判例検索β > 平成29年(わ)第2063号
嘱託殺人
事件番号平成29(わ)2063
事件名嘱託殺人
裁判年月日平成30年3月23日
法廷名名古屋地方裁判所
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平成29年(わ)第2063号

嘱託殺人被告事件

判決主文
被告人を懲役2年6月に処する
未決勾留日数中90日をその刑に算入する。
この裁判が確定した日から4年間その刑の執行を猶予する。
理由
(犯行に至る経緯)
被告人の妻であるA(以下「被害者」という。)は,長年にわたり関節リウマチ及び腎不全に罹患していたところ,平成25年頃から右肘に埋め込んでいた人工関節の細菌感染による強い痛みに苦しむようになった。被告人は,自身も要支援認定を受けていた中で,家事全般を行うほか,被害者の入浴や痛みの緩和等につき,昼夜を問わない介護を献身的に続けていた。
そのような中,被害者は,平成29年10月11日頃から,左肘にも強い痛みを訴えてそれまでにないような苦しみ方をするようになった上,医師から治療が困難である旨告げられて,かなり気落ちした様子をみせるようになった。被告人は,負担を増した介護に疲弊の度合いを強めていた中で,同月24日夜になり,被害者から殺害してくれるよう繰り返し求められたため,当初はこれを拒絶していたものの,被害者を楽にさせようとの思いから,被害者の殺害を決意した。(罪となるべき事実)
被告人は,被害者(当時79歳)から嘱託を受けて同人の殺害を決意し,平成29年10月24日午後11時頃から同日午後11時20分頃までの間,名古屋市b区c町d丁目e番地のf被告人方において,殺意をもって,被害者の頸部にタオル地のひもを巻いて締め付け,よって,その頃,同所において,同人を頸部圧迫による窒息により死亡させ,もって嘱託を受けて人を殺害した。(法令の適用)
被告人の判示所為は刑法202条後段に該当するところ,所定刑中懲役刑を選択し,その所定刑期の範囲内で被告人を懲役2年6月に処し,同法21条を適用して未決勾留日数中90日をその刑に算入し,情状により同法25条1項を適用してこの裁判が確定した日から4年間その刑の執行を猶予し,訴訟費用は刑訴法181条ただし書を適用して被告人に負担させないこととする。
(量刑の理由)
犯行に至る経緯は前記のとおりであり,被告人は,周囲が感銘を受けるほどの献身的な介護を長期間にわたり続けた末,被害者が苦しみの度合いを増すのを目の当たりにし,自身も疲弊する中で,被害者から強く求められて本件に及んだもので,同情の余地は大きく,非難の程度は限定的である。
犯行の態様は,被害者の首を紐で長時間絞めるという,強固な殺意を示すものであるが,犯行を決意した経緯が上記のようなものであり,被害者からも,しっかり絞めるよう求められていたことを考慮すると,かかる態様による殺害に及んだことについても強く非難することはできない。
以上によれば,被告人の行為に対する責任は,同種事案の中でも軽い方に位置づけられるというべきである。
加えて,被告人が本件犯行後自首をし,その後も事実を素直に認める態度を示していること,被告人と交流のあった近隣住民や,被告人及び被害者を担当していたケアマネージャーが出廷して,今後の被告人の支援を約束しており,同ケアマネージャーらの尽力によって今後の居住先も確保されていること等の事情も併せ考慮して,主文の刑を量定した。
(求刑

懲役2年6月)
平成30年3月23日
名古屋地方裁判所刑事第1部

裁判長裁判官

山田耕司
裁判官

諸徳寺

聡子
裁判官

荻原惇
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