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観察処分期間更新決定取消請求事件
事件番号平成27(行ウ)331
事件名観察処分期間更新決定取消請求事件
裁判年月日平成29年9月25日
法廷名東京地方裁判所
結果その他
裁判日:西暦2017-09-25
情報公開日2019-02-02 13:01:35
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平成29年9月25日判決言渡

同日原本領収

平成27年(行ウ)第331号

観察処分期間更新決定取消請求事件

平成28年(行ウ)第526号

訴えの追加的変更申立て事件

口頭弁論終結の日

裁判所書記官

平成29年6月1日
判決主文1
原告の主位的請求を棄却する。

2
処分行政庁が,平成27年1月23日付けで,麻原彰晃こと松本智津夫を教祖・創始者とするオウム真理教の教義を広め,
これを実現することを目的とし,
同人が主宰し,同人及び同教義に従う者によって構成される団体に対してした,別紙2決定目録記載の決定のうち,原告を対象とした部分を取り消す。
3
訴訟費用は被告の負担とする。

第1章
第1
1実及び理由
事案の概要等
請求
主位的請求(平成28年(行ウ)第526号)
処分行政庁が,平成27年1月23日付けでした別紙2決定目録記載の決定
が,原告に対しては存在しないことを確認する。
2
予備的請求(平成27年(行ウ)第331号)
主文と同旨

第2

事案の概要
本件は,処分行政庁が,無差別大量殺人行為を行った団体の規制に関する法律(以下団体規制法という。
)5条4項及び5項に基づき,
麻原彰晃こと松本智津夫(以下「松本という。
)を教祖・創始者とするオウム真理教の教
義を広め,これを実現することを目的とし,同人が主宰し,同人及び同教義に従う者によって構成される団体」
(以下本団体という。
)に対してした,公
安調査庁長官の観察に付する処分の期間更新等に係る決定について,原告が,主位的に同決定が原告に対して存在しないことの確認を求め,予備的に同決定のうち原告を対象とした部分の取消しを求める事案である。
1
団体規制法の定め
本件に関係する団体規制法の定めは,別紙3団体規制法の定めに記載のとおりである(なお,同別紙において定義した略語は,本文においても用いることとする。。


2
前提事実(証拠等を掲げていない事実は当事者間に争いがない。

当事者等

昭和59年2月頃,松本を教祖・創始者として,
オウム神仙の会が活
動を開始し,昭和62年7月頃,
オウム真理教にその名称を変更し,松
本の説くオウム真理教の教義を広め,これを実現することを目的として活動が続けられ,平成元年8月25日,東京都知事から宗教法人法に基づく規則の認証を受けて,
同月29日,
宗教法人
オウム真理教
(代表役員
松本智津夫
)の設立の登記がされた(乙E1,2,5,6)



オウム真理教の構成員は,平成6年6月27日,長野県松本市内で,サリンを散布し,8名を殺害するとともに,143名にサリン中毒症の傷害を負わせる事件(以下松本サリン事件という。
)を敢行した(乙E1)

オウム真理教の構成員は,平成7年3月20日,東京都内を走行中の地下鉄電車5本内でサリンを散布し,12名を殺害するとともに,3000名を超える者にサリン中毒症の傷害を負わせる事件(以下地下鉄サリン事件といい,松本サリン事件と併せて両サリン事件という。)を敢行
した(乙E1)



オウム真理教は,平成7年12月19日,宗教法人法に基づく解散命令が確定し,その清算手続中の平成8年3月28日,破産宣告がされた(乙E1,5)

公安調査庁長官は,同年7月11日,処分行政庁に対し,オウム真理教について破防法7条の解散指定処分の請求
(以下
解散指定請求
という。

をしたが,処分行政庁は,平成9年1月31日,同請求を棄却する旨の決定をした(乙E9)


平成12年2月4日,
宗教団体・アレフが正式に発足された旨及びP
1がその代表者に就任した旨公表された(乙E8)

宗教団体・アレフは,平成15年2月6日には,その名称を宗教団体アーレフに変更し,さらに,平成20年5月20日には,その名称をAlephに変更した(乙B3の86。以下,同団体を,その名称変更の前後を問わず,
Alephという。。

P2は,
平成19年5月7日,
原告の設立を発表した
(乙B3の110,
E24)

観察処分及びその期間更新決定の経緯


公安調査庁長官は,平成11年12月27日,処分行政庁に対し,別紙2決定目録記載

被請求団体につき,団体規制法5条の観察処分の請

求をし,処分行政庁は,平成12年1月28日,本団体を,3年間,公安調査庁長官の観察に付するとともに,団体規制法5条2項5号及び3項6
(以下,この決定を本件観察処分という。
)をし,同月31日,本団体
の代理人にその旨通知し,同年2月1日,官報に公示した(乙A9)。
被請求団体の構成員に関する出家信徒及び在家信徒の別並びに出家信徒の位階
被請求団体作成のインターネット上のホームページに係る接続業者名,契約名義人の氏名及び掲載の管理・運営責任者の氏名

処分行政庁は,平成15年1月23日,本団体に対する観察処分の期間を,3年間,更新する旨決定(以下,この決定を第1回更新決定という。
)し,Alephの代理人にその旨通知し,同月29日,官報に公示した。なお,同決定においては,団体規制法5条5項において準用する同条3項6号に規定する公安審査委員会が特に必要と認める事項として,ならないものと
された(乙A11)


処分行政庁は,平成18年1月23日,本団体に対する観察処分の期間を,3年間,更新する旨決定(以下,この決定を第2回更新決定という。
)し,Alephの代理人にその旨通知し,同月30日,官報に公示した。同決定においては,団体規制法5条5項において準用する同条3項6号に規定する公安審査委員会が特に必要と認める事項として,上記ア
のとされた(乙A13)

被請求団体(その支部,分会その他の下部組織を含む。以下,この項において同じ。
)の営む収益事業(いかなる名義をもってするかを問わず,実
質的に被請求団体が経営しているものをいう。
)の種類及び概要,
事業所の
名称及びその所在地,当該事業の責任者及び従事する構成員の氏名並びに各事業に関する会計帳簿を備え置いている場所(その会計帳簿が電磁的記録で作成されている場合には,当該電磁的記録媒体の保管場所)

処分行政庁は,平成21年1月23日,本団体に対する観察処分の期間を,3年間,更新する旨決定(以下,この決定を第3回更新決定という。
)し,原告の代理人及びAlephの代理人にその旨それぞれ通知し,同月30日,官報に公示した。なお,同決定においては,団体規制法5条5項において準用する同条3項6号に規定する公安審査委員会が特に必要と認める事項として,第2回更新決定と同様の事項を公安調査庁長官に報告しなければならないものとされた(乙A15)

同決定の決定書において,被請求団体の表示欄には主たる事務所の所在地として,①埼玉県越谷市ad丁目e番f号▲▲▲マンションg号室,東京都世田谷区bh丁目i番j号

▲▲ハイム
k階が表示され,
主幹者としてP3,P4及びP2の3名が表示されている(なお,本件観察処分,第1回更新決定及び第2回更新決定の各決定書においては,主たる事務所の所在地として1つの所在地のみが表示され,
主幹者
として1名の氏名のみが表示されている。乙A9,11,13,15)。

処分行政庁は,平成24年1月23日,本団体に対する観察処分の期間を,3年間,更新する旨決定(以下,この決定を第4回更新決定という。
)し,原告の代理人及びAlephの代理人にその旨それぞれ通知し,同月30日,官報に公示した。なお,同決定においては,団体規制法5条5項において準用する同条3項6号に規定する公安審査委員会が特に必要と認める事項として,第2回更新決定と同様の事項を公安調査庁長官に報告しなければならないものとされた(乙A17)

同決定の決定書において,被請求団体の表示欄には主たる事務所の所在地として,①埼玉県越谷市ad丁目e番f号▲▲▲マンションg号室,②東京都世田谷区bh丁目i番j号▲▲ハイムl号室が表示され,主幹者」
としてP5,P6びP2の3名が表示されている(乙A17)。カ処分行政庁は,平成27年1月23日,本団体に対する観察処分の期間を,3年間,更新する旨決定(別紙2決定目録記載の決定。以下,この決定を「本件更新決定という。)し,原告の代理人及びAlephの代理人
にその旨それぞれ通知し,同月30日,官報に公示した。なお,本件更新決定においては,団体規制法5条5項において準用する同条3項6号に規定する公安審査委員会が特に必要と認める事項として,第2回更新決定と同様の事項を公安調査庁長官に報告しなければならないものとされた(乙A5)

同決定の決定書において,被請求団体の表示欄には主たる事務所の所在地として第4回更新決定と同様の表示がされ,主幹者としてP7,
P8及びP2の3名が表示されている(乙A5)


第3

原告は,平成27年6月1日,本件訴えを提起した(顕著な事実)。

争点

1
原告が,本件更新決定の対象団体に含まれるか。原告とAlephが一つの団体であるか。
【争点1】

2
松本が,両サリン事件の首謀者であり,本件更新決定時も本団体の活動に影響力を有しているか(団体規制法5条1項1号該当性)【争点2】。

3
P9が本団体の構成員であるか(団体規制法5条1項2号該当性)。P2が,
両サリン事件当時,オウム真理教の役員であったか,また,本件更新決定時,本団体の役員であるか(団体規制法5条1項3号該当性)【争点3】。

4
本団体が殺人を暗示的に勧める綱領を保持しているか(団体規制法5条1項4号該当性)【争点4】


5
本団体に,無差別大量殺人行為に及ぶ危険性があると認めるに足りる事実があるか(団体規制法5条1項5号該当性)【争点5】


6
本団体に,引き続き活動状況を継続して明らかにする必要があるか(団体規制法5条4項該当性。【争点6】


第2章
第1

当事者の主張
争点1(原告とAlephの関係等)について

【被告の主張】
1
本団体の団体該当性等
団体規制法が,団体の活動として行われた無差別大量殺人行為に着目して規制対象としたのは,①無差別大量殺人行為の結果,両サリン事件のように不特定かつ多数人の生命・身体に対し,極めて甚大な被害をもたらすこと,②かかる無差別大量殺人行為を団体の活動として行う場合には,秘密裏に計画が準備され実行に移されることから,犯行の事前把握が極めて困難であること,③団体の活動として行われる無差別大量殺人行為が,しばしば反復累行されると考えられたことによるものと解される。そして,団体が達成しようとする特定の共同目的
(団体規制法4条2
項)当該団体の構成員が本来的に有していた個人的意思や良心を変質・が,
変容させたり,上記個人的意思や良心を超えて団体として行動する際の指針として機能し行動を正当化させ,構成員において,かかる特定の共同目的に従って行動するがゆえに,①構成員が不特定かつ多数人の生命・身体を無差別に標的とする無慈悲な行為に及ぶことを可能ならしめ,構成員において,
特定の共同目的を達成するという信念を有しているがゆえ
に,②多種多様な方法で,秘密裏に計画・準備をすることによって,実現可能性を高めることとなり,
かつ,目的を実現するまでは反復累行する

可能性が高くなるということができる。
このように,団体規制法が規制対象とした団体による無差別大量殺人行為が行われるのは,
特定の共同目的
が存在するからであることからする
と,同法にいう団体概念を画する際には,
特定の共同目的の存在の
要件に重きが置かれており,
結合体
(団体規制法4条2項)の要件も,
この特定の共同目的との関連において解釈されなければならないというべきである。

以上のとおり,団体規制法は,多数人の間に特定の共同目的が存在し,当該共同目的を達成するために当該個々の多数人の意思を離れて独自の意思決定が行われ,当該意思決定を当該多数人が実現する行為を行うことになる関係が当該多数人の間に継続的に存在している場合に,そこに規制の対象とする必要のある団体性を見いだしたものと解される。
また,
団体としての無差別大量殺人行為が行われるのは,
特定の共同目的が,構成員の個人的意思・良心を変容させたり,上記個人的意思や良心を超えて団体として行動する際の指針として機能し行動を正当化させるからであると認められるところ,かかる観点からは,
特定の共同目的を
中心に据えて団体概念を解釈すべきである。
そうすると,団体規制法4条2項にいう特定の共同目的は,多数人の集団に,個々の構成員個人の意思とは離れて独自に形成され,又は存在する目的であって,構成員各人が当該集団としての行動をする際の指針となり得ると評価できるような目的をいうものと解される。

他方,団体規制法4条2項は,
団体の要件として,
多数人の継続的結合体であることも要求しているが,この要件は,特定の共同目的と
の関連において把握されるべきものであり,その結びつきの強さの程度としては,各構成員がこの共同の目的を達成するためにこれに沿った行動をとり得る相互関係にあることが認められれば,同項にいう結合体に該当するものと解される。
すなわち,団体規制法の目的は,団体の活動として行われる無差別大量殺人行為の特性を踏まえ,過去に無差別大量殺人行為を行った団体について,現在も危険な要素を保持していると認められる場合に,迅速かつ適切に対処し,もって国民の生活の平穏を含む公共の安全に寄与するところにある
(同法1条)また,

団体の活動として行われる無差別大量殺人行為は,
特定の共同目的
が存在するから行われるものであることや,
同一の
特定の共同目的の達成を目指しながら,その達成のための方法論等の違いによって離合集散が行われつつも,無差別大量殺人行為が累行されているという実情も存在する。かかる実情を踏まえるならば,無差別大量殺人行為に及ぶ前の段階において各構成員に具体的な意思連絡がなくても,各構成員において特定の共同目的に沿った行動をとり得る関係にある場合には,団体の活動としての無差別大量殺人行為を計画・準備・実行する段階においては,
特定の共同目的を達成するために各構成員が結集して,
団体の活動として無差別大量殺人行為の実行に至る危険性が常に存在するということができる。したがって,
結合体について上記のように解する
のが団体規制法の目的や趣旨に沿うものと解される。

本団体は,松本を教祖・創始者として結成され,松本の説く教義を広め,これを実現することを共同の目的とし,その目的を達成するための多数人の継続的結合体であるから,団体規制法の団体に該当する。
次に,両サリン事件は,団体規制法4条1項にいう無差別大量殺人行為
に該当する上,松本の説く教義を根本とし,松本に対する絶対的帰依を要求する本団体にあって,その政治上の主義を推進するため,絶対者である松本がこれを実行することを団体意思として決定し,団体の施設を用い,団体の資金でサリンを製造し,かつ,松本の指示を受けた役員,構成員らにおいて,その団体意思を実現するために実行したものであり,本団体が両サリン事件をその団体の役職員又は構成員が当該団体の活動として行ったものである。
したがって,本団体は,団体規制法5条1項所定のその団体の役職員又は構成員が当該団体の活動として無差別大量殺人行為を行った団体に該当する。
松本は,宗教団体である本団体において,その教祖であり,平成元年8月の宗教法人オウム真理教の設立時から解散時まで,代表役員の地位にあった上,実際にも,本団体においては,本件更新決定時においても,松本を尊師,グルと尊称し,主神であるシヴァ神の化身と位置づけるなど,これに対する絶対的な帰依を維持しており,松本が,本件更新決定時も,本団体の代表者であると認められる。
2
原告を含む本件更新決定の対象団体と本件観察処分を受けた団体との同一性
団体規制法5条4項は,
更新決定の対象として,
第1項の処分を受けた団体
,すなわち,同条1項の観察処分を受けた団体と規定しているのであるから,更新決定を受ける対象団体と当初の観察処分を受けた対象団体との間には,同一性が保持されている必要があることはいうまでもない。他方,更新決定は,観察処分から相当期間が経過した後に行われることもあらかじめ予定されているものであり,観察処分時から相当期間が経過すれば,対象団体の名称や構成員又は組織構成等に変動が生じ得ることもまた経験則上容易に想定されるところである。そして,団体規制法は,団体概念を特定の共同目的を達成するための多数人の継続的結合体と定めた上で,同法5条4項において第1項の処分を受けた団体に更新決定を行うことを認めている。すなわち,団体規制法は,当初の観察処分からの期間の経過により,対象団体の名称や構成員又は組織構成等に変動が生じた場合にも,特定の共同目的を達成するための多数人の継続的結合体としての同一性が認められるときには,対象団体の同一性を認めることを予定している。
そして,上記1で述べたとおり,団体規制法の規制対象である団体による無差別大量殺人行為が行われるのは,
特定の共同目的が存在するからであ
って,
団体概念については,
特定の共同目的を中心に据えて解釈され
なければならない。そのため,団体の同一性を判断するに当たっても,構成員個人の意思とは離れて当該団体としての行動をする際の指針となり得る特定の共同目的に同一性があるかどうかという点が最も重要であり,各構成員が当該共同目的を達成するために決定された団体の意思を各構成員が実現する行為を行うなどの共同の目的に沿った行動をするという点において,基本的な結合関係がなお保持されているか否かという点も検討される必要がある。そうすると,団体規制法の規制対象である団体が分派又は分裂したかのように装っている場合はもちろん,分派又は分裂し外形的に別個に活動しているように見える状態に至った場合であっても,依然として,構成員の間に特定の共同目的が存在し,当該共同目的を達成するために個々の構成員を離れて決定された団体の意思を各構成員が実現する行為を行うことになるという結合関係が存在するのであれば,分派又は分裂前の団体を対象とした規制の効力は,分派又は分裂して細分化した各集団のいずれにも及ぶと解され,それら各集団は,団体規制法上は,依然として一つの団体とみるべきである。
本団体における特定の共同目的は,オウム真理教の教義を広め,これを実現することであり,オウム真理教とは,その教義に従う者が自らの意思を捨てて松本の意思に従い,これを自らの意思として行動することを,全行動を支配する唯一絶対のものとするところに,その教義の核心がある。そのため,本団体においては,構成員がオウム真理教の教義を広め,これを実現するという特定の共同目的を有しており,かかる共同目的を達成するために行動する場面においては,松本は教義を説き,明示的又は黙示的に意思や指示を示し,構成員は,松本が明示的な意思や指示を示した場合はこれに従い,これがない場合であっても,松本の過去の説法等や本団体の教義に顕現された松本の意思を推し量って行動していることが認められる。これは正に特定の共同目的(オウム真理教の教義を広め,これを実現すること)を達成するために個々の構成員の意思を離れて決定された団体の意思を各構成員が実現する行為を行うことになる関係にほかならず,団体の活動としての行為を行うものにほかならない。
そうすると,本団体が本件観察処分を受けた団体と共同目的を達成するための多数人の継続的結合体として同一性を有するかどうかを判断するに当たっては,団体の名称や構成員,組織構成の変更等の表面的・形式的事情にとらわれるのではなく,本団体の結合関係において同一性が保持されているかどうか,すなわち,構成員が松本を絶対的な帰依の対象とし,松本が明示的な意思や指示を示した場合はこれに従い,これがない場合であっても,松本の過去の説法等や本団体の教義に顕現された松本の意思を推し量って行動することにより,オウム真理教の教義を広め,これを実現するという特定の共同目的を達成するために活動しているか否かを実質的に検討すべきものである。
以下の事情に照らせば,原告は,オウム真理教の教義を広め,これを実現するために,麻原隠しの一環として設立され,活動している団体であり,本件更新決定時においても,この評価に変わりはないというべきである。
松本の意思は,破防法の適用を回避するため,本団体を組織として存続させることにあり,そのためであれば,松本は,本団体の危険性の除去の仮装や組織分割をいとわなかった。
P2は,平成11年頃から平成14年頃までの間,対外的な説明と本団体構成員に対する説明を使い分けており,観察処分等を免れて組織存続を図るために麻原隠しを全面的に推し進め,本団体の危険性除去の仮装を行っていた。P2らは,平成17年頃から原告設立に至るまでの間においても,組織存続のために本団体の危険性の除去の仮装及び組織分割が必要であるとする松本の意思に基づいて活動していた。
原告設立後における大黒天及び三仏の取扱いの変更並びに思想・哲学の教室への改変は,過去の過ちに対する真摯な反省に基づき,原告を含む本団体の在り方自体を変化させていくものとして実施されたものということはできない。むしろ,実際には,松本と同一視される大黒天や三仏を崇拝対象としながら,形式的な取扱いのみ変更し,松本の絶対者性の否定及び危険な教義の棄教をそれぞれ装うことにより,観察処分等の適用を免れ,組織存続を図るという松本の意思の実現を目的としたものであると評価し得る。その余の内観や外部監査等の施策についても同様である。

Alephにおいては,構成員が松本を絶対的な帰依の対象とし,松本が明示的な意思や指示を示した場合はこれに従い,これがない場合であっても,松本の過去の説法等や本団体の教義に顕現された松本の意思を推し量って行動することにより,オウム真理教の教義を広め,これを実現するという特定の共同目的を達成するために活動している。いわば,Alephは,
オウム真理教の教義を忠実に承継することによって,同教義を広め,実現するという特定の共同目的を達成しようとしているものと認められる。
他方,原告についていうと,形式的・表面的には,松本の絶対者性を否定したり,
オウム真理教の教義を放棄したりという方策を打ち出している。
しかしながら,松本が,なり振り構わぬ組織存続のために本団体の危険性の除去の仮装を意図し,その具体的方法として,松本の絶対者性の否定と危険な教義の棄教を挙げていたことからすれば,
結局のところ,P2らは,
松本の明示的な意思や指示,あるいは松本の過去の説法等の本団体の教義に顕現された松本の意思を推し量って行動することにより,Alephとは異なる方法論の下,オウム真理教の教義を広め,これを実現するという特定の共同目的を達成するために活動しているといえる。
以上を踏まえれば,原告及びAlephについては,オウム真理教の教義を広め,これを実現するという特定の共同目的を達成するために活動しているといえるから,
従前の基本的な結合関係が維持されており,
特定の共同目的を達成するための多数人の継続的結合体に含まれる重要な一部をなす集団であると認められる。
【原告の主張】
1
原告が本件更新決定を受けた本団体ではないこと
原告においては,オウム時代を時系列に詳細に分析し,松本やその教①
義への信仰に関する具体的かつ詳細な反省をした総括,心理学的な知見や松本の幼少期からの人格を調査した広汎な資料に基づき松本が人格障害者であったと結論づけた総括,役員を始めとする専従会員・非専従会員個人によるオウム時代の総括などを行い,徹底したオウム時代の反省・総括の取組みがされ,専従会員の居住状況は,大規模施設や集団居住が完全に②
解消され,オウム型の出家制度は廃止され,専従会員には個人資産の保有が相当に認められ,親族や外部との交流がある開放的なものとされ,③平成21年2月以降,甲大学●学部のP10教授の指導を受け,組織的に自己反省法内観を実践し,オウム時代の反省・総括を一層深め,④外部監査委員会を設置し,外部識者の監査や指導を受け,⑤様々な機会に一般人や社会との交流がされている。
原告は,設立当時から,従来の宗教の最も悪い点を凝縮していたともいえるオウム真理教と松本に対する反省・統括に基づく方針として,従来の宗教とは違った21世紀の新しい宗教,新しい思想を目指すことを掲げ,平成24年頃からは,宗教という言葉から離れ始め,新しい智恵の学びの場と自己規定するようになり,平成25年には自らを哲学教室と規定するに至った。原告は,同年12月に基本理念を改正し,特定の存在に対する絶対視や盲信を否定するとともに,人間から分離された超越的絶対者を崇拝することなく,理性を十分に維持して,私たち自身の内側や周辺の現実世界の中に神聖なる存在を見いだして尊重していく実践を行うべく,団体を思想哲学の学習教室,哲学教室と正式に位置付け,以降,祭壇の廃止,供養の儀礼の廃止,
大黒天関係の法具の破棄,
三仏の廃止,
聖音水の廃止,
密教修行の廃止,哲学教室に相応しい教材への改革等を行った。
以上のとおり,原告は脱麻原の諸改革を実行したのである。

