判例検索β > 平成30年(わ)第2号
有印公文書偽造・同行使・詐欺被告事件
事件番号平成30(わ)2
事件名有印公文書偽造・同行使・詐欺被告事件
裁判年月日平成30年6月7日
法廷名高知地方裁判所
戻る / PDF版
平成30年6月7日宣告
平成30年(わ)第2号

主文
被告人を懲役2年6月に処する
この裁判が確定した日から5年間その刑の執行を猶予する。
押収してある普通預金等払戻請求書13通(平成30年押第3号符号1ないし13)及び払戻請求書22通(同号符号14ないし35)の各偽造部分を没収する。
理由
(罪となるべき事実)
被告人は,平成21年4月1日から平成28年3月31日までの間,高知県高岡郡a町bc番地dA役場において,出納室出納係として,同町の預金の出納及び保管等の業務に従事していたものであるが,同町が指定する金融機関にA会計管理者名義で開設していた預金口座から,自己の用に供する目的で不正に現金を引き出すことを企て
第1

別表1記載のとおり,平成23年3月25日から同年5月31日までの間及び平成26年9月30日から平成28年3月14日までの間,
13回にわたり,
同役場出納室において,行使の目的で,ほしいままに,普通預金等払戻請求書のおなまえ欄に「A会計管理者B」又は「A会計管理者C」などと刻したゴム印を押した上,店番欄に「●●●」,口座番号欄に「●●●●●●●」などと各記入するなどして,お届け印欄に「A会計管理者印」と刻した公印を押した上で,いずれもその頃,同役場内に所在する株式会社D銀行E支店において,同支店職員Fほか2名に対し,前記偽造にかかる普通預金等払戻請求書を真正に成立したもののように装って提出行使して現金の払戻しを請求し,同人らをして,正当な権限に基づく払戻請求であると誤信させ,よって,その頃,前記同支店において,同人らから現金合計922万円の交付を受け
第2

別表2記載のとおり,平成23年8月1日から平成26年4月24日までの間,22回にわたり,同役場出納室において,行使の目的で,ほしいままに,払戻請求書のおなまえ欄に「A会計管理者B」又は「A会計管理者C」などと刻したゴム印を押した上,口座番号欄に「●●●●●●●」などと各記入するなどして,お届け印欄に「A会計管理者印」と刻した公印を押した上で,いずれもその頃,同役場内に所在するG協同組合本所において,同店舗職員Hほか6名に対し,前記偽造にかかる払戻請求書を真正に成立したもののように装って提出行使して現金の払戻しを請求し,同人らをして,正当な権限に基づく払戻請求であると誤信させ,よって,その頃,前記同店舗において,同人らから現金合計545万4200円の交付を受け

