判例検索β > 平成30年(ネ)第10001号
特許権侵害差止等請求控訴事件 特許権 民事訴訟
事件番号平成30(ネ)10001
事件名特許権侵害差止等請求控訴事件
裁判年月日平成30年6月19日
法廷名知的財産高等裁判所
原審裁判所名東京地方裁判所
原審事件番号平成27(ワ)23843
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平成30年6月19日判決言渡
平成30年(ネ)第10001号

特許権侵害差止等請求控訴事件(原審

東京地

方裁判所平成27年(ワ)第23843号)
口頭弁論終結の日

平成30年4月12日

当事者の表示


別紙当事者目録記載のとおり
主1文
1審原告の控訴に基づき原判決主文第5項,及び第16項中金銭請求に関する部分を次のとおり変更する。
(1)

1審被告白石は,1審原告に対し,6181万7048円及び

これに対する平成27年5月26日から支払済みまで年5分の割
合による金員(うち351万0400円及びこれに対する平成2
7年11月20日から支払済みまで年5分の割合による金員につ
いては1審被告Aと連帯支払)を支払え。
(2)

1審被告Aは,1審原告に対し,1審被告白石と連帯して,3

51万0400円及びこれに対する平成27年11月20日から
支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
(3)

1審原告の1審被告白石,1審被告A及び1審被告Bに対する

その余の請求をいずれも棄却する。
2
1審被告白石,1審被告B及び1審被告共立の控訴をいずれも棄却する。

3
訴訟費用は,第1,2審を通じ,1審原告と1審被告白石との間では,これを2分し,その1を1審原告の負担とし,その余は1審被告白石の負担とし,1審原告と1審被告Aとの間では,これを50分し,その49を1審原告の負担とし,その余は1審被告Aの負担とし,1審原告と1審被告Bとの間では1審被告Bの負担とし,1審原告と1
審被告共立の間では1審被告共立の負担とする。
4
この判決は,第1項(1),(2)に限り,仮に執行することができる。
5
なお,原判決主文1~4項,6~9項,11~14項は,1審原告の訴えの取下げにより失効している。
事実及び理由

第1
1
控訴の趣旨
1審原告の控訴関係
(1)

原判決主文第5項を次のとおり変更する。

(2)

1審被告白石及び1審被告Aは,1審原告に対し,連帯して6181万
7048円及びこれに対する平成27年5月26日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2
1審被告白石,1審被告B及び1審被告共立の控訴関係
(1)

原判決中,1審被告白石,1審被告B及び1審被告共立敗訴部分を取り
消す。
(2)
第2
1
上記取消部分に係る1審原告の請求をいずれも棄却する。

事案の概要等(略称は原判決のそれに従う。)
本件は,名称を「生海苔異物分離除去装置における生海苔の共回り防止装置」とする発明に係る特許権(「本件特許権」又は「本件特許」)を有する1審原告が,①

原判決別紙物件目録1記載の生海苔異物除去機(本件装置

(WK型))及び同目録2記載の生海苔異物除去機(被告装置(LS型))が本件各発明の技術的範囲に属すること,②

同目録3記載の固定リング

(本件固定リング)及び同目録4記載の板状部材又はステンチップ(本件板状部材)は被告装置(被告装置(WK型)と被告装置(LS型)を併せたもの)の「生産にのみ用いる物」(特許法(以下「法」という。)101条1号)に当たることを主張して,1審被告らに対し,以下の各請求をした事案である。

(1)

1審被告白石及び1審被告Aに対する差止め及び廃棄請求
法100条1項に基づく被告製品(被告装置,本件固定リング及び本件板状部材を併せたもの)の譲渡,貸渡し又は譲渡若しくは貸渡しの申出の差止め


(2)

同条2項に基づく被告製品の廃棄
1審被告白石及び1審被告Aに対する損害賠償請求
主位的に,1審被告白石及び1審被告Aに対し,平成19年6月8日から平成27年4月1日までの特許権侵害の共同不法行為(1審被告Aに対しては予備的に会社法429条1項の責任)による損害賠償請求権に基づき6181万7048円及びこれに対する不法行為の日以後である同年5月26日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の連帯支払


予備的に,1審被告白石のみに対し,特許権侵害の不法行為による損害賠償請求権に基づき上記アと同額の支払

(3)

1審被告Bに対する差止め及び廃棄請求
法100条1項に基づく被告製品の譲渡,貸渡し又は譲渡若しくは貸渡しの申出(被告装置については輸出も含む。)の差止め


(4)

同条2項に基づく被告製品の廃棄
1審被告白石,1審被告A及び1審被告Bに対する損害賠償請求
主位的に,1審被告白石,1審被告A及び1審被告Bに対し,平成19年6月8日から平成27年10月14日までの特許権侵害の共同不法行為による損害賠償請求権に基づき5146万0920円及びこれに対する不法行為の日以後である同年11月20日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の連帯支払


予備的に,1審被告Bのみに対し,特許権侵害の不法行為による損害賠償請求権に基づき上記アと同額の支払

(5)

1審被告共立に対する差止め及び廃棄請求


法100条1項に基づく被告製品の譲渡,貸渡し又は譲渡若しくは貸渡しの申出(被告装置については輸出も含む。)の差止め


(6)

同条2項に基づく被告製品の廃棄
1審被告白石,1審被告A及び1審被告共立に対する損害賠償請求

主位的に,1審被告白石,1審被告A及び1審被告共立に対し,平成19年6月8日から平成27年8月25日までの特許権侵害の共同不法行為による損害賠償請求権に基づき3464万1548円及びこれに対する不法行為の日以後である同年11月20日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の連帯支払