代表のP2を始めとして原告の指導員は,自らのオウム・アレフ時代の反省・総括を公表し,松本・オウム・アレフを徹底的に批判する活動を広汎に行っている。原告は,Aleph信者がAlephから脱会できるよう支援したり,新たにAlephに入会する者が生じないよう未然に防止したりする活動に取り組んでいる。オウム真理教犯罪被害者支援機構は,同支援機構が有するオウム真理教の著作物の著作権に基づき,同著作権を侵害しないよう求めて,Alephを相手に東京地方裁判所での調停手続を進めているところ,原告は,オウム真理教の著作物全体を網羅的に調査し,同支援機構に著作権があることを立証する証拠資料を提供するなど,同支援機構への協力を行っている。以上のとおり,原告は,
反麻原反,オウム反Alephの諸活動を行い,全力でオウム真理教の教義の,
流布を防いできた。
団体規制法にいう団体とは,特定の共同目的を達成するための多数人の継続的結合体又は連合体をいうとされるところ,観察処分の更新のためには,原告の一部が特定の共同目的を有しているかどうかではなく,原告の全員若しくは大多数が特定の共同目的を有していることが立証されなければならない。
また,本件観察処分の被処分団体は,松本を教祖・創始者とするオウム真理教の教義を広め,これを実現することを目的とし,同人が主宰し,同人及び同教義に従う者によって構成される団体とされており,観察処分の更新のためには,原告がオウム真理教の教義を広め,これを実現することを目的とし,松本が主宰し,同人及び同教義に従う者によって構成される団体であると立証されなければならない。
処分行政庁によれば,本団体の教義の要旨は,
主神をシヴァ神として崇拝し,創始者である松本の説く教えを根本とし,全ての生き物を輪廻の苦しみから救済して,絶対自由・絶対幸福・絶対歓喜の世界(マハー・ニルヴァーナ,涅槃の境地)に導くことを最終の目的として,シヴァ神の化身である松本に対する絶対的な浄信と帰依を培った上,自己の解脱・悟りに到達する道である小乗(ヒナヤーナ)を修めるとともに,衆生の救済を主眼とする道である大乗(マハーヤーナ)及び衆生救済の最速の道である秘密金剛乗(タントラ・ヴァジラヤーナ)の各修行を実践する。というものとされ,その行動規範は,松本の説く教義に従い,最終目的である衆生救済の実践のため,教団の拡大と多数の解脱者の輩出という活動方針に従い,結果のためには手段を選ばず,殺人をも勧める内容を含むタントラ・ヴァジラヤーナ及びその具体的規範である五仏の法則に則って行動することであるとされている。しかし,①原告には,いかなる崇拝対象もなく,松本の説く教義を根本とせず,その教義を徹底的に批判しているのであって,主神をシヴァ神として崇拝し,
創始者である松本の説く教えを根本としておらず,②輪廻転生思想を信仰しておらず,マハー・ニルヴァーナの教義もなく,それに導くことを最終目的にしてもいないし,松本に対する絶対的な浄信と帰依を培ってお③
らず,逆に絶対的な浄信と帰依の教えを完全に破っており,④小乗,大乗,秘密金剛乗という教義はなく,
既に仏教の密教を含めた三乗の思想を破棄し,
⑤仏教を信仰しておらず,仏教が説く衆生救済を最終目標にしておらず,宗教ではなく哲学教室であるから,そもそも教団ではなく,松本の説いた多数の解脱者の輩出という活動方針もなく,タントラ・ヴァジラヤーナ及び五仏の法則に則って行動することもなく,逆に五仏の法則を破っている。以上のとおり,原告は,本団体における特定の共同目的を有していない。以上のとおり,原告は,本団体の一部をなす集団ではなく,本件更新決定の効力が及ばない。
2
Alephとの関係
原告とAlephは,この約10年間にわたって激しい対立関係にあり,両者の各構成員が互いに共同の目的に沿った行動をとる相互関係にないことは現実的にも明らかである。被告が主張する継続的結合体の定義では,観察処分の対象も期間も際限なく拡大されてしまい,条文の拡張解釈を戒め,謙抑的運用を規定する団体規制法の趣旨に反することになる。
P2は,平成18年前半以前は,松本から自立することを欲する一方で,完全には松本から脱却しきれない未熟さや弱さがあったため,別団体や松本からの自立を肯定する内容の松本の言葉や説法を利用して,段階的に松本から脱却しようと葛藤していたのであり,特に平成17年頃は,松本家を中心とした松本を絶対視するグループからの批判・攻撃を和らげ,これに従わずにP2派の活動をしやすくしようとする意図もあった。
その後,P2においては,平成18年前半から平成19年のアーレフ脱会までにかけて,大きな変化が生じ,完全といってよいほどに松本からの脱却が図られ,松本の意思に反し,本当の意味で松本を否定し,松本の教義を越えた全くの新団体を創設する意思を固めていった。
原告においては,平成18年10月から11月に開かれた出家信者の総会での話合いの結果,全ての松本の教材を破棄することが決まり,これ以降現在に至るまで,団体として,個人として,松本からの真の脱却のための様々な努力が積み重ねられた。
松本が存続を意図していた組織は,飽くまでも,形を変えながらも実質的には松本を信仰する宗教組織にほかならず,松本が示していたという絶対者性の否定は,単に松本が教団の代表者及び教祖の地位を降りるということにすぎず,絶対者性の否定という性格を持つものですらない。また,P2が平成11年12月までの服役中に作成したノートの記載も,飽くまで松本の尊重を基盤とするものであった。松本が示していたという危険な教義の棄教についても,タントラ・ヴァジラヤーナやその教本を封印するというにとどまり,飽くまでも松本への絶対的帰依は教義の根幹として存置するものであった。
これに対し,原告は,松本への信仰はおろか,全く正反対に松本を人格障害者と位置付けて根本的に否定し,松本や松本のような人物への帰依を行わせないための活動を徹底して展開しており,松本が存続を意図していた組織に当たるものではなく,原告の行動は,松本の意思に反するものである。以上のとおり,原告は,Alephとは別の団体である。
第2

争点2(団体規制法5条1項1号該当性)について

【被告の主張】
1
具体的危険性の要否
団体規制法は,無差別大量殺人行為が,不特定かつ多数の人の生命・身体に極めて甚大な被害をもたらすものである上,事前にその発生を防止することが困難で,反復して行われる危険性が高いという特質を有していることから,過
去に無差別大量殺人行為を行った団体が,
現在も団体の属性として危険な要
素を保持している場合には,
当該団体の活動状況を継続して明らかにし又は
当該行為の再発を防止するために必要な規制措置をなし得る場合を定めたものである。
このような観点から,団体規制法5条1項柱書は,過去に団体の役職員又は構成員が当該団体の活動として無差別大量殺人行為を行った団体が,同項
各号に掲げる事項のいずれかに該当し,
その活動状況を継続して明らかにす
る必要があると認められる場合には,
当該団体に対して観察処分をすること
ができると規定しているのであるから,同項1号ないし4号について,名文で規定された要件とは別に,
当該団体に再び無差別大量殺人行為の準備行為
を開始するとの点についての具体的危険性を要するものと解すべき必然性はない。むしろ,同項5号は,
前各号に掲げるもののほか
,当該団体に無
差別大量殺人行為に及ぶ危険性があると認めるに足りる事実があることと規定しているのであるから,団体規制法は,同項1号ないし4号に掲げられた事項のいずれかが認められれば,類型的に,当該団体について,団体の属性として無差別大量殺人行為に及ぶ危険性があると認めるに足りる事実があるとみなしていると解される。
2
松本が無差別大量殺人行為の首謀者であること
首謀者とは,無差別大量殺人行為そのものの計画,遂行について,組織集団での最高の主導的役割を担う者を意味するところ,両サリン事件は,いずれも松本が独裁者として統治する祭政一致の専制国家を樹立するという政治上の主義を実現するために,松本が,各犯行を実行することを決定し,本団体の構成員らに指示するなどしたものであり,松本は両サリン事件の首謀者である。3
首謀者である松本が本件更新決定時も本団体の活動に影響力を有していること
影響力を有しているとは,特定の者の言動が,団体の活動の方向性を左右する力あるいは内容に変化を生じさせる力を有していることをいい,ここにいう特定の者の言動には,現時点の直接的な言動のみならず,現時点で本人によって否定されていない過去の言動も含まれる。
そもそも,原告は,松本に対して帰依し,松本の説くオウム真理教の教義に従う者によって,観察処分等を免れ,松本の意思を実現することを目的として組織されたものである。また,現在においても,実質的には松本やオウム真理教の教義に絶対的に帰依することを説いている。さらに,松本自身がオウム真理教の特色であると説く修行体系とほぼ同様の修行体系を維持している。これらに加えて,原告の幹部構成員らが両サリン事件を正当化する発言をしているなど,構成員の言動にも松本に対する深い帰依や同人の説くオウム真理教の教義に従う意思が随所に認められる。
そして,原告がその一部を構成する本団体においては,第4回更新決定後も,①Alephの幹部構成員らが,各地における説法や機関誌を通して,構成員に対し,松本を,主神であるシヴァ神の化身であり,かつ,教祖であると位置付け,尊師,グルと尊称し,松本及び同人の説くオウム真理教の教義への絶対的帰依や松本の説く衆生救済の実現の重要性を強調した指導をしていること,松本が行ったタントラ・ヴァジラヤーナの実践や日本シャン②
バラ化計画等の危険な説法を細部まで忠実に再現した教材等を使用してAlephの構成員に教学させ,また,松本の説法の音声を再生する中,松本への帰依をうたった詞章を大声で唱和させたり,繰り返し立位礼拝をさせたりするほか,松本が直接指導していた頃と同様のPSI(パーフェクト・サーヴェーション・イニシエーション。松本の脳波が注入されるとする器具。)の装着を奨励するなどといったマインドコントロールの手法を用いた儀式・修行を行うなどして,自己の意思や思考を捨て,松本及び同人の説くオウム真理教の教義に絶対的に従う意識を扶植する指導を行っていること,Al③
ephにおいて,殺人を暗示する危険な教義等を説いた松本の説法を収録したDVCAMやDVDを依然として保管し続けていること,Alephの④
幹部構成員らが,松本が拘置されている特定の刑事施設を聖地と称し,その周辺に赴く行為を巡礼と称して構成員に奨励しているほか,松本の誕生を祝う催しを開いたり,構成員に対し,説法を通して死刑判決が確定した松本の死刑執行の回避や延命を祈願するよう指導したりしていること,Alep⑤
hにおいては,松本の指示に従い,松本の子を王権(ここでいう王権とは,松本の系譜のことであり,長男,二男へ継承される権威を指す。)の後継者として扱っていること,Alephの構成員が両サリン事件を正当⑥
化する発言等をしているなど,構成員の言動にも松本に対する深い帰依や同人の説くオウム真理教の教義に従う意思が随所に認められること,といった各事情が認められる。
これらの事実からすれば,現在においてもなお,松本及び同人の説くオウム真理教の教義が本団体の存立,運営の基盤をなしていることが認められ,松本が,その活動に絶対的ともいえる影響力を有している。
4
小括
したがって,本団体は団体規制法5条1項1号に該当する。

【原告の主張】
1
具体的危険性の要否
かつて無差別大量殺人行為を行った団体及びその構成員といえども,そのような行為に再び及ぶおそれがない限り,通常の宗教団体又は一般市民として信教の自由等が保障されるべきであるから,その信教の自由等の制限が許されるためには,当該団体が再び無差別大量殺人行為の準備行為を開始するという一般的,抽象的な危険があるというだけでは足りず,その具体的な危険があることが必要であり,団体規制法5条1項各号の要件を満たすためには,当該団体に再び無差別大量殺人行為の準備行為を開始するとの点についての具体的危険性が必要であると解すべきである。
2
団体規制法5条1項1号該当性
上記第1【原告の主張】のとおり,原告は,松本の意思を実現することを目的として組織されたものではなく,現在も松本の教義に絶対的に帰依することを説いているなどということもなく,松本やオウム真理教の修行体系と同様の体系を維持していることもない。
被告が,本団体が松本の影響力を受けていると主張する根拠は,いずれもAlephに関する事項であって,原告は無関係である。

3
小括
したがって,原告は団体規制法5条1項1号に該当しない。

第3

争点3(団体規制法5条1項2号及び3号該当性)について

【被告の主張】
1
団体規制法5条1項2号該当性
P9は,松本サリン事件に幇助犯として関与した者であり,無差別大量殺人
行為に関与した者と認められるところ,平成15年4月5日付けで本団体への再度の入会手続を行い,本団体において,同年5月15日付けの公安調査庁長官宛て第14回報告書以降,P9をAlephに入会した在家信徒として報告し,それ以来,一貫して本団体の構成員として扱っているものと認められ,これらのことから,P9は,本件更新決定時において本団体の構成員である。以上のとおり,無差別大量殺人行為に関与した者のうち,P9については,本件更新決定時においても本団体の構成員であると認められ,本団体は団体規制法5条1項2号に掲げる事項に該当する。
2
団体規制法5条1項3号該当性
団体規制法5条1項3号に規定する役員とは,
団体の意思決定に関与し得るものであって,当該団体の事務に従事するものをいうとされている。両サリン事件当時,P2は,本団体において松本に次ぐ地位である正大師の地位にあり,正大師はP2を含め4名しかいなかった。また,本団体は,平成5年6月から7月にかけて,2回にわたり,東京都江東区内の本団体の新東京本部周辺の反対住民を殺害するため,付近に炭疽菌を散布したが,菌が死滅するなどしたことからその目的を遂げなかったという事件を発生させているが,P2も同事件に関与していた。
かかる本団体におけるP2の地位に照らし,P2は両サリン事件当時に役員であった。また,P2は,第4回更新決定当時から現在に至るまで,本団体の重要な一部を構成する原告の代表役員として活動して,本団体の意思決定に関与し,かつ,事務に従事しているから,現在も本団体の役員であると認められる。よって,本団体は団体規制法5条1項3号に掲げる事項に該当する。【原告の主張】
1
団体規制法5条1項2号該当性
原告は,本団体の一部を構成しておらず,P9がAlephの構成員であることをもって,原告が団体規制法5条1項2号に該当するということはない。
2
団体規制法5条1項3号該当性
団体規制法5条1項3号にいう役員は,
団体の意思決定に関与し得る者であって,当該団体の事務に従事するものと明確に定義されており,団体の重要事項に関する最終意思決定者を構成する集団の一員であり,議決権のある者を指す。また,当該無差別大量殺人行為が行われた時にその実行行為とは直接の関係を有しなかった役員が,当該団体において役員としての地位を有しているだけでは,当該団体が再び無差別大量殺人行為の準備行為に着手するおそれが常に存在するということはできない。
また,当該役員が現在も役員であるといえるためには,その者が再び松本の指示により,又はその指示とは無関係に,無差別大量殺人行為に着手し得る権限ないし影響力を伴った地位にあることを要する。
両サリン事件当時,オウム真理教においては,松本が単独で団体の意思決定をしており,実質的に役員は松本のみであったのであり,P2は,モスクワに赴任しており,物理的にも両サリン事件に係る意思決定に関与し得る立場になかった。
P2は,団体の改革を牽引し,原告を安全な団体として形作り,個人崇拝の過ちを説いてきたのであり,現時点において,P2は,松本の指示を受けて,又は,その指示とは無関係に,無差別大量殺人行為に着手し得る権限や影響力を有していない。
以上のとおり,P2は,
団体規制法5条1項3号の
役員
に該当しない。
第4

争点4(団体規制法5条1項4号該当性)について

【被告の主張】
1
団体規制法5条1項4号の意義
団体規制法5条1項4号は,当該団体が殺人を明示的に又は暗示的に勧める綱領を保持していることを掲げているところ,
綱領とは,通常の語義どお
り,団体の立場・目的・計画・方針又は運動の順序・規範などを要約して列挙したものをいうと解される。
同4号が殺人を明示的に又は暗示的に勧める綱領を掲げた趣旨は,かかる綱領が,当該団体の構成員が団体の活動として無差別大量殺人行為に及ぶ危険性の要素の中核をなすものであるため,過去に無差別大量殺人行為を行った団体が,かかる綱領を保持している場合には,当該団体が団体の属性として無差別大量殺人行為の実行に関連性を有する危険性を具有していると認められることにある。
したがって,同号にいう
綱領
に該当するというためには,
文書化されているか否か,また,
綱領という名称を付されているか否かにか
かわらないが,団体の方針等となるべき事項が構成員に明確に示され,かつ,構成員も当該事項を是認し,それに従う意思を有しているものであることが必要である。
2
本団体について
オウム真理教の教義は,衆生救済に至る最速の道であるタントラ・ヴァジラヤーナの実践をすることを最重視するものであったところ,その教義には殺人を暗示的に勧める内容を含んでいる。また,オウム真理教は,その教義に沿った理想郷の建設を目的とする日本シャンバラ化計画を推進していたが,最終的には松本を独裁者とする祭政一致の専制国家体制を樹立するという政治上の主義を有するに至り,その政治上の主義が本団体の教義の枢要な一部として内包されるに至った。そして,この政治上の主義を推進する目的で,団体の活動として両サリン事件が敢行された。
本団体においては,その教義が,両サリン事件以降,第4回更新決定時に至るまでに,破棄ないし変更されたとは認められず,一貫して維持されていたものと認められる。そして,その後,第4回更新決定から現在に至るまでも,その教義が破棄ないし変更されたと認められる事実はないから,政治上の主義を含み,かつ,殺人を暗示的に勧める教義が,現在に至るまで一貫して維持されているものと認められる。
そして,原告は,松本に対して帰依し,松本の説くオウム真理教の教義に従う者によって,観察処分等を免れ,松本の意思を実現することを目的として組織されたものであるとともに,依然として本団体の重要な一部を構成しているものであるのであって,そうであれば,原告においても,政治上の主義を含み,かつ,殺人を暗示的に勧める教義が依然として維持されているものと認められる。
本団体では,Alephの幹部構成員らが,構成員に対し,説法や機関誌等を通して,松本及び同人の説くオウム真理教の教義への絶対的な帰依を強く指導していることや,松本が行ったタントラ・ヴァジラヤーナの実践や日本シャンバラ化計画等に関する説法を再現した教材等を使用して構成員に教学させていること,従前と同様のマインドコントロールの手法を用いた儀式・修行を行い,松本及び同人の説くオウム真理教の教義に絶対的に従う意識を扶植する指導を行っていること,原告において中心的に活動するP2らが,その設立目的等について,タントラ・ヴァジラヤーナに関する松本の言動等を引用するなどしていたところ,現在においても,原告の幹部構成員らの中には松本及び同人の説くオウム真理教の教義を維持している旨述べる者があること,構成員の言動に,両サリン事件を正当化し,あるいは,松本に対する深い帰依や松本の説くオウム真理教の教義に従う意思を示すものが随所に認められることなど,一般の構成員にも幹部構成員による指導方針が深く浸透していることなどに鑑みれば,現在も本団体においては,危険な内容を含む教義が幹部構成員による説法,教材等を通して構成員に周知徹底されており,構成員においても,危険な内容を含む教義全体を正しいものとして受け入れ,その教義に従う意思を有しているものと認められる。したがって,殺人を暗示的に勧める本団体の危険な教義は,現在も本団体の綱領に当たると認められる。
【原告の主張】
原告は,本団体に含まれるものではなく,原告は,両サリン事件を反省し,賠償を行い,その反省総括を内外で表明するなどしており,殺人を勧める綱領など全く有していないし,オウム真理教のタントラ・ヴァジラヤーナ,五仏の法則,マハー・ムドラーの教えを破った上で破棄し,それを内外で批判しており,これらは原告の綱領ではない。原告において綱領と呼べるものは,松本及びオウム真理教の教義の危険性や過ちを明記した基本理念のみである。
原告は,団体規制法5条1項4号に該当しない。
第5

争点5(団体規制法5条1項5号該当性)について

【被告の主張】
本団体には,団体規制法5条1項1号ないし4号に該当する事由があるほか,下記のとおり,無差別大量殺人行為に及ぶ危険性があると認めるに足りる事実があり,団体規制法5条1項5号に掲げる事項に該当する。
すなわち,本団体については,①両サリン事件の首謀者である松本が本団体の活動に絶対的ともいえる影響力を有し,構成員が松本を絶対的帰依の対象としていること,両サリン事件当時,

