判例検索β > 平成29年(行ケ)第10081号
審決取消請求事件 特許権 行政訴訟
事件番号平成29(行ケ)10081
事件名審決取消請求事件
裁判年月日平成30年5月24日
法廷名知的財産高等裁判所
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平成30年5月24日判決言渡
平成29年(行ケ)第10081号
口頭弁論終結の日

審決取消請求事件

平成30年2月8日

当事者の表示


別紙当事者目録記載のとおり
主文1
原告の請求を棄却する。

2
訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由

第1

請求
特許庁が無効2016-800061号事件について平成29年3月16日にした審決を取り消す。

第2
1
前提事実(いずれも当事者間に争いがない。)
特許庁における手続の経緯等
被告らは,発明の名称を「引戸装置の改修方法及び改修引戸装置」とする発明に係る特許の特許権者である(特許第4839108号。請求項の数6。以下「本件特許」という。)。その出願から設定登録に至る手続の経緯は,以下のとおりである。
平成14年3月8日

優先基礎出願(特願2002-64460号)

平成15年3月7日

原出願(特願2003-62183号)

平成18年3月17日

本件特許出願(特願2006-74123号)

平成23年10月7日

設定登録

原告は,平成28年5月27日,特許庁に対し,本件特許につき特許無効審判を請求した。特許庁は,当該請求を無効2016-800061号事件として審理した上,平成29年3月16日,「本件審判の請求は,成り立たない。」との審決をした(以下「本件審決」という。)。その謄本は,同月24日,原
告に送達された。
原告は,同年4月21日,本件訴えを提起した。
2
本件発明
本件特許に係る発明は,以下のとおりである(以下,本件特許の特許請求の範囲請求項1~6に係る発明を,請求項の番号順に「本件発明1」などといい,本件発明1~6を併せて「本件発明」という。また,本件特許に係る明細書及び図面を「本件明細書」という。)。
【請求項1】
建物の開口部に取付けてあるアルミニウム合金の押出し形材から成る既設上枠,アルミニウム合金の押出し形材から成り室内側案内レールと室外側案内レールを備えた既設下枠,アルミニウム合金の押出し形材から成る既設竪枠を有する既設引戸枠を残存し,
前記既設下枠の室外側案内レールを付け根付近から切断して撤去し,前記既設下枠の室内寄りに取付け補助部材を設け,この取付け補助部材を既設下枠の底壁の最も室内側の端部に連なる背後壁の立面にビスで固着して取付け,この後に,アルミニウム合金の押出し形材から成る改修用上枠,アルミニウム合金の押出し形材から成る改修用竪枠,アルミニウム合金の押出し形材から成り室外から室内に向かって上方へ段差を成して傾斜し,室外寄りが低く,室内寄りが室外寄りよりも高い底壁を備えた改修用下枠を有する改修用引戸枠を,前記既設引戸枠内に室外側から挿入し,その改修用下枠の室外寄りを,スペーサを介して既設下枠の室外寄りに接して支持すると共に,前記改修用下枠の室内寄りを前記取付け補助部材で支持し,前記背後壁の上端と改修用下枠の上端がほぼ同じ高さであり,
前記改修用下枠の前壁を,ビスによって既設下枠の前壁に固定することで,改修用引戸枠を取付け補助部材を基準として取付けることを特徴とする引戸装置の改修方法。

【請求項2】
建物の開口部に取付けてあるアルミニウム合金の押出し形材から成る既設上枠,アルミニウム合金の押出し形材から成り室内側案内レールと室外側案内レールを備えた既設下枠,アルミニウム合金の押出し形材から成る既設竪枠を有する既設引戸枠を残存し,
前記既設下枠の室外側案内レールを付け根付近から切断して撤去し,前記既設下枠の室内寄りに取付け補助部材を設け,この取付け補助部材を既設下枠の底壁の最も室内側の端部に連なる背後壁の立面にビスで固着して取付け,この後に,アルミニウム合金の押出し形材から成る改修用上枠,アルミニウム合金の押出し形材から成る改修用竪枠,アルミニウム合金の押出し形材から成り室外から室内に向かって上方へ段差を成して傾斜し,室外寄りが低く,室内寄りが室外寄りよりも高い底壁を備えた改修用下枠を有し,前記改修用上枠の室外側部に室外側上枠シール材を装着すると共に,前記改修用引戸枠の改修用竪枠の室外側部に室外側竪枠シール材を装着した改修用引戸枠を,前記既設引戸枠内に室外側から挿入し,その室外側上枠シール材を建物の開口部の上縁部に接すると共に,前記室外側竪枠シール材を建物の開口部の縦縁部に接し,前記改修用下枠の室外寄りを,スペーサを介して既設下枠の室外寄りに接して支持すると共に,前記改修用下枠の室内寄りを前記取付け補助部材で支持し,前記背後壁の上端と改修用下枠の上端がほぼ同じ高さであり,
前記改修用下枠の前壁を,ビスによって既設下枠の前壁に固定することで,改修用引戸枠を取付け補助部材を基準として取付けることを特徴とする引戸装置の改修方法。
【請求項3】
建物の開口部に取付けてあるアルミニウム合金の押出し形材から成る既設上枠,アルミニウム合金の押出し形材から成り室内側案内レールと室外側案内レールを備えた既設下枠,アルミニウム合金の押出し形材から成る既設竪枠を有
する既設引戸枠を残存し,
前記既設下枠の室外側案内レールを付け根付近から切断して撤去すると共に,室内側案内レールを切断して撤去し,前記既設下枠の室内寄りに取付け補助部材を設け,この取付け補助部材を既設下枠の底壁の最も室内側の端部に連なる背後壁の立面にビスで固着して取付け,
この後に,アルミニウム合金の押出し形材から成る改修用上枠,アルミニウム合金の押出し形材から成る改修用竪枠,アルミニウム合金の押出し形材から成り室外から室内に向かって上方へ段差を成して傾斜し,室外寄りが低く,室内寄りが室外寄りよりも高い底壁を備えた改修用下枠を有する改修用引戸枠を,前記既設引戸枠内に室外側から挿入し,その改修用下枠の室外寄りを,スペーサを介して既設下枠の室外寄りに接して支持すると共に,前記改修用下枠の室内寄りを前記取付け補助部材で支持し,前記背後壁の上端と改修用下枠の上端がほぼ同じ高さであり,
前記改修用下枠の前壁を,ビスによって既設下枠の前壁に固定することで,改修用引戸枠を取付け補助部材を基準として取付けることを特徴とする引戸装置の改修方法。
【請求項4】
建物の開口部に残存した既設引戸枠は,アルミニウム合金の押出し形材から成る既設上枠,アルミニウム合金の押出し形材から成り室内側案内レールと室外側案内レールを備えた既設下枠,アルミニウム合金の押出し形材から成る既設竪枠を有し,前記既設下枠の室外側案内レールは付け根付近から切断して撤去され,その既設下枠の室内寄りに取付け補助部材を設け,その取付け補助部材が既設下枠の底壁の最も室内側の端部に連なる背後壁の立面にビスで固着して取付けてあり,
この既設引戸枠内に,アルミニウム合金の押出し形材から成る改修用上枠,アルミニウム合金の押出し形材から成り室外から室内に向かって上方へ段差を
成して傾斜し,室外寄りが低く,室内寄りが室外寄りよりも高い底壁を備えた改修用下枠,アルミニウム合金の押出し形材から成る改修用竪枠を有する改修用引戸枠が挿入され,
この改修用引戸枠の改修用下枠の室外寄りが,スペーサを介して既設下枠の室外寄りに接して支持されると共に,前記改修用下枠の室内寄りが,前記取付け補助部材で支持され,前記背後壁の上端と改修用下枠の上端がほぼ同じ高さであり,
前記改修用下枠の前壁が,ビスによって既設下枠の前壁に固定されていることを特徴とする改修引戸装置。
【請求項5】
建物の開口部に残存した既設引戸枠は,アルミニウム合金の押出し形材から成る既設上枠,アルミニウム合金の押出し形材から成り室内側案内レールと室外側案内レールを備えた既設下枠,アルミニウム合金の押出し形材から成る既設竪枠を有し,前記既設下枠の室外側案内レールは付け根付近から切断して撤去され,その既設下枠の室内寄りに取付け補助部材を設け,その取付け補助部材が既設下枠の底壁の最も室内側の端部に連なる背後壁の立面にビスで固着して取付けてあり,
この既設引戸枠内に,アルミニウム合金の押出し形材から成る改修用上枠,アルミニウム合金の押出し形材から成り室外から室内に向かって上方へ段差を成して傾斜し,室外寄りが低く,室内寄りが室外寄りよりも高い底壁を備えた改修用下枠,アルミニウム合金の押出し形材から成る改修用竪枠を有する改修用引戸枠が挿入され,
この改修用引戸枠の改修用下枠の室外寄りが,スペーサを介して既設下枠の室外寄りに接して支持されると共に,前記改修用下枠の室内寄りが,前記取付け補助部材で支持され,前記背後壁の上端と改修用下枠の上端がほぼ同じ高さであり,

前記改修用上枠の室外側部に室外側上枠シール材が装着され,この室外側上枠シール材は建物の開口部の上縁部に接し,
前記改修用竪枠の室外側部に室外側竪枠シール材が装着され,この室外側竪枠シール材は建物の開口部の縦縁部に接し,
前記改修用下枠の前壁が,ビスによって既設下枠の前壁に固定されていることを特徴とする改修引戸装置。
【請求項6】
建物の開口部に残存した既設引戸枠は,アルミニウム合金の押出し形材から成る既設上枠,アルミニウム合金の押出し形材から成り室内側案内レールと室外側案内レールを備えた既設下枠,アルミニウム合金の押出し形材から成る既設竪枠を有し,前記既設下枠の室外側案内レールは付け根付近から切断して撤去されていると共に,室内側案内レールは切断して撤去され,その既設下枠の室内寄りに取付け補助部材を設け,その取付け補助部材が既設下枠の底壁の最も室内側の端部に連なる背後壁の立面にビスで固着して取付けてあり,この既設引戸枠内に,アルミニウム合金の押出し形材から成る改修用上枠,アルミニウム合金の押出し形材から成り室外から室内に向かって上方へ段差を成して傾斜し,室外寄りが低く,室内寄りが室外寄りよりも高い底壁を備えた改修用下枠,アルミニウム合金の押出し形材から成る改修用竪枠を有する改修用引戸枠が挿入され,
この改修用引戸枠の改修用下枠の室外寄りが,スペーサを介して既設下枠の室外寄りに接して支持されると共に,前記改修用下枠の室内寄りが,前記取付け補助部材で支持され,前記背後壁の上端と改修用下枠の上端がほぼ同じ高さであり,
前記改修用下枠の前壁が,ビスによって既設下枠の前壁に固定されていることを特徴とする改修引戸装置。
3
本件審決の理由の要旨

本件審決の理由は,別紙審決書(写し)記載のとおりであるが,要するに,本件特許出願は,本件発明についての特許法(以下「法」という。)29条2項の適用に当たっては優先基礎出願の時にされたものとみなすことはできず,原出願の出願の時にされたものと見なされるとした上で,以下のとおり,本件特許は,①法36条6項2号に違反してされたものではなく,②同項1号に違反してされたものではなく,③同条4項1号に違反してされたものではないから,法123条1項4号に該当せず,また,④工事名「広電己斐寮浴室改修工事」の設計図面等(甲5の1~5。以下「甲5図面等」という。)記載の発明に,実公昭58-45431号公報(以下「甲6文献」という。)記載の発明及び周知技術等に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものではく,さらに,⑤甲6文献記載の発明,特開2001-227244号公報(甲23。以下「甲23文献」という。)に記載された発明及び周知技術等に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものではないから,法29条2項に違反してされたものではなく,法123条1項2号に該当せず,本件発明を無効とすることはできない,とした。
(1)

無効理由1(明確性要件違反)について
原告は,本件発明はそれぞれ「背後壁の上端と改修用下枠の上端がほぼ同じ高さであ」ることを要件とするが,背後壁の上端と改修用下枠の上端の高さの差が具体的にどの程度の範囲内に含まれるものであれば「ほぼ同じ高さ」に該当するかが明確ではなく,その点について技術常識も存在しない旨主張する。


本件発明において,「背後壁の上端と改修用下枠の上端がほぼ同じ高さであ」るとは,既設下枠の背後壁の上端と改修用下枠の上端がおおかた同じ高さである,すなわち完全に同じであることは要しない程度に高さが同じであるといった意味と捉えられるから,当該事項によって本件発明が直ちに不明確であるとはいえない。

一方,本件明細書の記載(【0010】~【0012】,【0018】,【0092】,図10)に照らせば,本件発明において,「背後壁の上端と改修用下枠の上端がほぼ同じ高さであ」るとは,既設下枠の形状,寸法等に起因する,既設下枠の背後壁の上端と改修用下枠の上端の高さのわずかな違いは許容するが,積極的に背後壁の上端と改修用下枠の上端の高さを変えることを意図するものではなく,実質的に有効開口面積が減少するものではないということを意味すると解される。そうすると,本件発明の「背後壁の上端と改修用下枠の上端がほぼ同じ高さであ」るとの特定事項について,当業者は実質的に有効開口面積が減少しないよう,できるだけ既設下枠の背後壁の上端と改修用下枠の上端が同じ高さとなるようにすればよいと理解するものであり,既設下枠の背後壁の上端と改修用下枠の上端の高さの差の許容範囲を認識する必要はない。すなわち,背後壁の上端と改修用下枠の上端の高さの差の許容範囲が示されていなければ,本件発明の要旨が認定できないわけではない。

したがって,本件発明に係る特許は,法36条6項2号に違反してされたものではないから,無効理由1により無効にすることはできない。
(2)

無効理由2(サポート要件違反)について
原告は,本件明細書の発明の詳細な説明には,本件発明の構成の全てを備える実施形態の記載はされておらず,本件発明における各構成の関連性についても記載されていないから,本件発明は発明の詳細な説明に開示されたものではない旨主張する。


本件発明1及び4について
(ア)

本件明細書【0019】~【0060】には,図1~4記載の発明
の実施の形態(以下「実施形態1」という。)について記載されている。

(イ)

本件明細書【0067】~【0100】には,図6及び7記載の発
明の実施の形態(以下「実施形態2」という。)並びに図14記載の実施形態2の変形例(以下「実施形態3」という。)について記載されている。
(ウ)

本件明細書の発明の詳細な説明の記載によれば,本件発明は,従来
技術において,(a)改修用下枠が既設下枠に載置された状態で既設下枠に固定されるので,改修用下枠と改修用上枠との間の空間の高さ方向の幅が小さくなり,有効開口面積が減少してしまうという問題(以下「課題a」という。)と,(b)改修用下枠の下枠下地材は既設下枠の案内レール上に直接乗載され,その案内レールを基準として固定されているから改修用下枠と改修用上枠との間の空間の高さ方向の幅がより小さくなり,有効開口面積が減少してしまうという問題(以下「課題b」という。)があったため,これらを,(1)既設下枠の室外側案内レールを切断して撤去する(以下「構成1」という。),(2)既設下枠の室内寄りに取付け補助部材を設けるとともに,この取付け補助部材を既設下枠の底壁の最も室内側の端部に連なる背後壁の立面にビスで固着して取り付け,改修用下枠の室内寄りを取付け補助部材で支持し,取付け補助部材を基準として改修用引戸枠を既設引戸枠に取り付ける(以下「構成2」という。)ことにより解決したものであり,構成1及び2を採ることにより,改修用下枠と改修用上枠との間の空間の高さ方向の幅が大きく,広い開口面積を確保でき,構成2を採ることにより,既設引戸枠の形状,寸法に応じた形状,寸法の取付け補助部材を用いることで,形状,寸法が異なる既設引戸枠に同一の改修用引戸枠を取付けできるという効果(本件効果)を奏するものであると認められる。
そして,本件発明1~3の「改修用下枠の室内寄りを取付け補助部材
で支持」する,又は本件発明4~6の「改修用下枠の室内寄りが,取付け補助部材で支持され」る具体的な構成として,取付け補助部材106の上壁部109において改修用下枠69の室内側脚部分91及び支持壁89とを支持する場合における構成1及び2の具体的な構成(実施形態)が,本件明細書【0070】(ただし,構成2のうち,取付け補助部材を既設下枠の室内側端部に連なる背後壁の立面にビスで固着する構成部分については,【0100】)に記載されている。
以上によれば,本件明細書の発明の詳細な説明には,当業者において,本件発明の課題とその解決手段その他当業者が本件発明を理解するために必要な技術的事項が記載されているものといえる。
(エ)

実施形態1と本件発明1及び4とを対比すると,本件発明1及び4
では,改修用下枠の室外寄りをスペーサを介して既設下枠の室外寄りに接して支持するのに対し,実施形態1では,そのような構成を有していない点,及び,本件発明1及び4では,取付け補助部材を既設下枠の底壁の最も室内側の端部に連なる背後壁の立面にビスで固着して取り付けるのに対し,実施形態1では,取付け補助部材106は,既設下枠56の室内側案内レール115に室外73側から室外側壁部107を当接させ,当該室外側壁部107を室内側案内レール115にビス110によって固定する点で,それぞれ相違するが,改修用下枠の前壁をビスによって既設下枠の前壁に固定することを含め,その余の構成は一致している。
一方,実施形態3は,本件発明1及び4と対比すると,本件発明1及び4では,改修用下枠の前壁を,ビスによって既設下枠の前壁に固定するのに対し,実施形態3では,改修用下枠69の室外73側部分に乾式の室外側下枠シール材300が室内68側に向けて装着され,この室外側下枠シール材300が既設下枠56の前壁102に圧接している点で
相違するが,取付け補助部材を既設下枠の底壁の最も室内側の端部に連なる背後壁の立面にビスで固着して取り付けること,及び,改修用下枠の室外寄りをスペーサを介して既設下枠の室外寄りに接して支持することを含め,その余の構成は一致している。
そして,本件明細書の記載並びに図1及び14に照らせば,実施形態1と実施形態3とは,改修下枠,取付け補助部材及び既設下枠の基本的な構造が共通し,改修用下枠と改修用上枠との間の空間の高さ方向の幅が大きく,広い開口面積を確保でき,既設引戸枠の形状,寸法に応じた形状,寸法の取付け補助部材を用いることで,形状,寸法が異なる既設引戸枠に同一の改修用引戸枠を取付けできるという作用効果を奏する点でも共通しているから,実施形態1において,実施形態3のごとく,取付け補助部材106を既設下枠56の背後壁104にビス110で固着してもよいこと,及び,改修用下枠の室外寄りをスペーサを介して既設下枠の室外寄りに接して支持してもよいことは,当業者にとって自明の事項である。また,逆に,実施形態3において,実施形態1のごとく,改修用下枠の前壁をビスによって既設下枠の前壁に固定してもよいことも,同様に当業者にとって自明の事項である。
さらに,上記のごとく実施形態1に実施形態3の構成を適用した場合や実施形態3に実施形態1の構成を適用した場合における改修用下枠,取付け補助部材,スペーサ及び既設下枠等の各構成部材の位置関係や取付け態様も本件明細書の記載に照らし明らかである。
(オ)

よって,本件明細書の発明の詳細な説明には,当業者において,本
件発明1及び4の課題とその解決手段その他当業者が本件発明1及び4を理解するために必要な技術的事項が記載されているものといえるから,原告の主張は採用できない。

本件発明2,3,5及び6について

実施形態3は,本件発明2,3,5及び6と対比すると,本件発明2及び5では,改修用下枠の前壁を,ビスによって既設下枠の前壁に固定するのに対し,実施形態3では,改修用下枠69の室外73側部分に乾式の室外側下枠シール材300が室内68側に向けて装着され,この室外側下枠シール材300が既設下枠56の前壁102に圧接している点で相違するが,その余の構成は一致している。
そして,実施形態3において,実施形態1のごとく改修用下枠の前壁をビスによって既設下枠の前壁に固定してもよいことは,上記のとおり,当業者にとって自明の事項である。
また,上記のごとく実施形態3に実施形態1の構成を適用した場合における改修用下枠,取付け補助部材,スペーサ及び既設下枠等の各構成部材の位置関係や取付態様も本件明細書の記載に照らし明らかである。よって,本件明細書の発明の詳細な説明には,当業者において,本件発明2,3,5及び6の課題とその解決手段その他当業者が本件発明2,3,5及び6を理解するために必要な技術的事項が記載されているものといえるから,原告の主張は採用できない。
(3)

無効理由3(実施可能要件違反)について
原告は,本件発明は本件明細書の記載から発明を明確に把握することが
できないのであるから,当業者が本件発明を実施しようとしても,その発明をどのように実施するのかを理解することができない旨主張する。しかし,前記のとおり,本件発明は明確であるから,原告の主張は採用できない。
そして,本件明細書の発明の詳細な説明及び図面は,当業者が本件発明の実施ができる程度に明確かつ十分に記載されている。
よって,本件発明に係る特許は,法36条4項1号に違反してされたものではないから,無効理由3により,無効にすることはできない。
(4)

無効理由4(進歩性欠如)について
本件発明の進歩性判断の基準日
本件発明の「取付け補助部材が既設下枠の底壁の最も室内側の端部に連なる背後壁の立面にビスで固着して取付け」ること(本件発明1~3)ないし取り付けてあること(本件発明4~6)は,優先基礎出願の出願当初の明細書には記載されていない。
したがって,本件特許出願は,本件発明についての法29条2項の適用に当たっては,優先基礎出願の時にされたものとみなすことはできず,原出願の出願の時にされたものとみなされる。


甲5図面等記載の発明(以下,引戸装置の改修方法の発明を「甲5発明1」と,改修引戸装置の発明を「甲5発明2」という。また,これらを併せて「甲5発明」という。)
(ア)

甲5発明1
建物内の浴室と脱衣室との間の開口部に残存したアルミニウム合金か
ら成る既設上枠,アルミニウム合金から成り脱衣側レールm2と浴室側レールm3を備えた既設下枠,アルミニウム合金から成る既設竪枠を有する既設引戸枠を残存し,
既設下枠の底壁部分m1の最も脱衣側の端部には,立ち上がって浴室側面となる壁部m5が形成され,壁部m5の上端には脱衣側に屈曲して横向片の部分m6が形成されるとともに,横向片の部分m6の浴室側には浴室側に延びる延設部分m7が形成され,
上壁s1を浴室側に延ばした逆L字状の部材sを,上壁s1を延設部分m7の下面に当接させるとともに,その縦壁s2を壁部m5の浴室側面にビスで固定し,
既設下枠の浴室側の壁部m4には,逆L字状の部材tをビスで固定し,この後に,アルミニウム合金から成る改修用上枠,アルミニウム合金
から成る改修用竪枠,アルミニウム合金から成り,平坦で,浴室側と脱衣側の高さが同一である底壁を備えた改修用下枠を有する改修用引戸枠を,既設引戸枠内に浴室側から挿入し,
改修用下枠の浴室寄りを,逆L字状の部材tの上部にビスで固定し,改修用下枠の脱衣寄りを,既設下枠の横向片の部分m6の上面に当接するとともに,逆L字状の部材sの上壁s1に対してビスで固定し,既設下枠の壁部m5の上端と改修用下枠の上端の高さの差が3mmである引戸装置の改修方法。
(イ)