予備的に,1審被告共立のみに対し,特許権侵害の不法行為による損害賠償請求権に基づき上記アと同額の支払

2
原判決は,上記1記載の各請求のうち,(1)の各請求のうち1審被告白石に対する各請求,(2)イの請求,(3)の各請求,(4)イの請求の一部,(5)の各請求,(6)イの請求を認容し,その余を棄却した。
1審原告は,原判決中上記1(2)アの請求を棄却した部分を不服として控訴し,1審被告白石,1審被告B及び1審被告共立はその敗訴部分を不服として控訴した。
なお,1審原告は,当審において,上記1(1),(3)及び(5)記載の各請求の訴えを取り下げ,1審被告らはこれに同意した。また,上記1(4)アの請求及びイの請求の一部を棄却した部分及び同(6)アの請求を棄却した部分については不服申立てがないから,当審における審理の対象ではない。

3
前提事実
前提事実は,以下のとおり付加訂正するほかは,原判決「事実及び理由」「第2

事案の概要」「2

前提事実」(原判決7頁20行目から14頁4行

目まで)に記載のとおりであるから,これを引用する。

(1)

原判決8頁1行目の「被告Aは」から同行目末尾までを,「被告Aは,
平成19年6月8日当時から現在までの間,被告白石の代表取締役を務める者である。」と改める。
(2)

原判決8頁7行目の「有している」を「有していたが,平成30年6月
12日の経過をもって同特許権は消滅する」と改める。
(3)

原判決13頁5行目の「申し立てた」の後に,「(以下「本件仮処分申
立事件」という。)」を加える。
(4)

原判決13頁12行目末尾に,改行の上,次のとおり付加する。



同支部裁判官は,同日,被告白石の本店において被告白石が保有する装置等の検証を行った(甲16,甲17の1。以下「本件検証」という。)。」

4
争点及び争点に対する当事者の主張
本件における当事者の主張は,原判決44頁23行目「複数が」を「複数」と改めるとともに後記5のとおり当審における補充主張を付加するほかは,原判決「事実及び理由」「第2

事案の概要」「3

争点」(原判決14頁5行

目から21行目まで)(ただし,争点(6)に係る記載部分を除く。)及び「第3
争点に関する当事者の主張」(原判決14頁22行目から45頁14行目
まで)(ただし,原判決15頁8行目から10行目まで,30頁22行目から31頁19行目まで及び32頁13行目から同頁22行目までを除く。)に記載のとおりであるから,これを引用する。
5
当審における補充主張
(1)

争点(1)(被告装置(LS型)の製造,販売の有無)について

(1審被告らの主張)

原判決は,被告装置(LS型)は被告装置(WK型)の型名を変更し
たにすぎず,その構成は被告装置(WK型)と同一であるとするが,以下のとおりその判断は誤りである。


被告装置(WK型)と被告装置(LS型)は装置の内部の構成が異なるだけで外観は同一であるから,被告装置(LS型)のパンフレットにおいて被告装置(WK型)と同じ外観写真を型名だけを変えて使用するのは自然であり,パンフレットの写真は被告装置(WK型)と被告装置(LS型)の構成が同一であることを根拠づけるものではない。


原判決は「LS-G」及び「LS-S」の型名の装置が被告装置(W
K型)と同一の構成を有すると認定した上で,「LS-R」及び「LS-L」の型名の装置についても被告装置(WK型)と同一の構成を有すると判断するが,証拠に基づかない不当な判断である。
(1審原告の主張)
争点(1)に関する原判決の判断に誤りはない。
(2)

争点(7)(共同不法行為等の成否)について

(1審原告の主張)

1審被告白石と1審被告Aの共同不法行為について
(ア)

原判決は,1審被告白石と1審被告Aの共同不法行為の成立を否定
したが,次のとおりその判断は誤りである。
(イ)

1審被告白石と1審被告Aは実質的に一体であり,1審被告白石の
不法行為は1審被告Aの不法行為と同視することができる。そのことは,以下のような点からも裏付けることができる。
a
1審被告Aは個人事業を法人化して1審被告白石を設立した。1審被告白石の取締役は1審被告Aと娘であるCの2名であり,1審被告Aが代表者として事業全般を統括し,株式の約9割を保有している。

b
1審被告白石の本店事務所の建物(所有者は1審被告A),1審被告白石が使用する倉庫(所有者は1審被告白石)及び1審被告A及びCの居宅(所有者は1審被告A)は1審被告Aの所有する土地上
に存在し,また,1審被告Aは1審被告白石のために物上保証人となっている。さらに,1審被告白石と1審被告Aが所有する2筆の土地は一体として第三者に賃貸されている。このように,1審被告Aは土地の所有及び利用関係において1審被告白石と1審被告Aを峻別する意識を欠いている。
c
1審被告白石の広告には「海苔機械の専門家」との記載があり,これは1審被告白石と1審被告Aが一体であることを示している。

d
1審被告白石における被告製品の取引態様は販売店からの注文をメーカーに伝えメーカーが販売店に納品するだけの単純なものであり会社組織でなければできないようなものではない。

(ウ)

1審被告Aは,渡邊機開と共謀し,本件仮処分申立事件において侵
害の心証開示がされた後,平成26年10月31日の本件仮処分決定までの間に渡邊機開から大量の侵害品を購入し,また,本件仮処分決定後,被告装置(WK型)を「LS-S」及び「LS-G」の型名で販売した。1審被告白石が容易にこのような違法行為に及ぶことができたのは,1審被告白石が会社としての実体を有しないからである。イ
1審被告Aの会社法429条1項に基づく責任について
(ア)

原判決は1審被告Aの同項に基づく責任を否定するがその判断は誤
りである。
1審被告Aは,平成22年6月4日,親和製作所の装置の販売が本件特許権を侵害する旨の警告書を受領したから,同日には本件特許権の存在及び内容を知っていたところ,次のとおり,1審被告Aがその職務を行うにつき悪意ないし重過失となった時期は,①
6月4日,②

予備的に平成24年1月12日,③

主位的に平成22年
さらに予備的に平

成26年11月1日である。
(イ)

平成22年6月4日時点での悪意又は重過失(①)
1審被告Aは海苔機械の専門家を自認していたのであるから,平成22年6月4日に警告書を受領したことにより,被告装置が本件特許権を侵害することを理解したはずである。また,仮に悪意でないとしても,専門家の意見を求めれば本件特許権の侵害について容易に判断が得られたはずであり,1審被告Aがこれを怠ったことは重大な過失に当たる。
(ウ)