松本を頂点とした上命下服の独自の閉鎖社会
を構築していたことを基礎として組織的かつ秘密裏に両サリン事件が計画,敢行されたところ,
現在においても従前と同質の組織構造を継続して有しているほか,出家構成員を本団体管理下の施設に集団居住させて,一般社会と隔絶した独自の閉鎖社会を維持していること,③幹部構成員らは,現在においても,両サリン事件を正当化する発言をしていること,武装化の過程で炭疽菌の散布等で重要な④
役割を果たしたP2が,
現在も本団体の役員として活動していること,⑤政治上の主義を推進するための武装化の過程でいわゆるサリン量産プラント建設事件や武器等製造法違反事件を敢行して服役した構成員を含め,両サリン事件が行われた当時に構成員であった者を現在においても多数構成員として擁していること,⑥松本の妻であるP11は,
両サリン事件当時,
松本に次ぐ正大師の位階に就き,
オウム真理教の幹部構成員としてその運営の意思決定等に主体的に関与し,平成7年5月の松本の逮捕以降は,オウム真理教の代表代行として活動するなどしていたほか,オウム真理教への敵対行為を働いたことへの制裁として,その元構成員を殺害した事件の共犯者であるところ,現在においても,依然として本団体との関係が切れているとは認められないこと,⑦第4回更新決定後,本団体が,巧妙な手段による様々な勧誘活動を組織的に展開することにより構成員の総数を増加させるとともに,
現金等の資産を大幅に増加させていることが認められること,
⑧小中学生などの若年者に対し,
松本の説法に関する子供向けの教材を使用して
教学させたり,立位礼拝などの修行を行わせたりして,松本及び同人の説くオウム真理教の教義に絶対的に従う意識を扶植する指導を行っていることが認められることなど,本団体については,現在も,団体規制法5条1項1号ないし4号に掲げる事項以外にも,無差別大量殺人行為に及ぶ危険性があると認めるに足りる事実があると認められる。
【原告の主張】
原告は,本団体に含まれず,被告の主張する①から⑧にも当然に該当しない。原告に松本の影響力は及んでおらず,原告が,松本が認定した高位であるP2の霊的ステージの高さを認めているとか,閉鎖社会を構築しているなどということもない。原告は,両サリン事件を正当化していることもなく,P2が松本を肯定する発言をしたこともない。
原告は,団体規制法5条1項5号に該当しない。
第6

争点6(団体規制法5条4項所定の必要性の有無)について

【被告の主張】
本団体は,第4回更新決定後も,一般社会と融和しない独自の閉鎖社会を構築しているほか,本件観察処分に基づく公安調査官の検査(以下,団体規制法7条2項又は14条2項所定の検査を立入検査という。
)の際にも,公安調査官が
来訪を告げてから十数分以上経ってようやく出入口の開扉に応じたり,公安調査官の質問に対して

答える義務はありません。

などと述べたり,あるいは無視したりするなどといった円滑な検査の遂行を妨げかねない非協力的な姿勢を組織ぐるみでとり,さらには,検査対象となるパソコンの電源を切ったり,団体施設において作成した検査対象となる会計帳簿のデータを,当該施設外に移動して意図的に消去し,立入検査時における検査を不可能にするなど,公安調査官の検査に対し極めて不誠実な対応をとったことなどが認められるのであるから,本団体については,その活動実態を積極的に明らかにしようとせず,その体質は依然として閉鎖的で透明性に欠ける。
また,本団体については,団体規制法5条3項に基づく公安調査庁長官宛ての報告書において,構成員や団体の管理下にある施設あるいは資産の一部を殊更報告書に記載していないなど不正確な報告を繰り返したり,当該団体の活動に関する意思決定の内容
(同項5号,無差別大量殺人行為を行った団体の規制に関する
法律施行令3条1号)として報告すべき団体の活動に関する不動産の購入や海外への構成員の派遣に関する事項等について報告をしていないなど,報告義務の懈怠も繰り返しているほか,対外的には,閉鎖的体質を改め,社会との融和を目指す旨主張したり,両サリン事件を反省する旨主張したりしているものの,実際には,幹部構成員らが,両サリン事件を正当化する発言をしたり,新たな構成員の勧誘活動において,両サリン事件は本団体によるものではなく,えん罪であるとして勧誘したりしていること,実際には本団体の活動拠点として用いる意図を有していながら,その意図を秘して活動拠点として用いるための不動産を取得していることなどからすると,本団体は,依然として欺まん的な組織体質を有すると認められる。
本団体には,上記のとおり,閉鎖的・欺まん的な組織体質が認められ,その活動状況を把握することが困難な実情にある上,その閉鎖的・欺まん的な組織体質に起因して,依然として全国各地で地域住民が本団体に対する恐怖感,不安感を抱き,その結果,国に対して本件観察処分の期間の更新を要請するなどしていること,また,これら地域住民の恐怖感,不安感を受け,地方公共団体において,団体規制法5条1項の観察処分を受けた団体に対する調査,命令等を行う権限等を定める条例を制定するなど独自の取組が行われている。
これらの事情等に鑑みれば,引き続き本団体の活動状況を継続して明らかにする必要があると認められる。
【原告の主張】
被告が主張する事項は,そのほとんどがAlephに関する事項であって,原告には無関係である。原告は,会計帳簿を秘匿したことはなく,公安調査庁に任意提出しており,不動産や銀行預金口座の報告にも虚偽はないし,海外渡航や渡航後の予定を隠す意図も事実もない。地域住民の不安は,漠然としたイメージから生じているものにすぎず,原告は,住民との関係の改善のために様々な努力を続け,組織的な抗議活動が解消されるなど,状況が相当改善した地域もある。引き続き原告の活動状況を継続して明らかにする必要があるとは認められない。第3章
第1

当裁判所の判断
認定事実
前提事実に加え後掲の各証拠及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実を認め
ることができる。
1
オウム真理教の沿革・組織・活動実態等
オウム真理教の沿革及び組織規模等

オウム真理教は,松本を教祖・創始者として活動を開始して,徐々に組織を拡大させ,昭和62年頃には,出家制度を導入した。出家信徒(サマナ)とは,自己の全財産を布施と称してオウム真理教に寄進し,現世との関わりを一切断った上で,松本に絶対的に帰依して修行するとともにワークと称してオウム真理教のための無償労働に従事し,同施設内で起居する者である。他方,在家信徒とは,各自の居宅からオウム真理教の支部・道場などに通い,出家信徒の指導の下に,その教義を学び修行する者である。
オウム真理教は,平成元年8月29日,宗教法人オウム真理教の設立の登記をし,平成6年6月頃までに,国内に合計24か所の支部・道場及び附属医院を設け,構成員数を出家信徒約1000人,在家信徒約1万人に増大させるなどして,その勢力を拡大した。


オウム真理教は,構成員に対し,修行の進度,精神の発達度に応じて心の成熟・霊性の高さの度合いを示すとするステージという独特の位階(最終解脱者で松本の位階である尊師を頂点とし,正大師(大乗のヨーガを成就したと認定された者),正悟師(マハームドラーを成就したと認定された者),師(クンダリニー・ヨーガを成就したと認定された者)などの称号があり,平成6年7月以降改正されている。)を与え,この位階制度により,松本を頂点として位階の高い者が位階の低い者を支配・管理する上命下服の組織構造を有していた。オウム真理教は,このような組織構造の下,出家信徒を教団管理下の施設に集団居住させ,お供物と称する食事をとらせたりするなどして(出家制度),構成員を支配・管理し,一般社会と隔絶した独自の閉鎖社会を構築していった。
なお,地下鉄サリン事件当時,尊師に次ぐ正大師の位階にあった者は,P2,松本の妻であるP12(改名し,本件更新決定時にはP11。以下P12という。乙B7の27),松本の三女であるP13,P14及びP15の5名のみであった。(乙B3の77・78,B5の5,B7の1・2,E13)
オウム真理教の教義(乙B2の1,B6の1,E1,2)
オウム真理教の教義要旨は,創始者である松本の説く教えを根本として,
シヴァ神の化身である松本に対する絶対的な帰依を培った上,自己の解脱・悟りに到達する道である小乗(ヒナヤーナ)を修めるとともに,衆生の救済を主眼とする道である大乗(マハーヤーナ)及び衆生救済の最速の道である秘密金剛乗(タントラ・ヴァジラヤーナ)の各修行を実践するというものである。
松本は,上記の教えの中でも,タントラ・ヴァジラヤーナを最上位に位置付け,これを実践する上での重要な具体的規範として五仏の法則があり(この中には,悪業を積んでいる魂は早く命を絶つべきであるとするアクショーブヤの法則や真理の実践を行う者にとっては結果が第一であり,結果のためには手段を選ばないとするアモーガシッディの法則がある。),

例えばグルがそれを殺せという時は,例えば相手はもう死ぬ時期にきている。そして,弟子に殺させることによって,その相手をポアさせる。一番いい時期に殺させるわけだね。

(昭和62年1月4日の説法。乙B6の12,E3),わたしたちは,(中略)すべての魂を救済したいと考える。(中略)しかし,時がない場合,それをセレクトし,必要のない魂を殺してしまうこともやむなしと考える智慧ある者,あるいは徳のある魂がいたとしてもそれはおかしくはない。(平成5年4月18日の説法。乙E4)などと,真理のため,また,教祖である松本の指示ならば殺人も許されることを説き,死者の魂はポアないしポワされて高次の精神世界へ転生するなどと説いた。
(乙
B6の24)
この松本が説くタントラ・ヴァジラヤーナの特色は,たとえ自己は悪業を積むことになっても他に対して善業となるならば,それを最高の実践課題として実践する点にあり,
グルである松本への絶対的な帰依が必要であるとし,
その実践として,苦しみの限界に自己を置き,そこにおいて一切乱れない心を形成する修行であるマハームドラーの修行を行い,心をグルと合一させることが重要であるとされている。(甲23,乙B6の21・22・25ないし31・49・53)
そして,両サリン事件に関与したオウム真理教の構成員らが,マハームドラーの修行の名の下に犯行を指示され,松本の説く衆生救済のため,タントラ・ヴァジラヤーナ及びその具体的規範である五仏の法則に則って犯行を実践したとおおむね供述していること
(乙B6の13・23・32ないし35,
E36)からも,これらのオウム真理教の教義は,両サリン事件の実行に際して構成員らの行動規範となっていた。
オウム真理教の政治上の主義とその発現(乙B2の1,B6の1,B7の3,E1,E2)

オウム真理教は,その最終目的である衆生救済を実現するためには,世界をオウム真理教の教義に基づいた社会であるシャンバラ(理想郷)と化す必要があり,その第一段階として日本のシャンバラ化を実現するという日本シャンバラ化計画を打ち出し,布施集めや勢力拡大を図った。同計画は,①東京,大阪,名古屋,福岡,札幌,仙台,金沢の7つの主要都市にオウム真理教の支部を開設し,これら7つの主要都市に総本部道場を建②
設し,オウム真理教の教義の布教・実践の拠点とし,③真理に基づいた生活をすることができるオウムの村ロータス・ヴィレッジ(蓮華の村)を建設するというものであった。(乙B6の6)
しかし,
松本は,
平成元年頃には,

わたしが政治に立とうとしたのも,宗教だけでは済度するスピードが遅いと。だから政治的な力を使って,何とか早くシャンバラ化計画を進めたい

(平成元年9月12日の松本の説法。乙B6の10),純粋な宗教活動のみでは,様々な社会問題は解決されないということ。それゆえ,根本的に政治と宗教は切り離せない。(中略)徳によって政を行い,地上に真理を広める転輪聖王(注:インド神話において世界を統一支配する帝王の理想像,世界の政治的支配者を指す。)としての役割を果たしていきたい。(平成元年12月25日,オウム出版発行マハーヤーナ№27・147頁)などと説き,政治の力を使って上記の松本の説くところの衆生救済を実現し,松本を独裁者とする祭政一致の専制国家を樹立するという政治上の主義
(以下
本件政治上の主義
という。)を有するに至った。


松本は,平成元年8月頃,真理党という名称の政治団体を結成し,松本を始めとするオウム真理教構成員合計25名が,平成2年2月18日施行の衆議院議員総選挙に立候補したが,いずれも落選したことや全国各地でオウム真理教の進出に反対する住民運動が起こったこともあり,社会に対する反発を強めるようになり,同年頃には,現行民主主義制度内で政治的支配力を強め日本シャンバラ化計画を実現することは不可能であり,本件政治上の主義の実現のためには,武力によって我が国の現行国家体制を破壊し,オウム真理教の活動に反対する勢力は真理の実践を妨げる悪業を積む者であるからこれを抹殺するしかないとの認識を有するに至り,オ

ウム真理教は,やはり,最終的には軍事力を有することになるんだろう。(中略)オウム真理教の教団は,つまり単なる宗教団体ではなく,世界統治の機構に変化する時期がくると予言されている。

(平成5年1月31日の松本の説法。乙E3),

1997年に日本の王になる,2003年までには世界の大部分はオウムの勢力になると。また真理に仇なす者はできるだけ早く殺さなければならない。

(平成6年2月下旬頃の松本の言動。P16の公判廷での供述。乙E37)などと説き,本件政治上の主義を実現するための手段として,ボツリヌス菌や炭疽菌などの生物兵器の開発(平成2年3月頃から),サリンの生成(平成6年2月中旬),サリン量産用プラントの建設(平成6年12月頃),ロシア製自動小銃の模倣品の製造(平成6年6月下旬頃から)などの武装化を進めた。
なお,オウム真理教は,本件政治上の主義の実現に向けて,松本の指示で,内部組織の呼称を国家組織を模倣したものに変更したり(省庁制度の導入),松本を主権者とし祭政一致の国家の憲法草案太陽寂静国基本律第一次草案などをP17に命じて立案させるなどしていった。(乙B5の6,E26,E40)

オウム真理教の構成員は,本件政治上の主義を推進する上での障害を除去すること等を目的として,
松本を首謀者として,
両サリン事件を敢行し,
不特定多数の者を死傷させたほか,別表刑事事件一覧表のとおり,数多くの事件を起こした。(乙B3の2,B6の1,B7の23)

2
本件観察処分から第4回更新決定までの概況
本件観察処分までの概況(平成11年頃まで)

オウム真理教は,平成7年12月19日,宗教法人法に基づく解散命令が確定し,その清算手続中の平成8年3月28日,破産宣告がされた。また,公安調査庁長官は,同年7月11日,処分行政庁に対し,オウム真理教について破防法7条の解散指定請求をしたが,処分行政庁は,平成

上記アの間,オウム真理教は,破防法7条に基づく解散指定処分による団体の存亡に危機感を持ち,正悟師以上のステージの者による合議制の意思決定機関である長老部を設けるなどの組織改編をする一方,正悟師ら幹部構成員は,地下鉄サリン事件と修行は別であるとか,松本への帰依を深めるよう説法するなどし,解散指定請求が棄却されると,パソコンショップ等による事業収益を拡大させ,破産手続により処分した支部・道場の再建・新設や組織機構の改革,脱会した構成員の復帰や新規の構成員獲得活動を推進していった。
このこともあり,オウム真理教は,平成8年11月時点で約1000名(出家信徒約500名,在家信徒約500名)まで減少していた構成員数が,平成11年12月の団体規制法制定時頃には,約1500名(出家信徒約500名,在家信徒約1000名)に増加していた。
これらの出家信徒は,ほぼ全員,在家信徒は半数以上が,両サリン事件以前から信徒であった者である。
(乙B2の1・13,B5の67,E1,E2)


オウム真理教は,地下鉄サリン事件以前に,松本の説法を登載した教学用教本である特別教学システム教本を発刊していたほか,破防法7条に基づく解散指定処分に備えて,団体の結束を維持し,松本の説く教えを集大成することを意図して,平成7年11月頃から平成8年1月頃にかけて,松本の説法集等を取りまとめた尊師ファイナルスピーチと題する書籍全4巻を刊行し,
平成9年4月以降,
構成員に閲読を義務付けていた。

ウム真理教の政治上の主義に関する松本の説法が登載されている。(乙B3の1,B28)
の言動

松本の言動
松本は,平成7年11月頃,自己の刑事事件の弁護人のP18を介して,
破防法7条に基づく解散指定処分を受けた後の新団体の名称として,アレフ(ユダヤ文字でアルファを意味する。)とすることを指示した(乙B3の86)。
松本は,
平成8年5月15日に行われた第3回弁明期日において,
オウム真理教には,先ほど述べましたとおり,タントラ・ヴァジラヤーナとして6ヨーガ,あるいはカーラ・チャクラタントラを含めて瞑想法がございます。今,私どもは起訴勾留の身でございますけれども,私の説いた内容が一般の信徒に対して誤解を招くとするならば,それはやはり封印しなければならないと考えております。,

実はヴァジラヤーナコースの教学テキストそのものを私は知らなかったわけですけれども,それが今一番問題になっているみたいですので,まずそれについては完全な封印をしたいと思います。

と述べた(甲22,乙E66)。松本は,
同月28日に行われた破防法の第4回弁明期日において,
破防法適用についての動きがあるということを聞いておりまして,その破防法に対しまして,私自身の生命,つまりこの肉体というものを滅ぼす,つまり死してでも破防法の適用をやめていただきたいということも,ともとまず破防法の適用要件が私の指示,命令でいろいろな破壊活動が起きたという前提のもとになされておりますので,まず教団の代表及び教祖としての,非常に後ろ髪を引かれますが,立場をのきたいと考えております。,私がオウム真理教の代表,あるいはオウム真理教としての教祖としての立場をのくことにより,本来は私が死ぬのが一番いいのでしょう。(中略)2回ほど,この破防法の適用が取りざたされてから自殺を試みました。その自殺は何かというと,服を使って10分ぐらい首を締め上げたわけですが,2回ともやはり私の腕の力が弱くて死ぬことができませんでした。したがって,ぜひとも破防法の適用はやめていただきたいと思います。と述べた(乙E67)。その一方で,乙拘置所に留置中の松本は,接見した弁護士に対して,P2の考え方や対処の仕方は政治的すぎるし,現世的すぎる,

自主解散はP2が提案してきたから,P2の判断が正しいと思い了承した。(中略)しかしP2も中に入っており今は自主解散については良いとは言えない。

(平成7年10月14日。乙F1kami0011頁),P2の方針はいかん。もっと強い態度で教団の運営管理にあたるべきである。上九から引き上げるようなことは絶対にいけないソフト路線などは一切してはいけない(中略)教団からP2の色を消すように出来るだけ3人で登場(P19,P20,P21)(平成7年10月16日。
乙F1kami0012頁,ヴァジラヤーナ教学システムは,わたしの数百ある説法から作っている。元々,五百いくつの説法がある。今は,日本人の常識から見て危険なものは,すべて外した方がいい。公安調査官のようなシビアな目で厳重に見た方がいい。本質的な部分であっても外していい。根本の道から枝が出ているので,何本かの枝が切り落とされても,全く問題ない。公調や審査委員会がそこまで理解して判断するとは思えないので,先生方も教義を深く学ばない状態で判断された方がいい。と述べた(平成8年2月8日。乙F1kami0033頁)。また,松本は,同様に,

わたしの指示で動くか動かないかが決まるということだろうが,そのためにわたしは2歳と3歳の子供を教祖にした。教祖が2歳と3歳の子供だから純粋な信仰団体でしかないということになる。

(平成8年7月12日。乙F1kami00312頁,KAMI42
1頁),
破防法が適用されたら,教団からもう一度麻原を教祖にかつぐ動きを起こすように動いてほしい※降りたが適用されたら自分が出なければ教団が壊滅させられる(平成8年6月5日。乙F1KAMI331頁)などと述べた。
さらに,松本は,同様に,破防法に対しては,二つのグループに分かれ,第1のグループは6人が一組になって,(中略)この6人が一つのファミリーとなり,教団の拡大活動は一切しない。(中略)第2のグループは,法的に徹底的に破防法と戦い抜く。ただし,第1のグループは第2のグループの敗北が予想されるので,敗北した場合に吸収ができるように準備しておく。(平成8年1月9日。乙F1JINRIKI2頁,KAMI031頁,KAMI041頁),私が物理的に教団を離れることは本意です。(中略)また,ノストラダムスに99年真理の弟子達が集まるとありますから,破防法の適用はこの年までなのではないでしょうか。したがって,3年しのげるような体制作りをしっかりと行うべきです。教団をアレフとオウム真理教のアーと二つに分けるかどうかについては,正大師や妻達と十分に話し合ってください。(平成8年6月14日。乙F1KAMI371頁),例えば,弟子が何をしたら破防法違反になるのか仏教→他の宗派にもある教団の分解→名称や教えを別にしても脱法行為となるか?(同月19日。乙F1KAMI391頁),

小さな寺を作るよう言っていたのに,どうして作らなかったのか。

(同年7月4日。乙F1KAMI392頁)と述べた。

P2の言動
P2は,平成7年10月7日,国土利用計画法違反に係る偽証の被疑事実により逮捕され,平成9年3月24日,東京地方裁判所から偽証及び有印私文書偽造・同行使の罪で懲役3年の有罪判決を受け,平成11年12月29日まで服役した(乙B1の13,2の16,3の93,5の15,E41)。
P2が上記勾留中又は服役中に作成したノートには,

麻原尊師を尊重しつつ,しかし,(中略)絶対化,唯一化しないで,真理の総合的研究を目指すことも時と共に必要になってくるだろう。

,解散指定が入るか否か,もし入るなら入るこそ今は,調査して,ええかげんな理由で解散請求をする可能性がある。破防法を改正しても,一時不再審にひっかかるから,別の法律を作ったようだ。とするならば,第一に,Vヤーナ(注:タントラ・ヴァジラヤーナのこと)的教義に関する全情報をシャットアウトすべし(文書及びサマナの口)組織を守るためには,Vヤーナ関係の書籍は廃すしかない。との記載がある(乙B3の94,E42)。
また,同ノートには,

教団の分裂は受け入れなくてはならない。2つのカルマ,2つの流れのあることはそこには争いがある。私は憎しみを持たず自分の足下を固めるべし

双方で教材作成しておく。万一の際,独立・展開するための土台となる

,意志,信仰の強い人達を選んでグループにする4人一組くらいがOKかもしれないその人たちは独自の教団をたてるとの記載がある(乙B3の94,E42)。P2は,平成11年12月29日に己刑務所を出所して,オウム真理教代表代行のP1に対し,自らの罪を深く反省し,責任をとって教団内での正大師の称号及びその地位を象徴する緑のクルタ(修行着)を返上したいと申し出,受理された(乙B1の16,B2の15,E43)。本件観察処分から第1回更新決定までの概況(平成12年頃から平成14年頃まで)

処分行政庁は,平成12年1月28日,本団体に対する本件観察処分をphの本件観察処分の取消請求を棄却する旨の判決を言い渡し,同判決は確定した。)。
平成12年2月4日,Aleph(宗教団体・アレフ)が正式に発足された旨及びP1がその代表者に就任した旨公
P2は,平成11年12月29日に己刑務所を出所し,オウム真理教の運営に携わっていたところ,平成14年1月30日,P1に代わって,Alephの代表者に就任した(乙B2の16,B3の93・97,B5の17,E7,45)。