甲5発明2
建物内の浴室と脱衣室との間の開口部に残存した既設引戸枠は,アル
ミニウム合金から成る既設上枠,脱衣側レールm2と浴室側レールm3を備えたアルミニウム合金から成る既設下枠,アルミニウム合金から成る既設竪枠を有し,
既設下枠の底壁部分m1の最も脱衣側の端部には,立ち上がって浴室側面となる壁部m5が形成され,壁部m5の上端には脱衣側に屈曲して横向片の部分m6が形成されるとともに,横向片の部分m6の浴室側には浴室側に延びる延設部分m7が形成され,
上壁s1を浴室側に延ばした逆L字状の部材sを,上壁s1を延設部分m7の下面に当接させるとともに,その縦壁s2を壁部m5の浴室側面にビスで固定してあり,
既設下枠の浴室側の壁部m4には,逆L字状の部材tをビスで固定してあり,
既設引戸枠内に,アルミニウム合金から成る改修用上枠,アルミニウム合金から成り,平坦で,浴室側と脱衣側の高さが同一である底壁を備えた改修用下枠,アルミニウム合金から成る改修用竪枠を有する改修用引戸枠を挿入し,

改修用引戸枠の改修用下枠の浴室寄りを,断面逆L字状の部材tの上部にビスで固定し,改修用下枠の脱衣寄りを,既設下枠の横向片の部分m6の上面に当接するとともに,逆L字状の部材sの上壁s1に対してビスで固定してあり,
既設下枠の壁部m5の上端と改修用下枠の上端の高さの差が3mmである改修引戸装置。

甲6文献記載の発明(以下,改装方法の発明を「甲6発明1」と,改装サツシの発明を「甲6発明2」という。また,これらを併せて「甲6発明」という。)
(ア)

甲6発明1
旧窓枠1にアルミニウム型材からなる新窓枠5を取り付けるサツシの
改装方法において,
新窓枠5の下枠は,その側面形状が階段状を呈して室外に向って下り勾配を形成し,その側端に近接した位置より垂下したる外側フランジ5aを形成し,又内側面には縦長のC形溝5bを長手方向に形成しその上端より室内側へ水平フランジ5cを形成し,
アンカー6がC形溝5b内に挿入されて方形に組立てられた新窓枠5を旧窓枠1に室外側から挿入し,
新窓枠5の下枠の外側フランジ5aを既存のスチール製下枠の垂下フランジ1bにビス止めし,アンカー6のフランジ6bを既存のスチール製下枠にビス止めするサツシの改装方法。
(イ)

甲6発明2
旧窓枠1にアルミニウム型材からなる新窓枠5を取り付ける改装サツ
シにおいて,
新窓枠5の下枠は,その側面形状が階段状を呈して室外に向って下り勾配を形成し,その側端に近接した位置より垂下したる外側フランジ5
aを形成し,又内側面には縦長のC形溝5bを長手方向に形成しその上端より室内側へ水平フランジ5cを形成し,
方形に組立てられた新窓枠5を旧窓枠1に室外側から挿入し,新窓枠5の下枠の外側フランジ5aを既存のスチール製下枠の垂下フランジ1bにビス止めし,C形溝5bに係止されたアンカー6のフランジ6bを既存のスチール製下枠にビス止めした改装サツシ。

本件発明1について
(ア)

本件発明1と甲5発明1との対比

[一致点]
建物の開口部に取り付けてあるアルミニウム合金から成る既設上枠,アルミニウム合金から成り一方側案内レールと他方側案内レールを備えた既設下枠,アルミニウム合金から成る既設竪枠を有する既設引戸枠を残存し,
前記既設下枠の一方寄りに取付け補助部材を設け,この取付け補助部材を既設下枠の底壁の最も一方側の端部に連なる背後壁の立面にビスで固着して取り付け,
この後に,アルミニウム合金から成る改修用上枠,アルミニウム合金から成る改修用竪枠,アルミニウム合金から成る改修用下枠を有する改修用引戸枠を,前記既設引戸枠内に他方側から挿入し,前記改修用下枠の一方寄りを前記取付け補助部材で支持し,前記背後壁の上端と改修用下枠の上端がほぼ同じ高さであり,
前記改修用下枠をビスによって既設下枠に固定することで,改修用引戸枠を取り付ける引戸装置の改修方法。
[相違点1-1]
引戸装置が設けられる建物の開口部に関し,本件発明1は,室外と室内の間の開口部であるのに対し,甲5発明1は,浴室と脱衣室との間の
開口部である点。
[相違点1-2]
既設引戸枠及び改修用引戸枠の材料に関し,本件発明1は,既設上枠,既設下枠,既設竪枠,改修用上枠,改修用竪枠及び改修用下枠がアルミニウム合金の押出し形材から成るのに対し,甲5発明1は,アルミニウム合金から成るが押出し形材であるかは不明である点。
[相違点1-3]
既設下枠の案内レールに関し,本件発明1では,既設下枠の室外側案内レールを付け根付近から切断して撤去するのに対し,甲5発明1では,既設下枠の浴室側レールm3を撤去しない点。
[相違点1-4]
改修用下枠の構成に関し,本件発明1では,改修用下枠は室外から室内に向かって上方へ段差を成して傾斜し,室外寄りが低く,室内寄りが室外寄りよりも高い底壁を備えるのに対し,甲5発明1では,改修用下枠は平坦で,浴室側と脱衣側の高さが同一である底壁を備える点。[相違点1-5]
改修用引戸枠の取付け構造に関し,本件発明1では,改修用下枠の室外寄りを,スペーサを介して既設下枠の室外寄りに接して支持し,改修用下枠の前壁を,ビスによって既設下枠の前壁に固定することで,改修用引戸枠を取付け補助部材を基準として取り付けるのに対し,甲5発明1では,そのような構成を有していない点。
(イ)
a
相違点についての判断
相違点1-3~1-5について
(a)

甲6発明1の「旧窓枠1」と本件発明1の「既設引戸枠」とは,

「既設枠」である点で共通する。また,甲6発明1の「新窓枠5」は,本件発明1の「改修用引戸枠」に相当し,以下同様に,「そ

の側面形状が階段状を呈して室外に向って下り勾配を形成し」た
「下枠」は,「室外から室内に向かって上方へ段差を成して傾斜
し,室外寄りが低く,室内寄りが室外寄りよりも高い底壁を備え
た」「改修用下枠」に,「新窓枠5の下枠の外側フランジ5aを」既存の「下枠の垂下フランジ1bにビス止め」することは,「改
修用下枠の前壁を,ビスによって既設下枠の前壁に固定する」こ
とにそれぞれ相当する。
(b)

室外から室内に向かって上方へ段差を成して傾斜し,室外寄り

が低く,室内寄りが室外寄りよりも高い底壁を備えた改修用下枠
は,周知である。
(c)

特許第3223993号公報(甲9。以下「甲9文献」とい

う。)には,旧窓枠1の下枠5と取付け補助枠59との間に複数
枚の下枠用スペーサ13を差し込むことが記載されており,「下
枠5」及び「下枠用スペーサ13」は,本件発明1の「既設下枠」及び「スペーサ」にそれぞれ相当する。
特開昭61-229086号公報(甲10。以下「甲10文献」
という。)には,古い窓枠2の下枠2bに下枠用取付金物4bを
固着して,該下枠用取付金物4bの取付基準片部6,7にライナ
ーなどの調整具8を介して当てつけることによって,新しい窓枠
3の下枠3bを下枠用取付金物4bに固着することが記載されて
おり,「下枠2b」,「調整具8」及び「下枠3b」は,本件発
明1の「既設下枠」,「スペーサ」及び「改修用下枠」にそれぞ
れ相当する。
特開平7-286439号公報(甲11。以下「甲11文献」
という。)には,下部捨て枠3bの上面にスペーサ5及び固定金
具20を介して下枠4b及び下部補助部材6bが取り付けられる

ことが記載されており,「スペーサ5」は,本件発明1の「スペ
ーサ」に相当する。
「かぶせ工法による建具取替え工事

標準仕様と施工指針(20

02)」(建築改装協会,平成14年。甲27。以下「甲27文
献」という。)には,既存の下枠に取付用補助材(スペーサー)
を固定することが記載されている。
特開昭50-47434号公報(甲32。以下「甲32文献」
という。)には,下枠2の下部に固定されたアンカー3の支持脚
21が既設鋼製下枠6の低部33と高低調節座金22を介して接
することが記載されており,「下枠2」,「既設鋼製下枠6」及
び「高低調節座金22」は,本件発明1の「改修用下枠」,「既
設下枠」及び「スペーサ」にそれぞれ相当する。
(d)

改修用下枠を取り付けるにあたり,邪魔になる既設下枠の案内

レールを切断して撤去することは,周知である。
(e)

改修用下枠を取り付けるにあたり,既設下枠の2本のレールの

うち室外側のレールを切断して撤去すること,改修用下枠を逆L
字状の部材を介して既設下枠の室内側にねじで固着することは,
周知である。
(f)

しかし,改修用下枠の室外寄りをスペーサを介して既設下枠の
室外寄りに接して支持すること,及び,改修用引戸枠を取付け補
助部材を基準として取り付けることは,上記いずれの証拠にも記
載されておらず,周知技術であるとも認められない。また,甲5
発明1の「逆L字状の部材s」は「上壁s1を延設部分m7の下
面に当接」させるものであるから,「改修用引戸枠」を「既設引
戸枠」に取り付ける際に「基準」とはなり得ない。
また,甲6発明1は,旧窓枠に新窓枠を取り付けるとき,新窓

枠の見込み寸法が旧窓枠のそれより小なる場合の取付け構造に関
するものであるところ,甲5発明1は,改修用引戸枠の見込み寸
法は既設引戸枠の見込み寸法より小さくはなく,甲5発明1と甲
6発明1とは,改修用下枠の脱衣側(室内側)の支持構造も全く
異なるものであるから,甲6発明1の「側面形状が階段状を呈し
て室外に向って下り勾配を形成」した「新窓枠の下枠5」の形状,及び,「下枠5の外側フランジ5aを」既存の「下枠1の垂下フ
ランジ1bにビス止め」する構成のみを取り出し,甲5発明1に
適用する動機付けはない。
そうすると,上記周知技術に照らし,仮に甲5発明1において,
改修用下枠として,浴室側から脱衣側に向かって上方へ段差を成
して傾斜し,浴室寄りが低く,脱衣寄りが浴室寄りよりも高い底
壁を備えたものを採用し,改修用下枠の取付けにあたり邪魔とな
る既設下枠の浴室側レールm3を付け根付近から切断して撤去す
ることが当業者にとって容易になし得ることであったとしても,
その際に更に,改修用下枠の浴室寄りをスペーサを介して既設下
枠の浴室寄りに接して支持することや,改修用下枠の前壁をビス
によって既設下枠の前壁に固定することで,改修用引戸枠を逆L
字状の部材sを基準として取り付けるようにすることまでもが当
業者にとって容易であるとすることはできない。
(g)

よって,甲5発明1において,上記相違点1-3~相違点1-

5に係る本件発明1の構成とすることは,当業者が容易になし得
たとすることはできない。
b
原告の主張について
原告は,「改修用引戸枠を取付け補助部材を基準として取付ける」との構成において,「基準」との特定に特別な意味はなく,単に,改
修用引戸枠が取付け補助部材によって固定されることで動かなくなる(位置が決まる)程度のことを意味するにすぎない旨主張する。
しかし,「基準」の語義及び本件明細書(【0018】)の記載
に照らせば,「改修用引戸枠を取付け補助部材を基準として取付ける」とは,取付け補助部材を既設引戸枠に対する改修用引戸枠の位置を決めるよりどころとして,改修用引戸枠を取り付けることを意味するものと認められる。したがって,原告の主張は採用できない。
(ウ)

小括
以上より,相違点1-1及び1-2について検討するまでもなく,本
件発明1は,甲5発明1,甲6発明1及び周知技術等に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。

本件発明2について
(ア)

本件発明2と甲5発明1との対比
本件発明2と甲5発明1とは,相違点1-1~1-5に加え,以下の
点で相違する。
[相違点1-6]
本件発明2では,改修用上枠の室外側部に室外側上枠シール材を装着すると共に,前記改修用引戸枠の改修用竪枠の室外側部に室外側竪枠シール材を装着し,室外側上枠シール材を建物の開口部の上縁部に接すると共に,室外側竪枠シール材を建物の開口部の縦縁部に接するのに対し,甲5発明1では,そのような構成を有していない点。
(イ)

判断
甲5発明1において,相違点1-3~1-5に係る本件発明2の構成
とすることが当業者にとって容易であるといえないことは,本件発明1と同様である。
よって,相違点1-1,1-2及び1-6について検討するまでもな
く,本件発明2は,甲5発明1,甲6発明1及び周知技術等に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。カ
本件発明3について
(ア)

本件発明3と甲5発明1との対比
本件発明3と甲5発明1とは,相違点1-1~1-5に加え,以下の
点で相違する。
[相違点1-7]
既設下枠の案内レールに関し,本件発明3では,既設下枠の室内側案内レールを切断して撤去するのに対し,甲5発明1では,既設下枠の脱衣側レールm3を撤去しない点。
(イ)

判断
甲5発明1において,相違点1-3~1-5に係る本件発明3の構成
とすることが当業者にとって容易であるといえないことは,本件発明1と同様である。
よって,相違点1-1,1-2及び1-7について検討するまでもなく,本件発明3は,甲5発明1,甲6発明1及び周知技術等に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。キ
本件発明4について
(ア)

本件発明4と甲5発明2との対比

[一致点]
建物の開口部に残存した既設引戸枠は,アルミニウム合金から成る既設上枠,アルミニウム合金から成り一方側案内レールと他方側案内レールを備えた既設下枠,アルミニウム合金から成る既設竪枠を有し,その既設下枠の一方寄りに取付け補助部材を設け,その取付け補助部材が既設下枠の底壁の最も一方側の端部に連なる背後壁の立面にビスで固着して取り付けてあり,

この既設引戸枠内に,アルミニウム合金から成る改修用上枠,アルミニウム合金から成る改修用下枠,アルミニウム合金から成る改修用竪枠を有する改修用引戸枠が挿入され,
この改修用引戸枠の改修用下枠の一方寄りが,前記取付け補助部材で支持され,前記背後壁の上端と改修用下枠の上端がほぼ同じ高さであり,前記改修用下枠が,ビスによって既設下枠に固定されている改修引戸装置。
[相違点1-A]
引戸装置が設けられる建物の開口部に関し,本件発明4は,室外と室内の間の開口部であるのに対し,甲5発明2は,浴室と脱衣室との間の開口部である点。
[相違点1-B]
既設引戸枠及び改修用引戸枠の材料に関し,本件発明4は,既設上枠,既設下枠,既設竪枠,改修用上枠,改修用竪枠及び改修用下枠がアルミニウム合金の押出し形材から成るのに対し,甲5発明2は,アルミニウム合金から成るが押出し形材であるかは不明である点。
[相違点1-C]
既設下枠の案内レールに関し,本件発明4では,既設下枠の室外側案内レールは付け根付近から切断して撤去されるのに対し,甲5発明2では,既設下枠の浴室側レールm3を撤去しない点。
[相違点1-D]
改修用下枠の構成に関し,本件発明4では,改修用下枠は室外から室内に向かって上方へ段差を成して傾斜し,室外寄りが低く,室内寄りが室外寄りよりも高い底壁を備えるのに対し,甲5発明2では,改修用下枠は平坦で,浴室側と脱衣側の高さが同一である底壁を備える点。[相違点1-E]

改修用引戸枠の取付け構造に関し,本件発明4では,改修用下枠の室外寄りが,スペーサを介して既設下枠の室外寄りに接して支持されると共に,前記改修用下枠の前壁が,ビスによって既設下枠の前壁に固定されているのに対し,甲5発明2では,そのような構成を有していない点。(イ)

判断
前記エ(イ)と同様の理由により,甲5発明2において,相違点1-C
~1-Eに係る本件発明4の構成とすることは,当業者が容易になし得たとすることはできない。
(ウ)

小括
以上より,相違点1-A及び1-Bについて検討するまでもなく,本
件発明4は,甲5発明2,甲6発明2及び周知技術等に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。

本件発明5について
(ア)

本件発明5と甲5発明2との対比
本件発明5と甲5発明2とは,相違点1-A~1-Eに加え,以下の
点で相違する。
[相違点1-F]
本件発明5では,改修用上枠の室外側部に室外側上枠シール材が装着され,この室外側上枠シール材は建物の開口部の上縁部に接し,改修用竪枠の室外側部に室外側竪枠シール材が装着され,この室外側竪枠シール材は建物の開口部の縦縁部に接するのに対し,甲5発明2では,そのような構成を有していない点。
(イ)

判断
甲5発明2において,相違点1-C~1-Eに係る本件発明5の構成
とすることが当業者にとって容易であるといえないことは,本件発明4と同様である。

よって,相違点1-A,1-B及び1-Fについて検討するまでもなく,本件発明5は,甲5発明2,甲6発明2及び周知技術等に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。ケ
本件発明6について
(ア)

本件発明6と甲5発明2との対比
本件発明6と甲5発明2とは,相違点1-A~1-Eに加え,以下の
点で相違する。
[相違点1-G]
既設下枠の案内レールに関し,本件発明6では,室内側案内レールは切断して撤去されるのに対し,甲5発明2では,既設下枠の脱衣側レールm3を撤去しない点。
(イ)

判断
甲5発明2において,相違点1-C~1-Eに係る本件発明6の構成
とすることが当業者にとって容易であるとすることができないことは,本件発明4と同様である。
よって,相違点1-A,1-B及び1-Gについて検討するまでもなく,本件発明6は,甲5発明2,甲6発明2及び周知技術等に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。コ
まとめ
以上のとおり,甲5発明1及び2が本件特許の原出願日前に公然知られた発明又は公然実施された発明であるか否かにかかわらず,本件発明に係る特許は,法29条2項に違反してされたものではない。

(5)

無効理由5(進歩性欠如)について


甲6発明は,前記(4)ウのとおりである。


甲23文献記載の技術(以下「甲23技術」という。)
室の内外を仕切る躯体の出入口に介在する障子の戸車を受けるレール
が,室内の床面又は該床面よりも一段高い位置にある膳板の上面よりも低い位置にある既設サッシ下枠の上に重ねて取り付ける改装サッシ下枠において,
改装サッシ下枠は,障子の戸車を受けるレールを含む突設要素の上端が所定の略同じ高さで形成してある上板部と,この上板部から下方に伸長して前記既設サッシ下枠に固定される固定脚部と,を備え,固定脚部の高さ方向に沿う長さが,固定脚部を前記既設サッシ下枠に固定させた状態で,前記突設要素の上端に室内の床面又は膳板の上面と略同じ高さ位置を与える長さとして形成されており,
改装サッシ下枠の上板部の室内側端部の裏面には逆L字状の支持部材を備えており,その横板部は上板部に対してネジ固定され,改装サッシ下枠の上板部の室内側端部及び逆L字状の支持部材の縦板部が既設サッシ下枠の上板部の最も室内側の端部に連なる縁壁に当接した状態で,逆L字状の支持部材の縦板部が該縁壁にネジ固定されること。

本件発明1について
(ア)

本件発明1と甲6発明1との対比

[一致点]
建物の開口部に取付けてある既設上枠,既設下枠,既設竪枠を有する既設枠を残存し,
この後に,アルミニウム合金の押出し形材から成る改修用上枠,アルミニウム合金の押出し形材から成る改修用竪枠,アルミニウム合金の押出し形材から成り室外から室内に向かって上方へ段差を成して傾斜し,室外寄りが低く,室内寄りが室外寄りよりも高い底壁を備えた改修用下枠を有する改修用引戸枠を,前記既設枠内に室外側から挿入し,
前記改修用下枠の室内寄りを取付け補助部材で支持し,前記改修用下枠の前壁をビスによって既設下枠の前壁に固定し,改修用引戸枠を取り
付ける引戸装置の改修方法。
[相違点2-1]
既設枠の材料に関し,本件発明1では,既設引戸枠はアルミニウム合金の押出し形材から成るのに対し,甲6発明1では,旧窓枠1はスチール製である点。
[相違点2-2]
既設下枠に関し,本件発明1の既設下枠は,引戸枠の下枠であって,室内側案内レールと室外側案内レールを備えており,室外側案内レールを付け根付近から切断して撤去するのに対し,甲6発明1の既存のスチール製下枠は,引戸枠の下枠であるか否か不明であって,室内側案内レールと室外側案内レールを備えているか否か,室外側案内レールを付け根付近から切断して撤去するか否かも不明である点。
[相違点2-3]
改修用引戸枠の取付け手順に関し,本件発明1では,取付け補助部材を既設下枠の底壁の最も室内側の端部に連なる背後壁の立面にビスで固着して取り付け,この後に,改修用引戸枠を既設引戸枠内に室外側から挿入し,改修用下枠の室内寄りを取付け補助部材で支持するのに対し,甲6発明1では,アンカー6がC形溝5b内に挿入されて方形に組み立てられた新窓枠5を旧窓枠1に室外側から挿入し,アンカー6のフランジ6bを既存の下枠にビス止めする点。
[相違点2-4]
改修用引戸枠の取付け構造に関し,本件発明1では,改修用下枠の室外寄りをスペーサを介して既設下枠の室外寄りに接して支持し,改修用引戸枠を取付け補助部材を基準として取り付けるのに対し,甲6発明1では,そのような構成を有しない点。
[相違点2-5]

既設下枠の背後壁の上端と改修用下枠の上端の高さに関し,本件発明1では,背後壁の上端と改修用下枠の上端がほぼ同じ高さであるのに対し,甲6発明1では,ほぼ同じ高さであるか否か不明である点。
(イ)
a
判断
相違点2-3及び2-4について
(a)

甲23技術の「既設サッシ下枠」及び「改装サッシ下枠」は,

本件発明1の「既設下枠」及び「改修用下枠」に相当し,甲23
技術の「改装サッシ下枠の上板部の室内側端部の裏面には逆L字
状の支持部材を備えており,その横板部は上板部に対してネジ固
定され,改装サッシ下枠の上板部の室内側端部及び逆L字状の支
持部材の縦板部が既設サッシ下枠の上板部の最も室内側の端部に
連なる縁壁に当接した状態で,逆L字状の支持部材の縦板部が該
縁壁にネジ固定される」ことは,本件発明1の「取付け補助部材
を既設下枠の底壁の最も室内側の端部に連なる背後壁の立面にビ
スで固着して取付け」ること,及び「前記改修用下枠の室内寄り
を前記取付け補助部材で支持」することに相当する。
(b)

前記(4)エ(イ)a(c)のとおり,甲9文献の「下枠5」及び「下枠用
スペーサ13」は,本件発明1の「既設下枠」及び「スペーサ」
にそれぞれ相当し,甲10文献の「下枠2b」,「調整具8」及
び「下枠3b」は,本件発明1の「既設下枠」,「スペーサ」及
び「改修用下枠」にそれぞれ相当し,甲11文献の「スペーサ5」は,本件発明1の「スペーサ」に相当し,甲27文献には,既存
の下枠に取付用補助材(スペーサー)を固定することが記載され
ており,甲32文献の「下枠2」,「既設鋼製下枠6」及び「高
低調節座金22」は,本件発明1の「改修用下枠」,「既設下枠」及び「スペーサ」にそれぞれ相当する。

(c)

改修用下枠を取り付けるにあたり,邪魔になる既設下枠の案内

レールを切断して撤去すること,引戸枠にアルミニウム合金の押
出し形材を用いること,既設引戸枠の下枠に改修用下枠を取付け
るにあたり,既設下枠の2本のレールのうち室外側のレールを切
断して撤去すること,改修用下枠を逆L字状の部材を介して既設
下枠の室内側にねじで固着することは,いずれも周知である。
(d)