平成24年1月12日時点での重過失(②)
1審被告Aは,平成24年1月12日,親和製作所と1審原告が本
件特許権侵害について暫定的な和解をしたことが記載された警告書を受領したのであるから,専門家の意見を求めれば本件特許権の侵害について容易に判断が得られたはずであり,1審被告Aがこれを怠ったことは重大な過失に当たる。
(エ)

平成26年11月1日時点での悪意又は重過失(③)仮に上記(イ)又は(ウ)が認められないとしても,前記ア(ウ)記載の事実
によれば,平成26年11月1日以降の被告装置の販売による本件特許権の侵害については1審被告Aに悪意又は重大な過失が認められる。(1審被告らの主張)

1審被告白石と1審被告Aの共同不法行為について
(ア)

1審被告白石と1審被告Aの共同不法行為に関する原判決の判断に
誤りはない。
(イ)

渡邊機開が本件仮処分決定前に被告装置を販売することは違法では
ないし,本件仮処分決定発令後であっても本件仮処分申立事件の当事者ではない1審被告白石が被告装置を販売することは違法ではない。1審被告白石は,「WK-550」型及び「WK-600」型を「LS-S」型及び「LS-G」として販売したわけではない。

1審被告Aの会社法429条1項に基づく責任について

(ア)

1審被告Aは,本件特許権の存在を知った平成22年6月以降も被
告装置の販売は本件特許権を侵害するものではないと認識しており,悪意ではない。
(イ)

1審被告Aは,親和製作所の装置についての通知を受けた後,及び,
1審原告が渡邊機開に対する特許権侵害訴訟を提起した後,渡邊機開から被告装置の販売は本件特許権を侵害しない旨の弁理士の見解を踏まえた説明を受け,被告装置の販売を継続しても問題はないと判断したのであり,職務を行うにつき重過失があったとはいえない。
(3)

争点(9)(損害発生の有無及びその額)について

(1審被告らの主張)

1審被告Bの販売に係る損害について
原判決は,1審被告Bの利益を算定するに際し,①
セット販売に係

る「TM-6」,「AB塔」及びタンクの時価相当額,②代,③

下取り評価額と時価額との差額,④

タンク整備

被告装置の設置費用の控

除をいずれも否定したが,以下のとおり,その判断は誤りである。(ア)

1審被告Bが「TM-6」,「AB塔」及びタンクを被告装置とセ
ットで販売したことは,購入者の陳述書からも明らかである。セット販売とは,被告装置を購入してもらうために値引きに代えて商品現物を無償で提供するものであるから,被告装置の販売価額からセット販売に係る商品の時価相当額を控除すべきである。
(イ)

1審被告Bがタンクの整備を行ったことは,購入者の陳述書からも
明らかである。タンクの整備を無償で行うことが被告装置の販売につながるのであるから,被告装置の販売価額からタンク整備代を控除すべきである。
(ウ)

原判決別紙「被告Bの販売数及び販売利益」の番号(06)の取引
について,乙36の4にある「下取り機」の「-950000」の記
載は,下取り機の時価35万円程度と値引き分60万円を一括して記載したものであるから,値引き分60万円を控除すべきである。
(エ)

1審被告Bは,手持ちの資材及び部品を用いて被告装置を設置した
ところ,可能な限り部品の仕入れ単価に関する証拠を提出しているのであるから,これに基づいて設置費用を控除すべきである。「夜間,早朝時間外手当」を計上したのは設置の時間帯は夜間や早朝が多いためであり,不当ではない。

1審被告共立の販売に係る損害について
(ア)

原判決は,1審被告共立の利益を算定するに際し,値引き分や費用
等の控除を否定したが,以下のとおり,その判断は誤りである。
(イ)

1審被告共立は平成24年11月10日に被告装置を販売した後,
顧客に代金の一部の25万円を値引き分として返金した。
(ウ)

1審被告共立は,平成25年11月2日に被告装置を「値引き・据
付材料費及び消費税込み」で675万円として販売したが,被告装置そのものの販売価格は525万円である。
(エ)

中古品の販売利益を算出するに際しては,点検,整備費及び据付け
材料・工事費(15万円)ないし固定,選別プレート交換他整備費用(40万)を販売価格から控除すべきである。

寄与度について
(ア)

原判決は,本件各発明の寄与度による減額を否定したが,以下のと
おりその判断は誤りであり,本件各発明の寄与度は被告装置につき10%,本件固定リングにつき25%,本件板状部材につき100%である。
(イ)

本件各発明は,生海苔異物除去装置において付加的なものであり,
また,被告装置の価格が250万円~500万円であるのに対し,本件板状部材及び本件固定リングの単価は合計4万5000円程度であ
ることからしても,本件各発明が生海苔異物分離除去装置の中心的部分に関するものであるとする原判決の判断は誤りである。
(ウ)

需要者が被告装置を購入する際に着目したのは異物分離除去機能で
あり共回り防止機能ではないから,本件各発明が「需要者の購買行動に強い影響を及ぼすものと推察される」との原判決の判断は,誤りである。
(エ)

被告装置における異物分離除去に関する構成は,無効が確定した親
和製作所の特許権(特許番号第2662538号。以下「親和特許」という。)に係る発明の技術的範囲に属するから,特許権侵害の損害賠償額を決する際には,親和特許と本件各発明の寄与度に応じ賠償額が按分される。このことは親和特許の無効が確定しても変わらないはずであり,何らの正当な理由もなく親和特許の権利を1審原告に帰属させることと同じ結果となる原判決の判断は不合理である。
(オ)

渡邊機開は平成29年度には,板状部材を有しない「MX型」装置
を製造販売し,平成29年秋から平成30年春まで支障なく稼働されているから,本件各発明の実施は需要者にとって必須ではない。
(カ)

原判決は,従来の装置の現在における販売実績等の主張立証がない
と判示するが,このような主張立証を要するのであれば釈明権を行使すべきであった。また,原判決は,本件各発明が被告製品に寄与する割合を減ずべきである旨の1審被告らの主張は具体性を欠く旨判示するが,具体性を欠くというのであればその旨の釈明を行うべきであった。原審の審理には釈明権不行使の違法がある。
(1審原告の主張)