Alephは,本件観察処分やその取消訴訟の敗訴判決を受けて,以下の教団改革を発表した。
Alephは,
平成12年1月18日,松本の両サリン事件等の刑

事責任については,係争中であるため断定し得ないものの,教団執行部の見解として,関与したのではないかと思われるという認識を有しており,②新団体では教祖を置かず,松本は開祖であり,観想の対象・霊的存在であって,
信者に指示する存在ではないと位置付け,③危険とされる教義を破棄し,
松本が作ったオウム真理教のインドヨーガ,
原始仏教,
大乗仏教の教えに限定した教典を作成し,
信者に周知徹底させ,従来

の信者から改めて入会申込書と無差別大量殺人行為を行わないこと等の誓約書の提出を求め,また,反省の意を示さない重大事件の関与者との連絡を禁止し,長老部を廃止し,

上層部への権力集中を緩和すること
等からなる事件に関する総合的見解表明及び抜本的教団改革の概要と称する教団改革案(以下平成12年改革案という。)を発表した(乙B1の16,B2の15,B3の95,E43)。
Alephは,
平成13年8月24日,一般出家信者による松本の

公判傍聴を平成14年度以降自粛すること(最後に傍聴を希望する者については,平成13年9月6日以降の公判につき,原則1回に限って認める。),②全出家信者に配布されていた尊師ファイナルスピーチ全4巻を全て回収し,Alephで編纂した教義集を信者に配布すること,各自治体・地域住民に対する主要施設の公開を今後も定期的に行③
い,公安調査庁に提出している活動報告書を基に自治体・地域住民に情報提供をし,市民と共存できる環境作りをしていくこと等の内容を盛り込んだ宗教団体・アレフ2001年度教団改革の指針を発表した

(乙B3の96,E44)。
Alephは,平成14年2月17日,オウム真理教が関係した一連の事件・犯罪を正当化するいかなる教義も信仰せず,松本を絶対者等とせず,構成員を指揮する教祖・代表・構成員としないとした上で,①松本の写真等を施設や構成員個人所有の祭壇等に備え付けず,松本にまつわる文書・説法・写真・ビデオ映像・マントラ・歌・楽曲等の教材は,これによって事件が引き起こされたものとは思われないものの,事件に関連した可能性がある内容を含むものは一切使用しないこととし,松本の公式呼称を旧団体代表とし,尊師,グル等の呼称を禁止
すること,構成員の犯罪行為を禁止し,

過去に犯罪を犯し有罪判決を
受けた者は,十分反省し,二度とそのような事態を招かない誓約をしなければならないこと,被害者遺族への謝罪と賠償を行っていくこと,③

④説法会や教材等において,松本を絶対者等としたり,事件・犯罪を肯定するかのような誤解を受けるおそれのある表現をしないこと,タン⑤
トラ・ヴァジラヤーナやポワ等については,これ自体によって事件が起こされたとは思われないものの,これらの用語等の公式解釈を示すこととし,公式解釈を無視して過去の教材を使用することを禁止すること,⑥尊師ファイナルスピーチについては,必要な改訂を加え,改訂前のものについて使用を禁止すること,⑦PSI(パーフェクト・サーヴェーション・イニシエーション。オウム真理教の修行用の機具であり,松本の脳波データを発生させるとする基盤部分と頭部に装着する電極付きのヘッドギア部分で構成される。これを装着すると松本の脳波が注入されて松本と同じ瞑想状態に至るとされている。以下同じ。)については,松本の脳波によるマインドコントロール装置であるとの誤解を受けており,
そのような誤解を受けにくいものに改善していくこと,地域

住民に対する情報提供,対話の促進を図り,社会融和に務めること等を内容とした宗教団体・アレフ活動規定(以下アレフ活動規定と
いう。)を制定し,同日から施行した(乙B1の17,B5の31,E46)。
P2の言動及びP22事件等

P2の言動
P2は,平成12年改革案やアレフ活動規定を制定するなどして,外形上,松本の影響力を払拭したかのように装いながら,以下のとおり,松本及びオウム真理教の教義に対する絶対的な帰依を要求する指導をAleph構成員に対して行い,真実は松本に対する絶対的帰依を維持しつつ,松本の説く教義を広め,松本の意思を実現することを目的とする活動(以下麻原隠しという。)を展開していった(乙E7)。
P2は,平成14年1月26日の説法において,今日は私が正式に正大師に復帰し,代表就任することになった宗教的な意味合いを話す。今後なすべきことは,グルの救済計画の手伝いである。具体的には,長期的なものと短期的なものがある。一つ目は,長期的なものである。これは未来際においても皆さんがグルと一緒に転生し,救済活動の手伝いをしつづけるためのものである。二つ目は,短期的なもので,皆さんの徳をできるだけ増大させ,グルの手伝いをするということである。(中略)来世では,皆さんを再びグルの救済活動に導くのが自分の役割である。麻原尊師の予言では,私は来世麻原尊師の弟子としてまた生まれ変わる。(中略)今生まれ変わっている者の中では,私と麻原尊師の縁がもっとも濃い。(中略)今後の教団を誰が主導するかも麻原尊師は話していた。それに基づいて,今教団は動いている。(中略)グルが物理的にコンタクトできない状態で,将来どうなるか分からないが,皆さんがしっかりと宗教団体・アレフにいる,グルと極めて縁の濃い者,来世が確定している者に帰依し,称賛し,教えを学び,奉仕し,供養するならば,再び皆さんはグルと真理勝者方の教えに巡り合うことができるだろう。と述べ,引き続く質疑応答において,礼拝の対象を問われた際,

礼拝の対象及び観想の対象は,麻原尊師でいいと思いますね。

と説明したほか,松本との関係について,皆さんと真理勝者の縁である麻原尊師,これを排除して教団が進むことはないだろうと説明した(乙B1の18・19,B3の98・99,5の18,乙E47)。
P2は,平成14年1月27日の説法において,私は,1月21日に代表,そして正大師に復帰することが決まり,代表職に関しては,1月30日から任期が始まる。その理由は,グルの救済活動のお手伝いをしっかりとやるための体制を作ること,皆さんを来世も再びグルの元に導く準備を行うということである。(中略)私は来世また,麻原尊師の弟子に生まれ変わることになっている。(中略)皆さんが今生だけではなく,来世も再び真理勝者に巡り会い,救済のお手伝いをしながら真理の実践をしていくとするならば,私の話をよく聞いて実現するようにしてほしい。(中略)教団活動のすべてはグルの救済のお手伝いということである。(中略)尊師の予言解釈と守護によって,私は99年末に教団に戻ってくることになった。それはグルとシヴァ大神の守護によって,21世紀に教団をリードするために用意されていると考えている。95年の時点では,今後,私が教団を主導する時代が来るということも言っていた。と述べた(乙B1の18,
B3の98,
B5の18,
E47)

P2は,平成15年1月26日の説法において,外からね,入ってくる人達のために,また,自分たちがね,グルの名色にこだわらずに修行していく,というもののために,道場の施設において麻原彰晃尊師という名色,これを無くしてしまうということだね。そしてその代わりに,その代わりに,君たちはその心というものを,自分の心に宿してほしい。そしてその教えをね,麻原彰晃尊師という名色,これをなしで多くの人に広め,そして多くの人がその教え,エッセンスを理解して,した段階でね,その教えの源になったものは何か,ということを明かす,という形,これをどう考えるかということになる。と述べた(乙F2)。イ
Aleph構成員の言動
公安調査官が,平成14年9月10日に東京都世田谷区bに所在するAlephのb施設の立入検査をしたところ,Alephの構成員2名が尊師ファイナルスピーチを使用していた。また,

事件についてよく考えると,その裏にグルの大いなるマハームドラーと大いなる慈愛が隠されていることに気づきます。

そしてグルに感謝しなければなりません。なぜなら,一人世間の矢面に立ち罪の償いをさせられ,ほふられた子羊の運命を引き受けられているのだから。

などと暗に地下鉄サリン事件を正当化し,松本への帰依を示す内容の記述がある日記のデータがAlephの構成員の私物パソコンから発見された。(乙E51)


P22事件
ロシア人のオウム真理教信者であるP22は,ロシアを含む多くの国でオウム真理教の活動が禁止されたことに不満を抱き,日本国内でテロ行為を行うことで松本を強制的に解放させる必要があると考え,平成11年3月頃から平成12年6月頃にかけて,自動小銃や手榴弾等の武器・弾薬,自家製爆発装置を調達・製造するなどし,2度にわたって,日本に入国して,これらの武器・弾薬,自家製爆発装置を隠匿・設置予定場所の下見をし,テロ行為を行うとの脅迫を日本政府にすることで,松本の開放等を要求することを計画していたが,平成13年7月1日,ロシア連邦保安庁に逮捕されたため,計画は実行されなかった(P22事件)。
ロシア沿海地方裁判所は,平成14年1月23日,ロシア連邦刑法222条(武器,弾薬,爆発物及び爆発装置の違法な入手,譲渡,売却,保管,輸送又は所持),同法223条(武器の違法製作)等の罪により,①P22を最低労働賃金の100倍の罰金刑,
財産の没収を伴う8年の自由剥奪,
②P23を財産の没収を伴う6年6か月の自由剥奪,③P24を財産の没収を伴う4年6か月の自由剥奪,④P25を3年の自由剥奪,2年6か
月の観察期間を伴う執行猶予,⑤P26の刑事責任を免除し,精神病院で
の一般的強制治療を命ずる判決を言い渡した。
なお,P22は,オウム真理教の出家構成員のP27に対し,平成11年8月中旬頃にロシアでのオウム真理教を発展させるとの名目で,同年11月にオウム真理教の宗教文献の出版活動を発展させるとの名目で,金銭的支援を要請し,それぞれ,上記P27から,前者については,同年10月4日に3万米ドル,後者については,同年11月24日に900万円を借り受けた。(乙B2の7,B7の28・29)
第1回更新決定から第2回更新決定までの概況(平成15年頃から平成17年頃まで)

処分行政庁は,平成15年1月23日,第1回更新決定をした(前提事
回更新決定の取消請求を棄却する旨の判決を言い渡し,同判決は確定した。)。
なお,Alephは,平成15年2月7日,同月6日付けで,ヘブライ語のAlephの本来の正確な発音はアーレフであることを理由
として,その名称を宗教団体アーレフに変更した(乙B3の86,B5の20)。
東京地方裁判所は,平成16年2月27日,松本に対する殺人等被告事件(両サリン事件を含む。)について,死刑に処する旨の判決を言い渡した(乙B3の2)。

松本の妻であり正大師の位階にあるP12が,平成14年10月に刑務所を出所すると,従来の活動形態を維持し,松本を前面に出して活動することが松本に対する真の帰依であるとして麻原隠しに反対する姿勢を示して,松本の三女P13と共に,Alephの組織運営に介入するようになり,P2の麻原隠しによる組織運営も新規構成員の獲得や財務運営面で功を奏しなかったことから,P2の活動方針に反対する者が増加していった。
このため,P2は形式的にはAlephの代表者の地位にとどまったものの,平成15年6月頃から,修行入りと称してAlephの運営に実質的に関与しなくなり,同年7月頃にP13と話した際には,P13は,P2は修行が足りないので教団運営は任せられない,自分がやると述べた。その後,P12やP13は,P2に対して麻原隠しが誤りであったと謝罪することを求め,P2は,同月28日頃,Aleph幹部70名程度の前で,謝罪の意を表明し,以降,P13を中心とした松本家の組織運営に対する関与が強まっていった。
Alephは,平成15年10月頃に,正悟師の位階にあるP1,P28,P29,P30及びP31の5名による集団指導体制(正悟師・正大師会合ないし正悟師・正大師会議)に移行し,松本への絶対的帰依を明示的に強調する指導を復活させ,松本の説法などを集約した尊師ファイナルスピーチの改訂版を発行するなどして,松本への絶対的帰依を強調し始めた。
しかし,上記集団指導体制によっても,Alephの財務内容改善等がみられなかったことや,第1回更新決定により観察処分が継続されたこと等から,一部構成員の間でP2の組織運営復帰の希望も出ていた。P2は,平成16年11月頃から再びAlephの運営に関与するようになり,Aleph内にも,P2の考えに賛同する者を中心とした一派であるP2派(あるいはP2の団体内での名称(マイトレーヤ)の頭文字からM派とも呼ばれる。)とP2の方針に反対する反P2派
(あ
るいは松本の三女の団体内での名称(アーチャリー)の頭文字からA派とも呼ばれる。以下A派という。)が存在し,他方,P2派として活動するまでには至らないものの,これに理解を示す中間派と呼ばれる構成員も存在していた。
(甲29,乙B2の17・18,3の100・104,5の21・22・32ないし34・43・48・50・79,E7,E11,E12,E14ないしE19)

Alephは,平成16年1月17日から同年12月4日までの間に,松本の説法全186話を掲載したファイナルスピーチ(改訂版)3分冊1ないし11を順次発行し,これらを出家構成員に閲読させているが,ファイナルスピーチ(改訂版)3は尊師ファイナルスピーチⅡ巻
に掲載された昭和61年から平成元年までの間の松本の説法合計167話中151話が収録されており,より松本の当時の発言内容を忠実に再現する一方で,ポワをポワ(意識の移し替え)などと加筆を加えてい
るものの,

次はグルがマハームドラーをかけるとき,最も厳しいマハームドラーをかけるからであると。そうすると,最も厳しいマハームドラーをかけられると,当然,そのかけられた方は早く成就すると。

(ファイナルスピーチ(改訂版)3分冊2・7頁),

いろんな持戒があるとして,その持戒を無視して,グルがこれをやりなさいと言った場合,それをなすことが最も功徳となる。

(ファイナルスピーチ(改訂版)3分冊3・30頁),
オウムのためではないぞ,麻原の意思は何か考えろ。それから,シヴァ神の意思は何かを考えろ。オウムの意思と言ったときに,自分のエゴが入ってることがあるからね。そうなったならば,最もスピーディーに解脱するだろう。(ファイナルスピーチ(改訂版)3分冊5・2頁)などと,松本への絶対的帰依を求めたり,マハームドラーの修行の実践を強調する説法が記載されている。(乙B3の101,E52)また,Alephは,平成17年5月及び6月に,その機関誌においても,この教団にグルという存在を抜きにしてそれらの教えがもたらされることは,教団の歴史においてただの一度もなかったのである。(中略)わたしたちは,グルが説かれた煩悩破壊という最高の世界に至るための教えを,歪めてしまうことなく,時代を超えて継承していかねばならない。それがグルの願いなのである。(平成17年5月発行の機関誌進化Vol.52),真理をこの世に残すに当たってまず大切になってくるのは,グルが説かれた教えの厳密性純粋性を保持するということである。・つまり,真理の教えにしろ経典(仏典)の翻訳にしろ,グルを介して提供されたもののみを拠り所とする-わかりやすく言えば,グルの言葉から外れないようにする-ということなのだ。(同年6月発行の機関誌進化Vol.53。なお,この記述は,平成20年1月発行のAlephの機関誌ボーディサットヴァVol.13でも参照するよう指導されている。乙B3の74・75)などと,松本への絶対的帰依の重要性と教義の変更が不可能であることを説いている。
の言動

P2は,P2らが立ち上げたブログ真理の地球において,平成17年2月22日,グルを前面に出したらこれ以上の衆生の済度は難しいという現実が否定できない(中略)私の根本的な考え方を確認しておきたいのですが,それは,『今のグルの意思』を重視するということです。今のグルの意思とは,当然,今の衆生の現実に合わせて,もっとも多くの衆生を済度できるように,教団を運営すべきだ,ということに他なりません。という記事を掲載した(乙B3の107)。

P2は,Alephの内部向けインターネット掲示板において,平成17年5月26日,95年に事件が発生し,オウム真理教が救済団体としては,将来がなくなった時点で,尊師は,オウム真理教に加えて,尊師とシヴァ大神ではなく,形を変えて大黒天等を崇拝する第2の団体を弟子をリーダーにして作ることについて,逮捕前から私に話され,その点については,逮捕後も,私とその点でやりとりがなされていました。(中略)私のアーレフ代表としての今後のスタンスは,既存の尊師信仰のパートは堅持し,一方で,グルがお考えになったように,別のパート,別のフォームを作るべきである,というものです。(中略)大黒天・マハーカーラ,観音菩薩といった宗教的な概念,すなわち,尊師と縁があるが,麻原尊師という名前と姿自体ではない崇拝対象を検討することは,グルの意思に反しないと考えています。との記事を投稿した(乙B1の8,
B3の108)



P2は,P2らが立ち上げたブログ真実を見るにおいて,平成17年6月22日,私たちが今なすべきことは,今の時点でなすべき,グルへの帰依とは何かを考え,それを実践することである。(中略)教団がつぶれても良いという考え方は,グルの意思に明確に反している。グルは,96年の破防法の時に,教団を潰さないように,教祖・代表を降りることを含め,大変な努力をされた。という記事を掲載した(乙B1の7)。

P2は,ブログ真実を見るにおいて,平成17年6月28日,多様なグルの教え・指示を知ってほしいとの表題の下,事件発生後の状況に応じて,新たな事業,宗教組織を立ち上げることを肯定,指示されたメッセージとの見出しの中で,別の宗教的組織を作るようにという示言っていたのに,どうして作らなかったのか。』※上記と類似するものかどうかわからないが,『教団をアレフとオウム真理教のアーと二つに分けるかどうかについては,正大師や妻達と十分に話し合ってください。』というメ項目において,「逮捕される前からの指示として,①(事件の結果,破綻するだろう)オウム真理教とは別の宗教団体を作る。②例えば,シヴァ大神を大黒天と呼び変えるような,衣替えした団体にする。(中略)というのがあった。なお,この件は主に私(マイトレーヤ)が任されていた。,ヴァジラヤーナの教義を排除することを認められた,指示されたメッセージとの見出しの中で,

本質的な部分であっても外していい。根本の道から枝が出ているので,何本かの枝が切り落とされても,全く問題ない。

などと,松本の獄中メッセージ等を引用した(乙E57)。第2回更新決定から原告の分派に至るまでの概況(平成18年頃から平成19年前半頃まで)

第2回更新決定及び松本に対する刑事事件等(乙B4の2)
処分行政庁は,平成18年1月23日,第2回更新決定をした(前提事ephは第2回更新決定に対しては取消訴訟を提起しなかっ
た。)。
また,松本に対する殺人等被告事件について,同年3月27日,東京高等裁判所において,同裁判所が定めた期間内に控訴趣意書が提出されなかったことを理由として,控訴棄却決定がされ,同年5月29日,これに対する異議申立棄却決定がされた(乙D7,E61)。
上記控訴棄却決定及び異議申立棄却決定において,松本は,訴訟能力に欠けるところはないと判断された。
なお,松本は,平成11年9月22日の東京地方裁判所で開かれたP32及びP33に係る殺人等被告事件(地下鉄サリン事件)の公判期日に弁護人申請の証人として出廷した際,

地下鉄サリン事件は誰が指示したというふうに考えているのですか。

との弁護人の尋問に対して,P34君が持ち込んだ,P34自身の話ですよなどと証言をし(乙B7の4),
その後もP35の殺人等被告事件の公判期日(平成13年2月2日の両サリン事件の公判期日)
やP36の殺人等被告事件の公判期日
(乙B7の7。
平成14年2月25日の両サリン事件及びP37弁護士一家殺害事件の公判期日)に弁護人申請の証人として出廷したが,裁判所の人定質問にすら答えず,自らの殺人等被告事件における公判等においても,両サリン事件について,控訴審も含めて自己の責任を認めず,反省の弁を述べたことはない(乙B3の2)。

原告設立に至る経緯
P2らの言動
P2は,第2回更新決定がされたこと等を受けて,平成18年4月頃以降,Alephに対する観察処分等が新規構成員の獲得や現役構成員の減少,収益事業への圧迫,全般的活動の不活発化につながっているとして,教団の存続のためには,確実に観察処分等を免れることが必要であり,もう一つの考え方は,この教団の中で二つのグループを作るということに拘らずに,この社会の中において二つのグループがあればいいじゃないかということです。すなわち,これは役割分担をし,組織分割を行い,ある人たちは,要するに特定の限られた人たちの信仰のためにそれを維持し,もう一つのグループは要するに幅広く救済のためにダイナミックにフォームを変えて行うんだと。こういう役割分担をすればいいのではないかという考え方です。(中略)この考え方というのは,実は教団には古くからあるもので,そのファウンデーション理論というものとして存在しています。このファウンデーション理論というものは,要するに何かを存続させるためにどうしたら良いか,その場合,単一のシステムではなくて,多様なシステムを用意という考え方です。(平成18年4月15日のP2の説法)などと説いて,Alephとは別団体の設立が必要であると考えるようになった(乙E22,E58)。後に原告の役員に就任するP38も,平成18年4月22日,