しかし,甲6発明1は,旧窓枠に対して見込み寸法の小なる新

窓枠を簡単に取付け可能となる新窓枠の取付け構造を提供するこ
とを課題とするものであって,当該課題を解決する手段として,
下枠の内側面に形成したC形溝5b内にアンカー6を挿入し,ア
ンカー6のフランジ6bを既存のスチール製下枠にビス止めする
よう構成したものであるのに対し,甲23技術は,改装サッシ下
枠の上板部の室内側端部が既設サッシ下枠の上板部の最も室内側
の端部に連なる縁壁に当接した状態で,改装サッシ下枠の裏面に
固定された逆L字状の支持部材が該縁壁にネジ固定されるもので
あって,既設サッシ下枠に対して見込み寸法の小なる改装サッシ
下枠の取付け構造に係るものではないから,甲23技術に係る逆
L字状の支持部材による改装サッシ下枠の支持構造は,甲6発明
1のアンカー6による取付け構造に代えて直ちに適用できるもの
ではない。
よって,甲6発明1においてアンカー6による取付け構造に代
えて,甲23技術の逆L字状の支持部材による改装サッシ下枠の
支持構造を適用する動機付けはない。他の証拠(甲33の1,3
4~36,39)に開示された周知技術の逆L字状の部材につい
ても同様である。
また,改修用下枠の室外寄りをスペーサを介して既設下枠の室

外寄りに接して支持すること,及び,改修用引戸枠を取付け補助
部材を基準として取り付けることは,いずれの証拠にも記載され
ておらず,周知技術であるとも認められない。
そうすると,証拠及び周知技術に照らしても,甲6発明1にお
いて,取付け補助部材を既存のスチール製下枠の底壁の最も室内
側の端部に連なる背後壁の立面にビスで固着して取り付け,新窓
枠5の下枠の室外寄りをスペーサを介して既存のスチール製下枠
の室外寄りに接して支持すると共に,新窓枠5の下枠の室内寄り
を取付け補助部材で支持し,新窓枠5の下枠を取付け補助部材を
基準として取り付けることが当業者にとって容易であるとするこ
とはできない。
(e)

よって,甲6発明1において,上記相違点2-3及び2-4に

係る本件発明1の構成とすることは,当業者が容易になし得たと
することはできない。
b
原告の主張について
原告は,甲6発明1も甲23技術も,ともに改装サッシに関する
技術であって非常に狭い同一の技術分野に属するものであることから,甲6発明1に甲23技術の逆L字状の支持部材を,それによる作用効果(小型化等)を求めて適用することは当業者であれば当然行うことであり,十分な動機付けがある旨主張するが,上記のとおり,甲6発明1に甲23技術を適用する動機付けはないから,原告の主張は採用できない。

(ウ)

小括
以上より,相違点2-1,2-2及び2-5について検討するまでも
なく,本件発明1は,甲6発明1,甲23技術及び周知技術等に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。

本件発明2について
(ア)

本件発明2と甲6発明1との対比
本件発明2と甲6発明1とは,相違点2-1~2-5に加え,以下の
点で相違する。
[相違点2-6]
本件発明2では,改修用上枠の室外側部に室外側上枠シール材を装着すると共に,前記改修用引戸枠の改修用竪枠の室外側部に室外側竪枠シール材を装着し,室外側上枠シール材を建物の開口部の上縁部に接すると共に,室外側竪枠シール材を建物の開口部の縦縁部に接するのに対し,甲6発明1では,そのような構成を有していない点。
(イ)

判断
甲6発明1において,相違点2-3及び2-4に係る本件発明2の構
成とすることが当業者にとって容易であるといえないことは,本件発明1と同様である。
よって,相違点2-1,2-2,2-5及び2-6について検討するまでもなく,本件発明2は,甲6発明1,甲23技術及び周知技術等に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。

本件発明3について
(ア)

本件発明3と甲6発明1との対比
本件発明3と甲6発明1とは,相違点2-1~2-5に加え,以下の
点で相違する。
[相違点2-7]
既設下枠に関し,本件発明3の既設下枠は,引戸枠の下枠であって,室内側案内レールと室外側案内レールを備えており,既設下枠の室内側案内レールを切断して撤去するのに対し,甲6発明1の既存のスチール
製下枠は,引戸枠の下枠であるか否か不明であって,室内側案内レールと室外側案内レールを備えているか否か,室内側案内レールを切断して撤去するか否かも不明である点。
(イ)

判断
甲6発明1において,相違点2-3及び2-4に係る本件発明3の構
成とすることが当業者にとって容易であるといえないことは,本件発明1と同様である。
よって,相違点2-1,2-2,2-5及び2-7について検討するまでもなく,本件発明3は,甲6発明1,甲23技術及び周知技術等に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。

本件発明4について
(ア)

本件発明4と甲6発明2との対比

[一致点]
建物の開口部に残存した既設枠は,既設上枠,既設下枠,既設竪枠を有し,その既設下枠の室内寄りに取付け補助部材を設け,
この既設枠内に,アルミニウム合金の押出し形材から成る改修用上枠,アルミニウム合金の押出し形材から成り室外から室内に向かって上方へ段差を成して傾斜し,室外寄りが低く,室内寄りが室外寄りよりも高い底壁を備えた改修用下枠,アルミニウム合金の押出し形材から成る改修用竪枠を有する改修用引戸枠が挿入され,
前記改修用下枠の室内寄りが,前記取付け補助部材で支持され,前記改修用下枠の前壁がビスによって既設下枠の前壁に固定されている改修引戸装置。
[相違点2-A]
既設枠の材料に関し,本件発明4では,既設引戸枠はアルミニウム合
金の押出し形材から成るのに対し,甲6発明2では,旧窓枠1はスチール製である点。
[相違点2-B]
既設下枠に関し,本件発明4の既設下枠は,引戸枠の下枠であって,室内側案内レールと室外側案内レールを備えており,室外側案内レールは付け根付近から切断して撤去されるのに対し,甲6発明2の既存のスチール製下枠は,引戸枠の下枠であるか否か不明であって,室内側案内レールと室外側案内レールを備えているか否か,室外側案内レールは付け根付近から切断して撤去されるか否かも不明である点。
[相違点2-C]
改修用引戸枠の取付け構造に関し,本件発明4では,取付け補助部材が既設下枠の底壁の最も室内側の端部に連なる背後壁の立面にビスで固着して取付けてあり,改修用下枠の室外寄りがスペーサを介して既設下枠の室外寄りに接して支持されるのに対し,甲6発明2は,そのような構成を有しない点。
[相違点2-D]
既設下枠の背後壁の上端と改修用下枠の上端の高さに関し,本件発明4では,背後壁の上端と改修用下枠の上端がほぼ同じ高さであるのに対し,甲6発明2では,ほぼ同じ高さであるか否か不明である点。
(イ)

判断
前記ウ(イ)と同様の理由により,甲6発明2において,相違点2-C
に係る本件発明4の構成とすることは,当業者が容易になし得たとすることはできない。
(ウ)

小括
以上より,相違点2-A,2-B及び2-Dについて検討するまでも
なく,本件発明4は,甲6発明2,甲23技術及び周知技術等に基づい
て,当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。キ
本件発明5について
(ア)

本件発明5と甲6発明2との対比
本件発明5と甲6発明2とは,相違点2-A~2-Dに加え,以下の
点で相違する。
[相違点2-E]
本件発明5では,改修用上枠の室外側部に室外側上枠シール材が装着され,この室外側上枠シール材は建物の開口部の上縁部に接し,改修用竪枠の室外側部に室外側竪枠シール材が装着され,この室外側竪枠シール材は建物の開口部の縦縁部に接するのに対し,甲6発明2では,そのような構成を有していない点。
(イ)

判断
甲6発明2において,相違点2-Cに係る本件発明5の構成とするこ
とが当業者にとって容易であるといえないことは,本件発明4と同様である。
よって,相違点2-A,2-B,2-D及び2-Eについて検討するまでもなく,本件発明5は,甲6発明2,甲23技術及び周知技術等に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。

本件発明6について
(ア)

対比
本件発明6と甲6発明2とは,相違点2-A~2-Dに加え,以下の
点で相違する。
[相違点2-F]
既設下枠の案内レールに関し,本件発明6では,室内側案内レールは切断して撤去されるのに対し,甲6発明2では,室内側案内レールを備
えているか否か,室内側案内レールは切断して撤去されるか否か不明である点。
(イ)

判断
甲6発明2において,相違点2-Cに係る本件発明6の構成とするこ
とが当業者にとって容易であるといえないことは,本件発明4と同様である。
よって,相違点2-A,2-B,2-D及び2-Fについて検討するまでもなく,本件発明6は,甲6発明2,甲23技術及び周知技術等に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。

まとめ
以上より,本件発明に係る特許は,法29条2項に違反してされたものではない。

第3
1
当事者の主張
原告の主張
(1)

取消事由1(無効理由1(明確性要件違反)の判断における本件明細書
の記載事項の誤解)
ア(ア)

本件審決は,本件発明において「背後壁の上端と改修用下枠の上端
がほぼ同じ高さであ」るとは,既設下枠の背後壁の上端と改修用下枠の上端がおおかた同じ高さである,すなわち完全に同じであることは要しない程度に高さが同じであるといった意味と捉えられるから,当該事項によって本件発明が直ちに不明確であるとはいえないとする。
しかし,「ほぼ同じ高さ」の意味について,「完全に同じであることは要しない程度」との説明では,結局,技術的に既設下枠の背後壁の上端と改修用下枠の上端がどのような関係であることを意味するのか不明であって,本件発明が不明確ではないことの理由になっていない。
(イ)

発明特定事項の「ほぼ」という表現のように,発明の技術的範囲を
不確定とさせる表現がある場合,その特定事項の意味が明細書及び図面の記載並びに出願時の技術常識を考慮しても明確にならず,発明の範囲が理解できないときには,その発明が明確であるとはいえない。そこで,本件発明の明確性を判断するに際しては,根拠となる明細書もしくは図面の記載又は出願時の技術常識を挙げるなどして,本件発明の明確性を具体的に説明する必要がある。
この点に関し,本件審決は,本件明細書の図10が本件発明の実施形態であることを前提として,当業者は,本件発明の「背後壁の上端と改修用下枠の上端がほぼ同じ高さであ」るとの特定事項について,実質的に有効開口面積が減少しないよう,できるだけ既設下枠の背後壁の上端と改修用下枠の上端が同じ高さになるようにすればよいと理解するものであり,既設下枠の背後壁の上端と改修用下枠の上端の高さの差の許容範囲を認識する必要はないなどと判断した。
しかし,そもそも本件明細書に記載された各実施の形態には,本件発明の構成を全て備えるものは存在せず,本件明細書に記載された全ての実施の形態が,本件発明の一つの構成である「背後壁の上端と改修用下枠の上端がほぼ同じ高さであ」る構成を備えるわけではない。
また,本件明細書の図10については,本件明細書【0092】の記載及びその図自体から,改修用下枠の上端と既設下枠の背後壁の上端の高さに明らかな差異があり,このことは容易に認識されるものである。そもそも,本件特許の出願経過に鑑みると,本件明細書【0092】及び図10は,手続補正の結果,本件発明の実施形態を記載するものではなく,また,本件発明の実施形態を説明するものでもなくなったにもかかわらず,本件明細書に残されてしまったものと理解される。
したがって,図10に記載された形態は本件発明の実施例ではないか
ら,本件審決は,本件特許の明細書の図10に記載された形態を本件発明の実施形態であるとする点で誤りであり,本件明細書の記載事項を誤解した上で明確性違反についての判断をしたものである。
(ウ)

本件審決は,「背後壁の上端と改修用下枠の上端がほぼ同じ高さ」
の構成について,「わずかな違いは許容する」,「実質的に有効開口面積が減少するものでないということを意味すると解する」などの曖昧な説明をし,「当業者は実質的に有効開口面積が減少しないよう,できるだけ既設下枠の背後壁の上端と改修用下枠の上端が同じ高さになるようにすればよい」とする。
しかし,これでは,当業者にとって,背後壁の上端と改修用下枠の上端との高さの差が具体的にどの程度の差のものであれば「ほぼ同じ高さ」を充足することになるのかが全く明らかにされていない。
さらに,本件発明の「背後壁の上端と改修用下枠の上端がほぼ同じ高さ」とする構成は,本件発明の数量的な特定事項であるから,背後壁の上端と改修用下枠の上端の高さの差の許容範囲が認識できなければ,本件発明の範囲が認定できるはずはない。

本件明細書の記載によれば,本件発明の効果は有効開口面積が減少することがないこと(【0018】)である。そして,本件特許の出願経過等を踏まえると,「前記背後壁の上端と改修用下枠の上端がほぼ同じ高さであ」るという構成が,この課題を解決する構成といえるから,「前記背後壁の上端と改修用下枠の上端がほぼ同じ高さであ」るとは,既設引戸を改修用引戸に改修することによって有効開口面積を減少させないことを踏まえると,既設下枠の背後壁の上端と改修用下枠の上端の高さを可能な限り同じにしたものと解される。そうすると,本件明細書の図10は,本件発明の実施例に当たらない。
しかし,本件明細書には,図10や開口面積が減少することが少ない
との効果を達成する意図と無関係に作成された図11が本件発明の実施例であるかのごとく記載されている。そのため,「前記背後壁の上端と改修用下枠の上端がほぼ同じ高さであり」とは,具体的にどのような構成まで含まれるのかが判然としない。
したがって,本件発明は明確ではないから,本件特許は,法36条6項2号の要件を満たさない。

以上のとおり,本件審決の無効理由1(明確性要件違反)の判断には,その判断過程に重大な瑕疵があり,当該瑕疵はその結論に影響を及ぼすものであるから,本件審決の結論は誤りである。

(2)

取消事由2(無効理由2(サポート要件違反)の判断における本件明細
書の記載事項の誤解)

本件審決は,本件発明につき,本件明細書記載の従来技術の課題を構成1及び2を採用することにより解決し,本件効果を奏するものであるところ,本件明細書(【0070】,【0100】)の記載によれば,その発明の詳細な説明には,当業者において,本件発明を理解するために必要な技術的事項が記載されているといえる旨判断した。
しかし,法36条6項1号のサポート要件は,特許請求の範囲の特許を受けようとする発明が明細書の発明の詳細な説明中に記載したものであることを求めるものであり,発明を理解するために必要な技術的事項が記されていればよいわけではない。
本件審決は,本件発明1及び4と実施形態1の構成,本件発明1及び4と実施形態3の構成のそれぞれの相違する点を認定し,本件明細書記載の実施形態1及び3は本件発明1及び4の構成全てを備えたものでないとしながら,実施形態1との相違点(改修用下枠の室外寄りの支持の態様に関する構成及び取付け補助部材の固定の態様)については実施形態3のごとくしてもよいこと,実施形態3との相違点(改修用下枠の前
壁の固定の態様)については実施形態1のごとくしてもよいことは,当業者にとって自明の事項であるとする。
しかし,実施形態3において,改修用下枠の室外寄りがスペーサを介して既設下枠の室外寄りに接して支持されているのは,改修用下枠69の前壁80が既設下枠の前壁にビスによって固定されていないために,改修用下枠の室外寄りを支持することができないからである。そうすると,改修用下枠の前壁を既設下枠の前壁にビス止めした実施形態1において,改修用下枠の室外寄りをスペーサを介して既設下枠の室外寄りに接して支持するということを想起することはなく,このような構成にすることは当業者にとって自明の事項ではない。したがって,本件審決の上記判断は,本件明細書の記載内容を看過したものといわざるを得ない。また,実施形態2に関する本件明細書の記載(【0067】,【0069】,【0091】,【0092】,図6)に鑑みると,実施形態2及び実施形態3の「室外側下枠シール材300が既設下枠56の前壁102に圧接している」という構成は,既設下枠の形状,寸法に応じた形状,寸法の取付け補助部材を用いることで,形状,寸法が異なる既設引戸枠に同一の改修用引戸枠を取り付けるという本件発明の効果を奏するために必須の構成である。そうすると,実施形態3の上記構成に代えて,実施形態1の「改修用下枠の前壁をビスによって既設下枠の前壁に固定」する構成を採用しては,実施形態3の上記効果を奏することができなくなってしまう。そうである以上,本件審決の上記判断は,本件明細書の記載内容を看過したものといわざるを得ない。
このように,実施形態1に実施形態3の構成を,また,実施形態3に実施形態1の構成をそれぞれ適用することは,当業者にとって必ずしも自明の事項でなく,本件審決が上げる,実施形態1と実施形態3の基本的な構造や作用効果が共通であるという理由をもって自明の事項といえ
るものでもない。本件審決も認めるとおり,本件明細書には,本件発明1及び4の構成の全てを備えた実施形態は存在しないのであり,加えて,本件明細書には本件発明1及び4の各構成の関連性が記載されていない以上,本件発明1及び4は,本件明細書の発明の詳細な説明には記載も示唆もされていないものといえる。

以上のとおり,本件審決の無効理由2(サポート要件違反)の判断には,その判断過程に重大な瑕疵があり,当該瑕疵はその結論に影響を及ぼすものであるから,本件審決の結論は誤りである。

(3)

取消事由3(無効理由3(実施可能要件違反)の判断における審理不尽,
理由不備及び判断の誤り)

本件審決は,無効理由3(実施可能要件違反)の判断において,本件発明が明確であること,及び本件明細書の発明の詳細な説明及び図面には当業者が本件発明の実施ができる程度に明確かつ十分な記載があることに言及した上で,本件発明に係る特許は法36条4項1号に違反してされたものではないとするのみである。
しかし,そもそも,本件発明が明確でないことは前記のとおりであり,また,本件明細書の発明の詳細な説明及び図面には当業者が本件発明の実施ができる程度に明確かつ十分な記載があるとされる根拠は全く示されていない。
さらに,既設下枠の背後壁の上端と改修用下枠の上端との高さの差の許容範囲が分からなければ,有効開口面積が減少しないという本件発明の効果を実現するための基準がわからず,本件発明を実施することは不可能である。すなわち,できるだけ同じ高さとなるようにしたか否かは実施者の主観的認識の問題であって,これを客観的に判断することはできないし,既設下枠の背後壁の上端と改修用下枠の上端の高さの差の許容範囲を客観的に判断することができなければ,本件発明を実施するに
際し改修用建具の寸法等の設計をすることもできない。
このように,本件審決は,十分な審理を尽くしておらず,その上,判断を導くための理由を十分に付していないから,明らかな理由不備があり,重大な違法性を有する。また,本件審決の明確性要件に関する説示を前提とすると,本件発明を実施することは不可能である。

したがって,無効理由3(実施可能要件違反)についての本件審決の判断は誤りであり,この誤りは本件審決の結論に影響を及ぼす。

(4)

取消事由4(無効理由4(進歩性欠如)の判断における甲号証発明の認
定の誤り,甲号証発明と本件発明との一致点,相違点の認定の誤り,及び相違点についての判断の誤り)

取消事由4-1(甲5発明1及び2の認定の誤り)
(ア)

甲5発明1の認定の誤り
本件審決による甲5発明1の認定は,第1に,「改修用サッシの改修
用下枠の浴室側寄りが,断面逆L字状の部材tを介して既設下枠の浴室側寄りに支持される」との構成を欠いている点で誤りがある。この構成は,本件発明1の進歩性を判断する上で重要な構成である。
また,第2に,「改修用引戸枠を,逆L字状の部材s(取付け補助部材)を基準として取付ける」との構成を欠いている点でも,本件審決による甲5発明1の認定には誤りがある。
すなわち,本件審決は,本件発明1の「改修用引戸枠を取付け補助部材を基準として取付ける」とは,取付け補助部材を既設引戸枠に対する改修用引戸枠の位置を決めるよりどころとして,改修用引戸枠を取り付けることを意味するとした上で,甲5発明1の「改修用引戸枠」は「既設下枠の横向片の部分m6」を「基準として取り付ける」ものであって,「逆L字状の部材s」を「基準として取り付ける」ものとはいえないとする。

しかし,甲5の2においては,改修用下枠の脱衣側に延びる部分と逆L字状の部材sの上壁s1との間に部材は存在せず,両者が直接ビスにより連結されることで,逆L字状の部材sに対して改修用下枠が上下左右にずれることはなく,また,ビスを介して改修用下枠が逆L字状の部材sの上壁s1に支持されている。そうすると,逆L字状の部材sは,改修用引戸枠の位置を決めるよりどころとなっているといえる。また,既設引戸枠に対する改修用引戸枠の位置決めには,上下方向のみならず,水平方向についてもよりどころが必要であるところ,逆L字状の部材sは,改修用下枠の見込み方向(水平方向)の位置を決めるよりどころとなっている。
そうすると,甲5図面等記載の発明は,「改修用引戸枠を,逆L字状の部材s(取付け補助部材)を基準として取付ける」ものであると認められる。そして,この構成は,本件発明1の進歩性を判断する上で重要な構成である。
以上より,甲5図面等記載の引戸装置の改修方法に係る発明は,本来,以下のとおりに認定されるべきであり(以下「甲5真発明1」という。),本件審決における甲5発明1の認定は誤りである。
[甲5真発明1]
建物内の浴室と脱衣室との間の開口部に残存したアルミニウム合
金から成る既設上枠,アルミニウム合金から成り脱衣側レールm2と浴室側レールm3とを備えた既設下枠,アルミニウム合金から成る既設竪枠を有する既設引戸枠を残存し,
既設下枠の底壁部分m1の最も脱衣側の端部には,立ち上がって
浴室側面となる壁部m5が形成され,壁部m5の上端には脱衣側に屈曲して横向片の部分m6が形成されるとともに,横向片の部分m6の浴室側には浴室側に延びる延設部分m7が形成され,

上壁s1を浴室側に延ばした逆L字状の部材sを,上壁s1を延
設部分m7の下面に当接させるとともに,その縦壁s2を壁部m5の浴室側面にビスで固定し,
既設下枠の浴室側の壁部m4には,逆L字状の部材tをビスで固
定し,
この後に,アルミニウム合金から成る改修用上枠,アルミニウム
合金から成る改修用竪枠,アルミニウム合金から成り,平坦で,浴室側と脱衣側の高さが同一である底壁を備えた改修用下枠を有する改修用引戸枠を,既設引戸枠内に浴室側から挿入し,
改修用サッシの改修用下枠の浴室側寄りが,断面逆L字状の部材
tを介して既設下枠の浴室側寄りに支持されるとともに,改修用下枠の浴室寄りを,逆L字状の部材tの上部にビスで固定し,改修用下枠の脱衣寄りを,既設下枠の横向片の部分m6の上面に当接するとともに,逆L字状の部材sの上壁s1に対してビスで固定し,
既設下枠の壁部m5の上端と改修用下枠の上端の高さの差が3m
mであり,改修用引戸枠を逆L字状の部材s(取付け補助部材)を基準として取り付ける引戸装置の改修方法。
(イ)

甲5発明2の認定の誤り
上記(ア)のとおり,本件審決の甲5図面等記載の発明に係る認定は,
「改修用サッシの改修用下枠の浴室側寄りが,断面逆L字状の部材tを介して既設下枠の浴室側寄りに支持される」との構成を欠いている点で誤りである。そして,この構成は,本件特許発明1の進歩性を判断する上で重要な構成である。
そうすると,甲5図面等記載の引戸装置の改修引戸装置に係る発明は,本来,以下のとおりに認定されるべきであり(以下「甲5真発明2」という。),本件審決における甲5発明2の認定は誤りである。

[甲5真発明2]
建物内の浴室と脱衣室との間の開口部に残存した既設引戸枠は,
アルミニウム合金から成る既設上枠,脱衣側レールm2と浴室側レールm3を備えたアルミニウム合金から成る既設下枠,アルミニウム合金から成る既設竪枠を有し,
既設下枠の底壁部分m1の最も脱衣側の端部には,立ち上がって
浴室側面となる壁部m5が形成され,壁部m5の上端には脱衣側に屈曲して横向片の部分m6が形成されるとともに,横向片の部分m6の浴室側には浴室側に延びる延設部分m7が形成され,
上壁s1を浴室側に延ばした逆L字状の部材sを,上壁s1を延
設部分m7の下面に当接させるとともに,その縦壁s2を壁部m5の浴室側面にビスで固定してあり,
既設下枠の浴室側の壁部m4には,逆L字状の部材tをビスで固
定してあり,
既設引戸枠内に,アルミニウム合金から成る改修用上枠,アルミ
ニウム合金から成り,平坦で,浴室側と脱衣側の高さが同一である底壁を備えた改修用下枠を有する改修用引戸枠を挿入し,
改修用サッシの改修用下枠の浴室側寄りが,断面逆L字状の部材
tを介して既設下枠の浴室側寄りに支持されるとともに,
改修用下枠の浴室寄りを,断面逆L字状の部材tの上部にビスで
固定し,改修用下枠の脱衣寄りを,既設下枠の横向片の部分m6の上面に当接するとともに,逆L字状の部材sの上壁s1に対してビスで固定してあり,
既設下枠の壁部m5の上端と改修用下枠の上端の高さの差が3m
mである引戸装置の改修引戸装置。

