許Aの明細書等の記載に照らし,不合理であるとはいえないことは,前記(引用に係る原判決第4の2(2)ア(ア)a)のとおりである。そして,前記(引用に係る原判決第4の2(2)ア(ア)a)のとおり,A実施品であることに争いのない製品と被告開示品とを対比すると,表面形状の凹み形状部分の広さに一定の差異があることも,被告開示品が●●●を備えていないことを推認させる事実といえる。
そうすると,被告開示品には,
「●●●」があるとは認められないから,A実施品
と認めることはできず,一審原告の主張は,採用できない。
c
小括

以上によれば,一審原告は,
「LE-Cap」の全てがA実施品であることを立証
できたとはいえないから,一審被告がA実施品の売上げであると認める限度,すなわち,
当事者間に争いのない限度でのみ,
A実施品の売上げを認定せざるを得ない。
(イ)

独占の効果

一審原告は,仮にA非実施品が存在するとしても,競業他社の実施を禁止することで,その代替製品の売上げに貢献があれば,本件特許Aによる独占の効果は及ぶとも主張する。
しかし,A非実施品は,
「●●●」を備えているとはいえない以上,発明Aの構成
①「前記光制御出射面は,

前記発光装置の基準光軸近傍で且つ前記基準光軸を中心
とする所定範囲に位置する球の一部を切り取ったような凹み形状の第1の出射面と,この第1の出射面の周囲に連続して形成される第2の出射面とを有し,これら第1の出射面と第2の出射面との接続部分が変曲点となっており,との構成)」
を備えて
いるとはいえないところ,
構成①は,
拒絶理由通知において引用された公知技術
(乙
42発明及び乙43発明)との差異を明らかにするため,発明Aの構成②(「前記第
1の出射面における前記θ3が前記θ1の増加とともに徐々に減少し,前記第2の出射面における前記θ3が前記θ1の増加とともに徐々に増加するようになっており,
」との構成)とともに,補正により付加されたものであるから,発明Aの特徴的部分の一部をなしており,発明A’についても同様である。そうすると,A非実施品は,本件発明Aの特徴的部分を備えているといえず,同発明との関係では代替技術と位置付けるのが相当であり,これについて,本件特許Aによる独占の効果が事実上及んでいるとみることはできないことは,前記(引用に係る原判決第4の2(2)ア(ア)b)のとおりである。
したがって,A非実施品に本件特許Aによる独占の効果が事実上及ぶとの一審原告の主張も,採用できない。
(ウ)
a
A実施品の売上高
平成21年度から平成28年度までのA実施品の売上高は,
別紙(3)『LE-


Cap』売上高一覧表」の該当行の「A実施品売上高」欄記載のとおりである。b
平成29年4月から同年11月までのA実施品の売上高は,同別紙の「平成
29年度(4月~11月)
」の行の「A実施品売上高」欄記載のとおりであることが
認められる。
平成29年12月から平成30年3月までの期間の1か月当たりのA実施品の売上高については,平成29年4月から同年11月までの期間の1か月当たりのA実施品の売上高と同程度と推認することができる(弁論の全趣旨)
。よって,平成29
年度1年間を通じてのA実施品の売上高は,●●●●●●●●●と推認するのが相当である。
c
平成30年度以降のA実施品の売上高については,①液晶TVバックライト
の価格が低下する傾向にあること,②LED光源自体の性能が向上することによりLED直射式を採用した場合に必要とされる光束制御部材の数量も減少することが予想されること,③A実施品のA非実施品による代替が進みつつあるものの,口頭弁論終結時においては売上げが逆転するまでには至っておらず,A実施品の製造販売の中止が予定されているわけではないこと,④A実施品の売上高が,平成25年度をピークとして減少傾向にあり,平成28年度から平成29年度にかけても減少を続けていること,
⑤平成29年4月から同年11月までの期間の売上高を前提に,同年度の売上高を見積もると,原判決での見積額である●●●●を大きく下回る●●●●●●●●となること等の事情を考慮するなら,●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●と見積もるのが相当である。(エ)