正大師の考えでは,もう別団体になれば,観察処分,もう掛けようがないですよ。

と述べ(乙B3の134,E21),平成19年1月18日,だからその『アーとアーレフを作りなさい,分かれなさい』とおっしゃってたんです。アーとアーレフに。で,アーレフというのは新教団,新教団って,今の理念を全く隠した新しい団体,一掃した新しい。その名前は,大黒教だろうが,マハーカーラ教だろうが,大黒天教だろうが何でもいいっていう,そういうものを作りなさいって。で,アーの部分は,オウム真理教のものをそのまま継続する。その代わり,これは密教でやるしかないんです。だからみーんな在家に戻って,在家に戻った形でひっそりと誰にも迷惑をかけずにやる方法なんですよ。それだったら法則に反しないですよ。で,正大師は,単にこっちの道を採ってるわけなんですよ。大黒教とか大黒天とかいう,こっちのアーレフの道を。で,その話をずっと聞いて,ああ,まさに尊師の教えの実践を確実に,きちんとくみ取られて,ずれなくきちんと受け取られてなさってるんだなあって。と述べた(乙B1の9,B3の112,E62)。原告の設立(乙E7)
こうしたP2の活動に対し,Alephの集団指導体制を構成する5名の正悟師のうち,P1,P29,P30及びP31の4名は,P2の考えに理解を示すなどし,P1は,平成18年9月16日,P2に別団体を組織してほしくないが,組織した場合は,Alephとは持ち株会社のような連合体として役割分担をしながら活動していきたいという考えを表明するなどしていた(乙E63,E64)。
しかし,
P2派とA派の対立は決定的なものとなり,
平成18年には,
東京都世田谷区b所在の複数の施設は,それぞれが別の建物を管理使用するようになった(乙B5の32)。
また,P1ら正悟師による集団指導体制も,師の位階にある中堅幹部構成員らが,P1らがP2派に歩み寄ったこと等に反発するなどして,機能しなくなったことから,Alephは,平成18年7月,師クラスの中堅の構成員約30名からなる合同会議を設置し,Alephの意思決定を行うようになった(乙B5の41,E35)。
P2は,平成19年3月8日,P2を中心とする出家信徒62名,在家信徒3名が同月7日付けで,Aleph代表に就任していたP29に対し,Alephから脱退する旨を通知し,同年5月7日には,原告を設立した旨発表した(乙B3の110・111,B5の23,E24)。Alephの動向(乙B3の1,5の32,E7)
他方,Alephは,平成19年3月25日,新春メッセージ未来へと題する行事を開催し,今後の指針として私たちというのは原則に帰るということを掲げたいと考えています。(中略)出家の動機は主に三つに分かれていますけどね。一つ目としては,尊師に強くひかれて出家したと。二つ目としては,成就がしたくて出家したと。三つ目としては,救済活動のお手伝いがしたくて出家したと。(中略)それに基づいて宗教理念としては三つ掲げました。一つ目として,グルの存在を感じることのできる教団にしようじゃないかと。(中略)グルの御意思を考えた場合,やはり私たち一人一人が解脱,悟りを得ること,これが根本にきます。などという幹部構成員の説法を各施設にインターネット配信した(乙B3の83,B6の36)。
Alephでは,中堅幹部構成員らが,P2派に歩み寄ったとして,P28を除く4人の正悟師を排除する動きを強めたことから,平成19年7月にP31とP30が脱会し(なお,P30は,教本の編集等を巡ってP12と対立していた。乙B5の35・36),P29及びP1が役員を辞任し(乙B5の42・43),これら中堅幹部構成員らを中心に,大音量で松本の説法の映像を長時間連続視聴させる特別ビデオ教学セミナーなどを実施するなど,松本への帰依を徹底していった。ウ
Alephの活動状況
Alephは,平成17年7月30日から平成19年4月11日までの間に,ファイナルスピーチ(改訂版)4の分冊1ないし7を順次発行し,これらを構成員に閲読させているが,
ファイナルスピーチ(改訂版)4は尊師ファイナルスピーチⅡ巻に掲載された平成2年から平成3年までの間の松本の説法合計118話中100話が収録されている。また,Alephは,平成12年10月から発行してきた進化と称する機関誌の名称を,平成19年1月から,ボーディサットヴァに変更して,機関誌として,インターネット配信したり,松本の説法の映像を収録したDVDボーディサットヴァをAlephの施設に配布して在家構成員に視聴させたりしており,今回,この教学システムを行うことによって,もう一度信徒の皆さんが,グルの熱い思いというか,グルの神聖なデータを深い意識で吸収していただけたらいいな,と思いますね。(中略)そしてもう一つは,この教学システムを進めていくことが,やがては救済につながるんだという,そういう意識を持っておいていただきたいということです。つまり,真理のデータを内側に根付かせ,グルからのエンパワーメントを受けるのは,自分のためでもあるし,また,自分を通して救済されていく人のためでもある,ということですね。(平成20年1月発行の機関誌ボーディサットヴァVol.13掲載)などと松本への絶対的帰依の重要性を構成員に説いている。(乙E31)
原告分派から本件更新決定までの概況(平成19年後半頃以降)

Alephの名称変更等
Alephは,原告の設立表明や,P1ら正悟師の脱会や役員辞任を受けて,平成19年12月14日,合同会議内に6人の運営準備委員で構成される運営準備委員会を発足させて組織再編作業を開始し,平成12年のAleph発足当初の基本方針に基づき,松本については,

純粋に霊的
な意味で瞑想修行等における観想の対象ないし霊的存在,あるい
は,組織沿革上の歴史的な意味で教団創始者としての開祖(宗祖・教祖【founder】)とも認識されている一方,現実の教団運営を統括する者としての教祖【leader】・代表者,あるいは団体の意思決定に関与する役職員には位置付けていないこと,②事件と無関係な教義ないし修行法・イニシエーション等については,オウム真理教から引き継いだものをAlephでも採用する一方,裁判等で事件との関係が指摘されている一部の教義(タントラヴァジラヤーナの中の五仏の法則)

については削除しており,
一般に誤解を受けやすい用語等については,事件や犯罪の肯定に結び付けられる余地のないよう公式注釈書(乙D12。Alephは,平成14年五仏の
タントラ・ヴァジラヤーナについて,日本の刑法に反す
ポワについて,殺生ではなく,意識
を低い世界から高い世界へ移し変えることと解説している。)を作成・配布するなどして構成員に周知していること,一人ないし少数の指導者の③
能力・判断に従属する上意下達式の組織形態を見直し,多面的な判断や相互のチェック機能が働くよう,集団指導体制である合同会議を採用していること等を内容とする『合同会議』による運営とその基本方針を発表した(乙B5の41,E35)。
その後,Alephは,平成20年5月12日,合同会議において,原告の集団脱会に伴う内部的混乱の正常化や社会的環境の変化への対応と自己の解脱と悟りと,すべての魂を絶対自由・絶対幸福・絶対歓喜の境地に導くといった,本来の宗教団体としての役割を果たせるような教団にすることを目的として,従来の綱領・規約・活動規定を以下のとおり改正するなどして,団体の名称を宗教団体アーレフからAleph(日本語の発音はアレフ)に改め,共同幹事としてP3,P4が就任したと発表した(乙B6の67,E33)。
宗教理念の制定
Alephは,新しい綱領として,①私たちの団体の第一の目的は,解脱・悟りを追究し,仏教・ヨーガの教典で説かれている霊的・精神的な境地を体験し,それを体現することである,②私たちの団体では,第こ「病苦からの解放を提供する活動を行う
という内容の宗教理念を定めた。
運営規則の制定
Alephは,
新しい規約として,①本団体の目的は,
Aleph
宗教理念に掲げるものとすること,本団体の構成員は,出家構成員と②
在家構成員からなり,Aleph宗教理念に掲げられた趣旨に賛同し,その実践を行い,Alephコンプライアンス規程を遵守し,所定の会費を所定の期日までに納付しなければならないこと,本団体③
の運営機関を合同会議とすること,④合同会議内に運営委員会を設け,合同会議の進行・調整に当たり,原則として,共同幹事2名,副幹事2名,委員2名で構成すること等を内容とする運営規則を定めた。
コンプライアンス規程の制定
Alephは,
新しい活動規定として,国の法令や教団内の規程を

遵守し,健全な宗教活動を行う(法令の遵守義務),②オウム真理教関連事件の一部の裁判で判決が確定したという事実を踏まえて,その道義上の責任に基づき,オウム真理教破産管財人による管財業務終結後も,関係機関と協議の上,
事件被害者の方々に対して誠意ある対応を行う
(事
件被害者の方々に対する誠意),未解決のオウム真理教関連事件の解③
決に向けて,オウム真理教関係特別手配被疑者に対する出頭呼びかけをはじめとする必要な捜査協力を行う(事件解決への協力),④事件・犯罪を否定する姿勢を明確に示し,地域社会で平穏に生活していくためのルールを遵守し,地域との協調に努める(地域社会との協調),⑤団体規制法に対して適法に対応し,将来にわたって教団に危険性が存在しないことを明らかにして観察処分の取り消しに努める(団体規制法への対応)こと等を内容とするコンプライアンス規程を定めた。
なお,上記コンプライアンス規程には,アレフ活動規定における松本の写真等を施設や構成員個人所有の祭壇等に備え付けないという項目

改訂版特別教学システム教本等

Alephは,平成14年10月に危険と誤解されるなどとして,回収を発表していた松本の説法を収録した教学用教本である特別教学システム教本と松本の説法を録音したカセットテープについて,平成19年11月から平成20年2月にかけて,以下の内容の改訂版特別教学システム教本に改訂し,松本の説法を録音したCDとともに復刊して,セミナーにおいて参加した在家構成員に教学させるようになった(乙B3の28,B28)。


オウムの救済活動とは何かといったら,まずは真解脱者,アラハットを三万人出すことだ。(中略)そして,三万人が世界に散ったならば,そのサットヴァのエネルギーによって,ね,例えば核兵器を持つことが無意味であるとか,例えば他の,ね,宗教理論の中に矛盾があるだとかいうことがどんどんどんどん暴露されてこよう。そしてつぶされよう。そして真理は一つになるはずだ。(第1課3級A(昭
和62年7月26日の松本の説法))


実際に理想郷,理想的な社会をつくってみようじゃないか。
(中略)
オウムの自力によってね,雛型をつくろうじゃないかと。(中略)この日本に,その社会の雛型をつくろうじゃないかと考えて,着実に進んできているのが,今のオウムのシャンバラ化計画なんだね。(第3課5級C(平成元年3月25日の松本の説法))


タントラで成就する場合,金剛乗で成就する場合のポイントというものは何かというと,絶対的なグルに対する帰依であるということは挙げられる。(第7課5級B(昭和63年9月27日の松本の説
法))
Alephは,平成20年12月から平成23年12月にかけて,上特別教学システム教本」に未登載の松本の説法からな

る新・特別教学システム教本及びCD(第1課から第7課)を発行した。
新・特別教学システム教本
に収載されている松本の説法には,
松本への絶対的帰依及び松本の説く衆生救済の重要性についてのものや,タントラ・ヴァジラヤーナ,マハームドラーについてのものが含まれている。(乙B3の29)

この頃のP2の言動
P2は,この考え方というのは,昔オウム真理教でいうヴァジラヤーナの考え方なんじゃないかという考え方が出てくるわけですね。要するに,良い目的のためには他を殺しても良いと。その考え方と今の考え方がどういうところで違うかというと,まず第一に,仏教においてはヴァジラヤーナの考え方(中略)は実際あるわけですね。実際あるけれども,それはどこか誰か一人の成就者のための法律,法則じゃなくて,そういった警察をやる人,裁判官をやる人,又は個々人が正当防衛を迫られたとき。そういった形で,全ての人にとって,このヴァジラヤーナの考え方はどうしても必要なわけです。(中略)一方,オウム真理教の問題は何かというと,その,要するに,自分は特別な権限,自分は成就者であって,ヴァジラヤーナができるという考え方ですね。これが非常に大きな問題になる。などと説いた(平成21年8月13日の説法。乙B1の34,B6の68)。P2は,善と悪というのは完全には区別されていない。悪の中に善があって,善の中に悪があるんだっていうこと。これをもう少し広げて考えると,どんな悪いことをしている人もそれを純粋に100%悪い動機ではやっていないんですよね。どんな悪いことをする人でも,何か良い動機を持ってやっています。これは余り思い出したくはないことですが,サリン事件において,サリンをまいたその弟子たちも心の中に『これで他人を苦しめてやるぞ』という悪い動機でやっていたかというと,そういうことは全然ないんですね。何か自分の精神的な成長ね,何か自分なりの間違った世界観かもしれないけど,救済の世界観でやるわけ。と説いた(平成21年10月23日の説法。乙B1の35,B6の69)。

第3回更新決定
処分行政庁は,平成21年1月23日,第3回更新決定をした(前提事。
東京地方裁判所は,平成23年12月8日,第3回更新決定のうち,被請求団体(その支部,分会その他の下部組織を含む。以下,この項において同じ。)の営む収益事業(いかなる名義をもってするかを問わず,実質的に被請求団体が経営しているものをいう。)の種類及び概要,事業所の名称及びその所在地,当該事業の責任者及び従事する構成員の氏名並びに各事業に関する会計帳簿を備え置いている場所(その会計帳簿が電磁的記録で作成されている場合には,当該電磁的記録の保存媒体の保管場所)の報告義務を課する部分を取り消し,その余のAlephの第3回更新決定の取消請求を棄却する旨の判決を言い渡した(乙B3の114,F31)。東京高等裁判所は,平成25年1月16日,上記判決中被告敗訴部分を取り消し,Alephの請求を棄却する旨の判決を言い渡した。

第4回更新決定
処分行政庁は,平成24年1月23日,第4回更新決定をした(前提事
起しなかった。)。

本件更新決定
処分行政庁は,平成27年1月23日,本件更新決定をした(前提事実
3
本件更新決定の際のAlephの組織等
Alephの組織規模等

Alephは,
平成26年11月13日付けで,
公安調査庁長官に対し,
同年10月末時点におけるAlephの国内構成員について1236名(出家構成員213名,在家構成員1021名)と報告し,入会していないが,その活動に参加することがある者として2名を報告した。このうち,出家構成員のほぼ全員,在家構成員の約3割が地下鉄サリン事件以前からオウム真理教に加入していた者である。また,地下鉄サリン事件以降に検挙され,その後刑務所を出所したり,釈放されたりした者で,平成26年7月31日時点で,89名がAleph,13名が原告の構成員として報告されており,Alephの上記構成員89名のうち5名は,サリン量産プラント建設事件や自動小銃の密造に関する武器等製造法違反事件等に関与して有罪判決を受け,服役を終えた者である(乙B7の31・32,F33)。
なお,Alephは,平成24年7月,Aleph会員は,原告の活動に参加してはならない旨の活動要綱を定めた(乙D52)。

P9は,松本サリン事件に関与し,殺人幇助,殺人未遂幇助等の罪で懲役4年6月の有罪判決を受け,平成13年2月17日に刑務所を出所した(乙B4の1・2,B7の32)。
P9は,平成15年4月5日付けで,Alephへの入会手続を行い,Alephも,上記アの報告において,P9を在家構成員として報告した(乙B4の5・7,E32)。P9は,平成25年1月から平成26年8月までの間,Alephが管理する大阪市生野区内の施設に継続的に出入りした(乙B4の6)。


松本の三女P13は,平成24年1月23日から平成26年7月31日までの間に,70回以上,松本との面会を申し込み,二女P39,長男P19及び二男P20も複数回にわたって松本との面会を申し込んだが,松本は,平成20年6月10日に,二女及び二男と面会したのを最後に,面会をしていない(乙B4の1・4,D142)



Alephは,平成26年9月末時点で,埼玉県越谷市ad丁目e番f号所在の▲▲▲マンションg号室に主たる事務所を置き,
北海道,
茨城県,
埼玉県,千葉県,東京都,神奈川県,愛知県,滋賀県,石川県,京都府,大阪府,徳島県,福岡県に合計24の施設を保有し,ロシアにも数施設を保有している(乙B2の9ないし11・31,B8の92)。
Alephの運営態勢


Alephは,遅くとも平成23年10月以降,月に1回,合同会議を開催し,組織運営に関する意思決定を行っている。合同会議には,懸案事項ごとに方策を検討するために複数のプロジェクトチームが設置されている。また,Alephは,総務部,経理部,広報部,法務部及び救済メディア本部等の中央部署を9施設に配置している
(乙B2の1・14・19・
32)。
合同会議内に設けられた運営委員会の共同幹事(平成26年8月時点)は,P8及びP7であった(乙B2の11)。

Alephは,松本が創設・発展させた位階制度の根本部分を維持しており,尊師,正大師,正悟師,師長,師長補,師,上流士,準師,師補,サマナ長,サマナ,サマナ見習いなどの位階制度を有している(乙B3の1・77・80・82,E13)。
この位階制度については,平成17年4月に発行されたAlephの機関誌において,グルに帰依しなくなった段階で一気にステージが落ちてしまうということが現実問題として起こるわけなのである。もし,神通が自分だけの力で身に付いているのだとしたら,そんなことはあり得ないだろう。つまり,ステージも神通力もグルから与えられているものなのだ。(平成17年4月発行進化Vol.51)などと説明されている(なお,平成14年3月頃に,3名につき師の成就認定がされたが,第1回更新決定後に師以上に昇格した構成員はいない。
乙B3の1,
B5の80)

また,
平成23年1月に発行されたAlephの機関誌には,
成就(解脱・悟り)の判定はグルにしかできないという記載がある(ボーディサットヴァ49号。乙B3の81)。Alephの200名余りの出家構成員は,全国各地のAleph管
外にも,出家構成員の居住用として約10か所のアパート等を確保している(乙B8の1・5)。
Alephは,
新たな出家の認定を停止していたが,
平成24年3月,
平成25年5月及び平成26年7月,合同会議においてそれぞれ1名ずつ在家構成員の出家を承認した(乙B3の1・85,B6の61,B8の6)。
Alephは,その機関誌に素晴らしき『出家』-人生のすべてをグルに委ねてと題する特集記事を掲載したり(平成22年11月及び12月発行。乙B8の10・11),情報を遮断し,いらぬデータを取り入れない,戒律の遵守によって不必要な経験-つまり,未来において自分自身を苦しめるようなカルマの形成-をできるだけしない,といったことが大切になってくる。という記載のある記事を掲載したり(平
成24年9月発行。乙B8の17)して,外部からの情報遮断や家族・親族との縁を断つことの重要性を指導し(乙B6の47,8の12・14・15・18・19),また,Alephが独自に製造した食品・水(松本が唱えるマントラのデータが流れている電気コードを巻いた枠内に一定時間保管するなどの修法と称する儀式を施している。)を出家した構成員に配給するなど
(乙B3の61・62,8の7ないし9)

オウム真理教が導入していた出家制度を維持している。(乙B3の1,B8の1)

そして,Alephは,合同会議で決定された内容等を会議に参加した構成員を通じて,各部署または各支部に所属する構成員に伝達しているほか,中央部署や各施設をインターネット回線を通じて,これらの事項や幹部構成員の説法,集中セミナー等の開催状況を構成員に周知させ,また,月刊の機関誌ボーディサットヴァ等を在家構成員に配布したり,アレフデイリーメールと題する電子メールを配信したりして,松本の説法や集中セミナーの開催状況等を周知している(乙B2の1・22・23・25ないし27・30,E1,E28,E29,E31)。

4
本件更新決定の際のAlephの活動状況
松本の説法を収録した教材の使用等

公安調査官は,第3回更新決定後である平成23年8月1日,Alephの教本やDVD教材等の作成を担う部署であるメディア班が入る大宮施設に対する立入検査を実施したところ,これらの教材に係るDVCAM約550本,DVDRAM約180本を発見した。その際,立会人である構成員は,

ここに置かれているDVCAM及びDVDには尊師の説法が収録されています。これらは,教材が災害などで使用できなくなった場合に備えて,保存用として保管しているものと聞いています。

と説明した。また,公安調査官は,第4回更新決定後である平成26年7月2日,同施設に対する立入検査を実施したところ,上記立入検査時と同様の形態で保管されているDVCAM約550本及びDVDRAM約180本を発見した。(乙B3の76)
平成26年1月5日,Alephの八潮施設に対する立入検査が実施された際には,改訂版特別教学システムの第1ないし10課,新・特別教学システムの第1ないし7課のCDがそれぞれ数十枚ずつ保管されていた(乙B3の31)。平成25年8月29日,Alephの札幌施設に対する立入検査が実施された際には,改訂版特別教学システム教本の構成員ごとの進度報告表が壁に貼られていた(乙B28)。イ
Alephのグルヨーガ・マイトレーヤ・イニシエーションと題するDVDは,タントラ・ヴァジラヤーナの7つのプロセスの修行法等で構成され,マントラ及び詞章として,シヴァ大神への帰依を唱えさせるとともに,

グルに帰依します。

などと唱えさせ,

あなた方の前には,シヴァ大神と何ら変わることのない,全く同じである,グルの報身,法身,変化身が,上から縦に並んで座っています。

などと説明し,松本をシヴァ大神の化身と捉え,同人への絶対的な帰依を扶植する内容が含まれ,Alephの構成員が視聴している(乙B3の1・59)。


第4回更新決定後である平成26年3月19日,Alephの生野施設に対する公安調査官による立入検査時に発見された幹部構成員P7が使用するパソコン内に,新人勉強会と題するパワーポイントデータが保存されていた。同データには,教学記憶修習として,

三宝が説く真理の法則を思考に反映されるまで記憶修習すること。

具体的には“特別教学システム”,“書籍”,教学用DVDといったものを何度も何度も観,聴き,読むこと。

この段階は,自分の考え方を入れずに,ひたすら繰り返し法則を学ぶ段階です。

データの入れ替えという意味において,教えを何度も何度も聞く必要がある。

帰依を培うためには-教学記憶修習をしっかり行う。日頃から礼拝し,帰依マントラを唱える。自分を投げ出して真理の実践を行う。常にグルの意思を考え,実践する。苦しい時こそグルを意識・思念・観想する。

日ごろから立位礼拝や帰依マントラを行うことによって,潜在意識に帰依の種子が植え付けられる。→いずれはハードな実践にも耐え得るだけの帰依の心を培うことができるようになる。

等の記載がある(乙B3の6)。また,平成26年1月ないし7月に実施されたAleph管理に係る名古屋施設,福岡施設及び札幌施設に対する公安調査官による立入検査の結果,立位礼拝と称する修行をする際,グルとシヴァ大神とすべての真理勝者方に帰依し奉りますと述べる旨記載された掲示物が壁面に貼付されていた(乙B3の25)。

Aleph発行の機関誌であるボーディサットヴァ65号(平成24年5月発行)には,Alephの幹部構成員であるP40の成就を目指しているサマナ
(出家信徒の意)
や信徒へのアドバイスが掲載されており,

サマナの場合はグルのみですね。グルのご意思の実践が,ワークだったらワーク,修行だったら修行で,本当にできているかどうかですよね。

グルのご意思とは何かと絶えず考えて,例えば自主的に導きに行くなどして,救済活動を本当にしゃかりきになってやっていく形にしないと,なかなか徳を積めないと思うんですよね。

と述べた旨の記載がある(乙B3の11)。
また,同機関誌71号(平成24年11月発行)においては,同年9月にAlephが開催したセミナー参加者の発言が掲載されており,同人が

クンバカ(注:修行法の1つで,息を止めるというもの)中,グルを思念して内側に意識を入れたときお尻が軽くなり,その後,歓喜状態でしばらくボーッとなり,口の中も急に甘くなりました。

と述べた旨の記載がある(乙B3の67)。
松本に対する個人崇拝をうかがわせる事情(乙B3の1)

平成24年2月21日から平成26年9月25日までの間に実施されたAleph管理に係る施設に対する公安調査官による立入検査の結果,延べ87施設中,67施設の祭壇に松本の肖像写真が掲示されていた(乙B3の17・18)。