1審被告らの主張について
1審被告B及び1審被告共立の被告製品の販売による利益の額の算定並びに寄与度に関する原判決の判断に誤りはない。


会社法429条1項に基づく損害賠償額
上記(2)(1審原告の主張)イ(イ)~(エ)記載の各時点以降の1審被告白石による被告装置の販売による1審原告の損害額は次のとおりである。(ア)

平成22年6月4日以降

a
販売利益

b
弁護士費用

(イ)

販売利益

b
弁護士費用

341万6000円

販売利益

b
弁護士費用

1863万6500円

1694万2500円
169万4000円

平成26年11月1日以降

a
(4)

3416万0925円

平成24年1月12日以降

a
(ウ)

3757万6925円

351万0400円

319万1400円
31万9000円

争点(10)(消滅時効の成否)について

(1審被告の主張)

原判決は,1審被告らの消滅時効の主張を排斥したが,次のとおり,その判断は誤りである。


1審原告による調査
(ア)

1審原告は,平成19年6月頃に被告装置の販売状況についての調査
を開始したが,1審原告が被告装置の販売業者を正確に把握していたことは,渡邊機開に対する特許権侵害差止等請求訴訟(東京地裁平成25年(ワ)第32555号事件)における1審原告の主張中の「海苔生産現場毎の実数調査」(乙82-5頁。以下「本件実数調査」という。)の数値が正確であったことからも裏付けられる。
(イ)

海苔生産業界は狭い業界であるから業界関係者の間では具体的な販売
店名を含む流通経路は周知であり,1審原告も平成19年6月頃には,1審被告らが渡邊機開の製品を扱っていることを知っていた。


フルテックによる調査
(ア)

フルテック柳川営業所の責任者のDは,平成19年6月以降の早い
時期に,被告装置の販売状況に関する調査を開始し,調査結果を1審原告代表者及び1審原告の担当部署に報告していた。Dは,1審被告Bが平成21年12月15日に海苔生産者であるEの作業所に被告装置を納入した事実を認識し,直ちに1審原告に報告した。
Dは,1審原告による親和製作所の装置及び被告装置の調査を知ったのは平成27年8月以降である旨証言するが,これは1審原告が親和製作所及び渡邊機開を提訴した時期(順に平成22年6月30日及び平成25年12月11日)からして信用できず,Dがこのように虚偽の証言をしたのは,自身が1審原告の調査に関与し結果を1審原告に報告していたことを隠蔽するためであることは明らかである。
(イ)

フルテックの従業員であったFは,平成21年7月15日の時点で,
1審被告白石及び1審被告Bが被告装置を販売していることを認識していた。
(ウ)

1審原告とフルテックは組織上も業務遂行上も一体であり,フルテ
ックが認識した情報は,1審原告が即時に認識したものと推認するのが合理的である。

展示会の開催
1審被告白石は,平成19年から平成21年にかけての毎年4月の展示会に出展ブースを設けて被告装置を展示し,また,平成20年及び平成21年には,1審被告Bの従業員が被告装置の説明や対応のため1審被告白石のブースに参加した。他方,1審原告及びフルテックは,上記展示会で1審被告白石のブースと近接した場所に,1審原告及びフルテックの協賛で出展ブースを設けていた。
以上によれば,1審原告ないしフルテックは,上記展示会が行われた①
平成19年4月23日ないし24日,②
又は③

平成20年4月4日ないし5日,

平成21年4月3日ないし4日には,1審被告白石及び1審被告

Bが被告装置を販売していたことを認識したはずである。

1審被告白石について
(ア)

上記イ~エ及び以下の事情によれば,1審原告は,遅くとも1審原
告が親和製作所に対する訴訟を提起した平成22年6月30日までには1審被告白石が被告装置を販売していたことを現実に了知したといえる。(イ)

1審被告白石は,平成19年から平成24年8月25日までの間に
合計158台の被告装置を販売した。
(ウ)

フルテックは,平成12年9月に1審被告白石から「渡辺機開工業
価格表」(乙64の1)を入手しており,1審原告は同月には1審被告白石が渡邊機開の製造する生海苔異物除去装置を取り扱っていることを認識したはずである。また,1審原告は,平成21年中に,永松工業を通じて1審被告白石が永松工業に被告装置を販売したことを認識したはずである。

1審被告Bについて
上記イ~エに加え,1審被告Bは,平成19年から平成24年8月25日までの間に合計72台の被告装置を販売したことからすれば,1審原告は,遅くとも1審原告が親和製作所に対する訴訟を提起した平成22年6月30日までには1審被告Bが被告装置を販売していたことを現実に了知したといえる。


1審被告共立について
(ア)

上記イ及び以下の事情によれば,1審原告は,遅くとも1審原告が親和製作所に対する訴訟を提起した平成22年6月30日までには1審被告共立が被告装置を販売していたことを現実に了知したといえる。
(イ)

1審被告共立は,平成19年から平成24年8月25日までの間に
合計27台の被告装置を販売した。
(ウ)

1審原告は,平成24年4月17日に,甲市のアポロ水産において被告装置(「WK-700」型)の写真(甲8の3)を撮影したが,アポロ水産は1審被告共立と取引がある事業所であるから,1審原告は,上記写真を撮影した時点で,1審被告共立が被告装置を販売した事実を知ったはずである。

(1審原告の主張)

消滅時効の成否に関する原判決の判断に誤りはない。


1審原告は,平成19年6月頃から平成21年3月よりも後の時点で,親和製作所の装置と本件各発明の対比及び本件特許の有効性の調査を開始したが,平成19年6月から被告装置の販売経路や販売業者の調査を開始したわけではない。また,本件実数調査は,平成26年の夏ごろから開始した調査の結果であり,各地域の海苔生産者数から推測したもので,どの販売店がどの生産者に販売したかを逐一調査したわけではない。
第3
1
当裁判所の判断
本件各発明の意義
本件訂正明細書等の記載及び本件各発明の意義については,原判決「第4当裁判所の判断」「1