小括

以上によれば,A実施品の期間売上高は,別紙(4)の「①A実施品の期間売上高」欄記載のとおりと認められる。

(ア)
a
超過売上率及び仮想実施料率
超過売上率
超過売上率については,①開発された当初から量産化が進んだ第Ⅰ期,②A
非実施品が販売され,A実施品と併用された第Ⅱ期,③技術の陳腐化に加え,LED光源そのものの向上,光拡散レンズの性能向上などにより光拡散レンズ数の使用数が必然的に減少する第Ⅲ期の3つの時期に分けて検討するのが相当である。前記のとおり,平成29年度の売上高が,原判決での見積額●●●●を下回る●●●●●●と見積もられること等の事情も勘案し,第Ⅰ期を平成21年度から平成25年度,第Ⅱ期を平成26年度から平成29年度,第Ⅲ期を平成30年度から特許期間満了の平成36年3月までとするのが相当である。
したがって,
超過売上率は,
第Ⅰ期
(平成21年度から平成25年度)
は40%,
第Ⅱ期(平成26年度から平成29年度)は20%,第Ⅲ期(平成30年度から平成36年3月まで)は10%とみるのが相当である。
b
一審原告は,LED向け光拡散レンズ市場における「LE-Cap」のシェ
アは,平成23年度から平成28年度までを通じて,一貫して100%近いから,本件特許Aによる超過売上率は,平成21年度から平成28年度までを通じて40%であると主張する。
しかし,
「LE-Cap」には,前記のとおり,A非実施品も含まれるところ,平成25年度からA実施品とA非実施品とが併用されるようになり,平成26年度及び平成27年度は「LE-Cap」の過半数がA非実施品であり,平成28年度及び平成29年度においてもA非実施品の売上げがA実施品の売上げと拮抗していること等の事情を考慮するなら,A実施品のシェアが,平成23年度から平成28年度までを通じて一貫して100%近いとは認められず,A非実施品が併用されるようになった平成26年度以降の超過売上率が,平成25年度までと同様といえないことは明らかである。
また,一審原告は,特許Aについて無効審判請求がされたことからも,排他力の強さが明らかであり,超過売上高の比率は高まるとも主張するが,必ずしもそのように解するべきものとはいえない。
したがって,一審原告の主張は,採用できない。
c
他方,一審被告は,液晶用バックライト技術としては,LED導光式とLE
D直射式があり,これらの市場全体として代替製品をとらえるべきであることを前提に,原判決の認定した超過売上率は過大である旨主張する。
しかし,直射式は,LEDの数は多くなるが,大型の液晶画面に対応することができ,高画質であるとのメリットがある一方,薄型化することについては導光式よりも劣るとのデメリットがあるのに対し,導光式は,薄型化することについてメリットが大きく,小さな液晶画面への対応に向く(甲17,乙27)というのであるから,導光式と直射式とは,それぞれ向き不向きが異なり,相互に代替技術と捉えることが相当でないことは,前記(引用に係る原判決第4の2(1)エ)のとおりである。
一審被告は,超過売上率はそれほど高くないことを縷々主張するが,いずれも,導光式を含めて代替製品と捉えることを前提とするものであるから,理由がない。よって,一審被告の主張は,採用できない。
(イ)
a
仮想実施料率
仮想実施料率についても,超過売上率と同様の事情を考慮し,第Ⅰ期ないし
第Ⅲ期に分けて検討すべきであり,
第Ⅰ期
(平成21年度から平成25年度)
は3%,
第Ⅱ期(平成26年度から平成29年度)は1.5%,第Ⅲ期(平成30年度から平成36年3月まで)は0.5%とみるのが相当である。
b
一審原告は,一審被告のオプト事業については,液晶テレビ用光拡散レンズ
の量産を開始したことにより,
「LE-Cap」の売上げが大半を占め,オプト事業
部の営業利益率は最高で54%(平成25年度)に上っているから,平成21年度から平成28年度までの仮想実施料率を19%とすることには合理性があると主張する。
しかし,仮想実施料率については,同じ技術分野における実施料率の実例,同じ事業分野の企業の営業利益率,特許発明の価値,無効理由の存否等を総合考慮して算定すべきであるところ,
仮想実施料と営業利益率が相関関係にあるというだけで,
平成21年度から平成28年度までの仮想実施料率を19%とすべき理由はない。また,一審原告は,特許Aについては,無効審判請求がされたことからも,排他力が高く,実施料率は最高額になる旨主張するが,必ずしもそのように解すべきものとはいえない。
よって,一審原告の主張は採用できない。
c
他方,一審被告は,
「LE-Cap」が大量生産品であることに鑑みれば,第