もってそれぞれ人を欺いて財物を交付させたものである。
(証拠の標目)(省略)
(法令の適用)
被告人の判示第1及び判示第2の各所為のうち,各有印公文書偽造の点はいずれも刑法155条1項に,各偽造有印公文書行使の点はいずれも同法158条1項,155条1項に,各詐欺の点はいずれも同法246条1項にそれぞれ該当するが,判示第1及び判示第2の各有印公文書偽造とその各行使と各詐欺との間にはいずれも順次手段結果の関係があるので,同法54条1項後段,10条により,それぞれ1罪として,いずれもそれぞれの刑及び犯情の最も重い偽造有印公文書行使罪の刑で処断することとし,
以上は同法45条前段の併合罪であるから,
同法47条本文,
10条により犯情の最も重い判示第1の別表1番号3の罪の刑に法定の加重をした刑期の範囲内で被告人を懲役2年6月に処し,情状により同法25条1項を適用してこの裁判が確定した日から5年間その刑の執行を猶予し,押収してある普通預金等払戻請求書13通(平成30年押第3号符号1ないし13)及び払戻請求書22通(同号符号14ないし35)の各偽造部分は,判示第1及び判示第2の各偽造有印公文書行使の犯罪行為をそれぞれ組成した物で,何人の所有をも許さないものであるから,
同法19条1項1号,
2項本文を適用してこれらを没収することとする。
(量刑の理由)
1
本件は,A役場出納室出納係の職にあった被告人が,同町が会計管理者名義で
開設していた預貯金口座から,約5年間,合計35回にわたり,公印を用いて当該預貯金口座にかかる普通預金等払戻請求書等を偽造して行使し,金融機関から現金の払戻しを受け,多額の現金を詐取したという有印公文書偽造,同行使及び詐欺の事案である。
2
詐欺に係る被害金額は合計1467万4200円と極めて多額である上,被告
人は,A役場出納室出納係の職にあり,周囲から信用される立場にあったことに乗じて,真正の公印を勝手に使用して会計管理者名義の公文書を偽造,行使して詐欺に及んだのであり,公文書に対する社会の信用を害した程度も大きい。3
被告人は,元夫からの暴言に悩むなどし,理不尽な遊興費の要求に応じるなど
するため本件各犯行に及んだ旨の弁解をするが,これが多額の公金詐欺を正当化する理由になるとは考えられず,酌量の余地は乏しい。
4
これらの事情に加え,本件各犯行が長期間にわたり多数回繰り返されたことに
鑑みれば,犯行の常習性は顕著であり,強い非難を免れない。
本件の犯情は悪く,被告人の刑事責任は,軽視することができない。5
他方,親族の援助を得て詐欺の実質的な被害者であるAに対し被害全額の弁償
がなされて示談が成立したこと,被告人は本件によって懲戒免職処分を受ける結果となり一定の社会的制裁を受けたといえること,犯行発覚後は一貫して本件各犯行を認め当公判廷においても反省の弁を述べていること,前科前歴がないこと,被告人の父が出廷し被告人を指導監督する旨を誓っていること等,被告人にとって酌むべき事情も多く認められる。
こうした諸事情をも考慮すると,被告人に対しては,直ちに実刑を科すのではなく,社会内での更生の機会を与えるのが相当である。
よって,主文のとおり判決する。
(求刑―懲役2年6月,主文同旨の没収,弁護人の意見―執行猶予付き判決)平成30年6月7日
高知地方裁判所刑事部
裁判長裁判官

山田
裁判官

髙田卓
裁判官

渡辺正裕文
別表1
番号
1
犯行日
平成23年3月25日

犯行場所

窓口職員

高知県高岡郡a町

会計管理者

交付額

FB
106万円

bc番地d
D銀行E支店
2
同年5月31日

同上

I
同上

60万円

3
平成26年9月30日

同上

JC
200万円

4
平成27年1月26日

同上

同上

同上

70万円

5
同年3月25日

同上

同上

同上

35万円

6
同年4月14日

同上

同上

同上

45万円

7
同年5月15日

同上

同上

同上

50万円

8
同年6月23日

同上

同上

同上

25万円

9
同年8月10日

同上

同上

同上

100万円

10

同年10月23日

同上

同上

同上

60万円

11

同年11月24日

同上

同上

同上

80万円

12

平成28年1月29日

同上

同上

同上

41万円

13

同年3月14日

同上

同上

同上

50万円

合計

922万円

別表2
番号
1
犯行日
平成23年8月1日

犯行場所

窓口職員

高知県高岡郡a町

会計管理者

交付額

HB
40万円

bc番地d
G協同組合本所
2
平成24年1月20日

同上

同上

同上

20万円

3
同年3月26日

同上

K
同上

15万円

4
同年4月23日

同上

L
同上

25万円

5
同年5月11日

同上

同上

同上

45万
4200円

6
同年6月22日

同上

同上

同上

25万円

7
同年7月27日

同上

M
同上

15万円

8
同年8月23日

同上

L
同上

15万円

9
同年10月23日

同上

H
同上

45万円

10

平成25年2月21日

同上

同上

同上

10万円

11

同年3月25日

同上

N
同上

25万円

12

同年4月24日

同上

H
同上

11万円

13

同年5月9日

同上

同上

同上

54万円

14

同年8月26日

同上

同上

同上

14万円

15

同年9月20日

同上

L
同上

20万円

16

同年10月24日

同上

H
同上

16万円

17

同年11月13日

同上

O
同上

20万円

18

同年12月3日

同上

N
同上

30万円

19

平成26年1月27日

同上

同上

同上

35万円

20

同年3月11日

同上

H
同上

15万円

21

同年3月18日

同上

N
同上

10万円

22

同年4月24日

同上

PC
40万円

合計

545万4200円

トップに戻る

saiban.in