取消事由4-2(甲6発明1及び2の認定の誤り)

(ア)

本件審決による甲6発明1の認定は,第1に,「新窓枠5の下枠の
室外寄りが既存のスチール製下枠の室外寄りに接して支持され」との構成を欠いている点で誤りがある。そして,この構成は,本件発明の進歩性を検討する上で重要な構成である。
また,第2に,「新窓枠をアンカー6を基準として取付ける」との構成を欠いている点でも,本件審決の甲6発明1に係る認定には誤りがある。すなわち,本件審決は,本件発明1の「改修用引戸枠を取付け補助部材を基準として取付ける」につき上記ア(ア)のとおり解釈した上で,甲6発明1は,予め「新窓枠5の下枠」の「C形溝5b内に挿入され」た「アンカー6のフランジ6bを既存のスチール製下枠にビス止めする」ものであるから,「新窓枠5」を「アンカー6」を基準として取り付けるものとはいえないとする。しかし,甲6文献においては,いずれにしてもアンカー6の寸法,形状によって新窓枠の位置が異なることとなるため,アンカー6が新窓枠の位置を決めるよりどころとなっており,「新窓枠をアンカー6を基準として取付ける」ものといえる。そして,この構成は,本件発明の進歩性を検討する上で重要な構成である。以上より,甲6文献記載のサッシの改装方法に係る発明は,少なくとも以下のように認定されるべきであり(以下「甲6真発明1」という。),本件審決における甲6発明1の認定は誤りである。
[甲6真発明1]
旧窓枠1にアルミニウム型材からなる新窓枠5を取り付けるサッ
シの改装方法において,
新窓枠5の下枠は,その側面形状が階段状を呈して室外に向って
下り勾配を形成し,その側端に近接した位置より垂下したる外側フランジ5aを形成し,又内側面には縦長のC形溝5bを長手方向に形成しその上端より室内側へ水平フランジ5Cを形成し,

アンカー6がC形溝5b内に挿入されて方形に組立てられた新窓
枠5を旧窓枠1に室外側から挿入し,その新窓枠5の下枠の室外寄りを,既存のスチール製下枠の室外寄りに接して支持すると共に,
新窓枠5の下枠の外側フランジ5aを既存のスチール製下枠の垂
下フランジ1bにビス止めし,アンカー6のフランジ6bを既存のスチール製下枠にビス止めし,新窓枠をアンカー6を基準として取り付けるサッシの改装方法。
(イ)

甲6発明2の認定の誤り
上記(ア)のとおり,本件審決における甲6発明2の認定は,「新窓枠
5の下枠の室外寄りが既存のスチール製下枠の室外寄りに接して支持され」との構成を欠いている点で誤りがある。そして,この構成は,本件発明1の進歩性を判断する上で重要な構成である。
そうすると,甲6文献記載の改装サッシに係る発明は,本来,以下のとおりに認定されるべきであり(以下「甲6真発明2」という。),本件審決における甲6発明2の認定は誤りである。
[甲6真発明2]
旧窓枠1にアルミニウム型材からなる新窓枠5を取り付ける改装
サッシにおいて,
新窓枠5の下枠は,その側面形状が階段状を呈して室外に向って
下り勾配を形成し,その側端に近接した位置より垂下したる外側フランジ5aを形成し,又内側面には縦長のC形溝5bを長手方向に形成しその上端より室内側へ水平フランジ5Cを形成し,
方形に組立てられた新窓枠5を旧窓枠1に室外側から挿入し,そ
の新窓枠5の下枠の室外寄りが,既存のスチール製下枠の室外寄りに接して支持されると共に,新窓枠5の下枠の外側フランジ5aを既存のスチール製下枠の垂下フランジ1bにビス止めし,C形溝5bに係
止されたアンカー6のフランジ6bを既存のスチール製下枠にビス止めした改装サッシ。

取消事由4-3(本件発明1~3と甲5発明1との一致点の認定の誤り)前記アのとおり,本件審決における甲5発明1の認定には誤りがあり,本件発明1~3と甲5真発明1の一致点は,少なくとも以下のように認定されるべきである。本件審決は,「改修用下枠の室外寄りを既設下枠の室外寄りで支持する」構成及び「改修用引戸枠を取付け補助部材を基準として取付ける」構成を本件発明1~3と甲5発明1の一致点として認定していない点で誤りがある。
[一致点]
建物の開口部に取り付けてあるアルミニウム合金から成る既設上枠,アルミニウム合金から成り一方側案内レールと他方側案内レールを備えた既設下枠,アルミニウム合金から成る既設竪枠を有する既設引戸枠を残存し,
前記既設下枠の一方寄りに取付け補助部材を設け,この取付け補助部材を既設下枠の底壁の最も一方側の端部に連なる背後壁の立面にビスで固着して取り付け,
この後に,アルミニウム合金から成る改修用上枠,アルミニウム合金から成る改修用竪枠,アルミニウム合金から成る改修用下枠を有する改修用引戸枠を,前記既設引戸枠内に他方側から挿入し,その改修用下枠の室外寄りを既設下枠の室外寄りで支持する共に,前記改修用下枠の一方寄りを前記取付け補助部材で支持し,前記背後壁の上端と改修用下枠の上端がほぼ同じ高さであり,
前記改修用下枠をビスによって既設下枠に固定することで,改修用引戸枠を取付け補助部材を基準として取り付ける引戸装置の改修方法。

取消事由4-4(甲5発明1と本件発明1~3との相違点1-5の認定
の誤り)
前記ア及びウのとおり,本件審決における甲5発明1の認定には誤りがあり,本件発明1~3と甲5真発明1とは「改修用下枠の室外寄りを既設下枠の室外寄りで支持する」点で一致している。
したがって,本件発明1~3と甲5真発明1の相違点としては,以下の相違点1-5’が認定されるべきであり,本件審決における相違点1-5の認定は誤りである。
[相違点1-5’]
改修用引戸枠の取付構造に関し,本件発明1では,改修用下枠の室外寄りを,スペーサを介して既設下枠の室外寄りに接して支持し,改修用下枠の前壁を,ビスによって既設下枠の前壁に固定することで,改修用引戸枠を取付け補助部材を基準として取り付けるのに対し,甲5真発明1では,改修用下枠の室外寄りを既設下枠の室外寄りに支持してはいるものの,スペーサを介して支持しているものではなく,断面逆L字状の部材tを介して支持しており,また,改修用下枠の前壁を,ビスによって既設下枠の前壁に固定する構成を有していない点。

取消事由4-5(相違点1-3~1-5についての判断の誤り)
(ア)

本件審決は,改修用下枠の室外寄りをスペーサを介して既設下枠の
室外寄りに接して支持すること及び改修用引戸枠を取付け補助部材を基準として取り付けることは,いずれの証拠にも記載されておらず,周知技術であるとも認められないとする。
しかし,上記アのとおり,甲5真発明1は「改修用サッシの改修用下枠の浴室側寄りが,断面逆L字状の部材tを介して既設下枠の浴室側寄りに支持される」構成を備えており,本件発明1~3と甲5真発明1の相違点は,スペーサではなく断面逆L字状の部材tを介して支持しているという点にすぎない。

そして,改修用下枠を室内寄りと室外寄りにおいて支持した改修用サッシにおいて,改修用下枠の室内(後)側を既設下枠に対してスペーサ等を介して高い位置で支持した上で,室外寄りを改修用下枠の高さ位置を調節しながら支持するべくスペーサを介して支持することは周知の技術であるし,改修用下枠の室外寄りを取付け金具で支持するか,スペーサで支持するかは,当業者にとって適宜選択できる設計事項である。そうすると,甲5真発明1の改修用サッシの改修用下枠の浴室(前)側寄りを断面逆L字状の部材tに代えてスペーサで支持するように構成することは,当業者が容易になし得たことである。
(イ)

仮に本件審決の相違点の認定を前提としても,「改修用下枠の室外
寄りを既設下枠の室外寄りに接して支持する」構成は,前記イのとおり,甲6文献に開示されている技術であって,そもそも公知の技術である。また,本件発明1~3の「スペーサ」に相当する技術は,本件審決も認めているように周知技術である。
さらに,前記ウのとおり,「改修用引戸枠を取付け補助部材を基準として取付ける」構成はそもそも相違点ではないものの,この構成も甲6文献に開示されている技術であり公知の技術であることは,前記イのとおりである。
本件審決は,甲6発明1の「側面形状が階段状を呈して室外に向かって下り勾配を形成」した「新窓枠の下枠5」の形状,及び「下枠5の外側フランジ5aを」既存の「下枠1の垂下フランジ1bにビス止め」する構成のみを取り出し,甲5発明1に適用する動機付けはないとする。しかし,甲5(真)発明1と甲6(真)発明1とは,改修用下枠の脱衣側(室内側)の支持構造が異なるとはいえ,共に改修用下枠の脱衣側(室内側)と浴室側(室外側)とによって,既設下枠の上に改修用下枠を支持する構造に変わりなく,甲6(真)発明1の改修用下枠自体の構
成や改修用下枠の浴室側(室外側)の支持構造を甲5(真)発明に適用することは,技術分野の同一性から考えれば,十分な動機付けがある。また,本件審決では,仮に甲5発明1において,改修用下枠として,浴室側から脱衣側に向かって上方へ段差を成して傾斜し,浴室寄りが低く,脱衣寄りが浴室寄りよりも高い底壁を備えたものを採用し,改修用下枠の取付けに当たり邪魔となる既設下枠の浴室側レールm3を付け根付近から切断して撤去することが当業者にとって容易になし得ることであったとしても,さらに,改修用下枠の浴室寄りをスペーサを介して既設下枠の浴室寄りに接して支持することや,改修用下枠の前壁をビスによって既設下枠の前壁に固定することで,改修用引戸枠を逆L字状の部材sを基準として取り付けるようにすることまでもが当業者にとって容易であるとすることはできないとする。
しかし,「改修用サッシの改修用下枠の浴室側寄りが,断面逆L字状の部材tを介して既設下枠の浴室側寄りに支持される」という構成及び「改修用引戸枠を取付け補助部材を基準として取付ける」という構成は,甲5真発明1に開示されていること,並びに,上記イのとおり,改修用下枠の浴室寄り(室外寄り)を既設下枠の浴室寄り(室外寄り)に接して支持すること,及び改修用下枠の前壁をビスによって既設下枠の前壁に固定することは,甲6真発明1として開示された公知の技術であって,本件発明1~3のスペーサに相当する部材が周知であることに鑑みれば,相違点1-5は,甲5真発明1,甲6真発明1の技術及び周知の技術から,当業者が容易に想到できるものであるというべきである。
そもそも,本件発明が解決すべき従来技術の課題(課題a及びb)とこれを解決するために採用される構成(構成1及び2),その構成が奏する効果に鑑みると,「改修用下枠の室外寄りをスペーサを介して既設下枠の室外寄りに接して支持する」構成は,「改修用引戸枠を取付け補
助部材を基準として取付ける」構成と何らかの関連性を有する構成ではなく,本件発明の効果を奏するために必須の構成ではない。そして,上記のとおり,改修用下枠を室内寄りと室外寄りにおいて支持した改修サッシにおいて,改修用下枠の室内(後)側を既設下枠に対してスペーサ等を介して高い位置で支持した上で,室外寄りを改修用下枠の高さ位置調節しながら支持するべくスペーサを介して支持することは周知の技術であるから,相違点1-5に係る「改修用引戸枠を取付け補助部材を基準として取付ける」構成を備える改修用下枠の室外寄りの支持として,「改修用下枠の室外寄りをスペーサを介して既設下枠の室外寄りに接して支持する」構成を採用することは,単に周知技術を適用したにすぎない。
本件審決は,そのような単なる周知技術の適用でしかない構成を「改修用引戸枠を取付け補助部材を基準として取付ける」構成と関連性があるかのごとく組み合わせて相違点1-5とし,この相違点に係る容易想到性を否定しており,妥当ではない。
(ウ)

以上のとおり,本件審決の相違点1-3~1-5についての判断は
誤りである。

取消事由4-6(本件発明4~6と甲5発明2との一致点の認定の誤り)前記アのとおり,本件審決における甲5発明2の認定には誤りがあり,本件発明4~6と甲5真発明2との一致点は,少なくとも以下のように認定されるべきである。本件審決は,「改修用下枠の他方寄りが既設下枠の他方寄りに支持される」構成を本件発明4~6と甲5発明2との一致点として認定していない点で誤りがある。
[一致点]
建物の開口部に残存した既設引戸枠は,アルミニウム合金から成る既設上枠,アルミニウム合金から成り一方側案内レールと他方側案内レー
ルを備えた既設下枠,アルミニウム合金から成る既設竪枠を有し,その既設下枠の一方寄りに取付け補助部材を設け,その取付け補助部材が既設下枠の底壁の最も一方側の端部に連なる背後壁の立面にビスで固着して取り付けてあり,
この既設引戸枠内に,アルミニウム合金から成る改修用上枠,アルミニウム合金から成る改修用下枠,アルミニウム合金から成る改修用竪枠を有する改修用引戸枠が挿入され,
この改修用下枠の他方寄りが既設下枠の他方寄りに支持されると共に,前記改修用下枠の一方寄りが前記取付け補助部材で支持され,前記背後壁の上端と改修用下枠の上端がほぼ同じ高さであり,
前記改修用下枠が,ビスによって既設下枠に固定されている改修引戸装置。

取消事由4-7(本件発明4~6と甲5発明2との相違点1-Eの認定の誤り)
前記ア及びカのとおり,本件審決における甲5発明2の認定には誤りがあり,本件発明4~6と甲5真発明2は「改修用下枠の他方寄りが既設下枠の他方寄りに支持される」という点で一致している。
したがって,本件発明4~6と甲5真発明2との相違点としては,以下の相違点1-E’が認定されるべきであり,本件審決における相違点1-Eの認定は誤りである。
[相違点1-E’]
改修用引戸枠の取付構造に関し,本件発明4では,改修用下枠の室外寄りを,スペーサを介して既設下枠の室外寄りに接して支持し,改修用下枠の前壁を,ビスによって既設下枠の前壁に固定しているのに対し,甲5真発明2では,改修用下枠の室外寄りを既設下枠の室外寄りに支持してはいるものの,スペーサを介して直接支持しているものではなく,
断面逆L字状の部材tを介して支持しており,また,改修用下枠の前壁を,ビスによって既設下枠の前壁に固定する構成を有していない点。ク
取消事由4-8(相違点1-C~1-Eについての判断の誤り)
この点に関する本件審決の判断が誤りであることは,前記オと同様である。
以上のとおり,本件審決の相違点1-C~1-Eについての判断は,甲6発明2についての誤った認定に基づいてなされたものであり,誤りである。

(5)

取消事由5(無効理由5(進歩性欠如)の判断における甲号証発明の認
定の誤り,甲号証発明と本件発明との一致点,相違点の認定の誤り,及び相違点についての判断の誤り

取消事由5-1(甲6発明1の認定の誤り,及び本件発明1~3と甲6発明1との一致点の認定の誤り)
前記(4)イのとおり,本件審決における甲6発明1の認定には誤りがあり,本件発明1~3と甲6真発明1との一致点は,以下のとおり認定されるべきである。本件審決は,「改修用下枠の室外寄りを既設下枠の室外寄りで支持する」という構成及び「改修用引戸枠を取付け補助部材を基準として取付ける」という構成を一致点として認定していない点で誤りがある。
[一致点]
建物の開口部に取り付けてある既設上枠,既設下枠,既設竪枠を有する既設枠を残存し,
この後に,アルミニウム合金の押出し形材から成る改修用上枠,アルミニウム合金の押出し形材から成る改修用竪枠,アルミニウム合金の押出し形材から成り室外から室内に向かって上方へ段差を成して傾斜し,室外寄りが低く,室内寄りが室外寄りよりも高い底壁を備えた改修用下
枠を有する改修用引戸枠を,前記既設枠内に室外側から挿入し,その改修用下枠の室外寄りを既設下枠の室外寄りで支持する共に,前記改修用下枠の室内寄りを取付け補助部材で支持し,前記改修用下枠の前壁をビスによって既設下枠の前壁に固定し,改修用引戸枠を取付け補助部材を基準として取り付ける引戸装置の改修方法。

取消事由5-2(本件発明1~3と甲6発明1との相違点2-4の認定の誤り)
前記(4)イ及び上記アのとおり,本件審決の甲6発明1の認定には誤りがあり,本件発明1~3と甲6真発明1とは「改修用下枠の室外寄りを既設下枠の室外寄りで支持する」という点及び「改修用引戸枠を取付け補助部材を基準として取付ける」という点で一致している。
したがって,本件発明1~3と甲6真発明1との相違点としては,以下の相違点2-4’が認定されるべきであって,本件審決における相違点2-4の認定は誤りである。
[相違点2-4’]
改修用引戸枠の取付け構造に関し,本件発明1では,改修用下枠の室外寄りをスペーサを介して既設下枠の室外寄りに接して支持し,改修用引戸枠を取付け補助部材を基準として取り付けるのに対し,甲6真発明1は,改修用下枠の室外寄りが既設下枠の室外寄りに接して支持されているものの,スペーサを介してはいない点。


取消事由5-3(相違点2-3及び2-4についての判断の誤り)(ア)

本件審決は,相違点2-3の「取付け補助部材を既設下枠の底壁の
最も室内側の端部に連なる背後壁の立面にビスで固着して取付け」てある点について,甲23技術に係る逆L字状の支持部材による改装サッシ下枠の支持構造は甲6発明1のアンカー6による取付け構造に代えて直ちに適用できるものではない旨判断する。

しかし,本件発明1~3の相違点2-3に係る構成は,「取付け補助部材が既設下枠の底壁の最も室内側の端部に連なる背後壁の立面にビスで固着して取付け」られる構成であって,取付け補助部材が逆L字状であることが特定されているものではない。
そして,取付け補助部材を「取付け補助部材が既設下枠の底壁の最も室内側の端部に連なる背後壁の立面にビスで固着して取付け」る技術が甲23文献に開示されていることは明らかであって,甲6(真)発明1の取付け補助部材であるアンカーを既設下枠に取り付けるに際して甲23技術を適用し,「既設下枠の底壁の最も室内側の端部に連なる背後壁の立面にビスで固着」することは,その技術分野の同一性等から考えれば当業者が容易になし得たことである。
本件審決は,相違点2-3の前段に関し,本件発明1~3の構成を誤解した上で上記判断をしており,誤りである。
(イ)

本件審決は,相違点2-4の「改修用下枠の室外寄りをスペーサを
介して既設下枠の室外寄りに接して支持し」ている点について,改修用下枠の室外寄りをスペーサを介して既設下枠の室外寄りに接して支持すること及び改修用引戸枠を取付け補助部材を基準として取付けることは,いずれの証拠にも記載されておらず,周知技術であるとも認められないとするけれども,前記(4)オのとおり,「改修用下枠の室外寄りをスペーサを介して既設下枠の室外寄りに接して支持する」構成は,「改修用引戸枠を取付け補助部材を基準として取付ける」構成と何らかの関連性を有する構成ではなく,本件発明の効果を奏するために必須の構成ではない。そして,改修用下枠を室内寄りと室外寄りにおいて支持した改修サッシにおいて,改修用下枠の室内(後)側を既設下枠に対してスペーサ等を介して高い位置で支持した上で,室外寄りを改修用下枠の高さ位置調節しながら支持するべくスペーサを介し
て支持することは周知の技術であり,相違点2-4に係る「改修用引戸枠を取付け補助部材を基準として取付ける」構成を備える改修用下枠の室外寄りの支持として「改修用下枠の室外寄りをスペーサを介して既設下枠の室外寄りに接して支持する」構成を採用することは,単なる周知技術を適用したにすぎない。
本件審決は,そのような単なる周知技術の適用でしかない構成を「改修用引戸枠を取付け補助部材を基準として取付ける」構成と関連性があるかのごとく組み合わせて相違点2-4とし,この相違点についての容易想到性を否定しており,妥当ではない。
(ウ)

前記(4)イのとおり,甲6真発明1は「改修用下枠の室外寄りを既設
下枠の室外寄りに接して支持する」構成を備えているのであって,本件発明1~3と甲6真発明1の相違点は,スペーサを介しているか否かの点にすぎない。本件発明1~3の「スペーサ」に相当する部材が周知であることは本件審決も認めるところであり,甲6真発明1の脚状部と既設下枠との間にスペーサを介することは,周知技術の適用に過ぎず,当業者が適宜なし得た事項である。
(エ)

以上のとおり,本件審決の相違点2-3及び2-4についての判断
は誤りである。

取消事由5-4(甲6発明2の認定の誤り,及び,本件発明4~6と甲6発明2との一致点の認定の誤り)
前記(4)イ及び上記アのとおり,本件審決における甲6発明2の認定は誤りであり,本件発明4~6と甲6真発明2との一致点は,以下のとおり認定されるべきものである。本件審決は,「この改修用下枠の室外寄りが,既設下枠の室外寄りに接して支持される」構成を一致点として認定していない点で誤りである。
[一致点]

建物の開口部に残存した既設枠は,既設上枠,既設下枠,既設竪枠を有し,その既設下枠の室内寄りに取付け補助部材を設け,
この既設枠内に,アルミニウム合金の押出し形材から成る改修用上枠,アルミニウム合金の押出し形材から成り室外から室内に向かって上方へ段差を成して傾斜し,室外寄りが低く,室内寄りが室外寄りよりも高い底壁を備えた改修用下枠,アルミニウム合金の押出し形材から成る改修用竪枠を有する改修用引戸枠が挿入され,
この改修用引戸枠の室外寄りが,既設下枠の室外寄りに接して支持されるとともに,前記改修用下枠の室内寄りが,前記取付け補助部材で支持され,前記改修用下枠の前壁がビスによって既設下枠の前壁に固定されている改修引戸装置。

取消事由5-5(甲6発明2と本件発明4~6の相違点2-Cの認定の誤り)
前記(4)イ及び上記エのとおり,本件審決の甲6発明2の認定には誤りがあり,本件発明4~6と甲6真発明2とは「改修用下枠の室外寄りが,既設下枠の室外寄りで支持される」点で一致している。
したがって,本件発明4~6と甲6真発明2との相違点としては,以下の相違点2-C’が認定されるべきであって,本件審決における相違点2-Cの認定は誤りである。
[相違点2-C’]
改修用引戸枠の取付け構造に関し,本件発明4では,取付け補助部材が既設下枠の底壁の最も室内側の端部に連なる背後壁の立面にビスで固着して取り付けてあり,改修用下枠の室外寄りがスペーサを介して既設下枠の室外寄りに接して支持されるのに対し,甲6発明2は,取付け補助部材が既設下枠の底壁の最も室内側の端部に連なる背後壁の立面にビスで固着して取り付けてあるものではなく,改修用下枠の室外寄りが既
設下枠の室外寄りに接して支持されているものの,スペーサを介してはいない点。

取消事由5-6(相違点2-Cについての判断の誤り)
この点に関する本件審決の判断が誤りであることは,上記ウと同様である。

2
被告らの主張
(1)