本件各発明の意義」(原判決45頁16行目から52

頁23行目まで)に記載のとおりであるから,これを引用する。
2
争点(1)(被告装置(LS型)の製造,販売の有無)について
(1)

争点(1)(被告装置(LS型)の製造,販売の有無)についての判断は,
次のとおり訂正し,下記(2)のとおり付加するほかは,原判決「第4判所の判断」「2

当裁

争点(1)(被告装置(LS型)の製造,販売の有無)に

ついて」(原判決52頁24行目から54頁16行目まで)に記載のとおりであるから,これを引用する。

原判決53頁15行目の「残り1台は」から同頁23行目末尾までを次
のとおり改める。
「残り1台は被告白石により保管され,本件検証において「機械3」として検証の対象とされた。被告Aは,本件検証の際,「機械3」に関し,仕入れたWK-600型の機械につき板状部材を使用しない仕様にし,「LS-G」型という型名にして展示会に出品したものである旨説明したが,本件検証の検証調書(甲17の1。以下「本件検証調書」という。)によれば,「機械3」の表面には「LS-G」という型番が表示され,内部には環状固定板に板状部材が取り付けられており,その構成は被告装置(WK型)と同一であった(本件検証調書添付写真7~9丁)。また,型名を「LS-S」とするものに関し,被告白石は,平成27年2月26日,鶴商に対し,被告装置(「WK-550」)を「LS-S」型として販売した(甲12の3の資料1,甲17の2添付請求書9丁)。」

原判決54頁14行目の「のであって,」から同頁16行目「である」までを削除する。

(2)

当審における1審被告らの主張について
1審被告らは,被告装置(WK型)と被告装置(LS型)の外観は同一であるから,被告装置(LS型)のパンフレットに被告装置(WK型)の外観写真を使用することは自然であると主張する。
しかし,渡邊機開の平成27年2月13日付けパンフレット(甲19)は本件仮処分決定の後に作製されたものであるところ,仮処分決定において侵害品であると判断された製品について構成を変更したのであれば,構成を変更した旨を明らかにするのが通常であり,構成を変更したにもかかわらずこれを明らかにせずに被告製品(WK型)の写真をそのまま使用するのが自然であるとはいい難い。


1審被告らは,「LS-R」及び「LS-L」の型名の装置が被告装置(WK型)と同一の構成を有する旨の原判決の判断は証拠に基づかない
不当なものであると主張する。しかし,1審被告白石が被告装置(WK型)を「LS-G」ないし「LS-S」の型名として取り扱っていたことは上記引用に係る原判決に認定したとおりであり,これに加え,渡邊機開等のパンフレットにおいて「LS-R」及び「LS-L」の型名の装置がそれぞれ「WK-500」及び「WK-700」に対応していること(上記引用に係る原判決第4の2(2))からすれば,たとえ具体的に構成を比較した証拠がなくとも,被告装置(WK型)が被告装置(「LS-R」及び「LS-L」)と構成を同じくすることは十分に認定することが可能であるというべきであり,原判決の認定判断に誤りはない。ウ3
以上より,1審被告らの主張はいずれも採用し得ない。

争点(2)~争点(5)については,次のとおり訂正するほかは,原判決「第4当裁判所の判断」「3
から「9

争点(2)ア(構成要件B2等の充足性)について」

争点(5)イ(乙16の2発明の実施である事業の準備に基づく渡邊
機開の先使用権)について」まで(原判決54頁17行目から90頁14行目まで)に記載のとおりであるから,これを引用する。
(1)

原判決64頁2行目の「本件発明」を「本件発明1」と改める。

(2)

原判決77頁6行目の「が押し出される」を「が排出され,隙間を通過
できなかった」と改める。
4
争点(7)(共同不法行為等の成否)について
(1)

1審被告白石の販売に係る損害賠償請求について(請求の趣旨第5項)1審被告白石の不法行為について
1審被告白石の不法行為についての判断は,原判決「第4
の判断」「11

当裁判所

争点(7)(共同不法行為等の成否)について」「(1)

被告白石の販売に係る損害賠償請求について(請求の趣旨第5項)」「ア

被告白石の不法行為について」(原判決90頁26行目から91

頁3行目まで)に記載のとおりであるから,これを引用する。


1審被告Aの共同不法行為等について
(ア)

1審被告白石と1審被告Aの共同不法行為について
1審原告は,①



1審被告白石の設立の経緯や役員及び株主の構成,

1審被告白石と1審被告Aにおける土地の所有及び利用関係,③
1審被告白石が「海苔機械の専門家」との広告をしていること,④
1
審被告白石における取引は会社組織でなければできないものではないこと,⑤

1審被告白石が,本件仮処分申立事件における裁判所の心証開

示後,渡邊機開から大量の侵害品を購入したことなどから,上記アの1審被告白石の不法行為は1審被告Aの不法行為と同視でき,1審被告白石の販売について1審被告白石と1審被告Aの共同不法行為が成立すると主張する。
しかし,1審被告白石は,昭和53年6月12日に設立され,海苔機械の販売及びコインランドリーの経営の事業を行い,複数の従業員を雇用し,不動産を所有し,金融機関から借入れをし,その売上げを1審被告Aの収入と別に記帳・管理するなど,1審被告Aとは別個の法人格を有し,独自に事業活動の主体となっていることが認められ(甲12,甲17の1及び2,乙73並びに弁論の全趣旨),1審原告の主張する点を考慮しても,1審被告白石と1審被告Aが実質的に一体であるとはいえず,上記アに認定した1審被告白石の不法行為を1審被告Aの不法行為と同視すべきであるとの1審原告の主張を採用することはできない。また,1審被告Aが1審被告白石の代表者としての行為を超えて別個に,個人として不法行為に及んだことを認めるに足りる的確な証拠もない。(イ)
a
会社法429条1項の責任について
1審原告は,1審被告Aは,①