平成26年1月,Alephの勉強会において,幹部構成員が,尊師は,今,拘置所の中でご自身で修行されておられますが,私たち信徒は常に尊師を思念・観想することで絆を強めなければなりません。聖地巡礼(注:松本が拘置されている乙拘置所を訪問することを意味する。)は,そこ,そのものがエネルギーに満たされている場所であり,聖地に行くことで信徒の皆さん自身も浄化されます。尊師が存命し修行を積んで居られる場所であり,尊師からの高いエネルギーが受けられる場所です。信徒の皆さんは機会を作り,出来る限り多く聖地巡礼をしてくださいなどと発言した(乙B3の39)。
平成24年4月から平成26年1月までの間,6回にわたり,Alephの集中セミナーの際,Alephの複数の構成員が,松本が拘置されている乙拘置所に赴き,同施設の外周を周回したり,同施設に向かって合掌して礼拝したりするなどした(乙B3の40)。


平成24年から平成26年の毎年,松本の誕生日である3月2日に合わせ,Alephの各施設において,生誕祭などと称する催しが開かれ,オウム三唱,立位礼拝,松本の説法の映像の視聴,松本の延命を祈願する瞑想,松本の好物とされる食物の喫食,松本を称揚する歌の合唱等が行われた(乙B3の35)。

Alephは,平成24年11月,ある情報によると,実は今年の1月に死刑執行の準備に入ったと。(中略)だけど,それが逮捕者が出て,裁判が長引くことによってね,それが,その話が消えたという話を聞いたわけなんですけどね。(中略)それはやはり,去年の暮れくらいから私たち皆が,やはり,グルが涅槃されないためにね,しっかり思念していたから,そういう現象が起こったのかと思うんですけれども。(中略)じゃあ,グルが涅槃されないためにね,私たちは,実際,何を実践できるのかということをね,実際,説法にちゃんと載っていますから,それを見ていきたいと思います。(中略)まず,グルに対して涅槃されないように祈願するということですね。という内容の説法を,各施設に対しインターネット中継により発信した(乙B3の38)。
Alephにおける修行及び儀式等(乙B3の1)


PSI(パーフェクト・サーヴェーション・イニシエーション)は,Alephが製作・使用する修行用の器具であり,松本の脳波データを発生させるとする基盤部分と頭部に装着する電極付きヘッドギア部分で構成されるものである。PSIを装着すれば,松本の脳波が注入され,着用者は松本と同じ瞑想状態に至るとして,平成5年12月以降,構成員にその着用が奨励され,平成13年8月には,より小型化・高性能化したなどとする新型PSIが製作された(乙B3の43)。
Alephにおいては,第4回更新決定後も,PSIがその施設に保管され,
構成員に使用されており,
Alephは,
定期的に,構成員に対し,
PSIの装着時間について報告を求めている
(乙B3の17
・45,
B9)

なお,平成24年9月にAlephが実施した2012年秋の集中セミナーにおいて,PSIを装着して立位礼拝を繰り返したりマントラを唱える修行する構成員がいた(乙B3の32,B29)。

Alephは,平成24年4月27日から平成26年8月17日までの間に合計15回(8回は出家構成員を,7回は在家構成員を対象としたもの)にわたって集中セミナーを実施した(乙B3の20・32,B29)。上記集中セミナーにおいては,
構成員は,修行するぞ,①修行するぞ,修行するぞ,徹底的に帰依するぞなどと繰り返し唱和する欲如意足(乙B3の22),②楽しく修行するために,わたしは,煩悩から離貪するぞ,それはまず,グルを,うれしいなあ,楽しいなあなどと唱和する喜覚支・軽安覚支(乙B3の21),③オームグルとシヴァ大神とすべての真理勝者方に帰依し奉りますなどの詞章を大声で唱えながら,長時間起立と地面への伏せの姿勢を繰り返し行う立位礼拝(乙B3の24・25),④松本の説法等が収録された教本又はCD等を使用して,
当該説法を繰り返し修習・暗記することなどを行う教学(乙B3の6・28・29・31),⑤写実的に描いたアニメーション画像の松本をシヴァ神となんら変わることのない,グルの報身・法身・変化身などとして,松本に対する絶対的な帰依等を説くDVDを視聴しながら修行を行うグルヨーガ・マイトレーヤ・イニシエーション(乙B3の59)などの各プログラムを行った(乙B3の32・69,B29)。

Alephは,施設内で松本が唱えるマントラの声を常時流し,構成員に聞かせている(乙B3の17・18,B9)。
また,松本が唱えるマントラを電気信号に変換したデータが流れているとされる電気コードを巻いた枠内に食品等を一定時間保管する儀式を修法と称し,この方法によるパンや麺類,ジュースなどをお供物と称して全国のAleph管理下の施設に配給して摂取させるほか,
修法を施した上で,
松本が奇跡的な聖水と位置づけた甘露水と称する飲料水も摂取させている(乙B3の61ないし64,B8の7・8)。そして,これら甘露水を製造するための修法の設備については,Alephの管理下にある延べ87施設のうち83施設に存在する(乙B3の17)。
殺人を行うことも正当化される教義に関連する事実

Alephの幹部構成員は,第4回更新決定後においても,

皆さんはね,この世にシャンバラを現象化させるために一生懸命,救済を頑張らないといけません。

(平成24年10月のP28の説法。乙B6の40),
尊師は,救済活動について次のように説法しています。『オウム真理教の救済活動とは何かと言うと,まずは真の解脱者,アラハットを3万人作りだすことだ。そして,その3万人が世界に散ったならば,そのサットヴァのエネルギーによって,例えば,核兵器を持つことが無意味であるということや,他の宗教理論の中には矛盾があるということがどんどん暴露されてくるだろう。そして,他の宗教理論が徐々に潰されてゆき,やがて真理は一つになるはずだ。(中略)それが,私の壮大なる計画だね』皆さんが修行して霊的進化を遂げること,そして,心の成熟を遂げることは,尊師の壮大なる計画であるシャンバラ化を早めることになります。(平成26年1月の説法。乙B6の42)などと説法した。


Alephの幹部構成員は,第4回更新決定後も,Alephの構成員に対し,

尊師との一対一の関係に気付いてほしいね。(中略)一対一っていうのはね,その間に誰も入らないってことなんだよね。

,この一対一というのは,密教の関係です。(中略)クンダリニー・ヨーガでは,百対零。帰依の成就です。(中略)グルとの合一,尊師の変化身になって救済活動をするには,やはり一対一の関係を強めていかなきゃなりせんし,成就していってもらわないとならないわけですね。(平成24年5月の説法。乙B3の7),私たち弟子がやるべき実践は,グルが求めておられる帰依の実践なんだと思うんですね。それを尊師は,『つまり自分を投げ出すことだよ』というふうに説いています。だから,もしできる人はね,『自分をグルに投げ出すぞ』とね,『自分を全て投げ出して帰依するぞ』と思ってね,成就していただきたいと思う(平成25年2月の説法。乙B3の10)などと説法した。

Alephの幹部構成員は,マハームドラーっていうのは,言うまでもなく,グルが私たちの心の内側に根付いている汚れをこの世界に投影し,そこで苦しみを経験させ,それを乗り越えさせるという高度な技法のことであると。(中略)要は,これは,最大のポイントは,誰でもかれでも挑戦するわけではないと。その人が,グルに対する帰依がしっかりとできている人に限ります。(平成24年6月の説法。乙B6の55),P41さん(注:目黒区公証役場事務長拉致事件等に関与し,平成23年12月に出頭したP41)の裁判を含めて,現在,教団に降りかかっている状況は,尊師が弟子達を成長させるためにマハームドラーを課している最中です。尊師は我々弟子達を最終解脱させようと考えています。(平成26年2月の説法。乙B6の56)などと説法した。(乙B6の1)Aleph発行の機関誌であるボーディサットヴァには,マハームドラーの修行とは,『わたしは○○である』とか,『わたしはこうしたい』だとか,『わたしはこのように考える』だとか,『わたしはこれは嫌だ』とかいう心の働きを完全にストップさせた上で,最終地点に到達しているグルに自分の身・口・意を完全に調御してもらうことなのである。(平成24年3月発行。B6の57),マハームドラーの修行は,しばしば,グルによってわたしたちに突き付けられることになる。その場合は,グルが,わたしたちの内奥に存在している煩悩のデータをこの現象界に投影し,それが苦しみであることをわたしたちに証智させ,それを帰依の力によって乗り越えさせようとするのである。(平成24年9月発行。乙B6の59)などという記載のある記事が掲載された。


第4回更新決定以降,Alephの一般構成員においても,両サリン事件を始めとする一連の重大事件は,衆生救済を実現するためのタントラ・ヴァジラヤーナの実践として正しいものであったという認識を有している者がある(乙B6の1)。
Alephの構成員は,平成24年9月,公安調査官に対し,オウムが起こしたサリン事件は,一般の人間界や一般の方から見たら(中略)ただの殺人行為にしか見えないと思うので,尊師を始め,実行した者は,人間界で責任を負うべきだと私は思う。ただ,真理勝者に近い尊師があのような事件を起こしたら,どのような結果になるかわからないはずがない。,私は(中略)相手を『救う』ために,相手のカルマを背負ってまで,自分を犠牲にして,相手のことを考えている『ポア』は,自己と他人を区別する『殺人』ではないこと(中略)などの理由から,私は,尊師が(中略)皆を『救う』ために,あのような事件を起こされたのではないかと思っている。と述べた(乙B6の62)。Alephの構成員は,同年11月,公安調査官に対し,

このヴァジラヤーナこそが最も深遠な教えであり,これを実践してこそ修行者冥利に尽きるというものです。

,ヴァジラヤーナには修行としての殺人も含まれますが,それには,グルの命令が大前提になってきます。一連の事件を振り返れば,グルもステージの高い弟子にしか殺人の命令をしていませんので,そういう意味では,選ばれた弟子にしかできない非常に高度な修行ともいえます。と述べた(乙B6の64)。Alephの構成員は,平成25年8月,公安調査官に対し,

単なる殺人を行えば犯罪者になりますが,尊師の場合は,弟子の解脱のために殺人を指示していますので,これは立派なヴァジラヤーナの実践です。

と述べた(乙B6の65)。Alephの構成員は,平成26年9月,公安調査官に対し,

同じ殺人という行為であっても,徳が無くて悪業の塊のような人が悪人を殺すケースと,徳があって人々を救済しているような,尊敬に値する人が悪人を殺すケースとではその結果が違います。

悪人は,将来積むはずであった悪業を積むことなく次の転生を迎えられるわけです。

と述べた(乙B6の66)。
Alephの出家構成員は,
平成24年6月,公安調査官に対し,
私は,このような神秘体験をいくつか経験しているため,尊師の力と救済の意思は本物だと確信している。尊師の指示に逆らうなど考えたこともないため,事件当時でも現在でも,仮に,尊師から高弟方と同じように『サリンを撒け』と指示されたら,サリンを撒くだろう。と述べた(乙B7の39)。
Alephの構成員は,平成25年8月,公安調査官に対し,仮に今,私がP42正悟師(注:P28のこと)に『サリンを撒け』と指示されても即座に断るが,尊師から直接『サリンを撒け』と指示されたら,従うかもしれない。(中略)サマナにとって尊師からの指示は絶対であり,それに従わないということは,サマナの本質である,尊師に絶対の帰依を否定することになり,自分自身を否定するようなものだからである。と述べた(乙B7の40)。オ
ヴァジラ・ダラへの道等
P43は,P37弁護士一家殺人事件や両サリン事件等に関与し,殺人,
殺人未遂等の罪で死刑判決を受け
(平成22年1月19日上告棄却)

死刑確定者として乙拘置所に収容されている。P43は,上記刑事事件の公判中も,一貫して松本に対する帰依を述べ,各犯行を宗教的な確信によるものであるとして正当化する供述をした。(乙B4の15ないし18)
Alephには,第4回更新決定後も,P43と頻繁に面会する構成員がおり(乙B4の32),P43と面会したAleph構成員は,多数のAleph構成員に対して,
P43のメッセージとして
ヴァジラ・ダラへの道
と題するメールマガジンを配信した
(乙B4の1・20)

平成24年11月28日付けヴァジラ・ダラへの道VOL.32
には,P43のメッセージとして,或る親愛なる法友から『今年の年末年始,都合により帰省もセミナーに参加することもできず,一人で過ごすことになりました。それは生まれて初めての体験で,とても寂しくなってしまい,グルに(尊師,寂しいよ)と心の中でつぶやいたら,しばらくして尊師から(私がいるじゃないか)という返事が心の中に入ってくると同時に至福感に包まれました。』とありました。ありがとうございます。良かったですね。寂しさを紛らわそうとして不善を為すのではなく,何かあればグルに意識を向けようとするのは素晴らしいです。グルはいつも私達を見守って下さっていますからね。(中略)或る親愛なる法友から『カルマの清算で切羽詰まって,昨夜グルにすがり,一身上のことをお伺いして,私にも分かるように,「示唆ご返事をください!とお願いした直後に,このメールが届きました。グルと正大師(注:P43のこと)
の癒しと励ましのヴァイブレーションに涙がでました。
(中
略)』とありました。ありがとうございます。」との記載(乙B4の33)がある。
平成25年1月27日付けヴァジラ・ダラへの道VOL.34に
は,P43のメッセージとして,

偉大なるグルであられる尊師は逆縁を喜びとすると言われています。救い難いものを救うことの醍醐味を現わしてますね。

との記載(乙B4の21)がある。同年3月27日付けヴァジラ・ダラへの道VOL.36には,P
43のメッセージとして,

グルの58歳の誕生日を祝福します。グルが健康で長生きされますように私の功徳を供養します。どうぞ衆生の為に苦悩の世界にとどまられますよう祈願します。

との記載(乙B4の22)がある。
同年4月26日付けヴァジラ・ダラへの道VOL.37には,P
43のメッセージとして,私たちはグルの弟子として,『グルの弟子であったらどのように振る舞うか?』と絶えず考えることで,来世もグルの弟子として転生することができるでしょう。(中略)或る親愛なる法友から『正大師(注:P43のこと)が心を強くする勉強をなさっていることは,私たちも,これからのカルマの解放をのりこえるための心の強さを養う励みになります。cにおられても,いつも私たちの先頭に立って励ましてくださって,本当にありがとうございます。正大師のバックにグルを感じられてなりません。』とありました。(中略)修行者であり,グルの弟子であることは本当に素晴らしいです。との記載(乙
B4の23)がある。
5
原告の組織等
設立

平成19年5月7日,原告の設立が発表され,P2が代表に就任し,P2を始めとする出家した構成員13名が役員に就任した(なお,P2は,現在に至るまで代表役員である。)。設立時,専従会員(原告が指定する施設に居住し,
原告の指示に従い原告の活動に従事する者)
が57名,
非専従会員(一般の社会生活を営みながら,原告の施設に通うなどして原告のサービスを受ける者)が106名であった。このうち,非専従会員の1名を除く者はかつてAlephにおいて活動していた者であった。
(乙B2の20,B3の215,B5の25,E65)

原告は,平成19年3月8日,ホームページに以下の記載のある記事を掲載した(乙B3の110)。

4.麻原氏の位置づけオウムアーレフ元代表の麻原氏には,・何らの位置づけも与えません。新団体は,一連のオウム事件に関して,麻原氏の真摯な反省を最後まで求めていきます。

8.祭壇アーレフでのシヴァ大神・ヴィシュヌ大神像等は廃止して,『釈迦三尊像』を採用します(現在・過去・未来の三世の仏陀を現す)。これは,釈迦を(絶対の)崇拝対象にするためではなく,弟子に対して『私を拝まず,自分自身と法(仏法)を帰依の拠り所とせよ』と説き,自らを含めた特定の人間を神とすることを否定した釈迦牟尼の思想を重視するためであって,すなわち,オウム・アーレフにおける麻原氏への個人崇拝の過ちを深く反省して脱却を決意するための象徴です。13.公安調査庁・観察処分への協力(中略)麻原氏の影響力を払拭する新団体は,理論上・法律上は,観察処分の対象になるとは考えられませんが,新団体の理念であるオウム事①件の贖罪のためには,住民不安の除去を最優先すべきであること,②新団体として完全に変わりきるためには,客観的な第三者の視点・評価を尊重すべきであると考え,当面は,観察処分に(任意に)協力することを公安調査庁幹部に約束しました。ウ
基本理念の制定
原告は,平成19年5月,①人の心身の浄化を通じて,人々と社会への奉仕に努める,②自己を絶対視せず,未完の求道者の心構えを持つ,③特定の人物を盲信せず,全ての人々に神性を認める,④善悪二元論の妄想を超えた,叡智・思想に基づく実践を行なう,⑤他の宗教・思想を強制せず,特定の宗教・思想を強制しない,⑥全ての存在から学ぶ,⑦全ての調和のための奉仕をするという内容の基本理念(同月8日改正後のもの)を定めた。その付帯文には私たちは,地下鉄サリン事件・松本サリン事件・P37弁護士事件をはじめとする,80年代末から95年にかけて発生した一連のオウム事件が,当時のオウム真理教教祖・麻原彰晃こと松本智津夫の指示のもと行われた組織的犯罪であったことを,裁判所の判決や私たち自身の経験に基づいて,明確に認めるものである。,

私たちは,本来の志に立ち返り,事件を引き起こした過去の私たちの宗教的な過ちを次のように反省し,二度とそのような問題を起こさないことを決意し,新しい道を歩んでいくことに努める。などという記載があり,

上記の宗教的な過ち一つとして

一人の人間である当時の教祖を『神=キリスト』と見て,絶対化し,絶対善として,弟子たる自分は,それに絶対的に服従すべきものと考えた。ことが挙げられている。

(乙B5の24,
E34)

会則の制定
原告は,平成19年5月,①基本理念に基づき,過去のオウム真理教事件の反省に立ち,その教訓を生かしつつ,宗教・思想・哲学・科学及び芸術等を幅広く研究・実践及び公開することによって,人々の心身の浄化,癒し,人間と自然との調和に尽くし,もって宗教による悲劇が発生しない精神的に豊かな社会づくりに奉仕することを目的とし(3条),②原告の基本理念の趣旨に賛同する者であって,本会則を承認し,所定の手続を経て加入した専従会員及び非専従会員で構成され(6条),③専従会員から成る総会を年1回以上開催し,基本理念及び本会則の変更,役員の選任及び解任等を決議し(18条,19条,23条),④総会において会員の中から選出される役員(代表役員1名,副代表役員1名以上,役員5名以上)から成る役員会が必要に応じて招集され,運営事項を決議する(25ないし27条,29条,32条)こと等を内容とする会則を定めた(乙B2の20,B5の24,D79,E34)。
組織規模等


原告は,平成26年11月15日付けで,公安調査庁長官に対し,同年10月末時点における原告の国内構成員について143名(専従会員17名,同居する非専従会員6名,非専従会員91名,団体に入会していないが,団体の活動に参加することがあり,かつ,公安調査庁への任意報告に同意した者29名)と報告した。このうち,専従会員の全員,他の会員の6割以上が地下鉄サリン事件以前からオウム真理教に加入していた者であり,構成員の8割以上が,以前,Alephにおいて活動していた者であった(乙B1の44,B2の6,F33)。
また,原告設立後,Alephから原告に移籍した者は少なくとも26名あった(乙B25)。

原告は,平成26年9月末時点で,東京都世田谷区bh丁目i番j号所在の▲▲ハイムlに主たる事務所を置き,宮城県,千葉県,神奈川県,東京都,長野県,愛知県,大阪市,福岡県に合計8の施設を保有している(乙B2の12・31,B6の83,B8の92)。
運営態勢


原告は,年1回程度,総会を開催するほか,不定期に役員会を開催し組織運営に関する意思決定を行っている(乙B2の21,E34)。また,原告は,代表秘書室,経理部,法務部,広報部,財施部,全国会員教化部及びウェブ編集部等の中央部署を5施設に配置している
(乙B2の33)



原告の専従会員は,全国7か所の原告管理下の施設に居住している(乙B8の1・5)。


原告は,役員会で決定された内容等を会議に参加した構成員を通じて,各部署又は各施設に所属する構成員に伝達しているほか,中央部署や各施設をインターネット回線を通じて接続し,これらの事項や幹部構成員の説法,集中セミナー等の開催状況を構成員に周知させ,また,平成19年7月以降,聖地巡礼修行(Alephにおける聖地巡礼とは異なり日本国内の一般に聖地とされる場所を訪問するもの),集中セミナーの状況等を収録したひかりNEWSと題するDVDを,同年10月からはこれとP2の説法を収録したDVDも併せた2枚組の月刊ひかりDVDを製作し(ただし,ひかりNEWSについては平成22年3月の25号を最後にして,以降製作されておらず,平成23年5月以降は,聖地巡礼の内容を収録したDVDが製作されることがある。),毎月1回,在家の構成員である非専従会員に配布している。(乙B2の1・24・28・29,E30)
原告の活動状況等

オウムの教訓サイト
原告は,平成19年8月頃から,オウム真理教時代及びアーレフ時代を振り返る総括会合を複数回行い,平成20年7月までに,オウム真理教(1983~1999年)の活動経緯の総括と題する文書及びアーレフ時代(2000年~2007年)の総括と題する文書を作成し公表した。原告は,オウムの教訓-オウム時代の反省・総括の概要と題するウェブサイトを開設し,上記各文書を含む内容を掲載しているところ,これには,①麻原の変遷の経緯の総括として麻原は,自己中心的で誇大妄想的な性格であったところ,時を経るにつれて被害妄想的になり,社会と教団に著しい害悪を及ぼし,教団を破滅に導いていったとし,②事件の要因に関する総括と今後の方針として,弟子である信者らが,麻原と教団を誤って神格化し,個人崇拝した原因について探り,信者や信者を取り巻く状況にあった問題や,麻原独自の,犯罪を正当化する密教的な教義の解釈の過ちについても総括し,それらの総括・反省に基づき,今後,元オウム信者で構成されるひかりの輪が,二度と同じ過ちを繰り返さないために,どうすべきかについて,また今後果たしていくべき社会への償いについて記し,③心理学の『影の投影の理論』に基づくオウム真理教と日本社会として,深層心理学者であるユングの『影と投影の理論』をもとに,オウム真理教および麻原そしてオウム事件を考察し,④心理学的な視点に基づく,麻原・弟子・現代社会の人格分析として,
麻原については,『空想虚言症』『誇大自己症候群』という人格障害者であったと総括し,それに追随した信者らにも同様の傾向があったと総括し,⑤麻原・アレフを盲信する原因・落とし穴-盲信から脱却するためにとして,私達の20年間に及ぶ経験を活かして,なぜ,麻原・アレフを盲信するかの原因や,その落とし穴と,その盲信からいかに脱却していけるかを解説するなどという記事がある。(乙D72,D73)イ
教本の差し替え等