取消事由1(無効理由1(明確性要件違反)の判断における本件明細書
の記載事項の誤解)に対し

本件発明は,構成要件として既設下枠の室外側案内レールを切断することを含むため,既設下枠の背後壁の上端と改修用下枠の上端を完全に同じ高さにすることはそもそも不可能である。他方,本件発明の作用効果は,本件明細書記載の実施形態からも明らかなように「完全に同じ高さ」であることまでは要しない。そこで,本件審決は,「ほぼ同じ高さ」とは「完全に同じであることは要しない程度」の意義であると説示したのである。
また,本件発明において,その高さに「ほぼ」という言葉が付されたからといって,それが直ちに不明確であるとはいえない。
本件明細書によれば,従来技術(【0015】,図15)においては,改修用下枠と改修用上枠との間の空間の高さ方向の幅が小さくなり,有効開口面積が減少するという問題があった(【0011】)ことから,本件発明は,これを解決するために,改修用下枠の下枠下地材を既設下枠の室内側,室外側の案内レール上に直接乗載する構成に代えて,既設下枠の室外側案内レールを切断撤去し,当該レールを切断してできた空間(スペース)内に,室外から室内に向けて上方に段差を成して傾斜した底壁を有する改修用下枠を収納して(沈み込ませて)取り付ける構成とし,これにより,従来の技術に比べて有効開口面積が減少することが
なく,広い開口面積を確保することが可能になった(【0018】)。しかし,上記空間を形成しても,実際に改修用下枠を上記空間内に収納して取り付けなければ本件発明の上記効果は得られない。本件発明の審査段階における拒絶理由の指摘によりこれを認識した被告らは,本件発明の効果を奏し得る構成要件を特定するために,構成要件「前記背後壁の上端と改修用下枠の上端がほぼ同じ高さであり」を書き加えた。これは,開口面積の減少は改修用下枠の上端が既設下枠(の背後壁)の上端よりも高くなることにより生じるため,その高さの関係を規定することでその作用効果を奏する構成を明確にするためである。
以上のとおり,「ほぼ同じ」の技術的意義は,既設下枠の室外側案内レールを切断撤去して,出来たスペース内に改修用下枠を収納することにより,従来の技術に対比して,広い開口面積が確保できるか否かで判断すればよい。

本件明細書に記載された各実施の形態が本件発明の構成を全て備えているか否かと発明の明確性要件の有無は直接関係がなく,また,そのことと,本件明細書に記載された全ての実施の形態が,本件発明の一つの構成である「背後壁の上端と改修用下枠の上端がほぼ同じ高さであ」る構成を備えるわけではないとの主張とも直接関係がない。


「上記背後壁の上端と改修用下枠の上端がほぼ同じ高さであり」の文言は,本件特許の審査段階における平成23年6月21日付け拒絶理由通知書で示された指摘に対し,拒絶理由を解消する目的で,補正前の各請求項に記載された発明の構成(以下「前提構成」という。)において,広い開口面積を確保する本件発明の課題に対応した構成のみに限定する趣旨で書き加えたものである。
ここで,本件明細書【0091】には,図6に示す実施形態が,図1及び2の実施形態と同様な作用効果を奏することが記載されている。ま
た,図10については,段落【0092】の記載から明らかなように,図6に示す実施形態において,既設下枠56の室内側案内レール115の立上り寸法が大きいものの一例として説明されている。そして,図1及び2の実施形態については,「本実施の形態によれば既設下枠56の室外側案内レール114を切断して撤去し,取付け補助部材106の上壁部109に改修用下枠69の室内側脚部分91と支持壁89を支持しているので,改修用下枠13と改修用上枠15との間の空間の高さ方向の幅が大きく,有効開口面積が減少することが少ない。しかも,取付け補助部材106を基準として改修用下枠69を取付けできるから,既設下枠56の形状,寸法に応じた形状,寸法の取付補助部材106を用いることで,同一の改修用下枠69を取付けできる。」と記載されており(【0060】),ここに記載された作用効果は,段落【0018】に記載された作用効果と格別変わらない。
したがって,本件明細書には,図10に示された実施形態も本件発明の課題を解決し,その作用効果を奏することが示されている。この点は,本件発明の特許請求の範囲における「ほぼ同じ高さ」を含む文言の補正の前後において異ならない。そうである以上,上記補正により本件明細書【0092】及び図10が実施形態を説明するものでなくなるということはあり得ない。

本件審決は,本件明細書に本件発明の課題(【0010】~【0012】)及びその効果(【0018】)が記載されており,これらの記載及び「ほぼ同じ高さ」を含む文言が書き加えられた趣旨から見て,「ほぼ同じ高さ」の技術的意義は,「改修用下枠と改修用上枠との間の空間の高さ方向の幅が大きく,有効開口面積が減少することがないようにすることである」と判断したものである。本件明細書に接した当業者も,本件発明の「背後壁の上端と改修用下枠の上端がほぼ同じ高さ」である
旨の特定事項について,積極的に背後壁の上端と改修用下枠の上端の高さの差を変えることを意図するものではなく,実質的に有効開口面積が減少しないよう,できるだけ既設下枠の背後壁の上端と改修用下枠の上端が同じ高さとなるようにすればよいことと理解するのは当然である。オ
本件発明の「背後壁の上端と改修用下枠の上端がほぼ同じ高さ」とする構成が本件特許発明の数量的な特定事項であるとの原告の主張は,合理的又は客観的な根拠に基づくものではなく,原告の独自の見解を述べたに過ぎないから失当である。

(2)

取消事由2(無効理由2(サポート要件違反)の判断における本件明細
書の記載事項の誤解)に対し

本件審決は,本件明細書の発明の詳細な説明において,当業者が,本件発明の課題とその解決手段その他本件発明を理解するために必要な技術的事項が記載されていることを具体的に指摘している。
サポート要件は,そもそも請求項に係る発明が発明の詳細な説明に記載した範囲を超えるか否か,具体的には,請求項に係る発明が発明の詳細な説明において,「発明の課題を解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲」を超えるか否かで判断すべきものである。本件発明については,本件明細書の発明の詳細な説明にはその課題とその解決手段その他本件発明を理解するために必要な技術的事項が記載されており,請求項記載の発明が発明の詳細な説明に記載した範囲を超えていないことは明らかである。


本件審決は,実施形態1において実施形態3の構成を想起するか否かを論じてはいないし,そのことが自明であると判断していない。本件審決が当業者にとって自明な事項であると指摘したのは,実施形態1及び3が,改修用下枠,取付け補助部材及び既設下枠の基本的な構造が共通し,既設引戸枠の形状,寸法に応じた形状,寸法の取付け補助部材を用いる
ことで,形状,寸法が異なる既設引戸枠に同一の改修用引戸枠を取付けできるという作用効果を奏する点でも共通しているから,例えば実施形態3に接した当業者が,実施形態3の上記構造も,実施形態1と同様に,本件発明の課題を解決できる手段であることが,当業者であれば自明なこととして認識し得ることによる。

既設下枠の形状,寸法に応じた形状,寸法の取付け補助部材を用いることで形状,寸法が異なる既設引戸枠に同一の改修用引戸枠を取付けできるとの作用効果が本件発明の実施形態1及び3が共通に奏する作用効果であることは,本件明細書の記載(例えば【0060】,【0091】)から明らかである。
したがって,実施形態3の「室外側下枠シ一ル材300が既設下枠56の前壁102に圧接している」という構成に代えて,実施形態1の「改修用下枠の前壁をビスによって既設下枠の前壁に固定」する構成を採用しては,本件明細書【0091】に記載された実施形態3の上記効果を奏することができないとし,これを本件審決の判断の誤りとする原告の主張は,その前提において誤りがある。


本件明細書には,本件発明1及び4の構成の全てがその発明の詳細な説明に記載されている。しかも,当業者であれば,実施形態1及び3の各構造がいずれも本件発明1及び4の発明の課題を解決し得る手段であると認識し得る。本件審決は,このことを指して「実施形態1に実施形態3の構成を適用した場合や,逆に実施形態3に実施形態1を適用した場合における,改修用下枠,取付け補助部材,スペーサ及び既設下枠等の各構成部材の位置関係や取付態様も上記本件特許明細書及び図面の記載に照らし明らかである」と述べたものである。
したがって,本件明細書には本件発明1及び4の構成の全てを備えた実施形態は存在しないなどとし,本件発明1及び4は本件明細書の発明
の詳細な説明に記載も示唆もされていないとする原告の主張は失当である。
(3)

取消事由3(無効理由3(実施可能要件違反)の判断における審理不尽,
理由不備及び判断の誤り)に対し
この点に関する原告の主張は,「ほぼ同じ高さ」を含む文言についての原告の独自の解釈に基づくものであり失当である。
また,本件発明の効果は構成1及び2により達成可能であるところ,構成1及び2を含めた本件発明について,本件明細書にはその実施形態が,当業者が容易に実施可能な程度に記載されている。
したがって,本件審決に誤りはない。
(4)

取消事由4(無効理由4(進歩性欠如)の判断における甲号証発明の認
定の誤り,甲号証発明と本件発明との一致点,相違点の認定の誤り,及び相違点についての判断の誤り)に対し

甲5図面等記載の発明を公然知られた発明又は公然実施された発明であるとした上で本件発明との相違点を抽出し,他の刊行物を用いて当該相違点の検討を行った本件審決の認定は誤りである。
もっとも,当該認定の誤りは本件審決の結論に影響しない。


取消事由4-1(甲5発明1及び2の認定の誤り)に対し
(ア)
a
甲5発明1の認定について
「改修用サッシの改修用下枠の浴室側寄りが,断面逆L字状の部材tを介して既設下枠の浴室側寄りに支持される」との原告主張に係る構成は,本件審決が甲5の2の図面に示されたとおりに具体的に認定した事項を,恣意的に一般化した表現に変えたものであり,失当である。

b
本件発明において,改修用引戸枠を,取付け補助部材を基準として取り付けできるのは,発明の一連の構成によるものであるところ,本
件審決は,これらの構成に基づき,「取付け補助部材を既設引戸枠に対する改修用引戸枠の位置を決めるよりどころとして,改修用引戸枠を取り付けることを意味する」と認定したものである。
他方,甲5の2に示された改修用引戸枠では,その下枠の脱衣室
寄りを既設下枠の横向片の部分m6で支持しているのであるから,その逆L字状の部材sを取付け補助部材と見たところで,逆L字状の部材sは,下枠の脱衣室寄りを支持しているわけではなく,改修用引戸枠の下枠の前壁を,ビスによって既設引戸枠の下枠の前壁に固定するものでもない。
このため,本件審決は,甲5発明1の「改修用引戸枠」は,「既
設下枠の横向片の部分m6」を「基準として取り付ける」ものであって,「逆L字状の部材s」を「基準として取り付ける」ものとはいえないと判断したのであって,本件審決の認定に誤りはない。
(イ)

甲5発明2の認定について
この点に関する原告の主張は,上記(ア)と同様に失当であり,本件審
決には誤りはない。

取消事由4-2(甲6発明1及び2の認定の誤り)に対し
(ア)
a
甲6発明1の認定について
原告は,甲6の図1によれば,改装サッシの新窓枠5の室外寄りには,新窓枠5の下面から延びて電食防止テープ12を介して旧窓枠1の室外寄りの上面に支持される脚状の部分が設けられており,新窓枠5の下枠の室外寄りが既存のスチール製下枠の室外寄りに接して支持されていると認めることができる旨指摘し,本件審決による甲6発明1の認定は「新窓枠5の下枠の室外寄りが既存のスチール製下枠の室外寄りに接して支持され」との構成を欠いている主張する。
しかし,電食防止テープ12は,原告も認めるようにスペーサで

はない。しかも,「電食防止テープ12を介して」を除外して単に「新窓枠5の下枠の室外寄りが既存のスチール製下枠の室外寄りに接して支持されている」と認定するのは,引用文献に記載された技術内容を抽象化,一般化ないし上位概念化するものであり,許されない。b
原告は,本件審決による甲6発明1の認定につき,「新窓枠をアンカー6を基準として取付ける」との構成を欠いている点でも誤りがあるとする。
しかし,甲6発明1は,新窓枠を旧窓枠に取り付けるとき,新窓
枠の見込み寸法が旧窓枠のそれよりも小なる場合の取付け構造に関し,アンカー6を付加することにより見込み寸法の異なる旧窓枠に順応して取付け可能なる新窓枠の取付け構造に関するものであり,アンカー6は,新窓枠の下枠の見込み寸法の不足を補う部材である。そのため,甲6発明1のアンカー6は,新窓枠を旧窓枠に取り付ける際に,あらかじめ新窓枠5の下枠の内側面(室内寄り)に形成されたC形溝5b内に挿入されており,かつ,その状態で,既存のスチール製下枠の室内側立ち上り壁上端から屈曲形成した逆U字形部分の上表面にビス8止めされる。
これに対し,本件発明の「取付け補助部材」が改修用下枠とあら
かじめ一体に構成されたものでないことは,本件特明細書の記載から明白である。本件発明において改修用引戸枠を取付け補助部材を基準として取付けできるのは,本件発明の一連の構成によるものである。このため,甲6発明1は,そのような構成を備えていないことになる。したがって,本件審決が,「アンカー6のフランジ6bを既存の
スチール製下枠にビス止めする」ものであるから,「新窓枠5」を「アンカー6」を基準として取り付けるものとはいえないと認定した点に誤りはない。

仮に,アンカー6が新窓枠の位置を決めるよりどころとなってい
ると見たとしても,アンカー6は,単に新窓枠の下枠の見込み寸法不足を補っているに過ぎず,本件発明の各構成に基づいて行う「改修用引戸枠を取付け補助部材を基準として取付ける」こととは関係がない。(イ)

甲6発明2の認定について
この点に関する原告の主張は,上記(ア)と同様に失当であり,本件審
決には誤りはない。

取消事由4-3(本件発明1~3と甲5発明1との一致点の認定の誤り)に対し
原告は,本件審決による甲5発明1の認定に誤りがあるとの主張を前提として,本件発明1~3と甲5発明1の一致点の認定に誤りがあるとするが,前記イのとおり,その前提とする原告の主張こそ誤りである。

取消事由4-4(甲5発明1と本件発明1~3との相違点1-5の認定の誤り)に対し
原告は,本件審決による甲5発明1の認定に誤りがあるとの主張を前提として,本件発明1~3と甲5真発明1の相違点として相違点1-5’が認定されるべき旨主張するが,前記イのとおり,その前提とする原告の主張こそ誤りである。


取消事由4-5(相違点1-3~1-5についての判断の誤り)に対し(ア)

上記イのとおり,原告主張に係る甲5真発明1は認められないから,
これを前提とする原告の主張は,そもそも失当である。
(イ)

原告は,改修用下枠を室内寄りと室外寄りにおいて支持した改修用
サッシにおいて,室外寄りを改修用下枠の高さ位置を調節しながら支持するべくスペーサを介して支持することは周知の技術であり,改修用下枠の室外寄りを取付け金具で支持するか,スペーサで支持するかは当業者にとって適宜選択できる設計事項であるとするが,その根拠
とする文献(甲32,50)には,これを裏付ける開示はない。
(ウ)

原告は,仮に本件審決の相違点の認定を前提としても,「改修用下
枠の室外寄りを既設下枠の室外寄りに接して支持する」構成は甲6文献に開示された公知の技術であるするが,前記のとおり,甲6文献の新窓枠5の脚状の部分が接しているのは電食防止テープ12であって,スペーサではなく,「電食防止テープ12を介して」を除外して単に「新窓枠5の下枠の室外寄りが既存のスチール製下枠の室外寄りに接して支持されている」と認定することは許されない。
(エ)

原告は,甲6(真)発明1の改修用下枠自体の構成や改修用下枠の
浴室側(室外側)の支持構造を甲5(真)発明1に適用することは,技術分野の同一性から考えれば十分な動機付けがあるとするが,発明は課題解決のために有機的に結合された一連の構成要素により成立するから,一の発明を構成する個々の構成要素のみを取り出してそれを他の発明に適用することについては,たとえ技術分野が同一であるとしても,それだけでは動機付けが与えられるとはいえない。
甲5発明1では,階段状をなし浴室側に向かって下り勾配を形成した既設下枠底面に対して,平坦な底面を有する改修用下枠を取り付けている。これを「側面形状が階段状を呈して室外に向かって下り勾配を形成」した「新窓枠の下枠5」に代えることは,甲5発明1の課題や作用効果の説明が不明であることもあって,動機付けが認められない。しかも,甲5発明1では,平坦な底面を有する改修用下枠を取り付けるために,逆L字状の部材tが用いられている。
他方,甲6発明1は,旧窓枠に新窓枠を取り付けるとき,新窓枠の見込み寸法が旧窓枠のそれより小なる場合の取付け構造に関し,アンカー(片)を付加することにより見込み寸法の異なる旧窓枠に順応して取付け可能にするものである。このため,アンカーや新窓枠のC形溝は,甲
6発明1の課題解決のために必須の構成であるから,新窓枠から,新窓枠の階段状の構成や下枠5の外側フランジ5aを既存の「下枠1の垂下フランジ1bにビス止めする構成」のみを取り出すことはできない。本件審決は,以上の理由から,甲6発明1の「側面形状が階段状を呈して室外に向かって下り勾配を形成」した「新窓枠の下枠5」の形状,及び「下枠5の外側フランジ5aを」既存の「下枠1の垂下フランジ1bにビス止め」する構成のみを取り出し,甲5発明1に適用する動機付けはないと判断したのであり,その判断に誤りはない。
(オ)

原告は,本件審決につき,相違点1-5に係る「改修用引戸枠を取
付け補助部材を基準として取付ける」構成を備える改修用下枠の室外寄りの支持として,「改修用下枠の室外寄りをスペーサを介して既設下枠の室外寄りに接して支持する」構成を採用することは,単に周知技術を適用したにすぎないにもかかわらず,「改修用引戸枠を取付け補助部材を基準として取付ける」構成と関連性があるかのごとく組み合わせて相違点1-5としてまとめ,その容易想到性を否定しているなどとする。
しかし,甲5図面等及び甲6文献には,本件発明1~3における改修用引戸枠を取付け補助部材を基準として既設下枠に取付けるための構成は開示されておらず,また,その構成は周知でもない。
加えて,上記イ(ア)bのとおり,原告の主張はその前提において誤りであり,失当である。

取消事由4-6(本件発明4~6と甲5発明2との一致点の認定の誤り)に対し
この点に関する原告の主張は,前記イ(ア)aと同様の理由から,誤りである。甲5真発明2(甲5発明2も同様である。)の「断面逆L字状の部材t」はスペーサではなく,また,本件発明4~6と甲5真発明2と
の対比に当たり,甲5真発明2の「断面逆L字状の部材t」を除外して,その構成を「改修用下枠の他方寄りが既設下枠の他方寄りに支持される」と認定することは,引用文献に記載された技術内容を抽象化,一般化ないし上位概念化するものであり,許されない。
本件発明4~6と甲5発明2との一致点についての本件審決の認定に誤りはない。

取消事由4-7(本件発明4~6と甲5発明2との相違点1-Eの認定の誤り)に対し
この点に関する原告の主張は,前記イ(ア)と同様の理由により誤りである。


取消事由4-8(相違点1-C~1-Eについての判断の誤り)に対しこの点に関する原告の主張は,前記イ(ア)及びウ(ア)と同様の理由により誤りである。

(5)

取消事由5(無効理由5(進歩性欠如)の判断における甲号証発明の認
定の誤り,甲号証発明と本件発明との一致点,相違点の認定の誤り,及び相違点についての判断の誤りに対し

取消事由5-1(甲6発明1の認定の誤り,及び本件発明1~3と甲6発明1との一致点の認定の誤り)に対し
前記(4)ウ(ア)のとおり,甲6発明1は,「改修用下枠の室外寄りを既設下枠の室外寄りで支持する」という構成及び「改修用引戸枠を取付け補助部材を基準として取付ける」という構成は備えていない。
したがって,本件審決の甲6発明1の認定には誤りはない。


取消事由5-2(本件発明1~3と甲6発明1との相違点2-4の認定の誤り)に対し
前記(4)ウ(ア)のとおり,本件審決における甲6発明1の認定に誤りはないから,甲6発明1と本件発明1の相違点2-4の認定にも誤りはない。

取消事由5-3(相違点2-3及び2-4についての判断の誤り)に対し
(ア)

前記(4)カ(エ)のとおり,この点に関する原告の主張は誤りである。
(イ)

甲23文献の記載(【0035】,【0046】)によれば,逆L
字状の支持部材24(取付け補助部材に対応)は,特定の長さで支持部材を改装サッシ下枠と一体成形すると,縦板部に相当する部分が長すぎて取り付けられないような場合があることを考慮して,改装下枠2と別体に構成されたものであり,しかも既設下枠12に対して改装下枠2を取り付ける前に床材Rfにネジ止めしておくものである。これに対し,甲6発明1は,旧窓枠に新窓枠を取り付けるとき,新窓枠の見込寸法が旧窓枠のそれより小なる場合の取付け構造に関し,アンカーを付加することにより見込寸法の異なる旧窓枠に順応して取付け可能にするものであるから,アンカーや新窓枠のC形溝は,甲6発明1の課題解決のために必須の構成(新窓枠と一体不可分の構成)である。すなわち,甲23文献の「既設下枠12に対して改装下枠2を取り付ける前に床材Rfにネジ止めしておく逆L字状の支持部材24」と,「予め新窓枠の下枠と一体となって見込み寸法を充足した状態で既存のスチール製下枠の逆U字形部分の上表面にビス8止めされる甲6文献のアンカー」とは,それぞれの発明の課題だけではなくその構成も全く相違している。
したがって,甲6発明1のアンカーを既設下枠に取り付けるに際して,甲23技術(逆L字状の支持部材24を予め床材Rfにネジ止めしておき,次にこれに対して改装下枠に取り付ける技術)を適用し,既設下枠の底壁の最も室内側の端部に連なる背後壁の立面にビスで固着する動機付けはない。この点に関する本件審決の判断に誤りはない。
(ウ)

原告は,相違点2-4に係る「改修用引戸枠を取付け補助部材を基
準として取付ける」構成を備える改修用下枠の室外寄りの支持として,「改修用下枠の室外寄りをスペーサを介して既設下枠の室外寄りに接して支持する」構成を採用することは,単なる周知技術を適用しただけにすぎないなどと主張する。
しかし,甲6文献には「改修用引戸枠を取付け補助部材を基準として取付ける構成を備える改修用下枠」は開示されていないのであるから,原告の主張は前提において誤りがある。
また,原告が,改修用下枠を室内寄りと室外寄りにおいて支持した改修サッシにおいて周知技術であるとする「改修用下枠の室内(後)側を既設下枠に対してスペーサ等を介して高い位置で支持したうえで,室外寄りを改修用下枠の高さ位置調節しながら支持するべくスペーサを介して支持する」ことは,前記(4)カ(イ)のとおり,周知技術とは言えない。(エ)

以上より,甲6真発明1と本件発明1~3との相違点について論じ
ている点は措くとしても,原告の主張は失当である。この点に関する本件審決の判断に誤りはない。

取消事由5-4(甲6発明2の認定の誤り,及び,本件発明4~6と甲6発明2との一致点の認定の誤り)に対し
前記(4)ウ(イ)のとおり,本件審決による甲6発明2の認定に誤りはなく,本件発明4~6と甲6発明2との一致点の認定にも誤りはない。


取消事由5-5(甲6発明2と本件発明4~6の相違点2-Cの認定の誤り)に対し
前記(4)ウ(イ)のとおり,本件審決による甲6発明2の認定に誤りはなく,したがって,相違点2-Cの認定にも誤りはない。


取消事由5-6(相違点2-Cについての判断の誤り)に対し
(ア)