平成22年6月4日から,②

成24年1月12日から,又は少なくとも③


平成26年11月1日

から,1審被告白石の被告装置の販売による特許権侵害に関し,その
職務を行うにつき悪意ないし重過失である旨の主張をする。
b
証拠及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。
(a)

1審被告Aは,1審被告白石の代表取締役であり,1審被告白

石の事業全般を統括していたが,平成22年6月4日,1審被告白石宛ての1審原告の通知書(親和製作所の装置の販売が本件特許権侵害である旨を指摘するもの)を受領し,本件特許権の存在を知るに至った。さらに,1審被告Aは,平成24年1月12日,1審被告白石宛ての1審原告の通知書(親和製作所と1審原告の和解に関するもの)を受領した。(甲15の資料5,資料9,乙73)
(b)

東京地方裁判所は,本件仮処分申立事件についての平成26年

10月8日の審尋期日において,被告装置(WK型)が本件特許権に係る発明の技術的範囲に属する旨の心証開示をした。(甲18)(c)

1審被告白石は,平成26年10月24日から同月28日まで

の間に,渡邊機開から,被告装置(WK型)を合計14台,本件板状部材153個及び本件固定リング123個を購入した。1審被告白石の平成23年から平成25年にかけての本件固定リングの購入数は合計20個未満であり,平成26年10月24日から同月28日までの本件固定リングの購入量はこれまでの取引状況に比して突出して多い。(甲17の1,2)
(d)

東京地方裁判所は,平成26年10月31日,渡邊機開による

被告製品(WK型),本件固定リング及び本件板状部材の販売等を差し止める旨の本件仮処分決定をし,1審原告は,同年11月4日付け通知により1審被告白石に対しその旨を通知した。(甲15の資料10)
(e)

1審被告白石は,本件仮処分決定後は,平成26年11月14

日頃から平成27年4月1日にかけて被告装置を販売した。

(f)

1審被告白石は,平成27年2月26日,鶴商に型式名を「L

S-S」とする被告装置(実質は「WK-550」)を販売し,また,同年5月までには,渡邊機開からWK型として仕入れた被告装置(「WK-600」)に,構成の変更がないのに「LS-G」型の表示を付したものを取り扱っていた。(上記2(1),甲22)c
1審被告Aは,1審被告白石の事業全般を統括していたのであるから,1審被告白石の取引実施に当たっては,第三者の特許権を侵害しないよう配慮すべき義務を負っていたというべきである。この観点から1審被告Aの責任について検討してみると,まず,平成22年6月4日及び平成24年1月12日の時点で,1審被告Aにおいて,被告装置が本件特許権に係る発明の技術的範囲に属することを知っていたことを認めるに足りる証拠はない。なお,平成24年1月12日頃に1審被告白石が1審原告から通知書を受領したことは上記b(a)のとおりであるが,その通知書の内容は親和製作所の装置に関するものであり,渡邊機開製の被告装置とは直接関わるものではなかったのであるから,1審被告Aが上記時点において被告装置につき専門家に問い合わせるなどの調査等をせず,被告装置の販売を中止しなかったからといって,1審被告Aに重過失があったとすることはできない。
これに対し,上記b(d)によれば,1審被告Aは平成26年11月初旬には本件仮処分決定について知ったものと認められるから,これによって被告装置が本件特許権を侵害するおそれが高いことを十分に認識することができたと認められる。ところが,1審被告Aは,本件仮処分決定を踏まえて,中立的な専門家の意見を聴取するなどの検討をした形跡もないまま,取引を継続し,さらに被告装置の型式名について工作をするなどしているのであり,これら上記bに認定した本件仮処分決定前後の経過に照らせば,同月以降の1審被告白石による被
告装置の販売を中止するなどの措置をとらなかった1審被告Aには,1審被告白石による本件特許権侵害について悪意又は少なくとも重大な過失があったというべきである。
よって1審被告Aは,1審被告白石による被告装置の販売に係る
同月以降の本件特許権侵害について,会社法429条1項の責任を負う。
(2)

1審被告Bの販売に係る損害賠償請求について(請求の趣旨第10項)
及び1審被告共立の販売に係る損害賠償請求について(請求の趣旨第15項)の判断は,原判決「第4

当裁判所の判断」「11

争点(7)(共同不法行

為等の成否)について」「(2)

被告Bの販売に係る損害賠償請求について

(請求の趣旨第10項)」「ア

被告Bの不法行為について」(原判決91

頁14行目から同頁17行目まで)及び「(3)

被告共立の販売に係る損害

賠償請求について(請求の趣旨第15項)」(原判決92頁1行目から同頁6行目まで)に記載のとおりであるから,これを引用する。
5
争点(8)(過失推定の覆滅の有無)について
争点(8)(過失推定の覆滅の有無)についての判断は,原判決「第4判所の判断」「12

当裁

争点(8)(過失推定の覆滅の有無)について」(原判決

92頁7行目から同頁14行目まで)に記載のとおりであるから,これを引用する。
6
争点(9)(損害の発生の有無及びその額)について
(1)

争点(9)(損害の発生の有無及びその額)については,次のとおり付加訂
正し,また,下記(2)及び(3)のとおり付加するほかは,原判決「第4判所の判断」「13

当裁

争点(9)(損害の発生の有無及びその額)について」

(原判決92頁15行目から102頁4行目まで)に記載のとおりであるから,これを引用する。

原判決92頁18行目,同93頁11行目の各「以降における」を,そ
れぞれ「から平成27年4月1日までの」と改める。

原判決93頁26行目,及び同94頁10行目の各「以降における」を,それぞれ「から平成27年10月14日までの」と改める。


原判決94頁20行目の「による」の後に,「平成19年6月8日から平成27年10月14日までの」を加える。


原判決95頁16行目の「(06)」を「(26)」と改める。


原判決96頁24行目の「この点に関して」から同頁26行目末尾までを次のとおり改める。
「被告Bがタンク整備を行っていたとしても,被告装置の販売に伴い無償で行ったものというべきであり,また,タンク整備に係る費用を被告装置の販売に伴う費用であるということもできないから,タンク整備費用相当額を控除すべきであるとはいえない。」


