判例検索β > 平成30年(わ)第119号
詐欺被告事件
事件番号平成30(わ)119
事件名詐欺被告事件
裁判年月日平成30年6月12日
法廷名大阪地方裁判所
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主文
被告人Aを懲役3年に,同B,同C及び同Dをそれぞれ懲役1年6月に処する
この裁判確定の日から,被告人Aに対し4年間,同B,同C及び同Dに対し3年間,それぞれその刑の執行を猶予する。
理由
(罪となるべき事実)
被告人Aは,大阪市a区bc丁目d番e号所在の「E」
,同市f区gh丁目i番j
号所在の「F」ほか3店舗のゲームセンターを運営するG株式会社の代表取締役,被告人B,同C及び同D並びにH,I,J及びKは,同社従業員であったものであり,被告人Aは,各店舗に,ボタン操作により,ゲーム機内のハサミを動かして紐のある場所で停止させて紐を切断し,その紐の先端に吊るされた人形を落下させるプライズゲーム機「L」を設置し,被告人らは,各店舗において,遊技客から1回1000円以上のゲーム代金を受領し,人形を落下させた場合には「M」等の高額景品を獲得させるという方法で同ゲーム機を使用した営業を行っていたものであるが,同ゲーム機には,遊技者がハサミの停止ボタンを操作しても,操作したタイミングでハサミが停止せず,遊技者に紐を切断させないようにするペイアウト管理機能が付属しているところ
第1

被告人A,同B及び同Cは,Hと共謀の上,平成29年10月9日,Eにおいて,
客のNから
「L」
のゲーム代金の名目で金をだまし取ろうと考え,
Hが,
紐の先端に乾電池等を入れて重くした人形を吊るして紐に負荷をかけた上,ペイアウト管理機能を利用しないで,ハサミで紐を切断して人形を落下させるのを実演し,次いで,Nにもペイアウト管理機能を利用しないで練習をさせ,紐のある場所でハサミが停止し,ハサミの刃が紐に当たることを確認させたが,その後,同人が代金を支払って同ゲーム機でゲームをする際には,紐の先端に乾電池等何も入れていない前記人形と同じ形状の人形を吊るすとともに,ペイアウト管理機能を利用して実演時や練習時と条件を変え,紐を切断困難な状態にしていたのに,そのことを秘し,あたかも実演時や練習時と同様に同ゲーム機のハサミを動かして,紐のある場所でハサミを停止させれば,紐を切断して人形を落下させて高額景品を獲得できるかのように装い,
それぞれ,
「この練習
どおりにやったらできますよ。もう少しで切れます。今止めるともったいないです。あとはお兄さんの気力です。もうちょっとで切れますよ。
」などとうそを
言い,Nに,実演時や練習時と同様にハサミを動かして紐のある場所でハサミを停止させれば,紐を切断して人形を落下させて高額景品を獲得できるものと誤信させ,同ゲーム機でゲームを複数回にわたって行わせ,よって,同日,同店において,同人から同ゲーム機のゲーム代金として現金約35万円の交付を受けた
第2

被告人Aは,I及びJと共謀の上,同年11月20日,Fにおいて,客のO及びPから前同様に金をだまし取ろうと考え,Iが前同様に実演し,次いで,Oにも前同様に練習をさせたが,その後,同人及びPが代金を支払って同ゲーム機でゲームをする際には,前同様に紐を切断困難な状態にしていたのに,そのことを秘し,前同様に装い,それぞれ,
「さっきの練習みたいにやったらでき
るからね。惜しい。もう少しで切れる。
」などとうそを言い,O及びPに前同様
に誤信させ,同ゲーム機でゲームを複数回にわたって行わせ,よって,同日,同店において,同ゲーム機のゲーム代金として,Oから現金約2万円,Pから現金約53万円の交付を受けた

第3

被告人A及び同Dは,Kと共謀の上,同月26日,同店において,客のQから前同様に金をだまし取ろうと考え,被告人Dらが前同様に実演し,次いで,Qにも前同様に練習をさせたが,その後,同人が代金を支払って同ゲーム機でゲームをする際には,前同様に紐を切断困難な状態にしていたのに,そのことを秘し,前同様に装い,それぞれ,
「練習通りにやったらできるから。お姉さん
も練習してみて,簡単にできることが分かったでしょ。あともう少しで切れます。
」などとうそを言い,Qに前同様に誤信させ,同ゲーム機でゲームを複数回にわたって行わせ,よって,同日,同店において,同人から同ゲーム機のゲーム代金として現金約17万円の交付を受けた
第4

被告人らは,共謀の上,同年12月1日,Eにおいて,客のR及びSから前同様に金をだまし取ろうと考え,被告人Dが前同様に実演し,次いで,R及びSにも前同様に練習をさせたが,その後,同人らが代金を支払って同ゲーム機でゲームをする際には,前同様に紐を切断困難な状態にしていたのに,そのことを秘し,前同様に装い,それぞれ,
「練習と同じようにやったらできるから。
タイミングは合っている。
お姉さんに足りないのは自身だけ。などとうそを言