「甲23技術に係る逆L字状の支持部材による改装サッシ下枠の支
持構造は,甲6発明2のアンカー6による取付け構造に代えて直ちに
適用できるものではない。」との本件審決の判断に誤りがないことは,上記ウと同様である。
(イ)

原告は,甲6真発明2は「改修用下枠の室外寄りを既設下枠の室外
寄りに接して支持する」構成を備えているのであって,本件発明4~6と甲6真発明2の相違点は,スペーサを介しているか否かの点に過ぎないなどと主張する。
しかし,前記(4)ウ(イ)のとおり,甲6文献の新窓枠5の脚状の部分が接しているのは電食防止テープ12であってスペーサではないし,甲6発明2を,「電食防止テープ12を介して」を除外して,単に「新窓枠5の下枠の室外寄りが既存のスチール製下枠の室外寄りに接して支持されている」構造を備えていると認定するのは誤りである。
第4
1
当裁判所の判断
本件発明
本件発明に係る特許請求の範囲請求項の記載は,前記(第2の2)のとおりである。

2
本件明細書の記載等
本件明細書には,以下のような記載及び図が認められる(甲1)。(1)

技術分野
本発明は,建物の壁に窓として設けられている既設引戸を改修用引戸に
改修する引戸装置の改修方法,及び,その改修した改修引戸装置に関する。(【0001】)
(2)

背景技術
経年変化によって老朽化した集合住宅などの建物は,リフォームとも呼
ばれる改修工事の一環として,その建物に設けられる窓もまた,改修される。この窓は,集合住宅の場合,一棟に設けられる設置箇所数が多いため,改修作業の効率の向上が望まれている。(【0002】)

建物の開口部2には,この開口部2の開口3に下方から臨む下縁部4に固定される既設下枠5と,開口部2の前記開口3に左右両側から臨む両側縁部6にそれぞれ固定される一対の既設竪枠7と,開口部2の前記開口3に情報から臨む上縁部8に固定される既設上枠9とを有する既設引戸枠10が設けられ,この既設引戸枠10に改修用引戸装置1が装着される。(【0003】)
改修用引戸装置1は,引戸障子を図15の紙面に垂直な間口方向に移動自在に支持する複数の案内レール11,12を有し,既設下枠5に固定される改修用下枠13と,各既設竪枠7に固定される一対の改修用竪枠14と,既設上枠9に固定される改修用上枠15と,この改修用上枠15に固定され,改修用上枠15と既設上枠9との間を室内16側から覆う上枠カバー材17と,各改修用竪枠14と各既設竪枠7との間を室内16側からそれぞれ覆う一対の竪枠カバー材18と,改修用下枠13と既設下枠5との間を室内16側から覆う下枠カバー材19とを含む。(【0004】)
前記改修用下枠13は,既設下枠5の2本の案内レール21,22上に直接乗載されて,室外23側から螺着されたビス24によって固定される下枠下地材25と,前記2本の案内レール11,12を有し,下枠下地材25に室外23側から螺着されたビス26によって固定される下枠本体27と,下枠本体27に2本のビス28,29によって固定される断面が略W字状の下枠補助材30とを含む。(【0005】)
前記改修用竪枠14は,室内16側から螺着されたビス34によって既設竪枠7に固定される竪枠下地材35と,この竪枠下地材35に室内16側から螺着されたビス36によって固定される竪枠補助材37と,竪枠補助材37に嵌着される竪枠本体39とを含む。(【0006】)
前記改修用上枠15は,室内16側から螺着されたビス40によって既設上枠9に固定される上枠下地材41と,室内16側から螺着されたビス4
2によって前記上枠下地材41に固定される上枠補助材43と,上枠補助材43に嵌着される上枠本体44とを含む。(【0007】)
上記の改修用下枠13,改修用竪枠14および改修用上枠15が,既設下枠5,既設竪枠7および既設上枠9にそれぞれ取付けられた後,下枠カバー材19が改修用下枠13の下枠補助材30にビス47によって固定され,竪枠カバー材18が改修用竪枠14の竪枠補助材37にビス48によって固定され,上枠カバー材17が改修用上枠15の上枠補助材43にビス49によって固定される。(【0008】)
これらの下枠カバー材17と下縁部4と間,竪枠カバー材18と側縁部6との間,および上枠カバー材17と上縁部8との間には,室内側シール材45と室外側シール材46とが打設され,室外23から室内16への風雨の浸入が防止されている。(【0009】)

(3)

発明が解決しようとする課題

このような従来の技術では,改修用下枠13が既設下枠5に載置された状態で既設下枠5に固定されるので,改修用下枠13と改修用上枠15との間の空間の高さ方向の幅H1が小さくなり,有効開口面積が減少してしまうという問題がある。(【0010】)
また,改修用下枠13の下枠下地材30(裁判所注

正しくは「25」

と認められる。)は既設下枠5の案内レール21,22上に直接乗載され,その案内レール21,22を基準として固定されているから前述の改修用下枠13と改修用上枠15との間の空間の高さ方向の幅H1がより小さくなり,有効開口面積が減少してしまうという問題がある。(【0011】)本発明の目的は,広い開口面積を確保することができる引戸装置の改修方法及び改修引戸装置を提供することである。(【0012】)
(4)

発明の効果
本発明によれば,既設下枠の室外側案内レールを切断して撤去したので,
改修用下枠と改修用上枠との間の空間の高さ方向の幅が大きく,有効開口面積が減少することがなく,広い開口面積が確保できる。
また,既設下枠に室内寄りに取付補助部材を設けるとともに,この取付け補助部材を既設下枠の底壁の最も室内側の端部に連なる背後壁の立面にビスで固着して取付け,取付け補助部材を基準として改修用引戸枠を既設引戸枠に取付けるので,既設引戸枠の形状,寸法に応じた形状,寸法の取付け補助部材を用いることで,形状,寸法が異なる既設引戸枠に同一の改修用引戸枠を取付けできる。(【0018】)
(5)

発明を実施するための最良の形態
図1は本発明の実施の一形態の改修用引戸装置50が設置された窓51の鉛直断面図であり,図2は図1の切断面線Ⅱ-Ⅱから見た窓51の水平断面図である。本実施の形態の改修用引戸装置50は,建物52の開口部53の開口54に下方から臨む下縁部55に,略水平…に固定され
る既設下枠56と,開口部53の前記開口54に左右両側から臨む両側縁部57,58に略鉛直…にそれぞれ固定される一対の既設竪枠59,60と,開口部53の前記開口54に上方から臨む上縁部61に略水平に固定される既設上枠62とを有する既設引戸枠63内に嵌まり込んだ状態で装着される。(【0019】)
この改修用引戸装置50は,引戸障子64,65を…間口方向に移動自在に支持する複数の案内レール66,67を有し,既設下枠56に室外73側から当接して支持される改修用下枠69と,各既設竪枠59,60に室外73側から当接して支持される一対の改修用竪枠70,71と,既設上枠62に室外73側から当接して支持される改修用上枠72と,各既設竪枠59,60に室内68側から当接して支持され,各改修用竪枠70,71にそれぞれ連結される一対の竪枠用保持部材74,75と,既設上枠62に室内68側から当接して支持され,改修用上枠72に連結される上枠用保持部材76とを含む。(【0020】)(以下次頁)

各竪枠用保持部材74,75と各既設竪枠59,60との間および各竪枠用保持部材74,75と各改修用竪枠70,71との間には,竪枠用シール材77が介在される。また改修用上枠72と上枠用保持部材76との間および既設上枠62と上枠用保持部材76との間には,上枠用シール材78が介在される。さらに改修用下枠69と既設下枠56との間には,下枠用シール材79が介在される。(【0022】)
改修用下枠69,各改修用竪枠70,71,改修用上枠72…は,アルミニウム合金の押出し形材から成る。上記の既設下枠56,各既設竪
枠59,60,および既設上枠62もまた,アルミニウム合金の押出し形材から成る。(【0023】)

この改修用下枠69は,室外73に臨んで略水平な間口方向…に延びる前壁80と,前壁80の上端部に室内68側へ屈曲して連なり,室外73から室内68に向かって上方へ段差を成して傾斜する底壁81と,底壁81の最も室内68寄りの端部付近から下方へ突出する支持壁89と,底壁81から上方へ突出する2本の案内レール66,67と…を有する。(【0024】)
底壁81は,室外73から室内68に向かって第1~3底壁部85,86,87を有する。第1底壁部85は,前記網戸レール83と室外側案内レール66とにわたって形成され,室外73から室内68に向かって上方に傾斜する水切り勾配i1を有する。第2底壁部86は,室外側案内レール66と室内側案内レール67とにわたって形成され,断面が略L字状の段差部分90と,室内側案内レール67の直下に形成される断面が逆T字状の室内側脚部分91と,段差部分90の室外側案内レール66寄りの端部付近から下方に突出する室外側脚部分92とを有する。第3底壁部87は,室内側脚部分91と室内側案内レール67との交差部から室内68側へ水平に突出し,前記間口方向に延びる。この第3底壁部87の室内68側の端部付近の下面には,前記支持壁89が一体的に形成される。(【0025】)
前記既設下枠56は,下縁部55の室外73に臨む壁面100に室外73側から当接して支持される断面がL字状の室外側脚部101と,室外側脚部101の前記壁面100から最も離れた遊端部に直角に連なる前壁102と,前壁102の上端部から室内68に向かって上方へ傾斜する排水勾配i2を有する底壁103と,底壁103の最も室内68側の端部に連なり,室内側案内レール67と同一高さまで立ち上がる背後
壁104と,背後壁104と前記底壁103との交差部から下方へ突出する断面がL字状の室内側脚部105と,室外側案内レール114と,室内側案内レール115とを有する。(【0027】)
前記室外側案内レール114は,改修用下枠69を装着するにあたって,改修用下枠69の取付けスペースを確保するため,図1…の仮想線で示されるように,付け根付近から切断されて撤去されている。(【0028】)
このような既設下枠56と改修用下枠69との間には,取付け補助部材106が介在される。この取付け補助部材106は,室外側壁部107と,室内側壁部108と,室外側壁部107および室内側壁部108の各上端部に連なる上壁部109とを有し,断面逆U字状の長尺材から成る。この取付け補助部材106は,既設下枠56に,室内側案内レール115に室外73側から室外側壁部107を当接させ,かつ背後壁104に室外73側から室内側壁部108を当接させた状態で,前記上壁部109を上方にして装着される。前記室外側壁部107は,室内側案内レール115にビス110によって固定される。(【0029】)取付け補助部材106の上壁部109には,装着された改修用下枠69の室内側脚部分91と支持壁89とが支持され,第3底壁部87がビス111によって固定される。また,前壁80は,ビス112によって既設下枠56の前壁102に固定される。(【0030】)
このようにして改修用下枠69が既設下枠56に取付けられた状態では,第3底壁部86の最も室内68側の端部112が既設下枠56の背後壁104に室外73側から当接し,前記前壁80が既設下枠56の前壁102に当接して,改修用下枠69が既設下枠56に対して図1の左右方向である見込み方向に位置決めされ,位置決め作業に手間がかからず,容易に取付けることができる。(【0031】)

また,前壁80を室外73側から室内68側に向かって螺着されたビス112によって既設下枠56の前壁102に固定するので,取付け作業中に改修用下枠69が既設下枠56に対して室外73側にずれてしまうことが防がれ,単にビス112を締付ければ,改修用下枠69を既設下枠56に対して位置決めされ,取付け作業の効率が向上される。(【0032】)

本実施の形態によれば,改修用下枠69は既設下枠56に室外73側から当接して支持され,各改修用竪枠70,71は各既設竪枠59,60に室外73側から当接して支持され,改修用上枠72は既設上枠62に室外73側から当接して支持される。また,各竪枠用保持部材74,75は各既設竪枠59,60に室内68側から当接して支持されて,前記各改修用竪枠70,71にそれぞれ連結され,こうして各改修用竪枠70,71が前記竪枠用保持部材74,75と協働して既設竪枠59,60に取付けられる。さらに,上枠用保持部材76は既設上枠62に室内68側から当接して支持されて,前記改修用上枠72に連結され,こうして改修用上枠72が前記上枠保持部材76と協働して既設上枠62に取付けられる。(【0056】)
このように改修用下枠69,各改修用竪枠70,71及び改修用上枠72は,竪枠用保持部材74,75および上枠用保持部材76によって既設引戸枠63に取付けられるので,前記従来の技術のように,下枠補助材,竪枠補助材および上枠補助材を介して下枠下地材,竪枠下地材および上枠下地材にそれぞれ取付けられる構成に比べて,部品点数が少なく,取付作業の作業工程数が削減され,改修用下枠69,各改修用竪枠70,71,および改修用上枠72を既設引戸枠63に容易に設けることが可能となる。(【0057】)
また,前記従来の技術のように,改修用下枠と下枠下地材との間,各
改修用竪枠と各竪枠下地材との間,および改修用上枠と上枠下地材との間に,下枠補助材,竪枠補助材および上枠補助材が介在されないので,改修用上枠72と改修用下枠69との間の間隔,すなわち高さ方向の幅が大きく減少せず,また各改修用竪枠70,71間の水平方向の間隔,すなわち間口方向の幅が大きく減少せず,広い有効開口面積を確保することができる。(【0058】)
また本実施の形態によれば,前記各竪枠用保持部材74,75と各既設竪枠59,60との間および各竪枠用保持部材74,75と各改修用竪枠70,71との間には,竪枠用シール材77が見込み方向…に介在され,改修用上枠72と既設上枠62との間には,上枠用シール材78が見込み方向に介在され,改修用下枠69と既設下枠56との間には,下枠用シール材79が見込み方向に介在されるので,有効開口面積を高さ方向および間口方向のいずれにも減少させずに,気密性および水密性を向上し,雨水および風の室外73から室内68への浸入を確実に防ぐことができる。(【0059】)
さらに本実施の形態によれば,前記改修用下枠69には水抜き孔84が形成されるので,改修用下枠69と既設下枠56との間の空間S1に外部から浸入した水,および空間S1内の結露によって生じた結露水などを室外73に排出して,室内68への水の浸入および漏洩を確実に遮断することができる。
また,本実施の形態によれば既設下枠56の室外側案内レール114を切断して撤去し,取付け補助部材106の上壁部109に改修用下枠69の室内側脚部分91と支持壁89を支持しているので,改修用下枠13と改修用上枠15との間の空間の高さ方向の幅が大きく,有効開口面積が減少することが少ない。
しかも,取付け補助部材106を基準として改修用下枠69を取付け
できるから,既設下枠56の形状,寸法に応じた形状,寸法の取付補助部材106を用いることで,同一の改修用下枠69を取付けできる。なお,この効果のみを達成するのであれば,改修用上枠72,各改修用竪枠70,71は図15,図16に示すように取付けても良い。(【0060】)

図6は本発明の実施の他の形態の改修用引戸装置50bが設置された窓51の鉛直断面図で…ある。…本実施の形態の改修用引戸装置50bは,基本的には前述の図1,図2に示す実施形態の改修用引戸装置50と同様に構成され,建物52の開口部53の開口54に下方から臨む下縁部55に,略水平に固定される既設下枠56と,開口部53の前記開口54に左右両側から臨む両側縁部57,58に略鉛直にそれぞれ固定される一対の既設竪枠59,60と,開口部53の前記開口54に上方から臨む上縁部61に略水平に固定される既設上枠62とを有する既設引戸枠63内に嵌まり込んだ状態で装着される改修用引戸装置50bであって,…引戸障子を略水平な方向に移動自在に支持する複数の案内レール66,67を有し,既設下枠56に室内68側から支持される改修用下枠69と,各既設竪枠59,60に室内68側から支持される一対の改修用竪枠70,71と,既設上枠62に室内68側から支持され,前記引戸障子を略水平な方向に移動自在に支持する室外側リブ123,室内側リブ124を有する改修用上枠72より成る改修用引戸枠250及び,各既設竪枠59,60に室外73側から支持され,各改修用竪枠70,71にそれぞれ連結される一対の竪枠用保持部材74,75と,既設上枠62に室外73側から支持され,改修用上枠72に連結される上枠用保持部材76と,既設下枠56に取付けた取付け補助部材106とを含む。(【0067】)
この実施の形態の既設下枠56,改修用下枠69,取付け補助部材1
06は…図1,図2に示す実施の形態の既設下枠56,改修用下枠69,取付け補助部材106とほぼ同様で,既設下枠56の背後壁104の上端部に室内68側に向かう横向片104aを有し,この横向片104aと改修用下枠69の支持壁89の上端が同一高さであること,改修用下枠69の室外73側部分に乾式の室外側下枠シール材300が室内68側に向けて装着され,この室外側下枠シール材300が既設下枠56の前壁102に圧接していることが大きく相違する。(【0069】)具体的には,既設下枠56の室外側案内レール114を図6の仮想線で示すように切断して撤去されている。この室外側案内レール114は全てを切断して撤去しても良いし,若干残して撤去しても良い。
取付け補助部材106は,その室外側壁部107が室内側案内レール115にビス110で固着して取付けられる。
改修用下枠69の支持壁89,室内側脚部分91が取付け補助部材106の上壁部109に支持され,底壁81の室外寄りがスペーサ301を介して既設下枠56の底壁103の室外寄りに支持され,ビス112で取付け補助部材106に固定される。(【0070】)(以下次頁)
前記既設上枠62と改修用上枠72と上枠用保持部材76は図1と図2に示す既設上枠62,改修用上枠72,上枠用保持部材76とほぼ同様で,改修用上枠72の室外側部に乾式の室外側上枠シール材302が装着してあること,上枠用保持部材76がカバー303を備えていることが大きく相違する。(【0071】)
具体的には,改修用上枠72の前壁120における底壁122より上方に突出した部分127には室内側に向かうシール材取付部304が設けてあり,このシール材取付部304に乾式の室外側上枠シール材302が装着してある。
この室外側上枠シール材302は室外側ヒレ302aと室内側ヒレ302bを有する。好ましくは断面上向きコ字状で,室外側ヒレ302a
と室内側ヒレ302bとの間に上向き凹状の排水溝302cを有する。前記室外側ヒレ302aが建物52の開口部53の上縁部61における既設シール材305よりも室外寄りに接して1次タイトの役目を果たす。
前記室内側ヒレ302bが既設上枠62の室外側部,例えば室外側フランジ126に圧接して2次タイトの役目をする。(【0072】)前記既設竪枠59,60と改修用竪枠70,71と竪枠用保持部材74,75は,前述の図1,図2に示す既設竪枠59,60,改修用竪枠70,71,竪枠用保持部材74,75とほぼ同様で,改修用竪枠70,71の室外側部に乾式の室外側竪枠シール材310とがた防止部材311が装着してあること,竪枠用保持部材74,75がカバー312をスナップ式に取付けてあることが大きく相違する。
具体的には,一方の改修用竪枠70の前壁140のウエブ142よりも既設竪枠59側に突出した部分に室内側に向かうシール材装着部313が一体的に設けてある。このシール材装着部313に室外側竪枠シール材310が側方に向けて装着してある。
この室外側竪枠シール材310は室外側ヒレ310aと室内側ヒレ310bを有する。好ましくは断面横向きコ字状で,その室外側ヒレ310aと室内側ヒレ310bとの間に横向き凹状の排水溝310cを有する。
前記室外側ヒレ310aが建物52の開口部53の一方の縦縁部57における既設シール材314よりも室外寄りに接して1次タイトの役目を果たす。
前記室内側ヒレ310bが一方の既設竪枠59の室外側部,例えば室外側フランジ146に圧接して2次タイトの役目をする。(【0075】)

この実施の形態によれば,図1と図2と同様な作用効果を奏すると共に,次のような作用効果を奏する。
(1)

既設下枠56に取付け補助部材106を取付け,改修用下枠69

の室内側脚部分91,支持壁89(つまり,改修用下枠69の室内側部分)を取付け補助部材106に載置し,その取付け補助部材106にビス112で固着して取りと付けたことをによって(裁判所注

原文マ

マ),その取付用補助部材106の高さ寸法を変えることで,異なる形状の既設下枠56にも同一形状の改修用下枠56(裁判所注

正しくは

「69」と認められる。)を,その支持壁89と背後壁104を同一高さに取付けることが可能である。(【0091】)
(2)

また,前述の(1)と室外側下枠シール材300が既設下枠56の前
壁102に圧接していることによって,室内側案内レール115の立上り寸法が大きな既設下枠56にも同一形状の改修用下枠69を取付けできる。
例えば,図10に示すように取付け補助部材106の高さ寸法を大きくして室内側壁部108を底壁103に当接し,かつ室内側案内レール115にビス110で取付ける。
室内側下枠シール材300を前壁102に当接する。
この場合には,支持壁89が背後壁104より若干上方に突出する。(【0092】)
(3)

また,前述の(1),(2)によって図11と図12に示すように,既設
下枠56の背後壁104の上端部に室外側に突出部104bを有し,既設上枠62の室内側フランジ306の内方部分306bが室外側に位置ずれしている場合でも,同一形状の改修用下枠69,改修用上枠62,各改修用竪枠70,71を取付けできる。(【0093】)
例えば,室内側案内レール115の室外側面にスペーサ330を介し
て取付け補助部材106の室外側壁部107をビス110で取付け,その室内側壁部108と前記突出部104bを離隔し,下枠用シール材79のためのスペーサを形成する。
改修用下枠69が室外側に位置がずれるので,その室外側下枠シール材300は既設下枠56の前壁102と離隔する。
このために,底壁103の室外側部にシール材受け331をビス332で長手方向全長に亘って取付け,このシール材受け331に室外側下枠シール材300を圧接する。なお,ビス333で固着しても良い。この場合には,室外側案内レール114が低いので,切断して撤去していないが,高い場合には切断して撤去する。
つまり,前述の(1),(2),(3)の効果のみを達成する場合には室外側案内レール114を切断して撤去しなくとも良い。(【0094】)


図14に示すように,既設下枠56の室内側案内レール115を前述と同様に切断して撤去し,取付け補助部材106を既設下枠56の背後壁104にビス110で固着しても良い。

例えば,取付け補助部材106の室内側壁部108を既設下枠56の背後壁104にビス110で固着する。この場合には室外側壁部107に図示しないビス挿通孔を形成し,そのビス挿通孔からビス止めすることが好ましい。(【0100】)

3
本件発明の特徴
本件明細書の前記各記載によれば,本件発明の特徴は,以下のとおりであると認められる。
すなわち,本件発明は,従来技術(【0003】~【0009】)において,改修用下枠が既設下枠に載置された状態で既設下枠に固定されるので,改修用下枠と改修用上枠との間の空間の高さ方向の幅が小さくなり,有効開口面積が減少してしまうという問題(課題a,【0010】),及び改修用下枠の下枠下地材は既設下枠の案内レール上に直接乗載され,その案内レールを基準として固定されるため,改修用下枠と改修用上枠との間の空間の高さ方向の幅がより小さくなり,有効開口面積が減少してしまうという問題(課題b,【0011】)があったため,これらの問題を,既設下枠の室外側案内レールを切断して撤去する(構成1),既設下枠の室内寄りに取付け補助部材を設けるとともに,この取付け補助部材を既設下枠の底壁の最も室内側の端部に連なる背後壁の立面にビスで固着して取り付け,改修用下枠の室内寄りを取付け補助部材で
支持し,取付け補助部材を基準として改修用引戸枠を既設引戸枠に取り付ける(構成2)ことにより解決したものである。構成1を採ることにより,改修用下枠と改修用上枠との間の空間の高さ方向の幅が大きく,広い開口面積が確保でき,構成2を採ることにより,既設引戸枠の形状,寸法に応じた形状,寸法の取付け補助部材を用いることで,形状,寸法が異なる既設引戸枠に同一の改修用引戸枠を取付けできるという効果を奏する(【0018】)。さらに,本件発明は,既設下枠の背後壁の上端と改修用下枠の上端をほぼ同じ高さとする(以下「構成3」という。)ことにより,有効開口面積が減少することがないという効果も奏する。
4
取消事由1(無効理由1(明確性要件違反)の判断における本件明細書の記載事項の誤解)について
(1)