Ⅰ期についてせいぜい1%,第Ⅱ期及び第Ⅲ期については,それぞれ第Ⅰ期の3分の1及び第Ⅱ期の半分程度と主張するが,具体的根拠に基づく主張とはいえず,採用できない。
(ウ)

小括

以上によれば,超過売上率及び仮想実施料率は,別紙(4)の「②超過売上率」欄,「③仮想実施料率」欄記載のとおりと認められる。ウ
(ア)

一審被告の貢献度(共同発明者の貢献度)
一審原告は,
本件発明Aについての一審被告の貢献度は,
少なくとも平成2

8年度までについては90%を上回ることはないとして,縷々主張する。しかし,一審被告において,一審原告が研究に従事する前から「LE-Cap」の開発研究をテーマとしていたことや,LE-Cap」

の売上が急激に伸びたのは,
特許Aの登録から5年以上経ってからであり,より性能の高い製品化や量産化,月産数億個に及ぶ大量の受注を受ける体制が整って初めて売上高が急激に伸びたこと,量産化の技術や大手液晶メーカーへの営業,一審被告独自の販売戦略などの点における一審被告の貢献が大きく寄与しているものとみられることは,前記(引用に係る原判決第4の2(3))のとおりであり,これに反する証拠はない。よって,一審原告の主張は,採用できない。
(イ)

他方,
一審被告は,
一審被告の販売体制の整備や量産体制の構築等における

貢献が大きいから,その貢献度は少なくとも97~98%であると主張する。しかし,前記(引用に係る原判決第4の2(1))の認定事実に加え,一審被告が,顧客に製品を納入した後も,
顧客によるレンズ実装工程のサポートを行ったこと
(乙
53,54)
,レンズの裏面形状に関する特許(乙61)やバックライトに関する特許(乙62)の出願を行ったこと,金型の改善,梱包方法の変更,出荷検査等の構築を行い,●●●●●●●●の量産体制を実現したこと(乙56,57),レンズ測
定ソフトと測定機器の開発による受入検査実施体制を実現し
(乙58)評価方法に

関する特許出願をしたこと(乙63)等の事情を考慮しても,共同発明者の貢献度が5%を下回るものとは認められず,一審被告の主張は,採用できない。(ウ)

よって,共同発明者の貢献度は,5%(一審被告の貢献度は95%)と認め
られる(別紙(4)「④共同発明者の貢献度(1-被告の貢献度)」欄のとおり。。


共同発明者間における一審原告の貢献度

(ア)

一審原告は,
共同発明者間における一審原告の貢献度は,
少なくとも80%

である旨主張する。
しかし,特許Aの明細書等【0036】の計算式は,甲Ⅰの作成した図4に規定されているδを利用して説明されていること,また,レンズの中央が凹んだ表面形状のレンズが公知であったとしても,本件発明Aにおけるキャップ形状は,公知のレンズとは異なることは,前記(引用に係る原判決第4の2(4)ウ(イ))のとおりである。
そうすると,中央が凹んだ形状におけるシミュレーションを行っていた甲Ⅰの研究成果についても,相応の貢献を認めるべきであり,その貢献が30%を下回ると認めるべき事情はないから,一審原告の主張は,採用できない。
(イ)

他方,一審被告は,発明Aの構成①,②は,甲Ⅰが開発を担当していた「出
射面の中央が凹んでいる面形状」のLED用光拡散レンズ(マッシュルーム型レンズ)を採用したものであり,一審原告の貢献が甲Ⅰの貢献を上回ることはない旨主張する。
しかし,
出射面の中央が凹んだレンズ自体は公知技術であることを考慮するなら,本件発明Aの最も特徴的な構成は,発明Aの構成③にあるというべきところ,この部分については,一審原告の着想によるところが大きいのであるから,一審原告の貢献は甲Ⅰの貢献よりも大きいというべきである。一審被告の主張は,採用できない。
(ウ)