して,釈迦三尊像を採用するとしており,三仏(弥勒菩薩,観音菩薩及び釈迦牟尼)の仏画を施設内に掲示していた(乙F11)。
原告は,平成20年4月,構成員に配布していたマハーカーラのマントラ及びマハーカーラの瞑想と題する教本の差し替えとして,教材カーラチャクラ・タントラの真言を発行・配布する一方,同年5月,構成員に対し,上記マハーカーラのマントラ及びマハーカーラの瞑想の廃棄を指示した(乙B1の21,3の118・123・164,F5)。
P2は,上記のとおり教本を差し替えた点について,あれ自体はマハーカーラのマントラとして伝授したのは,仏教研究上,明らかにカーラチャクラの真言なので,それ自体はそれで良いのですね。それが正しいというか。ただ,付随した動機として,これは本質的に本当にカーラチャクラのマントラでマハーカーラのマントラではないのに,マハーカーラのマントラを残しておけば,それが仏教教義の過ちであるだけではなくて,マハーカーラ,イコール,シヴァとして,社会にも批判されなければいけないので,二重の問題があるから差し替える動機が強かった。などと述べた(平成21年7月18日の説法。乙F6)。P2は,原告が運営する会員サイトに,平成21年7月14日,代表緊急メッセージ-来る上高地・乗鞍巡礼の重要性と題して,今年2009年の7月において,仏教の歴史・教義の研究が進み,仏教が説く大黒天・マハーカーラとは,シヴァ神の化身ではなく,シヴァ神に由来しつつも,シヴァを降伏(ごうぶく)した仏教の護法神であり,さらには,大日如来の化身であると解釈できる(解釈するのが主流・正統である)ことがわかりました。シヴァ神に由来しつつ,シヴァを乗り越えた仏教の神といえば,これは,まさに,オウム真理教を出自としつつも,それを乗り越えて,仏教の一元論を中心に展開する,現在のひかりの輪と見事にイメージがだぶります。と記載した(乙F7)。平成23年8月に実施された公安調査官による調査において,原告の8施設に大黒天(マハーカーラ)の写真等が祭壇に掲げられていることが確認された(乙B3の119)。
公安調査官は,平成24年2月3日,平成26年2月13日及び同年8月1日,千葉県鎌ケ谷市所在の原告の施設に対する立入検査を実施したところ,車庫に設置されたキャビネット等に松本の説法を収録した書籍等を発見した(乙B3の161)。

哲学教室への変革
P2は,平成24年10月,原告のホームページに,ひかりの輪とは何か-宗教ではなく,新しい智恵の学びの場と題して,ひかりの輪は,宗教的な学習は行っていますが,特定の超越者・絶対者を信じる団体ではありません。すなわち,『宗教』ではなく,これまでの宗教というもののさまざまな問題を越えた,21世紀のための『新しい精神的な智恵の学びの場』です。などとする記事を掲載した(乙D128,F12)。
原告は,平成25年12月,基本理念を改正したところ,その内
容は,①思想・哲学の学習・実践を通じて,社会への奉仕に努める,②宗教ではなく,宗教哲学を探求していく,③自己を絶対視せず,未完の求道者の心構えを持つ,④感謝・尊重・愛の実践で,全ての存在に神性を見いだす,過去の反省に基づき,

特定の存在を絶対視し
ない,善悪二元論の妄想を超えた,

叡智・
思想に基づく実践を行なう,
⑦諸宗教の神仏は,人に内在する神性を引き出す存在として尊重する,⑧輪の思想全ての調和のための奉仕をするというものであるで,
(乙
B2の21,B6の88,D78)。
原告は,
上記基本理念の改正により,自らを
思想哲学の学習教室,
哲学教室と正式に位置付けたと説明している(乙F12)。
原告は,平成26年3月,思想哲学の学習教室への改革にともなう団体活動の場に関する規定及び教室内装に関する申し合わせ事項を定めたところ,その内容は,①道場の呼称を廃止し,教室と呼ぶこと,②恒常的な祭壇を廃止(仮設祭壇のみ),③三仏を廃止(正面の壁は釈迦のみとする)④室内のインテリアに非宗教的なものを多,
用すること,上記にともない大黒天仏像も事実上廃止するなどという⑤
ものである(乙B3の139,D131,D132,F12)。なお,同年5月31日から同年6月1日に行われた聖地巡りの際のP2の宿泊部屋には三仏の画が掲げられていた(乙B3の140)。
P2は,平成26年3月の公安調査官による調査において,大黒天を信仰していると思われるのは,一般の人とか,貴庁だけじゃなくて,何かを信仰していると思われるのは本意ではない。いずれにしても大黒天に限らず崇拝の対象にしていると思われるのは嫌。宗教ではなくて教室だから。,

今回の内装の変更において,(注:大黒天像を)残さない方が望ましいと思っています。などと述べた

(乙B3の121)

原告は,平成26年9月,思想哲学の学習教室への改革を推進するための活動規定及び教室活動の改革に関する申し合わせ事項を定めたところ,その内容は,①祭壇の完全な廃止(仮設祭壇も廃止),②供養等の儀礼の廃止,大黒天関係の法具の破棄,④三仏の完全な廃③
止などというものである(乙B1の24,3の141,F12)。原告は,同年8月までに,各施設の大黒天像を回収し,焼却処分した(乙B3の121,122,B22,D134,D135,D192)。エ
外部監査委員会
原告は,平成23年12月,ひかりの輪外部監査規約を定めたと
ころ,これによればひかりの輪外部監査委員会は,地下鉄サリン事件を始めとするオウム真理教による一連の事件の再発防止の観点から原告が適正な団体運営を行っているかを監査し,必要に応じて,勧告・公表・告発等を行い,原告が社会と融和することによって,オウム問題の解決に資することを目的とし,人格・識見に優れた原告外部の者(ただし,原告会員であった経歴を持つ者を除く。)から,原告が選任する3名以上の委員によって構成され,原告が所有し又は管理する土地又は建物に立ち入り,設備,帳簿書類その他必要な物件を検査すること,原告会員に必要な質問をすること,原告から定期的に報告書を徴収し,検査すること,原告から教義資料及び定期刊行物を,刊行後速やかに徴収し,検査することができ,監査の結果,必要な場合は勧告・公表・告発等を行うものとされている(乙B8の58・72)。
同委員会委員長には,P44(松本サリン事件の被害者),同委員には,P10(甲大学●学部教授・内観学者),P45(宗教法人丙神社責任役員理事),P46(地下鉄サリン事件被害者親族)及びP47が就任した(なお,同委員会の委員は,その後,P44,P10及びP45の3名になった。甲11,21,乙B8の72・74・88,D107,D117,D165ないし167,F15)。
P10教授は,平成21年から,原告の構成員らに対して内観の指導を行っているところ,同教授によれば,内観とは,母親など身近な人に関して,これまでにしてもらったこと,してあげたこと,迷惑を掛けたことの3点を想起してもらうことにより,先入観を排した事実を思い起こす手法である。原告は,原告管理下の各施設において,同教授指導のもと内観セミナーを開催している。
(甲21,
乙B8の74ないし77,
D109,D112,D115,D116,F14)
P10教授は,平成26年12月,公安調査官に対し,内観の実施を経て,原告の人たちが,松本やオウム信仰から脱却していることは間違いないと思う旨述べた(乙B36)。
ひかりの輪外部監査委員会は,平成26年11月,原告には団体規制法5条の観察処分の適用要件に該当する事実は何ら認められなかったとする外部監査結果報告書を作成した(乙D71)。

Alephとの関係
原告は,平成22年9月,Alephからの退会に関する相談窓口を設置し(乙D158),平成24年2月,アレフ(Aleph)問題対策室を設置するとともに,Aleph問題の告発と対策と題するブログを開設した(乙D159)。原告の構成員は,Alephからの退会を検討している者の相談を受けるなどしている(乙D160,D161)。
オウム真理教犯罪被害者支援機構は,平成23年7月,Alephに対して,同機構に著作権が帰属する松本の著作物を使用しないように通告した。原告は,平成24年頃から,同機構に対し,その証拠収集につ
本の説法を収録した書籍等を提供したり,Alephの元構成員から提出してもらったAlephからの教材の購入に関するアンケートを提供したりしている(乙D71,D92,D99,D100,D159,D164,D224)。
P2の言動
P2は,平成24年5月の説法において,オウム真理教,麻原彰晃という人物,これは一連の教義及び事件に関しては,私は今完全にそれを否定してですね,それを乗り越えようとして,『ひかりの輪』というのをやっています。あれは納得がいかないと。そして,私はそれを2003年ぐらいから反旗を翻して,教団が分裂。で,2007年には麻原の教材は一切捨てて,私の自立っていうもの,これが生じたわけです。(中略)『ひかりの輪』として自立,独立してから,賠償も含めて毎日いろんな苦労をする中で,ああ,そうだなと,麻原にも食べさせてもらったことに関しては,事件その他の教義に関しては徹底して超越しなければならないが,少なくとも食べさせてもらったことに関しては感謝せねばならんのかな,そういうふうに思うようになりました。などと説いた(乙B1の27,B3の142)。P2は,平成25年3月の説法において,単純に物の豊かさによって幸福になると感じられない人が一部にいるということは,御理解いただけるとは思います。(中略)そういう人たちは,オウム真理教とか(中略)にはいっていったんじゃないか,そういうふうに思います。(中略)物の豊かさが絶対ではなくて,心の豊かさ,精神性を高めることがこれからの幸福にとって重要なんじゃないか。特に,自分はそうだっていうこと,それ自体はですね,私は,オウム真理教に限りませんが,間違いだとは思っていません。ただ,その心の幸福をオウム真理教は,まあ,解脱・悟りといったような形で追求して,で,その過程の中で自分たちで得た結果,これに教祖をはじめとして,弟子たちが,ある意味じゃあ過信を持って,自分たちがこの世を正す,そして真の幸福を広める神の化身,集団だと,そういうふうに慢心に陥って,で,それと対抗する既存社会というものは悪であると断じてですね,そういったものに対する対処は武力をもっても,暴力をもってもやるべきではあるという感じになってしまった点,それは間違いであったのかなと,そういうふうに思います。そういった意味では,まあ,オウム真理教というものであってもですね,その暴力主義的な,その武力革命の思想はさておき,その中に何か良いことがあったんだろうというのは,御理解いただける方もいらっしゃるとは思うなどと説いた(乙B1の28,B3の144)。P2は,平成25年4月の講演において,瞑想しただけでは,なかなか悟れない,体得できないということで出てきたのが,麻原彰晃による試練なんですね。これを『マハームドラー』と言います。麻原は弟子をいじめるわけですね。(中略)グルと弟子のプライベートな関係で,グルが弟子をいじめて,それに対して弟子は自己愛にとらわれない瞑想をして,その平常心を保つという訓練は意義があったかなというふうには思っています。などと述べた(乙B1の41,B3の162,B6の73)。
P2は,平成25年4月の講話において,単純にそのマハームドラーっていうのは効果があったということで肯定すると,ものすごく大変な問題になるだろうし,ものすごく強い恐怖心をですね,一般社会に振りまいてしまう,それが1995年以来あったということですね。で,そのマハームドラーの考え方を,この現在の社会の中で合理的に活かすことができるか,これは非常に難しい問題だということになります。,神仏が与える我々の修行と考えるということになるんじゃないかなと思うんです。つまり,まあ,全ての人がマハームドラーのグルだと考えるわけです。で,それは当然ですね,その人たちがやっていることが違法行為であったならば,皆さんはそれを甘んじて受けて,マハームドラーのグルとするということは,してはなりません。などと述べた(乙B3の163,B6の74)。P2は,平成25年5月の講話において,オウム自体が,近代日本の中から生まれたもので,オウム的なものが近代日本には,その前にもたくさんあった。だから,オウム真理教の後にもまた,オウム的なものが現れてくる。(中略)オウム的なものっていうのは,昔から繰り返しあって。それを生み出す日本の体質があって,オウム後20年くらい経った今,第2,第3,第4くらいですかね,オウム的なもの,これが現れつつあって。などと述べた(乙B1の37,B6の71,B7の11)。
P2は,平成25年6月の講話において,オウム真理教という,日本が生んだ,その団体が,過去の日本の戦争の性質を含んだ,すなわち,日本社会が生んだものではないかという,日本とオウムのつながり。そして,アラブの自爆テロですね,イスラムの自爆テロが,自決,自爆,特攻隊の文化を持った,日本が感染させたものではないか。そして,日本の隣国の北朝鮮がやっていることが,正に大日本帝国と似ているのではないかという,いろんなものにつながり,これを認める思想,これが輪の思想ないし輪の智慧だと私は思っています。などと述べた(乙B1の38,B6の72)。P2は,平成26年6月の講演において,私たちの考えとしては,現代社会の中において,心の豊かさや幸福・解放,悟りというのは,やはり非常に重要なことではないかと。オウム真理教の間違いというのは,それを求めたことではなく,それを実現させるための手段が間違い,途中から道を外したことではないかと考えておりまして,まあ,ああいった問題の再発の防止のためには,適切な形でオウムが当初求めていた,そのオウム信者が当初求めていた心の豊かさや解放を得る道を作り出すことではないかというような視点から,こういう形になっております。などと述べた(乙B3の154)

第2
1
争点1(原告とAlephの関係等)について
団体規制法4条2項にいう団体の意義
団体規制法にいう団体とは,同法4条2項において特定の共同目的を達成するための多数人の継続的結合体又はその連合体と規定されているところ,同法が観察処分等の対象としているのは,その役職員又は構成員が団体の活動として過去に無差別大量殺人行為を行った団体であり,現在も無差別大量殺人行為の実行に関連する危険な要素を有している団体であること(同法1条,5条1項,4項)も考慮すれば,
特定の共同目的としては,多数人の集団
に,個々の構成員個人の意思とは離れて独自に形成され,又は存在する目的であって,構成員各人が当該集団としての行動をする際の指針となり得ると評価できる程度の特定の共同の目的があれば足りると解される。
また,
結合体としての多数人の集団の結び付きの強さの程度としては,
各構成員がこの共同の目的を達成するためにこれに沿った行動をとり得る関係にあることを要するところ,特定の共同目的が,個々の構成員個人の意思とは離れて独自に形成され,又は存在し,各構成員がこのような共同の目的に沿った行動を行うには,当該集団において,構成単位である個人を離れて組織体としての独自の意思を決定し得ることがその前提となるものであるから,結合体というには,そのような組織体としての独自の意思を決定し得るものであることを要するものと解される。
したがって,
継続的結合体とは,多数人の組織体であって,その構成単
位である個人を離れて,組織体としての独自の意思を決定し得るもので,相当の期間にわたって存続すべきものをいうと解される。
2
本団体がその団体の役職員又は構成員が当該団体の活動として無差別大量殺人行為を行った団体(団体規制法5条1項柱書)に該当するか否かについ

オウム真理教の教義は,衆生救済を最終目的としそれを最速で達成するためには,たとえ自己は悪業を積むことになっても他者に対して善業となるならば,それを最高の実践課題として実践するという点に特色があるタントラ・ヴァジラヤーナ(具体的規範として,悪業を積んでいる魂は早く命を絶つべきであるとか,結果のためには手段を選ばないとする五仏の法則がある。
)を最上位の教えとして位置付け,その実践として,苦しみの限界に自己を置き,そこにおいて一切乱れない心を形成する修行であるマハームドラーの修行を行い,シヴァ神の化身である松本に対する絶対的帰依を培い,松
また,オウム真理教の教義は,両サリン事件の犯行動機が本件政治上の主義を実現することにあると
した者の多くがマハームドラーの修行の一環としてこれらの犯行を実行し
る衆生救済の実現のため,日本・世界をオウム真理教のシャンバラ(理想郷)とする必要があり,そのための具体的かつ世俗的側面を有する手段として,松本を王ないし独裁者とする祭政一致の専制国家体制を構築するという本件政治上の主義と密接不可分に結び付いていたと認められる。
そして,本件政治上の主義を実現するためという両サリン事件の犯行動機やその犯行態様,これらの犯行に至る過程の中で,オウム真理教が拠点拡大や構成員の獲得を進め,武装化を推進し,国家行政組織を模倣した省庁制度
からすれば,オウム真理教は,本件政治上の主義とも密接不可分なオウム真理教の教義を広め,これを実現することを共同の目的としていたということができ,その構成員も,この共同の目的を達成するために,オウム真理教という組織体としての独自の意思決定に従う構成員として,互いに結合していたということができる。
そうすると,団体規制法4条1項にいう無差別大量殺人行為に該当する両サリン事件は,オウム真理教の役職員又は構成員が,オウム真理教の活動として実行したものであり,オウム真理教は,団体規制法5条1項所定のその団体の役職員又は構成員が当該団体の活動として無差別大量殺人行為を行った団体に該当する。本件観察処分を受けた団体
(本団体)麻原彰晃こと松本智津夫を教祖・は,創始者とするオウム真理教の教義を広め,これを実現することを目的とし,同人が主宰し,同人及び同教義に従う者によって構成される団体とされているところ
時において,その団体の役職員又は構成員が当該団体の活動として無差別大量殺人行為を行った団体に該当することも明らかであり,また,Alephが正式に発足された旨公表されたのは,本件観察処分がされた直後であ
よれば,Alephは,その発足当時において,本団体の少なくとも一部であったと認めるのが相当である。
3
本件更新決定時のAleph
次に,本件更新決定時におけるAlephと本団体の同一性についてみると,Alephは,外形上は,①松本については,現実の教団運営を統括する教祖・代表者ではなく,純粋に霊的な意味での瞑想修行等における観想の対象ないし霊的存在と位置付け,②両サリン事件等との関係が指摘されている五仏の法則については,削除して廃棄し,誤解を招く用語等については事件や犯罪の肯定に結び付けられる余地のないように公式解釈書を作成・配布し,事件と無関係な教義・修行法を採用すること等を方針として発表している(認
しかし,本件更新決定時においても,Alephでは,松本の説法を収録し
というのであって,Alephは,本件観察処分後の期間の経過やその名称変更を経ても,オウム真理教の教義を広め,これを実現することを目的とし,松本及びオウム真理教の教義に従う者によって構成される団体であると認めるのが相当である。
したがって,Alephは,本件更新決定時においても,本団体の少なくとも一部を構成するものというべきである。
4
原告について
観察処分を受けた団体が複数の集団に分派又は分裂した場合における団体の同一性の判断基準

証拠(乙F28)及び弁論の全趣旨によれば,無差別大量殺人行為を行う組織が,組織の離合集散を行うことがあることが認められ,無差別大量殺人行為を行い観察処分を受けた団体が,複数の集団に分派又は分裂することも想定される。しかしながら,団体規制法には,観察処分後に対象団体が複数の集団に分派又は分裂し,新たに形成された集団が別の団体を構成した場合に,いずれの団体に対しても期間更新をすることができる旨を明示した規定はなく,団体規制法5条4項にいう第1項の処分を受けた団体と同法5条1項にいう観察処分の対象となった当該団体の同一性の判断基準についても明確な定めはないのであって,このような場合に,双方の集団に対し別個に又は連合体若しくは支部,分会その他の下部組織として当初の観察処分の更新決定を行い得るかは,解釈上の問題である。
もっとも,被告は,原告とAlephが団体規制法4条2項にいう継続的結合体に当たると主張し,原告とAlephが連合体に当たる又は原告がAlephの支部,分会その他の下部組織に当たると主張するものではなく,原告とAlephとが別個の団体に当たるとしてもそれぞれに期間更新をすることができると主張するものでもない。
そこで,以下では,観察処分を受けた団体が後に複数の集団に分派又は分裂した場合において,当該各集団が団体規制法における同一の団体に該当するか否かという観点から原告とAlephの関係を検討する。イ
上記の被告の主張を前提とすると,上記の団体の同一性は,結局のところ,上記1のとおりの団体規制法4条2項の団体の意義に照らして判断するほかなく,同団体は,特定の共同目的を有することが必要であるから,団体の同一性の判断基準としても,まず,各集団において,①構成員個人の意思とは離れて当該団体としての行動をする際の指針となり得る特定の共同の目的に同一性があるかどうかが検討されることになる。次に,人的関係・組織構成については,同項が継続的結合体と規定する以上,観察処分を受けた団体が複数の集団に分派又は分裂した場合についていえば,各集団が,その構成単位である個人を離れて,あるいは,それぞれの集団を離れて,一つの組織体としての独自の意思を決定し得るもので,相当の期間にわたって存続すべきものであることを要し,分派又は分裂した各集団について,②各集団が,それぞれの集団を離れて,一つの組織体としての独自の意思を決定し得るものであり,
各集団の構成員が,
その意思決定に従い共同の目的に沿った行動をする関係があるかどうかが検討される必要がある。


この点について被告は,団体の同一性を判断するに当たっては,構成員個人の意思とは離れて当該団体としての行動をする際の指針となり得る特定の共同目的に同一性があるかどうかという点が最も重要であり,各構成員が当該共同目的を達成するために決定された団体の意思を各構成員が実現する行為を行うなどの共同の目的に沿った行動をするという点において,基本的な結合関係がなお保持されているか否かという点も検討される必要があると主張する。
①特定の共同目的に同一性があるかどうか,②各構成員が当該共同目的を達成するために決定された団体の意思を各構成員が実現する行為を行うなどの共同の目的に沿った行動をするという関係があるかどうかが検討されるべきことは上記イで説示したとおりであるが,構成員が共同の目的に沿った行動をするには,一つの団体としての意思決定がされることが前提となるはずであり,被告の主張も,この点を否定する趣旨であるとは解されない。本件についていえば,オウム真理教の教義を広め,これを実現するという共同の目的が存在しても,これが共同の行動として具現されるには,組織体としての独自の意思決定が必要であるというべきであって,かかる要素を無視することはできない。
なお,無差別大量殺人行為を行う団体が,閉鎖的・密行的な性格を有する場合には,外部からは団体内部の意思決定過程を知ることが困難であるということが考えられるが,これをうかがわせる間接事実から推認することが可能である上,この場合の団体の同一性の判断は,既に観察処分を受けている団体について問題になるものであり,公安調査庁長官は,観察処分により,当該団体の意思決定過程をうかがわせる資料を入手することが可能である。加えて,そもそも,立証の難易により団体の同一性の判断基準が左右されるべきものではない。