法36条6項2号の趣旨は,特許請求の範囲に記載された発明が明確で
ない場合に,特許の付与された発明の技術的範囲が不明確となることにより生じ得る第三者の不測の不利益を防止することにある。そこで,特許を受けようとする発明が明確であるか否かは,特許請求の範囲の記載のみならず,願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し,また,当業者の出願時における技術的常識を基礎として,特許請求の範囲の記載が,第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるか否かという観点から判断されるべきである。
(2)

本件発明に係る特許請求の範囲の記載のうち,「背後壁の上端と改修用
下枠の上端がほぼ同じ高さであ」るとの特定事項につき,特許請求の範囲の記載によれば,まず,「前記背後壁」は,「既設下枠の底壁の最も室内側の端部に連なる」ものであるから,改修の前後でその「高さ」が変わるものではない。他方,「改修用下枠」は,その「室内寄りが,前記取付け補助部材で支持され」るものである。そうすると,「前記背後壁の上端と改修用下枠の上端がほぼ同じ高さであ」ることに寄与しているのは,「改修用下枠」を
支持する「取付け補助部材」であることが理解される。
この「取付け補助部材」について,本件明細書の記載を見ると,「既設引戸枠の形状,寸法に応じた形状,寸法の取付け補助部材を用いることで,形状,寸法が異なる既設引戸枠に同一の改修用引戸枠を取付けできる。」(【0018】),「その取付用補助部材106の高さ寸法を変えることで,異なる形状の既設下枠56にも同一形状の改修用下枠56を,その支持壁89と背後壁104を同一高さに取付けることが可能である。」(【0091】)との記載がある。
また,「ほぼ同じ高さ」について,本件明細書にはその定義を説明する記載はないけれども,寸法誤差,設計誤差等により「背後壁の上端」と「改修用下枠の上端」とが完全には「同じ高さ」とならない場合があることは技術常識であるといってよい。
そうすると,「前記背後壁の上端と改修用下枠の上端がほぼ同じ高さ」の「同じ高さ」とは,「取付け補助部材」により「改修用下枠」を支持することで「背後壁の上端」と「改修用下枠の上端」とを「同じ高さ」とした場合を意味するものと一義的に理解することができ,「ほぼ同じ高さ」とは,「取付け補助部材」の高さ寸法を既設下枠の寸法,形状等に合わせて調節し,「背後壁の上端」と「改修用下枠の上端」とを「同じ高さ」にしようとしたとしても,寸法誤差,設計誤差等より「背後壁の上端」と「改修用下枠の上端」とが厳密には「同じ高さ」とならない場合を含むが,その限度を超えるものは含まないことを意味すると解される。
特許請求の範囲の記載,願書に添付した明細書の記載及び当業者の出願時における技術的常識を考慮すると,「前記背後壁の上端と改修用下枠の上端がほぼ同じ高さ」との記載は,上記のように解されるところ,このように解した場合,第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるとはいえない。

(3)

本件審決は,「背後壁の上端と改修用下枠の上端がほぼ同じ高さであ」
るとは,既設下枠の背後壁の上端と改修用下枠の上端がおおかた同じ高さである,すなわち完全に同じであることは要しない程度に高さが同じであるといった意味と捉えられるとし,また,既設引戸枠の形状,寸法によっては,例えば本件明細書図10に示す実施の形態のように,背後壁の上端と改修用下枠の上端を完全に同じ高さとし得ない場合もあることが理解できるとする。しかし,本件明細書によれば,実施形態1については,「前壁102の上端部から室内68に向かって上方へ傾斜する…底壁103の最も室内68側の端部に連な…る背後壁104」が,「室内側案内レール67と同一高さまで立ち上がる」と記載され(【0027】),「背後壁104」の上端と改修用下枠の上端である「室内側案内レール67」の上端が同一高さであることが示されている。また,実施形態2についても,「既設下枠56の背後壁104の上端部に室内68側に向かう横向片104aを有し,この横向片104aと改修用下枠69の支持壁89の上端が同一高さであること」と記載されており(【0069】),「背後壁104」の上端と同じ高さである「横向片104a」の上面と図6の図面上「改修用下枠69」の上端と認められる「支持壁89」の上端とが同一高さである。これに対し,「背後壁」の上端と「改修用下枠」の上端の「高さ」に図面上明らかに差が認められる本件明細書の図10及び11に示された実施の形態については,「例えば,図10に示すように取付け補助部材106の高さ寸法を大きくして室内側壁部108を底壁103に当接し,かつ室内側案内レール115にビス110で取付ける。…この場合には,支持壁89が背後壁104より若干上方に突出する。」と記載され(【0092】),「背後壁104」の上端と「改修用下枠」の上端である「支持壁89」の上端を「同一高さ」とすることは記載されておらず,また,その差をもって寸法誤差や設計誤差等によるものと見ることもできない。

したがって,本件明細書図10に示された実施の形態が「背後壁の上端と改修用下枠の上端がほぼ同じ高さであ」るとする理解を前提とする本件審決の説示は,誤りというべきである。
もっとも,前記(2)のとおり,本件発明に係る特許請求の範囲の記載である「ほぼ同じ高さ」の意味するところは,第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるとはいえないことから,この点に関する本件審決の判断は,その結論において誤りはない。
(4)

被告らの主張について
被告らは,この点に関する本件審決の判断に誤りはないとし,「上記背
後壁の上端と改修用下枠の上端がほぼ同じ高さであり」との文言は,本件特許に係る出願経過において,拒絶理由を解消する目的で補正前の各請求項に記載された本件発明の前提構成につき,広い開口面積を確保する本件発明の課題に対応した構成のみに限定する趣旨で書き加えたものである旨主張する。しかし,法36条6項2号は,前記(1)のとおり,特許請求の範囲が不明確となる場合に生じ得る第三者の不測の不利益を防止するために要求されるものであるから,その適否は明細書の記載から客観的に判断されるべきであって,出願経過その他明細書に現れない事情を斟酌することは,かえって特許が付与された権利範囲を不明確にしかねないものといわざるを得ない。そうである以上,明確性要件の判断をする際にそのような事情を考慮することは相当ではない。
その他被告らがるる指摘する事情を考慮しても,この点に関する被告らの主張は採用し得ない。
(5)

以上より,本件審決は,「背後壁の上端と改修用下枠の上端がほぼ同じ
高さであ」るとの記載の意義の解釈につき誤りがあるものの,その誤りは明確性要件違反の有無に関する判断の結論に誤りをもたらすものではない。したがって,取消事由1は理由がない。

5
取消事由2(無効理由2(サポート要件違反)の判断における本件明細書の記載事項の誤解)について
法36条6項1号のサポート要件に適合するかどうかは,特許請求の範
(1)

囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し,特許請求の範囲に記載された発明が発明の詳細な説明に記載された発明であるか,すなわち,発明の詳細な説明の記載と当業者の出願時の技術常識に照らし,当該発明における課題とその解決手段その他当業者が当該発明を理解するために必要な技術的事項が発明の詳細な説明に記載されているか否かを検討して判断すべきである。まず,本件発明の構成については,本件明細書【0013】に「課題
(2)ア

を解決するための手段」として特許請求の範囲請求項1~6とほぼ同内容の記載によって示されており,また,当該手段を採用した本件発明の効果については,「発明の効果」として段落【0018】に記載されている。イ
実施形態1について
(ア)

本件発明1~3の「建物の開口部に取付けてあるアルミニウム合金
の押出し形材から成る既設上枠,アルミニウム合金の押出し形材から成り室内側案内レールと室外側案内レールを備えた既設下枠,アルミニウム合金の押出し形材から成る既設竪枠を有する既設引戸枠を残存し,」との構成及び本件発明4~6のこれに対応する構成については,本件明細書の「本実施の形態の改修用引戸装置50は,建物52の開口部53の開口54に下方から臨む下縁部55に,略水平…に固定される既設下枠56と,開口部53の前記開口54に左右両側から臨む両側縁部57,58に略鉛直…にそれぞれ固定される一対の既設竪枠59,60と,開口部53の前記開口54に上方から臨む上縁部61に略水平に固定される既設上枠62とを有する既設引戸枠63内に嵌まり込んだ状態で装着される。」(【0019】),「上記の既設下枠56,各既設竪枠59,60,および既設上枠62もまた,アルミ
ニウム合金の押出し形材から成る。」(【0023】),「前記既設下枠56は,・・・室外側案内レール114と,室内側案内レール115とを有する。」(【0027】)との記載が対応する。
(イ)

本件発明1~3の「前記既設下枠の室外側案内レールを付け根付近
から切断して撤去し,前記既設下枠の室内寄りに取り付け補助部材を設け,」との構成及び本件発明4~6のこれに対応する構成については,本件明細書の「前記室外側案内レール114は,改修用下枠69を装着するにあたって,改修用下枠69の取付けスペースを確保するため,…付け根付近から切断されて撤去されている。」(【0028】),「この取付け補助部材106は,既設下枠56に,室内側案内レール115に室外73側から室外側壁部107を当接させ,かつ背後壁104に室外73側から室内側壁部108を当接させた状態で,前記上壁部109を上方にして装着される。前記室外側壁部107は,室内側案内レール115にビス110によって固定される。」(【0029】)との記載が対応する。
(ウ)

本件発明1~3の「この後に,アルミニウム合金の押出し形材から
成る改修用上枠,アルミニウム合金の押出し形材から成る改修用竪枠,アルミニウム合金の押出し形材から成り室外から室内に向かって上方へ段差を成して傾斜し,室外寄りが低く,室内寄りが室外寄りよりも高い底壁を備えた改修用下枠を有する改修用引戸枠を,前記既設引戸枠内に室外側から挿入し,…前記改修用下枠の室内寄りを前記取付け補助部材で支持し,前記背後壁の上端と改修用下枠の上端がほぼ同じ高さであり,」との構成及び本件発明4~6のこれに対応する構成については,段落【0029】の上記記載のほか,本件明細書の「改修用下枠69,各改修用竪枠70,71,改修用上枠72,各竪枠用保持部材74,75,および上枠用保持部材76は,アルミニウム合金
の押出し形材から成る。」(【0023】),「前記改修用下枠69は,…室外73から室内68に向かって上方へ段差を成して傾斜する底壁81と…を有する。」(【0024】),「改修用下枠69が既設下枠56に取付けられた状態では,…前記前壁80が既設下枠56の前壁102に当接して,改修用下枠69が既設下枠56に対して図1の左右方向である見込み方向に位置決めされ,位置決め作業に手間がかからず,容易に取付けることができる。」(【0031】),「底壁103の最も室内68側の端部に連なり,室内側案内レール67と同一高さまで立ち上がる背後壁104」(【0027】)との記載が対応する。
(エ)

本件発明1~3の「前記改修用下枠の前壁を,ビスによって既設下
枠の前壁に固定することで,改修用引戸枠を取付け補助部材を基準として取付ける」との構成及び本件発明4~6の「前記改修用下枠の前壁が,ビスによって既設下枠の前壁に固定されている」との構成については,本件明細書の「前壁80を室外73側から室内68側に向かって螺着されたビス112によって既設下枠56の前壁102に固定するので,取付け作業中に改修用下枠69が既設下枠56に対して室外73側にずれてしまうことが防がれ,単にビス112を締付ければ,改修用下枠69を既設下枠56に対して位置決めされ」(【0032】),「取付け補助部材106を基準として改修用下枠69を取付けできるから,既設下枠56の形状,寸法に応じた形状,寸法の取付補助部材106を用いることで,同一の改修用下枠69を取付けできる。」【0060】との記載が対応する。
(オ)

そうすると,本件発明と実施形態1とを対比すると,本件発明では,
取付け補助部材を,既設下枠の底壁の最も室内側の端部に連なる背後壁の立面にビスで固着して取り付けるのに対し,実施形態1では,取
付け補助部材106を,既設下枠56の室内側案内レール115に室外73側から室外側壁部107を当接させ,かつ背後壁104に室外73側から室内側壁部108を当接させ,前記室外側壁部107が室内側案内レール115にビス110によって固定する(【0029】)点で異なっている。また,本件発明では,改修用下枠の室外寄りをスペーサを介して既設下枠の室外寄りに接して支持するのに対し,実施形態1ではそのような構成を有していない。

実施形態3について
実施形態3について,本件明細書には「既設下枠56の室内側案内レール115を前述と同様に切断して撤去し,取付け補助部材106を既設下枠56の背後壁104にビス110で固着しても良い。例えば,取付け補助部材106の室内側壁部108を既設下枠56の背後壁104にビス110で固着する。この場合には室外側壁部107に図示しないビス挿通孔を形成し,そのビス挿通孔からビス止めすることが好ましい。」(【0100】)との記載があり,取付け補助部材106を既設下枠56の背後壁104にビス110で固着することが記載されている。

実施形態2について
実施形態2について,本件明細書には,「改修用下枠69の…底壁81の室外寄りがスペーサ301を介して既設下枠56の底壁103の室外寄りに支持され,ビス112で取付け補助部材106に固定される。」(【0070】)との記載があり,改修用下枠69の底壁81の室外寄りをスペーサ301を介して既設下枠56の底壁103の室外寄りに支持することが記載されている。実施形態3にも同様の構成が示されている。


本件発明において,課題a及びbを解決するためには,構成1及び2を採用することを要し,かつ,それで足りるところ,取付け補助部材10
6を既設下枠56の背後壁104にビス110で固着するか否か,改修用下枠69の底壁81の室外寄りをスペーサ301を介して既設下枠56の底壁103の室外寄りに支持するか否かは,課題a及びbの解決には直ちには関係しないし,これらのいずれかにしなければ本件発明の効果を奏しないというものでもない。当業者であれば,実施形態1において,本件明細書の記載から,課題a及びbの解決に関係しない構成につき実施形態2又は3に記載の構成を採用することは,ごく普通に着想し得ることといってよい。
(3)

本件発明3及び6は「室内側案内レールを切断して撤去し,」との構成
を更に備えるところ,実施形態3についての前記段落【0100】の記載はこれに対応する。
また,当業者であれば,本件明細書の記載から,実施形態1において実施形態3に記載の当該構成を採用することをごく普通に着想し得ることは,前記(2)と同様である。
(4)

本件発明2及び5は,「前記改修用上枠の室外側部に室外側上枠シール
材を装着すると共に,前記改修用引戸枠の改修用竪枠の室外側部に室外側竪枠シール材を装着した改修用引戸枠を,前記既設引戸枠内に室外側から挿入し,その室外側上枠シール材を建物の開口部の上縁部に接すると共に,前記室外側竪枠シール材を建物の開口部の縦縁部に接し,」との構成を更に備える。
この構成については,本件明細書の実施形態3に関する記載のうち,「改修用上枠72の前壁120…に乾式の室外側上枠シール材302が装着してある。この室外側上枠シール材302は室外側ヒレ302aと室内側ヒレ302bを有する。…前記室外側ヒレ302aが建物52の開口部53の上縁部61における既設シール材305よりも室外寄りに接して1次タイトの役目を果たす。」(【0072】)との記載,「改修用竪枠70の前壁1
40…に室外側竪枠シール材310が側方に向けて装着してある。この室外側竪枠シール材310は室外側ヒレ310aと室内側ヒレ310bを有する。…前記室外側ヒレ310aが建物52の開口部53の一方の縦縁部57における既設シール材314よりも室外寄りに接して1次タイトの役目を果たす。」(【0075】)との記載がこれに対応する。
また,当業者であれば,本件明細書の記載から,実施形態1において実施形態2記載の当該構成を採用することをごく普通に着想し得ることは,前記(2)と同様である。
(5)

以上によれば,本件明細書の発明の詳細な説明には,当業者において,
特許請求の範囲に記載された本件発明の課題とその解決手段その他当業者が本件発明を理解するために必要な技術的事項が記載されているものといえる。したがって,本件発明は,本件明細書において十分に裏付けられ,開示されているものといってよく,サポート要件違反の有無に関する本件審決の判断の結論に誤りはない。この点に関する原告の主張は採用し得ず,取消事由2は理由がない。
6
取消事由3(無効理由3(実施可能要件違反)の判断における審理不尽,理由不備及び判断の誤り)について
原告は,既設下枠の背後壁の上端と改修用下枠の上端の高さの差の許容範囲を客観的に判断することができなければ,本件発明を実施するに際し改修用建具の寸法等の設計をすることなどができず,本件明細書の記載は実施可能要件を欠くなどと主張する。
しかし,前記4のとおり,「背後壁の上端と改修用下枠の上端がほぼ同じ高さであ」るの「ほぼ同じ高さ」の意味するところは,第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるとはいえず,既設下枠の背後壁の上端と改修用下枠の上端の高さの差の許容範囲は一定程度客観的に判断し得る。
そうである以上,本件発明の実施可能要件違反の有無に関する本件審決の判
断の結論に誤りはない。この点に関する原告の主張は採用し得ず,取消事由3は理由がない。
7
取消事由4(無効理由4(進歩性欠如)の判断における甲号証発明の認定の誤り,甲号証発明と本件発明との一致点,相違点の認定の誤り,及び相違点についての判断の誤り)について
(1)

取消事由4-1(甲5発明1及び2の認定の誤り)について
甲5図面等の記載
(ア)

甲5の2(以下「縦断面図」という。)によれば,縦断面図には,
以下の事項が示されていると認められる。
a
下方には,点線L1により既設下枠が示されている。既設下枠には,脱衣側から浴室側に向かって段々に低くなる底壁部分m1,底壁部分m1より上方に向かって延びる脱衣側レールm2,浴室側レールm3が形成されており,底壁部分m1の最も浴室側の端部から上方に向かって延びる壁部m4,底壁部分m1の最も脱衣側の端部から立ち上がって浴室側面となる壁部m5が形成され,壁部m5の上端には脱衣側に屈曲して横向片の部分m6が形成されるとともに,横向片の部分m6の浴室側には浴室側に延びる延設部分m7が形成されている。

b
上方には,点線L2により,既設上枠が示されている。既設上枠には,脱衣側レールn2,浴室側レールn3が形成されている。また,実線L4で改修用上枠が示されており,改修用上枠は,既設上枠にビスによって固定されたクランク状の部材uに浴室側から当接し,ビスによって固定されている。

c
縦断面図には,右側に「既設サッシH=2,000」と寸法線l1とともに記載されている。寸法線l1の下端位置は,縦断面図の下方において点線L1で示される横向片の部分m6の上面と同一高さ位置であるとともに,寸法線l1の上端位置は,縦断面図の上方において
点線L2で示される既設上枠の下端位置と略同一高さ位置である。d
上壁s1を浴室側に延ばした逆L字状の部材sは,上壁s1を延設部分m7の下面に当接させるとともに,その縦壁s2を壁部m5の浴室側面にビスで固定されている。逆L字状の部材sには,「AL

L
-15×12(三協)」との記載が付されている。
e
点線L1により示される壁部m4には,逆L字状の部材tがビスで固定されている。逆L字状の部材tには,「AL

L-50×12×

2.0(新和手配)」との記載が付されている。
f
縦断面図を見ると,実線L3により,改修用下枠が示されている。実線L3で示される改修用下枠の底壁は,平坦で,浴室側と脱衣側の高さが同一である。また,実線L3で示される改修用下枠は,その脱衣側端の水平部の上面と浴室側のレール及び脱衣側のレールの上端の高さが同一であり,既設下枠の上端である点線L1により示される壁部m5の上端(横向片の部分m6の上面)との高さの差は「3」(mm)である。

g
実線L3で示される改修用下枠は,その脱衣室側端が下方に屈曲して点線L1により示される横向片の部分m6の上面に当接されるとともに,延設部分m7の更に浴室側において逆L字状の部材sの上壁s1に対してビスにより固定されている。また,実線L3で示される改修用下枠は,浴室側において,その底壁が逆L字状の部材tの上部にビスで固定されている。

h
縦断面図を見ると,改修用上枠と改修用下枠のレールの間に引戸が設置されており,改修用上枠,改修用下枠及び改修用竪枠が引戸枠であることが見てとれる。また,既設上枠の脱衣側レールn2,浴室側レールn3と既設下枠の脱衣側レールm2,浴室側レールm3が対向して設けられており,既設上枠,既設下枠及び既設竪枠も引戸枠であ
ることが見てとれる。

(イ)

甲5の3(以下「横断面図」という。)によれば,横断面図には,
点線L5,L6により既設竪枠が示されていること,実線L7,L8で示される改修用竪枠の浴室側及び脱衣側が,それぞれ点線L5で示される壁部p3及び点線L6で示される壁部q3と,クランク状の部材wの内周片w1及び断面L字状の部材yの内周片y1とに浴室側か
ら当接し,それぞれビスによって固定されていることが認められる。(ウ)

証拠(甲5の5)及び弁論の全趣旨によれば,甲5の1~3の設計
図面等に基づく広島電鉄己斐寮浴室ドア改修工事について,既設サッシはアルミニウム合金製であったこと,改修用引戸枠を既設引戸枠内に取り付けるに際しては浴室側から挿入したこと,上記改修工事において,広島電鉄株式会社からの開口面積ができるだけ小さくならないようにとの要望に配慮して設計したことが認められる。

検討
(ア)

上記ア(ア)e及びgによれば,甲5図面等には「部材tは,ビスによ
って既設下枠の符号m4部分に固定されており,L3で示される改修用下枠の浴室寄りが部材tによって支持されている」ことが示されているというべきである。
そうすると,本件審決は,甲5発明1に認定に当たり,「改修用サッシの改修用下枠の浴室側寄りが,断面逆L字状の部材tを介して既設下枠の浴室側寄りに支持される」との構成を認定しなかった点で誤りである。
(イ)

他方,逆L字状の部材sについては,上記ア(ア)d及びgによれば,
その上壁s1を延設部分m7の下面に当接させられており,改修用下枠は,その脱衣側を既設下枠の横向片の部分m6の上面に当接させるものであるから,逆L字状の部材sは,改修用下枠を,既設下枠の横向片の部分m6を基準として取り付けるのに関与はしているとしても,それ自身を基準として取り付けられるわけではないというべきである。そうすると,本件審決が「改修用引戸枠を,逆L字状の部材sを基準として取付ける」との構成を認定しなかったことに誤りはない。
(ウ)

以上より,本件審決の甲5発明1の認定は,「改修用サッシの改修
用下枠の浴室側寄りが,断面逆L字状の部材tを介して既設下枠の浴
室側寄りに支持される」との構成を認定しなかった限度で誤りがある。また,本件審決の甲5発明2の認定についても,甲5発明1と同様の理由により,上記構成を認定しなかった限度で誤りである。

そうすると,本件審決が認定した甲5発明1及び2に「改修用サッシの改修用下枠の浴室側寄りが,断面逆L字状の部材tを介して既設下枠の浴室側寄りに支持される」との構成を付加したものをもって,甲5図面等記載の発明と認定するのが相当である(以下,引戸装置の改修方法の発明を「甲5発明1’」,改修引戸装置の発明を「甲5発明2’」という。)。これに反する原告及び被告らの主張はいずれも採用し得ない。
(2)

取消事由4-2(甲6発明1及び甲6発明2の認定の誤り)について甲6文献の記載
甲6文献には,次の記載がある。
(ア)

旧窓枠に新窓枠を取付ける改装サツシにおいて,新窓枠の外側フラ
ンジを旧窓枠にビス止めし,内側面の長手方向に形成したC形溝に新アンカー片の基板を係止するとともに,該基板から延出したフランジを旧窓枠にビス止めしたことを特徴とする新窓枠の取付構造。(実用新案登録請求の範囲)
(イ)