よって,
共同発明者間における一審原告の貢献度は,
70%とすべきである

(別紙(4)「⑤共同発明者間における原告の貢献度」欄のとおり。。)

小括

以上によれば,本件発明Aに係る相当の対価(不足額)は,別紙(4)「本件発明Aに係る当裁判所の判断要旨」のとおり,合計1202万6841円である。3
争点2(本件発明BないしHに係る相当の対価の額)について

(1)

争点2に対する判断は,以下のとおり,原判決を訂正し,下記(2)のとおり,
当審における当事者の主張に対する判断を付加するほかは,原判決の「事実及び理由」の第4の3に記載のとおりであるから,これを引用する。

原判決70頁5行目から7行目の「,B~H実施品の期間売上高には本件特
許Bないし同Hの登録前の期間に係る部分が含まれること
(弁論の全趣旨)を削除

する。

原判決70頁8行目及び9行目の
「10パーセント」
を,
いずれも
「20%」

と訂正する。

原判決73頁6行目から18行目を削除する。


原判決75頁4行目,
76頁14行目の
「別紙10」
を,
いずれも
「別紙(5)」

と訂正する。

原判決別紙10を別紙(5)に改める。

(2)

当審における当事者の主張に対する判断


超過売上率

一審原告は,本件発明BないしH実施品のVカット導光板市場の中でのシェアは平成17年9月時点で60%前後の圧倒的シェアを占めていたから,超過売上率を30%以下と考えるべき理由はない旨主張する。
しかし,前記(引用に係る原判決第4の3(1)イ)のとおり,平成17年当時のLED導光式バックライト市場における「PSP-LGP」のシェアは,大型の導光式バックライトに限定すると60%前後であるものの,全体では30%弱である。そして,前記(引用に係る原判決第4の3(1)イ,ウ)認定の「PSP-LGP」の売上げの推移,代替技術の存在等の事情を総合考慮するなら,本件発明BないしHの総体に基づくBないしH実施品の超過売上率は,20%とするのが相当である。よって,本件発明BないしHの超過売上率は,20%である(別紙(5)「②超過売上率」欄のとおり。。


仮想実施料率

一審原告は,累積ロイヤリティも加算すべきであるから,本件発明BないしHの仮想実施料率が5%を下回ることはないと主張する。しかし,一審原告は,加算すべき理由や具体的な累積ロイヤリティ料率を主張するものではなく,仮想実施料率が5%を下回ることはないとすべき根拠があるとはいえないから,採用できない。よって,本件発明BないしHの仮想実施料率は,1%である(別紙(5)「③仮想実施料率」欄のとおり。。


小括

本件発明BないしHについての期間売上高,共同発明者の貢献度,一審原告の貢献度,特許寄与率,既払金が,別紙(5)の「①期間売上高」欄,「④発明者・共同発明
者の貢献度
(1-被告の貢献度)欄,
」「⑤共同発明者間における原告の貢献度」
欄,
「⑥特許寄与率」欄,
「⑦既払金」欄記載のとおりであることは,当事者間に争いがない。
以上によれば,本件発明BないしHに係る相当の対価の額(不足額)は,別紙(5)「本件発明BないしHに係る当裁判所の認定判断の要旨」のとおりである。いずれも,既払により存在しない。
4
結論

以上の次第で,一審原告の請求は,本件発明Aに係る相当の対価(不足額)として,一審被告に対し,合計1202万6841円及びこれに対する平成21年8月8日から支払済みまで年5分の割合による金員の支払を求める限度で理由があるから,これを認容し,その余は理由がないから,棄却すべきである。したがって,一審被告の本件控訴は一部について理由があるから,原判決を変更して一審原告の請求を上記の限度で認容し,その余は理由がないから棄却し,一審原告の本件控訴は理由がないから,これを棄却することとして,主文のとおり判決する。
知的財産高等裁判所第4部

裁判長裁判官

高部眞
裁判官

古河謙一
裁判官

関根澄子規子
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