原判決97頁7行目の「乙74」の後に,「,乙87-1-1」を加える。


原判決98頁13行目の「上記」から同頁15行目の「実際に」までを,「上記設置費用は,被告装置の設置場所に関わらず機種及び年度毎に一律に算出されたものであり,「夜間,早朝時間外手当」など常に必要とまでは認められない上に計算根拠が不明な費目も含まれており,販売された各被告装置の設置場所ごとに実際に」と改める。


原判決99頁4行目,同99頁10行目の各「による」の後に,それぞれ「平成19年6月8日から平成27年8月25日までの」を加える。

原判決99頁22行目の「主張する。」を,「主張し,同旨の陳述書(乙75,乙91-6-1)を提出する。」と改める。


原判決100頁1から2行目にかけての「これをもって」を,「上記領収証及び上記陳述書から」と改める。


原判決101頁16行目の冒頭から102頁4行目の末尾までを次のと
おり改める。


本件各発明は,生海苔異物分離除去装置のそのものの発明ではないが,生海苔異物分離除去装置において生海苔が異物分離機構のクリアランスに導かれる際の共回りを防止する共回り防止装置の発明であり,共回り現象の発生を回避してクリアランスの目詰まりをなくし,効率的・連続的な異物分離を実現するものであって(上記1(1)イ,ウ,オ,キ参照),装置の稼働効率に大きな影響を及ぼすものであると考えられることからすれば,生海苔異物分離除去装置の中心的部分に関する発明ということができる。
また,証拠(甲13の1,甲15)及び弁論の全趣旨によれば,原告が本件訴訟において損害賠償を求める被告製品の販売期間(平成19年6月8日から同年10月14日まで)における生海苔異物分離除去装置の主たる製造者は,原告,渡邊機開及び親和製作所のみであったところ,上記期間において,回転盤とクリアランスを利用する生海苔異物分離除去装置で本件各発明の構成を備えていない製品が,本件各発明の実施品に匹敵する規模で販売された事実はうかがわれず,上記期間においては本件各発明の構成を有する生海苔異物分離除去装置が市場において主流を占めていたものと推認される。
そうすると,原告が本件訴訟において損害賠償を求める被告製品の販売期間において,従来技術に係る装置が抱える共回り防止という課題の解決が需要者にとって非常に重要であったことがうかがわれ,本件各発明が需要者の購買行動に強い影響を及ぼすものであったものということができる。
なお,本件各発明の構成が有用となるのが海苔の収穫期全体から見て一時期にとどまるとしても,時期に応じて回転円盤を交換する煩雑さ等を考慮すると,需要者としては共回りに対応し得る構成の機種を購入し,
収穫期を通じて使用するのが通常であるといえるから,本件各発明の構成が有用となる期間の長短により需要者の購入動機に占める重要性が減ずるものではない。また,被告らが指摘する被告装置のクリアランスの隙間を調整する機能は,海苔の収穫期を通じてクリアランスの目詰まりを防止する作用を有するものではないから,本件各発明の代替技術とはなり得ないところ,このような機能を有することにより,本件各発明が需要者の購入動機に占める重要性が減ずることを認めるに足りる証拠もなく,本件各発明の実施品の顧客吸引力に関わらず原告がその販売の機会を持ち得なかったと見るべき事情ということはできない。
以上によれば,原告の損害額を算定するに当たり,被告製品の販売により被告らが受けた利益につき,本件各発明の寄与度を考慮して減額すべきであるとは認められない。」
(2)

当審における1審被告らの主張について
1審被告Bの販売に係る損害について
1審被告らは,1審被告Bの利益を算定するに際し,①
セット販売

に係る「TM-6」,「AB塔」及びタンクの時価相当額,②整備代,③

下取り評価額と時価額との差額,④

タンク

被告装置の設置費用

の控除をいずれも否定した原判決の判断は誤りであると指摘するが,この点についての判断は,上記引用に係る原判決に判示するとおりであり,その認定判断に誤りはない。

1審被告共立の販売に係る損害について
1審被告らは,1審被告共立の利益を算定するに際し,値引き分や費用等の控除を否定した原判決の判断は誤りであると指摘するが,この点についての判断は,上記引用に係る原判決に判示するとおりであり,その認定判断に誤りはない。


寄与度について

上記引用にかかる原判決に判示したとおり,本件各発明は生海苔異物分離除去装置の中心的部分に関する発明であると評価すべきであり,この点は,本件各発明に係る構成の部品の単価により左右されるものではないから,本件各発明は付加的なものに過ぎないとの1審被告らの主張は採用できない。
1審被告らは,共回り防止ではなく異物分離除去機能が被告製品の購入動機である旨の被告製品の購入者の陳述書(乙86~98の各枝番1-1)を提出するが,これらの陳述は本件各発明の構成を有しない異物分離除去機能を想定したものとはうかがわれず,上記判断を左右するものではない。
1審被告らは,親和特許と本件特許権の寄与度を考慮して本件特許権侵害による損害額を算出すべきであると主張するが,親和特許の無効が確定していることからすれば(争いのない事実),親和特許と本件特許権の寄与度を考慮する前提を欠き,1審被告らの主張は採用できない。1審被告らは,渡邊機開が,平成29年3月以降,本件板状部材の構成を有しない生海苔異物分離除去装置を発売した旨主張するが,これは,1審原告が本件訴訟において損害賠償を求める被告製品の販売期間後の事情であり,上記判断を左右するものではない。
さらに,1審被告らは,原審の審理には釈明権行使の違法があると主張するが,審理経過に照らせば,釈明権を行使すべき義務があったとは認められない。
(3)

当審における1審原告の主張について
上記4(1)イ(イ)のとおり,1審被告Aは,平成26年11月以降の1審被
告白石による被告装置の販売に係る1審原告の損害につき会社法429条1項に基づく損害賠償責任を負うところ,同月以降平成27年4月1日までの被告装置の販売による1審原告の損害は319万1400円であり(弁論の
全趣旨),相当因果関係ある弁護士費用は31万9000円と認めるのが相当である。また,同項の責任に係る損害賠償債務は期限の定めのない債務であるから,遅延損害金の起算日は請求の日の翌日である同年11月20日(訴状送達日の翌日)と認める。
7
争点(10)(消滅時効の成否)について
(1)

