判例検索β > 平成29年(わ)第136号
事件番号平成29(わ)136
裁判年月日平成30年3月26日
法廷名佐賀地方裁判所
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平成30年3月26日宣告
平成29

136号関税法違反(変更後の訴因・関税法違反,消費税法違反,
地方税法違反)被告事件
主文
被告人を懲役2年6月及び罰金150万円に処する
未決勾留日数中220日を上記懲役刑に算入する。
上記罰金を完納することができないときは,
金5000円を1日に換算した
期間被告人を労役場に留置する。
この裁判が確定した日から5年間上記懲役刑の執行を猶予する。
佐賀地方検察庁で保管中の金地金206塊(平成29年佐賀地領第383号の1の1ないし20,5の1ないし20,9の1ないし20,13の1ないし20,17の1ないし20,21の1ないし20,25の1ないし20,29の1ないし20,32の1ないし26及び36の1ないし20)を没収する。
被告人に対し,仮に上記罰金に相当する金額を納付すべきことを命ずる。理由
(犯罪事実)
被告人は,J,G,H,B,I,E,F,A,C及び氏名不詳者と共謀の上,不正に金地金を日本国内に輸入し,これに対する消費税や地方消費税を免れようと企て,平成29年5月30日午後4時42分頃,東シナ海公海上において,国籍不明の船舶から日本国外で積載された金地金206塊(重量合計205.50765㎏〔平成29年佐賀地領第383号の1の1ないし20,5の1ないし20,9の1ないし20,13の1ないし20,17の1ないし20,21の1ないし20,25の1ないし20,
29の1ないし20,
32の1ないし26及び36の1ない
し20〕)をE他4名が乗船する汽船Dに積み替え,同月31日午後3時頃,同船を佐賀県唐津市a町b番地c所在のL協同組合a町統括支所地先岸壁に接岸させ
て上記金地金を陸揚げし,もって,税関長の許可を受けないで,貨物を輸入すると共に,
上記不正の行為により上記金地金(課税価格9億3016万8727円相当)に対する消費税5860万0500円及び地方消費税1581万2800円を免れたものである。
(適条)
1罰


判示行為のうち,
関税法違反の点
刑法60条,関税法111条1項1号,67条
消費税法違反の点
刑法60条,消費税法64条1項1号
地方税法違反の点
刑法60条,地方税法72条の109第1項
2科刑上一罪(観念的競合)の処理
刑法54条1項前段,10条(刑及び犯情の最も重い消費税法違反の罪の刑で処断)
3刑種の選択
所定刑中懲役刑及び罰金刑を併科
4宣告刑の決定
懲役2年6月及び罰金150万円
5未決勾留日数の算入
同法21条(未決勾留日数中220日を上記懲役刑に算入)
6労役場留置
同法18条(上記罰金を完納することができないときは,金5000円を1日に換算した期間被告人を労役場に留置)
7刑の執行猶予