そして,無差別大量殺人行為を行った団体の活動状況を明らかにし又は当該行為の再発を防止するために必要な規制を行うという団体規制法の目的に照らして検討すると,観察処分を受けた団体の共同目的が,構成員個人が行う当該団体としての行動を一義的に特定する程度に具体的で明確であり,当該団体が無差別大量殺人行為に及ぶ危険性が高いといい得るような場合には,組織体としての独自の意思を決定し得るかどうかという点においても,当該共同目的の存在を相当程度重視することが相当とも考えられる。他方,観察処分を受けた団体の共同目的が,構成員個人が行う当該団体としての行動の原理や指針として具体性や明確性に乏しいような場合には,構成員個人が行う当該団体としての共同の行動として具現されるには,組織体としての独自の意思を決定し得る仕組みが存在し相応に機能することが前提となるというべきであり,当該共同目的の存否のみを主たる考慮要素として団体の同一性を肯定することはできないというべきである。したがって,団体の同一性を判断するに当たっては,観察処分を受けた団体の共同目的の内容,明確性の程度,構成員への受容のされ方等を勘案して,各集団が,それぞれの集団を離れて,一つの組織体としての独自の意思を決定し得るものであり,各集団の構成員が,その意思決定に従い共同の目的に沿った行動をする関係があるかどうかが検討される必要がある。以下,以上の判断の枠組みに従って,原告とAlephの関係について検討する。
原告の設立経緯

原告の設立に至る経緯は,認定事実
るところ,原告の代表者であるP2は,平成14年から平成15年頃にはAlephの代表者として活動し,外形上,松本の影響力を払拭したかのように装いながら,真実は松本に対する絶対的帰依を維持しつつ,松本の説く教義を広め,松本の意思を実現することを目的とする活動(
麻原隠察処分を免れるためにファウンデーション理論に基づいてAlephとイしかし,原告が設立されるに至った背景には,P12(松本の妻)が平成14年10月に刑務所を出所し,P13(松本の三女)と共にAlephの組織運営に介入するようになり,一方P2が平成15年6月頃からAlephの運営に実質的に関与しなくなって,P2派(M派)と反P2派(A派)が対立するに至る告の設立に際して,原告に参画する者とそれ以外の者との間で,観察処分を免れるためにAlephを意図的に分派又は分裂させることを合意したなどと認めるに足りる証拠はなく,むしろ,当時,Alephの集団指導体制を構成していたP1,P29,P30及びP31は,P2の考えに理解を示したものの,中堅幹部構成員らに反発され,その後,脱会や役員の辞任を余儀なくが説いた,二つのグループが役割分担をし,一つのグループは特定の限られた人たちの信仰のためにあり,もう一つのグループは幅広く救済のためにダイナミックにフォームを変えていくという考えが,Alephに残る者の間で広く共有されていたというわけではない。ウ原告の設立に先立つP2の言動についてみると,P2は,平成17年頃には,Alephとは別の団体を設立する考えを表明し,それが松本の意き合いに出された松本の発言は,松本の逮捕前のものや,破防法に基づく解散指定請求(平成8年7月)に際してのものであり(認定事実2松本がAlephと原告の分派を念頭に置いて発言したものではないことは明らかである。エ以上のとおりであって,原告の設立は,別団体を組織して,別団体との間で役割分担しながら活動することを求めていた松本の意思に従ってされたものであるとまでは認めることはできない。本件更新決定時の原告とAlephの関係ア上記2のとおり,オウム真理教ないし本件観察処分を受けた本団体は,オウム真理教の教義を広め,これを実現することを共同の目的としていたと認められるところ,オウム真理教の教義自体が,団体において無差別大量殺人行為に及ぶ危険性を内包するものとしても,個々の構成員が行う団体としての行動を一義的に特定する程度に具体的で明確であるとは認め難い。むしろ,原告が設立される前のAleph内においても,どのような団体運営が松本に対する真の帰依であるのかについてP2派とA派の対立があったのであり,松本に対する絶対的帰依というオウム真理教の教義の本質的部分さえ,多義的であり,個々の構成員によって異なる解釈が存在するものであるから,これが構成員の団体としての行動として具現されるには,組織体として独自の意思を決定し得ることが前提とならざるを得ない。本件政治上の主義についても,両サリン事件当時には,これがオウム真理教の教義と密接不可分に結び付いていたとしても,松本が死刑確定者として長期にわたり収容されている本件更新決定時において,なおオウム真理教の教義と密接不可分に結び付いているとはいい難いし,仮に同時点において本件政治上の主義が存続しているとしても,松本を王ないし独裁者とする祭政一致の専制国家体制を構築するために構成員がどのような行動をとるのかは不明確といわざるを得ない。そうすると,仮に,原告が,オウム真理教の教義を広め,これを実現する目的を有するものと認められたとしても,そのことから直ちに本件更新決定時における原告とAlephが一つの組織体ないし団体と認められるということはできず,原告とAlephの間において,一つの組織体としての独自の意思を決定し得る仕組みが存在するのかどうか,また,その仕組みが現実に機能しているのかどうかを吟味することを要するというべきである。イ上記のような見地から,原告とAlephの関係について検討すると,原告の設立に当たって制定された「基本理念では,松本に対する絶対的帰依が否定されてお
ヴァ神の化身であるとされたことを踏まえ,シヴァ神を崇拝しないものと
これに対して,Alephは,原告の分派後,むしろ,松本への帰依を
表面的には,原告とAlephの性格は相当に異なるものとなっている。この点について,原告とAlephが相互に連絡をとって役割を分担し合っているというべき事情はないし,原告の設立経緯に加えて,認定事実,Alephからの退会を検討する者の相談を受
けるなどしたり,Alephに関する著作権問題についてオウム真理教犯罪被害者支援機構に協力したりしていることからすると,むしろ,原告とAlephは対立関係にあると評価することができる。
そして,原告の設立が表明された平成19年5月から本件更新決定がされるまでの間に7年以上経過しているところ,その間にAlephから原
間で,幹部構成員の人事交流があったとか,同一の施設を共同利用したことがあるとか,同一の事業や行事を共同開催したことがあるなどということを認める証拠はないし,原告の幹部構成員とAlephの幹部構成員の間で何らかの連絡や指示があったと認めるに足りる証拠もない。
以上によれば,本件更新決定時の原告とAlephにおいて,不定式なものも含めて一つの組織体としての独自の意思を決定し得る仕組みが存在していたとは認められず,原告の設立後,一つの組織体としての独自の意思を決定した事実も認めることもできない。

ところで,松本が,原告とAlephの双方を統括し,原告及びAlephがその意思決定に従う関係にあるとすれば,両者の団体の同一性を肯定する余地がある。しかし,上記3で説示したところによれば,Alephは,本件更新決定時においても,松本の意思を尊重し,松本の意思を慮って団体運営をしているということもできようが,そのことから直ちに,原告及びAlephの双方又は一方の団体としての意思決定を松本がしているとはいえない。
また,松本は,長期にわたり乙
アのとおり,平成8年頃には,接見した弁護士を介して,本団体の構成員に対するメッセージを発するなどしたこともあったが,以来,本件更新決定時に至るまで,同様のメッセージを発したと認めるに足りる証拠はないP13は,平成24年1月23
日から平成26年7月31日までの間に,70回以上,松本との面会を申し込み,二女P39,長男P19及び二男P20も複数回にわたって松本との面会を申し込んだことが認められるが,松本は,平成20年6月10日に二女及び二男と面会したのを最後に,面会をしていない。以上によれば,近年,松本が原告に関する何らかの指示をしたと認めるに足りる証拠はなく,本件更新決定時において,松本が原告の代表者及び主宰者であるとはいえないともいい得るところであって,少なくとも近年,松本が,原告及びAlephの意思決定に関与したとは認められない。そうすると,原告及びAlephが,松本がした意思決定に従うという意味において一つの組織体であるということも困難である。
この点について,被告は,松本が明示的な意思や指示を示さない場合でも,構成員は,過去の松本の説法等や本団体の教義に顕現された松本の意思を推し量って行動していることを指摘するが,このような事情をもって松本が団体としての意思決定をしているということは困難である。また,上記の松本の意思も上記アで検討したオウム真理教の教義と同様,多義的であって解釈の余地があるものであるから,上記イのとおり,原告とAlephが一つの組織体として独自の意思を決定し得る仕組みが存在するとは認められない以上,被告が主張するように評価するためには,原告及びAlephにおいて松本の意思に沿わない意思決定がされた場合には,松本がこれに対して異議を述べたり指示をしたりすることが前提とならざるを得ない。そうでなければ,原告及びAlephとしては,自らした意思決定やそれに基づく行動が松本の意思に沿うものか否かすら確認することができないというべきである。
しかるところ,
上記のとおり,
少なくとも,
近年,松本が乙拘置所外の者と意思疎通を図ったと認めるに足りる証拠がない以上,
原告及びAlephが松本の意思を確認する術はなく,
やはり,
松本が団体としての意思決定をしているということはできない。
原告とAlephが組織体としての独自の意思決定に従い共同の行動をとり得るかどうかについて
の設立経緯や本件更新決定時におけ
る原告とAlephの関係に照らせば,原告とAlephが一つの組織体として意思決定をすることができるというべき事情は見当たらず,原告とAlephが一方の意思決定に他方が従うという関係にあるとも認められない。
が原告及びAlephの団体としての意思決定をしているということはできない。
以上のとおりであって,原告とAlephが一つの組織体としての独自の意思決定に従い共同の行動をとり得る関係にあると認めることはできない。なお,被告は,原告が,オウム真理教の教義を広め,これを実現するために,
麻原隠しの一環として設立され,活動している団体であると主張するが,原告とAlephが一つの団体と認められるかどうかの判断に当たっては,上記で説示した観点から,両者が一つの組織体としての独自の意思を決定し得るものであると評価できるかどうかが考慮されるべきであり,原告の活動内容にオウム真理教のそれと類似する点があったり,構成員が松本に帰依したりしているなどの事情があったとしても,原告とAlephが一つの団体であると評価することはできないというべきである。
第3

結論
上記に説示したとおりであり,本団体は,本件観察処分当時においても本件更新決定時においても団体に該当し,Alephは,本件更新決定時においても,本団体の少なくとも一部を構成するが,原告とAlephが一つの団体であると認めることはできない。
ところで,本件更新決定の決定書においては,被請求団体の表示欄には,対象団体が本団体,
主たる事務所の所在地が①埼玉県越谷市ad丁目e番f号▲▲▲マンションg号室,②東京都世田谷区bh丁目i番j号▲▲ハイムl号室,主幹者がP7,P8及びP2と記載されており(前提事
P2は原告の代表者で
あるから,本件更新決定は,原告も名宛人としていたとみるべきものというのが相当である。したがって,原告の主位的請求は理由がない。
もっとも,上記のとおり,原告とAlephが一つの団体であると認めることができない以上,本件更新決定のうち原告を対象団体とした部分は,違法であるといわざるを得ないから,その余の争点について判断するまでもなく,原告の予備的請求は理由がある。
よって,訴訟費用の負担につき行訴法7条,民訴法64条ただし書を適用して,主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第2部
裁判長裁判官


裁判官


裁判官

俊高浦義嗣橋之心平
別紙2
決定目録
1
被請求団体等の表示
被請求団体
麻原彰晃こと松本智津夫を教祖・創始者とするオウム真理教の教義を広め,これを実現することを目的とし,同人が主宰し,同人及び同教義に従う者によって構成される団体
主たる事務所の所在地

埼玉県越谷市ad丁目e番f号▲▲▲マンションg号室


東京都世田谷区bh丁目i番j号▲▲ハイムl号室
代表者
氏名
麻原彰晃こと松本智津夫
昭和○○年○月○日生(当○○年)

職業
団体主宰者

居所
東京都葛飾区cm丁目n番o号

乙拘置所

主幹者
ア氏


P7
昭和○○年○月○日生(当○○年)

職業
団体役員

住所
大阪市生野区丁p丁目q番r号

イ氏


P8
昭和○○年○月○日生(当○○年)

職業
団体役員

住所
札幌市豊平区戊s条t丁目u番v号

ウ氏


P2
昭和○○年○月○日生(当○○年)
職業
団体役員

住所
東京都世田谷区bh丁目i番j号
▲▲ハイムl号室

2
主文
平成15年1月23日付け,平成18年1月23日付け,平成21年1月23日付け及び平成24年1月23日付けで期間更新決定を受けた,平成12年1月28日付け当委員会決定に係る被請求団体を,3年間,公安調査庁長官の観察に付する処分の期間を更新する。
被請求団体は,団体規制法5条5項において準用する同条3項6号に規定する公安審査委員会が特に必要と認める事項として,次の事項を公安調査庁長官に報告しなければならない。

被請求団体の構成員に関する出家信徒及び在家信徒の別並びに出家信徒の位階


被請求団体作成のインターネット上のホームページに係る接続業者名,契約名義人の氏名及び掲載の管理・運営責任者の氏名


被請求団体(その支部,分会その他の下部組織を含む。以下,この項において同じ。
)の営む収益事業(いかなる名義をもってするかを問わず,実
質的に被請求団体が経営しているものをいう。
)の種類及び概要,
事業所の
名称及びその所在地,当該事業の責任者及び従事する構成員の氏名並びに各事業に関する会計帳簿を備え置いている場所(その会計帳簿が電磁的記録で作成されている場合には,当該電磁的記録の保存媒体の保管場所)以上

別紙3
団体規制法の定め
1
1条(目的)
この法律は,団体の活動として役職員(代表者,主幹者その他いかなる名称であるかを問わず当該団体の事務に従事する者をいう。以下同じ。)又は構成
員が,例えばサリンを使用するなどして,無差別大量殺人行為を行った団体につき,その活動状況を明らかにし又は当該行為の再発を防止するために必要な規制措置を定め,もって国民の生活の平穏を含む公共の安全の確保に寄与することを目的とする。

2
2条(この法律の解釈適用)
この法律は,国民の基本的人権に重大な関係を有するものであるから,公共の安全の確保のために必要な最小限度においてのみ適用すべきであって,いやしくもこれを拡張して解釈するようなことがあってはならない。

3
3条(規制の基準)
1項
この法律による規制及び規制のための調査は,1条に規定する目的を達成するために必要な最小限度においてのみ行うべきであって,いやしくも権限を逸脱して,思想,信教,集会,結社,表現及び学問の自由並びに勤労者の団結し,及び団体行動をする権利その他日本国憲法の保障する国民の自由と権利を,不当に制限するようなことがあってはならない。
2項
この法律による規制及び規制のための調査については,いやしくもこれを濫用し,労働組合その他の団体の正当な活動を制限し,又はこれに介入するようなことがあってはならない。

4
4条(定義)
1項
この法律において無差別大量殺人行為とは,破壊活動防止法(以下破防法という。)4条1項2号ヘに掲げる暴力主義的破壊活動(注・政治上
の主義若しくは施策を推進し,支持し,又はこれに反対する目的をもって,刑法199条(殺人)に規定する行為をすることが,これに当たる。)であ
って,不特定かつ多数の者を殺害し,又はその実行に着手してこれを遂げないもの(この法律の施行の日から起算して10年以前にその行為が終わったものを除く。
)をいう。
2項
この法律において団体とは,特定の共同目的を達成するための多数人の継続的結合体又はその連合体をいう。ただし,ある団体の支部,分会その他の下部組織も,この要件に該当する場合には,これに対して,この法律による規制を行うことができるものとする。
5
5条(観察処分)
1項
公安審査委員会は,その団体の役職員又は構成員が当該団体の活動として無差別大量殺人行為を行った団体が,次の各号の掲げる事項のいずれかに該当し,その活動状況を継続して明らかにする必要があると認められる場合には,当該団体に対し,3年を超えない期間を定めて,公安調査庁長官の観察に付する処分を行うことができる。
1号

当該無差別大量殺人行為の首謀者が当該団体の活動に影響力を有していること。

2号

当該無差別大量殺人行為に関与した者の全部又は一部が当該団体の役職員又は構成員であること。

3号

当該無差別大量殺人行為が行われた時に当該団体の役員(団体の意思決定に関与し得る者であって,当該団体の事務に従事するものをいう。以下同じ。
)であった者の全部又は一部が当該団体の役員であること。
4号

当該団体が殺人を明示的に又は暗示的に勧める綱領を保持していること。

5号

前各号に掲げるもののほか,当該団体に無差別大量殺人行為に及ぶ危険性があると認めるに足りる事実があること。

2項
前項の処分を受けた団体は,政令で定めるところにより,当該処分が効力を生じた日から起算して30日以内に,以下に掲げる各号の事項を公安調査庁長官に報告しなければならない。
1号

当該処分が効力を生じた日における当該団体の役職員の氏名,住所及び役職名並びに構成員の氏名及び住所

2号

当該処分が効力を生じた日における当該団体の活動の用に供されている土地の所在,地積及び用途

3号

当該処分が効力を生じた日における当該団体の活動の用に供されている建物の所在,規模及び用途

4号

当該処分が効力を生じた日における当該団体の資産及び負債のうち政令で定めるもの

5号

その他前項の処分に際し公安審査委員会が特に必要と認める事項

3項
1項の処分を受けた団体は,政令で定めるところにより,当該処分が効力を生じた日からその効力を失う日の前日までの期間を3月ごとに区分した各期間(最後に3月未満の区分した期間が生じた場合には,その期間とする。以下この項において同じ。
)ごとに,当該各期間の経過後15日以内に,次に
掲げる事項を,公安調査庁長官に報告しなければならない。
1号

当該各期間の末日における当該団体の役職員の氏名,住所及び役職名並びに構成員の氏名及び住所

2号

当該各期間の末日における当該団体の活動の用に供されている土地の所在,地積及び用途
3号

当該各期間の末日における当該団体の活動の用に供されている建物の所在,規模及び用途

4号

当該各期間の末日における当該団体の資産及び負債のうち政令で定めるもの

5号

当該各期間中における当該団体の活動に関する事項のうち政令で定めるもの

6号

その他1項の処分に際し公安審査委員会が特に必要と認める事項

4項
公安審査委員会は,1項の処分を受けた団体が同項各号に掲げる事項のいずれかに該当する場合であって,引き続き当該団体の活動状況を継続して明らかにする必要があると認められるときは,その期間を更新することができる。
5項
3項の規定は,
前項の規定により期間が更新された場合について準用する。
この場合において,
3項中
当該処分が効力を生じた日から
とあるのは
期間が更新された日からと読み替えるものとする。
6項
6
〔略〕

7条(観察処分の実施)
1項
公安調査庁長官は,
5条1項又は4項の処分
(以下
観察処分等
という。

を受けている団体の活動状況を明らかにするため,公安調査官に必要な調査をさせることができる。
2項
公安調査庁長官は,観察処分等を受けている団体の活動状況を明らかにするために特に必要があると認められるときは,公安調査官に,観察処分等を受けている団体が所有し又は管理する土地又は建物に立ち入らせ,設備,帳簿書類その他必要な物件を検査させることができる。
3項

〔略〕

4項
2項の規定による立入検査の権限は,犯罪捜査のために認められたものと解釈してはならない。
7
8条(再発防止処分)
1項
公安審査委員会は,その団体の役職員又は構成員が当該団体の活動として無差別大量殺人行為を行った団体が,5条1項各号のいずれかに該当する場合であって,次の各号のいずれかに該当するときは,当該団体に対し,6月を超えない期間を定めて,次項各号に掲げる処分の全部又は一部(以下再発防止処分という。)を行うことができる。観察処分等を受けている団体に
ついて,同条2項若しくは3項の規定による報告がされず,若しくは虚偽の報告がされた場合,
又は前条2項の規定による立入検査が拒まれ,
妨げられ,
若しくは忌避された場合であって,当該団体の無差別大量殺人行為に及ぶ危険性の程度を把握することが困難であると認められるときも,同様とする。1号

当該団体の役職員又は構成員が,団体の活動として,人を殺害し若しくは殺害しようとしているとき,人の身体を傷害し若しくは傷害しようとしているとき又は人に暴行を加え若しくは加えようとしているとき。
2号

当該団体の役職員又は構成員が,団体の活動として,人を略取し若しくは略取しようとしているとき又は人を誘拐し若しくは誘拐しようとしているとき。

3号

当該団体の役職員又は構成員が,団体の活動として,人を監禁し又は監禁しようとしているとき。

4号

当該団体の役職員又は構成員が,団体の活動として,爆発物,毒性物質若しくはこれらの原材料若しくは銃砲若しくはその部品を保有し若しくは保有しようとしているとき又はこれらの製造に用いられる設備を保有し若しくは保有しようとしているとき。
5号

当該団体の役職員又は構成員が,団体の活動として,当該団体に加入することを強要し若しくは強要しようとしているとき又は当該団体からの脱退を妨害し若しくは妨害しようとしているとき。

6号

当該団体の役職員又は構成員が,団体の活動として,殺人を明示的に又は暗示的に勧める綱領に従って役職員又は構成員に対する指導を行い又は行おうとしているとき。

7号

当該団体の役職員又は構成員が,団体の活動として,構成員の総数又は土地,建物,設備その他資産を急激に増加させ又は増加させようとしているとき。

8号

前各号に掲げるもののほか,当該団体の無差別大量殺人行為に及ぶ危険性の増大を防止する必要があるとき。

2項
前項の規定により行うことができる処分は,次に掲げるものとする。1号

いかなる名義をもってするかを問わず,土地又は建物を新たに取得し
又は借り受けることを,
地域を特定して,
又は特定しないで禁止すること。
2号

当該団体が所有し又は管理する特定の土地又は建物(専ら居住の用に
供しているものを除く。
)の全部又は一部の使用を禁止すること。
3号

当該無差別大量殺人行為に関与した者又は当該無差別大量殺人行為が
行われた時に当該団体の役員であった者(
〔括弧内略〕
)に,当該団体の活
動の用に供されている土地又は建物において,当該団体の活動の全部又は一部に参加させ又は従事させることを禁止すること。
4号

当該団体に加入することを強要し,若しくは勧誘し,又は当該団体か
らの脱退を妨害することを禁止すること。
5号

金品その他の財産上の利益の贈与を受けることを禁止し,又は制限す
ること。
以上

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