争点(10)(消滅時効の成否)については,次のとおり訂正し,また,下
記(2)のとおり付加するほかは,原判決「第4

当裁判所の判断」「14

争点(10)(消滅時効の成否)について」(原判決102頁5行目から105頁5行目まで)に記載のとおりであるから,これを引用する。

原判決102頁21行目の「被告装置が」から同頁24行目「上記当
時,」までを,「親和製作所の装置及び被告装置が特許侵害品であると判断して調査を開始していた旨の記載があるが,調査の具体的内容や個別の調査の着手及び完了の時期は不明であり,この記載から,原告が,同月に被告装置の販売経路や販売業者の具体的な調査を開始したと認めることはできない。また,原告が親和製作所に対する訴訟を提起したのは平成22年6月30日,渡邊機開に対する訴訟を提起したのは平成25年11月11日であるところ(弁論の全趣旨),被告らの販売地域における被告装置の販売状況に関する調査が,被告らが消滅時効の起算点として主張する平成24年5月25日ないし同年8月25日までに完了したことを裏付ける的確な証拠はない。そして,平成19年6月頃の当時,」と改める。

原判決103頁18行目の「原告が」から同頁19行目「時点におい
て,」までを,「被告が消滅時効の起算点として主張する平成24年5月25日ないし同年8月25日までの間において,」と改める。
(2)

当審における1審被告らの主張について
1審被告らは,1審原告が渡邊機開との間の訴訟で主張した本件実数調
査の内容が正確であることから,1審原告は1審被告らが被告製品を販売していることを現実に了知していた旨主張するが,1審原告が上記訴訟において本件実数調査に基づく主張をしたのは平成26年10月29日であり(弁論の全趣旨),本件実数調査の正確性は平成24年5月25日ないし同年8月25日の時点の1審原告の認識を裏付けるものではない。また,1審被告らは,1審原告が,平成19年には1審被告らが渡邊機開の製品を取り扱っていることを知っていたと主張するが,渡邊機開の製品は被告製品に限られるものではないから,被告製品の販売を現実に了知していたことにはならない。

1審被告らは,①

Dが,平成19年6月以降の早い時期から被告装置

の販売状況の調査を開始し,また,1審被告Bが平成21年12月にEの作業所に被告装置を納入した事実をその頃に認識したこと,②
フル

テックのFは同年7月15日時点において1審被告白石及び1審被告Bが被告装置を販売していることを認識していたことを主張するが,D及びFが1審原告に上記各事実を報告したことや,報告した時期が平成24年5月25日ないし同年8月25日以前であることを認めるに足りる的確な証拠はない。なお,1審被告らは,フルテックが認識した情報は1審原告が即時に認識したものと推認できると主張するが,1審原告の本社とフルテックは,別個の法人である上,両者の営業所の所在地も異なるところ(弁論の全趣旨),このように推認するに足りる事情は見当たらない。1審被告らは,1審原告による親和製作所及び渡邊機開に対する訴訟の提起より後に,1審原告が被告装置の調査をしていることを知った旨のDの証言が虚偽であると主張するが,1審原告が上記訴訟を提起するために被告装置の販売経路をすべて把握する必要があるとはいえないから,Dの証言が虚偽であると断ずることはできない。

1審被告らは,1審原告と1審被告白石及び1審被告Bが同一の展示会
に参加していたことから1審原告は1審被告白石及び1審被告Bが被告装置を販売していたことを認識していた旨主張するが,1審原告の具体的な認識内容を認めるに足りる的確な証拠はない。

1審被告らが主張するその余の点も推測に過ぎず,1審被告らの主張する消滅時効の起算点である平成24年5月25日ないし同年8月25日以前に,1審原告が1審被告らによる被告製品の販売を現実に了知したと認めることはできず,1審被告らの主張はいずれも採用できない。
第4

結論
以上より,1審原告の1審被告らに対する請求のうち,1審被告白石,1審被告B及び1審被告共立に対する不法行為(民法709条)に基づく損害賠償の各請求は理由があり(ただし,1審被告Bについては請求の一部),1審被告白石及び1審被告Aの共同不法行為に基づく損害賠償請求には理由がないから,これを前提とする原判決の判断に誤りはなく,この点に関する1審原告並びに1審被告白石,1審被告B及び1審被告共立の控訴は理由がない。他方,1審原告の1審被告Aに対する会社法429条1項に基づく損害賠償請求については,351万0400円及びこれに対する平成27年11月20日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金につき1審被告白石との連帯支払を求める限度で理由があるから,その限度で認容し,その余を棄却すべきところ,これと異なり,1審被告Aに対する会社法429条1項に基づく損害賠償請求を全部棄却した原判決は一部失当であり,この点に関する1審原告の控訴の一部は理由がある。
そこで,原判決中1審被告白石及び1審被告Aに対する金銭請求に関する部分を主文のとおり変更すべきである。なお,1審原告は,当審において,原審で求めていた1審被告らに対する各差止め及び廃棄請求の訴えを取り下げたので,原判決主文1~4項,6~9項,11~14項は,当然にその効力を失っているから,その旨を明らかにすることとして,主文のとおり判決する。
知的財産高等裁判所第3部

裁判長裁判官
鶴岡高橋寺田稔彦
裁判官

裁判官

利彦
(別紙)
当事者
控訴人兼被控訴人

目録
フルタ電機株式会社
(以下「1審原告」という。)

同訴訟代理人弁護士

小南明也
被控訴人兼控訴人

有限会社白石海苔機械センター
(以下「1審被告白石」という。)

被控訴人
A
(以下「1審被告A」という。)

控訴人
B商会こと
B
(以下「1審被告B」という。)

控訴人
株式会社共立機械商会
(以下「1審被告共立」という。)

上記4名訴訟代理人弁護士

塩見渉塩見明以上
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