同法25条1項(この裁判が確定した日から5年間上記懲役刑の執行を猶予)8没


同法19条1項1号,2項本文(佐賀地方検察庁で保管中の判示関税法違反の犯罪行為を組成した物で犯人以外の者に属しない金地金206塊
〔平成29年佐
賀地領第383号の1の1ないし20,5の1ないし20,9の1ないし20,13の1ないし20,17の1ないし20,21の1ないし20,25の1ないし20,29の1ないし20,32の1ないし26及び36の1ないし20〕につき)
9仮納付
刑訴法348条1項
訴訟費用の不負担
刑訴法181条1項ただし書
(没収に対する判断)
1参加人代理人は,
本件金塊の所有権は参加人にあることは明らかであり,
これを
没収することは許されない旨主張するので,当裁判所が本件金塊を没収した理由について説明する。
2まず,本件金塊が刑法19条1項1号所定の「犯罪組成物件」に該当することや被告人が本件金塊の所有者ではないことは明らかである。
そこで,
本件金塊が同条
2項本文所定の「犯人以外の者に属しない物」であるか否かについて検討する。関係各証拠によれば,
本件金塊は国籍不明の船に積載されて海上輸送され,
平成
29年5月30日に東シナ海公海上までこれを受け取りに来た汽船Dに積み替えられ,
同月31日に佐賀県唐津市に陸揚げされたことが認められるところ,被告人
の供述によれば,
本件金塊が中国から国外に持ち出されるまでの経緯について次の
事実が認められる。すなわち,被告人は,本件金塊の国外持ち出しに関与するなどしたものであるが,
平成29年5月20日前後頃,中国人共犯者Jの指示を受けて
中華人民共和国深圳にあるP会社まで赴き,本件金塊が206塊あることを確認
した後,これを袋に入れて深圳の空港まで搬送し,運搬会社に委託して本件金塊を南通まで輸送させ,同月26日頃,南通まで移動して同所に届けられた本件金塊をホテルまで運び,
翌日,
Jの指示に従って指定された海辺まで本件金塊を搬送
し,
本件金塊を受け取りに来たJが手配した氏名不詳者にこれを引き渡したことなどが認められる。このような事実経過によれば,本件金塊は,何らかの理由によって正常な取引過程から逸脱して本邦に密輸されたものではなく,
当初から本邦に密
輸するために中国から運び出されたものであることは明らかである。そして,
本件密輸は,
Jが被告人やG,
Hを配下の者として指揮命令すると共に,
本邦内に在住している知人を介して日本人共犯者の主犯格であるIに本件密輸に協力するよう要請し,これを了承したIや同人が手配するなどした他の日本人共犯者らとが意思を相通じて実行されたものである。その中で,Jは,Iとの間で本件密輸に関する利益分配方法等について紛議が生じ,Iが犯行関与に難色を示した際には,J自らが本邦に入国し,共犯者Bを通訳としてIと直接交渉し,相当額の報酬額を提示するなどしてIを納得させ,
その協力を維持させたばかりか,
本件
密輸の実行に先立って長崎県壱岐に赴き,共犯者Fらに本件密輸に用いるDが金塊を陸揚げするために接岸する場所を探すように指示したり,その場所を下見をするなど,
本件密輸の中核的ないし重要部分に積極的に関与している。
このような
事実関係に照らせば,Jが本件密輸の首謀者の1人であることは明らかである。参加人は,
本件金塊は参加人が所有するものであり,
これをJの経営する会社に
貸し出したものであるなどとして
「黄金出借合同」と題する書面(参第4号証)を提
出している。しかしながら,参加人の営業実態,Jの経営するという会社の内実は判然とせず,
参加人がいかなる経緯・理由で数量膨大な本件金塊を貸し出したのかも不明である上,
上記参第4号証が仮に真正なものであるとした場合,
これに付随
する各種文書,すなわち,連帯責任保証人,動産抵当,質抵当及び不動産抵当に関する契約書(同号証第三条4.1ないし4.4),確認書(同号証第6条6.1)等が作成されていると考えられるにもかかわらず,
これらの書面が一切提出されていな

いことなどを考慮すると,
上記参第4号証が正規ないし正当な契約書であるとは認
め難く,
他に参加人が本件金塊の所有者であることを認めるに足りる証拠は存しない。
以上のとおり,本件金塊は当初から本邦に密輸するために中国から運び出されたものである上,
Jは本件密輸の首謀者の1人であり,
本件密輸に係る利益の分配
方法等について,
日本人側共犯者の主犯格であるIと直接交渉し,
分配する金額の
提示を行うなど,
重要な財産処分的な言動をしていることに加え,
参加人は本件金
塊の所有者と認められず,他に本件に関わっていない本件金塊の所有者がいる様子も窺われないことに徴すると,Jあるいはその背後にいると考えられる氏名不詳の共犯者らが本件金塊を所有していると認めるのが相当である。以上の検討結果によれば,
本件金塊は刑法19条2項本文所定の
「犯人以外の者
に属しない物」であると認められ,本件密輸の悪質性等に鑑みると,本件金塊はこれを全て没収するのが相当である。
(量刑の理由)
被告人は共犯者らと共謀し,
重量合計205㎏余りの金塊206塊を本邦に密輸
すると共に,
これに対する消費税5860万0500円及び地方消費税1581万2800円,合計7441万3300円を免れたものである。
本件は被告人を含む日本人と中国人が緊密に連絡を取り合い,
周到な準備や役割
分担をするなどして実行された高度の組織性・計画性を有する犯行である上,密輸
に係る金塊の価格は9億3000万円余りであり,
逋脱税額も多額に上っている上,
被告人は,
本件金塊を中国から国外に持ち出すための搬送行為を行い,
本件金塊の
本邦内への陸揚げ時にも付近で待機していた上,
本件を遂行するに当たっても各種
連絡調整事務を担当するなど,本件の重要部分に関与したものである。本件の犯情は芳しくないが,
被告人は本件の首謀者ではなく上位者にいわば手足
として利用されたという面がある上,本邦内での前科・前歴を有しておらず,被告
人なりに一応反省の態度を示していることなどを考慮し,
主文掲記の刑を定めた上
で,懲役刑についてはその執行を猶予するのが相当と判断した。
(求刑・懲役2年6月及び罰金150万円,金地金の没収)
平成30年3月26日
佐賀地方裁判所刑事部

裁判官


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