本考案は旧窓枠に新窓枠を取付けるとき,新窓枠の見込寸法が旧窓
枠のそれより小なる場合の取付け構造に関する。
従来改装サツシに於て旧窓枠に対して見込寸法の小なる新窓枠を其のまゝ利用して簡単に取付ける構成は無く極めて複雑な手法が採用されて来た。本考案は単純な形状のアンカー片を付加することにより見込寸法の異なる旧窓枠に順応して取付可能なる新窓枠の取付構造を提供するものにして特に改装サツシの下枠に応用して効を奏するものである。(1頁1欄31行目~同頁2欄4行目)

(ウ)

図に於て1は既存のスチール製下枠にして室内側立上り壁より延出
した先端は屈曲して逆U字形を形成し上表面1aは平面である。2は既存のスチール製水切板で先端の水切部は図示を略されており室内側の立上り壁2aは旧下枠の垂下フランジ1bに内装している。3は建造物壁体にして通常コンクリートである。4は内障子用の敷居材である。以上が既設スチールサツシ障子を取り除いた旧窓枠の状態である。5は新窓枠にして其の側面形状は階段状を呈して室外に向って下り勾配を形成し,その側端に近接した位置より垂下したる外側フランジ5aを形成し,又内側面には縦長のC形溝5bを長手方向に形成しその上端より室内側へ水平フランジ5cを形成してる。6はアンカー片にして6aはその基板にして6bは基板と直交するフランジである。(1頁2欄7行~23行)

(第1図。ただし,理解の便宜のため,適宜着色してある。)
(エ)

7は額縁にして実質的には膳板の役目を果しており,既設の構成に
合致する如き寸法にてアンカー片6と既存の下枠1とを覆う化粧板であり一般には窓枠と同一材料の型材を使用すれば良い。本実施例にては型材はアルミニウム合金型材に表面処理を施した材料が使用されている。(2頁3欄6行~11行)
(オ)

次に取付工法の一例を概説すると,アンカー6がC形溝5b内に挿
入されて方形に組立てられた新窓枠を現地に運搬し新窓枠の外側フランジ5aを複数本のビス8にて新水切板2’を介して旧窓枠にビス止めする。この場合外側フランジ5aの内壁面に長手方向に装着されたるパツキンを介してビス止めされた状態を図示してる。一方アンカーのフランジ6bを上方より複数本のビス8にて旧窓枠にビス止めする。図はこの場合後述する額縁7を固定するバネ鋼9を介してビス止めした状態を示してる。次にアンカー片6と既存の下枠1を覆う目的にて額縁7をブラインドリベット10にて複数個所固定する。額縁7の室内側端はバネ鋼9にて係止固定される。以上の現地作業にて凡て終了する。あとは常法によりコーキング材11を充填すれば良い。なお図示の12はアルミニウム型材と旧スチール枠間にて腐食の発生を防止するための養生である電食防止テープである。(2頁2欄12行~同頁4欄7行)
(カ)

以上説明したとおり本考案によれば旧窓枠と新窓枠との見込寸法が
異なる場合に,新窓枠の内側面の長手方向にC形溝を設けておき,アンカーと新しい額縁のみを準備すれば,寸法の異なる既設窓枠に新窓枠を簡単に装着可能にして,又C形溝を利用したので現場でのビス孔の穿孔手数も省け経済的見地より実用的価値の高いものである。(2頁2欄8行~14行)
(キ)

第1図をみると,新窓枠5の下枠は,その外側フランジ5aが既存
のスチール製下枠1の垂下フランジ1bにビス止めされることがみてとれる。また,第1図に記載された新窓枠5及び既存のスチール製下枠1の形状及び新窓枠5の取付態様からみて,方形に組立てられた新窓枠5は旧窓枠1に室外側から挿入されるものであることが理解される。
イ(ア)

上記ア(オ)によれば,電食防止テープ12は,アルミニウム型材と旧
スチール枠間の腐食の発生を防止するものであり,新窓枠5の下枠と既存のスチール製下枠とが接することを前提とするものである。
そうすると,甲6文献に開示された改装サッシの新窓枠5の室外寄りには,新窓枠5の下面から延びて電食防止テープ12を介して旧窓枠1の室外寄りの上面に支持される脚状の部分が設けられており,新窓枠5の下枠の室外寄りが既存のスチール製下枠の室外寄りに接して支持されているものといってよい。
したがって,本件審決は,甲6発明1の認定に当たり,「新窓枠5の下枠の室外寄りが既存のスチール製下枠の室外寄りに接して支持され」との構成を認定しなかった点で誤りである。
(イ)

上記ア(ウ)及び(オ)によれば,新窓枠5は,その内側面に縦長のC形溝
5bが長手方向を形成し,その上端より室内側へ水平フランジ5cを形成しており,アンカー6は,新窓枠5の上記C形溝5b内に挿入され,そのフランジ6bが旧窓枠にビス止めされるものである。そうすると,アンカー6は,その寸法,形状によって新窓枠の位置が異なることとなるから,新窓枠の位置を決めるよりどころとなるものといってよい。
したがって,本件審決は,甲6発明1の認定に当たり,「新窓枠をアンカー6を基準として取付ける」との構成を認定しなかった点で誤りである。
(ウ)

以上より,本件審決の甲6発明1の認定は,「新窓枠5の下枠の室
外寄りが既存のスチール製下枠の室外寄りに接して支持され」との構成及び「新窓枠をアンカー6を基準として取付ける」との構成を認定しなかった限度で誤りがある。
(エ)

また,本件審決の甲6発明2の認定についても,甲6発明1と同様
の理由により,「新窓枠5の下枠の室外寄りが既存のスチール製下枠
の室外寄りに接して支持され」との構成を認定しなかった限度で誤りがある。

そうすると,本件審決が認定した甲6発明1及び2に「新窓枠の下枠の室外寄りが,既存のスチール製下枠の室外寄りに接して支持される」との構成を付加し,さらに,甲6発明1に「新窓枠をアンカー6を基準として取付ける」との構成をも付加したものをもって,甲6文献記載の発明と認定するのが相当である(以下,サツシの改装方法の発明を「甲6発明1’」,改装サツシの発明を「甲6発明2’」という。)。これに反する被告らの主張は採用し得ない。

(3)

取消事由4-3(本件発明1~3と甲5発明1との一致点の認定の誤り)
について

前記(1)のとおり,甲5図面等記載の発明としては,甲5発明1’が認められる。
また,「逆L字状の部材s」は,「改修用下枠の脱衣寄り」を「上壁s1に対してビスで固定」するものであるから,「改修用下枠」を「支持」するものということができる。そうすると,「逆L字状の部材t」についても,「改修用下枠」を「支持」するものと認めるのが相当である。
そうすると,本件発明1~3と甲5発明1’の一致点は,以下のとおりに認められる
[一致点]
建物の開口部に取付けてあるアルミニウム合金から成る既設上枠,アルミニウム合金から成り一方側案内レールと他方側案内レールを備えた既設下枠,アルミニウム合金から成る既設竪枠を有する既設引戸枠を残存し,
前記既設下枠の一方寄りに取付け補助部材を設け,この取付け補助部
材を既設下枠の底壁の最も一方側の端部に連なる背後壁の立面にビスで固着して取付け,
この後に,アルミニウム合金から成る改修用上枠,アルミニウム合金から成る改修用竪枠,アルミニウム合金から成る改修用下枠を有する改修用引戸枠を,前記既設引戸枠内に他方側から挿入し,その改修用下枠の他方寄りを既設下枠の他方寄りで支持するとともに,前記改修用下枠の一方寄りを前記取付け補助部材で支持し,前記背後壁の上端と改修用下枠の上端がほぼ同じ高さであり,
前記改修用下枠をビスによって既設下枠に固定することで,改修用引戸枠を取付ける引戸装置の改修方法。

以上より,本件審決の本件発明1~3と甲5文献に記載の発明との一致点の認定は,「その改修用下枠の他方寄りを既設下枠の他方寄りで支持するとともに」との構成を一致点として認定しなかった限度で誤りがある。これに反する原告及び被告らの主張はいずれも採用し得ない。
(4)

取消事由4-4(甲5発明1と本件発明1~3との相違点1-5の認定
の誤り)について
前記(1)及び(3)のとおり,本件審決の甲5発明1の認定及び本件発明1~3との一致点の認定は誤りがあることから,これに関する相違点1-5の認定にも誤りがある。
すなわち,本件発明1~3と甲5発明1’は,「その改修用下枠の他方寄りを既設下枠の他方寄りで支持する」点で一致していることから,本件発明1~3と甲5発明1’の相違点としては,以下の相違点1-5’’が認められる。これに反する原告及び被告らの主張はいずれも採用し得ない。[相違点1-5’’]
改修用引戸枠の取付け構造に関し,本件発明1~3では,改修用下枠の室外寄りを,スペーサを介して既設下枠の室外寄りに接して支持し,
改修用下枠の前壁を,ビスによって既設下枠の前壁に固定することで,改修用引戸枠を取付け補助部材を基準として取り付けるのに対し,甲5発明1’では,改修用下枠の他方寄りの既設下枠の他方寄りでの支持を,スペーサを介して既設下枠の他方寄りに接して支持するのではなく,逆L字状の部材tを介して支持しており,また,改修用下枠の前壁を,ビスによって既設下枠の前壁に固定する構成,及び,改修用引戸枠を取付け補助部材を基準として取り付ける構成を有していない点。
(5)

取消事由4-5(相違点1-3~1-5についての判断の誤り)につい
てア
前記(1)のとおり,甲5発明1’は,「改修用引戸枠を取付け補助部材を基準として取付ける」構成を備えていない。他方,前記(2)のとおり,甲6発明1’は,「改修用引戸枠を取付け補助部材を基準として取付ける」に相当する構成を有する。そこで,甲5発明1’に甲6発明1’を適用する動機付けの有無について検討する。


甲5発明1’は,既設引戸枠を,「平坦で,浴室側と脱衣側の高さが同一である底壁」を備えた改修用下枠を有する改修用引戸装置枠に改修するものであり,「改修用下枠の脱衣寄りを,既設下枠の横向片の部分m6の上面に当接」させ,「既設下枠の壁部m5の上端と改修用下枠の上端の高さの差」を「3mm」とする支持構造を有するものである。他方,甲6発明1’は,「旧窓枠1」に「新窓枠5を取付ける」ことにより,「側面形状が階段状を呈して室外に向かって下り勾配を形成」した「新窓枠の下枠5」に改修するものである。また,甲6発明1’の新窓枠5の旧窓枠1への取付け構造によれば,基板6aのアンカーフランジ6b側端部とアンカーフランジ6b面との長さの分だけ,旧窓枠1の上端と新窓枠5の上端の高さに差が生じることとなる。
そうすると,甲5発明1’と甲6発明1’とは,改修用下枠の構造が
大きく異なり,その支持構造も大きく異なることとなるから,甲6発明1’の改修用下枠自体の構成や改修用下枠の室外側の支持構造を甲5発明1’に適用する動機付けは認められない。このことは,本件発明1~3の一部を備える周知技術(甲7~22,甲27,甲32~36,甲39など)があるとしても異ならない。

したがって,甲5発明1’において,相違点1-3,1-4及び相違点1-5’’に係る本件発明1~3の構成とすることは,当業者が容易になし得たとすることはできない。この点に関する原告の主張は採用し得ない。
(6)

取消事由4-6(本件発明4~6と甲5発明2との一致点の認定の誤り)
について

前記(1)のとおり,甲5図面等記載の発明としては,甲5発明2’が認められる。甲5発明2’は,「改修用サッシの改修用下枠の浴室側寄りが,断面逆L字状の部材tを介して既設下枠の浴室側寄りに支持される」との構成を備えることから,本件発明4~6と甲5発明2’とは,「改修用下枠の他方寄りが既設下枠の他方寄りに支持される」点で一致しているということができる。
したがって,本件発明4~6と甲5発明2’の一致点は,以下のとおりに認められる。
[一致点]
建物の開口部に残存した既設引戸枠は,アルミニウム合金から成る既設上枠,アルミニウム合金から成り一方側案内レールと他方側案内レールを備えた既設下枠,アルミニウム合金から成る既設竪枠を有し,その既設下枠の一方寄りに取付け補助部材を設け,その取付け補助部材が既設下枠の底壁の最も一方側の端部に連なる背後壁の立面にビスで固着して取付けてあり,
この既設引戸枠内に,アルミニウム合金から成る改修用上枠,アルミ
ニウム合金から成る改修用下枠,アルミニウム合金から成る改修用竪枠を有する改修用引戸枠が挿入され,
この改修用下枠の他方寄りが既設下枠の他方寄りに支持されるとともに,前記改修用下枠の一方寄りが前記取付け補助部材で支持され,前記背後壁の上端と改修用下枠の上端がほぼ同じ高さであり,
前記改修用下枠が,ビスによって既設下枠に固定されている改修引戸装置。

以上より,本件審決の本件発明4~6と甲5図面等記載の発明との一致点の認定は,「この改修用下枠の他方寄りが既設下枠の他方寄りに支持されるとともに」との構成を一致点として認定しなかった限度で誤りがある。これに反する原告及び被告らの主張はいずれも採用し得ない。
(7)

取消事由4-7(本件発明4~6と甲5発明2との相違点1-Eの認定
の誤り)について
前記(5)及び(6)のとおり,本件審決の甲5発明2の認定及び本件発明4~6との一致点の認定は誤りがあることから,これに関する相違点1-Eの認定にも誤りがある。
すなわち,本件発明4~6と甲5発明2’は,「この改修用下枠の他方寄りが既設下枠の他方寄りに支持される」点で一致していることから,本件発明4~6と甲5発明2’の相違点としては,以下の相違点1-E’’が認められる。これに反する原告及び被告らの主張はいずれも採用し得ない。[相違点1-E’’]
改修用引戸枠の取付け構造に関し,本件発明4~6では,改修用下枠の室外寄りを,スペーサを介して既設下枠の室外寄りに接して支持し,改修用下枠の前壁を,ビスによって既設下枠の前壁に固定しているのに対し,甲5発明2’では,改修用下枠の他方寄りの既設下枠の他方寄りでの支持を,スペーサを介して既設下枠の他方寄りに接して支持するの
でなく,断面逆L字状の部材tを介して支持しており,また,改修用下枠の前壁をビスによって既設下枠の前壁に固定する構成を有していない点。
(8)

取消事由4-8(相違点1-C~1-Eについての判断の誤り)につい

前記(5)と同様の理由により,甲6発明2’の改修用下枠自体の構成や改修用下枠の浴室側(室外側)の支持構造を甲5発明2’に適用する動機付けを認めることはできない。
したがって,甲5発明2’において,相違点1―C,1-D及び相違点1-E’’に係る本件発明4~6の構成とすることは,当業者が容易になし得たとすることはできない。
(9)

小括
以上のとおり,原告主張に係る取消事由4-1~4-4,4-6及び4
-7はその結論において認められるけれども,取消事由4-5及び4-8は認められない。そうである以上,本件発明につき,甲5図面等記載の発明,甲6文献記載の発明及び周知技術等に基づいて,当業者が容易に発明をすることができないとした本件審決の判断は,結論において誤りはない。したがって,甲5図面等記載の発明が本件特許の原出願の出願日前に公然知られた発明又は公然実施された発明であるか否かに関わらず,取消事由4は理由がない。
8
取消事由5(無効理由5(進歩性欠如)の判断における甲号証発明の認定の誤り,甲号証発明と本件発明との一致点,相違点の認定の誤り,及び相違点についての判断の誤り)について
(1)

取消事由5-1(甲6発明1の認定の誤り,及び本件発明1~3と甲6
発明1との一致点の認定の誤り)について

前記7(2)のとおり,本件審決における甲6発明1の認定には誤りがあ
る。甲6文献記載された発明は甲6発明1’のとおりに認定されることから,本件発明1~3と甲6発明1’の一致点については,以下のとおり認定するのが相当である。
[一致点]
建物の開口部に取付けてある既設上枠,既設下枠,既設竪枠を有する既設枠を残存し,
この後に,アルミニウム合金の押出し形材から成る改修用上枠,アルミニウム合金の押出し形材から成る改修用竪枠,アルミニウム合金の押出し形材から成り室外から室内に向かって上方へ段差を成して傾斜し,室外寄りが低く,室内寄りが室外寄りよりも高い底壁を備えた改修用下枠を有する改修用引戸枠を,前記既設枠内に室外側から挿入し,
その改修用下枠の室外寄りを既設下枠の室外寄りに接して支持するともに,前記改修用下枠の室内寄りを取付け補助部材で支持し,前記改修用下枠の前壁をビスによって既設下枠の前壁に固定することで,改修用引戸枠を取付け補助部材を基準として取り付ける引戸装置の改修方法。イ
以上より,本件審決の甲6発明1の認定は,「その改修用下枠の室外寄りを既設下枠の室外寄りに接して支持する」との構成及び「改修用引戸枠を取付け補助部材を基準として取付ける」との構成を認定しなかった限度で誤りがあり,これを前提とする本件発明1~3と甲6文献記載の発明との一致点の認定も,これらの構成を一致点として認定しなかった点で誤りがある。これに反する被告らの主張は採用し得ない。

(2)

取消事由5-2(本件発明1~3と甲6発明1との相違点2-4の認定
の誤り)について
前記(1)のとおり,本件審決の甲6発明1の認定及びこれと本件発明1~3との一致点の認定は誤りがあることから,これに関する相違点2-4の認定にも誤りがある。

すなわち,本件発明1~3と甲6発明1’は,「その改修用下枠の室外寄りを既設下枠の室外寄りに接して支持する」点及び「改修用引戸枠を取付け補助部材を基準として取付ける」点で一致していることから,本件発明1~3と甲6発明1’の相違点としては,以下の相違点2-4’’が認められる。これに反する被告らの主張は採用し得ない。
[相違点2-4’’]
改修用引戸枠の取付け構造に関し,改修用引戸枠を取付け補助部材を基準として取り付けるに際して,本件発明1~3では,改修用下枠の室外寄りをスペーサを介して既設下枠の室外寄りに接して支持するのに対し,甲6発明1’では,改修用下枠の室外寄りが既設下枠の室外寄りに接して支持されているもののスペーサを介していない点。
(3)

取消事由5-3(相違点2-3及び2-4についての判断の誤り)につ
いて

甲23文献記載の技術
甲23文献の記載及び弁論の全趣旨によれば,甲23文献には,本件審決が認定したとおりの甲23技術が記載されているものといってよい。

甲6発明1’は,旧窓枠に新窓枠を取り付けるとき,新窓枠の見込み寸法が旧窓枠のそれより小なる場合の取付け構造に関し,アンカーを付加することにより見込み寸法の異なる旧窓枠に順応して取付け可能にするものであり,甲6のアンカー6は,予め新窓枠の下枠と一体となって見込み寸法を充足した状態で既存のスチール製下枠の逆U字形部分の上表面にビス8止めされるものである。すなわち,甲6発明1’において,アンカー6は,既存のスチール製下枠の逆U字形部分にビス8止めされるものであるから,アンカー6を既設下枠に取り付けるに際し,この既存のスチール製下枠の逆U字形部分に代えて,甲23技術における逆L字状の支持部材24を適用し,既設下枠の底壁の最も室内側の端部に連
なる背後壁の立面にビスで固着する動機付けはないというべきである。このことは,本件発明1~3の一部を備える周知技術(甲7~22,27,32~36,39等)があるとしても異ならない。
したがって,甲6発明1’において,相違点2-3及び2-4’’に係る本件発明1~3の構成とすることは,当業者が容易になし得たとすることはできない。この点に関する本件審決の判断の結論に誤りはなく,原告の主張は採用し得ない。
(4)

取消事由5-4(甲6発明2の認定の誤り,及び,本件発明4~6と甲
6発明2との一致点の認定の誤り)について

前記7(2)のとおり,本件審決における甲6発明2の認定には誤りがある。甲6文献に記載された発明は甲6発明2’のとおりに認定されることから,本件発明4~6と甲6発明2’の一致点については,以下のとおり認定するのが相当である。
[一致点]
建物の開口部に残存した既設枠は,既設上枠,既設下枠,既設竪枠を有し,その既設下枠の室内寄りに取付け補助部材を設け,
この既設枠内に,アルミニウム合金の押出し形材から成る改修用上枠,アルミニウム合金の押出し形材から成り室外から室内に向かって上方へ段差を成して傾斜し,室外寄りが低く,室内寄りが室外寄りよりも高い底壁を備えた改修用下枠,アルミニウム合金の押出し形材から成る改修用竪枠を有する改修用引戸枠が挿入され,
この改修用引戸枠の室外寄りが,既設下枠の室外寄りに接して支持されるとともに,前記改修用下枠の室内寄りが,前記取付け補助部材で支持され,前記改修用下枠の前壁がビスによって既設下枠の前壁に固定されている改修引戸装置。


以上より,本件審決の甲6発明2の認定は,「この改修用下枠の室外寄
りが既設下枠の室外寄りに接して支持される」との構成を認定しなかった限度で誤りがあり,これを前提とする本件発明4~6と甲6文献記載の発明との一致点の認定も,この構成を一致点として認定しなかった点で誤りがある。これに反する被告らの主張は採用し得ない。
(5)

取消事由5-5(甲6発明2と本件発明4~6の相違点2-Cの認定の
誤り)について
前記(4)のとおり,本件審決の甲6発明2の認定及びこれと本件発明4~6との一致点の認定は誤りがあることから,これに関する相違点2-Cの認定にも誤りがある。
すなわち,本件発明4~6と甲6発明2’は,「この改修用下枠の室外寄りが既設下枠の室外寄りに接して支持される」点で一致していることから,本件発明4~6と甲6発明2’の相違点としては,以下の相違点2-C’’が認められる。これに反する被告らの主張は採用し得ない。
[相違点2-C’’]
改修用引戸枠の取付け構造に関し,本件発明4~6では,取付け補助部材が既設下枠の底壁の最も室内側の端部に連なる背後壁の立面にビスで固着して取り付けてあり,改修用下枠の室外寄りがスペーサを介して既設下枠の室外寄りに接して支持されるのに対し,甲6発明2’は,取付け補助部材が既設下枠の底壁の最も室内側の端部に連なる背後壁の立面にビスで固着して取り付けてあるものではなく,また,改修用下枠の室外寄りが既設下枠の室外寄りに接して支持されているものの,スペーサを介してはいない点。
(6)

取消事由5-6(相違点2-Cについての判断の誤り)について
前記(3)と同様の理由により,甲6発明2’に甲23技術を適用する動機
付けはないから,甲6発明2’において,上記相違点2-C’’に係る本件発明4~6の構成とすることは,当業者が容易になし得たとすることはできな
い。
したがって,この点に関する本件審決の判断の結論に誤りはなく,原告の主張は採用し得ない。
(7)

小括
以上のとおり,原告主張に係る取消事由5-1及び5-2,5-4及び
5-5はその結論において認められるけれども,取消事由5-3及び5-6は認められない。そうである以上,本件発明につき,甲6文献記載の発明,甲23技術及び周知技術等に基づいて,当業者が容易に発明をすることができないとした本件審決の判断は,結論において誤りはない。
したがって,取消事由5は理由がない。
9
結論
以上のとおり,取消事由1~5はいずれも理由がない。
よって,原告の請求は理由がないからこれを棄却することとし,主文のとおり判決する。
知的財産高等裁判所第3部

裁判長裁判官
鶴岡稔彦杉浦正樹
裁判官

裁判官
寺田利彦
(別紙)

当事者目録

原告三協立山株式会社
同訴訟代理人弁護士

三村量一同羽鳥貴広同面山
同訴訟代理人弁理士

岩﨑孝治同小橋立昌結被告
YKK

AP株式会社

被告
日本総合住生活株式会社

被告ら訴訟代理人弁理士

根本
同訴訟代理人弁護士

小池同櫻井彰人同石井隼平恵司豊
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