い,R及びSに前同様に誤信させ,同ゲーム機でゲームを複数回にわたって行わせ,よって,同日,同店において,同ゲーム機のゲーム代金として,Rから現金約6万4000円,Sから現金約8万円の交付を受けた

第5

被告人A及び同Cは,共謀の上,同月7日,同店において,客のT及びUから前同様に金をだまし取ろうと考え,被告人Cが前同様に実演し,次いで,Tにも前同様に練習をさせたが,その後,同人が代金を支払って同ゲーム機でゲームをする際には,前同様に紐を切断困難な状態にしていたのに,そのことを秘し,前同様に装い,それぞれ,
「練習どおりにやれば大丈夫,切れるから。ハ
サミの刃が紐に当たれば切れるから。などとうそを言い,

T及びUに前同様に
誤信させ,同ゲーム機でゲームを複数回にわたって行わせ,よって,同日,同店において,同ゲーム機のゲーム代金として,Tから現金約6500円,Uから現金約6500円の交付を受けた

ものである。
(証拠の標目)
省略
(法令の適用)
1
罰条
被告人Aの判示第1ないし第5,同Bの判示第1及び第4,同Cの判示第1,第4及び第5,同Dの判示第3及び第4の各所為
いずれも刑法60条,246条1項(ただし,判示第2,第4及び第5については,被害者ごとに)
2
科刑上一罪の処理
被告人Aの判示第2,第4及び第5,同Bの判示第4,同Cの判示第4及び第5,同Dの判示第4の各罪
いずれも刑法54条1項前段,10条(それぞれ犯情の重い,判示第2についてはP,判示第4についてはS,判示第5についてはUに対する各詐欺の罪の刑で処断)

3
併合罪の処理
被告人Aの判示第1ないし第5,同Bの判示第1及び第4,同Cの判示第1,第4及び第5,同Dの判示第3及び第4の各罪
刑法45条前段,47条本文,10条(被告人Aについては犯情の最も重い判示第2,被告人Bについては犯情の重い判示第1,被告人Cについては犯情の最も重い判示第1,被告人Dについては犯情の重い判示第3の罪の刑に法定の加重)

4
刑の執行猶予
被告人らについて

5
刑法25条1項

訴訟費用
被告人B及び同Dについて

刑事訴訟法181条1項ただし書(不負担)

(量刑の理由)
本件は,同一の法人が運営するb及びkのゲームセンター2店舗において,店員らが共謀の上,景品を獲得できない設定にしたプライズゲーム機で客を遊ばせ,ゲーム代金名目で現金をだまし取ったという詐欺の事案である。
その手口は,店員が,別のプライズゲーム機で遊んでいる客などに対し,より簡単なゲーム機であることをアピールして,客を本件ゲーム機に誘導し,初めに店員が実演し,次いで客に練習をさせて,実際に景品が簡単に獲得できるかのように思い込ませた上,実際にゲームを始める際には,密かにゲーム機の設定を変えるなどして,事実上景品を獲得できない状態にし,ゲームを始めた客がゲームを止めないよう,
高額の景品を次々と上乗せして射幸心を煽ると共に,
「練習どおりにやれば大
丈夫」「今止めるともったいない」などと声かけをして,後には引けない客の心理,
を巧みにつき,何度もゲームに挑戦させるというものである。被害に遭った客は,1回1000円以上のゲーム代金を何度も支払ううちに,多い人では十数万円から五十数万円という多額の現金をだまし取られている。
このことからも分かるように,
本件各犯行は,巧妙かつ執拗な手口により行われた,店舗ぐるみでの常習的犯行であり,
悪質というほかなく,
本件各犯行を行った被告人らの責任は重いものがある。
特に,被告人Aは,本件各店舗の運営会社の経営者として,本件ゲーム機を店舗に導入し,卸元に注文して,設定変更用のスイッチを操作しやすい位置に付けさせ,犯行に用いる特注の紐やおもりを入れた人形を用意し,客を本件ゲーム機に誘導するタイミングを従業員らに指導するなどして,本件各犯行を主導し,暴利を得たものであって,その責任は最も重い。
もっとも,
被告人Aは,
その立場を踏まえ,
起訴された事件の被害者全員に対し,
詐取金を上回る被害弁償を行っており,
被害者らはこれを受けて,
被告人Aのほか,
他の被告人らについても許して,寛大な処分を求めている。また,被告人Aは,店舗を全て閉店して明渡し済みであり,運営会社も清算する意向であるし,他の被告人らも,今後は二度と犯罪行為に関わらないことを約束するなどしている。また,被告人らに前科(又は見るべき前科)はない。
以上を踏まえ,被告人らに対しては,それぞれ主文の刑に処した上で,今回は刑の執行を猶予し,社会内でやり直す機会を与えるのが相当と判断した。(求刑

被告人Aについて懲役3年6月,被告人B,同C及び同Dについて懲役1
年6月)
平成30年6月12日
大阪地方裁判所第8刑事部

裁判官

永井健一
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